JP2018056389A - 磁気抵抗効果素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高いバイアス電圧下において従来のトンネルバリアを用いたTMR素子よりも高いMR比を生じる磁気抵抗効果素子を提供する。【解決手段】下地層と、第一の強磁性金属層と、トンネルバリア層と、第二の強磁性金属層と、がこの順に積層された積層体を有し、前記下地層は、NbN、TaNまたはこれらの混晶で構成され、前記トンネルバリア層は、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造を有する、下記の組成式(1)で表される化合物で構成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。(1):AxB2Oy、式中、Aは、2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンを表し、Bは、アルミニウムイオンを表し、xは、0<x≦2を満足する数を、yは、0<y≦4を満足する数を表す。【選択図】図1

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子に関するものである。
強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子が知られている(特許文献1〜2、非特許文献1〜3)。一般的に、TMR素子はGMR素子に比べて素子抵抗が高いものの、TMR素子の磁気抵抗(MR)比はGMR素子のMR比よりも大きい。TMR素子は2種類に分類することができる。一つ目は強磁性層間の波動関数の浸み出し効果を利用したトンネル効果のみ利用したTMR素子である。2つ目は前述のトンネル効果を生じた際に、トンネルする非磁性絶縁層の特定の軌道の伝導を利用したコヒーレントトンネルを利用したTMR素子である。コヒーレントトンネルを利用したTMR素子はトンネルのみ利用したTMR素子よりも大きいMR比が得られることが知られている。このコヒーレントトンネル効果を引き起こすためには強磁性層と非磁性絶縁層が互いに結晶質であり、強磁性層と非磁性絶縁層の界面が結晶学的に連続になっている場合に生じる。
磁気抵抗効果素子は様々な用途で用いられている。例えば、磁気センサとして、磁気抵抗効果型磁気センサが知られており、ハードディスクドライブにおける再生機能において磁気抵抗効果素子がその特性を決定している。磁気抵抗効果型磁気センサは磁気抵抗効果素子の磁化の向きが外部からの磁場よって変化する効果を磁気抵抗効果素子の抵抗変化として検出する磁気センサである。今後期待されるデバイスは磁気抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(MRAM)である。MRAMでは二層の強磁性の磁気の向きを平行と反平行に適宜変化させ、磁気抵抗を0と1というデジタル信号に読み込むメモリである。
特許第5586028号公報 特開2013−175615号公報
Hiroaki Sukegawa,Huixin Xiu,Tadakatsu Ohkubo,Takao Furubayashi,Tomohiko Niizeki,Wenhong Wang,Shinya Kasai,Seiji Mitani,Koichiro Inomata, and Kazuhiro Hono、APPLIED PHYSICS LETTERS 96, 212505 (2010) Thomas Scheike,Hiroaki Sukegawa,Takao Furubayashi,Zhenchao Wen,Koichiro Inomata、Tadakatsu Ohkubo、Kazuhiro Hono, and Seiji Mitani、Applied Physics Letters,105,242407 (2014) Yoshio Miura,Shingo Muramoto,Kazutaka Abe, and Masafumi Shirai、Physical Review B 86, 024426 (2012)
近年までこのコヒーレントトンネルを生じるためには非磁性絶縁層としてMgOを使う必要があった。しかしながら、MgOを非磁性絶縁層として利用した場合、TMR素子に印加されるバイアス電圧が高くなるとMR比が大きく減少するという課題があった。
今後の磁気センサやMRAMなどのデバイスにおいて、高いバイアス電圧下でも十分なMR比が得られることが必要となっている。バイアス電圧下でのMR比の減少についての一つの指標がVhalfである。Vhalfは低バイアス電圧を基準として、低バイアス電圧印加時のMR比に対してMR比が半減するバイアス電圧を指す。低バイアス電圧とは例えば1mVである。また、磁気抵抗効果素子の抵抗値などの条件により得られる最適な低バイアス電圧は異なるため、低バイアス電圧とは少なくともVhalfよりも10分の1以下の電圧であれば良い。
磁気センサにおいては地磁気や生体磁気など微小な磁場を観測するために、回路上で抵抗変化として得られる電気信号を増幅しなければならない。従来よりも高感度を実現するためにはMR比だけではなく、出力電圧、あるいは、出力電流も増大させる必要があり、高いバイアス電圧での駆動が必要になってくる。MRAMの場合は書き込む動作において高い電圧駆動が必要である。スピントランスファートルク型(STT)MRAMでは、強磁性層の磁化の向きが変化するほど高い電流密度を磁気抵抗効果素子に印加する必要がある。強磁性層の磁化の向きはスピン偏極電流が強磁性層のスピンに作用する効果である。書き換え電流はMR比と同様に、強いスピン偏極電流によって生じるため、STT−MRAMでも同様に高いバイアス電圧下において高いMR比が必要である。
特許文献1及び非特許文献1にはMgOに代わる材料としてはスピネル構造のトンネルバリアが有効であると報告されている。MgAlの組成式で表されるスピネルトンネルバリアはMgOと同等のMR比が得ることが可能であり、同時に、高いバイアス電圧下ではMgOよりも高いMR比を得られることが知られている。また、特許文献2、非特許文献2及び非特許文献3には高いMR比を得るためにはMgAlが不規則化したスピネル構造であることが必要であることが記載されている。ここで言う不規則化したスピネル構造とは、O原子の配列はスピネルとほぼ同等の最密立方格子を取っているものの、MgとAlの原子配列が乱れた構造を持ち、全体として立方晶である構造を指す。本来のスピネルでは、酸素イオンの四面体空隙及び八面体空隙にMgとAlは規則正しく配列する。しかし、不規則化したスピネル構造ではこれらがランダムに配置されているため、結晶の対称性が変わり、実質的に格子定数がMgAlの約0.808nmから半減した構造となっている。なお、特許文献2では、不規則化したスピネル構造のMg−Al−O酸化物膜を作製する方法として、Mg膜とMg−Al合金膜を連続して成膜し、その後、酸素を導入してプラズマ酸化処理を施し、真空中で熱処理を行う方法が記載されている。特許文献2の実施例では、この方法を用いてMg膜とMg17−Al83合金膜を連続して成膜して、スピネル構造における組成比においてMgが過剰に含まれるMg−Al−O酸化物膜を成膜している。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高いバイアス電圧下において従来のトンネルバリアを用いたTMR素子よりも高いMR比を生じる磁気抵抗効果素子を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明にかかる磁気抵抗効果素子は、下地層と、第一の強磁性金属層と、トンネルバリア層と、第二の強磁性金属層と、がこの順に積層された積層体を有し、前記下地層は、VN、TiNまたはこれらの混晶で構成され、前記トンネルバリア層は、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造を有する、下記の組成式(1)で表される化合物で構成されていることを特徴とする。
(1):A
式中、Aは、2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンを表し、Bは、アルミニウムイオンを表し、xは、0<x≦2を満足する数を、yは、0<y≦4を満足する数を表す。
上記本発明の磁気抵抗効果素子では、トンネルバリア層を構成する組成式(1)の化合物は、スピネル構造のAサイトに2種以上の二価の陽イオンが配置される構造となることによって、Aサイトの陽イオンが不規則化したスピネル構造となり、格子定数が通常のスピネル構造の約半分のサイズとなる。また、Bサイトにはアルミニウムイオンが配置されているので、格子定数aが0.4〜0.5nmとなり、一般的な強磁性体である鉄やコバルトなどの元素を含む合金の格子定数と一致しやすくなり、高いバイアス電圧下でのMR比が大きくなる。
さらに、下地層がVN、TiN、又は、これらの混晶からなる構成にしたことで、高いバイアス電圧下でのMR比がより大きくなっていると考えられる。この理由は明確ではないが、発明者は、トンネルバリア層を構成する材料の結晶の格子定数と下地層を構成する窒化物がとりうる結晶の格子定数をn倍した数(nは、自然数または1/自然数)との差が小さいほど、MR比が大きくなっていることを見出した。従って、下地層がトンネルバリア層の結晶性に影響を及ぼしていると考えざるを得ない。これは従来の常識を覆す結果である。一般に、反応性スパッタ法によって成膜される窒化物膜はアモルファスであると言われている。そうすると、実施例で用いた反応性スパッタ法によって成膜されたVN膜やTiN膜はアモルファスであるということになる。しかし、下地層が完全なアモルファスであるならば、その上の層との結晶学的相関はないはずであり、発明者が得た上記結果は従来の常識を覆すものなのである。この理由を推測するに、本発明の下地層についてもTEMで観察しても原子像が得られていないので、完全に結晶化しているということではないが、一方で、これは完全にアモルファスであるということではなく、TEMによって原子像が得られるほどではないが、局所的には結晶的な部分を有しているという描像が現実に近いのではないかと考えている。反応性スパッタ法によって成膜される窒化物膜はアモルファスであるとしていた現状に対して、本発明は、磁気抵抗効果素子のMR比向上の新しい方向性を開くものである。
なお、上記結果は、後述の実施例で述べるように、磁気抵抗効果素子の下地層を構成する窒化物(VN、TiN、及びこれらの混晶)がとりうる結晶の格子定数及びトンネルバリア層の格子定数から求めた格子整合度と、MR比とを対比することによって説明することができる。VN、TiN、及びこれらの混晶がとりうる結晶構造は、一般に正方晶構造(NaCl構造)で、空間群がFm−3mの結晶構造であり、この構造をもつ結晶の格子定数は、例えば、「国立研究開発法人物質・材料研究機構、”AtomWork”、[平成28年8月23日検索]、インターネット<URL:http://crystdb.nims.go.jp/>.」に開示されている。
またさらに、VNおよびTiNは導電性を有するので、これらの窒化物で下地層を構成することによって、下地層を介して磁気抵抗効果素子に電圧を印加することができ、素子の構成を簡略にできる。
上記磁気抵抗効果素子において、前記トンネルバリア層は、前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の両方と格子整合している格子整合部と、前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の少なくとも一方と格子整合していない格子不整合部と、を有していてもよい。
一般的には、トンネルバリア層は、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の両方と全てが格子整合している方が良い。しかしながら、全てが格子整合しているとトンネルバリア層を通過する際のスピン偏極した電子がお互いに干渉するためトンネルバリア層を通過しにくくなる。逆に、トンネルバリア層は、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の両方と格子整合している格子整合部と、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の少なくとも一方と格子整合していない格子不整合部が存在すると、格子整合していない部分でトンネルバリア層を通過する際のスピン偏極した電子の干渉が適度に切断され、スピン偏極した電子がトンネルバリア層を通過しやすくなる。
上記磁気抵抗効果素子において、前記トンネルバリア層の前記格子整合部の膜面に対して平行方向の大きさが30nm以下であってもよい。
上記磁気抵抗効果素子において、前記非磁性元素の二価の陽イオンに含まれる元素の中で最も大きいイオン半径を有する元素は、前記非磁性元素の二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれていてもよい。
非磁性元素の二価の陽イオンに含まれる元素の中で最も大きいイオン半径の元素は、二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれるトンネルバリア層であると、非磁性元素の二価の陽イオンが不規則化しやすくなり、磁気抵抗比が大きくなる。また、Bはアルミニウムイオンであることにより、格子定数が一般的な強磁性体である鉄やコバルトなどの元素を含む合金の格子定数と一致しやすくなり、高い電圧下でのMR比が増大を実現できる。
上記磁気抵抗効果素子において、前記トンネルバリア層は立方晶を基本構造としていてもよい。
トンネルバリア層が立方晶になることで、特定のトンネル軌道以外の寄与が減少し、MR比が増大する。トンネルバリア層は立方晶からわずかにずれても特性を発揮するが、立方晶である方がより高いMR比を示す。
上記磁気抵抗効果素子において、前記非磁性元素の二価の陽イオンが、Mg、Zn、Cd、Ag、Pt及びPbからなる群から選択されたいずれかの元素の陽イオンであってもよい。
これらの非磁性元素は二価が安定状態であり、トンネルバリア層の構成元素となった場合にコヒーレントトンネルが実現でき、MR比が増大する。
上記磁気抵抗効果素子において、前記第二の強磁性金属層の保磁力は、前記第一の強磁性金属層の保磁力よりも大きくてもよい。
第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の保磁力が異なることでスピンバルブとして機能し、デバイス応用が可能となる。
上記磁気抵抗効果素子において、前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の少なくともいずれか一方が積層方向に対して垂直な磁気異方性を持っていてもよい。
MRAMや高周波デバイスとして使用した場合、バイアス磁界を印加させることがないため、デバイスの縮小化が可能である。また、高い熱擾乱耐性を持つため、記録素子として機能させることができる。
上記磁気抵抗効果素子において、前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の少なくともいずれか一方がCoMn1−aFeAlSi1−b(0≦a≦1,0≦b≦1)であってもよい。
CoMn1−aFeAlSi1−bはスピン分極率が高い強磁性金属材料であり、他の強磁性金属材料を用いた場合よりも高いMR比を得ることができる。
上記磁気抵抗効果素子において、前記トンネルバリア層の膜厚は1.7nm以上3.0nm以下であってもよい。
上記磁気抵抗効果素子において、前記下地層の膜厚は1.0nm以上20.0nm以下であってもよい。
下地層の膜厚がこの範囲にあることによって、トンネルバリア層の結晶サイズの均一性および配向性を確実に向上させることが可能となる。また、一般的に窒化物は金属に比べて電気抵抗率が高いため、下地層として窒化物を用いる場合には窒化物の膜厚が薄い方が好ましい。窒化物の膜厚を薄くすることで磁気抵抗効果素子を含む回路の抵抗が下がり、実効的な磁気抵抗比を増大させることができる。
本発明によれば、高いバイアス電圧下において従来のトンネルバリアを用いたTMR素子よりも高いMR比を生じる磁気抵抗効果素子を提供することができる。
本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子の積層構造を説明する要部拡大断面図である。 スピネルの結晶構造の模式図である。 本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層を構成する不規則化スピネルの結晶構造の一例の模式図である。 本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層を構成する不規則化スピネルの結晶構造の別の一例の模式図である。 本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層を構成する不規則化スピネルの結晶構造のさらに別の一例の模式図である。 本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層を構成する不規則化スピネルの結晶構造のさらに別の一例の模式図である。 本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層を構成する不規則化スピネルの結晶構造のさらに別の一例の模式図である。 本発明の一態様に係る磁気抵抗効果素子を備える磁気抵抗効果デバイスの平面図である。 図8のIX−IX線断面図である。 トンネルバリア層と強磁性金属層が格子整合している部分の一例である。(A)は高分解能の断面TEMであり、(B)は逆フーリエ解析を行った図である。 トンネルバリア層の積層方向に平行な方向を含む断面の構造図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子100について説明する。磁気抵抗効果素子100は、下地層2と、第一の強磁性金属層6と、トンネルバリア層3と、第二の強磁性金属層7と、がこの順に積層された積層体を有する。下地層2は、VN、TiNまたはこれらの混晶で構成されている。トンネルバリア層3は、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造を有する、下記の組成式(1)で表される化合物で構成されていることを特徴とする。
(1):A
式中、Aは、2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンを表し、Bは、アルミニウムイオンを表し、xは、0<x≦2を満足する数を、yは、0<y≦4を満足する数を表す。
(基本構造)
図1に示す例では、磁気抵抗効果素子100は、基板1上に設けられており、基板1より順に下地層2、第一の強磁性金属層6、トンネルバリア層3、第二の強磁性金属層7、及び、キャップ層4を備えた積層構造である。
(下地層)
下地層2は、VN、TiNまたはこれらの混晶で構成されている。ここで、「混晶」という語は便宜的に用いたが、下地層が結晶になっていることを意味しておらず、単に、VNおよびTiNを合せて用いて成膜された膜を意味する。VNおよびTiNの混合膜とも言ってもよい。VNおよびTiNはそれぞれ、VとNからなる材料、TiとNからなる材料を意味しており、金属元素とNとの原子比が1:1である必要はない。金属元素とNとの原子比は、1:0.5〜1:2(=金属元素:N)の範囲にあることが好ましい。
(トンネルバリア層)
トンネルバリア層3は非磁性絶縁材料からなる。一般的にトンネルバリア層の膜厚は1.7nm以上3.0nm以下の厚さであり、金属材料によってトンネルバリア層を挟み込むと金属材料の原子が持つ電子の波動関数がトンネルバリア層3を超えて広がるため、回路上に絶縁体が存在するにも関わらず電流が流れることができる。磁気抵抗効果素子100は、トンネルバリア層3を強磁性金属材料(第一の強磁性金属層6及び第二の強磁性金属層7)で挟み込む構造であり、挟み込んだ強磁性金属のそれぞれの磁化の向きの相対角によって抵抗値が決定される。磁気抵抗効果素子100において、通常のトンネル効果とトンネル時の軌道が限定されるコヒーレントトンネル効果がある。通常のトンネル効果では強磁性材料のスピン分極率によって磁気抵抗効果が得られる。一方、コヒーレントトンネルではトンネル時の軌道が限定されるため、強磁性材料のスピン分極率以上の効果が期待できる。したがって、コヒーレントトンネル効果を発現するためには、強磁性材料とトンネルバリア層3が結晶化し、特定の方位で接合する必要がある。
(スピネル構造)
図2にスピネル構造を示した。酸素が陽イオンに4配位するAサイトと酸素が陽イオンに6配位するBサイトが存在する。ここでの陽イオンが不規則化したスピネル構造を指すスケネル構造とは、規則スピネルの酸素原子位置はほとんど変わらないまま規則スピネル構造の半分の格子定数を持ち、本来では占有されない酸素原子の四面体位置及び八面体位置に陽イオンが位置する構造である。このとき、全部で図3〜図7に示す5つの構造の可能性があるが、これらの構造のいずれか、もしくはこれらが混ざり合った構造であればよい。
(不規則化したスピネル構造の定義)
本明細書において陽イオンが不規則化したスピネル構造をスケネル(Sukenel)構造と呼ぶことがある。スケネル構造とは、O原子の配列はスピネルとほぼ同等の最密立方格子を取っているものの、陽イオンの原子配列が乱れた構造を持ち、全体として立方晶である構造を指す。本来のスピネルでは、酸素イオンの四面体空隙及び八面体空隙に陽イオンは規則正しく配列する。しかし、スケネル構造ではこれらがランダムに配置されているため、結晶の対称性が変わり、実質的に格子定数が半減した構造となっている。この格子繰返しの単位が変わることで、強磁性金属層材料との電子構造(バンド構造)との組み合わせが変化するため、コヒーレントトンネル効果による大きなTMRエンハンスが現れる。例えば、非磁性のスピネル材料であるMgAlの空間群はFd−3mであるが、格子定数が半減した不規則化したスピネル構造の空間群はFm−3mもしくはF−43mに変化することが知られており、全部で5つの構造があり(非特許文献2)、これらのどの構造でも良い。
また、本明細書においてスケネル構造とは、必ずしも立方晶である必要はない。積層構造において、結晶構造は下地の材料の結晶構造の影響を受け、部分的に格子が歪む。それぞれの材料はバルクの結晶構造を持つが、薄膜にした場合はバルクの結晶構造を基本とし、部分的に歪んだ結晶構造を取りうる。特に、本発明におけるトンネルバリア層は非常に薄い構造であり、トンネルバリア層に接する層の結晶構造の影響を受けやすい。但し、スケネル構造のバルクの結晶構造は立方晶であり、本明細書におけるスケネル構造はスケネル構造が立方晶でない場合も立方晶からわずかにずれた構造を含む。一般的に、本明細書におけるスケネル構造における立方晶からのずれはわずかであり、構造を評価する測定方法の精度に依存する。
Bサイトは、アルミニウムイオンである。
Aサイトは、2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンである。ここで、二価の陽イオンの元素数はアルミニウムイオンの元素数の半分未満であることが好ましい。非磁性元素の構成元素数をアルミニウムイオンの元素数の半分未満にすることで、陽イオンに空孔を生じて、空孔と2種類以上の非磁性元素が陽イオンを占めることになり、格子の周期性が乱れることになるため、さらに、MR比が増大する。また、このVhalfは1V以上であり、高感度の磁気センサ、ロジックインメモリ及びMRAMなどの高いバイアス電圧が印加されるデバイスにおいても磁気抵抗効果素子が利用可能になる。
非磁性元素の二価の陽イオンは、Mg,Zn,Cd,Ag,Pt及びPbのいずれかの元素のイオンであることが好ましい。これらの非磁性元素は二価が安定状態であり、これらの2種以上の非磁性元素がトンネルバリア層の構成元素となった場合に不規則化が促進され、コヒーレントトンネルが増大し、MR比が増大する。
2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンのイオン半径の差が0.2Å以下であることが好ましい。イオン半径の差が小さいと陽イオンが秩序化しにくくなり、一般的なスピネル構造の格子定数よりも小さい格子定数になるため、イオン半径が近い2種類以上の元素の場合に不規則化が促進され、MR比がより増大する。
非磁性元素の二価の陽イオンの元素数である上記の組成式(1)のxは、0<x<1を満足する数であることが好ましく、0.15≦x≦0.85を満足する数であることがより好ましく、0.30≦x≦0.75を満足する数であることが特に好ましい。非磁性元素の二価の陽イオンの原子数がこの範囲にあることによって、陽イオンの不規則化が効率的に起こり、バイアス電圧に対してVhalfの減少が抑制される。また、このVhalfは1V以上であり、高感度の磁気センサ、ロジックインメモリ及びMRAMなどの高いバイアス電圧が印加されるデバイスにおいても磁気抵抗効果素子が利用可能になる。
非磁性元素の二価の陽イオンに含まれる元素の中で最も大きいイオン半径を有する元素は、非磁性元素の二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれることが好ましい。非磁性元素の二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれることで、陽イオンの不規則化が効率的に起こり、バイアス電圧に対してVhalfの現象が抑制される。また、このVhalfは1V以上であり、高感度の磁気センサ、ロジックインメモリ及びMRAMなどの高いバイアス電圧が印加されるデバイスにおいても磁気抵抗効果素子が利用可能になる。
トンネルバリア層は、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の両方と格子整合している格子整合部分が部分的に存在することが好ましい。一般的には、トンネルバリア層は、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の両方と全てが格子整合している方が良い。しかしながら、全てが格子整合しているとトンネルバリア層を通過する際のスピン偏極した電子がお互いに干渉するためトンネルバリア層を通過しにくくなる。逆に、格子整合している格子整合部分が部分的に存在すると、格子整合していない部分でトンネルバリア層を通過する際のスピン偏極した電子の干渉が適度に切断され、スピン偏極した電子がトンネルバリア層を通過しやすくなる。トンネルバリア層全体の体積に対する、トンネルバリア層における格子整合部分の体積比は70〜95%であることが好ましい。トンネルバリア層における格子整合部分の体積比が70%未満である場合には、コヒーレントトンネルの効果が減少するためにMR比が減少してしまうおそれがある。また、トンネルバリア層における格子整合部分の体積比が95%を超える場合には、トンネルバリア層を通過する際のスピン偏極した電子がお互いに干渉する効果を弱められず、スピン偏極した電子がトンネルバリア層を通過する効果の増大が十分に得られないおそれがある。
(下地層とトンネルバリア層との関係)
下地層2とトンネルバリア層3とは、格子定数の差が小さいことが好ましい。すなわち、下地層2がとりうる結晶構造の格子定数と、トンネルバリア層3の格子定数との差が小さいことが好ましい。具体的には、下記の式で定義される格子整合度が5%以内となるように選択され、3%以内となるように選択されることが好ましい。
格子整合度(%)=(C−nD)の絶対値/nD×100
ここで、Cはトンネルバリア層3の格子定数であり、Dは下地層2がとりうる結晶構造の格子定数である。nは、自然数または1/自然数であり、通常は1、1/2もしくは2のいずれかである。
「下地層2がとりうる結晶構造」とは、下地層2を構成するVN、TiNまたはこれらの混晶をバルクにした際にとりうる結晶構造であり、下地層2が有していると考えられる結晶構造を意味する。上述のように、下地層2は完全な結晶状態とアモルファスの中間のような状態を有していると考えられる。そのため、下地層2の結晶構造がどのような構造であるということは明確に定義できない。一方で、現実の下地層2の結晶構造が、下地層2を構成する材料をバルクにした際にとりうる結晶構造と著しく異なっているとは考えられない。下地層2がとりうる結晶構造としては、正方晶構造がある。
下地層2とトンネルバリア層3との格子定数の差が小さくなると、磁気抵抗効果素子100のMR比が向上する。上述のように、反応性スパッタ法によって成膜される下地層2はアモルファスと考えられていた。そのため、トンネルバリア層3の結晶構造と下地層2がとりうる結晶構造との整合性が、磁気抵抗効果素子100のMR比向上に影響を及ぼすことは、新たな発見である。
(第一の強磁性金属層)
第一の強磁性金属層6の材料として、強磁性材料、特に軟磁性材料が適用され、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、前記群の金属を1種以上含む合金、又は、前記群から選択される1又は複数の金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金が挙げられる。具体的には、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Feが例示できる。
第一の強磁性金属層6の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、強磁性材料を2.5nm以下とすることが好ましい。第一の強磁性金属層6とトンネルバリア層3の界面で、第一の強磁性金属層6に垂直磁気異方性を付加することができる。また、垂直磁気異方性は第一の強磁性金属層6の膜厚を厚くすることによって効果が減衰するため、第一の強磁性金属層6の膜厚は薄い方が好ましい。
(第二の強磁性金属層)
第二の強磁性金属層7の材料として、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、前記群の金属を1種以上含み、強磁性を示す合金が挙げられる。さらに前記群から選択される1又は複数の金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金が挙げられる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが例示できる。さらに、高い出力を得るためにはCoFeSiなどのホイスラー合金が好ましい。ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXの元素種をとることもでき、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoMnSiやCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。また、第一の強磁性金属層6よりも保磁力を大きくするために、第二の強磁性金属層7と接する材料としてIrMn,PtMnなどの反強磁性材料を用いても良い。さらに、第二の強磁性金属層7の漏れ磁場を第一の強磁性金属層6に影響させないようにするため、シンセティック強磁性結合の構造としても良い。
第二の強磁性金属層7の磁化の向きを積層面に対して垂直にする場合には、CoとPtの積層膜を用いることが好ましい。第二の強磁性金属層7は例えば、FeB(1.0nm)/Ta(0.2nm)/[Pt(0.16nm)/Co(0.16nm)]/Ru(0.9nm)/[Co(0.24nm)/Pt(0.16nm)]とすることで、磁化の向きを垂直にすることができる。
一般的に、第一の強磁性金属層6は磁化の向きが第二の強磁性金属層7よりも容易に外部磁場やスピントルクによって可変することができるため、自由層と呼ばれる。また、第二の強磁性金属層7は、磁化の向きが固定される構造となっており、第一の強磁性金属層6は固定層と呼ばれる。
(基板)
本発明に係る磁気抵抗効果素子を基板上に形成してもよい。
その場合、基板1は、平坦性に優れた材料を用いることが好ましい。基板1は目的とする製品によって異なる。例えば、MRAMの場合、磁気抵抗効果素子の下にはSi基板で形成された回路を用いることができる。あるいは、磁気ヘッドの場合、加工しやすいAlTiC基板を用いることができる。
(キャップ層)
本発明に係る磁気抵抗効果素子においては、第二の強磁性金属層7のトンネルバリア層3側とは反対側の表面(図1において、第二の強磁性金属層7の上面)に、キャップ層を形成してもよい。
キャップ層4は第二の強磁性金属層7の積層方向の上部に設置され、第二の強磁性金属層7の結晶配向性、結晶粒径などの結晶性や元素の拡散を制御するために用いられる。第二の強磁性金属層7の結晶構造がbcc構造の場合には、キャップ層4の結晶構造はfcc構造、hcp構造またはbcc構造のいずれでもよい。第二の強磁性金属層7の結晶構造がfcc構造の場合には、キャップ層4の結晶構造はfcc構造、hcp構造またはbcc構造のいずれでもよい。キャップ層4の膜厚は、歪緩和効果が得られ、さらにシャントによるMR比の減少が見られない範囲であればよい。キャップ層4の膜厚は、好ましくは1nm以上、30nm以下である。
キャップ層の上にスピン軌道トルク配線を形成してもよい。
ここで、スピン軌道トルク配線は、磁気抵抗効果素子の積層方向に対して交差する方向に延在し、該スピン軌道トルク配線に磁気抵抗効果素子の積層方向に対して直交する方向に電流を流す電源に電気的に接続され、その電源と共に、磁気抵抗効果素子に純スピン流を注入するスピン注入手段として機能する。
スピン軌道トルク配線は、電流が流れるとスピンホール効果によって純スピン流が生成される材料からなるものである。ここで、スピンホール効果とは、材料に電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の向きに直交する方向に純スピン流が誘起される現象である。
(素子の形状、寸法)
本発明を構成する第一の強磁性金属層6、トンネルバリア層3及び第二の強磁性金属層7からなる積層体は柱状の形状であり、積層体を平面視した形状は、円形、四角形、三角形、多角形等の種々の形状をとることができるが、対称性の面から円形であることが好ましい。すなわち、積層体は円柱状であることが好ましい。
積層体が円柱状である場合、平面視した円の直径が80nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。直径が80nm以下であると、強磁性金属層中にドメイン構造ができにくくなり、強磁性金属層におけるスピン分極と異なる成分を考慮する必要が無くなる。さらに、30nm以下であると、強磁性金属層中に単一ドメイン構造となり、磁化反転速度や確率が改善する。また小型化された磁気抵抗効果素子において、特に低抵抗化の要望が強い。
(使用時の構成)
図8および図9に、本実施形態の磁気抵抗効果素子を備える磁気抵抗効果デバイスを例示する。
図8は、磁気抵抗効果デバイス200の平面図(磁気抵抗効果デバイス200を積層方向から平面視した図)であり、図9は、図8のIX−IX線断面図である。図8および図9に示す磁気抵抗効果デバイス200において、磁気抵抗効果素子100のキャップ層4の上部にはx方向に延びた電極層5が形成されている。下地層2はz方向に、第一の強磁性金属層6の端部を超えるように延長されていて、その延長部分の上部に電極パッド8が形成されている。電極層5と電極パッド8との間には電流源71と電圧計72が備えられている。電流源71により下地層2と電極層5に電圧を印加することにより、第一の強磁性金属層6、トンネルバリア層3及び第二の強磁性金属層7からなる積層体の積層方向に電流が流れる。この際の印加電圧は電圧計72でモニターされる。
(評価方法)
磁気抵抗効果素子100は図8と図9に記載の構造で評価することができる。例えば、図8と図9のように電流源71と電圧計72を配置し、一定の電流、あるいは、一定の電圧を磁気抵抗効果素子100に印加し、電圧、あるいは電流を外部から磁場を掃引しながら測定することによって、磁気抵抗効果素子100の抵抗変化を観測することができる。
MR比は一般的に以下の式で表される。
MR比(%)=(RAP−R)/R×100
は第一の強磁性金属層6と第二の強磁性金属層7の磁化の向きが平行の場合の抵抗であり、RAPは第一の強磁性金属層6と第二の強磁性金属層7の磁化の向きが反平行の場合の抵抗である。
halfは、例えば1mVの低バイアス電圧印加時のMR比を測定し、バイアス電圧を大きくしながらMR比が半減する電圧を特定することで求める。
面積抵抗(RA)は、印加されるバイアス電圧を磁気抵抗効果素子の積層方向に流れた電流で割ることで得られる抵抗値を、各層が接合される面の面積で割り、単位面積における抵抗値に規格化したものである。印加するバイアス電圧及び磁気抵抗効果素子の積層方向に流れる電流値を電圧計及び電流計で計測し、求めることができる。
磁気抵抗効果素子100では強い電流が流れると、STTの効果によって磁化の回転が起こり、磁気抵抗効果素子100の抵抗値が急激に変化する。この抵抗値が急激に変化する電流値は反転電流値(Jc)と呼ばれる。
(その他)
本実施形態では、磁気抵抗効果素子100として、第一の強磁性金属層6が磁化自由層とされ、第二の強磁性金属層7が磁化固定層とされている、いわゆるトップピン構造の例を挙げたが、磁気抵抗効果素子100の構造は特に限定されるものではない。磁化固定層は複数の層で構成されるのが通常なので、第一の強磁性金属層6を磁化固定層としてしまうと、下地層2とトンネルバリア層3との間に多くの層を挟むことにより、本発明の効果が小さくなってしまう。これに対して、トップピン構造の場合には、第一の強磁性金属層6の保磁力は小さくなるが、下地層2とトンネルバリア層3との間に単層である磁化自由層を挟むだけなので本発明の効果が十分大きく、よりMR比を増大させることが可能である。磁気抵抗効果素子100の構造は、第一の強磁性金属層6が磁化固定層とされ、第二の強磁性金属層7が磁化自由層とされている、いわゆるボトムピン構造であってもよい。
磁気センサとして磁気抵抗効果素子を活用するためには、外部磁場に対して抵抗変化が線形に変化することが好ましい。一般的な強磁性層の積層膜では磁化の方向が形状異方性によって積層面内に向きやすい。この場合、例えば外部から磁場を印加して、第一の強磁性金属層6と第二の強磁性金属層7の磁化の向きを直交させることによって外部磁場に対して抵抗変化を線形に変化させる。但し、この場合、磁気抵抗効果素子の近くに磁場を印加させる機構が必要となるため、集積を行う上で望ましくない。強磁性金属層自体が垂直な磁気異方性を持っている場合、外部から磁場を印加するなどの方法が必要なく、集積を行う上で有利である。
本実施形態を用いた磁気抵抗効果素子は磁気センサやMRAMなどのメモリとして使用することが可能である。特に、従来の磁気センサで利用されているバイアス電圧よりも高いバイアス電圧で使用する製品において、本実施形態は効果的である。
(製造方法)
磁気抵抗効果素子100を構成する下地層2、第一の強磁性金属層6、トンネルバリア層3、第二の強磁性金属層7およびキャップ層4は、例えば、マグネトロンスパッタ装置を用いて形成することができる。
下地層2は公知の方法で作製することができる。例えば、スパッタガスとしてArと窒素とを含む混合ガスを用いた反応性スパッタ法により作製することができる。
トンネルバリア層3は公知の方法で作製することができる。例えば、第一の強磁性金属層6上に金属薄膜をスパッタし、プラズマ酸化あるいは酸素導入による自然酸化を行い、その後の熱処理によって形成される。成膜法としてはマグネトロンスパッタ法のほか、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法など通常の薄膜作製法を用いることもできる。
第一の強磁性金属層6、第二の強磁性金属層7、キャップ層4は、それぞれ公知の方法で作製することができる。
下地層2、第一の強磁性金属層6、トンネルバリア層3、第二の強磁性金属層7およびキャップ層4は、この順で成膜して積層する。得られた積層膜は、アニール処理することが好ましい。反応性スパッタ法によって成膜されるVN、TiNまたはこれらの混晶からなる窒化物の層(下地層2)は、通常はアモルファスである。アニール処理して製造した磁気抵抗効果素子100は、アニール処理しないで製造した磁気抵抗効果素子100と比較して、MR比が向上する。これは、アニール処理によって、下地層2が部分的に結晶化し、これによりトンネルバリア層3のトンネルバリア層の結晶サイズの均一性および配向性が向上するためであると考えられる。アニール処理としては、Arなどの不活性雰囲気中で、300℃以上500℃以下の温度で、5分以上100分以下の時間加熱した後、2kOe以上10kOe以下の磁場を印加した状態で、100℃以上500℃以下の温度で、1時間以上10時間以下の時間加熱することが好ましい。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、トンネルバリア層3を構成する化合物が、A(x=1、0<y≦4)という組成式で表され、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造で、Aは2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンであり、非磁性元素の二価の陽イオンに含まれる元素の中で最も大きいイオン半径を有する元素は、二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれるトンネルバリア層3であり、Bはアルミニウムイオンである。
最も大きいイオン半径を有する元素が、非磁性元素の二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれることで、陽イオンの不規則化が効率的に起こり、バイアス電圧に対してVhalfの現象が抑制される。また、このVhalfは1V以上であり、高感度の磁気センサ、ロジックインメモリ及びMRAMなどの高いバイアス電圧が印加されるデバイスにおいても磁気抵抗効果素子が利用可能になる。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、トンネルバリア層3を構成する化合物が、A(x=1、0<y≦4)という組成式で表され、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造であり、かつ、組成式中のAサイトは2種以上の非磁性元素の陽イオンを含み、Bサイトはアルミニウムである。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、トンネルバリア層3を構成する化合物が、A(0<x<1、0<y≦4)という組成式で表され、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の両方と格子整合している格子整合部分(格子整合部)が部分的に存在し、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造であり、Aは2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンであり、Bはアルミニウムである。xは、0.15≦x≦0.85を満足する数であってもよく、さらに0.30≦x≦0.75を満足する数であってもよい。
トンネルバリア層全体の体積に対する、トンネルバリア層における前記格子整合部分(格子整合部)の体積比は70〜95%であってもよい。
(第5実施形態)
第5実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、トンネルバリア層を構成する化合物が、A(x=1、0<y≦4)という組成式で表され、トンネルバリア層には、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の両方と格子整合している格子整合部分(格子整合部)が部分的に存在し、Aは2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンであり、非磁性元素の二価の陽イオンに含まれる元素の中で最も大きいイオン半径を有する元素は、二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれ、Bはアルミニウムイオンである。
トンネルバリア層全体の体積に対する、トンネルバリア層における前記格子整合部分(格子整合部)の体積比は70〜95%であってもよい。
非磁性元素の二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれることで、陽イオンの不規則化が効率的に起こり、バイアス電圧に対してVhalfの現象が抑制される。また、このVhalfは1V以上であり、高感度の磁気センサ、ロジックインメモリ及びMRAMなどの高いバイアス電圧が印加されるデバイスにおいても磁気抵抗効果素子が利用可能になる。
(第6実施形態)
第6実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、トンネルバリア層を構成する化合物が、A(x=1、0<y≦4)という組成式で表され、トンネルバリア層には、第一の強磁性金属層と第二の強磁性金属層の両方と格子整合している格子整合部分(格子整合部)が部分的に存在し、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造であり、かつ、組成式中のAサイトは2種以上の非磁性元素の陽イオンを含み、Bサイトはアルミニウムである。
トンネルバリア層全体の体積に対する、トンネルバリア層における前記格子整合部分(格子整合部)の体積比は70〜95%であってもよい。
(製造方法)
第4実施形態は、トンネルバリア層3の形成方法のみが第1実施形態と異なる。第5実施形態は、トンネルバリア層3の形成方法のみが第2実施形態と異なる。第6実施形態は、トンネルバリア層3の形成方法のみが第2実施形態と異なる。それらトンネルバリア層3の形成方法の差異は共通しているので、第4実施形態についてのみ説明する。
第1実施形態では、トンネルバリア層3は金属膜の形成、酸化、金属膜の形成、酸化を繰り返して形成している。第4実施形態では酸化の工程において基板温度を−70〜−30度に冷却した後、酸化を行っている。基板を冷却することで、基板と真空の間、あるいは、基板とプラズマの間に温度勾配が生ずる。まず、酸素が基板表面に触れると金属材料と反応して酸化するが、温度が低いため酸化が進まなくなる。これにより、トンネルバリア層3の酸素量を調整することが容易になる。また、温度勾配を形成することによって、エピタキシャル成長(格子整合した成長)を調整しやすくなる。結晶成長は温度勾配によって進むため、基板の温度を十分に冷却すると、エピタキシャル成長がし易くなる。また、基板温度が上昇すると、ドメインが形成されて面内に結晶核が複数形成され、結晶核のそれぞれが独立してエピタキシャル成長するため、結晶成長したドメイン同士が接触する部分で格子が整合しない部分が形成される。
(格子整合部の体積比の算出方法)
トンネルバリア層3全体の体積における格子整合部分(格子整合部)の体積比は、例えば、TEM像から見積ることができる。格子整合しているかの有無は断面TEM像において、トンネルバリア層3と第一の強磁性金属層6と第二の強磁性金属層7の部分をフーリエ変換して電子線回折像を得る。フーリエ変換して得られた電子線回折像において、積層方向以外の電子線回折スポットを除去する。その図を逆フーリエ変換すると積層方向のみの情報が得られた像となる。この逆フーリエ像における格子線において、トンネルバリア層が第一の強磁性金属層6および第二の強磁性金属層7の両方に連続的に繋がっている部分を格子整合部とする。また、格子線において、トンネルバリア層3が第一の強磁性金属層6および第二の強磁性金属層7のうちの少なくとも一方に連続的に繋がっていないか、格子線が検出されない部分を格子不整合部とする。格子整合部は、逆フーリエ像における格子線において、第一の強磁性金属層6からトンネルバリア層を介して第二の強磁性金属層7まで連続的に繋がっているため、TEM像から格子整合部の幅(L)を計測できる。一方、同様に、格子不整合部は逆フーリエ像における格子線において、連続的に繋がっていないため、TEM像から格子不整合部の幅(L)を計測できる。格子整合部の幅(L)を分子とし、格子整合部分の幅(L)と格子整合されていない部分の幅(L)の和を分母とすることで、トンネルバリア層全体の体積に対する格子整合部の体積比を求めることができる。なお、TEM像は断面像であるが、奥行きを含んだ情報を含んでいる。よって、TEM像から見積られた領域は体積に比例すると考えることができる。
図10はトンネルバリア層と強磁性金属層が格子整合している部分の一例である。図10(a)は高分解能の断面TEM像の例であり、図10(b)は電子線回折像において積層方向以外の電子線回折スポットを除去した後に逆フーリエ変換を行って得られ像の例である。図10(b)では積層方向と垂直な成分は除去され、積層方向に格子線が観測できる。トンネルバリア層と強磁性金属層が界面で途切れることなく、連続的に繋がっていることを示している。
図11はトンネルバリア層3の積層方向に平行な方向を含む断面の構造模式図である。図11に示すように、トンネルバリア層3の格子整合している部分の膜面に対して平行方向の大きさ(幅:Lc)は、いずれの部分でも30nm以下であることが好ましい。30nmはおよそ第一の強磁性金属層6及び第二の強磁性金属層7の材料であるCoFe合金の格子定数の約10倍であり、コヒーレントトンネルの前後においてトンネルする方向と垂直な方向のスピン偏極電子の相互干渉が格子定数の約10倍程度を目途に増強されると考えることができる。
(実施例1)
以下に、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子の製造方法の一例について説明する。熱酸化珪素膜が設けられた基板1上に、マグネトロンスパッタ法を用いて成膜を行った。先ず、基板1の上面に、下地層2としてVN 40nmを形成し、その後、CMP法を用いて下地層2を研磨し、下地層2の膜厚を10nmとした。下地層2は、ターゲットとしてVターゲットを使用し、スパッタガスとしてArと窒素とを体積比1対1で含む混合ガスを用いた反応性スパッタ法により形成した。次いで、下地層2の上に第一の強磁性金属層6として、Co74Fe26 5nmを形成した。
次に、第一の強磁性金属層6の上に、トンネルバリア層3を形成した。トンネルバリア層3の形成方法を示す。Mg、Al及びMg0.15Zn0.25Al合金組成のターゲットをスパッタしてMg 0.1nm/Mg0.15Zn0.25Al0.2nm/Al 0.15nmを成膜した。その後、超高真空1×10−8Pa以下に保持された酸化チャンバーに上記試料を移動させ、Arと酸素を導入して自然酸化を行った。自然酸化の時間は10秒、Arと酸素の分圧比は1対25、全ガス圧は0.05Paであった。その後、成膜チャンバーに戻してMg 0.1nm/Mg0.15Zn0.25Al0.2nmを成膜した。さらに、超高真空1×10−8Pa以下に保持された酸化チャンバーに上記試料を移動させ、Arと酸素を導入して自然酸化及び誘導結合プラズマ酸化を行った。自然酸化の時間は30秒、誘導結合プラズマ酸化の時間は5秒であり、Arと酸素の分圧比は1対20、全ガス圧は0.08Paであった。
上記積層膜を再び成膜チャンバーに移動し、第二の強磁性金属層7としてCoFe 7nm/Ru 0.8nm/CoFe 10nm/IrMn 12nmを順に形成した。さらに、キャップ層4としてRu 3nm/Ta 5nmを形成した。
上記積層膜をアニール装置に設置し、Ar中で450℃の温度で10分処理した後、8kOeを印加した状態で280℃の温度で6時間処理した。
次に図8、9に示す構成の磁気抵抗効果デバイスを作製した。まず、キャップ層4の上に、電極層5を形成した。次いで、電極層5の90度回転した向きになるように電子線描画を用いてフォトレジストの形成を行った。イオンミリング法によってフォトレジスト下以外の部分を削り取り、基板である熱酸化珪素膜を露出させ、下地層2の形状を形成した。さらに、下地層2の形状の括れた部分に、電子線描画を用いて80nmの円柱状になる様にフォトレジストを形成し、イオンミリング法によってフォトレジスト下以外の部分を削り取り、下地層2を露出させた。その後、SiOxを絶縁層としてイオンミリングによって削られた部分に形成した。80nmの円柱状のフォトレジストはここで除去した。図8、9の電極パッドの部分だけ、フォトレジストが形成されないようにし、イオンミリング法によって絶縁層を除去し、下地層2を露出させた。その後、Auを形成した。この電極パッド8が上記積層膜の下地層2とのコンタクト電極として機能する。続いて、図8、9の電極層になるように、フォトレジストとイオンミリング法によって形状を形成し、Auを形成した。これが上記積層膜の電極層とのコンタクト電極として機能する。
得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を下記のようにして評価した。
(特性評価)
上述の評価方法に準じて、得られた磁気抵抗効果素子のMR比及び面積抵抗(RA)を測定した。なお、MR比は、バイアス電圧が1Vの条件で測定した。
(トンネルバリア層の組成分析)
トンネルバリア層の組成分析はエネルギー分散型X線分析(EDS)を用いて行った。トンネルバリア層の組成は、Alの含有量(原子個数)を2として、二価の陽イオン(Mg、Zn、Cd、Pb)の相対量を測定することによって決定した。なお、Oの含有量は測定しなった。但し、一般的に酸化物においてOの量は定量比からずれていても結晶構造を維持することができる。
(トンネルバリア層の構造分析)
トンネルバリア層の構造分析として、結晶構造と格子定数を評価した。
結晶構造は、透過型電子線を用いた電子回折像によって評価した。この手法によってバリア層の構造を調べたところ、規則スピネル構造で現れる{022}面からの反射がない場合は、このバリア層は立方晶の陽イオンが不規則化したスピネル構造(スケネル構造)であるとした。
格子定数は、4軸X線回折装置を用いて評価を行った。格子定数の評価において、実施例のトンネルバリア層の膜厚では格子定数を決定することが困難である。
そのため、トンネルバリア層の格子定数を求めるために熱酸化膜付きSi基板上にトンネルバリア層(厚み100nm)を形成した基板を用いた。熱酸化膜付きSi基板は表面がアモルファスのSiOxであり、トンネルバリア層を形成する際の影響を受けにくい。また、トンネルバリア層(厚み100nm)は基板による格子歪みの影響が十分緩和される膜厚であり、十分な構造解析のためのX線強度を得ることができる膜厚である。
(実施例2)
下地層2としてTiN 40nmを形成し、その後、CMP法を用いて下地層2を研磨し、下地層2の膜厚を10nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして磁気抵抗効果素子を作製し、得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を評価した。下地層は、ターゲットとしてTiターゲットを使用し、スパッタガスとしてArと窒素とを体積比1対1で含む混合ガスを用いた反応性スパッタ法により形成した。
(実施例3)
下地層2としてVNとTiNを、VとTiの原子比で0.6:0.4の割合で含む混晶 40nmを形成し、その後、CMP法を用いて下地層2を研磨し、下地層2の膜厚を10nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして磁気抵抗効果素子を作製し、得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を評価した。下地層は、ターゲットとしてV0.6Ti0.4合金ターゲットを使用し、スパッタガスとしてArと窒素とを体積比1対1で含む混合ガスを用いた反応性スパッタ法により形成した。
(実施例4)
トンネルバリア層3を下記のようにして形成したこと以外は、実施例1と同様にして磁気抵抗効果素子を作製し、得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を評価した。
Mg、Al、Cd及びMg0.15Zn0.25Al合金組成のターゲットをスパッタしてMg 0.05nm/Cd 0.05nm/Mg0.15Zn0.25Al 0.2nm/Al 0.15nmを成膜した。その後、超高真空1×10−8Pa以下に保持された酸化チャンバーに上記試料を移動させ、Arと酸素を導入して自然酸化を行った。自然酸化の時間は10秒、Arと酸素の分圧比は1対25、全ガス圧は0.05Paであった。その後、成膜チャンバーに戻してMg 0.05nm/Cd 0.05nm/Mg0.15Zn0.25Al 0.2nmを成膜した。さらに、超高真空1×10−8Pa以下に保持された酸化チャンバーに上記試料を移動させ、Arと酸素を導入して自然酸化及び誘導結合プラズマ酸化を行った。自然酸化の時間は30秒、誘導結合プラズマ酸化の時間は5秒であり、Arと酸素の分圧比は1対20、全ガス圧は0.08Paであった。
(実施例5)
トンネルバリア層3を下記のようにして形成したこと以外は、実施例1と同様にして磁気抵抗効果素子を作製し、得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を評価した。
Mg、Al、Pb及びMg0.15Zn0.25Al合金組成のターゲットをスパッタしてMg 0.05nm/Pb 0.05nm/Mg0.15Zn0.25Al 0.2nm/Al 0.15nmを成膜した。その後、超高真空1×10−8Pa以下に保持された酸化チャンバーに上記試料を移動させ、Arと酸素を導入して自然酸化を行った。自然酸化の時間は10秒、Arと酸素の分圧比は1対25、全ガス圧は0.05Paであった。その後、成膜チャンバーに戻してMg 0.05nm/Pb 0.05nm/Mg0.15Zn0.25Al 0.2nmを成膜した。さらに、超高真空1×10−8Pa以下に保持された酸化チャンバーに上記試料を移動させ、Arと酸素を導入して自然酸化及び誘導結合プラズマ酸化を行った。自然酸化の時間は30秒、誘導結合プラズマ酸化の時間は5秒であり、Arと酸素の分圧比は1対20、全ガス圧は0.08Paであった。
(実施例6)
第二の強磁性金属層7を下記のようにして形成したこと以外は、実施例4と同様にして磁気抵抗効果素子を作製し、得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を評価した。
トンネルバリア層3の上に、第二の強磁性金属層7としてCoMn0.7Fe0.3Si0.66Al0.36 5nm/CoFe 2nm/Ru 0.8nm/CoFe 10nm/IrMn 12nmを順に形成した。但し、CoMn0.7Fe0.3Si0.66Al0.36合金組成を成膜する時のみ、450度に基板を温めて形成した。また、次のCoFe 2nmを形成する前に基板の熱を十分放熱し、基板温度を室温程度まで下げてからその後の成膜プロセスを実施した。
(比較例1)
下地層2としてTaN 40nmを形成し、その後、CMP法を用いて下地層2を研磨し、下地層2の膜厚を10nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして磁気抵抗効果素子を作製し、得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を評価した。下地層は、ターゲットとしてTaターゲットを使用し、スパッタガスとしてArと窒素とを体積比1対1で含む混合ガスを用いた反応性スパッタ法により形成した。
(比較例2)
下地層2としてNbN 40nmを形成し、その後、CMP法を用いて下地層2を研磨し、下地層2の膜厚を10nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして磁気抵抗効果素子を作製し、得られた磁気抵抗効果素子の物性と、トンネルバリア層の組成と構造を評価した。下地層は、ターゲットとしてNbターゲットを使用し、スパッタガスとしてArと窒素とを体積比1対1で含む混合ガスを用いた反応性スパッタ法により形成した。
(実施例と比較例の比較)
表1に実施例1〜6と比較例1〜2で作製した磁気抵抗効果素子を構成している各層の組成、下地層2を構成する窒化物の格子定数、トンネルバリア層3を構成する化合物の格子定数、下地層2とトンネルバリア層3の格子整合度、MR比、面積抵抗(RA)を示す。なお、窒化物の格子定数は、結晶構造が正方晶構造(NaCl構造)で、空間群がFm−3mであるときの値である。また、格子整合度は、前述の計算式を用い、nを1として算出した値である。
なお、実施例1〜6および比較例1〜2で作製した磁気抵抗効果素子のトンネルバリア層3は、いずれも不規則化したスピネル構造(スケネル構造)であった。
実施例1〜6で作製した磁気抵抗効果素子は、比較例1〜2で作製した磁気抵抗効果素子と比較して1Vのバイアス電圧下でのMR比が向上した。これは、実施例1〜6の磁気抵抗効果素子は、比較例1〜2の磁気抵抗効果素子と比較してトンネルバリア層を構成するスケネルの結晶の格子定数と下地層を構成する窒化物がとりうる結晶の格子定数との格子整合度が小さいためであると考えられる。従って、実施例の結果から、本発明によれば、高いバイアス電圧下において従来のトンネルバリアを用いたTMR素子よりも高いMR比を生じる磁気抵抗効果素子が得られることが確認された。
100…磁気抵抗効果素子、1…基板、2…下地層、3…トンネルバリア層、4…キャップ層、5…電極層、6…第一の強磁性金属層、7…第二の強磁性金属層、8…電極パッド、71…電流源、72…電圧計

Claims (11)

  1. 下地層と、
    第一の強磁性金属層と、
    トンネルバリア層と、
    第二の強磁性金属層と、がこの順に積層された積層体を有し、
    前記下地層は、VN、TiNまたはこれらの混晶で構成され、
    前記トンネルバリア層は、陽イオンの配列が不規則化したスピネル構造を有する、下記の組成式(1)で表される化合物で構成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
    (1):A
    式中、Aは、2種以上の非磁性元素の二価の陽イオンを表し、
    Bは、アルミニウムイオンを表し、
    xは、0<x≦2を満足する数を、yは、0<y≦4を満足する数を表す。
  2. 前記トンネルバリア層は、前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の両方と格子整合している格子整合部と、前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の少なくとも一方と格子整合していない格子不整合部と、を有する請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記トンネルバリア層の前記格子整合部の膜面に対して平行方向の大きさが30nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記非磁性元素の二価の陽イオンに含まれる元素の中で最も大きいイオン半径を有する元素は、前記非磁性元素の二価の陽イオンの中で12.5〜90%の割合で含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 前記トンネルバリア層は立方晶を基本構造とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
  6. 前記非磁性元素の二価の陽イオンが、Mg、Zn、Cd、Ag、Pt及びPbからなる群から選択されたいずれかの元素の陽イオンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
  7. 前記第二の強磁性金属層の保磁力は、前記第一の強磁性金属層の保磁力よりも大きいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
  8. 前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の少なくともいずれか一方が積層方向に対して垂直な磁気異方性を持っていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
  9. 前記第一の強磁性金属層と前記第二の強磁性金属層の少なくともいずれか一方がCoMn1−aFeAlSi1−b(0≦a≦1,0≦b≦1)であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
  10. 前記トンネルバリア層の膜厚は1.7nm以上3.0nm以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
  11. 前記下地層の膜厚は1.0nm以上20.0nm以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
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