JP2018059440A - エンジンのヘッドボルト配置及びシリンダヘッドのウォータジャケットの中子 - Google Patents

エンジンのヘッドボルト配置及びシリンダヘッドのウォータジャケットの中子 Download PDF

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Tsunaki HAYASAKI
綱記 早崎
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Abstract

【課題】シリンダボア間の部分におけるガスシール性を向上させることができるエンジンのヘッドボルト配置を提供する。【解決手段】エンジンのヘッドボルト配置は、列状に配置された複数個のシリンダボア11を有するシリンダブロック10とシリンダブロックに複数本のヘッドボルトによって締結されたシリンダヘッド30とを備えるエンジン1のヘッドボルト配置であって、複数本のヘッドボルトは、各々のシリンダボア11の中心軸を含むように延在した仮想平面50よりも仮想平面の法線方向で一方の側において、シリンダボアの配列方向に第1のピッチP11,P12で複数本配置された第1ヘッドボルト40と、仮想平面よりも法線方向で他方の側において、シリンダボアの配列方向に第2のピッチP20で複数本配置された第2ヘッドボルト41とを備え、第1のピッチ及び第2のピッチの少なくとも一方は複数個のシリンダボアの平均直径よりも短い。【選択図】図2

Description

本発明は、エンジンのヘッドボルト配置及びシリンダヘッドのウォータジャケットの中子に関し、詳しくは、複数個のシリンダボアを有するシリンダブロックと、シリンダブロックに複数本のヘッドボルトによって締結されたシリンダヘッドとを備えるエンジンのヘッドボルト配置、及びシリンダヘッドのウォータジャケットの中子に関する。
従来、列状に配列された複数個のシリンダボアを有するシリンダブロックと、このシリンダブロックに複数本のヘッドボルトによって締結されたシリンダヘッドと、を備えるエンジンが知られている(例えば特許文献1参照)。また、このようなエンジンにおいて、複数本のヘッドボルトは、各々のシリンダボアの中心軸を含むように延在した仮想平面よりもこの仮想平面の法線方向で一方の側において、シリンダボアの配列方向に所定ピッチで複数本配置された第1ヘッドボルトと、上記仮想平面の反対側において、シリンダボアの配列方向に所定ピッチで複数本配置された第2ヘッドボルトとを備えている。そして、第1ヘッドボルトの所定ピッチ及び第2ヘッドボルトの所定ピッチは、両方とも複数個のシリンダボアの平均直径以上の値になっている。
特開平7−217437号公報
上述したように第1ヘッドボルトの所定ピッチ及び第2ヘッドボルトの所定ピッチが両方とも複数個のシリンダボアの平均直径以上の値になっている場合、シリンダボア間の部分(隣接するシリンダボアとシリンダボアとの間の部分)の締め付け力をこのシリンダボア間の部分に配置されている2本のヘッドボルトに頼ることになる。しかしながら、このような構造では、シリンダボア間の部分におけるガスシールに必要な圧力(線圧又は面圧)を確保することは難しく、この部分におけるガスシール性は十分に高いとはいえない。
また、上記のように第1ヘッドボルトの所定ピッチ及び第2ヘッドボルトの所定ピッチが両方とも複数個のシリンダボアの平均直径以上の値になっている場合、シリンダボア間の部分に第1ヘッドボルトが配置されてしまう。この場合、シリンダヘッドのウォータジャケットの中子は、このシリンダボア間に配置された第1ヘッドボルトを避けるように設ける必要があるところ、このシリンダボア間に配置された第1ヘッドボルトの周囲の領域は狭いので、この中子は、この狭い領域を通過させる必要が生じる。この場合、この中子に割れ等の不具合が生じる可能性がある。したがって、従来のシリンダヘッドのウォータジャケットの中子の製造性は良好であるとはいえなかった。
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、シリンダボア間の部分におけるガスシール性を向上させることができるエンジンのヘッドボルト配置、及びシリンダヘッドのウォータジャケットの中子の製造性を向上させることができるシリンダヘッドのウォータジャケットの中子を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係るエンジンのヘッドボルト配置は、列状に配列さ
れた複数個のシリンダボアを有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに複数本のヘッドボルトによって締結されたシリンダヘッドと、を備えるエンジンのヘッドボルト配置であって、複数本の前記ヘッドボルトは、各々の前記シリンダボアの中心軸を含むように延在した仮想平面よりも前記仮想平面の法線方向で一方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第1のピッチで複数本配置された第1ヘッドボルトと、前記仮想平面よりも前記法線方向で他方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第2のピッチで複数本配置された第2ヘッドボルトと、を備え、前記第1のピッチ及び前記第2のピッチの少なくとも一方は、複数個の前記シリンダボアの平均直径よりも短いことを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、本発明に係るシリンダヘッドのウォータジャケットの中子は、列状に配列された複数個のシリンダボアを有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに複数本のヘッドボルトによって締結されたシリンダヘッドと、を備えるエンジンの前記シリンダヘッドに形成されたウォータジャケット用の中子であって、複数本の前記ヘッドボルトは、各々の前記シリンダボアの中心軸を含むように延在した仮想平面よりも前記仮想平面の法線方向で一方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第1のピッチで複数本配置された第1ヘッドボルトと、前記仮想平面よりも前記法線方向で他方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第2のピッチで複数本配置された第2ヘッドボルトと、を備え、前記第1のピッチ及び前記第2のピッチの少なくとも一方は、複数個の前記シリンダボアの平均直径よりも短く、前記シリンダヘッドは、前記仮想平面よりも前記一方の側に、各々の前記シリンダボアに対応した第1吸気ポート及び第2吸気ポートを有し、前記第1のピッチが複数個の前記シリンダボアの平均直径よりも短くなっており、前記第1ヘッドボルトが前記第1吸気ポート及び前記第2吸気ポートの下流側端部の前記一方の側にそれぞれ1本ずつ配置されており、シリンダボア間の前記一方の側には配置されておらず、前記中子は、少なくとも前記シリンダヘッドにおける前記シリンダボア間の前記一方の側の部分に前記ウォータジャケットが形成されるように、構成されていることを特徴とする。
従来のように、第1のピッチ及び第2のピッチが共に複数個のシリンダボアの平均直径以上の場合、シリンダボア間の部分の締め付け力をシリンダボア間の部分に配置されている2本のヘッドボルトに頼っていたところ、本発明に係るエンジンのヘッドボルト配置によれば、上記構成を備えているので、第1のピッチ及び第2のピッチが共に複数個のシリンダボアの平均直径以上の場合に比較して、シリンダボア間の部分に近い箇所に多くのヘッドボルトが存在することができる。これにより、ヘッドボルトによるシリンダボア間の部分の締め付け力を向上させることができるので、シリンダボア間の部分におけるガスシール性を向上させることができる。
また、本発明に係るシリンダヘッドのウォータジャケットの中子によれば、第1ヘッドボルトが第1吸気ポート及び第2吸気ポートの下流側端部の一方の側にそれぞれ1本ずつ配置されており、シリンダボア間の一方の側には配置されていないので、このシリンダボア間の一方の側の領域を広く確保することができる。これにより、この領域を通過するこの中子の幅を広くすることができるので、この中子に割れ等の不具合が生じることを抑制することができる。これにより、この中子の製造性を向上させることができる。
実施形態に係るエンジンの構成の一部を模式的に示す断面図である。 実施形態に係るエンジンのヘッドボルト、吸気ポート及び排気ポートの構成を説明するための模式図である。 図3(a)及び図3(b)は比較例に係るエンジンを説明するための模式図である。 シリンダヘッドのウォータジャケットの中子を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態に係るエンジン1のヘッドボルト配置、及びシリンダヘッドのウォータジャケットの中子100(以下、中子100と略称する)について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るエンジン1の構成の一部を模式的に示す断面図である。なお、図1にはX−Y−Zの直交座標が図示されており、このうちY軸の正方向(すなわちY方向)は紙面手前から奥側へ向かう方向である。このエンジン1の種類は特に限定されるものではなく、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等を用いることができる。本実施形態においては、エンジン1の一例としてディーゼルエンジンを用いている。
エンジン1は、シリンダブロック10と、ガスシール部材20と、シリンダヘッド30と、ピストン60とを備えている。シリンダブロック10には、X方向(X軸の正方向)に列状に配列された複数個のシリンダボア11(具体的には、#1のシリンダボア11及び#2のシリンダボア11)が形成されている。すなわち、本実施形態に係るエンジン1は多気筒のエンジンである。なお、シリンダボア11の個数は2個に限定されるものではなく、3個以上であってもよい。ピストン60は、各々のシリンダボア11に配置されており、シリンダボア11内をZ軸の方向に摺動する。
シリンダヘッド30は、シリンダブロック10との間にガスシール部材20を挟持するようにして、シリンダブロック10のZ方向(Z軸の正方向であり、図1では上方向)に配置されている。
ガスシール部材20は、シリンダブロック10とシリンダヘッド30との間に配置されており、燃焼室(ピストン60の頂面とピストンリング61とシリンダブロック10とガスシール部材20とシリンダヘッド30とによって区画された空間)からのガス漏洩を抑制している。本実施形態に係るガスシール部材20は、シリンダブロック10のシリンダヘッド30に対向する面に全体的に配置されており、これにより、シリンダボア11や燃焼室からのガス漏洩を効果的に抑制している。
シリンダヘッド30は、後述する複数本のヘッドボルト(図2で説明する第1ヘッドボルト40及び第2ヘッドボルト41)によってシリンダブロック10に締結されている。具体的には本実施形態に係るシリンダヘッド30は、シリンダヘッド30とシリンダブロック10との間にガスシール部材20を挟持するようにして、ヘッドボルトによってシリンダブロック10に締結されている。なお図1において、このヘッドボルトの図示は省略されている。また、シリンダブロック10のシリンダボア11の周辺部には、シリンダブロック10を冷却する冷媒(具体的には冷却水)が通過するウォータジャケット(すなわち冷媒通路)が形成されており、シリンダヘッド30における燃焼室、吸気ポート及び排気ポートの周辺部にはシリンダヘッド30を冷却する冷媒が通過するウォータジャケットが形成されている。図1では、これらのウォータジャケットの図示も省略されている。
図2は、エンジン1のヘッドボルト、吸気ポート及び排気ポートの構成を説明するための模式図である。具体的には図2は、ヘッドボルト、吸気ポート及び排気ポートの構成(特に配置箇所や形状等)が分かるように、これらの部材を上側から視認した様子を模式的に示している。ここで、図2に示されている仮想平面50は、各々のシリンダボア11(#1のシリンダボア11及び#2のシリンダボア11)の中心軸を含むように延在した仮想的な平面である。なお、図2では、この仮想平面50を上側から視認しているので、図2の仮想平面50は、各々のシリンダボア11の中心点を通過するとともにシリンダボア
11の配列方向(X方向)に延在した線によって図示されている。また、仮想平面50の法線方向はY軸の方向になっている。
シリンダヘッド30は、仮想平面50の法線方向で仮想平面50よりも一方の側(図2ではY方向の側)に、各々のシリンダボア11に対応した第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33を備えている。また、シリンダヘッド30は、仮想平面50よりも仮想平面50の法線方向で他方の側(図2では−Y方向の側)に、各々のシリンダボア11に対応した第1排気ポート34及び第2排気ポート35を備えている。
#1のシリンダボア11に対応した第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33は、吸気(Ga)の流動方向で下流側の端部が#1のシリンダボア11に対応した燃焼室に接続している。同様に、#2のシリンダボア11に対応した第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33は、吸気(Ga)の流動方向で下流側の端部が#2のシリンダボア11に対応した燃焼室に接続している。また、第2吸気ポート33の下流側端部は、第1吸気ポート32の下流側端部のX方向側に位置している。また、第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33の上流側端部は、吸気マニホールド(図示せず)に合流している。
#1のシリンダボア11に対応した第1排気ポート34及び第2排気ポート35は、排気の流動方向で上流側の端部が#1のシリンダボア11に対応した燃焼室に接続している。同様に、#2のシリンダボア11に対応した第1排気ポート34及び第2排気ポート35は、排気の流動方向で上流側の端部が#2のシリンダボア11に対応した燃焼室に接続している。また、第2排気ポート35の上流側端部は、第1排気ポート34の上流側端部のX方向側に位置している。また、第1排気ポート34及び第2排気ポート35は、下流側に向かう途中部分で合流して、この合流した部分の下流側端部は排気マニホールド(図示せず)に接続している。
なお、図2において第1排気ポート34及び第2排気ポート35は下流側に向かう途中部分で合流しているが、第1排気ポート34及び第2排気ポート35の構成はこれに限定されるものではなく、途中部分で合流しない構成であってもよい。
エンジン1は、シリンダヘッド30をシリンダブロック10に締結するためのヘッドボルトとして、複数本の第1ヘッドボルト40と、複数本の第2ヘッドボルト41とを備えている。具体的には第1ヘッドボルト40は、仮想平面50よりもその法線方向で一方の側(図2ではY方向の側であり、吸気側でもある)において、シリンダボア11の配列方向(X方向)に第1のピッチ(P11,P12)で複数本、配置されている。すなわち、複数本の第1ヘッドボルト40は、第1ヘッドボルト40の中心軸とこれに隣接する第1ヘッドボルト40の中心軸との間のX方向の長さがP11,P12になるように、X方向に配列している。
具体的には、各々のシリンダボア11のY方向側に配置された複数本(2本)の第1ヘッドボルト40のピッチはP11であり、隣接する一方のシリンダボア11(#1)に対応する第1ヘッドボルト40と他方のシリンダボア11(#2)に対応する第1ヘッドボルト40とのピッチがP12になっている。すなわち、P11のピッチで配置された2本の第1ヘッドボルト40がP12のピッチでX方向に2組配列している。なお、P11とP12の値は等しくてもよく、実際、図2に例示する本実施形態においては、P11とP12の値は等しい。
また第2ヘッドボルト41は、仮想平面50よりもその法線方向で他方の側(図2では−Y方向の側であり、排気側でもある)において、シリンダボア11の配列方向に第2のピッチ(P20)で複数本、配置されている。すなわち、複数本の第2ヘッドボルト41
は、第2ヘッドボルト41の中心軸とこれに隣接する第2ヘッドボルト41の中心軸との間のX方向の長さがP20になるように、X方向に配列している。
また、第1のピッチ(P11,P12)及び第2のピッチ(P20)の少なくとも一方は、複数個のシリンダボア11の平均直径よりも短くなっている。具体的には、図2に例示するエンジン1においては、第1のピッチであるP11及びP12の両方がシリンダボア11の平均直径よりも短くなっており、第2のピッチ(P20)はシリンダボア11の平均直径よりも長くなっている。なお、本実施形態においては、複数個のシリンダボア11の直径は同一である。そのため、複数個のシリンダボア11の平均直径は、1つのシリンダボア11の直径と同じである。
また、本実施形態に係る複数本の第1ヘッドボルト40は、#1のシリンダボア11のY方向側に2本配置され、#2のシリンダボア11のY方向側にも2本配置されている。さらに、複数本の第1ヘッドボルト40は、第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33の下流側端部のY方向側(すなわち、一方の側)に1本ずつ配置されている。具体的には複数本の第1ヘッドボルト40は、#1のシリンダボア11に対応した第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33の下流側端部のY方向側にそれぞれ1本配置され、#2のシリンダボア11に対応した第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33の下流側端部のY方向側にそれぞれ1本配置されている。
一方、本実施形態に係る複数本の第2ヘッドボルト41は、#1のシリンダボア11に対応した第1排気ポート34の−X方向側に1本配置され、#1のシリンダボア11に対応した第2排気ポート35のX方向側であり且つ#2のシリンダボア11に対応した第1排気ポート34の−X方向側に1本配置され、#2のシリンダボア11に対応した第2排気ポート35のX方向側に1本配置されている。
また、本実施形態に係る第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33は、それぞれタンジェンシャル吸気ポートになっている。さらに、第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33は、第1吸気ポート32を通過した吸気の旋回方向と第2吸気ポート33を通過した吸気の旋回方向とが同一の旋回方向となるように、その形状等が設定されている。なお、タンジェンシャル吸気ポートとは、吸気を燃焼室やシリンダボア11の接線方向に供給する吸気ポートをいう。このタンジェンシャル吸気ポートを通過した吸気(すなわち、タンジェンシャル吸気ポートから排出された吸気)は、燃焼室やシリンダボア11において、相対的に大きなスワールを形成することができる。また、タンジェンシャル吸気ポートは、燃焼室に多くの空気を送り込むことが可能である。そのため、タンジェンシャル吸気ポートは、特にスワールを必要とするディーゼルエンジンにおいて好ましく用いられる吸気ポート(効果的な吸気ポート)である。
図4は、本実施形態に係る中子100を説明するための模式図である。具体的には図4は、本実施形態に係る中子100の一部を上方側から視認した様子を模式的に図示している。なお、第1吸気ポート32等と中子100との位置関係を理解し易くするために、図4では、第1吸気ポート32、第2吸気ポート33、第1排気ポート34、第2排気ポート35、第1ヘッドボルト40、第2ヘッドボルト41も想像線で図示されている。
本実施形態に係る中子100は、エンジン1のシリンダヘッド30の製造時に用いられる中子100であり、具体的には、シリンダヘッド30にウォータジャケットを成形する際に用いられる鋳造用の中子である。すなわち、本実施形態に係る中子100はエンジン1のウォータジャケット用の中子である。この中子100は、この中子100によって形成されるウォータジャケットが、少なくともシリンダヘッド30におけるシリンダボア11間のY方向側の部分(一方の側の部分)に形成されるように、構成されている。
具体的には本実施形態に係る中子100は、ウォータジャケットがシリンダヘッド30における第1ヘッドボルト40及び第2ヘッドボルト41の周辺部に形成されないようにしつつ、ウォータジャケットがシリンダヘッド30におけるシリンダボア11間のY方向側の部分のみならず、シリンダボア11、第1吸気ポート32、第2吸気ポート33、第1排気ポート34、及び第2排気ポート35の周囲の部分にも形成されるように、構成されている。
続いて、本実施形態に係るエンジン1のヘッドボルト配置の作用効果について、比較例に係るエンジン1a,1bと比較しつつ説明する。図3(a)は比較例に係るエンジン1aを説明するための模式図であり、図3(b)は比較例に係るエンジン1bを説明するための模式図である。具体的には図3(a)及び図3(b)はそれぞれ、比較例に係るエンジン1a及びエンジン1bについて、図2と同様の箇所を視認した模式図となっている。
図3(a)に示すように、比較例に係るエンジン1aは、第1ヘッドボルト40に代えて第1ヘッドボルト40aを有する点と、第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33に代えてそれぞれ第1吸気ポート32a及び第2吸気ポート33aを有する点とにおいて、図2に示すエンジン1と異なっている。エンジン1aの他の構成はエンジン1と同様である。
第1ヘッドボルト40aは、X方向の配列ピッチ(第1のピッチ)が複数個のシリンダボア11の平均直径よりも短くなっておらず、複数個のシリンダボア11の平均直径以上になっている点において、本実施形態に係る第1ヘッドボルト40と異なっている。具体的には第1ヘッドボルト40aの第1のピッチは、第2ヘッドボルト41の第2のピッチと同じになっている。
第1吸気ポート32aはヘリカル吸気ポートになっている点において、本実施形態に係る第1吸気ポート32と異なっている。なお、ヘリカル吸気ポートとは、吸気を吸気ポート内で螺旋状に旋回させた後に吸気ポートから排出する吸気ポートをいう。このため、一般に、ヘリカル吸気ポートの場合、吸気ポート内でのエネルギーの損失が大きく、燃焼室へ送り込める空気量が少なくなっている。
第2吸気ポート33aは、タンジェンシャル吸気ポートであるが、その吸気の旋回力が本実施形態に係る第2吸気ポート33よりも弱い点において、第2吸気ポート33と異なっている。
図3(b)に示すように、比較例に係るエンジン1bは、第3ヘッドボルト42bをさらに有する点と、第1ヘッドボルト40aに代えて第1ヘッドボルト40bを有する点と、第1吸気ポート32a及び第2吸気ポート33aに代えて第1吸気ポート32b及び第2吸気ポート33bをそれぞれ有する点と、第1排気ポート34及び第2排気ポート35に代えて第1排気ポート34b及び第2排気ポート35bをそれぞれ有する点とにおいて、図3(a)に示す比較例に係るエンジン1aと異なっている。
図3(b)の第1ヘッドボルト40bは図3(a)の第1ヘッドボルト40aの符号(40a)を40bに変更したものであり、第1ヘッドボルト40aと同じ構成となっている。
図3(b)の第3ヘッドボルト42bは、仮想平面50よりもY方向側及び−Y方向側に、それぞれ2本ずつ、シリンダボア11の配列方向(X方向)に列状に配置されている。また、Y方向側にある2本の第3ヘッドボルト42bは、互いに隣接する2本の第1ヘ
ッドボルト40bの間の部分であり、且つ、仮想平面50からの距離が第1ヘッドボルト40bよりも長い箇所に配置されている。同様に、−Y方向側にある2本の第3ヘッドボルト42bは、互いに隣接する2本の第2ヘッドボルト41の間の部分であり、且つ仮想平面50からの距離が第2ヘッドボルト41よりも長い箇所に配置されている。なお、この第3ヘッドボルト42bのシリンダボア配列方向(X方向)におけるピッチは、複数個のシリンダボア11の平均直径以上である。すなわち、エンジン1bにおいても、エンジン1aと同様に、シリンダボア配列方向に配列した各々のヘッドボルト(第1、第2、第3のヘッドボルト)のシリンダボア配列方向のピッチは、複数個のシリンダボア11の平均直径以上になっている。
図3(b)の第1吸気ポート32bはヘリカル吸気ポートであり、第2吸気ポート33bはタンジェンシャル吸気ポートである点において、図3(a)の第1吸気ポート32a及び第2吸気ポート33aと同様であるが、第3ヘッドボルト42bと干渉しないように屈曲した形状になっている点において、図3(a)の第1吸気ポート32a及び第2吸気ポート33aと異なっている。また、図3(b)の第1排気ポート34b及び第2排気ポート35bは、第3ヘッドボルト42bと干渉しないように屈曲した形状になっている点において、図3(a)の第1排気ポート34及び第2排気ポート35と異なっている。
比較例に係るエンジン1a,1bにおいては、第1ヘッドボルト40a,40bの第1のピッチ及び第2ヘッドボルト41の第2のピッチの両方とも、複数個のシリンダボア11の平均直径以上であるので、シリンダボア間に近い部分に多くのヘッドボルトを配置することが困難な構成になっている。そのため、シリンダボア間の部分におけるガスシールに必要な圧力(線圧又は面圧)を確保することは難しい。したがって、エンジン1a,1bにおけるシリンダボア間の部分におけるガスシール性は十分に高いとはいえない。
これに対して、本実施形態に係るエンジン1のヘッドボルト配置によれば、図2で前述したように、第1のピッチ(P11,P12)及び第2のピッチ(P20)の少なくとも一方が複数個のシリンダボア11の平均直径よりも短くなっており、具体的には図2においては、第1のピッチ(P11,P12)がシリンダボア11の平均直径よりも短くなっている。これにより、比較例に係るエンジン1a,1bに比較して、シリンダボア間により近い部分に多くのヘッドボルト(本実施形態では第1ヘッドボルト40)が存在することができるので、シリンダボア間の部分のヘッドボルトによる締め付け力を向上させることができる。この結果、シリンダボア間の部分におけるガスシール性を向上させることができる。
具体例を挙げると、例えば図3に示す比較例の場合、シリンダボア間の近傍には、第1ヘッドボルト40a,40bと第2ヘッドボルト41の合計2本のヘッドボルトが配置されており、この2本のヘッドボルトの締め付け力でエンジン1a,1bにおけるシリンダボア間の部分が締め付けられている。これに対して、図2に示す本実施形態に係るエンジン1の場合、シリンダボア間の近傍には2本の第1ヘッドボルト40と1本の第2ヘッドボルト41の合計3本のヘッドボルトが配置されており、この3本のヘッドボルトによってエンジン1におけるシリンダボア間の部分を締め付けることができる。この結果、本実施形態によれば、シリンダボア間の部分のヘッドボルトによる締め付け力を向上できるので、シリンダボア間の部分におけるガスシール性を向上させることができる。
なお、本実施形態において、第1のピッチ(P11,P12)ではなく、第2のピッチ(P20)が複数個のシリンダボア11の平均直径よりも短い構成とすることもできる。この場合においても、ヘッドボルトによるシリンダボア間の部分の締め付け力を向上できるので、シリンダボア間の部分におけるガスシール性を向上させることができる。また、エンジン1において、第1のピッチ(P11,P12)及び第2のピッチ(P20)の両
方が複数個のシリンダボア11の平均直径よりも短い構成とすることもできる。この場合には、より効果的にシリンダボア間の部分におけるガスシール性を向上させることができる。
また、図3に示す比較例に係るエンジン1a,1bの場合、第1吸気ポート32a,32b及び第2吸気ポート33a,33bを、第1ヘッドボルト40a,40bや第3ヘッドボルト42bと干渉しないように配置する必要があるため、第1吸気ポート32a,32b及び第2吸気ポート33a,33bを、同一の旋回方向を有するタンジェンシャル吸気ポートにすることは容易とはいえない。
これに対して、本実施形態によれば、図2に示すように、第1のピッチ(P11,P12)が複数個のシリンダボア11の平均直径よりも短くなっており、且つ第1ヘッドボルト40が第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33の下流側端部のY方向側(すなわち仮想平面50の法線方向で一方の側)にそれぞれ1本ずつ配置されているので、第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33が第1ヘッドボルト40と干渉することを回避しつつ、第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33を容易にタンジェンシャル吸気ポートにできるとともに、この2つのタンジェンシャル吸気ポートを吸気の旋回方向が同一の旋回方向となるように容易に構成できる。
実際、図2で前述したように、本実施形態に係る第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33はそれぞれタンジェンシャル吸気ポートであり、且つ、第1吸気ポート32の吸気の旋回方向と第2吸気ポート33の吸気の旋回方向とは同一の旋回方向になっている。
この本実施形態に係るエンジン1によれば、第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33がそれぞれタンジェンシャル吸気ポートであるので、第1吸気ポート及び第2吸気ポートのうち一方がヘリカル吸気ポートであり他方がタンジェンシャル吸気ポートである比較例に係るエンジン1a,1bに比較して、吸気ポート内における吸気の流動抵抗を小さくすることができる。すなわち、燃焼室に多くの空気を送り込むことができる。これにより、エンジン1は吸気を効率的に吸入することができる。
また、本実施形態によれば、第1吸気ポート32の吸気の旋回方向と第2吸気ポート33の吸気の旋回方向とが同一の旋回方向であるので、第1吸気ポート32を通過した吸気の旋回流と第2吸気ポート33を通過した吸気の旋回流とが互いに強め合うことができる。これにより、吸気の旋回強さ(スワールの強さ)を向上させることができる。
また、図3に示す比較例に係るエンジン1a,1bの場合、シリンダボア間におけるY方向側の部分に第1ヘッドボルト40a,40bが配置されているので、このシリンダボア間のY方向側の部分に配置された第1ヘッドボルト40a,40bと、#2のシリンダボア11に対応した第1吸気ポート32a,32bと、#1のシリンダボア11に対応した第2吸気ポート33a,33bとの間の領域が狭くなってしまう。そのため、ウォータジャケットの鋳造製造時において、この狭い領域にウォータジャケット用の中子を設けようとした場合、この中子の幅が狭くなってしまい、この結果、この中子に割れ等の不具合が生じるおそれがある。したがって、比較例に係るエンジン1a,1bの場合、中子の製造性は良好とはいえない。
これに対して本実施形態によれば、第1のピッチ(P11,P12)が複数個のシリンダボア11の平均直径よりも短くなっており、且つ第1ヘッドボルト40が第1吸気ポート32及び第2吸気ポート33の下流側端部のY方向側(すなわち仮想平面50の法線方向で一方の側)にそれぞれ1本ずつ配置されており、シリンダボア間のY方向側の部分には第1ヘッドボルト40が配置されていないので、比較例に比較して、シリンダボア間の
Y方向側の部分の領域を広く確保することが容易にできる。これにより、本実施形態に係る中子100によれば、シリンダボア間のY方向側の部分の領域を通過する中子100の幅を広くすることが容易にできるので(図4参照)、中子100に割れ等の不具合が生じることを抑制することができる。この結果、中子100の製造性を向上させることができる。
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
1 エンジン
10 シリンダブロック
11 シリンダボア
20 ガスシール部材
30 シリンダヘッド
32 第1吸気ポート
33 第2吸気ポート
40 第1ヘッドボルト
41 第2ヘッドボルト
42b 第3ヘッドボルト
50 仮想平面
60 ピストン
61 ピストンリング
100 シリンダヘッドのウォータジャケットの中子
11,P12 第1のピッチ
20 第2のピッチ

Claims (5)

  1. 列状に配列された複数個のシリンダボアを有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに複数本のヘッドボルトによって締結されたシリンダヘッドと、を備えるエンジンのヘッドボルト配置であって、
    複数本の前記ヘッドボルトは、各々の前記シリンダボアの中心軸を含むように延在した仮想平面よりも前記仮想平面の法線方向で一方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第1のピッチで複数本配置された第1ヘッドボルトと、前記仮想平面よりも前記法線方向で他方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第2のピッチで複数本配置された第2ヘッドボルトと、を備え、
    前記第1のピッチ及び前記第2のピッチの少なくとも一方は、複数個の前記シリンダボアの平均直径よりも短いことを特徴とするエンジンのヘッドボルト配置。
  2. 前記シリンダヘッドは、前記仮想平面よりも前記一方の側に、各々の前記シリンダボアに対応した第1吸気ポート及び第2吸気ポートを有し、
    前記第1のピッチが複数個の前記シリンダボアの平均直径よりも短くなっており、
    前記第1ヘッドボルトが前記第1吸気ポート及び前記第2吸気ポートの下流側端部の前記一方の側にそれぞれ1本ずつ配置されていることを特徴とする請求項1記載のエンジンのヘッドボルト配置。
  3. 各々の前記シリンダボアに対応した前記第1吸気ポート及び前記第2吸気ポートは、それぞれタンジェンシャル吸気ポートであることを特徴とする請求項2記載のエンジンのヘッドボルト配置。
  4. 各々の前記シリンダボアに対応した前記第1吸気ポート及び前記第2吸気ポートは、前記第1吸気ポートを通過した吸気の旋回方向と前記第2吸気ポートを通過した吸気の旋回方向とが同一の旋回方向となるように構成されていることを特徴とする請求項3記載のエンジンのヘッドボルト配置。
  5. 列状に配列された複数個のシリンダボアを有するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに複数本のヘッドボルトによって締結されたシリンダヘッドと、を備えるエンジンの前記シリンダヘッドに形成されたウォータジャケット用の中子であって、
    複数本の前記ヘッドボルトは、各々の前記シリンダボアの中心軸を含むように延在した仮想平面よりも前記仮想平面の法線方向で一方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第1のピッチで複数本配置された第1ヘッドボルトと、前記仮想平面よりも前記法線方向で他方の側において、前記シリンダボアの配列方向に第2のピッチで複数本配置された第2ヘッドボルトと、を備え、
    前記第1のピッチ及び前記第2のピッチの少なくとも一方は、複数個の前記シリンダボアの平均直径よりも短く、
    前記シリンダヘッドは、前記仮想平面よりも前記一方の側に、各々の前記シリンダボアに対応した第1吸気ポート及び第2吸気ポートを有し、
    前記第1のピッチが複数個の前記シリンダボアの平均直径よりも短くなっており、
    前記第1ヘッドボルトが前記第1吸気ポート及び前記第2吸気ポートの下流側端部の前記一方の側にそれぞれ1本ずつ配置されており、シリンダボア間の前記一方の側には配置されておらず、
    前記中子は、少なくとも前記シリンダヘッドにおける前記シリンダボア間の前記一方の側の部分に前記ウォータジャケットが形成されるように、構成されていることを特徴とするシリンダヘッドのウォータジャケットの中子。
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