JP2018051833A - ノズル基板、インクジェットプリントヘッドおよびノズル基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インク吐出口の大きさが適切な大きさとなるノズル基板を提供する。【解決手段】ノズル基板3は、シリコン基板30と、シリコン基板30の第2表面30bに形成された酸化シリコン膜31と、酸化シリコン膜31の表面に形成されたシリコン膜32とを含み、ノズル孔20は、シリコン基板30の第1表面30aに形成されかつシリコン基板30を貫通する凹部20aと、凹部20aの底面に形成され、凹部20aの底壁を貫通する横断面円形状のインク吐出通路20bとからなり、インク吐出通路20bは、その直径が深さ方向に周期的に変化しており、その凹部20a側とは反対側の開口端であるインク吐出口20cの直径は、インク吐出通路20bの直径の極小値と極大値の平均値よりも大きい。【選択図】図6

Description

この発明は、ノズル基板、インクジェットプリントヘッドおよびノズル基板の製造方法に関する。
特許文献1は、インクジェットプリントヘッドを開示している。特許文献1のインクジェットプリントヘッドは、インク流路としての圧力室(圧力発生室)を有するアクチュエータ基板(基板)と、アクチュエータ基板上に形成された可動膜(弾性膜)と、可動膜上に設けられた圧電素子とを含んでいる。特許文献1のインクジェットプリントヘッドは、さらに、アクチュエータ基板の下面に接合されかつ圧力室に連通するノズル開口(ノズル孔)を有するノズル基板(ノズルプレート)と、アクチュエータ基板の上面に接合されかつ圧電素子を覆う保護基板とを備えている。圧電素子は、可動膜上に形成された第1電極膜(下部電極)と、第1電極膜上に配置された第2電極膜(上部電極)と、それらの間に挟まれた圧電体層(圧電体膜)とからなる。
特開2015−91668号公報
本発明者は、第1表面および第2表面を有するシリコン基板と、シリコン基板の第2表面に形成された酸化シリコン膜と、酸化シリコン膜の表面に形成されたシリコン膜とからなり、厚さ方向に貫通するノズル孔を有するノズル基板を試作した。ノズル孔は、ノズル基板のシリコン膜側からシリコン膜を貫通するインク吐出通路を形成した後に、シリコン基板の第1表面側からシリコン基板を貫通し、インク吐出通路と連通する凹部を形成する。インク吐出通路の凹部とは反対側の開口部がインク吐出口となる。
インク吐出通路は、ボッシュプロセスにより、次のように形成した。つまり、まず、シリコン膜における酸化シリコン膜側とは反対側の表面に、インク吐出通路に対応した開口を有するレジストマスクが形成される。この後、レジストマスクの表面および開口の内面(側面および底面)を覆うように側壁保護膜(デポジション膜)が形成される。次に、側壁保護膜の底面部(開口の底面上の側壁保護膜)がエッチングにより除去される。次に、シリコン膜がエッチングされる。次に、エッチング面等に側壁保護膜を形成する工程と、側壁保護膜の底面部を除去する工程と、シリコン膜をエッチングする工程とが、少なくとも1サイクル分行われる。最後にアッシングにより、側壁保護膜およびレジストマスクレジストが除去される。
ボッシュプロセスにおいて最初のエッチング開始時には、側壁保護膜のデポジション・レートが高く、側壁保護膜のエッチングレートが低い。このため、側壁保護膜の底面部を除去するための最初のエッチング工程において、レジストマスクの開口の底面上の側壁保護膜(シリコン膜の表面上の側壁保護膜)が完全に除去されずに、一部が残るといったことが起こりやすい。側壁保護膜の底面部を除去するための最初のエッチング工程において、レジストマスクの開口の底面上の側壁保護膜が完全に除去された場合を正常時といい、レジストマスクの開口の底面上の側壁保護膜が完全に除去されない場合を異常時ということにする。
異常時には、この後に行われるシリコン膜の最初のエッチング工程において、シリコン膜のエッチング量が正常時に比べて減少する。つまり、シリコン膜に最初に形成される凹部の直径および深さが、正常時に比べて小さくなる。この結果、最終的に得られるインク吐出通路のインク吐出口は、正常時に比べて小さくなってしまう。
この発明の目的は、インク吐出口の大きさが適切な大きさとなる、ノズル基板、インクジェットプリントヘッドおよびノズル基板の製造方法を提供することである。
この発明によるノズル基板は、厚さ方向に貫通するノズル孔を有するノズル基板であって、前記ノズル基板は、第1表面および第2表面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記第2表面に形成された酸化膜と、前記酸化膜の表面に形成された半導体膜とを含み、前記ノズル孔は、前記半導体基板の第1表面に形成されかつ前記半導体基板を貫通する凹部と、前記凹部の底面に形成され、前記凹部の底壁を貫通する横断面円形状のインク吐出通路とからなり、前記インク吐出通路は、その直径が深さ方向に周期的に変化しており、その前記凹部側とは反対側の開口端であるインク吐出口の直径は、前記インク吐出通路の直径の極小値と極大値の平均値よりも大きい。
この構成では、インク吐出通路における凹部側とは反対側の開口端であるインク吐出口の直径は、インク吐出通路の直径の極小値と極大値の平均値よりも大きいので、インク吐出口の大きさが適切な大きさとなる。
この発明の一実施形態では、前記インク吐出口の直径は、前記インク吐出通路の横断面の直径の極小値よりも極大値に近い値である。
この発明の一実施形態では、前記凹部は、横断面が円形状である。
この発明の一実施形態では、前記半導体基板がシリコン基板であり、前記酸化膜が酸化シリコン膜であり、前記半導体膜がシリコン膜である。
この発明によるインクジェットプリントヘッドは、圧力室を含むインク流路を有するアクチュエータ基板と、前記圧力室上に配置されかつ前記圧力室の天面部を区画する可動膜を含む可動膜形成層と、前記可動膜上に形成された圧電素子と、前記アクチュエータ基板の前記可動膜側の表面とは反対側の表面に接着剤によって接合され、前記圧力室の底面部を区画し、前記圧力室に連通するノズル孔を有するノズル基板とを含む。当該ノズル基板は、前述のこの発明によるノズル基板であり、前記シリコン基板の第1表面が、前記アクチュエータ基板の前記可動膜側の表面とは反対側の表面に接合されている。
この発明の一実施形態では、前記圧電素子を覆うように前記アクチュエータ基板に接着剤によって接合される保護基板をさらに含み、前記保護基板は、前記アクチュエータ基板側に向かって開口しかつ前記圧電素子を収容する収容凹所と、平面視において前記収容凹所の一端の外方に形成され、前記インク流路の一端部に連通するインク供給路とを有している。
この発明によるノズル基板の製造方法は、第1表面および第2表面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記第2表面に形成された酸化膜と、前記酸化膜における前記半導体基板とは反対側の表面に形成された半導体膜とを含む積層膜を用意する工程と、前記積層膜の前記半導体膜側から前記半導体膜を貫通し、前記酸化膜に達するインク吐出通路を形成する工程と、前記積層膜の前記半導体基板の第1表面側から前記半導体基板および前記酸化膜を貫通し、前記インク吐出通路と連通する凹部を形成する工程とを含み、前記インク吐出通路を形成する工程は、前記半導体膜の表面に前記インク吐出通路に対応する開口を有する第1レジストマスクを形成する第1工程と、前記第1レジストマスクをマスクとして、前記半導体膜をエッチングする第2工程と、エッチング面に側壁保護膜を形成する第3工程と、前記側壁保護膜の底面部を除去する第4工程と、前記側壁保護膜から露出した半導体膜をエッチングする第5工程と、前記第5工程の後に、前記第3工程、第4工程および第5工程と同様な工程を少なくとも1サイクル分行った後に、前記第1レジストマスクおよび前記側壁保護膜を除去する工程とを含む。
この製造方法では、インク吐出通路における凹部側とは反対側の開口端であるインク吐出口の大きさが適切な大きさとなるノズル基板を製造できる。
この発明の一実施形態では、前記凹部を形成する工程は、前記半導体基板の第1表面に前記凹部に対応する開口を有する第2レジストマスクを形成する工程と、前記第2レジストマスクをマスクとして、前記半導体基板をエッチングすることにより、前記半導体基板に第1凹部を形成する工程と、前記第1凹部側から前記酸化膜をエッチングすることにより、前記酸化膜に前記インク吐出通路と連通する第2凹部を形成する工程とを含む。
この発明の一実施形態では、前記凹部は、横断面が円形状である。
この発明の一実施形態では、前記インク吐出通路は、横断面が円形状である。
この発明の一実施形態では、前記半導体基板がシリコン基板であり、前記酸化膜が酸化シリコン膜であり、前記半導体膜がシリコン膜である。
図1は、この発明の一実施形態に係るインクジェットプリントヘッドの構成を説明するための図解的な平面図である。 図2は、図1のA部を拡大して示す図解的な部分拡大平面図であって、保護基板を含む平面図である。 図3は、図1のA部を拡大して示す図解的な部分拡大平面図であって、保護基板が省略された平面図である。 図4は、図2のIV-IV線に沿う図解的な断面図である。 図5は、図4のノズル孔を拡大して示す拡大断面図である。 図6は、主としてインク吐出通路の断面形状を示す図5の部分拡大図である。 図7は、図5の矢印VII-VIIから見た平面図である。 図8は、図2のVIII-VIII線に沿う図解的な断面図である。 図9は、図2のIX-IX線に沿う図解的な断面図である。 図10は、前記インクジェットプリントヘッドの絶縁膜のパターン例を示す図解的な平面図であり、図2に対応する平面図である。 図11は、前記インクジェットプリントヘッドのパッシベーション膜のパターン例を示す図解的な平面図であり、図2に対応する平面図である。 図12は、保護基板の図2に示される領域の底面図である。 図13は、アクチュエータ基板の元基板としての半導体ウエハの平面図である。 図14Aは、前記インクジェットプリントヘッドの製造工程の一例を示す断面図である。 図14Bは、図14Aの次の工程を示す断面図である。 図14Cは、図14Bの次の工程を示す断面図である。 図14Dは、図14Cの次の工程を示す断面図である。 図14Eは、図14Dの次の工程を示す断面図である。 図14Fは、図14Eの次の工程を示す断面図である。 図14Gは、図14Fの次の工程を示す断面図である。 図14Hは、図14Gの次の工程を示す断面図である。 図14Iは、図14Hの次の工程を示す断面図である。 図14Jは、図14Iの次の工程を示す断面図である。 図14Kは、図14Jの次の工程を示す断面図である。 図14Lは、図14Kの次の工程を示す断面図である。 図14Mは、図14の次の工程を示す断面図である。 図15Aは、ノズル基板集合体の製造工程を模式的に示す断面図であって、インク流通方向に直交しかつノズル孔の中心を通過するような切断線に沿う断面図ある。 図15Bは、図15Aの次の工程を示す断面図である。 図15Cは、図15Bの次の工程を示す断面図である。 図15Dは、図15Cの次の工程を示す断面図である。 図15Eは、図15Dの次の工程を示す断面図である。 図16Aは、図15Bの工程の詳細を図解的に示す断面図である。 図16Bは、図16Aの次の工程を示す断面図である。 図16Cは、図16Bの次の工程を示す断面図である。 図16Dは、図16Cの次の工程を示す断面図である。 図16Eは、図16Dの次の工程を示す断面図である。 図17Aは、図15Bの工程の比較例を図解的に示す断面図である。 図17Bは、図17Aの次の工程を示す断面図である。 図17Cは、図17Bの次の工程を示す断面図である。 図17Dは、図17Cの次の工程を示す断面図である。 図17Eは、図17Dの次の工程を示す断面図である。 図17Fは、図17Eの次の工程を示す断面図である。 図17Gは、図17Fの次の工程を示す断面図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るインクジェットプリントヘッドの構成を説明するための図解的な平面図である。図2は、図1のA部を拡大して示す図解的な部分拡大平面図であって、保護基板を含む平面図である。図3は、図1のA部を拡大して示す図解的な部分拡大平面図であって、保護基板が省略された平面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う図解的な断面図である。図5は、図4のノズル孔を拡大して示す拡大断面図である。図6は、主としてインク吐出通路の断面形状を示す図5の部分拡大図である。図7は、図5の矢印VII-VIIから見た平面図である。図8は、図2のVIII-VIII線に沿う図解的な断面図である。図9は、図2のIX-IX線に沿う図解的な断面図である。
図4を参照して、インクジェットプリントヘッド1の構成を概略的に説明する。
インクジェットプリントヘッド1は、アクチュエータ基板2および圧電素子9を含むアクチュエータ基板アセンブリSAと、ノズル基板3と、保護基板4とを備えている。以下において、アクチュエータ基板アセンブリSAを、基板アセンブリSAということにする。
アクチュエータ基板2の表面2aには、可動膜形成層10が積層されている。アクチュエータ基板2には、インク流路(インク溜まり)5が形成されている。インク流路5は、この実施形態では、アクチュエータ基板2を貫通して形成されている。インク流路5は、図4に矢印で示すインク流通方向41に沿って細長く延びて形成されている。インク流路5は、インク流通方向41の上流側端部(図4では左端部)のインク流入部6と、インク流入部6に連通する圧力室7とから構成されている。図4において、インク流入部6と圧力室7との境界を二点鎖線で示すことにする。
ノズル基板3は、たとえば、シリコン(Si)基板(半導体基板)30と、シリコン基板30における圧力室7とは反対側の表面(第2表面)30bに形成された酸化シリコン(SiO)膜(酸化膜)31と、酸化シリコン膜31におけるシリコン基板30とは反対側の表面に形成されたシリコン(Si)膜(半導体膜)32とからなる。この実施形態では、シリコン基板30の厚さは150μm程度であり、酸化シリコン膜の膜厚は0.5μm程度であり、シリコン膜32の膜厚は10μm程度である。
ノズル基板3は、アクチュエータ基板2の裏面2bにシリコン基板30側の表面(第1表面)が対向した状態で、アクチュエータ基板2の裏面2bに張り合わされている。ノズル基板3は、アクチュエータ基板2および可動膜形成層10とともにインク流路5を区画している。より具体的には、ノズル基板3は、インク流路5の底面部を区画している。
ノズル基板3には、ノズル孔20が形成されている。ノズル孔20は、圧力室7に臨む凹部20aと、凹部20aの底面に形成されたインク吐出通路20bとからなる(図5〜図7も参照)。凹部20aは、シリコン基板30および酸化シリコン膜31を貫通し、その底部はシリコン膜32まで達している。インク吐出通路20bは、凹部20aの底壁を貫通しており、圧力室7とは反対側にインク吐出口20cを有している。凹部20aは、シリコン基板30を貫通する第1凹部20a1と、酸化シリコン膜31を貫通してインク吐出通路20bと連通する第2凹部20a2からなる。圧力室7の容積変化が生じると、圧力室7に溜められたインクは、インク吐出通路20bを通り、吐出口20cから吐出される。
この実施形態では、凹部20aは、横断面が円形状に形成されている。インク吐出通路20bの横断面形状は、凹部20aの横断面よりも小さい円形状に形成されている。後述するように、インク吐出通路20bは、ボッシュプロセスと類似した方法により形成される。ボッシュプロセスは、側壁保護膜の形成工程とエッチング工程とを交互に繰り返し行うプロセスである。このため、インク吐出通路20bの内周面は、図6に示すように、周期的な段差のあるスキャロップ形状となる。つまり、インク吐出通路20bの内周面は、深さ方向に進行するような波状の凹凸面となる。
言い換えれば、インク吐出通路20bの直径は、深さ方向に周期的に変化している。したがって、図6に示すように、インク吐出通路20bの深さ方向に、直径の極小値D2,D4と直径の極大値D3,D5とが交互に現れる。インク吐出通路20bにおける凹部20aとは反対側の開口端である吐出口3cの直径をD1とすると、D1は、極小値D2,D4よりも極大値D3,D5に近い値となる。また、D1は、極小値D2,D4と極大値D3,D5の平均値{(D2+D3+D4+D5)/4}よりも大きい。
可動膜形成層10における圧力室7の天壁部分は、可動膜10Aを構成している。可動膜10A(可動膜形成層10)は、たとえば、アクチュエータ基板2上に形成された酸化シリコン(SiO)膜からなる。可動膜10A(可動膜形成層10)は、たとえば、アクチュエータ基板2上に形成されるシリコン(Si)膜と、シリコン膜上に形成される酸化シリコン(SiO)膜と、酸化シリコン膜上に形成される窒化シリコン(SiN)膜との積層膜から構成されていてもよい。この明細書において、可動膜10Aとは、可動膜形成層10のうち圧力室7の天面部を区画している天壁部を意味している。したがって、可動膜形成層10のうち、圧力室7の天壁部以外の部分は、可動膜10Aを構成していない。
可動膜10Aの厚さは、たとえば、0.4μm〜2μmである。可動膜10Aが酸化シリコン膜から構成される場合は、酸化シリコン膜の厚さは1.2μm程度であってもよい。可動膜10Aが、シリコン膜と酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜から構成される場合には、シリコン膜、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜の厚さは、それぞれ0.4μm程度であってもよい。
圧力室7は、可動膜10Aと、アクチュエータ基板2と、ノズル基板3とによって区画されており、この実施形態では、略直方体状に形成されている。圧力室7の長さはたとえば800μm程度、その幅は55μm程度であってもよい。インク流入部6は、圧力室7の長手方向一端部に連通している。
可動膜形成層10の表面には、金属バリア膜8が形成されている。金属バリア膜8は、たとえば、Al(アルミナ)からなる。金属バリア膜8の厚さは、50nm〜100nm程度である。金属バリア膜8の表面には、可動膜10Aの上方位置に、圧電素子9が配置されている。圧電素子9は、金属バリア膜8上に形成された下部電極11と、下部電極11上に形成された圧電体膜12と、圧電体膜12上に形成された上部電極13とを備えている。言い換えれば、圧電素子9は、圧電体膜12を上部電極13および下部電極11で上下から挟むことにより構成されている。
上部電極13は、白金(Pt)の単膜であってもよいし、たとえば、導電性酸化膜(たとえば、IrO(酸化イリジウム)膜)および金属膜(たとえば、Ir(イリジウム)膜)が積層された積層構造を有していてもよい。上部電極13の厚さは、たとえば、0.2μm程度であってもよい。
圧電体膜12としては、たとえば、ゾルゲル法またはスパッタ法によって形成されたPZT(PbZrTi1−x:チタン酸ジルコン酸鉛)膜を適用することができる。このような圧電体膜12は、金属酸化物結晶の焼結体からなる。圧電体膜12は、上部電極13と平面視で同形状に形成されている。圧電体膜12の厚さは、1μm程度である。可動膜10Aの全体の厚さは、圧電体膜12の厚さと同程度か、圧電体膜12の厚さの2/3程度とすることが好ましい。前述の金属バリア膜8は、主として圧電体膜12から金属元素(圧電体膜12がPZTの場合には、Pb,Zr,Ti)が抜け出すことを防止し、圧電体膜12の圧電特性を良好に保つとともに、圧電体膜12の成膜時に、可動膜10Aに金属が拡散するのを防止する。金属バリア膜8は、圧電体膜12の水素還元による特性劣化を防止する機能も有している。
下部電極11は、たとえば、Ti(チタン)膜およびPt(プラチナ)膜を金属バリア膜8側から順に積層した2層構造を有している。この他にも、Au(金)膜、Cr(クロム)層、Ni(ニッケル)層などの単膜で下部電極11を形成することもできる。下部電極11は、圧電体膜12の下面に接した主電極部11Aと、圧電体膜12の外方の領域まで延びた延長部11Bとを有している。下部電極11の厚さは、たとえば、0.2μm程度であってもよい。
圧電素子9上、下部電極11の延長部11B上および金属バリア膜8上には、水素バリア膜14が形成されている。水素バリア膜14は、たとえば、Al(アルミナ)からなる。水素バリア膜14の厚さは、50nm〜100nm程度である。水素バリア膜14は、圧電体膜12の水素還元による特性劣化を防止するために設けられている。
水素バリア膜14上に、絶縁膜15が積層されている。絶縁膜15は、たとえば、SiO、低水素のSiN等からなる。絶縁膜15の厚さは、500nm程度である。絶縁膜15上には、上部配線17および下部配線18(図2、図9参照)が形成されている。これらの配線は、Al(アルミニウム)を含む金属材料からなっていてもよい。これらの配線の厚さは、たとえば、1000nm(1μm)程度である。
上部配線17の一端部は、上部電極13の一端部(インク流通方向41の下流側端部)の上方に配置されている。上部配線17と上部電極13との間において、水素バリア膜14および絶縁膜15を連続して貫通するコンタクト孔33が形成されている。上部配線17の一端部は、コンタクト孔33に入り込み、コンタクト孔33内で上部電極13に接続されている。上部配線17は、上部電極13の上方から、圧力室7の外縁を横切って圧力室7の外方に延びている。下部配線18については、後述する。
絶縁膜15上には、上部配線17、下部配線18および絶縁膜15を覆うパッシベーション膜21が形成されている。パッシベーション膜21は、たとえば、SiN(窒化シリコン)からなる。パッシベーション膜21の厚さは、たとえば、800nm程度であってもよい。
パッシベーション膜21には、上部配線17の一部を露出させるパッド開口35が形成されている。パッド開口35は、圧力室7の外方領域に形成されており、たとえば、上部配線17の先端部(上部電極13へのコンタクト部の反対側端部)に形成されている。パッシベーション膜21上には、パッド開口35を覆う上部電極用パッド42が形成されている。上部電極用パッド42は、パッド開口35に入り込み、パッド開口35内で上部配線17に接続されている。下部配線18に対しても、下部電極用パッド43(図2、図9参照)が設けられているが、下部電極用パッド43については後述する。
インク流路5におけるインク流入部6側の端部に対応する位置に、パッシベーション膜21、絶縁膜15、水素バリア膜14、下部電極11、金属バリア膜8および可動膜形成層10を貫通するインク供給用貫通孔22が形成されている。下部電極11には、インク供給用貫通孔22を含み、インク供給用貫通孔22よりも大きな貫通孔23が形成されている。下部電極11の貫通孔23とインク供給用貫通孔22との隙間には、水素バリア膜14が入り込んでいる。インク供給用貫通孔22は、インク流入部6に連通している。
保護基板4は、たとえば、シリコン基板からなる。保護基板4は、圧電素子9を覆うように基板アセンブリSA上に配置されている。保護基板4は、基板アセンブリSAに、接着剤50を介して接合されている。保護基板4は、基板アセンブリSAに対向する対向面51に収容凹所52を有している。収容凹所52内に圧電素子9が収容されている。さらに、保護基板4には、インク供給用貫通孔22に連通するインク供給路53とパッド42,43を露出させるための開口部54とが形成されている。インク供給路53および開口部54は、保護基板4を貫通している。保護基板4上には、インクを貯留したインクタンク(図示せず)が配置されている。
圧電素子9は、可動膜10Aおよび金属バリア膜8を挟んで圧力室7に対向する位置に形成されている。すなわち、圧電素子9は、金属バリア膜8の圧力室7とは反対側の表面に接するように形成されている。インクタンクからインク供給路53、インク供給用貫通孔22、インク流入部6を通って圧力室7にインクが供給されることによって、圧力室7にインクが充填される。可動膜10Aは、圧力室7の天面部を区画していて、圧力室7に臨んでいる。可動膜10Aは、アクチュエータ基板2における圧力室7の周囲の部分によって支持されており、圧力室7に対向する方向(換言すれば可動膜10Aの厚さ方向)に変形可能な可撓性を有している。
下部配線18(図2、図9参照)および上部配線17は、駆動回路(図示せず)に接続されている。具体的には、上部電極用パッド42と駆動回路とは、接続金属部材(図示せず)を介して接続されている。下部電極用パッド43(図2、図9参照)と駆動回路とは、接続金属部材(図示せず)を介して接続されている。駆動回路から圧電素子9に駆動電圧が印加されると、逆圧電効果によって、圧電体膜12が変形する。これにより、圧電素子9とともに可動膜10Aが変形し、それによって、圧力室7の容積変化がもたらされ、圧力室7内のインクが加圧される。加圧されたインクは、インク吐出通路20bを通って、インク吐出口20cから微小液滴となって吐出される。
図1〜図9を参照して、インクジェットプリントヘッド1の構成についてさらに詳しく説明する。以下の説明において、図1の左側を「左」、図1の右側を「右」、図1の下側を「前」、図1の上側を「後」とそれぞれいうものとする。
図1に示すように、インクジェットプリントヘッド1の平面視形状は、前後方向に長い長方形状である。この実施形態では、アクチュエータ基板2、保護基板4およびノズル基板3の平面形状および大きさは、インクジェットプリントヘッド1の平面形状および大きさとほぼ同じである。
アクチュエータ基板2上には、平面視において、前後方向に間隔をおいてストライプ状に配列された複数の圧電素子9の列(以下「圧電素子列」という)が、左右方向に間隔をおいて複数列分設けられている。この実施形態では、説明の便宜上、圧電素子列は、2列分設けられているものとする。
図2および図3に示すように、アクチュエータ基板2には、圧電素子9毎に、インク流路5(圧力室7)が形成されている。したがって、アクチュエータ基板2には、平面視において、前後方向に間隔をおいてストライプ状に配列された複数のインク流路5(圧力室7)からなるインク流路列(圧力室列)が、左右方向に間隔をおいて2列分設けられている。
図1の左側の圧電素子列に対応するインク流路列のパターンと右側の圧電素子列に対応するインク流路列のパターンとは、それらの列間の中央を結ぶ線分に対して左右対称のパターンとなっている。したがって、左側のインク流路列に含まれるインク流路5においては、インク流入部6が圧力室7に対して右側にあるのに対して、右側のインク流路列に含まれるインク流路5においては、インク流入部6が圧力室7に対して左側にある。したがって、左側のインク流路列と右側のインク流路列とでは、インク流通方向41は互いに逆方向になる。
各インク流路列の複数のインク流路5毎に、インク供給用貫通孔22が設けられている。インク供給用貫通孔22は、インク流入部6上に配置されている。したがって、左側のインク流路列に含まれるインク流路5に対するインク供給用貫通孔22は、インク流路5の右端部上に配置され、右側のインク流路列に含まれるインク流路5に対するインク供給用貫通孔22は、インク流路5の左端部上に配置されている。
各インク流路列において、複数のインク流路5は、それらの幅方向に微小な間隔(たとえば30μm〜350μm程度)を開けて等間隔で形成されている。各インク流路5は、インク流通方向41に沿って細長く延びている。インク流路5は、インク供給用貫通孔22に連通するインク流入部6とインク流入部6に連通する圧力室7とからなる。圧力室7は、平面視において、インク流通方向41に沿って細長く延びた長方形形状を有している。つまり、圧力室7の天面部は、インク流通方向41に沿う2つの側縁と、インク流通方向41に直交する方向に沿う2つの端縁とを有している。インク流入部6は、平面視で圧力室7とほぼ同じ幅を有している。インク流入部6における圧力室7とは反対側の端部の内面は、平面視で半円形に形成されている。インク供給用貫通孔22は、平面視において、円形状である(特に図3参照)。
圧電素子9は、平面視において、圧力室7(可動膜10A)の長手方向に長い矩形形状を有している。圧電素子9の長手方向の長さは、圧力室7(可動膜10A)の長手方向の長さよりも短い。図3に示すように、圧電素子9の短手方向に沿う両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁に対して、それぞれ所定間隔を開けて内側に配置されている。また、圧電素子9の短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。圧電素子9の長手方向に沿う両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。
下部電極11は、可動膜形成層10の表面の周縁部を除いて、可動膜形成層10の表面のほぼ全域に形成されている。下部電極11は、複数の圧電素子9に対して共用される共通電極である。下部電極11は、圧電素子9を構成する平面視矩形状の主電極部11Aと、主電極部11Aから可動膜形成層10の表面に沿う方向に引き出され、圧力室7の天面部の周縁の外方に延びた延長部11Bとを含んでいる。
主電極部11Aの長手方向の長さは、可動膜10Aの長手方向の長さよりも短い。主電極部11Aの両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁に対して、それぞれ、所定間隔を開けて内側に配置されている。また、主電極部11Aの短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。主電極部11Aの両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。延長部11Bは、下部電極11の全領域のうち主電極部11Aを除いた領域である。
上部電極13は、平面視において、下部電極11の主電極部11Aと同じパターンの矩形状に形成されている。すなわち、上部電極13の長手方向の長さは、可動膜10Aの長手方向の長さよりも短い。上部電極13の両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁に対して、それぞれ、所定間隔を開けて内側に配置されている。また、上部電極13の短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。上部電極13の両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。
圧電体膜12は、平面視において、上部電極13と同じパターンの矩形状に形成されている。すなわち、圧電体膜12の長手方向の長さは、可動膜10Aの長手方向の長さよりも短い。圧電体膜12の両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁に対して、それぞれ、所定間隔を開けて内側に配置されている。また、圧電体膜12の短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。圧電体膜12の両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。圧電体膜12の下面は下部電極11の主電極部11Aの上面に接しており、圧電体膜12の上面は上部電極13の下面に接している。
上部配線17は、圧電素子9の一端部(インク流通方向41の下流側の端部)の上面からそれに連なる圧電素子9の端面に沿って延び、さらに下部電極11の延長部11Bの表面に沿って、インク流通方向41に沿う方向に延びている。上部配線17の先端部は、保護基板4の開口部54内に配置されている。
パッシベーション膜21には、上部配線17の先端部表面の中央部を露出させる上部電極用パッド開口35が形成されている。パッシベーション膜21上に、上部電極用パッド開口35を覆うように上部電極用パッド42が設けられている。上部電極用パッド42は、上部電極用パッド開口35内で上部配線17に接続されている。左側の圧電素子列内の複数の圧電素子9に対応する複数の上部電極用パッド42は、図1に示すように、平面視で、左側の圧電素子列の左側において、前後方向に一列状に並んで配置されている。また、右側の圧電素子列内の複数の圧電素子9に対応する複数の上部電極用パッド42は、平面視で、右側の圧電素子列の右側において、前後方向に一列状に並んで配置されている。
図1、図2、図3および図9を参照して、下部配線18は、平面視において、左側の上部電極用パッド列の後方位置および右側の上部電極用パッド列の後方位置にそれぞれ配置されている。下部配線18は、平面視で四角形状である。下部配線18の下方には、下部電極11の延長部11Bが存在している。下部配線18と下部電極11の延長部11Bとの間において、水素バリア膜14および絶縁膜15を連続して貫通するコンタクト孔34が形成されている。下部配線18は、コンタクト孔34に入り込み、コンタクト孔34内で下部電極11の延長部11Bに接続されている。
パッシベーション膜21には、下部配線18の表面の中央部を露出させるパッド開口36が形成されている。パッシベーション膜21上には、パッド開口36を覆う下部電極用パッド43が形成されている。下部電極用パッド43は、パッド開口36に入り込み、パッド開口36内で下部配線18に接続されている。
図1、図2および図4に示すように、保護基板4には、左側のインク流路列に対する複数のインク供給用貫通孔22に連通する複数のインク供給路53(以下、「第1のインク供給路53」という場合がある)と、右側のインク流路列に対する複数のインク供給用貫通孔22に連通する複数のインク供給路53(以下、「第2のインク供給路53」という場合がある)とが形成されている。第1のインク供給路53は、平面視において、保護基板4の幅中央に対して左側にずれた位置に、前後方向に間隔をおいて1列状に配置されている。第2のインク供給路53は、平面視において、保護基板4の幅中央に対して右側にずれた位置に、前後方向に間隔をおいて1列状に配置されている。インク供給路53は、平面視において、アクチュエータ基板2側のインク供給用貫通孔22と同じパターンの円形状である。インク供給路53は、平面視でインク供給用貫通孔22に整合している。
また、保護基板4には、左側の圧電素子列に対応した全ての上部電極用パッド42および左側の下部電極用パッド43を露出させるための開口部54が形成されている。また、保護基板4には、右側の圧電素子列に対応した全ての上部電極用パッド42および右側の下部電極用パッド43を露出させるための開口部54が形成されている。これらの開口部54は、平面視において、前後方向に長い矩形状である。
図12は、保護基板の図2に示される領域の底面図である。
図4、図8および図12に示すように、保護基板4の対向面51には、各圧電素子列内の圧電素子9に対向する位置に、それぞれ収容凹所52が形成されている。各収容凹所52に対してインク流通方向41の上流側にインク供給路53が配置され、下流側に開口部54が配置されている。各収容凹所52は、平面視において、対応する圧電素子9の上部電極13のパターンよりも少し大きな矩形状に形成されている。そして、各収容凹所52に、対応する圧電素子9が収容されている。
図10は、前記インクジェットプリントヘッドの絶縁膜のパターン例を示す図解的な平面図である。図11は、前記インクジェットプリントヘッドのパッシベーション膜のパターン例を示す図解的な平面図である。
この実施形態では、絶縁膜15およびパッシベーション膜21は、アクチュエータ基板2上において、平面視で保護基板4の収容凹所52の外側領域のほぼ全域に形成されている。ただし、この領域において、絶縁膜15には、インク供給用貫通孔22およびコンタクト孔34が形成されている。この領域において、パッシベーション膜21には、インク供給用貫通孔22、パッド開口35,36が形成されている。
保護基板4の収容凹所52の内側領域においては、絶縁膜15およびパッシベーション膜21は、上部配線17が存在する一端部(上部配線領域)にのみ形成されている。この領域において、パッシベーション膜21は、絶縁膜15上の上部配線17の上面および側面を覆うように形成されている。換言すれば、絶縁膜15およびパッシベーション膜21には、平面視で収容凹所52の内側領域のうち、上部配線領域を除いた領域に、開口37が形成されている。絶縁膜15には、さらに、コンタクト孔33が形成されている。
インクジェットプリントヘッド1の製造方法の概要について説明する。
図13は、アクチュエータ基板の元基板としての半導体ウエハの平面図であり、一部の領域を拡大して示してある。
アクチュエータ基板2の元基板としての半導体ウエハ(アクチュエータウエハ)100は、例えばシリコンウエハからなる。アクチュエータウエハ100の表面100aは、アクチュエータ基板の表面2aに対応している。アクチュエータウエハ100の表面100aには、複数の機能素子形成領域101がマトリクス状に配列されて設定されている。隣接する機能素子形成領域101の間には、スクライブ領域(境界領域)102が設けられている。スクライブ領域102は、ほぼ一定の幅を有する帯状の領域であり、直交する二方向に延びて格子状に形成されている。スクライブ領域102には、切断予定線103が設定されている。アクチュエータウエハ100に対して必要な工程を行うことにより、インク流路5は形成されていないが、各機能素子形成領域101上に基板アセンブリSAの構成が形成された基板アセンブリ集合体(SA集合体)110が作成される。
基板アセンブリ集合体110の各機能素子形成領域101に対応した複数の保護基板4を一体的に含む保護基板集合体130(図14K参照)が予め用意されている。保護基板集合体130は、保護基板4の元基板としての半導体ウエハ(保護基板用ウエハ)に対して必要な工程を行うことにより作成される。保護基板用ウエハは、例えばシリコンウエハからなる。
また、基板アセンブリ集合体110の各機能素子形成領域101に対応した複数のノズル基板3を一体的に含むノズル基板集合体150(図14Mおよび図15E参照)が予め用意される。ノズル基板集合体150は、ノズル基板3の元基板としての半導体ウエハ(ノズルウエハ)に対して必要な工程を行うことにより作成される。ノズルウエハは、例えばシリコンウエハからなる。ノズル基板集合体150は、図14Mおよび図15Eに示すように、ノズルウエハ140と、ノズルウエハ140の一表面に形成された酸化シリコン(SiO)膜141と、酸化シリコン膜141の表面に形成されたシリコン膜142とからなる。
基板アセンブリ集合体110が作成されると、基板アセンブリ集合体110に保護基板集合体130が接合される。次に、基板アセンブリ集合体110に、インク流路5が形成される。次に、基板アセンブリ集合体110にノズル基板集合体150が接合される。これにより、基板アセンブリ集合体110と、保護基板集合体130と、ノズル基板集合体150とからなるインクジェットプリントヘッド集合体170が得られる。この後、インクジェットプリントヘッド集合体170は、切断予定線103に沿ってダイシングブレードにより切断(ダイシング)される。これによって、機能素子形成領域101を含む個々のインクジェットプリントヘッド(チップ)1が切り出される。インクジェットプリントヘッド1は、周縁部にスクライブ領域102を有し、スクライブ領域102に囲まれた中央領域に機能素子形成領域101を有することになる。
以下、インクジェットプリントヘッド1の製造方法を具体的に説明する。
図14A〜図14Mは、インクジェットプリントヘッド1の製造工程を示す断面図であり、図4の切断面に対応する断面図である。
まず、図14Aに示すように、アクチュエータウエハ100を用意する。ただし、アクチュエータウエハ100としては、最終的なアクチュエータ基板2の厚さよりも厚いものが用いられる。そして、アクチュエータウエハ100の表面100aに可動膜形成層10が形成される。具体的には、アクチュエータウエハ100の表面100aに酸化シリコン膜(たとえば、1.2μm厚)が形成される。可動膜形成層10が、シリコン膜と酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜で構成される場合には、アクチュエータ基板2の表面にシリコン膜(たとえば0.4μm厚)が形成され、シリコン膜上に酸化シリコン膜(たとえば0.4μm厚)が形成され、酸化シリコン膜上に窒化シリコン膜(たとえば0.4μm厚)が形成される。
次に、可動膜形成層10上に、金属バリア膜8が形成される。金属バリア膜8は、たとえば、Al膜(たとえば50nm〜100nm厚)からなる。金属バリア膜8は、後に形成される圧電体膜12からの金属原子の抜け出しを防ぐ。金属電子が抜け出すと、圧電体膜12の圧電特性が悪くなるおそれがある。また、抜け出した金属原子が可動膜10Aを構成するシリコン層に混入すると可動膜10Aの耐久性が悪化するおそれがある。
次に、図14Bに示すように、金属バリア膜8に、下部電極11の材料層である下部電極膜71が形成される。下部電極膜71は、たとえば、Ti膜(たとえば10nm〜40nm厚)を下層としPt膜(たとえば10nm〜400nm厚)を上層とするPt/Ti積層膜からなる。このような下部電極膜71は、スパッタ法で形成されてもよい。
次に、圧電体膜12の材料である圧電体材料膜72が下部電極膜71上の全面に形成される。具体的には、たとえば、ゾルゲル法によって1μm〜3μm厚の圧電体材料膜72が形成される。このような圧電体材料膜72は、金属酸化物結晶粒の焼結体からなる。
次に、圧電体材料膜72の全面に上部電極13の材料である上部電極膜73が形成される。上部電極膜73は、たとえば、白金(Pt)の単膜であってもよい。上部電極膜73は、たとえば、IrO膜(たとえば40nm〜160nm厚)を下層とし、Ir膜(たとえば40nm〜160nm厚)を上層とするIr0/Ir積層膜であってもよい。このような上部電極膜73は、スパッタ法で形成されてもよい。
次に、図14Cおよび図14Dに示すように、上部電極膜73、圧電体材料膜72および下部電極膜71のパターニングが行われる。まず、フォトリソグラフィによって、上部電極13のパターンのレジストマスクが形成される。そして、図14Cに示すように、このレジストマスクをマスクとして、上部電極膜73および圧電体材料膜72が連続してエッチングされることにより、所定パターンの上部電極13および圧電体膜12が形成される。
次に、レジストマスクが剥離された後、フォトリソグラフィによって、下部電極11のパターンのレジストマスクが形成される。そして、図14Dに示すように、このレジストマスクをマスクとして、下部電極膜71がエッチングされることにより、所定パターンの下部電極11が形成される。これにより、主電極部11Aと、貫通孔23を有する延長部11Bとからなる下部電極11が形成される。このようにして、下部電極11の主電極部11A、圧電体膜12および上部電極13からなる圧電素子9が形成される。
次に、図14Eに示すように、レジストマスクが剥離された後、全面を覆う水素バリア膜14が形成される。水素バリア膜14は、スパッタ法で形成されたAl膜であってもよく、その膜厚は、50nm〜100nmであってもよい。この後、水素バリア膜14上の全面に絶縁膜15が形成される。絶縁膜15は、SiO膜であってもよく、その膜厚は、200nm〜300nmであってもよい。続いて、絶縁膜15および水素バリア膜14が連続してエッチングされることにより、コンタクト孔33,34が形成される。
次に、図14Fに示すように、コンタクト孔33,34内を含む絶縁膜15上に、スパッタ法によって、上部配線17および下部配線18を構成する配線膜が形成される。この後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、配線膜がパターニングされることにより、上部配線17および下部配線18が同時に形成される。
次に、図14Gに示すように、絶縁膜15の表面に各配線17,18を覆うパッシベーション膜21が形成される。パッシベーション膜21は、例えば、SiNからなる。パッシベーション膜21は、例えば、プラズマCVDによって形成される。
次に、フォトリソグラフィによってパッド開口35,36に対応した開口を有するレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、パッシベーション膜21がエッチングされる。これにより、図14Hに示すように、パッシベーション膜21にパッド開口35,36が形成される。レジストマスクが剥離された後に、パッシベーション膜21上にパッド開口35,36を介して、それぞれ上部電極用パッド42および下部電極用パッド43が形成される。
次に、フォトリソグラフィによって開口37およびインク供給用貫通孔22に対応した開口を有するレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、パッシベーション膜21および絶縁膜15が連続してエッチングされる。これにより、図14Iに示すように、パッシベーション膜21および絶縁膜15に、開口37およびインク供給用貫通孔22が形成される。
次に、レジストマスクが剥離される。そして、フォトリソグラフィによってインク供給用貫通孔22に対応した開口を有するレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、水素バリア膜14、金属バリア膜8および可動膜形成層10がエッチングされる。これにより、図14Jに示すように、水素バリア膜14、金属バリア膜8および可動膜形成層10に、インク供給用貫通孔22が形成される。これにより、基板アセンブリ集合体110が作成される。
次に、図14Kに示すように、保護基板集合体130の対向面51に接着剤50が塗布され、インク供給路53とそれに対応するインク供給用貫通孔22とが一致するように、基板アセンブリ集合体110に保護基板集合体130が固定される。
次に、図14Lに示すように、アクチュエータウエハ100を薄くするための裏面研削が行われる。アクチュエータウエハ100が裏面100bから研磨されることにより、アクチュエータウエハ100が薄膜化される。たとえば、初期状態で670μm厚程度のアクチュエータウエハ100が、300μm厚程度に薄型化されてもよい。この後、アクチュエータウエハ100の裏面100b側に、フォトリソグラフィによってインク流路5(インク流入部6および圧力室7)に対応した開口を有するレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、アクチュエータウエハ100が裏面100bからエッチングされる。これにより、アクチュエータウエハ100に、インク流路5(インク流入部6および圧力室7)が形成される。
このエッチングの際、可動膜形成層10の表面に形成された金属バリア膜8は、圧電体膜12から金属元素(PZTの場合は、Pb,Zr,Ti)が抜け出すことを防止し、圧電体膜12の圧電特性を良好に保つ。また、前述のとおり、金属バリア膜8は、可動膜10Aを形成するシリコン層の耐久性の維持に寄与する。
この後、図14Mに示すように、ノズル基板集合体150がアクチュエータウエハ100の裏面100bに張り合わされる。この際、ノズル基板集合体150におけるシリコン膜142の表面には、粘着面を有する支持テープ143が貼着される。これにより、基板アセンブリ集合体110と、保護基板集合体130と、ノズル基板集合体150とからなり、支持テープ143が貼着されたインクジェットプリントヘッド集合体170が得られる。この後、支持テープ143が貼着された状態で、インクジェットプリントヘッド集合体170が、保護基板集合体130側から、切断予定線103に沿ってダイシングブレードにより切断される。ただし、支持テープ143は切断されない。これにより、インクジェットプリントヘッド集合体170が、複数のインクジェットプリントヘッド1に個片化される。ただし、個片化された複数のインクジェットプリントヘッド1は、支持テープ143に貼着された状態となる。
この個片化の工程が完了すると、基板アセンブリ集合体110におけるアクチュエータウエハ100は、個々のインクジェットプリントヘッド1のアクチュエータ基板2となる。また、保護基板集合体130は、個々のインクジェットプリントヘッド1の保護基板4となる。また、ノズル基板集合体150におけるノズルウエハ140、酸化シリコン膜141およびシリコン膜142は、それぞれ、個々のインクジェットプリントヘッド1のノズル基板3におけるシリコン基板30、酸化シリコン膜31およびシリコン膜32となる。支持テープ143に貼着されている複数のインクジェットプリントヘッド1は、最終的には支持テープ143から分離される。こうして、図1〜図9に示す構造のインクジェットプリントヘッド1が得られる。
このようにして得られたインクジェットプリントヘッド1では、アクチュエータ基板2の側面およびノズル基板3の側面は、平面視において全方位で面一(全周囲にわたって面一)となる。つまり、この実施形態では、アクチュエータ基板2とノズル基板3との間に段差のないインクジェットプリントヘッド1が得られる。また、この実施形態では、アクチュエータ基板2の側面および保護基板4の側面も、平面視において全方位で面一(全周囲にわたって面一)となる。つまり、この実施形態では、アクチュエータ基板2と保護基板4との間にも段差のないインクジェットプリントヘッド1が得られる。
この実施形態によるインクジェットプリントヘッドの製造方法では、保護基板集合体130が固定された基板アセンブリ集合体110にノズル基板集合体150が接合されることにより、インクジェットプリントヘッド集合体170が作成される。そして、インクジェットプリントヘッド集合体170が、ダイシングされることにより、インクジェットプリントヘッド1が個別に切り出される。このため、たとえば、個々の基板アセンブリSAを製造した後に、個々の基板アセンブリSAにノズル基板3を個別に接合してインクジェットプリントヘッドを製造する場合に比べて、インクジェットプリントヘッド1を効率よく製造することができるようになる。
図15A〜図15Cは、ノズル基板集合体150の製造工程を模式的に示す断面図であって、インク流通方向に直交しかつノズル孔の中心を通過するような切断線に沿う断面図ある。
まず、図15Aに示すように、第1表面140aおよび第2表面140bを有するシリコンウエハ(ノズルウエハ)140と、シリコンウエハ140の第2表面140bに形成された酸化シリコン膜(酸化膜)141と、酸化シリコン膜141の表面に形成されたシリコン膜(半導体膜)142とを含む積層膜が用意される。このような積層膜としては、SOI(Silicon on Insulator)ウエハを用いることができる。
次に、図15Bに示すように、積層膜のシリコン膜142側の表面からシリコン膜142に達するインク吐出通路20bが形成される。インク吐出通路20bを形成する工程の詳細については、後述する。
次に、図15Cに示すように、エッチングガスを変更して、酸化シリコン膜141をエッチングすることにより、インク吐出通路20bに連通する連通孔20dを酸化シリコン膜141に形成する。
次に、図15Dに示すように、シリコンウエハ140の第1表面140a側からシリコンウエハ140を貫通し、連通孔20dと連通する第1凹部20a1が形成される。第1凹部20a1は、例えば、次のようにして形成される。まず、シリコンウエハ140の第1表面140aに、凹部20aに対応する開口を有するレジストマスクが形成される。次に、このレジストマスクをマスクとして、シリコンウエハ140がエッチング(ドライエッチング)される。
次に、図15Eに示すように、エッチングガスを変更して、酸化シリコン膜141に、第1凹部20a1に連通する第2凹部20a2を形成する。この後、アッシング処理によって、レジストマスクが剥離される。
図16A〜図16Eを参照して、図15Bのインク吐出通路20bを形成する工程の詳細について説明する。なお、図16A〜図16Eは、図15Bに対して上下が反対である。
まず、図16Aに示すように、シリコン膜142の酸化シリコン膜141側とは反対側の表面にインク吐出通路20bに対応する開口147aを有するレジストマスク147が形成され、このレジストマスク147をマスクとして、シリコン膜142が所定時間だけエッチングされる。エッチングガスとしては、例えば、SF(六フッ化硫黄)が用いられる。
次に、図16Bに示すように、C(パーフルオロシクロブタン)等のテフロン(登録商標)系のガスを用いて、エッチング面を含む表面全体に、側壁保護膜(デポジション膜)148が形成される。
次に、図16Cに示すように、シリコンウエハ140、酸化シリコン膜141およびシリコン膜142からなる積層膜にバイアスをかけた状態で、エッチングが所定時間だけ行われることにより、側壁保護膜148の底面部が除去される。エッチングガスは、前述のエッチングガスと同じである。
次に、図16Dに示すように、側壁保護膜148から露出したシリコン膜142のエッチングが所定時間だけ行われる。
次に、図16B〜図16Cの工程と同様な工程(側壁保護膜の形成、側壁保護膜の底面部の除去およびシリコン膜のエッチング)が、少なくとも1サイクル分行われる。この実施形態では、説明の便宜上、図16B〜図16Cの工程と同様な工程が1サイクル分のみ行われるとしている。ただし、実際には、図16B〜図16Cの工程と同様な工程が、数十サイクル分行われることが多い。この後、アッシング処理によって、レジストマスク147および側壁保護膜148が除去される。これにより、図16Eに示すように、シリコン膜142を貫通し、酸化シリコン膜141に達するインク吐出通路20bが形成される。
図17A〜図17Gは、図15Bの工程の比較例を図解的に示す断面図である。
まず、図17Aに示すように、シリコン膜142の酸化シリコン膜141側とは反対側の表面にインク吐出通路20bに対応する開口147aを有するレジストマスク147が形成される。そして、レジストマスク147の表面および開口147aの内面(側面および底面)を覆うように側壁保護膜(デポジション膜)148が形成される。
次に、図17Bに示すように、側壁保護膜148の底面部(開口147aの底面上の側壁保護膜)を除去するために、シリコンウエハ140、酸化シリコン膜141およびシリコン膜142からなる積層膜にバイアスをかけた状態で、エッチングが所定時間だけ行われる。
ボッシュプロセスにおいて最初のエッチング開始時には、側壁保護膜148のデポジション・レートが高く、側壁保護膜148のエッチングレートが低い。このため、側壁保護膜148の底面部を除去するための最初のエッチング工程において、レジストマスク147の開口147aの底面上の側壁保護膜(シリコン膜142の表面上の側壁保護膜)148が完全に除去されずに、一部が残るといったことが起こりやすい。側壁保護膜148の底面部を除去するための最初のエッチング工程において、レジストマスク147の開口147aの底面上の側壁保護膜148が完全に除去された場合を正常時といい、レジストマスク147の開口147aの底面上の側壁保護膜148が完全に除去されない場合を異常時ということにする。
図17Bでは、レジストマスク147の開口147aの底面上の側壁保護膜148が完全に除去されずに、側壁保護膜148の薄膜が残った例を示している。つまり、図17Bは、異常時の状態を示している。
次に、図17Cに示すように、シリコン膜142に対するエッチングが所定時間だけ行われる。このエッチングによって、レジストマスク147の開口147aの底面上に残っていた側壁保護膜148の薄膜が除去されるとともに、シリコン膜142もエッチングされる。しかしながら、シリコン膜142のエッチング量は、正常時に比べて減少する。つまり、シリコン膜142に最初に形成される凹部の直径および深さが、正常時に比べて小さくなる。正常時においてシリコン膜142に最初に形成される凹部の底面を一点鎖線Cで示す。
次に、図17Dに示すように、エッチング面を含む表面全体に、側壁保護膜148が形成される。
次に、図17Eに示すように、積層膜にバイアスをかけた状態で、エッチングが所定時間だけ行われることにより、側壁保護膜148の底面部が除去される。
次に、図17Fに示すように、側壁保護膜148から露出したシリコン膜142のエッチングが所定時間だけ行われる。
次に、図17D〜図17Fの工程と同様な工程(側壁保護膜の形成、側壁保護膜の底面部の除去およびシリコン膜のエッチング)が少なくとも1サイクル分行われる。ここでは、図17D〜図17Fの工程と同様な工程が1サイクル分だけ行われた例を示している。ただし、実際には、図16B〜図16Cの工程と同様な工程が、数十サイクル分行われることが多い。この後、アッシング処理を行って、レジストマスク147および側壁保護膜148を除去する。これにより、図17Gに示すように、シリコン膜142にインク吐出通路20bが形成される。
このように、比較例では、側壁保護膜の底面部を除去するための最初のエッチング工程において、レジストマスク147の開口147aの底面上の側壁保護膜148が完全に除去されずに、一部が残るといったことが起こりやすい。そうすると、シリコン膜の最初のエッチング工程において、シリコン膜142に形成される凹部の直径および深さが、正常時に比べて小さくなる。この結果、最終的に得られるインク吐出通路20bのインク吐出口20cの大きさは、正常時に比べて小さくなってしまう。また、インク吐出通路20bの側壁のインク吐出口20c側の角部の断面形状は、図17Gに示すように、くちばし状の鋭利な形状となる。つまり、インク吐出通路20bの側壁のインク吐出口20c側の角部は、鋭角なエッジ部となる。
前述したように、ノズル基板集合体150におけるシリコン膜142側表面には、個片化された複数のインクジェットプリントヘッドを保持するために支持テープ143が貼着される。この支持テープ143は、最終的には個々のインクジェットプリントヘッドから剥がされる。この際、インク吐出通路20bの側壁のインク吐出口20c側の鋭角なエッジ部によって支持テープ143の粘着剤が剥ぎ取られ、異物となって当該エッジ部に付着してしまう。
比較例に比べて、図16A〜図16Eに示す本実施形態のインク吐出通路20bの形成方法では、図6および図16Eに示すように、インク吐出通路20bのインク吐出口20cの大きさが適切な大きさに対して小さくなるのを抑制できるとともに、インク吐出通路20bのインク吐出口20cの開口縁部が鋭利な形状になるのを抑制できる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。例えば、図15Cの第1凹部20a1を形成する工程においても、図15Bのインク吐出通路20bを形成する工程と同様な方法を用いて、第1凹部20a1を形成してもよい。
また、アクチュエータ基板2には、圧電体素子列(圧力室列)は2列分設けられているが、圧電体素子列(圧力室列)は1列分のみ設けられていてもよいし、3列分以上設けられていてもよい。
また、前述の実施形態では、水素バリア膜14の表面の一部に絶縁膜15が形成されているが、水素バリア膜14の表面の全域に絶縁膜15が形成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、水素バリア膜14表面の一部に絶縁膜15が形成されているが、絶縁膜15はなくてもよい。
また、前述の実施形態では、圧電体膜の材料としてPZTを例示したが、そのほかにも、チタン酸鉛(PbPO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)などに代表される金属酸化物からなる圧電材料が適用されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 インジットプリントヘッド
2 アクチュエータ基板
2a 表面
2b 裏面
3 ノズル基板
4 保護基板
5 インク流路
6 インク流入部
7 圧力室(キャビティ)
8 金属バリア膜
9 圧電素子
10 可動膜形成層
10A 可動膜
11 下部電極
11A 主電極部
11B 延長部
12 圧電体膜
13 上部電極
14 水素バリア膜
15 絶縁膜
17 上部配線
18 下部配線
20 ノズル孔
20a 凹部
20a1 第1凹部
20a2 第2凹部
20b インク吐出通路
20c インク吐出口
21 パッシベーション膜
22 インク供給用貫通孔
23 貫通孔(下部電極)
30 シリコン基板
31 酸化シリコン膜
32 シリコン膜
33 コンタクト孔(上部配線)
34 コンタクト孔(下部配線)
35 パッド開口(上部配線)
36 パッド開口(下部配線)
37 開口(絶縁膜およびパッシベーション膜)
41 インク流通方向
42 上部電極用パッド
43 下部電極用パッド
50 接着剤
51 対向面
52 収容凹所
53 インク供給路
54 開口部
71 下部電極膜
72 圧電体材料膜
73 上部電極膜
100 アクチュエータウエハ
100a 表面
100b 裏面
101 機能素子形成領域
102 スクライブ領域
103 切断予定線
110 基板アセンブリ集合体
130 保護基板集合体
140 ノズルウエハ
141 酸化シリコン膜
142 シリコン膜
143 支持テープ
147 レジストマスク
147a 開口
150 ノズル基板集合体
170 インクジェットプリントヘッド集合体
SA 基板アセンブリ

Claims (11)

  1. 厚さ方向に貫通するノズル孔を有するノズル基板であって、
    前記ノズル基板は、第1表面および第2表面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記第2表面に形成された酸化膜と、前記酸化膜の表面に形成された半導体膜とを含み、
    前記ノズル孔は、前記半導体基板の第1表面に形成されかつ前記半導体基板を貫通する凹部と、前記凹部の底面に形成され、前記凹部の底壁を貫通する横断面円形状のインク吐出通路とからなり、
    前記インク吐出通路は、その直径が深さ方向に周期的に変化しており、その前記凹部側とは反対側の開口端であるインク吐出口の直径は、前記インク吐出通路の直径の極小値と極大値の平均値よりも大きい、ノズル基板。
  2. 前記インク吐出口の直径は、前記インク吐出通路の横断面の直径の極小値よりも極大値に近い値である、請求項1に記載のノズル基板。
  3. 前記凹部は、横断面が円形状である、請求項1または2に記載のノズル基板。
  4. 前記半導体基板がシリコン基板であり、
    前記酸化膜が酸化シリコン膜であり、
    前記半導体膜がシリコン膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のノズル基板。
  5. 圧力室を含むインク流路を有するアクチュエータ基板と、
    前記圧力室上に配置されかつ前記圧力室の天面部を区画する可動膜を含む可動膜形成層と、前記可動膜上に形成された圧電素子と、
    前記アクチュエータ基板の前記可動膜側の表面とは反対側の表面に接着剤によって接合され、前記圧力室の底面部を区画し、前記圧力室に連通するノズル孔を有するノズル基板とを含み、
    当該ノズル基板は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前記ノズル基板であり、前記シリコン基板の第1表面が、前記アクチュエータ基板の前記可動膜側の表面とは反対側の表面に接合されている、インクジェットプリントヘッド。
  6. 前記圧電素子を覆うように前記アクチュエータ基板に接着剤によって接合される保護基板をさらに含み、
    前記保護基板は、前記アクチュエータ基板側に向かって開口しかつ前記圧電素子を収容する収容凹所と、平面視において前記収容凹所の一端の外方に形成され、前記インク流路の一端部に連通するインク供給路とを有している、請求項5に記載のインクジェットプリントヘッド。
  7. 第1表面および第2表面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記第2表面に形成された酸化膜と、前記酸化膜における前記半導体基板とは反対側の表面に形成された半導体膜とを含む積層膜を用意する工程と、
    前記積層膜の前記半導体膜側から前記半導体膜を貫通し、前記酸化膜に達するインク吐出通路を形成する工程と、
    前記積層膜の前記半導体基板の第1表面側から前記半導体基板および前記酸化膜を貫通し、前記インク吐出通路と連通する凹部を形成する工程とを含み、
    前記インク吐出通路を形成する工程は、
    前記半導体膜の表面に前記インク吐出通路に対応する開口を有する第1レジストマスクを形成する第1工程と、
    前記第1レジストマスクをマスクとして、前記半導体膜をエッチングする第2工程と、
    エッチング面に側壁保護膜を形成する第3工程と、
    前記側壁保護膜の底面部を除去する第4工程と、
    前記側壁保護膜から露出した半導体膜をエッチングする第5工程と、
    前記第5工程の後に、前記第3工程、第4工程および第5工程と同様な工程を少なくとも1サイクル分行った後に、前記第1レジストマスクおよび前記側壁保護膜を除去する工程とを含む、ノズル基板の製造方法。
  8. 前記凹部を形成する工程は、前記半導体基板の第1表面に前記凹部に対応する開口を有する第2レジストマスクを形成する工程と、
    前記第2レジストマスクをマスクとして、前記半導体基板をエッチングすることにより、前記半導体基板に第1凹部を形成する工程と、
    前記第1凹部側から前記酸化膜をエッチングすることにより、前記酸化膜に前記インク吐出通路と連通する第2凹部を形成する工程とを含む、請求項7に記載のノズル基板の製造方法。
  9. 前記凹部は、横断面が円形状である、請求項7または8に記載のノズル基板の製造方法。
  10. 前記インク吐出通路は、横断面が円形状である、請求項7〜9のいずれか一項に記載のノズル基板の製造方法。
  11. 前記半導体基板がシリコン基板であり、
    前記酸化膜が酸化シリコン膜であり、
    前記半導体膜がシリコン膜である、請求項7〜10のいずれか一項に記載のノズル基板。
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