JP6829558B2 - 圧電素子利用装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、圧電素子利用装置およびその製造方法に関する。
特許文献1は、圧電素子を利用したインクジェットプリントヘッドを開示している。特許文献1のインクジェットプリントヘッドは、圧力室(キャビティ)と、圧力室を区画する可動膜を含む可動膜形成装置と、可動膜上に形成された金属バリア膜と、金属バリア膜上に形成された圧電素子と、圧電素子を覆う水素バリア膜とを含む。キャビティは複数形成されており、キャビティ毎に圧電素子が設けられている。圧電素子は、金属バリア膜上に形成された下部電極と、下部電極上に形成された圧電体膜と、圧電体膜上に形成された上部電極とを含む。下部電極は、平面視において、圧電体膜の下面に接した主電極部と、主電極部から引き出され、圧力室の周縁の外方に延びた延長部とを有している。金属バリア膜および水素バリア膜は、Alからなる。
特開2016−54286号公報
本発明者は、可動膜の変位を大きくするために、下部電極の延長部における圧力室の周縁よりも内側の領域に変位拡大用貫通孔が形成された構成を試作した。このような構成では、可動膜上に形成される下部電極の面積を低減させることができるので、可動膜の変位を大きくすることができる。
しかしながら、このような構成を得ようとした場合、次のような問題が生じる。すなわち、下部電極の延長部への変位拡大用貫通孔の形成はエッチングによって行われる。下部電極をエッチングする際、その下地膜である金属バリア膜(Al膜)との選択比が十分でないため、金属バリア膜もエッチングされてしまう。このため、圧電素子毎に、変位拡大用貫通孔の下方にある金属バリア膜と可動膜との膜厚合計にばらつきが生じ、可動膜の変位がばらつくという問題がある。
この発明の目的は、圧電素子毎の可動膜の変位のばらつきを低減することができる圧電素子利用装置およびその製造方法を提供することである。
この発明による圧電素子利用装置は、キャビティと、前記キャビティ上に配置されかつ前記キャビティの天面部を区画する可動膜を含む可動膜形成層と、前記可動膜形成層上に形成されたエッチングストップ膜と、前記エッチングストップ膜上に形成された金属バリア膜と、前記金属バリア膜の前記キャビティとは反対側の表面に接して形成され、前記可動膜の主面に対して法線方向から見た平面視において前記可動膜よりも前記キャビティの内方に後退した周縁を有する圧電素子とを含む。前記圧電素子は、前記金属バリア膜の前記キャビティとは反対側の表面に形成された下部電極と、前記下部電極に対して前記金属バリア膜とは反対側に形成された上部電極と、前記上部電極と前記下部電極との間に設けられた圧電体膜とを含む。前記下部電極は、前記圧電素子を構成している主電極部と、前記主電極部から前記金属バリア膜の表面に沿う方向に引き出され、前記平面視において、前記キャビティの天面部周縁を跨いで前記キャビティの外方に延びた延長部とを含む。前記延長部には、前記平面視において、前記キャビティの天面部周縁よりも内側にある領域に、前記延長部を厚さ方向に貫通する変位拡大用貫通孔が形成されている。前記金属バリア膜は、前記変位拡大用貫通孔に臨む部分に前記金属バリア膜を貫通する除去部を有している。前記エッチングストップ膜は、前記金属バリア膜に比べてエッチングレートが小さい材料からなる。
この構成では、金属バリア膜は、変位拡大用貫通孔に臨む部分に金属バリア膜を貫通する除去部を有している。エッチングストップ膜は、金属バリア膜に比べてエッチングレートが小さい材料からなるので、金属バリア膜に除去部を形成する際に、エッチングストップ膜はほとんど除去されない。このため、変位拡大用貫通孔とキャビティとの間にあるエッチングストップ膜と可動膜との合計膜厚の大きさをほぼ一定に保つことができる。これにより、圧電素子毎の可動膜の変位のばらつきを低減することができる。
この発明の一実施形態では、前記金属バリア膜はAlからなり、前記エッチングストップ膜はポリシリコンからなる。
この発明の一実施形態では、前記上部電極および前記圧電体膜の少なくとも側面全域と、前記下部電極の上面とを覆うとともに、前記変位拡大用貫通孔および前記除去部からなる凹部の内面に形成された水素バリア膜をさらに含む。
この発明の一実施形態では、前記水素バリア膜はAlからなる。
この発明の一実施形態では、前記水素バリア膜上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、前記上部電極に一端部が接続され、他端部が前記キャビティの天面部周縁の外側に引き出された上部配線とをさらに含む。そして、前記水素バリア膜および前記絶縁膜に、前記上部電極の一部を露出させるコンタクト孔が形成されており、前記上部配線の一端部は、前記コンタクト孔を介して前記上部電極に接続されている。
この発明の一実施形態では、前記絶縁膜上に形成され、前記上部配線を被覆するパッシベーション膜をさらに含む。
この発明の一実施形態では、前記平面視において、前記キャビティの天面部が一方向に長い矩形状である。前記主電極部は、平面視において、前記キャビティの天面部の短手方向の幅より短い幅と、前記キャビティの天面部の長手方向の長さより短い長さとを有する前記一方向に長い矩形状であり、その両端縁および両側縁が前記キャビティの天面部の両端縁および両側縁よりも前記キャビティの内方にそれぞれ後退している。前記延長部は、前記主電極部の周縁から前記キャビティの天面部の周縁の外方に延びている。前記変位拡大用貫通孔は、前記延長部における前記キャビティの天面部の両側縁と前記主電極部の対応する側縁との間領域にそれぞれ形成され、前記主電極部の各側縁に沿って延びたスリット状貫通孔を含む。
この発明の一実施形態では、前記可動膜形成層は、SiO単膜からなる。
この発明の一実施形態では、前記可動膜形成層は、前記キャビティ上に配置されたSi膜と、前記Si膜上に形成されSiO膜と、前記SiO膜上に形成されたSiN膜との積層膜からなる。
この発明の一実施形態では、前記圧電体膜は、PZT膜からなる。
この発明の一実施形態では、前記上部電極は、Pt単膜からなる。
この発明の一実施形態では、前記上部電極は、前記圧電体膜上に形成されたIr 膜と、前記Ir 膜上に形成されたIr膜との積層膜からなる。
この発明の一実施形態では、前記下部電極は、前記可動膜側に形成されたTi膜と、前記Ti膜上に形成されたPt膜との積層膜からなる。
この発明による圧電素子利用装置の製造方法は、キャビティが形成されるべき基板上に前記キャビティの天面部を区画するための可動膜領域を含む可動膜形成層を形成する第1工程と、前記可動膜形成層上に、エッチングストップ膜、金属バリア膜、下部電極膜、圧電体材料膜および上部電極膜を順次形成する第2工程と、前記上部電極膜および圧電体材料膜を順次パターニングすることにより、前記可動膜形成層の主面に対して法線方向から見た平面視において、前記可動膜領域の周縁よりも前記可動膜領域の内方に後退した周縁を有する上部電極および圧電体膜とを形成する第3工程と、前記下部電極膜をパターニングすることにより、前記圧電体膜と接する主電極部と、前記主電極部から前記金属バリア膜の表面に沿う方向に引き出され、前記平面視において、前記可動膜領域の周縁を跨いで前記可動膜領域の外方に延びた延長部とを含む下部電極を形成すると同時に、前記延長部における前記可動膜領域の周縁よりも内側にある領域に、前記延長部を厚さ方向に貫通する変位拡大用貫通孔を形成する第4工程と、前記金属バリア膜における前記変位拡大用貫通孔に臨む部分を除去する第5工程とを含み、前記エッチングストップ膜は、前記金属バリア膜に比べてエッチングレートが小さい材料からなり、前記第4工程では、ドライエッチングにより、前記下部電極膜の前記変位拡大用貫通孔の形成予定領域の上面から前記金属バリア膜の厚さ中間部までがエッチングされることにより、前記下部電極膜に前記変位拡大用貫通孔が形成され、前記第5工程では、ウェットエッチングにより、前記金属バリア膜における前記変位拡大用貫通孔に臨む部分が、前記エッチングストップ膜が露出するまでエッチングされる。
この圧電素子利用装置の製造方法では、ドライエッチングにより、下部電極膜の変位拡大用貫通孔の形成予定領域の上面から金属バリア膜の厚さ中間部までがエッチングされることにより、下部電極膜に変位拡大用貫通孔が形成される。これにより、下部電極膜に、下部電極膜を完全に貫通した変位拡大用貫通孔を形成することができる。
また、その後に、ウェットエッチングにより、金属バリア膜における変位拡大用貫通孔に臨む部分が、エッチングストップ膜が露出するまでエッチングされる。これにより、金属バリア膜における変位拡大用貫通孔に臨む部分をほぼ完全に除去できる。また、エッチングストップ膜は、金属バリア膜に比べてエッチングレートが小さい材料からなるので、この際、エッチングストップ膜はほとんどエッチングされない。このため、変位拡大用貫通孔とキャビティとの間に配置されるエッチングストップ膜と可動膜との合計膜厚の大きさをほぼ一定に保つことができる。これにより、圧電素子毎の可動膜の変位のばらつきを低減することができる。
この発明の一実施形態では、前記金属バリア膜はAlからなり、前記エッチングストップ膜はポリシリコンからなる。
図1は、この発明の一実施形態に係るインクジェットプリントヘッドの主要部の構成を説明するための図解的な平面図である。 図2は、前記インクジェットプリントヘッドの主要部の図解的な平面図であって、保護基板が省略された平面図である。 図3、図1のIII-III線に沿う図解的な断面図である。 図4は、図1のIV-IV線に沿った切断面のうちの一部を図解的に示す拡大断面図である。 図5は、前記インクジェットプリントヘッドの下部電極のパターン例を示す図解的な平面図である。 図6は、前記インクジェットプリントヘッドの絶縁膜のパターン例を示す図解的な平面図である。 図7は、前記インクジェットプリントヘッドのパッシベーション膜のパターン例を示す図解的な平面図である。 図8は、前記インクジェットプリントヘッドのアクチュエータ基板側から見た保護基板の主要部の底面図である。 図9Aは、前記インクジェットプリントヘッドの製造工程の一例を示す断面図であり、図3の切断面に対応する断面図である。 図9Bは、図9Aの次の工程を示す断面図である。 図9Cは、図9Bの次の工程を示す断面図である。 図9Dは、図9Cの次の工程を示す断面図である。 図9Eは、図9Dの次の工程を示す断面図である。 図9Fは、図9Eの次の工程を示す断面図である。 図9Gは、図9Fの次の工程を示す断面図である。 図9Hは、図9Gの次の工程を示す断面図である。 図9Iは、図9Hの次の工程を示す断面図である。 図9Jは、図9Iの次の工程を示す断面図である。 図9Kは、図9Jの次の工程を示す断面図である。 図9Lは、図9Kの次の工程を示す断面図である。 図9Mは、図9Lの次の工程を示す断面図である。 図9Nは、図9Mの次の工程を示す断面図である。 図9Oは、図9Nの次の工程を示す断面図である。 図10Aは、前記インクジェットプリントヘッドの製造工程の一例を示す断面図であり、図4の切断面に対応する断面図である。 図10Bは、図10Aの次の工程を示す断面図である。 図10Cは、図10Bの次の工程を示す断面図である。 図10Dは、図10Cの次の工程を示す断面図である。 図10Eは、図10Dの次の工程を示す断面図である。 図10Fは、図10Eの次の工程を示す断面図である。 図10Gは、図10Fの次の工程を示す断面図である。 図10Hは、図10Gの次の工程を示す断面図である。 図10Iは、図10Hの次の工程を示す断面図である。 図10Jは、図10Iの次の工程を示す断面図である。 図10Kは、図10Jの次の工程を示す断面図である。 図10Lは、図10Kの次の工程を示す断面図である。 図10Mは、図10Lの次の工程を示す断面図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るインクジェットプリントヘッドの主要部の構成を説明するための図解的な平面図である。図2は、インクジェットプリントヘッドの主要部の図解的な平面図であって、保護基板が省略された平面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う図解的な断面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿った切断面のうちの一部を図解的に示す拡大断面図である。図5は、前記インクジェットプリントヘッドの下部電極のパターン例を示す図解的な平面図である。
図3を参照して、インクジェットプリントヘッド1の構成を概略的に説明する。
インクジェットプリントヘッド1は、アクチュエータ基板2と、ノズル基板3と、保護基板4とを備えている。アクチュエータ基板2の表面には、可動膜形成層10が積層されている。アクチュエータ基板2には、インク流路(インク溜まり)5が形成されている。インク流路5は、この実施形態では、アクチュエータ基板2を貫通して形成されている。インク流路5は、図3に矢印で示すインク流通方向41に沿って延びて形成されている。インク流路5は、インク流通方向41の上流側端部(図3では左端部)のインク流入部6と、インク流入部6に連通し、インク流入部6よりも幅広の圧力室7とから構成されている。
ノズル基板3は、たとえばシリコン基板からなる。ノズル基板3は、アクチュエータ基板2の裏面2bに張り合わされている。ノズル基板3は、アクチュエータ基板2および可動膜形成層10とともにインク流路5を区画している。より具体的には、ノズル基板3は、インク流路5の底面部を区画している。ノズル基板3は、圧力室7に臨む凹部3aを有し、凹部3aの底面にインク吐出通路3bが形成されている。インク吐出通路3bは、ノズル基板3を貫通しており、圧力室7とは反対側に吐出口3cを有している。したがって、圧力室7の容積変化が生じると、圧力室7に溜められたインクは、インク吐出通路3bを通り、吐出口3cから吐出される。
可動膜形成層10における圧力室7の天壁部分は、可動膜10Aを構成している。可動膜10A(可動膜形成層10)は、たとえば、アクチュエータ基板2上に形成された酸化シリコン(SiO)膜からなる。可動膜10A(可動膜形成層10)は、たとえば、アクチュエータ基板2上に形成されるシリコン(Si)膜と、シリコン膜上に形成される酸化シリコン(SiO)膜と、酸化シリコン膜上に形成される窒化シリコン(SiN)膜との積層膜から構成されていてもよい。この明細書において、可動膜10Aとは、可動膜形成層10のうち圧力室7の天面部を区画している天壁部を意味している。したがって、可動膜形成層10のうち、圧力室7の天壁部以外の部分は、可動膜10Aを構成していない。
可動膜10Aの厚さは、たとえば、0.4μm〜2μmである。可動膜10Aが酸化シリコン膜から構成される場合は、酸化シリコン膜の厚さは1.2μm程度であってもよい。可動膜10Aが、シリコン膜と酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜から構成される場合には、シリコン膜、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜の厚さは、それぞれ0.4μm程度であってもよい。
圧力室7は、可動膜10Aと、アクチュエータ基板2と、ノズル基板3とによって区画されており、この実施形態では、略直方体状に形成されている。圧力室7の長さはたとえば800μm程度、その幅は55μm程度であってもよい。インク流入部6は、圧力室7の長手方向一端部に連通している。
可動膜形成層10の表面には、エッチングストップ膜81が形成されている。エッチングストップ膜81上には、金属バリア膜82が形成されている。エッチングストップ膜81は、金属バリア膜82に対してエッチングレートが小さい材料からなる。言い換えれば、エッチングストップ膜81は、金属バリア膜82に対してエッチング選択比を有する材料からなる。この実施形態では、エッチングストップ膜81は、ポリシリコン(poly silicon)からなり、金属バリア膜82は、Al(アルミナ)からなる。エッチングストップ膜81の厚さは、50nm〜100nm程度である。金属バリア膜82の厚さは、50nm〜100nm程度である。
金属バリア膜82の表面には、可動膜10Aの上方位置に、圧電素子が配置されている。圧電素子9は、金属バリア膜82上に形成された下部電極11と、下部電極11上に形成された圧電体膜12と、圧電体膜12上に形成された上部電極13とを備えている。言い換えれば、圧電素子9は、圧電体膜12を上部電極13および下部電極11で上下から挟むことにより構成されている。
上部電極13は、白金(Pt)の単膜であってもよいし、たとえば、導電性酸化膜(たとえば、IrO(酸化イリジウム)膜)および金属膜(たとえば、Ir(イリジウム)膜)が積層された積層構造を有していてもよい。上部電極13の厚さは、たとえば、0.2μm程度であってもよい。
圧電体膜12としては、たとえば、ゾルゲル法またはスパッタ法によって形成されたPZT(PbZrTi1−x:チタン酸ジルコン酸鉛)膜を適用することができる。このような圧電体膜12は、金属酸化物結晶の焼結体からなる。圧電体膜12は、上部電極13と平面視で同形状に形成されている。圧電体膜12の厚さは、1μm程度である。可動膜10Aの全体の厚さは、圧電体膜12の厚さと同程度か、圧電体膜12の厚さの2/3程度とすることが好ましい。前述の金属バリア膜82は、主として圧電体膜12から金属元素(圧電体膜12がPZTの場合には、Pb,Zr,Ti)が抜け出すことを防止し、圧電体膜12の圧電特性を良好に保つとともに、圧電体膜12の成膜時に、可動膜10Aに金属が拡散するのを防止する。金属バリア膜82は、圧電体膜12の水素還元による特性劣化を防止する機能も有している。
下部電極11は、たとえば、Ti(チタン)膜およびPt(プラチナ)膜を金属バリア膜82側から順に積層した2層構造を有している。この他にも、Au(金)膜、Cr(クロム)膜、Ni(ニッケル)膜などの単膜で下部電極11を形成することもできる。下部電極11は、圧電体膜12の下面に接した主電極部11Aと、圧電体膜12の外方の領域まで延びた延長部11Bとを有している。下部電極11の厚さは、たとえば、0.2μm程度であってもよい。
下部電極11の延長部11Bには、平面視で圧力室7の周縁よりも内側の領域に、延長部11Bを貫通する複数の変位拡大用貫通孔24(図4参照)が形成されている。変位拡大用貫通孔83は、可動膜10A上の下部電極11の面積を低減させることにより、可動膜10Aの変位を大きくするために形成されている。金属バリア膜82には、貫通孔24が臨む部分に、金属バリア膜82を貫通する除去部(貫通孔)83(図4参照)が形成されている。除去部83は、金属バリア膜82の一部が、エッチングストップ膜81が露出するまで除去されている領域である。
下部電極11の延長部11B上および圧電素子9上には、水素バリア膜14が形成されている。水素バリア膜14は、下部電極11の延長部11Bの上面のみならず、変位拡大用貫通孔24およびそれに臨む除去部84からなる凹部の内面(側面および底面)にも形成されている。水素バリア膜14は、たとえば、Al(アルミナ)からなる。水素バリア膜14の厚さは、50nm〜100nm程度である。水素バリア膜14は、圧電体膜12の水素還元による特性劣化を防止するために設けられている。
水素バリア膜14上に、絶縁膜15が積層されている。絶縁膜15は、たとえば、SiO、低水素のSiN等からなる。絶縁膜15の厚さは、500nm程度である。絶縁膜15上には、上部配線17および下部配線18が形成されている。これらの配線17,18は、Al(アルミニウム)を含む金属材料からなっていてもよい。これらの配線17,18の厚さは、たとえば、1000nm(1μm)程度である。
上部配線17の一端部は、上部電極13の一端部(インク流通方向41の下流側端部)の上方に配置されている。上部配線17と上部電極13との間において、水素バリア膜14および絶縁膜15を連続して貫通するコンタクト孔33が形成されている。上部配線17の一端部は、コンタクト孔33に入り込み、コンタクト孔33内で上部電極13に接続されている。上部配線17は、上部電極13の上方から、圧力室7の外縁を横切って圧力室7の外方に延びている。
下部配線18は、インク流路5のインク流入部6に対して圧力室7とは反対側において、下部電極11の延長部11Bの上方に配置されている。下部配線18と下部電極11の延長部11Bとの間において、水素バリア膜14および絶縁膜15を連続して貫通する複数のコンタクト孔34が形成されている。下部配線18の一部は、コンタクト孔34に入り込み、コンタクト孔34内で下部電極11の延長部11Bに接続されている。
絶縁膜15上には、配線17,18および絶縁膜15を覆うパッシベーション膜21が形成されている。パッシベーション膜21は、たとえば、SiN(窒化シリコン)からなる。パッシベーション膜21の厚さは、たとえば、800nm程度であってもよい。
パッシベーション膜21には、上部配線17の一部を露出させるパッド開口35が形成されている。パッド開口35は、圧力室7の外方領域に形成されており、たとえば、上部配線17の先端部(上部電極13へのコンタクト部の反対側端部)に形成されている。パッシベーション膜21上には、パッド開口35を覆うパッド42が形成されている。パッド42は、パッド開口35に入り込み、パッド開口35内で上部配線17に接続されている。
インク流路5におけるインク流入部6側の端部に対応する位置に、パッシベーション膜21、絶縁膜15、水素バリア膜14、下部電極11、金属バリア膜82、エッチングストップ膜81および可動膜形成層10を貫通するインク供給用貫通孔22が形成されている。下部電極11には、インク供給用貫通孔22を含み、インク供給用貫通孔22よりも大きな貫通孔23が形成されている。下部電極11の貫通孔23とインク供給用貫通孔22との隙間には、水素バリア膜14が入り込んでいる。インク供給用貫通孔22は、インク流入部6に連通している。
保護基板4は、たとえば、シリコン基板からなる。保護基板4は、圧電素子9を覆うようにアクチュエータ基板2上に配置されている。保護基板4は、パッシベーション膜21に、接着剤50を介して接合されている。保護基板4は、アクチュエータ基板2の表面2aに対向する対向面51に収容凹所52を有している。収容凹所52内に圧電素子9が収容されている。さらに、保護基板4には、インク供給用貫通孔22に連通するインク供給路53が形成されている。インク供給路53は、保護基板4を貫通している。保護基板4上には、インクを貯留したインクタンク(図示せず)が配置されている。
圧電素子9は、可動膜10A、エッチングストップ膜81および金属バリア膜82を挟んで圧力室7に対向する位置に形成されている。すなわち、圧電素子9は、金属バリア膜82の圧力室7とは反対側の表面に接するように形成されている。インクタンクからインク供給路53、インク供給用貫通孔22、インク流入部6を通って圧力室7にインクが供給されることによって、圧力室7にインクが充填される。可動膜10Aは、圧力室7の天面部を区画していて、圧力室7に臨んでいる。可動膜10Aは、アクチュエータ基板2における圧力室7の周囲の部分によって支持されており、圧力室7に対向する方向(換言すれば可動膜10Aの厚さ方向)に変形可能な可撓性を有している。
上部配線17および下部配線18は、駆動回路(図示せず)に接続されている。具体的には、上部配線17のパッド42と駆動回路とは、接続金属部材(図示せず)を介して接続されている。後述するように下部配線18にはパッド43(図1参照)が接続されている。下部配線18のパッド43と駆動回路とは、接続金属部材(図示せず)を介して接続されている。駆動回路から圧電素子9に駆動電圧が印加されると、逆圧電効果によって、圧電体膜12が変形する。これにより、圧電素子9とともに可動膜10Aが変形し、それによって、圧力室7の容積変化がもたらされ、圧力室7内のインクが加圧される。加圧されたインクは、インク吐出通路3bを通って、吐出口3cから微小液滴となって吐出される。
図1〜図5を参照して、インクジェットプリントヘッド1の構成についてさらに詳しく説明する。
アクチュエータ基板2には、複数のインク流路5(圧力室7)が互いに平行に延びてストライプ状に形成されている。複数のインク流路5毎に、圧電素子9が配置されている。インク供給用貫通孔22は、複数のインク流路5毎に設けられている。保護基板4の収容凹所52およびインク供給路53は、複数のインク流路5毎に設けられている。
複数の圧力室7(インク流路5)は、それらの幅方向に微小な間隔(たとえば30μm〜350μm程度)を開けて等間隔で形成されている。各インク流路5は、インク流通方向41に沿って延びている。インク流路5は、インク供給用貫通孔22に連通するインク流入部6と、インク流入部6に連通し、インク流入部6よりも幅広の圧力室7とからなる。圧力室7は、平面視において、インク流通方向41に沿って延びた長方形形状を有している。つまり、圧力室7の天面部は、インク流通方向41に沿う2つの側縁と、インク流通方向41に直交する方向に沿う2つの端縁とを有している。インク流入部6は、平面視で圧力室7よりも小さな幅を有している。インク流入部6における圧力室7とは反対側の端部の内面は、平面視で半円形に形成されている。インク供給用貫通孔22は、平面視において、円形状である(特に図2参照)。
圧電素子9は、平面視において、圧力室7(可動膜10A)の長手方向に長い矩形形状を有している。圧電素子9の長手方向の長さは、圧力室7(可動膜10A)の長手方向の長さよりも短い。図2に示すように、圧電素子9の短手方向に沿う両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁(圧力室7の両端縁)に対して、それぞれ所定間隔を開けて内側に配置されている。また、圧電素子9の短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。圧電素子9の長手方向に沿う両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁(圧力室7の両側縁)に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。
下部電極11は、可動膜形成層10の表面のほぼ全域に形成されている(特に図5参照)。下部電極11は、複数の圧電素子9に対して共用される共通電極である。下部電極11は、圧電素子9を構成する平面視矩形状の主電極部11Aと、主電極部11Aから可動膜形成層10の表面に沿う方向に引き出され、圧力室7の天面部の周縁の外方に延びた延長部11Bとを含んでいる。
主電極部11Aの長手方向の長さは、可動膜10Aの長手方向の長さよりも短い。主電極部11Aの両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁に対して、それぞれ、所定間隔を開けて内側に配置されている。また、主電極部11Aの短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。主電極部11Aの両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。延長部11Bは、下部電極11の全領域のうち主電極部11Aを除いた領域である。
延長部11Bには、平面視で各可動膜10Aの周縁内の領域において、可動膜10Aの両側縁と主電極部11Aの対応する側縁との間領域それぞれに、主電極部11Aの各側縁に沿って延びたスリット状の変位拡大用貫通孔24が形成されている。これにより、可動膜10A上に配置される下部電極11の面積を低減させることができるので、可動膜10Aの変位を大きくさせることができる。金属バリア膜82には、変位拡大用貫通孔24が臨む部分に、金属バリア膜82を貫通する除去部83が形成されている。
上部電極13は、平面視において、下部電極11の主電極部11Aと同じパターンの矩形状に形成されている。すなわち、上部電極13の長手方向の長さは、可動膜10Aの長手方向の長さよりも短い。上部電極13の両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁に対して、それぞれ、所定間隔を開けて内側に配置されている。また、上部電極13の短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。上部電極13の両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。
圧電体膜12は、平面視において、上部電極13と同じパターンの矩形状に形成されている。すなわち、圧電体膜12の長手方向の長さは、可動膜10Aの長手方向の長さよりも短い。圧電体膜12の両端縁は、可動膜10Aの対応する両端縁に対して、それぞれ、所定間隔を開けて内側に配置されている。また、圧電体膜12の短手方向の幅は、可動膜10Aの短手方向の幅よりも狭い。圧電体膜12の両側縁は、可動膜10Aの対応する両側縁に対して、所定間隔を開けて内側に配置されている。圧電体膜12の下面は下部電極11の主電極部11Aの上面に接しており、圧電体膜12の上面は上部電極13の下面に接している。
上部配線17は、圧電素子9の一端部の上面からそれに連なる圧電素子9の端面に沿って延び、さらに下部電極11の延長部11Bの表面に沿って、インク流通方向41に沿う方向に延びている。上部配線17の先端部は、保護基板4のインク流通方向41の下流側端よりも下流側に配置されている。パッシベーション膜21には、上部配線17の先端部表面の中央部を露出させるパッド開口35が形成されている。パッシベーション膜21上に、パッド開口35を覆うようにパッド42が設けられている。パッド42は、パッド開口35内で上部配線17に接続されている。
下部配線18は、平面視において、インク流通方向41と直交する方向に長い矩形状の主配線部18Aと、主配線部18Aの一端部からインク流通方向41に沿って延びたリード部18Bとを有している。リード部18Bの先端部は、保護基板4のインク流通方向41の下流側端よりも下流側に配置されている。主配線部18Aの一部は、複数のコンタクト孔34に入り込み、コンタクト孔34内で下部電極11の延長部11Bに接続されている。パッシベーション膜21には、リード部18Bの先端部表面の中央部を露出させるパッド開口36が形成されている。パッシベーション膜21上に、パッド開口36を覆うようにパッド43が設けられている。パッド43は、パッド開口36内でリード部18Bに接続されている。
図8は、前記インクジェットプリントヘッドのアクチュエータ基板側から見た保護基板の主要部の底面図である。
図1、図3、図4および図8に示すように、保護基板4の対向面51には、複数の収容凹所52が、インク流通方向41と直交する方向に間隔をおいて平行に形成されている。複数の収容凹所52は、平面視において、複数の圧力室7に対向する位置に配置されている。各収容凹所52に対してインク流通方向41の上流側にインク供給路53が配置されている。各収容凹所52は、平面視において、対応する圧電素子9の上部電極13のパターンよりも大きな矩形状に形成されている。そして、各収容凹所52に、対応する圧電素子9が収容されている。
保護基板4のインク供給路53は、平面視において、アクチュエータ基板2側のインク供給用貫通孔22と同じパターンの円形状である。インク供給路53は、平面視でインク供給用貫通孔22に整合している。
図6は、前記インクジェットプリントヘッドの絶縁膜のパターン例を示す図解的な平面図である。図7は、前記インクジェットプリントヘッドのパッシベーション膜のパターン例を示す図解的な平面図である。
この実施形態では、絶縁膜15およびパッシベーション膜21は、アクチュエータ基板2上において、平面視で保護基板4の収容凹所52の外側領域のほぼ全域に形成されている。ただし、この領域において、絶縁膜15には、インク供給用貫通孔22およびコンタクト孔34が形成されている。この領域において、パッシベーション膜21には、インク供給用貫通孔22およびパッド開口35,36が形成されている。
保護基板4の収容凹所52の内側領域においては、絶縁膜15およびパッシベーション膜21は、上部配線17が存在する一端部(上部配線領域)にのみ形成されている。この領域において、パッシベーション膜21は、絶縁膜15上の上部配線17の上面および側面を覆うように形成されている。換言すれば、絶縁膜15およびパッシベーション膜21には、平面視で収容凹所52の内側領域のうち、上部配線領域を除いた領域に、開口37が形成されている。絶縁膜15には、さらに、コンタクト孔33が形成されている。
この実施形態では、平面視で圧力室7の周縁の内側領域において、絶縁膜15およびパッシベーション膜21は、上部配線17の存在する上部配線領域のみに形成されている。したがって、圧電素子9の側面および上面の大部分は絶縁膜15およびパッシベーション膜21によって覆われていない。これにより、圧電素子9の側面および上面の全域が絶縁膜およびパッシベーション膜によって覆われている場合に比べて、可動膜10Aの変位を大きくすることができる。
図9A〜図9Oは、前記インクジェットプリントヘッド1の製造工程の一例を示す断面図であり、図3に対応する切断面を示す。図10A〜図10Mは、前記インクジェットプリントヘッド1の製造工程の一例を示す断面図であり、図4に対応する切断面の一部を拡大して示す。
まず、図9Aおよび図10Aに示すように、アクチュエータ基板2の表面2aに可動膜形成層10が形成される。ただし、アクチュエータ基板2としては、最終的なアクチュエータ基板2の厚さより厚いものが用いられる。具体的には、アクチュエータ基板2の表面に酸化シリコン膜(たとえば、1.2μm厚)が形成される。可動膜形成層10が、シリコン膜と酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜で構成される場合には、アクチュエータ基板2の表面にシリコン膜(たとえば0.4μm厚)が形成され、シリコン膜上に酸化シリコン膜(たとえば0.4μm厚)が形成され、酸化シリコン膜上に窒化シリコン膜(たとえば0.4μm厚)が形成される。
次に、図9Bおよび図10Bに示すように、可動膜形成層10の表面に、エッチングストップ膜81が形成される。エッチングストップ膜81は、たとえば、ポリシリコン膜(たとえば50nm〜100nm厚)からなる。次に、エッチングストップ膜81上に、金属バリア膜82が形成される。金属バリア膜82は、たとえば、Al膜(たとえば50nm〜100nm厚)からなる。金属バリア膜82は、後に形成される圧電体膜12からの金属原子の抜け出しを防ぐ。金属電子が抜け出すと、圧電体膜12の圧電特性が悪くなるおそれがある。また、抜け出した金属原子が可動膜10Aを構成するシリコン層に混入すると可動膜10Aの耐久性が悪化するおそれがある。
次に、図9Cおよび図10Cに示すように、金属バリア膜82の上に、下部電極11の材料層である下部電極膜71が形成される。下部電極膜71は、たとえば、Ti膜(たとえば10nm〜40nm厚)を下層としPt膜(たとえば10nm〜400nm厚)を上層とするPt/Ti積層膜からなる。このような下部電極膜71は、スパッタ法で形成されてもよい。
次に、圧電体膜12の材料膜(圧電体材料膜)72が下部電極膜71上の全面に形成される。具体的には、たとえば、ゾルゲル法によって1μm〜3μm厚の圧電体材料膜72が形成される。このような圧電体材料膜72は、金属酸化物結晶粒の焼結体からなる。
次に、圧電体材料膜72の全面に上部電極13の材料である上部電極膜73が形成される。上部電極膜73は、たとえば、白金(Pt)の単膜であってもよい。上部電極膜73は、たとえば、IrO膜(たとえば40nm〜160nm厚)を下層とし、Ir膜(たとえば40nm〜160nm厚)を上層とするIr0/Ir積層膜であってもよい。このような上部電極膜73は、スパッタ法で形成されてもよい。
次に、図9Dおよび図10Dに示すように、上部電極膜73および圧電体材料膜72のパターニングが行われる。つまり、フォトリソグラフィによって、上部電極13のパターンのレジストマスクが形成される。そして、このレジストマスクをマスクとして、上部電極膜73および圧電体材料膜72が連続してエッチングされることにより、所定パターンの上部電極13および圧電体膜12が形成される。
次に、図9Eおよび図10Eに示すように、下部電極膜71のパターニングが行われる。つまり、レジストマスクが剥離された後、フォトリソグラフィによって、下部電極11のパターンのレジストマスクが形成される。そして、このレジストマスクをマスクとして、下部電極膜71がドライエッチングされることにより、所定パターンの下部電極11が形成される。この際、下部電極膜71の表面から金属バリア膜82の厚さ中間部までエッチングされる。これにより、下部電極膜71に変位拡大用貫通孔24および貫通孔23が形成される。これにより、主電極部11Aと、貫通孔24,23を有する延長部11Bとからなる下部電極11が、金属バリア膜82上に形成される。このようにして、下部電極11の主電極部11A、圧電体膜12および上部電極13からなる圧電素子9が形成される。
次に、レジストマスクを剥離することなく、図9Fおよび図10Fに示すように、フッ酸系のエッチング液を用いて、金属バリア膜82がウェットエッチングされることにより、金属バリア膜82における変位拡大用貫通孔24および貫通孔23に臨む領域が完全に除去される。つまり、金属バリア膜82における変位拡大用貫通孔24に臨む領域に除去部83が形成される。また、金属バリア膜82における貫通孔23に臨む領域にも除去部が形成される。この際、金属バリア膜82とエッチングストップ膜81の選択比が大きい(金属バリア膜82に対するエッチングストップ膜81のエッチングレートが小さい)ため、エッチングストップ膜81はほとんどエッチングされない。これにより、変位拡大用貫通孔24の下方に存在するエッチングストップ膜81および可動膜10Aの合計膜厚をほぼ一定に保つことができる。このため、圧電素子9毎の可動膜10Aの変位のばらつきを低減することができる。
この後、レジストマスクが剥離される。なお、下部電極11のパターンのレジストマスクは、金属バリア膜82をウェットエッチングする前に剥離されてもよい。この場合には、下部電極11をハードマスクとして、金属バリア膜82がウェットエッチングされることになる。
次に、図9Gおよび図10Gに示すように、全面を覆う水素バリア膜14が形成される。水素バリア膜14は、スパッタ法で形成されたAl膜であってもよく、その膜厚は、50nm〜100nmであってもよい。この後、水素バリア膜14上の全面に絶縁膜15が形成される。絶縁膜15は、SiO膜であってもよく、その膜厚は、200nm〜300nmであってもよい。続いて、絶縁膜15および水素バリア膜14が連続してエッチングされることにより、コンタクト孔33,34が形成される。
次に、図9Hおよび図10Hに示すように、コンタクト孔33,34内を含む絶縁膜15上に、スパッタ法によって、上部配線17および下部配線18を構成する配線膜が形成される。この後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、配線膜がパターニングされることにより、上部配線17および下部配線18が同時に形成される。
次に、図9Iおよび図10Iに示すように、絶縁膜15の表面に配線17,18を覆うパッシベーション膜21が形成される。パッシベーション膜21は、例えば、SiNからなる。パッシベーション膜21は、例えば、プラズマCVDによって形成される。
次に、フォトリソグラフィによってパッド開口35,36に対応した開口を有するレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、パッシベーション膜21がエッチングされる。これにより、図9Jに示すように、パッシベーション膜21にパッド開口35,36が形成される。レジストマスクが剥離された後に、パッシベーション膜21上にパッド開口35およびパッド開口36を介して、それぞれ上部配線17および下部配線18に接続されるパッド42,43が形成される。
次に、フォトリソグラフィによって開口37およびインク供給用貫通孔22に対応した開口を有するレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、パッシベーション膜21および絶縁膜15が連続してエッチングされる。これにより、図9Kおよび図10Jに示すように、パッシベーション膜21および絶縁膜15に、開口37およびインク供給用貫通孔22が形成される。
次に、レジストマスクが剥離される。そして、フォトリソグラフィによってインク供給用貫通孔22に対応した開口を有するレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、水素バリア膜14、エッチングストップ膜81および可動膜形成層10がエッチングされる。これにより、図9Lに示すように、水素バリア膜14、金属バリア膜82、エッチングストップ膜81および可動膜形成層10に、インク供給用貫通孔22が形成される。
次に、図9Mおよび図10Kに示すように、保護基板4の対向面51に接着剤50が塗布され、インク供給路53とインク供給用貫通孔22とが一致するように、アクチュエータ基板2に保護基板4が固定される。
次に、図9Nおよび図10Lに示すように、アクチュエータ基板2を薄くするための裏面研削が行われる。アクチュエータ基板2が裏面2bから研磨されることにより、アクチュエータ基板2が薄膜化される。たとえば、初期状態で670μm厚程度のアクチュエータ基板2が、300μm厚程度に薄型化されてもよい。次に、アクチュエータ基板2に対して、アクチュエータ基板2の裏面からエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)を行うことによって、インク流路5(インク流入部6および圧力室7)が形成される。
このエッチングの際、金属バリア膜82は、圧電体膜12から金属元素(PZTの場合は、Pb,Zr,Ti)が抜け出すことを防止し、圧電体膜12の圧電特性を良好に保つ。また、前述のとおり、金属バリア膜82は、可動膜10Aを形成するシリコン層の耐久性の維持に寄与する。
この後、図9Oおよび図10Mに示すように、ノズル基板3がアクチュエータ基板2の裏面に張り合わされることにより、インクジェットプリントヘッド1が得られる。
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、変位拡大用貫通孔24の平面形状は、スリット状であるが、円形、多角形状等の任意形状であってもよい。また、変位拡大用貫通孔24の大きさや数も任意に設定することができる。
また、前述の実施形態では、水素バリア膜14の表面の一部に絶縁膜15が形成されているが、水素バリア膜14の表面の全域に絶縁膜15が形成されていてもよい。
また、前述の実施形態では、水素バリア膜14表面の一部に絶縁膜15が形成されているが、絶縁膜15はなくてもよい。
また、前述の実施形態では、圧電体膜の材料としてPZTを例示したが、そのほかにも、チタン酸鉛(PbPO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、ニオブ酸ノチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO)などに代表される金属酸化物からなる圧電材料が適用されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 インクジェットプリントヘッド
2 アクチュエータ基板
2a 表面
2b 裏面
3 ノズル基板
3a 凹部
3b インク吐出通路
3c 吐出口
4 保護基板
5 インク流路
6 インク流入部
7 圧力室
9 圧電素子
10 可動膜形成層
10A 可動膜
11 下部電極
11A 主電極部
11B 延長部
12 圧電体膜
13 上部電極
14 水素バリア膜
15 絶縁膜
17 上部配線
18 下部配線
18A 主配線部
18B リード部
21 パッシベーション膜
22 インク供給路
23 貫通孔
24 変位拡大用貫通孔
33 コンタクト孔
34 コンタクト孔
35 パッド開口
36 パッド開口
37 開口(絶縁膜およびパッシベーション膜)
41 インク流通方向
42 パッド
43 パッド
50 接着剤
51 対向面
52 収容凹所
53 インク供給路
71 下部電極膜
72 圧電体材料膜
73 上部電極膜
81 エッチングストップ膜
82 金属バリア膜
83 除去部

Claims (15)

  1. キャビティと、
    前記キャビティ上に配置されかつ前記キャビティの天面部を区画する可動膜を含む可動膜形成層と、
    前記可動膜形成層上に形成されたエッチングストップ膜と、
    前記エッチングストップ膜上に形成された金属バリア膜と、
    前記金属バリア膜の前記キャビティとは反対側の表面に接して形成され、前記可動膜の主面に対して法線方向から見た平面視において前記可動膜よりも前記キャビティの内方に後退した周縁を有する圧電素子とを含み、
    前記圧電素子は、前記金属バリア膜の前記キャビティとは反対側の表面に形成された下部電極と、前記下部電極に対して前記金属バリア膜とは反対側に形成された上部電極と、前記上部電極と前記下部電極との間に設けられた圧電体膜とを含んでおり、
    前記下部電極は、前記圧電素子を構成している主電極部と、前記主電極部から前記金属バリア膜の表面に沿う方向に引き出され、前記平面視において、前記キャビティの天面部周縁を跨いで前記キャビティの外方に延びた延長部とを含み、
    前記延長部には、前記平面視において、前記キャビティの天面部周縁よりも内側にある領域に、前記延長部を厚さ方向に貫通する変位拡大用貫通孔が形成されており、
    前記金属バリア膜は、前記変位拡大用貫通孔に臨む部分に前記金属バリア膜を貫通する除去部を有しており、
    前記エッチングストップ膜は、前記金属バリア膜に比べてエッチングレートが小さい材料からなる、圧電素子利用装置。
  2. 前記金属バリア膜はAlからなり、前記エッチングストップ膜はポリシリコンからなる、請求項1に記載の圧電素子利用装置。
  3. 前記上部電極および前記圧電体膜の少なくとも側面全域と、前記下部電極の上面とを覆うとともに、前記変位拡大用貫通孔および前記除去部からなる凹部の内面に形成された水素バリア膜をさらに含む、請求項1または2に記載の圧電素子利用装置。
  4. 前記水素バリア膜はAlからなる、請求項3に記載の圧電素子利用装置。
  5. 前記水素バリア膜上に形成された絶縁膜と、
    前記絶縁膜上に形成され、前記上部電極に一端部が接続され、他端部が前記キャビティの天面部周縁の外側に引き出された上部配線とをさらに含み、
    前記水素バリア膜および前記絶縁膜に、前記上部電極の一部を露出させるコンタクト孔が形成されており、前記上部配線の一端部は、前記コンタクト孔を介して前記上部電極に接続されている、請求項3または4に記載の圧電素子利用装置。
  6. 前記絶縁膜上に形成され、前記上部配線を被覆するパッシベーション膜をさらに含む、請求項5に記載の圧電素子利用装置。
  7. 前記平面視において、前記キャビティの天面部が一方向に長い矩形状であり、
    前記主電極部は、平面視において、前記キャビティの天面部の短手方向の幅より短い幅と、前記キャビティの天面部の長手方向の長さより短い長さとを有する前記一方向に長い矩形状であり、その両端縁および両側縁が前記キャビティの天面部の両端縁および両側縁よりも前記キャビティの内方にそれぞれ後退しており、
    前記延長部は、前記主電極部の周縁から前記キャビティの天面部の周縁の外方に延びており、
    前記変位拡大用貫通孔は、前記延長部における前記キャビティの天面部の両側縁と前記主電極部の対応する側縁との間領域にそれぞれ形成され、前記主電極部の各側縁に沿って延びたスリット状貫通孔を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧電素子利用装置。
  8. 前記可動膜形成層は、SiO単膜からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧電素子利用装置。
  9. 前記可動膜形成層は、前記キャビティ上に配置されたSi膜と、前記Si膜上に形成されSiO膜と、前記SiO膜上に形成されたSiN膜との積層膜からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧電素子利用装置。
  10. 前記圧電体膜は、PZT膜からなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の圧電素子利用装置。
  11. 前記上部電極は、Pt単膜からなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の圧電素子利用装置。
  12. 前記上部電極は、前記圧電体膜上に形成されたIr 膜と、前記Ir 膜上に形成されたIr膜との積層膜からなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の圧電素子利用装置。
  13. 前記下部電極は、前記可動膜側に形成されたTi膜と、前記Ti膜上に形成されたPt膜との積層膜からなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の圧電素子利用装置。
  14. キャビティが形成されるべき基板上に前記キャビティの天面部を区画するための可動膜領域を含む可動膜形成層を形成する第1工程と、
    前記可動膜形成層上に、エッチングストップ膜、金属バリア膜、下部電極膜、圧電体材料膜および上部電極膜を順次形成する第2工程と、
    前記上部電極膜および圧電体材料膜を順次パターニングすることにより、前記可動膜形成層の主面に対して法線方向から見た平面視において、前記可動膜領域の周縁よりも前記可動膜領域の内方に後退した周縁を有する上部電極および圧電体膜とを形成する第3工程と、
    前記下部電極膜をパターニングすることにより、前記圧電体膜と接する主電極部と、前記主電極部から前記金属バリア膜の表面に沿う方向に引き出され、前記平面視において、前記可動膜領域の周縁を跨いで前記可動膜領域の外方に延びた延長部とを含む下部電極を形成すると同時に、前記延長部における前記可動膜領域の周縁よりも内側にある領域に、前記延長部を厚さ方向に貫通する変位拡大用貫通孔を形成する第4工程と、
    前記金属バリア膜における前記変位拡大用貫通孔に臨む部分を除去する第5工程とを含み、
    前記エッチングストップ膜は、前記金属バリア膜に比べてエッチングレートが小さい材料からなり、
    前記第4工程では、ドライエッチングにより、前記下部電極膜の前記変位拡大用貫通孔の形成予定領域の上面から前記金属バリア膜の厚さ中間部までがエッチングされることにより、前記下部電極膜に前記変位拡大用貫通孔が形成され、
    前記第5工程では、ウェットエッチングにより、前記金属バリア膜における前記変位拡大用貫通孔に臨む部分が、前記エッチングストップ膜が露出するまでエッチングされる、圧電素子利用装置の製造方法。
  15. 前記金属バリア膜はAlからなり、前記エッチングストップ膜はポリシリコンからなる、請求項14に記載の圧電素子利用装置の製造方法。
JP2016153902A 2016-08-04 2016-08-04 圧電素子利用装置およびその製造方法 Active JP6829558B2 (ja)

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