以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図4は本発明の実施による溶接機の形態の一例(第一実施例)を示している。図1に示す如く、本第一実施例の溶接機1は、溶接トーチ2を備えて該溶接トーチ2をパイプやチューブ等の対象物3(ここに示した例では、上下方向に沿って軸を有する円筒形である)の周囲で周回させるヘッド部4と、溶接トーチ2を含むヘッド部4の駆動や制御を行う機構を内蔵した本体部5を備えてなる。尚、以下では基本的に、鉛直方向に沿って延びる対象物3の下端を水平面に対し隅肉溶接により溶接する場合を例に説明を行うが、対象物3や溶接機1の配置はこれに限らず、例えば対象物3の向きは水平方向や斜め方向であっても良い。また、隅肉溶接以外に突合せ溶接等にも適用し得る。
本体部5は、水平面に載置されて対象物3に対しヘッド部4を適当な位置に支持するようになっている。本体部5は、ヘッド部4を対象物3の軸に沿った方向や対象物3の軸に直交する方向へ動かすための図示しない駆動機構を備えており、これによりヘッド部4の位置を対象物3に対し微調整することができるようになっている。尚、ここでは水平面に対し対象物3を隅肉溶接する場合を説明しているため、本体部5を水平面に載置すれば溶接機1全体を対象物3に対し適切な位置に配置することができるが、この他に、例えば鉛直面に対して対象物3を溶接する場合や、対象物3としてのパイプ同士を突合せ溶接により溶接する場合等を想定し、例えばパイプやチューブを挟み込むクランプ等、本体部5を適宜固定するための機構を別途備えるようにしても良い。
ヘッド部4は、対象物3に対し直交する面をなして本体部5に支持される台座部としてのテーブル6と、該テーブル6に対し対象物3の方向に沿った軸を中心に回転可能に支持されるリング状の回転体(回転リング)7を備えている。該回転リング7には溶接トーチ2が取り付けられ、溶接に際し該溶接トーチ2と共に対象物3の周囲を回転するようになっている。溶接トーチ2は、対象物3に対して放電を行う先端部2aと、該先端部2aを傾動可能に支持して溶接トーチ2全体を回転リング7に対し支持する支持部2bを備えている。支持部2bには、溶接トーチ2に冷却液(ここでは水)を供給又は回収する2本の冷却液ケーブル8と、溶融金属を保護するためのシールドガスを供給するガスケーブル9の計3本の配管が接続されている。また、テーブル6の上面には溶接のエネルギーとしての電気を供給する電力ケーブル10が接続されている。尚、図2以降、冷却液ケーブル8やガスケーブル9については、説明の都合上、図によっては図示を適宜省略している。また、回転リング7はテーブル6に対し、例えば絶縁体にて構成されたターンテーブル様の機構により回転可能に支持されるが、この機構については本発明の要旨と直接関係するものではなく、また図示すれば図全体が煩雑になってしまうため、全図にて図示を省略している。
図2に示す如く、ヘッド部4を構成するテーブル6のなす面には、対象物3を挟み込むための凹部6aが備えられており、ここに回転リング7が配置されている。また、回転リング7は一部に切欠き7aを有する環状の部材であり、全体として平面視でC字状に形成されている。そして、この切欠き7aに対象物3を通すことで回転リング7を対象物3の周囲に配置できるようになっている。回転リング7の下面には、回転リング7の周方向に関して切欠き7aと反対側の位置に溶接トーチ2が取り付けられている。溶接トーチ2の先端は、図示しない駆動機構により適宜角度を変更できるように構成されている。尚、以下では、説明の便宜上、回転リング7の回転軸に沿う方向を上下方向と規定し、回転リング7に対し溶接トーチ2が取り付けられた側を下方向、その反対側を上方向と規定するものとする。
回転リング7は、該回転リング7を支持する台座部としてのテーブル6の下面に、該テーブル6に対し回転可能に取り付けられており、その回転はヘッド部4に備えた複数のギヤにより駆動されるようになっている。回転リング7の外周には歯形が形成されてギヤ11,11と噛み合うようになっており、該ギヤ11,11はギヤ12,12と噛み合い、該ギヤ12,12は駆動ギヤ13と噛み合って、図示しないモータから駆動ギヤ13に入力される動力を回転リング7に伝達し、回転リング7をテーブル6に対し回転させるようになっている。
さらに、テーブル6と回転リング7との間には導電機構14が介装されており、この導電機構14により、テーブル6に対する回転リング7の回転を許容しつつ、テーブル6側に供給される電力を、回転リング7側の溶接トーチ2に伝達するようになっている。
本第一実施例の場合、導電機構14は、図1、図2に示す如く、上下に重なり合ったテーブル6と回転リング7の間にローラ型の導電子15を挟み込んでなる。この導電子15の形態及びテーブル6と回転リング7に対する配置を断面図にて図3に示す。導電子15は導電性の物質で構成される円錐台状の物体であり、本第一実施例では、複数の導電子15の各回転軸が回転リング7の径方向に沿い、且つ径方向外側に向かうほど導電子15の径が大きくなる向きで放射状に並べられている(図2参照)。導電子15は、回転リング7の上面、及びこれと対向するテーブル6の下面に互いに向かい合うように形成されたC字状の溝16a,16bにより構成される通路16に収容されており、回転リング7がテーブル6に対して回転する間、回転面である円錐面を溝16aの底面と溝16bの底面に接触させつつ回転し、通路16内を回転リング7の動きに伴って転がりながら移動するようになっている。溝16a,16bは、各々が回転リング7の径方向に関して外側に向かうほど深くなるように形成されており、溝16a,16bの間に位置する導電子15の形状に合わせ、通路16の上下方向の寸法が径方向外側に向かうほど大きくなっている。
テーブル6側に形成された溝16bは、図2に示す如く、凹部6aに面する位置を両端部としているが、この両端部は凹部6aに向かって開放されてはおらず、凹部6aの縁に沿って形成された隔壁16cによって閉じられている。この隔壁16cにより、C字状の通路16内を転動しながら凹部6a付近の端部まで移動してきた導電子15が、前記端部を越えて凹部6aに脱落してしまうことが防止されるようになっている。
ここで、通路16の構成は上に説明した例に限定されない。例えば、テーブル6の下面又は回転リング7の上面から二枚のC字状のフランジを突出させ、該フランジ同士の間に通路16を形成することもできる。その他、回転リング7の回転に伴う導電子15の移動を適切に規定し得る限りにおいて、通路16は種々の構成を取り得る。
導電子15は、図2に示す如く、回転リング7の切欠き7aの位置が凹部6aの開口に一致する初期位置において、平面視で回転リング7の周方向に関して溝16bの中央部16dを中心とした90°の範囲内に収まるように配置される(図2中に一点鎖線で示す範囲である)。また、溝16bの両端部は、前記初期位置で中央部16dから最も遠い位置にある導電子15から、平面視で回転リング7の周方向に関して90°以上離れていることが好ましい。すなわち、導電子15が溝16bの中央部16dを中心として90°の範囲内に配置されている場合には、溝16bの両端部は中央部16dから回転リング7の周方向に135°以上離れた位置に設定される(図2中に二点鎖線で示す範囲である)。回転リング7の回転に伴い、導電子15とテーブル6や回転リング7との間で摺動をなるべく発生させないための配置である。この配置による作用効果については後に詳述する。
通路16における各導電子15の間には、導電子15同士の位置ずれを防ぐために適宜スペーサ等を配置しても良い。ただし、初期位置で中央部16dから最も遠い位置にある導電子15と、溝16bの両端部との間には、回転リング7の回転に伴う導電子15の移動を妨げないよう、スペーサ等は配置しないか、十分に小さいサイズのスペーサを配置すると良い。また、ここでは計3個の導電子15を備えた場合を例示しているが、導電子15の数はこれより多くすることもできるし、少なくすることもできる。
回転リング7やテーブル6のうち、少なくとも互いに対向する部分の材質は導電性であり、回転リング7とテーブル6の間で導電子15を介した通電が可能となっている。一方、回転リング7と、駆動ギヤ13を駆動する図示しないモータや、ヘッド部4を本体部5に対して動かすための図示しない駆動機構との間は、例えばギヤ11,12やテーブル6の一部を絶縁体により構成する等の措置によって絶縁されている。
次に、上記した本第一実施例の作動を説明する。
上述の溶接機1にて対象物3の溶接を行う際には、まず図4(A)に示す如く、対象物3を取り囲むようにテーブル6の凹部6a及び回転リング7が位置するよう、溶接機1を配置する。このとき、回転リング7は、切欠き7aの位置が凹部6aの開口と一致する初期位置にあり、凹部6aと切欠き7aに対象物3を通すことで、溶接にあたり溶接機1を適切な位置に配置することができる。溶接機1を配置したら、図示しない駆動機構によりヘッド部4を適宜動作させ、回転リング7及び溶接トーチ2を対象物3の溶接箇所に対して位置決めする。この際、あわせて溶接トーチ2の先端部2aの角度も操作し、先端の放電部が対象物3の溶接箇所に位置するよう調整する(図1参照)。
次に、回転リング7を180°回転させ、図4(B)に示す如く溶接トーチ2を対象物3に関して初期位置とは反対側に位置させる。ここでは回転リング7を時計回りに回転させた場合を図示しており、溶接トーチ2に接続された冷却液ケーブル8やガスケーブル9は、対象物3に対し図中下側から巻き付くように溶接トーチ2に追従する。
また、回転リング7の回転に伴い、テーブル6と回転リング7の間に配置された導電子15は通路16内を転がるように時計回りに移動する。回転リング7の回転角が180°であるため、これに追従する各導電子15の移動量は時計回りに90°である。
この際、上述の如く、導電子15は初期位置で溝16bの中央部16dを中心として90°の範囲内に配置され、且つテーブル6側の溝16bの端部は中央部16dから135°以上離れた位置にある(図2及び図4(A)参照)。このため、導電子15が通路16内を時計回りに90°移動しても、導電子15が通路16内を正しく転がりながら移動している限り、導電子15は溝16bの端部に達することはない。
すなわち、ここで、仮に初期位置における導電子15と溝16bの端部の間の距離が周方向で90°に満たない場合を想定すると、回転リング7が180°回転した際、端に位置する導電子15は溝16b内で転動するための空間が足りず、溝16bの端部に到達してしまう。溝16bの端部には上述の如く導電子15の脱落防止のための隔壁16cが備えられており、溝16bの端部に到達した導電子15はこの隔壁16cに接触し、それ以上の移動を妨げられる。そして、導電子15が隔壁16cに接触した状態でさらに回転リング7が回転を続けると、隔壁16cの位置に留まりながら転動しようとする導電子15と、テーブル6又は回転リング7との間で摺動が発生してしまうことになる。上述の導電子15や溝16bの配置は、このような事態を防止するよう、回転リング7の回転に際し導電子15の転動する空間を十分に確保するための構成である。
続いて、対象物3の溶接を行う。溶接トーチ2に冷却液ケーブル8とガスケーブル9からそれぞれ水とシールドガスを送給し、また電力ケーブル10(図1参照)に電流を供給しつつ、図4(B)に示す配置から、回転リング7を反時計回りに360°回転させる。
この間、冷却液ケーブル8及びガスケーブル9は、対象物3の周囲を溶接トーチ2に追従して反時計回りに巻き付くように移動する。また、導電子15は、図4(B)に示す位置から、回転リング7の回転に追従して通路16内を転動しつつ、図4(C)に示す位置まで反時計回りに180°移動する。そして、上述の如き溝16bと導電子15との位置関係により、この360°の回転の間も、溝16b内で各導電子15の転動する空間は確保される。
すなわち、初期位置においては、図4(A)に示す如く、時計回りの方向に関して最も後側(つまり、図中上側)に位置する導電子15は、溝16bの図中上側に位置する端部から周方向に90°以上離れた位置にある。ここから図4(B)の配置に至る溶接前の回転において、この導電子15は時計回りに90°回転するので、溝16bの上側の端部からは180°以上離間する。したがって、続く溶接の過程で、この導電子15が図4(C)の配置まで反時計回りに180°移動しても、溝16bの上側の端部に到達することはない。このようにして、回転リング7を回転させつつ対象物3を溶接している間、導電子15はテーブル6及び回転リング7の両方に接触し続けて両者間の電気的接続を保ち、テーブル6に電力ケーブル10(図2参照)から供給される電流を回転リング7側の溶接トーチ2まで伝達することができる。
この際、各導電子15は転動しながらテーブル6や回転リング7に接触しており、例えば何らかの要因で導電子15が通路16内を滑るような動作をしない限り、基本的には導電子15とテーブル6や回転リング7との間で摺動は発生しない。したがって、摺動に伴う電流値の不安定さの問題や、摩耗及びこれに伴う粉塵の発生といった問題は生じない。本第一実施例の溶接機1によれば、テーブル6と回転リング7の間を転動しながら移動する導電子15により、溶接の間、溶接トーチ2に安定した電流を供給することができ、また、回転リング7の回転により導電子15が常に摺動して摩耗するようなこともなく、長期にわたって安定した品質の溶接を実行することができる。
またここで、導電子15は上述の如く円錐台状に形成され、且つその径が回転リング7の径方向外側に向かうほど大きくなる向きに配置されており、通路16を構成する溝16a,16bも、こうした導電子15の形状に合わせて形成されている。これは、回転リング7の回転に伴う径方向内側と外側の間の移動量の差に応じた構成である。すなわち、回転リング7が回転する際、該回転リング7の各部における周方向の移動距離は、径方向内側ほど小さく、外側ほど大きくなる。一方、仮に導電子15の回転面が一定の径を有する円筒状に形成されていた場合を考えると、この導電子15が転動する際には、導電子15の軸方向に関して全ての箇所の回転面が同じ速さで転動する。したがって、この導電子15が回転リング7の回転と共に転動する際には、導電子15の回転面のうちある一箇所が回転リング7の動きと同じ速さで転動していたとしても、別の箇所は回転リング7と異なる速さで動くことになり、その結果、導電子15と回転リング7又はテーブル6との間で摺動が発生してしまう。そこで、導電子15を図3に示す如き円錐台状に形成すれば、導電子15が転動する際、径の大きい部分ほど速く動くことになり、回転面の全ての箇所で回転リング7の回転に同期させることができ、摺動の発生を抑えることができる。
溶接が完了したら、回転リング7を時計回りに180°回転させ、再度図4(A)に示す初期位置に戻す。以上で溶接に係る工程は終了する。
上述の一連の工程において、冷却液ケーブル8とガスケーブル9は回転リング7側の溶接トーチ2に追従して対象物3の周囲に巻き付くように移動するが、電力ケーブル10はテーブル6側に接続されており、対象物3の周囲を移動するようなことはない(図1、図2参照)。すなわち、溶接に伴い対象物3に巻き付くケーブル類は、電力ケーブル10の分だけ従来と比較して数を削減、または体積を小さくすることができる。
ここで、冷却液ケーブル8に関しては、冷却液を電力ケーブル内に導線に沿って流すことで、溶接トーチへの電力の供給と、溶接トーチ及び電力ケーブルの冷却(小径の導線が通電に伴う熱で溶けることを防止するためである)を同一のケーブル内で兼ねるようにしている例が従来あり、これと比較すると必ずしもケーブルの本数が削減されるわけではない。つまり、電力ケーブルを3本以上備えた従来の溶接機を想定すれば、ケーブルの総数はそれよりも少ないと言えるが、冷却液ケーブルを兼ねた電力ケーブルが2本の溶接機と比較すれば、ケーブルの本数は同じである。しかしながら、電力は通さずに冷却液の送給だけを行う冷却液ケーブル8であれば、導線の分だけケーブルの径が小さくて済み、この利点は大きい。ケーブルの体積が小さくできれば、溶接にあたって対象物3の周囲に必要なスペースを大幅に減らすことができるからである。また、対象物3に巻き付くケーブルの数や体積が少なければ、溶接作業にあたって溶接箇所の視認性も良好になり、溶接中の溶接トーチ2の監視や、溶接後の品質の確認も容易になる。さらに、溶接トーチ2に電力ケーブル10を接続するためのスペースが空いた形になるので、ここに溶接箇所をモニタするためのカメラ等を搭載するといったことも可能である。
あるいは、溶接トーチ2へ供給される電力が十分に小さければ、熱により溶接トーチ2が溶融する心配がないため、冷却液ケーブル8自体が不要となる場合も考えられる(図示は省略する)。この場合、溶接トーチ2に接続され且つ溶接の際に溶接トーチ2に追従する配管はガスケーブル9の一本のみとなり、溶接トーチ2まわりの省スペース化や、視認性の向上といった効果は一層大きい。
また、こういった溶接トーチ2周辺に関わる構成を単純化できるのみならず、電力ケーブル10の構成に関しても利点がある。すなわち、電力ケーブル10は対象物3の周囲に巻き付くことがないので、剛性やスペース上の都合を考慮して複数の小さい径のケーブルに分割するような必要がない。大きな電流を流すことのできる大径の電力ケーブル10を少ない本数用いれば済むので、電力ケーブル10に係る構造を単純にし、溶接機1全体をコンパクトにすることができる。
以上のように、上記本第一実施例においては、溶接トーチ2を備えて対象物3の周囲を回転する回転体(回転リング)7と、該回転体7を回転可能に支持する台座部6と、前記回転体7と前記台座部6との間に配され、前記回転体7の回転に伴って前記回転体7及び前記台座部6と接触しながら回転する回転面を有する導電子15とを備え、前記台座部6側に供給される電力を前記導電子15を介して前記回転体7側に伝達するよう構成しているので、溶接に際し、回転体7の回転に伴い回転する導電子15を介して台座部6と回転体7との間の接触を保つことで、回転に伴う摺動の発生を極力防止しながら、台座部6に供給される電力を前記回転体7側へ好適に伝達することができる。
また、本第一実施例において、前記台座部6は、対象物3を挟み込む凹部6aを備えたテーブルとして構成され、前記回転体7は、対象物3を通す切欠き7aを備えて前記凹部6aに配置され、前記導電子15は、前記回転体7と前記テーブル6が対向する位置にて前記回転体7と前記テーブル6の間に配されているので、テーブル6の凹部6a及び回転体7により対象物3を取り囲むように溶接機1を配置し、溶接作業を好適に実行することができる。
また、本第一実施例において、前記導電子15は、前記回転体7の軸方向に重なり合った前記テーブル6と前記回転体7の間に、該回転体7の径方向に回転軸が沿う向きに配され、前記回転体7の回転に伴い、該回転体7及び前記テーブル6に回転面を接触させながら転動するよう構成されているので、回転に伴う摺動の発生を効果的に防止しつつ、電力を前記回転体7側へ好適に伝達することができる。
したがって、上記本第一実施例によれば、配管類を削減しながら溶接に際して安定した電流値を保ち得る。
図5、図6は本発明の第二実施例を示している。基本的な構成は上述の第一実施例と同様であるが、本第二実施例の溶接機17に備えた導電機構18の場合、図5に示す如く回転リング19の上面に形成された溝21a、及びテーブル20の下面に形成された溝21bに歯形が形成されている。一方、図6に示す如く、円錐台状の導電子22の回転面である円錐面にも歯形が形成されており、通路21の上下に形成された歯形がそれぞれ導電子22の円錐面の歯形と噛み合うようになっている。そして、回転リング19の回転にあたっては、導電子22は円錐面の歯形を通路21に形成した歯形に噛み合わせつつ転動する。このようにすれば、導電子22が転動によらず、通路21内を滑るように移動してしまうような心配がないので、本第二実施例の場合には、上記第一実施例における隔壁16c(図2参照)の如き構成は不要である。
すなわち、上述の第一実施例(図2参照)の如く、導電子15が円筒状のローラとして形成されている場合には、何らかの要因により、導電子15が通路16内を滑るように移動することが起こり得る。その際には、仮に初期位置において溝16bの端部と導電子15の間の距離を十分に取ってあったとしても、回転リング7の回転に伴い導電子15が溝16bの端部まで達してしまう可能性がある。上記第一実施例では、このような場合に備え、導電子15が溝16bの端部から脱落してしまうことを防止するために隔壁16cを備えているが、本第二実施例の如く導電子22と通路21の間で歯形を噛み合わせつつ導電子22を転動させるようにすれば、該導電子22が通路21に対して位置ずれを起こすことがない。
本第二実施例に係るその他の作用効果については、上記第一実施例と同様であるため説明を省略するが、本第二実施例によっても、配管類を削減しながら溶接に際して安定した電流値を保ち得る。
図7、図8は本発明の第三実施例を示している。基本的な構成は上述の第一及び第二実施例と同様であるが、本第三実施例の溶接機23に備えた導電機構24の場合、回転リング25とテーブル26とが部分的に径方向に重なり合っており、回転リング25の外周面と、テーブル26の下面に形成したC字状の溝27aの外周面との間に導電子28を配置している。
すなわち、本第三実施例の場合、回転リング25は上段25aが溝27a内に収容され、回転リング25の上段25aの外周面と、溝27aの外周面との間が導電子28の通路27として構成されている。そして、導電子28の回転軸は、回転リング25の径方向ではなく、軸方向に沿った配列となっており、導電子28は、回転リング25の回転に伴い、上下方向の軸を中心に、回転リング25の外周面と、溝27aの外周面とに接触しながら通路27内を転動するように構成されている。この構成に伴い、導電子28の回転面は円錐台状ではなく、軸方向に沿って各所が等しい径を有する円筒状となっている。
回転リング25の下段25bには、外周面に歯形が形成されており、ここでギヤ11と噛み合い、溶接作業に伴う回転を駆動されるようになっている。
図8に示す如く、溝27aの両端部には、導電子28の脱落を防止するための隔壁27bがテーブル26の凹部26aの縁に沿って形成されている。通路27における導電子28の配列は、上述の第一、第二実施例(図2、図5参照)と同様であり、初期位置において平面視で回転リング25の周方向に関し溝27aの中央部27cを中心とした90°の範囲内に収まるように配置される。また、溝27aの両端部は平面視で中央部27cから周方向に135°以上離間した位置に形成される。
このように導電機構24を構成すると、回転リング25、導電子28及びテーブル26が径方向に重なり合うため、上述の第一、第二実施例と比較して径方向の寸法が多少大きくなるが、その一方、回転リング25とテーブル26の間に上下方向に導電子28を挟み込まないため、軸方向の厚みを小さくすることができる。
ここで、本第三実施例では、テーブル26側に形成した溝27aの外周面と、回転リング25の上段25aの外周面との間に通路27を形成しているが、これとは逆に、例えば回転リング25側に溝を形成すると共に、テーブル26の下面に凸部を形成し、該凸部を前記溝内に収容して、該凸部の外周面と、前記溝の外周面との間に導電子28を配置して構成することもできる。あるいは、テーブル26側に形成した溝27aの内周面と、回転リング25の内周面との間に導電子28を配置し、ここを通路27として構成することもできる。
また、本第三実施例では回転リング25の上段25aの周囲に導電子28を配し、下段25bの外周にてギヤ11と噛み合うようにしているが、これとは逆に、下段25bの周囲に導電子28を配し、上段25aの外周にてギヤ11と噛み合うように構成することもできる。その他、回転リング25やテーブル26、導電子28の配置等は、ここに示した例以外にも種々の構成を取り得る。
以上のように、上記本第三実施例において、前記導電子28は、前記回転体25の径方向に重なり合った前記テーブル26と前記回転体25の間に、該回転体25の軸方向に回転軸が沿う向きに配され、前記回転体25及び前記テーブル26に回転面を接触させながら転動するよう構成されているので、回転に伴う摺動の発生を効果的に防止しつつ、電力を前記回転体25側へ好適に伝達することができる。
本第三実施例に係るその他の作用効果については、上記第一実施例と同様であるため説明を省略するが、本第三実施例によっても、配管類を削減しながら溶接に際して安定した電流値を保ち得る。
図9〜図11は本発明の第四実施例を示している。基本的な構成は上述の第一〜第三実施例と同様であるが、本第四実施例の溶接機29に備えた導電機構30の場合、図11(A)、(B)に示す如く、導電子31はテーブル32側に固定された軸31aの周囲に中間子31bを介し外周体31cを支持して構成される。
外周体31cは、導電子31の回転面をなす円錐台状の中空の導電体であり、外周体31cの中心軸をなして該外周体31cを貫通する導電性の軸31aを中心に回転可能に構成されている。外周体31cの内部空間には、外周体31cと軸31aとの間に複数の円錐台状の中間子31bが配されている。軸31a、各中間子31b、外周体31cは各々が円形の断面を有しており、各中間子31bは、その軸方向の全体にわたり、軸31aの外周面と、外周体31cの内周面との間の距離に等しい直径を有している。そして、外周体31cが軸31aを中心に回転する際、各中間子31bがこれに追従して外周体31cと軸31aの間を転動しつつ、軸31aに対し外周体31cを支持するようになっている。こうして、外周体31cが軸31aの周囲を回転する間、中間子31bが軸31aの外周面と外周体31cの内周面双方に接触し続けるので、外周体31cの軸31aに対する回転を許容しつつ、外周体31cと軸31aとの間で通電できるようになっている。
本第四実施例では、こうした構成を備えた導電子31が、図9、図10に示す如く、軸31aが回転リング33の径方向に沿い、且つ外周体31cの径が回転リング33の径方向外側に向かうほど大きくなる向きで放射状に複数配置されている。
テーブル32の下面には各導電子31を収容するための窪み34aが形成されており、導電子31の軸31aの両端は、回転リング7の径方向に関して窪み34aの向かい合う内面にそれぞれ支持される。導電子31の外周体31cは窪み34aの内面には接しておらず、外周体31cはテーブル32と直接接触することなく回転するようになっている。
一方、回転リング33の上面には平面視でC字状の溝34bが形成されており、この溝34bは底面において導電子31の外周体31cと接するようになっている。溝34bは、円錐台状の外周体31cの形状に合わせ、回転リング33の径方向に関して外側に向かうほど深くなるように形成されている。
このような構成の導電機構30では、回転リング33の回転に伴い、導電子31の回転面をなす外周体31cが、回転リング33に形成された溝34bの底面に接しながら軸31aを中心に回転する。この間、回転面をなす外周体31cは内部において中間子31bを介して軸31aと接触し続けるので、回転リング33は外周体31c、中間子31b、軸31aを介してテーブル32に接触し続けることになり、回転リング33とテーブル32の間の電気的な接続が確保される。
本第四実施例の場合、上記第一〜第三実施例と異なり、導電子31の位置がテーブル32に対して移動することはない。したがって、例えば図10に示す如く、4つの導電子31を回転リング33の周方向に関し略均等に配置するといったことも可能である。
ここで、本第四実施例ではテーブル32に窪み34aを備え、該窪み34aに真っ直ぐな軸31aを支持するようにしているが、この他に、例えばテーブル32には窪みや溝のような構成を備えず、軸31aの両端をテーブル32の下面に向かって屈曲させ、該下面に軸31aの両端を固定することもできる。また、本第四実施例ではテーブル32側に導電子31を備えているが、これとは逆に回転リング33の上面に導電子31を支持し、テーブル32側に導電子31の外周体31cを接触させるよう構成することもできる。
以上のように、上記本第四実施例において、前記導電子31は、円形の断面を有して前記テーブル32又は回転体33の一方に支持される軸31aと、円形の断面を有して該軸31aを中心に回転する外周体31cと、円形の断面を有して前記軸31aと前記外周体31cの間に配され、該外周体31cの回転に伴って該外周体の内周面と前記軸31aの外周面とに接触しながら転動する複数の中間子31bを備え、前記外周体31cが外周面にて前記テーブル32又は回転体33の他方に接触し、前記回転体33の回転に伴い前記軸31aに対し回転するよう構成しているので、回転に伴う摺動の発生を効果的に防止しつつ、電力を前記回転体33側へ好適に伝達することができる。
本第四実施例に係るその他の作用効果については、上記第一実施例と同様であるため説明を省略するが、本第四実施例によっても、配管類を削減しながら溶接に際して安定した電流値を保ち得る。
尚、本発明の溶接機は、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、第三実施例や第四実施例の導電機構において、導電子の回転面に第二実施例の如く歯形を形成し、テーブルや回転体と噛み合わせるよう構成することも可能である。あるいは、第四実施例の導電子と類似の導電子の回転面を円筒形として構成し、第三実施例の如く、回転体の周囲に上下方向の軸を有して配列することもできる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。