JP2018052964A - フィブロネクチン結合性の大豆由来の水溶性多糖類 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】大豆由来の水溶性多糖類を、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を総量で6〜65質量%の割合で含む組成物に配合することで、当該組成物中の水溶性多糖類に対してフィブロネクチンに対する結合性を増強させる機能を付与する、大豆由来水溶性多糖類の使用方法。
【選択図】なし
Description
(I-1)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を総量で6〜65質量%の割合で含む大豆由来の水溶性多糖類含有組成物。
(I-2)大豆由来の水溶性多糖類が大豆ペクチンまたは醤油多糖類(Shoyu Polysaccharides)である、(I-1)に記載する大豆由来の水溶性多糖類含有組成物。
(I-3)アルカリ金属及びアルカリ土類金属がカリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウムから選択される少なくとも1種である、(I-1)または(I-2)に記載する大豆由来の水溶性多糖類含有組成物。
(II-1)(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する大豆由来の水溶性多糖類含有組成物を含有する経口または経腸組成物。
(II-2)経口または経腸組成物が、飲食物、医薬品または医薬部外品のいずれかである(II-1)に記載する経口または経腸組成物。
(III-1)大豆由来の水溶性多糖類にアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種のイオンを共存させることを特徴とする、大豆由来の水溶性多糖類のフィブロネクチンに対する結合能を増強する方法。
(III-2)大豆由来の水溶性多糖類とアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種のイオンとの共存状態において、当該イオンの濃度が6〜65質量%である、(III-1)に記載する結合性増強方法。
(III-3)大豆由来の水溶性多糖類が大豆ペクチンまたは醤油多糖類(Shoyu Polysaccharides)である、(III-1)または(III-2)に記載する結合性増強方法。
(IV−1)大豆ペクチンまたは醤油多糖類である大豆由来の水溶性多糖類を、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を総量で6〜65質量%の割合で含む組成物に配合することにより、当該組成物中における水溶性多糖類に対してフィブロネクチンに対する結合性を増強させる機能を付与することを特徴とする、上記水溶性多糖類の使用方法。
(IV−2)前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属がカリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウムから選択される少なくとも1種である、(IV−1)記載の使用方法。
(1)大豆由来の水溶性多糖類
本発明が対象とする大豆由来の水溶性多糖類は、大豆に由来する水溶性の多糖類である。
アルカリ金属としてはナトリウム及びカリウムを、またアルカリ土類金属としてはカルシウム及びマグネシウムを挙げることができる。
本発明は前述するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有することを特徴とする大豆由来の水溶性多糖類である。言い換えると、本発明は、大豆由来の水溶性多糖類に加えて、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する組成物である(本発明ではこれを「大豆由来の水溶性多糖類含有組成物」とも称する)。また別の角度から言い換えると、大豆由来の水溶性多糖類に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が外添されてなる組成物である。
前述するように、大豆由来の水溶性多糖類含有組成物は、フィブロネクチンに対する結合性が増強されてなることを特徴とする。大豆由来の水溶性多糖類含有組成物を経口的または経腸的に摂取(投与)することで、体内に取り込まれた大豆由来の水溶性多糖類は小腸表面に存在するフィブロネクチンと結合し、間接的に様々な生理作用を発現すると考えられる。
後述する試験例において被験試料として、大豆ペクチン、醤油多糖類を用いた。以下にこれらの被験試料の調製方法を説明する。
大豆種皮100gを1000mLの1.5%クエン酸水溶液で加熱抽出(95℃、3時間)し、圧搾後遠心した。得られた遠心上清に対し、等量のエタノールを添加し遠心後、沈殿物を回収し凍結乾燥し、大豆ペクチンの凍結乾燥物5gを取得した。後述の実験方法(II)に記載する方法で測定した分子量は、約500,000であった。
丸大豆と小麦を主原料とした醤油500mLにエタノール1000mLを添加し十分混合後一夜静置し、上清をデカンテーションで除き、さらに66%のエタノール1500mLで十分洗浄した。生成した沈殿物をデカンテーションおよび遠心分離して集め、室温で2時間程度エタノールを飛散させた後、凍結乾燥し、凍結乾燥物25gを取得した。この乾燥物20gを約100mLの水に溶解し、透析チューブ(平均ポアサイズ:25Å、分画分子量(MWCO):12,000-16,000、サイズ:24、幅:32mm、直径:20mm、膜厚:30μm:シームレスセルロースチューブ(Wako))に詰めて一夜流水中で透析した。得られた透析内液にその2倍量のエタノールを加えて混合後、遠心分離し、得られた沈殿物を凍結乾燥して、醤油多糖類の凍結乾燥物2.6gを得た。後述の実験方法(II)に記載する方法で測定した分子量は、約25,000であった。
約2500アミノ酸残基の単量体2分子からなる二量体のフィブロネクチンは,C末端でジスルフィド結合により結合しているが,これを構成する三つのモジュールのうち,1番目のIII型モジュールのC末端3分の2のペプチド(分子量約7,000)がペクチンとの結合に関与することが明らかとなっている。そこで,このペプチドをアブカム株式会社(Abcam)より購入し,カルボキシメチル基を導入したデキストランを金膜上に固定したBiacoreシステム(Biacore J(GE ヘルスケア(株))のセンサーチップに,アミンカップリング法により固定化した。
(II-1)分子量の測定
被験試料の分子量は、下記条件のゲルろ過クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。具体的には、標準品として分子量が既知のグルコース(Mw.180)、デキストランT10(Mw.10500)、デキストランT20(Mw.20400)、デキストランT40(Mw.43500)、デキストランT70(Mw.70000)、デキストランT110(Mw.105000)、デキストランT500(Mw.487000)、及びデキストランT2000(Mw.2000000)を用いて同条件HPLCにより検量線を作成し、当該検量線に基づいて被験試料の分子量を求めた。なお、大豆ペクチン、及び醤油多糖類の分子量の測定にはカラム充填剤として、Shodex SUGAR KS-805を用いた。
固定相:充填剤 Shodex SUGAR KS-805(昭和電工(株)製)、
カラム内径と長さ:8.0×300 (mm)
移動相:蒸留水
流速:0.5mL/min
カラム温度:45℃
検出方法:示差屈折計JASCO 830-RI detector使用。
上記各被験試料とフィブロネクチンとの相互作用(結合能)の評価は、Biacoreシステム(Biacore J(GE ヘルスケア(株))を使用した。測定は、フィブロネクチンをリガンドとしてセンサーチップに固定化し、それにサンプル流路を通して各被験試料(アナライト)を含むサンプル溶液を流すことで実施した。なお、フィブロネクチンは、N-hydroxysuccinimide(NHS,GEヘルスケア)とcarbodiimidehydrochroride(EDC,GEヘルスケア)を等量混合したものをセンサーチップ CM5(GEヘルスケア)に対して6分間添加し,センサーチップ表面のカルボキシ基をNHS活性化した後,ただちに10 mM酢酸緩衝液(pH 4.5)で希釈した80 μg/mLの濃度のフィブロネクチンfragment III1-C(分子量約7,000,Abcam)溶液を6分間添加してカップリングさせた。その後,1 Mエタノールアミン溶液(pH 8.5)を6分間添加し,チップ表面に残存している活性型NHS基をブロッキングして,フィブロネクチン固定化センサーチップを作成した。
各被験試料(大豆ペクチン、醤油多糖類)を蒸留水に溶解し(10mg/mL)、下記条件のBiacoreシステムを用いて、フィブロネクチンに対する相互作用(結合性)を評価した。
ランニングバッファー:HBS-EP (10mM HEPES, 150mM NaCl, 3mM EDTA, 0.005% Tween-20)(pH 7.4)
流速:Medium
温度:25℃
Inject Time:120秒。
(1)実験例1でフィブロネクチンに対する結合性が認められた大豆ペクチン並びに結合性が認められなかった醤油多糖類を用いて、経口摂取後の体内環境を模倣した実験を行った。具体的には、まず大豆ペクチン並びに醤油多糖類を10mg/mLになるようにそれぞれ人工胃液(0.2% NaClを含む塩酸、pH2)に溶解し、次いでMini Dialysis Kit(GE Healthcare社製)を用いて、カルシウム(0.1M)を含むPBSに対して透析を行い中和した。斯くして胃液での酸処理と十二指腸での中和処理を模倣した処理を経て調製した被験試料(大豆ペクチン及び醤油多糖類)を各種濃度(a:1 mg/mL、b:0.5 mg/mL、c:0.25 mg/mL、d:0.17 mg/mL、e:0.125 mg/mL)にBiacoreランニングバッファーHBS-EPで希釈後、実験例1と同じ条件のBiacoreシステムに供して、フィブロネクチンとの結合性を測定した。
上記(1)で行った中和処理で使用した透析外液(カルシウム(0.1M)を含むPBS)に代えて、蒸留水を用いて、(1)と同様にして透析を行った。
大豆由来の水溶性多糖類のフィブロネクチンへの結合力に対するカルシウムイオンの影響を確認するために、濃度の異なるCaCl2溶液(0.01M、0.05M、0.1M)に大豆ペクチン(10mg/mL)をそれぞれ溶解し、Biacoreシステムを用いてフィブロネクチンとの結合力を測定した。
0.1M KCl水溶液及び0.1M MgCl2水溶液に、大豆ペクチンを10mg/mlになるように溶解し、各種濃度(a:1 mg/mL、b:0.5 mg/mL、c:0.25 mg/mL、d:0.17 mg/mL、e:0.125 mg/mL)に希釈後、実験例1と同じ条件のBiacoreシステムに供して、フィブロネクチンとの結合力を測定した。KCl水溶液及びMgCl2水溶液にそれぞれ溶解した大豆ペクチンのフィブロネクチンに対する結合力を、それぞれ図3(A)及び(B)に示す。この結果から,カリウムまたはマグネシウムの存在下でフィブロネクチンに対する大豆ペクチンの結合量が増加することが確認された。
(1)酸処理醤油多糖類とフィブロネクチンとの結合に対するカルシウムの影響
酸処理によりフィブロネクチンに結合するようになった醤油多糖類に対し、カルシウムを反応させた後、蒸留水を外液とする透析によりカルシウムを除去した際のフィブロネクチンへの結合力を調べた。
これまで醤油多糖類を蒸留水に溶解しただけではフィブロネクチンとの結合はみられないが、0.2%NaClを含む酸溶液によって処理すると、フィブロネクチンとの結合がみられるようになることから、酸処理は結合に対して必要な操作と考えてきた。しかし、カルシウムイオンがフィブロネクチンとの結合に大きく影響することを考慮すると、カルシウムが存在すれば酸処理を行わなくても結合を示す可能性がある。
0.2% NaClを含む0.1M CaCl2溶液(0.2% NaCl/0.1 M CaCl2)、及び0.2% NaClを含む0.1M KCl溶液(0.2% NaCl/0.1 M KCl)に、醤油多糖類を10mg/mLになるように溶解し、蒸留水に対して透析を行った後に、各種濃度(a:1 mg/mL、b:0.5 mg/mL、c:0.25 mg/mL、d:0.17 mg/mL、e:0.125 mg/mL)に希釈後、フィブロネクチンとの結合力をBiacoreシステムにて調べた。結果を図5に示す。図5(A)は、前処理として0.2% NaCl/0.1 M CaCl2に溶解した醤油多糖類の結果を、図5(B)は、前処理として0.2% NaCl/0.1 M KClに溶解した醤油多糖類の結果を、それぞれ示す。図5に示すように、0.1M CaCl2溶液に溶解後透析した場合、及び0.1M KCl溶液に溶解後透析した場合のいずれについても醤油多糖類はフィブロネクチンと結合することが認められ、解離定数はそれぞれ1.51×10−4M及び9.62×10−5Mであった。
被験試料中に含まれるミネラルそのものがフィブロネクチンとの結合力測定にどのように影響するかを調べるために、各種濃度のCaCl2溶液、KCl溶液、及びMgCl2溶液(いずれも、a:10 mM、b:5 mM、c:0.25 mM)をそれぞれBiacoreシステムに供して、フィブロネクチンとの結合力を調べた。CaCl2溶液、KCl溶液、及びMgCl2溶液についてフィブロネクチンとの結合力を経時的に測定した結果を、それぞれ図6(A)、(B)及び(C)に示す。
Claims (2)
- 大豆ペクチンまたは醤油多糖類である大豆由来の水溶性多糖類を、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属を総量で6〜65質量%の割合で含む組成物に配合することにより、当該組成物中における水溶性多糖類に対してフィブロネクチンに対する結合性を増強させる機能を付与することを特徴とする、上記水溶性多糖類の使用方法。
- 前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属がカリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウムから選択される少なくとも1種である、請求項1記載の使用方法。
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