JP2018062597A - 濡れ剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】半導体製造の疎水表面の研磨の際、表面粗さと表面欠陥低減、研磨速度向上が良好な濡れ剤の提供。【解決手段】式(1)と(2)で表される構造を含む高分子化合物を含む、濡れ剤。(Z1はO及びNの一つ以上を含む置換基)【選択図】なし

Description

本発明は濡れ剤、疎水表面用研磨液組成物、並びに疎水表面用研磨液組成物を用いたシリコンウェーハの研磨方法及び半導体基板の製造方法に関する。
近年、半導体メモリの高記録容量化に対する要求の高まりから半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このため半導体装置の製造過程で行われるフォトリソグラフィーにおいて焦点深度は浅くなり、シリコンウェーハ(ベアウェーハ)の欠陥低減や平滑性に対する要求はますます厳しくなっている。
シリコンウェーハの品質を向上する目的で、シリコンウェーハの研磨は多段階で行われている。特に研磨の最終段階で行われる仕上げ研磨は、表面粗さ(ヘイズ)の抑制と研磨後のシリコンウェーハ表面の濡れ性向上(親水化)によるパーティクルやスクラッチ、ピット等の表面欠陥(LPD:Light point defects)の抑制とを目的として行われている。
仕上げ研磨に用いられる研磨液組成物としては、コロイダルシリカ、及びアルカリ化合物を用いた化学的機械研磨用の研磨液組成物が知られている。さらにヘイズレベルを改善することを目的とした研磨液組成物として、コロイダルシリカ、シリコンウェーハ表面の濡れ性向上に寄与するヒドロキシエチルセルロース(HEC)、及びポリエチレンオキサイド(PEO)を含む化学的機械研磨用の研磨液組成物が知られている(特許文献1)。
一方、表面欠陥(LPD)の数を低減することを目的とした研磨液組成物として、シリコンウェーハ表面に親水膜を形成する、水溶性セルロース又はビニルポリマーを含み、ナトリウムイオン及び酢酸イオンのいずれか一方の濃度が10ppb以下の研磨液組成物が知られている(特許文献2)。うねり及び/又はヘイズ改善を目的とした研磨液組成物として、シリコンウェーハ表面の親水化に寄与する、炭素長鎖構造を有し側鎖としてヒドロキシ低級アルコキシ基を有する鎖状炭化水素系高分子(例えば、エチレンオキサイド付加ポリビニルアルコール)を含有する研磨液組成物が知られている(特許文献3)。段差を有する半導体ウェーハの表面の平坦化に使用される研磨液組成物として、段差解消剤としてポリビニルアルコール類を含む研磨液組成物が知られている(特許文献4)。シリコンウェーハ表面に対する吸着性に優れ、ポリビニルアルコールと炭素数1〜7のアルデヒド化合物とのアセタール化反応により得られるポリビニルアセタールを含み、ウェーハ表面の平滑化、結晶欠陥(COP)の抑制に有効な半導体用濡れ剤及び研磨液組成物が知られている(特許文献5)。シリコン基板に対する濡れ性付与特性に優れた第1単量体単位と、砥粒子に対する吸着特性に優れた第2単量体単位とから構成された共重合体として、例えば、PVA-PVPグラフト共重合体を含む研磨液組成物が知られている(特許文献6)。
上記の通り、研磨された表面の改善には、被研磨面の濡れ性が大きく影響する。また、シリコン単結晶からなる半導体基板の製造において、研磨されたシリコンウェーハ表面に表面欠陥(LPD)の原因となるごみ等が付着することを防止するために、研磨されたシリコンウェーハの洗浄に使用されるリンス液組成物や、研磨されたシリコンウェーハを次工程の対象とする前に、槽内で一時保管するための浸漬液等についても、シリコンウェーハに対して濡れ性を付与できることを要する。
また、シリコンウェーハ表面、チッ化シリコン膜表面、ポリシリコン膜表面のような疎水表面の研磨速度の向上のためには、被研磨面が濡れていることを要する。
特開2004―128089号公報 特開2008―53414号公報 特開平11−140427号公報 WO2011/093223 特開2015−76494号公報 WO2013/137212
上記の通り、半導体の製造過程においては、表面の濡れを担保する工程が、複数存在する。
また、上記特許文献に記載の研磨液組成物を用いて、シリコンウェーハ表面等の疎水表面の研磨をする際、疎水表面の濡れ性を向上させるために当該表面に対する吸着力が強い研磨助剤を用いると、研磨速度が低下するため、表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)の低減と、研磨速度の向上との両立が、良好に行えない。
そこで、本発明では、半導体の製造の種々の工程で好適に使用でき、疎水表面の研磨の際に使用した場合は、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減と研磨速度の向上との両立が良好に行える、濡れ剤、疎水表面用研磨液組成物、並びに疎水表面用研磨液組成物を用いたシリコンウェーハの研磨方法及び半導体基板の製造方法に関する。
本発明の濡れ剤は、下記一般式(1)で表される構成単位Iと、下記一般式(2)で表される構成単位IIと、を含む。ただし、下記一般式(2)において、Z1は窒素原子及び酸素原子のうち1つ以上の原子を含む置換基を示す。
Figure 2018062597
本発明の疎水表面用研磨液組成物は、
研磨粒子(成分A)と、
アンモニア、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物(成分B)と、
下記一般式(1)で表される構成単位Iと、下記一般式(2)で表される構成単位IIと、を含む高分子化合物(成分C)と、を含有する。
Figure 2018062597
ただし、上記一般式(2)において、Z1は窒素原子及び酸素原子のうち1つ以上の原子を含む置換基を示す。
本発明のシリコンウェーハの研磨方法は、本発明の疎水表面用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む。
本発明の半導基板の製造方法は、本発明の疎水表面用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む。
本発明によれば、半導体の種々の製造工程で好適に使用でき、疎水表面の研磨に使用した場合は、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減と研磨速度の向上との両立が良好に行える、濡れ剤、疎水表面用研磨液組成物、並びに疎水表面用研磨液組成物を用いたシリコンウェーハの研磨方法及び半導体基板の製造方法に関する。
本発明では、下記一般式(1)で表される構成単位Iと、下記一般式(2)で表される構成単位IIと、を含む高分子化合物が含まれることにより、疎水表面に濡れ性を付与でき、当該高分子化合物を、疎水表面用研磨液組成物(以下、「研磨液組成物」と略称する場合もある。)の調製に用いた場合は、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減と研磨速度の向上との両立が良好に行える、という知見に基づく。下記一般式(2)において、Z1は窒素原子及び酸素原子のうち1つ以上の原子を含む置換基を示す。
Figure 2018062597
上記本発明の効果の発現機構の詳細は明らかではないが、出願人は、以下のように推定している。
本発明の濡れ剤及び研磨液組成物に含まれる、上記高分子化合物の構成単位Iが疎水表面に吸着する部位である水酸基を含むので、シリコンウェーハ表面等の疎水表面上に高分子化合物の吸着層を形成して、疎水表面を濡らすことができる。そのため、上記高分子化合物を含む濡れ剤を、研磨液組成物の調製に使用した場合は、上記高分子化合物が疎水表面に適度に吸着して、研磨液組成物に含まれる含窒素塩基性化合物等による腐食を抑制することで、良好な表面粗さ(ヘイズ)を達成するとともに、疎水表面に対して良好な濡れ性を発現し、疎水表面の乾燥によるパーティクルの付着を抑制して低表面欠陥(LPD)を可能とする。また、上記高分子化合物が疎水表面に吸着することによって疎水表面の濡れ性が向上するので、疎水表面の研磨の均一性が向上し、このことによっても表面粗さ(ヘイズ)が低減されているものと推察される。
また、ポリビニルアルコールをアルキル基を有するアルデヒドで変性したアルキル変性ポリビニルアセタールがシリコンウェーハへの吸着性が高く、平滑化、低欠陥に有効なことは知られていた(特許文献5参照)。しかし、アルキル変性ポリビニルアセタールがシリコンウェーハ表面を過度に保護してしまうために、研磨速度が遅いという課題があった。更に、アルカリ条件ではシリカ粒子とシリコンウェーハの表面電荷はともに負に帯電しており、その電荷反発によってシリカ粒子がシリコンウェーハに接近できず、研磨速度が十分に発現できない。本発明では、上記高分子化合物の構成単位IIが、シリカ粒子に吸着する、窒素原子及び酸素原子のうち1つ以上の原子を含む置換基を含んでいるので、上記高分子化合物を含む濡れ剤を研磨液組成物の調製に使用した場合は、上記高分子化合物が、シリカ粒子と疎水表面とのバインダーとして働く。その結果、高分子化合物(成分C)は、シリコンウェーハの研磨速度の向上に寄与しているものと考えられる。
以上のとおり、上記高分子化合物を含む本発明の濡れ剤は、半導体の製造における種々の工程で好適に使用でき、疎水表面の研磨に使用した場合は、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減と研磨速度の向上との両立が良好に行える。また、本発明では、その理由は明らかではないが、研磨助剤として、上記高分子化合物分を含むことにより、アルキル変性ポリビニルアセタールを含む場合よりも、研磨速度が顕著に速く、表面欠陥(LPD)が顕著に少ない。
(高分子化合物)
本発明の濡れ剤及び研磨液組成物に含まれる高分子化合物は、下記一般式(1)で表される構成単位Iと、下記一般式(2)で表される構成単位IIと、を含む。ただし、下記一般式(2)において、Z1は窒素原子及び酸素原子のうち1つ以上の原子を含む置換基を示す。
Figure 2018062597
高分子化合物における構成単位Iの供給源は、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、ポリビニルアルコールである。
構成単位IIにおける、Z1は、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくは−Y1NR12、−Y1NHCOR3、−Y1CONHR4又は−(AO)m−Hであり、より好ましくは−Y1NHCOR3である。また、Z1は、濡れ性の向上の観点から、高い親水性を呈するアミド骨格(アミド結合を含む骨格)を含むと好ましく、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の研磨速度の向上の観点から、窒素原子及び酸素原子の両方を含む置換基であると好ましい。
前記Y1は、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくは、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、より好ましくは、メチレン基又はエチレン基であり、更に好ましくは、メチレン基である。
前記R1、R2、R3及びR4は、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくは、独立に水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、より好ましくは、独立に水素原子、メチル基又はエチル基であり、更に好ましくは、水素原子又はメチル基である。
前記AOは、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくは、炭素数が2以上4以下のオキシアルキレン基であり、より好ましくは、エチレンオキシ基(EO)、プロピレンオキシ基(PO)及びブチレンオキシ基(BO)から成る群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシ基であり、更に好ましくは、EO及びPOから選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシ基であり、更により好ましくはEOである。
AOの平均付加モル数mは、研磨速度向上の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは75以下、更に好ましくは50以下である。
高分子化合物の全構成単位中における、前記構成単位Iの割合は、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の研磨速度の向上の観点から、好ましくは0モル%を越え、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更により好ましくは70モル%以上であり、そして、表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは、90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
高分子化合物の全構成単位中における、前記構成単位IIの割合は、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の研磨速度の向上の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、更により好ましくは15モル%以上であり、そして、保存安定性の向上、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは100モル%未満、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更により好ましくは30モル%以下、更により好ましくは20モル%以下である。
高分子化合物が、前記構成単位IIのZ1がアミド基を含むアミド変性ポリビニルアセタールである場合、疎水性を呈するアセタール構造と高い親水性を呈するアミド骨格を含むので、構成単位Iに含まれる水酸基と相まって、高分子化合物は高い濡れ性を呈する。アミド変性ポリビニルアセタールにおけるアセタール化率は、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の研磨速度の向上の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、更により好ましくは15モル%以上であり、そして、保存安定性の向上、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは、100モル%未満、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更により好ましくは30モル%以下、更により好ましくは20モル%以下である。アセタール化率は、1H-NMR(Agilent Technologies社製、400MHz)を用いて、反応剤の導入率を計算し、OH基の消費された割合をアセタール化率とした。
前記高分子化合物は、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の研磨速度の向上の観点から、構成単位I及び構成単位II以外に、下記一般式(3)で表される構成単位IIIを含んでいてもよい。
Figure 2018062597
上記一般式(3)において、X1は窒素原子又は酸素原子を示し、nは1以上5以下の数を示す。X1は、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくは窒素原子である。nは、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくは2以上4以下であり、より好ましくは3である。
高分子化合物の全構成単位中における、前記構成単位IIIの割合は、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の研磨速度の向上の観点から、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.05モル%以上、更に好ましくは2モル%以上であり、そして、保存安定性及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更により好ましくは50モル%以下である。
高分子化合物は、濡れ性が損なわれない範囲で、前記構成単位I〜III以外の構成単位を含んでいてもよい。前記構成単位I〜III以外の構成単位を形成する単量体成分としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、スチレンスルホン酸、ビニルピロリドン、エチルオキサゾリン、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。
高分子化合物の全構成単位中における、前記構成単位I及び前記構成単位IIの合計の質量割合は、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の、研磨速度向上と、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更により好ましくは30質量%以上、更により好ましくは50質量%以上、更により好ましくは80質量%以上であり、更により好ましくは実質的に100質量%であり、更により好ましくは100質量%である。
高分子化合物における各構成単位の配列は、ブロックでもランダムでもよい。
高分子化合物の重量平均分子量は、高分子化合物が研磨液組成物の調製に使用された場合の研磨速度の向上の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、更により好ましくは50,000以上であり、そして、高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくは500,000以下、より好ましくは200,000以下、更に好ましくは100,000以下である。高分子化合物の重量平均分子量は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
(高分子化合物の製造方法)
本発明における高分子化合物の一例は、例えば、ポリビニルアルコールとアセトアミド化合物とを酸触媒の存在下で脱水縮合反応させて、ポリビニルアルコールの水酸基の一部をアセタール基に変性させることにより得ることができる。水酸基のアセタール化は、従来公知の方法により行える。
アセトアミド化合物としては、例えば、N-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミド、N-メチル-N-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミド、N-(4,4-ジメトキシブチル)アセトアミド、N-(3,3-ジメトキシプロピル)アセトアミド、N ,N-ジメトキシアセトアミド、N-メチル-N-(2,2-ジメトキシエチル)-2-アミノアセトアミド、N ,N-ジエチル-2,2-ジメトキシアセトアミド等が挙げられる。アセトアミド化合物は、入手容易性及び高分子化合物の合成の容易性の観点から、好ましくはN-メチル-N-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミド、N-(4,4-ジメトキシブチル)アセトアミドより好ましくはN-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミドである。
[濡れ剤]
本発明の濡れ剤は、上記高分子化合物と水系媒体とを含む。本発明の濡れ剤には、高分子化合物の濡れ剤としての機能が損なわれない範囲で、更に、上記高分子化合物以外の水溶性高分子化合物、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
本発明の濡れ剤における上記高分子化合物の含有量は、濡れ性の向上の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、更に好ましくは0.008質量%以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、更により好ましくは1質量%以下であり、更により好ましくは0.5質量%以下であり、更により好ましくは0.1質量%以下である。
本発明の濡れ剤に含まれる水系媒体としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒との混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。水系媒体が、水と溶媒との混合媒体である場合、混合媒体全体に対する水の割合は、特に限定されるわけではないが、経済性の観点から、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。
本発明の濡れ剤における水系媒体の含有量は、濡れ剤の取り扱いが良ければ特に制限はなく、高分子化合物及び任意成分の残余であってよい。
[疎水表面用研磨液組成物]
本発明の研磨液組成物は、シリカ粒子(成分A)と、含窒素塩基性化合物(成分B)と、上記高分子化合物(成分C)と、水系媒体とを含む研磨液組成物であって、シリコンウェーハ表面の研磨に適している。
[シリカ粒子(成分A)]
本発明の研磨液組成物には、研磨材として、シリカ粒子が含まれる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられるが、シリコンウェーハの表面平滑性を向上させる観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状が好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれる研磨材がコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコンウェーハの汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、そして、研磨速度の確保と、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、40nm以下が好ましく、35nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。
特に、シリカ粒子としてコロイダルシリカを用いた場合には、平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、そして、研磨速度の確保と、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、40nm以下が好ましく、35nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましい。
シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて算出される。比表面積は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
シリカ粒子の会合度は、研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、3.0以下が好ましく、1.1以上3.0以下がより好ましく、1.8以上2.5以下が更に好ましく、2.0以上2.3以下が更により好ましい。シリカ粒子の形状はいわゆる球型といわゆるマユ型であることが好ましい。シリカ粒子がコロイダルシリカである場合、その会合度は、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、3.0以下が好ましく、1.1以上3.0以下がより好ましく、1.8以上2.5以下が更に好ましく、2.0以上2.3以下が更により好ましい。
シリカ粒子の会合度とは、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出される。平均二次粒子径は、動的光散乱法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
シリカ粒子の会合度の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平6−254383号公報、特開平11−214338号公報、特開平11−60232号公報、特開2005−060217号公報、特開2005−060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、研磨速度の確保の観点から、SiO2換算で、0.01質量%以上が好ましく、0.07質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、そして、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、SiO2換算で、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましい。
[含窒素塩基性化合物(成分B)]
本発明の研磨液組成物は、研磨液組成物の保存安定性の向上、研磨速度の確保、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、水溶性の塩基性化合物を含有する。水溶性の塩基性化合物としては、アンモニア、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物である。ここで、「水溶性」とは、水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいい、「水溶性の塩基性化合物」とは、水に溶解したとき、塩基性を示す化合物をいう。
前記含窒素塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N一ジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。これらの含窒素塩基性化合物は2種以上を混合して用いてもよい。本発明の研磨液組成物に含まれ得る含窒素塩基性化合物としては、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点、研磨液組成物の保存安定性の向上、及び、研磨速度の確保の観点からアンモニアがより好ましい。
本発明の研磨液組成物に含まれる含窒素塩基性化合物の含有量は、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.007質量%以上が更に好ましく、0.010質量%以上が更により好ましく、0.012質量%以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.025質量%以下が更に好ましく、0.018質量%以下が更により好ましく、0.014質量%以下が更により好ましい。
[高分子化合物(成分C)]
本発明の研磨液組成物に含まれる高分子化合物(成分C)の含有量は、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上が更により好ましく、そして、同様の観点から、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.035質量%以下が更に好ましく、0.030質量%以下が更により好ましい。
[水系媒体]
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、本発明の濡れ剤に含まれる水系媒体と同じものを用いることができる。本発明の研磨液組成物における水系媒体の含有量は、特に限定されるわけではなく、成分A〜C及び後述する任意成分の残余であってよい。
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、研磨速度の向上、及び表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の観点から、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、10.0以上が更に好ましく、そして、表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。pHの調整は、必要に応じて、含窒素塩基性化合物(成分B)及び/又はpH調整剤を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
[任意成分(助剤)]
本発明の研磨液組成物には、本発明の効果が妨げられない範囲で、更に、高分子化合物(成分C)以外の水溶性高分子化合物(成分D)、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
[水溶性高分子化合物(成分D)]
本発明の研磨液組成物には、シリコンウェーハの表面欠陥の低減の観点から、更に高分子化合物(成分C)以外の水溶性高分子化合物(成分D)を含有してもよい。この水溶性高分子化合物(成分D)は、親水基を有する高分子化合物であり、水溶性高分子化合物(成分D)の重量平均分子量は、研磨速度の確保、シリコンウェーハの表面欠陥の低減の観点から、10,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましい。上記成分Eを構成する供給源である単量体としては、例えば、アミド基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基等の水溶性基を有する単量体が挙げられる。このような水溶性高分子化合物(成分D)としては、ポリアミド、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。ポリアミドとしては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン、ポリジメチルアクリルアミド、ポリジエチルアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。ポリ(N−アシルアルキレンイミン)としては、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)、ポリ(N−カプロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−ノナデゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)、ポリ(N−ブチオニルエチレンイミン)等があげられる。セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、及びカルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は任意の割合で2種以上を混合して用いてもよい。
[pH調整剤]
pH調整剤としては、酸性化合物等が挙げられる。酸性化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸又は安息香酸等の有機酸等が挙げられる。
[防腐剤]
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、(5−クロロ−)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
[アルコール類]
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2−メチル−2−プロパノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるアルコール類の含有量は、0.1質量%〜5質量%が好ましい。
[キレート剤]
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるキレート剤の含有量は、0.01質量%〜1質量%が好ましい。
[アニオン性界面活性剤]
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
[非イオン性界面活性剤]
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
尚、上記において説明した各成分の含有量は、使用時における含有量であるが、本発明の研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストを更に低くできる点で好ましい。濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用すればよい。濃縮倍率としては、希釈した後の研磨時の濃度を確保できれば、特に限定するものではないが、製造及び輸送コストを更に低くできる観点から、2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、20倍以上が更に好ましく、30倍以上が更により好ましく、また、100倍以下が好ましく、80倍以下がより好ましく、60倍以下が更に好ましく、50倍以下が更により好ましい。
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液におけるシリカ粒子(成分A)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、SiO2換算で、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましく、そして、保存安定性を向上させる観点から、SiO2換算で、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が更により好ましく、9質量%以下が更により好ましい。
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における含窒素塩基性化合物(成分B)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、保存安定性の向上の観点から、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における高分子化合物(成分C)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が更により好ましく、0.1質量%以上が更により好ましく、そして、保存安定性の向上の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が更により好ましい。
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、上記濃縮液の25℃におけるpHは、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好しく、そして、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。
次に、本発明の研磨液組成物の製造方法の一例について説明する。
本発明の研磨液組成物の製造方法の一例は、何ら制限されず、例えば、シリカ粒子(成分A)と、含窒素塩基性化合物(成分B)と、高分子化合物(成分C)と、水系媒体と、必要に応じて任意成分とを混合することによって調製できる。
シリカ粒子の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。シリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去すると好ましい。シリカ粒子の水系媒体への分散は、高分子化合物(成分C)の存在下で行うと好ましい。具体的には、高分子化合物(成分C)と水系媒体とを含む濡れ剤を調製した後、当該濡れ剤とシリカ粒子とを混合し、次いで、必要に応じて、濡れ剤とシリカ粒子の混合物を水系媒体で希釈すると好ましい。
本発明の研磨液組成物は、例えば、半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハを研磨する研磨工程や、シリコンウェーハを研磨する研磨工程を含むシリコンウェーハの研磨方法に用いられる。
前記シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本発明の研磨液組成物は、上記仕上げ研磨工程で用いられるとより好ましい。
前記半導体基板の製造方法や前記シリコンウェーハの研磨方法では、シリコンウェーハを研磨する研磨工程の前に、本発明の研磨液組成物(濃縮液)を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、前記水系媒体を用いればよい。
前記希釈工程で希釈される濃縮液は、製造及び輸送コスト低減、保存安定性の向上の観点から、例えば、成分Aを2〜40質量%、成分Bを0.02〜5質量%、成分Cを0.005〜5質量%含んでいると好ましい。
下記の実施例1〜4及び比較例1〜5で用いた表1中の高分子化合物a〜iの合成方法等は下記のとおりである。
(1)高分子化合物の合成方法等
(1−1)N-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミドの合成
表1に記載のアミド変性ポリビニルアセタールの合成に使用したN-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミドの合成は、下記の通り行った。
窒素置換を行った反応器中で、テトラヒドロフラン(250g)に溶解した2,2-ジメトキシエチルアミン(15.7g)に無水酢酸(18.3g)とトリエチルアミン(18.2g)を加えて室温下で2時間撹拌を行った。反応終了後、エバポレーションで部分的に揮発させた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。次いで、油層と水層とに分離し、水層からジクロロメタンで油分を3回抽出した。続いて、抽出により得た油分と油層とを混合し、それを飽和食塩水で洗浄した。そして、無水硫酸ナトリウムで水を除去した後、濾過、乾燥によってオイル状のN-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミド18.0gを得た。
(1−2)高分子化合物aの合成
クラレポバールPVA-117(けん化度98-99%、重量平均分子量7万)10.0gを熱水90.0gに溶解した後、室温まで冷却した。得られたPVA溶液に、N-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミド3.68gと濃塩酸10.0gを添加し、室温下で24時間撹拌した。続いて、5質量%水酸化ナトリウム水溶液でpH7に中和した。得られた反応液を透析膜(スペクトラポア7 RC透析チューブ分画分子量1,000、Spectrum Laboratories Inc.製)で限外濾過した。濾過処理された反応液を凍結乾燥して、白色固体(アミド変性ポリビニルアセタール、重量平均分子量7万、アセタール化率11%)10.3gを得た。1H−NMRによって、11mol%のOH基がアセタール基に変性していることを確認した。尚、一般式(2)中、Z1は、−Y1NR12であり、Y1、はメチレン基、R1及びR2はともにメチル基である。
(1−3)高分子化合物bの合成
N-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミドの添加量を4.68gとしたこと以外は高分子化合物aの合成方法と同様の方法で白色固体(アミド変性ポリビニルアセタール、重量平均分子量7万、アセタール化率17%)10.7gを得た。1H−NMRによって、17mol%のOH基がアセタール基に変性していることを確認した。
(1−4)高分子化合物cの合成
N-(2,2-ジメトキシエチル)アセトアミドの添加量を6.69gとしたこと以外は高分子化合物aの合成方法と同様の方法で,白色固体(アミド変性ポリビニルアセタール、重量平均分子量7万、アセタール化率23%)12.0gを得た。1H−NMRによって、23mol%のOH基がアセタール基に変性していることを確認した。
(1−5)高分子化合物dの合成
クラレポバールPVA-117の代わりに、クラレポバールPVA-105(けん化度98-99%、重量平均分子量2万)を使用したこと以外は、高分子化合物bの合成方法と同様の方法で白色固体(アミド変性ポリビニルアセタール、重量平均分子量2万、アセタール化率17%)10.5gを得た。1H−NMRによって、17mol%のOH基がアセタール基に変性していることを確認した。
(1−6)高分子化合物e
高分子化合物eとして,クラレポバールPVA-105(PVA、けん化度98-99%、重量平均分子量2万、アセタール化率0%)を用いた。
(1−7)高分子化合物f
ポリ(1-ビニルピロリドン-co-ビニルアセテート)(シグマアルドリッチ#190845)20.0gをメタノール180gに溶解させ、更にNaOH 2.00gを添加し、40℃で6時間撹拌を保持した。得られた反応液を乾燥してメタノールを除去した後、透析膜(スペクトラポア7 RC透析チューブ分画分子量1,000、Spectrum Laboratories Inc.製)で限外濾過した。濾過処理された反応液を凍結乾燥して、白色固体(PVA―co―PVA、重量平均分子量5万)15.2gを得た。
(1−8)高分子化合物g
高分子化合物gとして、エチレンオキサイド付加ポリビニルアルコール(EO変性PVA、商品名:エコマティ320R、重量平均分子量7万、日本合成化学工業社製)を用いた。
(1−9)高分子化合物h
特開2015-076494(特願2013-211489)の製造例2に記載の方法にてアルキル変性ポリビニルアセタールを合成し、高分子化合物hとした。1H−NMRによって、OH基の28mol%がアルキル基を有するアセタール基に変化している事が判った。また、重量平均分子量は3万であった。
(1−10)高分子化合物i
特開2009-147267に準じて、PVA−PVPグラフト共重合体を合成した。PVAにはクラレポバールPVA-105(PVA、けん化度98-99%、重量平均分子量2万)を使用し、N-ビニル-2-ピロリドンは43wt%(対PVA)使用した。その結果、高分子化合物iとして、PVA−PVPグラフト共重合体(重量平均分子量5万)を得た。
(2)各種パラメーターの測定方法
(2−1)高分子化合物の重量平均分子量の測定
表1に記載の高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づき算出した。尚、高分子化合物eの重量平均分子量についてはカタログ値である。
〈測定条件〉
装置:HLC-8320 GPC(東ソー株式会社、検出器一体型)
カラム:GMPWXL+GMPWXL(アニオン)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:0.5ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:ポリエチレングリコール
(2−2)シリカ粒子の平均一次粒子径
シリカ粒子の平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
シリカ粒子の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
[前処理]
(a)スラリー状のシリカ粒子を硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状のシリカ粒子をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(砥粒)をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
(2−3)シリカ粒子の平均二次粒子径
シリカ粒子の平均二次粒子径(nm)は、シリカ粒子の濃度が0.25質量%となるようにシリカ粒子をイオン交換水に添加した後、得られた水溶液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて測定した。
(3)研磨液組成物の調製
シリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm、会合度2)、高分子化合物、28質量%アンモニア水(キシダ化学(株)試薬特級)、イオン交換水を攪拌混合して、実施例1〜4、比較例1〜5の研磨液組成物(いずれも濃縮液、pH10.6±0.1(25℃))を得た。尚、表1における各評価は、前記研磨液組成物をイオン交換水で40倍に希釈して得た研磨液組成物を用いた値である。濃縮液を40倍に希釈して得た研磨液組成物(pH10.6±0.1(25℃))における、シリカ粒子、高分子化合物、アンモニアの含有量は、各々、0.17質量%(SiO2換算濃度)、0.01質量%、0.01質量%とした。
(4)各種評価方法
(4−1)研磨方法
濃縮液を40倍に希釈して得た研磨液組成物を研磨直前にフィルター(コンパクトカートリッジフィルター MCP−LX−C10S アドバンテック株式会社)にてろ過し、下記の研磨条件で下記のシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ(伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)に対して仕上げ研磨を行った。当該仕上げ研磨に先立ってシリコンウェーハに対して市販の研磨剤組成物を用いてあらかじめ粗研磨を実施した。粗研磨を終了し仕上げ研磨に供したシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)は、2.775(ppm)であった。表面粗さ(ヘイズ)は、KLA Tencor社製のSurfscan SP1(商品名)を用いて測定される暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値である。
<仕上げ研磨条件>
研磨機:片面8インチ研磨機GRIND-X SPP600s(岡本工作製)
研磨パッド:スエードパッド(東レ コーテックス社製 アスカー硬度64 厚さ 1.37mm ナップ長450um 開口径60um)
シリコンウェーハ研磨圧力:100g/cm2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:5分
研磨剤組成物の供給速度:150ml/cm2
研磨剤組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:60rpm
仕上げ研磨後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
(4−2)研磨速度
研磨前後の各シリコンウェーハの重さを精密天秤(Sartorius社製「BP−210S」)を用いて測定し、得られた重量差をシリコンウェーハの密度、面積および研磨時間で除して、単位時間当たりの片面研磨速度を求めた。
(4−3)シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の評価
洗浄後のシリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ)の評価には、表面粗さ測定装置「Surfscan SP1-DLS」(KLA Tencor社製)を用いて測定される、暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値を用いた。また、表面欠陥(LPD)はHaze測定時に同時に測定され、シリコンウェーハ表面上の粒径が45nm以上のパーティクル数を測定することによって評価した。表面欠陥(LPD)の評価結果は、数値が小さいほど表面欠陥が少ないことを示す。また、Hazeの数値は小さいほど表面の平坦性が高いことを示す。研磨速度、表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)の結果を表1に示した。研磨速度、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の測定は、2枚のシリコンウェーハに対して行い、各々平均値を示した。
Figure 2018062597
表1に示されるように、実施例1〜4の研磨液組成物を用いることで、比較例1〜5の研磨液組成物を用いた場合に比べて、研磨速度の向上と、表面粗さ(ヘイズ)と表面欠陥(LPD)の低減の両立が可能になった。
本発明の濡れ剤を用いれば、シリコンウェーハ表面、チッ化シリコン膜表面、ポリシリコン膜表面のような疎水表面を良好に濡らすことができる。また、本発明の濡れ剤を疎水表面の研磨に使用すれば、研磨速度の向上と、表面粗さ(ヘイズ)と表面欠陥(LPD)の低減とを両立できる。よって、本発明の研磨液組成物は、半導体の製造の種々の工程で有用であり、なかでも、シリコンウェーハの仕上げ研磨用の研磨液組成物として有用である。

Claims (11)

  1. 下記一般式(1)で表される構成単位Iと、下記一般式(2)で表される構成単位IIと、を含む高分子化合物を含有する濡れ剤。
    Figure 2018062597
    ただし、上記一般式(2)において、Z1は窒素原子及び酸素原子のうち1つ以上の原子を含む置換基を示す。
  2. 前記一般式(2)において、Z1が、−Y1NR12、−Y1NHCOR3、−Y1CONHR4又は−(AO)m−Hであり、Y1は、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R1、R2、R3及びR4は独立に水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、AOは炭素数が2以上4以下のオキシアルキレン基、mはAOの平均付加モル数であって1以上100以下を表す数である、請求項1に記載の濡れ剤。
  3. 前記高分子化合物は、更に、下記一般式(3)で表される構成単位IIIを含む、請求項1又は2に記載の濡れ剤。
    Figure 2018062597
    ただし、上記一般式(3)において、X1は窒素原子又は酸素原子を示し、nは1以上5以下の数を示す。
  4. 前記高分子化合物は、前記構成単位IIを1mol%以上含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の濡れ剤。
  5. 前記高分子化合物の重量平均分子量が、1,000以上500,000以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の濡れ剤。
  6. シリカ粒子(成分A)と、
    アンモニア、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物(成分B)と、
    下記一般式(1)で表される構成単位Iと、下記一般式(2)で表される構成単位IIと、を含む高分子化合物(成分C)と、を含有する、疎水表面用研磨液組成物。
    Figure 2018062597
    ただし、上記一般式(2)において、Z1は窒素原子及び酸素原子のうち1つ以上の原子を含む置換基を示す。
  7. 前記一般式(2)において、Z1が、−Y1NR12、−Y1NHCOR3、−Y1CONHR4又は−(AO)m−Hであり、Y1は、炭素数1以上4以下のアルキレン基であり、R1、R2、R3及びR4は独立に水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、AOは炭素数が2以上4以下のオキシアルキレン基、mはAOの平均付加モル数であって1以上100以下を表す数である、請求項6に記載の疎水表面用研磨液組成物。
  8. 25℃におけるpHが8.0以上12.0以下である、請求項6又は7に記載の疎水表面用研磨液組成物。
  9. 前記疎水表面用研磨液組成物は、シリコン単結晶を研磨するためのシリコンウェーハ用研磨液組成物である、請求項6から8のいずれか一項に記載の疎水表面用研磨液組成物。
  10. 請求項6から9のいずれか一項に記載の疎水表面用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む、シリコンウェーハの研磨方法。
  11. 請求項6から9のいずれか一項に記載の疎水表面用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
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