JP2018063208A - 終末糖化産物の濃縮方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、AGEに対して高い感度を有し、かつ簡便に使用できることが可能なAGEの分離方法、および該分離方法を利用した分析方法、濃縮方法、および製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明により、終末糖化産物(AGE)を抗原とする抗原結合性ポリペプチド配列;およびグルカン認識ドメイン配列またはキチン認識ドメイン配列から選択される多糖認識ドメイン配列を含むポリペプチドを用いてAGEを分離する工程を含む、AGEの濃縮方法が提供される。
【選択図】図1−1
【解決手段】本発明により、終末糖化産物(AGE)を抗原とする抗原結合性ポリペプチド配列;およびグルカン認識ドメイン配列またはキチン認識ドメイン配列から選択される多糖認識ドメイン配列を含むポリペプチドを用いてAGEを分離する工程を含む、AGEの濃縮方法が提供される。
【選択図】図1−1
Description
本発明は、終末糖化産物(AGE)の濃縮方法、分離方法、分析方法、および製造方法に関する。
終末糖化産物(AGE)は、生体内でアミノ酸、主にリシンのアミノ基が還元糖によって非酵素的に修飾された後、酸化・脱水・縮合等の複雑な反応を経て生成する物質の総称である。加齢や高血糖状態で生成するAGEは糖尿病合併症や動脈硬化等の生活習慣病と関連しており、診断、予防において有用なバイオマーカーとして期待されている。病態の時に、AGE、およびAGEを含むタンパク質(「AGE修飾タンパク質」ともいう)の具体的な種類と病態との関連性について解明することが求められており、その手段として質量分析法があげられる。
質量分析により生体試料に含まれるAGEの分析を行う場合には、抗AGE抗体を用いた免疫沈降により試料を前処理することが行われている。しかしながら、既存のAGE抗体を用いる分析では特異性および汎用性の点で、網羅的解析に用いるには問題がある。抗体を用いた免疫沈降では、一般的に、プロテインGビーズやプロテインAビーズが用いられるが、血清中の低発現量のタンパク質を免疫沈降により解析するためには、予め大量に存在するIgG抗体やアルブミンを除去する操作を行う必要がある。また、この操作を行っても血清中に含まれる様々な抗体を除去することは困難であり、免疫沈降の際にプロテインGビーズやプロテインAビーズは血清由来の抗体も結合するので、モノクローン性を保証することはできない。
さらに、AGEを含むタンパク質を処理する場合に、既存の抗AGE抗体ではAGE構造体だけでなく、その周辺のペプチド配列も認識するため、検出できるタンパク質が限られている。また、既存の抗AGEモノクローナル抗体がハイブリドーマ細胞を用いて生産されており、純化が不十分である場合には、目的外の抗体が混入するといった問題が生じる。そのため、そのようなモノクローナル抗体を用いた場合には、目的とする分子だけではなく、目的以外の分子も一緒に観測されることになる。
AGEの検出方法として、AGE受容体またはそのホモログを利用する方法(特許文献1)、ガレクチンまたはその炭化水素認識領域を利用する方法(特許文献2)、グリセルアルデヒド由来AGEを認識するDNAアプタマーを利用する方法(特許文献3)が報告されている。
また、GRP配列と固体カードランを用いたアフィニティーシステムについての報告されている(非特許文献1)。
Protein Eng Des Sel. 2012, 25:405-413.
本発明の目的は、AGEに対して高い感度を有し、かつ簡便に使用できることが可能なAGEの分離方法、および該分離方法を利用した分析方法、濃縮方法、および製造方法を提供することである。
本発明者らは、既知の多糖認識ドメイン配列、例えば、グルカン認識タンパク質(GRP)のグルカン認識ドメイン配列またはキチン認識ドメイン配列の配列と多糖から構成される担体(例えば、固体カードラン、キチンビーズ)の安価なアフィニティーシステムを利用し、さらにAGEに特異的なscFvを用いることにより、生体試料中のAGEまたはAGE修飾タンパク質を分離・濃縮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明により、以下の方法が提供される。
[1]終末糖化産物(AGE)を抗原とする抗原結合性ポリペプチド配列;および
グルカン認識ドメイン配列またはキチン認識ドメイン配列から選択される多糖認識ドメイン配列
を含むポリペプチドを用いてAGEを分離する工程を含む、AGEの濃縮方法。
[2]前記多糖認識ドメイン配列が、グルカン認識タンパク質(GRP)のグルカン認識ドメイン配列である、[1]に記載の濃縮方法。
[3]前記ポリペプチドが多糖から構成される担体に固定化されている、[1]または[2]に記載の濃縮方法。
[4]担体が固体カードランである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の濃縮方法。
[5]前記抗原結合性ポリペプチドが一本鎖抗体(scFv)である、[1]〜[4]のいずれかに記載の濃縮方法。
[6]scFvが、配列番号4〜6から選択される配列を有するscFvか、これらの1つと交差競合するscFvである、[5]に記載の濃縮方法。
[7]前記ポリペプチドにおいて、N末端より抗原結合性ポリペプチド配列、多糖認識ドメイン配列の順番である、[1]〜[6]のいずれかに記載の濃縮方法。
[8]前記ポリペプチドの配列をコードするDNAを導入した形質転換体を用いて、前記ポリペプチドを調製する工程をさらに含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の濃縮方法。
[9]AGEが、Nε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシン、アルグピリミジン、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、GA−ピリジン、Nω−カルボキシメチルアルギニン、グルコスパンから選択されるアミノ酸、または当該アミノ酸のいずれかを配列に含むタンパク質である、[1]〜[8]のいずれかに記載の濃縮方法。
[10]AGEが、Nε−カルボキシメチルリシン、およびGA−ピリジンから選択されるアミノ酸、または当該アミノ酸のいずれかを配列に含むタンパク質である、[9]に記載の濃縮方法。
[1]終末糖化産物(AGE)を抗原とする抗原結合性ポリペプチド配列;および
グルカン認識ドメイン配列またはキチン認識ドメイン配列から選択される多糖認識ドメイン配列
を含むポリペプチドを用いてAGEを分離する工程を含む、AGEの濃縮方法。
[2]前記多糖認識ドメイン配列が、グルカン認識タンパク質(GRP)のグルカン認識ドメイン配列である、[1]に記載の濃縮方法。
[3]前記ポリペプチドが多糖から構成される担体に固定化されている、[1]または[2]に記載の濃縮方法。
[4]担体が固体カードランである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の濃縮方法。
[5]前記抗原結合性ポリペプチドが一本鎖抗体(scFv)である、[1]〜[4]のいずれかに記載の濃縮方法。
[6]scFvが、配列番号4〜6から選択される配列を有するscFvか、これらの1つと交差競合するscFvである、[5]に記載の濃縮方法。
[7]前記ポリペプチドにおいて、N末端より抗原結合性ポリペプチド配列、多糖認識ドメイン配列の順番である、[1]〜[6]のいずれかに記載の濃縮方法。
[8]前記ポリペプチドの配列をコードするDNAを導入した形質転換体を用いて、前記ポリペプチドを調製する工程をさらに含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の濃縮方法。
[9]AGEが、Nε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシン、アルグピリミジン、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、GA−ピリジン、Nω−カルボキシメチルアルギニン、グルコスパンから選択されるアミノ酸、または当該アミノ酸のいずれかを配列に含むタンパク質である、[1]〜[8]のいずれかに記載の濃縮方法。
[10]AGEが、Nε−カルボキシメチルリシン、およびGA−ピリジンから選択されるアミノ酸、または当該アミノ酸のいずれかを配列に含むタンパク質である、[9]に記載の濃縮方法。
本発明により、AGE、特にAGEにより修飾されたタンパク質の効率的な分離方法、濃縮方法、分析方法、および製造方法が提供される。
本発明の方法により濃縮されるAGEは、リシンなどのアミノ酸残基が糖と反応して得られる化合物であれば特に限定されない。例としては、Nε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシン、アルグピリミジン、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、GA−ピリジン、Nω−カルボキシメチルアルギニン、グルコスパンから選択されるアミノ酸、または当該アミノ酸の誘導体、ペプチド、または当該アミノ酸のいずれかを配列に含むタンパク質などが挙げられる。具体的な例としては、GA−ピリジン、カルボキシルメチルリジン、およびそれらのいずれかを配列に含むペプチドまたはタンパク質などが挙げられる。
本明細書における「一本鎖抗体」は、全長抗体の重鎖由来のFvドメイン(VH)と軽鎖由来のFvドメイン(VL)をペプチドリンカーにより連結して得られる一本鎖Fv断片(scFv)を意味する。ここでペプチドリンカーは、一本鎖抗体が抗原結合性を有するのに適した配列であれば特に限定されず、例えば、10個以上のアミノ酸、具体的には10〜27個のアミノ酸、より具体的には15〜20個のアミノ酸から構成される。ペプチドリンカーを構成するアミノ酸は、天然アミノ酸であれば特に限定されない。当該アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられ、具体的には、グリシン、アラニン、セリン、フェニルアラニン、グルタミン酸、アルギニンなどが挙げられる。
一本鎖抗体は、VLドメインのC末端とVHドメインのN末端をペプチドリンカーで連結する構造、またはVHドメインのC末端とVLドメインのN末端をペプチドリンカーで連結する構造のいずれを有していてもよい。
AGEを抗原とするscFvの配列は、本発明が属する技術分野の通常の技術を用いて決定することができる。例えば、AGEを抗原とする全長抗体を作成した後にその配列情報に基づいて作成することができる。また、その際に、公知の抗AGE抗体の配列情報を利用することもできる。
本発明で用いるscFvは、成書(例えば、Carl A. K. Borrebaeck 編集, (1995) Antibody Engineering (Second Edition), Oxford University Press, New York;John McCafferty, Hennie Hoogenboom, Dave Chiswell 編集, (1996) Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL Press, Oxfordなど)および文献(例えば、Biochim. Biophys. Acta - Protein Structure and Molecular Enzymology 1385, 17-32 (1998)など)に記載の方法により製造することができる。
本発明で使用されるscFvは、アミノ酸残基の糖化反応により構成された構造、またはタンパク質において当該構造の周辺構造も含む部分をエピトープとするものを使用することができる。エピトープへの抗体結合の親和性について、例えば、10−6M未満、具体的には10−7M未満、より具体的には10−8M未満、さらに具体的には10−9M未満の親和性(KD)を有することが望ましい。
本発明において、例えば、配列番号4〜6から選択される配列を有するscFvか、これらの1つと交差競合するscFvを使用することができる。例えば、Biacore解析、ELISAアッセイ法、またはフローサイトメトリーを使用して、上記配列を有するscFvとの交差競合を実証することができる。一つの態様として、配列番号4〜6から選択される配列を有するscFvと60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有するscFvを使用することができる。
本発明で使用される多糖認識ドメイン配列は、グルカン認識ドメイン(GRP)配列またはキチン認識ドメイン配列から選択され、当該配列を含むポリペプチドに多糖への結合能を付与する機能を有するものであれば特に限定されない。グルカン認識ドメイン(グルカン結合ドメイン)配列としては、β−1,3−グルカン認識タンパク質(GRP)の結合ドメインであって、β−1,3−グルカンに特異的に結合する機能を有するものの配列を使用することができ、例えば、カイコ、タバコスズメガ、ノシメマダラメイガなどに由来するGRPの結合ドメイン配列を使用することができる。
また、グルカン認識ドメイン(グルカン結合ドメイン)配列として、ショウジョウバエ由来のグラム陰性菌結合タンパク質(GNBPs)の結合ドメインを使用することができる。
キチン認識ドメイン配列としては、キチナーゼのキチン結合ドメイン(CBD)配列であって、キチンに特異的に結合する機能を有するものの配列を使用することができ、例えば、Bacillus circulans、Pyrococcus furiosusなどに由来するCBDの配列を使用することができる。
scFvなどの抗原結合性ポリペプチド配列と多糖認識ドメイン配列は、ペプチドリンカーにより連結されていてもよい。ここで、ペプチドリンカーは、各配列が機能を発揮するのに適した配列であれば特に限定されず、例えば、5個以上のアミノ酸、具体的には5〜15個のアミノ酸、より具体的には9〜10個のアミノ酸から構成される。ペプチドリンカーを構成するアミノ酸は、天然アミノ酸であれば特に限定されない。当該アミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ヒスチジンなどが挙げられ、具体的には、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、アルギニンなどが挙げられる。
本発明においては、ポリペプチドが有する多糖認識ドメイン配列を固体の多糖を含む担体に固定化することによりアフィニティーシステムを構築して、生体試料中のAGEまたはAGE修飾タンパク質を分離・濃縮することを特徴とする。担体としては、固体カードラン、固体キチンを使用することができる。担体の形状は特に限定されず、粒状物、ビーズ、ペレット、ゲル、シートなどであってもよい。
担体は多孔質であるものが好ましく、例えば0.01〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.2μm、より好ましくは0.1〜0.6μmの孔径を有する。担体の孔径は走査型電子顕微鏡にて撮影した画像から測定することができる。担体として好ましくはビーズを用いることができ、例えば0.1〜100μm、好ましくは1〜70μm、より好ましくは5〜50μmの孔径を有する。
カードランはβ−1,3−グルカンであり、本発明において利用可能なカードランビーズは非特許文献1に記載の方法で作成することができる。キチンはポリ−β−1,4−N−アセチルグルコサミンであり、本発明においては購入により入手可能なキチンビーズ(キチンビーズ(Chitin Beads)、 S6651S、NewEngland BioLabs 社;キチンマグネットビーズ(Chitin Magnetic Beads)、 S6651S、NewEngland BioLabs 社など)や既知の方法により調製可能なキチンビーズを使用することができる。
本発明においては好ましくは固体カードランを使用することができる。カードランはβ−1,3−グルカンを原料とする安価な物質であり、購入により入手可能である(カードラン(β-1, 3-Glucan)、生化学用 032-09902、和光純薬工業株式会社など)。本発明に用いる固体カードランは非特許文献1に記載の方法により作成することもできる。固体カードランとグルカン認識ドメイン(グルカン結合ドメイン)配列の結合はGSTやHis−tagなどの他のアフィニティータグに比べて強固であるため、非特異吸着を防ぐためにより強力な洗浄操作を行うことが可能である。
本発明で用いる終末糖化産物(AGE)を抗原とする抗原結合性ポリペプチド配列と多糖認識ドメインを含むポリペプチドは、本発明の属する技術分野において周知の方法により調製することができる。例えば、scFv配列と多糖認識ドメイン配列を有するポリペプチドは、大腸菌、酵母、動物細胞(哺乳動物細胞など)、昆虫細胞などから選択される宿主を用いて、適切なプロモーター(例えば、T7、Taq、laqなど)を使用して調製することができる。本発明で使用するポリペプチド鎖は、ハイブリドーマ細胞を用いず大腸菌により生産されるためモノクローン性が遺伝子レベルで保証される点において好ましい特性を有している。
本発明で用いるポリペプチド鎖は、抗原結合性ポリペプチド配列と多糖認識ドメイン配列を含むポリペプチドとして発現させることができる。抗原結合性ポリペプチド配列と多糖認識ドメイン配列を含有するポリペプチド鎖はインタクト抗体に比べて分子量が5分の1程度と小さく、分析の妨げとなる非特異吸着が起こりにくい点において好ましい特性を有している。
本発明にかかるAGEの濃縮方法は以下の手法により実施することができる。抗原結合性ポリペプチド配列と多糖認識ドメイン配列を含むポリペプチドを固体である多糖に固定化させた後、生体試料を加えて反応させる。洗浄操作により、余剰のポリペプチドと生体試料中に含まれる夾雑物を除去する。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む溶液を加えて加熱操作を行い、ポリペプチド鎖を変性させることで生体試料中から分離・濃縮されたAGE修飾タンパク質を溶出させる。得られた溶出液をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で解析することで、AGE修飾タンパク質を同定する。電気泳動後の検出法としてCBB染色、銀染色などが用いられる。
標品として用いられるAGEおよびAGE修飾タンパク質は既知の方法により調製することができる。例えば、グリコールアルデヒドによりBSAを修飾して得られるGA−BSAは、3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−1−(5−アミノ−5−カルボキシペンチル)ピリジニウムカチオン(GA―ピリジン)を含有する。またNε−(カルボキシメチル)リシン(CML)を含有するCML−BSAはBSAをグリオキシル酸と反応させて還元することにより調製される(J. Biol. Chem. 277, 48905-48912 (2002))。
本発明により分離したタンパク質を各々同定することで、バイオマーカー探索のみならず、AGE関連疾患の発症メカニズム解明にも貢献し得る。
[実施例1]
本実施例ではscFvとGRP配列をペプチドリンカーで連結させたポリペプチド鎖として大腸菌により発現させた。以下3種のプラスミドを用意した。
本実施例ではscFvとGRP配列をペプチドリンカーで連結させたポリペプチド鎖として大腸菌により発現させた。以下3種のプラスミドを用意した。
プラスミド pET-73MuL9scFv-GRP:図1−1に示す73MuL9scFv(配列番号4)とGRP配列をペプチドリンカーで連結したDNA断片を含むプラスミドであり、73MuL9scFv-GRPを発現させる。
プラスミド pET-73MuH19scFv-GRP:図1−2に示す73MuH19scFv(配列番号5)とGRP配列をペプチドリンカーで連結したDNA断片を含むプラスミドであり、73MuH19scFv-GRPを発現させる。
プラスミド pET-6D12scFv-GRP:図1に示す6D12scFv(配列番号6)とGRP配列をペプチドリンカーで連結したDNA断片を含むプラスミドであり、6D12scFv-GRPを発現させる。
本実施例においては、AGEとしてGA−ピリジンに特異的に結合する73MuL9scFv、73MuH19scFv、およびCMLに特異的に結合する6D12scFvを用いた。
本実施例においては、固体カードランとしてカードランビーズを用いた。カードランビーズは既報記載の方法により調製した(非特許文献1)。
プラスミドpET-scFv-GRPで大腸菌BL-21(DE3)を形質転換した。この大腸菌をアンピシリン含有LB寒天培地に広げ、終夜37℃でインキュベートさせて形質転換体を選択した。形成されたコロニーの一つを100μg/mlのアンピシリン含有LB培地(20ml)に植菌して37℃で一晩前培養を行った。この前培養液を100μg/mlのアンピシリン含有LB培地(300ml)に、600nmの濁度が0.1になるように植菌した。600nmの濁度が0.6に到達した時点で終濃度1 mMイソプロピル−β−D(−)−チオガラクトピラノシドを添加した後、37℃で7時間培養した。培養液を6000 rpm、4℃で10分遠心分離して集菌した。菌体をソニケーションバッファー(50 mM Tris-HCl(pH 8.0),100 mM NaCl)で懸濁させ、氷中において超音波破砕を行った。この溶液を6000 rpm、4℃、20分遠心分離して、不溶性画分を回収した。この不溶性画分を6Mグアニジン溶液で変性させた後、リフォールディングを行い、立体構造を保持したscFv-GRPを調製した。
[実施例2]
調製したscFv-GRP(20〜50μg)をカードランビーズ(20%スラリー、100μL)と室温で1時間、1.5mLチューブ内で反応させた。その後、2%SDSと加熱操作により変性させた試料(GA−BSA100μg(GA−ピリジンを含有するタンパク質を含む)、CML−BSA100μg(CMLを含有するタンパク質を含む)、ヒト血清1mgのいずれか)をバッファー(PBS+1%TritonX-100)で10倍希釈した後、scFv-GRPが結合したカードランビーズに加えて2時間反応させた。カードランビーズをバッファー(PBS-T、PBS+0.05% Tween20))で3回洗浄した後、SDSを含む溶液を加えて95℃、5分間で加熱した。溶出液を回収し、SDS−PAGEを行った。その結果、複数のバンドが確認され、AGE修飾タンパク質が分離・濃縮されていることが確認された。73MuL9scFv-GRP、73MuH19scFv-GRPはGA−BSAを、6D12scFv-GRPはCML−BSAを濃縮していたことから、複数のバンドはGA−ピリジンまたはCML修飾されたタンパク質である。
調製したscFv-GRP(20〜50μg)をカードランビーズ(20%スラリー、100μL)と室温で1時間、1.5mLチューブ内で反応させた。その後、2%SDSと加熱操作により変性させた試料(GA−BSA100μg(GA−ピリジンを含有するタンパク質を含む)、CML−BSA100μg(CMLを含有するタンパク質を含む)、ヒト血清1mgのいずれか)をバッファー(PBS+1%TritonX-100)で10倍希釈した後、scFv-GRPが結合したカードランビーズに加えて2時間反応させた。カードランビーズをバッファー(PBS-T、PBS+0.05% Tween20))で3回洗浄した後、SDSを含む溶液を加えて95℃、5分間で加熱した。溶出液を回収し、SDS−PAGEを行った。その結果、複数のバンドが確認され、AGE修飾タンパク質が分離・濃縮されていることが確認された。73MuL9scFv-GRP、73MuH19scFv-GRPはGA−BSAを、6D12scFv-GRPはCML−BSAを濃縮していたことから、複数のバンドはGA−ピリジンまたはCML修飾されたタンパク質である。
[実施例3]
実施例で使用したものと同じ方法で作成したカードランビーズを乾燥させた後、走査型電子顕微鏡にて画像を撮影した(図8)。カードランビーズの平均的な球径は10μm〜20μmであり、ビーズ表面の孔径は0.13μm〜0.46μmであった。
実施例で使用したものと同じ方法で作成したカードランビーズを乾燥させた後、走査型電子顕微鏡にて画像を撮影した(図8)。カードランビーズの平均的な球径は10μm〜20μmであり、ビーズ表面の孔径は0.13μm〜0.46μmであった。
[実施例4]
73MuL9scFv-GRPとカードランビーズを用いて、血清中のGA-ピリジン修飾されたタンパク質を分離・濃縮した後に得られた溶液をウエスタンブロッティングにて分析した。一次抗体は抗トランスサイレチン抗体(ウサギ由来)を、二次抗体はHRP標識抗ウサギIgG抗体を用いた。結果を図9に示す。ウエスタンブロッティングによって、血清中のトランスサイレチンがGA-ピリジン修飾されたタンパク質であることが確認された。ここで、レーン1:GRPにより処理した後の試料、レーン2:73MuL9scFv-GRPにより処理した後の試料、レーン3:大腸菌発現系を用いて調製したトランスサイレチンをそれぞれ示す。
73MuL9scFv-GRPとカードランビーズを用いて、血清中のGA-ピリジン修飾されたタンパク質を分離・濃縮した後に得られた溶液をウエスタンブロッティングにて分析した。一次抗体は抗トランスサイレチン抗体(ウサギ由来)を、二次抗体はHRP標識抗ウサギIgG抗体を用いた。結果を図9に示す。ウエスタンブロッティングによって、血清中のトランスサイレチンがGA-ピリジン修飾されたタンパク質であることが確認された。ここで、レーン1:GRPにより処理した後の試料、レーン2:73MuL9scFv-GRPにより処理した後の試料、レーン3:大腸菌発現系を用いて調製したトランスサイレチンをそれぞれ示す。
[比較例1]
カードランビーズとNi-NTAアガロース(Qiagen)に対するヒト血清の非特異的吸着の比較を行った。カードランビーズ、Ni-NTA アガロースビーズに実施例2と同様に変性させたヒト血清1 mgを加え、反応、洗浄を行った。溶出液を回収し、SDS−PAGEを行った結果を図6に示す。カードランビーズに比べて、Ni-NTAアガロースでは非特異的に結合しているバンドが多く見られ、カードランビーズの優位性が示された。
カードランビーズとNi-NTAアガロース(Qiagen)に対するヒト血清の非特異的吸着の比較を行った。カードランビーズ、Ni-NTA アガロースビーズに実施例2と同様に変性させたヒト血清1 mgを加え、反応、洗浄を行った。溶出液を回収し、SDS−PAGEを行った結果を図6に示す。カードランビーズに比べて、Ni-NTAアガロースでは非特異的に結合しているバンドが多く見られ、カードランビーズの優位性が示された。
Claims (10)
- 終末糖化産物(AGE)を抗原とする抗原結合性ポリペプチド配列;および
グルカン認識ドメイン配列またはキチン認識ドメイン配列から選択される多糖認識ドメイン配列
を含むポリペプチドを用いてAGEを分離する工程を含む、AGEの濃縮方法。 - 前記多糖認識ドメイン配列が、グルカン認識タンパク質(GRP)のグルカン認識ドメイン配列である、請求項1に記載の濃縮方法。
- 前記ポリペプチドが多糖から構成される担体に固定化されている、請求項1または2に記載の濃縮方法。
- 担体が固体カードランである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の濃縮方法。
- 前記抗原結合性ポリペプチドが一本鎖抗体(scFv)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の濃縮方法。
- scFvが、配列番号4〜6から選択される配列を有するscFvか、これらの1つと交差競合するscFvである、請求項5に記載の濃縮方法。
- 前記ポリペプチドにおいて、N末端より抗原結合性ポリペプチド配列、多糖認識ドメイン配列の順番である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の濃縮方法。
- 前記ポリペプチドの配列をコードするDNAを導入した形質転換体を用いて、前記ポリペプチドを調製する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の濃縮方法。
- AGEが、Nε−カルボキシメチルリシン、Nε−カルボキシエチルリシン、アルグピリミジン、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、GA−ピリジン、Nω−カルボキシメチルアルギニン、グルコスパンから選択されるアミノ酸、または当該アミノ酸のいずれかを配列に含むタンパク質である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の濃縮方法。
- AGEが、Nε−カルボキシメチルリシン、およびGA−ピリジンから選択されるアミノ酸、または当該アミノ酸のいずれかを配列に含むタンパク質である、請求項9に記載の濃縮方法。
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JP2016202461A JP2018063208A (ja) | 2016-10-14 | 2016-10-14 | 終末糖化産物の濃縮方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP (1) | JP2018063208A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112881581A (zh) * | 2021-01-15 | 2021-06-01 | 中国海洋大学 | 一种定量检测水产品中吡咯素和甲基乙二醛氢咪唑酮的方法 |
EP4296262A1 (de) * | 2019-07-12 | 2023-12-27 | Alzchem Trostberg GmbH | Verfahren zur herstellung einer metastabilen kristallmodifikation von n-(aminoiminomethyl)-2-aminoethansäure (iv) |
-
2016
- 2016-10-14 JP JP2016202461A patent/JP2018063208A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP4296262A1 (de) * | 2019-07-12 | 2023-12-27 | Alzchem Trostberg GmbH | Verfahren zur herstellung einer metastabilen kristallmodifikation von n-(aminoiminomethyl)-2-aminoethansäure (iv) |
CN112881581A (zh) * | 2021-01-15 | 2021-06-01 | 中国海洋大学 | 一种定量检测水产品中吡咯素和甲基乙二醛氢咪唑酮的方法 |
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