JP2018068481A - 創傷被覆材 - Google Patents

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Abstract

【課題】治癒後の皮膚に違和感や炎症、外傷性刺青、肥厚性瘢痕を引き起こしにくく、さらに創面に使用時に患者の痛みが殆どなく、創面が過湿潤になるのを防ぐとともに、殺菌あるいは細胞増殖効果のある種々のイオンを創面に徐放可能な創傷被覆材を提供する。【解決手段】多孔フィルムからなる第1層とガラス材からなる第2層とが積層された創傷被覆材であって、前記多孔フィルムは、フィルムに形成される微細孔の孔径が800μm未満であり、前記ガラス材はガラス組成としてB2O3あるいはCaOを含有するガラスからなると共に、前記第1層が創傷部位側となることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、切創、裂傷、挫傷、火傷、褥瘡などの創面に対し、優れた治癒効果を示す創傷被覆材に関する。
従来、創傷の治療としてまず消毒を行い、その後ガーゼで創面を保護する治療が行われている。しかしこのような治療方法は消毒によって表皮の細胞が死んでしまう。また創面が乾燥することによって表皮の細胞が増殖しにくくなることが近年分かってきた。
そこで形成外科医の夏井睦らは、消毒液とガーゼを用いた治療を行う代わりに創面の湿潤環境を保ち、細胞増殖を促進する治療法(moist wound healing)を提唱し、現在ではこの治療方法が広く普及している。(非特許文献1)このような治療方法において、創面の湿潤環境を保つために用いられる材料は創傷被覆材と呼ばれている。
創傷被覆材はドレッシング材とも呼ばれ、創傷治療において創面の湿潤環境を保つために用いられる。現在普及している創傷被覆材にはポリウレタンフィルム、ハイドロコロイド被覆材、ポリウレタンフォーム被覆材、アルギン酸塩被覆材などがあり、これらの製品は創面から流出する血液あるいは滲出液を保持し、湿潤環境を維持することによって表皮細胞の遊走、増殖を促進する効果がある。
ポリウレタンフィルム、ハイドロコロイド被覆材、ポリウレタンフォーム被覆材、アルギン酸塩被覆材などの創傷被覆材は創面から流出する滲出液を保持し、湿潤環境を維持することによって表皮細胞の遊走、増殖を促進する効果があり、患者が持つ本来の自然治癒力を最大限に引き出すことが可能である。しかし高齢者など治癒能力が低い患者の場合、創傷が褥瘡の場合、創面開口部の体積、面積が大きい場合、創面に継続的に力が加わる場合などは、これらの創傷被覆材を使用して治療をしたとしても治癒に相当な期間を要する。治癒時間の増加は、滲出液の多量流出やコラーゲンの異常産出などを引き起こし、表皮の炎症や瘢痕形成などが生じる懸念がある。
さらに糖尿病患者の場合は創傷被覆材を使用したとしても免疫機能の異常、蛋白質の不足状態、酸素の不足などが原因となって創傷治癒遅延を発症し、創面からの細菌が侵入することによって重篤な合併症を引き起こす可能性がある。
そこで近年、ガラス繊維が滲出液や血液に接触した際に、創傷治癒効果と抗菌性が発揮されるガラス成分が創面に溶出する事を特徴とした創傷被覆材が開発されている(特許文献1)。
これからの創傷治療 夏井 睦 著 医学書院 (2003/08) WO2011/085092
特許文献1のような繊維径がナノオーダーのガラス繊維は、以下のようにして作製される。まず溶融ガラスを吐出する吐出ノズルを備えた貴金属製のノズル部材にガラスを供給し、ノズル部材を通電加熱してガラスをリメルトした後、ノズル部材の底面に設けられた一つ以上のガラス吐出ノズルから流下させる。この時、流下した溶融ガラスに対して吐出ノズルの全面、側面、および全周方向から高速エアーを吹き付けてガラスを延伸させ、ガラスを繊維状に成形する。この方法はメルトブロー法と呼ばれる。このような方法でガラス繊維を作製した場合、繊維と共にガラスビーズ(あるいはショット)と呼ばれるガラス体が発生する。ここで、ガラスビーズとは繊維径よりはるかに大きい粒径(例えば最大寸法が800μm以上)を持ち、表面張力によってガラスの一部若しくは全体が略球状となったガラス体であり、真球状、楕円球状等の形態で単独又は連結して存在したり、或いはこれらが繊維に連結した状態で存在する。この様なガラスビーズは、繊維に比べて単位質量あたりの比表面積が小さいことから、体液等に溶解しにくく、それゆえ混入するガラスビーズの割合が多くなると、創傷被覆材から十分な量のCaが溶出し難くなる。また、長期間皮下に残存する傾向があるため、治癒後の皮膚に違和感や炎症、外傷性刺青、肥厚性瘢痕を引き起こす可能性がある。また創面に使用する際の患者の痛みが増加する。
メルトブロー法においてビーズが発生する確率は、紡糸過程における種々のパラメーター、すなわち融液の粘度、加速度、表面張力に左右される。融液の粘度、表面張力は融液の温度によって変化する。また、融液の加速度はエアーの流速や方向によって変化する。このためビーズ発生を抑制する為には、ノズル直下の融液温度やエアー流速や方向を厳密に制御することが求められる。しかしメルトブロー法は、高速エアーが吐出ノズルに衝突する際にノズル部材が機械的に振動したり、吐出ノズル直下において気圧が周期的に変動したりする為、前述したパラメーターを厳密に制御することが難しい。上記のような理由から、メルトブロー法によってガラス繊維を作製する場合、ガラスビーズの発生をゼロに近づける事は大変困難であると言える。
一方メルトブロー法以外のファイバーの作製方法として、エレクトロスピニング法(あるいは電界紡糸法)がある。エレクトロスピニング法は、原料を溶媒に溶かして溶液化した後、この溶液を吐出ノズルに供給し、吐出ノズルとターゲット電極の間に高電圧を印加し、電気的な力で溶液をターゲットに向けて連続的に噴射、延伸させると共に溶媒を蒸発させて繊維化させる方法である。エレクトロスピニング法はメルトブロー法の様な機械振動が発生しにくいので、比較的前述したパラメーターを制御しやすい製法である。このため、前述のパラメーターを適切に設定することによりビーズ混入量が極めて少ないファイバーを効率的に製造する事ができる。原料を誘導加熱などの方法によって溶融して液状化する必要がある場合は、溶融エレクトロスピニング法を用いる。しかし溶融エレクトロスピニング法は吐出ノズルに高電圧が印加される際、吐出ノズルと誘導加熱部のコイル部との間にスパーク発生の可能性があり、装置本体の故障の恐れが考えられる。このため、ガラスの様な溶融に高温を必要とする材料は溶融エレクトロスピニング法によって繊維化することが難しい。他にも金属アルコキシドとアルコールや水、触媒の混合溶液を調整し、加水分解及び重合によって溶液をゾル化し、さらに反応を進ませた粘性溶液を吐出ノズルに供給し、高電圧を印加して静電引力によって繊維化させた後、加熱・乾燥させるいわゆるゾルゲル法を用いたエレクトロスピニング法によってガラス繊維を作製する事も可能であるが、金属アルコキシドは高価であるため、製造コストが高くなるという問題がある。上記のような理由から、エレクトロスピニング法によってガラスを繊維化する事は大変困難であると言える。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、治癒後の皮膚に違和感や炎症、外傷性刺青、肥厚性瘢痕を引き起こしにくく、さらに創面に使用時に患者の痛みが殆どなく、創面が過湿潤になるのを防ぐとともに、殺菌あるいは細胞増殖効果のある種々のイオンを創面に徐放可能な創傷被覆材を提供することを目的とする。
本発明の創傷被覆材は多孔フィルムからなる第1層とガラス材からなる第2層とが積層された創傷被覆材であって、前記多孔フィルムは、フィルムに形成される微細孔の孔径が800μm未満であり、前記ガラス材はガラス組成としてBあるいはCaOを含有するガラスからなると共に、前記第1層が創傷部位側となることを特徴とする。ここで「微細孔」とは、多孔フィルムの一方の面から他方の面に至る微細な貫通孔を意味する。また開口部の形状は円形に限定されるものでは無く、多角形や扇形、それ以外のあらゆる形状を含むものとする。ここで「孔径が800μm未満である」とは、多孔フィルムに形成された微細孔の総数の99%以上が孔径800μm未満であることを意味する。「孔径」とは開孔部の中心を通る最短距離を指す。
上記本発明の創傷被覆材は、ガラス材と創面との間に多孔フィルムが介在する。そして多孔フィルムに形成された微細孔の孔径が小さい為、ガラス材に含まれるガラスビーズは微細孔を通過することが困難になる。それゆえガラス材中に存在するガラスビーズが創傷部位に侵入して創面に接触するという事態を防ぐことが出来る。その一方で創面から流出した血液や滲出液は、多孔フィルムの微細孔を通過してガラス材と接触可能であるため、表皮細胞の栄養素となるCa(カルシウム)あるいは、細菌に対して殺菌効果を有するB(ホウ素)がガラス材から血液や滲出液中に溶出する。溶出したBあるいはCaは多孔フィルムの微細孔から創面に供給され、創傷治癒プロセスの促進あるいは、創面への細菌の臨界的定着や感染を防止するための殺菌性の付与が可能になる。
本発明においては、第2層の上に、さらに水分不透過性の材料からなる第3層が設けられていることが好ましい。
上記構成を採用すれば、創傷被覆材の取り扱いが容易になるとともに、第1層や第2層を汚れ、水分等から保護することができる。
本発明においては、第1層を構成する多孔フィルムは、開孔率が面積比で10〜95%であり、厚みが1〜300μmであることが好ましい。「開孔率」とは、多孔フィルムの表面積に対する、微細孔の開孔部分の総面積の割合を意味する。「厚み」とは多孔フィルムの平均厚みを意味する。
上記構成を採用すれば、創面と第2層間の滲出液のやり取りがスムーズになり、創面が過湿潤になるのを防ぐことが出来ると共に、創傷治療を促進するCaあるいはBを十分に創面に供給することができる。
本発明においては、第1層を構成する多孔フィルムが、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン66、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
本発明においては、第1層の創傷部位側に、さらにアクリル系又はシリコン系の粘着剤が塗布されていることが好ましい。
上記構成を採用すれば、皮膚への創傷被覆材の固定が容易になる。
本発明においては、第2層を構成するガラス材が、酸化物換算の質量%で、SiO 0〜70%、B 5〜80%、CaO 1〜50%を含有するガラスからなることが好ましい。
本発明においては、第2層を構成するガラス材が、酸化物換算の質量%で、さらにMgO 0〜20%、NaO 0〜20%、KO 0〜40%、P 0〜20%を含有するガラスからなることが好ましい。
本発明においては、第2層を構成するガラス材が、300〜500μmの粒度に分級された比重×0.256の重量分のガラスを37℃、60mlの擬似体液中に2日間浸漬し、1回/日の撹拌を行った溶出試験において、擬似体液中のB濃度が0.1〜70mMかつCa濃度が3.0〜14mMとなることが好ましい。
本発明においては、第2層を構成するガラス材が、ガラス繊維を含むことが好ましい。
上記構成を採用すれば、創面から流出した過剰な血液や滲出液がガラス材で吸収される。この機能によって、創面が過湿潤になるのを防ぐことが可能である。
本発明においては、第2層を構成するガラス材が、平均繊維径が100nm〜10μmのガラス繊維からなることが好ましい。
上記構成を採用すれば、ガラス材の比表面積が大きくなることから、創傷治療を促進するCaあるいはBを十分に溶出させることが可能となる。
本発明においては、第3層を構成する水分不透過性の材料が、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
本発明の一実施態様を示す概略断面図である。 第3層を有する本発明の一実施態様を示す概略断面図である。
以下、本発明の創傷被覆材について詳述する。
本発明の創傷被覆材は、多孔フィルムからなる第1層とガラス材からなる第2層から構成される。また第1層を構成する多孔フィルムは、一方の面から他方の面に至る孔径が800μm未満の貫通孔を有している。第2層を構成するガラス材は、ガラス組成としてBあるいはCaOを含有するガラスからなる。さらに本発明の創傷被覆材は、創傷部位側から第1層、第2層の順で積層されている。
(1)第1層
本発明の創傷被覆材において、多孔フィルムからなる第1層は、創面に接する第一の面1aと、第一の面と対向し、第2層との界面となる第二の面1bを有する。また第1層を構成する多孔フィルムは、ビーズが通過し難い微細孔を有する。このため、創傷部位へのビーズの侵入を防ぐことができる。また多孔フィルムは、創傷部位と第2層との間の血液や滲出液の流通を可能とし、ガラス材からBやCaを溶出させるとともに、溶出したBやCaを創面に供給する。これにより、創傷治癒プロセスの促進と殺菌性の付与(創面への細菌の臨界的定着や感染の防止)が可能になる。
第1層を構成する多孔フィルムは、微細孔の孔径が800μm未満である。微細孔の孔径は600μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、特に20μm以下であることが好ましい。微細孔の口径が800μm以上になるとビーズが創面に侵入しやすくなり、治癒後の皮膚に違和感や炎症、外傷性刺青、肥厚性瘢痕を引き起こしやすくなる。さらに創面に使用時に、患者に痛みが生じやすい。また多孔フィルムは、開孔率が面積比で10〜95%であり、厚みが1〜300μmであることが好ましい。開孔率は20〜90%、特に25〜85%であることが好ましい。開孔率が高すぎると、多孔フィルムの強度が極端に低下して、創傷被覆材の患部への貼着時等に破れるおそれがある。一方開孔率が低すぎると多孔フィルムの耐水圧が極端に高くなり、創面に多くの水分が残存して過湿潤になりやすい。また厚みは5〜250μm、7〜200μm、特に20〜190μmであることが好ましい。厚みが薄すぎると、多孔フィルムの強度が極端に低下して延伸時に破れるおそれがある。一方厚みが厚すぎると、創面と第2層間での血液や滲出液の輸送スピードが極端に低下して、創傷治療を促進するCaあるいはBを十分に創面に供給することが困難となる。
なお、微細孔の孔径が10μm以上ある場合は、多孔フィルムの開口率が25〜45%、厚みが20〜40μmであることが好ましい。
多孔フィルムには、親水性高分子や疎水性高分子、生体溶解性高分子などを使用することが出来る。より具体的にはポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン66、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。
多孔フィルムからなる第1層は、血液や滲出液が少ない時でも創面に貼り付きにくいことが好ましいが、関節部位(屈曲部位)に用いる場合は適度な粘着力を有することが好ましい。この場合は第1層の面1aに、アクリル系又はシリコン系の粘着剤が塗布されていることが好ましい。また、このような粘着剤が塗布されている場合、粘着剤上に剥離紙を設けることが望ましい。剥離紙を設けない場合、創傷被覆材の保管時や使用時に、粘着剤上に汚れが付着しやすくなるため、取り扱いが難しくなる。
なお第1層を構成する多孔フィルムには、創傷治癒促進のために少量の薬理学的活性成分を含有することができる。例えば抗生物質(例えばグルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼニトウム、サルファ剤)、消毒剤(例えばポピドン、ヨード)、抗炎症剤(例えばヒドコロルチゾン、トリアムシノロン・アセトニド)、皮膚保護材(例えば酸化亜鉛)などを配合することができる。
また多孔フィルムからなる第1層には、通常の多孔フィルムの他に、延伸法や相分離法、エッチング法などによって製造される、いわゆる精密ろ過膜などの分離膜を使用することも可能である。
(2)第2層
本発明の創傷被覆材においてガラス材からなる第2層は、第1層と接する第一の面2aと、第一の面2aと対向する第二の面2bを有する。ガラス材は、保型性に優れた支持体としての役割を有する。
ガラス材からなる第2層には、ガラス材に加えて、保型性向上の役割を担う繊維を混合することも可能である。保型性向上の役割を担う繊維には、例えばポリウレタン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコン系エラストマーなどを含有する有機繊維を用いることができる。
第2層を構成するガラス材は、ガラス構成成分としてBあるいはCaOを含有し、表皮細胞の栄養素となるCa(カルシウム)あるいは、細菌に対して殺菌効果を有するB(ホウ素)を溶出するガラスからなる。以下にガラス材を構成するガラスの組成について、その含有量を上記のように規定した理由を説明する。尚、各成分の含有範囲の説明において、%表示は質量%を指す。
SiOは、ガラス骨格構造を形成する主要成分である。また、ガラスの粘度を上昇させる成分である。さらにガラスの溶解速度を調整することが出来る成分である。SiOの含有量は0〜70%、0〜50%、15〜45%、25〜45%、30〜43%、特に35〜43%であることが好ましい。SiOの含有量が多くなりすぎるとガラスの血液あるいは滲出液に対する溶解速度が低下して、創傷被覆材として必要な細胞増殖の効果、殺菌効果が得にくくなる。さらに溶融温度(100.2dPa・sの粘度に相当する温度)が高くなって製造コストが増加する。SiOの含有量が少なすぎるとガラスの溶解速度が上昇し、結果的にBの溶出量が増えて過剰な殺菌効果が働いてしまう。
は、SiOと同様にガラス網目構造において、その骨格をなす成分であるが、SiOのようにガラスの溶融温度を高くすることはなく、むしろ溶融温度を低下させる働きがある。また、SiOと同様にガラスの溶解速度を調整することが出来る成分である。さらに、血液あるいは滲出液に溶出することにより、殺菌効果を発揮する成分である。Bの含有量は5〜40%であり、10〜35%、11〜30%、12〜27%、特に12〜20%であることが好ましい。Bの含有量が少なすぎると創面への細菌の臨界的定着、感染を防止するための殺菌性を得ることができない。さらにガラスの溶解速度が低下して、創傷被覆材として必要な細胞増殖の効果や、殺菌効果が得にくくなる。一方Bの含有量が多すぎるとガラスの溶解速度が上昇して創面に対して過剰な殺菌効果が働いてしまう。
本発明の創傷被覆材において、ガラス体の溶解速度は、ガラス組成のSi(シリコン)とB(ボロン)のモル比(B/Si)によって変化する。B/Siの値が大きい程ガラスネットワーク中のBの割合が大きくなり、化学的耐久性が低下してガラスの溶解速度が大きくなる。よってCaの溶出量を増やして細胞増殖を促進するためには、B/Siの値が大きいほど有利である。しかしB/Siの値を大きくするためにはガラスのB含有量を増加させる必要があり、結果的にBの溶出量が増えて過剰な殺菌効果が働いてしまう。 B/Siの値は、0.1〜20.0であり、0.2〜10.0、0.3〜7.0、0.4〜2.0、特に0.4〜1.8が好ましい。B/Siの値が小さすぎると、創傷被覆材として必要な細胞増殖の効果や殺菌効果が得にくくなる。一方、B/Siの値が大きすぎると過剰な殺菌効果が働き、細胞の増殖が抑制されてしまう。
CaOはガラスの粘度を低下させる成分であり、また血液あるいは滲出液に溶出すると、細胞増殖を促進する効果を発揮する成分である。CaOの含有量は1〜50%であり、5〜40%、8〜35%、10〜30%、15〜30%、特に15〜25%である。CaOの含有量が少なすぎると細胞増殖を促進する効果が得にくくなる。CaOの含有量が多すぎると液相温度が高くなって、ガラス溶融時に失透し、均質なガラスを得にくくなる。またガラス粉末の表面に反応生成物(例えばカルサイト、CaCO)が析出しやすくなり、ガラスの溶解速度が低下して創傷被覆材として必要な細胞増殖の効果や殺菌効果が得にくくなる。
MgOは、ガラス原料を溶融し易くする融剤としての働きを有する成分であると同時に溶融温度の低下に非常に有効であり、溶融時にガラスの泡切れを良くし、均質なガラスを作るのに役立つ成分である。MgOの含有量は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0.5〜8%である。MgO含有量が多すぎるとガラスの粘度が低下し、液相粘度が低くなったりすることから、創傷被覆材をメルトブロー法等の方法で作製する場合にはガラスビーズの混入量が増加する。さらに、血液あるいは滲出液へのMg(マグネシウム)の溶出量が増加し、相対的にCaの溶出量が著しく低下する。
アルカリ金属酸化物であるNaO、KOはガラスの粘度を低下させ、溶融性や成形性を高める成分である。NaO及びKOの含有量の合量(NaO+KO)は、好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜30%、さらに好ましくは15〜25%である。NaO+KOが少なすぎると、ガラスの紡糸温度が高くなって繊維化するためのコストが増加する。NaO+KOが多すぎると、血液あるいは滲出液へのNa(ナトリウム)及びK(カリウム)の溶出量が増加し、相対的にCaの溶出量が著しく低下する。また創面におけるpHの上昇を招き、表皮細胞への酸素供給量が低下してしまう。
NaOはガラスの粘度を低下させることによって、ガラスの溶融性や成形性を高める成分である。NaOの含有量は好ましくは0〜20%、1〜15%、特に2〜10%である。NaOの含有量が多すぎると、血液あるいは滲出液へのNaの溶出量が増加し、相対的にCaの溶出量が著しく低下する。さらに創面におけるpHの上昇を招き、表皮細胞への酸素供給量が低下してしまう。
Oはガラスの粘度を低下させることによって、ガラスの溶融性や成形性を高める成分である。KOの含有量は好ましくは0〜40%、より好ましくは5〜30%、さらに好ましくは7〜20%、特に好ましくは7〜15%である。KOの含有量が多すぎると、血液あるいは滲出液へのKの溶出量が増加し、相対的にCaの溶出量が著しく低下する。さらに創面におけるpHの上昇を招き、表皮細胞への酸素供給量が低下してしまう。
はそれ自身でガラス化し、ガラスの網目を構成する成分である。さらに、非晶質リン酸カルシウム層の形成に寄与する成分である。Pの含有量は0〜20%であり、1〜8%、2.5〜8%、2.5〜6%、特に3.2〜5%であることが好ましい。Pの含有量が多すぎると、ガラス表面にリン酸カルシウムからなる反応層が形成しやすくなり、溶出したCaが反応層に取り込まれて創面のCa濃度が低下し、細胞増殖を促進する効果が得にくくなる。
また上記した成分(SiO、B、CaO、MgO、NaO、KO、P)以外の成分も含みうる。ただし上記した成分の含有量が合量で98%以上、特に99%以上となるように組成を調節することが望ましい。その理由は、これらの成分の合量が98%未満の場合、意図しない異種成分の混入によって血液あるいは滲出液へのガラスの溶解速度が低下する。その結果、創傷被覆材としての特性が低下したり、生体適合性が低下したりする等の不都合が生じ易くなる。
上記した成分以外の成分として、例えば殺菌効果の向上のために、Cu、Ag、Zn、Sr、Ba、Fe、F、Mo、Au、Mn、Sn、Ce、Cl、La、W、Nb、Y等を合量で2%まで含有してもよい。
第2層を構成するガラス材は、300〜500μmの粒度に分級された比重×0.256の重量分のガラスを37℃、60mlの擬似体液中に2日間浸漬し、1回/日の撹拌を行った溶出試験において、擬似体液中のB濃度が0.1〜70mMかつCa濃度が3.0 〜20mMとなることが好ましい。この溶出試験による擬似体液中のB濃度が0.1mMより少ない場合、創傷被覆材として必要な殺菌効果が得にくくなる。一方、B濃度が70mMより多い場合、患者自身の細胞の増殖が抑制される可能性がある。また、Ca濃度が3.0mMより少ない場合、創傷被覆材として必要な細胞増殖の効果が得にくくなる。一方、Ca濃度が20mMより多い場合、細胞増殖の効果が持続しにくくなり、頻繁に創傷被覆材を交換する必要が生じる。
第2層を構成するガラス材は、ガラス繊維、特に平均繊維径が100nm〜10μmのガラス繊維を主たる構成材料として含むことが好ましい。またガラス繊維以外にも、ガラスビーズ、ガラス粉末、ガラスフレーク又はこれらの混合体を含み得る。ガラス材が、ガラス繊維を含む場合、過剰な血液や滲出液を吸収し、創面が過湿潤となることを防止することが出来る。
ここで「平均繊維径」は、走査型電子顕微鏡(HITACHI s−3400N typeII)を用いてガラス繊維の二次電子像または反射電子像を撮像し、前記走査型電子顕微鏡の測長機能を用いて50本のガラス繊維の直径を測定し、その平均値を平均繊維径とする方法により求めたものである。
またガラス繊維の形状は、綿状体又は不織布であることが好ましい。ここで「綿状体」とは、多数の繊維が不規則に絡み合っており、且つ繊維間に存在する空隙によって三次元的に圧縮可能な不定形の繊維塊を指す。「不織布」とは、多数の繊維が不規則に絡み合っており、シート状又は布状に成形された綿状体の圧縮体を指す。
さらにガラス繊維の形状は、創面の状態に応じて調整されることが好ましい。例えば、滲出液の多い創面の治療に適用する場合は、ガラス繊維を綿状体の形態で用いることが好ましい。綿状体の形態で用いれば、創傷被覆材の吸水量が増加し、過剰な湿潤環境に伴う皮膚のふやけを防ぐことができる。さらに滲出液が創外に流出するトラブルが起こりにくくなる。一方、滲出液の少ない創面の治療に適用する場合は、不織布の形態で用いることが好ましい。不織布の形態で用いれば、創傷被覆材が吸水し過ぎて創面が乾燥するという事態を防ぐことができる。
(3)第3層
本発明の創傷被覆材は、図2に示すように、必要に応じて第2層の第二の面2b上に、水分不透過性の材料からなる第3層を設けることができる。第3層は、第2層と接着可能な粘着性を有しており、また関節部位(屈曲部位)にも貼り付けできるように適度な柔軟性を有することが好ましい。
第3層を設けることによって、創傷被覆材の取り扱いが容易になるとともに、第1層や第2層を汚れ、水分等から保護することができる。また図2のように、第3層の周縁部31が皮膚と接触可能となるように、第1層や第2層よりも大きな第3層を採用してもよい。このような構成とすれば、第1層や第2層から食み出した第3層の周縁部31が皮膚との接着性に寄与することになり、創傷被覆材を皮膚に強固に接着固定することができる。
第3層には、例えば水分不透過性のフィルムや救急絆創膏などに使用されるサージカルテープなどを使用することが好ましい。特に水分不透過性のフィルム、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するフィルムからなることが好ましい。なお第3層が水分透過性である場合、第2層から溶出したCa(カルシウム)あるいは、B(ホウ素)が、第3層を通して流出してしまい、創傷被覆材の創傷治癒効果や殺菌効果が低下し易くなる。
(4)創傷被覆材の製造方法
次に本発明の創傷被覆材を製造する方法を説明する。なお本発明の創傷被覆材を製造する方法はこれに限られるものではない。
まず、ガラス材からなる第2層を準備する。例えば繊維状のガラス材は、以下のようにして作製することができる。まず調合したガラス原料バッチをガラス溶融炉に投入して溶融、ガラス化し、均質化する。次に溶融ガラスを吐出ノズルを備えた貴金属製のノズル部材に供給し、ノズル部材から流下した溶融ガラスに対し、吐出ノズルの側面、両面または全周から高速エアーを吹き付けるいわゆるメルトブロー法にて溶融ガラスを繊維化し、綿状体に成形する。なお、溶融ガラスを全て繊維化することが望ましいが、通常はその一部がガラスビーズとなって綿状体に混入してしまう。また、不織布に成形する場合は吐出ノズル直下に金属製ネットを有するコンベアを配置し、線維化したガラスをコンベア上に均一な厚みになるように連続的に堆積させ、その後圧延ローラーにて所望の肉厚に調整することにより、不織布に成形することが出来る。このようにして、繊維状のガラス材からなる第2層を得ることができる。
なおガラスの繊維化は、上記以外にも例えばガラス吐出ノズルと該ノズル部材に対向するように配置されたターゲット電極間に高電圧を印加し、吐出ノズルから吐出される帯電した溶融ガラスを電極部材側に引き寄せつつ繊維状に成形する、いわゆるエレクトロスピニング法や、溶融ガラスをフォアハースから流下させてスピナー(回転体)に導入し、このスピナーを高速回転させてスピナー側壁部に設けられたオリフィスから繊維状ガラスを吐出する、いわゆる遠心法を採用することもできる。
また多孔フィルムからなる第1層を準備する。このような多孔フィルムは、例えば溶液成膜法、溶融成膜法などによって高分子フィルムを製造し、この高分子フィルムにパンチング加工やレーザー加工により微細な連続孔を形成させて製造することが出来る。詳述すると、溶液成膜法とはポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液を支持体上に流延し、流延膜を形成し、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとし、湿潤フィルムを乾燥してフィルムとして巻き取る方法である。また溶融成膜法とは溶融状態のポリマーを成形機から押し出してTダイに供給し、シート状に成形されたポリマーを冷却ロールで冷却・固化しながらフィルムとして巻き取る方法である。
なお多孔フィルムは、上記以外にも例えば高分子をフィルム状に押し出し成形した後これを加熱しながら複数の速度の違うローラーで引っ張って伸びを加えるいわゆる延伸法や、高分子を溶媒に溶かした後相分離させて多孔質構造を形成させる相分離法、フィルム状の高分子に重イオンビームやα線などを当てた後エッチングを施すエッチング法などによって製造する事もできる。
続いて第1層と第2層を例えば次の方法によって積層一体化する。まず多孔フィルムをセパレーター上に積載し、多孔フィルムの面1b上に水溶性の接着剤を塗布する。さらに水溶性の接着剤上にガラス材を重畳し、加熱・圧着させることによって多孔フィルムとガラス材を結合させる。
このようにして第2層上に第1層が形成された本発明の創傷被覆材を得ることができる。
なお水分不透過性の材料からなる第3層を設ける場合は、まず水分不透過性フィルム若しくは不織布を台紙とするテープ等、第3層となる材料を用意する。次いで第2層の第二の面2b上に、第3層となる材料を貼り合わせることによって第3層を形成することができる。なお第2層と第3層の貼り合わせは、先に第1層と第2層を貼り合わせた後に行ってもよいし、第1層と第2層の貼り合わせに先だって行っても良い。
また必要に応じて第2層の創傷部位側に粘着剤を塗布してもよい。
以上の工程によって作製された本発明の創傷被覆材は、創傷部位へのガラスビーズの侵入を防ぐことが可能であるため、治癒後の皮膚に違和感や炎症、外傷性刺青、肥厚性瘢痕を引き起こしにくく、さらに創面に使用時に患者の痛みが殆どない。しかも創面が過湿潤になるのを防ぐとともに、殺菌と細胞増殖効果のある種々のイオンを創面に徐放可能である。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
(1)ガラス試料

表1は、本発明で使用するガラス粉末の組成例(試料No.1〜6)を示している。
まず、表1のガラス組成になるように、天然原料、化成原料等の各種ガラス原料を秤量、混合して、ガラスバッチを作製した。次に、このガラスバッチを白金ロジウム合金製坩堝に投入した後、間接加熱電気炉内で1200〜1550℃で4時間加熱して、溶融ガラスを得た。尚、均質な溶融ガラスを得るために、加熱時に、耐熱性撹拌棒を用いて、溶融ガラスを複数回攪拌した。続いて、得られた溶融ガラスを耐火性鋳型内に流し出し、空気中で放冷して塊状のガラス試料を得た。得られた各試料につき、疑似体液中での溶出試験、及びガラスの液相粘度を測定した。結果を表1に示す。
次にガラス吐出ノズルを備えた貴金属製のポットに塊状のガラス試料を投入し、通電加熱によってガラス試料をリメルトした。その後、吐出ノズルから流下したガラスに対し高速エアーを吹き付け、前記溶融ガラスを延伸して繊維化し、金属製ネットを有するコンベア上に均一な厚みになるように連続的に堆積させた。このガラス繊維を水平台上に敷設し、ローラーを用いて厚み1.0〜2.0mmの不織布となるように成形した。
なお溶出試験は次のようにして測定した。まず、塊状のガラス試料を粉砕し、直径300〜500μmの粒度のガラスを比重×0.256の重量分だけ精秤し、続いて容量100mlのポリプロピレン容器(PP容器)に擬似体液60mlを入れ、ガラス試料を浸漬して、37℃、2日間の条件で溶出試験を行った。その際、1回/日の撹拌を行った。撹拌は前記PP容器を手で数回振る事によって行った。溶出試験後に試験溶液を濾過し、ICP−OESを用いて溶出液中のB、Ca濃度を定量した。
擬似体液は以下のようにして作製した。まず100mlの蒸留水を入れたビーカーをスターラーにセットした。次に各試薬(7.995g/LのNaCl、0.353g/LのNaHCO3、0.224g/LのKCl、0.174g/LのK2HPO4、0.305g/LのMgCl2・6H2O、0.368g/LのCaCl2・2H2O、0.071g/LのNa2SO4)を秤量し、それぞれの試薬が完全に溶けてから次の試薬を順に蒸留水に加えて溶かし、溶液を作製した。なお薬包紙についた試薬は、蒸留水をかけて溶液に溶かした。次に10mlの35%塩酸に蒸留水90mlを加えて希釈塩酸を作製し、これを濁りがなくなるまで溶液に少しずつ加えた。次に溶液を2Lのビーカーに移し、825mlの蒸留水を加えてホットスターラーで撹拌した。次にpHメーターを準備し、スポイトで希釈塩酸を徐々に入れて溶かし、pH2にした。続いて6.057(g/L)のトリスヒドロキシメチルアミノメタン(トリスバッファー)を溶液に入れて溶かし、pH8にした後、ホットスターラーで加熱しながら希釈塩酸を徐々に加え、最終的に液温37℃においてpH7.25の溶液にした。この溶液を有栓メスシリンダーに移し、蒸留水を加えて1Lにし、溶液が混合されるようによく振り混ぜた。このようにして得られた溶液をポリビンに移したのち、冷蔵庫内で1日以上保管して、実験に用いる疑似体液を得た。
なお擬似体液中の無機イオン濃度の理論値は、Naが142.0、Kが5.0、Mg2+が1.5、Ca2+が2.5、Clが148.8、HPO4−が1.0である。(単位はすべてmM)。
平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(HITACHI s−3400N typeII)を用いてガラス繊維の二次電子像または反射電子像を撮像し、前記走査型電子顕微鏡の測長機能を用いて50本のガラス繊維の直径を測定し、その平均値を平均繊維径とする方法により求めた。
(2)創傷被覆材の作製
上記のようにして準備したガラス試料を用いて、実施例1、2の創傷被覆材を作製した。
[実施例1]
ポリウレタンフィルム(厚み25μm)にレーザー加工を施し、表裏面を貫通する多数の微細孔が形成された多孔フィルム(孔径76μm、開孔率28%)を作製した。続いて、この多孔フィルムをポリエステルフィルムの上に敷設した。さらに、多孔フィルムの上に接着剤を塗布し、No.1のガラス繊維不織布を重畳して70℃で30分間加熱圧着した後、ポリエステルフィルムを剥離した。このようにして、高分子シートからなる第1層と、No.1のガラス繊維不織布からなる第2層とで構成される創傷被覆材を得た。
[実施例2]
ポリプロピレンフィルム(厚み37μm)にレーザー加工を施し、表裏面を貫通する多数の微細孔が形成された多孔フィルム(孔径18μm、開孔率43%)を作製した。続いて、この多孔フィルムをポリエステルフィルムの上に敷設した。さらに、多孔フィルムの上に接着剤を塗布し、No.2のガラス繊維不織布を重畳して90℃で30分間加熱圧着した。さらに、ガラス繊維不織布上に、粘着面がガラス不織布側となるようにポリプロピレン製粘着フィルムを貼り付けた。このようにして作製した積層体を、ポリエステルフィルムから剥離した。またイソプレンゴム(IR)及びポリイソブチレン(PIB)を混練し、ゴム粘着剤を作製した。これを多孔フィルムの創面側に塗布した。このようにして、多孔フィルムからなる第1層と、No.2のガラス繊維不織布からなる第2層と、ポリプロピレン製粘着フィルムからなる第3層とを有し、第1層の創面側に粘着剤が塗布された創傷被覆材を得た。
1 第1層
2 第2層
3 第3層

Claims (11)

  1. 多孔フィルムからなる第1層とガラス材からなる第2層とが積層された創傷被覆材であって、前記多孔フィルムは、フィルムに形成される微細孔の孔径が800μm未満であり、前記ガラス材は、ガラス組成としてBあるいはCaOを含有するガラスからなると共に、前記第1層が創傷部位側となることを特徴とする創傷被覆材。
  2. 第2層の上に、さらに水分不透過性の材料からなる第3層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の創傷被覆材。
  3. 第1層を構成する多孔フィルムは、開孔率が面積比で10〜95%であり、厚みが1〜300μmであることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の創傷被覆材。
  4. 第1層を構成する多孔フィルムが、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン66、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の創傷被覆材。
  5. 第1層の創傷部位側に、さらにアクリル系又はシリコン系の粘着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の創傷被覆部材。
  6. 第2層を構成するガラス材が、酸化物換算の質量%で、SiO 0〜70%、B 5〜80%、CaO 1〜50%を含有するガラスからなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の創傷被覆材。
  7. 第2層を構成するガラス材が、酸化物換算の質量%で、さらにMgO 0〜20%、NaO 0〜20%、KO 0〜40%、P 0〜20%を含有するガラスからなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の創傷被覆材。
  8. 第2層を構成するガラス材が、300〜500μmの粒度に分級された比重×0.256の重量分のガラスを37℃、60mlの擬似体液中に2日間浸漬し、1回/日の撹拌を行った溶出試験において、擬似体液中のB濃度が0.1〜70mMかつCa濃度が3.0〜14mMとなることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の創傷被覆材。
  9. 第2層を構成するガラス材が、ガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の創傷被覆材。
  10. 第2層を構成するガラス材が、平均繊維径が100nm〜10μmのガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の創傷被覆材。
  11. 第3層を構成する水分不透過性の材料が、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項2〜10の何れかに記載の創傷被覆材。
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