JP2018059086A - 粒子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】皮膚における有効成分の透過を可能にする手段を提供すること。【解決手段】以下の特性を有する、粒子:(a)セルロース誘導体および有効成分を含む;(b)有効成分が粒子内部に含まれる;ならびに(c)体積分布平均粒子径が1〜1000nmである。(i)セルロース誘導体を含む有機溶媒と(ii)有効成分を含む水溶液とを、有機溶媒および水溶液の混合液としてW/O型分散液が形成されるように混合して、粒子を析出させることを含む、粒子の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、粒子およびその製造方法などに関する。
ポリマーからなる一定の機械的強度を有する粒子が、種々の応用のため開発されている。例えば、このような粒子は、滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤、包装材のブロッキング防止材、絶縁フィラー、結晶核剤、クロマトグラフィー用充填剤、研磨剤、免疫診断試薬用担体、または液晶ディスプレーのスペーサーとして利用されている。粒子の機械的強度はその耐久性に影響する。機械的強度が低い粒子はその用途が制限されるため、一定の機械的強度を有する粒子の開発が求められている。
ポリマーとしてセルロースまたはその誘導体からなる粒子も、上記のような種々の応用のため開発されている。
例えば、特許文献1には、(1)(i)セルロースを含む銅アンモニア溶液と凝固液との混合、(ii)硫酸を用いた中和および再生処理、ならびに(iii)高圧ホモジナイザーでの処理により、高い機械的強度を有するセルロース粒子を製造できたこと(実施例1〜13)、(2)このようなセルロース粒子が塗料として使用できたこと(実施例14、15)、ならびに(3)特許文献1記載の粒子が上述したような種々の用途に使用できること(産業上の利用可能性)が記載されている。
特許文献2には、(1)(i)セルロースを含む銅アンモニア溶液と凝固液との混合、(ii)硫酸を用いた中和および再生処理、(iii)高圧ホモジナイザーでの処理、ならびに(iv)セルロースの誘導体化処理により、水に溶解せず、しかも親水性も高いセルロース粒子を製造できたこと(実施例1〜15)、(2)セルロース粒子をカルボジイミド基、次いで抗CRP抗体と反応させることにより、粒子に抗CRP抗体が共有結合により結合した抗CRP抗体担持セルロース粒子を得たこと(実施例16)、(3)抗CRP抗体担持セルロース粒子をスライドグラス表面上に固定したこと(実施例17)、ならびに(4)特許文献2記載の粒子が診断試薬として有用であること(産業上の利用可能性)が記載されている。
特許文献3には、(1)(i)セルロースを含む銅アンモニア溶液と凝固液との混合、(ii)硫酸を用いた中和および再生処理、(iii)高圧ホモジナイザーでの処理、ならびに(iv)染料での処理により、染色セルロース粒子を製造できたこと(実施例1〜9)、(2)染色セルロース粒子に抗体を物理吸着により結合させたこと(性能評価1)、(3)染色セルロース粒子に反応性活性基を導入したこと(実施例10〜14)、(4)反応性活性基が導入された染色セルロース粒子に抗体を共有結合により結合させたこと(性能評価2)、ならびに(5)特許文献3記載の粒子が免疫診断、イムノクロマトグラフィー用の標識として有用であること(産業上の利用可能性)が記載されている。
特許文献4には、(1)有効成分をゼラチン溶液に溶解させ、次いでスプレードライ法により噴霧乾燥することにより、有効成分を含有するゼラチン粒子(平均粒子径 約5μm)を調製したこと、ならびに(2)調製したゼラチン粒子を、共重合体含有溶液中に分散させ、次いで分散液を界面活性剤(例、ソルビタンモノオレート)含有溶液中に撹拌下で滴下し、アセトニトリルを蒸発させ、適宜処理(例、ヘキサン処理)した後、有効成分を含有する生体内分解吸収性マイクロカプセル(平均粒子径 約10μm)を調製したことが記載されている。また、特許文献4には、粒子の調製における界面活性剤(ソルビタンモノオレート)、および残留有機溶媒(ヘキサン)の使用が記載されている。
特許文献5には、(1)有効成分を含有する水溶液中において、高度に疎水性の炭化水素化合物共重合体(例、スチレン・アクリレート系共重合体)からなるナノスケールの粒子を撹拌して、有効成分が吸着した粒子を調製すること、(2)当該粒子の調製において中和が必要性であること、ならびに(3)吸着した有効成分を有する粒子が記載されている。
特許文献6には、非生分解性ポリマーと称される疎水性の炭化水素化合物共重合体(例、メタアクリル酸およびメタアクリル酸メチルエステルの共重合体、ならびに塩化ビニルおよび酢酸ビニルの共重合体)を用いて調製された、日焼け防止剤(有効成分)を含有する、油性相がカプセル化されている長時間効果持続性のナノ粒子が記載されている。また、特許文献6には、このようなナノ粒子の製造方法として、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの縮合物を含有する水溶液を、疎水性の炭化水素化合物共重合体および日焼け防止剤(有効成分)を含有する無水アルコールと混合してナノカプセル分散液を調製し、次いで調製したナノカプセル分散液においてアルコールおよび水の一部を蒸発させてコロイド状分散液(ナノ粒子を含有するアルコール水溶液)を調製することが記載されている。
特許文献7には、有効成分を含有するポリビニルアルコール粒子(平均粒子径 50〜500μmのマイクロカプセル)を調製したことが記載されている。
特許文献8には、(1)疎水性ポリマーブロックおよび親水性ポリマーブロックが結合したブロック共重合体からなり、かつ有効成分を含有する粒子(平均粒子径 50〜3,000nmの凍結乾燥粉末)を調製したこと、および(2)当該粒子における有効成分の封入率および放出能力を評価したことが記載されている。
特許文献9には、(1)有効成分および揮発性溶媒の必須成分、ならびに必要に応じて親水性ポリマー、および疎水性ポリマーを含む実質的に均質な液状組成物を撹拌により調製したこと、ならびに(2)上記必須成分および上記ポリマーを含む実質的に均質な液状組成物の皮膚透過性を評価したところ、表皮中の有効成分%が0.8〜2.1%であったこと、および(3)上記必須成分を含むが、上記ポリマーを含まない実質的に均質な液状組成物の皮膚透過性を評価したところ、表皮中の有効成分%が2.5%であったこと(「ポリマーなし」の条件下で表皮中の有効成分%が向上したこと)が記載されている。
特許文献10には、(1)有効成分が分散したナノ粒子および/またはミクロ粒子(例、粒子径10nm〜1000μm)を含む経口投与製剤を調製すること、(2)当該経口投与製剤が、難水溶性の治療剤の溶解性を高め、消化管(GIT)の特定の部分を標的とすることで、および/または初回通過効果を減少することで、高いバイオアベイラビリティを実現できること、(3)粒子の調製における水性界面活性剤の使用が記載されている。
ところで、皮膚は、医薬品、医薬部外品および化粧品が適用される生体組織である。皮膚は、表皮(角層(角質層)、顆粒層、有棘層および基底層)、真皮、ならびに皮下組織から構成される構造を有する。角層下の皮膚組織は親水性の性質(pH6.8〜7.5)を有するものの、皮膚の表面(角層)は親油性の性質(pH4.5〜5.3)を有するため、角層中、および角層下の皮膚組織に有効成分(例、水溶性成分、疎水性成分)が透過し難いことが知られている。例えば、有効成分を角層中に透過させることができれば、当該有効成分を化粧品として有効活用し易いと考えられる。また、有効成分を角層下の皮膚組織(例、基底層)に透過させることができれば、当該有効成分を医薬部外品(例、美白剤、抗シワ剤)として有効活用し易いと考えられる。さらに、有効成分を表皮下の深い組織(例、皮下組織)に透過させることができれば、当該有効成分を医薬として活用し易いと考えられる。したがって、皮膚における有効成分の透過を可能にする手段の提供が求められている。
国際公開第2008/084854号 国際公開第2009/123148号 国際公開第2011/062157号 特開平4−36233号公報 特開平3−63210号公報 特表平6−502874号公報 特開平2−293041号公報 特開2006−321763号公報 特表2005−538095号公報 特表2016−539953号公報
本発明の目的は、皮膚における有効成分の透過を可能にする手段を提供することである。
本発明者らは、皮膚における有効成分の透過のため、ポリマーから構成される所定の粒子を利用することを着想した。当該着想に基づき鋭意検討した結果、本発明者らは、簡便な製造方法により、皮膚における有効成分の高度な透過を可能にする所定の粒子を開発することに成功した。本発明の粒子は、親油性および親水性の双方の性質を有する生体組織(例、皮膚)を高度に透過できることから、親油性または親水性の一方の性質のみを有する他の組織も高度に透過できることが期待される。
上述した特許文献1〜3はいずれも、本発明の粒子およびその製造方法を教示も示唆もしていない。例えば、本発明の粒子の技術思想は、上記で挙げた先行技術の粒子と大きく相違する。
具体的には、上記先行技術の粒子はいずれも、上述したような用途に使用される場合、その粒子形状を維持する必要がある。実際、上記特許文献2および3は、抗体が粒子に共有結合している安定な構造を有する粒子を開示している。一方、本発明の粒子は、その粒子形状を維持する必要はなく、むしろ、粒子の崩壊により有効成分を放出するものである。
また、上記特許文献2および3は、抗体を粒子に共有結合させており、抗体が粒子から遊離しないように処理していることからも明らかなように、有効成分を粒子から放出させるという本発明の技術思想を開示していない。
さらに、特許文献2および3の粒子は、粒子の製造後に粒子が抗体で処理されていることからも明らかなように、粒子表面に抗体が付着しているのであって、粒子内部に抗体を含む本発明の粒子と異なり、粒子内部に抗体が含まれるものではないことが理解できる。特許文献2および3の粒子の用途である診断に着目してみても、抗体はイムノアッセイを達成できるように粒子表面に付着していることが明らかである。なぜならば、粒子内部に抗体が含まれる場合、抗体が目的物質と結合できず、診断のために抗体を用いたそもそもの目的であるイムノアッセイが達成できないことになるためである。
本発明の粒子の製造方法もまた、特許文献1〜3の粒子の製造方法と大きく相違する。
具体的には、特許文献1〜3の方法はいずれもヒト等の動物に毒性を示し得る銅を利用しており、製造された粒子は銅を含み得ることから、製造された粒子は安全性が高く高品質を要求される製品(例、医薬品、医薬部外品、化粧品)には不向きであると考えられる。一方、本発明の方法は銅を利用せず、製造された粒子は銅を含み得ないことから、かかる方法により得られる本発明の粒子は、安全性が高く高品質の要求を満たし易いという利点を有する。
また、特許文献1〜3の方法はいずれも、中和および再生の操作を必要とする。よって、特許文献1〜3の方法は、遠心分離およびデカンテーションを複数回繰り返す必要があり、操作が煩雑である。さらに、特許文献1〜3の方法はいずれも、粒子の形成のため、高圧ホモジナイザー処理という強力なエネルギーを要求する操作を必要とする。一方、本発明の方法によれば、中和および再生の操作、ならびに強力なエネルギーを要求する操作を必要とし得ないことから、粒子を簡便に製造できるという利点を有する。
上述した特許文献4では、粒子の調製において噴霧乾燥を利用しているため、マイクロカプセル(すなわち、マイクロスケールの粒子)を調製することができるものの、噴霧乾燥により粒子の静電凝集が誘発され粒子サイズが大きくなり易いことから、ナノスケールの粒子の調製は困難であると考えられる。実際、実施例には、マイクロカプセル(平均粒子径 約10μm)を調製できたことが記載されているものの、ナノスケールの粒子の調製は記載されていない。特に、セルロース系粒子については、粒子サイズにかかわらず粒子の調製が何ら実証されていないことに照らすと、ナノスケールの粒子を調製できるとはいえない。
また、特許文献4の方法では、粒子の調製において界面活性剤(ソルビタンモノオレート)を使用していること、および界面活性剤が粒子から除去されていないことを考慮すると、調製された粒子には界面活性剤が混入していると考えられる。しかし、界面活性剤の混入は、界面活性剤に起因する刺激性を伴い得るため、生体(例、皮膚)への適用上望ましいものではない。
さらに、特許文献4の方法では、粒子の調製においてヘキサンを使用しているため、最終製品に、残留有機溶媒としてヘキサンが混入し易いと考えられる。しかし、ヘキサンは発がん性が疑われていること、および各種規制(例、排水基準、労働安全衛生法による残留有機溶媒の基準)が存在することから、ヘキサンの使用を避けることが望まれる。
上述した特許文献5では、高度に疎水性の炭化水素化合物共重合体からなる粒子および有効成分を水溶液中で接触させていること、有効成分が粒子に吸着していると記載されていること、ならびに有効成分が粒子内部に含まれていることが示されていないことを考慮すると、特許文献5の粒子は、有効成分が粒子内部に含まれているとはいえない。特に、セルロース系粒子については、粒子の調製が何ら実証されていないことに照らすと、有効成分を粒子内部に含む粒子を調製できるとはいえない。
また、特許文献5の方法では、粒子の調製における中和に起因して粒子含有溶液中に塩が残存し易いことから、調製した粒子が塩によって静電反発力が弱くなって凝集し易くなり、また、この粒子を用いて乳化物を調製すると塩濃度の高さによって乳化破壊を引き起こしやすくなると考えられる。
さらに、特許文献5には、粒子が皮膚に適用されることが記載されているが、粒子が皮膚を透過することは記載されていない。
上述した特許文献6には、セルロース系粒子の調製が何ら実証されていないことに照らすと、ナノスケールのセルロース系粒子を調製できるとはいえない。
また、特許文献6には、油性相のカプセル化が記載されていることから、疎水性有効成分が粒子内部に含まれるかもしれないものの、水溶性有効成分が粒子内部に含まれることは記載されていない。
さらに、特許文献6には、ナノ粒子における日焼け防止剤の有無による効果の相違(保護指数)が記載されているにとどまり、ナノ粒子が皮膚透過作用を有することは示されてない。
上述した特許文献7では、ナノスケールの粒子の調製は記載されていない。特に、セルロース系粒子については、粒子サイズにかかわらず粒子の調製が何ら実証されていないことに照らすと、ナノスケールの粒子を調製できるとはいえない。
上述した特許文献8では、非ブロック共重合体の粒子、特に、セルロース系粒子の調製は記載されていない。
また、特許文献8には、粒子が皮膚を透過することは記載されていない。
上述した特許文献9では、粒子、特に、ナノ粒子およびセルロース系粒子の調製は記載されていない。
また、特許文献9において、「ポリマーなし」の条件下で表皮中の有効成分%が向上したことに照らすと、皮膚透過作用においてはポリマーの使用が所望されないことが記載されているといえる。
上述した特許文献10では、粒子径が広範な範囲(10nm〜1000μm)にある粒子を調製することが記載されているが、粒子の粒子径が実施例で何ら示されていないばかりか、平均粒子径が特定のスケール(例、ナノスケール)にある粒子を調製するための具体的な方法(例、成分および溶媒の種類および量、撹拌条件等の処理条件)も記載されていない。
また、特許文献10では、粒子の外用用途(例、化粧料)は記載されていない。
さらに、特許文献10では、粒子の調製において水性界面活性剤を使用していること、および水性界面活性剤が粒子から除去されていないことを考慮すると、調製された粒子には水性界面活性剤が混入していると考えられる。しかし、水性界面活性剤の混入は、水性界面活性剤に起因する刺激性(例、肌荒れ)を伴い得るため、生体(例、皮膚)への適用上望ましいものではない。
以上のとおり、本発明者らは、先行技術の粒子と技術思想も製造方法も大きく相違し得る下記の本発明の粒子等を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下の特性を有する、粒子:
(a)セルロース誘導体および有効成分を含む;
(b)有効成分が粒子内部に含まれる;ならびに
(c)体積分布平均粒子径が1〜1000nmである。
〔2〕以下、(i)〜(iii)からなる群より選ばれる1以上の性質を有する、〔1〕の粒子:
(i)粒子膜上の水の接触角が、20〜70度である;
(ii)ポリスチレン基板上の水の接触角に対する、粒子膜上の水の接触角の比率が、0.2〜0.9の範囲内である;
(iii)電気泳動による移動度の絶対値が2μmcm/Vs以上である。
〔3〕粒子が2種以上のセルロース誘導体の混合物を含む、〔1〕または〔2〕の粒子。
〔4〕セルロース誘導体が、R−またはR−C(=O)−(式中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基を示す。)の置換基を有するセルロース誘導体である、〔1〕〜〔3〕のいずれかの粒子。
〔5〕前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロースまたはそのエステル誘導体である、〔4〕の粒子。
〔6〕粒子がセルロース誘導体およびセルロース誘導体以外のポリマーの混合物を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれかの粒子。
〔7〕セルロース誘導体以外のポリマーが、置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーである、〔6〕の粒子。
〔8〕置換されていてもよい2価の炭化水素基が、置換されていてもよいアルキレンである、〔7〕の粒子。
〔9〕置換されていてもよいアルキレンが、置換されていてもよいエチレンである、〔8〕の粒子。
〔10〕セルロース誘導体以外のポリマーが、メタクリル酸コポリマーである、〔6〕〜〔9〕のいずれかの粒子。
〔11〕前記混合物が、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーの混合物である、〔3〕〜〔10〕のいずれかの粒子。
〔12〕有効成分が低分子化合物である、〔1〕〜〔11〕のいずれかの粒子。
〔13〕粒子の重量に対する有効成分量が0.01〜80%(wt)である、〔1〕〜〔12〕のいずれかの粒子。
〔14〕粒子の重量に対する有効成分量が0.1〜15%(wt)である、〔1〕〜〔13〕のいずれかの粒子。
〔15〕〔1〕〜〔14〕のいずれかの粒子を含む、有効成分の生体組織透過剤。
〔16〕生体組織が皮膚である、〔15〕の剤。
〔17〕生体組織が角層である、〔15〕または〔16〕の剤。
〔18〕粒子の製造方法であって、
(i)セルロース誘導体を含む有機溶媒と(ii)水溶液とを、有機溶媒および水溶液の混合液としてW/O型分散液が形成されるように混合して、粒子を析出させることを含み、
有効成分が、有機溶媒または水溶液に含まれており、
粒子が、以下の特性を有する、方法:
(a)セルロース誘導体および有効成分を含む;
(b)有効成分が粒子内部に含まれる;ならびに
(c)体積分布平均粒子径が1〜1000nmである。
〔19〕水溶液が有効成分を含む、〔18〕の方法。
〔20〕(i’)第1ポリマーを含む有機溶媒と(ii’)有効成分および第2ポリマーの双方を含む水溶液とを、有機溶媒および水溶液の混合液としてW/O型分散液が形成されるように混合して、前記粒子を析出させることを含む、〔19〕の方法。
〔21〕混合が、前記混合液の状態がO/W型分散液からW/O型分散液に変化する条件下で行われる、〔18〕〜〔20〕のいずれかの方法。
本発明の粒子は、水溶性成分等の有効成分が皮膚(例、角層)等の生体組織を透過することを可能にする。
図1は、実施例1で得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す図である(実施例1を参照)。 図2は、実施例3で調製した粒子の自然乾燥後の走査型電子顕微鏡写真を示す図である(試験例3を参照)。
本発明は、以下の特性を有する粒子を提供する:
(a)セルロース誘導体および有効成分を含む;
(b)有効成分が粒子内部に含まれる;ならびに
(c)体積分布平均粒子径が1〜1000nmである。
本発明の粒子は、ポリマーとして1種のセルロース誘導体のみを含んでいてもよいが、セルロース誘導体を含む2種以上(例、2種、3種、4種または5種)のポリマーの混合物であってもよい。したがって、本発明の粒子は、2種以上のセルロース誘導体の混合物、またはセルロース誘導体およびセルロース誘導体以外のポリマー(以下、必要に応じて、非セルロース系ポリマーと称する)の混合物であってもよい。
本発明の粒子に含まれるポリマーは、本発明の粒子の形態を安定化できる任意の重量平均分子量を有するものである限り特に限定されず、例えば、10,000以上、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、さらにより好ましくは40,000以上である。重量平均分子量はまた、材料の入手のし易さ等の観点から、例えば1,000,000以下、800,000以下、600,000以下、400,000以下、300,000以下、または200,000以下であってもよい。
本発明では、セルロース誘導体とは、置換基を有するセルロースを示す。したがって、セルロース誘導体には、置換基を有しないセルロース自体は含まれない。セルロース誘導体は、モノマー単位(グルコース)の全てが置換基を有する必要はなく、モノマー単位の一部が置換基を有していればよい。セルロース誘導体では、モノマー単位中の水素原子が置換基で置換される。モノマー単位中の置換基の個数は、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個もしくは2個である。
好ましい実施形態では、セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシセルロース、アルキルセルロース、もしくはヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カチオン化セルロース、疎水化セルロース、またはそれらのエステル誘導体、あるいはそれらの塩である。
塩としては、例えば、金属塩、酸付加塩、および塩基との塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、一価の金属(例、ナトリウム、およびカリウム)との塩、ならびに二価の金属(例、カルシウム、およびマグネシウム)との塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸(例、塩化水素、臭化水素、硫酸、およびリン酸)との塩、ならびに有機酸(例、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、およびモノメチル硫酸)との塩が挙げられる。塩基との塩としては、例えば、無機塩基(例、アンモニア)との塩、ならびに有機塩基(例、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、エタノールアミン、モノアルキルエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)との塩が挙げられる。塩としては、金属塩が好ましい。
ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、およびアルキルセルロースにおけるアルキルは、後述する1価の炭化水素基の例であるアルキルと同様であり、好ましい範囲も同様である。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースにおける2つのアルキルは、同一であっても異なっていてもよく、上記1価の炭化水素基の例であるアルキルと同様であり、好ましい範囲も同様である。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシペンチルセルロース、及びヒドロキシヘキシルセルロースが挙げられる。
カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシブチルセルロース、カルボキシペンチルセルロース、及びカルボキシヘキシルセルロースが挙げられる。
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、及びヘキシルセルロースが挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースは、ヒドロキシアルキルおよびアルキルの双方を有するセルロースである。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシメチルおよびアルキルを有するセルロース(例、ヒドロキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシメチルブチルセルロース)、ヒドロキシエチルおよびアルキルを有するセルロース(例、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルブチルセルロース)、ヒドロキシプロピルおよびアルキルを有するセルロース(例、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロルブチルセルロース)、ヒドロキシブチルおよびアルキルを有するセルロース(例、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルエチルセルロース、ヒドロキシブチルプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルブチルセルロース)が挙げられる。
カチオン化セルロースとは、カチオン性基を有するセルロース、またはカチオン性基を有するセルロース誘導体をいう。カチオン性基としては、例えば、トリアルキルアンモニウムが挙げられる。トリアルキルアンモニウムにおける3つのアルキルは、同一であっても異なっていてもよく、後述するアルキルと同様であり、好ましい範囲も同様である。
疎水化セルロースとは、疎水性基を有するセルロース、または疎水性基を有するセルロース誘導体をいう。疎水化セルロースとしては、例えば、アセチル化セルロースが挙げられる。
上記エステル誘導体は、上記セルロース誘導体におけるヒドロキシ中の水素原子がR−C(=O)−(Rは、置換されていてもよい1価の炭化水素基を示す。)により置換されてエステル部分を形成する誘導体である。Rにより示される1価の炭化水素基は、後述するようなR〜Rにより示される「置換基を有していてもよい1価の炭化水素基」における「1価の炭化水素基」と同様であり、好ましい範囲も同様である。1価の炭化水素基の炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。1価の炭化水素基が置換されている場合、置換基は、後述する二次置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
本発明の粒子に含まれ得る非セルロース系ポリマーは、本発明の粒子の形態を安定化できるものである限り特に限定されず、同種のモノマー単位から構成されるホモポリマー、または異種のモノマー単位から構成されるヘテロポリマー(例、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、クシ型コポリマー)である。このようなポリマーはまた、主鎖が直線状である線状ポリマー、または主鎖が非直線状である分岐ポリマー(例、グラフトポリマー、クシ型ポリマー、ハイパーブランチポリマー、ラダーポリマー)であるが、線状ポリマーが好ましい。
本発明の粒子に含まれ得る非セルロース系ポリマーを構成するモノマー単位としては、例えば、置換されていてもよい2価の炭化水素基、置換されていてもよいサッカリド、置換されていてもよいアミノ酸、置換されていてもよいヌクレオチドが挙げられる。
本発明の粒子に含まれ得る非セルロース系ポリマーはまた、天然ポリマー(例、微生物、植物または動物由来ポリマー)、半合成ポリマー、または合成ポリマーである。天然ポリマーとしては、例えば、多糖類(例、セルロース、グアーガム、ローカストビーンガム、クインシードガム、カラギーナン、ペクチン、マンナン、デンプン、寒天、ザンサンガム、サクシノグリカン、カードラン、ヒアルロン酸、デキストラン)、タンパク質(例、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、アルギン酸)、ポリヌクレオチド鎖(例、DNA、RNA)、およびそれらの塩が挙げられる。半合成ポリマーとしては、例えば、上記多糖類の修飾により得られる修飾多糖類〔例、デンプン系ポリマー(例、可溶化デンプン、カルボキシメチルデンプン)〕、上記タンパク質の修飾により得られる修飾タンパク質〔例、アルギン酸系ポリマー(例、アルギン酸プロピレングリコールエステル)〕、およびそれらの塩が挙げられる。合成ポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリアルキレンオキサイド〔例、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリブチレンオキサイド(PBO)〕、ポリアルキレングリコール〔例、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリブチレングリコール(PBG)、およびそれらのコポリマー、ならびにそれらの塩が挙げられる。塩は、上述したとおりである。
本発明では、X系ポリマー(Xはポリマーの名称を示す)とは、置換基を有するXを示す。X系ポリマーは、モノマー単位の全てが置換基を有する必要はなく、モノマー単位の一部が置換基を有していればよい。X系ポリマーでは、モノマー単位中の水素原子が置換基で置換される。モノマー単位中の置換基の個数は、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個もしくは2個である。
本発明では、Y系ポリマー(Yはモノマー単位の名称を示す)とは、モノマー単位であるYの一部または全部が置換基を有するYのポリマーを示す。例えば、Yがビニルであれば、ビニル系ポリマーには、置換基を有するビニルポリマーは含まれるが、置換基を有しないビニルポリマーは含まれない。Y系ポリマーでは、Y中の水素原子が置換基で置換される。Y中の置換基の個数は、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個もしくは2個である。
X系ポリマーおよび/またはY系ポリマーにおいてXおよび/またはYが有する置換基としては、例えば、以下が挙げられる;
(i)ハロゲン原子、カルボキシ、スルホ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ、もしくはグアニジノ;
(ii)R−、R−O−、R−C(=O)−、R−O−C(=O)−、もしくはR−C(=O)−O−;または
(iii)NR−、NR−C(=O)−、NR−C(=O)−O−、R−C(=O)−NR−、R−O−C(=O)−NR−。
(i)において、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
(ii)において、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、もしくは置換基を有していてもよい1価の複素環基を示す。(iii)において、RおよびRは、同一もしくは異なって、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、もしくは置換基を有していてもよい1価の複素環基を示す。
「置換基を有していてもよい1価の炭化水素基」における「1価の炭化水素基」としては、例えば、1価の鎖状炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、および1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
1価の鎖状炭化水素基とは、鎖状構造のみで構成された炭化水素基を意味し、主鎖に環状構造を含まない。ただし、鎖状構造は直鎖状であっても分岐状であってもよい。1価の鎖状炭化水素基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニルが挙げられる。アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、直鎖状、または分岐状のいずれであってもよい。
アルキルとしては、炭素原子数1〜12のアルキルが好ましく、炭素原子数1〜6のアルキルがより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキルがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数1〜12のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルが挙げられる。
アルケニルとしては、炭素原子数2〜12のアルケニルが好ましく、炭素原子数2〜6のアルケニルがより好ましく、炭素原子数2〜4のアルケニルがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数2〜12のアルケニルとしては、例えば、ビニル、プロペニル、n−ブテニルが挙げられる。
アルキニルとしては、炭素原子数2〜12のアルキニルが好ましく、炭素原子数2〜6のアルキニルがより好ましく、炭素原子数2〜4のアルキニルがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数2〜12のアルキニルとしては、例えば、エチニル、プロピニル、n−ブチニルが挙げられる。
1価の鎖状炭化水素基としては、アルキルが好ましい。
1価の脂環式炭化水素基とは、環構造として脂環式炭化水素のみを含み、芳香族環を含まない炭化水素基を意味し、脂環式炭化水素は単環、多環のいずれであってもよい。ただし、脂環式炭化水素のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルが挙げられ、これらは、単環、多環のいずれであってもよい。
シクロアルキルとしては、炭素原子数3〜12のシクロアルキルが好ましく、炭素原子数3〜6のシクロアルキルがより好ましく、炭素原子数5〜6のシクロアルキルがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数3〜12のシクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
シクロアルケニルとしては、炭素原子数3〜12のシクロアルケニルが好ましく、炭素原子数3〜6のシクロアルケニルがより好ましく、炭素原子数5〜6のシクロアルケニルがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数3〜12のシクロアルケニルとしては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルが挙げられる。
シクロアルキニルとしては、炭素原子数3〜12のシクロアルキニルが好ましく、炭素原子数3〜6のシクロアルキニルがより好ましく、炭素原子数5〜6のシクロアルキニルがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数3〜12のシクロアルキニルとしては、例えば、シクロプロピニル、シクロブチニル、シクロペンチニル、シクロヘキシニルが挙げられる。
1価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキルが好ましい。
1価の芳香族炭化水素基とは、芳香族環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族環のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素を含んでいてもよく、芳香族環は単環、多環のいずれであってもよい。1価の芳香族炭化水素基としては、炭素原子数6〜12のアリールが好ましく、炭素原子数6〜10のアリールがより好ましく、炭素原子数6のアリールがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数6〜12のアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
1価の芳香族炭化水素基としては、フェニルが好ましい。
これらの中でも、1価の炭化水素基としては、アルキル、シクロアルキル、アリールが好ましく、アルキルがより好ましい。
「置換基を有していてもよい1価の複素環基」における「1価の複素環基」とは、複素環式化合物の複素環から水素原子1個を除いた基をいう。1価の複素環基は、1価の芳香族複素環基、又は1価の非芳香族複素環基である。複素環基を構成するヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子及びケイ素原子からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
1価の芳香族複素環基としては、炭素原子数3〜15の芳香族複素環基が好ましく、炭素原子数3〜9の芳香族複素環基がより好ましく、炭素原子数3〜6の芳香族複素環基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。1価の芳香族複素環基としては、例えば、ピレニル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ピロリニル、ピペリジニル、トリアゾニル、プリニル、カルバゾニル、フルオレニル、キノリニル、及びイソキノリニルが挙げられる。ピリミジニルは、所定の置換基を有する場合、核酸塩基である、アデニル、またはグアニルを構成する。プリニルは、所定の置換基を有する場合、核酸塩基である、シトシル、チミニル、またはウラシルを構成する。
1価の非芳香族複素環基としては、炭素原子数3〜15の非芳香族複素環基が好ましく、炭素原子数3〜9の非芳香族複素環基がより好ましく、炭素原子数3〜6の非芳香族複素環基がさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。1価の非芳香族複素環基としては、例えば、オキシラニル、アジリジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、テトラヒドロチオフェニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ジヒドロオキサジニル、テトラヒドロオキサジニル、ジヒドロピリミジニル、及びテトラヒドロピリミジニルが挙げられる。
、R、およびRとしては、水素原子、もしくは置換基を有していてもよい1価の炭化水素基が好ましく、水素原子、もしくは置換基を有していてもよいアルキルがより好ましい。
「1価の炭化水素基」または「1価の複素環基」が置換基を有する場合、「1価の炭化水素基」または「1価の複素環基」中の水素原子が置換される。「1価の炭化水素基」または「1価の複素環基」中の置換基の個数は、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個もしくは2個である。
「1価の炭化水素基」および「1価の複素環基」が有していてもよい置換基(二次置換基とも称される)としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシ、スルホ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ、グアニジノ、ヒドロキシ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ(例、アミノ)、およびアルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ−カルボニル(例、アミド)が挙げられる。アルキル、アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ、およびアルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ−カルボニルにおける「アルキル」は、上記1価の炭化水素基の例であるアルキルと同様であり、好ましい範囲も同様である。
特定の実施形態では、本発明の粒子においてセルロース系ポリマーとの混合物として含まれ得る非セルロース系ポリマーは、置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーである。2種以上(例、2種、3種、4種、または5種)の2価の炭化水素基が、一つのポリマーに含まれていてもよい。
2価の炭化水素基としては、直鎖、分岐鎖、又は環状の2価の炭化水素基であり、好ましくは直鎖又は分岐鎖の2価の炭化水素基である。このような2価の炭化水素基としては、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレンが挙げられる。
アルキレンとしては、炭素原子数1〜12のアルキレンが好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレンがより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキレンが特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキレンは、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキレンが好ましい。このようなアルキレンとしては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレンが挙げられる。
アルケニレンとしては、炭素原子数2〜12のアルケニレンが好ましく、炭素原子数2〜6のアルケニレンがより好ましく、炭素原子数2〜4のアルケニレンが特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルケニレンは、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルケニレンが好ましい。このようなアルケニレンとしては、例えば、エチレニレン、プロピニレン、ブテニレン、ペンテニレン、へキセニレンが挙げられる。
アルキニレンとしては、炭素原子数2〜12のアルキニレンが好ましく、炭素原子数2〜6のアルキニレンがより好ましく、炭素原子数2〜4のアルキニレンが特に好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アルキニレンは、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよいが、直鎖のアルキニレンが好ましい。このようなアルキニレンとしては、例えば、エチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ペンチニレン、へキシニレンが挙げられる。
アリーレンとしては、炭素原子数6〜18のアリーレンが好ましく、炭素原子数6〜14のアリーレンがより好ましく、炭素原子数6〜10のアリーレンがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。アリーレンとしては、例えば、フェニレン、ナフチレンが挙げられる。
これらの中でも、2価の炭化水素基としては、直鎖のアルキレンが好ましい。
モノマー単位として含まれる直鎖のアルキレンは、ポリマー原料としての汎用性および/または入手のし易さ等の観点から、ビニル(エチレン)、プロピレン、もしくはブチレン、またはそれらの混合物が好ましい。
置換されていてもよい2価の炭化水素基とは、非置換の2価の炭化水素基、または置換基を有する2価の炭化水素基を示す。2価の炭化水素基が置換される場合、2価の炭化水素基中の水素原子が置換される。2価の炭化水素基中の置換基の個数は、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個もしくは2個である。
2価の炭化水素基が有していてもよい置換基は、上記(i)〜(iii)の置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーは、このような2価の炭化水素基のみをモノマー単位として含んでいてもよく、またはこのような2価の炭化水素基に加えて、他の2価の基をモノマー単位として含んでいてもよい。他の2価の基としては、例えば、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NR−(Rは水素原子、または置換基を示す)、−C(=O)−NR−(Rは水素原子、または置換基を示す)、−PO−O−、−PO(S)−O−が挙げられる。
により示される置換基は、R〜Rにより示される「置換基を有していてもよい1価の炭化水素基」、もしくは「置換基を有していてもよい1価の複素環基」と同様であり、好ましい範囲も同様である。より好ましくは、Rにより示される置換基は、置換基を有していてもよいアルキルである。アルキルとしては、炭素原子数1〜12のアルキルが好ましく、炭素原子数1〜6のアルキルがより好ましく、炭素原子数1〜4のアルキルがさらに好ましい。上記炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。炭素原子数1〜12のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシルが挙げられる。アルキルが有していてもよい置換基は、上記二次置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
好ましくは、置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーは、このような2価の炭化水素基のみをモノマー単位として含む炭化水素鎖ポリマーである。炭化水素鎖ポリマーとしては、例えば、ビニル(エチレン)系ポリマー、プロピレン系ポリマー、ブチレン系ポリマーが挙げられる。
より好ましくは、置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーは、アルキレン系ポリマーである。
アルキレン系ポリマーは、ポリマー原料としての汎用性および/または入手のし易さ等の観点から、ビニル(エチレン)系ポリマー、プロピレン系ポリマー、もしくはブチレン系ポリマー、またはそれらのコポリマーが好ましい。
好ましくは、アルキレン系ポリマーは、上記(i)〜(iii)のような置換基を有するアルキレンポリマーである。
より好ましくは、アルキレン系ポリマーは、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシ、スルホ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ、グアニジノ、ヒドロキシ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ(例、アミノ)、およびアルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ−カルボニル(例、アミド)からなる群より選ばれる1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1または2個の置換基を有するアルキレンポリマーである。アルキル、アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ、およびアルキルでモノもしくはジ置換されていてもよいアミノ−カルボニルにおける「アルキル」は、上記1価の炭化水素基の例であるアルキルと同様であり、好ましい範囲も同様である。
好ましい実施形態では、アルキレン系ポリマーは、ビニル系ポリマーである。ビニル系ポリマーとしては、例えば、ビニルアルコール、アクリル酸もしくはそのエステル誘導体、メタクリル酸もしくはそのエステル誘導体、ビニルピロリドンからなる群より選ばれる1種または2種以上のモノマー単位を含むポリマーが挙げられる。好ましくは、ビニル系ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはそのエステル誘導体、ポリメタクリル酸もしくはそのエステル誘導体、ポリビニルピロリドンであってもよい。
上記エステル誘導体は、上記アルキレン系ポリマーのカルボキシ(C(=O)−OH)中のOH基がR’−O−(R’は、置換されていてもよい1価の炭化水素基を示す。)により置換されてエステル部分を形成する誘導体である。R’により示される1価の炭化水素基は、R〜Rにより示される「置換基を有していてもよい1価の炭化水素基」における「1価の炭化水素基」と同様であり、好ましい範囲も同様である。1価の炭化水素基の炭素原子数に置換基の炭素原子数は含まれない。1価の炭化水素基が置換されている場合、置換基は、上記二次置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーは、当該分野で公知の任意の方法により作製することができる。例えば、種々の2価の炭化水素基が知られているので、このような2価の炭化水素基を適宜重合することにより、置換された2価の炭化水素基を含む目的のポリマーを得ることができる。
好ましい実施形態では、本発明の粒子は、2種以上のポリマーの混合物を含む。2種以上のポリマーの混合物を含むことで、親水性物質となじみのよい親水性部位を粒子内部に持ちつつ、粒子表面を適度な疎水性を付加することができるという利点がある。好ましくは、2種以上のポリマーの混合物は、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーを含む2種以上(例、2種、3種、4種、または5種)のポリマーの混合物である。
本発明では、親水性ポリマーとは、水溶液(好ましくは水)に対する溶解度が1%(wt)以上のポリマーをいう。水溶性ポリマーについて、水溶液(好ましくは水)に対する溶解度は、好ましくは5%(wt)以上であり、より好ましくは7%(wt)以上である。親水性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシ、カルボキシアルキル、カルボキシ、またはカチオン性基で置換されたサッカリドをモノマー単位として含むポリマーが挙げられる。ヒドロキシアルキルおよびカルボキシアルキルにおけるアルキル、およびサッカリドをモノマー単位として含むポリマーはそれぞれ、上述したものと同様であり、好ましい範囲も同様である。親水性ポリマーの具体例としては、それが有する具体的な置換基等の種類にもよるが、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシセルロース、カチオン化セルロース、およびそれらのエステル誘導体、ならびにそれらの塩が挙げられる。
好ましくは、親水性ポリマーは、有機溶媒に移行し易い親水性ポリマー(両親媒性ポリマー)であってもよい。両親媒性ポリマーとは、一つの分子内に親水性官能基からなる集合部位と疎水性官能基からなる集合部位を有し、界面活性剤のように水油界面でポリマーミセルを形成するものをいう。両親媒性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、またはカチオン性基で置換されたサッカリドをモノマー単位として含むポリマーが挙げられる。ヒドロキシアルキルおよびカルボキシアルキルにおけるアルキル、およびサッカリドをモノマー単位として含むポリマーはそれぞれ、上述したものと同様であり、好ましい範囲も同様である。両親媒性ポリマーの具体例としては、それが有する具体的な置換基等の種類にもよるが、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カチオン化セルロース、およびそれらのエステル誘導体、ならびにそれらの塩が挙げられる。
本発明では、疎水性ポリマーとは、水溶液(好ましくは水)に対する溶解度が1%(wt)未満のポリマーをいう。水溶性ポリマーについて、水溶液(好ましくは水)に対する溶解度は、好ましくは0.1%(wt)以下であり、より好ましくは0.01%(wt)以下である。疎水性ポリマーとしては、例えば、1価の炭化水素基で置換されたサッカリドをモノマー単位として含むポリマー、および置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーが挙げられる。
好ましくは、疎水性ポリマーは、材料の入手し易さ等の観点から、アルキルで置換されたサッカリドをモノマー単位として含むポリマー、またはアルキレン系ポリマーである。アルキルは、上記1価の炭化水素基の例であるアルキルと同様であり、好ましい範囲も同様である。疎水性ポリマーの具体例としては、それが有する具体的な置換基等の種類にもよるが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、疎水化セルロース、およびそれらのエステル誘導体、ならびにそれらの塩;ならびに、ビニル(エチレン)系ポリマー、プロピレン系ポリマー、およびブチレン系ポリマー、ならびにそれらのコポリマーが挙げられる。
有効成分は、粒子内部に含まれる。本発明の粒子を溶液で複数回洗浄した後であっても、有効成分が本発明の粒子に含まれることが確認されている。本発明の粒子に含まれる有効成分は、ポリマーと共有結合しておらず、ポリマーから遊離している成分である。有効成分としては、例えば、低分子化合物、多糖類、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド(例、酵素、リガンド、抗体、細胞外基質タンパク質)、ポリサッカライド、ポリヌクレオチド(例、DNA、RNA、人工核酸)、オリゴヌクレオチド(例、オリゴDNA、オリゴRNA、オリゴ核酸)が挙げられる。用語「低分子化合物」とは、分子量1500以下の化合物をいう。低分子化合物は、天然化合物または合成化合物である。低分子化合物の分子量は、1200以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、600以下、500以下、400以下、または300以下であってもよい。低分子化合物の分子量はまた、30以上、40以上、または50以上であってもよい。低分子化合物としては、例えば、アミノ酸、ビタミン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、単糖、オピオイド、脂質、脂肪酸、およびそれらの代謝物、ならびにそれらの塩(例、上述したような金属塩、酸付加塩、または塩基との塩。以下同様)が挙げられる。有効成分はまた、医薬成分(例、治療剤、予防剤)、医薬部外品用成分(例、美白成分、抗シワ成分、肌荒れ改善成分、育毛成分)、化粧用成分(例、グリセリン等のアルコール、オイル、エキス)、食品用成分(例、栄養成分)、診断用成分(例、造影剤)、ヘアケア用成分(例、着色剤)、マニュキア用成分であってもよい。本発明の粒子に含まれる有効成分は、1種であってもよいが、2種以上の混合物であってもよい。有効成分は、ポリマー粒子内において、溶液(水溶液、または有機溶媒)中に分散して存在することができる。本発明の粒子はまた、有効成分に加えて、添加剤(例、メチルバラベン等の保存剤、抗酸化剤)等の他の成分を含んでいてもよい。
有効成分は、水溶性成分であっても疎水性成分であってもよい。有効成分としての水溶性成分は、後述する粒子の製造方法において用いられる有機溶媒よりも水溶液(好ましくは水)に溶解し易い成分である。有効成分としての疎水性成分は、後述する粒子の製造方法において用いられる水溶液(好ましくは水)よりも有機溶媒に溶解し易い成分である。
好ましい実施形態では、有効成分は、アミノ酸、またはその塩である。アミノ酸としては、例えば、α−アミノ酸(例、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン、グリシン)、β−アミノ酸(例、β−アラニン、パントテン酸)、γ−アミノ酸(例、γ−アミノ酪酸)、δ−アミノ酸、ε−アミノ酸(例、トラネキサム酸)が挙げられる。アミノ酸は、L体であってもD体であってもよい。
別の好ましい実施形態では、有効成分は、オリゴペプチド、またはその塩である。オリゴペプチドとしては、例えば、ジペプチド(例、グルタミルリジン、γ−グルタミルシステイン)、トリペプチド(例、グルタミルバリルグリシン、グルタチオン)、テトラペプチド(例、キャピキシル)、ペンタペプチド(例、ロイファシル)が挙げられる。オリゴペプチドを構成するアミノ酸は、L体であってもD体であってもよい。
さらに別の好ましい実施形態では、有効成分は、水溶性ビタミンもしくは脂溶性ビタミン、またはその塩である。水溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンB、ビタミンC、およびそれらの誘導体が挙げられる。ビタミンBとしては、例えば、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(例、ナイアシン、ニコチンアミド)、ビタミンB5(例、パントテン酸、デクスパンテノール、パンテチン)、ビタミンB6(例、ピリドキシン、ピリドキサールリン酸、ピリドキサミン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(例、葉酸、ジヒドロ葉酸、フォリン酸)、ビタミンB12(例、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、コバマミド)が挙げられる。ビタミンB誘導体としては、例えば、チアミンジスルフィド、ベンフォチアミン、フルスルチアミンが挙げられる。ビタミンCとしては、例えば、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸が挙げられる。ビタミンC誘導体としては、例えば、アスコルビン酸 2−グルコシド(AA−2G)、アスコルビン酸ホスフェート、アスコルビルエチル、リン酸アスコピルマグネシウム、リン酸アスコピル酸3Na、テトライソパルミチン酸アスコビル(VC−IP)が挙げられる。脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンA、およびそれらの誘導体が挙げられる。
別の好ましい実施形態では、他の有効成分としては、例えば、美白成分(例、システイン、ビタミンC、ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、アルブチン、セラミド、コウジ酸、エラグ酸)、抗シワ成分(例、セラミド)、保湿成分(例、ピロリドンカルボン酸、3−アセチル−2−エトキシカルボニル−2−メチルー1,3−チアゾリジン−4−カルボン酸Na)、育毛成分(例、ミノキシジル)、代謝改善成分(例、ジヒドロキシカプシエイト)、およびそれらの塩が挙げられる。
本発明の粒子の重量(本発明の粒子を構成するポリマーおよび有効成分の総重量)に対する有効成分の重量の割合は、本発明の粒子を構成するポリマーおよび有効成分の種類、ならびに粒子の作製方法の条件等によって変動することから、特に限定されるものではないが、例えば、0.01〜80%である。本発明の粒子の重量に対する有効成分の重量の割合は、好ましくは0.05〜40%、より好ましくは0.1〜15%、さらにより好ましくは0.2〜14%、特に好ましくは0.5〜12%または1.0〜10%である。あるいは、本発明の粒子の内部における有効成分の濃度は、例えば0.01〜50%(wt)、好ましくは0.02〜40%(wt)、より好ましくは0.05〜30%(wt)、さらにより好ましくは0.1〜20%(wt)であってもよい。
有効成分の重量の測定は、当該分野で公知の任意の方法により行うことができる。このような方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分光光度計(例、UV−VIS分光光度計)を用いた方法が挙げられる。また、有効成分の濃度は、本発明の粒子の製造において用いられる、有効成分を含む水溶液、または有効成分および第2ポリマーの双方を含む水溶液中の有効成分の濃度から評価することもできる。
本発明の粒子はまた、界面活性剤(例、ソルビタンモノオレート)、残留有機溶媒(例、ヘキサン等の炭化水素化合物)等の所定の成分(例、先行技術において粒子の製造に必要とされる成分)を実質的に含まないものであってもよい。本発明の粒子は、その製造方法においてこれらの成分を本質的に使用する必要がないため、これらの成分の混入を回避することができる。本発明の粒子において、表現「実質的に含まない」とは、本発明の粒子が所定の成分を完全に含まないこと、または本発明の粒子が所定の成分を含む場合であっても3.0%(wt)以下の量で含むことを意味する。好ましくは、表現「実質的に含まない」は、「完全に含まない」ことを意味する。表現「実質的に含まない」に関して、本発明の粒子は、所定の成分を含む場合、好ましくは、2.0%(wt)以下、より好ましくは、1.5%(wt)以下、さらにより好ましくは、1.0%(wt)以下、特に好ましくは0.5%(wt)以下、0.4%(wt)以下、0.3%(wt)以下、0.2%(wt)または0.1%(wt)以下の量で含む。より具体的には、本発明の粒子は、界面活性剤および残留有機溶媒の一方を実質的に含まないことが好ましく、界面活性剤および残留有機溶媒の双方を実質的に含まないことがより好ましい。
本発明の粒子はまた、後述するように、アセトン、アルコール(例、メタノール)、またはアセトンを多く含んでいてもよいアセトン・アルコール混液を、好ましい有機溶媒として用いることにより製造することができる。したがって、本発明の粒子は、アセトン、アルコール、またはアセトン・アルコール混液以外の有機溶媒を実質的に含まないものであってもよい。本発明の粒子の製造方法によれば、このような粒子を製造することができるが、従来の粒子の製造方法では、通常、このような粒子を製造することができない。
本発明の粒子は、有効成分に加えて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、有効成分の安定化剤(例、抗酸化剤)、界面活性剤、分散剤、消泡剤が挙げられる。
本発明の粒子は、1〜1000nmの体積分布平均粒子径を有する。体積分布平均粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらにより好ましくは20nm以上、または50nm以上である。体積分布平均粒子径はまた、好ましくは900nm以下、より好ましくは800nm以下である。
体積分布平均粒子径の測定は、レーザー回折法により粒度分布を計測することにより行うことができる。好ましくは、レーザー回折法による粒度分布の計測は、レーザー回折式粒度分布計(Malvern Instruments Ltd.製、ZetasizerNanoS)を用いて行うことができる。
本発明の粒子はまた、粒子膜上の水の接触角が20〜70度である性質を有していてもよい。粒子膜上の水の接触角が20度以上であれば、適度な親水性を有し、角層における細胞間脂質への有効成分の分配が向上するため、好ましい。また、粒子膜上の水の接触角が70度以下であれば、適度な疎水性を有し、角層における細胞間脂質へのなじみが良くなるため、好ましい。上記接触角は、好ましくは25度以上、より好ましくは30度以上、さらにより好ましくは35度以上、特に好ましくは40度以上であってもよい。上記接触角はまた、好ましくは65度以下、より好ましくは60度以下、さらにより好ましくは55度以下、特に好ましくは50度以下であってもよい。上記比率の算出の際、接触角として、内角が測定される。
粒子膜上の水の接触角の測定は、以下のとおり行うことができる。先ず、本発明の粒子の膜(粒子膜)を得る。例えば、本発明の粒子を含む溶液をポリスチレン基板上に滴下し、適温(例、室温(27℃等))にて自然乾燥させて、ポリスチレン基板を完全に覆う本発明の粒子の膜(粒子膜)を得る。次に、このようにして得られた粒子膜に20μLの水滴を滴下した後、側面から画像を撮影する。その画像から接触角の値を計測する。
本発明の粒子は、ポリスチレン基板上の水の接触角に対する、粒子膜上の水の接触角の比率が、0.2〜0.9の範囲内である性質を有していてもよい。当該比率が0.2以上であれば、ポリスチレン基板表面に対する適度な親水性を有するということができる。この場合、水を含む処方中への配合において分離し難くなると考えられる。したがって、当該比率が0.2以上であることが好ましい。また、当該比率が0.9以下であれば、適度な疎水性を有するということができる。この場合、油を含む処方中への配合において分離し難くなると考えられる。したがって、当該比率が0.9以下であることが好ましい。上記比率は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、さらにより好ましくは0.5以上であってもよい。上記比率はまた、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、さらにより好ましくは0.6以下であってもよい。上記比率の算出の際、接触角として、内角が測定される。
粒子膜上の水の接触角の測定は、上記と同様にして行うことができる。
ポリスチレン基板上の水の接触角の測定は、以下のとおり行うことができる。ポリスチレン基板上に20μLの水滴を滴下した後、粒子膜上の水の接触角の測定と同じ上記方法により、接触角の値を計測する。
粒子膜上の水の接触角の値をポリスチレン基板上の水の接触角の値で除算することにより、ポリスチレン基板上の水の接触角に対する、粒子膜上の水の接触角の比率を算出することができる。
本発明の粒子はまた、電気泳動による移動度の絶対値が2μmcm/Vs以上である性質を有していてもよい。当該絶対値が0.22μmcm/Vs以上であれば、粒子は完全なゲル状表面を有するのではなく、有効成分を粒子内部に保持できるため、好ましい。したがって、本発明の粒子は、表面がゲル状ではなく境界をしっかりともった性質を有する。上記移動度の絶対値は、好ましくは2.5μmcm/Vs以上、より好ましくは3.0μmcm/Vs以上、さらにより好ましくは3.5μmcm/Vs以上であってもよい。上記移動度の絶対値はまた、好ましくは6.0μmcm/Vs以下であってもよい。当該絶対値が6.0μmcm/Vs以下であれば、粒子は硬質で媒体を通さない表面特性(例、ポリスチレン粒子の表面特性)を有するのではなく、皮膚表面等の生体組織と接触した際に適切なタイミングで媒体とともに有効成分を放出できるような表面特性を有することから、好ましい。当該絶対値は、より好ましくは5.5μmcm/Vs以下、さらにより好ましくは5.0μmcm/Vs以下であってもよい。
電気泳動による本発明の粒子の電気泳動による移動度の測定は、1mM NaCl水溶液中の本発明の粒子を、ZetasizerNanoS(Malvern Instruments Ltd.製)を用いて、その移動度を解析することにより行うことができる。
ポリマー粒子はまた、複合粒子であっても非複合粒子であってもよい。用語「複合粒子」とは、2以上の異種粒子が結合(例、吸着、付着)することにより形成される粒子凝集物をいう。このような複合粒子は、所定の方法(例、造粒法、粒子複合化法)により2以上の異種粒子から製造することができる。一方、非複合粒子は、このような複合粒子ではなく、2以上の異種粒子が結合することにより形成されるものではない。ポリマー粒子は、複合粒子または非複合粒子のいずれの形態においても好適に使用することができるが、ナノ粒子として十分に小さいサイズ(例、500nm以下)に自由に設計できることを利点の一つとし、また、非複合粒子の形態であっても所望の特性を十分に発揮できることから、好ましくは、非複合粒子の形態で用いることができる。
本発明の粒子はまた、硬質または軟質の表面を有していてもよい。本発明の粒子はまた、真球状、楕円状、ゴルフボール状、ヤヌス粒子状等の形状を有していてもよいが、好ましくは真球状の形状を有する。本発明の粒子のこれらの性質は、走査型電子顕微鏡で外観を観察することにより確認することができる。
本発明の粒子はまた、高い液状安定性を有する。例えば、本発明の粒子は、冷蔵(例、4℃)にて6月以上、12月以上、または18月以上保存した後も、凝集することなく粒子状態を維持することができる。
本発明の粒子は、粉末化することが可能である。粉末化する方法としては、例えば、凍結乾燥、スプレードライ、流動層造粒、攪拌造粒、超臨界造粒、自然乾燥が挙げられる。本発明の粒子はまた、粉末化後に溶媒(例えば、後述する溶媒、好ましくは、水等の水溶液)に分散可能であるという性質を有する。
本発明の粒子は、液状形態、または粉末化形態において提供することができる。本発明の粒子が液状形態で提供される場合、本発明の粒子は、本発明の粒子を含む溶液として提供される。
溶液としては、例えば、水溶液、および有機溶媒が挙げられる。
水溶液としては、例えば、水(例、蒸留水、滅菌蒸留水、精製水、生理食塩水)、および緩衝液が挙げられる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris‐塩酸緩衝液、TE(Tris−EDTA)緩衝液、炭酸‐重炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、塩酸‐塩化カリウム緩衝液、グリシン‐塩酸緩衝液、グリシン‐水酸化ナトリウム緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸‐リン酸緩衝液、酢酸緩衝液が挙げられる。
有機溶媒は、後述するものと同様であり、好ましい範囲も同様である。
好ましくは、溶液は水溶液であり、水がより好ましい。
本発明はまた、本発明の粒子を含む、有効成分の生体組織透過剤を提供する。本発明の剤は、例えば、医薬(例、治療剤、予防剤)、医薬部外品(例、美白剤、抗シワ剤、肌荒れ改善剤、育毛剤)、化粧品、食品(例、栄養剤)、診断剤(例、造影剤)、ヘアケア用品、マニュキア用品として有用である。本発明の剤により有効成分が透過できる生体組織としては、例えば、皮膚組織(例、角層)、口腔内、消化器官、眼内、耳鼻腔内が挙げられる。本発明の剤は、非経口投与用の剤(例、外用剤)、または経口投与用の剤のいずれとしても用いることができる。本発明の剤は、通常の方法によって、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、チュアブル剤等の固形剤、リニメント剤、軟膏剤等の半固形剤、溶液剤、シロップ剤、化粧水、乳液、クリーム等の液剤、または、注射剤、スプレー剤などに製剤化することができる。
本発明の剤はまた、ポリマー粒子として、同種のポリマー粒子のみを含むものであっても、または異種のポリマー粒子を含むものであってもよい。用語「同種のポリマー粒子」とは、粒径および構成成分が同様であるポリマー粒子をいう。同じ条件(例、成分の種類および量、ならびに処理様式が同様である条件)下で製造されるポリマー粒子は、同種のポリマー粒子であると考えることができる。一方、用語「異種のポリマー粒子」とは、粒径および構成成分の一方または双方が異なるポリマー粒子をいう。異なる条件(例、成分の種類および量、ならびに処理条件のいずれかが異なる条件)下で製造されるポリマー粒子は、異種のポリマー粒子であると考えることができる。本発明の剤は、ポリマー粒子として、同種のポリマー粒子のみを含むものであっても、所望の特性を十分に発揮できることから、粒子の調製/入手の負担の軽減等の観点から、好ましくは、同種のポリマー粒子のみを含んでいてもよい。したがって、本発明の剤は、好ましくは、平均粒子径1μmを超えるポリマー粒子を含まないものであってもよい。
本発明の剤は、動物(好ましくは、ヒト等の哺乳動物)に適用することができる。適用量は、対象動物の種類、年齢、体重、病態、投与方法などによっても異なるが、本発明の粒子に含まれる有効成分の種類に応じて、適切に設定することができる。
本発明の剤はまた、本発明の粒子に対して、必要に応じて、適宜の薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤、溶剤、懸濁化剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤などを配合して製剤化されてもよい。
賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール等の糖類、結晶セルロース等のセルロース類などの有機系賦形剤、炭酸カルシウム、カオリン等の無機系賦形剤などの成分を使用することができる。溶剤としては、精製水、生理的食塩水などの水溶液を使用することができる。懸濁化剤または乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、アラビアゴム、ゼラチン、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの成分を使用することができる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン、尿素などの成分を使用することができる。安定化剤としては、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸ナトリウム、その他のアミノ酸類などの成分を使用することができる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などの成分を使用することができる。抗酸化剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸などの成分を使用することができる。着色剤としては、医薬、化粧および食品分野において通常に使用される着色成分を使用することができる。
本発明はまた、本発明の粒子の製造方法を提供する。本発明の方法は、(i)セルロース誘導体を含む有機溶媒と(ii)水溶液とを、有機溶媒および水溶液の混合液としてW/O型分散液が形成されるように混合して、粒子を析出させることを含む。有効成分は、有機溶媒または水溶液のいずれに含まれていてもよく、その両方に含まれていてもよいが、好ましくは、水溶液に含まれる。
(i)において、有機溶媒に含まれるセルロース誘導体は、有機溶媒に溶解できるセルロース誘導体である限り特に限定されないが、上述したような疎水性ポリマーが好ましい。有機溶媒中のセルロース誘導体の量は、有機溶媒中にセルロース誘導体が溶解できる量である限り特に限定されないが、例えば、0.05〜30%(wt)、好ましくは、0.1〜15%(wt)、より好ましくは、0.2〜10%(wt)、さらにより好ましくは、0.3〜7%(wt)である。
(ii)において、有効成分および水溶液は、上述したものと同様である。有機溶媒または水溶液中の有効成分の量は、有機溶媒または水溶液中に有効成分が溶解でき、かつ本発明の粒子の使用目的(例、医薬)の有効成分量を達成できる量である限り特に限定されないが、例えば0.01〜50%(wt)、好ましくは0.02〜40%(wt)、より好ましくは0.05〜30%(wt)、さらにより好ましくは0.1〜20%(wt)である。有効成分としては、上述したような水溶性成分および疎水性成分のいずれも使用することができる。
セルロース誘導体を含む有機溶媒は、水溶液(好ましくは、有効成分を含む水溶液)と混合したときにW/O(ウォーター・イン・オイル)型分散液が形成されるように、水溶液(好ましくは、有効成分を含む水溶液)が有機溶媒に溶解させたセルロース誘導体によって相分離できるものが用いられる。このような有機溶媒としては、例えば、ケトン溶媒(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン)、エーテル溶媒(例、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン)、アルコール溶媒(例、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、非プロトン性極性溶媒(例、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA))、カルボン酸溶媒(例、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸)、エステル溶媒(例、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン)、非芳香族炭化水素系溶媒(例、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン)、芳香族炭化水素系溶媒(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、ならびにこれらの混合液が挙げられる。
好ましくは、有機溶媒は、本発明の粒子を効率良く作製する等の観点から、水溶液(好ましくは水)と混和可能な有機溶媒である。水溶液と混和可能な有機溶媒としては、例えば、ケトン溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、非プロトン性極性溶媒、カルボン酸溶媒、エステル溶媒が挙げられる。水溶液と混和するが水と共沸しない有機溶媒の使用の観点から、好ましい有機溶媒は、アセトン、アルコール(例、メタノール)、またはアセトンを多く含んでいてもよいアセトン・アルコール混液である。
混合の際の温度は、有機溶媒および水溶液が液体状態にある温度である限り特に限定されないが、例えば、5〜50℃、好ましくは15〜40℃である。混合の時間は、例えば、本発明の粒子が形成される限り特に限定されないが、例えば、5〜60分、好ましくは、15〜30分である。
一実施形態では、W/O型分散液が形成されるようにする上記混合は、例えば、(I)(i)セルロース誘導体を含む有機溶媒を、(ii)水溶液に徐々に添加することにより、行うことができる。有効成分は、有機溶媒または水溶液のいずれに含まれていてもよく、その両方に含まれていてもよいが、好ましくは、水溶液に含まれる。この場合、セルロース誘導体を含む有機溶媒の添加量の増加により、O/W型分散液からW/O型分散液へと溶液の状態を変化させることができる。この場合、本発明の粒子が形成されることが確認されている(実施例1〜19を参照)。O/W型分散液からW/O型分散液へと溶液の状態の変化を引き起こすことにより、本発明の粒子の生成量を増やすことができる。
別の実施形態では、W/O型分散液が形成されるようにする上記混合は、例えば、(II)(ii)水溶液を、(i)セルロース誘導体を含む有機溶媒に徐々に添加することにより、行うことができる。有効成分は、有機溶媒または水溶液のいずれに含まれていてもよく、その両方に含まれていてもよいが、好ましくは、水溶液に含まれる。この場合、(ii)有効成分を含む水溶液の添加量を、(i)セルロース誘導体を含む有機溶媒の量に比し低く抑えることにより、W/O型分散液からO/W型分散液へと溶液の状態が変化しないように(換言すれば、W/O型分散液の状態が維持されるように)、設定することができる。この場合、本発明の粒子が形成されることが確認されている(実施例20を参照)。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、(i’)第1ポリマーを含む有機溶媒と(ii’)有効成分および第2ポリマーの双方を含む水溶液とを、有機溶媒および水溶液の混合液としてW/O型分散液が形成されるように混合して、本発明の粒子を析出させることを含む。本発明の粒子の製造方法において、有機溶媒中の第1ポリマー、および水溶液中の第2ポリマーを併用することにより、製造される本発明の粒子が、水溶性ゲルと硬質の両面の性質を持たせることができるという利点がある。
(i’)において、第1ポリマー、有機溶媒、および有機溶媒中の第1ポリマーの量の定義、例および好ましい例は、(i)で述べたセルロース誘導体、有機溶媒、および有機溶媒中のセルロース誘導体の量と同様である。
(ii’)において、有効成分、水溶液、および水溶液中の有効成分の量の定義、例および好ましい例は、(ii)で述べたものと同様である。
(ii’)において、水溶液に含まれる第2ポリマーは、水溶液に溶解できるポリマーである限り特に限定されないが、上述したような親水性ポリマーが好ましい。水溶液中のポリマーの量は、水溶液中にポリマーが溶解できる量である限り特に限定されないが、例えば、0.001〜15%(wt)、好ましくは、0.003〜10%(wt)、より好ましくは、0.005〜7%(wt)、さらにより好ましくは、0.01〜5%(wt)である。
好ましい特定の実施形態では、W/O型分散液が形成されるようにする上記混合は、例えば、(I’)(i’)第1ポリマーを含む有機溶媒を、(ii’)有効成分および第2ポリマーの双方を含む水溶液に徐々に添加することにより、行うことができる。この場合、セルロース誘導体を含む有機溶媒の添加量の増加により、O/W型分散液からW/O型分散液へと溶液の状態を変化させることができる。この場合、本発明の粒子が形成されることが確認されている(実施例1〜19を参照)。O/W型分散液からW/O型分散液へと溶液の状態の変化を引き起こすことにより、本発明の粒子の生成量を増やすことができる。
別の実施形態では、W/O型分散液が形成されるようにする上記混合は、例えば、(II’)(ii’)有効成分および第2ポリマーの双方を含む水溶液を、(i’)第1ポリマーを含む有機溶媒に徐々に添加することにより、行うことができる。この場合、(ii’)有効成分および第2ポリマーの双方を含む水溶液の添加量を、(i’)第1ポリマーを含む有機溶媒の量に比し低く抑えることにより、W/O型分散液からO/W型分散液へと溶液の状態が変化しないように(換言すれば、W/O型分散液の状態が維持されるように)、設定することができる。この場合、本発明の粒子が形成されることが確認されている(実施例20を参照)。
添加は、好ましくは、滴下により行うことができる。添加の間、溶液は撹拌条件下に置くことができる。撹拌条件は、溶液の量に応じて適宜設定することができる。例えば、最終液量が約45mLのスケールでは、200〜800rpm(好ましくは400rpm)、最終液量が約1Lのスケールでは、80〜230rpmである。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 粒子1の調製
先ず、下記3種の溶液を調製した。
(1)ポリマー液1
ポリマー液1は、エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD7FP。重量平均分子量:55,025)0.4gをアセトン30mLに溶解させることにより調製した。
(2)ポリマー液2
ポリマー液2は、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、SL。重量平均分子量:100,000)0.1gを水15mLに溶解させることにより調製した。
(3)有効成分含有液
有効成分含有液は、トラネキサム酸(丸善製薬(株)製)0.1gを水1.5mLに溶解させることにより調製した。
次に、40℃、400rpmで攪拌されているポリマー液2に、有効成分含有液を滴下して均一な液体を得た。この均一な液体にポリマー液1を徐々に滴下した。ポリマー液1の適下の間、均一な液体を400rpmで撹拌した。ポリマー液1の滴下により液体が白濁し、滴下量の増加に応じてO/W型分散液からW/O型分散液へと懸濁液の状態が変化した。その結果、ポリマー液1の滴下により、トラネキサム酸、ヒドロキシプロピルセルロース、およびエチルセルロースを含む粒子が自ずと速やかに析出し、このような粒子を含む懸濁液(W/O型分散液)が得られた。この懸濁液を攪拌しつつ減圧吸引してアセトンを除去し、水に分散した粒子液を得た。その後、粒度分布をレーザー回折式粒度分布計(Malvern Instruments Ltd.製、ZetasizerNanoS)で評価した(下記の表1を参照)。
また、得られた粒子を走査型電子顕微鏡で撮影した。走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
[実施例2] 粒子2の調製
実施例1のトラネキサム酸量を2.0gに変えて、かつトラネキサム酸を有効成分含有液に溶解した溶液を調製せずに、トラネキサム酸をポリマー液2に直接溶解させ、ポリマー液1とポリマー液2を用いた以外は実施例1と同様に粒子液を調製し、粒度分布を測定した(下記の表1を参照)。
[実施例3] 粒子3の調製
先ず、下記3種の溶液を調製した。
(1)ポリマー液1
ポリマー液1は、エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD7FP。重量平均分子量:55,025)8gをアセトン600mLに溶解させることにより調製した。
(2)ポリマー液2
ポリマー液2は、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製、SL。重量平均分子量:100,000)2gを水300mLに溶解させることにより調製した。
(3)有効成分含有液
有効成分含有液は、トラネキサム酸(丸善製薬(株)製)2gを水30mLに溶解させることにより調製した。
次に、40℃、230rpmで攪拌されているポリマー液2に、有効成分含有液を滴下して均一な液体を得た。この均一な液体にポリマー液1を徐々に滴下した。ポリマー液1の適下の間、均一な液体を400rpmで撹拌した。ポリマー液1の滴下により液体が白濁し、滴下量の増加に応じてO/W型分散液からW/O型分散液へと懸濁液の状態が変化した。その結果、ポリマー液1の滴下により、トラネキサム酸、ヒドロキシプロピルセルロース、およびエチルセルロースを含む粒子が自ずと速やかに析出し、このような粒子を含む懸濁液(W/O型分散液)が得られた。この懸濁液を攪拌しつつ減圧吸引してアセトンを除去し、水に分散した粒子液を得た。その後、粒度分布をレーザー回折式粒度分布計(Malvern Instruments Ltd.製、ZetasizerNanoS)で評価した(下記の表1を参照)。
[実施例4] 粒子4の調製
実施例1のエチルセルロースをヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業(株)、AS−MG。重量平均分子量:18,000)に、ポリマー液1のアセトンをメタノールに変えた以外は実施例1と同様に粒子液を調製し、粒度分布を測定した(下記の表1を参照)。
[実施例5] 粒子5の調製
実施例1のエチルセルロースをヒプロメロースフタル酸エステル(信越化学工業(株)、HP−55。重量平均分子量:84,000)に変えた以外は実施例1と同様に粒子液を調製し、粒度分布を測定した(下記の表1を参照)。なお、用いたヒプロメロースフタル酸エステル(HP−55)は、pH溶解性≧5.5、表示粘度40mPa・s〔20℃におけるメタノール/ジクロルメタン溶液(1:1)の10%溶液粘度(日本薬局方)〕の特性を有する。
[実施例6] 粒子6の調製
実施例1のエチルセルロースをメタクリル酸コポリマーS(エボニック社製、S−100。重量平均分子量:125,000)に変えた以外は実施例1と同様に粒子液を調製し、粒度分布を測定した(下記の表1を参照)。
[比較例1] 比較用粒子1の調製
実施例1の(3)有効成分含有液(トラネキサム酸0.1gを水1.5mLに溶解させたもの)を水1.5mLに変えた以外は実施例1と同様に粒子液を調製し、粒度分布を測定した(下記の表1を参照)。
(実施例1〜6、および比較例1の結果のまとめ)
実施例1〜6、および比較例1において測定された粒度分布の結果を表1に示す。
[実施例7] 粒子7の調製
実施例1のトラネキサム酸0.1gを食用赤色3号(保土谷化学工業製)0.01gに変更した以外は実施例1と同様にして、実験を行った。その結果、粒子の形成が確認された。
[実施例8〜11] 粒子8〜11の調製
実施例3のトラネキサム酸を、L−アルギニン(味の素製)、L−ヒスチジン(味の素製)、グルタミルリジン(味の素製)、およびD−アラニン(東京化成工業製)からなる群より選ばれるいずれか一つの物質に変更した以外は実施例3と同様にして、実験を行った。その結果、いずれの物質を用いた場合も、粒子の形成が確認された。
[実施例12、13] 粒子12、13の調製
実施例3のトラネキサム酸を、L−バリン(味の素製)、L−グルタミン酸ナトリウム(味の素製)のいずれかの物質に、アセトンをメタノールに変更した以外は実施例3と同様にして、実験を行った。その結果、いずれの物質を用いた場合も、粒子の形成が確認された。
[実施例14] 粒子14の調製
実施例3のトラネキサム酸2gをピロリドンカルボン酸(PCA)ナトリウム塩50%(wt)水溶液(味の素製、NL−50)4gに変更した以外は実施例3と同様にして、実験を行った。その結果、粒子の形成が確認された。
[実施例15] ヒドロキシプロピルセルロースのグレードの検討
実施例7のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)のグレードを下記表2に示すとおりに変更した以外は、実施例7と同様にして、実験を行った。その結果、粒子の形成が確認された(表2)。
[実施例16] エチルセルロースのグレードの検討
実施例7のエチルセルロース(EC)のグレードを下記表3に示すとおりに変更した以外は、実施例7と同様にして、実験を行った。その結果、粒子の形成が確認された(表3)。
[実施例17] ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルのグレードの検討
実施例4のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(信越化学工業(株)、AS−MG)のグレードを下記表4に示すとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして、実験を行った。その結果、粒子の形成が確認された。
[実施例18] メタクリル酸コポリマーのグレードの検討
実施例6のメタクリル酸コポリマーS(エボニック社製、S−100)をメタクリル酸コポリマーL(エボニック社製、L100。重量平均分子量:125,000)に変更した以外は、実施例6と同様にして、実験を行った。その結果、メタクリル酸コポリマーL(L100)では平均粒子径747nmの粒子の形成が確認された。
[実施例19] 1種のポリマーを用いた粒子の調製の検討
(1)疎水性ポリマーを含まない有機溶媒の使用
実施例1のトラネキサム酸0.1gを食用赤色3号(保土谷化学工業製)0.01gにし、エチルセルロースを使用しなかった他は、実施例1と同様にして、実験を行った。その結果、粒子の形成は確認されなかった。
以上より、疎水性ポリマーを含まない有機溶媒(ポリマー液1の代わりの非ポリマー液)、および親水性ポリマーを含む水溶液(ポリマー液2)を用いた場合には、粒子が形成されないことが確認された。
(2)親水性ポリマーを含まない水溶液の使用
実施例1のトラネキサム酸0.1gを食用赤色3号(保土谷化学工業製)0.01gにし、ヒドロキシプロピルセルロースを使用しなかった他は、実施例1同様にして、実験を行った。その結果、粒子の形成が確認された(動的光散乱測定結果:平均粒子径217nm)。
以上より、疎水性ポリマーを含む有機溶媒(ポリマー液1)、および親水性ポリマーを含まない水溶液(ポリマー液2の代わりの非ポリマー液)を用いた場合には、粒子が形成されることが確認された。
[実施例20] O/W型分散液からW/O型分散液への状態の変化を伴わない、粒子の調製
実施例1のトラネキサム酸0.1gを食用赤色3号(保土谷化学工業製)0.01gに、ポリマー液2および有効成分含有液の混合液をポリマー液1に滴下することに変更した以外は実施例1と同様にして、実験を行った。本実験条件では、多量の有機溶媒に少量の水溶液を添加しているので、実施例1で確認された、O/W型分散液からW/O型分散液への状態の変化を伴わない。その結果、上記状態の変化を伴わずとも、粒子の形成が確認された。
[実施例21、22、23] 粒子15、16、17の調製
実施例1のトラネキサム酸に代えて、4−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン、純正化学製)、ミノキシジル(東京化成製)、またはジヒドロキシカプシエイト(味の素製)のいずれかの有効成分を、有効成分含有液の調製をせずにポリマー液1に溶解した以外は、実施例1と同様にして、実験を行った。その結果、いずれの物質を用いた場合も、粒子の形成が確認された。また、有効成分を水溶液ではなく有機溶媒(ポリマー液1)に溶解させることにより、有効成分を含有する粒子が得られることが確認された。
[試験例1] 表皮モデル透過性評価1
先ず、実施例3で調製した粒子液を遠心分離機(日立工機(株)製、CF−15RN)で15分間遠心加速度21500×gで遠心分離後、取り除いた上澄みと同量の水を加えて再分散させる洗浄操作を実施し、精製粒子液を得た。この精製粒子液の一部について、再度遠心分離にて洗浄液と粒子を分離し、粒子部分からメタノールを含む高速クロマトグラフの移動相等でトラネキサム酸を抽出した液を分析して、粒子中のトラネキサム酸量をあらかじめ求めた。その結果、粒子の重量に対するトラネキサム酸量は、6%(wt)であった。
次に、ヒト正常表皮細胞を重層培養したヒト3次元培養表皮モデルを用いて、透過性を評価した。3次元培養表皮モデル((株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製、エピ・モデル12)をセットしたジャケット付静置型フランツセル(パーメギア社製)のドナー側に、トラネキサム酸量として0.2mg含むように精製粒子液を載せ、24時間後のレシーバー側のトラネキサム酸濃度を高速クロマトグラフ(日本ウォーターズ(株)製、H−CLASS)で測定し、透過量を求めた(下記の表5を参照)。
[試験例2] 表皮モデル透過性評価2
試験例1の遠心精製に用いた粒子液を実施例4で調製した粒子液に変えた以外は試験例1と同様に表皮モデル透過性を評価した(下記の表5を参照)。
[比較試験例1] 表皮モデル透過性評価3
試験例1の精製粒子液を4mg/mLトラネキサム酸水溶液に変えた以外は試験例1と同様に表皮モデル透過性を評価した(下記の表5を参照)。
[比較試験例2] 表皮モデル透過性評価4
試験例1の遠心精製に用いた粒子液を比較例1で調製した粒子液に変え、トラネキサム酸量として0.2mgを後から添加した以外は試験例1と同様に表皮モデル透過性を評価した(下記の表5を参照)。
(試験例1、2、および比較試験例1、2の結果のまとめ)
試験例1、2、および比較試験例1、2において24時間後の透過量の結果を表5に示す。
[試験例3] 粒子の性状の確認
実施例3で得られた粒子液を自然乾燥させて走査型電子顕微鏡で観察した外観より、実施例3で得られた粒子の表面が硬質であり、また、当該粒子が真球状であることが確認された(図2)。
また、実施例3で得られた粒子液50μLをポリスチレン基板上に滴下し、24時間室温(25℃)にて自然乾燥させて調製された、ポリスチレン基板上に形成された粒子膜に、20μLの水滴を滴下して側面から画像を撮影した。その画像から画像処理ソフトウエアimage Jを用いて接触角を計測したところ、上記粒子膜上の水の接触角(内角)は43.9度であった。一方、ポリスチレン基板に20μLの水滴を滴下して同様に接触角を計測したところ、ポリスチレン基板上の水の接触角(内角)は78.4度であった。上記粒子膜上の水の接触角は、ポリスチレン基板上の水の接触角に比べて小さい値を示したことから、実施例3で得られた粒子の表面は親水性的な性質を有することが確認された。
さらに、実施例3で調製した調製した粒子を、1mM NaCl水溶液中の電気泳動移動度の測定(Malvern Instruments Ltd.製、ZetasizerNanoS)に付した。その結果、電気泳動による移動度は、−4.1±0.12μmcm/Vsであった。0μmcm/Vsからの絶対値が大きいことから、粒子は親水性ゲル粒子ではないことが確認された。
以上の結果より、実施例3で調製した粒子は、表面がポリスチレン粒子のような硬質さと、ポリアクリルアミドやポリN,Nイソプロピルアクリルアミド粒子のような軟質のゲル様の両方の性質を有することが確認された。また、一旦形成された粒子を、油、有機溶媒または水に分散させても瞬時に溶解して壊れることが無いことも確認された。
[試験例4] 粒子の保存性および凝集性の評価
(1)非凍結条件下での保存性の評価
実施例1〜20で調製した粒子液は、冷蔵(4℃)にて1.5年保存後も凝集することなく粒子状態を維持していた。よって、本発明の粒子は、保存性に優れることが確認された。
(2)凍結乾燥後の粒子分散能の評価
実施例3で調製した粒子液を攪拌減圧吸引によって、水を10分の1に減らし、凍結乾燥して粉体を得た。この粉体を再度固形分濃度3%(wt)になるように水に分散させたところ元通りの粒子液になることを確認した。
(3)スプレードライ後の粒子分散能の評価
実施例3で調製した粒子液を攪拌減圧吸引によって、水を10分の1に減らし、スプレードライ(日本ビュッヒ製B−290)して粉体を得た。この粉体を再度固形分濃度3%(wt)になるように水に分散させたところ元通りの粒子液になることを確認した。
[試験例5] 表皮モデル透過性評価5
上述したように得られた粒子15、16、17について、試験例1、2、比較試験例1、2と同様の方法において、表皮モデル透過性の評価を行った。その結果、有効成分を含有するこれらの粒子は、表皮モデルにおいて、有効成分の単純溶液よりも透過性が高いことが確認された。
[比較例2〜19] 比較用粒子2〜19の調製
実施例7のポリマー液1のエチルセルロース0.4gをポリ乳酸グリコール酸ブロック共重合体(PLGA5015、和光純薬製)、セタノール(NAA−44、日油製)、白色ワセリン(小城製薬製)、カスターワックス(日油製)、ステアリルアルコール(NAA−45、日油製)、ステアリン酸(NAA−180P−1、日油製)、プロピレングリコールカプリル酸エステル(SEFSOL−218、日光ケミカルズ製)、プロピレングリコールジカプリル酸エステル(SEFSOL−228、日光ケミカルズ製)、親油型モノオレイン酸グリセリン(MGO、日光ケミカルズ製)、親油型モノステアリン酸グリセリン(MGS−AMV、日光ケミカルズ製)、親油型モノステアリン酸グリセリン(MGS−BMV、日光ケミカルズ製)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(CDS−6000P、日光ケミカルズ製)、ショ糖脂肪酸エステル(L−595、三菱化学フーズ製)、ショ糖脂肪酸エステル(S−570、三菱化学フーズ製)、ショ糖脂肪酸エステル(S−770、三菱化学フーズ製)、ステアリン酸ポリオキシル40(NIKKOL MYS−40MV、日光ケミカルズ製)、セトマクロゴール1000(NIKKOL BC−23、日光ケミカルズ製)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プロノン#188、日油製)、ポビドン(K−30、BASF製)、コポリビドン (VA64、BASF製)、飽和ポリグリコール化グリセリド(Gelucire50/13、Gattefosse製)、PEG20000(和光純薬工業製)、ポリビニルアルコール(JMP−10L、日本酢ビ・ポバール製)、ポリビニルアルコール(LL−810、日本酢ビ・ポバール製)、ポリビニルアルコール(LL−920、日本酢ビ・ポバール製)、ポリビニルアルコール(LL−940、日本酢ビ・ポバール製)0.1gに、アセトン30mLを15mLに、ポリマー液2のヒドロキシプロピルセルロース0.1gをポリビニルアルコール(EG−05、日本合成化学工業製)0.6gに、水15mLを30mLに変更し、ポリソルベート80を0.13g加えた以外は、実施例7と同様に、実験を行った(表6、7)。その結果、いずれの物質を用いた場合も、粒子の形成が確認された。しかしながら、3次元培養表皮モデルを用いた透過性の評価にて、24時間以内に透過性を示さなかった。
[比較例20〜27] 比較用粒子20〜27の調製
比較例2のポリマー液1のアセトンに代えて、水を用いた以外は、比較例2と同様に、実験を行った(表8)。その結果、いずれの物質を用いた場合も、粒子の形成が確認された。しかしながら、3次元培養表皮モデルを用いた透過性の評価にて、24時間以内に透過性を示さなかった。
[比較例28、29] 比較用粒子28、29の調製
比較例2のポリマー液2のポリビニルアルコールに代えて、ポビドン(K−90、BASF製)、PEG6000(和光純薬工業製)のいずれかの成分を用いた以外は、比較例2と同様に、実験を行った(表8)。その結果、いずれの物質を用いた場合も、粒子の形成が確認された。しかしながら、3次元培養表皮モデルを用いた透過性の評価にて、24時間以内に透過性を示さなかった。
本発明の粒子は、医薬、医薬部外品、化粧品等の製品に有用である。

Claims (21)

  1. 以下の特性を有する、粒子:
    (a)セルロース誘導体および有効成分を含む;
    (b)有効成分が粒子内部に含まれる;ならびに
    (c)体積分布平均粒子径が1〜1000nmである。
  2. 以下、(i)〜(iii)からなる群より選ばれる1以上の性質を有する、請求項1記載の粒子:
    (i)粒子膜上の水の接触角が、20〜70度である;
    (ii)ポリスチレン基板上の水の接触角に対する、粒子膜上の水の接触角の比率が、0.2〜0.9の範囲内である;
    (iii)電気泳動による移動度の絶対値が2μmcm/Vs以上である。
  3. 粒子が2種以上のセルロース誘導体の混合物を含む、請求項1または2記載の粒子。
  4. セルロース誘導体が、R−またはR−C(=O)−(式中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基を示す。)の置換基を有するセルロース誘導体である、請求項1〜3のいずれか一項記載の粒子。
  5. 前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロースまたはそのエステル誘導体である、請求項4記載の粒子。
  6. 粒子がセルロース誘導体およびセルロース誘導体以外のポリマーの混合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の粒子。
  7. セルロース誘導体以外のポリマーが、置換されていてもよい2価の炭化水素基をモノマー単位として含むポリマーである、請求項6記載の粒子。
  8. 置換されていてもよい2価の炭化水素基が、置換されていてもよいアルキレンである、請求項7記載の粒子。
  9. 置換されていてもよいアルキレンが、置換されていてもよいエチレンである、請求項8記載の粒子。
  10. セルロース誘導体以外のポリマーが、メタクリル酸コポリマーである、請求項6〜9のいずれか一項記載の粒子。
  11. 前記混合物が、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーの混合物である、請求項3〜10のいずれか一項記載の粒子。
  12. 有効成分が低分子化合物である、請求項1〜11のいずれか一項記載の粒子。
  13. 粒子の重量に対する有効成分量が0.01〜80%(wt)である、請求項1〜12のいずれか一項記載の粒子。
  14. 粒子の重量に対する有効成分量が0.1〜15%(wt)である、請求項1〜13のいずれか一項記載の粒子。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項記載の粒子を含む、有効成分の生体組織透過剤。
  16. 生体組織が皮膚である、請求項15記載の剤。
  17. 生体組織が角層である、請求項15または16記載の剤。
  18. 粒子の製造方法であって、
    (i)セルロース誘導体を含む有機溶媒と(ii)水溶液とを、有機溶媒および水溶液の混合液としてW/O型分散液が形成されるように混合して、粒子を析出させることを含み、
    有効成分が、有機溶媒または水溶液に含まれており、
    粒子が、以下の特性を有する、方法:
    (a)セルロース誘導体および有効成分を含む;
    (b)有効成分が粒子内部に含まれる;ならびに
    (c)体積分布平均粒子径が1〜1000nmである。
  19. 水溶液が有効成分を含む、請求項18記載の方法。
  20. (i’)第1ポリマーを含む有機溶媒と(ii’)有効成分および第2ポリマーの双方を含む水溶液とを、有機溶媒および水溶液の混合液としてW/O型分散液が形成されるように混合して、前記粒子を析出させることを含む、請求項19記載の方法。
  21. 混合が、前記混合液の状態がO/W型分散液からW/O型分散液に変化する条件下で行われる、請求項18〜20のいずれか一項記載の方法。
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