JP2018062684A - Fe−Ni系合金薄板の製造方法及びFe−Ni系合金薄板 - Google Patents

Fe−Ni系合金薄板の製造方法及びFe−Ni系合金薄板 Download PDF

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章博 大森
英樹 森
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Abstract

【課題】 耐錆性に優れたFe−Ni系合金薄板とその製造方法を提供する。【解決手段】 冷間圧延を用いたFe−Ni系合金薄板の製造方法であって、仕上げ冷間圧延後のFe−Ni系合金圧延材に、200〜450L/minの流量の窒素ガスを導入した窒素ガス雰囲気中で、温度780℃以下、保持時間0.5分以上の焼鈍を行い、前記Fe−Ni系合金圧延材表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を形成することを特徴とするFe−Ni合金薄板の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、耐錆性に優れたFe−Ni系合金薄板の製造方法及びFe−Ni系合金薄板に関するものである。
リードフレームやメタルマスクに代表されるFe−Ni系合金は、鋼塊をプレスや熱間圧延を施し製造したフープを冷間圧延、焼鈍を繰り返して製造され、例えば、500μm以下の薄板とされる。このFe−Ni系合金薄板において、例えば保管や、運搬途中に発錆の不良がしばしば発生していた。
このような耐錆性が求められるような問題に対して、例えば特開平7−252600号公報、特開平7−252601号公報、特開平8−333654号公報及び特開2003−253338号公報にはFe−Ni系合金薄板の表面に薄いFeの酸化物を形成させて耐錆性を向上させる提案がなされている。
特開平7−252600号公報 特開平7−252601号公報 特開平8−333654号公報 特開2003−253338号公報
上述したFe−Ni合金については従来の技術では耐錆性が十分でなく、さらなる耐錆性の向上が望まれている。本発明の目的は、耐錆性を向上させたFe−Ni系合金薄板とその製造方法を提供することである。
本発明者等は耐錆性が求められるリードフレーム等に用いられるFe−Ni合金について、鋭意検討した結果、表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を形成させることで、発錆を抑制する均一な保護層を形成することができ、耐錆性の点で有利であることを知見した。
すなわち本発明の一態様は、冷間圧延を用いたFe−Ni系合金薄板の製造方法であって、仕上げ冷間圧延後のFe−Ni系合金圧延材に、200〜450L/minの流量の窒素ガスを導入した窒素ガス雰囲気中で、温度780℃以下、保持時間0.5分以上の焼鈍を行い、前記Fe−Ni系合金圧延材表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を形成することを特徴とするFe−Ni合金薄板の製造方法である。
本発明の他の一態様は、表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を有し、かつ前記窒化物相の厚さが100nm以下であるFe−Ni系合金薄板である。
本発明によれば、Fe−Ni系合金薄板の耐錆性を向上させることが可能である。
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明が対象とするFe−Ni系合金薄板は、代表的な組成として、30.0〜50.0質量%のNi、残部がFeと不可避的不純物とを含有するものである。なお、前記Niを6.0%以下のCoで置換しても良い。Si、Mnは、通常、脱酸の目的で使用され、Fe−Ni合金に微量含有されているが、過剰に含有すれば偏析を起こし易くなるため、Siは0.5%以下とし、Mnは1.0%以下としても良い。Cは過度に多く含まれるとエッチング性を阻害するため、Cの上限を0.01%としても良い。また、その厚さは、例えばエッチングする用途にも適用可能なように500μm以下の厚さを有するものである。なお特に下限は限定しないが、取り扱い易さを考慮すると50μm程度の厚さを有することができる。
本発明の製造方法は、圧延材表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を形成させるために、仕上げ冷間圧延後の圧延材にガス流量が200〜450L/minの窒素ガス雰囲気中で、温度780℃以下、保持時間0.5分以上の焼鈍を行うと良い。上述したような条件で焼鈍を行うことにより、発錆防止効果を有する酸化物相と窒化物相とを含む層を形成することができる。ここで酸化物相と窒化物相の形成を兼ねた焼鈍を仕上げ圧延後に行うのは、所定の厚さの酸化物相と窒化物相とを含む層を均一に形成するためである。
焼鈍時の温度が780℃を超える場合、Fe−Ni系合金薄板の機械特性が劣化する傾向にある。温度の上限は720℃がより好ましい。温度の下限は特に限定しないが、600℃が好ましく、630℃がより好ましい。温度の下限はより酸化物相と窒化物相とを含む層を均一に形成するために600℃以上が望ましい。また保持時間が0.5分未満の場合、処理時間が短すぎるために酸化物相と窒化物相とを含む層が均一に形成される前に焼鈍が完了してしまう可能性がある。保持時間の下限は1.0分であることがより好ましい。保持時間の上限は特に限定しないが、生産性を考慮すると、3.0分であることが好ましく、2.0分であることがより好ましい。
本発明の製造方法における焼鈍時の窒素ガス流量は、200〜450L/minと設定する。より好ましくは250〜400L/minである。200L未満となると、焼鈍雰囲気に大気が混入し、均一な酸化物相と窒化物相とを含む層の形成が困難と考えられる。450L/minを超えると、多量のガスを使用しコストが増加する事となり、経済的ではない。なお窒素ガス雰囲気とは窒素ガスを導入した雰囲気であり、空気を超える窒素濃度雰囲気を意味する。
本発明の製造方法では、上述した窒素雰囲気での焼鈍の前に、脱脂洗浄を行うことが好ましい。この脱脂洗浄により圧延材表面の炭素を低減させることで、窒素雰囲気焼鈍後の合金薄板により均一な酸化物相と窒化物相とを含む層を作成することが可能となる。この時の洗浄液にはアルカリ溶液や有機溶剤を使用することができる。また脱脂洗浄時間は、0.1〜1.5min程度と設定することができる。
本発明のFe−Ni系合金薄板は、表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を有し、かつ前記層の厚さが100nm以下であることを特徴とする。この構成により薄くて均一な酸化物相と窒化物相とを含む層を形成し、優れた耐錆性を発揮することが可能である。酸化物相と窒化物相とを含む層の厚さを100nm超とすると、エッチング液の浸透性が阻害される為、エッチング不良問題が発生しやすくなる傾向にある。また、焼鈍時間も長くなり過ぎて、例えば、連続で処理することが困難となり、生産性も劣化するため好ましくない。好ましい酸化物相と窒化物相とを含む層の厚さは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下の厚さでも十分である。下限は特に限定せず、、例えば0.05nmと設定することができる。なお本実施形態での酸化物相と窒化物相とを含む層の厚みは、X線光電子分光装置(ESCA)で測定することができる。未知の試料に対しては1分のドライエッチングによってどの程度ドライエッチされるかは不明であるため、本実施形態では、例えば、ESCA分析時に1分のドライエッチングにてSiO標準試験片を1.7nmドライエッチされるように調整し、本発明の試料に対しては1分のドライエッチングで1.7nmドライエッチされたものとみなすことで、厚みを測定することとする。
真空溶解、均熱化熱処理、熱間プレス及び熱間圧延を行って厚さ3.0mmの熱間圧延材を準備した。熱間圧延材の化学組成を表1に示す。
前述の熱間圧延材を化学研摩、機械研磨にて熱間圧延材表面の酸化層を除去し、トリム加工で熱間圧延材幅方向の両端部にある熱間圧延時の亀裂を除去して厚さ1.9mmの冷間圧延用素材を準備した。なお、冷間圧延用素材の幅は680mmである。
次に、前述の冷間圧用素材に対し、冷間圧延と連続焼鈍とを繰り返した後、最終の仕上げ冷間圧延を行って厚みを0.5mmに調整した後、N純度99%以上の窒素ガスを流量325L/minで炉内に導入しながら、温度660℃、保持時間1.4minの条件で歪取り焼鈍を行い、本発明のFe−Ni系合金薄板を作成した。
Figure 2018062684
上記のFe−Ni合金薄板についてESCA分析を行った。なお酸化物相と窒化物相とを含む層の深さ方向の測定は、ESCA分析時に1分のドライエッチングにてSiO標準試験片を1.7nmドライエッチされるように調整し、本発明の試料に対しては1分のドライエッチングで1.7nmドライエッチされたものとみなして測定した。結果、本発明のFe−Ni系合金薄板の表面に、酸素が約35wt%、窒素が約0.7wt%存在することが確認できた。これにより本発明は酸化物相と窒化物相とを含む層が形成されていると推定でき、本発明のFe−Ni系合金薄板は、良好な耐錆性を備えることが可能である。

Claims (2)

  1. 冷間圧延を用いたFe−Ni系合金薄板の製造方法であって、
    仕上げ冷間圧延後のFe−Ni系合金圧延材に、200〜450L/minの流量の窒素ガスを導入した窒素ガス雰囲気中で、温度780℃以下、保持時間0.5分以上の焼鈍を行い、前記Fe−Ni系合金圧延材表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を形成することを特徴とするFe−Ni合金薄板の製造方法。
  2. 表面に酸化物相と窒化物相とを含む層を有し、かつ前記層の厚さが100nm以下であるFe−Ni系合金薄板。

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