JP2018068066A - 電力変換装置および回転電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の電力変換回路の相互間において、すべり周波数を考慮して通電位相を揃えられる電力変換装置や回転電機を提供する。【解決手段】電力変換装置20は、多相巻線31を二以上に分けて接続した電力変換回路211,212と、電力変換回路211,212の各々に対応して設けられる制御装置221,222とを有する。制御装置221は、回転検出器33で検出される多相誘導機30の回転情報Rに基づいて演算される通電位相情報θ1,θ2と、対応する電力変換回路211に流れる電流Idc1のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路211を制御する。制御装置222は、第1の制御装置221で演算して伝達された通電位相情報θ2と、対応する電力変換回路212に流れる電流Idc2のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路212を制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、4相以上の多相巻線に流れる交流の電流を制御する電力変換装置と、当該電力変換装置を含む回転電機とに関する。
従来では、例えば下記の特許文献1において、射出成形機で使用されるモータを制御するための制御装置の各部を共通化できるようにすることを目的とする射出成形機用モータ制御装置に関する技術が開示されている。この射出成形機用モータ制御装置は、複数の3相インバータから複数の3相巻線へ供給される駆動電流の位相が一致する。具体的には、6相モータを2つの3相インバータとそのインバータ毎にあるサーボコントローラにより通電させる。3相インバータの電流位相を6相モータに合わせるには、各3相インバータの電流位相を合わせるとともに、電流振幅を合わせる必要がある。
特許第3661578号公報
しかし、特許文献1に記載された第1の実施形態によれば、サーボコントローラのうち一つのマスタコントローラが上位コントローラからの駆動指令に基づき電流指令値を決めて、他方のスレーブコントローラに制御信号として駆動指令を出している。マスタコントローラとスレーブコントローラは、各々制御しているインバータの電流を別々にフィードバック制御して電流振幅を合わせるとともに、電流位相についても各々別々にエンコーダ情報をフィードバック制御して電流位相を合わせている。
上記技術において、例えばインバータの出力対象が誘導電動機の場合、エンコーダによりモータの回転角が分かっても、電流位相はモータ回転周波数よりもすべり周波数分ずれている。そのため、インバータごとで電流位相を別々に演算すると、演算誤差などにより電流位相を揃えることができなくなり、各インバータの出力電流の適切な位相差が維持できない。電流位相のずれ量が大きくなると、モータの出力トルクがゼロになる可能性や、逆起電圧と電流位相との関係が悪化して巻線に過電流が流れる可能性がある。
また、特許文献1に記載された第2の実施形態によれば、マスタコントローラが上位コントローラからの駆動指令に基づいて、全てのインバータの電流情報とエンコーダ情報をフィードバックしてフィードバック制御を行う。すなわち、スレーブコントローラの出力すべき電流指令値と電流位相を演算し、スレーブコントローラに指令値を送ることで電流位相を合わせるとともに、電流振幅を合わせている。
上記技術において、マスタコントローラによりスレーブコントローラが制御しているインバータも含めたすべての電流位相と電圧指令値を演算しており、各インバータの電流位相は適切に確保できると思われる。ところが、例えば制御対象となるモータが非常に小さなインピーダンスである場合は、電流フィードバックに必要な制御周期でマスタコントローラとスレーブコントローラ間の電圧指令を通信でやり取りさせようとすると通信速度を非常に高くする必要がある。一般的には、モータインピーダンスの時定数の1/20よりも短い制御周期が必要になる。このことは、制御対象となるモータの高回転速度(例えば数万[rpm]以上)で駆動する場合でも、同様に短い制御周期が必要になる。通信速度によりマスタコントローラからスレーブコントローラへ送る電圧指令が遅れると、スレーブ側のインバータ電流の電流振幅制御が間に合わず、最悪の場合にはインバータが過電流で停止してしまう。
本開示はこのような点に鑑みてなしたものであり、複数の制御装置の相互間において、すべり周波数を考慮して電流位相を揃えられる電力変換装置および回転電機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、多相誘導機(30)に含まれる4相以上の多相巻線(31U,31V,31W,31X,31Y,31Z,…,31P,31Q,31R)に流れる交流の電流を制御する電力変換装置(20)において、前記多相巻線を二以上に分けて接続した複数の電力変換回路(211,212,…,21n)と、前記複数の電力変換回路の各々に対応して設けられる複数の制御装置(221,222,…,22n)とを有し、前記複数の制御装置は、回転検出器(33)で検出される前記多相誘導機の回転情報(R)に基づいて演算される通電位相情報(θ1,θ2,…,θn)と、対応する電力変換回路(211)に流れる電流(Idc1,Idc2,Iu,Iv,Iw,Ix,Iy,Iz,Ip,Iq,Ir)のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路(211)を制御する第1の制御装置(221)と、前記第1の制御装置で演算して伝達された前記通電位相情報に対して位相差(θα)分をずらした通電位相情報(θ2,…,θn)と、対応する電力変換回路に流れる電流のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路(212,…,21n)を制御する一以上の第2の制御装置(222,…,22n)とを有する。
この構成によれば、複数の制御装置は、第1の制御装置に相当する一つの制御装置と、第2の制御装置に相当する他の制御装置とに分けられる。一つの制御装置は、他の制御装置の通電位相(例えば電流位相や電圧位相などの位相)を演算し、演算した通電位相の情報を他の制御装置に送信する。他の制御装置は、受信した通電位相情報に基づいてフィードバック制御を行う。この制御によって、複数の電力変換回路の相互間において、すべり周波数を考慮して通電位相を揃えることができる。
また、一つの制御装置は外部制御装置から送信される駆動指令に基づいて電流振幅目標値を演算し、演算した電流振幅目標値を他の制御装置に送信する。全ての制御装置は、電流振幅目標値に基づいてフィードバック制御を行う。この制御によって、複数の電力変換回路の相互間において、通信速度に影響されることなく、電流振幅制御が行える。
第2の発明は、回転電機(10)において、4相以上の多相巻線を含む多相誘導機(30)と、請求項1から11のいずれか一項に記載の電力変換装置(20)とを有する。この構成によれば、すべり周波数を考慮して通電位相を揃えることができ、通信速度に影響されずに電流振幅制御を行える回転電機を提供することができる。
なお、「多相誘導機」は、多相巻線を備え、シャフトとも呼ぶ回転軸を有すれば任意の機器を適用してよい。例えば、発電機,電動機,電動発電機等が該当する。発電機には電動発電機が発電機として作動する場合を含み、電動機には電動発電機が電動機として作動する場合を含む。「多相巻線」の相数は、多相誘導機で巻ける限りにおいて、4相以上あれば任意の相数を設定してよい。「電力変換回路」は、スイッチングが行えるスイッチング素子を含み、直流と交流との間で電力を変換できれば任意に構成してよい。複数の「制御装置」は、それぞれが所要の機能を実現できれば任意に構成してよい。電力変換装置や制御装置は、例えばElectronic Control Unitの頭文字からなる略称であるECUや、マイコンを含むコンピュータなどを含む。
回転電機の第1構成例を示す模式図である。 第1の制御装置の第1構成例を示す模式図である。 第2の制御装置の第1構成例を示す模式図である。 駆動部とタイミング演算部の構成例を示す模式図である。 第1制御装置処理の第1手続き例を示すフローチャート図である。 第2制御装置処理の第1手続き例を示すフローチャート図である。 各種情報の経時的な変化例を示すタイムチャート図である。 第1の制御装置の第2構成例を示す模式図である。 第2の制御装置の第2構成例を示す模式図である。 第1制御装置処理の第2手続き例を示すフローチャート図である。 第2制御装置処理の第2手続き例を示すフローチャート図である。 回転電機の第2構成例を示す模式図である。 第1の制御装置の第3構成例を示す模式図である。 第2の制御装置の第3構成例を示す模式図である。 第2の制御装置の第4構成例を示す模式図である。 第1制御装置処理の第3手続き例を示すフローチャート図である。 第2制御装置処理の第3手続き例を示すフローチャート図である。 第3制御装置処理の手続き例を示すフローチャート図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。制御装置内における送受信には、データの受け渡しを含む。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は図1〜図7を参照しながら説明する。図1に示す回転電機10は、電力変換装置20,多相誘導機30を有する。電力変換装置20は、直流電圧源Eと多相誘導機30との間に接続され、外部装置40から伝達された駆動指令T*に基づいて直流と交流との間で電力を変換する機能を担う。
直流電圧源Eは、直流電圧を供給できれば任意の電力源を適用してよい。例えば、二次電池でもよく、一次電池でもよく、二次電池と一次電池を組み合わせてもよい。二次電池であれば、例えばリチウムイオン電池,リチウムイオンポリマー電池,鉛蓄電池などが該当する。一次電池は、例えば太陽電池,燃料電池,金属空気電池などが該当する。本形態の直流電圧源Eには、例えばリチウムイオン電池を適用する。直流電圧源Eのマイナス端子は、電力変換装置20において共通電位GNDに接続される。共通電位GNDは必ずしも0[V]とは限らない。接地された共通電位GNDは0[V]になる。
電力変換装置20の具体的な構成については後述する。外部装置40は、電力変換装置20の上位にあたる制御装置であり、例えばECUやコンピュータなどを含む。駆動指令T*は、多相誘導機30の作動に関する任意の情報を適用してよく、例えばトルクや回転数などが該当する。
多相誘導機30は、電力変換装置20から出力される交流を受けてトルクや回転を発生させる機能を担う。さらに、外部からトルクや回転を受けて発電し、電力変換装置20に出力したりする機能を担ってもよい。図1に示す多相誘導機30は、多相巻線31,回転軸32,回転検出器33,電圧検出器34を有する。
多相巻線31は、二つの電力変換回路211,212に分けて接続される。この多相巻線31は、4相以上であれば任意の相数としてよい。本形態の多相巻線31は、3の倍数である6相とする。具体的には、U相巻線31U,V相巻線31V,W相巻線31W,X相巻線31X,Y相巻線31Y,Z相巻線31Zを適用する。これらの巻線は、それぞれの一端側が組ごとの中点に接続され、他端側が後述する電力変換回路211,212に接続される。U相巻線31U,V相巻線31V,W相巻線31Wが一組の3相巻線である。X相巻線31X,Y相巻線31Y,Z相巻線31Zがもう一組の3相巻線である。2組の3相巻線は、位相差θαだけずらして巻かれている。位相差θαは、多相誘導機30の仕様や定格等に応じて適切な電気角(例えば理想的な位相差としての30度や60度等)を設定してよい。本形態の位相差θαは30度とする。巻き方によっては正確に30度とならない場合があるので、30度を含む所定の許容範囲でもよい。不等式で表すと、30−β≦θα≦30+γ(ただし、β>0,γ>0とする許容値)を満たせばよい。
回転検出器33は、回転軸32の回転を検出し、回転情報Rとして電力変換回路211に伝達する。電圧検出器34は、多相巻線31に含まれる巻線に生じる電圧を検出して電力変換回路211に伝達する。本形態の電圧検出器34は、U相巻線31U,V相巻線31V,W相巻線31Wにおける一端側と他端側との間にそれぞれ生じる電圧Vu,Vv,Vwを電力変換回路211に伝達する。
図1に示す電力変換装置20は、直流電圧源Eの直流を交流に変換して多相誘導機30に出力する機能と、多相誘導機30で発電された交流を直流に変換して直流電圧源Eに充電する機能とを兼ね備える。
電力変換装置20は、例えば電力変換回路211,212や、制御装置221,222、電流検出器231,232を有する。電力変換回路と制御装置は1対1で対応するように設けられる。本形態では、電力変換回路211と制御装置221が対応し、電力変換回路212と制御装置222が対応する。従って、本形態では電力変換回路と制御装置の数が等しい。電力変換回路211,212の直流電圧側は、各々同一の直流電圧源Eに並列接続される。電力変換回路211,212および制御装置221,222は、それぞれ別体の装置としてもよく、一体化された装置としてもよい。
電力変換回路211は、上アーム側に配置されるスイッチング素子SU_H,SV_H,SW_Hや、下アーム側に配置されるスイッチング素子SU_L,SV_L,SW_Lを有する。これらのスイッチング素子は、制御装置221から伝達された変調信号D1に従って個別にオン/オフが行われる。変調信号D1は、パルス変調信号の一つであるPWM信号を適用する。電力変換回路211の交流電圧側(図1では右側)は、多相巻線31に含まれるU相巻線31U,V相巻線31V,W相巻線31Wに接続される。
電力変換回路212は、上アーム側に配置されるスイッチング素子SX_H,SY_H,SZ_Hや、下アーム側に配置されるスイッチング素子SX_L,SY_L,SZ_Lを有する。これらのスイッチング素子は、制御装置222から伝達された変調信号D2に従って個別にオン/オフが行われる。変調信号D2は、変調信号D1と同様にPWM信号を適用する。電力変換回路212の交流電圧側は、多相巻線31に含まれるX相巻線31X,Y相巻線31Y,Z相巻線31Zに接続される。
電力変換回路211,212に含まれるスイッチング素子は、制御端子(例えばゲート端子)を通じてオン/オフの駆動を制御可能であれば任意であり、例えばFETやIGBT等が該当する。各スイッチング素子には、還流ダイオードが並列接続される。還流ダイオードは、スイッチング素子の外部に接続してもよく、スイッチング素子に内蔵して接続してもよく、構造上でMOSFETに存在する寄生ダイオードでもよい。
電流検出器231は、電力変換回路211に流れる電流Idc1を検出して、制御装置221に伝達する。電流検出器232は、電力変換回路212に流れる電流Idc2を検出して、制御装置222に伝達する。
本形態の制御装置221は、「第1の制御装置」および「一の制御装置」に相当する。制御装置221の構成例について、図2を参照しながら説明する。図2に示す制御装置221は、信号受信部21a,振幅制御部21b,位相制御部21c,信号送信部21d,位相演算部21e,目標値演算部21fを有する。
信号受信部21aは、電流Idc1、回転情報R、電圧Vu,Vv,Vwなどの信号を入力し、各信号に対応する振幅制御部21b,位相演算部21e,目標値演算部21fなどに伝達する。この信号受信部21aは、制御装置221に入力される信号(例えばアナログ信号,デジタル信号,パルス信号など)に応じて、制御装置221の内部処理に適したデータや信号に変換する機能を含む。
振幅制御部21bは、電流検出器231で検出された電流Idc1の振幅が、目標値演算部21fから伝達された電流振幅目標値Idc1*になるように、電力変換回路211に出力する変調信号D1を制御する。
位相制御部21cは、位相演算部21eから伝達された通電位相情報θ1に従って電力変換回路211に出力する変調信号D1を制御する。通電位相情報θ1は、制御装置221が制御するU相,V相,W相にそれぞれ対応し、例えば電気角でU相が0度,V相が120度,W相が240度である。通電位相情報θ1が一定値の場合は、後述する演算を行う必要がなく、予め記録媒体に記録しておけばよい。本明細書では、予め記録媒体に記録してある場合も「演算」に含めるものとする。
記録媒体は、電流振幅目標値Idc1*や位相差θαなどの情報を記録可能な任意の媒体を用いてよい。例えば、フラッシュメモリ、SSDを含むハードディスク、光磁気ディスクを含む光ディスク、RAMなどのうちで一以上が該当する。記録媒体は、制御装置221,222にそれぞれ備えてもよく、制御装置221,222からそれぞれアクセス可能となるように電力変換装置20に備えてもよい。記録媒体への記録は、後述するステップS14,S23,S24の記録も同様である。
位相演算部21eは、回転検出器33で検出された回転情報Rと、電圧検出器34で検出された電圧Vu,Vv,Vwとに基づいて、電力変換回路211,212でそれぞれ制御すべき通電位相情報θ1,θ2を演算する。通電位相情報θ1は上述した通りである。通電位相情報θ2の演算については後述する。位相演算部21eは、演算した通電位相情報θ1を位相制御部21cに伝達し、同じく演算した通電位相情報θ2を制御装置222に伝達する。なお、通電位相情報θ2の伝達は信号送信部21dを介して行う。
通電位相情報θ2は、制御装置221から制御装置222に送受信される際に回路素子や通信回線が介在するため、通信を含めた遅延(いわゆるタイムラグ)が少なからず生じる。この遅延は、多相誘導機30の回転数Nとは無関係に生じる。回転数Nは、回転情報Rに基づいて求められる。多相誘導機30の回転数Nが低く、遅延時間に相当する電気角と位相差θαとの誤差を無視できれば、仮に遅延が生じたとしても制御装置222では電流位相のフィードバック制御が問題なく行えて応答性や安定性を確保できる。これに対して、多相誘導機30の回転数Nが高く、遅延時間に相当する電気角と位相差θαとの誤差が無視できずに応答性や安定性の確保が難しい回転域がある。例えば、位相差θαに対して10%以上の誤差が生じる回転域が該当する。ここで、誤差が無視できない最低の回転数Nを閾値回転数Nthとし、遅延時間に相当する電気角の情報を「遅延情報Cd」とする。遅延情報Cdは、回転数Nと関連づけてマップやテーブル等で記録媒体に記録される。本形態の遅延情報Cdは設計で定められる電気角とするが、実験を行って測定される電気角としてもよい。
本形態の位相演算部21eは、多相誘導機30の回転数Nが閾値回転数Nth以上(すなわちN≧Nth)になる高回転域のとき、位相差θαとともに遅延情報Cdを考慮し、θ2=θ1+θα−Cdを演算して求める。この場合の通電位相情報θ2は、通電位相情報θ1よりも電気角で(θα−Cd)だけ遅れ、遅延分が相殺される。一方、回転数Nが閾値回転数Nth未満(すなわちN<Nth)の低回転域のときは、Cd=0とし、位相演算部21eはθ2=θ1+θαを演算して求める。なお、処理を簡便にするため、多相誘導機30の全回転域について、θ2=θ1+θα−Cdを演算して求めてもよい。
目標値演算部21fは、外部装置40から伝達された駆動指令T*に基づいて、電力変換回路211,212のそれぞれで制御すべき電流振幅目標値Idc1*,Idc2*を演算する。この目標値演算部21fは、演算した電流振幅目標値Idc1*を振幅制御部21bに伝達し、同じく演算した電流振幅目標値Idc2*を制御装置222に伝達する。
信号送信部21dは、通電位相情報θ2や電流振幅目標値Idc2*などを信号に変換して出力し、制御装置222に伝達する。出力する信号の形式は任意に設定してよく、例えばアナログ信号,デジタル信号,パルス信号等が該当する。本形態の信号送信部21dは、通電位相情報θ2をパルス信号で出力し、電流振幅目標値Idc2*をデジタル信号で出力する。通電位相情報θ2は、制御装置222が制御するX相,Y相,Z相にそれぞれ対応するパルス信号θa,θb,θcを含む。本形態のパルス信号θa,θb,θcは、それぞれ電気角が120度となる矩形波であり、「120度矩形波通電」と呼ばれる。
本形態の制御装置222は、「第2の制御装置」および「他の制御装置」に相当する。制御装置222の構成例について、図3を参照しながら説明する。図3に示す制御装置222は、信号受信部22a,振幅制御部22b,位相制御部22cを有する。
信号受信部22aは、電流Idc2,電流振幅目標値Idc2*,通電位相情報θ2などの信号を入力し、各信号に対応する振幅制御部22b,位相制御部22cなどに伝達する。この信号受信部22aは、通電位相情報θ2を除いて、信号受信部21aと同様に制御装置221の内部処理に適したデータに変換する機能を含む。
振幅制御部22bは、電流検出器232で検出された電流Idc2の振幅が、信号受信部22aを介して伝達される電流振幅目標値Idc2*になるように、電力変換回路212に出力する変調信号D2を制御する。
位相制御部22cは、信号受信部22aを介して伝達される通電位相情報θ2に従って電力変換回路212に出力する変調信号D2を制御する。上述したように本形態の通電位相情報θ2はパルス信号θa,θb,θcであるので、当該パルス信号θa,θb,θcに従って変調信号D2を制御する。すなわち、パルス信号θaに基づいてX相巻線31Xに通電する制御を行い、パルス信号θbに基づいてY相巻線31Yに通電する制御を行い、パルス信号θcに基づいてZ相巻線31Zに通電する制御を行う。
振幅制御部21b,22bや位相制御部21c,22cには、電力変換回路211,212に含まれるスイッチング素子を作動させるため、例えば図4に一点鎖線で示す駆動部24とタイミング演算部25を含む。
タイミング演算部25は、制御装置221,222にそれぞれ対応する電力変換回路211,212に含まれるスイッチング素子をオン/オフする駆動タイミングを演算して出力する。駆動部24は、タイミング演算部25から入力される駆動タイミングに基づいて、対応するスイッチング素子(具体的には制御端子に相当するゲート端子)に駆動信号を伝達してオン/オフの駆動を行わせる。
駆動部24とタイミング演算部25は、振幅制御部21b,22bや位相制御部21c,22cにそれぞれ備える構成としてもよく、図4に示すように振幅制御部21b,22bや位相制御部21c,22cの全体を複合半導体素子CSEで構成としてもよい。複合半導体素子CSEは「複合半導体装置」とも呼び、汎用の複合半導体素子を用いることができ、電力変換回路211,212の体格を小さく抑制することができる。
次に、制御装置221で繰り返し実行される第1制御装置処理の手続き例について、図5を参照しながら説明する。なお、図5に示すステップS10,S13,S16は信号受信部21aに相当する。ステップS11,S12は目標値演算部21fに相当する。ステップS14,S15は位相演算部21eに相当する。ステップS17は振幅制御部21bおよび位相制御部21cに相当する。図5に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置221に備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
ステップS10では、外部装置40から伝達された駆動指令T*を受信したか否かを判別する。もし駆動指令T*を受信すればYESになり、ステップS11に進む。これに対して、駆動指令T*を受信しなければNOになり、ステップS13に進む。
ステップS11では、ステップS10で受信した駆動指令T*に基づいて、電力変換回路211,212でそれぞれ制御すべき電流振幅目標値Idc1*,Idc2*を演算する。電流振幅目標値Idc1*,Idc2*のうちで、少なくとも電流振幅目標値Idc1*は記録媒体に記録する。
ステップS12では、ステップS11で演算した電流振幅目標値Idc2*を、信号送信部21dを介して制御装置222に送信して伝達する。
ステップS13では、多相誘導機30で生じるすべり周波数を求めるために必要な情報、すなわち回転情報Rや電圧Vu,Vv,Vwなどを取得する。回転情報Rは、回転検出器33で検出され、信号受信部21aを介して取得する。電圧Vu,Vv,Vwは、それぞれ電圧検出器34で検出され、信号受信部21aを介して取得する。
ステップS14では、ステップS13で取得した回転情報Rと電圧Vu,Vv,Vwとに基づいてすべり周波数を求めるとともに、当該すべり周波数に基づいて電力変換回路211,212のそれぞれで制御すべき通電位相情報θ1,θ2を演算する。通電位相情報θ1,θ2のうちで、少なくとも通電位相情報θ1は記録媒体に記録する。本形態のすべり周波数は回転情報Rと電圧Vuとから求めるが、回転情報Rと電圧Vvとから求めてもよく、回転情報Rと電圧Vwとから求めてもよく、回転情報Rと電圧Vu,Vv,Vw以外の情報とから求めてもよい。
ステップS15では、ステップS14で演算した通電位相情報θ2を、信号送信部21dを介して制御装置222に送信して伝達する。
ステップS16では、電流検出器231から信号受信部21aを介して伝達される電流Idc1をフィードバック情報として取得する。
ステップS17では、ステップS16で取得した電流Idc1がステップS11で演算した電流振幅目標値Idc1*になり、かつ、ステップS14で演算した通電位相情報θ1になるように変調信号D1を電力変換回路211に伝達して作動を制御する。
次に、制御装置222で繰り返し実行される第2制御装置処理の手続き例について、図6を参照しながら説明する。なお、図6に示すステップS20,S22,S24は信号受信部22aに相当する。ステップS25は振幅制御部22bおよび位相制御部22cに相当する。図6に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置222に備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
ステップS20では、制御装置221から信号受信部22aを介して伝達される電流振幅目標値Idc2*を受信したか否かを判別する。もし電流振幅目標値Idc2*を受信すればYESになり、ステップS21に進む。これに対して、電流振幅目標値Idc2*を受信しなければNOになり、ステップS22に進む。
ステップS21では、信号受信部22aで受信した電流振幅目標値Idc2*を取得し、後述するステップS25で用いるために記録媒体に記録する。
ステップS22では、制御装置221から信号受信部22aを介して伝達される通電位相情報θ2を受信したか否かを判別する。もし通電位相情報θ2を受信すればYESになり、ステップS23に進む。これに対して、通電位相情報θ2を受信しなければNOになり、ステップS24に進む。
ステップS23では、信号受信部22aで受信した通電位相情報θ2を取得する。
ステップS24では、制御装置222に対応する電力変換回路212に流れる電流Idc2をフィードバック情報として記録媒体に記録する。電流Idc2は、図1に示す電流検出器232で検出され、図3に示す信号受信部22aを介して受信する。
ステップS25では、ステップS24で取得した電流Idc2がステップS21で記録した電流振幅目標値Idc2*になり、かつ、ステップS23で取得した通電位相情報θ2になるように変調信号D2を電力変換回路212に伝達して作動を制御する。
上述した第1制御装置処理および第2制御装置処理が実行されると、例えば図7に示すような経時的な変化例になる。図7には上から順番に、回転情報R、電圧Vu,Vv,Vw、変調信号D1、電流Iu,Iv,Iw、電流Idc1、電流振幅目標値Idc1*、変調信号D2、電流Ix,Iy,Iz、電流Idc2、電流振幅目標値Idc2*、電圧Vx,Vy,Vzの変化例をそれぞれ示す。電流Idc1,Idc2は一点鎖線で示し、電流振幅目標値Idc1*,Idc2*は実線で示す。本変化例では、U相巻線31Uの両端に生じる電圧Vuを基準に制御する例である。図示を省略するが、V相巻線31Vの両端に生じる電圧Vvを基準に制御してもよく、W相巻線31Wの両端に生じる電圧Vwを基準に制御してもよい。
制御装置221,222はそれぞれ時刻t1から変調信号D1,D2を電力変換回路211,212に伝達して、直流電圧源Eから供給される電力を変換して多相誘導機30に出力する。図7に示す変調信号D1には、上アーム側のスイッチング素子SU_H,SV_H,SW_Hに伝達されるPWM信号と、下アーム側のスイッチング素子SU_L,SV_L,SW_Lに伝達される矩形波信号とがある。変調信号D2には、上アーム側のスイッチング素子SX_H,SY_H,SZ_Hに伝達されるPWM信号と、下アーム側のスイッチング素子SX_L,SY_L,SZ_Lに伝達される矩形波信号とがある。
多相誘導機30に含まれる多相巻線31の各巻線には、それぞれ電圧検出器34で検出される交流の電圧Vu,Vv,Vw,Vx,Vy,Vzが印加され、電流Iu,Iv,Iw,Ix,Iy,Izが流れる。このような電力供給によって、図示を省略する回転子とともに回転軸32が回転する。当該回転軸32が回転するに伴って、回転検出器33によって検出される回転情報Rが得られる。図7に示す回転情報Rによれば、時刻t1から時刻t10までの回転周期RP[sec]が回転子の機械的な1回転に相当する。回転周期RPの逆数は、多相誘導機30の回転周波数[Hz]でもある。よって、回転数Nは回転情報Rに基づいて求められ、例えばN=1/(RP×60)[rpm]である。
上述した回転情報Rに対して、時刻t1から変化し始めた電圧Vuは時刻t8にゼロクロスする。そのため、時刻t1から時刻t8までの通電周期EPが制御装置221による制御上の1回転に相当する。図示するように、通電周期EPは回転周期RPよりも短いため、多相誘導機30にはすべりが生じる。回転周期RPは通電周期EPとすべり期間SPとの和で表され、数式で表すとRP=EP+SPが成り立つ。すべり期間SPの逆数は、「すべり周波数」に相当する。すべり周波数をfとすると、f=1/SPである。
図2に示す位相演算部21eは、回転情報Rと電圧Vuとに基づいて、すべり期間SPに相当する通電位相情報θ1,θ2を演算する。位相演算部21eは、演算した通電位相情報θ2に基づくパルス信号θa,θb,θcを制御装置222に伝達する。図7に示すパルス信号θaは、スイッチング素子SU_HにPWM信号を伝達し始める時刻t2から、(θα−Cd)だけ遅れた時刻t3から時刻t6までがオンになる120度矩形波通電である。パルス信号θbは、スイッチング素子SV_HにPWM信号を伝達し始める時刻t4から、(θα−Cd)だけ遅れた時刻t5から時刻t7までがオンになる120度矩形波通電である。パルス信号θcは、スイッチング素子SW_HにPWM信号を伝達し始める時刻t6から、(θα−Cd)だけ遅れた時刻t7から時刻t11までがオンになる120度矩形波通電である。パルス信号θa,θb,θcは、次回にスイッチング素子SU_HにPWM信号を伝達し始める時刻t9以降も同様に通電が行われる。
図7に示す制御例によれば、例えば時刻t2から時刻t4までの間には、スイッチング素子SU_HにPWM信号が伝達され、スイッチング素子SY_Lにオンの矩形波信号が伝達される。時刻t3から時刻t5までの間には、スイッチング素子SX_HにPWM信号が伝達され、スイッチング素子SW_Lにオンの矩形波信号が伝達される。時刻t4から時刻t6までの間には、スイッチング素子SV_HにPWM信号が伝達され、スイッチング素子SZ_Lにオンの矩形波信号が伝達される。
時刻5から時刻t7までの間には、スイッチング素子SY_HにPWM信号が伝達され、スイッチング素子SU_Lにオンの矩形波信号が伝達される。時刻t6から時刻t9までの間には、スイッチング素子SW_HにPWM信号が伝達され、スイッチング素子SX_Lにオンの矩形波信号が伝達される。時刻t7から時刻t11までの間には、スイッチング素子SZ_HにPWM信号が伝達され、スイッチング素子SV_Lにオンの矩形波信号が伝達される。時刻t9で一巡するので、時刻t9以降も同様に繰り返し行われる。
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各作用効果を得ることができる。
電力変換装置20は、多相巻線31に含まれる6相の巻線を二つに分けて接続した電力変換回路211,212と、電力変換回路211,212の各々に対応して設けられる制御装置221,222とを有する。「第1の制御装置」に相当する制御装置221は、回転検出器33で検出される多相誘導機30の回転情報Rに基づいて演算される通電位相情報θ1,θ2と、対応する電力変換回路211に流れる電流Idc1のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路211を制御する。「第2の制御装置」に相当する制御装置222は、制御装置221で位相差θα分をずらす演算がされて伝達された通電位相情報θ2と、対応する電力変換回路212に流れる電流Idc2のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路212を制御する。この構成によれば、多相誘導機30の多相巻線31を電力変換回路211,212に分けて接続し、それぞれ電流Idc1,Idc2を流す。多相巻線31に通電する電流Idc1,Idc2の位相関係を制御装置221,222間で適切に保つことができる。電力変換回路211,212に対応する制御装置221,222でそれぞれフィードバック制御を行うので、電力変換回路211,212を流れる電流Idc1,Idc2が電流振幅目標値Idc1*,Idc2*になるように高速に制御することができる。
制御装置221は、多相誘導機30の回転数Nが閾値回転数Nth以上であるとき、さらに遅延情報Cdに基づいて、制御装置222に伝達する通電位相情報θ2をθ2=θ1+θα−Cdで演算した。この構成によれば、通信を含めた遅延が相殺されるので、制御装置222は理想的な位相差θα(あるいは位相差θαに近い状態)で電力変換回路212に変調信号D2を出力できる。よって、多相巻線31に通電する電流Idc1,Idc2の位相関係を制御装置221,222間でより適切に保つことができる。
多相巻線31の相数は、3の倍数の6相である。電力変換回路211,212は直流電圧と交流電圧を変換する。電力変換回路211,212の直流電圧側はそれぞれ同一の直流電圧源Eに接続され、電力変換回路211,212の交流電圧側は多相誘導機30の多相巻線31を二つに分けて接続する。この構成によれば、一般的に用いられる3相の電力変換回路211,212を組み合わせて多相誘導機30を駆動することができる。
「第1の制御装置」に相当する制御装置221は、制御装置221,222の全てについて各々で制御すべき通電位相情報θ1,θ2を演算する位相演算部21eと、演算された通電位相情報θ2を信号により制御装置222に送信する信号送信部21dとを有する。「第2の制御装置」に相当する制御装置222は、制御装置221から送信された通電位相情報θ2を受信する信号受信部22aと、受信された通電位相情報θ2に基づいて対応する電力変換回路212の通電位相を制御する位相制御部22cとを有する。この構成によれば、通電位相情報θ1,θ2を制御装置221が演算することで、電流Idc1,Idc2の通電位相を適切に制御できる。
制御装置221,222は、「一つの制御装置」に相当する制御装置221と、「他の制御装置」に相当する制御装置222とに分けられる。制御装置221は、外部装置40から送信される駆動指令T*に基づいて電流振幅目標値Idc1*,Idc2*を演算する目標値演算部21fと、演算された電流振幅目標値Idc2*を信号により制御装置222に送信する信号送信部21dとを有する。制御装置222は、一つの制御装置221から送信された電流振幅目標値Idc2*を受信する信号受信部22aと、受信された電流振幅目標値Idc2*に基づいて対応する電力変換回路212に流れる電流Idc2の振幅を制御する振幅制御部22bとを有する。この構成によれば、制御装置221と制御装置222との間で通信を行うことなく、制御装置221,222でそれぞれ電力変換回路211,212に流れる電流Idc1,Idc2の振幅を揃えることができる。すなわち、従来技術のような通信に伴う無駄時間が無くなり、電流振幅の応答性と安定性を確保できる。急激な電流変化が生じた場合でも、電流振幅目標値Idc1*,Idc2*になるように確実に電流振幅のフィードバック制御が行える。
電力変換回路211,212は、スイッチング素子SU_H,SV_H,SW_H,SU_L,SV_L,SW_L,SX_H,SY_H,SZ_H,SX_L,SY_L,SZ_L(以下では単に「スイッチング素子群」と呼ぶ。)を含む。制御装置221,222は、それぞれスイッチング素子群の駆動タイミングを演算して出力するタイミング演算部25と、タイミング演算部25から入力される駆動タイミングに基づいてスイッチング素子群に含まれる各スイッチング素子を個別に駆動させる駆動部24とが一体化された複合半導体素子CSEである。この構成によれば、複合半導体素子CSEによって、容易に電力変換回路211,212に含まれる各スイッチング素子を個別に制御できる。
制御装置221から制御装置222に信号で伝達される通電位相情報θ2には、パルス信号θa,θb,θcを含む。パルス信号θa,θb,θcは、電力変換回路211,212に含まれるスイッチング素子群の駆動タイミングに同期したパルス状の波形信号である。この構成によれば、通電位相情報θ2の信号は、ホール信号や回転位置信号などのような擬似的信号であるので、通電位相を簡単に制御できる。
電流検出器231,232は、それぞれ電力変換回路211,212に流れる電流Idc1,Idc2を検出する。振幅制御部21bは、電流検出器231によって検出した電流Idc1の振幅が電流振幅目標値Idc1*となるように電力変換回路211に出力する変調信号D1を制御する。振幅制御部22bは、電流検出器232によって検出した電流Idc2の振幅が電流振幅目標値Idc2*となるように電力変換回路212に出力する変調信号D2を制御する。この構成によれば、制御装置221,222は、対応する電力変換回路211,212に流れる電流Idc1,Idc2の振幅が電流振幅目標値Idc1*,Idc2*となるように制御できる。
電力変換回路211,212および制御装置221,222は、全体で一体化された装置である。この構成によれば、一つの基板や、マイコンを含む半導体素子で実現される。そのため、電力変換装置20の体格を小さく抑制することができる。
回転電機10は、6相の多相巻線31を含む多相誘導機30と、電力変換装置20とを有する。この構成によれば、すべり周波数を考慮して通電位相を揃えることができ、通信速度に影響されずに電流振幅制御を行える回転電機10を提供することができる。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は図8〜図11を参照しながら説明する。なお図示および説明を簡単にするため、特に明示しない限り、実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。よって、主に実施の形態1と相違する点を説明する。
図8に示す制御装置221は、図2に示す制御装置221に代わる構成例であって、実施の形態1と同様に「第1の制御装置」および「一の制御装置」に相当する。図2に示す制御装置221は位相演算部21eを含むのに対して、本形態の制御装置221は位相演算部21gを含む点が相違する。
位相演算部21gは「第1の位相演算部」に相当する。位相演算部21gは、回転検出器33で検出された回転情報Rと、電圧検出器34で検出された電圧Vu,Vv,Vwとに基づいて、対応する電力変換回路211で制御すべき通電位相情報θ1を演算する。位相演算部21gは、演算した通電位相情報θ1を制御装置222に伝達する。
図9に示す制御装置222は、図3に示す制御装置222に代わる構成例であって、実施の形態1と同様に「第2の制御装置」および「他の制御装置」に相当する。本形態の制御装置222は、図3に示す制御装置222の構成例に加えて、位相演算部22eを含む点が相違する。位相演算部22eは「第2の位相演算部」に相当する。
位相演算部22eは、制御装置221から信号受信部22aを介して伝達される通電位相情報θ1と、回転検出器33から伝達される回転情報Rとに基づいて、電力変換回路212で制御すべき通電位相情報θ2を演算する。言い換えると、図2に示す位相演算部21eに代わって、処理負担低減のために位相演算部22eが通電位相情報θ2の演算を行う。なお、回転情報Rは回転数Nを求めるために必要となり、全回転域で同一式(すなわちθ2=θ1+θα−Cd)の演算を行う場合には不要である。
もし通電位相情報θ1が図7に示すパルス信号θa,θb,θcのような矩形波信号であれば、位相演算部22eは巻線の位相差θαだけ信号を遅らせるとともに、遅延情報Cdに対応して信号を早めて通電位相情報θ2を生成する処理を行う。これに対して通電位相情報θ1がデータ情報であれば、位相演算部22eは巻線の位相差θαを加え、遅延情報Cdの電気角を減じて通電位相情報θ2の信号を生成する処理を行う。言い換えると、位相演算部22eはθ2=θ1+θα−Cdを演算して通電位相情報θ2を求める。回転数Nが閾値回転数Nth以上になる高回転域に限ってもよく、全回転域でもよい。回転数Nが閾値回転数Nth未満の低回転域のときは、θ2=θ1+θαを演算してもよい。
次に、制御装置221で繰り返し実行される第1制御装置処理の手続き例について、図10を参照しながら説明する。図10に示す第1制御装置処理は、図5に示す第1制御装置処理に代わる処理である。なお、図10に示すステップS30,S31は位相演算部21eに相当する。図10に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置221に備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
ステップS30は、ステップS13で取得した回転情報Rと電圧Vu,Vv,Vwとに基づいてすべり周波数を求めるとともに、当該すべり周波数に基づいて電力変換回路211で制御すべき通電位相情報θ1を演算する。当該通電位相情報θ1は記録媒体に記録する。すべり周波数の演算は、図5に示すステップS14と同様に行う。
ステップS31では、ステップS30で演算した通電位相情報θ1を、信号送信部21dを介して制御装置222に送信して伝達する。
次に、制御装置222で繰り返し実行される第2制御装置処理の手続き例について、図11を参照しながら説明する。図11に示す第2制御装置処理は、図6に示す第2制御装置処理に代わる処理である。なお、図11に示すステップS20,S40,S24は信号受信部22aに相当する。図11に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置222に備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
ステップS40では、制御装置221から信号受信部22aを介して伝達される通電位相情報θ1を受信したか否かを判別する。もし通電位相情報θ1を受信すればYESになり、ステップS41に進む。これに対して、通電位相情報θ1を受信しなければNOになり、ステップS24に進む。
ステップS41では、ステップS40で受信して取得した通電位相情報θ1に対して、さらに位相差θαおよび遅延情報Cdに基づいて、対応する電力変換回路212で制御すべき通電位相情報θ2を演算する。すなわち、θ2=θ1+θα−Cdを演算する。回転数Nが閾値回転数Nth以上になる高回転域に限ってもよく、全回転域でもよい。回転数Nが閾値回転数Nth未満の低回転域のとき、θ2=θ1+θαを演算してもよい。
上述した第1制御装置処理および第2制御装置処理が実行されると、例えば図7に示す各要素と同様な経時的な変化が得られる。
上述した実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができるとともに、次の作用効果を得ることができる。
「第1の制御装置」に相当する制御装置221は、対応する電力変換回路211の通電位相情報θ1を演算する「第1の位相演算部」に相当する位相演算部21gと、演算された通電位相情報θ1を信号により制御装置222に送信する信号送信部21dとを有する。「第2の制御装置」に相当する制御装置222は、制御装置221から送信された通電位相情報θ1を受信する信号受信部22aと、受信された通電位相情報θ1に基づいて制御すべき通電位相情報θ2を演算する「第2の位相演算部」に相当する位相演算部22eと、演算された通電位相情報θ2で対応する電力変換回路212の通電位相を制御する位相制御部22cとを有する。この構成によれば、通電位相情報θ1,θ2の演算を制御装置221,222とで分担する。制御装置221で行う演算量を減らすことができ、通電位相情報θ1,θ2の演算負荷を平坦化することができる。
制御装置222は、通電位相情報θ2を演算する位相演算部22eを有する。制御装置221は、外部装置40から送信される駆動指令T*に基づいて電流振幅目標値Idc1*,Idc2*を演算する目標値演算部21fを有する。このように、位相演算部22eと目標値演算部21fとを異なる制御装置に設ける。図示を省略するが、位相演算部22eを制御装置221に設け、目標値演算部21fを制御装置222に設けてもよい。これらの構成によれば、制御装置221,222で行われる処理量を平坦化することができる。そのため、処理能力が低いCPUを用いて低コスト化したり、同じ処理能力のCPUを用いる場合は機能を追加したりできる。
制御装置222は、多相誘導機30の回転数Nが閾値回転数Nth以上であるとき、制御装置221から伝達された通電位相情報θ1に対して、さらに位相差θαおよび遅延情報Cdに基づいて、通電位相情報θ2をθ2=θ1+θα−Cdで演算した。この構成によれば、通信を含めた遅延が相殺されるので、制御装置222は理想的な位相差θα(あるいは位相差θαに近い状態)で電力変換回路212に変調信号D2を出力できる。よって、多相巻線31に通電する電流Idc1,Idc2の位相関係を制御装置221,222間でより適切に保つことができる。
〔実施の形態3〕
実施の形態3は図12〜図18を参照しながら説明する。なお図示および説明を簡単にするため、特に明示しない限り、実施の形態1,2で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。よって、主に実施の形態1,2と相違する点を説明する。
図12に示す電力変換装置20は、図1に示す電力変換装置20に代わる構成例である。本形態の電力変換装置20は、例えば電力変換回路211,212,…,21nや、複数の制御装置221,222,…,22n、電流検出器23u,23w,23x,23z,…,23p,23rを有する。実施の形態1と同様に、電力変換回路と制御装置は1対1で対応するように設けられる。電力変換回路と制御装置の数は、それぞれnである。nは、3以上で任意の数を設定してよく、符号にも用いる。多相巻線31は、三以上の電力変換回路211,212,…,21nに分けて接続される。
電力変換回路211,212,…,21nの直流電圧側は、各々同一の直流電圧源Eに並列接続される。電力変換回路211,212,…,21nと制御装置221,222,…,22nは、それぞれ別体の装置として備えてもよく、一体化された装置として備えてもよい。一体化は、例えば各装置を集積化した半導体装置(例えばワンチップマイコンのような処理装置)に構成したり、一つの基板上に各装置を実装する構成としたりする。
電流検出器23u,23w,23x,23z,…,23p,23rは、図1に示す電流検出器231,232に代えて設けられる。電流検出器23uはU相に流れる電流Iuを検出し、電流検出器23wはW相に流れる電流Iwを検出する。検出された電流Iuと電流Iwの情報は制御装置221に伝達される。電流検出器23xはX相に流れる電流Ixを検出し、電流検出器23zはZ相に流れる電流Izを検出する。検出された電流Ixと電流Izの情報は制御装置222に伝達される。電流検出器23pはP相に流れる電流Ipを検出し、電流検出器23rはR相に流れる電流Irを検出する。検出された電流Ipと電流Irの情報は制御装置22nに伝達される。
図12に示す多相誘導機30は、図1に示す多相誘導機30に代わる構成例である。本形態の多相誘導機30は、図1に示す多相誘導機30の構成例に加えて、少なくとも1組のP相巻線31P,Q相巻線31Q,R相巻線31Rを多相巻線31として有する。各組の3相巻線は、それぞれ位相差θαでずらして巻かれている。
図13に示す制御装置221は、図2に示す制御装置221に代わる構成例であって、「第1の制御装置」および「他の制御装置」に相当する。本形態の制御装置221は、信号受信部21a,振幅制御部21b,位相制御部21c,信号送信部21d,位相演算部21hを有する。
信号受信部21aは、図2に示す信号受信部21aと同様に、電流Iu,Iw、電流振幅目標値Idc1*、回転情報R、電圧Vu,Vv,Vw,Vx,Vy,Vz,…,Vp,Vq,Vrなどの信号を入力し、各信号に対応する振幅制御部21b,位相演算部21hなどに伝達する。
振幅制御部21bは、電流検出器23u,23wでそれぞれ検出された電流Iu,Iwの振幅が、制御装置222から伝達された電流振幅目標値Idc1*になるように、電力変換回路211に出力する変調信号D1を制御する。本形態では電流Iu,Iwを対象とするが、電流Iu,Iv,Iwのうちで一以上を任意に選択して対象としてもよく、実施の形態1と同様に電流Idc1を対象としてもよい。
位相制御部21cは、後述する位相演算部21hで演算されて伝達される通電位相情報θ1に従って電力変換回路211に出力する変調信号D1を制御する。
信号送信部21dは、後述する位相演算部21hで演算される通電位相情報θ2,…,θnなどを信号に変換して出力し、制御装置222,…,22nに伝達する。本形態の信号送信部21dは、図7に示す通電位相情報θ2と同様に、通電位相情報θ2,…,θnをパルス信号で出力する。
位相演算部21hは、回転検出器33で検出された回転情報Rと、電圧検出器34で検出された電圧Vu,Vv,Vw,Vx,Vy,Vz,…,Vp,Vq,Vrとに基づいて、電力変換回路211,212,…,21nでそれぞれ制御すべき通電位相情報θ1,θ2,…,θnを演算する。通電位相情報θ1,θ2,…,θnの演算は、少なくとも回転情報Rを用い、電圧Vu,Vv,Vw,Vx,Vy,Vz,…,Vp,Vq,Vrのうちで一以上を用いる。位相演算部21hは、演算した通電位相情報θ1を位相制御部21cに伝達し、同じく演算した通電位相情報θ2,…,θnをそれぞれ制御装置222,…,22nに伝達する。なお、通電位相情報θ2,…,θnの伝達はそれぞれ信号送信部21dを介して行う。
図14に示す制御装置222は、図3に示す制御装置222に代わる構成例であって、「第2の制御装置」および「一の制御装置」に相当する。本形態の制御装置222は、信号受信部22a,振幅制御部22b,位相制御部22c,信号送信部22d,目標値演算部22fを有する。
信号受信部22aは、図3に示す信号受信部22aと同様に、電流Ix,Iz、駆動指令T*、通電位相情報θ2…などの信号を入力し、各信号に対応する振幅制御部22b,位相制御部22c,目標値演算部22fなどに伝達する。
振幅制御部22bは、電流検出器23x,23zでそれぞれ検出された電流Ix,Izの振幅が、後述する目標値演算部22fから伝達された電流振幅目標値Idc2*になるように、電力変換回路212に出力する変調信号D2を制御する。本形態では電流Ix,Izを対象とするが、電流Ix,Iy,Izのうちで一以上を任意に選択して対象としてもよく、実施の形態1と同様に電流Idc2を対象としてもよい。
信号送信部22dは、後述する目標値演算部22fで演算された電流振幅目標値Idc1*,…,Idcn*などを信号に変換して出力し、制御装置221,223,…に伝達する。本形態の信号送信部22dは、電流振幅目標値Idc1*,…,Idcn*をデジタル信号で出力するが、アナログ信号やパルス信号等で出力してもよい。
目標値演算部22fは、図2に示す目標値演算部21fと同等の機能を有する。すなわち、外部装置40から伝達された駆動指令T*に基づいて、電力変換回路211,212,…,21nのそれぞれで制御すべき電流振幅目標値Idc1*,Idc2*,…,Idcn*を演算する。目標値演算部22fは、演算した電流振幅目標値Idc1*を制御装置221に伝達し、同じく演算した電流振幅目標値Idc2*を振幅制御部22bに伝達し、…、同じく演算した電流振幅目標値Idcn*を制御装置22nに伝達する。なお、電流振幅目標値Idc2*を除く電流振幅目標値はそれぞれ信号送信部22dを介して行う。
図15に示す制御装置22nは、図3に示す制御装置222に相当する構成例であって、「第2の制御装置」および「他の制御装置」に相当する。本形態の制御装置22nは、制御装置221,222,…,22nのうちで、制御装置221,222を除いた全ての制御装置が該当する。制御装置22nは、信号受信部2na,振幅制御部2nb,位相制御部2ncを有する。
信号受信部2naは、図3に示す信号受信部22aと同様に、電流Ip,Ir、電流振幅目標値Idcn*、通電位相情報θnなどの信号を入力し、各信号に対応する振幅制御部2nb,位相制御部2ncなどに伝達する。
振幅制御部2nbは、電流検出器23p,23rでそれぞれ検出された電流Ip,Irの振幅が、信号受信部2naを介して伝達される電流振幅目標値Idcn*になるように、電力変換回路21nに出力する変調信号Dnを制御する。変調信号Dnは、変調信号D1,D2と同様にPWM信号を適用する。本形態では電流Ip,Irを対象とするが、電流Ip,Iq,Irのうちで一以上を任意に選択して対象としてもよく、図示を省略するが図1に示す電流検出器231,232と同様にして設けられる電流検出器が検出する電流Idcnを対象としてもよい。
位相制御部2ncは、信号受信部2naを介して伝達される通電位相情報θnに従って電力変換回路21nに出力する変調信号Dnを制御する。本形態の通電位相情報θnは、図1,図7に示す通電位相情報θ2と同様に、P相,Q相,R相にそれぞれ対応したパルス信号(例えば図示を省略するパルス信号θp,θq,θr)に従って変調信号Dnを制御する。すなわち、パルス信号θpに基づいてP相巻線31Pに通電する制御を行い、パルス信号θqに基づいてQ相巻線31Qに通電する制御を行い、パルス信号θrに基づいてR相巻線31Rに通電する制御を行う。
次に、制御装置221で繰り返し実行される第1制御装置処理の手続き例について、図16を参照しながら説明する。図16に示す第1制御装置処理は、図5に示す第1制御装置処理に代わる処理である。なお、図16に示すステップS50,S13,S54は信号受信部21aに相当する。ステップS52,S53は位相演算部21hに相当する。ステップS55は振幅制御部21bおよび位相制御部21cに相当する。図16に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置221に備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
ステップS50では、制御装置222から電流振幅目標値Idc1*を受信したか否かを判別する。もし電流振幅目標値Idc1*を受信すればYESになり、ステップS51に進む。これに対して、電流振幅目標値Idc1*を受信しなければNOになり、ステップS13に進む。
ステップS51では、後述するステップS55で用いるために、受信した電流振幅目標値Idc1*を取得して記録する。
ステップS52では、すべり周波数を求めるとともに、当該すべり周波数に基づいて通電位相情報θ1,θ2,…,θnを演算する。
ステップS53では、後述するステップS55で用いるために、ステップS52で演算した通電位相情報θ1を記録媒体に記録する。また、制御装置222に通電位相情報θ2を送信し、…、制御装置22nに通電位相情報θnを送信する。
ステップS54では、電流検出器23u,23wからそれぞれ信号受信部21aを介して伝達される電流Iu,Iwをフィードバック情報として取得する。電流Iu,Iwは、制御装置221に対応する電力変換回路211に流れる相電流であり、図12に示す電流検出器23u,23wで検出される。
ステップS55では、ステップS54で取得した電流Iu,IwがステップS51で記録した電流振幅目標値Idc1*になり、かつ、ステップS53で演算した通電位相情報θ1になるように変調信号D1を電力変換回路211に伝達して作動を制御する。
次に、制御装置222で繰り返し実行される第2制御装置処理の手続き例について、図17を参照しながら説明する。なお、図17に示すステップS10,S22,S62は信号受信部22aに相当する。ステップS60,S61は目標値演算部22fに相当する。ステップS63は振幅制御部22bおよび位相制御部22cに相当する。図17に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置222に備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
ステップS60では、ステップS10で受信した駆動指令T*に基づいて、電力変換回路211,212,…,21nでそれぞれ制御すべき電流振幅目標値Idc1*,Idc2*,…,Idcn*を演算する。電流振幅目標値Idc1*,Idc2*,…,Idcn*のうちで、少なくとも電流振幅目標値Idc2*は後述するステップS63で用いるために記録媒体に記録する。
ステップS61では、制御装置222を除く制御装置221,…,22nに対して、ステップS60で演算された電流振幅目標値Idc1*,…,Idcn*を送信して伝達する。例えば、電流振幅目標値Idc1*は信号送信部22dを介して制御装置221に伝達し、…、電流振幅目標値Idcn*は信号送信部22dを介して制御装置22nに伝達する。
ステップS62では、電流検出器23x,23zからそれぞれ信号受信部21aを介して伝達される電流Ix,Izをフィードバック情報として取得する。電流Ix,Izは、制御装置222に対応する電力変換回路212に流れる相電流であり、図12に示す電流検出器23x,23zで検出される。
ステップS63では、ステップS62で取得した電流Ix,IzがステップS60で記録した電流振幅目標値Idc2*になり、かつ、ステップS23で取得した通電位相情報θ2になるように変調信号D2を電力変換回路212に伝達して作動を制御する。
次に、制御装置22nで繰り返し実行される第n制御装置処理の手続き例について、図18を参照しながら説明する。なお、図18に示すステップS70,S72,S74は信号受信部2naに相当する。ステップS75は振幅制御部2nbおよび位相制御部2ncに相当する。図18に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置22nに備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
次に、制御装置22nで繰り返し実行される第n制御装置処理の手続き例について、図18を参照しながら説明する。なお、図18に示すステップS70,S72,S74は信号受信部2naに相当する。ステップS75は振幅制御部2nbおよび位相制御部2ncに相当する。図18に示す処理順は一例に過ぎず、制御装置22nに備える各要素の機能を実現できれば順不同で実行してもよい。
ステップS70では、制御装置222から信号受信部2naを介して伝達される電流振幅目標値Idcn*を受信したか否かを判別する。もし電流振幅目標値Idcn*を受信すればYESになり、ステップS71に進む。これに対して、電流振幅目標値Idcn*を受信しなければNOになり、ステップS72に進む。
ステップS71では、信号受信部2naで受信した電流振幅目標値Idcn*を取得し、後述するステップS75で用いるために記録媒体に記録する。
ステップS72では、制御装置221から信号受信部2naを介して伝達される通電位相情報θnを受信したか否かを判別する。もし通電位相情報θnを受信すればYESになり、ステップS73に進む。これに対して、通電位相情報θnを受信しなければNOになり、ステップS74に進む。
ステップS73では、信号受信部2naで受信した通電位相情報θnを取得する。
ステップS74では、制御装置22nに対応する電力変換回路21nに流れる電流Ip,Irをフィードバック情報として記録媒体に記録する。電流Ip,Irは、制御装置22nに対応する電力変換回路21nに流れる相電流であり、図12に示す電流検出器23p,23rで検出される。
ステップS75では、ステップS74で取得した電流Idc2がステップS71で記録した電流振幅目標値Idcn*になり、かつ、ステップS73で取得した通電位相情報θnになるように変調信号Dnを電力変換回路21nに伝達して作動を制御する。
上述した実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。図13に示す位相演算部21hが図8に示す位相演算部21gと同様に通電位相情報θ1を演算して送信するとともに、図9に示す位相演算部22eを制御装置222,…,22nにそれぞれ有する場合には、実施の形態2と同様の作用効果を得ることができる。この場合の位相演算部22eは、回転情報R,通電位相情報θ1,位相差θα,遅延情報Cdに基づいて電力変換回路212,…,21nでそれぞれ制御すべき通電位相情報θ2,…,θnを演算する。すなわち位相演算部22eは、θ2=θ1+θα−Cd、…、θn=θ1+(n−1)×θα−Cdをそれぞれ演算する。回転情報Rに基づいて求められる回転数Nが閾値回転数Nth以上になる高回転域に限ってもよく、全回転域でもよい。回転数Nが閾値回転数Nth未満の低回転域のとき、θ2=θ1+θα、…、θn=θ1+(n−1)×θαをそれぞれ演算してもよい。
実施の形態3では、「第1の制御装置」として制御装置221を適用し、「第2の制御装置」として制御装置222,…,22nを適用した。また、「一の制御装置」として制御装置222を適用し、「他の制御装置」として制御装置222を除く制御装置221,…,223を適用した。これらの形態に代えて、「第1の制御装置」として制御装置222,…,22nのうちでいずれか一つの制御装置を適用してもよい。また、「一の制御装置」として制御装置222を除く制御装置221,…,22nのうちでいずれか一つの制御装置を適用してもよい。いずれにせよ、「第2の制御装置」に相当する制御装置と、「他の制御装置」に相当する制御装置は、いずれも一以上になる。
要するに、位相演算部21e,21g,21h,22eを有する制御装置が「第1の制御装置」である。よって、制御装置221,222,…,22nのうち、一つの制御装置に位相演算部を備えて「第1の制御装置」として機能し、残りの制御装置が「第2の制御装置」として機能すればよい。また、目標値演算部21f,22fを有する制御装置が「一の制御装置」である。よって、制御装置221,222,…,22nのうち、一つの制御装置に目標値演算部を備えて「一の制御装置」として機能し、残りの制御装置が「他の制御装置」として機能すればよい。これらの構成としても、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜3に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
上述した実施の形態1〜3において、図1,図12に示す電力変換装置20は、直流電圧源Eの直流を交流に変換して多相誘導機30に出力する機能と、多相誘導機30で発電された交流を直流に変換して直流電圧源Eに充電する機能とを兼ね備える構成とした。この形態に代えて、多相誘導機30が電動機として動作する場合には、電力変換装置20は直流電圧源Eの直流を交流に変換して多相誘導機30に出力する機能を有すればよい。この構成でも、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2において、図1に示す多相誘導機30は6相の巻線をY結線する構成とした。実施の形態3において、図12に示す多相誘導機30は9相以上の巻線を3相ごとにY結線する構成とした。この形態に代えて、多相誘導機30は4相以上の相数からなる巻線を有する構成としてもよい。多相誘導機30に収容可能であれば、任意の相数を設定してよく、固定子巻線に限らず界磁巻線や励磁巻線を含めてもよい。Y結線に代えて(あるいは加えて)、Δ結線としてもよく、Y−Δ結線としてもよく、他の結線としてもよい。巻線の形態が相違するに過ぎず、位相差θαだけずらして巻かれている限りにおいて、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1〜3では、変調信号D1,D2,…,DnにPWM信号を適用する構成とした。この形態に代えて(あるいは加えて)、他のパルス変調信号(例えばPFM信号など)を適用する構成としてもよい。PWM信号は、出力電圧のリップル成分を小さくでき、負荷変動に対する応答性能を高められる反面、消費電力が高くなる。PFM信号は、消費電力を低く抑えられる反面、出力電圧のリップル成分は大きくなり、負荷変動に対する応答性能が劣化する。そのため、通常動作時にはPWM信号を適用し、軽負荷時にはPFW信号を適用するとよい。信号の形態が相違するに過ぎないので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態3では、実施の形態1と同様に、位相演算部21hが通電位相情報θ1,θ2,…,θnを演算する構成とした。この形態に代えて、実施の形態2と同様に、位相演算部21hは通電位相情報θ1を演算して制御装置222,…,223に送信し、制御装置222,…,223にそれぞれ設けた目標値演算部(例えば図9に示す目標値演算部21f)によって各制御装置の通電位相情報を演算する構成としてもよい。こうすれば、実施の形態2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態3では、実施の形態2と同様に、位相演算部21hを有する制御装置221と、目標値演算部22fを有する制御装置222とを異ならせた。この形態に代えて、実施の形態1と同様に、位相演算部と目標値演算部を同一の制御装置に設けてもよい。こうすれば、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
10 回転電機、20 電力変換装置、211,212,…,21n 電力変換回路、21a,22a,…,2na 信号受信部、21b,22b,…,2nb 振幅制御部、21c,22c,…,2nc 位相制御部、21d,22d 信号送信部、21e,21g,21h,22e,… 位相演算部、21f,22f 目標値演算部、221,222,…,22n 制御装置、231,232,…,23n 電流検出器、23u,23w,23x,23z,…,23p,23r 電流検出器、24 駆動部、25 タイミング演算部、30 多相誘導機、31(31U,31V,31W,31X,31Y,31Z,…,31P,31Q,31R) 多相巻線、32 回転軸、33 回転検出器、34 電圧検出器、40 外部装置、E 直流電圧源、θα 位相差、Cd 遅延情報

Claims (12)

  1. 多相誘導機(30)に含まれる4相以上の多相巻線(31U,31V,31W,31X,31Y,31Z,…,31P,31Q,31R)に流れる交流の電流を制御する電力変換装置(20)において、
    前記多相巻線を二以上に分けて接続した複数の電力変換回路(211,212,…,21n)と、
    前記複数の電力変換回路の各々に対応して設けられる複数の制御装置(221,222,…,22n)とを有し、
    前記複数の制御装置は、
    回転検出器(33)で検出される前記多相誘導機の回転情報(R)に基づいて演算される通電位相情報(θ1,θ2,…,θn)と、対応する電力変換回路(211)に流れる電流(Idc1,Idc2,Iu,Iv,Iw,Ix,Iy,Iz,Ip,Iq,Ir)のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路(211)を制御する第1の制御装置(221)と、
    前記第1の制御装置で演算して伝達された前記通電位相情報に対して位相差(θα)分をずらした通電位相情報(θ2,…,θn)と、対応する電力変換回路に流れる電流のフィードバック情報とに基づいて、対応する電力変換回路(212,…,21n)を制御する一以上の第2の制御装置(222,…,22n)とを有する電力変換装置。
  2. 前記多相誘導機の回転数(N)が閾値回転数(Nth)以上であるとき、さらに前記第1の制御装置と前記第2の制御装置との間で行われる通信を含めて生じる遅延に関する遅延情報(Cd)に基づいて、前記第2の制御装置で制御する前記通電位相情報(θ2,…,θn)を演算する請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記多相巻線の相数は3の倍数であり、
    前記電力変換回路は直流電圧と交流電圧を変換する回路であり、
    前記電力変換回路の直流電圧側は各々同一の直流電圧源(E)に接続され、前記電力変換回路の交流電圧側は前記多相誘導機の前記多相巻線のうち3相ごとに接続される請求項1または2に記載の電力変換装置。
  4. 前記第1の制御装置は、前記複数の制御装置の全てについて各々で制御すべき通電位相情報(θ1,θ2,…,θn)を演算する位相演算部(21e)と、演算された前記通電位相情報(θ2,…,θn)を信号により前記一以上の第2の制御装置に送信する信号送信部(21d)とを有し、
    前記第2の制御装置は、前記第1の制御装置から送信された前記通電位相情報を受信する信号受信部(22a,…,2na)と、受信された前記通電位相情報に基づいて対応する電力変換回路の通電位相を制御する位相制御部(22c,…,2nc)とを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
  5. 前記第1の制御装置は、対応する電力変換回路(211)の通電位相情報(θ1)を演算する第1の位相演算部(21e)と、演算された前記通電位相情報を信号により前記一以上の第2の制御装置に送信する信号送信部(21d)とを有し、
    前記第2の制御装置は、前記第1の制御装置から送信された前記通電位相情報(θ1)を受信する信号受信部(22a,…,2na)と、受信された前記通電位相情報に基づいて制御すべき通電位相情報(θ2,…,θn)を演算する第2の位相演算部(22e)と、演算された前記通電位相情報で対応する電力変換回路(212,…,21n)の通電位相を制御する位相制御部(22c,…,2nc)とを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
  6. 前記複数の制御装置のうちでいずれか一つの制御装置は、外部装置(40)から送信される駆動指令(T*)に基づいて電流振幅目標値(Idc1*,Idc2*,…,Idcn*)を演算する目標値演算部(21f,22f)と、演算された前記電流振幅目標値を信号により前記複数の制御装置のうちで他の制御装置に送信する信号送信部(21d,22d)とを有し、
    前記他の制御装置は、前記一つの制御装置から送信された前記電流振幅目標値を受信する信号受信部(21a,22a,…,2na)と、受信された前記電流振幅目標値に基づいて対応する電力変換回路に流れる電流の振幅を制御する振幅制御部(21b,22b,…,2nb)とを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
  7. 前記電力変換回路は、スイッチング素子(SU_H,SV_H,SW_H,SU_L,SV_L,SW_L,SX_H,SY_H,SZ_H,SX_L,SY_L,SZ_L)を含み、
    前記複数の制御装置は、いずれも前記スイッチング素子の駆動タイミングを演算して出力するタイミング演算部(25)と、前記タイミング演算部から入力される前記駆動タイミングに基づいて前記スイッチング素子を駆動させる駆動部(24)と、が一体化された複合半導体素子(CSE)である請求項1から6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
  8. 前記第1の制御装置から前記第2の制御装置に伝達される通電位相情報(θ2,…,θn)は、前記スイッチング素子の駆動タイミングに同期したパルス状の波形信号である請求項7に記載の電力変換装置。
  9. 前記電力変換回路に流れる電流を検出する電流検出器(231,232,233,23u,23v,23w,23x,23y,23z,23p,23q,23r)を有し、
    前記振幅制御部(21b,22b,…,2nb)は、前記電流検出器によって検出した電流(Idc1,Idc2,Iu,Iv,Iw,Ix,Iy,Iz,Ip,Iq,Ir)の振幅が前記電流振幅目標値となるように前記電力変換回路に出力する変調信号(D1,D2,…,Dn)を制御する請求項6から8のいずれか一項に記載の電力変換装置。
  10. 前記通電位相情報を演算する位相演算部(21h,22e)を有する制御装置と、外部装置(40)から送信される駆動指令(T*)に基づいて電流振幅目標値(Idc1*,Idc2*,…,Idcn*)を演算する目標値演算部(21f,22f)を有する制御装置と、は異なる装置である請求項1から9のいずれか一項に記載の電力変換装置。
  11. 前記複数の電力変換回路と、前記複数の制御装置と、は一体化された装置である請求項1から10のいずれか一項に記載の電力変換装置。
  12. 4相以上の多相巻線を含む多相誘導機(30)と、
    請求項1から11のいずれか一項に記載の電力変換装置(20)と、
    を有する回転電機(10)。
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