JP2018059405A - 空冷エンジン、空冷エンジン用シリンダボディ部材及び空冷エンジン搭載車両 - Google Patents

空冷エンジン、空冷エンジン用シリンダボディ部材及び空冷エンジン搭載車両 Download PDF

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義彦 浅井
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堅之 元脇
清志郎 井手
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清志郎 井手
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洋敬 栗田
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Abstract

【課題】冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる空冷エンジンを提供すること。【解決手段】ピストン部と、ピストン部が摺動する摺動面を有するシリンダボディ部とを備えた空冷エンジンであって、シリンダボディ部は、シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部を備え、Alを含有する金属からなり、前記シリンダボディ部のうち、少なくとも前記摺動面を含む内周部は、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成され、摺動面には、実質的に平行な複数の線状の溝が形成され、平均結晶粒径が8μm以上50μm以下である初晶Si結晶粒が、ピストン部と接触するように露出し、複数の線状の溝の間に形成された、Al合金母材がピストン部と接触するAl接触部が、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で摺動面に露出し、前記シリンダボディ部内のAlが前記Al接触部から前記放熱部まで物理的に連続していることを特徴とする空冷エンジン。【選択図】図4

Description

本発明は、空冷エンジン、空冷エンジン用シリンダボディ部材及び空冷エンジン搭載車両に関する。
空冷エンジンは、エンジンにて生じた熱を、空気を利用して排出することにより、エンジンの冷却を行うように構成されたエンジンである。空冷エンジンは、一般的に、水冷エンジンと比べると、比較的簡単な構造を有している。そのため、空冷エンジンは、頑丈であり、メンテナンスを行い易い。その一方で、空冷エンジンの冷却効率は、水冷エンジンの冷却効率よりも低い。エンジンにおける熱は、シリンダボディ部の歪みなどの原因となるおそれがある。そのため、空冷エンジンでは、冷却効率の向上が望まれている。
通常、空冷エンジンでは、シリンダボディ部の外表面(例えば、放熱フィン)に風を当てることによりエンジンの放熱が行われている。さらに、空冷エンジンの冷却については、従来、種々の工夫が行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1の空冷エンジンでは、潤滑油を噴射するためのオイルポンプが接続されたオイル通路が、カムチェーン室の外壁に形成されている。潤滑オイルが、オイル通路から、シリンダの外壁に向かって噴射される。また、特許文献2、3の空冷エンジンは、シリンダヘッド内の動弁室に設けられた動弁装置を潤滑した潤滑油がシリンダブロックの壁部を流れ落ちるように構成されている。
特開平8−260960号公報 特開平10−54296号公報 特開平11−101112号公報
本発明は、冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる空冷エンジン、空冷エンジン用シリンダボディ部材、及び空冷エンジン搭載車両を提供することである。
本発明は、以下の構成を採用することができる。
(1) ピストン部と、前記ピストン部が摺動する摺動面を有するシリンダボディ部とを備えた空冷エンジンであって、
前記シリンダボディ部は、前記シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部を備え、Alを含有する金属からなり、前記シリンダボディ部のうち、少なくとも前記摺動面を含む内周部は、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成され、
前記摺動面には、実質的に平行な複数の線状の溝が形成され、平均結晶粒径が8μm以上50μm以下である初晶Si結晶粒が、前記ピストン部と接触するように露出し、
前記複数の線状の溝の間に形成された、Al合金母材が前記ピストン部と接触するAl接触部が、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で前記摺動面に露出し、前記シリンダボディ部内のAlが前記Al接触部から前記放熱部まで物理的に連続している、
ことを特徴とする空冷エンジン。
(1)の構成では、シリンダボディ部は、Alを含有する金属からなり、シリンダボディ部のうち、少なくとも摺動面を含む内周部は、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成される。初晶Si結晶粒の平均結晶粒径は、8μm以上50μm以下である。摺動面では、実質的に平行な複数の線状の溝が形成され、初晶Si結晶粒がピストン部と接触するように露出している。ピストン部の荷重を受ける観点から見て、初晶Si結晶粒は、適度な大きさを有し、摺動面に適度に分布する。この状況下において、Al接触部は、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で、ピストン部と接触するように、摺動面に露出する。そのため、Al接触部の硬度よりも高い硬度を有する初晶Si結晶粒が、ピストン部の荷重を受ける。従って、Al接触部がピストン部から受ける荷重が減少し易い。また、実質的に平行な複数の線状の溝が摺動面に形成されることにより、摺動面において潤滑油がバランスよく保持され、摺動面における潤滑油の分散の均一性が向上する。この状況下において、Al接触部が、複数の線状の溝の間に形成されているため、Al接触部の表面上への潤滑油の供給が行われ易い。以上の理由により、(1)の構成によれば、Al接触部とピストン部との摺動によるスカッフの発生を抑制しつつ、ピストン部を、Al接触部と接触させることができる。そして、シリンダボディ部内のAlが、Al接触部から、シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部(例えば、放熱フィン)まで、物理的に連続している。即ち、シリンダボディ部は、Al接触部から放熱部まで連続する、Alからなる熱の伝導経路を有する。従って、Al接触部がピストン部から受けた熱は、Al接触部から放熱部へ効率良く伝導され、放熱部から放射される。従って、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる。なお、ピストン部の初期摺動時には、摺動面への潤滑油の馴染みが充分ではない場合がある。冷却効率が不充分であると、高温化によって、シリンダボディ部の歪み、又は摺動面におけるスカッフが生じるおそれがある。従って、ピストン部の初期摺動時における冷却効率は、空冷エンジンにとって重要である。
(2) ピストン部と、前記ピストン部が摺動する摺動面を有するシリンダボディ部とを備えた空冷エンジンであって、
前記シリンダボディ部は、前記シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部を備え、Alを含有する金属からなり、前記シリンダボディ部のうち、少なくとも前記摺動面を含む内周部は、高圧ダイカストにより、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成され、
前記摺動面には、実質的に平行な複数の線状の溝が形成され、初晶Si結晶粒が、前記ピストン部と接触するように露出し、
前記複数の線状の溝の間に形成された、Al合金母材が前記ピストン部と接触するAl接触部が、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で前記摺動面に露出し、前記シリンダボディ部内のAlが前記Al接触部から前記放熱部まで物理的に連続している、
ことを特徴とする空冷エンジン。
(2)の構成によれば、シリンダボディ部は、Alを含有する金属からなり、シリンダボディ部のうち、少なくとも摺動面を含む内周部は、高圧ダイカストにより、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成される。摺動面では、実質的に平行な複数の線状の溝が形成され、初晶Si結晶粒がピストン部と接触するように露出している。ピストン部の荷重を受ける観点から見て、初晶Si結晶粒は、適度な大きさを有し、摺動面に適度に分布する。この状況下において、Al接触部は、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で、ピストン部と接触するように、摺動面に露出する。そのため、Al接触部の硬度よりも高い硬度を有する初晶Si結晶粒が、ピストン部の荷重を受ける。従って、Al接触部がピストン部から受ける荷重が減少し易い。また、実質的に平行な複数の線状の溝が摺動面に形成されることにより、摺動面において潤滑油がバランスよく保持され、摺動面における潤滑油の分散の均一性が向上する。この状況下において、Al接触部が、複数の線状の溝の間に形成されているため、Al接触部の表面上への潤滑油の供給が行われ易い。以上の理由により、(2)の構成によれば、Al接触部とピストン部との摺動によるスカッフの発生を抑制しつつ、ピストン部を、Al接触部と接触させることができる。そして、シリンダボディ部内のAlが、Al接触部から、シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部(例えば、放熱フィン)まで、物理的に連続している。即ち、シリンダボディ部は、Al接触部から放熱部まで連続する、Alからなる熱の伝導経路を有する。従って、Al接触部がピストン部から受けた熱は、Al接触部から放熱部へ効率良く伝導され、放熱部から放射される。従って、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる。
(3) (1)又は(2)の空冷エンジンであって、
前記シリンダボディ部のうち、前記内周部以外の部分は、前記放熱部を含み、前記内周部と物理的に連続しており、Si含有量が前記内周部のSi含有量と同じ又は前記内周部のSi含有量よりも小さいAl合金からなり、
前記シリンダボディ部内のAl合金母材が前記Al接触部から前記放熱部まで物理的に連続している。
(3)の構成によれば、Al合金母材がAl接触部から放熱部まで物理的に連続している。即ち、シリンダボディ部は、Al接触部から放熱部まで連続する、Al合金母材からなる熱の伝導経路を有する。従って、Al接触部がピストン部から受けた熱は、Al接触部から放熱部へ効率良く伝導され、放熱部から放射される。従って、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる。
(4) (1)〜(3)のいずれか1の空冷エンジンであって、
前記Al接触部が、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で前記摺動面に露出し、前記放熱部と一体成形されている。
(4)の構成によれば、Al合金母材がAl接触部から放熱部まで物理的に連続している。即ち、シリンダボディ部は、Al接触部から放熱部まで連続する、Al合金母材からなる熱の伝導経路を有する。従って、Al接触部がピストン部から受けた熱は、Al接触部から放熱部へ効率良く伝導され、放熱部から放射される。従って、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる。
(5) (1)〜(4)のいずれか1の空冷エンジンであって、
前記複数の線状の溝は、前記初晶Si結晶粒の間に複数本の線状の溝が通るピッチで形成されている。
(5)の構成によれば、複数の線状の溝が狭いピッチで形成されるので、初晶Si結晶粒間で潤滑油がバランス良く保持される。従って、摺動面における潤滑油の分散の均一性を向上させることが可能であり、摺動面上に形成される油膜の均一性を高めることができる。そのため、Al接触部の摩耗等を効果的に抑制できる。スカッフの発生を抑制しつつ、Al接触部とピストン部とを接触させることができる。従って、Al接触部がピストン部から受けた熱は、Al接触部から放熱部へ、より効率良く伝導され、放熱部から放射される。その結果、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率をより向上させることができる。
(6) (5)の空冷エンジンであって、
前記ピッチは、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径より小さい。
(6)の構成によれば、実質的に平行な複数の線状の溝が、より狭いピッチで形成される。潤滑油の分散の均一性がより高められる。結果として、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を更に向上させることができる。
(7) (1)〜(4)のいずれか1の空冷エンジンであって、
前記シリンダボディ部は、前記初晶Si結晶粒及び前記Al合金母材に加え、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも小さな平均結晶粒径を有する共晶Si結晶粒を含み、
前記複数の線状の溝は、前記シリンダボディ部のSi結晶粒の粒度分布における前記共晶Si結晶粒径の範囲の上限値の1/3以上の深さを有し、少なくとも前記摺動面の上側1/4の領域において、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも広いピッチで形成され、隣り合う前記初晶Si結晶粒の間を通る部分を有する。
(7)の構成によれば、実質的に平行な複数の線状の溝が初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも広いピッチで形成されることにより、摺動面における潤滑油の分散の均一性を向上させることができる。これにより、摺動面上に形成される油膜の均一性を高めることができる。また、複数の線状の溝が、前記シリンダボディ部のSi結晶粒の粒度分布における前記共晶Si結晶粒径の範囲の上限値の1/3以上の深さを有しているので、充分な量の潤滑油が溝に保持される。従って、摺動面上の油膜切れを抑制できる。さらに、複数の線状の溝が、隣り合う初晶Si結晶粒の間を通る部分を有する。これにより、初晶Si結晶粒がピストン部の荷重を受けるので、溝の両側に隣接する摺動面(Al合金母材)の摩耗が抑制され、溝内の潤滑油が保持され易い。このように、(7)の構成では、摺動面上に形成される油膜の均一性が高められるとともに、充分な量の潤滑油が保持される。そのため、Al接触部の摩耗等を効果的に抑制できる。スカッフの発生を抑制しつつ、Al接触部とピストン部とを接触させることができる。従って、Al接触部がピストン部から受けた熱は、Al接触部から放熱部へ、より効率良く伝導され、放熱部から放射される。その結果、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率をより向上させることができる。
(8) (7)の空冷エンジンであって、
前記複数の線状の溝は、前記シリンダボディ部のSi結晶粒の粒度分布における前記共晶Si結晶粒径の範囲の上限値の1/3以上であり且つ前記共晶Si結晶粒径の範囲の上限値より小さい深さを有する。
(8)の構成によれば、充分且つ適切な量の潤滑油が、複数の線状の溝に保持される。そのため、油膜の均一性がより向上する。結果として、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を更に向上させることができる。
(9) (7)又は(8)の空冷エンジンであって、
前記ピストン部は、ピストン本体と、前記ピストン本体の外周に設けられた複数のピストンリングを含むピストンリング部とを備え、
前記複数の線状の溝は、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも広く且つ前記ピストン部の往復動方向における前記ピストンリング部の下端から前記ピストンリング部の上端までの距離よりも小さいピッチで形成されている。
(9)の構成によれば、充分且つ適切な量の潤滑油が、複数の線状の溝に保持される。そのため、油膜の均一性がより向上する。結果として、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を更に向上させることができる。
(10) (1)〜(9)のいずれか1の空冷エンジンであって、
前記摺動面に露出する初晶Si結晶粒の少なくとも一部は、破壊されており、破壊されることにより初晶Si結晶粒に形成された面が、前記摺動面に露出している。
(10)の構成によれば、破壊されることにより初晶Si結晶粒に形成された面(以下、破断面ともいう)は、油溜りとして機能する。初晶Si結晶粒の破断面は、凹凸を有しているので、油溜まりが保持可能な潤滑油の量は多い。油溜りの開口面積は、例えば、初晶Si結晶粒の断面積と同程度である。この油溜りの深さは、例えば、初晶Si結晶粒の径よりも小さい。このように初晶Si結晶粒の破断面を含む油溜りが、実質的に平行な複数の線状の溝とともに、摺動面に形成される。従って、潤滑油の分散の均一性を維持しつつ、潤滑油が保持される量を増加させることができる。結果として、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を更に向上させることができる。
(11) (1)〜(10)のいずれか1の空冷エンジンに含まれる前記シリンダボディ部を備えるシリンダボディ部材。
(11)の構成によれば、冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができるシリンダボディ部材を提供する。
(12) (1)〜(10)のいずれか1の空冷エンジンを備えた車両。
(12)の構成によれば、冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる空冷エンジンを備えた車両を提供できる。
本発明によれば、冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる。
第一実施形態に係る空冷エンジン150を模式的に示す断面図である。 第一実施形態に係る空冷エンジン150が備えるピストン部122を模式的に示す側面図である。 第一実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を模式的に示す部分拡大平面図である。 第一実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を模式的に示す部分拡大断面図である。 Si結晶粒の好ましい粒度分布の例を示すグラフである。 第二実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を模式的に示す部分拡大平面図である。 (a)、(b)は、第二実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を模式的に示す部分拡大断面図である。 図1に示す空冷エンジン150を備えた自動二輪車を模式的に示す側面図である。
本発明者らは、空冷エンジンの冷却効率の向上のために鋭意研究を行い、Alの熱伝導率の高さに着目した。Alは、高い熱伝導率を有するが、ピストン部の往復動時におけるピストン部の接触によりスカッフを発生させるおそれがある。そのため、従来、Al含有金属製のシリンダボディ部を備えた空冷エンジンでは、Al部分とピストン部との接触が避けられていた。例えば、従来、Si含有量が比較的高く且つ高圧ダイカストにより製造されたAl合金製のシリンダボディ部では、初晶Si結晶粒が浮島状に露出するように摺動面が加工されていた。摺動面では、ピストンリングとAl合金母材との接触が抑制されるとともに、Si結晶粒間の窪みが油溜りとして機能する。これにより、スカッフの抑制が図られていた。
しかし、本発明者らは、空冷エンジンの冷却効率の向上のための鋭意研究により、以下の知見を得た。
Si含有量が比較的高く且つ高圧ダイカストにより製造されたAl合金製のシリンダボディ部では、ピストン部の荷重を受ける観点から見て、初晶Si結晶粒が、適度な大きさを有し、摺動面に適度に分布する。従って、摺動面において、初晶Si結晶粒間で、充分な量の潤滑油をバランス良く保持することにより、摺動面上に形成される油膜の均一性が向上すれば、Al合金母材がピストン部と接触しても、スカッフが生じ難い。即ち、Al合金母材とピストン部との接触が許容可能となる。従って、スカッフの発生を抑制しつつ、Al合金母材とピストン部とを接触させることが可能になる。さらに、Al合金母材がピストン部と接触するAl接触部から、シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部まで、Alが物理的に連続することにより、Al接触部がピストン部から受けた熱を、Al接触部から放熱部へ効率良く伝導し、放熱部から放射できる。その結果、空冷エンジンの冷却効率、特にピストン部の初期摺動時における冷却効率を向上させることができる。
本発明は、上述した知見、即ち従来の設計思想と相反する知見に基づいて完成した発明である。具体的には、本発明は、スカッフの発生を抑制しつつAl接触部とピストン部とを接触させており、これにより、放熱部からの放射伝熱に加え、ピストン部からシリンダボディ部の内周面(摺動面)を介して外周面(放熱部)に至るまでの効率の良い伝導伝熱を可能としている。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<<第一実施形態>>
<空冷エンジン>
図1は、本発明の第一実施形態に係る空冷エンジン150を模式的に示す断面図である。Rは、ピストン部122の往復動方向を示す。Uは、上方向、即ちシリンダボディ部100からシリンダヘッド130に向かう方向を示す。Lは、下方向、即ちシリンダボディ部100からクランクケース110に向かう方向を示す。空冷エンジン150は、強制空冷式であり、冷却ファン(図示せず)を備えている。冷却ファンは、クランクシャフト111の回転が伝達されるように構成されている。本発明の空冷エンジンは、強制空冷式に限定されず、自然空冷式であってもよい。本実施形態の空冷エンジンは、単気筒エンジンであるが、本発明において、空冷エンジンの気筒数は、特に限定されない。本実施形態の空冷エンジンは、4ストロークのエンジンであるが、2ストロークのエンジンであってもよい。
空冷エンジン150は、クランクケース110、シリンダボディ部100およびシリンダヘッド130を有している。本実施形態では、シリンダボディ部100とクランクケース110とが別体であるが、本発明では、シリンダボディ部100とクランクケース110とが一体であってもよい。
クランクケース110内にはクランクシャフト111が収容されている。クランクシャフト111は、クランクピン112およびクランクウェブ113を有している。
クランクケース110の上に、シリンダボディ部100が設けられている。シリンダボディ部100は、シリンダ壁103を備えている。シリンダ壁103は、シリンダボア102を画定するように形成されている。シリンダ壁103の外周面103aには、放熱部107(フィン)が設けられている。放熱部107は、空気との接触面積を大きくするために外周面103aに形成された突状体である。放熱部107は、図1に示すような複数の板状体に限定されない。放熱部としては、例えば、棒状体、針状体が挙げられる。また、シリンダ壁103の外周面103aが蛇腹状や波状等となるように形成されることにより、外周面103aが放熱部107を有していてもよい。
シリンダボディ部100のシリンダボア102内には、ピストン部122が挿入されている。ピストン部122は、シリンダボディ部100の摺動面101に接触した状態でシリンダボア102内を摺動する(図2参照)。ピストン部122は、例えば、Al合金(典型的にはSiを含むAl合金)から形成されている。ピストン部122は、例えば、米国特許第6205836号明細書に開示されているように鍛造により形成される。ピストン部122は、鋳造により形成されてもよい。
シリンダボア102内には、シリンダスリーブが、設けられていない。シリンダボディ部100のシリンダ壁103の内側表面には、めっきは施されていない。本実施形態では、シリンダスリーブが必要とされないので、空冷エンジン150の製造工程の簡略化や、空冷エンジン150の軽量化、冷却性能の向上が可能となる。また、シリンダ壁103の内側表面にめっきを施す必要もないので、製造コストの低減を図ることもできる。
シリンダボディ部100の上に、シリンダヘッド130が設けられている。シリンダヘッド130は、シリンダボディ部100のピストン部122とともに燃焼室131を形成する。シリンダヘッド130は、吸気ポート132および排気ポート133を有している。吸気ポート132内には燃焼室131内に混合気を供給するための吸気弁134が設けられており、排気ポート133内には燃焼室131内の排気を行うための排気弁135が設けられている。
ピストン部122とクランクシャフト111とは、コンロッド140によって連結されている。具体的には、コンロッド140の小端部142の貫通孔にピストン部122のピストンピン123が挿入されているとともに、大端部144の貫通孔にクランクシャフト111のクランクピン112が挿入されており、そのことによってピストン部122とクランクシャフト111とが連結されている。大端部144の貫通孔の内周面とクランクピン112との間には、ローラベアリング(転がり軸受け)114が設けられている。なお、空冷エンジン150は、潤滑油を強制的に供給するオイルポンプを備えていないが、本発明の空冷エンジンは、オイルポンプを備えていてもよい。
図2は、図1に示す空冷エンジン150が備えるピストン部122を模式的に示す側面図である。
シリンダボディ部100が備えるシリンダ壁103は、シリンダ壁103の内周側に、摺動面101を有し、シリンダ壁103の外周側に、放熱部107が形成された外周面103aを有する。シリンダ壁103と放熱部107とは、一体的に成形されている。シリンダ壁103によって画定されたシリンダボア102内に、ピストン部122が設けられている。ピストン部122は、ピストン本体122aと、ピストンリング部122bとを備える。ピストン本体122aは、コンロッド140の貫通孔に挿入されるピストンピン123を備えている。ピストンリング部122bは、ピストン本体122aの外周に設けられた3つ(複数)のピストンリング122c、122d、122eからなる。
ピストンリング122cは、トップリングとも称され、ピストン本体122aの外周に設けられたトップリング溝122fに嵌められている。ピストンリング122dは、セカンドリングとも称され、ピストン本体122aの外周に設けられたセカンドリング溝122gに嵌められている。ピストンリング122eは、オイルリングとも称され、ピストン本体122aの外周に設けられたオイルリング溝122hに嵌められている。トップリング122c、セカンドリング122d及びオイルリング122eは、ピストン部122の往復動方向Rにおいて互いに間隔を空けて、上から下方向へ、この順に設けられている。即ち、本実施形態において、ピストン部122の往復動方向Rにおけるピストンリング部122bの上端122mは、トップリング122cの上面に相当する。ピストンリング部122bの下端122nは、オイルリング122eの下面に相当する。ピストン部122のうち、特に、ピストンリング部122b(ピストンリング122c、122d、122e)が、シリンダ壁103の摺動面101と接触する。なお、本実施形態では、ピストンリング部122bが、3つのピストンリングにより構成されているが、ピストンリング部122bを構成するピストンリングの数は、特に限定されない。
シリンダボディ部100は、Siを含むAl合金から形成されている。具体的には、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成されている。Al合金は、73.4質量%以上79.6質量%以下のAl、16質量%以上24質量%以下のSi、および2.0質量%以上5.0質量%以下の銅を含むことが好ましい。シリンダボディ部100の耐摩耗性及び強度を高くすることができる。また、Si含有量は、18質量%以上であることも好ましい。Si含有量は、22質量%以下であることも好ましい。Al合金は、50質量ppm以上200質量ppm以下のリンと、0.01質量%以下のカルシウムとを含むことが好ましい。Al合金が50質量ppm以上200質量ppm以下のリンを含んでいると、Si結晶粒の粗大化を抑制することができるので、合金中にSi結晶粒を均一に分散させることができる。また、Al合金のカルシウム含有量を0.01質量%以下とすることによって、リンによるSi結晶粒の微細化効果を確保し、耐摩耗性に優れた金属組織を得ることができる。
シリンダボディ部100は、ピストン部122(図1参照)が接触する摺動面101を備えている。摺動面101は、シリンダ壁103のシリンダボア102側の表面(即ち内周面)である。言い換えると、摺動面101は、シリンダ壁103の内周面のうち、シリンダボディ部100の径方向における最も内側に位置する面である。なお、本発明において、摺動面101がピストン部122と接触することは、摺動面101が、潤滑油によって形成された油膜を介してピストン部122と接触することを含む。
本実施形態では、摺動面101全域に、後述する線状溝4(図3参照)が形成されている。本発明において、摺動面101において線状溝4が形成される領域は、特に限定されない。摺動面101において線状溝4が形成される領域は、例えば、少なくとも摺動面101の上側1/4の領域であってもよい。摺動面101において線状溝4が形成される領域は、例えば、少なくとも摺動面101の上側1/4の領域及び下側1/4の領域であってもよい。摺動面101の上側1/4の領域とは、摺動面101全体をピストンの摺動方向(シリンダボア102の中心軸方向)に沿って均等に4分割したときに、もっともシリンダヘッド側に位置する領域を指す。摺動面101の下側1/4の部分とは、もっともクランクケース側に位置する領域を指す。
図3は、第一実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を拡大して模式的に示す平面図である。Rは、ピストン部122の往復動方向を示す。図4は、第一実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を拡大して模式的に示す断面図である。なお、図4は、方向Rに沿った断面図である。図4では、説明の便宜上、線状溝4のうち、第一線状溝4aのみを図示している。また、図4に示す二点鎖線の矢印は、熱の流れを説明するための矢印である。
摺動面101には、複数の初晶Si結晶粒1と、複数の共晶Si結晶粒2と、Al合金母材3とが露出している。過共晶組成のAl−Si系合金の溶湯を冷却したときに、最初に析出するSi結晶粒は「初晶Si結晶粒」と呼ばれる。次いで析出するSi結晶粒は「共晶Si結晶粒」と呼ばれる。初晶Si結晶粒1は、比較的大きく、例えば、粒状を有する。共晶Si結晶粒2は、比較的小さく、例えば、針状を有する。全ての共晶Si結晶粒2が、必ずしも、針状を有すると限らない。一部の共晶Si結晶粒2が、粒状を有していてもよい。この場合、複数の共晶Si結晶粒2のうち、針状の共晶Si結晶粒2が、主な結晶粒である。Al合金母材3は、Alを含む固溶体のマトリックスである。シリンダボディ部100は、複数の初晶Si結晶粒1と、複数の共晶Si結晶粒2と、Al合金母材3とを有している。複数の初晶Si結晶粒1及び複数の共晶Si結晶粒2は、Al合金母材3中に分散して存在している。
初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径は、例えば、8μm以上50μm以下である。従って、初晶Si結晶粒1は摺動面101の単位面積あたりに十分な数存在する。そのため、空冷エンジン150の運転時に各初晶Si結晶粒1にかかる荷重は相対的に小さくなる。空冷エンジン150の運転時における初晶Si結晶粒1の破壊が抑制される。また、初晶Si結晶粒1のAl合金母材3に埋まっている部分が十分に大きいので、初晶Si結晶粒1の脱落が低減される。そのため、脱落した初晶Si結晶粒1による摺動面101の摩耗も抑制される。これに対し、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径が8μm未満である場合、初晶Si結晶粒1の、Al合金母材3中に埋まっている部分が小さい。そのため、空冷エンジン150の運転時には、初晶Si結晶粒1の脱落が起こりやすい。脱落した初晶Si結晶粒1は、研磨粒子として作用してしまうため、摺動面101が大きく摩耗するおそれがある。また、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径が50μmを超える場合、摺動面101の単位面積当りの初晶Si結晶粒1の個数が少ない。そのため、空冷エンジン150の運転時に初晶Si結晶粒1のそれぞれに大きな荷重がかかり、初晶Si結晶粒1が破壊されることがある。破壊された初晶Si結晶粒1の破片は、研磨粒子として作用してしまうため、摺動面101が大きく摩耗するおそれがある。なお、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径は、12μm以上であることが好ましい。
本実施形態では、シリンダボディ部100は、高圧ダイカスト(HPDC)により、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成されている。高圧ダイカストは、溶湯に圧力を加えることにより、大気圧を超える圧力で溶湯を型内に供給する鋳造方法である。高圧ダイカストによれば、大きな冷却速度(例えば4℃/秒以上50℃/秒以下)で、摺動面101となる部分を冷却できる。これにより、例えば、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径を、8μm以上50μm以下に制御することができる。
共晶Si結晶粒2の平均結晶粒径は、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径より小さい。共晶Si結晶粒2の平均結晶粒径は、7.5μm以下であることが好ましい。共晶Si結晶粒2は、Al合金母材3を補強する役割を果たす。そのため、共晶Si結晶粒2を微細化することによって、シリンダボディ部100の耐摩耗性や強度を向上することができる。
ここで、シリンダボディ部100におけるSi結晶粒の粒度分布について説明する。
図5は、Si結晶粒の好ましい粒度分布の例を示すグラフである。
図5に示すグラフにおいて、結晶粒径が1μm以上7.5μm以下の範囲内にあるSi結晶粒は、共晶Si結晶粒2であり、結晶粒径が8μm以上50μm以下の範囲内にあるSi結晶粒は、初晶Si結晶粒1である。このように、シリンダボディ部100のSi結晶粒1、2は、結晶粒径が1μm以上7.5μm以下の範囲内と結晶粒径が8μm以上50μm以下の範囲内とにそれぞれピークが存在する粒度分布を有することが好ましい。シリンダボディ部100の耐摩耗性および強度を大きく向上させることができる。
また、共晶Si結晶粒2によるAl合金母材3の補強の観点から、図5にも示しているように、結晶粒径1μm以上7.5μm以下の範囲内にある第1ピーク(共晶Si結晶粒2に由来するピーク)における度数が、結晶粒径8μm以上50μm以下の範囲内にある第2ピーク(初晶Si結晶粒1に由来するピーク)における度数の5倍以上であることが好ましい。
初晶Si結晶粒1および共晶Si結晶粒2の平均結晶粒径を制御するには、成形体を鋳造する工程(後述する工程S1c)において、摺動面101となる部分の冷却速度を調整すればよい。具体的な一例として、例えば、摺動面101となる部分が4℃/秒以上50℃/秒以下の冷却速度で冷却されるように鋳造を行うことによって、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径が8μm以上50μm以下、共晶Si結晶粒2の平均結晶粒径が7.5μm以下となるように、Si結晶粒1、2を析出させることができる。
次に、摺動面101に形成される線状溝4について説明する。
図3及び図4に示すように、摺動面101には、複数の線状溝4が形成されている。本実施形態において、複数の線状溝4は、複数の第一線状溝4aと、複数の第二線状溝4bとを含む。複数の第一線状溝4aは、図3において左上から右下へ向かう方向に延びる形状を有しており、互いに実質的に平行である。複数の第一線状溝4aは、摺動面101において、縞模様を成している。複数の第二線状溝4bは、図3において右上から左下へ向かう方向に延びる形状を有しており、互いに実質的に平行である。複数の第二線状溝4bは、摺動面101において、縞模様を成している。複数の第一線状溝4aと、複数の第二線状溝4bとは、互いに平行ではなく、交差している。これにより、複数の線状溝4は、摺動面101において、格子模様を成している。
複数の線状溝4のうち、少なくとも2本以上の線状溝4は、互いに実質的に平行である。複数の線状溝4のうち、一部の線状溝4(第一線状溝4a)と残りの線状溝4(第二線状溝4b)とは交差していてもよい。複数の線状溝4の全てが互いに交差しないように形成され、実質的に平行であってもよい。「実質的に平行」とは、隣り合う線状溝4が、交わらないように延びていることをいう。即ち、「実質的に平行」の意味に関し、例えば、線状溝4の形成時の誤差又はズレ等に起因して、隣り合う線状溝4が厳密に見て平行ではないとしても、本発明においては、隣り合う線状溝4が実質的に平行であると解釈され得る。また、摺動面101は、互いに平行な線状溝の組として、第一線状溝4aの組と、第二線状溝4bの組とを有しているが、本発明において、互いに平行な線状溝の組の数は特に限定されない。異なる組に属する溝は互いに交差する。摺動面101に形成される複数の線状溝4が成す模様は、図3に示すような四角格子模様に限定されない。複数の線状溝4が成す模様は、第一線状溝4a又は第二線状溝4bが成すような縞模様であってもよく、三角格子模様等の多角格子模様であってもよい。四角格子模様は、多角格子模様の一例である。なお、縞模様及び格子模様における溝間ピッチは、必ずしも一定である必要はない。
本実施形態では、複数の線状溝4が、規則性を有する模様(縞模様又は多角格子模様等)を成す。本実施形態では、規則性を有する模様内において、初晶Si結晶粒1とともに、Al合金母材3が、ピストンリング部122b(ピストン部122)と接触するように摺動面101に露出する。規則性を有する模様を成す線状溝4が形成された摺動面101は、従来の不規則な摺動面(Si結晶粒が浮島状に露出した摺動面)よりも、潤滑油の分散の均一性を向上させることができる。その結果、本実施形態では、摺動面101上に形成される油膜の均一性が高い。なお、以下において、第一線状溝4aと第二線状溝4bとが区別されている場合を除いて、線状溝4についての説明は、第一線状溝4aと第二線状溝4bとの両方についての説明でもある。
線状溝4の平面視形状に関し、図3に示すように、線状溝4の平面視形状は、直線状である。しかし、本発明において、線状溝4の平面視形状は、実質的に平行となるように隣り合う線状溝4と交わらないように延びる線状を有していればよく、直線状に限定されない。即ち、線状溝4は、曲線状であってもよい。線状溝4は、曲線状の部分と、直線状の部分とを有していてもよい。また、線状溝4は、屈曲部分を有していてもよい。また、複数の線状溝4の平面視形状は、線状溝4によって異なっていてもよい。全ての線状溝4の平面視形状が同じ又は実質的に同じであってもよい。また、複数の線状溝4の各々は、必ずしも、摺動面101の全域で連続するように形成されている必要はない。複数の線状溝4の各々は、必ずしも、摺動面101の端縁まで延びている必要はない。複数の線状溝4の各々は、摺動面101上において途切れた部分を有していてもよい。
線状溝4の幅に関し、線状溝4の幅は、特に限定されない。線状溝4の幅は、シリンダボディ部100の粒度分布における初晶Si結晶粒1の粒径の範囲の最大値以下であることが好ましい。線状溝4の幅は、約10μm以下であることも好ましい。また、線状溝4の幅は、シリンダボディ部100の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の最小値以上であることが好ましい。線状溝4の幅は、約5μm以上であることも好ましい。図3に示すように、線状溝4は、一定の幅を有しているが、本発明はこの例に限定されない。線状溝4は、場所によって異なる幅を有していてもよい。また、複数の線状溝4の幅は、線状溝4によって異なっていてもよい。全ての線状溝4が、同じ幅又は実質的に同じ幅を有していてもよい。
線状溝4の深さに関し、本実施形態において、線状溝4は、0.1μm以上2.0μm未満の深さを有する。但し、本発明において、線状溝4の深さは、特に限定されない。また、本発明では、線状溝4が0.1μm以上2.0μm未満の深さを有する場合、線状溝4に加えて、線状溝4の深さよりも大きな深さ(例えば、2.0μm以上の深さ)を有する溝が、摺動面101に形成されていてもよい。言い換えると、本発明においては、摺動面に、本発明で規定された線状溝以外の溝(例えば、後述する線状溝8)が形成されていてもよい。なお、線状溝4の深さは、1.5μm以下であってもよい。線状溝4の深さは、0.5μm以上であってもよい。
線状溝4の断面形状は、線状溝4の深さが大きくなるにつれて線状溝4の幅が小さくなる形状である。線状溝4の断面形状は、線状溝4が延びる方向と垂直な平面における線状溝4の断面形状である。なお、本発明において、線状溝4の断面形状は、特に限定されない。線状溝4の断面形状は、例えば、図4に示すような略V形状であってもよく、略U形状であってもよい。また、線状溝4の断面形状は、全て同じである必要はない。線状溝4の断面形状は、場所によって異なっていてもよく、線状溝4によって異なっていてもよい。また、線状溝4の間の部分(山)は、必ずしも、図3及び図4に示すように平坦面である必要はない。線状溝4の間の部分は、傾斜面であってもよく、稜線を形成していてもよい。
第一線状溝4aのピッチに関し、実質的に平行な複数の第一線状溝4aは、初晶Si結晶粒1の間に複数本の第一線状溝4aが通るピッチで形成されている。例えば、図4に示すように、複数の第一線状溝4aは、初晶Si結晶粒1の間のギャップP内を通っている。さらに、摺動面101において、これら複数本の第一線状溝4aの間の部分は、ピストン部122(図1、2参照)と接触するように露出している。摺動面101においてピストン部122と接触する部分が、平面視において第一線状溝4aと隣接しているので、摺動面101への潤滑油の供給が円滑に行われる。第一線状溝4aのピッチは、シリンダボディ部100のSi結晶粒の粒度分布における共晶Si結晶粒2の範囲に含まれることが好ましい。第一線状溝4aのピッチは、5μm以上であることが好ましい。第一線状溝4aのピッチは、10μm以下であることが好ましい。図3では、互いに隣り合う一対の第一線状溝4aのピッチは、場所によらず一定であるが、本発明は、この例に限定されない。即ち、互いに隣り合う一対の第一線状溝4aのピッチは、必ずしも、一定である必要はない。例えば、互いに隣り合う第一線状溝4aの各々が蛇行するように形成され、これらの第一線状溝4aのピッチが、場所によって異なっていてもよい。なお、上述の説明は、第一線状溝4aに関する説明であるが、第二線状溝4bについての説明は、第一線状溝4aについての説明と同じであるから、ここでの説明を省略する。
本実施形態では、線状溝4の少なくとも一本が、初晶Si結晶粒1を破壊することにより、初晶Si結晶粒1を通過するように形成されている。即ち、線状溝4の少なくとも一本が、初晶Si結晶粒1の露出面上を通過するように形成されている。これにより、摺動面101における潤滑油の分散の均一性がより高められる。本発明は、この例に限定されない。
本実施形態では、図4に示すように、破断面5aを有する初晶Si結晶粒1が、摺動面101に露出している。即ち、本実施形態では、摺動面101に露出する初晶Si結晶粒1の少なくとも一部が、破壊されており、破壊されることにより、初晶Si結晶粒1に形成された面(即ち破断面5a)が、摺動面101に露出している。これにより、摺動面101には、油溜まり5bが形成されている。初晶Si結晶粒1の破断面は、凹凸を有しているので、油溜まり5bが保持可能な潤滑油の量は多い。油溜り5bの開口面積は、初晶Si結晶粒1の断面積(摺動面101に露出した部分の面積)と同程度である。油溜り5bの深さは、初晶Si結晶粒1の径よりも小さい。初晶Si結晶粒1の破断面5aを含む油溜り5bが、実質的に平行な複数の第一線状溝4aとともに、摺動面101に形成されている。従って、潤滑油の分散の均一性を維持しつつ、潤滑油が保持される量を増加させることができる。より効果的にスカッフを抑制できる。破断面5aは、シリンダボディ部100の鋳造後にシリンダボディ部100の表面加工が施される時に形成される。具体的には、破断面5aは、例えば、初晶Si結晶粒1が砥石により削られる時に形成される。
図4に示すように、Al接触部106は、Al合金母材3がピストンリング部122b(ピストン部122)と接触する部分である。Si接触部108は、初晶Si結晶粒1がピストンリング部122b(ピストン部122)と接触する部分である。
Al接触部106は、複数の第一線状溝4aの間に形成されている。Al接触部106は、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒1(Si接触部108)の間で、摺動面101に露出している。Al接触部106は、シリンダ壁103の一部であり、シリンダ壁103は、放熱部107と一体的に成形されている。即ち、Al接触部106と放熱部107とは一体的に成形されている。そのため、Al合金母材3は、ピストンリング部122b(ピストン部122)と接触するAl接触部106から放熱部107まで物理的に連続している。そのため、図4の二点鎖線の矢印により示すように、ピストンリング部122b(ピストン部122)の熱の一部は、Al接触部106に伝導し、シリンダ壁103を通じて放熱部107に至り、放熱部107から放散される。従って、空冷エンジン150の冷却効率が、特にピストンリング部122b(ピストン部122)の初期摺動時における冷却効率が向上する。
また、本実施形態では、図4に示すように、複数の線状溝4(第一線状溝4a、及び第二線状溝4b)が、初晶Si結晶粒1の間に、複数本の線状溝4が通るピッチで形成されている。そのため、互いに隣り合う2つのSi接触部108の間に、複数の線状溝4と、複数のAl接触部106とが位置している。具体的に、互いに隣り合う2つのSi接触部108の間に、複数の線状溝4と、複数のAl接触部106とが交互に位置している。従って、潤滑油の分散の均一性を向上させることができる。そのため、Al接触部106の摩耗等を効果的に抑制できる。スカッフの発生を抑制しつつ、Al接触部106とピストンリング部122b(ピストン部122)とを接触させることができる。
複数の線状溝4は、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径より小さいピッチで形成されている。複数の線状溝4が、狭いピッチで形成されている。そのため、潤滑油の分散の均一性がより高められる。結果として、空冷エンジン150の冷却効率、特にピストンリング部122b(ピストン部122)の初期摺動時における冷却効率をより向上させることができる。
<製造方法>
本実施形態におけるシリンダボディ部100の製造方法を説明する。
シリンダボディ部100は、例えば、下記工程S1〜S4が順に行われることにより製造される。
工程S1 成形体の用意
工程S2 ファインボーリング
工程S3 粗ホーニング
工程S4 仕上ホーニング
シリンダボディ部100の製造方法では、まず、Siを含むAl合金から形成された成形体を用意する(工程S1)。この成形体は、表面近傍に初晶Si結晶粒および共晶Si結晶粒を含んでいる。成形体を用意する工程S1は、例えば、工程S1a〜S1eを含んでいる。
工程S1a シリコン含有Al合金の用意
工程S1b 溶湯の生成
工程S1c 高圧ダイカスト
工程S1d 熱処理
工程S1e 機械加工
まず、Siを含むAl合金を用意する(工程S1a)。シリンダボディ部100の耐摩耗性および強度を十分に高くするためには、Al合金として、73.4質量%以上79.6質量%以下のAl、16質量%以上24質量%以下のSi、および2.0質量%以上5.0質量%以下の銅を含むAl合金を用いることが好ましい。
次に、用意したAl合金を溶解炉で加熱して溶解させることによって、溶湯を形成する(工程S1b)。溶解前のAl合金あるいは溶湯には、100質量ppm程度のリンを添加しておくことが好ましい。Al合金が50質量ppm以上200質量ppm以下のリンを含んでいると、Si結晶粒の粗大化を抑制することができるので、合金中にSi結晶粒を均一に分散させることができる。また、Al合金のカルシウム含有量を0.01質量%以下とすることによって、リンによるSi結晶粒の微細化効果を確保し、耐摩耗性に優れた金属組織を得ることができる。つまり、Al合金は、50質量ppm以上200質量ppm以下のリンと、0.01質量%以下のカルシウムとを含むことが好ましい。
続いて、Al合金の溶湯を用いて、高圧ダイカストにより、鋳造を行う(工程S1c)。つまり、溶湯を鋳型の中で冷却して成形体を形成する。このとき、シリンダ壁103の摺動面101となる部分を大きな冷却速度(例えば4℃/秒以上50℃/秒以下)で冷却することによって、耐摩耗性に寄与するSi結晶粒を表面近傍に有する成形体が得られる。この鋳造工程S1cは、例えば、国際公開第2004/002658号パンフレットに開示されている鋳造装置を用いて行うことができる。
次に、鋳型から取り出した成形体に対し、「T5」、「T6」および「T7」と呼ばれる熱処理のうちのいずれかを行う(工程S1d)。T5処理は、成形体を鋳型から取り出した直後に水冷等により急冷し、続いて、機械的性質の改善や寸法安定化のために所定温度で所定時間だけ人工時効し、その後空冷する処理である。T6処理は、成形体を鋳型から取り出した後に所定温度で所定時間だけ溶体化処理し、続いて水冷し、次いで所定温度で所定時間だけ人工時効処理し、その後空冷する処理である。T7処理は、T6処理に比べて過時効にする処理であり、T6処理よりも寸法安定化を図ることができるが硬度はT6処理よりも低下する。
続いて、成形体に所定の機械加工を行う(工程S1e)。具体的には、シリンダヘッドとの合せ面やクランクケースとの合せ面の研削等を行う。
上述したようにして成形体を用意した後、成形体の表面、具体的には、シリンダ壁103の内周面(すなわち摺動面101となる面)に対して寸法精度を調整するためのファインボーリング加工を行う(工程S2)。
次に、ファインボーリング加工を施した面に対して粗いホーニング処理を行う(工程S3)。つまり、摺動面101となる面を、番手が比較的小さい砥石(砥粒が大きい砥石)を用いて研磨する。
続いて、仕上ホーニング処理を行う(工程S4)。つまり、成形体の表面のうちの摺動面101となる領域を、番手が比較的大きい砥石(砥粒が小さい砥石)を用いて研磨する。なお、粗ホーニング処理及び仕上ホーニング処理は、例えば、特開2004−268179号公報に開示されているようなホーニング装置を用いて実施可能である。また、粗ホーニング処理及び仕上ホーニング処理における砥石の仕様(砥粒の種類、番手(砥粒径)、ボンド剤の種類等)は、摺動面101に形成される線状溝4の仕様に応じて設定可能である。
上述した工程を経て、本実施形態に係る摺動面101が形成される。摺動面101には、複数の初晶Si結晶粒1とAl合金母材3とが露出している。ピストン部122がシリンダボア102内を往復動する時に、複数の初晶Si結晶粒1及びAl合金母材3がピストン部122と接触する。また、摺動面101は、複数の線状溝4を有している。複数の線状溝4は、互いに実質的に平行な複数の第一線状溝4aと、互いに実質的に平行な複数の第二線状溝4bとを含む。本実施形態では、線状溝4が、砥石により形成されているが、本発明は、この例に限定されない。線状溝4は、例えば、レーザにより形成されてもよい。また、粗ホーニング処理及び仕上ホーニング処理の回数は、1回に限定されず、2回以上であってもよい。
<<第二実施形態>>
第二実施形態に係る空冷エンジン150は、線状溝4に代えて、線状溝8が形成されている点を除いて、第一実施形態に係る空冷エンジン150と同じである。そこで、以下においては、主に、線状溝8について説明することにする。第一実施形態と同じ点については説明を省略する。
図6は、第二実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を拡大して模式的に示す平面図である。Rは、ピストン部122の往復動方向を示す。図7(a)、(b)は、第二実施形態に係るシリンダボディ部100の摺動面101を拡大して模式的に示す断面図である。なお、図7(a)、(b)は、方向Rに沿った断面図である。図7(a)、(b)では、説明の便宜上、線状溝8のうち、第一線状溝8aのみを図示している。また、図7(a)に示す二点鎖線の矢印は、熱の流れを説明するための矢印である。
摺動面101には、複数の線状溝8が形成されている。本実施形態において、複数の線状溝8は、複数の第一線状溝8aと、複数の第二線状溝8bとを含む。複数の第一線状溝8aは、図6において左上から右下へ向かう方向に延びる形状を有しており、互いに実質的に平行である。複数の第一線状溝8aは、摺動面101において、縞模様を成している。複数の第二線状溝8bは、図6において右上から左下へ向かう方向に延びる形状を有しており、互いに実質的に平行である。複数の第二線状溝8bは、摺動面101において、縞模様を成している。複数の第一線状溝8aと、複数の第二線状溝8bとは、互いに平行ではなく、交差している。これにより、複数の線状溝8は、摺動面101において、格子模様を成している。なお、図5において、初晶Si結晶粒1及び/又は共晶Si結晶粒2と線状溝8とが重複する部分は、線状溝8が初晶Si結晶粒1及び/又は共晶Si結晶粒2の露出面上を通過するように形成された部分を示す。当該部分の少なくとも一部では、図7(b)に示すような破断面5aが形成されている。
複数の線状溝8のうち、少なくとも2本以上の線状溝8は、互いに実質的に平行である。複数の線状溝8のうち、一部の線状溝8(第一線状溝8a)と残りの線状溝8(第二線状溝8b)とは交差していてもよい。複数の線状溝8の全てが互いに交差しないように形成され、実質的に平行であってもよい。「実質的に平行」とは、隣り合う線状溝8が、交わらないように延びていることをいう。即ち、「実質的に平行」の意味に関し、例えば、線状溝8の形成時の誤差又はズレ等に起因して、隣り合う線状溝8が厳密に見て平行ではないとしても、本発明においては、隣り合う線状溝8が実質的に平行であると解釈され得る。また、摺動面101は、互いに平行な線状溝の組として、第一線状溝8aの組と、第二線状溝8bの組とを有しているが、本発明において、互いに平行な線状溝の組の数は特に限定されない。異なる組に属する溝は互いに交差する。摺動面101に形成される複数の線状溝8が成す模様は、図5に示すような四角格子模様に限定されない。複数の線状溝8が成す模様は、第一線状溝8a又は第二線状溝8bが成すような縞模様であってもよく、三角格子模様等の多角格子模様であってもよい。四角格子模様は、多角格子模様の一例である。なお、縞模様及び格子模様における溝間ピッチは、必ずしも一定である必要はない。
本実施形態では、複数の線状溝8が、規則性を有する模様(縞模様又は多角格子模様等)を成す。本実施形態では、規則性を有する模様内において、初晶Si結晶粒1とともに、Al合金母材3が、ピストンリング部122b(ピストン部122)と接触するように摺動面101に露出する。規則性を有する模様を成す線状溝8が形成された摺動面101は、従来の不規則な摺動面(Si結晶粒が浮島状に露出した摺動面)よりも、潤滑油の分散の均一性を向上させることができる。その結果、本実施形態では、摺動面101上に形成される油膜の均一性が高い。なお、以下において、第一線状溝8aと第二線状溝8bとが区別されている場合を除いて、線状溝8についての説明は、第一線状溝8aと第二線状溝8bとの両方についての説明でもある。
線状溝8の平面視形状に関し、図6に示すように、線状溝8の平面視形状は、直線状である。しかし、本発明において、線状溝8の平面視形状は、実質的に平行となるように隣り合う線状溝8と交わらないように延びる線状を有していればよく、直線状に限定されない。即ち、線状溝8は、曲線状であってもよい。線状溝8は、曲線状の部分と、直線状の部分とを有していてもよい。また、線状溝8は、屈曲部分を有していてもよい。また、複数の線状溝8の平面視形状は、線状溝8によって異なっていてもよい。全ての線状溝8の平面視形状が同じ又は実質的に同じであってもよい。また、複数の線状溝8の各々は、必ずしも、摺動面101の全域で連続するように形成されている必要はない。複数の線状溝8の各々は、必ずしも、摺動面101の端縁まで延びている必要はない。複数の線状溝8の各々は、摺動面101上において途切れた部分を有していてもよい。
線状溝8の幅に関し、線状溝8の幅は、特に限定されない。線状溝8の幅は、シリンダボディ部100の粒度分布における初晶Si結晶粒1の粒径の範囲の最大値以下であることが好ましい。線状溝8の幅は、約10μm以下であることも好ましい。また、線状溝8の幅は、シリンダボディ部100の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の最小値以上であることが好ましい。線状溝8の幅は、約5μm以上であることも好ましい。図6に示すように、線状溝8は、一定の幅を有しているが、本発明はこの例に限定されない。線状溝8は、場所によって異なる幅を有していてもよい。また、複数の線状溝8の幅は、線状溝8によって異なっていてもよい。全ての線状溝8が、同じ幅又は実質的に同じ幅を有していてもよい。
線状溝8の深さに関し、本実施形態において、線状溝8は、シリンダボディ部100のSi結晶粒の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値の1/3以上の深さを有する。ここで、線状溝8の深さの意義について説明する。特許文献3は、上死点近傍におけるスカッフの発生をより効果的に抑制するための技術を開示している。特許文献3では、摺動面にエッチング処理が施され、Al合金母材が、浮島状に存在するSi結晶粒の領域を除く摺動面全域において、深さ方向へ略均一に溶出する。そのため、特許文献3の技術においては、エッチング処理は、Si結晶粒が摺動面から脱落し難くなる又は脱落しないように行われることが好ましく、深い凹部又は溝の形成は困難である。これに対して、本実施形態では、線状溝8が、初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも広いピッチで形成されるので、除去されるAl合金母材は限定される。従って、比較的大きな深さを有する線状溝8が形成可能である。具体的には、本実施形態では、線状溝8は、主に針状を有する共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値の1/3以上の深さを有するが、共晶Si結晶粒2の脱落は防止又は抑制される。初晶Si結晶粒1は、共晶Si結晶粒2の平均結晶粒径より大きい平均結晶粒径を有しており、初晶Si結晶粒1の脱落も防止又は抑制される。比較的大きな深さを有する、実質的に平行な複数の線状の溝が摺動面に形成されるので、多くの潤滑油を保持できるとともに、潤滑油の分散の均一性が向上する。従って、本実施形態では、Si結晶粒の脱落を防止又は抑制できるとともに、油膜の均一性を高めることができる。線状溝8は、2.0μm以上の深さを有することが好ましい。また、線状溝8は、シリンダボディ部100のSi結晶粒の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値の40%以上の深さを有していてもよい。また、シリンダボディ部100のSi結晶粒の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値の1/2以上の深さを有していてもよい。
さらに、線状溝8は、共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値よりも小さい深さを有することが好ましい。線状溝8に保持された潤滑油が適切に且つ効率良く摺動面101に供給されるからである。また、線状溝8は、6.0μm以下の深さを有することが好ましい。また、本発明では、線状溝8の深さの上限値と下限値とが定められている場合、線状溝8の深さの下限値よりも小さな深さを有する溝、及び/又は線状溝8の深さの上限値よりも大きな深さを有する溝が、摺動面101に形成されていてもよい。言い換えると、本発明においては、摺動面に、本発明で規定された線状溝以外の溝(例えば、上述した線状溝4)が形成されていてもよい。
線状溝8の断面形状は、線状溝8の深さが大きくなるにつれて線状溝8の幅が小さくなる形状である。線状溝8の断面形状は、線状溝8が延びる方向と垂直な平面における線状溝8の断面形状である。なお、本発明において、線状溝8の断面形状は、特に限定されない。線状溝8の断面形状は、例えば、図7(a)に示すような略V形状であってもよく、略U形状であってもよい。また、線状溝8の断面形状は、全て同じである必要はない。線状溝8の断面形状は、場所によって異なっていてもよく、線状溝8によって異なっていてもよい。また、線状溝8の間の部分(山)は、必ずしも、図6及び図7(a)、(b)に示すように平坦面である必要はない。線状溝8の間の部分は、傾斜面であってもよく、稜線を形成していてもよく、線状溝8の深さより小さい深さを有する1つ又は複数の溝が形成されていてもよい。
第一線状溝8のピッチに関し、実質的に平行な複数の第一線状溝8aは、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径より広いピッチで形成されている。その結果、複数の初晶Si結晶粒1の少なくとも一部が、互いに隣り合う第一線状溝8aの間に位置する。本実施形態では、隣り合う第一線状溝8aの間の領域において、初晶Si結晶粒1とAl合金母材3との両方が、ピストン部122と接触するように摺動面101に露出している。摺動面101においてピストン部122と接触する部分が、平面視において第一線状溝8aと隣接しているので、摺動面101への潤滑油の供給が円滑に行われる。また、Al合金母材3がピストン部122と接触するように摺動面101に露出しているが、初晶Si結晶粒1もピストン部122と接触するように摺動面101に露出しているので、摺動面101(Al合金母材3)の摩耗がより効果的に抑制される。図6では、互いに隣り合う一対の第一線状溝8aのピッチは、場所によらず一定であるが、本発明は、この例に限定されない。即ち、互いに隣り合う一対の第一線状溝8aのピッチは、必ずしも、一定である必要はない。例えば、互いに隣り合う第一線状溝8aの各々が蛇行するように形成され、これらの第一線状溝8aのピッチが、場所によって異なっていてもよい。なお、上述の説明は、第一線状溝8aに関する説明であるが、第二線状溝8bについての説明は、第一線状溝8aについての説明と同じであるから、ここでの説明を省略する。
本実施形態では、図6に示すように、線状溝8の少なくとも一本が、初晶Si結晶粒1を破壊することにより、初晶Si結晶粒1を通過するように形成されている。即ち、線状溝8の少なくとも一本が、初晶Si結晶粒1の露出面上を通過するように形成されている。これにより、摺動面101における潤滑油の分散の均一性がより高められる。本発明は、この例に限定されない。
本実施形態では、図7(b)に示すように、破断面5aを有する初晶Si結晶粒1が、摺動面101に露出している。即ち、本実施形態では、摺動面101に露出する初晶Si結晶粒1の少なくとも一部が、破壊されており、破壊されることにより、初晶Si結晶粒1に形成された面(即ち破断面5a)が、摺動面101に露出している。これにより、摺動面101には、油溜まり5bが形成されている。初晶Si結晶粒1の破断面は、凹凸を有しているので、油溜まり5bが保持可能な潤滑油の量は多い。油溜り5bの開口面積は、初晶Si結晶粒1の断面積(摺動面101に露出した部分の面積)と同程度である。油溜り5bの深さは、初晶Si結晶粒1の径よりも小さい。初晶Si結晶粒1の破断面5aを含む油溜り5bが、実質的に平行な複数の第一線状溝8aとともに、摺動面101に形成されている。従って、潤滑油の分散の均一性を維持しつつ、潤滑油が保持される量を増加させることができる。より効果的にスカッフを抑制できる。破断面5aは、シリンダボディ部100の鋳造後にシリンダボディ部100の表面加工が施される時に形成される。具体的には、破断面5aは、例えば、初晶Si結晶粒1が砥石により削られる時に形成される。
図7(a)に示すように、Al接触部106は、複数の第一線状溝8aの間に形成されている。Al接触部106は、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒1(Si接触部108)の間で、摺動面101に露出している。Al接触部106は、シリンダ壁103の一部であり、シリンダ壁103は、放熱部107と一体的に成形されている。即ち、Al接触部106と放熱部107とは一体的に成形されている。そのため、Al合金母材3は、ピストンリング部122b(ピストン部122)と接触するAl接触部106から放熱部107まで物理的に連続している。そのため、図7の二点鎖線の矢印により示すように、ピストンリング部122b(ピストン部122)の熱の一部は、Al接触部106に伝導し、シリンダ壁103を通じて放熱部107に至り、放熱部107から放散される。従って、空冷エンジン150の冷却効率が、特にピストンリング部122b(ピストン部122)の初期摺動時における冷却効率が向上する。
また、本実施形態では、複数の線状溝8(第一線状溝8a、及び第二線状溝8b)が、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径よりも広いピッチで形成される。そのため、隣り合う線状溝8の間に、1つ又は複数のSi接触部108が位置している。また、線状溝8(第一線状溝8a)は、隣り合う初晶Si結晶粒1の間を通る部分を有する。従って、互いに隣り合う2本の線状溝8aの間に、1つ又は複数のSi接触部108と、1つ又は複数のAl接触部106とが位置している。これにより、摺動面101上に形成される油膜の均一性を高めることができる。また、複数の線状溝8が、シリンダボディ部100のSi結晶粒の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値の1/3以上の深さを有しているので、充分な量の潤滑油が線状溝8に保持される。従って、摺動面101上の油膜切れを抑制できる。さらに、複数の線状溝8が、隣り合う初晶Si結晶粒1の間を通る部分を有する。これにより、初晶Si結晶粒1がピストンリング部122b(ピストン部122)の荷重を受けるので、線状溝8の両側に隣接する摺動面101(Al合金母材3)の摩耗が抑制され、線状溝8内の潤滑油が保持され易い。そのため、本実施形態の空冷エンジン150では、スカッフの発生を抑制しつつ、Al接触部106とピストンリング部122b(ピストン部122)とを接触させることができる。その結果、空冷エンジン150の冷却効率、特にピストン部122の初期摺動時における冷却効率が向上する。
複数の線状溝8は、シリンダボディ部100のSi結晶粒の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値の1/3以上の深さを有し、且つシリンダボディ部100のSi結晶粒の粒度分布における共晶Si結晶粒2の粒径の範囲の上限値より小さい深さを有する。従って、充分且つ適切な量の潤滑油が、複数の線状溝8に保持される。そのため、油膜の均一性がより向上する。結果として、空冷エンジン150の冷却効率、特にピストン部122の初期摺動時における冷却効率を更に向上させることができる。
複数の線状溝8は、初晶Si結晶粒1の平均結晶粒径よりも広く且つピストン部122の往復動方向におけるピストンリング部122bの下端122nからピストンリング122bの上端122mまでの距離よりも小さいピッチで形成されている。従って、充分に且つ適切な量の潤滑油が複数の線状溝8に保持される。そのため、油膜の均一性が向上する。結果として、空冷エンジン150の冷却効率、特にピストン部122の初期摺動時における冷却効率を更に向上させることができる。
上述した第一実施形態及び第二実施形態では、シリンダボディ部の全体が、Si含有量が16重量%以上であるAl合金から形成される場合について説明したが、本発明は、この例に限定されない。本発明では、シリンダボディ部が、Alを含有する金属からなり、シリンダボディ部のうち、少なくとも内周部が、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成されていればよい。この場合、シリンダボディ部の径方向における内周部の厚さは、特に限定されない。なお、内周部は、摺動面を含んでいる。本発明では、シリンダボディ部内のAlがAl接触部から放熱部まで物理的に連続することにより、空冷エンジンの冷却性が向上する。
本発明は、以下の構成を採用してもよい。
シリンダボディ部のうち、摺動面を含む内周部が、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成される。前記内周部以外の部分が、放熱部を含み、前記内周部と物理的に連続している。前記内周部以外の部分は、Si含有量が前記内周部のSi含有量と同じ又は前記内周部のSi含有量よりも小さいAl合金からなる。シリンダボディ部内のAl合金母材がAl接触部から放熱部まで物理的に連続している。
この構成では、シリンダボディ部内のAl合金母材がAl接触部から放熱部まで物理的に連続しており、これにより、空冷エンジンの冷却性が向上する。
本発明の空冷エンジンが備えるシリンダボディ部は、上述した例に限定されず、例えば、次に述べるように構成されていてもよい。前記シリンダボディ部は、外表面に放熱部を備えたシリンダ外筒部と、前記シリンダ外筒部内に設けられることにより用いられるシリンダスリーブとから構成される。この場合、シリンダスリーブが、シリンダボディ部の内周部に相当する。シリンダ外筒部が、シリンダボディ部のうち、内周部以外の部分に相当する。シリンダスリーブの設置方法としては、特に限定されず、例えば、シリンダボア102内への嵌め込み、鋳包み等が挙げられる。シリンダスリーブは、ピストン部が摺動する摺動面を有しており、摺動面内に、Al合金母材がピストン部と接触するAl接触部を有している。前記摺動面については、第一実施形態又は第二実施形態で述べた通りであるから、説明を省略する。シリンダスリーブは、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成されている。シリンダスリーブは、例えば、第一実施形態で述べた組成を有している。シリンダ外筒部は、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成されていてもよく、Si含有量が16質量%未満であるAl合金又はAl材から形成されていてもよい。また、シリンダ外筒部は、Si含有量がシリンダスリーブのSi含有量と同じであるAl合金から形成されていてもよく、Si含有量がシリンダスリーブのSi含有量より小さいAl合金又はAl材から形成されていてもよい。シリンダ外筒部及びシリンダスリーブの両方が、Alを含有する金属(Siを含有するAl合金又はAl材)から形成されており、シリンダ外筒部及びシリンダスリーブの熱膨張係数の差が小さい又は無いので、温度上昇に起因してシリンダ外筒部とシリンダスリーブとが離れてしまうことが抑制される。即ち、シリンダスリーブとシリンダ外筒部とが直接物理的に接触した状態が維持される。さらに、シリンダスリーブの外表面に存在するAl合金母材と、シリンダ外筒部の内表面に存在するAl合金母材又はAl材とが、直接物理的に接触している。これにより、Alの物理的な連続性が確保される。従って、このシリンダボディ部では、AlがAl接触部から放熱部まで物理的に連続している。即ち、シリンダボディ部は、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、Al接触部から放熱部まで連続する、Alからなる熱の伝導経路を有する。このようにシリンダ外筒部及びシリンダスリーブから構成されるシリンダボディ部は、本発明のシリンダボディ部の一例である。
<シリンダボディ部材>
本実施形態におけるシリンダボディ部材は、第一実施形態に係るシリンダボディ部100そのものである(図1等参照)。シリンダボディ部100は、摺動面101を有する部分である。但し、本発明において、シリンダボディ部材は、この例に限定されない。シリンダボディ部材は、摺動面101を有するシリンダボディ部100を備えていればよい。本発明におけるシリンダボディ部材は、シリンダボディ部100とクランクケース110とが一体成形されることにより形成された部材(所謂シリンダブロック)であってもよい。前記シリンダボディ部材は、複数の線状溝4の間でピストン部と接触するAl接触部106と一体成形された放熱部107を備えているので、空冷エンジンに適用されることにより、空冷エンジンの冷却効率を高めることができる。なお、本実施形態におけるシリンダボディ部材として、第一実施形態に係るシリンダボディ部100に代えて、第二実施形態に係るシリンダボディ部が適用されてもよい。また、本発明におけるシリンダボディ部材は、上述したようなシリンダ外筒部及びシリンダスリーブから構成されるシリンダボディ部そのものであってもよい。
<車両>
本発明に係る車両は、自動車、自動二輪車、および、スノーモービルなどの雪上車など、様々なタイプの車両を包含し、車輪数も四輪、三輪、二輪など、特に制限されるものではない。また、本発明に係る車両は、エンジンルーム等のシートから離れた箇所にエンジンが配置される箱型車両、並びに、エンジンの少なくとも一部がシートの下方に配置され、運転者がシートにまたがって搭乗する鞍乗型車両であってもよい。鞍乗型車両には、運転者が膝を揃えて搭乗することもできるスクータ型の車両も含まれる。
以下、車両の一例として、自動二輪車を例に挙げて説明する。
図8は、第一実施形態に係る空冷エンジン150を備えた自動二輪車を模式的に示す側面図である。
図8に示す自動二輪車では、本体フレーム301の前端にヘッドパイプ302が設けられている。ヘッドパイプ302には、フロントフォーク303が車両の左右方向に揺動し得るように取り付けられている。フロントフォーク303の下端には、前輪304が回転可能なように支持されている。フロントフォーク303の上端には、ハンドル305が設けられている。
本体フレーム301の後端上部から後方に延びるようにリアフレーム306が取り付けられている。本体フレーム301上に燃料タンク307が設けられており、リアフレーム306上にメインシート308aおよびタンデムシート308bが設けられている。
また、本体フレーム301の後端に、後方へ延びるリアアーム309が取り付けられている。リアアーム309の後端に後輪310が回転可能なように支持されている。
本体フレーム301の中央部には、図1に示した空冷エンジン150が保持されている。空冷エンジン150には、本実施形態におけるシリンダボディ部100が用いられている。空冷エンジン150の排気ポートには排気管312が接続されており、排気管312の後端にマフラー313が取り付けられている。
空冷エンジン150には変速機315が連結されている。変速機315の出力軸316に駆動スプロケット317が取り付けられている。駆動スプロケット317は、チェーン318を介して後輪310の後輪スプロケット319に連結されている。変速機315およびチェーン318は、空冷エンジン150により発生した動力を駆動輪に伝える伝達機構として機能する。
本実施形態における自動二輪車(車両)は、複数の線状溝4の間でピストン部122と接触するAl接触部106と一体成形された放熱部107を備えるシリンダボディ部100を含む空冷エンジン150を搭載しているので、空冷エンジンの冷却効率を高めることができる。なお、本実施形態における自動二輪車(車両)は、第一実施形態に係る空冷エンジン150を備えているが、第二実施形態に係る空冷エンジン150を備えていてもよい。
初晶Si結晶粒及び共晶Si結晶粒の平均結晶粒径の測定は、シリンダボディ部の摺動面となる部分を対象として、画像処理を用いて行われる。画像処理により得られた画像内のSi結晶粒の面積に基づいて、画像内のSi結晶粒が真円であると仮定した場合における各Si結晶粒の直径(等価直径)を算出する。なお、直径が1μm未満の微細結晶は、Si結晶粒(初晶Si結晶粒又は共晶Si結晶粒)として算入しない。以上により、Si結晶粒の個数(度数)及び直径を特定する。これに基づいて、シリンダボディ部におけるSi結晶粒の粒度分布が得られる。粒度分布は、例えば図5に示すようなヒストグラムである。粒度分布には、2つのピークが含まれる。2つのピークの間の谷を成す部分の直径を閾値として前記粒度分布を2つの領域に分ける。大きな直径に対応する領域が初晶Si結晶粒の粒度分布であるとする。小さな直径に対応する領域が共晶Si結晶粒の粒度分布であるとする。そして、各粒度分布に基づいて、初晶Si結晶粒の平均結晶粒径と、共晶Si結晶粒の平均結晶粒径とを算出する。
線状溝の幅とは、線状溝と交差する断面(断面曲線)において互いに隣り合う一対の稜線の間の距離である。なお、前記断面は、ピストン部と摺動面との摺動方向(ピストン部の往復動方向R)と平行である。また、前記断面は、シリンダボディ部の径方向とも平行である。線状溝の深さは、線状溝と隣接する一対の稜線のうちのより高い稜線から、線状溝の最深部までの深さである。線状溝のピッチは、前記断面(断面曲線)において互いに隣り合う一対の溝の最深部の間の距離である。なお、線状溝と隣接する摺動面が実質的に平坦面である場合には、線状溝の幅は、一対の摺動面(平坦面)の縁の間の距離である。
本発明において、線状溝の幅、深さ及びピッチとしては、距離3〜5mmの断面曲線に含まれる線状溝の平均値が用いられる。なお、本発明では、摺動面に、本発明で規定された深さを有する線状溝以外の溝が形成されていてもよい。その場合、線状溝の幅及びピッチを特定する際には、本発明で規定された深さを有する線状溝が用いられる。
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施例を提供するものと見なされるべきである。それら実施例は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
本発明の図示実施形態を幾つかここに記載した。本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本のプロセキューション中に記載された実施例に限定されるべきではない。そのような実施例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、この開示において、「好ましくは」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。
1 初晶Si結晶粒
2 共晶Si結晶粒
3 Al合金母材
4 線状溝
4a 第一線状溝
4b 第二線状溝
5a 破断面
5b 油溜まり
100 シリンダボディ部(シリンダボディ部材)
101 摺動面
102 シリンダボア
103 シリンダ壁
106 Al接触部
107 放熱部
122 ピストン部
122a ピストン本体
122b ピストンリング部
122c トップリング(ピストンリング)
122d セカンドリング(ピストンリング)
122e オイルリング(ピストンリング)
122f トップリング溝
122g セカンドリング溝
122h オイルリング溝
122m (ピストンリング部122bの)上端
122n (ピストンリング部122bの)下端
123 ピストンピン
140 コンロッド
150 空冷エンジン

Claims (12)

  1. ピストン部と、前記ピストン部が摺動する摺動面を有するシリンダボディ部とを備えた空冷エンジンであって、
    前記シリンダボディ部は、前記シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部を備え、Alを含有する金属からなり、前記シリンダボディ部のうち、少なくとも前記摺動面を含む内周部は、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成され、
    前記摺動面には、実質的に平行な複数の線状の溝が形成され、平均結晶粒径が8μm以上50μm以下である初晶Si結晶粒が、前記ピストン部と接触するように露出し、
    前記複数の線状の溝の間に形成された、Al合金母材が前記ピストン部と接触するAl接触部が、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で前記摺動面に露出し、前記シリンダボディ部内のAlが前記Al接触部から前記放熱部まで物理的に連続している、
    ことを特徴とする空冷エンジン。
  2. ピストン部と、前記ピストン部が摺動する摺動面を有するシリンダボディ部とを備えた空冷エンジンであって、
    前記シリンダボディ部は、前記シリンダボディ部の外表面に設けられた放熱部を備え、Alを含有する金属からなり、前記シリンダボディ部のうち、少なくとも前記摺動面を含む内周部は、高圧ダイカストにより、Si含有量が16質量%以上であるAl合金から形成され、
    前記摺動面には、実質的に平行な複数の線状の溝が形成され、初晶Si結晶粒が、前記ピストン部と接触するように露出し、
    前記複数の線状の溝の間に形成された、Al合金母材が前記ピストン部と接触するAl接触部が、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で前記摺動面に露出し、前記シリンダボディ部内のAlが前記Al接触部から前記放熱部まで物理的に連続している、
    ことを特徴とする空冷エンジン。
  3. 請求項1又は2に記載の空冷エンジンであって、
    前記シリンダボディ部のうち、前記内周部以外の部分は、前記放熱部を含み、前記内周部と物理的に連続しており、Si含有量が前記内周部のSi含有量と同じ又は前記内周部のSi含有量よりも小さいAl合金からなり、
    前記シリンダボディ部内のAl合金母材が前記Al接触部から前記放熱部まで物理的に連続している。
  4. 請求項1〜3のいずれか1に記載の空冷エンジンであって、
    前記Al接触部が、互いに隣り合う2つの初晶Si結晶粒の間で前記摺動面に露出し、前記放熱部と一体成形されている。
  5. 請求項1〜4のいずれか1に記載の空冷エンジンであって、
    前記複数の線状の溝は、前記初晶Si結晶粒の間に複数本の線状の溝が通るピッチで形成されている。
  6. 請求項5に記載の空冷エンジンであって、
    前記ピッチは、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径より小さい。
  7. 請求項1〜4のいずれか1に記載の空冷エンジンであって、
    前記シリンダボディ部は、前記初晶Si結晶粒及び前記Al合金母材に加え、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも小さな平均結晶粒径を有する共晶Si結晶粒を含み、
    前記複数の線状の溝は、前記シリンダボディ部のSi結晶粒の粒度分布における前記共晶Si結晶粒径の範囲の上限値の1/3以上の深さを有し、少なくとも前記摺動面の上側1/4の領域において、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも広いピッチで形成され、隣り合う前記初晶Si結晶粒の間を通る部分を有する。
  8. 請求項7に記載の空冷エンジンであって、
    前記複数の線状の溝は、前記シリンダボディ部のSi結晶粒の粒度分布における前記共晶Si結晶粒径の範囲の上限値の1/3以上であり且つ前記共晶Si結晶粒径の範囲の上限値より小さい深さを有する。
  9. 請求項7又は8に記載の空冷エンジンであって、
    前記ピストン部は、ピストン本体と、前記ピストン本体の外周に設けられた複数のピストンリングを含むピストンリング部とを備え、
    前記複数の線状の溝は、前記初晶Si結晶粒の平均結晶粒径よりも広く且つ前記ピストン部の往復動方向における前記ピストンリング部の下端から前記ピストンリング部の上端までの距離よりも小さいピッチで形成されている。
  10. 請求項1〜9のいずれか1に記載の空冷エンジンであって、
    前記摺動面に露出する初晶Si結晶粒の少なくとも一部は、破壊されており、破壊されることにより初晶Si結晶粒に形成された面が、前記摺動面に露出している。
  11. 請求項1〜10のいずれか1に記載の空冷エンジンに含まれる前記シリンダボディ部を備えるシリンダボディ部材。
  12. 請求項1〜10のいずれか1に記載の空冷エンジンを備えた車両。
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