以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面において、同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面において、各部材の大きさや比率は、実施形態の理解を容易にするために誇張し、実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
各図において、X、Y、およびZで表す矢印を用いて、組電池100の方位を示している。Xによって表す矢印の方向は、組電池100の長手方向を示している。Yによって表す矢印の方向は、組電池100の短手方向を示している。Zによって表す矢印の方向は、組電池100の積層方向を示している。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る組電池100を示す斜視図である。図2は、図1に示す組電池100から、加圧ユニット120(上部加圧板121と下部加圧板122と左右の側板123)を取り外し、かつ、バスバユニット130の一部(保護カバー135とアノード側ターミナル133とカソード側ターミナル134)を取り外した状態を示す斜視図である。図3は、積層した単電池110の電極タブ112にバスバ132を接合した状態の要部を断面によって示す側面図である。図4は、図2に示す積層体110Sから、バスバホルダ131とバスバ132を取り外した状態を示す斜視図である。図5は、図4に示す第1セルサブアッシ110M(並列接続する3組の単電池110)を単電池110毎に分解し、かつ、そのうちの1つ(最上部)の単電池110から第1スペーサ114と第2スペーサ115を取り外した状態を示す斜視図である。図6は、図4に示す第1セルサブアッシ110Mと第2セルサブアッシ110Nをバスバ132によって電気的に接続する状態を示す斜視図である。
組電池100は、電気自動車のような車両に複数搭載され、車両用モータを駆動させる電源として使用される。組電池100は、複数の単電池110を積層してなる積層体110Sを、加圧ユニット120によって加圧した状態において、バスバユニット130によって電気的に接続して構成している。以下、組電池100の各構成を説明する。
積層体110Sの構成を詳述する。
積層体110Sは、図4に示すように、電気的に並列接続した3つの単電池110からなる第1セルサブアッシ110Mと、電気的に並列接続した3つの単電池110からなる第2セルサブアッシ110Nを、交互に直列接続して構成している。
第1セルサブアッシ110Mは、図4に示すように、組電池100において、1段目(最下段)、3段目、5段目、および7段目(最上段)に位置する3つの単電池110に相当する。第2セルサブアッシ110Nは、図4に示すように、組電池100において、2段目、4段目、および6段目に位置する3つの単電池110に相当する。
第1セルサブアッシ110Mと第2セルサブアッシ110Nは、同様の構成からなる。但し、第1セルサブアッシ110Mと第2セルサブアッシ110Nは、図4および図6に示すように、3つの単電池110の天地を入れ替えることによって、3つのアノード側電極タブ112Aと3つのカソード側電極タブ112KがZ方向に沿って交互に位置するように配置している。
第1セルサブアッシ110Mは、図4および図6に示すように、全てのアノード側電極タブ112Aが図中右側に位置し、全てのカソード側電極タブ112Kが図中左側に位置している。
第2セルサブアッシ110Nは、図4および図6に示すように、全てのアノード側電極タブ112Aが図中左側に位置し、全てのカソード側電極タブ112Kが図中右側に位置している。3つの単電池110毎に、その天地を単純に入れ替えただけでは、電極タブ112の先端部112dの向きがZ方向の上下にばらついてしまう。このため、全ての単電池110の電極タブ112の先端部112dの向きが揃うように、各々の先端部112dを下方に屈折させている。
単電池110は、例えばリチウムイオン二次電池に相当する。単電池110は、車両用モータの駆動電圧の仕様を満たすために直列に複数接続する。単電池110は、電池の容量を確保して車両の走行距離を伸ばすために並列に複数接続する。
単電池110は、図3に示すように、充放電を行う発電要素111、発電要素111を外部に臨ませる電極タブ112、および発電要素111を封止するラミネートフィルム113を含んでいる。
発電要素111は、屋外の充電スタンド等から電力を充電した上で、車両用モータ等に対して放電して駆動電力を供給するものである。発電要素111は、セパレータによって分離されたアノードとカソードを複数組積層して構成している。
電極タブ112は、図3および図4に示すように、発電要素111を外部に臨ませるものである。電極タブ112は、アノード側電極タブ112Aおよびカソード側電極タブ112Kから構成している。アノード側電極タブ112Aおよびカソード側電極タブ112Kは、電池本体110Hから電池本体110Hの厚み方向と交差する同一の方向に向かって導出している。アノード側電極タブ112Aの基端側は、1つの発電要素111に含まれる全てのアノードに接合している。アノード側電極タブ112Aは、薄板状から形成し、アノードの特性に合わせてアルミニウム(Al)からなる。カソード側電極タブ112Kの基端側は、1つの発電要素111に含まれる全てのカソードに接合している。カソード側電極タブ112Kは、薄板状から形成し、カソードの特性に合わせて銅(Cu)からなる。カソード側電極タブ112Kの厚みは、アノード側電極タブ112Aの厚み以下である。カソード側電極タブ112Kの厚みは、例えば、アノード側電極タブ112Aの厚みの半分である。
電極タブ112は、図3に示すように、発電要素111と隣接する基端部112cから先端部112dにかけてL字状に形成している。電極タブ112の先端部112dは、バスバ132のアノード側裏面132pまたはカソード側裏面132sに沿うように、Z方向の下方に沿って屈折している。電極タブ112の先端部112dは、バスバ132と面接触する。
ラミネートフィルム113は、図3に示すように、一対からなり、発電要素111をZ方向に沿った上下から封止するものである。一対のラミネートフィルム113は、Y方向に沿った一端部113aの隙間から外部に向かって、アノード側電極タブ112Aおよびカソード側電極タブ112Kを導出させている。ラミネートフィルム113は、金属箔と、その金属箔を上下から被覆する絶縁性を備えたシートから構成している。
単電池110は、図5に示すように一対のスペーサ(第1スペーサ114および第2スペーサ115)によって支持された状態において、図3および図4に示すように積層される。
一対のスペーサ(第1スペーサ114および第2スペーサ115)は、図2、図3に示すように、単電池110をZ方向に沿って一定の間隔で配置している。第1スペーサ114は、電極タブ112を備えた側の単電池110を支持する。第2スペーサ115は、第1スペーサ114と単電池110のX方向において対向するように、電極タブ112を備えていない側の単電池110を支持する。
第1スペーサ114は、図5に示すように、凹凸を備えた長尺な板形状から形成し、絶縁性を備えた強化プラスチックスからなる。第1スペーサ114は、一対のラミネートフィルム113の一端部113aに対向するように設けている。第1スペーサ114は、図3および図5に示すように、平坦な支持面114bによって、ラミネートフィルム113の一端部113aを支持している。第1スペーサ114は、支持面114bと隣接しZ方向に沿った壁面に当接面114hを備えている。当接面114hは、図3に示すように、電極タブ112の先端部112dをX方向に沿って位置決めしている。第1スペーサ114は、図5に示すように、支持面114bのY方向に沿った両端に、それぞれ上方に向かって突出した一対の連結ピン114cを備えている。一対の連結ピン114cは、円柱形状からなり、ラミネートフィルム113の一端部113aのY方向に沿った両端に開口した連結孔113cに挿入することによって、単電池110を位置決めしている。
複数の第1スペーサ114は、図3に示すように、一の第1スペーサ114の上面114aと、他の第1スペーサ114の下面114dが当接している。複数の第1スペーサ114は、図3に示すように、一の第1スペーサ114の上面114aから突出した円柱形状の位置決ピン114eと、他の第1スペーサ114の下面114dに開口した位置決穴114fを嵌合させることによって、互いに位置決めしている。第1スペーサ114は、図5に示すように、Y方向に沿った両端に、ロケート孔114gを両端に備えている。ロケート孔114gは、複数の組電池100同士をZ方向に沿って位置決めしつつ連結するボルトを挿入する。
第2スペーサ115は、電極タブ112を支持する必要がないことから、第1スペーサ114を簡略化して構成している。第2スペーサ115は、図5に示すように、ラミネートフィルム113の他端部113bを支持する支持面115b、第2スペーサ同士を位置決めする位置決ピン114e、単電池110を位置決めする連結ピン115c、および複数の組電池100同士を位置決めしつつ連結するボルトを挿入するロケート孔115g等を備えている。
加圧ユニット120の構成を詳述する。
加圧ユニット120は、積層体110Sの各々の単電池110の発電要素111を上下から加圧する上部加圧板121と下部加圧板122、および積層体110Sを加圧した状態の上部加圧板121および下部加圧板122を固定する一対の側板123を含んでいる。
上部加圧板121は、図1および図2に示すように、下部加圧板122と共に、積層体110Sを構成する複数の単電池110を上下から挟み込んで保持しつつ、各々の単電池110の発電要素111を加圧するものである。上部加圧板121は、凹凸を備えた板状に形成し、十分な剛性を備えた金属からなる。上部加圧板121は、水平面上に設けている。上部加圧板121は、図2に示すように、発電要素111を下方に向かって加圧する加圧面121aを備えている。加圧面121aは、平坦に形成され、上部加圧板121の中央の部分から下方に向かって突出している。上部加圧板121は、組電池100同士を連結するボルトを挿入するロケート孔121bを備えている。ロケート孔121bは、貫通孔からなり、上部加圧板121の四隅に開口している。
下部加圧板122は、図2に示すように、上部加圧板121と同一の形状からなり、上部加圧板121の天地を逆転させるように設けている。下部加圧板122は、上部加圧板121と同様に、発電要素111を上方に向かって加圧する加圧面122a、および組電池100同士をZ方向に沿って位置決めしつつ連結するボルトを挿入するロケート孔122bを備えている。
一対の側板123は、図1および図2に示すように、積層体110Sを加圧した状態の上部加圧板121および下部加圧板122を固定するものである。すなわち、一対の側板123は、上部加圧板121および下部加圧板122の間隔を一定に維持する。また、一対の側板123は、積層した単電池110のX方向に沿った側面を被覆して保護する。側板123は、平板状に形成し、金属からなる。一対の側板123は、積層した単電池110のX方向に沿った両側面に対向するように、起立して設けている。一対の側板123は、上部加圧板121および下部加圧板122に対して溶接している。
バスバユニット130の構成を詳述する。
バスバユニット130は、複数のバスバ132を一体的に保持するバスバホルダ131、上下に並んだ単電池110の電極タブ112を電気的に接続するバスバ132、電気的に接続された複数の単電池110のアノード側の終端を外部の入出力端子に臨ませるアノード側ターミナル133、電気的に接続された複数の単電池110のカソード側の終端を外部の入出力端子に臨ませるカソード側ターミナル134、およびバスバ132等を保護する保護カバー135を含んでいる。
バスバホルダ131は、図2および図4に示すように、複数のバスバ132を一体的に保持するものである。バスバホルダ131は、複数のバスバ132を、積層体110Sの各々の単電池110の電極タブ112に対面するように、マトリクス状に一体的に保持している。バスバホルダ131は、絶縁性を備えた樹脂からなり、枠状に形成している。
バスバホルダ131は、図4に示すように、単電池110の電極タブ112を支持している方の第1スペーサ114の長手方向の両側に位置するように、Z方向に沿って起立した一対の支柱部131aをそれぞれ備えている。一対の支柱部131aは、第1スペーサ114の側面に嵌合する。一対の支柱部131aは、Z方向に沿って視認した場合にL字状であって、Z方向に沿って延在した板状に形成している。バスバホルダ131は、第1スペーサ114の長手方向の中央付近に位置するように、Z方向に沿って起立した一対の補助支柱部131bを離間させて備えている。一対の補助支柱部131bは、Z方向に沿って延在した板状に形成している。
バスバホルダ131は、図4に示すように、Z方向に沿って隣り合うバスバ132の間にそれぞれ突出する絶縁部131cを備えている。絶縁部131cは、Y方向に沿って延在した板状に形成している。各々の絶縁部131cは、補助支柱部131bと補助支柱部131bの間に水平に備えている。絶縁部131cは、Z方向に沿って隣り合うバスバ132の間を絶縁することによって放電を防止する。
バスバホルダ131は、それぞれ独立して形成した支柱部131aと補助支柱部131bおよび絶縁部131cを互いに接合して構成してもよいし、支柱部131aと補助支柱部131bおよび絶縁部131cを一体的に成形して構成してもよい。
バスバ132は、図3、図4および図6に示すように、上下に並んだ単電池110の電極タブ112を電気的に接続するものである。バスバ132は、一の単電池110のアノード側電極タブ112Aと、他の単電池110のカソード側電極タブ112Kを電気的に接続する。バスバ132は、図6に示すように、例えば、第1セルサブアッシ110Mの上下に3つ並んだアノード側電極タブ112Aと、第2セルサブアッシ110Nの上下に3つ並んだカソード側電極タブ112Kを電気的に接続する。
すなわち、バスバ132は、図6に示すように、例えば、第1セルサブアッシ110Mの3つのアノード側電極タブ112Aを並列接続し、かつ、第2セルサブアッシ110Nの3つのカソード側電極タブ112Kを並列接続する。さらに、バスバ132は、第1セルサブアッシ110Mの3つのアノード側電極タブ112Aと、第2セルサブアッシ110Nの3つのカソード側電極タブ112Kを直列接続する。バスバ132は、一の単電池110のアノード側電極タブ112Aと、他の単電池110のカソード側電極タブ112Kに対してレーザ溶接している。
バスバ132は、図3および図4に示すように、アノード側バスバ132Aとカソード側バスバ132Kを接合して構成している。アノード側バスバ132Aとカソード側バスバ132Kは、それぞれL字状に形成している。バスバ132は、図3および図4に示すように、アノード側バスバ132Aの屈折した一端と、カソード側バスバ132Kの屈折した一端を接合してなる接合部132cによって、一体化している。バスバ132を構成するアノード側バスバ132Aおよびカソード側バスバ132Kは、図4に示すように、Y方向に沿った両端にバスバホルダ131と接合する側部132dを備えている。
アノード側バスバ132Aは、図3および図4に示すように、板状からなり、その一端を屈折させてL字状に形成している。アノード側バスバ132Aの厚みは、アノード側電極タブ112Aの厚み以上であって、例えばアノード側電極タブ112Aの厚みの3倍以下である。アノード側バスバ132Aは、アノード側電極タブ112Aと同様に、アルミニウムからなる。
カソード側バスバ132Kは、図3および図4に示すように、板状からなり、その一端を屈折させてL字状に形成している。カソード側バスバ132Kは、厚みを除き、アノード側バスバ132Aと同様の形状からなる。カソード側バスバ132Kの厚みは、アノード側バスバ132Aの厚み以下である。カソード側バスバ132Kの厚みは、カソード側電極タブ112Kの厚み以上であって、例えばカソード側電極タブ112Kの厚みの3倍以下である。カソード側バスバ132Kは、カソード側電極タブ112Kと同様に、銅からなる。
異なる金属からなるアノード側バスバ132Aとカソード側バスバ132Kは、超音波接合によって互いに接合し、接合部132cを形成している。
バスバ132は、図3に示すように、アノード側バスバ132Aとカソード側バスバ132Kを、X方向(組電池100の短手方向)に沿って段違いになるように接合して構成している。すなわち、バスバ132は、アノード側バスバ132Aのアノード側裏面132pが、延長線W上において、カソード側バスバ132Kのカソード側裏面132sと、カソード側裏面132sと対向したカソード側バスバ132Kのカソード側表面132tの間に位置するように接合して構成している。延長線Wは、アノード側バスバ132Aからカソード側バスバ132Kに向かって直線上(Z方向、組電池100の積層方向)に延長した線である。
マトリクス状に配設したバスバ132のうち、図4の図中右上に位置するバスバ132は、21つの単電池110(3並列7直列)のアノード側の終端に相当し、アノード側バスバ132Aのみから構成している。このアノード側バスバ132Aは、積層した単電池110のうち最上部の3つの単電池110のアノード側電極タブ112Aに対してレーザ溶接している。
マトリクス状に配設したバスバ132のうち、図4の図中左下に位置するバスバ132は、21つの単電池110(3並列7直列)のカソード側の終端に相当し、カソード側バスバ132Kのみから構成している。このカソード側バスバ132Kは、積層した単電池110のうち最下部の3つの単電池110のカソード側電極タブ112Kに対してレーザ溶接している。
アノード側ターミナル133は、図1および図2に示すように、電気的に接続された複数の単電池110のアノード側の終端を外部の入出力端子に臨ませるものである。アノード側ターミナル133は、図2に示すように、マトリクス状に配設したバスバ132のうち、図中右上に位置するアノード側バスバ132Aに接合する。アノード側ターミナル133は、両端を屈折させた板状に形成し、導電性を備えた金属からなる。
カソード側ターミナル134は、図1および図2に示すように、電気的に接続された複数の単電池110のカソード側の終端を外部の入出力端子に臨ませるものである。カソード側ターミナル134は、図2に示すように、マトリクス状に配設したバスバ132のうち、図中左下に位置するカソード側バスバ132Kに接合する。カソード側ターミナル134は、アノード側ターミナル133と形状からなり、天地を反転させている。
保護カバー135は、図1および図2に示すように、バスバ132等を保護するものである。すなわち、保護カバー135は、複数のバスバ132を一体的に被覆することによって、各々のバスバ132が他の部材等と接触して電気的な短絡が発生することを防止する。保護カバー135は、図2に示すように、Z方向に沿って起立した側面135aの一端135bと他端135cを爪のようにX方向に向かって屈折し、絶縁性を備えたプラスチックスからなる。
保護カバー135は、側面135aによって各々のバスバ132を被覆しつつ、一端135bと他端135cによってバスバホルダ131を上下から挟み込んで固定している。保護カバー135は、矩形状の孔からなりアノード側ターミナル133を外部に臨ませる第1開口135dと、矩形状の孔からなりカソード側ターミナル134を外部に臨ませる第2開口135eを、それぞれ側面135aに備えている。
(バスバ132と電極タブ112の溶接方法)
図7は、バスバ132と電極タブ112の溶接方法を示す模式図である。
まず、各々のバスバ132を一体的に保持したバスバホルダ131を、複数積層した第1スペーサ114の側面に対して接着等によって接合する。各々の電極タブ112の先端部112dは、図7に示すように、第1スペーサ114の当接面114hによって位置決めされている。バスバホルダ131に一体的に保持されている各々のバスバ132は、対応する各々の電極タブ112の先端部112dを押圧した状態で、その先端部112dに当接する。このような構成にすることによって、各々のバスバ132と、それらに対応する各々の電極タブ112の先端部112dとの相対的な位置のばらつきを吸収する。
全てのバスバ132のアノード側裏面132pは、図7に示すように、上下に並んだ3つのアノード側電極タブ112Aの先端部112dに当接している。同様に、全てのバスバ132のカソード側裏面132sは、図7に示すように、上下に並んだ3つのカソード側電極タブ112Kの先端部112dに当接している。
つぎに、レーザLの焦点位置Lfを、図7に示すように、カソード側バスバ132Kのカソード側表面132tとカソード側裏面132sの範囲内に固定する。具体的には、レーザLの焦点位置Lfを、例えば、カソード側表面132tに固定する。レーザLの焦点位置Lfは、バスバ132と電極タブ112の溶接を実施する前に予め調整しておく。
ここで、銅からなるカソード側バスバ132Kの反射率は、アルミニウムからなるアノード側バスバ132Aの反射率よりも高い。銅の反射率は、約97%(波長800nm、入射角度45度の場合)である。アルミニウムの反射率は、約86%(波長800nm、入射角度45度の場合)である。したがって、レーザLの焦点位置Lfは、相対的に入熱し易い(透過率が高い)アノード側バスバ132Aよりも、相対的に入熱し難い(透過率が低い)カソード側バスバ132Kを基準にする。
すなわち、カソード側バスバ132Kは、レーザLの焦点位置LfがレーザLの入射面に相当するカソード側表面132tに位置することから、レーザLがカソード側表面132tに十分に集光することによって、入熱(溶融)させ易い。一方、アノード側バスバ132Aは、レーザLの焦点位置Lfがアノード側裏面132pとアノード側表面132qの間に位置することから、カソード側バスバ132Kよりも入熱(溶融)させ難い。
さらに、銅からなるカソード側バスバ132Kは、アルミニウムからなるアノード側バスバ132Aよりも熱伝導率が高いことから、レーザLの照射によって得られた熱が周囲に拡散し易い(溶融させ難い)。銅の熱伝導率は、約398[W/(m・K)]である。アルミニウムの熱伝導率は、約236[W/(m・K)]である。銅からなるカソード側バスバ132Kは、アルミニウムからなるアノード側バスバ132Aよりも融点が高いことから、溶融させ難い。銅の融点は、1085℃である。アルミニウムの融点は、660℃である。したがって、カソード側バスバ132Kの厚みを、アノード側バスバ132Aの厚みよりも薄く設定している。すなわち、カソード側バスバ132Kは、アノード側バスバ132Aと比較して、少ない熱量によって溶融させることができる。
このようにして、カソード側バスバ132Kとアノード側バスバ132Aにおける、反射率や熱伝導率および融点の違いに起因した影響を軽減している。したがって、レーザLの焦点位置Lfを、バスバ132毎に、カソード側バスバ132Kのカソード側表面132tの位置と、アノード側バスバ132Aのアノード側表面132qの位置に合わせて、調整する必要が無い。
レーザLは、X方向に沿った焦点位置Lfを変えることなく、Y方向およびZ方向にのみ走査して一括照射する。具体的には、レーザLをカソード側バスバ132Kに対してY方向に沿って照射して、カソード側バスバ132K(表材)と各々のカソード側電極タブ112Kの先端部112d(裏材)をそれぞれ溶接する。カソード側バスバ132Kと3つのカソード側電極タブ112Kをそれぞれ溶接するために、レーザLをZ方向に移動させる。
ここで、カソード側バスバ132Kと3つのカソード側電極タブ112Kの溶接が完了した後、レーザLの焦点位置Lfをアノード側バスバ132Aのアノード側表面132qに合わせることなく(レーザLのX方向に沿った焦点位置Lfを固定したまま)、アノード側バスバ132A(表材)と各々のアノード側電極タブ112Aの先端部112d(裏材)をそれぞれ溶接する。アノード側バスバ132Aと3つのアノード側電極タブ112Aをそれぞれ溶接するために、レーザLをZ方向に移動させる。
レーザLの光源には、例えば、固体レーザを用いている。固体レーザは、例えば、波長が780nm〜980nmであって、シングルモード(Single Mode)で発振するレーザダイオード(laser diode)を用いている。レーザダイオードから導出されたレーザLは、非球面レンズによって集光しつつ、シングルモードファイバ(Single Mode optical Fiber:SMF)入射させて伝搬させている。シングルモードファイバから出射したレーザLは、非球面レンズによって十分に集光した状態において、バスバ132に照射している。
以上説明した実施形態の作用効果を説明する。
バスバ132と電極タブ112の溶接方法は、複数の単電池110の電極タブ112と、バスバ132と、をレーザLの照射によって溶接する溶接方法である。ここで、単電池110は、発電要素111を含み扁平に形成した電池本体110Hと、電池本体110Hから導出した電極タブ112と、を備え、電池本体110Hの厚み方向に積層するものである。バスバ132は、一の単電池110の第1の電極タブ(アノード側電極タブ112A)と、他の単電池110の第2の電極タブ(カソード側電極タブ112K)と、を単電池110に向かう面において電気的に接続するものである。
バスバ132と電極タブ112の溶接方法では、次の構成からなるバスバ132を準備する。すなわち、一の単電池110のアノード側電極タブ112Aに溶接するアノード側バスバ132Aと、他の単電池110のカソード側電極タブ112Kに溶接するカソード側バスバ132Kと、が直線上に接合され、アノード側電極タブ112Aに当接するアノード側バスバ132Aのアノード側裏面132pが、アノード側バスバ132Aからカソード側バスバ132Kに向かって直線上に延長した延長線W上において、カソード側電極タブ112Kに当接するカソード側バスバ132Kのカソード側裏面132sと、カソード側裏面132sと対向したカソード側バスバ132Kのカソード側表面132tと、の間に位置する、バスバ132を準備する。
バスバ132と電極タブ112の溶接方法では、アノード側裏面132pをアノード側電極タブ112Aに当接させ、カソード側裏面132sをカソード側電極タブ112Kに当接させた状態において、レーザLの焦点位置Lfを電池本体110Hの厚み方向と交差する方向(X方向)に沿ったカソード側表面132tとカソード側裏面132sの範囲内に固定しつつ、レーザLをバスバ132側から照射(レーザ発振した状態においてY方向に沿って照射してシーム溶接等した後、レーザ発振を停止または継続した状態において次の溶接箇所までZ方向に沿って移動)することによって、バスバ132と電極タブ112とを溶接する。
かかるバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、「上述した構成のバスバ132」に「上述した溶接条件」を適用することによって、アノード側バスバ132Aの溶融に適した条件と、カソード側バスバ132Kの溶融に適した条件の差異を軽減することができる。この結果、バスバ132を構成するアノード側バスバ132Aとカソード側バスバ132Kとで、レーザLの焦点位置Lfを調整することなく、カソード側バスバ132Kと各々のカソード側電極タブ112Kを溶融して溶接し、かつ、アノード側バスバ132Aと各々のアノード側電極タブ112Aを溶融して溶接することができる。したがって、このバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、バスバ132と電極タブ112の溶接に要する時間を短縮することができる。
なお、「上述した構成のバスバ132」とは、「一の単電池110のアノード側電極タブ112Aに溶接するアノード側バスバ132Aと、他の単電池110のカソード側電極タブ112Kに溶接するカソード側バスバ132Kと、が直線上に接合され、アノード側電極タブ112Aに当接するアノード側バスバ132Aのアノード側裏面132pが、アノード側バスバ132Aからカソード側バスバ132Kに向かって直線上に延長した延長線W上において、カソード側電極タブ112Kに当接するカソード側バスバ132Kのカソード側裏面132sと、カソード側裏面132sと対向したカソード側バスバ132Kのカソード側表面132tと、の間に位置する、バスバ132」であって、以下同様とする。
同様に、「上述した溶接条件」とは、「アノード側裏面132pをアノード側電極タブ112Aに当接させ、カソード側裏面132sをカソード側電極タブ112Kに当接させた状態において、レーザLの焦点位置Lfを電池本体110Hの厚み方向と交差する方向(X方向)に沿ったカソード側表面132tとカソード側裏面132sの範囲内に固定しつつ、レーザLをバスバ132側から照射(レーザ発振した状態においてY方向に沿って照射してシーム溶接等した後、レーザ発振を停止または継続した状態において次の溶接箇所までZ方向に沿って移動)することによって、バスバ132と電極タブ112とを溶接する溶接条件」であって、以下同様とする。
また、かかるバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、材質や厚み等の設計の自由度を高めたバスバ132を用いて、複数の単電池110を任意の並列数および直列数によって電気的に接続して組電池100を構成することができる。したがって、このバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、要求される駆動電流や駆動電圧の値に対して柔軟に対応することによって、組電池100の汎用性を高めることができる。
また、かかるバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、例えばアノード側電極タブ112Aとカソード側電極タブ112Kの厚みに合わせて、複数種類の第1スペーサ114を用意する必要がない。したがって、このバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、同一の仕様からなる第1スペーサ114を用いることによって、第1スペーサ114の積層条件を簡略化することができ、かつ、廉価で製造することができる。また、このバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、同一の仕様からなる第1スペーサ114を用いることによって、異なる仕様からなる第1スペーサを取り違えて積層するようなことを防止できる。
また、かかるバスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、レーザLのX方向に沿った焦点位置Lfを固定できることから、溶接条件を簡便に設定することができ、レーザLを走査するための機器も簡便に構成することができる。
カソード側バスバ132Kの反射率がアノード側バスバ132Aの反射率よりも低いバスバ132を用い、レーザLの焦点位置Lfをカソード側表面132tに位置させつつ、レーザLをバスバ132に照射(レーザ発振した状態においてY方向に沿って照射してシーム溶接等した後、レーザ発振を停止または継続した状態において次の溶接箇所までZ方向に沿って移動)する。
かかるレーザLの焦点位置Lfの位置決めを行えば、アノード側バスバ132Aへの入熱とカソード側バスバ132Kへの入熱に差異が生じるような厳しい溶接条件となっても、アノード側バスバ132Aよりも溶融させ難いカソード側バスバ132Kに対する入熱条件を最適化しつつ、アノード側バスバ132Aに対しても十分に入熱させることができる。したがって、バスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、アノード側バスバ132Aへの入熱とカソード側バスバ132Kへの入熱の差異の影響を軽減して、バスバ132と各々の電極タブ112の先端部112dを十分に溶接することができる。なお、バスバ132の反射率が低い程、そのバスバ132に対して入熱(透過)させ難い。
アノード側電極タブ112Aと当接する部分の厚みが、アノード側電極タブ112Aの厚み以上のアノード側バスバ132Aと、カソード側電極タブ112Kと当接する部分の厚みが、カソード側電極タブ112Kの厚み以上のカソード側バスバ132Kと、を備えたバスバ132を用いる。
かかるバスバ132を用いることによって、相対的に厚いバスバ132側から入熱して相対的薄い電極タブ112まで溶融させるような厳しい溶接条件となっても、上述した構成のバスバ132と上述した溶接条件であれば、バスバ132と各々の電極タブ112を十分に溶接することができる。なお、相対的に厚いバスバ132(厚い表材)を十分に溶融させるように入熱した上で、相対的に薄い電極タブ112(薄い裏材)を過度に溶融させないように入熱することは、相対的に薄いバスバ(薄い表材)から入熱して相対的薄い電極タブ(厚い裏材)まで溶融させる場合と比較して難しい。
アノード側裏面132pに当接するアノード側電極タブ112Aの先端部112dが、アノード側裏面132pに沿って屈折し、カソード側裏面132sに当接するカソード側電極タブ112Kの先端部112dが、カソード側裏面132sに沿って屈折した単電池110を用いることが好ましい。
かかる単電池110を用いれば、各々の電極タブ112の先端部112dが、各々の単電池110の厚みのばらつき等に起因してZ方向に位置ずれしていたとしても、各々のバスバ132と、各々の電極タブ112の先端部112dを面接触させることができる。したがって、バスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、各々の電極タブ112の先端部112dがZ方向に位置ずれしていたとしても、各々のバスバ132の設計上の溶接位置にレーザLを照射すれば、そのバスバ132の裏面側に面接触している電極タブ112の先端部112dと十分に溶接することができる。
先端部112dをレーザLの照射方向と反対側から位置決めして、レーザLをバスバ132に照射(レーザ発振した状態においてY方向に沿って照射してシーム溶接等した後、レーザ発振を停止または継続した状態において次の溶接箇所までZ方向に沿って移動)することが好ましい。
かかる電極タブ112の先端部112dの位置決めを行えば、各々の電極タブ112の先端部112dの位置や形状がばらついていたとしても、各々の電極タブ112の先端部112dと各々のバスバ132の間に隙間が生じることなく、互いに十分に当接させることができる。したがって、バスバ132と電極タブ112の溶接方法によれば、各々の電極タブ112の先端部112dの位置や形状のばらつきの影響を受けることなく、各々のバスバ132と各々の電極タブ112の先端部112dを十分に溶接することができる。
アノード側バスバ132Aの厚みがカソード側バスバ132Kの厚みと異なるバスバ132を用いる。
かかるバスバ132を用いることによって、アノード側バスバ132Aの溶融とカソード側バスバ132Kの溶融に必要な熱量が異なるような厳しい溶接条件となっても、上述した構成のバスバ132と上述した溶接条件であれば、バスバ132と各々の電極タブ112を十分に溶接することができる。なお、バスバ132は、例えば、厚みが薄い程(体積が小さい程)、少ない熱量によって溶融させることができる。
アノード側バスバ132Aの材質と、カソード側バスバ132Kの材質と、が異なるバスバ132を用いる。
かかるバスバ132を用いることによって、アノード側バスバ132Aへの入熱とカソード側バスバ132Kへの入熱に差が生じるような厳しい溶接条件となっても、上述した構成のバスバ132と上述した溶接条件であれば、バスバ132と各々の電極タブ112とを十分に溶接することができる。なお、バスバ132は、例えば、レーザLの入射率が高い程(反射率が低い程)、入熱し易いことから、少ない熱量によって溶融させることができる。さらに、バスバ132は、例えば、熱伝導率が低い程、蓄熱し易いことから、少ない熱量によって溶融させることができる。さらに、バスバ132は、融点が低い程、少ない熱量によって溶融させることができる。
(実施形態の変形例)
図8A〜図8Cは、実施形態の変形例1〜3に係るバスバと電極タブの形状、および溶接方法を示す模式図である。
実施形態の変形例は、上述した実施形態のバスバまたは電極タブの形状を部分的に異ならせることによって、アノード側バスバの溶融とカソード側バスバの溶融に適した条件の差異を軽減させた点において、上述した実施形態と相違する。
実施形態の変形例では、上述した実施形態とは異なるバスバまたは電極タブの形状、および溶接方法について説明する。
(実施形態の変形例1)
図8Aは、実施形態の変形例1に係るバスバと電極タブおよび溶接方法を示す模式図である。
上述したカソード側電極タブ112Kの厚みは、アノード側電極タブ112Aの厚み以下である。そこで、変形例1のカソード側電極タブ212Kは、図8Aに示すように、その先端部212dを折り返して密着させることによって2重にしている。したがって、バスバ132は、そのカソード側裏面132sを、先端部212dと先端部112dのX方向に沿った厚みの差分だけ、アノード側裏面132p側に近似させることができる。すなわち、バスバ132は、カソード側表面132tを、先端部212dと先端部112dのX方向に沿った厚みの差分だけ、アノード側表面132q側に近接させることができる。
この結果、レーザLの焦点位置Lfを、図8Aに示すように、カソード側表面132tを基準にして、アノード側表面132q側に近接させることができる。したがって、バスバ132へのレーザLの照射における、アノード側バスバ132Aの溶融に適した条件と、カソード側バスバ132Kの溶融に適した条件の差異を軽減することができる。
(実施形態の変形例2)
図8Bは、実施形態の変形例2に係るバスバと電極タブおよび溶接方法を示す模式図である。
変形例2のカソード側電極タブ312Kは、図8Bに示すように、その先端部312dの一部をX方向に沿ってカソード側バスバ132K側に突出させている。したがって、バスバ132は、そのカソード側裏面132sをアノード側裏面132p側に近似させ、かつ、そのカソード側表面132tをアノード側表面132q側に近接させることができる。
この結果、レーザLの焦点位置Lfを、図8Bに示すように、変形例1と同様に、カソード側表面132tを基準にして、アノード側表面132q側に近接させることができる。したがって、バスバ132へのレーザLの照射における、アノード側バスバ132Aの溶融に適した条件と、カソード側バスバ132Kの溶融に適した条件の差異を軽減することができる。
(実施形態の変形例3)
図8Cは、実施形態の変形例3に係るバスバと電極タブおよび溶接方法を示す模式図である。
変形例3のバスバ232は、図8Cに示すように、そのカソード側バスバ232Kのカソード側裏面232sの中央部分を、X方向に沿ってカソード側電極タブ112Kの先端部112d側に突出させている。
この結果、レーザLの焦点位置Lfを、図8Cに示すように、カソード側表面232tを基準にして、アノード側表面132q側に近接させることができる。したがって、バスバ232へのレーザLの照射における、アノード側バスバ132Aの溶融に適した条件と、カソード側バスバ232Kの溶融に適した条件の差異を軽減することができる。
そのほか、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
例えば、第1の電極タブおよび第1バスバ部をカソード(負極)側として、第2の電極タブおよび第2バスバ部をアノード(正極)側としてもよい。第1の電極タブの厚みは、第1バスバ部の厚みよりも厚くてもよく、レーザLの裏抜けを防止できることから好ましい。第2の電極タブの厚みは、第2バスバ部の厚みよりも厚くてもよく、レーザLの裏抜けを防止できることから好ましい。
また、第1の電極タブの先端部112dおよび第2の電極タブの先端部112dは、Z方向に沿って屈折させることなく、基端部112cからX方向に沿って直線状に伸長させて構成してもよい。第1バスバ部の厚みは、第2バスバ部の厚みと同一であってもよいし、第2バスバ部の厚みよりも薄くてもよい。第1バスバ部の材質は、第2バスバ部の材質と同一であってもよい。