(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る建設機械における制御系統の構成を示す図である。
本実施形態の建設機械は、たとえば油圧ショベルであり、図示しない下部走行体と、この下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に接続された多関節型のフロント装置とを備えている。フロント装置は、たとえばブームおよびアームと、アーム先端に取り付けられたバケット等の作業具とにより構成される。なお、下部走行体、上部旋回体およびフロント装置は、油圧ショベルに備えられた油圧駆動装置である。
一般に、油圧駆動装置は、図示しないエンジン等の原動機と、この原動機によって駆動される少なくとも1つの油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出された圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプから各油圧アクチュエータへ吐出される圧油の流れをそれぞれ制御する複数のコントロールバルブとを備える。油圧アクチュエータは、たとえばフロント装置のブーム、アーム、バケットをそれぞれ駆動するブーム用油圧シリンダ、アーム用油圧シリンダ、バケット用油圧シリンダや、下部走行体を走行させる走行用油圧モータや、上部旋回体を旋回させる旋回用油圧モータ等を含む。図1に示す制御系統は、このような建設機械の動作を制御するための電気レバー方式の操作装置を構成するものである。
近年、建設機械のように高い安全性が要求される機器を電気的な操作装置で制御する場合には、機能安全への対応が必須となっている。具体的には、たとえば国際標準規格であるIEC 61508等の規定を満足する必要がある。IEC 61508では、制御対象機器の安全の確保のために設けられるシステムを安全関連系と呼び、この安全関連系を構成するハードウェアとソフトウェアに用いるべき様々な技法を規定している。これらの技法を適用することで、要求される安全度水準に見合うだけの確実さで必要な安全機能が遂行されることが保障される。しかしながら、IEC 61508で規定される技法を操作装置全体に適用して安全関連系を構成しようとすると、コストが過大になるという問題がある。そのため、一般的には、操作装置全体を安全関連系とするのではなく、安全を確保する必要のない部分を分離独立させて非安全関連系とし、その部分を機能安全の対象から外して全体のコストを下げることが行われている。
上記のような安全関連系と非安全関連系とを含む建設機械の操作装置において、安全関連系に異常が発生した場合には、代わりに非安全関連系を用いて操作を行うことが考えられる。この場合、非安全関連系にも異常が発生すると、想定とは異なる制御信号が出力されてしまうことで、建設機械がオペレータの意図とは異なる挙動をする可能性があり、安全を確保できない懸念がある。そこで、本実施形態の建設機械では、以下で説明するような方法により、安全関連系に異常が発生した場合でも、非安全関連系を用いた操作により安全を十分に確保した動作を実現できるようにしている。
図1の制御系統は、レバー101、レバーコントローラ102、第一の出力段103、電源104、第一の切り替えスイッチ105、電磁弁106、タッチパネル107、モニタ108、モニタコントローラ109、デマルチプレクサ110、第二の切り替えスイッチ111、監視部112および電流制限部113を備える。
レバー101およびレバーコントローラ102は、安全関連系の操作装置を構成するものである。レバー101には、建設機械に対するオペレータの操作が入力される。レバー101に入力された操作は、レバーコントローラ102において検出される。レバーコントローラ102は、たとえば所定のプログラムを実行するマイクロコントローラであり、オペレータがレバー101に入力した操作に基づいて、油圧アクチュエータを制御するための制御信号を生成し、第二の切り替えスイッチ111に出力する。
タッチパネル107およびモニタコントローラ109は、非安全関連系の操作装置を構成するものである。タッチパネル107は、入力装置として機能し、建設機械に対するオペレータの操作が入力される。モニタ108は、出力装置として機能し、オペレータに対して様々な情報を表示出力する。なお、タッチパネル107とモニタ108は一体化されていてもよい。モニタコントローラ109は、タッチパネル107に入力された操作を検出するための入力制御や、モニタ108の表示制御を行う。
ここで、通常時にタッチパネル107を用いてオペレータに入力される操作は、前述のレバー101を用いて入力される操作とは異なる。レバー101を用いて入力される操作は、前述のような油圧アクチュエータの駆動により実現される建設機械の動作であり、これは建設機械の安全に直接的に関わるものである。一方、タッチパネル107を用いて入力される操作は、たとえば建設機械の運用に関する設定や作業情報の設定など、建設機械の安全にはほとんど影響のないものである。
本実施形態の建設機械では、安全関連系であるレバー101やレバーコントローラ102に異常が発生した場合に、非安全関連系であるタッチパネル107をレバー101の代わりに用いて、オペレータが建設機械の操作を行うことができるようになっている。この場合、モニタコントローラ109は、オペレータがタッチパネル107に入力した操作に基づいて、油圧アクチュエータを制御するための制御信号を生成し、デマルチプレクサ110を介して第二の切り替えスイッチ111に出力する。デマルチプレクサ110は、複数(たとえば8つ)の第二の切り替えスイッチ111のいずれかを選択し、その第二の切り替えスイッチ111に対して、モニタコントローラ109から入力された制御信号を出力する。
第二の切り替えスイッチ111は、第一の出力段103に送る制御信号の切り替えを行う。第二の切り替えスイッチ111は、レバーコントローラ102から出力される制御信号と、デマルチプレクサ110を介してモニタコントローラ109から出力される制御信号とのいずれかを選択して、第一の出力段103に出力する。第二の切り替えスイッチ111は、たとえば小信号用のトランジスタを用いて構成される。
第一の出力段103は、第二の切り替えスイッチ111で選択されたレバーコントローラ102からの制御信号またはモニタコントローラ109からの制御信号を制御電流に変換して、電磁弁106に出力する。この制御電流は、電磁弁106の状態を制御して油圧アクチュエータを駆動させるための駆動信号に相当するものである。第一の出力段103は、たとえば大電力用トランジスタを用いて構成される。
電磁弁106は、第一の出力段103からの制御電流に基づいて、コントロールバルブへのパイロット圧を制御する。コントロールバルブは、この電磁弁106によるパイロット圧の制御に応じて、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する。なお、電磁弁106は、建設機械に備えられた複数のコントロールバルブに対して、それぞれ2つずつ設けられている。たとえば、4つのコントロールバルブを備えた建設機械は、合計で8つの電磁弁106を備えている。
第一の出力段103および第二の切り替えスイッチ111は、これら複数の電磁弁106の各々に対応して設けられている。すなわち、上記のように4つのコントロールバルブを備え、これに応じて8つの電磁弁106が設けられた建設機械は、8つの第一の出力段103と、8つの第二の切り替えスイッチ111とを備えている。図1では、コントロールバルブが4つの場合を例として、8つの電磁弁106と、8つの第一の出力段103と、8つの第二の切り替えスイッチ111とを、電磁弁106a〜106h、第一の出力段103a〜103h、第二の切り替えスイッチ111a〜111hとしてそれぞれ示している。ただし、電磁弁106c〜106g、第一の出力段103c〜103g、第二の切り替えスイッチ111c〜111gについては、図1において図示を省略している。
電源104は、第一の出力段103に電力を供給する。電源104には2つの電力供給系統が接続されており、一方の電力系統には電流制限部113が接続されている。電流制限部113は、電源104から第一の出力段103への電力供給系統の一方に流れる電流の最大値を所定の上限値以下に制限することで、第一の出力段103から電磁弁106に出力される制御電流を制限する。第一の切り替えスイッチ105は、電源104に接続された2つの電力供給系統の一方を選択し、その電力供給系統を介して電源104から第一の出力段103に電力が供給されるようにする。これにより、第一の出力段103から電磁弁106への制御電流に対する制限状態を切り替える。第一の切り替えスイッチ105は、たとえば大電力用トランジスタを用いて構成される。
監視部112は、レバー101およびレバーコントローラ102を監視対象として、これらの動作を監視することにより、レバー101およびレバーコントローラ102に異常が発生したか否かを判断する。その結果、レバー101およびレバーコントローラ102のいずれか一方の異常を検出したら、監視部112は、第一の切り替えスイッチ105および第二の切り替えスイッチ111に対して、切り替え信号をそれぞれ出力する。この監視部112からの切り替え信号に応じて、第一の切り替えスイッチ105は、電源104から第一の出力段103への電力供給系統を、電流制限なしの電力供給系統から、電流制限部113を介した電流制限ありの電力供給系統へと切り替える。また、第二の切り替えスイッチ111は、第一の出力段103に出力される制御信号を、レバーコントローラ102の制御信号から、デマルチプレクサ110を介したモニタコントローラ109の制御信号へと切り替える。
次に、図2のフローチャートを用いて、上記で説明した図1の制御系統の動作を説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る建設機械における制御系統の動作フローチャートである。
ここで、図2のフローチャートを開始したときには、レバー101およびレバーコントローラ102が正常な状態にあるとする。このとき、レバーコントローラ102の制御信号に応じて第一の出力段103から出力される制御電流により、電磁弁106の開度が調節される。したがって、オペレータがステップ202においてレバー101を操作すると、その操作方向や操作量に応じた制御信号がレバーコントローラ102から第一の出力段103に出力され、コントロールバルブのパイロット圧が調節される。これにより、油圧ポンプから吐出される圧油が電磁弁106およびコントロールバルブを介して油圧アクチュエータの所定のポートに供給され、油圧アクチュエータの可動部が、レバー101の操作方向に応じた方向に、レバー101の操作量に応じた量だけ駆動される。
一方、ステップ202において、モニタコントローラ109は、オペレータによるタッチパネル107への入力操作に応じて、建設機械の様々な情報をモニタ108に出力して表示させる。たとえば、圧油の流量や圧力、各種バルブのON/OFF設定、水温計、燃料計、作業モード、エアコン、後方モニタ、エンジンオイルレベル、燃料フィルタの交換時間等の情報をモニタ108に表示することができる。
ステップ203において、監視部112は、レバーコントローラ102およびレバー101を監視し、これらの少なくともいずれか一方に何らかの異常が生じたか否かを判定する。このとき監視部112は、たとえば、レバーコントローラ102から定期的に送信される動作確認信号の内容とその周期の妥当性とを検証することで、レバーコントローラ102における異常の有無を判断できる。また、レバー101からの操作信号とレバーコントローラ102からの制御信号とを一定の周期で監視し、操作信号に対して期待される制御信号がレバーコントローラ102から出力されないときには、レバーコントローラ102が異常であると判断してもよい。さらに、レバー101から出力される操作信号を二重化して2つの操作信号を比較し、その比較結果からレバー101における異常の有無を判断することもできる。その結果、レバーコントローラ102およびレバー101の少なくとも一方の異常を検出したら処理をステップ204に進め、両方とも異常を検出しない場合はステップ202に戻る。
ステップ204において、監視部112は、第一の切り替えスイッチ105および第二の切り替えスイッチ111を用いて、電磁弁106の制御を行うコントローラを、レバーコントローラ102からモニタコントローラ109へと切り替える。このとき監視部112は、第一の切り替えスイッチ105に対して、電源104から第一の出力段103への電力供給系統の切り替えを指示するための切り替え信号を出力する。この切り替え信号に応じて、電源104から電流制限部113を介して第一の出力段103に電力が供給されるように、第一の切り替えスイッチ105が切り替えられる。また監視部112は、第二の切り替えスイッチ111に対して、第一の出力段103への制御信号の切り替えを指示するための切り替え信号を出力する。この切り替え信号に応じて、モニタコントローラ109からデマルチプレクサ110を介して出力される制御信号が第一の出力段103に入力されるように、第二の切り替えスイッチ111が切り替えられる。これにより、モニタコントローラ109より入力されるタッチパネル107の操作に応じた制御信号を、第一の出力段103が制御電流に変換して電磁弁106へ送ることで、オペレータがタッチパネル107の操作により電磁弁106を制御できる状態となる。
ステップ205において、モニタコントローラ109は、レバー101またはレバーコントローラ102に故障が発生した旨と、レバー101の代わりにタッチパネル107から操作ができる状態になったことを、モニタ108に表示する。このとき監視部112は、モニタコントローラ109に対して、所定の故障通知信号を出力する。この故障通知信号を受けると、モニタコントローラ109はステップ205の処理を行う。
ステップ206において、モニタコントローラ109は、オペレータによるタッチパネル107の操作に応じて制御信号を出力し、電磁弁106を制御する。このときモニタコントローラ109は、レバー101の代わりに用いられる所定の操作ボタンをタッチパネル107に表示する。たとえばレバー101が2つあり、各レバー101が前後左右に可動するショベルの場合、このレバー操作に対応する形で、4方向の矢印ボタンを2組タッチパネル107に表示する。オペレータは、このうち任意の矢印ボタンをタッチすることで、レバー101を用いたときと同様の操作を入力することができる。
次に、図3のフローチャートを用いて、図2で説明した制御が行われるときのオペレータの動作について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る建設機械におけるオペレータの動作フローチャートである。
レバー101およびレバーコントローラ102が正常な状態にあるときには、ステップ302において、オペレータは、レバー101を操作して建設機械の制御を行う。
ステップ303において、オペレータは、レバー101またはレバーコントローラ102での故障発生の表示がモニタ108において行われたか否かを判断する。前述の図2の動作フローチャートでステップ205が実行されることで、レバー101またはレバーコントローラ102の故障発生の通知がモニタ108に表示されるまでは、オペレータはステップ302を繰り返してレバー101の操作を継続する。レバー101またはレバーコントローラ102の故障発生がモニタ108に表示されると、オペレータは次のステップ304の動作を開始する。
ステップ304において、オペレータは、レバー101の代わりにタッチパネル107を用いた操作により、建設機械の制御を行う。このときオペレータは、タッチパネル107に表示された操作ボタンを用いてタッチパネル107への操作入力を行うことで、作業の途中で停止してしまった建設機械を安全な停車姿勢に戻したり、交通の妨げになっている建設機械を退避させたりする。
ステップ305において、オペレータは、建設機械が安全な姿勢になったか否かを判断する。安全な姿勢になったと判断したら、オペレータはステップS307において、建設機械のエンジンを停止し、図3の動作を終了する。
一方、ステップ305で安全な姿勢になっていないと判断したら、オペレータはステップ306において、建設機械が予期しない誤動作をしたか否かを判断する。建設機械が誤動作をしていなければ、オペレータはステップ304に戻ってタッチパネル107による操作を継続する。一方、建設機械が誤動作をしたと判断した場合には、オペレータはステップS307において、建設機械に備えられた不図示のゲートロックレバーまたはエンジンキーを操作して、直ちにエンジンを停止させる。
なお、本実施形態の建設機械において、オペレータがタッチパネル107の操作により建設機械を動作させるときには、前述のように、電源104から電流制限部113を介して第一の出力段103に電力が供給される。そのため、モニタコントローラ109に異常が発生して予期せぬ制御信号がモニタコントローラ109から出力されたとしても、第一の出力段103からの制御電流は、電流制限部113で制限されて電磁弁106に出力される。したがって、電磁弁106からコントロールバルブへのパイロット圧が制限され、油圧アクチュエータの挙動は正常時よりも遅い動作となる。また、モニタコントローラ109からの制御信号はデマルチプレクサ110を介して出力されるため、複数の第一の出力段103が同時に動作することがなく、制御電流が送られる電磁弁106は1つとなる。したがって、駆動されるアクチュエータは必ず1つに限られ、複数の油圧アクチュエータが同時に駆動することがない。これらの結果、モニタコントローラ109の異常で予期せぬ動作が生じた場合でも、オペレータが余裕をもってエンジン停止などの必要な措置を行って安全を確保できる。したがって、安全を十分に確保しつつ、モニタコントローラ109を非安全関連系とすることができるため、電気レバー方式の操作装置を備えた建設機械において、非常用の操作装置を低コストで実現することが可能になる。
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本実施形態の建設機械は、オペレータの操作がそれぞれ入力される第一の入力部としてのレバー101および第二の入力部としてのタッチパネル107と、レバー101に入力されたオペレータの操作に基づく制御信号を生成するレバーコントローラ102と、タッチパネル107に入力されたオペレータの操作に基づく制御信号を生成するモニタコントローラ109と、レバーコントローラ102からの制御信号またはモニタコントローラ109からの制御信号に基づいて、油圧アクチュエータを駆動させるための駆動信号としての制御電流を出力する第一の出力段103と、を備える。この建設機械は、レバー101およびレバーコントローラ102を監視対象として監視を行い、これらの監視対象の異常を検出する監視部112と、レバーコントローラ102からの制御信号またはモニタコントローラ109からの制御信号のいずれを選択する第二の切り替えスイッチ111と、第一の出力段103からの制御電流を制限する電流制限部113と、をさらに備える。そして、監視部112が監視対象の異常を検出しないときには、第二の切り替えスイッチ111によりレバーコントローラ102からの制御信号を選択して、その制御信号に基づいて第一の出力段103から出力される制御電流を制限せずに出力する。一方、監視部112が監視対象の異常を検出したときには、第二の切り替えスイッチ111によりモニタコントローラ109からの制御信号を選択して、その制御信号に基づいて第一の出力段103から出力される制御電流を、第一の切り替えスイッチ105の切り替えに応じて、電流制限部113により制限して出力する。このようにしたので、電気レバー方式の操作装置を備えた建設機械において、操作装置に異常が発生したときにも、安全を十分に確保した動作を実現できる。
(2)監視部112がレバー101およびレバーコントローラ102の異常を検出しないときには、第二の切り替えスイッチ111は、レバーコントローラ102からの制御信号を選択して第一の出力段103に入力する。一方、監視部112がレバー101またはレバーコントローラ102の異常を検出したときには、第二の切り替えスイッチ111は、モニタコントローラ109からの制御信号を選択して第一の出力段103に入力し、電流制限部113は、電源104から第一の出力段103に供給される電流を制限することで第一の出力段103からの制御電流を制限する。このようにしたので、レバー101またはレバーコントローラ102の異常時に、さらにモニタコントローラ109からの制御信号までもが異常となった場合でも、オペレータは余裕をもって必要な措置を行って安全を確保できる。
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る建設機械における制御系統の構成を示す図である。本実施形態による建設機械の制御系統は、図1に示した第1の実施形態による建設機械の制御系統と比べて、第二の切り替えスイッチ111が存在せずに第二の出力段401が設けられている点と、監視部112がレバー101およびレバーコントローラ102に加えて第一の出力段103の動作も監視する点とが主に異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
本実施形態において、第一の出力段103はレバーコントローラ102と常時接続されており、レバーコントローラ102からの制御信号を制御電流に変換して、電磁弁106に出力する。一方、第二の出力段401は、デマルチプレクサ110を介してモニタコントローラ109から出力される制御信号を制御電流に変換して、電磁弁106に出力する。第二の出力段401は、第一の出力段103と同様に、複数の電磁弁106の各々に対応して設けられている。図4では、図1と同様に、4つのコントロールバルブに対して8つの電磁弁106が設けられた建設機械の場合を例として、8つの第二の出力段401を第二の出力段401a〜401hとしてそれぞれ示している。ただし、第二の出力段401c〜401gについては、図4において図示を省略している。
本実施形態では、電源104と第一の出力段103および第二の出力段401との間に、図1に示した第一の切り替えスイッチ105の代わりに、切り替えスイッチ402が設けられている。切り替えスイッチ402は、電源104からの電力の供給先を、第一の出力段103または第二の出力段401のいずれかに切り替える。なお、電源104から第二の出力段401への電力供給系統には、電流制限部113が設けられている。これにより、第一の出力段103からの制御電流と比べて、第二の出力段401から電磁弁106への制御電流が制限されるようにしている。切り替えスイッチ402は、第一の切り替えスイッチ105と同様に、たとえば大電力用トランジスタも用いて構成される。
監視部112は、レバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103を監視対象として、これらの動作を監視することにより、レバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103に異常が発生したか否かを判断する。その結果、レバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103の少なくともいずれか一つの異常を検出したら、監視部112は、切り替えスイッチ402に対して切り替え信号を出力する。この監視部112からの切り替え信号に応じて、切り替えスイッチ402は、電源104からの電力供給系統を、第一の出力段103への電流制限なしの電力供給系統から、電流制限部113を介した第二の出力段401への電流制限ありの電力供給系統へと切り替える。これにより、タッチパネル107の操作に応じてモニタコントローラ109からデマルチプレクサ110を介して出力される制御信号に基づき、第二の出力段401から電磁弁106へ制限付きの制御電流が出力されるようにして、オペレータがタッチパネル107の操作により電磁弁106を制御できる状態へと切り替える。なお、第二の出力段401の出力電流は制限されているので、第一の出力段103に比べて、第二の出力段401は安価な小型のトランジスタで構成できる。
ここで、監視部112が第一の出力段103を監視することで検出可能な第一の出力段103の故障には、ショート故障とオープン故障とが考えられる。ショート故障の場合は、意図しない電流が電磁弁106に流れる状態のため、建設機械に意図しない挙動を発生させる可能性があり危険である。そのため、第一の出力段103にショート故障が生じた場合は、これを速やかに検出して建設機械の意図しない挙動を防ぐ必要がある。一方でオープン故障の場合は、電磁弁106に電流が流れず、建設機械が動作しない状態であるため、危険ではない。しかし、交通の妨げになるなどの問題があるため、第一の出力段103にオープン故障が生じた場合にも、これを検出して必要最小限の動作を建設機械が行えるようにする必要がある。したがって、監視部112は、第一の出力段103の故障をショート故障、オープン故障共に検出可能とし、これらの故障を検出した場合には切り替えスイッチ402へ切り替え信号を送信するようにすることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態によれば、オペレータがタッチパネル107の操作により建設機械を動作させるときには、電源104から電流制限部113を介して第二の出力段401に電力が供給される。そのため、第1の実施形態と同様に、モニタコントローラ109に異常が発生して予期せぬ制御信号がモニタコントローラ109から出力されたとしても、第二の出力段401からの制御電流は、電流制限部113で制限されて電磁弁106に出力される。したがって、電磁弁106からコントロールバルブへのパイロット圧が制限され、油圧アクチュエータの挙動は正常時よりも遅い動作となる。その結果、モニタコントローラ109の異常で予期せぬ動作が生じた場合でも、オペレータが余裕をもってエンジン停止などの必要な措置を行って安全を確保できる。さらに、本実施形態では、第1の実施形態では必要であった図1の第二の切り替えスイッチ111が不要となるので、第1の実施形態に比べて低いコストで建設機械を実現することが可能になる。
また、本実施形態では、監視部112がレバー101およびレバーコントローラ102に加えて、さらに第一の出力段103を監視対象としてその動作を監視し、故障が生じた場合には検出する。そのため、第1の実施形態と比べて、さらに出力段の故障にも対応することができる。なお、第二の出力段401については、監視部112の監視対象ではないが、電源104から供給される電力が電流制限部113で電流制限されることで、油圧アクチュエータの挙動は正常時よりも遅い動作となる。したがって、第二の出力段401にショート故障が生じた場合でも、オペレータが余裕をもってエンジン停止などの必要な措置を行うことで安全は確保できるため、監視部112による監視は不要である。
以上説明した本発明の第2の実施形態による建設機械は、レバーコントローラ102からの制御信号に基づいて制御電流を出力する第一の出力段103と、レバーコントローラ102からの制御信号に基づいて制御電流を出力する第二の出力段401とを有する。監視部112は、レバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103を監視対象として監視を行い、これらの監視対象の異常を検出する。監視部112がレバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103の異常を検出しないときには、電源104からの電力を第一の出力段103に出力して第一の出力段103から制御電流を出力させるように切り替えスイッチ402を切り替えることで、レバーコントローラ102からの制御信号を選択する。一方、監視部112がレバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103の少なくともいずれか一つの異常を検出したときには、電源104からの電力を電流制限部113を介して第二の出力段401に出力して第二の出力段401から制御電流を出力させるように切り替えスイッチ402を切り替えることで、モニタコントローラ109からの制御信号を選択する。このようにしたので、第1の実施形態と同様の作用効果に加えて、さらに出力段に異常が発生した場合にも対処可能とすることができる。
(第3の実施形態)
以下で説明する本発明の第3の実施形態は、通常の制御系から電流制限のある制御系への切り替えの前に遮断位置を設けることで、切り替え時の意図しない急な挙動への対処に余裕を持たせるようにしたものである。図5は、本発明の第3の実施形態に係る建設機械における制御系統の構成を示す図である。本実施形態による建設機械の制御系統は、図4に示した第2の実施形態による建設機械の制御系統と比べて、ゲートロックレバー501が追加されている点と、切り替えスイッチ402の切り替え先に遮断位置502がさらに設けられている点とが異なっている。以下、第2の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
ゲートロックレバー501は、建設機械の意図しない誤作動を防止するためのレバーである。たとえばショベルの場合、ゲートロックレバー501を上げると、操作用のパイロット圧が遮断されて油圧アクチュエータの駆動が禁止される構造になっている。ゲートロックレバー501は、監視部112と接続されており、ゲートロックレバー501の状態を監視部112が監視している。
次に、図6のフローチャートを用いて、図5の制御系統の動作を説明する。図6は、本発明の第3の実施形態に係る建設機械における制御系統の動作フローチャートである。図6の動作フローチャートは、図2に示した第1の実施形態の動作フローチャートのうちステップ204からステップ205の処理を、ステップ604からステップ609に置き換えたものである。以下、図2との違いを中心に説明する。
ステップS203において、監視部112は、レバーコントローラ102、レバー101および第一の出力段103を監視し、これらの少なくともいずれか一つに何らかの異常が生じたか否かを判定する。その結果、いずれかの異常を検出したら処理をステップ604に進め、両方とも異常を検出しない場合はステップ202に戻る。
ステップ204において、監視部112は、切り替えスイッチ402に対して、電源104の接続先を遮断位置502に切り替えるための切り替え信号を出力する。遮断位置502は、切り替えスイッチ402において、電流制限のある第二の出力段401への電力供給系統と、電力制限のない第一の出力段103への電力供給系統との間に設けられている。切り替えスイッチ402が遮断位置502に切り替えられると、電源104からの電力はいずれの出力段にも供給されないため、建設機械の動作は停止する。
次にステップ605において、モニタコントローラ109は、レバー101、レバーコントローラ102または第一の出力段103に故障が発生した旨と、オペレータにゲートロックレバー501を上げるように促す指示とを、モニタ108に表示する。
ステップ606において、監視部112は、ゲートロックレバー501が上げられたか否かを判定する。オペレータによりゲートロックレバー501が上げられたことを検出したら、処理をステップ607に進める。
ステップ607において、監視部112は、切り替えスイッチ402を用いて、電磁弁106の制御を行うコントローラを、レバーコントローラ102からモニタコントローラ109へと切り替える。このとき監視部112は、切り替えスイッチ402に対して、電源104の接続先を遮断位置502から第二の出力段401へ切り替えるように指示するための切り替え信号を出力する。この切り替え信号に応じて、電源104から電流制限部113を介して第二の出力段401に電力が供給されるように、切り替えスイッチ402が切り替えられる。これにより、モニタコントローラ109より入力されるタッチパネル107の操作に応じた制御信号を、第二の出力段401が制御電流に変換して電磁弁106へ送ることで、オペレータがタッチパネル107の操作により電磁弁106を制御できる状態となる。
ステップ608において、モニタコントローラ109は、タッチパネル107から操作が可能になったので、オペレータにゲートロックレバー501を下げるように促す指示をモニタ108に表示する。
ステップ609において、監視部112は、ゲートロックレバー501が下げられたか否かを判定する。オペレータによりゲートロックレバー501が下げられたことを検出したら、処理をステップ206に進める。
ステップ206において、モニタコントローラ109は、オペレータによるタッチパネル107の操作に応じて制御信号を出力し、電磁弁106を制御する。このときモニタコントローラ109は、レバー101の代わりに用いられる所定の操作ボタンをタッチパネル107に表示する。オペレータは、この操作ボタンをタッチすることで、レバー101を用いたときと同様の操作を入力することができる。
オペレータがタッチパネル107の操作により建設機械の動作を開始する際に、モニタコントローラ109に異常が発生して建設機械が意図しない動作をした場合、オペレータはすぐにゲートロックレバー501を上げることで、建設機械の全動作を停止させることができる。すなわち、建設機械において意図しない動作が発生する直前まで、オペレータはゲートロックレバー501を下げるためにゲートロックレバー501に触れている。そのため、建設機械において意図しない動作が発生した場合でもすぐに、ゲートロックレバー501を上げることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、通常の制御系から電流制限のある制御系への切り替えの際に、切り替えスイッチ402を遮断位置502に一旦切り替えた後、オペレータにゲートロックレバー501を上げるように指示する。その後、ゲートロックレバー501が上げられたことを確認した後に、切り替えスイッチ402を遮断位置502から第二の出力段401に切り替え、第二の出力段401から電磁弁106へ制御電流が出力されるようにする。これにより、遮断位置502から第二の出力段401への切り替えの際に、建設機械が意図しない挙動をした場合でも、オペレータはすぐにゲートロックレバー501を上げて迅速に対応することができる。なお、本実施形態では、オペレータの応答を確認するためにゲートロックレバー501の操作を用いたが、応答確認用の専用のボタンなどを別に設けても構わない。
以上説明した本発明の第3の実施形態による建設機械は、油圧アクチュエータの駆動を許可または禁止するためのゲートロックレバー501をさらに備える。切り替えスイッチ402は、監視部112からの切り替え信号に応じて、電源104の接続先を第一の出力段103から遮断位置502に一旦切り替え、その後オペレータがゲートロックレバー501を上げたことを確認したら、第二の出力段401へと切り替える。これにより、ゲートロックレバー501により油圧アクチュエータの駆動が禁止された状態で、切り替えスイッチ402での選択を、レバーコントローラ102からの制御信号から、モニタコントローラ109からの制御信号に切り替える。このようにしたので、第1および第2の実施形態と同様の作用効果に加えて、さらにモニタコントローラ109の異常による建設機械の意図しない動作にも対処可能とすることができる。
(第4の実施形態)
以下で説明する本発明の第4の実施形態は、異常発生時点での建設機械の状態に応じた制御を行うことで、非常用操作をより安全に行えるようにしたものである。図7は、本発明の第4の実施形態に係る建設機械における制御系統の構成を示す図である。本実施形態による建設機械の制御系統は、図4に示した第2の実施形態による建設機械の制御系統と比べて、監視部112の代わりにセンサ701と診断部702が設けられている点が異なっている。以下、第2の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
センサ701は、建設機械の姿勢を取得し、その結果を示すセンサ情報を診断部702に出力する。センサ701は、たとえばショベルに取り付けられる機体傾斜センサであり、ショベルの姿勢として、フロントの姿勢並びにバケット先端の位置を検出する。
診断部702は、センサ701、レバーコントローラ102、モニタコントローラ109および切り替えスイッチ402に接続されており、センサ701からのセンサ情報を基に、モニタコントローラ109へ制御信号を送る。具体的には、診断部702は、第2の実施形態で説明した図4の監視部112と同様に、レバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103を監視対象として、これらの動作を監視することにより、レバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103に異常が発生したか否かを判断する。その結果、レバー101、レバーコントローラ102および第一の出力段103の少なくともいずれか一つの異常を検出したら、診断部702は、切り替えスイッチ402に対して切り替え信号を出力する。
切り替えスイッチ402に切り替え信号を出力する際に、診断部702はさらに、センサ701からのセンサ情報に基づいて、建設機械の姿勢が所定の安全姿勢から遠ざかる方向について電磁弁106に流れる制御電流を制限するように、モニタコントローラ109を制御する。これにより、タッチパネル107の操作に応じてモニタコントローラ109から電磁弁106の制御を安全に行えるようにする。具体的には、センサ701からのセンサ情報に基づいて建設機械の姿勢を判断し、その姿勢に応じて、タッチパネル107の操作によりモニタコントローラ109から出力される制御信号のうち、第二の出力段401への出力を許可する信号を選択する。
たとえばショベルにおいて、バケットがフロント可動域の最上位にあるときに故障が発生し、バケットが最上位のままでショベルが停止した場合を考える。このときにオペレータがショベルを安全な姿勢に戻すためには、まずバケットを下げる方向に操作することが望ましい。診断部702は、このようなショベルの姿勢状態を考慮して、タッチパネル107で許される操作の方向を決定する。具体的には、バケットが最上位で停止した場合は、バケットを下げるような方向にだけ、モニタコントローラ109から第二の出力段401に制御信号を送ることを許可する。このような制御を行うために、たとえば診断部702は、予め定められた安全姿勢のテーブルを保持しておき、現在の姿勢がこの安全姿勢に近づく方向にだけ制御を許可し、遠ざかる方向への制御を許可しないようにすればよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、レバー101やレバーコントローラ102の故障時に、たとえばバケットが可動域の最上位で停止した場合において、診断部702は、センサ情報に基づき、タッチパネル107による建設機械の操作を、安全な姿勢への操作だけについて許可する。そのため、モニタコントローラ109の異常により予期しない制御信号が第二の出力段401に送られたとしても、建設機械は安全姿勢に近づく方向にしか動作しないため、非常用操作をより安全に行うことができる。
なお、上記の説明では、本実施形態において診断部702がセンサ情報により安全な姿勢への操作を決定するとしたが、これに電流制限を組み合わせてもよい。たとえば前述のようなショベルの例において、安全な姿勢への操作の途中に障害物があるときに、オペレータは障害物を避けるために、左右方向の操作を行う可能性がある。この場合、安全な姿勢に近づく方向、すなわちバケットを下げる方向への操作については、電流制限を行わないか、あるいは制限量を小さくする。一方、安全な姿勢から遠ざかる左右方向への操作については、第二の出力段401からの出力を電流制限によって大きく制限するようにする。これにより、たとえば安全姿勢までに必要な操作の途中に障害物があるため、安全な姿勢から遠ざかる方向にも操作を行う必要がある場合にも、その方向への操作を制限された状態で行うことができるので、作業効率が向上する。
以上説明した本発明の第3の実施形態による建設機械は、建設機械の姿勢を取得するセンサ701をさらに備える。診断部702は、センサ701により取得された建設機械の姿勢が所定の安全姿勢から遠ざかる方向について、第二の出力段401から電磁弁106へ出力される駆動信号としての制御電流を制限する。このようにしたので、異常発生時のタッチパネル107による建設機械の操作をより安全に行うことができる。
(第5の実施形態)
以下で説明する本発明の第5の実施形態は、モニタコントローラ109の出力ポートが不足している場合に、第二の出力段401への制御信号の出力にその他のコントローラの出力ポートを代用して、タッチパネル107による建設機械の操作を可能としたものである。図8は、本発明の第5の実施形態に係る建設機械における制御系統の構成を示す図である。本実施形態による建設機械の制御系統は、モニタコントローラ109から第二の出力段401への出力ポートをアウトリガーコントローラ801で代用した場合の構成を示しており、図4に示した第2の実施形態による建設機械の制御系統と比べて、アウトリガーコントローラ801、第三の出力段802および第二の電磁弁803が設けられている点が異なっている。以下、第2の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
本実施形態の建設機械には、不図示のアウトリガーが備えられている。アウトリガーは、たとえば建設機械がクレーン車である場合、クレーンの作業の際などに車体から張り出して地面に接地させることで車体を安定させるものである。本実施形態において、オペレータはこのアウトリガーの操作をタッチパネル107により行うことができる。なお、タッチパネルではなく、レバーやボタンで操作するようにしてもよい。
アウトリガーコントローラ801は、アウトリガーを制御するためのコントローラであり、モニタコントローラ109と接続される。レバーコントローラ102が正常な状態にある場合、オペレータがタッチパネル107を用いてアウトリガーの操作を行うと、その操作内容に応じた操作信号がモニタコントローラ109からアウトリガーコントローラ801に出力される。アウトリガーコントローラ801は、モニタコントローラ109からの操作信号に応じた制御信号を生成し、第三の出力段802へ出力する。第三の出力段802は、アウトリガーコントローラ801からの制御信号を制御電流に変換して、第二の電磁弁803に出力する。これにより、アウトリガーコントローラ801は、第二の電磁弁803の開度を調節して、油圧ポンプからアウトリガー用の油圧アクチュエータに吐出される圧油の流れを制御できるようになっている。したがって、オペレータがタッチパネル107に対してアウトリガーの操作を入力すると、その操作方向や操作量に応じた制御電流がアウトリガーコントローラ801から第三の出力段802を介して第二の電磁弁803に出力され、アウトリガーの展開・格納が行われる。なお、本実施形態の建設機械は、実際にはアウトリガーの他にも、アウトリガーの駆動に必要な数の油圧シリンダ、油圧アクチュエータ、コントロールバルブ等を備えているが、図8ではこれらの図示を省略している。
ここで、レバー101、レバーコントローラ102または第一の出力段103において何らかの異常が生じた場合について説明する。この場合、監視部112はこれらの異常を検出すると、第2の実施形態と同様に、切り替えスイッチ402に対して切り替え信号を出力する。このとき監視部112はさらに、アウトリガーコントローラ801から電磁弁106を制御できるように、アウトリガーコントローラ801から第二の出力段401への制御信号の出力を許可する。これにより、アウトリガーコントローラ801から電磁弁106の制御が有効化される。一方、モニタコントローラ109は、第1の実施形態で説明したように、タッチパネル107により電磁弁106を制御できる状態になったことをモニタ108に表示する。そして、レバー操作の代わりに用いられる操作ボタンとして、タッチパネル107に4方向の矢印ボタン等を表示して、オペレータからの操作入力を受け付ける。その後、オペレータからの操作がタッチパネル107に入力されると、その操作内容に応じた操作信号を、たとえばCAN通信によりアウトリガーコントローラ801に通知する。
上記の動作により、アウトリガーコントローラ801から出力される制御信号が第二の出力段401に送られるようになり、オペレータがタッチパネル107から電磁弁106を制御できる状態となる。第二の出力段401は、アウトリガーコントローラ801より入力された制御信号を制御電流に変換して電磁弁106へ送ることにより、電磁弁106を制御して油圧アクチュエータを駆動させる。
以上説明したように、本実施形態によれば、モニタコントローラ109において第二の出力段401へ接続するための出力ポートが不足している場合でも、他のコントローラであるアウトリガーコントローラ801の出力ポートを用いて、第二の出力段401への接続を行うことができる。そのため、本発明の建設機械を低コストで実現することが可能になる。
(第6の実施形態)
以下で説明する本発明の第6の実施形態は、異常発生時の制御処理をレバーコントローラ102上のソフトウェアで行うことにより、ハードウェアを追加することなく本発明の建設機械を実現したものである。図9は、本発明の第6の実施形態に係る建設機械における制御系統の構成を示す図である。本実施形態による建設機械の制御系統は、図4に示した第2の実施形態による建設機械の制御系統と比べて、デマルチプレクサ110および第二の出力段401が存在しない点と、監視部112、切り替えスイッチ402および電流制限部113がそれぞれ、レバーコントローラ102の監視処理901、切り替え処理903および電流制限処理902に置き換えられている点とが異なっている。以下、第2の実施形態との相違点を中心に、本実施形態について説明する。
監視処理901、切り替え処理903、電流制限処理902は、それぞれレバーコントローラ102上で実行されるソフトウェアである。監視処理901は、前述の監視部112と同様に、レバー101を監視してその異常を検出する。たとえば、レバー101のレバー操作量を2つの相補的なポテンショメータで読み取るようにしておき、両者の信号の間に不一致があることを監視することで、レバー101が故障したことを検出できる。なお、監視処理901において、レバーコントローラ102自身の監視や第一の出力段103の監視を行い、これらの異常を検出するようにしてもよい。
切り替え処理903は、監視処理901がレバー101の異常を検知した際に呼び出されて実行される処理である。切り替え処理903は、レバーコントローラ102から第一の出力段103への出力信号を、通常時のレバー101の操作に応じた制御信号から、モニタコントローラ109からの入力信号へと切り替える。この処理により、タッチパネル107の操作に応じてモニタコントローラ109から出力された制御信号が、レバーコントローラ102を介して第一の出力段103に出力されるようになる。
電流制限処理902は、切り替え処理903と同様に、監視処理901がレバー101の異常を検知した際に呼び出されて実行される処理である。電流制限処理902は、レバーコントローラ102から第一の出力段103への制御信号において、第一の出力段103に流れる電流の値を制限する。たとえば、予め定められた最大値で制御信号の値をクリッピングしたり、一定の縮減率を制御信号の値に乗じたりすることで、電流制限処理902を実現できる。この処理により、タッチパネル107の操作に応じた制御信号をモニタコントローラ109からレバーコントローラ102を介して第一の出力段103に出力する際に、第一の出力段103から電磁弁106への制御電流を制限することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、電磁弁106への電流制限や制御信号の切り替えをソフトウェアで行うため、ハードウェアを追加することなく、本発明の動作を実現できる。これにより、第2の実施形態に比べて、本発明の建設機械を低コストで実現することが可能になる。
なお、以上説明した各実施形態では、建設機械に備えられた油圧アクチュエータを駆動するための電気レバー方式の操作装置の例を説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば電気式や機械式等の他の方式や、あるいはこれらを組み合わせた様々な方式のアクチュエータを駆動する操作装置において、本発明を適用可能である。
また本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。たとえば本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加または置換することが可能である。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も、本発明の範囲内に含まれる。