JP2018054459A - s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法、誘導体化試薬キット、および分析方法 - Google Patents

s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法、誘導体化試薬キット、および分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】誘導体化の際に、得られる誘導体の分解が抑制されたs−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法、誘導体化試薬キット、および正確な定量分析が可能な、s−cis−ジエンを有する化合物の分析方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る誘導体化法は、s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン型誘導体化試薬を用いて誘導体化する、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法であって、前記s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止工程において、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤を添加する。
【選択図】なし

Description

本発明は、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法、誘導体化試薬キット、および分析方法を提供することにある。
病院での臨床検査等において、質量分析計(以下、「MS」とも呼ぶ。)を用いた分析が知られている。特に、化合物を高速液体クロマトグラフィ−(HPLC)で分離し、分離された物質をMSでイオン化して分析する液体クロマトグラフィ−質量分析計(以下、「LC/MS」とも呼ぶ。)によるホルモン等の生体由来物質の分析は、従来から用いられているイムノアッセイ等と比較して高感度かつ高特異性があり、さらには、多項目の同時分析が可能なことから、近年急速に普及しつつある。LC/MSの中でも、特にMSとしてタンデム質量分析計(以下、「MS/MS」とも呼ぶ。)を用いたLC/MS/MSによる定量分析では、LC/MSよりも高感度な選択反応検出(以下、「SRM」とも呼ぶ。)モードを用いることにより、選択的に複数の物質を定量分析することが可能となる。
これらのLC/MS/MSによる生体由来物質の分析の1つとして、近年、血中のビタミンD(以下、「V.D.」とも呼ぶ。)およびビタミンD代謝物の分析が注目されている。s−cis−ジエンを有する化合物であり、カルシウム代謝調節に必須な脂溶性ビタミンであるビタミンDは、活性型ビタミンD(1α,25−ジヒドロキシビタミンD、以下、「1,25(OH)D」とも呼ぶ。)として、血中のカルシウム(Ca2+)濃度を高める作用を有する。この作用に加え、1,25(OH)Dや25−ヒドロキシビタミンD(以下、「25(OH)D」とも呼ぶ。)等の生体内代謝物は、細胞の分化・増殖、ホルモンの産生・分泌、免疫反応等に関与するタンパク質の発現制御に重要な役割を果たしていると考えられている。このため、作用機構および機能の観点により、ビタミンDはホルモンに分類されることがある。
このように、ビタミンDおよびビタミンD代謝物(以下、両者をまとめて「ビタミンD」とも呼ぶ。)は、栄養素としての役割と共に多岐にわたる生理活性を有しているため、ビタミンDの過不足は様々な疾患の罹患性を高めると考えられている。このため、血中のビタミンDの測定件数は増加している。そして、LC/MS/MSによるビタミンDの分析により、活性が異なる個別の物質を、従来よりも感度よく正確に分析することが可能となっている。
LC/MS/MSで用いられるイオン化法として、APCI(大気圧化学イオン化法)やESI(エレクトロスプレーイオン化)等が利用されている。中でもESIは、最もフラグメンテーションを起こし難く、適用可能な化合物の範囲の広さと高い操作性から、LC/MS/MSで最も汎用されるイオン化法である。しかしながら、一般的にビタミンD代謝物のESI応答性は低く、また、血中のビタミンD代謝物は微量成分であるため、LC/MS/MSを用いても感度が不足する場合がある。そこで、ビタミンD代謝物のイオン化効率を高めることによりLC/MS/MSにおける検出感度を向上させる目的で、例えば、クックソン(Cookson)型誘導体化試薬の1つであるPTAD(4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン)を用いて誘導体化した後に分析することがある(例えば、特許文献1参照。)。ビタミンDをPTADで誘導体化することにより、誘導体化前と比較して感度が向上し、また、高選択的な検出が可能となる。
しかし、例えば、新生児から採取した血液等の微量の試料を測定するためには、更なる感度の向上が望まれる。そこで、発明者らは、新規なクックソン型誘導体化試薬として、DAPTAD(4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン)を開発した(例えば、非特許文献1参照。)。DAPTADにより誘導体化したビタミンDは、誘導体化前と比較して約100倍にシグナル強度が増大しているため、微量の試料をLC/MS/MSで分析するのに好適である。これは、従来より用いられているPTADと比較しても、約10倍のシグナル強度である。さらに、ビタミンD代謝物の1つである25(OH)DをDAPTADで誘導体化することにより、不活性妨害代謝物である3−エピ体(3−epi−25(OH)D)等の構造異性体を区別して定量することも可能となり、従来の方法よりも更に選択性が向上している。
特開2015−166740号公報
S.Ogawa,et al、Rapidcommun.Massspectrom,25,2453−2460(2013)
上記のように、DAPTADによる誘導体化は、LC/MS/MSを用いたビタミンDの分析に好適であるが、発明者らは、ビタミンD代謝物のDAPTAD誘導体は、DAPTADを合成する際に用いる酸化剤等の影響により、誘導体化の際にその一部が分解する場合があることに気がついた。あるビタミンD代謝物のDAPTAD誘導体が分解すると、他の内因性のビタミンD代謝物のDAPTAD誘導体と同じ構造になる場合も見られたため、ビタミンD代謝物の正確な定量分析が難しくなる。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、誘導体化で得られる誘導体の分解を抑制したs−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法、および誘導体化試薬キットを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、正確な定量分析が可能な、s−cis−ジエンを有する化合物の分析方法を提供することにある。
(1)本発明に係る誘導体化法は、
s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン(Cookson)型誘導体化試薬を用いて誘導体化する、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法であって、
前記s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止工程において、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤を添加する。
このような誘導体化法では、誘導体化反応を停止させる反応停止工程において、s−cis−ジエンを有する化合物を誘導体化して得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤を添加することにより、クックソン型誘導体化試薬の製造時に使用して微量残留した酸化剤が分解されるため、得られる誘導体の分解を抑制することができる。
(2)本発明に係る誘導体化法において、
前記クックソン型誘導体化試薬は、4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DAPTAD)であってもよい。
このような誘導体化法では、得られるDAPTAD誘導体の分解を抑制することができる。
(3)本発明に係る誘導体化法において、
前記s−cis−ジエンを有する化合物は、ステロイドであってもよい。
このような誘導体化法では、得られる誘導体の分解を抑制することができる。
(4)本発明に係る誘導体化法において、
前記s−cis−ジエンを有する化合物は、ビタミンDまたはビタミンD代謝物であってもよい。
このような誘導体化法では、得られる誘導体の分解を抑制することができる。
(5)本発明に係る誘導体化法において、
前記分解防止剤は、アンモニアまたはアミンであってもよい。
このような誘導体化法では、アンモニアまたはアミンを分解防止剤として用いることにより、得られる誘導体の分解を抑制することができる。
(6)本発明に係る誘導体化法は、
前記分解防止剤は、トリエチルアミンであってもよい。
このような誘導体化法では、トリエチルアミンを誘導体の分解防止剤として用いることにより、得られる誘導体の分解を抑制することができる。
(7)本発明に係る誘導体化法において、
前記クックソン型誘導体化試薬は、安定同位体標識化合物であってもよい。
このような誘導体化法では、クックソン型誘導体化試薬が安定同位体標識化合物であっても分解が抑制され、さらには、安定同位体標識化合物で誘導体化することにより、質量分析計によって分析する際の選択性が向上する。
(8)本発明に係る誘導体化試薬キットは、
s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン型誘導体化試薬を用いて誘導体化するための誘導体化試薬キットであって、
前記誘導体化試薬キットは、クックソン型誘導体化試薬と、前記s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止剤と、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤と、を含む。
このような誘導体化試薬キットでは、得られる誘導体の分解が抑制され、正確な定量分析が可能な試薬キットを提供することができる。
(9)本発明に係るs−cis−ジエンを有する化合物の分析方法は、
本発明に係る誘導体化法により得られる誘導体を質量分析計によって分析する。
このようなs−cis−ジエンを有する化合物の分析方法では、本発明に係る誘導体化法により得られる誘導体を質量分析計によって分析するため、正確な定量分析が可能となる。
25(OH)Dと3−epi−25(OH)DをPTADで誘導体化して得られたマスクロマトグラムを示す図。 25(OH)Dと3−epi−25(OH)DをDAPTADで誘導体化して得られたマスクロマトグラムを示す図。 25(OH)D−PTADのマスクロマトグラムを示す図。 25(OH)D−DAPTADのマスクロマトグラムを示す図。 比較例1のマスクロマトグラムを示す図。 実施例1のマスクロマトグラムを示す図。 比較例2のマスクロマトグラムを示す図。 実施例2のマスクロマトグラムを示す図。 比較例3のマスクロマトグラムを示す図。 実施例3のマスクロマトグラムを示す図。 比較例4のマスクロマトグラムを示す図。 実施例4のマスクロマトグラムを示す図。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.1. 誘導体化法
まず、本実施形態に係る誘導体化法について説明する。本発明の一実施形態に係る誘導体化法は、s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン(Cookson)型誘導体化試薬を用いて誘導体化する、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法であって、前記s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止工程において、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤を添加するものである。
本実施形態に係る誘導体化法で得られる誘導体は、反応停止工程において分解防止剤を添加することにより、クックソン型誘導体化試薬の製造時に使用して残留した酸化剤が分解される。これにより、得られる誘導体の分解が防止されるため、誘導体が高収率で得られるだけでなく、残留した酸化剤の影響で生成する分解物等も減少する。このため、本実施形態に係る誘導体化法で得られる誘導体を、MS、特に、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を用いたLC/MS/MS(以下、「LC/ESI−MS/MS」とも呼ぶ。)によって分析することにより、感度および選択性が高く、正確な定量分析が可能となる。
なお、本明細書において、「誘導体」とは、s−cis−ジエンを有する化合物のs−cis−ジエン部分にクックソン型誘導体化試薬が付加することにより形成された化合物を意味する。また、本明細書において、「誘導体化」とは、s−cis−ジエンを有する化合物にクックソン型誘導体化試薬を付加させて、誘導体を形成することを意味する。さらに、本明細書において、「誘導体化反応」とは、s−cis−ジエンを有する化合物にクックソン型誘導体化試薬を反応させて誘導体を形成するための反応を意味する。また、本明細書において、「反応停止工程」とは、この誘導体化反応を行っている反応溶液中に反応停止剤を添加することにより、誘導体化反応を停止する工程を意味する。
1.1.1. s−cis−ジエンを有する化合物
本実施形態に係る誘導体化法で誘導体化の対象となる化合物は、s−cis−ジエンを有する化合物である。s−cis−ジエンを有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ステロイド、ビタミンDまたはビタミンD代謝物等が挙げられる。これらのs
−cis−ジエンを有する化合物は、後述するクックソン型誘導体化試薬とディールス・アルダー反応により定量的に反応して誘導体化され、特にLC/ESI−MS/MSによる分析において、高感度および高選択性な定量分析が可能となる。
s−cis−ジエンを有する化合物のうち、ステロイドとしては、特に限定されないが、天然に存在する化合物に限られず、合成物やその類縁体であってもよく、例えば、7−デヒドロコレステロール、エルゴステロール、共役リノール酸、ビタミンA等が挙げられる。
s−cis−ジエンを有する化合物のうち、ビタミンDは、広義の分類ではセコステロイドに属し、植物性食品に由来するビタミンDと動物性食品や皮膚産生に由来するビタミDの総称である。両者は側鎖構造のみが異なる同族体であり、ヒトの体内では同様に代謝され、同等の生理活性を有すると考えられている。このため、本明細書においては、両者を区別せず、単にビタミンDと表記する。また、本明細書において、ビタミンDおよびビタミンD代謝物を単にビタミンDとも呼ぶが、これらは、天然若しくは合成により得られたビタミンD又はビタミンD代謝の中間体及び生成物等の、ビタミンDの変換により生成したビタミンDに関連するいずれかの分子種を意味する。
そのようなビタミンDの分子種としては、特に限定されないが、例えば、25−ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)、25−ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH))、23,25−ジヒドロキシビタミンD(23,25(OH))、25,26−ジヒドロキシビタミンD(25,26(OH))、24,25−ジヒドロキシビタミンD(24,25(OH))、4β,25−ジヒドロキシビタミンD(4β,25(OH))等が挙げられる。ビタミンDの分子種は、前記の分子種の異性体であってもよく、例えば、3−エピ−25−ヒドロキシビタミンD(3−エピ−25(OH)D)等が挙げられる。また、これらのビタミンDの分子種は硫酸塩であってもよく、例えば、25−ヒドロキシビタミンD−3β−硫酸塩(25(OH)DS)等が挙げられる。なお、ビタミンDの定量分析の際には、これらのビタミンDの分子種が複数種含まれていても構わない。
1.1.2. クックソン型誘導体化試薬
本実施形態に係る誘導体化法において、上記のs−cis−ジエンを有する化合物は、クックソン型誘導体化試薬によって誘導体化される。クックソン型誘導体化試薬は、化合物のs−cis−ジエンと選択的に反応し、ディールス・アルダー反応により定量的に誘導体を形成する。
そのようなクックソン型誘導体化試薬としては、公知および市販のクックソン型誘導体化試薬を使用することが可能であり、特に限定されないが、例えば、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD)、4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)、4−フェロセニルメチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(FMTAD)、4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DAPTAD)等が挙げられる。これらのクックソン型誘導体化試薬は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、感度、選択性および安定性の観点から、クックソン型誘導体化試薬としては、DAPTADを用いることが好ましい。
本実施形態において、上記のクックソン型誘導体化試薬は、安定同位体標識化合物であ
ってもよい。クックソン型誘導体化試薬として安定同位体標識化合物を用いることにより、得られる誘導体を質量分析計によって分析する際の選択性が向上する。特に、LC/ESI−MS/MSによるSRMモードにおいてトランジションの選択の幅が広がるため、より多くの検体および項目を同時に分析することが可能となる。なお、標識化に用いる安定同位体としては、D(重水素)、13C(炭素13)、15N(窒素15)が挙げられる。また、安定同位体標識化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよく、また、安定同位体標識化されていないクックソン型誘導体化試薬と同時に用いても構わない。
1.1.3. 分解防止剤
本実施形態に係る誘導体化法において、得られる誘導体の分解を防止するために用いられる分解防止剤としては、容易に揮発して、LC/ESI−MS/MSによる分析の際に、LCでの分離や、ESIによるイオン化に影響を与えない化合物であれば、特に限定されず使用可能である。
本実施形態で使用可能な分解防止剤としては、例えば、アンモニアまたはアミンが挙げられる。アミンは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンのいずれも使用可能である。これらの中でも特に、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミンを用いることが、得られる誘導体の分解防止の点で好ましい。
1.1.4. クックソン型誘導体化試薬による誘導体化
本実施形態に係る誘導体化法において、s−cis−ジエンを有する化合物をクックソン型誘導体化試薬により誘導体化する際には、例えば、所定量のs−cis−ジエンを有する化合物をガラス製の共栓付遠心沈殿管に移し、N気流下で溶媒を留去し、これに、所定量および濃度のクックソン型誘導体化試薬溶液を加えて反応させることにより行う。
そして、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止工程において、例えば、エタノール等のアルコールを含む反応停止剤溶液を添加して誘導体化反応を停止させる際に、上記の分解防止剤を、s−cis−ジエンを有する化合物とクックソン型誘導体化試薬の反応溶液に添加する。分解防止剤は、反応停止工程において反応液に含まれていれば、得られる誘導体の分解を防止する効果が得られるため、分解防止剤は反応停止工程の前に反応液に添加されていてもよく、また、反応停止剤溶液中に添加されていてもよい。
1.2. 誘導体化試薬キット
次に、本実施形態に係る誘導体化試薬キットについて説明する。本発明の一実施形態に係る誘導体化試薬キットは、s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン型誘導体化試薬を用いて誘導体化するための誘導体化試薬キットであって、前記誘導体化試薬キットは、クックソン型誘導体化試薬と、前記s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止剤と、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤と、を含むものである。
このような誘導体化試薬キットは分解防止剤を含むため、このキットを用いてs−cis−ジエンを有する化合物を誘導体化すると、得られる誘導体の分解が抑制され、誘導体が高収率で得られるだけでなく、分解に伴って生成した分解物等が少ない。このため、本実施形態に係る誘導体化試薬キットを用いてs−cis−ジエンを有する化合物を誘導体化した場合には、特に、LC/ESI−MS/MSを用いたs−cis−ジエンを有する化合物の分析において、正確な定量分析が可能となる。
なお、本実施形態に係る誘導体化試薬キットは、クックソン型誘導体化試薬と、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止剤と、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤とは、それぞれが溶液の状態で別個の容器に保蔵されていてもよい。また、反応停止剤と分解防止剤とは、同じ容器中に溶液の状態で保存されていてもよい。
1.3. s−cis−ジエンを有する化合物の分析方法
次に、本実施形態に係るs−cis−ジエンを有する化合物の分析方法について説明する。本実施形態に係るs−cis−ジエンを有する化合物の分析方法は、上記実施形態に係る誘導体化法により得られる誘導体を質量分析計によって分析するものである。
本実施形態に係るs−cis−ジエンを有する化合物の分析方法では、本実施形態に係る誘導体化法により得られる誘導体を質量分析計によって分析するため、感度および選択性が高く、正確な定量分析が可能となる。
本実施形態に係るs−cis−ジエンを有する化合物の分析方法は、例えば、次のようにして行う。
まず、本実施形態に係る誘導体化試薬キットを用いて、s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン型誘導体化試薬により誘導体化する。次に、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止工程において、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤を反応溶液に添加する。
こうして得られたs−cis−ジエンを有する化合物の誘導体を含む溶液の一部をそのまま、または、N気流等を用いて溶媒を留去し、得られた残渣をLC用の移動相に溶解させたその一部を、例えば、LC/ESI−MS/MSに付すことにより行う。
なお、分析対象であるs−cis−ジエンを有する化合物は、標準品以外の生体試料の場合は、誘導体化の前に固相抽出や液液抽出等の抽出操作を行い、s−cis−ジエンを有する化合物を抽出および粗精製することが好ましい。このような操作を行うことにより、LC/ESI−MS/MSにおいて、より正確な定量分析が可能となる。
LC/ESI−MS/MSを用いた定量分析では、SRMモードを用い、適宜トランジッションを選択することにより、s−cis−ジエンを有する化合物の分析を行う。その際に用いるLC用のカラムや移動相等の測定条件は、分析対象および使用する装置に応じて適宜選択する。また、イオン化法は、上記したESIやAPCIが好ましいが、FAB(高速原子衝突)等の他のイオン化法であっても構わない。また、質量分析計はMS/MSであることが好ましいが、MSは1つであっても分析可能である。
2.実施例
以下、本発明を実験例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り「%」は「質量%」の意味で用いる。
なお、以下の実施例では、s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン型誘導体化試薬を用いて誘導体化する誘導体化法の一例として、4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DAPTAD)を用いたビタミンDの誘導体化の例を示す。なお、以下の例では、分解防止剤としてトリエチルアミンを用いている。
2.1. DAPTAD(1)の合成
下記スキームに基づき、DAPTAD(1)を合成した。
Figure 2018054459
2.1.1. 4−ジメチルアミノベンゾイルアジド(3)の合成[工程(i)]
30mlナス型フラスコに、市販の4−(ジメチルアミノ)ベンゾイルクロリド(2;200mg、1.1mmol)を加え、アセトン15mlで溶解させた。これを氷冷し、アジ化ナトリウム(100mg、1.5mmol)水溶液0.5mlを滴下した。この溶液を大気圧下にて氷冷しながら、1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル25mlで希釈し、飽和食塩水25mlを用いて3回洗浄した(25ml×3)。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、その後溶媒を減圧留去した。その後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(Merck製、商品名「Silicagel60(63−200μm)」、カラムサイズ;150×12mmi.d.)に付した。ヘキサン−酢酸エチル(4:1、v/v)溶出画分を集め、溶媒を減圧留去し、4−ジメチルアミノベンゾイルアジド(3)を無色固体(157mg、76%、0.8mmol)として得た。
2.1.2. 1−エトキシカルボニル−4−(4’−ジメチルアミノフェニル)セミカルバジド(5)の合成[工程(ii)、(iii)]
得られた4−ジメチルアミノベンゾイルアジド(3)(157mg、76%、0.8mmol)を30mlナス型フラスコに移した後、トルエン5mlで溶解し、大気圧下で20分還流して化合物(4)に変換した[工程(ii)]。化合物(4)を単離することなく、反応液にカルバジン酸エチル(100mg、1.0mmol)のベンゼン溶液を5ml加え、大気圧下、室温で1時間撹拌した。その後、1時間還流した。得られた反応液を放冷した後、生成した沈殿物を吸引ろ過し、1−エトキシカルボニル−4−(4’−ジメチルアミノフェニル)セミカルバジド(5)を無色固体(213mg、97%)として得た[工程(iii)]。得られた1−エトキシカルボニル−4−(4’−ジメチルアミノフェニル)セミカルバジド(5)は、精製することなく次の反応に用いた。
2.1.3. 4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン(6)の合成[工程(iv)]
得られた1−エトキシカルボニル−4−(4’−ジメチルアミノフェニル)セミカルバジド(5)を30mlナス型フラスコに移し、炭酸カリウム(100mg、0.7mmol)の水溶液10mlを加え、大気圧下、90℃で3時間撹拌した。ユニバーサルpH試験紙で確認しながら反応液に酢酸を加え、反応液のpHを約6に調整した。溶媒を減圧留去後、ODSカラムクロマトグラフィ−(和光純薬工業製、商品名「wakogel(R)100C18(63−212μm)」、カラムサイズ;300×10mmi.d.)に付し
た。50mlの水(HO)にて酢酸カリウム等を取り除いた後、メタノール(MeOH)−水(1:1、v/v)溶出画分を集め、溶媒を減圧留去後、水により再結晶させ、4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン(6)の茶色不定形結晶(52.4mg、63%)を得た。
2.1.4. 4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DAPTAD:1)の合成[工程(v)]
得られた4−(4’−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン(6;4mg、9.1μmol)を10mlのふた付き試験管に移し、酢酸エチル10mlを加えて懸濁し、ヨードベンゼンジアセテート(6mg、9.3μmol)を加え、大気圧下室温で3時間撹拌した。反応液を遠心分離(1000g、10分)し、上清をDAPTAD(1)の酢酸エチル溶液(4μg/10μl)として保存した。なお、ビタミンDの誘導体化には、このDAPTAD酢酸エチル溶液をそのまま使用した。
2.2. DAPTAD誘導体V.D.のLC/ESI−MS/MS測定
2.2.1. V.D.のDAPTAD誘導体化
ビタミンD代謝物[25(OH)Dあるいは25(OH)DS]の標準品を10mlのガラス製の共栓付遠心沈殿管に移し、N気流下で溶媒を留去した。これに、2.1.で得られたDAPTAD酢酸エチル溶液(4μg/10μl;50μl)を加え、室温で1時間放置した後、0.1%トリエチルアミンを含むエタノール40μlを加えて、反応を停止させた。N気流下溶媒を留去後、残渣を移動相100μlに溶解し、その一部(10μl)をLC/ESI−MS/MSに付した。なお、比較例では、反応を停止させる際に、トリエチルアミンを添加していないエタノール40μlを用いた。
2.2.2.使用した装置
LC/MS/MSは、日本ウォーターズ株式会社製、Waters(登録商標) Quattro Premier XE 三連四重極質量分析計に、日本ウォーターズ株式会社製、LC−e2695クロマトグラフィ−を接続して使用し、イオン化法にはESIを用い、下記分析条件で分析した。
2.2.3.分析条件
分析対象:25(OH)D−DAPTAD、25(OH)DS−DAPTAD
カラム:YMC−Pack Pro C18 RS(粒子径3μm、カラムサイズ150×2.0mmi.d.)
カラム温度:40℃
移動相:0.05%ギ酸含有メタノール−10mMギ酸アンモニウム(4:1、v/v)
流速:0.2ml/min
イオン化モード:ESI(+)
キャピラリー電圧:2.80kV
コーン電圧:40V[25(OH)D−DAPTAD]、35V[25(OHD)S−DAPTAD]または30V[25(OH)D−DAPTAD]
CE:25eV
ソース温度:120℃
脱溶媒温度:350℃
脱溶媒ガス(N)流量:600L/h
コーンガス(N)流量:50L/h
コリジョンガス(Ar)流量:0.19ml/min
SRMで使用したトランジション:
m/z 619.6→m/z 341.3[25(OH)D−DAPTAD]
m/z 558.4→m/z 298.0[25(OH)D−PTAD]
m/z 699.6→m/z 421.2[25(OH)DS−DAPTAD]
なお、データの解析には、Waters(登録商標) MassLinx 4.1ソフトウェア内の自動処理システムであるQuanLinxを用いた。
2.2.4.分析結果
まず、図1−4により、PTADよりもDAPTADの方が、高感度かつ高選択性であることを示す。図1は同一量に調整した(1インジェクションあたり2pg相当量)25(OH)Dと3−epi−25(OH)DをPTADで誘導体化して得られたマスクロマトグラムであり、図2は同一量に調整した(1インジェクションあたり2pg相当量)25(OH)Dと3−epi−25(OH)DをDAPTADで誘導体化して得られたマスクロマトグラムである。図1に示すように、PTAD誘導体では25(OH)Dと3−epi−25(OH)Dとは分離していないが、図2に示すように、DAPTAD誘導体では25(OH)Dと3−epi−25(OH)Dとが明瞭に分離され、選択性が向上した。
なお、PTAD、DAPTADに限らず、クックソン型試薬は、ビタミンD代謝物のα,βの両面から攻撃し、6位のエピマーが生成する。このため、25(OH)Dのピークとして、25(OH)Dと反応する6R体(クロマトでは先に溶出する)と、6S体(クロマトでは後に溶出する主成績体)の2つのピークが存在する。そして、3−epi−25(OH)Dでは、6R、6Sが分離せずに共溶出するため、誘導体のピークは1本として観測された。また、図1、2の相対イオン強度を比較すると、図2に示すDAPTAD誘導体では相対イオン強度が6490cpsと高い結果となった。
上記結果を、DAPTAD誘導体イオン強度を基準にして表示した例を図3、4に示す。図3は25(OH)D−PTADのマスクロマトグラムであり、図4は25(OH)D−DAPTADのマスクロマトグラムである。図3、4を比較すると、図4の方が相対イオン強度が高く、DAPTAD誘導体化による効果が見られた。
次に、図5−12に、本実施形態に係る誘導体化法による効果を示す。
まず、図5−8により、25(OH)DをDAPTADを用いて誘導体化する際に、反応停止工程において、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加したことによる効果を説明する。
図5および7は25(OH)D−DAPTAD誘導体化の反応停止工程の際に、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加しなかった例(比較例1、2)のマスクロマトグラムであり、図6および8は、25(OH)D−DAPTAD誘導体化の反応停止工程の際に、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加した例(実施例1、2)のマスクロマトグラムである。なお、実施例1、2および比較例1、2では、誘導体化する試料の中に25(OH)D以外の化合物は加えておらず、分析条件は上記と同様であり、観測したトランジションは25(OH)D−DAPTADである。また、図5および6では、使用した試料の量は2.5pg相当量、図7および8では、使用した試料の量は100pg相当量をインジェクションした。
まず、2.5pg相当量をインジェクションした図5および6(比較例1、実施例1)を比較してみると、図5(比較例1)と比べて、図6(実施例1)ではSRM測定における25(OH)D−DAPTADのトランジションでのノイズが低減し、シグナルノイズ比(S/N比)が大きくなっていた。これにより、25(OH)DをDAPTADで誘導体化する際に、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加すると、25(OH)D
−DAPTAD誘導体の分解が抑えられ、ノイズも低減されたものと考えられる。
また、100pg相当量をインジェクションした図7および8(比較例2、実施例2)を比較してみると、図7(比較例2)では、ノイズよりも誘導体のイオン強度が有意に減少していたが、図7(比較例2)と比べて、図8(実施例2)ではSRM測定における25(OH)D−DAPTADのトランジションでのイオン強度が大きくなっていた。
このように、25(OH)DをDAPTADで誘導体化の反応停止工程において、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加することにより、25(OH)D−DAPTADの分解防止効果が得られることが分かった。
次に、図9−12により、25(OH)DSをDAPTADを用いて誘導体化する際に、反応停止工程において、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加したことによる効果を説明する。
図9および11は25(OH)DS−DAPTAD誘導体化の反応停止工程の際に、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加しなかった例(比較例3、4)のマスクロマトグラムであり、図10および12は、25(OH)DS−DAPTAD誘導体化の反応停止工程の際に、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加した例(実施例3、4)のマスクロマトグラムである。図9および10では、観測したトランジションは25(OH)D−DAPTADであり、図11および12では、観測したトランジションは25(OH)DS−DAPTADである。なお、実施例3、4および比較例3、4では、誘導体化する試料の中に25(OH)D等の25(OH)DS以外の化合物は加えておらず、分析条件は上記と同様である。
図9と10を比較してみると、保持時間8.0分〜9.0分にかけて観測される25(OH)D−DAPTADピークは、図9の方がイオン強度が高い結果となった。これに対し、図11と12を比較してみると、保持時間5.0分前後に観測される25(OH)DS−DAPTADピークは、図12の方がイオン強度が高い結果となった。これらの結果により、25(OH)DSをDAPTADを用いて誘導体化する際に、トリエチルアミンを添加しない場合には、25(OH)DS−DAPTADが分解して25(OH)D−DAPTADへと脱硫酸抱合化される場合があるが、トリエチルアミンを添加すると、25(OH)DS−DAPTADの25(OH)D−DAPTADへの分解が抑制されることが示された。
ここで、25(OH)DSおよび25(OH)Dは、いずれも内因性のビタミンD代謝物であり、いずれも測定対象となるが、図9および11に示されたように、誘導体化した25(OH)DS−DAPTADの一部が分解して25(OH)D−DAPTADとなると、25(OH)DS−DAPTADの正確な定量も難しくなる。これに対し、図10および12に示したように、反応停止工程の際に分解防止剤を添加すると、25(OH)DS−DAPTADの分解が抑制されるため、25(OH)DS−DAPTADの精度の良い定量が可能となる。
さらに、上記実施例1、2および比較例1、2の結果により、25(OH)Dも、DAPTADによる誘導体化の際に、反応停止工程の際に分解防止剤としてトリエチルアミンを添加すれば誘導体の分解防止効果が得られるため、イオン強度も減少しない。このため、25(OH)Dと25(OH)DSとが混在する試料の場合であっても、DAPTADによる誘導体化の反応停止工程の際に分解防止剤としてトリエチルアミンを添加することにより、どちらか一方だけ測定したい場合であっても、また、同時に両方を測定したい場合にも、それぞれを精度良く定量することが可能となり、トリエチルアミンの添加
により測定値の信頼性を向上させることが可能となることが示された。
以上により、25(OH)D−DAPTADおよび25(OH)DS−DAPTADは、DAPTAD調製時に残ってしまった酸化剤(ヨードベンゼンジアセテート)により分解される場合もあるが、DAPTAD誘導体化の反応停止工程の際に、分解防止剤としてトリエチルアミンを添加することで、誘導体の分解が抑えられ、従来よりも高感度で正確に定量分析することが可能となることがわかった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (9)

  1. s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン型誘導体化試薬を用いて誘導体化する、s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化法であって、
    前記s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止工程において、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤を添加する、誘導体化法。
  2. 前記クックソン型誘導体化試薬は、4−(4‘−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DAPTAD)である、請求項1に記載の誘導体化法。
  3. 前記s−cis−ジエンを有する化合物は、ステロイドである、請求項1に記載の誘導体化法。
  4. 前記s−cis−ジエンを有する化合物は、ビタミンDまたはビタミンD代謝物である、請求項1に記載の誘導体化法。
  5. 前記分解防止剤は、アンモニアまたはアミンである、請求項1に記載の誘導体化法。
  6. 前記分解防止剤は、トリエチルアミンである、請求項1に記載の誘導体化法。
  7. 前記クックソン型誘導体化試薬は、安定同位体標識化合物である、請求項1に記載の誘導体化法。
  8. s−cis−ジエンを有する化合物を、クックソン型誘導体化試薬を用いて誘導体化するための誘導体化試薬キットであって、
    前記誘導体化試薬キットは、クックソン型誘導体化試薬と、前記s−cis−ジエンを有する化合物の誘導体化反応を停止させる反応停止剤と、得られる誘導体の分解を防止するための分解防止剤と、を含む、誘導体化試薬キット。
  9. 請求項1に記載の誘導体化法により得られる誘導体を質量分析計によって分析する、s−cis−ジエンを有する化合物の分析方法。
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