以下、本実施形態に係る水浄化システムについて詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書において、水浄化システムで水質が改善される、井戸、河川若しくは池等の水源から汲み出した水又は雨水を「原水」という。そして、水質が改善されて浄化された原水を「浄水」という。
[第一実施形態]
電力が安定供給されないことが多い発展途上国では、停電時でも水が使えるように、屋根や屋上に設けた貯水タンクに生活用水を溜め置きする場合が多い。そして、貯め置きした水を浄化して、生活用水として使用している。
例えば、図1(a)に示すように、建物1の屋根2に、貯水タンク110を設置し、生活用水を貯め置きしている。貯水タンク110の上部には第一配管120の一方が接続されており、第一配管120の他方は井水に浸かった状態となっている。そして、第一配管120には、井戸から原水(井水)を汲み上げるための汲水ポンプ130が設置されている。さらに、貯水タンク110の下部には第二配管140の一方が接続されており、第二配管140の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。
貯水タンク110の天井面には、貯水タンク内部の貯留水の水位を検知するための水位センサ111が設けられている。水位センサ111は、例えば所定の低水位WLと、所定の高水位(満水位)WHという2つの水位を検知することができる。そして、汲水ポンプ130は、水位センサ111の出力に応じて動作される。つまり、水位センサ111が低水位WLを検知した場合には、汲水ポンプ130はオン状態になり、井水を第一配管120を通じて汲み上げ、貯水タンク110へ供給する。
ここで、300〜2000Lの貯水タンクは非常に大きくて重いので、建物の屋根や屋上に容易に設置することはできない。また、たとえ貯水タンクを設置したとしても、貯水タンクが満タンになると、それを支える屋根や屋上には大きな荷重負荷が掛かるため、建物の耐荷重性を高める必要がある。さらに、貯水タンクは安価ではないので、結果として高所得層(富裕層)以外は、貯水タンクを使用できない場合が多い。
そのため、近年、安価な自動ポンプが普及し、低所得層はこちらを選択することから、タンクレス化が進んでいる。つまり、図1(b)に示すように、建物1の屋根2に貯水タンクを設置せず、自動ポンプである汲水ポンプ130を用いて井水を汲み上げ、生活用水として使用している。なお、このような自動ポンプは、圧力スイッチを内蔵したポンプであり、蛇口を開けたときにのみポンプが作動するものである。
一方で、日本等の先進国とは異なり、発展途上国では原水となる井水や水道水は汚染されている場合が多く、図1(b)に示すように、直接井水を使用することは衛生面で問題が多い。そのため、高所得層では浄化システムを導入し、水を浄化して使用したいという要望が高まっている。そして、日本の浄水場で培った技術を活用すれば、原水に鉄やマンガンが含まれている場合でも、酸化処理して濾過すれば容易く対応できる。
しかしながら、原水に溶解性シリカ(イオン状シリカ)が含まれている場合は、容易に浄化できない場合がある。つまり、火山が多い国は、世界的に見て原水にシリカが多く含まれている。特に、シリカは表流水(河川等)よりも井水に多く含まれる傾向がある。そして、参考文献(高井雄、中西弘著、「用水の除鉄・除マンガン処理」、第1版、株式会社産業用水調査会、1987年6月)では、シリカの含有濃度が40〜50ppm以上になると、非常に処理がし難くなることが詳しく説明されている。そのため、井水の場合、汲み上げて貯水タンクで放置しておくとコロイド状のケイ酸鉄が生成し、通常の塩素処理や凝集剤では濾別できなくなってしまうことがある。
このように、原水にシリカが多く含まれている状況で鉄やマンガンを除去するためには、井水を汲み上げた直後に塩素処理やオゾン処理などの酸化処理を行うことが好ましい。酸化処理を素早く行うことにより、コロイド状のケイ酸鉄の生成を防ぎ、鉄及びマンガンの除去を容易に行うことが可能となる。
具体的には、図2に示すように、汲水ポンプ130の下流に液体薬剤供給器150を設け、井水を汲み上げた直後に次亜塩素酸ナトリウム水溶液などの塩素系薬剤を投入する。これにより、原水中の鉄イオンがコロイド状のケイ酸鉄になる前に、不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)3)となる。そして、液体薬剤供給器150の下流に設置した濾過手段160を用いて不溶性の水酸化鉄を濾別することにより、浄水を容易に得ることができる。
液体薬剤供給器150は、液体の塩素系薬剤を保持する塩素薬剤タンク151と、塩素薬剤タンク151と第一配管120とを接続し、塩素薬剤タンク151から第一配管120に塩素系薬剤を送るための薬剤送給管152とを備えている。さらに液体薬剤供給器150は、薬剤送給管152に設けられ、塩素系薬剤を所定量送給するための定量ポンプ153を備えている。液体薬剤供給器150では、薬剤送給管152及び定量ポンプ153により、塩素薬剤タンク151から所定量の塩素系薬剤を原水に注入することができる。
また、図3に示すように、液体薬剤供給器150の代わりに固形薬剤溶解器170を使用することも可能である。固形薬剤溶解器170は、例えば、次亜塩素酸カルシウムなどの固形薬剤を錠剤状に固めたものを内部に保持した固形薬剤保持具171を備え、原水が固形薬剤と接触することができる構成とすることができる。次亜塩素酸カルシウムが水と接触すると、次亜塩素酸カルシウムが加水分解されて塩素が原水中に放出され、鉄イオンを不溶性の水酸化鉄に酸化することができる。なお、固形薬剤保持具171は、バイパス配管172を用いて第一配管120に接続することができる。
そして、上述の液体薬剤供給器150又は固形薬剤溶解器170と濾過手段160とを備えた水浄化装置を、貯水タンク110と組み合わせることにより、浄水を安定的に使用することが可能となる。このような水浄化装置と貯水タンク110とを組み合わせた水浄化システムとしては、図4に示す構成とすることができる。水浄化システム100は、建物1の屋根2に設置された貯水タンク110を備えている。貯水タンク110の上部には第一配管120の一方が接続されており、さらに第一配管120の他方は井水に浸かった状態となっている。貯水タンク110の下部には第二配管140の一方が接続されており、さらに第二配管140の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。
第一配管120には、井水を汲み上げるための汲水ポンプ130が設置されており、さらに汲水ポンプ130と貯水タンク110との間には、塩素薬剤タンク151と薬剤送給管152と定量ポンプ153とを備えた液体薬剤供給器150が接続されている。また、第二配管140には、内部にマンガン砂を保持した濾過手段160と、濾過手段160の下流に設けられ、内部に活性炭を充填した塩素除去手段180とが設置されている。さらに第二配管140には、貯水タンク110と濾過手段160との間に設けられ、貯水タンク110の貯留水を濾過手段160及び塩素除去手段180に移送するための送水ポンプ190が設置されている。
しかしながら、塩素薬剤タンク151から原水に所定量の塩素系薬剤を注入するための定量ポンプ153は、耐塩素対策が必要であることから高価格となる。そのため、定量ポンプ153は、たとえ高所得層といえども容易に使用することができない。
また、井水を汲み上げた直後に塩素系薬剤により酸化処理した場合には、原水中の鉄イオンが即座に不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)3)となる。ただ、図4に示す構成では、原水を酸化処理した一次処理水が貯水タンク110の内部で長時間貯留されるため、不溶性の水酸化鉄が貯水タンク110の下部に沈殿し、汚泥として蓄積してしまう。そのため、屋根2に設けられた貯水タンク110から沈殿した汚泥を除去しなければならず、維持管理が非常に煩雑となる。さらに、図4に示す構成では、一次処理水中に不溶性の水酸化鉄が含まれているため、貯水タンク110内の一次処理水を濾過手段160に移送するための送水ポンプ190が必要となり、コストが上昇する原因となる。
そのため、図5に示す水浄化システム101のように、液体薬剤供給器150の代わりに、固形薬剤溶解器170を使用する方法がある。この場合には、液体薬剤供給器150で必須であった定量ポンプ153が不要となるため、水浄化装置の価格は低下する。ただ、図5に示す構成でも、貯水タンク110に汚泥が蓄積してしまうという問題や、送水ポンプ190が必須となってしまうという問題は全く改善されていない。
水浄化装置と貯水タンク110とを組み合わせた水浄化システムとしては、図6に示す構成とすることも可能である。図6(a)に示すように、水浄化システム102は、建物1の屋根2に設置された貯水タンク110を備えている。貯水タンク110の上部には第一配管120の一方が接続されており、さらに第一配管120の他方は井水に浸かった状態となっている。貯水タンク110の下部には第二配管140の一方が接続されており、さらに第二配管140の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。
第一配管120には、井水を汲み上げるための汲水ポンプ130が設置されており、汲水ポンプ130で汲み上げられた井水は、貯水タンク110に直接投入されて貯留される。第二配管140には、図6(b)に示すように、固形薬剤溶解器170、濾過手段160及び塩素除去手段180を備えた水浄化装置200が設置されている。さらに第二配管140には、貯水タンク110の貯留水を、固形薬剤溶解器170、濾過手段160及び塩素除去手段180に移送するための送水ポンプ190も設置されている。
しかしながら、図6に示す水浄化システム102では、井水を汲み上げた直後に塩素処理やオゾン処理などの酸化処理を行うことができず、貯水タンク110において井水が長時間貯留されるため、コロイド状のケイ酸鉄が生成してしまう。そのため、たとえ固形薬剤溶解器170、濾過手段160及び塩素除去手段180を用いたとしても、原水中の鉄を十分に除去することができない恐れがある。
水浄化装置と貯水タンク110とを組み合わせた水浄化システムとしては、図7に示す構成とすることも可能である。図7(a)に示すように、水浄化システム103は、建物1の屋根2に設置された貯水タンク110を備えている。貯水タンク110の上部には第一配管120の一方が接続されており、さらに第一配管120の他方は井水に浸かった状態となっている。貯水タンク110の下部には第二配管140の一方が接続されており、さらに第二配管140の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。
第一配管120には、井水を汲み上げるための汲水ポンプ130が設置されており、汲水ポンプ130で汲み上げられた井水は、貯水タンク110に直接投入されて貯留される。第二配管140には、図7(b)に示すように、濾過手段160及び塩素除去手段180を備えた水浄化装置201が設置されている。さらに第二配管140には、貯水タンク110の貯留水を、濾過手段160及び塩素除去手段180に移送するための送水ポンプ190も設置されている。
図7に示す水浄化システム103では、固形薬剤保持具171を貯水タンク110の天井面から吊るしている。そして、固形薬剤保持具171は、次亜塩素酸カルシウムなどの固形薬剤を錠剤状に固めたものを内部に保持している。固形薬剤保持具171は貯留水に浸漬し、固形薬剤から塩素が徐々に放出される構成となっている。そして、貯水タンク110の内部で酸化処理された一次処理水は、送水ポンプ190により濾過手段160及び塩素除去手段180に移送されて浄化される。
図7に示す水浄化システム103では、塩素を補給し続けるために、固形薬剤保持具171を定期的に補充する必要がある。ただ、貯水タンク110は建物1の屋根2に設置されているため、固形薬剤保持具171の交換が非常に煩雑である。さらに、原水を酸化処理した一次処理水が貯水タンク110の内部で長時間貯留されるため、不溶性の水酸化鉄が貯水タンク110の下部に沈殿し、汚泥として蓄積してしまう。そのため、貯水タンク110から沈殿した汚泥を除去しなければならず、維持管理が非常に煩雑となる。さらに、一次処理水中に不溶性の水酸化鉄が含まれているため、貯水タンク110の一次処理水を濾過手段160に移送するための送水ポンプ190が必要となる。また、一次処理水には塩素が溶存していることから、送水ポンプ190として耐塩素仕様のものを使用する必要があるため、コストが上昇する原因となる。
このように図4、図5及び図7に示す水浄化システム100,101,103のように、原水を汲み上げた直後に酸化処理したとしても、濾過手段160を用いて早期に濾過しない場合には、貯水タンク110に汚泥が蓄積してしまうという問題が生じる。また、図6に示す水浄化システム102のように、原水を汲み上げた直後に酸化処理しない場合にはコロイド状のケイ酸鉄が生成し、原水中の鉄を十分に除去することができない恐れがある。そのため、水浄化システムとしては、貯水タンク110の上流側に水浄化装置を設け、当該水浄化装置により浄化された水を貯水タンク110に溜め置きする構成とすることが好ましい。
このような貯水タンク110の上流側に水浄化装置を設けた例としては、特許文献1に記載の水質浄化システムが存在する。しかし、上述のように特許文献1の水質浄化システムは、構成及び制御が複雑であり、非常に高価なシステムとなってしまう。そのため、水浄化システムとして、図8に示すような、簡略化した水浄化装置202と貯水タンク110とを組み合わせた構成を挙げることができる。
図8(a)に示すように、水浄化システム104は、建物1の屋根2に設置された貯水タンク110を備えている。貯水タンク110の下部には第二配管140の一方が接続されており、さらに第二配管140の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。
水浄化システム104において、貯水タンク110の上流側には図8(b)に示す水浄化装置202が設けられている。水浄化装置202には第一配管120の一方が接続されており、さらに第一配管120の他方は井水に浸かった状態となっている。なお、第一配管120には、井水を汲み上げるための汲水ポンプ130が設置されている。
水浄化装置202は、図8(b)に示すように、汲水ポンプ130で汲み上げられた井水を一時的に貯留する貯水槽210を備えている。貯水槽210には第三配管220が接続されており、第三配管220には濾過手段160及び三方弁230が設けられている。そして、水浄化装置202には循環配管240が設けられており、循環配管240の一方は三方弁230に接続され、循環配管240の他方は貯水槽210に接続されている。また、貯水槽210と濾過手段160との間には循環ポンプ250が設けられ、濾過手段160と三方弁230との間には、液体薬剤供給器150又は固形薬剤溶解器170からなる酸化剤供給手段が接続されている。なお、図8(a)に示すように、貯水タンク110の下流には、内部に活性炭を充填した塩素除去手段180が設けられている。
水浄化装置202では、まず汲水ポンプ130で汲み上げられた井水が、貯水槽210に直接投入されて貯留される。そして、循環ポンプ250が作動することにより、貯水槽210にたまった貯留水が濾過手段160に移送され、濾過手段160を通過した後、酸化剤供給手段によって貯留水に酸化剤が投入される。その後、酸化剤が投入された貯留水は三方弁230を通過し、循環配管240を通じて貯水槽210に戻される。つまり、貯水槽210に溜まった貯留水は、第三配管220に設けられた循環ポンプ250、濾過手段160、酸化剤供給手段及び三方弁230、並びに循環配管240によって水浄化装置202の内部で循環する。これにより、鉄及びマンガンの酸化処理と濾過処理が繰り返されて浄水となった後に、三方弁230を切り替え、第三配管220を通じて浄水が貯水タンク110に移送される。そして、貯水タンク110の浄水は、塩素除去手段180を通じて過剰の塩素が除去された後、生活用水として使用される。
水浄化システム104のように、貯水タンク110の上流側に水浄化装置202を設け、水浄化装置202により浄化された水を貯水タンク110に溜め置きすることにより、常に浄水を使用することが可能となる。また、貯水タンク110のバッファ能力を生かし、水浄化装置202の処理能力を低くすることで、水浄化システム全体の小型化を図ることが可能となる。ただ、水浄化システム104でも貯水槽210や循環ポンプ250を使用する必要があり、さらに三方弁230及び循環ポンプ250を制御する制御手段も必要となる。そのため、特許文献1の水質浄化システムと同様に、構成及び制御が複雑になり、高価なシステムとなってしまう。
また、貯水タンク110の上流側に水浄化装置を設ける水浄化システムとして、図9に示す構成も挙げることができる。図9(a)に示すように、水浄化システム105は、建物1の屋根2に設置された貯水タンク110を備えている。貯水タンク110の下部には第二配管140の一方が接続されており、さらに第二配管140の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。水浄化システム105において、貯水タンク110の上流側には図9(b)に示す水浄化装置203が設けられている。水浄化装置203には第一配管120の一方が接続されており、さらに第一配管120の他方は井水に浸かった状態となっている。なお、第一配管120には、井水を汲み上げるための汲水ポンプ130が設置されている。
水浄化装置203は、図9(b)に示すように、汲水ポンプ130で汲み上げられた井水を一時的に貯留する貯水槽210を備えている。貯水槽210には第三配管220が接続されており、第三配管220には、貯水槽210で浄化された水を移送するための送水ポンプ260が設けられている。そして、貯水槽210の内部には、精密濾過膜(MF膜)または限外濾過膜(UF膜)などの平膜270が設けられている。
水浄化装置203では、井水に空気を吹き込んで活性汚泥を発生させ、これを利用して水中の有機物を分解して浄化する活性汚泥法により、井水を浄化している。そして、処理された水と活性汚泥との分離を平膜270により行っている。つまり、水浄化装置203は、膜分離活性汚泥法(MBR)により井水の浄化を行っている。このような膜分離活性汚泥法は、汚泥沈降性状の変化による処理機能への影響を受けず、安定して活性汚泥を処理することが可能である。また、膜分離活性汚泥法は、設備が小型になることや、処理水が平膜270を通るため水質がよく、濾過手段が不要となるなどのメリットがある。
しかしながら、膜分離活性汚泥法は、平膜270のファウリングを防ぐため、平膜270を定期的に次亜塩素酸やアルカリなどの薬品で洗浄する必要が生じる。また、平膜270の定期的な交換が必要であることや、平膜270の表面の曝気または活性汚泥の循環、および処理水の吸引のため、電力などのエネルギーが必要になるなどの問題がある。
このように、水浄化システム105は、特許文献1の水質浄化システムや図8に示す水浄化システム104よりも構成はシンプルであるが、貯水槽210や送水ポンプ260を使用する必要がある。また、場合によっては、曝気用のエアーポンプも必要となる。さらに、水浄化システム105を用いたとしても、発展途上国のように原水が鉄で汚染されている場合には除鉄できなかったり、平膜270がすぐ詰まる恐れもある。さらに、短時間で平膜270が目詰まりしないようにするためには、ある程度の膜面積を確保して、ゆっくり吸い込む必要があるため、高価な膜を小型化できない。結果として、水浄化システム105も安価で安定した性能を発揮するシステムとはならないという問題がある。
上述の問題点を解決するために、本実施形態に係る水浄化システム10は、図10(a)に示すように、被処理水である原水(井水)を浄化する水浄化装置20と、水浄化装置20によって浄化された水を貯留する貯水タンク11を備えている。水浄化装置20は、図10(b)に示すように、原水を酸化処理する固形薬剤溶解器17と、固形薬剤溶解器17によって酸化処理された一次処理水を濾過する濾過手段16とを備えている。
水浄化システム10は、図10(a)に示すように、建物1の屋根2に設置された貯水タンク11を備えている。貯水タンク11は濾過手段16により濾過された二次処理水を貯留できれば、その構造及び材質は特に限定されない。また、貯水タンク11の容量も特に限定されず、例えば300L〜2000Lとすることができる。
貯水タンク11の上部には第一配管12の一方が接続されており、さらに第一配管12の他方は原水(井水)に浸かった状態となっている。また、貯水タンク11の下部には第二配管14の一方が接続されており、さらに第二配管14の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。
第一配管12には、原水を汲み上げるための汲水ポンプ13が設置されている。汲水ポンプ13は、原水を汲み上げ、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16を通じて貯水タンク11まで送水することが可能ならば、特に限定されない。汲水ポンプ13としては、例えば、圧力スイッチを内蔵した自動ポンプを用いることができる。具体的には、汲水ポンプ13は、後述する開閉弁12c及び開閉弁17cの少なくとも一方が開いたときに作動するような構成とすることができる。
ここで、汲水ポンプ13は、通常、ケーシング内に、翼を有した羽根車を備えている。汲水ポンプ13内の水は、羽根車の回転によって翼から力を受けながら、羽根車の中心部から外周方向に押し出される。そして、羽根車によって水に回転速度が与えられ、その遠心力によって圧力が上昇する。この際、羽根車の中心部から外周部へ水が流れることにより、羽根車の中心部の圧力が低くなり、羽根車の入口部の水が引き込まれる。汲水ポンプ13は、この動作を繰り返すことにより水を送り出すことができる。ただ、この際、羽根車の入口部に常に水が存在し、吸い込み側の配管が水で満たされている必要がある。そのため、汲水ポンプ13は、吐出側に逆止弁を設け、吸い込み側にフート弁を設け、汲水ポンプ13が停止しても汲水ポンプ13や吸い込み管(第一配管12)の内部の水が落水しないような構成とすることが好ましい。
図10(b)に示すように、第一配管12において、汲水ポンプ13の下流には固形薬剤溶解器17が配置されている。固形薬剤溶解器17は、固体の塩素系薬剤と、塩素系薬剤を内部に保持する固形薬剤保持具17aと、固形薬剤保持具17aを第一配管12に接続するバイパス配管17bとを備えている。そして、固形薬剤保持具17aの上流側におけるバイパス配管17bには、汲水ポンプ13により汲み上げられた原水の流量を調整する流量調整機構としての開閉弁17cが設けられている。さらに、第一配管12とバイパス配管17bとの接続部12a,12bの間における第一配管12にも、原水の流量を調整する開閉弁12cが設けられている。
固体の塩素系薬剤は、原水中の鉄イオンに対し酸化作用を生じさせる。具体的には、塩素系薬剤によって、二価の鉄イオンは三価の鉄イオンに酸化され、さらに不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)3)となる。このような塩素系薬剤は特に限定されず、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム及び塩素化イソシアヌル酸からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。次亜塩素酸カルシウムとしては、さらし粉(有効塩素30%)及び高度さらし粉(有効塩素70%)の少なくとも一つを用いることができる。塩素化イソシアヌル酸としては、トリクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、及びジクロロイソシアヌル酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。なお、固形薬剤溶解器17において、塩素系薬剤は、徐々に原水に溶解するように錠剤状に固めたもの用いることが好ましい。固形薬剤溶解器17としては、例えば特表平6−501418号公報に記載の薬品供給装置を用いることができる。
固形薬剤溶解器17としては、例えば図11に示す構成とすることもできる。固形薬剤溶解器17Aは、塩素系薬剤17dを内部に保持する固形薬剤保持具17aと、固形薬剤保持具17aを第一配管12に接続するバイパス配管17bとを備えている。そして、固形薬剤保持具17aの上流側におけるバイパス配管17bには、原水の流量を調整する流量調整機構としての開閉弁17cが設けられている。
固形薬剤保持具17aは、保持具の上面全体を覆う蓋部17eを備えている。そして、蓋部17eを開閉することで、固形薬剤保持具17aの内部に塩素系薬剤17dを補充することが可能となる。また、固形薬剤保持具17aの下部は第一配管12と接続されており、塩素系薬剤17dによって酸化処理された一次処理水は、接続部12bを通過して第一配管12に送られる。
図11に示すように、バイパス配管17bの一方は、接続部12aにおいて第一配管12に接続されており、バイパス配管17bの他方には、薬剤支持台17fが設けられている。薬剤支持台17fは、バイパス配管17bを通過した原水が塩素系薬剤17dと接触できるように中空となっている。さらに、薬剤支持台17fは、塩素系薬剤17dを水平に保持するための支持面17gを備え、支持面17gの中央には、原水が通過する開口部17hが設けられている。
なお、図11に示す構成では、第一配管12と固形薬剤溶解器17Aとの接続部12a,12bの間における第一配管12の内部に、開閉弁12cの代わりにオリフィス12dが設けられている。オリフィス12dは、第一配管12を流れる原水の流量を調整することができる。
固形薬剤溶解器17Aでは、まず、汲水ポンプ13により汲み上げられた原水の一部が、開閉弁17c及び第一配管12を通過する。そして、薬剤支持台17fに到達した原水は、支持面17gの開口部17hを通過し、塩素系薬剤17dと接触して酸化処理される。酸化処理された一次処理水は、固形薬剤溶解器17Aの下部から接続部12bを通過して第一配管12に送られ、濾過手段16に到達する。
図10(b)に示すように、第一配管12において、汲水ポンプ13及び固形薬剤溶解器17の下流には、濾過手段16が配置されている。濾過手段16は、固形薬剤溶解器17によって原水中の鉄イオンを水酸化鉄として析出させた一次処理水から、水酸化鉄を除去するものである。このような濾過手段16は、内部に水酸化鉄を除去するための濾材を備えている。濾材としては、安価な濾過砂を使用することができる。また、濾過手段16の濾材として、水和二酸化マンガンをコートしたマンガン砂を用いることもできる。濾材としてマンガン砂を用いることにより、一次処理水中に存在する水酸化鉄だけでなく、マンガンも除去することが可能となる。
濾過手段16としては、例えば図12に示す構成とすることができる。濾過手段16Aは、上述の濾材16aと、内部に濾材16aを収納する容器16bと、容器16bの底部に設けられた砂利16cとを備えている。そして、容器16bの中心には、濾材16a及び砂利16cを通じて濾過された水を濾過手段16Aの外部へ流出させるための流出パイプ16dが設けられている。流出パイプ16dの下端には、砂利16cが流出パイプ16dの内部に侵入しないように、スリット状の長穴が複数設けられたスクリーン部16eが設けられている。
容器16bの上端には、流路切替弁を備えた蓋部16fが設けられている。蓋部16fは、第一配管12に接続され、固形薬剤溶解器17によって酸化処理された一次処理水が通過する流入口16gと、流出パイプ16dと連通した流出口16hと、逆流洗浄した水を排出する排出口16iとを備えている。流路切替弁は、一次処理水が流入口16gから流出口16hへ向かう順方向Xに流れる状態と、流入口16gから排出口16iへ向かう逆方向Yに流れる状態とを切り替える。順方向Xの場合において、一次処理水は、流入口16g、濾材16a、砂利16c、スクリーン部16e、流出パイプ16d、流出口16hの順番で流れる。逆方向Yの場合において、一次処理水は、流入口16g、流出パイプ16d、スクリーン部16e、砂利16c、濾材16a、排出口16iの順番で流れる。
排出口16iは、一次処理水が逆方向Yに流れる状態において濾材16aの下流に位置付けられ、一次処理水を外部へ排出する。そのため、濾過手段16Aは、流路切替弁を切り替えることによって、一次処理水を順方向Xに流して濾材16aにより濾過処理を行うことができる。また、流路切替弁を切り替えることによって、一次処理水又は原水を逆方向Yに流して濾材16aを逆流洗浄することもできる。
水浄化システム10は、図10(a)に示すように、貯水タンク11の下流側に設けられ、被処理水に含まれる過剰な塩素を除去する塩素除去手段18をさらに備えている。具体的には、水浄化システム10の第二配管14には、貯水タンク11で貯留された二次処理水に含まれる過剰な塩素を除去する塩素除去手段18が設けられている。塩素除去手段18としては、容器の内部に活性炭の粒子を充填したものを使用することができる。
次に、本実施形態の水浄化システム10を用いて原水を浄化する方法について説明する。水浄化システム10では、まずバイパス配管17bに設けられた開閉弁17cを開状態とし、第一配管12に設けられた開閉弁12cを閉状態とする。そして、汲水ポンプ13により、原水である井水を汲み上げる。
汲み上げられた原水は、第一配管12、接続部12a及びバイパス配管17bを通過して、固形薬剤保持具17aの内部に到達し、錠剤状の塩素系薬剤と接触する。それにより塩素系薬剤が原水に溶解し、反応式(1)に示すように、原水中の二価の鉄が不溶性の水酸化鉄(Fe(OH)3)に酸化される。なお、地下水の場合には、鉄が炭酸水素鉄(Fe(HCO3)2)の状態で溶解している場合があるが、反応式(2)に示すように、塩素系薬剤により酸化されて不溶性の水酸化鉄となる。
2Fe2++Cl2+6H2O→2Fe(OH)3+6H++2Cl− (1)
2Fe(HCO3)2+Cl2+2H2O→2Fe(OH)3+4CO2+2HCl (2)
固形薬剤溶解器17によって酸化処理された一次処理水は、接続部12b及び第一配管12を通過して、濾過手段16に到達する。この際、一次処理水に存在する不溶性の水酸化鉄は、濾材16aの間を通過することによって濾過されて除去される。また、濾過手段16の濾材として、水和二酸化マンガン(MnO2・H2O)をコートしたマンガン砂を用いた場合には、一次処理水に溶存しているマンガンイオン(Mn2+)も除去される。つまり、一次処理水中のマンガンイオンは、反応式(3)に示すように、マンガン砂の表面に担持されている水和二酸化マンガンを触媒として塩素により速やかに酸化されて水和二酸化マンガンとなり、マンガン砂により除去される。
Mn2++MnO2・H2O+Cl2+3H2O
→2MnO2・H2O+4H++2Cl− (3)
濾過手段16によって濾過処理された二次処理水は、第一配管12を通じて貯水タンク11に貯留される。そして、貯留された二次処理水は、第二配管14を通過して塩素除去手段18に到達する。塩素除去手段18では、以下の反応式(4)に示すように、二次処理水に溶存する余剰の塩素を活性炭により除去する。
Cl2+H2O+C(活性炭)→2H++2Cl−+O+C(活性炭) (4)
塩素除去手段18により脱塩素処理された三次処理水は第二配管14を通過して、蛇口等に到達する。このように、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16からなる水浄化装置20、並びに塩素除去手段18により浄化された水は、ユーザーによって生活用水として使用される。
本実施形態の水浄化システム10では、汲水ポンプ13によって原水を汲み上げた直後に固形薬剤溶解器17によって酸化処理しているため、コロイド状のケイ酸鉄の生成を抑制している。さらに固形薬剤溶解器17の直後に濾過手段16を配置し、酸化処理された一次処理水を濾過しているため、貯水タンク11には、鉄が除去された二次処理水が貯留される。そのため、二次処理水が貯水タンク11の内部で長時間貯留されたとしても、不溶性の水酸化鉄が貯水タンク11の下部に沈殿して汚泥として蓄積することを防ぎ、清潔な状態を保つことができる。そのため、屋根2に設けられた貯水タンク11から、沈殿した汚泥を除去する手間が省け、貯水タンク11の維持管理を容易にすることが可能となる。
また、図4及び図5に示すように、貯水タンク110の下流に濾過手段160及び塩素除去手段180を設ける場合、不溶性の水酸化鉄が含まれる貯留水を濾過手段160に移送するための送水ポンプ190が必要となる。しかしながら、水浄化システム10では、貯水タンク11には鉄が除去された二次処理水が貯留される。そのため、位置エネルギーによる水圧のみで、貯留水は塩素除去手段180を通過し、建物1の蛇口等に到達できることから、送水ポンプが不要となり、システムの簡素化を図ることができる。
さらに、水浄化システム10では、貯水タンク11の上流側に水浄化装置20を設け、水浄化装置20により浄化された水を貯水タンク11に溜め置きしているため、常に浄水を使用することが可能となる。また、貯水タンク11のバッファ能力を生かし、水浄化装置20の処理能力を低くすることで、水浄化システム全体の小型化及び低価格化を図ることが可能となる。
また、水浄化システム10では、濾過手段160の逆流洗浄を容易に行うことができる。例えば、バイパス配管17bに設けられた開閉弁17cを閉状態とし、第一配管12に設けられた開閉弁12cを開状態とする。そして、濾過手段160の流路切替弁を切り替え、原水を逆方向Yに流すことにより、濾材16aを逆流洗浄することができる。
このように、水浄化システム10では、濾過手段160を逆流洗浄することにより長期に亘り使用することができるため、膜分離活性汚泥法で使用する平膜のように、定期的な交換を考慮する必要がない。さらに、図8の水浄化装置202で必須の貯水槽210、三方弁230及び循環配管240なども不要となるため、複雑な構成及び制御を用いなくても、簡易な構成により容易に浄水を得ることができる。
水浄化システム10において、貯水タンク11は、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16よりも高所に設置されていることが好ましい。具体的には、貯水タンク11は建物1の屋根2や屋上に設置され、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16は貯水タンク11よりも低所に設置されることが好ましい。また、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16は、地面近傍、建物1の一階又はベランダなど、容易に保守作業を行うことが可能な場所に設置されることが好ましい。汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16をこのような場所に設置することにより、これらの点検や塩素系薬剤の補充を容易に行うことが可能となる。なお、塩素除去手段18を用いる場合には、塩素除去手段18も貯水タンク11よりも低所に設置されることが好ましく、例えば地面近傍、建物1の一階又はベランダに設置されることが好ましい。
このように、本実施形態の水浄化システム10は、被処理水を汲み上げる汲水ポンプ13と、固体の塩素系薬剤を備え、塩素系薬剤により被処理水を酸化処理する固形薬剤溶解器17とを備える。さらに水浄化システム10は、固形薬剤溶解器17により酸化処理された被処理水を濾過する濾過手段16と、濾過手段16により濾過された被処理水を貯留する貯水タンク11を備える。そして、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17、濾過手段16及び貯水タンク11が接続され、被処理水が流れる主配管(第一配管12、第二配管14)において、固形薬剤溶解器17は汲水ポンプ13の下流側に位置している。さらに固形薬剤溶解器17と貯水タンク11の間に濾過手段16を設けている。そして、被処理水は、溶解性シリカを含有する原水を使用することができる。
本実施形態では、汲み上げ直後に被処理水である原水を酸化処理し、すぐに濾過処理を行うため、貯水タンク11内は常に清潔な状態に維持することができる。また、貯水タンクのバッファ効果を活用することで、水浄化システム10を小型化できるので、その点でも低価格化が可能となる。また、複雑な制御も配管も不要であり、濾過手段16を逆洗すれば、膜処理のような交換頻度も殆ど考慮する必要がない。さらに、貯水タンク後段の送水ポンプも不要であるため、その点でも低価格化が可能である。また、塩素系薬剤の補給や濾過手段16の逆洗等のメンテナンスも簡単に行うことができる。
水浄化システム10は、主配管において、貯水タンク11の下流側に設けられ、被処理水に含まれる過剰な塩素を除去する塩素除去手段18をさらに備えることが好ましい。これにより、二次処理水に溶存する余剰の塩素を除去し、より安全な浄水を得ることが可能となる。なお、水浄化システム10において、塩素除去手段18は任意の構成要素である。つまり、濾過手段16により処理された二次処理水に余剰の塩素が残留する場合には、塩素除去手段18を用いることが好ましい。しかし、二次処理水に余剰の塩素が残留しない場合には、塩素除去手段18を設けなくてもよい。
水浄化システム10において、固形薬剤溶解器17,17Aは、主配管に接続し、被処理水を塩素系薬剤まで通水するためのバイパス配管17bと、バイパス配管17bに設けられ、被処理水の流量を調整するための流量調整機構とをさらに備えることが好ましい。このように、塩素系薬剤によって酸化処理される被処理水の流量を流量調整機構によって調節することにより、被処理水の状況に応じて塩素濃度の調整を図ることが可能となる。つまり、被処理水に含まれる鉄の含有量や、塩素を消費するアンモニア及び有機物の量に応じて、塩素濃度の調整を容易に行うことが可能となる。なお、流量調整機構を用いることによって、被処理水の流量に応じた塩素濃度の調整も、ある程度可能となる。
上述のように、汲水ポンプ13の上流側にはフート弁を設け、汲水ポンプ13が停止しても汲水ポンプ13や第一配管12の内部の水が井戸に落水しないような構成とすることが好ましい。ただ、フート弁が異物を噛み込んだ場合、汲水ポンプ13の内部の水が落水し、それに伴い、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16の内部の水が逆流する可能性がある。しかし、濾過手段16自体の抵抗が大きいため、この場合でも逆流が生じる可能性が低い。
また、固形薬剤溶解器として、図11に示す固形薬剤溶解器17Aを使用した場合、塩素系薬剤17dは薬剤支持台17fによって支持されているため、常に原水に浸漬しているわけではない。そのため、原水中の塩素濃度が過度に上昇し難い。そのため、たとえ固形薬剤溶解器17Aの内部に存在する水が逆流して汲水ポンプ13と接触したとしても、汲水ポンプ13が塩素により腐食することを抑制することができる。
さらに、固形薬剤溶解器17Aにおいて、固形薬剤保持具17aの内部では、塩素系薬剤17dと蓋部との間に空気層が存在する。そのため、汲水ポンプ13の内部から逆流が生じた場合、固形薬剤保持具17aの内部の水よりも、第一配管12の内部の水がオリフィス12dを通過して逆流する。そのため、高濃度の塩素を含む水が汲水ポンプ13の内部に流れ込み難くなる。そのため、固形薬剤溶解器17Aを用いることにより、汲水ポンプ13の吐出側に逆止弁等の装置を設ける必要がなく、イニシャルコストやメンテナンス性を大きく向上させることが可能となる。
水浄化システム10において、汲水ポンプ13は開閉弁12c及び開閉弁17cの少なくとも一方が開いたときに作動するような自動ポンプを用いることができる。ただ、このような自動ポンプに限定されず、例えば図1に示すように、貯水タンク11の天井面に貯留水の水位を検知するための水位センサが設け、水位センサの出力に応じて、汲水ポンプ130が動作するような構成であってもよい。つまり、水位センサが低水位を検知した場合には、汲水ポンプ13がオン状態になり、原水を汲み上げるような構成であってもよい。
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る水浄化システムについて、図面に基づき詳細に説明する。なお、第一実施形態と同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態に係る水浄化システム10Aは、図13に示すように、被処理水である原水(井水)を汲み上げる汲水ポンプ13と、原水を酸化処理する固形薬剤溶解器17と、酸化処理された一次処理水を濾過する濾過手段16とを備えている。さらに、水浄化システム10Aは、固形薬剤溶解器17によって酸化処理された一次処理水を貯留する貯水タンク11を備えている。そして、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17、濾過手段16及び貯水タンク11が接続され、被処理水が流れる主配管(第一配管12、第二配管14)において、固形薬剤溶解器17は汲水ポンプ13の下流側に位置している。さらに固形薬剤溶解器17と濾過手段16の間に貯水タンク11を設けている。
水浄化システム10Aは、図13に示すように、建物1の屋根2に設置された貯水タンク11を備えている。貯水タンク11は、固形薬剤溶解器17によって酸化処理された一次処理水を貯留できれば、その構造及び材質は特に限定されない。そして、第一実施形態と同様に、貯水タンク11の上部には第一配管12の一方が接続されており、さらに第一配管12の他方は原水(井水)に浸かった状態となっている。また、貯水タンク11の下部には第二配管14の一方が接続されており、さらに第二配管14の他方は建物1の内部の蛇口などに接続されている。
第一配管12には、原水を汲み上げるための汲水ポンプ13が設置されている。汲水ポンプ13は、原水を汲み上げ、固形薬剤溶解器17を通じて貯水タンク11まで送水することが可能ならば、特に限定されず、第一実施形態と同様の構成とすることができる。また、第一配管12において、汲水ポンプ13の下流には固形薬剤溶解器17が配置されている。
水浄化システム10Aにおいて、第二配管14には、濾過手段16と、濾過手段16の下流に設けられた塩素除去手段18とが接続されている。なお、図5に示す水浄化システム101とは異なり、水浄化システム10Aでは、貯水タンクと濾過手段の間に設けられ、貯水タンクの貯留水を濾過手段及び塩素除去手段に移送するための送水ポンプを備えていない。
そして、第一実施形態と同様に、貯水タンク11は、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16よりも高所に設置されていることが好ましい。具体的には、貯水タンク11は建物1の屋根2や屋上に設置され、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16は貯水タンク11よりも低所に設置されることが好ましい。また、汲水ポンプ13、固形薬剤溶解器17及び濾過手段16は、地面近傍、建物1の一階又はベランダなど、容易に保守作業を行うことが可能な場所に設置されることが好ましい。さらに、塩素除去手段18を用いる場合には、塩素除去手段18も貯水タンク11よりも低所に設置されることが好ましく、例えば地面近傍、建物1の一階又はベランダに設置されることが好ましい。
次に、本実施形態の水浄化システム10Aを用いて原水を浄化する方法について説明する。水浄化システム10Aでは、第一実施形態と同様に、まず開閉弁17cを開状態とし開閉弁12cを閉状態とし、汲水ポンプ13により原水である井水を汲み上げる。汲み上げられた原水は、第一配管12、接続部12a及びバイパス配管17bを通過して、固形薬剤保持具17aの内部に到達し、原水中の二価の鉄が不溶性の水酸化鉄に酸化される。固形薬剤溶解器17によって酸化処理された一次処理水は、接続部12b及び第一配管12を通過して貯水タンク11に到達し、貯水タンク11により一時的に貯留される。
そして、図13に示すように、貯水タンク11は濾過手段16よりも高所に設置されているため、貯水タンク11に貯留されている一次処理水の水面と濾過手段16の上面との間には高低差hがある。そのため、位置エネルギーによる水圧により、一次処理水が貯水タンク11から濾過手段16に移動する。その後、一次処理水は濾過手段16によって濾過され、水酸化鉄が除去される。さらに濾過手段16によって濾過処理された二次処理水は、第二配管14を通過して塩素除去手段18に到達し、余剰の塩素が除去される。
その後、塩素除去手段18により脱塩素処理された三次処理水は第二配管14を通過して、蛇口等に到達する。このように、固形薬剤溶解器17、濾過手段16及び塩素除去手段18により浄化された水は、ユーザーによって生活用水として使用される。
このように、本実施形態の水浄化システム10Aでも、汲水ポンプ13によって原水を汲み上げた直後に固形薬剤溶解器17によって酸化処理しているため、コロイド状のケイ酸鉄の生成を抑制することができる。なお、本実施形態では固形薬剤溶解器17の直後に濾過手段16を配置しておらず、酸化処理された一次処理水が貯水タンク11に貯留されるため、水酸化鉄が貯水タンク110の下部に沈殿する可能性がある。ただ、一次処理水を貯水タンク110に長時間貯留しない場合には、水酸化鉄の沈殿を最小限に抑制することが可能となる。
また、水浄化システム10Aでは、図5のシステムで必須であった送水ポンプが不要となるため、システムの簡素化及び低価格化を達成することが可能となる。なお、第一実施形態と同様に、水浄化システム10Aにおいて、塩素除去手段18は任意の構成要素であり、二次処理水に余剰の塩素が残留しない場合には、塩素除去手段18を設けなくてもよい。
以上、本実施形態に係る水浄化システムの内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。