JP2018058770A - スジアオノリの新規用途 - Google Patents

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ロジャー ランドゥ ガツ
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光徳 池田
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正隆 井上
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咲子 神原
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佐由美 野嶋
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浩幸 渡邊
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Abstract

【課題】スギアオノリの新規用途を提供する。【解決手段】本発明のアディポネクチン産生促進用経口組成物、メタボリックシンドローム予防改善用経口組成物、胃腸機能障害予防改善用経口組成物、及び保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物は、いずれもスギアオノリ加工物を有効成分とするものである。【選択図】なし

Description

本発明はスジアオノリの新規用途に関する。より詳細は、本発明はスジアオノリが有する薬理作用に基づいて、新たな機能性食品を提供するものである。
高知県では、四万十川河口の汽水域に緑藻類のスジアオノリ(四万十のり)が自生している。スジアオノリは、藍藻類のスイゼンジノリや紅藻類のアサクサノリと比較すると、ヒトが必須とする栄養素、具体的には蛋白質、葉酸、ビタミンB6やB12等の含量が高く、魚と野菜の栄養素を合わせた組成をもつ食材である。最近では、四万十川及びその他の養殖場 (スジアオノリ養殖場)においてその養殖が可能になっており、本来の11月〜2月の収穫期間を問わず1年中いつでも収穫ができるようになっている。
近年、藻類の機能性素材としての活用を目指した研究が進められており、スジアオノリについても、その抽出エキスに脱顆粒抑制作用、つまり抗アレルギー作用があることが報告されている(特許文献1)。また、スジアオノリの水抽出物に、皮膚表皮細胞に対するケラチノサイト分化促進作用があることが示され、これをバリア機能調整剤と組み合わせて皮膚外用剤とすることで、皮膚の乾燥を抑制し、皮膚のかぶれやかゆみ等の炎症の軽減が可能であることが報告されている(特許文献2)。
ところで、従来から、体内のアディポネクチン量の低下と、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症[CVD]、冠性心疾患[CHD]、高血圧症、脳血管障害など)及び糖尿病との間に関連性があることが報告されている。このため、体内のアディポネクチン量の増加によりこれらの疾患が予防できる可能性は大いにある(非特許文献1〜4等参照)。 最近では、これらの疾病の予防及び治療において、アディポネクチンの使用(注射剤や経口薬の形で)を勧めている研究者および臨床医もいる。
アディポネクチンは脂肪細胞から生産されるアディポカインの1種であり、インシュリン感受性や循環器系疾患に対して多くの効果を発揮する。アディポネクチンは体内の重要な器官(心臓、肝臓、肺、脳、内皮細胞、骨格筋、肝臓等)にあるそのレセプター(AdipoR1 及び adipoR2)と結合することにより作用する。アディポネクチンは、心臓と血管の両細胞に対して、血管拡張作用、反アポトーシス作用、抗炎症作用、抗酸化作用を発揮することにより、心血管を保護する。さらに、アディポネクチンは異所性脂肪蓄積を減少させることにより(非特許文献4〜6等参照)、インシュリン活性(抗糖尿病作用)を高める。別の研究者は、アディポネクチンはNF-KappaBの 伝達経路を抑制することにより、内皮接着分子を減少し、アテローム発生を防ぐことを示唆している(非特許文献7〜8等参照)。
このように、体内のアディポネクチン量を増加させることができれば、心血管及び糖尿病などの代謝疾患のリスクが減少できる可能性がある。つまり、このような作用を有する食材があれば、それを毎日の食習慣及び生活習慣に組み込むことで、心血管及び代謝疾患の危険因子を減少し健康な生活を促進することが可能となる。
特開2007−84518号公報 特開2008−239493号公報
Okamoto Y, Kihara S, Ouchi N, Nishida M, Arita Y, Kumada M et al. Adiponectin reduces atherosclerosis in apoliprotein E-deficient mice. Circulation 2002; 106(22): 2767-2770. Satoh N. Naruse M, Usui T, Tagami T, Suganami T, Yamada K. Leptin-to-adiponection ratio as a potential atherogenic index in obese type 2 diabetic patients. Diabetes Care 2004; 27(10): 2488-90. Zhu W, Cheng KK, Vanhoutte PM, Lam KS, XU A. Vascular effects of adiponectin: molecular mechanisms and potential therapeutic intervention. Clinical Science (London) 2008; 114(5): 361-374. Hui X, Lam KSL, Vanhoutte PM, Xu A. Adiponectin and cardiovascular health: an update. British Journal of Pharmacology 2012; 165: 574-590 Ravussin E. Adiponectin enhances insulin action by decreasing ectopic fat deposition. The Pharmacogenomics Journal (Nature Publishing Co.) 2002; 2: 4-7. Thundyil J, Pavlovski D, Sobey CG, Arumugam TV. Adiponectin receptor signaling in the brain. British Journal of Pharmacology 2012; 165(2): 313-27. Ouchi N, Kihara S, Arita Y, Maeda K, Kuriyama H et al. Novel modulator for endothelial adhesion molecules: adipocyte-derived plasma protein adiponectin. Circulation 1999; 100(25):2473-6. Ouchi N, Kihara S, Arita Y, Okamoto Y, Maeda K, Kuriyama H et al. Adiponectin, an adipocyte-derived plasma protein, inhibits endothelial NF-kappaB signaling through a cAMP-dependent pathway. Circulation 2000; 102(11):1296-301
本発明は、従来より食経験のある素材(食材)を有効成分とした、アディポネクチン産生促進用の経口組成物を提供することを目的とする。また本発明は当該食材を有効成分とするメタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は当該食材を有効成分とする胃腸機能障害予防または改善用経口組成物を提供することを目的とする。さらにまた本発明は当該食材を有効成分とする保湿用または肌あれ予防または改善用経口組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的のもと、鋭意研究を重ねていたところ、スジアオノリを経口投与(摂取)することにより体内のアディポネクチン量が増加することを見出し、その作用により心血管機能を改善し、高血圧や糖尿病などの代謝疾患のリスクが低減できる可能性があることを知見し、実際にスジアオノリを経口投与することにより、血圧の正常化、並びに肥満度指数(BMI)の改善が図られることを確認した。またスジアオノリを経口投与(摂取)することにより、腸内環境が改善されて便秘や消化不良などの消化器官の障害が改善できること、さらにこれに加えて表皮からの水分蒸散が抑えられることでドライスキンや肌荒れを予防して肌状態が改善できることを確認した。
本発明はこうした多くの知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
(I)アディポネクチン産生促進用経口組成物
(I-1)スジアオノリ加工物を有効成分とする、アディポネクチン産生促進用経口組成物。
(I-2)スジアオノリ加工物が、スジアオノリの破砕物、粉末、及び抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である、(I-1)記載のアディポネクチン産生促進用経口組成物。
(I-3)アディポネクチン産生促進用経口組成物が飲食物組成物、経口医薬品組成物、または飼料組成物である(I-1)又は(I-2)記載のアディポネクチン産生促進用経口組成物。
(I-4)アディポネクチン産生促進用経口組成物が、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク、またはゼリーの形態を有するものである、(I-1)〜(I-3)のいずれかに記載するアディポネクチン産生促進用経口組成物。
(II)メタボリックシンドローム予防改善用経口組成物
(II-1)スジアオノリ加工物を有効成分とし、体内のアディポネクチンを増加させる作用を有する、メタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物。
(II-2)上記メタボリックシンドロームを形成する症状が、高血圧、肥満、脂質異常症、動脈硬化、耐糖能異常、及びインスリン抵抗性からなる群より選択される少なくとも1種である、(II-1)記載のメタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物。
(II-3)スジアオノリ加工物が、スジアオノリの破砕物、粉末、及び抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である、(II-1)または(II-2)記載のメタボリックシンドローム予防改善用経口組成物。
(II-4)飲食物組成物、経口医薬品組成物、または飼料組成物である、(II-1)〜(II-3)のいずれかに記載のメタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物。
(II-5)メタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物が、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク、またはゼリーの形態を有するものである、(II-1)〜(II-4)のいずれかに記載のメタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物。
(III)胃腸機能障害予防改善用経口組成物
(III-1)スジアオノリ加工物を有効成分とし、体内のアディポネクチンを増加させる作用を有する、胃腸機能障害予防または改善用経口組成物。
(III-2)上記胃腸機能障害が、便秘、消化不良、下痢、吐き気、嘔吐、及び食欲不振からなる群より選択される少なくとも1種である、(III-1)記載の胃腸機能障害予防または改善用経口組成物。
(III-3)スジアオノリ加工物が、スジアオノリの破砕物、粉末、及び抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である、(III-1)または(III-2)記載の胃腸機能障害予防または改善用経口組成物。
(III-4)飲食物組成物、経口医薬品組成物、または飼料組成物である、(III-1)〜(III-3)のいずれかに記載の胃腸機能障害予防または改善用経口組成物。
(III-5)散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク、またはゼリーの形態を有するものである、(III-1)〜(III-4)のいずれかに記載の胃腸機能障害予防または改善用経口組成物。
(IV)保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物
(IV-1)スジアオノリ加工物を有効成分とし、体内のアディポネクチンを増加させる作用を有する、保湿用または肌あれ予防若しくは改善用経口組成物。
(IV-2)上記経口組成物が皮膚水分蒸散量抑制作用を有するものである、(IV-1)記載の保湿用または肌あれ予防若しくは改善用経口組成物。
(IV-3)スジアオノリ加工物が、スジアオノリの破砕物、粉末、及び抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である、(IV-1)または(IV-2)記載の保湿用または肌あれ予防若しくは改善用経口組成物。
(IV-4)飲食物組成物、経口医薬品組成物、または飼料組成物である、(IV-1)〜(IV-3)のいずれかに記載の保湿用または肌あれ予防若しくは改善用経口組成物。
(IV-5)散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク、またはゼリーの形態を有するものである、(IV-1)〜(IV-4)のいずれかに記載の保湿用または肌あれ予防もしくは改善用経口組成物。
本発明によれば、スジアオノリ加工物について新規用途(アディポネクチン産生促進用経口組成物、メタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物、胃腸機能障害予防または改善用経口組成物、保湿用または肌あれ予防若しくは改善用経口組成物)を提供することができる。
本発明のアディポネクチン産生促進用経口組成物によれば、例えば低アディポネクチン血症、耐糖能障害、糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、糖尿病合併症、高血糖症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、脳血管障害、血管狭窄、末梢血管疾患、動脈瘤、高脂血症、高コレステロール血症、肥満、メタボリックシンドローム、骨密度の低下に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料を提供することができる。
本発明のメタボリックシンドローム予防改善用経口組成物によれば、メタボリックシンドロームを形成する症状や病態、並びにメタボリックシンドロームによって生じる疾病に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料を提供することができる。
本発明の胃腸機能障害予防改善用経口組成物によれば、胃腸機能障害、並びに胃腸機能障害によって生じる便秘、消化不良、食欲不振、下痢症状、吐き気、または嘔吐といった症状や病態に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料を提供することができる。
本発明の保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物によれば、上記皮膚保湿、並びに皮膚乾燥によって生じる症状や病態(例えばドライスキン関連皮膚疾患(乾皮症、アトピー性皮膚炎等))に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料を提供することができる。
(A)スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)に採取した唾液に含まれるアディポネクチン(APN)量(平均値)とを比較した結果を示す。各群のday1時点でのAPN量(平均値)を100として、day28時点でのAPN量(平均値)の相対比を示したものである。(B)被験者を高BMI者(>25)(n=4)と正常BMI者(≦25)(n=22)とに分け、day28に採取した唾液中のAPN量(平均値)を比較した結果を示す。高BMI者(>25)の唾液中のAPN量(平均値)を100とした相対比で示したものである。 スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)の各時点での平均BMI値を比較した図である。各群のday1時点での平均BMI値を100として、これに対するday28時点での平均BMI値の相対比を示す。 スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)の各時点での平均血圧(収縮期血圧[SBP]、拡張期血圧[DBP])を比較した結果を示す。(A)は収縮期血圧[SBP]、(B)は拡張期血圧[DBP]を示す。各図とも、各群のday1時点での平均血圧を100として、これに対するday28時点での平均血圧の相対比を示す。 SBPが119 mmHgを超える被験者(n=10)のみを対象として、スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)のSBPを対比した結果を示す。 慢性便秘症状のある被験者12名(スジアオノリ摂取群[Sujiaonori]6名、非摂取群[Control]6名)について、試験開始から28日目(day28)の便秘症状を調べた結果を示す。各被験群について、試験開始時(day1)における慢性便秘者数を100とした場合に、試験開始から28日目(day28)における慢性便秘者数の相対比を示す。 (A)スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)の各時点での平均TEWLを比較した結果を示す。各群のday1時点での平均TEWLを100として、これに対するday28時点での平均TEWLの相対比を示す。(B)年齢30歳未満の被験者を対象とした結果である。
(I)本発明の有効成分
本発明が対象とするアディポネクチン産生促進用経口組成物、メタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物、胃腸機能障害予防または改善用経口組成物、及び保湿用または肌あれ予防若しくは改善用経口組成物は、いずれもスジアオノリ加工物を有効成分とする。
スジアオノリは、緑藻植物門緑藻綱アオサ目アオサ科アオノリ属に属する海藻(英名:Green laver、学名:Enteromorpha prolifera (Muller) J.Agardh)である。スジアオノリは四万十川(高知県)、吉野川(徳島県)、浜名湖(静岡県)等に自生または養殖されているが、本発明では、産地の別、天然及び養殖の別を問わず、広く使用することができる。
スジアオノリ加工物としては、破砕物(生又は乾燥物の破砕物を含む)、粉砕物(生又は乾燥物の粉砕物を含む)、及び抽出物等を挙げることができる。好ましくは乾燥破砕物または乾燥粉砕物(乾燥粉末)である。かかる乾燥破砕物または乾燥粉砕物は、制限されないものの、収穫したスジアオノリを水洗いしてゴミや汚れを除去した後、乾燥後、破砕若しくは粉砕することで製造することができる。なお、スジアオノリを生のままで破砕若しくは粉砕し、次いで乾燥処理してもよい。乾燥方法は、スジアオノリに含まれる活性成分(体内のアディポネクチンを増加させる作用を有する活性成分)が変性若しくは失活しない方法であればよく、その限りにおいて、天日干し、棚式乾燥、流動層乾燥、熱風乾燥、フラッシュ乾燥等を例示することができる。また破砕または粉砕方法は、湿式または乾式のいずれでもよく、例えばビーズミル、ロールミル、ハンマーミル、ジェットミル、ピンミル等の破砕機(粉砕機)を用いることができる。
スジアオノリ加工物として溶媒抽出物を用いる場合、当該抽出物は、スジアオノリをそのまま又は破砕若しくは粉砕(乾燥物を含む)した後、適当な溶媒で抽出することで調製することができる。当該溶媒としては、水、エタノール、アセトン、酢酸エチル、二酸化炭素、またはアンモニアを例示することができる。抽出は例えば0〜60℃などの低温〜加温条件で静置浸漬することで行うことができ、次いで必要に応じて減圧蒸留などの溶媒を除去してもよい。また溶媒抽出後、スプレードライや噴霧乾燥して溶媒を除去し乾燥抽出物として調製してもよい。なお、溶媒として二酸化炭素やアンモニアを用いる場合は超臨界抽出を行ってもよい。
(II)アディポネクチン産生促進用経口組成物
後述する試験例に示すように、ヒトに対する経口投与試験(服用試験)から、スジアオノリ加工物には体内のアディポネクチン量を増加させる作用、つまり体内でのアディポネクチン産生を促進する作用がある。本発明のアディポネクチン産生促進用経口組成物は、かかるスジアオノリ加工物を有効成分として含むことを特徴とするものである。
本発明のアディポネクチン産生促進用経口組成物は、体内でのアディポネクチンの産生を促進し、その量を増やすことが有用であると考えられる疾病、病態または症状の予防又は改善に有効に使用することができ、さらにこれらの疾病や病態(症状)の予防または改善剤としても使用することができる。かかる疾病としては、制限されないものの、例えば低アディポネクチン血症、耐糖能障害、糖尿病(2型糖尿病を含む)、インスリン抵抗性症候群、糖尿病合併症、高血糖症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、脳血管障害、血管狭窄、末梢血管疾患、動脈瘤、高脂血症、高コレステロール血症、肥満、メタボリックシンドローム、骨密度の低下などを例示することができる。
このため、本発明のアディポネクチン産生促進用経口組成物は、例えば低アディポネクチン血症、耐糖能障害、糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、糖尿病合併症、高血糖症、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患、脳血管障害、血管狭窄、末梢血管疾患、動脈瘤、高脂血症、高コレステロール血症、肥満、メタボリックシンドローム、骨密度の低下に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料として用いることができる。なかでも飲食品は、上記疾病、病態または症状の予防又は改善をコンセプトとし、必要に応じてそれを明記または想起若しくは連想させる表示を付した機能表示食品、特定保健用途食品、または病者用食品として用いることができる。
本発明のアディポネクチン産生促進用経口組成物を経口医薬品または経口医薬部外品として使用する場合、経口投与のための製剤形態(剤型)として、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ゼリー剤、液剤等が挙げられる。この場合、有効成分であるスジアオノリ加工物は、上記製剤形態に応じて、薬学的に許容される担体とを組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、pH調整剤、乳化剤、界面活性剤、分散剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、増粘剤、活性増強剤、抗炎症剤、抗菌剤、矯味剤、矯臭剤、香料等が挙げられる。また、この場合、アディポネクチン産生促進用経口組成物中に含まれる有効成分(スジアオノリ加工物)の割合は、アディポネクチン産生促進効果を発揮する量であれば制限されないが、好ましくは、固形換算で製剤全質量の0.01〜100質量%の範囲から適宜選択することができる。制限されないものの、好ましくは0.5〜100質量%、より好ましくは0.5〜60質量%である。
この場合の投与量は、患者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得、限定されないものの、成人1人当たりの1日のスジアオノリ加工物の摂取量(経口摂取量)として、固形換算で通常50〜8000mg、好ましくは100〜6000mg、より好ましくは1000〜3000mgの範囲を例示することができる。当該製剤は、1日1回若しくは1日数回に分けて投与(摂取)することもできる。本研究で得られたスジアオノリ経口組成物投与後の唾液中アディポネクチン平均濃度は6.26ng/mLであり、この値は健常人での最大濃度(6.42ng/mL)[Ishikawa Y et al. Membrane transporters in salivary exosomes and microvesicles as biomarkers of systemic or oral disease. Journal of Oral Biosciences 2014; 56: 110-114] に匹敵する値であった。また、1日量3000mgのスジアオノリ経口組成物を3週間投与した2症例において、収縮期血圧が136.5mmHg(投与前)から114.5mmHg(投与後)に低下した。したがって、6000mgよりも少ない投与でも十分なアディポネクチン増加を期待でき、3000mgの投与量でも血圧低下効果が期待できる。なお、アディポネクチン産生促進用経口組成物のアディポネクチン産生促進効果は、後記試験例に示すように、被験者に継続して経口投与し、体内のアディポネクチン量を例えば唾液などの体液を被験試料として測定することで評価することができる。
本発明のアディポネクチン産生促進用経口組成物を、飲食品として使用する場合、その形態は、固形、半固形(ゲル化物を含む)または液状(乳化物を含む)であり得る。具体的な飲食の例としては、パン類、麺類、菓子類、ゼリー類、乳製品、総菜、冷凍食品、インスタント食品、でんぷん加工製品、加工肉製品、その他加工食品、飲料、スープ類、調味料、サプリメント、栄養補助食品等が挙げられる。また、上記の経口医薬品と同様、錠剤形態、丸剤形態、カプセル剤形態(硬カプセル剤、軟カプセル剤)、顆粒剤形態、散剤形態、シロップ剤形態、ゼリー剤形態、液剤形態等の製剤形態を有するものであってもよい。かかる製剤形態の飲食品は、上記経口医薬品と同様に、その製剤形態に応じて、薬学的または飲食品として許容される担体や添加剤を用いて製造することができる。また、この場合、アディポネクチン産生促進用経口組成物中に含まれる有効成分(スジアオノリ加工物)の割合は、アディポネクチン産生促進効果を発揮する量であれば制限されず、固形換算で、食品全質量の0.01〜100質量%の範囲から選択することができる。。制限されないものの、好ましくは0.5〜100質量%、より好ましくは0.5〜60質量%である。この場合のアディポネクチン産生促進用経口組成物(飲食品)の摂取量は、対象とする摂取者に応じて変動し得るが、スジアオノリ加工物(固形換算)の摂取量として、成人1人当たりの1日のスジアオノリ加工物の摂取量(経口摂取量)として、固形換算で通常50〜8000mg、好ましくは100〜6000mg、より好ましくは1000〜3000mgの範囲を例示することができる。
(III)メタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物
後述する試験例に示すように、ヒトに対する経口投与試験(服用試験)から、スジアオノリ加工物には体内のアディポネクチン量を増加させる作用、肥満の改善作用、血圧の正常化作用(収縮期血圧の低下)、及び心血管リスク回避作用があることが認められる。このため、スジアオノリ加工物はメタボリックシンドロームを予防または改善するうえで有用であり、本発明はかかるスジアオノリ加工物を有効成分として含むメタボリックシンドローム予防または改善用の経口組成物を提供するものである。
ここでメタボリックシンドロームとは、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症)、動脈硬化、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高血圧、及び肥満等の疾患が複数共存している状態をいう。メタボリックシンドロームを予防しておかないと、重大な致死的疾患につながる。
本発明のメタボリックシンドローム予防改善用経口組成物は、スジアオノリ加工物のアディポネクチン増加作用を介して、メタボリックシンドロームを形成する個々の症状や病態の予防又は改善に有効に使用することができ、さらにメタボリックシンドロームによって生じる疾病の予防または改善にも有効に使用することができる。
このため、本発明のメタボリックシンドローム予防改善用経口組成物は、上記のメタボリックシンドロームを形成する症状や病態、並びにメタボリックシンドロームによって生じる疾病に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料として用いることができる。なかでも飲食品は、上記症状、病態または疾病の予防又は改善をコンセプトとし、必要に応じてそれを明記または想起若しくは連想させる表示を付した機能表示食品、特定保健用途食品、または病者用食品として用いることができる。
本発明のメタボリックシンドローム予防改善用経口組成物を経口医薬品または経口医薬部外品として使用する場合のその製剤形態(投与形態)、他の配合成分、有効成分(スジアオノリ加工物)の含有割合、及び投与量は、上記(II)に記載するアディポネクチン産生促進用経口組成物と同様であり、その記載を援用することができる。
また本発明のメタボリックシンドローム予防改善用経口組成物を飲食品として使用する場合も、その形態、他の配合成分、有効成分(スジアオノリ加工物)の含有割合等は、上記(II)に記載するアディポネクチン産生促進用経口組成物と同様であり、その記載を援用することができる。
(IV)胃腸機能障害予防改善用経口組成物
後述する試験例に示すように、ヒトに対する経口投与試験(服用試験)から、スジアオノリ加工物には便秘症状、消化不良、食欲不振、または下痢症状を改善する作用があることが認められる。このため、スジアオノリ加工物はかかる胃腸機能障害を予防または改善するうえで有用であり、本発明はかかるスジアオノリ加工物を有効成分として含む胃腸機能障害予防改善用経口組成物を提供するものである。
ここで胃腸機能障害とは、上記便秘症状、消化不良、食欲不振、下痢症状、吐き気、または嘔吐をもたらす胃腸機能障害を意味する。
本発明の胃腸機能障害予防改善用経口組成物は、こうした胃腸機能障害の予防又は改善に有効に使用することができ、さらに当該胃腸機能障害によって生じる上記便秘、消化不良、食欲不振、下痢症状、吐き気、または嘔吐といった症状や病態の予防または改善にも有効に使用することができる。
このため、本発明の胃腸機能障害予防改善用経口組成物は、上記胃腸機能障害、並びに当該胃腸機能障害によって生じる上記の症状や病態に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料として用いることができる。なかでも飲食品は、上記症状、病態または疾病の予防又は改善をコンセプトとし、必要に応じてそれを明記または想起若しくは連想させる表示を付した機能表示食品、特定保健用途食品、または病者用食品として用いることができる。
本発明の胃腸機能障害予防改善用経口組成物を経口医薬品または経口医薬部外品として使用する場合のその製剤形態(投与形態)、他の配合成分、有効成分(スジアオノリ加工物)の含有割合、及び投与量は、上記(II)に記載するアディポネクチン産生促進用経口組成物と同様であり、その記載を援用することができる。
また本発明の胃腸機能障害予防改善用経口組成物を飲食品として使用する場合も、その形態、他の配合成分、有効成分(スジアオノリ加工物)の含有割合等は、上記(II)に記載するアディポネクチン産生促進用経口組成物と同様であり、その記載を援用することができる。
(V)保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物
後述する試験例に示すように、ヒトに対する経口投与試験(服用試験)から、スジアオノリ加工物には経皮水分蒸散量(TEWL)を低下させる作用、分かりやすくいえば皮膚の水分蒸散を抑制して皮膚内への水分保持(保湿)を促す作用があることが認められる。このため、スジアオノリ加工物は皮膚内の水分量を正常に保って(保湿)、健常な状態を維持するうえで有用であり、また水分量低下による肌あれやドライスキン関連皮膚疾患(乾皮症、アトピー性皮膚炎)の症状を予防または改善するうえで有用である。その作用機序は不明であるが、一つの理論として、制限されないものの、スジアオノリ加工物の経口摂取により表皮のバリア機能が改善ないし向上された可能性がある。本発明はかかるスジアオノリ加工物を有効成分として含む保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物を提供するものである。ここで肌あれとは、上記するように皮膚内の水分量低下(皮膚乾燥)による肌あれを意味する。また皮膚バリア機能低下によって生じる肌あれも含まれ得る。
本発明の保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物は、こうした皮膚保湿または肌あれの予防若しくは改善に有効に使用することができ、さらにドライスキン関連皮膚疾患(乾皮症、アトピー性皮膚炎)の症状の予防または改善にも有効に使用することができる。
このため、本発明の保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物は、上記皮膚保湿、並びに皮膚乾燥によって生じる症状や病態に対して予防又は改善効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の経口医薬品、経口医薬部外品、飲食品または飼料として用いることができる。なかでも飲食品は、上記症状や病態の予防又は改善をコンセプトとし、必要に応じてそれを明記または想起若しくは連想させる表示を付した機能表示食品、特定保健用途食品、または病者用食品として用いることができる。
本発明の保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物を経口医薬品または経口医薬部外品として使用する場合のその製剤形態(投与形態)、他の配合成分、有効成分(スジアオノリ加工物)の含有割合、及び投与量は、上記(II)に記載するアディポネクチン産生促進用経口組成物と同様であり、その記載を援用することができる。
また本発明の保湿用または肌あれ予防改善用経口組成物を飲食品として使用する場合も、その形態、他の配合成分、有効成分(スジアオノリ加工物)の含有割合等は、上記(II)に記載するアディポネクチン産生促進用経口組成物と同様であり、その記載を援用することができる。
以下、試験例及び実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。但し、これらの試験例等は本発明を説明するための一例であり、本発明はかかる試験例等に限定されるものではない。
試験例
健常成人32名を対象として、スジアオノリ摂取群(以下、単に「摂取群」とも称する)(n=16)とスジアオノリ非摂取群(以下、単に「非摂取群」とも称する)(n=16)の2群にわけ、(1)唾液中のアディポネクチン量、(2)肥満度指数(BMI)、(3)血圧(最拡張期血圧、収縮期血圧)、(4)排便状況(慢性便秘改善効果)、及び(5)肌状態(経皮水分蒸散量(TEWL))に対するスジアオノリ摂取による効果を評価した。
なお、本試験は高知県立大学健康栄養学研究倫理専門審査委員会の承認を得て、下記の指針を適応して実施した(健研倫第15-10号)。
[適応指針]
・医療・介護関係者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライン(厚生労働省)
・疫学研究に関する倫理指針(文部科学省・厚生労働省)。
また、研究では個人情報の漏洩を防ぎ、データの匿名化を行って実施した。
(A)被験者
健常成人を対象に、ヘルシンキ宣言の精神に基づいて試験の趣旨と方法に関する説明を口頭および文書で行い、本試験参加についての自由意志による同意書が得られた32名を被験者とした。
[被験者のバックグランド]
性別:女性31名、男性1名
年齢:20〜54歳
BMI:4名が高BMI値 (BMI>25)、28名は正常値(BMI:17.5-25)
血圧:9名が収縮期血圧が高く(SBP:120-156mmHg)、5名が高血圧症既往歴あり(摂取群に3名含む)
排便状況:12名が慢性便秘(2週間以上の便秘:1群中6名);摂取群1名に下痢、別の1名に消化不良あり
肌状況:活動性皮膚疾患を有するものなし;冬の寒さによりある程度の乾皮症(ドライスキン)有り。
(B)試験方法
(1)スジアオノリの摂取
スジアオノリ摂取群に摂取させるスジアオノリは高知県産のスジアオノリを乾燥後粉末化して使用した。摂取群の被験者(n=16)には、朝食時及び夕食時にそれぞれ3gのスジアオノリ粉末を摂取してもらった。非摂取群の被験者(n=16)には、比較対照(Control)として、朝食時及び夕食時に、それぞれコーンスターチ(70%)と乾燥ほうれん草粉末(30%)の混合物3gを同様にして摂取してもらった。これを30日間、継続実施した。
(2)唾液中のアディポネクチン量の測定
各群の被験者から、試験初日(day1)及び試験開始から28日目(day28)の唾液サンプルを回収し、ELISA法により唾液中のアディポネクチン(以下、単に「APN」とも称する)の量を測定した。
[ELISA法による測定]
測定には、Human Adiponectin ELISA Kit (Abcam)を使用した。具体的には、50μLのAPN標準品または唾液サンプルをマイクロプレートの各ウエルに加え、ウエルをシールテープで覆った後、室温下で1時間培養した。次いでマイクロプレート・ウエルを洗浄緩衝液(200μL)で洗浄し、ビオチン標識されたAPN検出抗体(50μL)を各ウエルに加え、1時間培養した。その後、各ウエルに50μLのコンジュゲート(アビジン色素結合体)を加え、30分間培養した。 その後、マイクロプレートを洗浄し、各ウエルに50 μLの発色基質(3.3,5,5’-Tetramethylbenzidine)を加え、10分間培養した。次に、停止液(50 μL)を各ウエルに添加し、色が青から黄色に変化することを確認した。マイクロプレート・リーダをオンにして、450nmの波長により吸光度を読み取った。3回読み取りを行い、APN標準品及び唾液サンプルのそれぞれについて、その平均値を求めた。APN標準品の試験結果から、X軸上の濃度とY軸上の対応する450nmの平均吸光度の値をプロットすることにより、標準曲線を作成した。この標準曲線を利用して、唾液サンプルについて得られた平均吸光度から唾液サンプル中に含まれるAPN量を求めた。
(3)肥満度指数(BMI)
摂取群と非摂取群の各々の被験者について、試験初日(day1)及び試験開始から28日目(day28)の各々の時点での身長と体重を測定し、下式から肥満度指数(BMI)を算出した。
[数1]
BMI=体重(kg) ÷ {身長(m) X 身長(m)}
(4)血圧(拡張期血圧、収縮期血圧)
摂取群と非摂取群の各々の被験者について、試験初日(day1)及び試験開始から28日目(day28)の各々の時点での血圧(拡張期血圧、収縮期血圧)を測定した。
(5)排便状況(慢性便秘改善効果)
摂取群と非摂取群の各々の被験者に、排便状況(排便日数、排便回数、排便量、便の状態[形状、色、臭い]、すっきり感)に関するアンケート用紙を配布し、試験初日(day1)から28日目(day28)までの試験期間中記入してもらった。いずれの項目ともそれぞれ5段階のポイントを設けた線分上の任意の位置に印をつけてもらい、その位置を数量化し、各試験期間中における排便1回当たりの値として評価した。
(6)肌状態(経皮水分蒸散量(TEWL))
摂取群と非摂取群の各々の被験者について、試験初日(day1)及び試験開始から28日目(day28)の各々の時点での経皮水分蒸発量(Trans Epidermal Water Loss:TEWL)を、皮膚計測器(Cutometer[登録商標]、Courage & Khazaka社製)を用いて測定した。TEWLは皮膚バリア性、すなわち拡散と蒸発により表皮層を通して身体内部から外部に放出された水分量を示す測定値である。TEWLは皮膚保護の状態および皮膚の健康状態を示す重要なマーカーの1つであり、TEWL値の上昇は、皮膚に水分を保持することが困難である状態、すなわち乾皮症あるいはドライスキン、またはアトピー性皮膚炎といった皮膚アレルギー疾患を起こしやすい状態である可能性を示唆する。
(7)統計処理
アンケート調査は、クロス集計を行い、カイ2乗検定により有意差を判定した。数値として得られるデータは、平均値の差の検定をStudent-t検定を行い、また、同一群間で各試験期間の差の検定を行う場合は対応のあるStudent-t検定を行った。いずれも危険率5%未満を有意とした。
(C)試験結果
(1)唾液中のアディポネクチン量
スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)に採取した唾液に含まれるAPN量(平均値)とを比較した結果を図1(A)に示す。図1(A)は、各群のday1時点でのAPN量(平均値)を100として、day28時点でのAPN量(平均値)の相対比を示したものである。なお、被験者32名のうち、6名は唾液中のAPN量が少なく測定不可能であったので、被験者26名の結果に基づいて評価した。
この結果からわかるように、28日間スジアオノリを摂取した摂取群において唾液中のAPN量が著しく増加することが認められた。一方、非摂取群の唾液中APN量にはほとんど変化は見られなかった。
また被験者(スジアオノリ非摂取群(Control)、スジアオノリ摂取群(Sujiaonori))をそれぞれ高BMI者(>25)(n=4)と正常BMI者(≦25)(n=22)とに分け、day28に採取した唾液中のAPN量(平均値)を比較した結果を図1(B)に示す。図1(B)は、各被験者(day1)の唾液中のAPN量(平均値)を100とした相対比で示す。これからわかるように、高BMI者(>25)(day28)の唾液中のAPN量は試験前(day1)の時と比較して多少減少したものの有意差はなかった(p>0.05)。一方、正常BMI者(day28)では、試験前(day1)の時と比較して唾液中のAPN量が有意に増加することが認められた[p<0.01 (paired T-test); p< 0.001 (Fisher’s test)]。
従来から、唾液または血漿中におけるアディポネクチン量が低いと、メタボリックシンドローム、糖尿病および心臓血管疾患に何某か関係することが分かっている(Okamoto et al., 2002)。上記結果に示したように、スジアオノリを摂取することで生体内でのAPN量が増加することから、スジアオノリの摂取により、メタボリックシンドローム、糖尿病および心臓血管代謝疾患に関係する症状の改善が見込まれる。
(2)肥満度指数(BMI)
スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)の各時点での平均BMI値を比較した結果を図2に示す。図2は、各群のday1時点での平均BMI値を100として、day28時点での平均BMI値の相対比を示したものである。図からわかるように、スジアオノリ摂取群において、平均BMI値の有意な減少が見られた。また、分析対象から肥満の被験者(n=4)を除外しても、上記結果は変化なく、依然として摂取群において平均BMI値の有意な減少が認められ(図示せず)。この結果から、スジアオノリの摂取により特に標準体重の若い被験者のBMIプロファイルを改善することが確認された。
(3)血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)
スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)の各時点での平均血圧(収縮期血圧[SBP]、拡張期血圧[DBP])を比較した結果を図3に示す(SBP:図3(A)、DBP:図3(B))。図3は、各群のday1時点での平均血圧を100として、これに対するday28時点での平均血圧の相対比を示したものである。この図からわかるように、非摂取群(Control)及び摂取群(Sujiaonori)のいずれも平均血圧(SBP、DBP)の低下が見られたが、その低下の程度は摂取群のほうが大きかった。
SBPが119mmHgを超える被験者(n=10)(摂取群6名[うち2名は高血圧症が疑われる]、非摂取群4名)のみを対象として、摂取群と非摂取群を対比した結果を図4に示す。ちなみにSBPが119mmHgを超えると前高血圧症であるとして、心血管疾患の発症リスクが高まるといわれている。図4に示すように、28日間にわたりスジアオノリを摂取した摂取群においてSBP値の有意な低下が認められた。
これらのことから、スジアオノリの摂取により、前高血圧症(SBP:120−139mmHg)(米国心臓病協会の高血圧症定義)状態にある被験者の血圧が正常化できることが確認された。なお、上記SBP値は心血管機能のマーカーの一つであることから、スジアオノリの摂取は心血管機能改善に有効であると考えられる。この効果はアディポネクチンの作用に起因すると思われる。
(4) 排便状況(便秘改善効果)
試験開始時点で、便秘症と判断される被験者が12名(摂取群6名、非摂取群6名)認められた。なお、便秘であるか否かは、2〜3日間排便のない状態が2週間以上しばしば続く場合に便秘症と判断した。
これらの被験者について、試験開始から28日目(day28)の排便状況を確認したところ、図5に示すように、非摂取群については1名について改善が認められたものの(約17%の改善)、摂取群については4名に改善が認められ(約67%の改善)、スジアオノリを28日間にわたり摂取した摂取群において消化管機能が向上し、便秘が改善していることが確認された。また摂取群において、試験開始時に報告されていた消化不良、食欲不振、及び下痢の症状も、スジアオノリ摂取により改善されたことも確認された。
このことからスジアオノリの摂取により、胃腸等の消化器官の環境が改善され、便秘や消化不良等の消化器官の機能障害を改善することができることが考えられる。
(5)肌状態(経皮水分蒸散量(TEWL))
スジアオノリ非摂取群(Control)とスジアオノリ摂取群(Sujiaonori)について、試験初日(day1)と試験開始から28日目(day28)の各時点での平均TEWLを比較した結果を図6(A)に示す。図6(A)は、各群のday1時点での平均TEWLを100として、これに対するday28時点での平均TEWLの相対比を示したものである。図からわかるように、非摂取群(Control)及び摂取群(Sujiaonori)のいずれも平均TEWLの低下が見られたが、その低下の程度は摂取群のほうが大きかった。
年齢が30歳未満の被験者(n=29)のみを対象として、摂取群と非摂取群の平均TEWLを対比した結果(day28)を図6(B)に示す。この図は、図6(A)と同様に、各群のday1時点での平均TEWLを100として、これに対するday28時点での平均TEWLの相対比を示したものである。その結果、摂取群において平均TEWL値の有意な低下が認められた(vs.TEWL(1day); p<0.05, unpaired T-test & p<0.01, oneway Anova test)。
これらのことから、スジアオノリを摂取することで皮膚の水分蒸散を抑制して皮膚内への水分保持(保湿)を促すことにより、皮膚を健全な状態に維持する効果があること、またドライスキンを予防し、乾皮症やアトピー性皮膚炎等のドライスキン関連皮膚疾患の改善に有効であることが示唆される。
以下に本発明の応用例を処方例として示す。
(処方例1)錠剤
下記の組成からなる錠剤を定法に従って調製する。
スジアオノリ粉末 30(質量%)
乳糖 30
コーンスターチ 20
カルボキシメチルセルロース 12
合成ケイ酸アルミニウム 5
ステアリン酸マグネシウム 1
グアーガム 2
合 計 100 質量%
(処方例2)カプセル剤
下記の組成からなる組成物(顆粒)をカプセル基材に充填してカプセル剤を調製する。
スジアオノリ粉末 30(質量%)
デキストリン 10
オリゴ糖 30
ショ糖 24
合成ケイ酸アルミニウム 5
ステアリン酸マグネシウム 1
合 計 100 質量%
(処方例3)飲料
下記の組成からなる飲料を定法に従って調製する。
スジアオノリ抽出物 10(質量%)
濃縮ミカン果汁 10
ブドウ糖液 10
クエン酸 0.2
L−アスコルビン酸 0.02
香料 0.2
水 残 部
合 計 100 質量%

Claims (4)

  1. スジアオノリ加工物を有効成分とする、アディポネクチン産生促進用経口組成物。
  2. スジアオノリ加工物を有効成分とし、体内のアディポネクチンを増加させる作用を有する、メタボリックシンドローム予防または改善用経口組成物。
  3. スジアオノリ加工物を有効成分とし、体内のアディポネクチンを増加させる作用を有する、胃腸機能障害予防または改善用経口組成物。
  4. スジアオノリ加工物を有効成分とし、体内のアディポネクチンを増加させる作用を有する、保湿用または肌あれ予防または改善用経口組成物。
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