JP2018069199A - 液滴下ノズル - Google Patents
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Abstract
Description
ここで、通常、人間の眼には約20μL程度の涙液を保持する容積があるが、従来の点眼用容器のノズルでは、1滴の滴下量が約30〜40μLというのが一般的となっており、滴下された目薬のほぼ半分が眼から溢れ出てしまうという問題があった。
そこで、このような人間の眼の涙液保持容積に対応した、より少量の滴下を可能とする点眼用容器のノズルに関する提案がなされている。
また、0.5〜2.5mmという微細なニードルは、点眼を行うユーザにとって、先端が非常に尖って見えることから、眼に突き刺さるような恐怖心を与えるおそれもあった。
また、そのような微細なニードルによっても、滴下量はせいぜい10μL程度が限界であり、滴下量の少量性としても十分なものとは言えなかった。
図1は、本発明の実施形態に係る液滴下ノズルの一例を示す説明図であり、(a)は点眼用容器全体の断面図、(b)は(a)に示すノズルの先端部分の拡大断面図である。
同図に示すように、本実施形態に係る液滴下ノズルは、目薬の点眼用容器1の注出口となるノズル10を構成している。
具体的には、点眼用容器1は、内部に目薬となる液体を収容・貯留可能な容器本体2と、この容器本体2の上面(滴下使用時の底面)のほぼ中心から突出した、液体の注出口となるノズル10を備えている。容器本体2とノズル10とは連通しており、容器本体2に貯留された目薬がノズル10の開口10aから、容器外部に注出・滴下されるようになっている。
ノズル10は、図1に示すように、容器本体2とは別体に形成されており、容器本体2の注出口部に形成されたノズル装着用の突出部分に挿入・嵌合されて容器本体2と一体となって、点眼用容器1を構成する。
具体的には、ノズル10は、例えば円筒形状や角筒形状に形成され、容器本体2の液体の貯留空間と連通するようになっている。そして、その筒状のノズル10の開口10aを介して、容器本体2の内部から液体が注出・滴下される。
本実施形態において、撥液部材11は、非フッ素系樹脂からなり、撥液部材11の表面を形成する非フッ素系樹脂の分子鎖中に、フッ素原子が組み込まれている。例えば、非フッ素系樹脂の分子鎖を−(CH2)n−で表すと、この分子鎖の一部にフッ素原子が組み込まれ、例えば−CHF−或いは−CF2−などの含フッ素部分が生成されて、撥液部材11の表面がフッ素化されるようにしている。
従って、フッ素原子が組み込まれている領域には、エッチングにより、超微細な凹凸が形成されることとなる。この超微細な凹凸での算術平均粗さRaは、一般に、100nm以下であり、Ra/RSm≧5×10−3である。
以下、本実施形態における撥液部材11の動作原理について、図2及び図3を参照しつつ説明する。
本実施形態において、撥液部材11の表面に形成される粗面の形態を図2に示す。同図において、撥液部材11の表面には、微細な凹凸からなる粗面100が形成されているとともに(図2において、粗面100中の凸部の頂部はSで示されている)、この粗面100を形成する非フッ素系樹脂の分子鎖中には、フッ素原子が組み込まれている。
図3(a)に示すように、上記のような粗面100での液滴の接触パターンは、液滴が粗面100上に載ったCassieモードでは、粗面100中の凹部がエアポケットとなっており、液滴は固体と気体(空気)との複合接触の状態となる。このような複合接触では、液滴の接触界面での接触半径Rは小さく、液滴と粗面の密着力は低く、疎液性が最も高い空気に液体が接触するため、高い撥液性が発現する。このようなCassieモードでの粗面100の接触角は、以下の理論式(1)に示す通りである。
cosθ*=(1−φS)cosπ+φScosθE
=φS−1+φScosθE (1)
θE:接触角
θ*:見かけの接触角
φS:面積比(単位面積当たりの固−液界面の投影面積)
この理論式(1)から理解されるように、φSが小さいほど、見かけの接触角θ*は180度に近づき、超撥液性を示すようになる。
cosθ*=rcosθE (2)
θE:接触角
θ*:見かけの接触角
r:凹凸度(=実接触面積/液滴の投影面積)
この理論式(2)から理解されるように、rが大きいほど、見かけの接触角θ*は180度に近づき、超撥液性を示すようになる。
すなわち、Wenzelモードでは、液相と固相の界面が大きく、その結果、界面に働く物理的な吸着力も大きくなるため、接触角は大きく撥液はしているが、液滴が容易に滴下・転落することはない。
これに対して、Cassieモードでは、界面が小さいため、液滴が滴下する際乗り越えなければならない密着力が低く、容易に滴下・転落し、何度でも繰り返し滴下すると考えられる。
すなわち、粗面100中の凹部に液体が侵入してしまうと、液滴の接触パターンはWenzelモードとなってしまい、この結果、Cassieモードによる超撥液性は損なわれてしまうが、本実施形態では、粗面100を形成する非フッ素系樹脂の分子鎖中にフッ素原子を組み込むことにより、粗面100に対して化学的に撥液性を付与することができ、これによって凹部内への液体の侵入が有効に抑制され、Cassieモードによる超撥液性が安定に維持されることとなる。
さらに、フッ素原子を含む膜を形成するのではなく、表面の非フッ素系樹脂の分子鎖中にフッ素原子を組み込んでいるため、剥離や脱落などによる異物混入の問題も一切生じない。
さらに、成形性や機械的強度の観点から、面積比Φは0.8以下、特に0.5以下の範囲にあることが好ましい。
また、粗面100における深さdは、5〜200μm、特に10〜50μmの範囲にあることが好適である。
また、撥液部材11の表面は、フッ素化され、かつ、先端部11の表面が粗面化されることが、撥液性を向上させることから好ましいが、撥液部材11の表面は、少なくともフッ素化されていれば、撥液性能を発揮することができる。また、前述したように、撥液部材11の表面をフッ素化するためのプラズマ処理は、非常にアタック性の強いもので、プラズマ処理によって撥液部材11の表面には微細な凹凸が形成されて粗面化される。
従って、撥液部材11の表面は、少なくともフッ素化されていればよく、必要に応じて、さらに先端部11の表面を粗面化するものであれば良い。
図1に示す例において、ノズル10の先端側には、ノズル10の開口10aと同径・同軸に開口11aが穿設された撥液部材11が取り付けられており、かかる撥液部材11が、ノズル10の先端部を構成するようにしている。
ノズル10の先端側に撥液部材11を取り付けるには、例えば、撥液部材11をインサート材としてインモールド成形によりノズル10を成形することによって取り付けてもよく、超音波融着、熱融着、接着剤、嵌合などの適宜手段によって取り付けるようにしてもよく、脱着可能としてもよい。
従って、ノズル10の先端側に撥液部材11を取り付けて、かかる撥液部材11によってノズル10の先端部が構成されるようにすることで、ノズル先端部の撥液性を簡便に高めることができる。
すなわち、図4に示すように、先端部の撥液性が高められたノズル10から注出される液滴Duはノズル先端に濡れ拡がることなく、ほぼ球体状となる。そして、液滴Duとノズル先端の密着力より液滴Duの重量が上回ったタイミングで、液滴Duはノズル表面から離脱して転落・滴下されるようになる。液滴Duは濡れ拡がっていないので密着力は小さく、滴下する液滴Duは少量となる。また、ノズル10の開口10aの内径を所定の寸法(例えば0.5mm以下)に設定することで、所望の滴下量(例えば10μL以下)の液滴Duを注出・滴下させることができる。
図5は、滴下量のばらつきを模式的に示す説明図である。ノズル10から滴下される液滴Duは、正常な場合には図4に示すように、ノズル先端の開口の中心で球体状となり、液滴Duが一定重量に至った時点でノズル先端から離脱して落下・滴下されるようになる。
また、液体をノズルから注出させる際に、液体中に気泡が発生・混入する、所謂エアの噛み込みが発生する場合がある。このようなエアの噛み込みがあると、ノズル10から注出される液滴Duは、例えば図5(b)に示すように、液量の異なる複数の液滴Duに分離されてしまい、これら複数の液滴Duが個別に又は一体となって滴下されることで、本来の正常な場合とは異なる滴下量となってしまうことがある。
ここで、撥液性としては、例えば対象となる液体(水など)を水平な搭載面に載せたときに、搭載面と液体表面の接線とのなす角度である「接触角」をθEとした場合に、θE≧90°であれば、その搭載面は対象となる液体について撥液性が「高い」(低エネルギー表面)ということになり、θE<90°であれば、撥液性が「低い」(高エネルギー表面)ということになる。
これによって、突部10bの先端面をノズル中心側に位置する第一の表面S1とし、撥液性が低い高エネルギー表面とすることができる。そして、フッ素化・粗面化された撥液部材11の表面を、第一の表面の外周側に連続する第二の表面S2とし、第一の表面S1よりも表面自由エネルギーの低い面(撥液性が高い低エネルギー面)とすることができる。
2 容器本体
10 ノズル
10a 開口
10b 突部
11 撥液部材
S1 第一の表面
S2 第二の表面
Claims (4)
- 注出口部に装着される液滴下ノズルであって、
前記液滴下ノズルの先端側に、撥液部材が取り付けられており、
前記撥液部材が、前記液滴下ノズルの先端部の少なくとも一部を構成していることを特徴とする液滴下ノズル。 - 前記撥液部材が非フッ素系樹脂からなり、
前記撥液部材の表面を形成する非フッ素系樹脂の分子鎖中に、フッ素原子が組み込まれている請求項1に記載の液滴下ノズル。 - 前記液滴下ノズルの先端部表面が、
ノズル中心側に位置する第一の表面と、この第一の表面の外周側に連続する第二の表面とを備え、
前記第一の表面と前記第二の表面とが、表面自由エネルギーの異なる表面からなる請求項1又は2に記載の液滴下ノズル。 - 前記液滴下ノズルの開口の周縁に沿って突出する突部が形成され、
前記撥液部材が、前記突部の周囲に配されるように取り付けられて、前記液滴下ノズルの先端部の一部を構成し、
前記突部の先端面を前記第一の表面とし、前記撥液部材の表面を前記第二の表面とした請求項3に記載の液滴下ノズル。
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