JP2012225246A - 内燃機関の冷却通路構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボア間領域の冷却性能向上を簡単な構成で実現する。
【解決手段】複数のシリンダボアの周りにブロック冷却通路が形成されたシリンダブロック10と、ヘッド冷却通路が形成されたシリンダヘッド30と、シリンダブロック10及びシリンダヘッド30間に介在されたシリンダヘッドガスケット20とを備える内燃機関において、隣合うシリンダボア間でシリンダブロック10の幅方向に延びるボア間領域13に形成されたボア間冷却通路14、シリンダヘッドガスケット20を貫通するガスケット孔23、及びシリンダヘッド30に形成されたヘッド孔31を通じて、ブロック冷却通路とヘッド冷却通路との間で冷却液を流通させてボア間領域13を冷却する。ガスケット孔23はボア間冷却通路14のシリンダヘッド側開口15よりもシリンダブロック10の幅方向外側に設けられ、ヘッド孔31はガスケット孔23よりもさらに同幅方向外側に設けられている。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関のシリンダブロックにおいて、隣合うシリンダボア間の領域(ボア間領域)にボア間冷却通路を設け、このボア間冷却通路に冷却液を流してボア間領域を冷却するようにした内燃機関の冷却通路構造に関するものである。
シリンダブロックのトップデッキ部とシリンダヘッドとを、それらの間に介在されたシリンダヘッドガスケットを介して締結してなる内燃機関として、シリンダブロックの内部及びシリンダヘッドの内部にそれぞれウォータジャケットと呼ばれる冷却液の流通路を形成したものが知られている。シリンダヘッドガスケットには、トップデッキ部及びシリンダヘッドにそれぞれ弾性的に接触して、それらトップデッキ部及びシリンダヘッド間をシールするビードが設けられている。
この内燃機関では、シリンダブロック内のウォータジャケット(ブロック冷却通路)からシリンダヘッド内のウォータジャケット(ヘッド冷却通路)へ冷却液を流すことで、シリンダブロック及びシリンダヘッドが内部から冷却される。
また、図3及び図4に示すように、シリンダブロック50では、長さ方向(図3では上下方向、図4では紙面と直交する方向)に隣合うシリンダボア52間の領域(ボア間領域53)が高温となりやすい。このことから、ボア間領域53に形成されたボア間冷却通路54、シリンダヘッドガスケット60を貫通するガスケット孔63、及びシリンダヘッド70に形成されたヘッド孔71を通じて、ブロック冷却通路からヘッド冷却通路へ冷却液を流れさせてボア間領域53を冷却する冷却通路構造が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、図3では、ガスケット孔63及びヘッド孔71が一点鎖線で図示されている。
上記冷却通路構造では、ヘッド孔71の中心軸線L3がボア間冷却通路54のシリンダヘッド側開口55での中心軸線L1に対し斜めに交差している。また、ガスケット孔63の中心軸線L2は、ヘッド孔71の中心軸線L3と同軸上に位置している。
なお、図3中の符号「61」,「62」は、シリンダヘッドガスケット60の上記ビードによってシールが行なわれる箇所である内側シールライン及び外側シールラインをそれぞれ示している。シリンダヘッド側開口55、ガスケット孔63及びヘッド孔71は、内側シールライン61及び外側シールライン62間において、内側シールライン61に接近した箇所に設けられている。
特開2010−150989号公報(図3)
ところが、上記特許文献1を含む従来の冷却通路構造では、冷却液がボア間冷却通路54のシリンダヘッド側開口55とヘッド孔71との間を流れる際に、向きを急激に変えられ、流れに対する抵抗が急増する(圧力損失が発生する)。その結果、冷却液の流量が減少したり流速が低下したりし、ボア間領域53を冷却する性能が充分発揮されないおそれがある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ボア間領域の冷却性能向上を簡単な構成で実現することのできる内燃機関の冷却通路構造を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、長さ方向に沿って複数のシリンダボアが並設されるとともに、前記シリンダボアの周りにブロック冷却通路が形成されたシリンダブロックと、ヘッド冷却通路が形成されたシリンダヘッドと、前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッド間に介在されたシリンダヘッドガスケットとを備える内燃機関に適用されるものであり、隣合う前記シリンダボア間で前記シリンダブロックの幅方向に延びるボア間領域に形成されたボア間冷却通路、前記シリンダヘッドガスケットを貫通するガスケット孔、及び前記ヘッド冷却通路に連通され、かつ自身の中心軸線が前記ボア間冷却通路のシリンダヘッド側開口での中心軸線に交差するヘッド孔を通じて、前記ブロック冷却通路と前記ヘッド冷却通路との間で冷却液を流通させることにより前記ボア間領域を冷却する内燃機関の冷却通路構造において、前記ガスケット孔は、前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に設けられ、前記ヘッド孔は、前記ガスケット孔よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に設けられていることを要旨とする。
上記の構成によれば、ボア間冷却通路、ガスケット孔及びヘッド孔を通じ、冷却液がブロック冷却通路とヘッド冷却通路との間で流通することにより、ボア間領域が冷却される。
ここで、ボア間冷却通路のシリンダヘッド側開口での中心軸線とヘッド孔の中心軸線とが交差しているため、冷却液は、シリンダヘッド側開口とヘッド孔との間を流れる際に向きを変えられる。
請求項1に記載の発明では、ガスケット孔が、シリンダヘッド側開口よりもシリンダブロックの幅方向外側に設けられていることから、冷却液は、シリンダヘッド側開口及びガスケット孔を流れる際に、シリンダヘッド側開口及びヘッド孔の両中心軸線のなす角度よりも小さな角度だけ向きを変えられる。
また、請求項1に記載の発明では、ヘッド孔が、ガスケット孔よりもシリンダブロックの幅方向外側に設けられていることから、冷却液は、ガスケット孔及びヘッド孔を流れる際に、シリンダヘッド側開口及びヘッド孔の両中心軸線のなす角度よりも小さな角度だけ向きを変えられる。
このように、冷却液は、シリンダヘッド側開口及びヘッド孔を流れる過程で向きを徐々に変えられるため、流れの向きが急激に変化するものとは異なり、流れに対する抵抗が急増して、冷却液の流量が減少したり流速が低下したりすることが起こりにくく、ボア間領域の冷却性能が向上する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口は、前記シリンダブロックの前記シリンダヘッド側の端部であるトップデッキ部に形成されていることを要旨とする。
ここで、ボア間冷却通路のシリンダヘッド側開口がトップデッキ部に形成されたものでは、そのシリンダヘッド側開口を通過した冷却液はガスケット孔に直接流入するため、流れの向きがガスケット孔から大きく影響を受ける。
従って、ボア間冷却通路のシリンダヘッド側開口がトップデッキ部に形成されている請求項2に記載の発明にあって、請求項1に記載の発明の構成は、冷却液の流れの向きを徐々に変えるうえで特に有効に作用する。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口、前記ガスケット孔及び前記ヘッド孔の各々に関し、前記シリンダブロックの幅方向についての内側の端縁を内端縁とした場合、前記ガスケット孔の内端縁は、前記シリンダヘッド側開口の内端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置し、前記ヘッド孔の内端縁は、前記ガスケット孔の内端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置していることを要旨とする。
上記の構成によれば、ガスケット孔の内端縁がシリンダヘッド側開口の内端縁よりもシリンダブロックの幅方向外側に位置していることから、冷却液は、これらの内端縁に沿って流れることで、シリンダヘッド側開口及びヘッド孔の両中心軸線のなす角度よりも小さな角度だけ向きを変えられる。
また、ヘッド孔の内端縁がガスケット孔の内端縁よりもシリンダブロックの幅方向外側に位置していることから、冷却液は、これらの内端縁に沿って流れることで、シリンダヘッド側開口及びヘッド孔の両中心軸線のなす角度よりも小さな角度だけ向きを変えられる。
このように、冷却液はシリンダヘッド側開口、ガスケット孔及びヘッド孔の各内端縁に沿って流れることで向きを徐々に変えられる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口、前記ガスケット孔及び前記ヘッド孔の各々に関し、前記シリンダブロックの幅方向についての外側の端縁を外端縁とした場合、前記ガスケット孔の外端縁は、前記シリンダヘッド側開口の外端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置し、前記ヘッド孔の外端縁は、前記ガスケット孔の外端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置していることを要旨とする。
上記の構成によれば、ガスケット孔の外端縁がシリンダヘッド側開口の外端縁よりもシリンダブロックの幅方向外側に位置していることから、冷却液は、これらの外端縁に沿って流れることで、シリンダヘッド側開口及びヘッド孔の両中心軸線のなす角度よりも小さな角度だけ向きを変えられる。
また、ヘッド孔の外端縁がガスケット孔の外端縁よりもシリンダブロックの幅方向外側に位置していることから、冷却液は、これらの外端縁に沿って流れることで、シリンダヘッド側開口及びヘッド孔の両中心軸線のなす角度よりも小さな角度だけ向きを変えられる。
このように、冷却液はシリンダヘッド側開口、ガスケット孔及びヘッド孔の各外端縁に沿って流れることで向きを徐々に変えられる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明において、前記シリンダヘッドガスケットには、前記シリンダヘッド側開口よりも前記シリンダブロックの幅方向内側で前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッド間をシールするビードが設けられており、前記ガスケット孔及び前記ヘッド孔は、それらの内壁面が前記ビードによるシールラインに接近する位置まで拡径されていることを要旨とする。
上記の構成によれば、シリンダヘッドガスケットのビードが、シリンダヘッド側開口よりもシリンダブロックの幅方向内側でシリンダブロック及びシリンダヘッドに接触することで、それらシリンダブロック及び前記シリンダヘッド間がシールされる。
ここで、ガスケット孔及びヘッド孔が、それぞれ上記請求項1に記載の発明の条件を満たす箇所に設けられることにより、ガスケット孔及びヘッド孔の各内壁面は、上記シールラインからシリンダブロックの幅方向外側へ遠ざかる。
一方で、ガスケット孔がシールラインに重なると、燃焼ガスや冷却液がその重なった部分から漏れ出てシール性の低下を招く。このシール性の低下を抑制するには、ガスケット孔をシールラインから離れさせればよい。ただし、このシール性低下を抑制する効果は、ガスケット孔がシールラインから遠ざかるほど大きくなるわけではなく、ガスケット孔とシールラインとの間隔が一定値以上あれば同程度であると考えられる。
この点を考慮し、請求項5に記載の発明では、ガスケット孔及びヘッド孔は、それらの内壁面がシールラインに接近する位置まで拡径されている。このため、シール性を確保しつつ、拡径による効果、すなわち冷却液の流量増加効果及び流速上昇効果が得られ、ボア間領域の冷却性能がさらに向上する。
本発明を具体化した一実施形態において、シリンダブロックのシリンダヘッド側開口の周辺部分を、ガスケット孔、ヘッド孔及び内外両シールラインとともに示す部分平面図。 図1のX−X線に沿った断面構造を示す部分断面図。 従来の内燃機関の冷却通路構造を説明する図であり、シリンダブロックのシリンダヘッド側開口の周辺部分を、ガスケット孔、ヘッド孔及び内外両シールラインとともに示す部分平面図。 従来の内燃機関の冷却通路構造を説明する図であり、図3のY−Y線に沿った断面構造を示す部分断面図。
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態の内燃機関は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10のトップデッキ部11上に配置されたシリンダヘッドガスケット20と、シリンダヘッドガスケット20上に配置されたシリンダヘッド30とを備えている。トップデッキ部11は、シリンダブロック10のうちシリンダヘッド30側の端部(図2の上端部)を構成する部位である。
シリンダブロック10には、ピストン(図示略)を往復動可能に収容するための複数のシリンダボア12が同シリンダブロック10の長さ方向(図1では上下方向、図2では紙面と直交する方向)に互いに離間させられた状態で並設されている。シリンダヘッド30において、各シリンダボア12と対応する箇所には燃焼室(図示略)が形成されている。シリンダヘッドガスケット20において、各シリンダボア12及び各燃焼室と対応する箇所には、両者を連通させるための円形のボア孔(図示略)が形成されている。そして、シリンダヘッド30及びシリンダヘッドガスケット20は、複数本のヘッドボルト(図示略)によってシリンダブロック10に締結されている。
上記内燃機関では、燃料と空気の混合気が燃焼室で燃焼される。この燃焼に伴い生ずる高温高圧の燃焼ガスによりピストンが往復動され、機関出力軸であるクランク軸(図示略)が回転されて内燃機関の駆動力(出力トルク)が得られる。
上記混合気の燃焼に伴い発生する熱(燃焼熱)によって高温となった各部を冷却するために、シリンダブロック10内のシリンダボア12の周りには、冷却液の流通路であるブロック冷却通路(ブロック側ウォータジャケット)が形成されている。また、シリンダヘッド30内には、冷却液の流通路であるヘッド冷却通路(ヘッド側ウォータジャケット)が形成されている。
シリンダブロック10において隣合う2つのシリンダボア12によって挟まれた領域は、シリンダブロック10の幅方向(図1及び図2の左右方向)に延びるボア間領域13となっている。
ここで、シリンダブロック10の上記幅方向についての中央部を基準とし、この中央部に近付く側を「内側」といい、同中央部から遠ざかる側を「外側」というものとする。
各ボア間領域13は燃焼熱の影響を受けやすく、内燃機関の運転に伴って高温になりやすい。このことから、各ボア間領域13に形成されたボア間冷却通路14、シリンダヘッドガスケット20を貫通するガスケット孔23、及びシリンダヘッド30に形成されたヘッド孔31を通じて、ブロック冷却通路からヘッド冷却通路へ冷却液を流れさせることにより、ボア間領域13を冷却する冷却通路構造が採用されている。
各ボア間冷却通路14は、シリンダブロック10の鋳造後にドリル加工によって穿設されることから、ドリルパスとも呼ばれる。各ボア間冷却通路14は、隣合うシリンダボア12間において、シリンダボア12の中心軸線(図示略)に対して傾斜した状態(非平行状態)で延びている。ボア間冷却通路14は、図2では、右側ほど高くなるように傾斜している。各ボア間冷却通路14は、その中心軸線L0に直交する面において円形の断面を有している。各ボア間冷却通路14の一方(図2の左方)の端部は、ブロック冷却通路に面して開口しており、ボア間冷却通路14での冷却液の入口を構成している。各ボア間冷却通路14の他方(図2の右方)の端部はトップデッキ部11で開口されていて、ボア間冷却通路14での冷却液の出口であるシリンダヘッド側開口15を構成している。各シリンダヘッド側開口15は、シリンダヘッドガスケット20の後述する内側シールライン21に対し、シリンダブロック10の幅方向外側から接近した箇所において、同幅方向に細長い楕円形状をなしている。
シリンダヘッドガスケット20の各シリンダボア12の周囲であって、シリンダヘッド側開口15よりもシリンダブロック10の幅方向内側には、内側ビード(図示略)が形成されている。また、シリンダヘッドガスケット20の内側ビードの周囲であって、シリンダヘッド側開口15よりもシリンダブロック10の幅方向外側には、外側ビード(図示略)が形成されている。これらの内側ビード及び外側ビードのうち内側ビードは、特許請求の範囲における「ビード」に該当する。
内側ビード及び外側ビードは、いずれも断面円弧状をなすようにトップデッキ部11側(図2の下側)へ突出しており、上記ヘッドボルトの締付けに伴い、シリンダヘッド30及びトップデッキ部11に弾性的に圧接する。この圧接により、内側ビードは、内燃機関の運転時に燃焼室で生ずる高温高圧の燃焼ガスをシールする。また、上記圧接により、内側ビード及び外側ビードは、トップデッキ部11及びシリンダヘッド30間を流れる冷却液をシールする。
なお、内側ビード及び外側ビードは、上記圧接に際し、トップデッキ部11に線接触する。図1中の符号「21」は、内側ビードがトップデッキ部11に線接触してシールする箇所である内側シールラインを示している。この内側シールライン21は、特許請求の範囲における「シールライン」に該当する。また、図1中の符号「22」は、外側ビードがトップデッキ部11に線接触してシールする箇所である外側シールラインを示している。図2では、内側シールライン21及び外側シールライン22の図示が省略されている。
ガスケット孔23は、シリンダヘッドガスケット20を貫通する円形の孔によって構成されている。ガスケット孔23の中心軸線L2は、ボア間冷却通路14でのシリンダヘッド側開口15の中心軸線L1に交差している。両中心軸線L1,L2のなす角度αは90°よりも小さい。
ヘッド孔31は、上記ヘッド冷却通路に連通されており、シリンダヘッド30においてシリンダヘッドガスケット20に接する側(図2の下側)の面において開口されている。このヘッド孔31は、上記ガスケット孔23と同一の内径を有する円形の孔によって構成されている。ヘッド孔31の中心軸線L3は、上記中心軸線L2が中心軸線L1となす上記角度αと同じ角度で同中心軸線L1に交差している。
さらに、本実施形態ではガスケット孔23が、シリンダヘッド側開口15よりもシリンダブロック10の幅方向外側に設けられている。また、ヘッド孔31が、ガスケット孔23よりもさらに同幅方向外側に設けられている。
より詳しくは、シリンダヘッド側開口15の中心Cを基準位置とした場合、ガスケット孔23の中心軸線L2は、上記中心Cからシリンダブロック10の幅方向外側へずれた箇所に位置している。また、ヘッド孔31の中心軸線L3は、上記ガスケット孔23の中心軸線L2からさらに同幅方向外側へずれた箇所に位置している。
ここで、上記のように各中心軸線L2,L3がシリンダブロック10の幅方向外側へずらされることにより、各中心軸線L2,L3は内側シールライン21からシリンダブロック10の幅方向外側へ遠ざかる。これに伴い、ガスケット孔23及びヘッド孔31の各内壁面は、内側シールライン21から同幅方向外側へ遠ざかる。
一方で、ガスケット孔23が内側シールライン21に重なると、燃焼ガス及び冷却液がその重なった部分から漏れ出てシール性の低下を招く。このシール性の低下を抑制するには、ガスケット孔23を内側シールライン21から離れさせればよい。ただし、このシール性低下を抑制する効果は、ガスケット孔23が内側シールライン21から遠ざかるほど大きくなるわけではなく、ガスケット孔23と内側シールライン21との間隔が一定値以上あれば同程度であると考えられる。
この点を考慮し、本実施形態では、ガスケット孔23の内壁面が、内側シールライン21に接近する位置まで拡径されている。また、ヘッド孔31についてもガスケット孔23と同一の内径となることを条件に、同ヘッド孔31の内壁面が、ガスケット孔23ほどではないものの、内側シールライン21に接近する位置まで拡径されている。こうして拡径されたガスケット孔23及びヘッド孔31の内径は、楕円径状をなすシリンダヘッド側開口15の長軸よりも大きくなっている。
シリンダヘッド側開口15、ガスケット孔23及びヘッド孔31の各々に関し、シリンダブロック10の幅方向についての内側の端縁(最も内側の箇所)を「内端縁」とし、外側の端縁(最も外側の箇所)を「外端縁」とする。このように定義すると、上記のように拡径されたガスケット孔23及びヘッド孔31について、各中心軸線L2,L3の幅方向における位置がずらされることにより、ガスケット孔23の内端縁23Iは、シリンダヘッド側開口15の内端縁15Iよりもシリンダブロック10の幅方向外側に位置している。また、ヘッド孔31の内端縁31Iは、ガスケット孔23の内端縁23Iよりもさらに同幅方向外側に位置している。
ガスケット孔23の外端縁23Oは、シリンダヘッド側開口15の外端縁15Oよりもシリンダブロック10の幅方向外側に位置している。また、ヘッド孔31の外端縁31Oは、ガスケット孔23の外端縁23Oよりもさらに同幅方向外側に位置している。外端縁15O,23O間の間隔は、内端縁15I,23I間の間隔よりも大きい。外端縁23O,31O間の間隔と、内端縁23I,31I間の間隔とは同一である。
なお、上記ガスケット孔23及びヘッド孔31の各拡径は、それらをそれぞれ幅方向外側へずらすことによりはじめてなし得る。これは、ガスケット孔23及びヘッド孔31は、元々内側シールライン21に近い箇所に設けられていることによる。すなわち、こうした状況下でシリンダブロック10の幅方向外側へずらすことなく単に拡径すると、図3において二点鎖線で示すように、ガスケット孔63及びヘッド孔71が内側シールライン61と重なってしまう。拡径により冷却液の流量増加及び流速上昇を図ることが可能となる反面、シール性の低下を招く。そのため、ガスケット孔23及びヘッド孔31をシリンダブロック10の幅方向外側へずらすことなく単に拡径することは現実的でない。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
ブロック冷却通路を流れる冷却液の一部はボア間領域13のボア間冷却通路14に流入し、同ボア間冷却通路14、ガスケット孔23及びヘッド孔31を通り、ヘッド冷却通路へ向けて流れる。冷却液がこのようにブロック冷却通路とヘッド冷却通路との間で流れることにより、ボア間領域13と冷却液との間で熱交換が行なわれ、ボア間領域13が冷却される。
ここで、ボア間冷却通路14のシリンダヘッド側開口15での中心軸線L1とヘッド孔31の中心軸線L3とが角度αで交差しているため、冷却液は、シリンダヘッド側開口15とヘッド孔31との間を流れる際に、向きを角度αだけ変えられる。
この点、本実施形態ではガスケット孔23の内端縁23Iが、シリンダヘッド側開口15の内端縁15Iよりもシリンダブロック10の幅方向外側に位置していることから、冷却液は、これらの内端縁15I,23Iに沿って流れることで、両中心軸線L1,L3のなす角度αよりも小さな角度だけ向きを変えられる。
また、ヘッド孔31の内端縁31Iが、ガスケット孔23の内端縁23Iよりもシリンダブロック10の幅方向外側に位置していることから、冷却液は、これらの内端縁23I,31Iに沿って流れることで、上記角度αよりも小さな角度だけ向きを変えられる。
さらに、ガスケット孔23の外端縁23Oが、シリンダヘッド側開口15の外端縁15Oよりもシリンダブロック10の幅方向外側に位置していることから、冷却液はこれらの外端縁15O,23Oに沿って流れることで、上記角度αよりも小さな角度だけ向きを変えられる。
また、ヘッド孔31の外端縁31Oが、ガスケット孔23の外端縁23Oよりもシリンダブロック10の幅方向外側に位置していることから、冷却液はこれらの外端縁23O,31Oに沿って流れることで、上記角度αよりも小さな角度だけ向きを変えられる。
このように、冷却液は、シリンダヘッド側開口15及びヘッド孔31を流れる過程で向きを徐々に変えられる。
さらに、ボア間領域13毎のガスケット孔23及びヘッド孔31が、内側シールライン21に近い位置まで拡径されていることから、拡径が行なわれない場合に比べ、冷却液の流量が増加し流速が上昇する。
また、ガスケット孔23及びヘッド孔31が内側シールライン21に重ならないため、内側ビードによるシール性の低下が起こりにくい。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)ガスケット孔23を、ボア間冷却通路14のシリンダヘッド側開口15よりもシリンダブロック10の幅方向外側に設け、ヘッド孔31をガスケット孔23よりもさらに同幅方向外側に設けている(図1、図2)。
そのため、冷却液がシリンダヘッド側開口15及びヘッド孔31を流れる過程で、その冷却液の向きを徐々に変えることができる。流れの向きが急激に変化する、特許文献1を含む従来の冷却通路構造とは異なり、流れに対する抵抗が急増(圧力損失が発生)して冷却液の流量が減少したり流速が低下したりするのを抑制することができる。その結果、ボア間領域13の冷却性能の向上を図ることができる。
(2)ボア間冷却通路14のシリンダヘッド側開口15がトップデッキ部11に形成されたものでは、そのシリンダヘッド側開口15を通過した冷却液はガスケット孔23に直接流入するため、流れの向きがガスケット孔23から大きく影響を受ける。
従って、シリンダヘッド側開口15がトップデッキ部11に形成されている本実施形態にあって、上記(1)の構成は、流れの向きを徐々に変えるうえで特に有効に作用する。
(3)ガスケット孔23の内端縁23Iを、シリンダヘッド側開口15の内端縁15Iよりもシリンダブロック10の幅方向外側に設定する。また、ヘッド孔31の内端縁31Iを、ガスケット孔23の内端縁23Iよりもさらに同幅方向外側に設定している(図1、図2)。
そのため、冷却液が、シリンダヘッド側開口15、ガスケット孔23及びヘッド孔31の各内端縁15I,23I,31Iに沿って流れる過程で、その向きを徐々に変えることができる。
(4)ガスケット孔23の外端縁23Oを、シリンダヘッド側開口15の外端縁15Oよりもシリンダブロック10の幅方向外側に設定する。また、ヘッド孔31の外端縁31Oを、ガスケット孔23の外端縁23Oよりもさらに同幅方向外側に設定している(図1、図2)。
そのため、冷却液が、シリンダヘッド側開口15、ガスケット孔23及びヘッド孔31の各外端縁15O,23O,31Oに沿って流れる過程で、その向きを徐々に変えることができる。
(5)ガスケット孔23及びヘッド孔31を、それらの内壁面がビードによる内側シールライン21に接近する位置まで拡径させている(図1)。
そのため、単にシリンダブロック10の幅方向の位置がずらされただけ(拡径が行なわれていない)の場合に比べて、冷却液の流量増加及び流速上昇を図り、ボア間領域13の冷却性能をさらに向上させることができる。
また、ガスケット孔23及びヘッド孔31が内側シールライン21に重ならないため、重なる場合とは異なり、シール性の低下を抑制することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・本発明の冷却通路構造は、シリンダブロック10として、ブロック冷却通路のシリンダヘッド30側が閉塞された、いわゆるクローズドデッキタイプが用いられた内燃機関にも、ブロック冷却通路のシリンダヘッド30側が開放された、いわゆるオープンデッキタイプが用いられた内燃機関にも適用可能である。
・上記オープンデッキタイプのシリンダブロック10が用いられた内燃機関にあっては、ボア間冷却通路14のシリンダヘッド側開口15は、ボア間領域13の側面で開口するものであってもよい。この場合には、シリンダヘッド側開口15とガスケット孔23とが離間し、シリンダヘッド側開口15から出た冷却水は、一旦、ブロック冷却通路を通り、その後にガスケット孔23に流入することとなる。この場合であっても、冷却液の流れる向きを徐々に変えて、ボア間領域13の冷却性能を向上させることはできる。
・ガスケット孔23及びヘッド孔31は必ずしも拡径されなくてもよい。この場合であっても、ガスケット孔23及びヘッド孔31の位置がずらされることにより、冷却性能向上効果は得られる。
・上記実施形態では、上記(3),(4)の両方の構成を備えるものによって内燃機関の冷却通路構造が構成されたが、これらの(3),(4)の一方の構成のみを備えるものによって内燃機関の冷却通路構造が構成されてもよい。
・上記(3),(4)の少なくとも一方の構成を備えることを条件に、ヘッド孔31がガスケット孔23とは異なる内径を有するものに変更されてもよい。
・ガスケット孔23が冷却液の流通方向に複数の領域に分けられ、下流側の領域が上流側の領域よりもシリンダブロック10の幅方向外側に設けられてもよい。
例えば、シリンダヘッドガスケット20が、メタルシート等からなる複数枚のシート材を積層したものである場合には、下流側のシート材のガスケット孔(下流側の領域)が上流側のシート材のガスケット孔(上流側の領域)よりもシリンダブロック10の幅方向外側に設けられてもよい。
ヘッド孔31についても同様の変更が可能である。すなわち、ヘッド孔31が冷却液の流通方向に複数の領域に分けられ、下流側の領域が上流側の領域よりもシリンダブロック10の幅方向外側に設けられてもよい。
・本発明は、ヘッド孔31、ガスケット孔23及びボア間冷却通路14を通じ、冷却液がヘッド冷却通路からブロック冷却通路へ流されることにより、ボア間領域13が冷却されるタイプの内燃機関にも適用可能である。
10…シリンダブロック、11…トップデッキ部、12…シリンダボア、13…ボア間領域、14…ボア間冷却通路、15…シリンダヘッド側開口、15I,23I,31I…内端縁、15O,23O,31O…外端縁、20…シリンダヘッドガスケット、21…内側シールライン(シールライン)、23…ガスケット孔、30…シリンダヘッド、31…ヘッド孔、L0,L1,L2,L3…中心軸線。

Claims (5)

  1. 長さ方向に沿って複数のシリンダボアが並設されるとともに、前記シリンダボアの周りにブロック冷却通路が形成されたシリンダブロックと、ヘッド冷却通路が形成されたシリンダヘッドと、前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッド間に介在されたシリンダヘッドガスケットとを備える内燃機関に適用されるものであり、
    隣合う前記シリンダボア間で前記シリンダブロックの幅方向に延びるボア間領域に形成されたボア間冷却通路、前記シリンダヘッドガスケットを貫通するガスケット孔、及び前記ヘッド冷却通路に連通され、かつ自身の中心軸線が前記ボア間冷却通路のシリンダヘッド側開口での中心軸線に交差するヘッド孔を通じて、前記ブロック冷却通路と前記ヘッド冷却通路との間で冷却液を流通させることにより前記ボア間領域を冷却する内燃機関の冷却通路構造において、
    前記ガスケット孔は、前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に設けられ、
    前記ヘッド孔は、前記ガスケット孔よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に設けられていることを特徴とする内燃機関の冷却通路構造。
  2. 前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口は、前記シリンダブロックの前記シリンダヘッド側の端部であるトップデッキ部に形成されている請求項1に記載の内燃機関の冷却通路構造。
  3. 前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口、前記ガスケット孔及び前記ヘッド孔の各々に関し、前記シリンダブロックの幅方向についての内側の端縁を内端縁とした場合、前記ガスケット孔の内端縁は、前記シリンダヘッド側開口の内端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置し、前記ヘッド孔の内端縁は、前記ガスケット孔の内端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置している請求項1又は2に記載の内燃機関の冷却通路構造。
  4. 前記ボア間冷却通路の前記シリンダヘッド側開口、前記ガスケット孔及び前記ヘッド孔の各々に関し、前記シリンダブロックの幅方向についての外側の端縁を外端縁とした場合、前記ガスケット孔の外端縁は、前記シリンダヘッド側開口の外端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置し、前記ヘッド孔の外端縁は、前記ガスケット孔の外端縁よりも前記シリンダブロックの幅方向外側に位置している請求項1〜3のいずれか1つに記載の内燃機関の冷却通路構造。
  5. 前記シリンダヘッドガスケットには、前記シリンダヘッド側開口よりも前記シリンダブロックの幅方向内側で前記シリンダブロック及び前記シリンダヘッド間をシールするビードが設けられており、
    前記ガスケット孔及び前記ヘッド孔は、それらの内壁面が前記ビードによるシールラインに接近する位置まで拡径されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の冷却通路構造。
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