JP2018057369A - 酸及び高温高圧水蒸気で処理したコーヒー豆並びにコーヒー飲料 - Google Patents

酸及び高温高圧水蒸気で処理したコーヒー豆並びにコーヒー飲料 Download PDF

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Abstract

【課題】コーヒー生豆に処理を施すことにより、甘い香りが増強され、香味が向上したコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を製造することができる方法、及び、ロブスタ種のような低品質のコーヒー生豆を、焙煎後に香味がよい、より高品質なコーヒー生豆に改質する方法を提供すること。【解決手段】固形分中のβ−ダマセノン含量が、5ppb以上であるコーヒー生豆。【選択図】なし

Description

本発明は、β−ダマセノンを高含有するコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆、改質されたコーヒー生豆の製造方法、焙煎コーヒー豆の製造方法、飲食品、コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法、並びに、コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆の改質方法に関する。
コーヒー飲料は、広く飲用されている嗜好飲料である。コーヒー飲料の香味は、原料となるコーヒー豆の産地及び品種に影響を受ける。コーヒー豆の品種は、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種の三種に大別され、それらのうちアラビカ種が味及び香りが良く高品質豆とされている。
一方ロブスタ種は、一般的に苦味が強く、独特な穀物臭(土臭い風味ともいわれる)があり、低品質豆とされている。しかしながらロブスタ種は病害虫に強い、成長が早く収穫量が多いという特徴があり、生豆がアラビカ種に比べて安価であることから、ロブスタ種のような低品質のコーヒー豆の品質改良のための方法が検討されている。特許文献1には、ロブスタコーヒー豆をスチーム処理し、次いで処理した豆を焙煎することによってロブスタコーヒー豆の品質を高める方法が記載されている。特許文献2には、コーヒーの生豆に糖溶液を含浸させる工程と、糖溶液を含浸させた生豆を飽和蒸気で蒸煮処理する工程と、蒸煮した生豆を真空冷却乾燥させる工程とを含むコーヒー豆の改質方法が記載されている。特許文献3には、生コーヒーの酸性度を上昇させた後に焙煎する焙煎コーヒーの品質及び/又は官能検査的改良方法が記載されている。
特開平6−303905号公報 特開2000−342182号公報 特開昭64−47344号公報
しかしながら、特許文献1〜3の方法には、コーヒー豆の香味をより向上させるための工夫の余地があった。
本発明は、コーヒー生豆に処理を施すことにより、甘い香りが増強され、香味が向上したコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を製造することができる方法を提供することを目的とする。本発明はまた、ロブスタ種のような低品質のコーヒー生豆を、焙煎後に香味がよい、より高品質なコーヒー生豆に改質する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、原料コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、特定温度及び圧力の水蒸気を含む気体で高温高圧処理することにより、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンが増加し、コーヒー生豆及びその焙煎コーヒー豆の香味が向上することを見出した。また、例えばロブスタ種等の低品質のコーヒー生豆に上記処理を行うと、香味が向上してより高品質なコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を製造できることを見出した。
本発明のコーヒー生豆は、固形分中のβ−ダマセノン含量が、5ppb以上であることを特徴とする。
本発明のコーヒー生豆は、β−ダマセノン含量が多いことから、甘い香り等が強く、良好な香味を有する。また、β−ダマセノン含量が多いことから、焙煎後にも香味がよいものである。
本明細書中、ppbは質量ベース(質量ppb)である。
上記コーヒー生豆は、ロブスタ種であることが好ましい。本発明によれば、固形分中のβ−ダマセノン含量が5ppb以上であるロブスタ種のコーヒー生豆を提供することができる。
本発明の改質されたコーヒー生豆の製造方法は、コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含むことを特徴とする。
上記酸処理コーヒー生豆を、上記温度及び圧力の水蒸気を含む気体で処理すると、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンが増加する。これにより、甘い香りが増強される。このためコーヒー生豆を改質して、その香味を向上させることができる。本発明で得られる改質されたコーヒー生豆を焙煎すると、β−ダマセノンが多く、香味が良い焙煎コーヒー豆を得ることができる。
また、例えばロブスタ種等の低品質のコーヒー生豆に上記高温高圧処理を行うと、甘い香りを増強することができるとともに、苦味、穀物臭等のネガティブな香味を効果的に低減することができる。このためロブスタ種等の低品質なコーヒー生豆から、香味が良好でより高品質なコーヒー生豆を製造することができる。
上記酸性溶液は、pHが1〜6の酸性溶液であることが好ましい。
本発明においては、上記水蒸気を含む気体が、飽和水蒸気であることが好ましい。
飽和水蒸気を使用すると、改質されたコーヒー生豆の香味がより良好となる。また、該コーヒー生豆を焙煎後には、香味がより良好な焙煎コーヒー豆が得られるため好ましい。
上記高温高圧処理工程の時間は、1〜1800秒であることが好ましい。
上記時間高温高圧処理を行うと、処理前と比較してコーヒー生豆中のβ−ダマセノンを増加させることができる。
上記酸処理コーヒー生豆の水分含量は、20〜45質量%であることが好ましい。
酸処理コーヒー生豆の水分含量が上記範囲であると、高温高圧処理によりコーヒー生豆中のβ−ダマセノンをより増加させることができる。
本発明の改質されたコーヒー生豆の製造方法は、コーヒー生豆を酸性溶液と接触させて、上記コーヒー生豆に上記酸性溶液を吸収させる酸処理工程を含むことが好ましい。
上記コーヒー生豆の水分含量は、15質量%以下であることが好ましい。水分含量が15質量%以下のコーヒー生豆は、酸性溶液を吸収しやすく、酸性溶液の含有量が多い酸処理コーヒー生豆を得ることができる。このような酸処理コーヒー生豆を高温高圧処理に供すると、β−ダマセノンをより増加させることができる。
上記コーヒー生豆は、ロブスタ種であることが好ましい。
本発明の製造方法は、ロブスタ種のコーヒー生豆に特に好適に適用される。本発明の製造方法によれば、ロブスタ種のコーヒー生豆から、焙煎後には香味がよい、より高品質のコーヒー生豆を製造することができる。
上記酸性溶液は、酢酸及びクエン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸の水溶液であることが好ましい。
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法は、本発明の改質されたコーヒー生豆の製造方法により得られる改質されたコーヒー生豆を焙煎する工程を含むことを特徴とする。
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法では、β−ダマセノンを多く含むコーヒー生豆を焙煎することから、β−ダマセノンが多く、香味が良好な焙煎コーヒー豆を得ることができる。
本発明の焙煎コーヒー豆は、β−ダマセノン含量が、30ppb以上であることを特徴とする。本発明の焙煎コーヒー豆は、L値が16〜25であることが好ましい。上記焙煎コーヒー豆は、ロブスタ種であることが好ましい。
本発明の飲食品は、本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物を含有することを特徴とする。
本発明の飲食品は、好ましくはコーヒー飲料、インスタントコーヒー又はコーヒー濃縮液である。
本発明のコーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法は、コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含むことを特徴とする。
本発明のコーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆の改質方法は、コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含むことを特徴とする。
上記高温高圧処理により、コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させることができ、コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆を改質してその香味を向上させることができる。
本発明によれば、コーヒー生豆に処理を施すことにより、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンを増加させることができ、処理前と比較してβ−ダマセノンを多く含むコーヒー生豆を得ることができる。これにより、甘い香りが増強され、香味が向上したコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を提供することができる。本発明によれば、甘い香りが強く、コーヒー飲料等の飲食品に有用なコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を提供することができる。
また、本発明によれば、ロブスタ種の生豆のような低品質のコーヒー生豆を、焙煎後に香味がよい、より高品質なコーヒー生豆に改質することができる。
<β−ダマセノンを高含有するコーヒー生豆>
本発明のコーヒー生豆は、固形分中のβ−ダマセノン含量が5ppb以上であることを特徴とする。β−ダマセノン(1−(2,6,6−トリメチル−1,3−シクロヘキサジエン−1−イル)−2−ブテン−1−オンとも表記される)は、コーヒーの香気成分の1つであり、蜜様の甘い香りを有する。本発明のコーヒー生豆は、β−ダマセノンを、コーヒー生豆に通常含まれる量よりも多く含有している。このため本発明のコーヒー生豆は、甘い香りが強いものである。また、本発明のコーヒー生豆を焙煎すると、甘い香りが強い、良好な香味を有する焙煎コーヒー豆が得られる。コーヒー生豆のβ−ダマセノン含量は、固形分中に8ppb以上が好ましく、9ppb以上がより好ましく、10ppb以上がさらに好ましく、15ppb以上が特に好ましい。コーヒー生豆のβ−ダマセノン含量は、例えば、固形分中に28ppb以下であってよく、25ppb以下が好ましい。このようなコーヒー生豆は、焙煎後には甘い香りが強い、良好な香味を有するものとなるため好ましい。コーヒー生豆の品種は、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種が挙げられ、ロブスタ種が好ましい。
本発明におけるコーヒー生豆の固形分は、コーヒー生豆から水分を除いた質量である。本発明において、コーヒー生豆の水分含量は、高周波容量式の水分計を用いて測定する。高周波容量式の水分計として、例えば、穀類水分計 PM−650、(株)ケツト科学研究所製を用いることができる。
固形分中のβ−ダマセノンの含量は、コーヒー生豆中のβ−ダマセノン含量を測定し、これをコーヒー生豆の固形分中の含量に換算することで算出することができる。
コーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆のβ−ダマセノン含量は、実施例に記載の方法で、ガスクロマトグラフィー−質量分析(GC−MS)により測定される。
本発明のコーヒー生豆は、通常のコーヒー生豆よりもβ−ダマセノン含量が多いことから、β−ダマセノンを高含有するコーヒー生豆ということもできる。
本明細書中では、コーヒー豆を加熱して煎り上げるプロセスである焙煎工程を経る前のコーヒー豆をコーヒー生豆と呼び、焙煎工程を経た後のコーヒー豆を焙煎コーヒー豆と呼ぶ。
本発明のコーヒー生豆は、後述する改質されたコーヒー生豆の製造方法により製造することができる。
<改質されたコーヒー生豆の製造方法>
本発明の改質されたコーヒー生豆(改質コーヒー生豆)の製造方法は、コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含むことを特徴とする。
本発明の改質されたコーヒー生豆の製造方法においては、酸性溶液を吸収させたコーヒー生豆(酸処理コーヒー生豆)を所定温度及び圧力の水蒸気を含む気体で高温高圧処理することにより、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンを増加させることができる。
高温高圧処理工程で得られる改質されたコーヒー生豆は、通常、原料として使用されたコーヒー生豆と比較して、β−ダマセノンが顕著に増加している。
上記改質されたコーヒー生豆は、β−ダマセノンが増加したコーヒー生豆、β−ダマセノンを高含有するコーヒー生豆、香味が向上した又は増強されたコーヒー生豆等と言い換えることもできる。
上記高温高圧処理工程で得られる改質されたコーヒー生豆を焙煎することにより、香味が良好な焙煎コーヒー豆を製造することができる。
<酸処理コーヒー生豆>
酸処理コーヒー生豆は、例えば、コーヒー生豆(原料コーヒー生豆)を酸性溶液と接触させて吸収させる酸処理を行うことにより得ることができる。酸処理により、コーヒー生豆中に酸性溶液を含有させる。本明細書中、酸処理コーヒー生豆を調製するために使用されるコーヒー生豆(酸性溶液を吸収させる前のコーヒー生豆)を、原料コーヒー生豆ともいう。
本発明の改質されたコーヒー生豆の製造方法は、高温高圧処理工程の前に、酸処理コーヒー豆を調製する工程を含んでもいてもよい。コーヒー生豆(原料コーヒー生豆)を酸性溶液と接触させて、上記コーヒー生豆に上記酸性溶液を吸収させる酸処理工程を含む、改質されたコーヒー生豆の製造方法は、本発明の好ましい実施態様の一例である。
酸処理コーヒー生豆は、酸性溶液を吸収したことにより、通常原料コーヒー生豆よりも水分含量が多い。また、酸処理コーヒー生豆の内部は、酸性溶液を含有するため、原料コーヒー生豆と比較して酸性であると考えられる。この酸処理コーヒー生豆を高温高圧の水蒸気を含む気体で処理すると、コーヒー生豆中で加水分解等の反応が促進され、β−ダマセノンが増加すると推定される。このように、高温高圧処理工程を行うことにより、コーヒー生豆中の成分が変化して、新たな香味を有するコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を得ることができる。本発明により得られる改質されたコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆は、飲食品に新たな香味を付与できる原料として有用である。
酸処理コーヒー生豆の調製に用いるコーヒー生豆の水分含量は、15質量%以下が好ましい。例えば原料コーヒー生豆の水分量が多い場合は、公知の方法により該コーヒー生豆を乾燥させて水分量を15質量%以下に調整して酸処理に供することが好ましい。
通常、酸処理コーヒー生豆に含まれる酸性溶液量が多いほど、高温高圧処理によりβ−ダマセノンが増加する。このため本発明における酸処理コーヒー生豆は、好ましくは、水分量が15質量%以下のコーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆である。原料コーヒー生豆の水分含量が15質量%以下であると、酸性溶液を充分量吸収でき、高温高圧処理に供した場合にβ−ダマセノンを充分に増加させることができる。原料コーヒー生豆の水分含量は、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。また、製造効率、原料コーヒー生豆の香味を保つ観点から、原料コーヒー生豆の水分含量は3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、5〜10質量%がさらに好ましい。
本発明において、コーヒー生豆の水分含量は、高周波容量式の水分計を用いて測定する。
高周波容量式の水分計として、例えば、穀類水分計 PM−650、(株)ケツト科学研究所製を用いることができる。
本発明の製造方法に用いるコーヒー生豆(原料コーヒー生豆)の品種は、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種のいずれであってもよいが、本発明の方法の特徴から、ロブスタ種が特に好適である。原料コーヒー生豆がロブスタ種であると、本発明の効果がより充分に発揮され得る。
コーヒー生豆は、単一品種を使用してもよく、異なる品種を2種以上組み合わせて使用してもよい。
コーヒー生豆の産地は特に限定されず、いずれの産地のものでも用いることができる。
酸性溶液としては、公知の酸又はその塩の水溶液が挙げられ、好ましくは酸の水溶液である。酸としては、例えば、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、ギ酸等が挙げられる。酸性溶液に含まれる酸又はその塩は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。酸性溶液は、好ましくは酢酸及びクエン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸の水溶液であり、より好ましくは酢酸水溶液である。酢酸及びクエン酸は、飲食品に使用可能な酸であるため好ましい。また、酢酸は揮発性であり、通常高温高圧処理でコーヒー生豆から除去されることから、コーヒー生豆に酸の香味が付与されず、改質されたコーヒー生豆及びその焙煎コーヒー豆の香味がより良好になる。また、酸処理で使用した酸が改質されたコーヒー生豆に含まれる場合、高温高圧処理後に該酸をコーヒー生豆から除去してもよいが、酢酸水溶液を使用すると、コーヒー生豆から酸を除去するための処理を行う必要がない。
酸性溶液のpHは、好ましくは1〜6であり、より好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2.5〜5であり、特に好ましくは3〜4である。酸性溶液のpHが上記の範囲であると、加水分解効率を高めることでβ−ダマセノンを増強させ、かつ、コーヒーの本来の香味を損なわないため好ましい。本発明において、pHは25℃における溶液のpHである。本発明においては、酸性溶液のpHが上記範囲となるように、使用する酸又はその塩の種類及びその濃度を調整することが好ましい。
コーヒー生豆に接触させる酸性溶液の温度は特に限定されないが、酸の沸点より低い温度が好ましい。また、実用上、酸性溶液の温度は、例えば、0〜50℃が好ましく、4〜40℃がより好ましい。コーヒー生豆に酸性溶液を接触させる時間(吸収させる時間)は適宜設定すればよいが、例えば、3〜24時間が好ましく、5〜10時間がより好ましい。上記時間酸性溶液を接触させると、原料コーヒー生豆に酸性溶液を充分に吸収させることができ、上述した本発明の効果をより充分に得ることができる。
酸性溶液をコーヒー生豆に接触させる方法は特に限定されず、例えば、酸性溶液中にコーヒー生豆を浸漬させる方法、酸性溶液をコーヒー生豆に噴霧又は塗布する方法等が挙げられる。浸漬とは、液体に浸すことをいうが、コーヒー生豆の全てが酸性溶液に完全に浸かっている場合だけでなく、生豆の一部が酸性溶液に浸かっている場合も含まれる。また、浸漬させる場合は、例えば、酸性溶液に浸漬したコーヒー生豆を静置して酸性溶液を吸収させてもよく、攪拌等のコーヒー生豆と酸性溶液の混合操作を行いながらコーヒー生豆に酸性溶液を吸収させてもよい。コーヒー生豆の酸性溶液の吸収量は均一であることが好ましいが、酸処理コーヒー生豆を高温高圧処理して得られる改質されたコーヒー生豆又はその焙煎コーヒー豆全体として香味が向上するのであれば、不均一であってもよい。
コーヒー生豆に吸収させる酸性溶液の量は特に限定されない。通常、コーヒー生豆が吸収した酸性溶液の量が多いほど、β−ダマセノンをより増加させることができる。しかしながらコーヒー生豆が酸性溶液を吸収できる量としては、最大で該生豆の質量と同程度と考えられる。例えば、酸処理コーヒー生豆の質量が、原料コーヒー生豆の質量の好ましくは101〜200%、より好ましくは120〜180%となるまで酸性溶液を吸収させることが好ましい。
また、酸処理コーヒー生豆の水分含量は特に限定されないが、20〜45質量%が好ましい。本発明においては、酸処理コーヒー生豆の水分含量がこの範囲となるように、吸収させる酸性溶液の量を調整することが好ましい。酸処理コーヒー生豆の水分含量が上記範囲であると、上述した本発明の効果をより充分に得ることができる。これは、酸処理コーヒー生豆の水分含量が上記範囲であると、高温高圧処理により加水分解等の反応がより進みやすいためと考えられる。酸処理コーヒー生豆の水分量は、30〜40質量%がより好ましい。本発明においては、水分含量が15質量%以下(好ましくは12質量%以下)の原料コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させて調製した、水分含量が20〜45質量%の酸処理コーヒー生豆を高温高圧処理に使用することが好ましい。なお、酸処理コーヒー生豆の水分含量は上記範囲に限定されない。酸処理コーヒー生豆の水分含量が上記よりも少ない場合でも、高温高圧処理工程で水蒸気を含む気体を該生豆に接触させることにより、該コーヒー生豆中のβ−ダマセノンを増加させることができる。
<高温高圧処理工程>
高温高圧処理工程においては、酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理を行う。高温高圧処理工程においては、水蒸気を含む気体を酸処理コーヒー生豆に接触させることが好ましい。上記温度及び圧力の水蒸気を含む気体を酸処理コーヒー生豆に接触させると、該コーヒー生豆の内部に該気体が入り込み、加水分解等の反応がより促進される。この際に水蒸気を含む気体の水分量が多いほど、酸処理コーヒー生豆における加水分解等の反応が促進されると考えられる。
高温高圧処理工程に用いる水蒸気を含む気体としては、水を含む液体の蒸気を用いることができる。水を含む液体として、例えば、水、エタノール水溶液、アルコール飲料、ノンアルコール飲料等が挙げられ、これらの2種以上の混合物であってもよい。本発明における水蒸気を含む気体として、飽和水蒸気、エタノール水溶液、アルコール飲料の蒸気、ノンアルコール飲料の蒸気及びこれらの1種又は2種以上の混合蒸気のいずれを用いてもよいが、飽和水蒸気が好ましい。
水蒸気を含む気体を発生させる液体として、予め前処理を施した液体を用いることもできる。前処理としては、例えば、脱気処理等の処理が挙げられる。脱気処理としては、例えば、脱酸素処理、減圧処理等が挙げられる。
高温高圧処理における水蒸気を含む気体の温度は100〜200℃であり、好ましくは125〜200℃である。この温度範囲であると、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンを増加させることができ、コーヒー生豆の香味を向上させることができる。また、高温高圧処理による焦げ臭等が少ないことからも、得られる改質されたコーヒー生豆及び該生豆を焙煎した焙煎コーヒー豆の香味が良好となる。
水蒸気を含む気体の温度は、得られる改質されたコーヒー生豆及び該生豆を焙煎した焙煎コーヒー豆の香味が良好になることから、より好ましくは135〜200℃、さらに好ましくは140〜200℃、特に好ましくは140℃を超えて180℃以下、最も好ましくは、142〜160℃である。
また、例えば、水蒸気を含む気体の温度が135〜160℃、好ましくは135〜145℃であると、得られる改質されたコーヒー生豆を焙煎した場合に、焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノン含量が特に多くなる。このため改質されたコーヒー生豆を焙煎して得られる焙煎コーヒー豆は甘い香りが強く、香味がより良好になる。
また、一態様において、コーヒー生豆中のβ−ダマセノン含量をより多くするためには、水蒸気を含む気体の温度が、例えば、135〜200℃が好ましく、140〜200℃がより好ましく、142〜200℃がさらに好ましい。
水蒸気を含む気体の圧力(ゲージ圧)は、0MPaを超える圧力であればよい。好ましくは1.4MPa以下であり、より好ましくは0.01〜1.4MPaである。この圧力範囲であると、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンをより増加させることができ、コーヒー生豆及びその焙煎コーヒー豆の香味を向上させることができる。
本明細書で「圧力」は「ゲージ圧力」を意味する。従って、例えば「圧力(ゲージ圧)が0.1MPa」は絶対圧力に換算すると、大気圧に0.1MPaを加えた圧力となる。水蒸気を含む気体(ゲージ圧)の圧力は、得られる改質されたコーヒー生豆及びその焙煎コーヒー豆の香味がより良好になることから、より好ましくは0.13〜1.4MPa、さらに好ましくは0.2〜1.4MPa、さらにより好ましくは0.25〜1.4MPa、特に好ましくは0.25MPaを超えて0.90MPa以下であり、最も好ましくは、0.28〜0.51MPaである。
高温高圧処理に使用する水蒸気を含む気体の温度及び圧力は、例えば、該気体が飽和水蒸気の場合は、通常温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超えて1.4MPa以下(圧力(ゲージ圧)は好ましくは0.01〜1.4MPa)であり、好ましくは温度が125〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0.13〜1.4MPa、より好ましくは温度が135〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0.2〜1.4MPaであり、さらに好ましくは温度が140〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0.25〜1.4MPa、さらにより好ましくは温度が140℃を超えて180℃以下で圧力(ゲージ圧)が0.25MPaを超えて0.9MPa以下であり、特に好ましくは、温度が142〜160℃で圧力(ゲージ圧)が0.28〜0.51MPaである。
高温高圧処理工程の時間は、好ましくは1〜1800秒である。より好ましくは60〜1200秒であり、さらに好ましくは、300〜1000秒である。上記時間処理を行うと、コーヒー生豆及びその焙煎コーヒー豆の香味を向上させることができる。
高温高圧処理工程は、約0〜1μg/mL程度の酸素濃度で行うのが好ましい。本発明においては、公知手段を用いてかかる低酸素状態にすることができる。例えば、水蒸気を含む気体を発生させる液体として、脱気した(空気を除去した)液体を用いることにより上記低酸素状態にすることができる。脱気した液体の代わりに、酸素を除去できる物質を予め添加した液体等を用いることもできる。また、高温高圧処理前に、酸素濃度約0〜1μg/mLの気体で処理容器内を置換することによっても、上記低酸素状態にすることができる。ここで、酸素濃度約0〜1μg/mLの気体としては、特に限定されないが、窒素などの不活性ガス、二酸化炭素又は脱酸素した気体であることが好ましい。脱酸素した気体としては、脱気した液体を沸騰させて得られる気体等が挙げられる。上記処理中の酸素濃度は、公知の方法で測定することができ、例えば通常の溶存酸素計(DOメータ)によって測定することができる。
高温高圧処理を低酸素状態で行うことにより、コーヒー生豆中の物質、特に酸化されやすい脂質、ポリフェノール等が酸化劣化するのを抑制することができる。これにより、改質されたコーヒー生豆及びその焙煎コーヒー豆の香味がより良好となる。また、ボイラなどの処理容器などの腐食や劣化も押さえることができる。
高温高圧処理に使用する装置は特に限定されず、高温高圧に耐えられる構造のものであればいかなるものでも使用できる。例えば、上記装置としては、耐圧の反応容器と加熱装置が組み合わされている装置が挙げられる。かかる装置では、液体又は気体が加熱装置で加熱され高温高圧状態の気体となって反応容器に送られる。加熱装置は加熱できればいかなるものも使用できる。また、上記装置は単なる耐熱耐圧パイプの類でもよい。反応容器又はパイプの素材は耐圧耐熱であればよいが、金属等の成分が溶出したり、有毒物質が生成したり、好ましくない臭いが生ずるような材質でないほうが好ましい。上記素材としては、無用の反応や腐食、劣化などを防ぐためステンレスなどの素材が好ましいがこれに限定されるものではない。
高温高圧処理は、密封状態(密閉系)で行うことが好ましい。密閉状態とは、水蒸気等の気体の流通が遮断され、開放大気系に直接接触しないことをいう。高温高圧の水蒸気を含む気体での処理を密閉状態で行うことにより、上記低酸素状態を保ち、コーヒー生豆と酸素との接触を最低限に抑えることができる。その結果、コーヒー生豆中の成分、特に脂質、ポリフェノール等の酸化を抑えることができる。
密閉状態で高温高圧処理を行う場合は、例えば、密閉反応容器中で酸処理コーヒー生豆を上記の水蒸気を含む気体と接触させればよい。密閉反応容器は気体の流通を遮断できれば、その形状及び材質は特に限定されないが、加熱により変質せず、かつ加圧に耐え得る容器が好ましく、例えば、金属製容器(例えば、ステンレス製容器等)等が挙げられる。
本発明においては、高温高圧処理工程の後に公知の処理を行ってもよい。処理としては、例えば、高温高圧処理したコーヒー生豆(改質されたコーヒー生豆)を冷却、粉砕、乾燥等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。改質されたコーヒー生豆が酸処理に使用した酸を含む場合、所望により酸を除去する処理(例えば、陰イオン交換カラム処理)を行うこともできる。
高温高圧処理工程で得られる改質されたコーヒー生豆は、原料コーヒー生豆及び酸処理コーヒー生豆よりも、β−ダマセノンを多く含んでいる。β−ダマセノンが増加すれば、それに由来する香り等をコーヒー生豆に付与又は増強することができる。β−ダマセノンは、コーヒーの香気成分の1つであり、蜜様の甘い香りを有する。コーヒー生豆中のβ−ダマセノンが増加すると、原料コーヒー生豆と比較して、通常、甘い香り等の香味が付与又は増強されている。
本発明の製造方法の一態様において、原料コーヒー豆にロブスタ種のコーヒー生豆を使用すると、β−ダマセノンを効果的に増加させることができる。また、本発明の製造方法において原料コーヒー生豆がロブスタ種の場合には、ロブ臭と呼ばれる穀物臭等を低減することが可能である。本発明によりコーヒー生豆の穀物臭等が低減するメカニズムは明らかではないが、β−ダマセノンの増加により甘い香り等が増強されることに加えて、コーヒー生豆中の穀物臭等の原因となる成分が分解又は流出して低減されることが推察される。
本発明によれば、このようにコーヒー生豆において、β−ダマセノンの増加と、穀物臭等の減少とを実現することができる。これにより、低品質品種及び高品質品種のコーヒー豆について、香味を向上させることができる。
本発明の製造方法は、ロブスタ種のコーヒー生豆に特に好適に適用される。本発明の製造方法において原料コーヒー豆にロブスタ種のコーヒー生豆を用いた場合には、ロブスタ種に特有の穀物臭等が低減され、甘い香り等が増強された改質されたコーヒー生豆を得ることができる。このような改質されたコーヒー生豆を焙煎すると、苦味や穀物臭が低減され、甘味等が向上したより高品質の焙煎コーヒー豆を得ることができる。本発明の製造方法の一態様においては、ロブスタ種のコーヒー生豆の苦味、穀物臭等の香味を改善して、高品質とされるアラビカ種のバランスの良い苦味、酸味、香りに近づけることができる。本発明によれば、ロブスタ種のコーヒー生豆から、焙煎後には香味がよい、より高品質のコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を製造することができる。
本発明の製造方法により製造される改質されたコーヒー生豆も、本発明に包含される。本発明の製造方法により製造される改質されたコーヒー生豆を、単に改質されたコーヒー生豆ともいう。
本発明の改質されたコーヒー生豆の好ましい一例として、例えば、固形分中のβ−ダマセノン含量が5ppb以上であるコーヒー生豆が挙げられる。本発明によれば、このようにβ−ダマセノン含量が多い改質されたコーヒー生豆を製造することができる。
改質されたコーヒー生豆のβ−ダマセノン含量は、固形分中に8ppb以上が好ましく、9ppb以上がより好ましく、10ppb以上がさらに好ましく、15ppb以上が特に好ましい。改質されたコーヒー生豆のβ−ダマセノン含量は、例えば、固形分中に28ppb以下であってよく、25ppb以下が好ましい。
<焙煎コーヒー豆の製造方法>
上記高温高圧処理で得られる改質されたコーヒー生豆を焙煎することにより、香味がよい焙煎コーヒー豆を得ることができる。
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法は、本発明の改質されたコーヒー生豆を焙煎する工程(以下、焙煎工程ともいう)を含むことを特徴とする。
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法では、β−ダマセノンを多く含む改質されたコーヒー生豆を焙煎することから、β−ダマセノンが多く、香味が良好な焙煎コーヒー豆を得ることができる。また、本発明の焙煎コーヒー豆製造方法は、ロブスタ種のコーヒー生豆に特に好適に適用される。上述した本発明の改質されたコーヒー生豆の製造方法によれば、ロブスタ種のコーヒー生豆の苦味、穀物臭等の香味を改善して、高品質とされるアラビカ種のバランスの良い苦味、酸味、香りに近づけることができる。この改質されたロブスタ種のコーヒー生豆を焙煎することにより、香味がよい、より高品質の焙煎コーヒー豆を製造することができる。
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法は、改質されたコーヒー生豆を得るための工程を含んでもよい。より具体的には、上述した高温高圧処理工程を含んでいてもよく、さらに酸処理工程を含んでいてもよい。これらの工程及びその好ましい態様は、上述した通りである。
焙煎工程では、上述した高温高圧処理で得られる改質されたコーヒー生豆を焙煎する。この改質されたコーヒー生豆は、上述したようにβ−ダマセノンを多く含む。このため焙煎度がどのようなものであっても、上記コーヒー生豆を焙煎したコーヒー豆(焙煎コーヒー豆)には、通常、β−ダマセノンが多く含まれる。また、好ましい態様においては、β−ダマセノンは、焙煎によりさらに増加する。
焙煎を行う改質されたコーヒー生豆は、未粉砕のものでも、粉砕したものでもよいが、風味向上の効率の観点から、未粉砕のものが好ましい。
焙煎工程における焙煎方法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、焙煎温度は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは190〜280℃であり、加熱時間は、所望の焙煎度が得られるように適宜設定することができる。焙煎装置及び加熱方式も特に限定されず、公知の装置及び加熱方式を使用することができる。焙煎工程では、本発明の改質されたコーヒー生豆を通常のコーヒー生豆と混合して焙煎しても良い。
<焙煎コーヒー豆>
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法により製造される焙煎コーヒー豆も、本発明に包含される。
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法によれば、例えば、β−ダマセノン含量が20ppb以上、好ましくは25ppb以上である焙煎コーヒー豆を得ることができる。
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法により製造される焙煎コーヒー豆として、例えば、β−ダマセノン含量が30ppb以上である焙煎コーヒー豆が好ましい。β−ダマセノン含量が30ppb以上である焙煎コーヒー豆も、本発明の1つである。このような焙煎コーヒー豆は、甘い香りが強く良好な香味を有するため好ましい。
焙煎コーヒー豆のβ−ダマセノン含量は、甘い香りがより強いことから、32ppb以上がより好ましく、34ppb以上がさらに好ましい。焙煎コーヒー豆のβ−ダマセノン含量は、例えば、50ppb以下が好ましい。焙煎コーヒー豆は、好ましくはロブスタ種の焙煎コーヒー豆である。
焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンの含量は、実施例に記載の方法でGC−MSにより測定される。
本発明の焙煎コーヒー豆は、L値が16〜25であることが好ましい。L値は、香味の観点から、17〜25がより好ましく、18〜23がさらに好ましい。本発明によれば、L値が16〜25であり、β−ダマセノン含量が、30ppb以上(好ましくは32ppb以上、より好ましくは34ppb以上)である焙煎コーヒー豆を製造することができる。
本発明におけるL値は、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。色差計として例えば、装置名Spctro color meter SE2000、日本電色工業株式会社製等を使用することができる。
焙煎コーヒー豆は、未粉砕のものでも、粉砕したものでもよいが、風味向上の効率の観点から、粉砕されたものが好ましい。
<焙煎コーヒー豆抽出物>
本発明の焙煎コーヒー豆を水系溶媒で抽出して得られる抽出物(焙煎コーヒー豆抽出物)も、本発明の1つである。本発明の焙煎コーヒー豆及びその抽出物は、飲食品に好適に使用される。飲食品には飲食品の原料も含まれる。
本発明の焙煎コーヒー豆抽出物を製造する際には、焙煎コーヒー豆として、本発明の焙煎コーヒー豆と、通常の焙煎コーヒー豆とを混合して用いてもよい。
抽出方法は特に限定されず、通常の抽出方法を用いればよく、例えば、濾過法(ドリップ式)、浸漬法(撹拌又はボイリング式)、エスプレッソ法(蒸気式)等の方法を採用することができる。抽出時間、抽出に使用する水系溶媒の温度等の抽出条件は、抽出方法により適宜選択すればよい。
水系溶媒としては、例えば、水、アルコール水溶液、ミルクが挙げられる。中でも、水が好ましい。水系溶媒のpH(25℃)は、例えば、4〜10が好ましく、5〜7がより好ましい。水系溶媒にpH調整剤、例えば、重炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、L−アルコルビン酸ナトリウムを含有させ、pHを適宜調整しても良い。
抽出により得られた焙煎コーヒー豆抽出液は、そのまま焙煎コーヒー豆抽出物として使用してもよいが、必要により濃縮処理、乾燥処理等の1又は2以上の処理を行って使用してもよい。焙煎コーヒー豆抽出物は、焙煎コーヒー豆抽出液の濃縮物、乾燥物であってもよい。
また、焙煎コーヒー豆抽出液を希釈して焙煎コーヒー豆抽出物としてもよい。
本発明の製造方法により製造される改質されたコーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆、並びに、これらの抽出物は、飲食品に好適に使用される。上記改質されたコーヒー生豆若しくは焙煎コーヒー豆又はその抽出物を含む飲食品は、本発明の好ましい態様の一例である。このような飲食品として、改質されたコーヒー生豆、焙煎コーヒー豆又はその抽出物をそのまま使用することができる。また、例えば該飲食品の製造に使用する原料に、改質されたコーヒー生豆若しくは焙煎コーヒー豆又はその抽出物を添加し、かかる原料を用いて該飲食品の通常の製造方法に従って飲食品を製造することができる。また、飲食品の製造工程の途中で改質されたコーヒー生豆若しくは焙煎コーヒー豆又はその抽出物を添加してもよい。さらに、改質されたコーヒー生豆若しくは焙煎コーヒー豆又はその抽出物を、最終製品に添加してもよい。
飲食品の製造においては、本発明の焙煎コーヒー豆を通常の焙煎コーヒー豆と混合して用いても良い。
<焙煎コーヒー豆又はその抽出物を含有する飲食品>
上述した本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物を含有する飲食品も、本発明に包含される。焙煎コーヒー豆は、好ましくはβ−ダマセノン含量が30ppb以上である。本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物は、そのまま飲食品とすることができるが、所望により他の成分を配合して、飲食品とすることもできる。例えば、飲食品の製造において本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物を適宜配合することにより、本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物を含有する飲食品を製造することができる。
本発明の飲食品においては、本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物と共に、通常の焙煎コーヒー豆又はその抽出物を使用してもよい。例えば、本発明の焙煎コーヒー豆を通常の焙煎コーヒー豆と混合して用いても良い。
飲食品中の本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物の含量は特に限定されないが、例えば、飲食品中に0.001〜100質量%とすることができ、好ましくは0.1〜10質量%である。
本発明の飲食品は特に限定されず、例えば、飲料として、アルコール飲料、ノンアルコール飲料が挙げられる。アルコール飲料として、例えば、ビール、チューハイ、リキュール、カクテル等が挙げられる。ノンアルコール飲料として、コーヒー飲料、炭酸飲料、フレーバーウォーター、茶飲料、果汁入り飲料、無果汁飲料、ノンアルコールビールテイスト飲料、麦芽飲料、豆乳、乳酸菌飲料、ココア、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。飲料は、希釈せずにそのまま飲用できる液体以外にも、販売時には粉末の形態で飲用時に適宜の濃度に水等に溶解して飲用する粉末又は顆粒のインスタントコーヒー(ソリュブルコーヒー)や、水等で希釈して飲用する濃縮タイプの飲料(コーヒー濃縮液等)であってもよい。
食品として、例えば、一般的な食品、健康食品、機能性食品等が挙げられる。
中でも、飲食品としては、コーヒー飲料、インスタントコーヒー又はコーヒー濃縮液が好ましい。
本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物は、コーヒー飲料、インスタントコーヒー又はコーヒー濃縮液とするのに特に好ましい。本発明の焙煎コーヒー豆又はその抽出物を含有するコーヒー飲料、インスタントコーヒー及びコーヒー濃縮液は、β−ダマセノンにより、密様の甘い香り、重厚感が増強された香味を有する。
コーヒー飲料、インスタントコーヒー及びコーヒー濃縮液等の飲食品の製造に使用される焙煎コーヒー豆又はその抽出物は、原料の焙煎コーヒー豆として、本発明の焙煎コーヒー豆を100%使用したものであってもよく、本発明の焙煎コーヒー豆に従来の方法で製造された焙煎コーヒー豆をブレンドしたものであってもよい。従来の方法で製造された焙煎コーヒー豆と、本発明の焙煎コーヒー豆をブレンドして使用しても、コーヒー飲料、インスタントコーヒー及びコーヒー濃縮液にβ−ダマセノンによる甘い香り、重厚感等を付与又は増強することができる。
<コーヒー飲料>
コーヒー飲料は、例えば、本発明の焙煎コーヒー豆抽出物を必要により水等の液体で希釈して、又は、濃縮して調製することができる。また、例えば、通常の焙煎コーヒー豆から抽出した焙煎コーヒー豆抽出液、インスタントコーヒーの水溶液、コーヒー濃縮液等のコーヒー液に、本発明の焙煎コーヒー豆抽出物を配合して製造することもできる。コーヒー飲料は、Brix(20℃)が、0.1〜10が好ましく、0.1〜5がより好ましい。
コーヒー飲料には、所望により、乳分(牛乳、乳製品等)、甘味料(ショ糖、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖等)、酸化防止剤、乳化剤、香料等を適宜配合することができる。
コーヒー飲料の形態は特に限定されないが、容器詰飲料(容器詰コーヒー飲料)とすることが好ましい。容器詰飲料の容器は特に限定されず、金属製容器、樹脂製容器、紙容器、ガラス製容器等の通常用いられる容器のいずれも用いることができる。具体例を挙げると、アルミ缶、スチール缶等の金属容器、PETボトル等の樹脂製容器、紙パック等の紙容器、ガラス瓶等のガラス容器等が挙げられる。
容器詰飲料は、コーヒー飲料を用いて常法により製造することができる。容器詰飲料とする場合、コーヒー飲料を容器に充填する前又は充填後に殺菌すると、長期保存が可能となるため好ましい。殺菌の方法及び条件は、コーヒー飲料の殺菌に通常使用される方法や条件を適宜選択すればよい。
上記コーヒー飲料を作製した後に、濃縮してコーヒー濃縮液としてもよいし、凍結乾燥、噴霧乾燥等の手段により乾燥、固化して、いわゆるインスタントコーヒーのような固形状のコーヒーとしてもよい。こうしたコーヒー濃縮液及び固形状のコーヒーは、保管や運搬に好都合である。また、これらの濃縮度合に応じて適量の水等で希釈又は溶解することにより、本発明の焙煎コーヒー豆抽出物を含むコーヒー飲料を手軽に楽しむことができる。
<インスタントコーヒー、コーヒー濃縮液>
インスタントコーヒーは、例えば、本発明の焙煎コーヒー豆抽出物を乾燥して得ることができる。また、上述したコーヒー飲料を乾燥することによって製造することもできる。乾燥方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。インスタントコーヒーは、通常、水分含量が5質量%以下であり、飲用時に水、ミルク等の液体で還元される、粉末状又は粒状のものである。インスタントコーヒーは、多孔質のものが好ましい。
コーヒー濃縮液は、本発明の焙煎コーヒー豆抽出物を必要により濃縮して得ることができる。濃縮条件は適宜選択することができる。コーヒー濃縮液とは、通常、Brix(20℃)が10を超えて80以下のものである。コーヒー濃縮液は、ポーションタイプの希釈飲料とすることができる。コーヒー濃縮液は、そのまま、又は、必要により水等で希釈して、摂取することができる。
インスタントコーヒー及びコーヒー濃縮液には、所望により、上記乳分、甘味料、酸化防止剤、乳化剤、香料等を適宜配合することができる。
<コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法、及び、コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆の改質方法>
本発明は、コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法、及び、コーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆の改質方法も包含する。
本発明のコーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法は、コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含む。
本発明のコーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆の改質方法は、コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含む。
高温高圧処理工程及びその好ましい態様は、上述した高温高圧処理工程及びその好ましい態様と同じである。本発明の製造方法は、上述した酸処理工程等の他の工程を含んでいてもよい。
高温高圧処理を行うことにより、行わない場合と比較してコーヒー生豆中のβ−ダマセノンを増加させることができる。また、β−ダマセノンが増加することにより、コーヒー生豆の甘い香りを増強することができる。このため一態様において、改質は、β−ダマセノンの増加、香味の向上又は香味の増強ともいえる。また、上記方法は、ロブスタ種のコーヒー生豆に特に好適に適用される。上述したように、ロブスタ種のコーヒー生豆を用いて高温高圧処理工程を行うと、ロブスタ種の苦味、穀物臭等のネガティブな香味を低減することができる。本発明の方法によれば、ロブスタ種のコーヒー生豆を、焙煎後には香味が良好な、より高品質なコーヒー生豆に改質することができる。
上記高温高圧処理工程を含む方法は、焙煎コーヒー豆の製造において、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法、焙煎コーヒー豆の製造において、コーヒー生豆を改質する方法としても好適である。
また、上記方法によりβ−ダマセノンが増加した又は改質されたコーヒー生豆を焙煎することにより、β−ダマセノンが多く、甘い香り等の香味が増強された焙煎コーヒー豆を得ることができる。このため上記高温高圧処理工程を含む方法は、焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法又は焙煎コーヒー豆の改質方法としても好適である。
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。水分含量(%)は、特に断らない場合は質量%を意味する。
<β−ダマセノンの測定方法>
β−ダマセノン量の測定は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)により行った。測定は、装置名7890A GC system/5975C inert XL MSD、アジレントテクノロジー社製)を用いて、以下の条件で行った。
(カラム)
DB−WAXETR 60m×0.32mm×0.25μm(アジレントテクノロジー社製)
(GC測定条件)
オーブン温度
初期値 40℃ ホールド5min
昇温速度4℃/min
最終温度250℃ ホールド20min
平衡化時間 0.25min
注入口設定
注入量 2μL
モード スプリットレス
温度 240℃
圧力 8.2938psi
トータルフロー 64.5mL/min
セプタムパージ流量 3mL/min
Aux 温度 250℃
(MS測定条件(SIM/スキャン))
SIM ターゲットイオン 190(β−Damascenone)
スキャンパラメータ 質量範囲33−350
スレッショルド 10
MSゾーン温度
イオン源温度 230℃
四重極温度 150℃
<水分含量の測定方法>
水分含量は、高周波容量式の水分計(穀類水分計 PM−650、(株)ケツト科学研究所製)により測定した。
<pHの測定方法>
溶液のpH(25℃)は、pHメーター(型式F−74BW、(株)堀場製作所製)により測定した。
<L値の測定方法>
焙煎コーヒー豆のL値は、色差計(装置名Spctro color meter SE2000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
<実施例1>
ロブスタ種のコーヒー生豆(ウガンダ産)(水分含量12%)1.6kgを、0.5M酢酸水溶液(pH3)1Lに一晩浸漬させて酸処理を行った後、充分に水を切って酸処理コーヒー生豆(水分含量40%)を得た。この酸処理コーヒー生豆を、密閉状態で高温高圧の飽和水蒸気で10分間処理を行った。より具体的には、圧力釜に酸処理コーヒー生豆1.6kgを入れ、ボイラから各温度及び圧力の飽和水蒸気を送り込んだ後密閉し、10分間蒸気処理して改質されたコーヒー生豆を得た。この高温高圧処理には、装置名HTS−40/50(株式会社日阪製作所製)を用いた。
飽和水蒸気の温度及び圧力は、(1)125℃及び0.13MPa、(2)135℃及び0.2MPa、(3)143℃及び0.28MPa、又は、(4)200℃及び1.4MPaとした。実施例中、飽和水蒸気の圧力は、ゲージ圧である。得られた改質コーヒー生豆を230℃で15分間焙煎して、L値が18の焙煎コーヒー豆を得た。
得られた改質コーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆をそれぞれボールミルにて粉砕し、各粉砕豆4gに10gのジエチルエーテル及びエーテルペンタン混合溶媒(混合比(体積比)2:1)を加えて攪拌し、室温にて16時間抽出を行った。抽出液を0.2μmのフィルターでろ過して分析サンプルを調製した。分析サンプルについて、上記方法でGC−MSにてβ−ダマセノン量を測定した。
<比較例1>
実施例1で原料に用いたロブスタ種のコーヒー生豆(酸処理及び高温高圧処理をしていない生豆)について、β−ダマセノン量を測定した。また、このコーヒー生豆を230℃で15分間焙煎して得たL値が18の焙煎コーヒー豆について、実施例1と同じ方法でβ−ダマセノン量を測定した。
実施例1で得られた改質コーヒー生豆及び比較例1の生豆(原料コーヒー生豆)のβ−ダマセノン量を表1に示す。表1中の処理温度は、高温高圧処理に使用した飽和水蒸気の温度である。表1に示すβ−ダマセノン(ppb)は、改質コーヒー生豆又は原料コーヒー生豆の固形分中のβ−ダマセノン含量(ppb)である。
Figure 2018057369
比較例1で得られた焙煎コーヒー豆のβ−ダマセノン含量は、14.9ppbであった。
実施例1の焙煎コーヒー豆のβ−ダマセノン含量は、34.8ppb((2)135℃及び0.2MPaの飽和水蒸気で高温高圧処理して得られた改質コーヒー生豆の焙煎豆)、37.9ppb((3)143℃及び0.28MPaの飽和水蒸気で高温高圧処理して得られた改質コーヒー生豆の焙煎豆)であった。
酸処理及び高温高圧処理により、コーヒー生豆中のβ−ダマセノンが顕著に増加した。生豆の固形分あたりのβ−ダマセノン含量は、200℃の飽和水蒸気で処理した生豆が最も多かった。また、改質コーヒー生豆から得られた焙煎コーヒー豆は、原料のコーヒー生豆を焙煎したコーヒー豆(比較例1)よりも、β−ダマセノン含量が多く、甘い香り等が強かった。実施例1の焙煎コーヒー豆は、ロブスタ種特有の穀物臭(ロブ臭)が、比較例1の焙煎コーヒー豆より低減されていた。
実施例1及び比較例1で得られた各焙煎コーヒー豆の粉砕豆10gを、90℃の温水150mLでドリップして、焙煎コーヒー豆抽出液を得た。この各焙煎コーヒー豆抽出液を訓練されたパネル5名で官能評価した。官能評価は、香り(ロブスタ種特有の穀物臭)、酸味、甘味及びクリーンさの項目を評価した。その結果、比較例1の焙煎コーヒー豆抽出液は、ロブスタ種特有の穀物臭(ロブ臭)があったが、実施例1の焙煎コーヒー豆抽出液は、いずれもロブ臭が低減されていた。また、実施例1の焙煎コーヒー豆抽出液は、甘味が立ち、アラビカ種のような酸味があり、さらに、クリーンな呈味であった。実施例1の焙煎コーヒー豆抽出液は、上記の香り、酸味、甘味及びクリーンの点でアラビカ種の香味に近づいたと評価された。(2)135℃及び0.2MPaの飽和水蒸気で高温高圧処理して得られた改質コーヒー生豆の焙煎豆、及び、(3)143℃及び0.28MPaの飽和水蒸気で高温高圧処理して得られた改質コーヒー生豆の焙煎豆の抽出液は、特に香味が良好であった。
<比較例2>
酸処理を行わなかった以外は、実施例1と同じ方法で比較の改質コーヒー生豆を得た。ロブスタ種のコーヒー生豆(ウガンダ産)(水分含量12%)を、密閉状態で高温高圧の飽和水蒸気(温度143℃及び圧力0.28MPa)に10分間接触させて高温高圧処理を行った。このコーヒー生豆を230℃で15分間焙煎してL値が18の焙煎コーヒー豆を得た。
<実施例2>
ロブスタ種のコーヒー生豆の代わりにアラビカ種のコーヒー生豆(グアテマラ産、水分含量12%)を使用して、温度143℃及び圧力0.28MPaの飽和水蒸気で高温高圧処理を行った以外は、実施例1と同じ方法で改質コーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆を得た。
<比較例3>
実施例2で原料に用いたアラビカ種のコーヒー生豆(酸処理及び高温高圧処理をしていない生豆)を230℃で15分間焙煎して、L値が18の焙煎コーヒー豆を得た。
<比較例4>
酸処理を行わなかった以外は、実施例2と同じ方法で比較の改質コーヒー生豆を得た。
アラビカ種のコーヒー生豆(グアテマラ産)(水分含量12%)を、密閉状態で高温高圧の飽和水蒸気(143℃、0.28MPa)に10分間接触させて高温高圧処理を行った。得られた比較の改質コーヒー生豆を230℃で15分間焙煎してL値が18の焙煎コーヒー豆を得た。
実施例2及び比較例2〜4で得られた焙煎コーヒー豆について、実施例1と同じ方法でβ−ダマセノン量を測定した。実施例2及び比較例2〜4の結果を表2に示す。実施例1において、143℃及び0.28MPaの飽和水蒸気で処理した改質コーヒー生豆の焙煎コーヒー豆、及び、比較例1の焙煎コーヒー豆のβ−ダマセノン量も、併せて表2に示す。
表2中、β−ダマセノン(ppb)は、焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノン含量(ppb)である。
Figure 2018057369
以上の結果より、酸処理をした上で高温高圧処理を行うことで焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノン含量が増加し、この効果は品種に依らず認められた。
<試験例1>
酸処理及び高温高圧処理を行ったコーヒー生豆を焙煎したコーヒー豆と一般的な焙煎コーヒー豆(酸処理及び高温高圧処理を行っていないコーヒー生豆を焙煎したもの)のβ−ダマセノン含量を比較することで本発明の効果を検証した。
ロブスタ種(ベトナム産)、アラビカ種(グアテマラ産、サルバドル産、ブラジル産、ホンジュラス産)のコーヒー生豆を230℃で15分間焙煎してL値が18の焙煎コーヒー豆を得た。この焙煎コーヒー豆について、実施例1と同じ方法でβ−ダマセノン量を測定した。結果を表3に示す。
実施例1で得られた焙煎コーヒー豆(温度143℃及び圧力0.28MPaで処理)及び比較例1の焙煎コーヒー豆のβ−ダマセノン量も表3に示す。β−ダマセノン(ppb)は、焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノン含量である。
Figure 2018057369
以上の結果より、本発明を用いることで一般的には含有し得ない量のβ−ダマセノンを含む焙煎コーヒー豆を製造できることが明らかとなった。
本発明によれば、コーヒー生豆及び焙煎コーヒー豆の香味を向上させることができる。本発明は、飲食品分野等において有用である。

Claims (19)

  1. 固形分中のβ−ダマセノン含量が、5ppb以上であることを特徴とするコーヒー生豆。
  2. 前記コーヒー生豆が、ロブスタ種である請求項1に記載のコーヒー生豆。
  3. コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含むことを特徴とする改質されたコーヒー生豆の製造方法。
  4. 前記酸性溶液が、pH1〜6の酸性溶液である請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記水蒸気を含む気体が、飽和水蒸気である請求項3又は4に記載の製造方法。
  6. 前記高温高圧処理工程の時間が、1〜1800秒である請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記酸処理コーヒー生豆の水分含量が、20〜45質量%である請求項3〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. コーヒー生豆を酸性溶液と接触させて、前記コーヒー生豆に前記酸性溶液を吸収させる酸処理工程を含む請求項3〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記コーヒー生豆の水分含量が、15質量%以下である請求項3〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記コーヒー生豆が、ロブスタ種である請求項3〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記酸性溶液が、酢酸及びクエン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸の水溶液である請求項3〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 請求項3〜11のいずれかに記載の製造方法により得られる改質されたコーヒー生豆を焙煎する工程を含むことを特徴とする焙煎コーヒー豆の製造方法。
  13. β−ダマセノン含量が、30ppb以上であることを特徴とする焙煎コーヒー豆。
  14. L値が16〜25である請求項13に記載の焙煎コーヒー豆。
  15. 前記焙煎コーヒー豆がロブスタ種である請求項13又は14に記載の焙煎コーヒー豆。
  16. 請求項13〜15のいずれかに記載の焙煎コーヒー豆又はその抽出物を含有することを特徴とする飲食品。
  17. コーヒー飲料、インスタントコーヒー又はコーヒー濃縮液である請求項16に記載の飲食品。
  18. コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含むことを特徴とするコーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆中のβ−ダマセノンを増加させる方法。
  19. コーヒー生豆に酸性溶液を吸収させた酸処理コーヒー生豆を、温度が100〜200℃で圧力(ゲージ圧)が0MPaを超える水蒸気を含む気体で処理する高温高圧処理工程を含むことを特徴とするコーヒー生豆又は焙煎コーヒー豆の改質方法。

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