以下の説明では、説明の一部をなす、本発明の複数の実施形態を例示する、付属の図面を参照する。他の実施形態が利用され得るか、または本発明の範囲から逸脱することなく構造および動作に関する変更が加えられ得ることは理解される。
本明細書では、本発明は、方法、システム、デバイス、装置、ならびにプログラミングおよびコンピュータプログラム製品の流れ図図解を参照しつつ以下で説明される。流れ図図解のそれぞれのブロック、流れ図図解中のブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令を含むプログラミング命令によって実装され得ることは理解されるであろう(メニュー画面は図中で説明されている場合がある)。これらのコンピュータプログラム命令がコンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置(センサー電子機器デバイス内のコントローラ、マイクロコントローラ、またはプロセッサなど)にロードされることでマシンが形成され、これにより、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置上で実行される命令が1つまたは複数の流れ図ブロック内で指定された機能を実行する命令を生成することができる。コンピュータ(または他のプログラム可能データ処理装置)を特定の方法で機能させることができるこれらのコンピュータプログラム命令は、さらに、コンピュータ可読メモリに格納することもでき、これにより、コンピュータ可読メモリ内に格納される命令で、1つまたは複数の流れ図ブロックで指定された機能を実行する命令を収めた製造品を生産することができる。これらのコンピュータプログラム命令は、さらに、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置上にロードされ、これにより、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で一連の動作ステップが実行され、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行される命令が1つまたは複数の流れ図ブロックで指定された機能、および/または本明細書に示されているメニューを実装するステップを実現するようなコンピュータ実装プロセスを形成することができる。また、プログラミング命令は、センサーデバイス、装置、およびシステムと併用される集積回路(IC)および特定用途向け集積回路(ASIC)を含む、電子回路内に格納される、および/または電子回路を介して実装され得る。
図1は、本発明の一実施形態による、皮下センサー挿入セットの斜視図およびセンサー電子機器デバイスのブロック図である。図1に示されているように、皮下センサーセット10は、使用者の身体の選択された部位での可撓性センサー12(例えば、図2参照)の能動部分の皮下留置、または同様の操作のために用意される。センサーセット10の皮下または経皮的部分は、中空の溝付き挿入針14とカニューレ16とを備える。針14は、皮下挿入部位におけるカニューレ16の皮下留置を素早く、容易に行えるようにするために使用される。カニューレ16内に形成された窓22を通して1つまたは複数のセンサー電極20を使用者の体液に曝すように、カニューレ16の内側にはセンサー12の検知部分18がある。本発明の一実施形態では、1つまたは複数のセンサー電極20は、対向電極、基準電極、および/または1つまたは複数の作用電極を備えることができる。挿入後、挿入針14が引き抜かれるが、その際に、カニューレ16は検知部分18およびセンサー電極20とともに選択された挿入部位に適切に残される。
特定の実施形態では、皮下センサーセット10は、使用者の状態を表す特定の血液パラメータを監視するために使用されるタイプの可撓性薄膜電気化学的センサー12の正確な留置を円滑にする。センサー12は、体内のグルコースレベルを監視し、例えば、米国特許第4,562,751号、米国特許第4,678,408号、米国特許第4,685,903号、または米国特許第4,573,994号で説明されているような、外部または埋め込み型の自動または半自動薬物注入ポンプと併せて使用することで、糖尿病患者へのインスリンの送達を制御することができる。
可撓性電気化学的センサー12の特定の実施形態は、ポリイミドフィルムまたはシート、膜などの選択された絶縁材料の層の間に埋め込まれるか、または封じ込められている細長い薄膜導体を備えるように薄膜マスク技術に従って製作される。検知部分18の先端部のところのセンサー電極20は、センサー12の検知部分18(または能動部分)が挿入部位に皮下的に留置されているときに、患者の血液または他の体液と直接接触するため絶縁層のうちの1つを通して曝される。検知部分18は、絶縁層のうちの1つを通しても曝される、導電性コンタクトパッド、または同様のものの中に終端する接続部分24に連結される。代替的実施形態では、化学ベース、光学ベース、または同様のものなどの、他のタイプの埋め込み型センサーが使用され得る。
当技術分野において知られているように、接続部分24およびコンタクトパッドは、一般的に、センサー電極20から発せられる信号に応答してユーザーの状態を監視するための好適なモニターまたはセンサー電子機器デバイス100への直接的有線電気接続に適合されている。この一般的なタイプの可撓性薄膜センサーの詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,391,250号、名称「METHOD OF FABRICATING THIN FILM SENSORS」に記載されている。接続部分24は、モニターまたはセンサー電子機器デバイス100に電気的に、または図示されているようにコネクタブロック28(または同様のもの)によって都合よく接続されるものとしてよく、これは参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,482,473号、名称「FLEX CIRCUIT CONNECTOR」で説明されている。したがって、本発明の実施形態によれば、皮下センサーセット10は、有線方式またはワイヤレス方式のいずれかの特性モニターシステムと協働するように構成されまたは形成され得る。
センサー電極20は、さまざまな検知応用機器において使用され、またさまざまな方法で構成され得る。例えば、センサー電極20は、ある種の生体分子が触媒として使用される生理学的パラメータ検知応用機器において使用され得る。例えば、センサー電極20は、センサー電極20との反応を触媒するグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を有するグルコースおよび酸素センサーにおいて使用され得る。センサー電極20は、生体分子または他の何らかの触媒とともに、血管または非血管環境内の人体内に留置され得る。例えば、センサー電極20および生体分子は、静脈内に留置され、血流の作用を受けるか、または人体の皮下もしくは腹膜領域内に留置され得る。
モニター100は、センサー電子機器デバイス100とも称され得る。モニター100は、電源110、センサーインターフェース122、処理電子機器124、およびデータ形式設定電子機器128を備えることができる。モニター100は、ケーブル102によって接続部分24のコネクタブロック28に電気的に結合されているコネクタを通じてセンサーセット10に結合され得る。代替的実施形態では、ケーブルは、省くこともできる。本発明のこの実施形態では、モニター100は、センサーセット10の接続部分104への直接的接続に適したコネクタを備えることができる。センサーセット10は、異なる配置で、例えば、センサーセットの上にモニター100を留置しやすいようにセンサーセットの上に位置決めされたコネクタ部分104を有するように修正され得る。
本発明の実施形態では、センサーインターフェース122、処理電子機器124、およびデータ形式設定電子機器128は、個別の半導体チップとして形成されるが、しかし、代替的実施形態では、さまざまな半導体チップを単一の、または複数のカスタマイズされた半導体チップ内に組み合わせることができる。センサーインターフェース122は、センサーセット10と接続されているケーブル102と接続する。
電源110は電池であってもよい。電池は、3つの直列酸化銀357電池セルを備えることができる。代替的実施形態では、リチウムベースの化学反応、アルカリ電池、ニッケル金属水素化物、または同様のものなどの、異なる電池化学反応を利用することができ、また異なる数の電池を使用することができる。モニター100は、ケーブル102およびケーブルコネクタ104を通して、電源110を介してセンサーセットに電力を供給する。本発明の一実施形態では、出力は、センサーセット10に供給される電圧である。本発明の一実施形態では、出力は、センサーセット10に供給される電流である。本発明の一実施形態では、出力は、特定の電圧のセンサーセット10に供給される電圧である。
図2Aおよび2Bは、本発明の一実施形態による、埋め込み型センサーおよび埋め込み型センサーを駆動するための電子機器を示している。図2Aは、2つの側部を有する基板220を示しており、第1の側部222は電極構成を含み、第2の側部224は電子回路を含む。図2Aを見るとわかるように、基板の第1の側部222は、基準電極248の対抗する側部にある2つの対向電極/作用電極対240、242、244、246を備える。基板の第2の側部224は、電子回路を備える。図示されているように、電子回路は、電子回路の保護ハウジングを構成する気密封止ケーシング226内に封入され得る。これにより、センサー基板220を血管環境または電子回路に流体の作用を受けさせ得る他の環境内に挿入することができる。電子回路を気密封止ケーシング226内に封止することによって、電子回路は、周囲の流体による短絡の危険なしで動作することができる。図2Aにも、電子回路の入力線および出力線が接続され得るパッド228が示されている。本発明の一実施形態によれば、電子回路それ自体は、さまざまな方法で加工され得る。電子回路は、業界の共通技術を使用して集積回路として加工され得る。
図2Bは、本発明の一実施形態による、センサーの出力を検知するための電子回路の一般的なブロック図を示している。少なくとも一対のセンサー電極310が、データコンバータ312にインターフェースすることができ、その出力は、カウンター314にインターフェースし得る。カウンター314は、制御ロジック316によって制御され得る。カウンター314の出力は、ラインインターフェース318に接続することができる。ラインインターフェース318は、入力および出力線320に接続され、また制御ロジック316にも接続し得る。入力および出力線320は、電力整流器322にも接続され得る。
センサー電極310は、さまざまな検知応用機器において使用され、またさまざまな方法で構成され得る。例えば、センサー電極310は、ある種の生体分子が触媒として使用される生理学的パラメータ検知応用機器において使用され得る。例えば、センサー電極310は、センサー電極310との反応を触媒するグルコースオキシダーゼ(GOx)酵素を有するグルコースおよび酸素センサーにおいて使用され得る。センサー電極310は、生体分子または他の何らかの触媒とともに、血管または非血管環境内の人体内に留置され得る。例えば、センサー電極310および生体分子は、静脈中に留置され、血流の作用を受けるものとしてよい。
図3は、本発明の一実施形態によるセンサー電子機器デバイスおよび複数の電極を含むセンサーのブロック図を示している。センサーセットまたはシステム350は、センサー355およびセンサー電子機器デバイス360を備える。センサー355は、対向電極365、基準電極370、および作用電極375を備える。センサー電子機器デバイス360は、電源380、レギュレータ385、信号処理部390、測定値処理部395、およびディスプレイ/送信モジュール397を備える。電源380は、出力(電圧、電流、または電流を含めた電圧のいずれかの形態の)をレギュレータ385に供給する。レギュレータ385は、安定化された電圧をセンサー355に送る。本発明の一実施形態において、レギュレータ385は、電圧をセンサー355の対向電極365に送る。
センサー355は、測定される生理学的特性の集中度を示すセンサー信号を生成する。例えば、センサー信号は、血糖読取り値を示すことができる。皮下センサーを利用する本発明の一実施形態において、センサー信号は、被験者体内の過酸化水素のレベルを表すものとしてよい。血液または頭蓋センサーが利用される本発明の一実施形態では、酸素の量がセンサーによって測定されており、センサー信号によって表される。埋め込み型または長期的センサーを利用する本発明の一実施形態では、センサー信号は、被験者体内の酸素のレベルを表すものとしてよい。センサー信号は、作用電極375のところで測定される。本発明の一実施形態において、センサー信号は、作用電極のところで測定される電流であってもよい。本発明の一実施形態において、センサー信号は、作用電極のところで測定される電圧であってもよい。
信号処理部390は、センサー信号がセンサー355(例えば、作用電極)のところで測定された後、センサー信号(例えば、測定電流または電圧)を受け取る。信号処理部390は、センサー信号を処理し、処理されたセンサー信号を生成する。測定値処理部395は、処理されたセンサー信号を受け取り、基準値を利用して処理されたセンサー信号を較正する。本発明の一実施形態において、基準値は、基準値用メモリ内に格納され、測定値処理部395に送られる。測定値処理部395は、センサー測定値を生成する。センサー測定値は、測定値用メモリ(図示せず)内に格納され得る。センサー測定値は、ディスプレイ/送信デバイスに送られ、センサー電子機器を備えるハウジング内のディスプレイに表示されるか、または外部デバイスに送信されるものとしてよい。
センサー電子機器デバイス360は、生理学的特性読取り値を表示するためのディスプレイを備えるモニターであってよい。センサー電子機器デバイス360は、デスクトップコンピュータ、ページャー、通信機能を備えるテレビ受像機、ラップトップコンピュータ、サーバー、ネットワークコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、コンピュータ機能を備える携帯電話、ディスプレイを備える輸液ポンプ、ディスプレイを備えるグルコースセンサー、および/または輸液ポンプ/グルコースセンサーの組合せに取り付けることもできる。センサー電子機器デバイス360は、Blackberry、ネットワークデバイス、ホームネットワークデバイス、またはホームネットワークに接続されたアプライアンス内に収納され得る。
図4は、本発明の一実施形態によるセンサーおよびセンサー電子機器デバイスを備える本発明の代替的実施形態を示す。センサーセットまたはセンサーシステム400は、センサー電子機器デバイス360およびセンサー355を備える。センサーは、対向電極365、基準電極370、および作用電極375を備える。センサー電子機器デバイス360は、マイクロコントローラ410およびデジタル/アナログコンバータ(DAC)420を備える。センサー電子機器デバイス360は、電流/周波数コンバータ(I/Fコンバータ)430も備えることができる。
マイクロコントローラ410は、ソフトウェアプログラムコードを格納するか、またはプログラム可能なロジックを備え、ソフトウェアプログラムコードは、実行されると信号をDAC420に送信する動作をマイクロコントローラ410に行わせ、プログラム可能なロジックは信号をDAC420に送信する動作をマイクロコントローラ410に行わせ、信号は電圧レベルまたはセンサー355に印加される値を表す。DAC420は、信号を受信し、マイクロコントローラ410によって指令されたレベルで電圧値を発生する。本発明の実施形態では、マイクロコントローラ410は、信号の電圧レベルの表現を頻繁に変える場合も頻繁に変えない場合もある。図からわかるように、マイクロコントローラ410からの信号は、第1の電圧値を1秒間印加し、第2の電圧値を2秒間印加するようにDAC420に指令することができる。
センサー355は、電圧レベルまたは値を受け取ることができる。本発明の一実施形態では、対向電極365は、入力として、基準電圧とDAC420からの電圧値とを有する演算増幅器の出力を受け取ることができる。この電圧レベルが印加されると、センサー355は、測定される生理学的特性の集中度を示すセンサー信号を生成する。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、作用電極からのセンサー信号(例えば、電流値)を測定することができる。図からわかるように、センサー信号測定回路431が、センサー信号を測定し得る。本発明の一実施形態では、センサー信号測定回路431は、抵抗器を備えることができ、電流がこの抵抗器を通ることで、センサー信号の値を測定することができる。本発明の一実施形態において、センサー信号は、電流レベル信号であってもよく、センサー信号測定回路431は、電流/周波数(I/F)コンバータ430であってもよい。電流/周波数コンバータ430は、センサー信号を電流読取り値として測定し、それを周波数ベースのセンサー信号に変換し、その周波数ベースのセンサー信号をマイクロコントローラ410に送信することができる。本発明の実施形態において、マイクロコントローラ410は、周波数ベースのセンサー信号を、周波数ベースでないセンサー信号に比べて容易に受信できるものとしてよい。マイクロコントローラ410は、周波数ベースであろうと、周波数ベースでなかろうと、センサー信号を受信し、血糖値などの、被験者の生理学的特性に対する値を決定する。マイクロコントローラ410は、実行されるか、または動作したときに、センサー信号を受信し、そのセンサー信号を生理学的特性値に変換することができるプログラムコードを備えることができる。本発明の一実施形態では、マクロコントローラ410は、センサー信号を血糖値に変化し得る。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、内部メモリ内に格納されている測定値を利用して被験者の血糖値を判定することができる。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、マイクロコントローラ410の外部のメモリ内に格納されている測定値を利用して被験者の血糖値の判定を補助することができる。
生理学的特性値が、マイクロコントローラ410によって判定された後、マイクロコントローラ410は、数期間分の生理学的特性値の測定値を格納することができる。例えば、血糖値は、1秒おきに、または5秒おきにセンサーからマイクロコントローラ410に送信され、マイクロコントローラは、BG読取り値の5分または10分についてセンサー測定値を保存することができる。マイクロコントローラ410は、生理学的特性値の測定値をセンサー電子機器デバイス360上のディスプレイに転送することができる。例えば、センサー電子機器デバイス360は、被験者に対する血糖読取り値を与えるディスプレイを備えるモニターであってよい。本発明の一実施形態では、マイクロコントローラ410は、生理学的特性値の測定値をマイクロコントローラ410の出力インターフェースに転送することができる。マイクロコントローラ410の出力インターフェースは、生理学的特性値の測定値、例えば、血糖値を外部デバイス、例えば、輸液ポンプ、複合輸液ポンプ/グルコースメーター、コンピュータ、携帯情報端末、ページャー、ネットワークアプライアンス、サーバー、携帯電話、または何らかのコンピューティングデバイスに転送することができる。
図5は、本発明の一実施形態によるセンサー電極の電子ブロック図およびセンサー電極に印加される電圧を示す図である。図5に示されている本発明の実施形態では、オペアンプ530または他のサーボ制御デバイスは、回路/電極インターフェース538を通じてセンサー電極510に接続し得る。センサー電極を通じてフィードバックを利用する、オペアンプ530は対向電極536における電圧を調整することによって基準電極532と作用電極534との間で規定電圧(DAC側で印加電圧がそうであるべきと望み得る電圧)を維持することを試みる。次いで、電流が対向電極536から作用電極534に流れ得る。そのような電流の測定を行って、センサー電極510とセンサー電極510の付近に留置され、触媒として使用されているセンサーの生体分子との間の電気化学反応を確認することができる。図5に開示されている回路は、長期的もしくは埋め込み型センサーで使用されるか、または短期的もしくは皮下センサーで利用され得る。
長期的センサーの実施形態では、グルコースオキシダーゼ(GOx)酵素がセンサー内の触媒として使用される場合、電流は、対向電極536から作用電極534へ、酵素およびセンサー電極510の近くに酸素がある場合にのみ流れ得る。図からわかるように、基準電極532で設定されている電圧が約0.5ボルトに維持されている場合、対向電極536から作用電極534へ流れる電流の量は、酵素および電極の周りの領域に存在する酸素の量に対して1の勾配とかなり直線的な関係を有する。したがって、血液中の酸素の量を判定する精度は、基準電極532を約0.5ボルトに維持し、電流電圧曲線のこの領域を利用して血液酸素のレベルを変化させることによって高められる。本発明の異なる実施形態では、グルコースオキシダーゼ酵素以外の生体分子を有する異なるセンサーを利用することができ、したがって、基準電極で設定されている0.5ボルト以外の電圧を有するものとしてよい。
上で説明されているように、センサー510を最初に埋め込む、または挿入するときに、センサー510は、センサーへの被験者の調整、さらにはセンサーで利用される触媒によって引き起こされる電気化学的副産物により、不正確な読取り値を出す可能性がある。多くのセンサーにとって安定化期間は必要であり、センサー510が被験者の生理学的パラメータの正確な読取り値を出すために必要である。安定化期間において、センサー510は、正確な血糖測定を行わない。センサーの使用者および製造業者は、被験者の体内に、または被験者の皮下層内に挿入した後にセンサーがすぐに利用可能なようにセンサーに対する安定化時間枠を改善することを望むこともあり得る。
以前のセンサー電極システムでは、安定化期間または時間枠は1時間から3時間であった。安定化期間または時間枠を短縮し、センサーの精度の適時性を高めるために、センサー(またはセンサーの電極)は、1つのパルスの印加とそれに続く別の電圧の印加ではなく多数のパルスに曝され得る。図6Aは、本発明の一実施形態による、安定化時間枠内でパルスを印加して安定化時間枠を短縮する方法を示す図である。本発明のこの実施形態では、電圧印加デバイスは、第1の電圧を第1の時間または期間に電極に印加する(600)。本発明の一実施形態では、第1の電圧はDC定電圧とすることができる。この結果、アノード電流が発生する。本発明の代替的実施形態では、デジタル/アナログコンバータまたは別の電圧源は、電圧を第1の期間に電極に供給することができる。アノード電流は、電子が電圧が印加される電極の方へ駆動されることを意味する。本発明の一実施形態において、印加デバイスでは、電圧の代わりに電流を印加することができる。本発明の一実施形態では、電圧がセンサーに印加される場合、第1の電圧が電極に印加された後に、電圧レギュレータは第2の時間、時間枠、または期間の間待機する(すなわち、電圧を印加しない)ものとしてよい(605)。言い換えると、電圧印加デバイスは、第2の期間が経過するまで待機する。電圧が印加されない場合、結果として、カソード電流が生じ、その結果、電圧が印加されない電極によって電子の獲得が生じる。第1の期間に第1の電圧が電極に印加されることと、その後第2の期間に電圧が印加されないこととが、何回も繰り返される(610)。これは、アノードおよびカソードサイクルと称され得る。本発明の一実施形態において、安定化方法の総繰り返し回数は、3回であり、すなわち、第1の期間に電圧を3回印加し、それぞれ、続いて第2の期間に電圧を印加しない。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、1.07ボルトとすることができる。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、0.535ボルトであってもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、約0.7ボルトであってもよい。
電圧を繰り返し印加することと、電圧を印加しないことにより、結果として、センサー(および電極)がアノード/カソードサイクルを受ける。アノード/カソードサイクルの結果、センサーの挿入またはセンサーの埋め込みに反応して患者の体内に生じる電気化学的副産物が減少する。本発明の一実施形態において、電気化学的副産物は、バックグラウンド電流の発生を引き起こし、その結果、被験者の生理学的パラメータの測定が不正確になる。本発明の一実施形態では、電気化学的副産物は、排除されるとよい。他の動作条件の下で、電気化学的副産物は、低減されるか、または著しく低減され得る。安定化方法が成功すると、その結果、アノード/カソードサイクルは平衡状態に達し、電気化学的副産物は著しく低減され、バックグラウンド電流は最小にされる。
本発明の一実施形態において、センサーの電極に印加される第1の電圧は、正の電圧であってよい。本発明の一実施形態では、印加される第1の電圧は、負の電圧であってよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、作用電極に印加され得る。本発明の一実施形態では、第1の電圧は、対向電極または基準電極に印加され得る。
本発明の実施形態において、電圧パルスの持続時間および電圧を印加しない時間は等しくてもよく、例えば、それぞれ3分間とすることができる。本発明の実施形態では、電圧印加または電圧パルスの持続時間は、異なる値であってもよく、例えば、第1の時間と第2の時間は異なっていてもよい。本発明の一実施形態では、第1の期間を5分とし、待機期間を2分とすることができる。本発明の一実施形態では、第1の期間を2分とし、待機期間(または第2の時間枠)を5分とすることができる。言い換えると、第1の電圧の印加の持続時間は2分であり、5分間は電圧印加がないということである。この時間枠は、例示的であることのみを意図されており、制限となるべきでない。例えば、第1の時間枠は2、3、5、または10分であり、第2の時間枠は、5分、10分、20分、または同様の時間とすることができる。時間枠(例えば、第1の時間と第2の時間)は、異なる電極、センサーの固有の特性、および/または患者の生理学的特性に依存し得る。
本発明の実施形態では、グルコースセンサーを安定化するために、3つより多い、または少ないパルスを利用することができる。言い換えると、繰り返し回数は、3回より多くても、3回より少なくてもよいということである。例えば、4つの電圧パルス(例えば、高い電圧に続いて電圧なし)が電極の1つに印加され得るか、または6つの電圧パルスが電極の1つに印加され得る。
図からわかるように、皮下埋め込みセンサーに対しては、1.07ボルトの3つの連続するパルス(その後に各待機期間)で十分であり得る。本発明の一実施形態において、0.7ボルトの3つの連続するパルスが利用され得る。3つの連続するパルスは、血液または頭蓋内流体内に埋め込まれたセンサー、例えば長期的もしくは永久的センサーに対して、負または正のいずれかの、より高い、または低い電圧値を有することができる。それに加えて、3つより多いパルス(例えば、5、8、12)を利用して、皮下、血液、または頭蓋内流体センサーのどれかにおけるアノード電流とカソード電流との間のアノード/カソードサイクリングを生じさせることができる。
図6Bは、本発明の一実施形態による、センサーを安定化する方法を示している。図6Bに示されている本発明の実施形態では、電圧印加デバイスが第1の電圧を第1の期間にセンサーに印加して(630)、センサーの電極においてアノードサイクルを開始することができる。電圧印加デバイスは、DC電源、デジタル/アナログコンバータ、または電圧レギュレータとすることができる。第1の期間が経過した後、第2の電圧が第2の期間にセンサーに印加されて(635)、センサーの電極においてカソードサイクルを開始する。図からわかるように、電圧が印加されないのではなくむしろ、図6Aの方法に例示されているように、(第1の電圧と)異なる電圧が第2の時間枠においてセンサーに印加される。本発明の一実施形態では、第1の期間の第1の電圧の印加と第2の期間の第2の電圧の印加は、何回も繰り返される(640)。本発明の一実施形態では、第1の期間の第1の電圧の印加と第2の期間の第2の電圧の印加は、それぞれ、繰り返し回数ではなく、安定化時間枠、例えば、10分、15分、または20分について印加され得る。この安定化時間枠は、例えば、センサー(および電極)が安定化するまで、安定化シーケンスに対する時間枠全体である。この安定化方法の利点として、センサーのより高速なランイン、少ないバックグラウンド電流(言い換えると、バックグラウンド電流のある程度の抑制)、およびより良好なグルコース反応が挙げられる。
本発明の一実施形態において、第1の電圧は、5分間印加される0.535ボルトであり、第2の電圧は、2分間印加される1.070ボルトであり、0.535ボルトの第1の電圧は、5分間印加され、1.070ボルトの第2の電圧は、2分間印加され、0.535ボルトの第1の電圧は、5分間印加され、1.070ボルトの第2の電圧は、2分間印加され得る。言い換えると、この実施形態では、電圧パルス発生方式の3回の繰り返しがあるということである。このパルス発生方法は、第2の時間枠、例えば、第2の電圧の印加の時間枠が2分から5分、10分、15分、または20分に延長され得るという点で変更されるものとしてよい。それに加えて、本発明のこの実施形態では、3回の繰り返しが適用された後に、0.535の公称使用電圧が印加され得る。
1.070および0.535ボルトは、例示的な値である。他の電圧値は、さまざまなファクターに基づき選択され得る。これらのファクターとして、センサー内で利用される酵素の種類、センサー内で利用される膜、センサーの動作期間、パルスの長さ、および/またはパルスの大きさが挙げられる。特定の動作条件の下で、第1の電圧は、1.00から1.09ボルトの範囲内であり、第2の電圧は、0.510から0.565ボルトの範囲内であるものとしてよい。他の動作実施形態では、第1の電圧と第2の電圧とを囲む範囲は、センサーの電極の電圧感度に応じて、より高い範囲、例えば、0.3ボルト、0.6ボルト、0.9ボルトをとり得る。他の動作条件の下で、電圧は、0.8ボルトから1.34ボルトの範囲内であり、他の電圧は、0.335から0.735の範囲内であるものとしてよい。他の動作条件の下で、より高い電圧の範囲は、より低い電圧の範囲より小さくてもよい。図からわかるように、より高い電圧は、0.9から1.09ボルトの範囲内であり、より低い電圧は、0.235から0.835ボルトの範囲内であるものとしてよい。
本発明の一実施形態において、第1の電圧および第2の電圧は、正の電圧であるか、あるいは、本発明の他の実施形態において、負の電圧であってもよい。本発明の一実施形態において、第1の電圧は、正であり、第2の電圧は、負であるか、あるいは、第1の電圧は、負であり、第2の電圧は、正であるものとしてよい。第1の電圧は、繰り返しのそれぞれについて異なる電圧レベルであってもよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧はDC定電圧とすることができる。本発明の他の実施形態において、第1の電圧は、ランプ電圧、正弦波形電圧、ステップ電圧、または他の一般に利用される電圧波形とすることができる。本発明の一実施形態において、第2の電圧は、D.C.定電圧、ランプ電圧、正弦波形電圧、ステップ電圧、または他の一般に利用される電圧波形とすることができる。本発明の一実施形態では、第1の電圧または第2の電圧は、DC波形上に乗るAC信号であってもよい。本発明の一実施形態において、第1の電圧は、一方の種類の電圧、例えば、ランプ電圧であり、第2の電圧は、第2の種類の電圧、例えば、正弦波形電圧であるものとしてよい。本発明の一実施形態では、第1の電圧(または第2の電圧)は、繰り返しのそれぞれについて異なる波形形状を有することができる。例えば、安定化方法に3つのサイクルがある場合、第1のサイクルで、第1の電圧はランプ電圧であり、第2のサイクルで、第1の電圧は定電圧であり、第3のサイクルで、第1の電圧は正弦波電圧であるものとしてよい。
本発明の一実施形態において、第1の時間枠の持続時間および第2の時間枠の持続時間は、同じ値を有することができるか、あるいは、第1の時間枠および第2の時間枠の持続時間は、異なる値を有することができる。例えば、第1の時間枠の持続時間は、2分であり、第2の時間枠の持続時間は、5分であり、繰り返し回数は3であるものとしてよい。上で説明されているように、安定化方法は、多数の繰り返しを含み得る。本発明の実施形態では、安定化方法を異なる回数で繰り返すときに、第1の時間枠のそれぞれの時間枠の持続時間は、変化し、第2の時間枠のそれぞれの時間枠の持続時間も変化し得る。図からわかるように、アノード/カソードサイクリングの第1の繰り返しにおいて、第1の時間枠は、2分であり、第2の時間枠は、5分であるものとしてよい。第2の繰り返しのときに、第1の時間枠は、1分であり、第2の時間枠は、3分であるものとしてよい。第3の繰り返しのときに、第1の時間枠は、3分であり、第2の時間枠は、10分であるものとしてよい。
本発明の一実施形態において、0.535ボルトの第1の電圧がセンサー内の電極に2分間印加されてアノードサイクルを開始し、1.07ボルトの第2の電圧が電極に5分間印加されてカソードサイクルを開始する。次いで、0.535ボルトの第1の電圧が再び2分間印加されてアノードサイクルを開始し、1.07ボルトの第2の電圧が5分間センサーに印加される。第3の繰り返しで、0.535ボルトが2分間印加され、これにより、アノードサイクルを開始し、次いで、1.07ボルトが5分間印加される。次いで、センサーに印加される電圧は、センサーの実際の作業時間枠において、例えば、センサーが被験者の生理学的特性の読取り値を与えるときに、0.535である。
より短い持続時間の電圧パルスは、図6Aおよび図6Bの実施形態において利用され得る。より短い持続時間の電圧パルスは、第1の電圧、第2の電圧、またはその両方を印加するために利用され得る。本発明の一実施形態において、第1の電圧に対するより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、-1.07ボルトであり、第2の電圧に対するより短い持続時間の電圧パルスの大きさは、高い大きさの約半分であり、例えば、-0.535ボルトである。あるいは、第1の電圧に対するより短い持続時間のパルスの大きさは、0.535ボルトとすることができ、第2の電圧に対するより短い持続時間のパルスの大きさは、1.07ボルトである。
短い持続時間のパルスを利用する本発明の実施形態において、電圧が第1の期間全体にわたって連続的に印加され得ない。その代わりに、電圧印加デバイスは、第1の期間に多数の短い持続時間のパルスを送ることができる。言い換えると、多数のミニ幅または短い持続時間の電圧パルスが、第1の期間にわたってセンサーの電極に印加され得るということである。ミニ幅または短い持続時間のパルスは、何ミリ秒もの幅を有することができる。図からわかるように、このパルス幅は、30ミリ秒、50ミリ秒、70ミリ秒、または200ミリ秒であってよい。これらの値は、例示的であることを意図されており、制限することを意図していない。図6Aに示されている実施形態などの、本発明の一実施形態では、これらの短い時間のパルスは、第1の期間にセンサー(電極)に印加され、次いで、第2の期間には電圧はいっさい印加されない。
本発明の一実施形態において、それぞれの短い持続時間のパルスは、第1の期間内で同じ持続時間を有することができる。例えば、それぞれの短い持続時間の電圧パルスは、50ミリ秒の時間幅を有し、パルス間のそれぞれのパルス遅延時間は、950ミリ秒であるものとしてよい。この例では、第1の時間枠について2分が測定された時間である場合、120個の短い持続時間の電圧パルスがセンサーに印加され得る。本発明の一実施形態では、短い持続時間の電圧パルスのそれぞれは、異なる持続時間を有するものとしてよい。本発明の一実施形態において、短い持続時間の電圧パルスのそれぞれは、同じ振幅値を有してよい。本発明の一実施形態では、短い持続時間の電圧パルスのそれぞれは、異なる振幅値を有してよい。センサーに電圧を連続的に印加する代わりに短い持続時間の電圧パルスを利用することによって、同じアノードおよびカソードサイクリングが行われ、センサー(例えば、電極)は、時間の経過とともにより少ない全エネルギーまたは電荷を受ける。短い持続時間の電圧パルスを使用する場合、電極に電圧を連続的に印加するのと比べて利用する電力は少ないが、それは、センサー(したがって電極)に印加されるエネルギーが少ないからである。
図6Cは、本発明の一実施形態による、センサーを安定化する際のフィードバックの利用を示す図である。センサーシステムは、センサーを安定化するために追加のパルスが必要かどうかを判定するためにフィードバックメカニズムを備えることができる。本発明の一実施形態において、電極(例えば、作用電極)によって生成されるセンサー信号を分析して、センサー信号が安定化されているかどうかを判定することができる。第1の電圧が第1の時間枠で電極に印加され(630)、アノードサイクルを開始する。第2の電圧が第2の時間枠で電極に印加され(635)、カソードサイクルを開始する。本発明の一実施形態では、分析モジュールが、センサー信号(例えば、センサー信号によって放射される電流、センサー内の特定の地点における抵抗、センサー内の特定のノードにおけるインピーダンス)を分析し、測定閾値に達したかどうかを判定することができる(637)(例えば、測定閾値と突き合わせて比較することによって正確な読取り値をセンサーが出しているかどうかを判定する)。センサー読取り値が正確であると判定された場合、これは電極(したがってセンサー)が安定している(642)ことを表しており、第1の電圧および/または第2の電圧の追加の印加が生じ得ない。本発明の一実施形態において、安定を達成していなかった場合、追加のアノード/カソードサイクルが、第1の期間に第1の電圧を電極に印加し(630)、第2の期間に第2の電圧を電極に印加する(635)ことによって開始される。
本発明の実施形態において、分析モジュールは、第1の電圧および第2の電圧をセンサーの電極に3回印加するアノード/カソードサイクルの後に使用され得る。本発明の一実施形態では、分析モジュールは、図6Cに示されているように、第1の電圧および第2の電圧を1回印加した後に使用され得る。
本発明の一実施形態において、分析モジュールは、電極の両端に、または2つの電極の間に電流が導入された後に放射される電圧を測定するために使用され得る。分析モジュールは、電極のところで、または受信レベルで、電圧レベルを監視することができる。本発明の一実施形態では、電圧レベルが特定の閾値より高い場合、これは、センサーが安定化されていることを意味し得る。本発明の一実施形態では、電圧レベルが閾値レベルより低い場合、これは、センサーが安定化されており、読取り値を直ちに出せる状態にあることを示し得る。本発明の一実施形態において、電流は、電極に、または2、3の電極の間に導入され得る。分析モジュールは、電極から放射される電流レベルを監視することができる。本発明のこの実施形態において、分析モジュールは、電流がセンサー信号電流と一桁異なっているかどうか電流を監視することができるものとしてよい。電流が、電流閾値より高いか、または低い場合、これは、センサーが安定化されていることを意味するものとしてよい。
本発明の一実施形態において、分析モジュールは、センサーの2つの電極の間のインピーダンスを測定することができる。分析モジュールは、インピーダンスを閾値または目標インピーダンス値と比較し、測定されたインピーダンスが目標または閾値インピーダンスより低い場合に、センサー(したがってセンサー信号)は、安定化され得る。本発明の一実施形態において、分析モジュールは、センサーの2つの電極の間の抵抗を測定し得る。本発明のこの実施形態では、分析モジュールは抵抗を閾値または目標抵抗値と比較し、測定された抵抗値が閾値または目標抵抗値より小さい場合に、分析モジュールは、センサーが安定化され、センサー信号が利用できると判定することができる。
図7は、本発明の一実施形態による、センサーを安定化する効果を示している。直線705は、前の単一パルス安定化法が利用されたグルコースセンサーに対する血糖センサー読取り値を表している。直線710は、3つの電圧パルスが印加される場合のグルコースセンサーに対する血糖読取り値を表す(例えば、3つの電圧パルスは2分の持続時間を有し、それぞれの後に電圧が印加されない5分の持続時間が続く)。x軸715は、時間の長さを表す。点720、725、730、および735は、測定されたグルコースの読取り値を表しており、この測定は指先採血を利用して行われ、次いでグルコースメーター内に入力される。グラフで示されているように、以前の単一パルス安定化法では、所望のグルコース読取り値、例えば、100単位に合わせて安定化するために約1時間30分を要した。対照的に、3パルス安定化法では、グルコースセンサーを安定化するのに約15分しか要さず、その結果、安定化時間枠が大幅に改善された。
図8Aは、本発明の一実施形態による、センサー電子機器デバイスおよび電圧発生デバイスを含むセンサーのブロック図である。電圧発生または印加デバイス810は、電圧パルスを発生する電子機器、ロジック、または回路を備える。センサー電子機器デバイス360は、基準値および他の有用なデータを受信するための入力デバイス820も備えることができる。本発明の一実施形態において、センサー電子機器デバイスは、センサー測定値を格納するための測定用メモリ830を備えることができる。本発明のこの実施形態では、電源380は、電力をセンサー電子機器デバイスに供給することができる。電源380は、電力をレギュレータ385に供給し、レギュレータ385は安定化された電圧を電圧発生または印加デバイス810に供給することができる。接続端子811は、本発明の例示されている実施形態において、センサー355をセンサー電子機器デバイス360に結合または接続することを表している。
図8Aに示されている本発明の一実施形態において、電圧発生または印加デバイス810は、電圧、例えば、第1の電圧または第2の電圧を演算増幅器840の入力端子に供給する。電圧発生または印加デバイス810は、電圧をセンサー355の作用電極375にも供給することができる。演算増幅器840の別の入力端子は、センサーの基準電極370に結合される。電圧発生または印加デバイス810から演算増幅器840に電圧が印加されると、対向電極365で測定された電圧が作用電極375で印加される電圧に近くなるか、または等しくなる。本発明の一実施形態では、電圧発生または印加デバイス810は、対向電極と作用電極との間に所望の電圧を印加するために利用することも可能である。これは、固定された電圧を対向電極に直接印加することによっても生じ得る。
図6Aおよび6Bに示されている本発明の一実施形態では、電圧発生デバイス810は、第1の時間枠においてセンサーに印加される第1の電圧を発生する。電圧発生デバイス810は、この第1の電圧をオペアンプ840に送り、オペアンプ840はセンサー355の対向電極365のところの電圧を第1の電圧に駆動する。本発明の一実施形態において、電圧発生デバイス810はまた、第1の電圧を直接的に、センサー355の対向電極365に送ることも可能である。図6Aに示されている本発明の実施形態では、電圧発生デバイス810は、次いで、第2の時間枠の間、第1の電圧をセンサー355に送らない。言い換えると、電圧発生デバイス810は、オフにされるか、またはオフに切り換えられる。電圧発生デバイス810は、何回もの繰り返し、または安定化時間枠の間、例えば、20分間、第1の電圧を印加することと、電圧を印加しないこととのサイクリング動作を継続するようにプログラムされ得る。図8Bは、本発明のこの実施形態を実装するための電圧発生デバイスを示している。電圧レギュレータ385は、安定化された電圧を電圧発生デバイス810に送る。制御回路860は、スイッチ850の開閉を制御する。スイッチ850が閉じられた場合、電圧が印加される。スイッチ850が開かれた場合、電圧は印加されない。タイマー865は、スイッチ850をオン、オフするよう制御回路860に指令する信号を制御回路860に送る。制御回路860は、何回(必要な繰り返しと一致する回数)もスイッチ850を開閉するよう回路に指令することができるロジックを備える。本発明の一実施形態において、タイマー865は、安定化シーケンスが完了したこと、すなわち、安定化時間枠が経過したことを識別するための安定化信号を送信することもできる。
本発明の一実施形態において、電圧発生デバイスは、第1の時間枠で第1の電圧を発生し、第2の時間枠で第2の電圧を発生する。図8Cは、本発明のこの実施形態を実装するために2つの電圧値を発生する電圧発生デバイスを示している。本発明のこの実施形態では、2位置スイッチ870が利用される。図からわかるように、第1のスイッチ位置871がタイマー865によってオンにされるか、または閉じられ制御回路860に指令を送る場合、電圧発生デバイス810は、第1の時間枠で第1の電圧を発生する。第1の電圧が第1の時間枠で印加された後、タイマーは、第1の時間枠が経過したことを指示する信号を制御回路860に送信し、制御回路860は、スイッチ870を第2の位置872に移動するように指令する。スイッチ870が、第2の位置872にあるときに、安定化された電圧は、電圧ステップダウンまたはバックコンバータ880に送られ、これにより安定化された電圧をより低い値に下げる。次いで、より低い値は、第2の時間枠においてオペアンプ840に送られる。タイマー865が、第2の時間枠は経過したことを示す信号を制御回路860に送信した後、制御回路860は、スイッチ870を第1の位置に戻す。これは、所望の繰り返し回数に達するまで、または安定化時間枠が経過してしまうまで続けられる。本発明の一実施形態において、センサー安定化時間枠が経過した後、センサーはセンサー信号350を信号処理部390に送信する。
図8Dは、センサーに対する電圧の複雑な印加を実行するために利用される電圧印加デバイス810を示している。電圧印加デバイス810は、制御デバイス860、スイッチ890、正弦波電圧発生デバイス891、ランプ電圧発生デバイス892、および定電圧発生デバイス893を備えることができる。本発明の他の実施形態では、電圧印加は、DC信号または他のさまざまな電圧パルス波形の上にAC波を発生することができる。図8Dに示されている本発明の実施形態では、制御デバイス860は、スイッチを3つの電圧発生システム891(正弦波)、892(ランプ)、893(DC定電圧)のうちの1つに切り換えることができる。この結果、電圧発生システムのそれぞれは識別された電圧波形を発生することになる。いくつかの動作条件の下で、例えば、正弦波パルスが3つのパルスに対して印加される場合、制御デバイス860は、スイッチ890に電圧レギュレータ385の電圧を正弦波電圧発生器891に接続させて、電圧印加デバイス810が正弦波電圧を発生するようにできる。他の動作条件の下で、例えば、ランプ電圧が3つのパルスのうちの第1のパルスについて第1の電圧としてセンサーに印加され、正弦波電圧が3つのパルスのうちの第2のパルスについて第1の電圧としてセンサーに印加され、DC定電圧が3つのパルスのうちの第3のパルスについて第1の電圧としてセンサーに印加される場合、制御デバイス860は、スイッチ890に、アノード/カソードサイクルの第1の時間枠内で、電圧発生または印加デバイス810からの電圧をランプ電圧発生システム892に、次いで正弦波電圧発生システム891に、次いでDC定電圧発生システム893に切り換えて接続させることができる。本発明のこの実施形態では、制御デバイス860は、第2の時間枠において、例えば、第2の電圧の印加時に、電圧発生サブシステムのうちのいくつかをレギュレータ385からの電圧に接続するように、スイッチに指令するか、または制御することもできる。
図9Aは、本発明の一実施形態による、電圧パルスを発生するためマイクロコントローラを備えるセンサー電子機器デバイスを示す。高度センサー電子機器デバイスは、マイクロコントローラ410(図4を参照)、デジタル/アナログコンバータ(DAC)420、オペアンプ840、およびセンサー信号測定回路431を備えることができる。本発明の一実施形態において、センサー信号測定回路は、電流/周波数(I/F)コンバータ430であってもよい。図9Aに示されている本発明の実施形態において、マイクロコントローラ410内のソフトウェアまたはプログラム可能なロジックは、DAC420に信号を送信する命令を送り、次いで、特定の電圧を演算増幅器840に出力するようDAC420に指令する。マイクロコントローラ410は、図9Aの直線911によって示されているように、特定の電圧を作用電極375に出力するようにも指令され得る。上で説明されているように、特定の電圧を演算増幅器840および作用電極375に印加することによって、対向電極のところで測定された電圧を特定の電圧の大きに駆動することができる。言い換えると、マイクロコントローラ410は、センサー355(例えば、センサー355に結合された演算増幅器840)に印加されるべき電圧もしくは電圧波形を示す信号を出力する。本発明の代替的実施形態では、固定された電圧を、基準電極と作用電極375との間にDAC420から直接的に電圧を印加することによって設定することができる。また、類似の結果は電圧を電極のそれぞれに印加することによっても得られ、差は基準電極と作用電極との間に印加される固定された電圧に等しい。それに加えて、固定された電圧は、基準電極と対向電極との間に電圧を印加することによって設定され得る。いくつかの動作条件の下で、マイクロコントローラ410は、特定の大きさの電圧がセンサーに印加されるべきであるということを表すとDAC420側で認識する特定の大きさのパルスを発生することができる。第1の時間枠の後に、マイクロコントローラ410は(プログラムまたはプログラム可能なロジックを介して)電圧を出力しないように(センサー電子機器デバイス360が図6Aで説明されている方法に従って動作する場合)、または第2の電圧を出力するように(センサー電子機器デバイス360が図6Bで説明されている方法に従って動作する場合)DAC420に指令する第2の信号を出力する。マイクロコントローラ410は、第2の時間枠が経過した後に、次いで、印加されるべき第1の電圧(第1の時間枠に対して)を示す信号を送信し、次いで電圧はいっさい印加されないこと、または第2の電圧が印加されるべきであること(第2の時間枠に対して)を指令する信号を送信するサイクルを繰り返す。
他の動作条件の下で、マイクロコントローラ410は、ランプ電圧を出力するようにDACに指令するDAC420への信号を発生することができる。他の動作条件の下で、マイクロコントローラ410は、正弦波電圧をシミュレートする電圧を出力するようにDAC420に指令するDAC420への信号を発生することができる。これらの信号は、前の段落または本出願の前の方で上述されているパルス発生方法のうちのどれかに組み込むことも可能である。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、命令および/またはパルスのシーケンスを生成することができ、これをDAC420が受信し、パルスの特定のシーケンスが印加されるべきであることを意味するものと認識する。例えば、マイクロコントローラ410は、第1の時間枠の第1の繰り返しに対する定電圧、第2の時間枠の第1の繰り返しに対するランプ電圧、第1の時間枠の第2の繰り返しに対する正弦波電圧、および第2の時間枠の第2の繰り返しについて2つの値を有する方形波を生成するようにDAC420に指令する命令シーケンスを(信号および/またはパルスを介して)送信することができる。
マイクロコントローラ410は、安定化時間枠または多数の繰り返しについてこのサイクリングを続けるためのプログラム可能なロジックまたはプログラムを備えることができる。図からわかるように、マイクロコントローラ410は、いつ第1の時間枠または第2の時間枠が経過したかを識別するための計数ロジックを備えることができる。図からわかるように、マイクロコントローラ410は、安定化時間枠が経過したことを識別するための計数ロジックを備えることができる。先行する時間枠のどれかが経過した後に、計数ロジックは、新しい信号を送信するか、またはDAC420への信号の送信を停止するようマイクロコントローラに指令することができる。
マイクロコントローラ410を使用することで、さまざまな大きさの電圧を多数の持続時間にわたって多数のシーケンスで印加することができる。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、1分の第1の期間に大きさが約1.0ボルトである電圧パルスを送出し、次いで、4分の第2の期間に大きさが約0.5ボルトである電圧パルスを送出し、4回このサイクルを繰り返すようにデジタル/アナログコンバータ420に指令する制御ロジックまたはプログラムを備えることができる。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、それぞれの繰り返しでそれぞれの第1の電圧に対して同じ大きさの電圧パルスを印加することをDAC420に行わせる信号を送信するようにプログラムされ得る。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、それぞれの繰り返しでそれぞれの第1の電圧に対して異なる大きさの電圧パルスを印加することをDACに行わせる信号を送信するようにプログラムされ得る。本発明のこの実施形態では、マイクロコントローラ410は、それぞれの繰り返しでそれぞれの第2の電圧に対して異なる大きさの電圧パルスを印加することをDAC420に行わせる信号を送信するようにもプログラムされ得る。図からわかるように、マイクロコントローラ410は、第1の繰り返しで約1.0ボルトの第1の電圧パルスを印加すること、第1の繰り返しで約0.5ボルトの第2の電圧パルスを印加すること、第2の繰り返しで0.7ボルトの第1の電圧および0.4ボルトの第2の電圧を印加すること、ならびに第3の繰り返しで1.2ボルトの第1の電圧および0.8ボルトの第2の電圧を印加することをDAC420に行わせる信号を送信するようにプログラムされ得る。
マイクロコントローラ410は、第1の時間枠において多数の短い持続時間の電圧パルスを送るようにDAC420に指令するようにもプログラムされ得る。本発明のこの実施形態において、第1の時間枠全体にわたって(例えば、2分間に)1つの電圧が印加されるのではなく、多数のより短い持続時間のパルスがセンサーに印加され得る。この実施形態では、マイクロコントローラ410は、第2の時間枠において多数の短い持続時間の電圧パルスをセンサーに送るようにDAC420に指令するようにもプログラムされ得る。図からわかるように、マイクロコントローラ410は、短い持続時間が50ミリ秒または100ミリ秒である多数の短い持続時間の電圧パルスを印加することをDACに行わせる信号を送信することができる。これらの短い持続時間のパルスの間に、DACは、電圧をいっさい印加しないか、またはDACは、最低電圧を印加することができる。マイクロコントローラは、第1の時間枠、例えば、2分間に短い持続時間の電圧パルスを印加することをDAC420に行わせることができる。次いで、マイクロコントローラ410は、電圧を印加しないか、または第2の時間枠で第2の電圧の大きさの短い持続時間の電圧パルスを印加することのいずれかをDACに行わせる信号をセンサーに送信することができ、例えば、第2の電圧は0.75ボルトとし、第2の時間枠を5分とすることができる。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、第1の時間枠および/または第2の時間枠で短い持続時間のパルスのそれぞれに対して異なる大きさの電圧を印加することをDAC420に行わせる信号をDAC420に送信することができる。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、第1の時間枠または第2の時間枠で電圧の大きさのパターンを短い持続時間の電圧パルスに施すことをDAC420に行わせる信号をDAC420に送信することができる。例えば、マイクロコントローラは、第1の時間枠で30個の20ミリ秒パルスをセンサーに印加するようDAC420に指令する信号またはパルスを送信することができる。30個の20ミリ秒パルスは、同じ大きさを有していても、異なる大きさを有していてもよい。本発明のこの実施形態では、マイクロコントローラ410は、第2の時間枠で短い持続時間のパルスを印加するようDAC420に指令するか、または第2の時間枠で別の電圧波形を印加するようDAC420に指令することができる。
図6〜図8の開示では、電圧の印加を開示しているが、安定化プロセスを開始するために電流をセンサーに印加することもできる。図からわかるように、図6Bに示されている本発明の実施形態において、第1の電流は、アノードまたはカソード応答を開始するために第1の時間枠で印加され、第2の電流は、反対のアノードまたはカソード応答を開始するために第2の時間枠で印加され得る。第1の電流および第2の電流の印加は、多数の繰り返しの間、続けることができるか、または安定化時間枠において続けることができる。本発明の一実施形態において、第1の電流は、第1の時間枠で印加され、第1の電圧は、第2の時間枠で印加され得る。言い換えると、アノードまたはカソードサイクルのうちの一方が、センサーに印加されている電流によってトリガーされ、アノードまたはカソードサイクルのうちの他方が、センサーに印加されている電圧によってトリガーされ得るということである。上で説明されているように、印加される電流は、定電流、ランプ電流、ステップパルス電流、または正弦波限流とすることができる。いくつかの動作条件の下で、電流は、第1の時間枠で短い持続時間のパルスのシーケンスとして印加され得る。
図9Bは、本発明の一実施形態による、分析モジュールを安定化期間におけるフィードバックに利用するセンサーおよびセンサー電子機器を示している。図9Bでは、分析モジュール950を電子機器デバイス360に導入している。分析モジュール950は、センサーからのフィードバックを利用して、センサーが安定化しているかどうかを判定する。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラ410は、DAC420が電圧または電流をセンサー355の一部に印加するようにDAC420を制御する命令またはコマンドを備えることができる。図9Bは、電圧または電流を基準電極370と作用電極375との間に印加することが可能であることを示している。しかし、電圧または電流は、電極間に、または直接的に電極のうちの一方に印加することができ、本発明は、図9Bに示されている実施形態によって制限されるべきでない。電圧または電流の印加は、点線955によって示されている。分析モジュール950は、センサー355内の電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスを測定することができる。図9Bは、測定は作用電極375で行われることを示しているが、これは、本発明の他の実施形態ではセンサーの電極間、または直接的に、基準電極370もしくは対向電極365のいずれかのところの電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスを測定することができるので、本発明を制限すべきでない。分析モジュール950は、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスを受信することができ、その測定値を格納されている値(例えば、閾値)と比較することができる。点線956は、分析モジュール950が電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスを読み取るか、または測定を行うことを表す。いくつかの動作条件の下で、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスが、閾値より高い場合、センサーは安定化しており、センサー信号は患者の生理学的状態の正確な測定値を出している。他の動作条件の下では、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスが、閾値より低い場合、センサーは安定化している。他の動作条件の下で、分析モジュール950は、測定された電圧、電流、抵抗、またはインピーダンスが特定の時間枠において、例えば、1分もしくは2分の間、安定していることを検証することができる。これは、センサー355が安定化していること、およびセンサー信号が被験者の生理学的パラメータ、例えば、血糖値の正確な測定値を伝えていることを表すものとしてよい。分析モジュール950が、センサーが安定化し、センサー信号が正確な測定値を出していると判定した後、分析モジュール950は、センサーが安定化しており、マイクロコントローラ410がセンサー355のセンサー信号を使用すること、または受信することを開始できることを示す信号(例えば、センサー安定化信号)をマイクロコントローラ410に送信することができる。これは、点線957により表されている。
図10は、本発明の一実施形態による、水和電子機器を備えるセンサーシステムのブロック図を示している。センサーシステムは、コネクタ1010、センサー1012、およびモニターまたはセンサー電子機器デバイス1025を備える。センサー1012は、電極1020および接続部分1024を備える。本発明の一実施形態において、センサー1012は、コネクタ1010とケーブルとを介してセンサー電子機器デバイス1025に接続され得る。本発明の他の実施形態では、センサー1012は、センサー電子機器デバイス1025に直接接続され得る。本発明の他の実施形態では、センサー1012は、センサー電子機器デバイス1025と同じ物理デバイス内に組み込むことができる。モニターまたはセンサー電子機器デバイス1025は、電源1030、レギュレータ1035、信号処理部1040、測定値処理部1045、および処理部1050を備えることができる。モニターまたはセンサー電子機器デバイス1025は、水和検出回路1060を備えることもできる。水和検出回路1060は、センサー1012の電極1020が十分に水和されているかどうかを判定するためにセンサー1012とインターフェースする。電極1020が十分に水和されていない場合、電極1020は、正確なグルコース読取り値を出さず、したがって、電極1020がいつ十分に水和されるかを知ることは重要である。電極1020が十分に水和されると、正確なグルコース読取り値が得られる。
図10に示されている本発明の一実施形態では、水和検出回路1060は、遅延またはタイマーモジュール1065および接続検出モジュール1070を備えることができる。短期的センサーまたは皮下センサーを利用する本発明の一実施形態では、センサー1012が皮下組織内に挿入された後、センサー電子機器デバイスまたはモニター1025は、センサー1012に接続される。接続検出モジュール1070は、センサー電子機器デバイス1025がセンサー1012に接続されたことを識別し、信号をタイマーモジュール1065に送信する。これは、検出器1083が接続を検出し、センサー1012がセンサー電子機器デバイス1025に接続されたことを示す信号を接続検出モジュール1070に送信することを表す矢印1084によって図10に例示されている。埋め込み型または長期的センサーが利用される本発明の一実施形態では、接続検出モジュール1070が、埋め込み型センサーが体内に挿入されたことを識別する。タイマーモジュール1065は、接続信号を受信し、設定された、または確立された水和時間の間待機する。図からわかるように、水和時間は、2分、5分、10分、または20分であるものとしてよい。これらの実施例は、例示的であることを意図されており、制限することを意図していない。時間枠は、設定された分数でなくてもよく、任意の秒数を含んでいてよい。本発明の一実施形態では、タイマーモジュール1065が、設定された水和時間の間待機した後、タイマーモジュール1065は、センサー1012が水和されたことを水和信号を送信することによって処理部1050に通知することができるが、これは直線1086によって示されている。
本発明のこの実施形態において、処理部1050は、水和信号を受信し、水和信号が受信された後にのみセンサー信号(例えば、センサー測定値)を利用することを開始することができる。本発明の別の実施形態では、水和検出回路1060は、センサー(センサー電極1020)と信号処理部1040との間に結合され得る。本発明のこの実施形態では、水和検出回路1060は、設定された水和時間が経過したことをタイマーモジュール1065が水和検出回路1060に通知するまでセンサー信号が信号処理部1040に送信されるのを防ぐことができる。これは、参照番号1080および1081のラベルが付けられている点線によって示されている。図からわかるように、タイマーモジュール1065は、接続信号をスイッチ(またはトランジスタ)に送って、スイッチをオンにし、センサー信号を信号処理部1040に進ませることができる。本発明の代替的実施形態では、タイマーモジュール1065は、接続信号を送信し、水和検出回路1060内のスイッチ1088をオンにして(またはスイッチ1088を閉じて)、水和時間が経過した後にレギュレータ1035からの電圧がセンサー1012に印加できるようにすることができる。言い換えると、本発明のこの実施形態では、レギュレータ1035からの電圧は、水和時間が経過した後でないとセンサー1012に印加されないということである。
図11は、水和時間を決定するのを支援するための機械的スイッチを備える本発明の一実施形態を示す。本発明の一実施形態において、単一のハウジングが、センサーアセンブリ1120およびセンサー電子機器デバイス1125を備えることができる。本発明の一実施形態では、センサーアセンブリ1120は、一方のハウジング内にあり、センサー電子機器デバイス1125は、それとは別のハウジング内にあってもよいが、センサーアセンブリ1120およびセンサー電子機器デバイス1125は一緒に接続することができる。本発明のこの実施形態では、接続検出モジュール1160は、機械スイッチであってよい。機械スイッチは、センサー1120がセンサー電子機器デバイス1125に物理的に接続されていることを検出することができる。本発明の一実施形態において、タイマー回路1135も、機械スイッチ1160がセンサー1120がセンサー電子機器デバイス1125に接続されていることを検出したときに起動することができる。言い換えると、機械スイッチが閉じて、信号が、タイマー回路1135に送られるものとしてよい。水和時間が経過した後、タイマー回路1135は、信号をスイッチ1140に送って、レギュレータ1035が電圧をセンサー1120に印加できるようにする。言い換えると、水和時間が経過するまで電圧は印加されないということである。本発明の一実施形態において、電流は、水和時間が経過するとセンサーに印加されるものとして電圧の代わりに使用できる。本発明の代替的実施形態では、機械スイッチ1160が、センサー1120がセンサー電子機器デバイス1125に物理的に接続されていることを識別したときに、電力は、最初にセンサー1120に印加され得る。電力がセンサー1120に送られるとその結果、センサー信号がセンサー1120内の作用電極から出力される。センサー信号が測定され、処理部1175に送信され得る。処理部1175は、カウンター入力を備えることができる。いくつかの動作条件の下で、センサー信号が処理部1175内に入力されたときから設定された水和時間が経過した後に、処理部1175は、被験者の体内のグルコースの正確な測定値としてセンサー信号を処理することを開始することができる。言い換えると、処理部1175は、一定の時間の間、ポテンシオスタット回路1170からセンサー信号をすでに受信しているが、水和時間が経過したことを識別する命令を処理部のカウンター入力から受け取るまで信号を処理しないということである。本発明の一実施形態において、ポテンシオスタット回路1170は、電流/周波数コンバータ1180を備えることができる。本発明のこの実施形態では、電流/周波数コンバータ1180は、センサー信号を電流値として受信し、その電流値を周波数値に変換することができ、周波数値は、処理部1175での取り扱いが容易である。
本発明の一実施形態において、機械スイッチ1160は、センサー1120がセンサー電子機器デバイス1125から切断されたときにそのことを処理部1175に通知することもできる。これは、図11において点線1176によって表されている。これは、結果として、典型的には、処理部1170がセンサー電子機器デバイス1125の多数のコンポーネント、チップ、および/または回路への電源を切るか、または出力を下げることになり得る。センサー1120が接続されていない場合、センサー電子機器デバイス1125のコンポーネントまたは回路が電源オン状態にあると、電池または電源の電力がなくなることがある。したがって、機械スイッチ1160が、センサー1120がセンサー電子機器デバイス1125から物理的に切断されたことを検出した場合、機械スイッチは、このことを処理部1175に指示し、処理部1175は、センサー電子機器デバイス1125の電子回路、チップ、またはコンポーネントのうちの1つまたは複数への電源を切るか、または出力を下げることができる。
図12は、本発明の一実施形態による、水和の検出の電気的方法を示している。本発明の一実施形態において、センサーの接続を検出するための電気的検出メカニズムが利用され得る。本発明のこの実施形態において、水和検出回路1250は、ACソース1255および検出回路1260を備えることができる。水和検出電子機器1250をセンサー電子機器デバイス1225内に配置することができる。センサー1220は、対向電極1221、基準電極1222、および作用電極1223を備えることができる。図12に例示されているように、ACソース1255は、電圧設定デバイス1275、基準電極1222、検出回路1260に結合される。本発明のこの実施形態において、ACソースからのAC信号は、図12の点線1291によって示されているように、基準電極接続部に印加される。本発明の一実施形態において、AC信号は、インピーダンスを通じてセンサー1220に結合され、結合された信号は、センサー1220がセンサー電子機器デバイス1225に接続されている場合に著しく減衰される。したがって、低レベルAC信号は、検出回路1260への入力のところに存在する。これは、大きく減衰された信号または高レベルの減衰を有する信号とも称され得る。いくつかの動作条件の下で、AC信号の電圧レベルはVapplied*(Ccoupling)/(Ccoupling+Csensor)とすることができる。検出回路1260が、検出回路1260の入力端子のところに高レベルのAC信号(低減衰信号)が存在していることを検出した場合、センサー1220は十分に水和または活性化されていないため、マイクロコントローラ410に割り込みは送られない。例えば、検出回路1260の入力は、比較器であってよい。センサー1220が十分に水和(湿潤)されている場合、対向電極と基準電極との間に有効静電容量(例えば、図12の静電容量Cr-c)が形成され、基準電極と作用電極との間に有効静電容量(例えば、図12の静電容量Cw-r)が形成される。言い換えると、有効静電容量は、2つのノード間に形成される静電容量に関係し、実際のキャパシタが2つの電極の間の回路内に置かれていることを表さない。本発明の一実施形態において、ACソース1255からのAC信号は、静電容量Cr-cおよびCw-rによって十分に減衰され、検出回路1260は、検出回路1260の入力端子のところでACソース1255からの低レベルの、または大きく減衰されたAC信号の存在を検出する。本発明のこの実施形態は、センサー1120とセンサー電子機器デバイス1125との間の既存の接続部の利用によりセンサーへの接続部の数が低減されるので著しい。言い換えると、図11に開示されている機械スイッチは、センサー1120とセンサー電子機器デバイス1125との間のスイッチおよび関連する接続部を必要とする。センサー1120は、連続的にサイズを縮小し、コンポーネントをなくすことでこのサイズ縮小を達成しやすくなるので、機械スイッチをなくすと有利である。本発明の代替的実施形態において、AC信号が、異なる電極(例えば、対向電極または作用電極)に印加されるものとしてよく、本発明も同様の動作をすることができる。
上で指摘されているように、検出回路1260が、検出回路1260の入力端子に低レベルAC信号が存在していることを検出した場合、検出回路1260は、後から、減衰が低い高レベルAC信号が入力端子のところに存在していることを検出することができる。これは、センサー1220がセンサー電子機器デバイス1225から切断されていること、またはセンサーが正常に動作していないことを表す。センサーがセンサー電子機器デバイス1225から切断されている場合、ACソースは、減衰がほとんどないかまたは低いまま、検出回路1260の入力に結合され得る。上で指摘されているように、検出回路1260は、マイクロコントローラへの割り込みを発生することができる。この割り込みは、マイクロコントローラが受け取り、マイクロコントローラは、センサー電子機器デバイス1225内の1つまたは多数のコンポーネントまたは回路への電力を低減するか、または電力供給を停止することができる。これは、第2の割り込みと称することができる。ここでもまた、これは、センサー電子機器デバイス1225の電力消費を低減するのを、特にセンサー1220がセンサー電子機器デバイス1225に接続されていないときに助ける。
図12に示されている本発明の代替的実施形態において、AC信号は、参照番号1291によって例示されているように、基準電極1222に印加され、インピーダンス測定デバイス1277は、センサー1220内の一領域のインピーダンスを測定することができる。図からわかるように、この領域は、図12の点線1292によって示されているように、基準電極と作用電極との間の一領域であるものとしてよい。いくつかの動作条件の下で、インピーダンス測定デバイス1277は、測定されたインピーダンスがインピーダンス閾値または他の設定基準より低い値に減少した場合に信号を検出回路1260に送信することができる。これは、センサーが十分に水和されていることを表す。他の動作条件の下で、インピーダンス測定デバイス1277は、インピーダンスがインピーダンス閾値より高くなると、信号を検出回路1260に送信することができる。次いで、検出回路1260は、割り込みをマイクロコントローラ410に送る。本発明の別の実施形態では、インピーダンス測定デバイス1277は、割り込みまたは信号を直接マイクロコントローラに送ることができる。
本発明の代替的実施形態では、ACソース1255はDCソースで置き換えられ得る。DCソースが利用される場合、抵抗測定素子が、インピーダンス測定素子1277の代わりに利用され得る。抵抗測定要素を利用する本発明の一実施形態では、抵抗が抵抗閾値または設定基準を下回った後、抵抗測定要素は、センサーが十分に水和されていること、および電力がセンサーに印加され得ることを示す信号を、検出回路1260(点線1293によって表されている)にまたは直接的にマイクロコントローラに送信し得る。
図12に示されている本発明の実施形態では、検出回路1260が、ACソースからの低レベルの、または大きく減衰されたAC信号を検出した場合、割り込みが、マイクロコントローラ410に対して発生する。この割り込みは、センサーが十分に水和されていることを指示する。本発明のこの実施例において、割り込みに応答して、マイクロコントローラ410は、電圧または電流をセンサー1220に印加することをデジタル/アナログコンバータ420に指令するか、または行わせるためにデジタル/アナログコンバータ420に伝えられる信号を発生する。図6A、6B、または6Cまたはパルスの印加を説明している関連する文において上述されているパルスまたは短い持続時間のパルスの異なるシーケンスのどれかがセンサー1220に印加され得る。図からわかるように、DAC420からの電圧が、オペアンプ1275に印加されるものとしてよく、その出力がセンサー1220の対向電極1221に印加される。この結果、センサー信号が、センサー、例えば、センサーの作用電極1223によって生成される。割り込みによって識別されるように、センサーは十分に水和されているので、作用電極1223で生成されるセンサー信号は、グルコースを正確に測定している信号である。センサー信号は、センサー信号測定デバイス431によって測定され、センサー信号測定デバイス431は、そのセンサー信号をマイクロコントローラ410に送信し、そこで被験者の生理学的状態のパラメータが測定される。割り込みの発生は、センサーが十分に水和されていること、およびセンサー1220が正確なグルコース測定値を現在供給していることを表す。本発明のこの実施形態において、水和期間は、センサーのタイプおよび/またはメーカー、また被験者の体内への挿入または埋め込みへのセンサーの反応に依存し得る。図からわかるように、1つのセンサー1220は5分の水和時間を有し、1つのセンサー1220は1分、2分、3分、6分、または20分の水和時間を有するものとしてよい。ここでもまた、センサーに対して水和時間の許容可能な長さは何でもよいが、より短い時間が好ましい。
センサー1220が接続されているが、十分に水和または湿潤されていない場合、有効静電容量Cr-cおよびCw-rは、ACソース1255からのAC信号を減衰し得ない。センサー1120内の電極は、挿入前に乾燥しており、電極が乾燥しているため、2つの電極の間に良好な電気的経路(または導電経路)は存在しない。したがって、高レベルのAC信号または減衰の少ないAC信号は、そのまま、検出回路1260によって検出され、割り込みは発生し得ない。センサーが挿入されると、電極は、導電性の体液中に浸漬される。この結果、DC抵抗の低い漏れ経路が生じる。また、境界層キャパシタが、金属/流体界面に形成される。言い換えると、金属/流体界面の間にかなり大きな静電容量が形成され、この大きな静電容量は、センサーの電極の間に直列に接続される2つのキャパシタのように見える。これは、有効静電容量と称することができる。実際、電極の上にある電解質の導電度が測定される。本発明のいくつかの実施形態では、グルコース制限膜(GLM)は、インピーダンスブロッキングの電気効率をさらに示す。未水和のGLMであるとインピーダンスが高くなるが、高水分のGLMであるとインピーダンスは低くなる。正確なセンサー測定値を得るためには、低インピーダンスが望ましい。
図13Aは、本発明の一実施形態による、センサーを水和する方法を示している。本発明の一実施形態において、センサーがセンサー電子機器デバイスに物理的に接続され得る(1310)。接続の後、本発明の一実施形態では、タイマーまたはカウンターが起動されて、水和時間をカウントすることができる(1320)。水和時間が経過した後、信号は、センサー電子機器デバイス内のサブシステムに送られ(1330)、センサーへの電圧の印加を開始することができる。上述のように、本発明の一実施形態において、マイクロコントローラは、信号を受け取って、DACに電圧をセンサーに印加するように指令することができるか、本発明の別の実施形態において、スイッチがレギュレータに電圧をセンサーに印加させるための信号を受け取ることができる。水和時間は、5分、2分、10分であり、被験者、さらにはセンサーのタイプに応じて変化し得る。
本発明の代替的実施形態では、センサーがセンサー電子機器デバイスに接続された後に、AC信号(例えば、低電圧AC信号)がセンサー、例えば、センサーの基準電極に印加され得る(1340)。AC信号が印加され得るのは、センサーをセンサー電子機器デバイスに接続することでAC信号をセンサーに印加することができるからである。AC信号が印加された後、電圧が印加されるセンサー内の電極と他の2つの電極との間に有効静電容量が形成される(1350)。検出回路は、検出回路の入力にどのようなレベルのAC信号が存在するかを判定する(1360)。有効静電容量が電極の間に良好な導電路を形成し、その結果AC信号が減衰することで、低レベルAC信号(または減衰の大きいAC信号)が検出回路の入力のところに存在する場合、検出回路によって割り込みが発生し(1370)、割り込みがマイクロコントローラに送られる。
マイクロコントローラは、検出回路が発生した割り込みを受け取り、電圧をセンサーの電極、例えば、対向電極に印加することをデジタル/アナログコンバータに指令するか、または行わせる信号をデジタル/アナログコンバータに送信する(1380)。センサーの電極に電圧を印加するとその結果、センサーはセンサー信号1390を引き起こすかまたは発生する。センサー信号測定デバイス431は、発生したセンサー信号を測定し、そのセンサー信号をマイクロコントローラに送信する。マイクロコントローラは、作用電極に結合されている、センサー信号測定デバイスからセンサー信号を受信し(1395)、そのセンサー信号を処理して被験者または患者の生理学的特性測定値を抽出する。
図13Bは、本発明の一実施形態による、センサーの水和を検証するための追加の方法を示している。図13Bに示されている本発明の実施形態では、センサーがセンサー電子機器デバイスに物理的に接続される(1310)。本発明の一実施形態において、AC信号が、センサー内の電極、例えば、基準電極に印加される(1341)。あるいは、本発明の一実施形態において、DC信号が、センサー内の電極に印加される(1341)。AC信号が印加された場合、インピーダンス測定素子は、センサー内の一地点においてインピーダンスを測定する(1351)。あるいは、DC信号が印加された場合、抵抗測定素子は、センサー内の一地点において抵抗を測定する(1351)。抵抗またはインピーダンスが、それぞれ抵抗閾値またはインピーダンス閾値(他の設定基準)より低い場合、インピーダンス(または抵抗)測定素子は、検出回路に送信を行い(または信号を送信させることができ)(1361)、検出回路は、センサーが水和されていることを識別する割り込みをマイクロコントローラに送る。参照番号1380、1390、および1395は、図13Aおよび図13Bにおいて同じであるが、それは、同じ動作を表しているからである。
マイクロコントローラは、割り込みを受け取り、電圧をセンサーに印加するための信号をデジタル/アナログコンバータに送信する(1380)。本発明の代替的実施形態では、デジタル/アナログコンバータは、上述のように、電流をセンサーに印加することができる。センサー、例えば、作用電極は、患者の生理学的パラメータを表す、センサー信号を生成する(1390)。マイクロコントローラは、センサー信号測定デバイスからセンサー信号を受信し(1395)、センサー内の電極、例えば、作用電極でセンサー信号を測定する。マイクロコントローラは、センサー信号を処理して、被験者または患者の生理学的特性、例えば、患者の血糖値の測定値を抽出する。
図14Aおよび図14Bは、本発明の一実施形態による、センサーの水和を、センサーを安定化することと組み合わせる方法を例示している。図14Aに示されている本発明の一実施形態では、センサーは、センサー電子機器デバイスに接続されている(1405)。AC信号は、センサーの電極に印加される(1410)。検出回路は、検出回路の入力にどのようなレベルのAC信号が存在するかを判定する(1420)。検出回路は、低レベルのAC信号が入力のところに存在していると判定する場合(これはAC信号への減衰の高いレベルを表す)、割り込みが、マイクロコントローラに送られる(1430)。割り込みが、マイクロコントローラに送られると、マクロコントローラは、上で説明されているように、安定化シーケンス、すなわち、多数の電圧パルスをセンサーの電極に印加することを始めるか、または開始することを知る(1440)。例えば、マイクロコントローラは、デジタル/アナログコンバータに、3つの電圧パルス(+0.535ボルトの大きさを有する)をセンサーに印加することを行わせることができ、3つの電圧パルスのそれぞれの後に、電圧パルス(印加される1.07ボルトの大きさを有する)3つ分の期間が続く。これは、電圧の安定化シーケンスを送信するよりも好ましい場合がある。マイクロコントローラは、リードオンリーメモリ(ROM)またはランダムアクセスメモリ内のソフトウェアプログラムを実行することによってこれを行わせることができる。安定化シーケンスが実行を終了した後、センサーは、測定され、マイクロコントローラに送信される、センサー信号を発生することができる(1450)。
本発明の一実施形態において、検出回路は、閾値水和時間が経過した後でも、高レベルのAC信号が検出回路の入力(例えば、比較器の入力)に存在し続けていると判定する(1432)ことができる。例えば、閾値水和時間は、10分であるものとしてよい。10分が経過した後、検出回路は高レベルのAC信号が存在していることを依然として検出している可能性がある。この時点で、検出回路は、水和補助信号をマイクロコントローラに送信する(1434)ことができる。マイクロコントローラが水和補助信号を受信した場合、マイクロコントローラは、電圧パルスまたは一連の電圧パルスを印加してセンサーの水和を補助することをDACに行わせる信号を送信する(1436)ことができる。本発明の一実施形態において、マイクロコントローラは、安定化シーケンスまたは他の電圧パルスの一部を印加して、センサーの水和を補助することをDACに行わせる信号を送信することができる。本発明のこの実施形態において、電圧パルスを印加すると、その結果、低レベルのAC信号(または減衰の大きい信号)が検出回路において検出され得る(1438)。この時点で、検出回路は、ステップ1430で開示されているように、割り込みを送り、マイクロコントローラは、安定化シーケンスを開始することができる。
図14Bは、水和方法とフィードバックが安定化プロセスにおいて利用される安定化方法との組合せの第2の実施形態を示している。センサーは、センサー電子機器デバイスに接続される(1405)。AC信号(またはDC信号)がセンサーに印加される(1411)。本発明の一実施形態において、AC信号(またはDC信号)は、センサーの電極、例えば、基準電極に印加される。インピーダンス測定デバイス(または抵抗測定デバイス)は、センサーの指定された領域内のインピーダンス(または抵抗)を測定する(1416)。本発明の一実施形態において、基準電極と作用電極との間のインピーダンス(または抵抗)が測定され得る。測定されたインピーダンス(または抵抗)は、インピーダンスまたは抵抗値と比較され(1421)、これにより、そのインピーダンス(または抵抗)がセンサー内で十分に低く、センサーが水和されることを示していることを調べることができる。インピーダンス(または抵抗)がインピーダンス(または抵抗)値または他の設定基準(閾値であってもよい)より低い場合、マイクロコントローラに割り込みが送られる(1431)。割り込みを受け取った後、マイクロコントローラは、安定化シーケンスの電圧(または電流)をセンサーに印加することをDACに指令する信号をDACに送信する(1440)。安定化シーケンスがセンサーに印加された後、センサー信号が、センサー内に(例えば、作用電極に)生成され、センサー信号測定デバイスによって測定され、センサー信号測定デバイスによって送信され、マイクロコントローラによって受信される(1450)。センサーは水和され、安定化シーケンスの電圧がセンサーに印加されているので、センサー信号は、生理学的パラメータ(例えば、血糖)を正確に測定したものとなっている。
図14Cは、安定化方法および水和方法が組み合わされている本発明の第3の実施形態を示している。本発明のこの実施形態では、センサーは、センサー電子機器デバイスに接続される(1500)。センサーが、センサー電子機器デバイスに物理的に接続された後、AC信号(またはDC信号)は、センサーの電極(例えば、基準電極)に印加される(1510)。それと同時に、または同時ぐらいに、マイクロコントローラは、安定化電圧シーケンスをセンサーに印加する(1520)ことをDACに行わせる信号を送信する。本発明の代替的実施形態では、安定化電流シーケンスが、安定化電圧シーケンスの代わりに、センサーに印加され得る。検出回路は、検出回路の入力単位にどのようなレベルのAC信号(またはDC信号)が存在するかを判定する(1530)。検出回路の入力端子に、減衰が大きいAC信号(またはDC信号)を表す、低レベルAC信号(またはDC信号)が存在している場合、割り込みが、マイクロコントローラに送られる(1540)。マイクロコントローラは、安定化シーケンスをすでに開始しているので、マイクロコントローラは、割り込みを受け取り、センサーが十分に水和されていることを示す第1のインジケータを設定する(1550)。安定化シーケンスが完了した後、マイクロコントローラは、安定化シーケンスの完了を示す第2のインジケータを設定する(1555)。安定化シーケンス電圧を印加するとその結果、センサー、例えば作用電極は、センサー信号測定回路によって測定され、マイクロコントローラに送信される、センサー信号を生成する(1560)。安定化シーケンスが完了していることを示す第2のインジケータが設定され、水和が完了していることを示す第1のインジケータが設定された場合、マイクロコントローラは、センサー信号を利用する(1570)ことができる。これらのインジケータの一方または両方が設定されていない場合、マイクロコントローラは、センサー信号を利用できないが、それは、センサー信号が被験者の生理学的測定値の正確な測定値を代表し得ないからである。
上述の水和および安定化プロセスは、一般的に、より大きな連続的グルコース監視(CGM)方法の一部として使用され得る。連続的グルコース監視における現在の最先端技術は、もっぱら補助として使われる、すなわち、CGMデバイス(例えば、埋め込み型または皮下センサーを含む)から得られる読取り値は、臨床決定を下すために基準値なしでは使用できないということである。さらに、基準値は、例えば、BGメーターを使用して、指先採血から得なければならない。基準値が必要なのは、センサー/検知コンポーネントから利用可能な情報の量が制限されているからである。特に、処理のため検知コンポーネントによって現在提供されている唯一の情報は、生のセンサー値(すなわち、センサー電流またはIsig)とカウンター電圧であり、これは、対向電極と基準電極との間の電圧である(例えば、図5)。したがって、分析時に、生のセンサー信号が異常であるように思われる場合(例えば、信号が減少している場合)、この唯一の手段で、センサーの故障と使用者/患者体内の生理学的変化(すなわち、体内のグルコースレベルの変化)とを、指先採血を用いて基準グルコース値を取得することによって区別することができる。知られているように、基準指先採血も、センサーの較正に使用される。
本明細書で説明されている本発明の実施形態は、連続的グルコース監視の向上と改善を行い、結果として、より自律性の高いシステム、さらには関係するデバイスおよび方法を実現し、基準指先採血の要件を低くし、またはなくし、それによって、臨床決定を、高い信頼度レベルで、センサー信号だけから得られる情報に基づいて行えるようにすることを対象とする。本発明の実施形態によるセンサー設計の観点からは、そのような自律性は、電極冗長性、センサー診断、およびIsigおよび/またはセンサーグルコース(SG)融合を通じて達成され得る。
さらに以下で調べるように、冗長性は、複数の作用電極を(例えば、対向電極および基準電極に加えて)使用して患者の血糖(BG)レベルを示す複数の信号を発生することを通じて実現され得る。そして、複数の信号を使用して、(作用)電極の相対的ヘルス、センサーの全体的信頼性、および仮にあったとして較正基準値が必要になる頻度を評価することができる。
センサー診断は、センサーのヘルスをリアルタイムで調べられるようにする追加の(診断)情報を使用することを含む。この点に関して、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)から、異なる周波数におけるセンサーインピーダンスおよびインピーダンス関係パラメータの形態でそのような追加情報を得られることが発見されている。さらに、都合のよいことに、いくつかの周波数範囲について、インピーダンスおよび/またはインピーダンス関係データが実質的にグルコース独立であることがさらに発見されている。そのようなグルコース独立性により、ロバストで信頼性の高いセンサーグルコース値を(融合方法を通じて)生成することだけでなく、個別の電極の、またグルコース依存のIsigから実質的に独立しているセンサー全体の状態、ヘルス、寿命、および効率を評価することにも、さまざまなEISベースのマーカーまたはインジケータの使用が可能になる。
例えば、グルコース独立のインピーダンスデータの分析により、例えば、1kHzの実インピーダンス、1kHzの虚インピーダンス、およびナイキスト勾配に対する値を使用して、センサーがどれだけ速く水和し、データ収集に使用できるようになるかについて、センサーの効率に関する情報が得られる(以下でさらに詳しく説明する)。さらに、グルコース独立のインピーダンスデータからは、センサー膜表面上に存在し得る、グルコースがセンサー内を通過するのを一時的に妨げ、信号がディップすることを引き起こし得る、潜在的閉塞に関する情報が得られる(例えば、1kHzの実インピーダンスに対する値を使用して)。それに加えて、グルコース独立のインピーダンスデータからは、例えば、1kHz以上の周波数における位相角および/または虚インピーダンスに対する値を使用して長時間の着用時のセンサー感度損失--潜在的に挿入部位の局部的酸欠による--に関する情報が得られる。
電極冗長性およびEISを背景として、融合アルゴリズムを使用することで、それぞれの冗長電極についてEISによって提供される診断情報を受け取り、それぞれの電極の信頼性を独立して評価することができる。次いで、それぞれの独立した信号について信頼性の尺度である、重みを加えることができ、患者/被験者に見えるとおりのセンサーグルコース値を生成するために使用され得る単一の融合信号が計算され得る。
上記のことからわかるように、冗長性、EISを使用したセンサー診断、およびEISベースの融合アルゴリズムを組み合わせて使用することにより、CGMシステム全体の信頼性を現在利用可能なものに比べて高めることができる。冗長性は、少なくとも2つの点に関して有益である。第1に、冗長性があると、複数の信号を送ることによって単一の障害発生点のリスクが取り除かれる。第2に、単一の電極で十分であると思われる場合にも複数の(作用)電極を備えることによって、冗長電極の出力を主電極に対するチェックとして使用することができ、それによって、頻繁な較正の必要性を軽減し、場合によっては必要でなくすることもできる。それに加えて、EIS診断では、基準グルコース値(指先採血)を必要とすることなくそれぞれの電極のヘルスを自律的に精査し、それによって必要な基準値の数を減らせる。しかし、EIS技術およびEIS診断方法の使用は、冗長システム、すなわち、複数の作用電極を有するシステムに限定されない。むしろ、本発明の実施形態に関連して以下で説明されるように、EISは、単一および/または複数電極センサーと接続して使用すると都合がよい。
EISまたはACインピーダンス方法では、周期性を有する小振幅AC信号の印加へのシステム応答を調べる。これは、図15Aに図解で示されており、Eは印加される電位、Iは電流、およびインピーダンス(Z)はΔE/ΔIとして定義されている。しかし、インピーダンスは、本質的に、ΔE/ΔIとして数学的に単純に定義され得るが、これまで、EIS技術の連続的グルコース監視への応用の商業化に成功していない。これは、一部は、グルコースセンサーが非常に複雑なシステムであり、今までのところ、グルコースセンサーに対するEIS出力の複雑さを完全に説明することができる数学的モデルがまだ開発されていないことによる。
電気化学的インピーダンス分光法を記述するために使用される単純化された電気回路モデルの1つが図15Bに示されている。この図において、IHPはInner Helmholtz Plane(内部ヘルムホルツ面)の略であり、OHPはOuter Helmholtz Plane(外部ヘルムホルツ面)の略であり、CEは対向電極であり、WEは作用電極であり、Cdは二重層容量であり、Rpは分極抵抗であり、Zwはワールブルクインピーダンスであり、Rsは液抵抗である。後の4つの要素--二重層容量(Cd)、ワールブルクインピーダンス(Zw)、分極抵抗(Rp)、および液抵抗(Rs)--は、センサーの性能に関して重要な役割を果たし、低または高周波交流作動電位を印加することによって別々に測定され得る。例えば、ワールブルクインピーダンスは、電気化学系の拡散インピーダンス--もっぱら低周波インピーダンスである--に密接に関係し、したがって、すべての拡散制限のある電気化学的センサー内に存在する。したがって、これらの要素のうちの1つまたは複数をグルコースセンサーの1つまたは複数の要素および/または層に相関させることによって、EIS技術をセンサー診断ツールとして使用することができる。
知られているように、インピーダンスは、その大きさと位相に関して定義され得るものであり、大きさ(|Z|)は電圧差振幅と電流振幅との比であり、位相(θ)は電流が電圧より先に進んでいる位相ずれである。回路が直流(DC)のみで駆動される場合、インピーダンスは抵抗と同じである、すなわち、抵抗は、位相角がゼロである、インピーダンスの特別な場合である。しかし、複素量としてのインピーダンスは、その実部と虚部とで表すこともできる。この点で、実および虚のインピーダンスは、以下の式を使用してインピーダンスの大きさおよび位相から求めることができる。
実インピーダンス(ω)=大きさ(ω)×cos(位相(ω)/180×π)
虚インピーダンス(ω)=大きさ(ω)×sin(位相(ω)/180×π)
ただし、ωは大きさ(オーム)と位相(度)が測定される入力周波数を表す。一方のインピーダンスと他方の電流および電圧との関係--前者が後者の測定値に基づきどのように計算され得るかを含めて--については、本発明の実施形態において使用するために開発された特定用途向け集積回路(ASIC)を含むセンサー電子機器と関連してさらに詳しく以下で調べることにする。
図15Bに示されている回路モデルを続きとして使用すると、システム全体のインピーダンスは
として簡略化できる。
ただし、Zw(ω)はワールブルクインピーダンスであり、ωは角速度であり、jは虚数単位(電流と混同しないように、伝統的な「i」の代わりに使用する)、Cd、Rp、およびRsはそれぞれ二重層容量、分極抵抗、および液抵抗である(すでに定義されているとおりである)。
ワールブルクインピーダンスは、
として計算することができる。
ただし、Dは拡散率であり、Lはセンサー膜厚さであり、Cは過酸化物濃度であり、m:1/2は45°のナイキスト勾配に対応する。
ナイキストプロットは、グラフ表現であり、インピーダンスの実部(Real Z)は、その周波数帯上で虚部(Img Z)に対してプロットされる。図16Aは、ナイキストプロットの一般化された例を示しており、Xの値はインピーダンスの実部であり、Yの値はインピーダンスの虚部である。位相角は、インピーダンス点(X,Y)--大きさ|Z|を有するベクトルを定義する--とX軸とがなす角度である。
図16Aのナイキストプロットは、0.1Hzから1000MHzまでの選択された周波数で作用電極と対向電極との間にAC電圧をDC電圧(DCバイアス)とともに印加することによって生成される(すなわち、周波数掃引)。右から始めて、周波数は0.1Hzから高くなってゆく。それぞれの周波数で、実および虚インピーダンスが計算され、プロットされ得る。図示されているように、電気化学系の典型的なナイキストプロットは、変曲点のところで直線と交わる半円のような形状をとるものとしてよく、この半円と直線はプロットされたインピーダンスを示す。いくつかの実施形態において、変曲点でのインピーダンスは、ナイキストプロットで識別するのが最も容易であり、切片を定義することができるので、特に重要である。典型的には、変曲点は、X軸に近く、変曲点のXの値は、分極抵抗と液抵抗との和(Rp+Rs)を近似する。
図16Bを参照すると、ナイキストプロットは、典型的には、低周波領域1610と高周波数領域1620とに関して記述することができ、「より高い周波数」および「より低い周波数」というラベルは、相対的な意味で使用されており、制限することを意図していない。したがって、例えば、低周波領域1610は、例示的に、約0.1Hzから約100Hz(またはそれ以上の周波数)の周波数範囲について得られるデータ点を含み、高周波領域1620は、例示的に、約1kHz(またはそれ以下の周波数)から約8kHz(およびそれ以上の周波数)の周波数範囲について得られるデータ点を含み得る。低周波領域1610では、ナイキスト勾配は、ナイキストプロット内の低周波データ点の直線適合1630の傾きを表す。図示されているように、高周波領域1620では、虚インピーダンスの値は最小値であり、無視できるくらい小さいものであり得る。したがって、切片1600は、本質的に、より高い周波数(例えば、この場合にはおおよそ1kHzから8kHzの範囲内)の実インピーダンスの値である。図16Bでは、切片1600は、約25kオームである。
図16Cおよび図16Dは、グルコースセンサーが正弦波(すなわち、交流)作動電位にどのように応答するかを示している。これらの図において、GLMはセンサーのグルコース制限膜であり、APは接着促進剤であり、HSAはヒト血清アルブミンであり、GOXはグルコースオキシダーゼ酵素(層)であり、EdcはDC電位であり、EacはAC電位であり、C'peroxideはAC印加時の過酸化物濃度である。図16Cに示されているように、AC電位周波数、分子拡散率、および膜厚さの関数である、センサー拡散長が、膜(GOX)長さに比べて小さい場合、システムは、一定の位相角(すなわち、無限大)の比較的直線的な応答を与える。対照的に、拡散長が膜(GOX)長さに等しい場合、システム応答は有限となり、その結果、図16Dに示されているように、半円のナイキストプロットが得られる。後者は、通常、低周波EISについて当てはまり、非ファラデープロセスは無視できるくらい小さい。
EIS分析を実行する際に、さまざまな周波数のAC電圧、およびDCバイアスが、例えば、作用電極と基準電極との間に印加され得る。この点で、EISは、印加を単純なDC電流または単一周波数のAC電圧に制限している可能性のある以前の方法に対する改善となっている。一般的に、EISは、μHzからMHzの範囲内の周波数で実行され得るが、本発明の実施形態では、より狭い周波数範囲(例えば、約0.1Hzから約8kHzの範囲)で十分な場合がある。したがって、本発明の実施形態では、約0.1Hzから約8kHzの周波数範囲内に収まり、プログラム可能な振幅が少なくとも最大100mVまで、好ましくは約50mVであるAC電位を印加することができる。
上述の周波数範囲内では、比較的高い周波数--すなわち、一般的に約1kHzから約8kHzの範囲内に収まる周波数--が、センサーの静電容量に関する性質を精査するために使用される。膜の厚さおよび透磁率に応じて、比較的高い周波数のインピーダンスの典型的な範囲は、例えば、約500オームから25kオームとすることができ、位相に対する典型的な範囲は、例えば、0度から-40度の範囲内とすることができる。その一方で、比較的低い周波数--すなわち、一般的に約0.1Hzから約100Hzの範囲内に収まる周波数--は、センサーの抵抗に関する性質を精査するために使用される。ここで、電極設計および電極配線の程度に応じて、出力実インピーダンスに対する典型的な機能範囲は、例えば、約50kオームから300kオームの範囲とすることができ、位相に対する典型的な範囲は、約-50度から約-90度までの範囲とすることができる。上記の例示的な範囲は、例えば、図16Eおよび図16Fのボード線図に示されている。
すでに指摘されているように、「より高い周波数」および「より低い周波数」という言い回しは、絶対的な意味ではなく、互いに関して相対的に使用されることが意図されており、これらは、上述の典型的なインピーダンスおよび位相範囲とともに、例示的であり、制限することを意図していない。しかしながら、基本原理は、依然として同じであり、センサーの静電容量および抵抗に関する挙動は、周波数帯にわたるインピーダンスデータを分析することによって精査することができ、典型的には、より低い周波数は、抵抗のより大きい要素(例えば、電極など)に関する情報を与えるが、より高い周波数は、容量性要素(例えば、膜)に関する情報を与える。しかし、それぞれの場合における実際の周波数範囲は、例えば、電極のタイプ、電極の表面積、膜厚さ、膜の透磁率、および同様の特性を含む、全体的設計に依存する。高周波回路コンポーネントとセンサー膜との間、さらには低周波回路コンポーネントと例えば電極を含むファラデープロセスとの間の一般的対応関係に関しては図15Bも参照。
EISは、センサーが単一作用電極を備えるセンサーシステム、さらにセンサーが複数の(冗長)作用電極を備えるセンサーシステムにおいて使用され得る。一実施形態において、EISは、センサーの寿命(または老化)に関する貴重な情報を提供する。特に、異なる周波数において、インピーダンスの大きさおよび位相角は変化する。図17からわかるように、センサーインピーダンス--特に、RpとRsとの和--は、センサー寿命、さらには、センサーの動作状態を反映する。したがって、新しいセンサーは、通常、図17の異なるプロットからわかるように、使用済みセンサーに比べて高いインピーダンスを有する。この方法で、RpとRsの和のX値を考慮することによって、閾値を使用してセンサーの寿命がセンサーの指定動作寿命を超えたときにそのことを判定することができる。図17〜図21に示され、以下で説明されている実例に関して、変曲点における実インピーダンスの値(すなわち、Rp+Rs)が、センサーの老化、状態、安定化、および水和を判定するために使用されるが、代替的実施形態では、実インピーダンスに加えて、またはその代わりに、例えば、虚インピーダンス、位相角、ナイキスト勾配などの他のEISベースのパラメータを使用することができることに留意されたい。
図17は、センサーの耐用期間にわたるナイキストプロットの一例を示している。矢印で示されている点は、周波数帯上の掃引のそれぞれに対する各変曲点である。例えば、初期化前(時刻t=0において)、Rs+Rpは、8.5kオームより高く、初期化後(時刻t=0.5時間)、Rs+Rpの値は、8kオーム以下に低下した。次の6日間にわたって、Rs+Rpは減少し続け、指定されたセンサー寿命の終わりに、Rs+Rpは6.5kオームより低い値に下がった。このような例に基づき、閾値は、Rs+Rp値がセンサーの指定された動作寿命の終わりをいつ示すかを指定するように設定することができる。したがって、EIS技術を使用することで、センサーが指定された動作寿命を超えて再利用されることを許す抜け穴を閉じることができる。言い換えると、センサーがその指定された寿命に達した後に患者がセンサーの接続を切断し、その後再び再接続することによってセンサーを再利用しようとした場合に、EISは、異常に低いインピーダンスを測定し、それによって、システムがセンサーを拒絶し、患者に新しいセンサーを使用するよう求めることが可能になる。
それに加えて、EISは、センサーのインピーダンスがセンサーが摩耗しすぎて正常に動作できないことを示す低インピーダンス閾値レベル以下に下がったときにそのことを検出することによってセンサー故障を検出することを可能にし得る。次いで、システムは、指定された動作寿命の前にセンサーを終了することができる。以下でさらに詳しく調べるが、センサーインピーダンスも、他のセンサー故障(モード)を検出するために使用することができる。例えば、また、さまざまな理由からセンサーが低電流状態(すなわち、センサー故障)に入ったときに、センサーインピーダンスは特定の高インピーダンス閾値を超えて高くなり得る。例えばタンパク質もしくはポリペプチドファウリング、マクロファージ付着、または他の要因によりインピーダンスがセンサー動作時に異常に高くなる場合に、システムは、指定されたセンサー動作寿命の前にセンサーを終了することもできる。
図18は、本発明の実施形態により、センサー安定化のときに、またセンサーの寿命を検出する際に、EIS技術をどのように応用できるかを示している。図18のロジックは、すでに説明されている水和手順およびセンサー初期化手順が完了した後に1800から始まる。言い換えると、センサーは、十分に水和されているとみなされており、第1の初期化手順がセンサーを初期化するために適用されている。初期化手順は、すでに詳細な説明で説明されているように電圧パルスの形態をとるのが好ましい。しかし、代替的実施形態では、初期化手順に対して、異なる波形が使用され得る。例えば、正弦波が、パルスの代わりに使用され、これにより、センサーの湿潤または状態調節を加速することができる。それに加えて、波形の一部がセンサーの通常動作電圧より高い、すなわち、0.535ボルトであることが必要になることがある。
ブロック1810において、EIS手順が適用され、インピーダンスが、第1の高閾値と第1の低閾値の両方と比較される。第1の高および第1の低閾値の一例は、それぞれ、7kオームおよび8.5kオームであるが、これらの値は、必要に応じてより高くまたはより低く設定することができる。インピーダンス、例えば、Rp+Rsが第1の高閾値より高い場合、センサーは、ブロック1820で追加の初期化手順(例えば、1つまたは複数の追加のパルスの印加)を受ける。理想的には、センサーを初期化するために適用される全初期化手順の数は、センサーの電池寿命とセンサーを安定化するために要する総時間数の両方に対する影響を制限するように最適化される。したがって、EISを適用することによって、最初に実行する初期化を少なくすることができ、また初期化回数を徐々に増やしていってセンサーをすぐに使えるように初期化のちょうど正しい回数を求めることができる。同様に、代替的実施形態では、EISを水和手順に適用して、図13〜図14で説明されているように水和プロセスを補助するのに必要な初期化の回数を最小にすることができる。
他方、インピーダンス、例えば、Rp+Rsが第1の低閾値以下である場合、センサーは、ブロック1860で故障していると判定され、即座に終了させられる。センサーを交換し、水和プロセスを再開するようにメッセージが使用者に送られる。インピーダンスが高閾値と低閾値との間にある場合、センサーは、ブロック1830で通常動作を開始する。次いで、ロジックはブロック1840に進み、そこで、追加のEISを実行してセンサーの寿命をチェックする。始めてロジックがブロック1840に達すると、マイクロコントローラは、EISを実行して、センサーの寿命を計って、使用者が同じセンサーを抜き差しすることができるという抜け穴を閉じる。EIS手順の将来の繰り返しにおいてロジックがブロック1840に戻ると、マイクロプロセッサは、センサーの指定された寿命の間に固定された間隔でEISを実行する。好ましい一実施形態において、固定された間隔は、2時間毎に設定されるが、より長いまたはより短い周期を容易に使用することができる。
ブロック1850で、インピーダンスを高および低閾値の第2のセットと比較する。そのような第2の高および低閾値の一例は、それぞれ、5.5kオームおよび8.5kオームであるものとしてよいが、これらの値は、必要に応じてより高くまたはより低く設定することができる。インピーダンス値が第2の高および低閾値の範囲内に留まっている限り、ロジックはブロック1830に進み、そこで、センサーは指定されたセンサー寿命、例えば、5日に達するまで正常に動作している。もちろん、ブロック1840に関して説明されているように、EISは、指定されたセンサー寿命全体を通してスケジュールされた定期的間隔で実行される。しかし、EISが実行された後に、ブロック1850でインピーダンスが第2のより低い閾値以下に下がるか、または第2のより高い閾値以上に上昇したと判定された場合、センサーはブロック1860で終了する。さらなる代替的実施形態において、故障しているセンサーの測定値について二次的チェックを実行することができる。例えば、EISが、インピーダンスが第2の高および低閾値の範囲外となっていることを示した場合、ロジックは、第2のEISを実行して、閾値の第2のセットの条件が実際には満たされていないことを確認してから(また第1のEISが正しく実行されたことを確認してから)ブロック1860でセンサーの終わりを判定することができる。
図19は、上記の説明に基づいており、本発明の好ましい実施形態による診断EIS手順を実行するために可能なスケジュールを詳しく示している。それぞれの診断EIS手順は、オプションであり、必要とみなされたときに、診断EIS手順をスケジュールしないか、または1つまたは複数の診断EIS手順の任意の組合せを有することが可能である。図19のスケジュールは、点1900におけるセンサー挿入から始まる。センサー挿入の後に、センサーは、水和期間1910に入る。この水和期間は重要であるが、それは、十分に水和されていないセンサーは、すでに説明されているように、使用者に不正な読取り値を与える可能性があるからである。点1920における第1のオプションの診断EIS手順は、この水和期間1910でスケジュールされ、センサーが十分に水和されることを確実にする。第1の診断EIS手順1920は、センサーインピーダンス値を測定して、センサーが十分に水和されているかどうかを判定する。第1の診断EIS手順1920が、十分な水和を示す、インピーダンスが設定された高および低閾値の範囲内にあると判定した場合、センサーコントローラは、点1930においてセンサーの電源オンを許す。逆に、第1の診断EIS手順1920が、不十分な水和を示す、インピーダンスが設定された高および低閾値の範囲外にあると判定した場合、センサー水和期間1910は延長され得る。延長された水和の後に、センサーの電極間で特定の静電容量に達した後、このことはセンサーが十分に水和されていることを意味し、点1930で電源オンを行うことができる。
第2のオプションの診断EIS手順1940は、点1930でセンサーが電源オンになってから点1950でセンサー初期化が開始する前までにスケジュールされる。ここでスケジュールされると、第2の診断EIS手順1940は、センサーが1950で初期化の開始前に再利用されているかどうかを検出することができる。センサーが再利用されているかどうかを判定するテストについては、図18の説明で詳述された。しかし、図18に関する前の説明とは異なり、初期化が完了した後に老化テストが実行される場合に、老化テストが図19に初期化前に実行されるものとして示されている。図19で説明されているEIS手順の時刻表は、本出願の全体的な教示に影響を及ぼすことなく組み直すことができること、またステップのいくつかの順序を入れ替えることができることを理解することは重要である。すでに説明されているように、第2の診断EIS手順1940は、センサーのインピーダンス値を決定し、次いでそれを設定されている高および低閾値と比較することによって再利用されるセンサーを検出する。インピーダンスが設定されている閾値を外れている場合、センサーが再利用されていることを示しており、したがってセンサーは拒絶され、使用者に新しいセンサーと交換するよう求めることができる。これにより、古いセンサーを再利用したことで発生するおそれのある合併症が防止される。逆に、インピーダンスが設定された閾値の範囲内にある場合、センサー初期化1950は、新しいセンサーが使用されている確信の下で開始することができる。
第3のオプションの診断EIS手順1960は、点1950で初期化が開始した後にスケジュールされる。第3の診断EIS手順1960は、センサーのインピーダンス値をテストして、センサーが完全に初期化されているかどうかを判定する。第3の診断EIS手順1960は、センサーが完全に初期化されるのに必要な最短時間で実行されるべきである。このときに実行されると、センサーの寿命は、完全に初期化されたセンサーが未使用である時間を制限することによって最大化され、初期化過剰は、初期化が行われすぎる前にセンサーの完全な初期化を確認することによって回避される。初期化過剰を防止することは、初期化過剰の結果、電流が抑制されて不正確な読取り値を生じる可能性があるため重要である。しかし、初期化不足もまた問題であり、したがって、第3の診断EIS手順1960が、センサーが初期化不足であることを示している場合、センサーを完全に初期化するために点1970におけるオプションの初期化が実行され得る。初期化不足は、過剰な電流が生じる結果、実際のグルコース濃度に関係しなくなるため不都合である。初期化不足および初期化過剰は危険であるため、第3の診断EIS手順は、使用されるときにセンサーが正常に機能していることを確認する上で重要な役割を果たす。
それに加えて、オプションの定期的診断EIS手順1980は、センサーが完全に初期化された後の時間についてスケジュールされ得る。EIS手順1980は、任意の設定された間隔でスケジュールすることができる。以下でさらに詳しく説明されるように、EIS手順1980は、異常な電流または異常な対向電極電圧などの他のセンサー信号によってもトリガーされ得る。それに加えて、EIS手順1980を望みに応じて減らしてまたは増やしてスケジュールすることができる。好ましい実施形態では、水和プロセス、センサー寿命チェック、初期化プロセス、または定期的診断テストで使用されるEIS手順は、同じ手順である。いくつかの代替的実施形態では、EIS手順は、特定のインピーダンス範囲に注目する必要があるかどうかに応じてさまざまなEIS手順に対して短縮または延長することができる(すなわち、チェックされる周波数範囲を減らしたり増やしたりする)。定期的診断EIS手順1980は、インピーダンス値を監視して、センサーが最適なレベルで動作し続けているかどうかを確認する。
センサーは、汚染化学種、センサー寿命、または汚染化学種とセンサー寿命との組合せによりセンサー電流が低下した場合には最適なレベルで動作し得ない。特定の長さを超えて老化したセンサーは、もはや有用ではないが、汚染化学種によって損なわれたセンサーは場合によっては修復可能である。汚染化学種は、電極の表面積または検体および反応副産物の拡散経路を縮小する可能性があり、それによって、センサー電流が低下する。これらの汚染化学種が帯電し、特定の電圧の下で電極または膜表面に徐々に集まる。以前であれば、汚染化学種はセンサーの有用性を損なうであろう。現在では、定期的診断EIS手順1980が、汚染化学種の存在を示すインピーダンス値を検出した場合に、是正措置を講じることができる。是正措置がいつ講じられるかについては、図20に関して説明されている。したがって、定期的診断EIS手順1980は、極端に有用なものとなっているが、それは、場合によってはセンサー電流を通常レベルに回復し、センサーの寿命を延ばすことができるセンサー是正措置をトリガーし得るからである。センサー是正措置の2つの可能な実施形態が、図21Aおよび図21Bの説明において後述されている。
それに加えて、スケジュールされた診断EIS手順1980は、いくつかの事象が切迫していると判定されたときに一時的に中断されるか、または再スケジュールされ得る。そのような事象は、例えば、センサーを較正するために患者がテストストリップメーターを使用して自分のBGレベルを測定するとき、較正エラー、および再度テストストリップメーターを使用して患者のBGレベルを測定する必要があることを患者に警告するとき、または高血糖もしくは低血糖警告が発行されたが受領確認されていないときを含む、患者側でセンサー読取り値をチェックすることを必要とする状況を含み得る。
図20は、本発明の実施形態により診断EIS手順をセンサー是正措置と組み合わせる方法を示している。ブロック2000の診断手順は、図19で詳述されているように定期的診断EIS手順1980のどれかであってよい。この方法のロジックは、センサーのインピーダンス値を検出するために診断EIS手順がブロック2000で実行されたときに開始する。指摘されているように、特定の実施形態において、EIS手順は、DCバイアスと周波数が変化するAC電圧との組合せを印加し、EIS手順を実行することによって検出されるインピーダンスは、ナイキストプロット上にマッピングされ、ナイキストプロット内の変曲点は、分極抵抗と液抵抗との和を近似する(すなわち、実インピーダンス値)。ブロック2000の診断EIS手順がセンサーのインピーダンス値を検出した後、ロジックはブロック2010に移動する。
ブロック2010で、インピーダンス値を設定された高および低閾値と比較してそれが正常であるかどうかを判定する。ブロック2010で、インピーダンスが高および低閾値の設定された境界内にある場合、正常なセンサー動作が、ブロック2020で再開され、図20のロジックは、別の診断EIS手順がスケジュールされるときまで終了する。逆に、ブロック2010で、インピーダンスが異常である(すなわち、高および低閾値の設定された境界外にある)場合、ブロック2030の是正措置がトリガーされる。センサー寿命期間中に許容可能である高および低閾値の一例は、それぞれ、5.5kオームおよび8.5kオームであるが、これらの値は、必要に応じてより高くまたはより低く設定することができる。
ブロック2030の是正措置は、異常なインピーダンス値を引き起こした可能性のある、汚染化学種を除去するために実行される。好ましい実施形態では、是正措置は、作用電極と基準電極との間に逆電流または逆電圧を印加することによって実行される。是正措置の詳細は、図21に関してさらに詳しく説明される。ブロック2030で是正措置が実行された後、インピーダンス値はブロック2040で診断EIS手順によって再びテストされる。次いで、是正措置の成功は、ブロック2040の診断EIS手順からのインピーダンス値を設定された高または低閾値と比較したときにブロック2050で判定される。ブロック2010と同様に、インピーダンスが設定された閾値内にある場合、正常であるとみなされ、インピーダンスが設定された閾値を外れている場合、異常であるとみなされる。
センサーのインピーダンス値がブロック2050で正常な値に回復されたと判定された場合、正常なセンサー動作がブロック2020で行われる。インピーダンスがまだ正常でなく、いずれかのセンサー寿命が異常なインピーダンスの原因であるか、または是正措置が汚染化学種を除去するのに成功しなかったことを示している場合、センサーは、ブロック2060で終了する。いくつかの代替的実施形態では、センサーを直ちに終了する代わりに、センサーが、使用者に待機し、設定された期間が経過した後にさらなる是正措置を実行することを最初に要求するセンサーメッセージを生成することができる。この代替的ステップは、インピーダンス値が最初の是正措置が実行された後に高および低閾値の境界の範囲内にあるという状況に近づいているかどうかを判定するために別のロジックと組み合わせることができる。例えば、センサーインピーダンス値に変化が見られない場合、センサーは終了することを決定することができる。しかし、最初の是正措置の後にセンサーインピーダンス値がプリセットされた境界に近づいていて、それでもまだ、境界から外れている場合に、追加の是正措置を実行することが可能である。さらに別の代替的実施形態において、センサーは、指先採血のメーター測定を行ってセンサーが本当に故障しているかどうかを確認することによってセンサーを較正するように使用者に要求するメッセージを生成することができる。上記の実施形態はすべて、正確な読取り値を出力する故障センサーを使用者が使用することを防ぐように働く。
図21Aは、すでに述べたセンサー是正措置の一実施形態を示している。この実施形態において、汚染化学種によって形成される閉塞は、作用電極と基準電極との間のセンサーに印加される電圧を逆にすることによって除去される。逆にされたDC電圧は、帯電した汚染化学種を電極または膜表面から持ち上げて、拡散経路から不要物を除去する。不要物が除去された経路により、センサーの電流は正常レベルに復帰し、センサーは正確な読取り値を与えることができる。したがって、この是正措置は、他の何らかの形で有効なセンサーの交換に付随する時間と費用の負担を使用者から取り除く。
図21Bは、すでに言及されているセンサー是正措置の代替的実施形態を示している。この実施形態では、作用電極と基準電極との間に印加される逆にされたDC電圧がAC電圧と結合されている。AC電圧を加えることによって、表層に強く吸着されているいくつかの化学種は、AC電圧がその力を電極からさらに遠くまで及ぼし、センサーのすべての層を貫通することができるので除去され得る。AC電圧は、任意の数の異なる波形をとり得る。使用することが可能な波形のいくつかの例として、方形波、三角波、正弦波、またはパルスが挙げられる。前の実施形態と同様に、汚染化学種が除去された後、センサーは、正常な動作に戻り、センサーの寿命と精度の両方が改善される。
上記の例は、もっぱらセンサー診断における実インピーダンスデータの使用を示しているが、本発明の実施形態は、センサー診断手順における他のEISベースの、また実質的に検体独立の、パラメータ(実インピーダンスに加えて)の使用も対象としている。例えば、すでに述べているように、例えば、1kHzの実インピーダンスおよび1kHzの虚インピーダンスに対する値などの、(実質的に)グルコース独立のインピーダンスデータ、さらにはナイキスト勾配の分析から、水和し、データ収集に使用できるようになるまでの速さについてセンサーの効率に関する情報が得られる。さらに、例えば1kHzの実インピーダンスに対する値などの、(実質的に)グルコース独立のインピーダンスデータから、センサー膜表面上に存在し得る、グルコースがセンサー内を通過するのを一時的に妨げ、信号がディップすることを引き起こし得る、潜在的閉塞に関する情報が得られる。
それに加えて、例えば、1kHz以上の周波数におけるより高い周波数の位相角および/または虚インピーダンスに対する値などの、(実質的に)グルコース独立のインピーダンスデータから、長時間の着用時のセンサー感度損失に関する情報が得られるが、この感度損失は潜在的に挿入部位の局部的酸欠によるものとしてよい。この点で、酸欠によって引き起こされる感度損失に対する基本的なメカニズムについて以下で説明することができる。局部の酸素が欠乏すると、センサー出力(すなわち、IsigおよびSG)は、グルコースではなく酸素に依存し、したがって、センサーはグルコースに対する感度を失う。0.1Hzの実インピーダンス、対向電極電圧(Vcntr)、およびIsigにおけるEIS誘導スパイクを含む、他のマーカーも、酸欠によって引き起こされる感度損失の検出に使用され得る。さらに、冗長センサーシステムにおいて、2つまたはそれ以上の作用電極の間の1kHzの実インピーダンス、1kHzの虚インピーダンス、および0.1Hzの実インピーダンスの相対的差を、バイオファウリングによる感度損失の検出に使用することができる。
本発明の実施形態によれば、EISベースのセンサー診断は、少なくとも3つの主要因、すなわち、潜在的センサー故障モードである(1)信号始動、(2)信号ディップ、および(3)感度損失のうちの1つまたは複数に関係するEISデータの考察および分析を伴う。著しいのは、パラメータが実質的に検体独立である場合に、そのような診断分析および手順で使用されるインピーダンス関係パラメータの大半が1つの周波数で、または周波数範囲内で調べることができるというここでの発見により、患者の体内の検体のレベルとは無関係にセンサー診断手順を実行できることである。したがって、EISベースのセンサー診断は、例えば、検体に依存するIsigの大きな変動によってトリガーされ得るが、そのようなセンサー診断手順において使用されるインピーダンス関係パラメータは、検体のレベルとはそれ自体実質的に無関係である。以下でさらに詳しく調べるが、グルコースがEISベースのパラメータの大きさ(または他の特性)に影響を及ぼすと見ることができる状況の大半において、そのような効果は、通常、例えば、IC内のソフトウェアを介して、測定値から取り除くことができるくらい十分に小さい--例えば、EISベースの測定とそれに対するグルコースの効果との間の差が少なくとも一桁である--効果であることもわかっている。
定義により、「始動」は、挿入後の最初の数時間(例えば、t=0〜6時間)の間のセンサー信号の完全性を指す。例えば、電流デバイスにおいて、挿入後の最初の2時間の間の信号は、信頼できないものとみなされ、したがって、センサーグルコース値は、患者/使用者から隠される。センサーが水和に長時間を要する状況では、センサー信号は、挿入後数時間は低い。EISの使用により、センサーが挿入された後すぐに追加のインピーダンス情報が利用可能である(EIS手順を実行することによって)。この点で、全インピーダンスの式が、1kHzの実インピーダンスを使用して低始動検出の背後にある原理を説明するために使用され得る。比較的高い周波数--この場合、1kHz以上--では、虚インピーダンスは非常に小さく(生体内データで確認されるように)、全インピーダンスは
に減少する。
センサー湿潤が徐々に完了すると、二重層容量(Cd)が増大する。その結果、全インピーダンスは、上記の式で示されているように、全インピーダンスはCdに反比例するので、減少する。これは、例えば、図16Bに示されている実インピーダンスの軸上の切片1600の形態で示される。重要なのは、1kHzの虚インピーダンスも、同じ目的に使用することができることであり、これは容量成分も含み、また容量成分に反比例する。
低始動検出に対する別のマーカーは、ナイキスト勾配であり、これは、比較的低い周波数のインピーダンスだけに依存し、次いで、これは全インピーダンスのワールブルクインピーダンス成分に対応する(例えば、図15Bを参照)。図22は、正常に機能しているセンサーに対するナイキストプロットを示しており、矢印Aは、t=0から始まる、時間の進行、すなわち、センサー着用時間を示す。したがって、比較的低い周波数でのEISは、センサー挿入のすぐ後(t=0)に実行され、これは第1の(ナイキスト)勾配を有する第1の直線適合2200でプロットされる実および虚インピーダンスデータを生成する。t=0の後の時間間隔において、第1のナイキスト勾配より大きい第2の(ナイキスト)勾配を有する第2の直線適合2210を生成する第2の(より低い)周波数掃引が実行され、同様のことが続けられる。センサーの水和が進むにつれ、ナイキスト勾配は増大し、接点は減少し、直線2200、2210などで反映されるように、より急勾配になり、Y軸に近づく。低始動検出に関連して、臨床データは、典型的にはセンサーの挿入および初期化の後のナイキスト勾配の劇的な増大があり、その後特定のレベルに安定化することを示している。これに対する1つの説明は、センサーが徐々に湿潤するにつれ、化学種拡散率、さらには濃度が、劇的な変化を受けるというものであり、これはワールブルクインピーダンスに反映される。
図23Aにおいて、第1の作用電極WE1に対するIsig2230は、予想より低く(約10nAで)始まり、第2の作用電極WE2に対するIsig2240に追いつくのにある程度の時間を要する。したがって、この特定の例では、WE1は、低始動を有するものとして指定される。EISデータは、この低始動を2つの仕方で反映する。第1に、図23Aに示されているように、WE1の1kHz(2235)の実インピーダンスは、WE2の1kHzの実インピーダンス2245よりかなり高い。第2に、WE2に対するナイキスト勾配(図23C)と比較したときに、WE1に対するナイキスト勾配(図23B)は、より低く始まり、より大きな切片2237を有し、安定化するのにさらに時間を要する。後で説明するように、これら2つのシグネチャ--1kHzの実インピーダンスとナイキスト勾配--を融合アルゴリズムにおける診断入力として使用して、融合信号を計算するときに2つの電極のうちのどちらがより大きな重みを有することができるかを決定することができる。それに加えて、これらのマーカーのうちの一方または両方を診断手順で使用して、センサーが全体として許容可能かどうか、または終了して交換すべきかどうかを判定することができる。
定義により、信号(またはIsig)ディップは、たいてい事実上一時的、例えば、数時間程度である、低センサー信号の場合を指す。そのような低信号は、例えば、センサー表面上の生物学的閉塞の何らかの形態によって、または挿入部位に印加される圧力(例えば、横になって寝ている間の)によって引き起こされ得る。この期間中、センサーデータは、信頼できないものとみなされるが信号は最終的に復元する。EISデータにおいて、このタイプの信号ディップ--患者の身体内の血糖の変化によって引き起こされるものとは反対に--は、図24に示されているように1kHzの実インピーダンスデータに反映される。
特に、図24において、第1の作用電極WE1に対するIsig2250と第2の作用電極WE2に対するIsig2260の両方が、左端で約25nAから始まる(すなわち、6pmで)。時間が進むにつれ、両方のIsigが変動するが、これはセンサーの付近のグルコース変動を反映する。最初の12時間かそこらの間(すなわち、午前6時ぐらいまで)、各1kHzの実インピーダンス2255、2265のように、両方のIsigはかなり安定している。しかし、約12時間から18時間までの間--すなわち、午前6時から正午までの間--では、WE2に対するIsig2260は、ディップを開始し、次の数時間の間、午後9時くらいまで、下降の傾向を続ける。この期間中、WE1にするIsig2250は、ある程度のディッピングも示すが、Isig2250は、WE2に対するIsig2260に比べてかなり安定しており、またディップは相当小さい。WE1およびWE2に対するIsigの挙動も、各1kHzの実インピーダンスデータに反映される。したがって、図24に示されているように、上記の期間中に、WE1に対する1kHzの実インピーダンス(2255)はかなり安定を保つが、WE2に対する1kHzの実インピーダンス(2265)では顕著な増加がある。
定義により、感度損失は、センサー信号(Isig)が長い期間では低くなり応答しなくなる、通常は復元可能でない場合を指す。感度損失は、さまざまな理由で発生し得る。例えば、電極被毒は、作用電極の活性表面積を大幅に減らし、それによって、電流の振幅をひどく制限する。感度損失は、挿入部位における、低酸素、または酸欠によっても生じ得る。それに加えて、感度損失は、センサー膜を通るグルコースおよび酸素の両方の通過を制限するいくつかの形態の極端な表面閉塞(すなわち、生物学的または他の要因によって引き起こされるより永続的な形態の信号ディップ)によって生じる可能性があり、それによって、電極内に電流を発生する化学反応の数/頻度を減らし、最終的に、センサー信号(Isig)を低下させる。上で述べた感度損失のさまざまな原因は、短期的(7〜10日間の着用)と長期的(6ヶ月間の着用)の両方のセンサーに当てはまることに留意されたい。
EISデータにおいて、感度損失には、位相の絶対値(|位相|)と虚インピーダンスの絶対値(|虚インピーダンス|)の増大が比較的高い周波数範囲(例えば、それぞれ128Hz以上、および1kHz以上)で先行することが多い。図25Aは、センサー電流2500がグルコースに応答する--すなわち、Isig2500がグルコースの変動に追随する--が、例えば1kHzの実インピーダンス2510、1kHzの虚インピーダンス2530、および約128Hz以上の周波数に対する位相(2520)などの、関連するすべてのインピーダンス出力は、定常状態にあり、実質的にグルコース独立である、正常に機能しているグルコースセンサーの一例を示している。
特に、図25Aの上のグラフは、最初の数時間後に、1kHzの実インピーダンス2510が約5kオームでかなりの定常状態を保つ(1kHzの虚インピーダンス2530は約-400オームでかなりの定常状態を保つ)ことを示している。言い換えると、1kHzでは、実インピーダンスデータ2150および虚インピーダンスデータ2530は、実質的にグルコース独立であり、これらは、分析対象の特定のセンサーのヘルス、状態、および最終的に、信頼性に対するシグネチャ、または独立したインジケータとして使用され得る。しかし、すでに述べたように、異なるインピーダンス関係パラメータは、異なる周波数範囲においてグルコース独立性を示すものとしてよく、範囲は、それぞれの場合において、全体的センサー設計、例えば、電極のタイプ、電極の表面積、膜の厚さ、膜の透磁率などに依存し得る。
したがって、図25Bの例--90%の短いチューブレス電極設計の場合--では、上のグラフは、ここでもまた、センサー電流2501が、グルコースに応答すること、および最初の数時間の後に、1kHzの実インピーダンス2511は約7.5kオームでかなりの定常状態を保つことを示している。図25Bの下のグラフは、0.1Hz(2518)と1kHz(2511)との間の周波数に対する実インピーダンスデータを示している。これからわかるように、0.1Hz(2518)における実インピーダンスデータは、まったくグルコース依存である。しかし、参照番号2516、2514、および2512で示されているように、実インピーダンスは、周波数が0.1Hzから1kHzまで高くなるにつれ、すなわち、インピーダンスデータを測定する際の周波数が1kHzに近ければ近いほど、ますますグルコース独立になる。
図25Aを再び参照すると、真ん中のグラフは、比較的高い周波数における位相2520が、実質的にグルコース独立であることを示している。しかし、分析対象のセンサーに対するこのパラメータ(位相)に関連する「比較的高い周波数」は、128Hz以上の周波数を意味することに留意されたい。この点で、グラフは、128Hzから8kHzまでの範囲のすべての周波数に対する位相は、図示されている期間全体にわたって安定していることを示している。その一方で、図25Cの下のグラフを見ると、128Hz(以上)の位相2522は安定しているが、位相2524は次第に128Hzより低くなっていく周波数において変動する--すなわち、ますますグルコース依存になり、程度も変化する--ことがわかる。図25Cの例に対する電極設計は、図25Bで使用されているものと同じであること、および前者の上のグラフは、後者の上のグラフと同一であることに留意されたい。
図26は、挿入部位における酸欠による感度損失の一例を示す図である。この場合、挿入部位は、4日目の直後(図26の暗色垂直線によって示されている)に酸欠になり、センサー電流2600が低くなり、応答しなくなる。1kHzの実インピーダンス2610は安定したままであり、センサーに物理的閉塞が生じていないことを示している。しかし、各下向きの矢印によって示されているように、比較的高い周波数の位相2622および1kHzの虚インピーダンス2632の変化は、感度損失と呼応しており、このタイプの損失が挿入部位における酸欠によるものであることを示している。特に、図26は、より高い周波数(2620)における位相および1kHzの虚インピーダンス(2630)は、センサーが感度を失う前に--暗色垂直線で示されている--より負になり、センサー感度損失が続くと下に向かう傾向を続ける。したがって、上で指摘されているように、この感度損失に、比較的高い周波数範囲(例えば、それぞれ128Hz以上、および1kHz以上)における位相の絶対値(|位相|)と虚インピーダンスの絶対値(|虚インピーダンス|)の増大が先行するか、または感度損失は、この増大によって予測される。
上で説明されているシグネチャは、生体外テストによって検証することができ、その一例は図27に示されている。図27は、センサーの生体外テストの結果を示しており、そこでは異なるグルコース濃度における酸欠がシミュレートされている。上のグラフでは、Isigは、グルコース濃度が100mg/dl(2710)から200mg/dl(2720)、300mg/dl(2730)、400mg/dl(2740)と上昇し、次いで200md/dl(2750)まで下がって戻るときにグルコース濃度とともに変動している。下のグラフでは、比較的高い周波数における位相は、一般的に安定しており、それがグルコース独立であることを示している。しかし、例えば、0.1% O2などの非常に低い酸素濃度では、比較的高い周波数の位相は、丸で囲まれている領域と矢印2760、2770で示されているように、変動する。変動の大きさおよび/または方向(すなわち、正または負)は、さまざまな要因に依存することに留意されたい。例えば、グルコース濃度対酸素濃度の比が高ければ高いほど、位相の変動の大きさは高くなる。それに加えて、特定のセンサー設計、さらにはセンサーの寿命(すなわち、埋め込み後の時間で測定されるような)は、そのような変動に影響を及ぼす。したがって、例えば、センサーが古ければ古いほど、摂動の影響を受けやすい。
図28A〜図28Dは、冗長作用電極WE1およびWE2で酸欠によって引き起こされる感度損失の別の例を示している。図28Aに示されているように、1kHzの実インピーダンス2810は、センサー電流2800が変動し、最終的に応答しなくなるとしても定常状態にある。また、前のように、1kHzの虚インピーダンス2820の変化は、センサーの感度損失と呼応している。しかし、それに加えて、図28Bは、0.105Hzにおける実インピーダンスデータおよび虚インピーダンスデータ(それぞれ、2830および2840)を示している。後者は、「0.1kHzデータ」とより一般的に称され得るもので、0.1kHzにおける虚インピーダンスはかなりの定常状態にあるように見えるが、0.1kHzの実インピーダンス2830は、センサーが感度を失うにつれかなり増大することを示している。さらに、図28Cに示されているように、酸欠による感度損失があると、Vcntr2850は1.2ボルトにレールする。
要するに、図は、酸欠によって引き起こされる感度損失が、より低い1kHzの虚インピーダンス(すなわち、後者はより負になる)、より高い0.105Hzの実インピーダンス(すなわち、後者はより正になる)、およびVcntrレールと結び付けられるという発見を示している。さらに、酸欠プロセスおよびVcntrレールは、電気化学的回路内の静電容量成分の増大と結び付けられることが多い。後で説明する診断手順のいくつかにおいて、0.105Hzの実インピーダンスは、この比較的低い周波数の実インピーダンスデータが検体依存であり得るように見えるため、使用され得ないことに留意されたい。
最後に、図28A〜28Dの例に関連して、1kHz以上の周波数のインピーダンスの測定は、典型的には、IsigにおいてEIS誘導スパイクを引き起こすことに留意されたい。これは、図28Dに示されており、WE2に対する生のIsigは、時間に関してプロットされている。スパイクが始まったときのIsigの大幅な増大は、二重層容量充電による、非ファラデープロセスである。したがって、酸欠によって引き起こされる感度損失も、上で説明されているように、より低い1kHzの虚インピーダンス、より高い0.105Hzの実インピーダンス、およびVcntrレールに加えて、より高いEIS誘導スパイクと結び付けられ得る。
図29は、感度損失の別の例を示している。この場合は、図24と関連して上で説明されているIsigディップの極端なバージョンとして考えることができる。ここで、センサー電流2910は、挿入時から低いものとして観察され、挿入手順に問題があり、その結果電極閉塞が生じたことを示している。1kHzの実インピーダンス2920は、著しく高いが、比較的高い周波数の位相2930および1kHzの虚インピーダンス2940は、両方とも、図25Aに示されている正常に機能しているセンサーに対する同じパラメータ値と比較したときにかなり大きく負である値にシフトされている。比較的高い周波数の位相2930および1kHzの虚インピーダンス2940は、感度損失が酸欠によるものであり、次いで酸欠はセンサー表面の閉塞によって引き起こされた可能性があることを示している。
図30A〜図30Dは、別の冗長センサーシステムに対するデータを示しており、そこでは、2つまたはそれ以上の作用電極の間の1kHzの実インピーダンスと1kHzの虚インピーダンス、さらには0.1Hzの実インピーダンスの相対的差を、バイオファウリングによる感度損失の検出に使用することができる。この例では、WE1は、WE2に対するより高い1kHzの実インピーダンス3010、より低い1kHzの虚インピーダンス3020、および0.105kHzにおけるかなり高い実インピーダンス(3030)から明らかなように、WE2に比べて大きな感度損失を示している。しかし、それに加えて、この例では、Vcntr3050はレールしない。さらに、図30Dに示されているように、生のIsigデータにおけるスパイクの高さは、時間が進行してもあまり変化しない。これは、バイオファウリングによる感度損失に関して、Vcntrレールとスパイクの高さの増大とが相関していることを示している。それに加えて、生のIsigデータにおけるスパイクの高さは時間とともにあまり変化しないという事実は、回路の容量成分が時間とともに著しく変化することはなく、したがってバイオファウリングによる感度損失が回路の抵抗成分(すなわち、拡散)に関係することを示している。
上で説明されているインピーダンス関係パラメータのうちのさまざまなものが、個別に、または組み合わせて、(1)EISベースのセンサー診断手順、および/または(2)より信頼性の高いセンサーグルコース値を生成するための融合アルゴリズムへの入力として使用され得る。前者に関して、図31は、EISベースのデータ--すなわち、インピーダンス関係パラメータ、または特性--が、センサーが正常に動作しているかどうか、または交換すべきかどうかをリアルタイムで判定するために診断手順でどのように使用できるかを示している。
図31の流れ図に示されている診断手順は、分析対象の特定のセンサーに適切である限り、例えば、1時間毎、30分毎、10分毎、または他の任意の時間間隔--連続的間隔を含む--などの周期的間隔でのEISデータの収集に基づく。それぞれのそのような間隔において、周波数帯全体(すなわち、「完全掃引」)についてEISが実行されるか、または選択された周波数範囲、または単一周波数であっても、実行され得る。したがって、例えば、1時間毎のデータ収集方式では、EISは、μHzからMHzの範囲内の周波数で実行されるか、または上で説明されているように、例えば、約0.1Hzから約8kHzなどの、周波数のより狭い範囲で実行され得る。本発明の実施形態では、EISデータ収集は、完全掃引とより狭い範囲のスペクトルとで交互に、または他の方式に従って実装され得る。
EIS実装の時間周波数およびデータ収集は、さまざまな要因によって決定され得る。例えば、EISのそれぞれの実装では、特定の量の電力を消費し、この電力は、典型的にはセンサーの電池、すなわち、後で説明されるASICを含む、センサー電子機器を動作させる電池によって供給される。したがって、電池容量は、残りのセンサー寿命とともに、EISが動作する回数、さらにはそのような動作毎にサンプリングされた周波数の幅を決定するのに役立ち得る。それに加えて、本発明の実施形態では、特定の周波数でのEISパラメータ(例えば、1kHzでの実インピーダンス)は、第1のスケジュール(例えば、数秒に1回、または数分に1回)に基づき監視されるが、他のパラメータ、および/または他の周波数における同じパラメータは、第2のスケジュール(例えば、頻度を減らして)に基づき監視され得る状況を企図している。これらの状況において、診断手順を特定のセンサーおよび要件に合わせて手直しし、これにより、電池電力を温存し、不要な、および/または冗長なEISデータ収集を回避することができる。
本発明の実施形態において、図31に示されているような診断手順は、センサーのリアルタイム監視を実行するために実装された一連の個別の「テスト」を伴うことに留意されたい。複数のテスト、またはマーカー--「マルチマーカー」とも称される--は、EISが動作する毎に(すなわち、EIS手順が実行される毎に)、例えば、センサーが故障しているか、または故障しつつあるかを含む、センサーの状態もしくは品質を検出するために使用することができる、複数のインピーダンスベースのパラメータ、または特性に関するデータが収集され得るので実装される。センサー診断を実行する際に、故障を示すことができる診断テストがあり得るが、他の診断は、故障がないことを示し得る。したがって、複数のインピーダンス関係パラメータが利用可能であること、およびマルチテスト手順の実装は、これらの複数のテストのうちのいくつかは他のテストのうちのいくつかに対する妥当性チェックとして働き得るので、有益である。したがって、マルチマーカー手順を使用するリアルタイム監視は、ある程度の組み込み冗長性を含み得る。
上記を念頭に置き、図31に示されている診断手順のロジックは、EISデータを入力として供給するために、センサーが挿入され/埋め込まれ、EIS実行が行われた後に、3100から始まる。3100において、EISデータを入力として使用することにより、最初に、センサーがまだ適所にあるかどうかが判定される。そのため、|Z|勾配が、テストされる周波数帯域(または範囲)にわたって一定であることが判明し、および/または位相角が約-90°である場合に、センサーがもはや適所にないと判定され、例えば、患者/使用者に、センサー引き出しが生じていることを示す警告が送信される。センサーの引き出しを検出するための本明細書で説明されている特定のパラメータ(および各値)は、センサーが身体から外に出され、膜がもはや水和されなくなると、インピーダンススペクトル応答がちょうどキャパシタのように見えるという発見に基づく。
センサーがまだ適所にあると判定された場合、ロジックはステップ3110に進み、センサーが適切に初期化されているかどうかを判定する。図示されているように、「Init. Check」が、(i)1kHzで|(Zn-Z1)/Z1|>30%であるかどうかを、ただし式中、Z1は最初に測定された実インピーダンスであり、Znは上で説明されているように次の間隔における測定されたインピーダンスであるとして、また(2)位相角が0.1Hzで10°より大きいかどうかを、判定することによって実行される。これらの質問のいずれか1つに対する答えが「yes」である場合、テストは満足のいくものである、すなわち、テスト1は不合格でない。そうでない場合、テスト1は、不合格としてマークされる。
ステップ3120で、テスト2は、位相角-45°で、2つの連続するEIS動作の間の周波数の差(f2-f1)は、10Hzより大きい。ここでもまた、「No」の答えは、不合格としてマークされ、そうでない場合、テスト2は、合格している。
ステップ3130におけるテスト3は、水和テストである。ここで、電流インピーダンスZnが1kHzにおける初期化後インピーダンスZpiより小さいかどうかの問い合わせがある。もしそうであれば、このテストは合格であり、そうでなければ、テスト3は、不合格としてマークされる。ステップ3140におけるテスト4も水和テストであるが、このときにはより低い周波数である。したがって、このテストでは、初期化後のセンサーの動作時にZnが0.1Hzで300kオームより小さいかどうかを尋ねる。ここでもまた、「No」の答えは、センサーがテスト4に失敗したことを示す。
ステップ3150において、テスト5は、低周波ナイキスト勾配が、0.1Hzから1Hzまで全体的に増大しているかどうかを問い合わせる。すでに説明されているように、正常に動作しているセンサーの場合、比較的低い周波数のナイキスト勾配は時間の経過とともに増大してゆくべきである。したがって、このテストは、問い合わせに対する答えが「yes」であれば合格であり、そうでなければ、テストは不合格としてマークされる。
ステップ3160は、診断手順のこの実施形態に対する最後のテストである。ここで、問い合わせは、実インピーダンスが全体的に減少しているかどうかというものである。ここでもまた、すでに説明されたように、正常に動作しているセンサーでは、時間が経過するにつれ、実インピーダンスは減少してゆくべきであることが期待される。したがって、ここでの「Yes」の答えは、センサーが正常に動作していることを意味し、そうでなければ、センサーはテスト6に不合格である。
6つのテストすべてが実行された後、センサーが正常に動作しているかどうか、または故障しているかどうかに関する決定が3170で下される。この実施形態では、センサーは、6つのテストのうちの少なくとも3つに合格した場合に正常に動作している(3172)と判定される。言い換えると、故障している(3174)と判定されるためには、センサーは、6つのテストのうちの少なくとも4つで不合格になっていなければならない。いくつかの代替的実施形態では、センサー故障に対して正常な動作を評価するために異なるルールが使用され得る。それに加えて、本発明の実施形態では、テストのそれぞれに重みを付けることができ、センサー動作全体を判定する際に(正常対故障)、割り当てられた重みは、例えば、そのテストの重要性、またはそのテストについて問い合わされる特定のパラメータの重要性を反映する。例えば、1つのテストに別のテストの2倍の重み、ただし、第3のテストの重みの半分の重みを付ける、などとすることができる。
他の代替的実施形態では、それぞれのテストについて異なる数のテストおよび/またはEISベースのパラメータの異なるセットが使用され得る。図32Aおよび図32Bは、7つのテストを含むリアルタイム監視の診断手順の一例を示している。図32Aを参照すると、ロジックは、センサーが挿入され/埋め込まれ、EIS手順が実行された後に、3200から始まり、EISデータを入力として供給することがわかる。3200において、EISデータを入力として使用することにより、最初に、センサーがまだ適所にあるかどうかが判定される。そのため、|Z|勾配が、テストされる周波数帯域(または範囲)にわたって一定であることが判明し、および/または位相角が約-90°である場合に、センサーがもはや適所にないと判定され、例えば、患者/使用者に、センサー引き出しが生じていることを示す警告が送信される。その一方で、センサーが、適所にあると判定された場合、ロジックは、診断チェックの開始(3202)に進む。
3205において、テスト1は、瞬時テスト1で後の測定Znを最初の測定から2時間してから行うよう指定することを除き、図31に関連して上で説明されている診断手順のテスト1と類似している。したがって、この例では、Zn=Z2hrである。さらに具体的には、テスト1で、(センサー埋め込みと)初期化から2時間後の実インピーダンスを初期化前値と比較する。同様に、テスト1の第2の部分では、初期化から2時間後の位相と初期化前位相との間の差が、0.1Hzで10°より大きいかどうかを尋ねる。前のように、問い合わせのいずれか1つへの答えが肯定的であれば、センサーは正常に水和されて初期化されていると判定され、テスト1は合格し、そうでなければ、センサーはこのテストで不合格となっている。瞬時テストで初期化から2時間後にインピーダンスおよび位相の変化を問い合わせるとしても、2つの連続するEISの実行の間の時間間隔は、例えば、センサー設計、電極冗長性のレベル、診断手順が冗長テストを含む程度、電池電力などを含む、さまざまな要因に応じて短くも長くもなり得ることに留意されたい。
3210に進むと、ロジックは、次に、感度損失チェックを、2時間の間隔(n+2)の後に、1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセンテージの変化、さらにはIsigの変化が、30%より大きいかどうかを問い合わせることによって実行する。両方の問い合わせに対する答えが「yes」である場合、センサーは感度を失っていると判定され、したがって、テスト2は、不合格と判定される。テスト2は、ここでは、30%の好ましいパーセンテージ差に基づいて示されているが、他の実施形態では、1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセンテージ差およびIsigのパーセンテージ差は、このテストを実施することを目的として10%〜50%の範囲内にあるものとしてよいことに留意されたい。
テスト3(3220の)は、図31に例示されているアルゴリズムのテスト5に類似している。ここで、前のように、質問は、低周波ナイキスト勾配が、0.1Hzから1Hzまで全体的に増大しているかどうかである。もしそうであれば、このテストは合格であり、そうでなければ、テストは、不合格である。3220に示されているように、このテストは、センサーが故障しているとみなされるか、または少なくとも、さらなる診断テストをトリガーし得る限度となる、低周波ナイキスト勾配のパーセント変化に対して、閾値の設定、または許容可能な範囲の設定の影響も受けやすい。本発明の実施形態では、低周波ナイキスト勾配のパーセント変化に対するそのような閾値/許容可能な範囲は、約2%から約20%の範囲内に収まり得る。いくつかの好ましい実施形態において、閾値は、約5%とすることができる。
ロジックは、次に、別の低周波テストである3230に進むが、このときは、位相およびインピーダンスの大きさを伴う。より具体的には、位相テストでは、0.1Hzの位相が時間の経過とともに連続的に増大するかどうかを問い合わせる。もしそうであれば、テストは不合格である。パラメータの傾向が監視されている他のテストと同様に、テスト4の低周波位相テストは、センサーが故障しているとみなされるか、または少なくとも、懸念を引き起こし得る限度となる、低周波位相のパーセント変化に対して、閾値の設定、または許容可能な範囲の設定の影響も受けやすい。本発明の実施形態では、低周波位相のパーセント変化に対するそのような閾値/許容可能な範囲は、約5%から約30%までの範囲内に収まり得る。いくつかの好ましい実施形態において、閾値は、約10%とすることができる。
指摘されているように、テスト4は、低周波インピーダンスの大きさのテストも含み、そこでは、問い合わせは、0.1Hzにおけるインピーダンスの大きさが時間の経過とともに連続的に増大しているかどうかである。もしそうであれば、テストは不合格である。テスト4は、位相テストまたはインピーダンスの大きさのテストのいずれかに失敗した場合に「不合格」と考えられることに留意されたい。テスト4の低周波のインピーダンスの大きさのテストは、センサーが故障しているとみなされるか、または少なくとも、懸念を引き起こし得る限度となる、低周波のインピーダンスの大きさのパーセント変化に対して、閾値の設定、または許容可能な範囲の設定の影響も受けやすい。本発明の実施形態では、低周波のインピーダンスの大きさのパーセント変化に対するそのような閾値/許容可能な範囲は、約5%から約30%までの範囲内に収まり得る。いくつかの好ましい実施形態において、閾値は、約10%とすることができ、その場合、正常なセンサーのインピーダンスの大きさに対する範囲は、一般的に、約100Kオームから約200Kオームの間である。
テスト5(3240における)は、テスト2の補助として考えられ得る別の感度損失チェックである。ここで、Isigのパーセンテージおよび1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセンテージ変化の両方が30%を超える場合、センサーは感度損失から回復していると判定される。言い換えると、センサーは、感度損失が何らかの理由からテスト2によって検出されなかったとしても、すでに何らかの感度損失を被っていると判定される。テスト2と同様に、テスト5は、30%の好ましいパーセンテージ差に基づいて示されているが、他の実施形態では、Isigのパーセンテージ差および1kHzにおけるインピーダンスの大きさのパーセンテージ差は、このテストを実施することを目的として10%〜50%の範囲内にあるものとしてよい。
3250に進むと、テスト6で、観察されたデータおよび特定のセンサー設計に基づき判定された特定の故障基準を用いてセンサー機能性テストを行う。特に、一実施形態では、センサーは、以下の3つの基準のうちの少なくとも2つが満たされている場合に、故障していると判定され、したがって、グルコースに応答する可能性がないと判定され得る。(1)Isigは、10nA未満であり、(2)1kHzにおける虚インピーダンスは、-1500オーム未満であり、(3)1kHzにおける位相は、-15°未満である。したがって、テスト6は、(1)〜(3)のうちのどれか2つが満たされていない場合に合格したと判定される。他の実施形態では、このテストのIsig分岐は、Isigが約5nA未満から約20nAである場合に不合格であるものとしてよいことに留意されたい。同様に、第2の分岐は、1kHzにおける虚インピーダンスが約-1000オーム未満から約-2000オームである場合に不合格であるものとしてよい。最後に、位相分岐は、1kHzにおける位相が約-10°未満から約-20°である場合に不合格であるものとしてよい。
最後に、ステップ3260で、別の感度チェックを行い、その際に、パラメータは低周波数で評価される。したがって、テスト7では、0.1Hzにおいて、一方の、虚インピーダンスとIsig(n+2)との比と、他方の、比の前の値との差の大きさは比の前の値の大きさの30%より大きいかどうかを問い合わせる。もしそうであれば、テストは不合格であり、そうでなければ、テストは、合格である。ここで、テスト7は、30%の好ましいパーセンテージ差に基づいて示されているが、他の実施形態では、パーセンテージ差は、このテストを実施することを目的として10%〜50%の範囲内に収まるものとしてよい。
7つのテストすべてが実行された後、センサーが正常に動作しているかどうか、またはセンサーが故障している(もしくは故障しようとしている)ことを示す警告が送り出されるべきかどうかに関する決定が3270で下される。図示されているように、この実施形態では、センサーは、7つのテストのうちの少なくとも4つに合格した場合に正常に動作している(3272)と判定される。言い換えると、故障している、または少なくとも懸念を引き起こす(3274)と判定されるためには、センサーは、7つのテストのうちの少なくとも4つで不合格でなければならない。センサーが「不良」である(3274)と判定された場合、その影響に対する警告が、例えば、患者/使用者に送信され得る。すでに指摘されているように、代替的実施形態において、センサー故障/懸念に対して正常な動作を評価するために異なるルールが使用され得る。それに加えて、本発明の実施形態では、テストのそれぞれに重みを付けることができ、センサー動作全体を判定する際に(正常対故障)、割り当てられた重みは、例えば、そのテストの重要性、またはそのテストについて問い合わされる特定のパラメータの重要性を反映する。
すでに指摘されているように、本発明の実施形態では、上述のインピーダンス関係パラメータのうちのさまざまなものが、個別に、または組み合わせて、より信頼性の高いセンサーグルコース値を生成するための1つまたは複数の融合アルゴリズムへの入力として使用され得る。特に、単一センサー(すなわち、単一作用電極)システムとは異なり、複数の検知電極では、2つまたはそれ以上の作用電極から得られる複数の信号を融合して単一のセンサーグルコース値を得ることができるので、より信頼性の高いグルコース読み出し値を出力することが知られている。そのような信号融合では、EISによって与えられる定量的入力を利用して、冗長作用電極から最も信頼性の高い出力センサーグルコース値を計算する。次の考察で冗長電極として第1の作用電極(WE1)および第2の作用電極(WE2)に関してさまざまな融合アルゴリズムを説明することができるが、これは、例示するものであって、制限するものではなく、本明細書で説明されているアルゴリズムおよびそれらの基本原理は、2つより多い作用電極を有する冗長センサーシステムに適用可能であり、そのような冗長センサーシステムにおいて使用され得ることに留意されたい。
図33Aおよび図33Bは、2つの代替的方法に対する最上位の流れ図を示しており、それぞれ融合アルゴリズムを含む。特に、図33Aは、電流(Isig)ベースの融合アルゴリズムを伴う流れ図であり、図33Bは、センサーグルコース(SG)融合を対象とする流れ図である。図を見るとわかるように、2つの方法の主な違いは、較正の時間である。したがって、図33Aは、Isig融合について、融合3540が完了してから較正3590が実行されることを示している。つまり、WE1からWEnへの冗長Isigは、単一のIsig3589に融合され、次いで、単一のセンサーグルコース値3598を出力するように較正される。その一方で、SG融合について、較正3435が、WE1からWEnへのそれぞれの個別のIsigについて完了し、作用電極のそれぞれに対する較正されたSG値(例えば、3436、3438)を出力する。したがって、SG融合アルゴリズムは、複数のIsigのそれぞれの独立した較正を行い、これは本発明の実施形態において好ましいものとしてよい。較正された後、複数の較正済みSG値は、単一のSG値3498に融合される。
図33Aおよび33Bに示されている流れ図のそれぞれは、スパイクフィルター処理プロセス(3520、3420)を含むことに留意することが重要である。感度損失に関係する考察において上で説明されたように、1kHz以上の周波数のインピーダンスの測定では、典型的に、EIS誘導スパイクがIsig内に生じる。したがって、EIS手順がSG融合およびIsig融合の両方について電極WE1からWEnのそれぞれに対して実行された後、最初にIsig3410、3412などおよび3510、3512などをフィルター処理して、各フィルター処理済みIsig3422、3424などおよび3522、3524などを得ることが好ましい。次いで、フィルター処理済みIsigは、Isig融合において使用されるか、または最初に較正され、次いで、SG融合において使用されるが、これは以下で説明する。次の考察で明らかになるように、融合アルゴリズムは両方とも、さまざまな要因に基づく重みの計算および割り当てを伴う。
図34は、SG融合に対する融合アルゴリズム3440の詳細を示している。本質的に、融合重みが決定される前にチェックする必要のある要因が4つある。第1に、完全性チェック3450は、正常なセンサー動作に対する指定された範囲内(例えば、所定の下方閾値および上方閾値)に、パラメータ(i)Isig、(ii)1kHzの実および虚インピーダンス、(iii)0.105Hzの実および虚インピーダンス、および(iv)ナイキスト勾配のそれぞれが収まっているかどうかを判定することを伴う。図示されているように、完全性チェック3450は、境界チェック3452およびノイズチェック3456を含み、これらのチェックのそれぞれについて、上述のパラメータは入力パラメータとして使用される。簡単のため、1つまたは複数の周波数における実および/または虚インピーダンスは、図33A〜図35上に、単にインピーダンスの略記号「Imp」で表されていることに留意されたい。それに加えて、実および虚インピーダンスは両方とも、インピーダンスの大きさおよび位相(図33Aおよび図33B上に入力として示されてもいる)を使用して計算され得る。
境界チェック3452およびノイズチェック3458のそれぞれからの出力は、冗長作用電極のそれぞれに対する各信頼度指数(RI)である。そのため、境界チェックからの出力は、例えば、RI_bound_We1(3543)およびRI_bound_We2(3454)を含む。同様に、ノイズチェックについては、その出力は、例えば、RI_noise_We1(3457)およびRI_noise_We2(3458)を含む。それぞれの作用電極に対する境界およびノイズの信頼度指数は、正常なセンサー動作に対する上述の範囲への適合に基づき計算される。したがって、どれかのパラメータが特定の電極に対する指定された範囲外にある場合、その特定の電極に対する信頼度指数は減少する。
上述のパラメータに対する閾値、または範囲は、特定のセンサーおよび/または電極設計を含む、さまざまな要因に依存し得ることに留意されたい。それでもなお、好ましい一実施形態において、上述のパラメータのうちのいくつかに対する典型的な範囲は、例えば以下のとおりであってよい。1kHzの実インピーダンスに対する境界閾値=[0.3e+4 2e+4]、1kHzの虚インピーダンスに対する境界閾値=[-2e+3,0]、0.105Hzの実インピーダンスに対する境界閾値=[2e+4 7e+4]、0.105Hzの虚インピーダンスに対する境界閾値=[-2e+5 -0.25e+5]、およびナイキスト勾配に対する境界閾値=[2 5]。ノイズは、例えば、二次中心差分法を使用して計算することができ、この方法では、ノイズがそれぞれの変数バッファに対する中央値のあるパーセンテージ(例えば、30%)を超えた場合に、ノイズ限界から外れているとみなされる。
第2に、センサーディップは、センサー電流(Isig)と1kHzの実インピーダンスとを使用して検出され得る。したがって、図34に示されているように、Isigおよび「Imp」は、ディップ検出3460の入力として使用される。ここで、第1のステップは、Isig間に発散があるかどうか、およびそのような発散が1kHzの実インピーダンスデータに反映されるかどうかを判定することである。これは、Isig類似度指数(RI_sim_isig12)3463と1kHzの実インピーダンス類似度指数(RI_sim_imp12)3464との間のマッピング3465を使用することによって実行され得る。このマッピングは重要であり、ディップが実でない場合に偽陽性を回避するのに役立つ。Isig発散が実である場合、アルゴリズム側でより高いIsigを有するセンサーを選択する。
本発明の実施形態によれば、2つの信号(例えば、2つのIsig、または2つの1kHzの実インピーダンスデータ点)の発散/収束は、以下のように計算することができる。
diff_va1=abs(va1-(va1+va2)/2);
diff_va2=abs(va2-(va1+va2)/2);
RI_sim=1-(diff_va1+diff_va2)/(mean(abs(va1+va2))/4)
ただし式中、va1およびva2は2つの変数であり、RI_sim(類似度指数)は信号の収束または発散を測定する指数である。この実施形態では、RI_simは、0と1との間を境界としなければならない。したがって、上で計算されたRI_simが0未満である場合、これは0に設定され、1より大きい場合、1に設定される。
マッピング3465は、通常線形回帰(OLR)を使用することによって実行される。しかし、OLRではうまくいかない場合、ロバスト中央値勾配線形回帰(robust median slope linear regression)(RMSLR)が使用され得る。例えば、Isig類似度指数および1kHzの実インピーダンス指数では、(i)Isig類似度指数を1kHzの実インピーダンス類似度指数にマッピングする手順、(ii)1kHzの実インピーダンス類似度指数をIsig類似度指数にマッピングする手順の2つの手順が必要である。両方のマッピング手順で、res12とres21の2つの残余が生成される。ディップ信頼度指数3467、3468のそれぞれを以下のように計算することができる。
RI_dip=1-(res12+res21)/(RI_sim_isig+RI_sim_1K_real_impedance).
第3の要因は感度損失3470であり、これは、例えば、過去8時間以内の、1kHzの虚インピーダンスの傾向を使用して検出され得る。1つのセンサーの傾向が負に変わると、アルゴリズムは他のセンサーを利用する。両方のセンサーが感度を失った場合、単純平均を取る。傾向は、ノイズが多くなる傾向を有するが強いローパスフィルターを使用して1kHzの虚インピーダンスを平滑化することによって、また例えば過去8時間内の時間に関して相関係数または線形回帰を使用して相関係数が負であるか、または勾配が負であるかを判定することによって計算され得る。感度損失信頼度指数3473、3474のそれぞれに、1または0の二進値を割り当てる。
we1、we2、...、wenのそれぞれに対する全信頼感指数(RI)は、以下のように計算される。
RI_we1=RI_dip_we1×RI_sensitivity_loss_we1×RI_bound_we1×RI_noise_we1
RI_we2=RI_dip_we2×RI_sensitivity_loss_we2×RI_bound_we2×RI_noise_we2
RI_we3=RI_dip_we3×RI_sensitivity_loss_we3×RI_bound_we3×RI_noise_we3
RI_we4=RI_dip_we4×RI_sensitivity_loss_we4×RI_bound_we4×RI_noise_we4
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RI_wen=RI_dip_wen×RI_sensitivity_loss_wen×RI_bound_wen×RI_noise_wen
個別の作用電極の各信頼度指数を計算した後、電極のそれぞれに対する重みを以下のように計算することができる。
weight_we1=RI_we1/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+…+RI_wen)
weight_we2=RI_we2/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+…+RI_wen)
weight_we3=RI_we3/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+…+RI_wen)
weight_we4=RI_we4/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+…+RI_wen)
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weight_wen=RI_wen/(RI_we1+RI_we2+RI_we3+RI_we4+…+RI_wen)
次いで、上記に基づき、融合されたSG3498が以下のように計算される。
SG=weight_we1×SG_we1+weight_we2×SG_we2+weight_we3×SG_we3+weight_we4×SG_we4+...+weight_wen×SG_wen
最後の係数は、センサー融合の瞬時重み変化によって引き起こされるような、最終的なセンサー読み出し値中のアーチファクトに関係する。これは、ローパスフィルター3480を適用して、それぞれの電極に対するRIを平滑化するか、またはローパスフィルターを最終的SGに適用することによって回避され得る。前者が使用される場合、フィルター処理された信頼度指数--例えば、RI_We1*およびRI_We2*(3482、3484)--は、それぞれの電極に対する重みの計算、したがって融合されたSG3498の計算において使用される。
図35は、Isig融合に対する融合アルゴリズム3540の詳細を示している。図からわかるように、このアルゴリズムは、2つのことを除き、SG融合に対する図34に示されているものと実質的に類似している。第1に、すでに指摘されているように、Isig融合では、較正はプロセスの最終ステップをなし、単一の融合されたIsig3589が較正されて単一のセンサーグルコース値3598を生成する。図33Bも参照のこと。第2に、SG融合では複数の電極に対するSG値を使用して、最終的SG値3498を計算しているが、融合されたIsig値3589は、複数の電極に対するフィルター処理されたIsig(3522、3524など)を使用して計算される。
糖尿病に罹っていない母集団を伴う1つの閉ループ研究において、上述の融合アルゴリズムが1日目に、低始動問題が最も重大であり、したがってセンサーの精度および信頼性に実質的な影響を及ぼし得るときに、ならびに全体の期間(すなわち、センサーの7日間の寿命)にわたって平均絶対的相対的差異(MARD)のかなりの改善をもたらすことが判明した。この研究では、以下の3つの異なる方法を使用して高電流密度(公称)メッキによる88%の分散レイアウト設計に対するデータを評価した。(1)Medtronic MinimedのFerrari Algorithm 1.0(上で説明されているようなSG融合アルゴリズム)を使用する融合を介した1つのセンサーグルコース値(SG)の計算、(2)1kHzのEISデータを使用してより良好なISIG値を識別することによる1つのSGの計算(上で説明されているIsigアルゴリズムを通じて)、および(3)より高いISIG値を使用することによる(すなわち、EISを使用しない)1つのSGの計算。この研究に対するデータの詳細を以下に示す。
上記のデータにおいて、第1のアプローチを取った場合、1日目のMARD(%)は19.52%であり、全体的なMARDは12.28%であることがわかった。第2のアプローチでは、1日目のMARDは、15.96%であり、全体的なMARDは、11.83%であった。最後に、第3のアプローチでは、MARDは、1日目に17.44%であり、全体で12.26%であった。したがって、冗長電極を使用するこの設計では、1kHzのEIS(すなわち、第2の方法)を使用するより良好なISIGに基づくSGの計算で最大の利益が得られるように見える。特に、より低い1日目のMARDは、例えば、EISを使用するより良好な低始動検出に起因するものとしてよい。それに加えて、全体的なMARDのパーセンテージは、この研究のWE1およびWE2に対する13.5%の総平均MARDより1%以上低い。上述のアプローチでは、データ遷移は、例えば、図33A〜図35に関連して上で説明されているようなローパスフィルター3480などを使用することによって遷移の重大さを最小にするフィルター処理方法によって処理できる。
ここで、例えば低始動、感度損失、および信号ディップ事象を含むセンサー診断は、センサー設計、電極の数(すなわち、冗長性)、電極分布/構成などを含む、さまざまな要因に依存することを繰り返しておく。したがって、EISベースのパラメータが実質的にグルコース独立であるものとしてよい実際の周波数、または周波数範囲、したがって、上述の故障モードのうちの1つまたは複数に対する独立したマーカー、もしくは予測因子も、特定のセンサー設計に依存し得る。例えば、上で説明されているように、感度損失は、比較的高い--虚インピーダンスが実質的にグルコース独立である--周波数の虚インピーダンスを使用して予測され得ることが発見されているが、グルコース依存性のレベル、したがって、感度損失に対するマーカーとして虚インピーダンスを使用するための特定の周波数範囲は、実際のセンサー設計に応じて(高い方に、または低い方に)ずれる可能性がある。
より具体的には、センサー設計が冗長作用電極の使用に向かうほど、後者はセンサーの全体的サイズを維持するために次第に小型化していかなければならない。そのため、電極のサイズは、特定の診断について問い合わせできる周波数に影響を及ぼす。この点で、本明細書で説明され、図33A〜図35に示されている融合アルゴリズムは、例示的であるとみなされ、制限するものとしてみなされるべきでなく、それぞれのアルゴリズムは、分析対象のセンサーのタイプに基づき、最小量のグルコース依存性を示す周波数でEISベースのパラメータを使用するために必要に応じて修正され得ることに留意することが重要である。
それに加えて、実験データから、ヒトの組織構造も異なる周波数におけるグルコース依存性に影響を及ぼし得ることが示されている。例えば、子供では、0.105Hzの実インピーダンスは、低始動検出に対する実質的にグルコース独立であるインジケータであることが判明している。これは、子供の組織構造の変化、例えば、ワールブルクインピーダンスの結果として生じると考えられ、これは抵抗成分に大きく関係している。干渉物質検出に関係する後の説明も参照のこと。
本発明の実施形態は、センサー較正の最適化の際のEISの使用も対象とする。電流方法における背景により、その後のIsig値を較正するために使用され得る、Isigに対するBGのプロットの勾配を、
により計算する。
ただし式中、αは、時定数の指数関数であり、βは、血糖分散の関数であり、offsetは、定数である。定常状態にあるセンサーでは、この方法はかなり正確な結果をもたらす。例えば図36に図示されているように、BGおよびIsigは、かなり直線的な関係に従い、offsetを定数に取ることができる。
しかし、上述の直線関係は、例えば、センサーが遷移している期間などでは正しくない。図37に示されているように、Isig-BGの対1および2は、IsigとBGとの関係に関して対3および4と著しく異なることは明らかである。これらのタイプの状態に対して、定数offsetを使用すると、不正確な結果を生じる傾向がある。
この問題に対処するために、本発明の一実施形態は、EISベースの動的なオフセットを使用することを対象とし、センサー状態ベクトルを以下のように定義するためにEIS測定値が使用される。
V={real_imp_1K,img_imp_1K,Nyquist_slope,Nyquist_R_square}
ただし式中、ベクトル内の要素のすべては、実質的にBG独立である。Nyquist_R_squareは、ナイキスト勾配を計算するために使用される線形回帰のR平方、すなわち、比較的低い周波数の実インピーダンスと虚インピーダンスとの間の相関係数の平方であり、低いR平方は、センサー性能に異常があることを示すことに留意されたい。それぞれのIsig-BG対について、状態ベクトルが割り当てられる。状態ベクトルの有意差が検出された--例えば、図37に示されている例に対して|V2-V3|--場合、1および2と比較したときに3および4について異なるオフセット値が割り当てられる。したがって、この動的オフセットアプローチを使用することによって、IsigとBGとの間の直線関係を維持することが可能である。
第2の実施形態では、EISベースのセグメント分割アプローチを較正に使用することができる。図37の例、およびベクトルVを使用することで、1および2のときのセンサー状態は、3および4のときのセンサー状態と著しく異なると判定され得る。したがって、較正バッファは、以下のように、2つのセグメントに分けることができる。
Isig_buffer1=[Isig1,Isig2];BG_buffer1=[BG1, BG2]
Isig_buffer2=[Isig3,Isig3];BG_buffer2=[BG3, BG3]
したがって、センサーが1および2のときに動作する場合、Isig_buffer1およびBG_buffer1は、較正に使用される。しかし、センサーが3および4のときに動作する場合、すなわち、遷移期間に、Isig_buffer2およびBG_buffer2が、較正に使用される。
さらに別の実施形態では、勾配を調節するためにEISが使用される、EISベースの動的勾配アプローチが、較正の目的に使用され得る。図38Aは、この方法をセンサー精度を改善するためにどのように使用できるかの例を示している。この図では、データ点1〜4は、離散的な血糖値である。図38Aからわかるように、データ点1と3との間にセンサーディップ3810があり、ディップは上で説明されているセンサー状態ベクトルVを使用して検出され得る。図38Aの参照番号3820で示されているように、ディップでは、勾配は上向きに調節され読取り不足を低減することができる。
さらなる実施形態において、EIS診断を使用して、例えば、低始動事象、感度損失事象、および他の類似の状況にきわめて有用である、センサー較正のタイミングを決定することができる。知られているように、大半の電流方法では、プリセットされたスケジュール、例えば、日に4回などのスケジュールに基づく定期的較正を必要とする。しかし、EIS診断を使用する場合、較正は事象駆動となり、これらは、必要な回数だけ、最も生産的なときに、実行すればよい。ここでもまた、状態ベクトルVを使用して、センサー状態がいつ変化したかを判定し、実際に変更されている場合に較正を要求することができる。
より具体的には、図示されている一例において、図38Bは、低始動検出を伴うEIS支援センサー較正の流れ図を示している。ナイキスト勾配、1kHzの実インピーダンス、および境界チェック3850を使用することで(例えば、図33A〜図35の融合アルゴリズムに関連するEISベースのパラメータに対するすでに説明されている境界チェックおよび関連する閾値を参照)、信頼度指数3853は始動のために設定することができ、したがって、1kHzの実インピーダンス3851およびナイキスト勾配3852が、対応する上限より低いときに、RI_startup=1であり、センサーは較正できる状態にある。言い換えると、信頼度指数3853は、「高」(3854)であり、ロジックは、3860の較正に進むことができる。
その一方で、1kHzの実インピーダンスおよびナイキスト勾配が対応する上限(または閾値)より高い場合に、RI_startup=0であり(すなわち、「低」であり)、センサーは較正できる状態にない(3856)、すなわち、低始動問題が存在している可能性がある。ここで、1kHzの実インピーダンスおよびナイキスト勾配の傾向を使用して、両方のパラメータがいつ範囲内に入るかを予測することができる(3870)。これが非常に短い時間(例えば、1時間未満)しか要しないと推定される場合、アルゴリズムは、センサーの準備が整うまで、すなわち、上述のEISベースのパラメータが範囲内に収まる(3874)まで待機し、その時点でアルゴリズムは較正に進む。しかし、待機時間が比較的長い場合(3876)、センサーはすぐに較正され、次いで、勾配またはオフセットが1kHzの実インピーダンスおよびナイキスト勾配の傾向に応じて徐々に調節され得る(3880)。調節を実行することによって、低始動によって引き起こされる重大な読取り過剰または不足が回避され得ることに留意されたい。すでに指摘されているように、EISベースのパラメータおよび瞬時較正アルゴリズムで使用される関係情報は、実質的にグルコース独立である。
図38Bに関連する上記の説明では、単一の作用電極、さらにはその作用電極の始動に対する信頼度指数の計算を示しているが、これは例示するためのものであり、制限するものではないことに留意されたい。したがって、2つまたはそれ以上の作用電極を備える冗長センサーでは、複数の(冗長)作用電極のそれぞれについて、境界チェックが実行され、始動信頼度指数が計算され得る。次いで、各信頼度指数に基づき、グルコース測定値を得るために続けることができる少なくとも1つの作用電極が識別され得る。言い換えると、単一の作用電極を有するセンサーでは、後者が低始動を示す場合、センサーの実際の使用(グルコースを測定するための)は、低始動期間が終了するまで遅延されなければならないことがある。この期間は、典型的には、1時間程度またはそれ以上であり得、明らかに不利である。対照的に、冗長センサーでは、本明細書で説明されている方法を利用することにより、適応型、または「スマート」、始動が可能であり、データ収集に進むことができる電極は、かなり短い時間で、例えば、数分程度で、識別され得る。次いで、これにより、MARDが小さくなるが、それは、低始動が一般的にMARDの約1/2%の増加をもたらすからである。
さらに別の実施形態では、EISは、較正バッファの調節を補助することができる。既存の較正アルゴリズムでは、バッファサイズは、常に4、すなわち、4つのIsig-BG対であり、重みは、すでに指摘されているように、時定数の指数関数であるα、および血糖分散の関数であるβに基づく。ここで、EISは、バッファのフラッシングのタイミング、バッファ重みの調節の仕方、および適切なバッファサイズを決定するのに役立ち得る。
本発明の実施形態は、干渉物質検出のためのEISの使用も対象とする。特に、センサーが輸液カテーテル内に留置されるセンサーと薬液注入カテーテルとの組合せを備える輸液セットを用意することが望ましい。そのようなシステムでは、センサーに関する輸液カテーテルの物理的配置は、もっぱら注入される薬剤および/またはその不活性成分によって引き起こされる可能性のあるセンサー信号に対する潜在的影響(すなわち、干渉)により、いくらか問題になることがある。
例えば、インスリンと併用される希釈剤は、防腐剤としてm-クレゾールを含む。生体外研究では、m-クレゾールは、インスリン(したがってm-クレゾール)がセンサーに近接近して注入されている場合にグルコースセンサーにマイナスの影響を及ぼすことがわかっている。したがって、センサーおよび輸液カテーテルが単一の針内に組み込まれるシステムは、センサー信号に対するm-クレゾールの効果を検出し、調節することができなければならない。m-クレゾールはセンサー信号に影響を及ぼすので、センサー信号それ自体と独立してこの干渉物質を検出する手段を有していることが好ましい。
実験から、センサー信号に対するm-クレゾールの影響は一時的であり、したがって可逆であることが示された。それでもなお、インスリン注入位置がセンサーに近すぎる場合、m-クレゾールは、電極に対して「毒作用」を及ぼす傾向があり、後者はもはや、インスリン(およびm-クレゾール)が患者の組織内に吸収されるまでグルコースを検出することができない。この点で、典型的には、インスリン注入の開始から、センサーがグルコース検出能力を再び獲得するまでに約40分の期間があることが判明した。しかし、有利には、同じ期間において、グルコース濃度とまったく独立して1kHzのインピーダンスの大きさが大幅に増大することも発見されている。
特に、図39は、生体外実験に対するIsigおよびインピーダンスデータを示しており、この場合、センサーは、100mg/dlのグルコース溶液中に留置され、1kHzのインピーダンスが、丸で囲まれたデータ点3920によって示されているように、10分毎に測定された。次いで、m-クレゾールを加えて、溶液を0.35%のm-クレゾールにした(3930)。これからわかるように、m-クレゾールが加えられた後、Isig3940は、最初に、劇的に増大し、次いで、下降し始める。その後、溶液中のグルコースの濃度を、さらに100mg/dlのグルコースを加えて倍にした。しかし、これは、電極がグルコースを検出できなくなったので、Isig3940に影響を及ぼさなかった。
その一方で、m-クレゾールは、インピーダンスの大きさと位相の両方に劇的な影響を及ぼした。図40Aは、位相に対するボード線図を示しており、図40Bは、m-クレゾールを加える前と加えた後の両方に対するインピーダンスの大きさのボード線図を示している。これからわかるように、m-クレゾールが加えられた後、インピーダンスの大きさ4010は、周波数帯上で少なくとも一桁だけ初期化後値4020から増加した。それと同時に、位相4030は、初期化後値4040と比較して完全に変化した。図40Cのナイキストプロット上において、ここでは、初期化前曲線4050および初期化後曲線4060は、正常に機能しているセンサーについて予測されたとおりであるように見える。しかし、m-クレゾールを加えた後、曲線4070は、大きく異なる。
上記の実験では、m-クレゾールが加えられた後もIsigに依存し続けるという重要な実用上の落とし穴を識別している。図39を再び参照すると、センサー信号を監視している患者/使用者は、自分のグルコースレベルにスパイクが生じてしまった、また自分でボーラスを投与すべきであるという誤った印象を植え付けられる可能性がある。次いで、使用者は、ボーラスを投与し、そのときに、Isigがすでに再び下降し始めている。言い換えると、患者/使用者には、すべてが正常に見える可能性があるということである。しかし、実際には、本当に生じているのは、患者がボーラスの投与前に患者のグルコースレベルに応じて低血糖事象を受ける危険性を患者にもたらし得る不要な用量のインスリンをただ単に投与したということである。このシナリオでは、可能な限りグルコース独立である干渉物質を検出する手段の望ましさを強める。
図41は、別の実験を示しており、そこでは、センサーは100mg/dlのグルコース溶液で初期化され、その後、グルコースは1時間で400mg/dlまで上げられ、次いで、100mg/dlに戻された。次いで、m-クレゾールを加えて、濃度を0.35%に増加させ、センサーを20分間の溶液中に残した。最後に、センサーを100mg/dlのグルコース溶液中に留置して、m-クレゾールに曝した後にIsigを回復させた。これからわかるように、初期化後に、1kHzのインピーダンスの大きさ4110は、約2kオームであった。m-クレゾールを加えると、インピーダンスの大きさ4110と同様に、Isig4120はスパイクを生じた。さらに、センサーが100md/dlのグルコース溶液に戻されたときに、インピーダンスの大きさ4110も、ほぼ正常のレベルに戻った。
上記の実験からわかるように、EISは、干渉剤--この場合は、m-クレゾール--の存在を検出するために使用することができる。特に、干渉物質は、周波数帯全体にわたってインピーダンスの大きさを増大させる形でセンサーに影響を及ぼすので、インピーダンスの大きさは、干渉を検出するために使用され得る。干渉が検出された後、センサー動作電圧が干渉物質が測定されない点まで変化するか、またはデータ報告が一時的に停止され、センサーは患者/使用者に対して、薬剤の投与のせいで、センサーがデータを報告できない(測定されたインピーダンスが注入前レベルに戻るまで)ことを指示することができる。干渉物質の影響は、インスリンに含まれる防腐剤によるものなので、インピーダンスの大きさは、注入されるインスリンが即効性であろうと遅効性であろうと関係なく上で説明されているのと同じ挙動を示すことに留意されたい。
重要なのは、上で述べたように、インピーダンスの大きさ、および確実には1kHzにおける大きさは、実質的にグルコース独立であるという点である。図41を参照すると、グルコース濃度が100mg/dlから400mg/dlまで--4倍増加--増大するときに、1kHzのインピーダンスの大きさが約2000オームから約2200オームまで増加するか、または約10%増大することがわかる。言い換えると、インピーダンスの大きさの測定に対するグルコースの影響は、測定されたインピーダンスに比べてほぼ一桁小さいように見える。「信号対雑音」比のこのレベルは、典型的には、フィルターでノイズ(すなわち、グルコース効果)を除去することができるくらいに十分小さく、その結果のインピーダンスの大きさは、実質的にグルコース独立である。それに加えて、インピーダンスの大きさは、上で説明されている生体外実験に対して使用された緩衝液と比較して、実際のヒトの組織中のグルコース独立性のなおいっそう高い程度を示していることが重視されるべきである。
本発明の実施形態は、アナログフロントエンド集積回路(AFE IC)も対象としており、これはカスタム特定用途向け集積回路(ASIC)であり、(i)複数のポテンシオスタットをサポートし、酸素または過酸化物のいずれかに基づく多端子グルコースセンサーとインターフェースし、(ii)マイクロコントローラとインターフェースして、小消費電力センサーシステムを形成し、(iii)EISベースのパラメータの測定値に基づきEIS診断、融合アルゴリズム、および他のEISベースのプロセスを実行するために必要なアナログ電子回路を構成する。より具体的には、ASICは、広い周波数範囲にわたってセンサーの実および虚インピーダンスパラメータを測定する診断能力、さらには、マイクロプロセッサチップと双方向通信することを可能にするデジタルインターフェース回路を組み込む。さらに、ASICは、非常に低いスタンバイおよび動作電力で動作を可能にする電力制御回路、ならびに外部マイクロプロセッサの電力をオフにできるようにするリアルタイムクロックおよび水晶発振子を備える。
図42Aおよび図42Bは、ASICのブロック図を示しており、以下のTable 1(表4)は、いくつかの信号が単一のパッド上に多重化されている、パッド信号の説明(図42Aおよび図42Bの左側に示されている)を載せている。
次に、ASICについて、図42Aおよび図42BならびにTable 1(表4)を参照して説明することにする。
電力プレーン
ASICは、2.0ボルトから4.5ボルトまでの動作入力範囲を有する、電源パッドVBAT(4210)から電力の供給を受ける1つの電力プレーンを有する。この電力プレーンは、このプレーン内のいくつかの回路のために電圧を下げるレギュレータを有する。電源はVDDBU(4212)と称され、テストおよびバイパス用の出力パッドを有する。VBAT電源上の回路は、RC発振器、リアルタイムクロック(RC osc)4214、電池保護回路、レギュレータ制御装置、パワーオンリセット回路(POR)、およびさまざまな入力/出力を備える。VBAT電力プレーン上のパッドは、40℃およびVBAT=3.50Vで75nA未満の電流を引き込むように構成される。
ASICは、ロジックに電力を供給するためのVDD電源も有する。VDD電源電圧範囲は、少なくとも1.6ボルトから2.4ボルトまでプログラム可能である。VDD電力プレーン上の回路は、デジタルロジックの大部分、タイマー(32khz)、およびリアルタイムクロック(32khz)を備える。VDD電源プレーンは、必要に応じて他の電圧プレーンにインターフェースするレベルシフターを備える。レベルシフターは、次いで、別の電力プレーンに電力が供給されていない場合に電力供給される電力プレーンが10nAを超える電流の増大を有しないようにインターフェースが調節される。
ASICは、オンボードレギュレータ(シャットダウン制御付き)および外部VDDソース用のオプションを備える。レギュレータ入力は、別のパッド、REG_VDD_IN(4216)であり、VBAT上の他のI/Oと共通の静電放電(ESD)保護回路を有する。オンボードレギュレータは、出力パッド、REG_VDD_OUT(4217)を有する。ASICは、REG_VDD_OUTパッドとは分離している、VDDに対する入力パッドも有する。
ASICは、VDDA(4218)とも称される、アナログ電力プレーンを備え、VDDオンボードレギュレータまたは外部ソースのいずれかによって電力を供給され、通常はフィルター処理されたVDDによって電力を供給される。VDDA供給回路は、VDDの0.1ボルト以内で動作するように構成され、それによって、VDDAとVDD電力プレーンとの間のレベルシフトの必要性をなくす。VDDA電源は、センサーアナログ回路、アナログ測定回路、さらには他のノイズ感知回路に電力を供給する。
ASICは、指定されたデジタルインターフェース信号用のパッド電源、VPADを備える。パッド電源は、少なくとも1.8Vから3.3Vまでの動作電圧範囲を有する。これらのパッドは、別々の電源パッドを有し、外部ソースから電力を供給される。これらのパッドは、他のオンボード回路へのレベルシフターも組み込んでおり、これにより、VDDロジック供給電圧と独立して柔軟なパッド電力供給範囲を可能にする。ASICは、VPAD電源が有効化されていないときに、他の供給電流が10nAを超えて増大しないようにVPADリング信号を調節することができる。
バイアス発生器
ASICは、バイアス発生器回路、BIAS_GEN(4220)を有し、これは、VBAT電源から電力を供給され、システム用の供給電圧とともに安定するバイアス電流を発生する。出力電流は、以下の仕様を有する。(i)電源感度:1.6Vから4.5Vの供給電圧から<±2.5%、および(ii)電流精度:トリミングの後<±3%。
BIAS_GEN回路は、スイッチングされる電流とスイッチングされない電流とを発生し、動作にバイアス電流を必要とする回路に電力を供給する。BIAS_GEN回路の動作電流ドレインは、2.5V〜4.5VのVBATで25℃のときに0.3μA未満である(バイアス出力電流を除く)。最後に、バイアス電流の温度係数は、一般的、4,000ppm/℃から6,000ppm/℃までの範囲である。
電圧基準
本明細書で説明されているようなASICは、VBAT電源から電力を供給される、低電力電圧基準を有するように構成される。電圧基準は、VBATまたはVDDBUによって電力を供給されるロジックから信号を受け付けることができるイネーブル入力を有する。ASICは、VBATが通電されるときにこの信号インターフェースからの供給電力から10nAを超える電流の増大を引き起こさないように設計される。
基準電圧は、以下の仕様を有する。(i)出力電圧:トリミングの後1.220±3mV、(ii)電源感度:1.6Vから4.5Vの入力から<±6mV、(iii)温度感度:0℃から60℃で<±5mV、および(iv)出力電圧デフォルト精度(トリムなし):1.220V±50mV。それに加えて、供給電流は、4.5V、40℃で800nA未満である。この実施形態では、基準出力は、VDD電圧レギュレータがロジックの絶縁破壊電圧を超えるレベルにオーバーシュートしないように基準を無効化するときにVSSAに強制される。
32kHzの発振器
ASICは、VDDA電源から導出される電力を供給され、ソフトウェアにより水晶発振器パッド(XTALI,XTALO)の容量をトリムすることができる32.768kHz水晶発振器4222を備える。特に、周波数トリム範囲は、少なくとも-50ppmから+100ppmまでであり、トリム範囲全体にわたってステップサイズは最大2ppmである。ここで、水晶は、それぞれの水晶端子上で負荷容量7pF、Ls=6.9512kH、Cs=3.3952fF、Rs=70k、シャント容量=1pF、およびPC基板寄生容量2pFと仮定することができる。
ASICは、パッドCLK_32kHZ上で利用可能なVPADレベルの出力を有し、出力は、ソフトウェアとロジック制御の下で無効化され得る。デフォルトでは、32kHzの発振器を出力に駆動する。入力ピン、OSC32K_BYPASS(4224)は、32kHz発振器を無効化することができ(電力トレインなし)、XTALIパッドへのデジタル入力を可能にする。この機能に関連する回路は、OSC32K_BYPASSが低い場合に発振器電流以外のOSC32K_BYPASS信号のいずれかの状態で10nAを超えるASIC電流を加えないように構成される。
32kHzの発振器は、バイパス状態を除き、VDDAプレーンが通電されたときに常に動作可能である必要がある。OSC32K_BYPASSが真である場合、32kHz発振器アナログ回路は低電力状態に入り、XTALIパッドは、レベルが0からVDDAまでであるデジタル入力を受け付けるように構成される。32kHz発振器出力は、40%から60%の間のデューティサイクルを有する。
タイマー
ASICは、2で除算される32kHzの発振器からのクロックと同期するタイマー4226を備える。これは、プリセット可能であり、2つのプログラム可能なタイムアウトを有する。これは、合計17分4秒までのカウントを与える24個のプログラム可能ビットを有する。タイマーは、CLK_32KHzパッドへのクロック供給を無効化し、VPADプレーン上のマイクロプロセッサ(μP)インターフェース信号を所定の状態に設定するプログラム可能な遅延も有する(マイクロプロセッサウェイクアップ制御信号については以下の節を参照)。これは、マイクロプロセッサが外部クロックがない場合にサスペンドモードに入るのを可能にする。しかし、この機能は、プログラム可能ビットを使ってソフトウェアにより無効化され得る。
タイマーは、CLK_32KHZクロック出力を有効化し、UP_WAKEUPをhighレベルに設定することによってマクロプロセッサをウェイクアップするプログラム可能な遅延も備える。電源低状態から電源OK状態へのPOR2(VDD POR)の遷移は、32kHz発振器、CLK_32KHZクロック出力を有効化し、UP_WAKEUPをhighレベルに設定する。電力シャットダウンおよび電源投入は、プログラム可能な制御ビットで制御されるように構成される。
リアルタイムクロック(RTC)
ASICは、アンゲートされた自走32kHz発振器から動作する48ビット読み出し可能/書き込み可能2進カウンターも有する。リアルタイムクロック4228への書き込みは、クロックの書き込み前にキーによるアドレスへの書き込みを必要とする。クロックへの書き込みアクセスは、キーアドレスへの書き込み後1ミリ秒から20ミリ秒までの間に終了するように構成される。
リアルタイムクロック4228は、1/2カウント(MSB=1、他のすべてのビット0)へのPOR1_IN(VBAT POR)またはPOR2_IN(VDD_POR)のいずれかによるパワーオンリセットでリセットされるように構成される。本発明の実施形態では、リアルタイムクロックは、プログラム可能な割り込み機能を有し、シングルイベントアップセット(SEU)に対してロバストとなるように設計されており、これはレイアウト技術または必要ならば適切なノードに静電容量を追加することによって実現され得る。
RC発振器
ASICは、VBAT電源またはVBAT誘導電源から電力を供給されるRCクロックをさらに備える。RC発振器は、アナログテストモード(デジタルテストに関する節を参照)でレジスタビットに書き込み、0からVBATレベルで信号をGPIO_VBATに印加することによって発振器がバイパスされ得ることを除き、常に動作している。RC発振器は、トリミング可能でなく、以下の仕様を備える。(i)750Hzから1500Hzまでの周波数、(ii)50%±10%の範囲のデューティサイクル、(iii)25℃で200nA未満の電流消費、(iv)1Vから4.5VのVBAT電源で±2%より小さく、1.8Vから4.5VのVBAT電源で1%よりも良い周波数変化、および(v)VBAT=3.5Vで15℃から40℃の範囲内の温度から+2、-2%より小さい周波数変化。RC周波数は、32kHzの水晶発振器で、または外部周波数ソースで測定され得る(発振器較正回路の節を参照)。
リアルタイムRCクロック(RC発振器ベース)
ASICは、RC発振器に基づく48ビット読み出し可能/書き込み可能2進リップルカウンターを備える。RCリアルタイムクロックへの書き込みは、クロックの書き込み前にキーによるアドレスへの書き込みを必要とする。クロックへの書き込みアクセスは、キーアドレスへの書き込み後1ミリ秒から20ミリ秒までの間に終了し、保護ウィンドウに対する時間は、RCクロックで生成されるように構成される。
リアルタイムRCクロックにより、水晶発振器がシャットダウンした場合に相対的タイムスタンプを使用することができ、1/2カウント(MSB=1、他はすべて0)へのPOR1_IN(the BAT POR)上でリセットされるように構成される。リアルタイムRCクロックは、レイアウト技術によって、または必要な場合に適切なノードに静電容量を追加することによってシングルイベントアップセット(SEU)に対してロバストとなるように設計されている。POR2_INの立ち下がりエッジで、またはASICがローバッテリー低状態に入る場合に、RTリアルタイムクロック値は、SPIポートを介して読み出せるレジスタ内に取り込むことができる。このレジスタおよび関連するロジックは、VBATまたはVDDBU電力プレーン上にある。
電池保護回路
ASICは、比較器を使用して電池電圧を監視し、VBAT電力プレーンから誘導される電力を供給される電池保護回路4230を備える。電池保護回路は、VBAT電源に印加される電力で常に動作しているように構成される。電池保護回路は、信号のクロック同期にRC発振器を使用することができ、また3Mオーム全抵抗外部電圧分割器を含む、30nA未満の平均電流ドレインを有することができる。
電池保護回路は、2.90Vの電池閾値に対して0.421の比を有する外部スイッチング電圧分割器を使用する。ASICは、0.421±0.5%の比を持つ内部電圧分割器も有する。この分割器は、BATT_DIV_EN(4232)とVSSA(4234)との間に接続され、分割器出力は、BATT_DIV_INT(4236)と称されるピンである。パッケージ化された部分におけるピンの数を節約するために、この実施形態におけるBATT_DIV_INTは、パッケージ内部でBATT_DIVに接続されている。また、この構成では、BATT_DIV_ENは、パッケージから出なくてよいので、パッケージピン2本を節約できる。
電池保護回路は、入力ピン、BATT_DIV(4238)上の電圧を、1秒毎に約2回サンプリングするように構成され、サンプル時間は、RC発振器から生成される。ASICは、RC発振器の分周器を調節して、サンプリング時間間隔を0.500秒±5ミリ秒に調節することができ、RC発振器はその動作許容範囲内で動作する。好ましい一実施形態において、ASICは、テスト時により頻繁なサンプリング間隔を使用できるようにテストモードを有する。
比較器入力は、0からVBATボルトまでの入力を受け付けるように構成される。比較器入力、BATT_DIVへの入力電流は、0からVBATボルトの入力に対して10nA未満である。比較器サンプリング回路はパッド、BATT_DIV_ENに、節電のためサンプリング時間においてのみオフチップ抵抗分割器を有効化するために外部回路によって使用され得る正パルスを出力する。電圧のhigh論理レベルはVBAT電圧であり、lowレベルはVSSレベルである。
BATT_DIV_ENパッドの出力抵抗は、VBAT=3.0Vで2kオーム未満であるものとする。これにより、電圧分割器をこの出力から直接駆動することができる。低電圧状態を示すプログラム可能な数の連続サンプルの後、比較器制御回路は、割り込み出力パッド、UP_INTへの割り込みをトリガーする。サンプルのデフォルトの数は4であるが、連続サンプルの数は、4から120までの間でプログラム可能である。
上記のUP_INTの生成後の電池低状態を示すプログラム可能な数の連続サンプルの後に、比較器制御回路はASICを低電力モードに入れる信号を生成するように構成される。VDDレギュレータは無効化され、low信号はパッド、VPAD_ENに対してアサートされる。これは、ローバッテリー状態と称される。ここでもまた、連続サンプルの数は、4から120までの間でプログラム可能であり、サンプルのデフォルトの数は4である。
比較器は、BATT_DIV上の立ち下がりおよび立ち上がり電圧に対する個別のプログラム可能な閾値を有する。これは、ローバッテリー状態に応じて回路に対して2つの値を多重化するためデジタルロジックで実装される。したがって、ローバッテリー状態が低い場合、立ち下がり閾値が適用され、ローバッテリー状態が高い場合、立ち上がり閾値が適用される。特に、比較器は、1.22から1.645±3%までの16個のプログラム可能な閾値を有し、プログラム可能な閾値のDNLは、0.2LSB未満に設定される。
比較器閾値は、20℃から40℃までの間で±1%未満の変化を示す。立ち下がり電圧に対するデフォルトの閾値は、1.44Vであり(公称電圧分割器を使用して3.41VのVBAT閾値)、立ち上がり電圧に対するデフォルトの閾値は、1.53Vである(公称電圧分割器を使用して3.63VのVBAT閾値)。ASICがローバッテリー状態に入った後、比較器がバッテリーOKの連続する4つの指示を検知した場合に、ASICはマクロプロセッサ起動シーケンスを開始する。
電池電力プレーンのパワーオンリセット
パワーオンリセット(POR)出力は、入力VBATのスルーが50μ秒の期間内に1.2ボルトより高い場合、またはVBAT電圧が1.6±0.3ボルト未満である場合に、パッドnPOR1_OUT(4240)で生成される。このPORは、5ミリ秒の最小パルス幅まで伸長される。POR回路の出力は、負論理となるように、またVBAT電力プレーン上のパッド、nPOR1_OUTに向かうように構成される。
ICは、電池電力プレーンPORに対する入力パッド、nPOR1_IN(4242)を有する。この入力パッドは、50ナノ秒より短いパルスがロジックにリセットを引き起こさないようにRCフィルター機能を有する。この実施形態では、nPOR1_OUTは、通常動作で、nPOR1_INに外部接続され、それによって、テストのためにアナログ回路をデジタル回路から分離する。nPOR1_INは、電力プレーンのどれかにおけるすべてのロジックのリセットを引き起こし、すべてのレジスタをデフォルト値に初期化する。したがって、リセットステータスレジスタPORビットがセットされ、他のすべてのリセットステータスレジスタはクリアされる。PORリセット回路は、電源投入後5秒を超える時間にわたってVBAT電源から0.1μAを超える電流を消費しないように構成される。
VDDパワーオンリセット(POR)
ASICは、電源投入後に、またはVDDがプログラム可能な閾値より低くなった場合に、VDD電圧プレーンリセット信号を発生する電圧比較器回路も有する。範囲は、いくつかの電圧閾値でプログラム可能である。デフォルト値は、1.8V〜15%(1.53V)である。POR2は、ヒステリシスを実装する、立ち上がり電圧に対してプログラム可能な閾値を有する。立ち上がり閾値も、1.60V±3%のデフォルト値で、プログラム可能である。
POR信号は、負論理であり、VDD電力プレーン上に出力パッド、nPOR2_OUT(4244)を有する。ASICは、VBAT電力プレーン上に負論理のPORオープンドレイン出力、nPOR2_OUT_OD(4246)も有する。これは、他のシステムコンポーネントにPORを印加するために使用することが可能である。
VDDから電力を受けるロジックは、入力パッド、nPOR2_IN(4248)から誘導されるPORを有する。nPOR2_INパッドは、VDD電力プレーン上にあり、50ナノ秒より短いパルスがロジックにリセットを引き起こさないようにRCフィルター機能を有する。nPOR2_OUTは、通常使用の下でnPOR2_IN入力パッドに外部的に接続されるように構成され、それによって、アナログ回路をデジタル回路から分離する。
生成されるリセットは、VDDがプログラム可能な閾値より高くなった後にアクティブ時間の少なくとも700ミリ秒に延ばされ、これにより、水晶発振器が確実に安定化される。PORリセット回路は、電源を投入してから5秒を超える時間にVDD電源から0.1μA以下の電流、および電源を投入してから5秒を超える時間にVBAT電源から0.1μAの電流を消費する。POR閾値を格納するレジスタは、VDD電力プレーンから電力を供給される。
センサーインターフェース電子機器
本発明の一実施形態において、センサー回路は、過酸化物または酸素センサーの任意の組合せで最大5つまでのセンサーWORK電極(4310)をサポートするが、追加の実施形態では、さらにそのような電極の多数に対応することもできる。過酸化物センサーWORK電極は電流を吐き出すが、酸素センサーWORK電極は電流を吸い込む。この実施形態では、センサーは、図43に示されているようなポテンシオスタット構成で構成され得る。
センサー電子機器は、未使用のセンサー電子機器への電流をオフにすることによって電流ドレインを最小にするためそれぞれの電極インターフェース回路用にプログラム可能な電力制御装置を有する。センサー電子機器は、RE(基準)電極4330からのフィードバックを使用するCOUNTER電極4320を駆動するための電子機器も備える。この回路に流れる電流は、節電のため使用しないときにオフにプログラムされ得る。インターフェース電子機器は、COUNTERおよびRE電極が(冗長)WORK電極のどれかに接続されるようにマルチプレクサ4250を備える。
ASICは、以下のセンサーインターフェースを備えるように構成される。(i)RE:WORK電圧を設定するための電子機器に対する溶液の基準電位を確定する基準電極。(ii)WORK1〜WORK5:所望の還元/酸化(レドックス)反応が生じる作用センサー電極、および(iii)COUNTER:このパッドからの出力はシステムVSSに関するRE電極上の知られている電圧を維持する。本発明のこの実施形態において、ASICは、WORK電圧を最大5つまでのWORK電極について個別に設定することができるように構成され、その分解能および精度は5mV以上である。
WORK電圧は、酸素モードでVSSAに関して少なくとも0から1.22Vの間でプログラム可能である。過酸化物モードでは、WORK電圧は、VSSAに関して少なくとも0.6から2.054ボルトの間でプログラム可能である。VDDAが2.15V未満である場合、WORK電圧は、VDDA-0.1Vで使用可能である。ASICは、過酸化物センサーモードでWORK電極電流を測定する電流測定回路を備える。これは、例えば、電流/電圧または電流/周波数コンバータで実装することができ、これは以下の仕様を有することができる。(i)電流範囲:0〜300nA、(ii)電圧出力範囲:過酸化物/酸素モードでWORK電極と同じ、(iii)出力オフセット電圧:最大±5mV、および(iv)未較正分解能:±0.25nA。
較正係数を利得に適用し、10秒以下の収集時間を仮定した後の電流測定精度は、以下のとおりである。
5pA〜1nA:±3%±20pA
1nA〜10nA:±3%±20pA
10nA〜300nA:±3%±0.2nA
電流/周波数コンバータ(ItoFs)のみでは、周波数範囲は、0Hzから50kHzの間であってよい。電流コンバータは、過酸化物モードにおけるWORK電極のVSSに関して指定された電圧範囲内で動作しなければならない。ここで、電流ドレインは、デジタル/アナログ(DAC)電流を含む1コンバータ当たり10nA未満のWORK電極電流で2.5V電源から2μA未満である。
電流コンバータは、ソフトウェア制御によって有効化または無効化され得る。無効化された場合、WORK電極は、非常に高いインピーダンス値、すなわち、100Mオームを超える値を示す。ここでもまた、ItoFsのみについて、I/Fコンバータの出力は、32ビットカウンターに向かい、マイクロプロセッサおよびテストロジックによって読み出され、そこに書き込まれ、それによってクリアされ得る。カウンター読み出し中に、カウンターのクロック動作は、正確な読み出しを行えるようにサスペンドされる。
本発明の実施形態では、ASICは、酸素センサーモードでWORK電極電流を測定する電流測定回路も備える。この回路は、電流/電圧または電流/周波数コンバータとして実装され、プログラム可能ビットが、酸素モードで動作するように電流コンバータを構成するために使用され得る。前のように、電流コンバータは、酸素モードにおけるVSSに関してWORK電極の指定された電圧範囲内で動作しなければならない。ここでもまた、電流範囲は、3.7pA〜300nAであり、電圧出力範囲は、酸素モードにおけるWORK電極と同じであり、出力オフセット電圧は、最大±5mVであり、未較正分解能は、3.7pA±2pAである。
較正係数を利得に適用し、10秒以下の収集時間を仮定した後の電流測定精度は、以下のとおりである。
5pA〜1nA:±3%±20pA
1nA〜10nA:±3%±20pA
10nA〜300nA:±3%±0.2nA
電流/周波数コンバータ(ItoFs)のみでは、周波数範囲は、0Hzから50kHzの間であってよく、電流ドレインは、DAC電流を含む、1コンバータ当たり10nA未満のWORK電極電流で2.5V電源から2μA未満である。電流コンバータは、ソフトウェア制御によって有効化または無効化され得る。無効化された場合、WORK電極は、非常に高いインピーダンス値、すなわち、100Mオームを超える値を示す。また、ItoFsのみについて、I/Fコンバータの出力は、32ビットカウンターに向かい、マイクロプロセッサおよびテストロジックによって読み出され、そこに書き込まれ、それによってクリアされ得る。カウンター読み出し中に、カウンターのクロック動作は、正確な読み出しを行えるようにサスペンドされる。
本発明の実施形態では、基準電極(RE)4330は、40℃で.05nA未満の入力バイアス電流を有する。COUNTER電極は、RE電極上の所望の電圧を維持するようにその出力を調節する。これは、COUNTER電極4320への出力で実際のRE電極電圧とDACによって設定されるターゲットRE電圧との間の差を最小にすることを試みる増幅器4340で実現される。
RE設定電圧は、少なくとも0から1.80Vまでの間でプログラム可能であり、COUNTER増幅器の共通モード入力範囲は、少なくとも0.20から(VDD-0.20)Vを含む。レジスタビットは、必要ならば、共通モード入力範囲を選択するために、またCOUNTERの動作のモードをプログラムすることに備えるために使用され得る。WORK電圧は、5mV以上の分解能および精度で設定される。通常モードでは、COUNTER電圧はプログラムされたREターゲット値に対してRE電圧を維持するレベルを求めることに留意されたい。しかし、強制カウンターモードでは、COUNTER電極電圧は、プログラムされたREターゲット電圧に強制される。
すべての電極駆動回路は、電極間負荷を駆動することができ、どのような使用状況であっても発振を起こさないように構成される。図44は、図43に示されているようなポテンシオスタット構成を備える本発明の実施形態による等価ac電極間回路を示している。図44に示されている等価回路は、電極、すなわち、WORK1〜WORK5、COUNTER、およびREの間のものであってよく、値の範囲は各回路要素に対して以下のとおりである。
Ru=[200〜5k]オーム
Cc=[10〜2000]pF
Rpo=[1〜20]kオーム
Rf=[200〜2000]kオーム
Cf=[2〜30]μF
初期化時に、WORK電極およびCOUNTER電極に対する駆動電流は、すでに説明されている通常のポテンシオスタット動作の場合と比べて大きい電流を供給する必要がある。そのようなものとして、プログラム可能なレジスタビットは、付加的な駆動に必要な場合により高い電力状態になるように電極駆動回路をプログラムするために使用され得る。電極電流が典型的には300nA未満である通常ポテンシオスタットモードで低電力動作を達成することが重要である。
好ましい実施形態では、初期化時に、WORK1からWORK5の電極は、0からVDDボルトまで5mVに等しいか、またはそれ以下のステップでプログラム可能であり、それらの駆動またはシンク電流出力能力は、0.20Vから(VDD-0.20V)まで最小20μAである。また、初期化時に、ASICは、一般的に、測定値の±2%±40nAの精度で最大20μAまで1つのWORK電極の電流を測定することができるように構成される。さらに、初期化時に、RE設定電圧は、すでに説明されているようにプログラム可能であり、COUNTER DRIVE CIRCUIT出力は、COUNTER電極を0.20Vから(VDD-0.20V)として最小50μAを吐き出すか、または吸い込むことができなければならず、初期化回路への供給電流(VDDおよびVDDA)は、吐き出される出力電流を超えて50μA未満である必要がある。
電流較正器
本発明の実施形態では、ASICは、較正を目的としてWORK電極に導かれ得る電流基準を有する。この点で、較正器は、電流出力に電流を吸い込む、または電流を吐き出すことを行わせるプログラム可能ビットを備える。プログラム可能な電流は、少なくとも10nA、100nA、および300nAを含み、その精度は±1%±1nAであり、ただし、許容範囲0の外部精度抵抗器を仮定する。較正器は、基準抵抗のために、パッド、TP_RES(4260)に接続された1Mオームの精度抵抗器を使用する。それに加えて、電流基準は、初期化および/またはセンサー状態を目的としてCOUNTERまたはRE電極に導かれ得る。定電流がCOUNTERまたはRE電極に印加され、電極電圧は、ADCにより測定され得る。
高速RC発振器
再び図42を参照すると、ASICは、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)4264、ADCシーケンサ4266、および32kHzを超える速度のクロックを必要とする他のデジタル機能への供給を行う高速RC発振器4262をさらに備える。高速RC発振器は、32kHzクロック(32.768kHz)に位相ロックされ、524.3kHzから1048kHzまでプログラム可能な出力周波数を与える。それに加えて、高速RC発振器は、50%±10%のデューティサイクル、0.5%未満のrmsの位相ジッター、10μA未満の電流、およびVDD動作範囲(1.6から2.5Vの電圧範囲)を通して安定している周波数を有する。高速RC発振器のデフォルトは、「オフ」(すなわち、無効化)であり、その場合、電流引き込みは10nA未満である。しかし、ASICは、高速RC発振器を有効化するプログラム可能ビットを有する。
アナログ/デジタルコンバータ
ASICは、12ビットADC(4264)を備え、特性は以下のとおりである。(i)32kHzクロックから動作して1.5ミリ秒未満の変換を行うことができること、(ii)高速RC発振器からクロックを供給されたときにより高速な変換を行うことができること、(iii)少なくとも10ビットの精度(12ビット±4カウント)を有すること、(iv)20℃から40℃で温度感度が0.2mV/℃未満であり、1.220Vの基準電圧入力を有すること、(v)フルスケール入力範囲が0から1.22V、0から1.774V、0から2.44V、および0からVDDAであり、1.774および2.44V範囲は、変換範囲をより低い値に縮小し、より低いVDDA範囲に対応できるようにするプログラム可能ビットを有すること、(vi)電源から50μA未満の電流消費を有すること、(vi)32kHzクロックまたは高速RCクロックから動作することができるコンバータを有すること、(vii)1LSB未満のDNLを有すること、および(viii)変換の終わりに割り込みを発行すること。
図42Aおよび図42Bに示されているように、ASICは、ADC4264の入力にアナログマルチプレクサ4268を有し、両方ともソフトウェアによって制御可能である。好ましい一実施形態において、少なくとも以下の信号が、マルチプレクサに接続される。
(i)VDD--コア電圧およびレギュレータ出力
(ii)VBAT--電池ソース
(iii)VDDA--アナログ電源
(iv)RE--センサーの基準電極
(v)COUNTER--センサーの対向電極
(vi)WORK1〜WORK5--センサーの作用電極
(vii)温度センサー
(viii)少なくとも2つの外部ピンアナログ信号入力
(ix)EIS積分器出力
(x)ItoV電流コンバータ出力
ASICは、ADCの負荷が、入力COUNTER、RE、WORK1〜WORK5、温度センサー、および負荷によって悪影響を受けるであろう他の入力に対して±0.01nAを超えないように較正される。マルチプレクサは、ADCの入力電圧範囲より高い電圧を有する入力用の分割器、および負荷検知入力に対する1nA未満への分割された入力の入力抵抗を減少させる緩衝増幅器を備える。次いで、緩衝増幅器は、少なくとも0.8VからVDDA電圧までの共通モード入力範囲、および0.8VからVDDA-0.1Vまでの入力範囲から3mV未満のオフセットを有する。
好ましい一実施形態において、ASICは、ADC測定がプログラムされたシーケンスで行われるモードを有する。そこで、ASICは、以下のプログラム可能なパラメータによるADC測定に対する最大8つの入力ソースの測定を監視するプログラム可能なシーケンサ4266を備える。
(i)ADC MUX入力
(ii)ADC範囲
(iii)遅延が0.488ミリ秒ステップで0から62ミリ秒までプログラム可能である、測定前の遅延時間
(iv)0から255までのそれぞれの入力に対する測定の回数
(v)測定サイクルの数:0〜255、測定のサイクルは最大8つまでの入力測定のシーケンスを何回も繰り返すことを指す(例えば、プログラムの外側のループ)
(vi)遅延が0.488ミリ秒ステップで0から62ミリ秒までプログラム可能である、測定のサイクル間の遅延
シーケンサ4266は、自動測定開始コマンドを受信してから開始するように構成され、測定値は、SPIインターフェースで取り出せるようにASIC内に格納され得る。シーケンサ時間基準は、32kHzクロックと高速RC発振器4262との間でプログラム可能であることに留意されたい。
センサー診断
すでに詳しく説明されているように、本発明の実施形態は、例えば、センサー診断手順およびIsig/SG融合アルゴリズムにおけるインピーダンスおよびインピーダンス関係パラメータの使用を対象とする。その目的のために、好ましい実施形態では、本明細書で説明されているASICは、ポテンシオスタット構成のときにREおよびCOUNTER電極に対するWORKセンサー電極のインピーダンスの大きさおよび位相角を測定する機能を有する。これは、例えば、WORK電極電圧上に重ね合わされる正弦波類似の波形に応答して電流波形の振幅および位相を測定することによって行われる。例えば、図42Bの診断回路4255を参照。
ASICは、例えば、電極マルチプレクサ4250を介して、電極に対する電極の抵抗および容量成分を測定する機能を有する。このような測定は、センサー平衡状態に干渉し、安定した電極電流を記録するために整定時間またはセンサー初期化を必要とする場合があることに留意されたい。すでに説明されているように、ASICは、本発明の実施形態の目的に関して、広い周波数帯にわたるインピーダンス測定に使用され得るが、比較的狭い周波数範囲も使用することができる。特に、ASICの正弦波測定機能は、約0.10Hzから約8192Hzまでのテスト周波数を含み得る。そのような測定を行う際に、本発明の一実施形態による最小周波数分解能が、以下のTable 2(表5)に示されているように制限され得る。
正弦波振幅は、5mVのステップで少なくとも10mVp-pから50mVp-pまで、10mVステップで60mVp-pから100mVp-pまでプログラム可能である。好ましい一実施形態において、振幅精度は、±5%または±5mVのいずか大きい方よりよい。それに加えて、ASICは、以下のTable 3(表6)に指定されている精度で電極インピーダンスを測定することができる。
本発明の一実施形態において、ASICは、精度を高めるためにインピーダンス計算で使用することができる、時間基準に関して入力波形位相を測定することができる。ASICは、上記の電極インピーダンス回路を較正するためのオンチップ抵抗器も有することができる。次いで、オンチップ抵抗器は、それらを知られている1メグオームのオフチップ精度抵抗器と比較することによって較正され得る。
波形のデータサンプリングも、インピーダンスを決定するために使用することができる。データは、計算および処理のためにシリアル周辺機器インターフェース(SPI)により外部マイクロプロセッサに送信され得る。変換された電流データは、データを失うことなくSPIインターフェースを通じてデータの2000回分のADC変換を外部デバイスに転送できるように十分にバッファリングされる。これは、データ転送要求割り込みを処理するために最大8ミリ秒の待ち時間を想定する。
本発明の実施形態では、正弦波による電極インピーダンスの測定の代わりに、またはそれに加えて、ASICはステップ入力で電極電流を測定することができる。ここで、ASICは、電極に5mVよりよい分解能で10から200mVまでのプログラム可能な振幅ステップを供給し、その結果得られる電流波形をサンプリング(測定)することができる。サンプリングの持続時間は、0.25秒ステップで少なくとも2秒にプログラム可能であるものとしてよく、電流を測定するためのサンプリング間隔は、約0.5ミリ秒から8ミリ秒の少なくとも5つのプログラム可能な2進重み付けステップを含み得る。
電極電圧サンプルの分解能は、最大±0.25ボルトまでの範囲で1mVより小さい。この測定は、データ変換の必要な動的範囲を縮小するために好適な安定電圧に関するものとしてよい。同様に、電極電流サンプルの分解能は、最大20μAまでの範囲で.04μAより小さい。電流測定は、測定極性がプログラム可能である場合に単極であり得る。
本発明の実施形態では、電流測定は、I/Vコンバータを使用することができる。さらに、ASICは、電流測定を較正するためのオンチップ抵抗器を有することができる。次いで、オンチップ抵抗器は、それらを知られている1メグオームのオフチップ精度抵抗器と比較することによって較正され得る。電流測定サンプル精度は、±3%または±10nAのいずか大きい方よりよい。前のように、変換された電流データは、データを失うことなくSPIインターフェースを通じてデータの2000回分のADC変換を外部デバイスに転送できるように十分にバッファリングされる。これは、データ転送要求割り込みを処理するために最大8ミリ秒の待ち時間を想定する。
較正電圧
ASICは、ADCを較正するために高精度電圧基準を備える。出力電圧は1.000V±3%、出力変動は±1.5%未満であり、安定性は、20℃から40℃の温度範囲にわたって±3mVよりよい。この精度較正電圧は、オンチップADCを介して、製造時に電圧を外部精度電圧と比較することによって較正され得る。製造の際に、より高い精度を得るために較正係数がシステムの不揮発性メモリ(このASIC上のではなく)に格納することができる。
較正電圧回路の電流ドレインは、好ましくは25μA未満である。さらに、較正電圧回路は、使用しないときに電池節電のため10nA未満まで電力を落とすことができる。
温度センサー
ASICは、-10℃から60℃までの範囲内で1℃当たり9から11mVの間の感度を有する温度変換装置を有する。温度センサーの出力電圧は、ADCが0から1.22VのADC入力範囲で温度関係電圧を測定できるような電圧である。温度センサーの電流ドレインは、好ましくは25μA未満であり、温度センサーは、使用しないときに電池節電のため10nA未満まで電力を落とすことができる。
VDD電圧レギュレータ
ASICは、VDD電圧レギュレータを有し、特性は以下のとおりである。
(i)最小入力電圧範囲:2.0V〜4.5V。
(ii)最低出力電圧:2.0Vをデフォルト電圧として、1.6〜2.5V±5%
(iii)ドロップアウト電圧:Iload=100μA、Vin=2.0VでVin-Vout<0.15V
(iv)出力電圧はプログラム可能であり、以下のTable 4(表7)に従って指示されている値の2%以内の精度を持つ。
(v)レギュレータは2.8Vの入力電圧を使用し2.5Vで1mAの出力を供給することができる。
(vi)レギュレータは、外部レギュレータが使用される場合に開回路にされ得る入力および出力パッドも有する。レギュレータ回路の電流引き込みは、好ましくは、この非動作モードにおいて100nA未満である。
(vii)10μAから1mAの負荷からの出力電圧の変化は、好ましくは25mV未満である。
(viii)1mAの負荷での出力電流を除外する電流ドレインは、ソースから100μA未満である。
(ix)0.1mAの負荷での出力電流を除外する電流ドレインは、ソースから10μA未満である。
(x)10μAの負荷での出力電流を除外する電流ドレインは、ソースから1μA未満である。
汎用比較器
ASICは、VDDAから電力を供給される少なくとも2つの比較器4270、4271を備える。比較器は、1.22Vを基準として使用して閾値を生成する。比較器の出力は、処理部によって読み出され、構成レジスタによって決定された立ち上がりまたは立ち下がりエッジ上でマスク可能な割り込みを発生する。
比較器は、使用していないときに電力を低減する電力制御部を有し、電流供給は、比較器1個につき50nA未満である。比較器の応答時間は、好ましくは、20mVのオーバードライブ信号に対して50μ秒未満であり、オフセット電圧は、±8mV未満である。
比較器は、プログラム可能なヒステリシスも有し、ヒステリシスオプションは、立ち上がり入力上で閾値=1.22V+Vhyst、立ち下がり入力上で閾値=1.22-Vhyst、または無ヒステリシス(Vhyst=25±10mV)を含む。いずれかの比較器からの出力は、電力プレーン上の任意のGPIOに利用可能である。(GPIOの節を参照)。
RE上のセンサー接続検知回路
アナログスイッチングキャパシタ回路は、センサーが接続されているかどうかを判定するためにRE接続のインピーダンスを監視する。特に、約20pFのキャパシタは、VSSからVDDへの出力スイングを持つインバータによって駆動される16Hzの周波数でスイッチングされる。比較器は、REパッド上の電圧スイングを検知し、そのスイングが閾値未満であれば、比較器出力は接続を示す。上述の比較は、パルスの両方の遷移において行われる。両方の遷移において閾値より低いスイングは接続を示すために必要であり、いずれかの位相における高いスイングを示す比較は、切断を示す。接続信号/切断信号は、その状態の遷移が少なくとも1/2秒で新しい状態への安定した指示を必要とするようにデバウンスされる。
回路は、20pFのキャパシタと並列の、抵抗500kオーム、1メグオーム、2メグオーム、4メグオーム、8メグオーム、および16メグオームによって定義された6つの閾値を有する。この並列等価回路は、REパッドと電力レールの間の任意の電圧となっている可能性のある仮想グランドとの間にある。閾値精度は、±30%よりよい。
センサー接続検知回路の出力は、センサーが接続されているかまたは切断されている場合に割り込みまたは処理部始動をプログラムにより生成することができる。この回路は、nPOR2_INがhighレベルにあり、VDDおよびVDDAが存在している場合に必ずアクティブである。この回路に対する電流ドレインは、平均100nAより小さい。
WAKEUPパッド
WAKEUP回路は、VDD電源によって電力を供給され、入力は0VからVBATの範囲を有する。WAKEUPパッド4272は、80±40nAの弱いプルダウンを有する。この電流は、BIAS_GEN4220の出力から導かれ得る。この回路が消費する平均電流は、0v入力で50nA未満である。
WAKEUP入力は、1.22±0.1Vの立ち上がり入力電圧閾値Vihを有し、立ち下がり入力閾値は、立ち上がり閾値の-25mV±12mVである。好ましい実施形態では、WAKEUP入力に関連する回路は、値が-0.2からVBAT電圧までである入力に対して100nA以下の電流を引き込む(この電流は入力プルダウン電流を除外する)。WAKEUPパッドは、少なくとも1/2秒間デバウンスされる。
WAKEUP回路の出力は、WAKEUPパッドが状態を変えた場合に割り込みまたは処理部始動をプログラムにより生成することができる。(イベントハンドラーの節を参照)。WAKEUPパッド回路は、電池保護回路がローバッテリー状態を示している場合に<1nAの低電流をとるように構成されることに留意することが重要である。
UART WAKEUP
ASICは、nRX_EXTパッド4274を監視するように構成される。nRX_EXTレベルが、1/2秒を超えて連続的に高い(UART BREAK)場合、UART WAKEUPイベントが発生する。原因となるUART WAKEUPイベントのサンプリングは、1/4秒と短い間に連続的なhighレベルで生成される可能性がある。UART WAKEUPイベントは、プログラムにより、割り込み、WAKEUPおよび/またはマイクロプロセッサリセット(nRESET_OD)を発生することができる。(イベントハンドラーの節を参照)。
好ましい実施形態では、UART WAKEUP入力に関連する回路は、100nA以下の電流を引き込み、UART WAKEUPパッド回路は、電池保護回路がローバッテリー状態を示している場合に<1nAの低電流をとるように構成される。UART Wakeup入力は、1.22±0.1Vの立ち上がり入力電圧閾値Vihを有する。立ち下がり入力閾値は、立ち上がり閾値の-25mV±12mVである。
マイクロプロセッサのウェイクアップ制御信号
ASICは、マイクロプロセッサのパワーマネージメントを制御するのを助ける信号を発生することができる。特に、ASICは、以下の信号を発生することができる。
(i)nSHUTDN--nSHUTDNは、オフチップVDDレギュレータの電力有効化を制御することができる。nSHUTDNパッドは、VBAT電力レール上にある。nSHUTDNは、電池保護回路がローバッテリー状態を示した場合にlowレベルとなり、そうでない場合にはnSHUTDNはhighレベルになるものとする。
(ii)VPAD_EN--VPAD_ENは、VPAD電力を供給する外部レギュレータの電力有効化を制御することができる。この外部信号に対応する内部信号は、VPADパッドからの入力がVPAD電力が無効化されたときにフローティング入力による余分な電力を引き起こさないことを確実にする。VPAD_ENパッドは、VBAT電力レール上の出力である。VPAD_EN信号は、電池保護信号がローバッテリーを示した場合にlowレベルである。VPAD_EN信号は、タイマーを起動するソフトウェアコマンドによってlowレベルに設定されるものとしてよく、タイマーのターミナルカウントはVPAD_ENを強制的にlowレベルにする。以下のイベントは、電池保護信号が良好な電池であることを示している場合にVPAD_EN信号をhighレベルにし得る(詳細はイベントハンドラーの節を参照)。lowレベルからhighレベルに遷移するnPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、センサー接続遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、UARTブレーク、およびRTC時間イベント(プログラム可能)。
(iii)UP_WAKEUP--UP_WAKEUPは、マイクロプロセッサウェイクアップパッドに接続することができる。これは、スリープモードまたは類似のパワーダウンモードからマイクロプロセッサをウェイクアップすることを意図している。UP_WAKEUPパッドは、VPAD電力レール上の出力である。UP_WAKEUP信号は、負論理、正論理、またはパルスとなるようにプログラムすることができる。UP_WAKEUP信号は、タイマーを起動するソフトウェアコマンドによってlowレベルに設定されるものとしてよく、タイマーのターミナルカウントはUP_WAKEUPを強制的にlowレベルにする。以下のイベントは、電池保護信号が良好な電池であることを示している場合にUP_WAKEUP信号をhighレベルにし得る(詳細はイベントハンドラーの節を参照)。lowレベルからhighレベルに遷移するnPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、センサー接続遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、UARTブレーク、およびRTC時間イベント(プログラム可能)。WAKEUP信号は、プログラム可能な量によって遅延させることができる。WAKEUPがパルスとなるようにプログラムされている場合、パルス幅もプログラムすることができる。
(iv)CLK_32KHZ--CLK_32KHZパッドは、低速クロックを供給するためにマイクロプロセッサに接続することができる。このクロックは、オン/オフプログラム可能であり、プログラムによってオンにしてイベントをウェイクアップする。CLK_32KHZパッドは、VPAD電力レール上の出力である。CLK_32KHZ信号は、電池保護信号がローバッテリーを示した場合にlowレベルである。CLK_32KHZ信号は、プログラム可能ビットによってオフにプログラムすることができる。デフォルトはONである。CLK_32KHZ信号は、タイマーを起動するソフトウェアコマンドによって無効化されるものとしてよく、タイマーのターミナルカウントはCLK_32KHZを強制的にlowレベルにする。以下のイベントは、電池保護信号が良好な電池であることを示している場合にCLK_32KHZ信号を有効化し得る(詳細はイベントハンドラーの節を参照)。lowレベルからhighレベルに遷移するnPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、センサー接続遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、UARTブレーク、RTC時間イベント(プログラム可能)、および電池保護回路によるローバッテリーの検出。
(v)nRESET_OD--nRESET_ODはマクロプロセッサに接続してマイクロプロセッサリセットを引き起こすことができる。nRESET_ODは、イベントをウェイクアップするようにプログラム可能である。nRESET_ODパッドは、VPAD電力レール上の出力である。このパッドはオープンドレイン(nfet出力)である。nRESET_OD信号は、電池保護信号がローバッテリーを示した場合にlowレベルである。nRESET_ODアクティブ時間は、1から200ミリ秒までプログラム可能である。デフォルトは200msである。以下のイベントは、nRESET_OD信号をlowレベルにアサートし得る(詳細はイベントハンドラーの節を参照)。nPOR2_IN、SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、センサー接続遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、UARTブレーク、およびRTC時間イベント(プログラム可能)。
(vi)UP_INT--UP_INTは、マイクロプロセッサに接続して割り込みを伝えることができる。UP_INTは、イベントをウェイクアップするようにプログラム可能である。UP_INTパッドは、VPAD電力レール上の出力である。UP_INT信号は、電池保護信号がローバッテリーを示した場合にlowレベルである。UP_INT信号は、タイマーを起動するソフトウェアコマンドによってhighレベルに設定されるものとしてよく、タイマーのターミナルカウントはUP_INTを強制的にhighレベルにする。以下のイベントは、電池保護信号が良好な電池であることを示している場合にUP_INT信号をhighレベルにアサートし得る(詳細はイベントハンドラーの節を参照)。SW/タイマー(プログラム可能)、WAKEUP遷移、lowレベルからhighレベルに、および/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、センサー接続遷移、lowレベルからhighレベルおよび/またはhighレベルからlowレベルに(プログラム可能)、UARTブレーク、RTC時間イベント(プログラム可能)、電池保護回路によるローバッテリーの検出、およびマスクされていないときのASIC割り込みのどれか。
ASICは、マイクロプロセッサに対するブートモード制御として働き得るGPIO1およびGPIO0パッドを有する。POR2イベントは、ビットがGPIO1&GPIO0(それぞれMSB、LSB)にマッピングされる2ビットカウンターをリセットする。UARTブレークの立ち上がりエッジでカウンターが1だけインクリメントされ、カウンターは4を法としてカウントし、状態11でインクリメントされた場合にゼロになる。ブートモードカウンターは、SPIを介してプリセット可能である。
イベントハンドラー/ウォッチドッグ
ASICは、システム状態および入力信号の変化を含む、イベントへの応答を定義するベントハンドラーを組み込んでいる。イベントは、すべての割り込みソースを含む(例えば、UART_BRK、WAKE_UP、センサー接続など)。刺激へのイベントハンドラーの応答は、SPIインターフェースを通じてソフトウェアによってプログラム可能である。しかし、応答によっては、ハード配線されるものもある(非プログラム可能)。
イベントハンドラーアクションは、イネーブル/ディセーブルVPAD_EN、イネーブル/ディセーブルCLK_32KHZ、アサートnRESET_OD、アサートUP_WAKEUP、およびアサートUP_INTを含む。イベントウォッチドッグのタイマー1からタイマー5は、250ミリ秒から16,384秒まで250ミリ秒単位でインクリメントするように個別にプログラム可能である。イベントウォッチドッグのタイマー6から8に対するタイムアウトはハードコーディングされる。タイマー6およびタイマー7に対するタイムアウトは1分であり、タイマー8に対するタイムアウトは5分である。
ASICは、イベントによってトリガーされたときにマイクロプロセッサの応答を監視するウォッチドッグ機能も有する。イベントウォッチドッグは、マイクロプロセッサがイベント誘導活動をアクノリッジするのに失敗したときにアクティベートされる。イベントウォッチドッグは、アクティベートされた後、プログラム可能なアクションのシーケンス、イベントウォッチドッグタイマー1〜5を実行し、その後、ハード配線されたアクションのシーケンス、イベントウォッチドッグタイマー6〜8を実行して、マクロプロセッサの応答を再獲得する。このアクションのシーケンスは、マイクロプロセッサへの割り込み、リセット、ウェイクアップ、アサート32KHzクロック、パワーダウン、および電源投入を含む。
これらのアクションのシーケンスにおいて、マイクロプロセッサが記録された活動のアクノリッジの能力を再獲得した場合、イベントウォッチドッグはリセットされる。ASICがマイクロプロセッサからアクノリッジを取得するのに失敗した場合、イベントウォッチドッグは、UART_BRKがマイクロプロセッサを再起動するのを許す状態でマイクロプロセッサをパワーダウンし、これはアラームをアクティベートする。アクティベートされると、アラーム状態が、プログラム可能な繰り返しパターンでパッドALARM上に約1kHzの周波数の方形波を発生する。プログラム可能なパターンは、プログラム可能なバーストオンおよびオフ時間がある2つのプログラム可能なシーケンスを有する。アラームは、SPIポートを介してプログラムされ得る別のプログラム可能なパターンを有する。これは、プログラム可能なバーストオンおよびオフ時間がある2つのプログラム可能なシーケンスを有する。
デジタル/アナログ(D/A)
好ましい一実施形態において、ASICは、2つの8ビットD/Aコンバータ4276、4278を有し、特性は以下のとおりである。
(i)D/Aは50pF未満の負荷で1ミリ秒未満で整定する。
(ii)D/Aは少なくとも8ビットの精度を有する。
(iii)出力範囲は0から1.22Vまたは0からVDDAのいずれかにプログラム可能である。
(iv)D/A電圧基準の温度感度は1mV/℃未満である。
(v)DNLは1LSB未満である。
(vi)D/Aによって消費される電流はVDDA電源から2μA未満である。
(vii)それぞれのD/Aはパッドへの出力lを有する。
(viii)D/A出力はハイインピーダンスである。負荷電流は1nA未満でなければならない。
(ix)D/Aパッドは、レジスタからデジタル信号を出力するようにプログラムされ得る。出力スイングはVSSAからVDDAである。
充電器/データダウンローダインターフェース
TX_EXT_OD4280は、入力がTX_UP入力パッド上の信号であるオープンドレイン出力である。これは、TX_EXT_ODパッドがUARTアイドル状態で開になることを許す。TX_EXT_ODパッドは、その電圧を監視する比較器を有する。電圧がデバウンス期間(1/4秒)に比較器閾値電圧より高い場合、出力nBAT_CHRG_EN(4281)はlowレベルになる。この比較器およびこの機能を有する他の関連する回路は、VBATおよび/またはVDDBUプレーン上にある。
この機能に関連する回路は、nBAT_CHRG_ENのアサートを無効化することなく外部デバイスとの通常の通信の結果生じるTX_EXT_ODパッド上でlowレベルを許さなければならない。POR1がアクティブである場合、nBAT_CHRG_ENはhighレベルになる(アサートされない)。比較器の閾値電圧は0.50Vから1.2Vの間である。比較器はヒステリシスを有し、立ち下がり閾値は、立ち上がり閾値より約25mV低い。
nRX_EXTパッドは、このパッド上で信号を反転し、それをRX_UPに出力する。この方法で、nRX_EXT信号はlowレベルでアイドル状態になる。nRX_EXTは、VBAT電圧までの入力を受け付けなければならない。nRX_EXT閾値は1.22V±3%である。この比較器の出力は、マイクロプロセッサが読み出すのにSPIバス上で利用可能である。
nRX_EXTパッドは、80±30nAとなる電流をプログラムにより吐き出す手段も組み込み、最高電圧はVBATである。ASICレイアウトは、マスク層の変化を最小数に抑えて50nA未満のステップで30nAから200nAまでこの電流を調節するマスクプログラム可能なオプションを有する。プログラム可能ビットは、UARTブレーク検出をブロックし、RX_UPを強制的にhighレベルにするために利用可能である。通常動作では、このビットは、nRX_EXTへの電流吐き出しを可能にする前にhighレベルにセットされ、次いで、RX_UP上でグリッチが発生しないこと、またはUARTブレークイベントが発生しないことを確実にするように電流吐き出しが無効化された後にlowレベルにセットされる。ウェットコネクタ検出器を実装することに留意し、nRX_EXTへの電流ソースがアクティブである間に、lowレベルの入力電圧を示すRX比較器は、漏れ電流を示す。ASICは、nRX_EXTパッド上に約100kオームのプルダウン抵抗器を備える。このプルダウンは、電流ソースがアクティブであるときに切断される。
センサー接続スイッチ
ASICは、パッド、SEN_CONN_SW(4282)を有するものとし、これはVSS(4284)への低い抵抗を検出することができる。SEN_CONN_SWは、SEN_CONN_SW=0Vで5から25μAの電流を吐き出し、最大開回路電圧は0.4Vである。ASICレイアウトは、マスク層の変化を最小数に抑えて5μA未満のステップで1μAから20μAまでこの電流を調節するマスクプログラム可能なオプションを有する。SEN_CONN_SWは、SEN_CONN_SWとVSSA(4234)との間に、閾値が2kから15kオームである抵抗の存在を検出する関連する回路を有する。この回路の平均電流ドレインは、最大50nAである。サンプリングは、この低い電流を達成するために使用されなければならない。
発振器較正回路
ASICは、入力が内部または外部クロックソースに導かれ得るカウンターを有する。一方のカウンターで、他方のカウンターに対するプログラム可能なゲーティング間隔を生成する。ゲーティング間隔は、32kHz発振器からの1から15秒を含む。いずれかのカウンターへ導かれ得るクロックは、32kHz、RC発振器、高速RC発振器、およびGPIOパッドからの入力である。
発振器バイパス
ASICは、発振器の出力のそれぞれの代わりに外部クロックを使用することができる。ASICは、特定のTEST_MODEがアサートされたときのみ書き込めるレジスタを有する。このレジスタは、RC発振器に対する外部入力を有効化するビットを有しており、他のアナログテスト制御信号と共有され得る。しかし、このレジスタは、TEST_MODEがアクティブでない場合に発振器バイパスビットがアクティブになるのを許さない。
ASICは、RC発振器をバイパスする外部クロックに対する入力パッドも有する。パッド、GPIO_VBATは、VBAT電力プレーン上にある。ASICは、32KHZ発振器に対するバイパスイネーブルパッド、OSC32K_BYPASSをさらに備える。highレベルのときに、32KHZ発振器出力は、OSC32KHZ_INパッドを駆動することによって供給される。通常は、OSC32KHZ_INパッドは水晶発振器に接続されることに留意されたい。
ASICは、HS_RC_OSCをバイパスする外部クロックに対する入力を有する。バイパスは、プログラム可能レジスタビットによって有効化される。HS_RC_OSCは、VDDプレーン上のGPIOによって、またはVPADプレーン上のGPIOによってプログラムにより供給され得る。
SPIスレーブポート
SPIスレーブポートは、チップセレクト入力(SPI_nCS)4289、クロック入力(SPI_CK)4286、シリアルデータ入力(SPI_MOSI)4287、およびシリアルデータ出力(SPI_MISO)4288からなるインターフェースを備える。チップセレクト入力(SPI_nCS)は、負論理入力であり、オフチップSPIマスターによってアサートされ、SPIトランザクションを開始し、限定する。SPI_nCSがlowレベルにアサートされた場合、SPIスレーブポートは、SPIスレーブとして自己構成し、クロック入力(SPI_CK)に基づきデータトランザクションを実行する。SPI_nCSが非アクティブの場合、SPIスレーブポートは自己リセットし、リセットモードに留まる。このSPIインターフェースはブロック転送をサポートしているので、マスターは、転送が終了するまでSPI_nCSをlowレベルに保つべきである。
SPIクロック入力(SPI_CK)は、常に、SPIマスターによってアサートされる。SPIスレーブポートは、SPI_CKの立ち上がりエッジを使用して着信データをSPI_MOSI入力上でラッチし、SPI_CKの立ち下がりエッジを使用して発信データをSPI_MISO出力上に駆動する。シリアルデータ入力(SPI_MOSI)は、SPIマスターからSPIスレーブにデータを転送するために使用される。すべてのデータビットは、SPI_CKの立ち下がりエッジの後にアサートされる。シリアルデータ出力(SPI_MISO)は、SPIスレーブからSPIマスターにデータを転送するために使用される。すべてのデータビットは、SPI_CKの立ち下がりエッジの後にアサートされる。
SPI_nCS、SPI_CK、およびSPI_MOSIは、SPIマスターがパワーダウンされていない限り、常にSPIマスターによって駆動される。VPAD_ENがlowレベルである場合、これらの入力は、それらの入力に関連する電流ドレインが10nA未満であり、SPI回路がリセットまたは非アクティブに保持されるように調整される。SPI_MISOは、SPI_nCSがアクティブである場合にのみSPIスレーブポートによって駆動され、そうでない場合には、SPI_MISOはトライステート状態である。
チップセレクト(SPI_nCS)は、SPIデータトランザクションのデータ転送パケットを定義し、フレーム化する。データ転送パケットは、3つの部分からなる。4ビットコマンドセクションと、それに続いて12ビットアドレスセクションがあり、その後に任意の個数の8ビットデータバイトが続く。コマンドビット3は方向ビットとして使用される。「1」は書き込みオペレーションを示し、「0」は読み出しオペレーションを示す。コマンドビット2、1、および0の組合せは、以下の定義を有する。未使用の組合せは未定義である。
(i)0000:データを読み出し、アドレスをインクリメントする。
(ii)0001:データを読み出すが、アドレスに変更はない。
(iii)0010:データを読み出し、アドレスをデクリメントする。
(iv)1000:データを書き込み、アドレスをインクリメントする。
(v)1001:データを書き込むが、アドレスに変更はない。
(vi)1010:データを書き込み、アドレスをデクリメントする。
(vii)x011:テストポートアドレッシング
12ビットアドレスセクションは、開始バイトアドレスを定義する。SPI_nCSが、最初のデータバイトの後もアクティブのままであり、マルチバイト転送であることを示す場合、アドレスは、1バイト転送される毎に1だけインクリメントされる。アドレスの(アドレス<11:0>の)ビット<11>は、最高アドレスビットを示す。アドレスは、境界に到達するとラップアラウンドする。
データはバイト形式であり、ブロック転送は、すべてのバイトを1つのパケットで転送できるようにSPI_nCSを拡張することによって実行され得る。
マイクロプロセッサ割り込み
ASICは、ホストマイクロプロセッサに割り込みを送信することを目的として、VPAD論理レベル、UP_INTの出力を有する。マイクロプロセッサ割り込みモジュールは、割り込みステータスレジスタ、割り込みマスクレジスタ、およびすべての割り込みステータスに論理OR演算を実行して1つのマイクロプロセッサ割り込みにする機能からなる。割り込みは、エッジ検知とレベル検知の両方のスタイルをサポートするように実装されている。割り込みの極性は、プログラム可能である。デフォルトの割り込みはTBDである。
好ましい一実施形態において、AFE ASIC上のすべての割り込みソースは、割り込みステータスレジスタに記録される。「1」を対応する割り込みステータスビットに書き込むと、対応する保留中の割り込みがクリアされる。AFE ASIC上のすべての割り込みソースは、割り込みマスクレジスタを通じてマスク可能である。「1」を対応する割り込みマスクビットに書き込むと、対応する保留中の割り込みのマスキングが有効化される。「0」を対応する割り込みマスクビットに書き込むと、対応する割り込みのマスキングが無効化される。割り込みマスクレジスタのデフォルトの状態は、TBDである。
汎用入力/出力(GPIO)/パラレルテストポート
本発明の実施形態では、ASICは、VPADレベル信号上で動作する8個のGPIOを有することができる。ASICは、VBATレベル信号上で動作する1つのGPIOと、VDDレベル信号上で動作する1つのGPIOを有する。GPIOはすべて、少なくとも以下の特性を有する。
(i)レジスタビットは、それぞれのGPIOの選択および方向を制御する。
(ii)ASICは、SPIインターフェース上で読み出せる入力としてGPIOを構成するための手段を有する。
(iii)ASICは、割り込みを発生する入力としてGPIOを構成するための手段を有する。
(iv)ASICは、SPIインターフェース上で書き込めるレジスタビットによって制御される出力としてそれぞれのGPIOを構成するための手段を有する。
(v)プログラムにより、ASICは、GPIO_VBATまたはGPIO_VDDに印加される入力信号をGPIO(VPAD電力プレーン上の)に出力することができる。(レベルシフト機能)。
(vi)ASICは、発振器較正回路への入力としてそれぞれのGPIOを構成するための手段を有する。
(vii)ASICは、それぞれの電力プレーン上の少なくとも1つのGPIOへのそれぞれの汎用比較器出力を構成するための手段を有する。比較器出力の極性は、プログラム可能ビットによってプログラム可能である。
(viii)GPIOは、マイクロプロセッサ割り込み発生機能を有する。
(ix)GPIOは、ドレイン出力をオープンするようにプログラム可能である。
(x)VPAD電力プレーン上のGPIOは、マイクロプロセッサの起動制御を実装するように構成可能である。
パラレルテストポートは、VPAD電圧プレーン上の8ビットGPIOを共有する。このテストポートは、レジスタの内容およびさまざまな内部信号を観察するために使用される。このポートの出力は、通常モードにおけるポート構成レジスタによって制御される。8'hFFをGPIO_O1S_REG & GPIO_O2S_REGの両レジスタに書き込むと、テストポートデータはGPIO出力へ導かれるが、8'h00をGPIO_ON_REGレジスタに書き込むと、テストポートデータは無効化され、GPIO出力上へのGPIOデータは有効化される。
レジスタおよび事前グループ化された内部信号は、SPIスレーブポートを通じてターゲットレジスタをアドレッシングすることによってこのテストポート上で観察することができる。SPIパケットは、4'b0011に設定されたコマンドビットと、この後に続く12ビットターゲットレジスタアドレスとを有する。パラレルテストポートは、次のテストポートアドレッシングコマンドが受信されるまでアドレッシングされたレジスタの内容を表示し続ける。
アナログテストポート
ICは、パッド、TP_ANAMUX(4290)に信号を供給するマルチプレクサを有し、これはテストのため内部アナログ回路ノードに対する視認性をもたらす。このICは、パッド、TP_RES(4260)に信号を供給するマルチプレクサも有し、これもテストのため内部アナログ回路ノードに対する視認性をもたらす。このパッドは、さまざまなシステム較正を実行するために通常のアプリケーションにおける高精度1メグオームの抵抗器も収容する。
チップID
ASICは、32ビットマスクプログラム可能IDを備える。SPIインターフェースを使用するマイクロプロセッサは、このIDを読み取ることができる。このIDは、IDを変更する場合にチップの経路変更が必要にならないようにアナログ電子回路ブロック内に配置されるべきである。設計は、IDを変更するのに1つの金属または1つのコンタクトマスクのみが必要であるような設計であるべきである。
スペアテスト出力
ASICは、SPIインターフェース上で送信されるコマンドの下で8ビットGPIOに多重化され得る16個のスペアデジタル出力信号を有する。これらの信号は、2つの8ビットバイトとして編成され、使用されない場合にVSSに接続される。
デジタルテスト
ASICは、2つの入力ピン、TEST_CTL0(4291)およびTEST_CTL1(4292)を使用するテストモードコントローラを有する。テストコントローラは、以下の機能を有するテスト制御信号の組合せから信号を発生する(TEST_CTL<1:0>)。
(i)0 通常動作モードである。
(ii)1 アナログテストモードである。
(iii)2 スキャンモードである。
(iv)3 VDD_ENがGPIO_VBATへの入力によって制御されるアナログテストモードである。
テストコントローラロジックは、VDD電力プレーンとVDDBU電力プレーンとに分割される。スキャンモードでは、デジタルロジックへのアナログ出力を調整するためにテストLT_VBATはhighレベルにアサートされるべきである。ASICは、高速デジタルテストに十分に可能な程度のデジタルロジックで実装されたスキャン連鎖を有する。
漏れテストピン
ASICは、LT_VBATと称されるピンを有し、これはhighレベルのときに、すべてのアナログブロックを非アクティブモードにし、これにより漏れ電流のみが電源部から引かれるようにする。LT_VBATは、アナログブロックからのすべてのデジタルを安定したhighまたはlowレベル状態にし、インターフェースロジックの電流ドレインに影響を及ぼさないようにする。LT_VBATパッドは、VBATプレーン上にあり、10kから40kオームの抵抗でプルダウンしてある。
電源条件
本発明の実施形態では、ASICは、最低でも、マイクロプロセッサのクロックがオフになり、32kHzリアルタイムクロックが動作し、回路がセンサー接続、WAKE_UPピンのレベルの変化、またはnRX_EXT入力のBREAKを検出するようにアクティブになる低電力モードを備える。このモードは、最大4.0μAのVBAT(VDDBU)、VDD、およびVDDAからの全電流ドレインを有する。電池保護回路が、ローバッテリーを検出すると(電池保護回路の説明を参照)、ASICは、VBATおよびVDDBU電力プレーンのみがアクティブであるモードに入る。これは、ローバッテリー状態と称される。このモードにおけるVBAT電流は、0.3μA未満である。
ASICがポテンシオスタット構成にプログラムされ、どれか1つのWORK電極がH2O2(過酸化物)モードでアクティブであり、その電圧が1.535Vに設定され、COUNTER増幅器は1.00Vに設定されたVSET_REでオンであり、20MEG負荷抵抗器がWORKとCOUNTERとの間に接続され、COUNTERとREとが一緒に接続され、1分毎に1回WORK電極電流測定を行う場合、すべての電源の平均電流ドレインは、7μA未満である。較正後の測定電流は、26.75nA±3%であるべきである。追加のWORK電極を有効化すると、組み合わされた電流ドレインの増加は2μA未満であり、WORK電極の電流は25nAである。
ASICがポテンシオスタット構成にプログラムされ、診断機能がCOUNTER電極に関してWORK電極のうちの1つのインピーダンスを測定するよう有効化されている場合、ASICは、以下の条件を満たすように構成される。
(i)テスト周波数:0.1、0.2、0.3、0.5Hz、1.0、2.0、5.0、10、100、1000、および4000Hz。
(ii)上記の周波数の測定は、50秒を超えないものとする。
(iii)ASICに供給される全電荷は、8ミリクーロン未満である。
環境
本発明の好ましい実施形態において、ASICは以下のとおりである。
(i)0から70℃の商用温度範囲で動作し、すべての仕様を満たす。
(ii)-20℃から80℃まで機能に関しては動作するが、精度が落ちる可能性がある。
(iii)-30から80℃の温度範囲で保管された後に動作することが期待される。
(iv)1%から95%の相対湿度範囲で動作することが期待される。
(v)ESD保護は断りのない限りTBDパッケージでパッケージされたときにすべてのピン上で±2KV人体モデルより大きい。
(vi)WORK1〜WORK5、COUNTER、RE、TX_EXT_OD、およびnRX_EXTパッドが±4KV人体モデルを超えて耐えるように構成される。
(vii)WORK1〜WORK5およびREパッドの漏れ電流は40℃で0.5nA未満であるように構成される。
本発明の実施形態では、ASICは、0.25ミクロンCMOSプロセスで製造されるものとしてよく、ASICに対するバックアップデータは、DVDディスク、916-TBD上にある。
上で詳しく説明されたように、ASICは、(i)複数のポテンシオスタットをサポートし、酸素または過酸化物のいずれかに基づく多端子グルコースセンサーとインターフェースし、(ii)マイクロコントローラとインターフェースして、小消費電力センサーシステムを形成し、(iii)EISベースのパラメータの測定値に基づきEIS診断を実行するために必要なアナログ電子回路を提供する。次に、EISベースのパラメータの測定および計算について、本発明の実施形態に従って説明する。
すでに述べたように、0.1Hzから8kHzまでの範囲内の周波数のインピーダンスは、センサー電極の状態に関する情報をもたらし得る。AFE IC回路は、測定強制信号を生成するための回路およびこれらのインピーダンスを計算するために使用される測定を行うための回路を組み込んでいる。この回路に関する設計上の考慮事項として、電流ドレイン、精度、測定速度、必要な処理量、および制御マイクロプロセッサによって必要なオンタイムの長さが挙げられる。
本発明の好ましい一実施形態において、AFE ICが電極のインピーダンスを測定するために使用する技術では、正弦波電圧を電極を駆動するDC電圧上に重ね合わせ、結果として得られるAC電流の位相および振幅を測定する。正弦波を生成するために、AFE ICは、デジタル合成正弦波電流を組み込む。このデジタル技術が使用されているのは、周波数および位相が水晶発振子から得られる時間基準によって正確に制御され、またDCから最大8kHzまでの周波数を容易に発生することができるからである。正弦波電流は、電圧源と直列につながる抵抗器に印加され、AC成分を電極電圧に加える。この電圧は、AC強制電圧である。次いで、これは選択されたセンサー電極を駆動する増幅器によってバッファリングされる。
電極を駆動する電流は、強制正弦波からの結果として得られるAC電流成分を含み、電圧に変換される。次いで、この電圧は、合成正弦波に関して固定された位相を有する方形波と乗算することによって処理される。次いで、この乗算された電圧を積分する。プログラム可能な数の積分間隔--駆動正弦波の1/2期間の整数個分である間隔--の終わりに、ADCによって電圧が測定される。積分された電圧の値を伴う計算によって、インピーダンスの実部および虚部を求めることができる。
インピーダンス測定に積分器を使用する利点は、測定のノイズ帯域幅が、波形を単にサンプリングすることに関して著しく低減されるという点にある。また、サンプリング時間要件は著しく低減され、ADCの速度要件を緩和する。
図45は、AFE ICのEIS回路の主ブロックを示している(図42Bの参照番号4255で示されている)。IDAC4510は、システムクロックと同期して階段状正弦波を発生する。このシステムクロックの高い周波数でIDACはデジタルコードを含むルックアップテーブル内を辿る。このコードによりIDACが駆動され、正弦波を近似する出力電流を発生する。この正弦波電流は抵抗器の端子間に強制されDCオフセット、VSET8(4520)を持つAC成分、Vin_acを与える。IDAC回路が無効化されると、DC出力電圧はVSET8に戻り、電極平衡に対する攪乱は最小になる。次いで、この電圧は、直列抵抗、Rsenseを通して電極を駆動する増幅器4530によってバッファリングされる。Rsense上の差動電圧は、電流に比例する。この電圧は、電圧に+1または-1のいずれかを乗算する乗算器4540に送られる。これは、スイッチおよび差動増幅器(計装用増幅器)によって行われる。システムクロックは分周されて乗算機能を制御する位相クロック4550を発生し、また正弦波に関して0、90、180、または270度に設定され得る。
図46A〜図46Fおよび図47A〜図47Fのプロットは、実抵抗を表す、0度の位相ずれを有する電流に対する図45に示されている回路の信号のシミュレーションを示している。これらの例示的なシミュレーションについて、シミュレーション入力値は、0.150Vに等しい電流センス電圧を与えるように選択された。インピーダンスおよび位相を導出するのに十分な情報を得るために、2つの積分が必要である。1つは0度位相乗算(図46A〜図46F)によるもので、もう1つは90度位相乗算(図47A〜図47F)によるものである。
インピーダンスの計算
積分器出力を記述する方程式を以下に示す。簡単のため、正弦波周期の1/2のみを考察する。図46A〜図46Fおよび図47A〜図47Fのプロットからわかるように、全積分器出力は、近似的に、積分された1/2サイクルの数を乗算した1/2正弦波サイクルの積分値である。積分時間に関する乗算スイッチは、積分器に対する信号の「ゲーティング」機能を実行し、これは積分の範囲を設定するものとみなせることに留意されたい。乗算信号は、生成される正弦波に対する固定位相を有する。これは、ソフトウェアによって0、90、180、または270度に設定され得る。正弦波が乗算方形波に関して同相(ずれが0度)である場合、積分の範囲は、π(180°)と0(0°)となる。正弦波が90度ずれる場合、積分の範囲は、3/4π(270°)および1/4π(90°)とみなせる。
駆動正弦波に関して同相(0°)の乗算方形波の公式を以下に示す。これは、電流の実成分に比例する電圧を与える。Φは、乗算方形波に関する正弦波の位相ずれであり、Voutは、積分器出力であり、Aamplは、電流正弦波振幅である。また正弦波の周期は、1/fであり、RCは、積分器の時定数である。
Φ=0ならば、
である。これは、電流の実部に対応している。
電流の虚数成分に比例する出力を生成する駆動正弦波に関する乗算方形波の直角位相(90°)については以下のとおりである。
Φ=0ならば、
である。これは、電流の虚部に対応している。
図46A〜図46Fに示されている第1のプロット例において、Aamplは0.150vであり、周波数は1kHzであり、Φ=0であり、積分器に対するRCは20Mオームおよび25pFで、RC=0.5ミリ秒を与える。これらの数値を方程式に代入すると、0.09549vが得られ、これは図46のプロットの積分器出力と十分に対比される。積分期間にわたる積分器出力は、積分の開始から測定までのデルタ電圧であることに留意されたい。
90°の方形波乗算について、sin(0)=0なので結果は0であるべきである。シミュレーションの結果はこの値に近い。
位相を計算するために、
なので、
となるが、ただし式中、Vout90は、乗算に対する90°の位相ずれを持つ積分器出力であり、Vout0は、0°の位相ずれに対する積分器出力である。Vout90およびVout0の出力は、同じ数の1/2サイクルについて積分されるか、またはサイクルの数で正規化されなければならない。実際のソフトウェア(例えば、ASIC)実装では、整数個数のサイクルが乗算器の前の回路内のオフセットを相殺するので整数サイクル(360°)のみが許されていることに留意することが重要である。
電流の大きさは、
および
もしくは
、または
から求めることができる。この電流は、上で計算されたとおりの位相角を有する。
上記の分析から、乗算信号に関して電流の振幅および位相を決定することができることがわかる。強制電圧は、乗算信号に関して固定された位相(0、90、180、または270度)で生成される、つまり、これは正確に制御されるようにデジタル方式で行われるということである。しかし、強制正弦波が電極に印加される前に経路内に少なくとも1つの増幅器があり、このことが、不要な位相ずれおよび振幅誤差を持ち込む。これは、電極の近くで電気的に得られる強制正弦波信号を積分することで補償され得る。これにより、強制電圧の振幅および位相を決定することができる。電流と電圧の両方の波形に対する経路は、同じ回路で処理されるので、アナログ回路の利得および位相誤差は相殺される。
注目している変数はインピーダンスなので、Aamplを実際に計算する必要はない可能性がある。電流波形および電圧波形は、同じ経路で積分されるので、電流と電圧との比に単純な関係が存在する。乗算機能の位相を記述するために積分された電流センス電圧VI_outおよび積分された電極電圧をVV_outとして下付き文字を付けて呼び出すと以下のようになる。
インピーダンスは、電圧を電流によって除算して得られる。以下のようになる。
電圧および電流の大きさも、0および90度の位相積分電圧の平方の平方根から得られる
。したがって、以下も使用することができる。
波形の積分は、比較的高い周波数、例えば、256Hzを超える周波数に対して1つのハードウェア積分器で実行され得る。高い周波数は、次の4つの測定サイクルを必要とする。(i)1つは同相センサー電流に対する測定サイクル、(ii)1つは90度位相はずれのセンサー電流に対する測定サイクル、(iii)1つは同相強制電圧に対する測定サイクル、および(iv)1つは90度位相はずれの強制電圧に対する測定サイクル。
2つの積分器を比較的低い周波数、例えば、約256Hzより低い周波数に対して使用することができ、積分値はシステムマイクロプロセッサで積分器の結果を数値的に組み合わせたものである。サイクル毎に積分が何回あるかを知ることで、マクロプロセッサは0および90度の成分を適切に計算することができる。
積分を強制AC波形と同期させ、より低い周波数では積分を少なくとも4つの部分に分けることで、マイクロプロセッサ内の積分部分の組合せで乗算機能を実現することができるのでハードウェア乗算器が不要になる。したがって、実部および虚部の電流情報を得るために積分パスは1つあればよい。より低い周波数では、増幅器の位相誤差がより小さくなり、したがって、ある周波数以下、例えば、1Hzから50Hzの間の周波数、好ましくは約1Hzより低い周波数で、強制電圧位相が決定される必要はなくなる。また、振幅は、より低い周波数について一定であると仮定することが可能であり、したがって、インピーダンスを決定するために、安定化した後の測定サイクルは1つあればよい。
上で指摘されているように、比較的高い周波数に対しては1つのハードウェア積分器が使用されるが、比較的低い周波数では、2つの積分器が使用され得る。この点に関して、図45の配線図は、AFE IC内のEIS回路を比較的高いEIS周波数に使用されるものとして示している。これらの周波数では、積分器は、1つのサイクルで積分している間は飽和しない。実際、最高周波数に対して複数のサイクルが積分されるが、これはより大きな信号対雑音比を結果として生み出すより大きな出力信号を出すからである。
比較的低い周波数では、例えば、約500Hzより低い周波数などでは、積分器出力は、共通パラメータで飽和し得る。したがって、これらの周波数について、交互に切り換えられる2つの積分器が使用される。すなわち、第1の積分器が積分している間、第2の積分器はADCによって読み出されており、次いで、第1の積分の積分時間が終わったら積分する準備をするためリセットされる(ゼロに合わされる)。このようにして、信号は、積分内にギャップを入れることなく積分することができる。これは、図45に示されているEIS回路に第2の積分器および関連するタイミング制御部を加える。
安定化サイクルの考慮事項
上記の分析は、電流波形がサイクル毎に変化しない定常状態条件に対するものである。この条件は、抵抗器-キャパシタ(RC)回路網に正弦波を印加した直後には、キャパシタの初期状態のせいで満たされない。電流位相は、0度から始まり、定常状態値まで進む。しかし、測定では電流ドレインを低減するために費やす時間を最短にし、またDCセンサー測定(Isig)を行う十分な時間を用意することが望ましい。こうして、十分に正確な測定値を得るために必要なサイクルの数を決定する必要がある。
単純なRC回路--抵抗器とキャパシタとを直列に接続した--に対する式は以下のとおりである。
上記をI(t)について解くと、以下が得られる。
ただし式中、Vc0は、キャパシタ電圧の初期値であり、Vmは、駆動正弦波の大きさであり、ωは、ラジアン周波数(2πf)である。
第1の項は、非定常状態条件を定義する項を含む。システムの整定を高速化する一方法は、第1の項を0に等しいと置くことであり、これは、例えば、
または
を設定することによって行える。
これは、実際には必要でない場合があるが、強制正弦波の初期位相をDC定常状態点からVcinitに即座にジャンプするように設定することが可能である。この技術を特定の周波数および予想される位相角について評価し可能な時間短縮を見つけることができる。
非定常状態項に、時間の指数関数を乗算する。これは、定常状態条件にどれだけ速く到達するかを決定する。RC値は、インピーダンス計算情報から一次近似として決定され得る。式
とR=Zcosφが与えられると
が得られる。
5度の位相角で100Hzのセンサーでは、これは時定数が18.2ミリ秒であることを意味する。1%未満に整定する場合、これは約85ミリ秒の整定時間または8.5サイクルを意味する。その一方で、65度の位相角で0.10Hzのセンサーでは、これは時定数が0.75秒であることを意味する。1%未満に整定する場合、これは約3.4秒の整定時間を意味する。
したがって、上で詳述されているような本発明の実施形態において、ASICは、(少なくとも)7個の電極パッドを備え、そのうちの5個はWORK電極(すなわち、検知電極、または作用電極、またはWE)として割り当てられ、1個はCOUNTER(すなわち、対向電極、もしくはCE)というラベルを付けられ、残り1個はREFERENCE(すなわち、基準電極、またはRE)というラベルを付けられる。カウンター増幅器4321(図42Bを参照)は、プログラムにより、COUNTER、REFERENCE、および/またはWORK割り当てパッドのどれかに、およびこれらの組合せに接続され得る。すでに述べたように、本発明の実施形態は、例えば、5個よりも多いWEを備えることができる。この点に関して、本発明の実施形態は、5個を超える作用電極とインターフェースするASICも対象とし得る。
本明細書で説明されているようなASICを使用することで、上述の5個の作用電極、対向電極、および基準電極のうちのそれぞれは、個別に独立してアドレッシング可能である。したがって、5個の作用電極のうちのどれか1つがオンにされ、Isig(電極電流)を測定し、どれか1つがオフにされ得る。さらに、5個の作用電極のうちのどれか1つは、EIS関係パラメータ、例えば、インピーダンスおよび位相の測定のためEIS回路に動作可能に接続/結合され得る。言い換えると、EISは、作用電極のうちの1つまたは複数で選択的に動作可能である。それに加えて、5個の作用電極のそれぞれの各電圧レベルは、基準電極に関して振幅および符号を独立してプログラムされ得る。これには多くの用途があり、例えば、1つまたは複数の電極上の電圧を変化させて干渉に対する電極の敏感さを下げることが挙げられる。
2つまたはそれ以上の作用電極が冗長電極として採用されている実施形態では、本明細書で説明されているEIS技術を使用して、例えば、複数の冗長電極のうちのどれが最適な機能している(例えば、より高速な始動、ディップが最小であるか、またはまったくないこと、感度損失が最小であるか、またはまったくないことなどに関して)かを判定し、これにより、グルコース測定値を得るために最適な作用電極のみをアドレッシングするようにできる。後者は、次いで、継続的な較正の必要性を、なくせないとしても、大幅に低減することができる。それと同時に、他の(冗長)作用電極は、(i)EISは「オフ」の電極に対しては動作し得ないので、オフにしてパワーマネージメントを行いやすくすること、(ii)パワーダウンすること、および/または(iii)EISを介して定期的に監視し、回復したかどうかを調べ、オンラインに戻せるようにすることが可能である。その一方で、最適でない電極は、較正の要求をトリガーすることができる。ASICは、電極のどれか--例えば、故障しているか、またはオフラインの作用電極を含む--を対向電極にすることもできる。したがって、本発明の実施形態において、ASICは、複数の対向電極を有し得る。
上記では安全な冗長性を一般的に扱っているが、冗長電極が同じサイズであり、同じ化学作用、同じ設計などを有している場合、上述の診断アルゴリズム、融合方法、および関連するASICも、空間的に分散された、類似のサイズの、または異なるサイズの、作用電極とともに埋め込み時間の関数としてセンサー埋め込み完全性を評価する手段として使用することができる。したがって、本発明の実施形態において、異なる形状、サイズ、および/または構成を有し得る同じフレックス上の電極を含む、または特定の環境を対象とするために使用される、同じまたは異なる化学作用を含む、センサーが使用され得る。
例えば、一実施形態では、1つまたは2つの作用電極は、例えばかなり良好な水和を有するように設計され得るが、2または3日を過ぎて持続し得ない。その一方で、他の作用電極は、長続きする耐久性を有するが、初期水和が遅い場合がある。そのような場合のために、作用電極の第1のグループが早期着用時にグルコースデータを生成するために使用され、その後、中間着用時に、電極の第2のグループへの切り換えを行うことができる(例えば、ASICを介して)、アルゴリズムが設計され得る。そのような場合において、融合アルゴリズムは、例えば、WEのすべてについてデータを必ずしも「融合」し得ず、使用者/患者は、検知コンポーネントが中間着用時に切り換えられたことに気づかない。
さらに他の実施形態では、全体的なセンサー設計は、異なるサイズのWEを含み得る。そのようなより小型のWEは、一般的に、より低いIsig(より小さな幾何学的領域)を出力し、低血糖検出/精度に対して特に使用され得るが、より大きなWE--より大きなIsigを出力する--が、正常血糖および高血糖精度に対して特に使用され得る。サイズの違いがある場合、これらの電極の診断のために、異なるEIS閾値および/または周波数が使用されなければならない。ASICは、上で説明されているように、プログラム可能な電極特有のEIS基準を有効化することによってそのような要件に対応することができる。前の例と同様に、信号は、SG出力を生成するために必ずしも融合され得ない(すなわち、異なるWEは異なるときにタップされ得る)。
すでに指摘されたように、ASICは、刺激の開始および停止を指令し、約100Hzより高い周波数に対するEISベースのパラメータの測定を調整するプログラム可能なシーケンサ4266を備える。シーケンスの終わりに、データはバッファメモリ内にあり、マイクロプロセッサが必要なパラメータ(の値)を素早く取得するために利用可能である。これにより時間が短縮され、またマクロプロセッサの介入が少なくて済むためシステム電力要件が低減される。
約100Hzより低い周波数では、プログラム可能なシーケンサ4266は、EISに対する刺激の開始および停止を調整し、データをバッファリングする。測定サイクルの終わりに、またはバッファが満杯に近くなった場合のいずれかにおいて、ASICは、マイクロプロセッサに割り込みをかけて、利用可能なデータを収集する必要があることを指示することができる。バッファの深さは、EISベースのパラメータが収集されているので、マイクロプロセッサが他のタスクを実行していられる時間、またはスリープできる時間を決定する。例えば、好ましい一実施形態において、バッファは測定64回分の深さを有する。ここでもまた、マイクロプロセッサがデータ断片を収集する必要がなくなるのでエネルギーの節約になる。また、シーケンサ4266は、より高速な整定の可能性を有する、0と異なる位相で刺激を開始することもできる。
ASICは、上で説明されているように、マイクロプロセッサへの電力を制御することができる。したがって、例えば、電力を完全にオフにすること、またマイクロプロセッサの電源投入を、例えば、機械スイッチまたは容量もしくは抵抗センサーを使用したセンサー接続/切断の検出に基づき行うことができる。さらに、ASICは、マイクロプロセッサのウェイクアップを制御することができる。例えば、マイクロプロセッサは、低電力モードに入ることができる。次いで、ASICは、例えば、センサー接続/切断検出がASICによって行われた場合に信号をマイクロプロセッサに送信し、この信号により処理部をウェイクアップすることができる。これは、例えば、機械スイッチまたは容量ベースの検知方式などの技術を使用してASICによって生成される信号に応答することを含む。これにより、マイクロプロセッサは、長時間にわたってスリープし、それによって、電力ドレインを著しく軽減することができる。
上で説明されているようなASICを使用して、酸素検知および過酸化物検知の両方を同時に実行できることを繰り返し述べることは重要であるが、それは、5個(またはそれ以上)の作用電極はすべて独立しており、独立アドレッシング可能であり、したがって望みの形で構成され得るからである。それに加えて、ASICでは、複数のマーカーに対して複数の閾値が可能であり、したがって、EISはそれぞれ独自の閾値があるさまざまな要因--例えば、Vcntrのレベル、静電容量変化、信号ノイズ、Isigの大きな変化、ドリフト検出など--によってトリガーされ得る。それに加えて、それぞれのそのような要因について、ASICは、複数のレベルの閾値を有効化する。
本発明のさらに別の実施形態において、EISは、代替的メッキ測定ツールとして使用することができ、センサー基板の作用電極と対向電極の両方のインピーダンスが、基準電極に関して、電気メッキ後に、テストされ得る。より詳細には、電極表面の平均的粗さを与えるセンサー基板の測定を実行するための既存のシステムは、それぞれの電極から小さな領域をサンプリングして、その小さな領域の平均粗さ(Ra)を決定する。例えば、現在では、Zygo非接触干渉計が、電極表面領域を定量化し、評価するために使用されている。Zygo干渉計は、対向電極および作用電極の小さな領域を測定し、平均粗さ値をもたらす。この測定結果は、それぞれのセンサー電極粗さと実際の電気化学的表面領域との相関を与える。現在使用されているシステムに制限があるため、製造効率の観点から、これが極端に時間がかかる活動であるため、電極表面全体を測定することは可能でない。
意味のある定量的方法で電極全体を測定するために、本明細書において、現在の、例えば、Zygoベースのテストより速く、センサー性能の観点からより意味のある、表面領域を測定するためのEISベース方法が開発された。特に、電極表面特性化におけるEISの使用は、いくつかの点で有利である。第1に、複数のプレートを同時にテストすることを可能にすることによって、EISは電極をテストするより高速な方法を構成し、それによって、より高い効率およびスループットを実現しながらコスト効果を高め、品質を維持する。
第2に、EISは、テスト対象の電極上の直接的電気化学的測定である、すなわち、これにより、電極に対するEISベースのパラメータの測定を行うことを可能にし、測定された値と電極の真の電気化学的表面領域との相関をもたらす。したがって、電極の小さなセクション上で平均高さの差を取る代わりに、EIS技術では、電極表面領域全体の二重層容量(表面積に直接関係する)を測定し、したがって、実際の表面積を含む、電極の特性をよりよく表す。第3に、EISテストは、非破壊的であり、したがって、将来のセンサー性能に影響を及ぼさない。第4に、EISは、測定される表面領域が脆いか、または簡単に扱うことが難しい場合に特に有用である。
本発明のこの実施形態の目的に関して、注目しているEISベースのパラメータは、オーム単位のインピーダンスの大きさ(|Z|)および電解質中に浸漬された電極の度単位の位相角(Φ)の測定結果に基づき、すでに説明されているように得られる、虚インピーダンス(Zim)である。高速プロセスであることに加えて、対向電極(CE)およびWEの両方の電気化学的インピーダンスを使用するテストは、それぞれの電極の表面領域を測定する正確な方法であることが判明している。これもまた、グルコースセンサー性能における電極サイズの役割は、少なくとも一部は、グルコースとGOXとの酵素反応によって生じる過酸化水素の酸化によって決定されるが、実験から、WE表面積を大きくすると、低始動事象の発生回数が減少し、センサー応答性が改善されるため、重要であり、これらは両方ともある程度詳しくすでに説明されている潜在的故障モードのうちにある。
注目しているEISベースのパラメータとしての虚インピーダンスを再び参照すると、電極表面領域を駆動する重要パラメータ、したがってその虚インピーダンス値は、(i)電気メッキ条件(秒単位の時間およびマイクロアンペア単位の電流)、(ii)表面積と最もよく相関するEIS周波数、(iii)EISシステムにおいて使用される電解質に関連する単一電極上で実行される測定の回数、および(iv)DC電圧バイアスであることが判明している。
上記のパラメータに関連して、実験から、白金メッキ溶液を電解質として使用すると、虚インピーダンスと表面積との間の相関がスペクトル全体にわたって低下することがわかった。しかし、硫酸(H2SO4)を電解質として使用すると、虚インピーダンスと表面積比(SAR)との間、特に100Hzと5Hzの比較的低い周波数の間の、非常に良好な相関データが得られ、リン酸緩衝生理食塩水をゼロmg/mlのグルコース(PBS-0)とともに使用すると、なおいっそう良好な相関データが得られる。さらに、三次回帰モデルを使用する適合された回帰分析は、本発明の実施形態において、最良の相関が10Hzの周波数で生じ得ることを示している。それに加えて、バイアス電圧を535mVからゼロまで減少させると、虚インピーダンス測定の毎日の変動性が劇的に低減されることが判明した。
上記のパラメータを使用することで、虚インピーダンスの値の許容可能性の限界が、与えられたセンサー設計に関して定められ得る。したがって、例えば、Medtronic Minimed社によって製造されているComfort Sensorでは、WEとRE(白金メッシュ)との間で測定された虚インピーダンスは、-100オームより大きいか、または等しくなければならない。言い換えると、虚インピーダンス値(WEの)が-100オーム未満であるセンサーは、不合格となる。WEについては、-100オームより大きいか、または等しいインピーダンス値は、0.55μmより大きい等価Ra測定結果によって指定された値に等しいか、または大きい表面積に対応する。
同様に、CEとRE(白金メッシュ)との間で測定された虚インピーダンスは、-60オームより大きいか、または等しくなければならず、したがって、虚インピーダンス値(CEの)が-60オームより小さいセンサーは不合格となる。CEについては、-60オームより大きいか、または等しいインピーダンス値は、0.50μmより大きい等価Ra測定結果によって指定される値に等しいか、または大きい表面積に対応する。
本発明の実施形態によれば、図48に示されているような等価回路モデルは、作用電極と基準電極、それぞれWEとREとの間の測定されたEISをモデル化するために使用され得る。図48に示されている回路は、全部で6個の要素を有し、3つの一般的なカテゴリ、(i)反応関係要素、(ii)膜関係要素、および(iii)溶液関係要素に分けられ得る。後者のカテゴリにおいて、Rsolは、溶液抵抗であり、センサーシステムの外部の環境(例えば、生体内の間質液)の特性に対応する。
反応関係要素は、分極抵抗(すなわち、電極と電解質との間の電圧バイアスおよび電荷移動に対する抵抗)であるRpと、電極-電解質界面のところの二重層容量である、Cdlとを備える。このモデルでは、二重層容量は、界面が不均質であることにより定位相要素(CPE)として示されているが、純粋な容量としてもモデル化され得ることに留意されたい。二重層容量は、CPEとして、2つのパラメータ、すなわち、アドミッタンスを表すCdlと、CPEの定位相(すなわち、キャパシタにどれだけの漏れがあるか)を表すαとを有する。CPEの周波数依存インピーダンスは、
として計算され得る。したがって、モデルは、全部で3つのパラメータRp、Cdl、およびαによって表される2つの反応関係要素--RpおよびCdl--を含む。
膜関係要素は、膜抵抗(または化学層による抵抗)である、Rmemと、膜容量(または化学層による容量)である、Cmemとを含む。Cmemは、図48に、純粋な容量として示されているけれども、特別な場合にはCPEとしてもモデル化できる。図示されているように、Wは、有界Warburg要素(bounded Warburg element)であり、2つのパラメータ、すなわち、化学層内のグルコース/H2O2拡散によるWarburg要素のアドミッタンスを表す、Y0と、Warburg要素の拡散時定数を表す、λとを有する。Warburgは、他の方法(例えば、非有界)でもモデル化され得ることに留意されたい。有界Warburg要素の周波数依存インピーダンスは、
として計算され得る。したがって、モデルは、全部で4つのパラメータRmem、Cmem、Y0、およびλによって表される3つの膜関係要素--Rmem、Cmem、およびW--を含む。
図48の上部分は、本発明の実施形態によるセンサーの構造全体を示しているが、白金黒は電極を指している。ここで、単一の電極が図示されているが、これは制限ではなく例として挙げているに過ぎず、モデルは、図48に示されている例示的な3層単一電極構造よりも多くの層、および多くの電極を有するセンサーに適用され得ることに留意することが重要である。本明細書ですでに説明されているように、GLMは、センサーのグルコース制限膜であり、HSAは、ヒト血清アルブミンであり、GOXは、グルコース酸化酵素(触媒として使用される)であり、溶液は、例えば、使用者の体液などの、電極が配設される環境を指す。
次の説明では、図48の等価回路モデルは、センサーの挙動の物理的特性のうちのいくつかを説明するために使用される。それでもなお、グルコース拡散がどのようにモデル化されるかに応じて、他の回路構成も可能であり得ることは言及されるべきである。この点で、図49A〜図49Cは、いくつかの追加の回路モデルの線図を示しており、そのうちのいくつかはより多くの要素および/またはパラメータを含む。しかしながら、本発明の目的に関して、質量輸送制限--すなわち、Warburg成分--が膜を通るグルコース拡散に起因する図48の回路モデルは、経験によって得られるデータに関して最良適合をもたらすことが発見されている。図50Aは、等価回路シミュレーション5020が経験によって得られたデータ5010に非常によく適合することを示すナイキストプロットである。図50Bは、図50Aの高周波部分の拡大図であり、シミュレーションがその領域内でも実際のセンサーデータをきわめて正確に追跡していることを示している。
上で説明されている回路要素およびパラメータの各々は、さまざまな形でEIS出力に影響を及ぼす。図51は、矢印Aの方向にCdlが増加するナイキストプロットを示している。図からわかるように、Cdlの値が増加すると、(より低い周波数の)ナイキストプロットの長さは減少し、その勾配は増加する。したがって、ナイキストプロットの長さは、プロット5031からプロット5039まで減少し、プロット5033、5035、および5037の各々はCdlがプロット5031からプロット5039まで増加するときに漸次減少するそれぞれの長さを有する。逆に、ナイキストプロットの勾配は、プロット5031からプロット5039まで増加し、プロット5033、5035、および5037の各々はCdlがプロット5031からプロット5039まで増加するときに漸次増加するそれぞれの勾配を有する。しかしながら、ナイキストプロットのより高い周波数の領域は、一般的に影響を受けない。
図52は、矢印Aの方向にαが増加するナイキストプロットを示している。ここで、αが増加すると、ナイキストプロットの勾配は、より低い周波数の領域内で増加する。図53では、Rpが矢印Aの方向に増加すると、より低い周波数のナイキストプロットの長さおよび勾配は増加する。Rpが高ければ高いほど、化学反応に対する抵抗の量が高くなり、したがって、電子とイオンとの交換の速度は遅くなる。そのため、現象的に、図53は、より低い周波数のナイキストプロットの長さおよび勾配は、電子-イオン交換速度が減少すると--すなわち、化学反応に対する抵抗が増加する、つまり、より低い電流(Isig)出力が生じると--増加することを示す。ここでもまた、ナイキストプロットのより高い周波数の領域への影響は最小であるか、またはまったくない。
Warburgアドミッタンスの変化の効果は、図54に示されている。Warburgアドミッタンスが矢印Aの方向に増加すると、より低い周波数のナイキストプロットの長さおよび勾配の両方が増加する。現象的に、このことは、より低い周波数のナイキストプロットの長さおよび勾配は、反応物質の流入が増加すると増加する傾向があることを意味する。図55では、λが矢印Aの方向に増加すると、ナイキストプロットの勾配は減少する。
上で説明されている要素およびパラメータとは対照的に、膜関係要素およびパラメータは、一般的に、ナイキストプロットのより高い周波数の領域に影響を及ぼす。図56は、ナイキストプロットに対する膜容量の効果を示している。図56からわかるように、Cmemの変化は、高周波領域の半円のどれだけが見えるかということに影響を及ぼす。したがって、膜容量が矢印Aの方向に増加すると、見える半円は漸次小さくなる。同様に、図57に示されているように、膜抵抗が矢印Aの方向に増加すると、見える高周波領域の半円は大きくなる。それに加えて、Rmemが増加すると、ナイキストプロット全体が左から右へシフトする。後者の並列-シフト現象は、図58に示されているように、Rsolについても成り立つ。
図48の等価回路モデルに関連する上の説明は、次のように要約され得る。第1に、Cdl、α、Rp、Warburg、およびλは、一般的に、低周波応答を制御する。より具体的には、より低い周波数のナイキスト勾配/Zimagは、主に、Cdl、α、Rp、およびλに依存し、より低い周波数の長さ/Zmagnitudeは、主に、Cdl、Rp、およびWarburgアドミッタンスに依存する。第2に、RmemおよびCmemは、より高い周波数の応答を制御する。特に、Rmemは、高周波半円の直径を決定し、Cmemは、変曲点周波数を決定し、ナイキストプロットへの全体的効果は最小である。最後に、RmemおよびRsolの変化は、ナイキストプロットの平行シフトを引き起こす。
図59A〜図59C、図60A〜図60C、および図61A〜図61Cは、センサーの始動および較正時に上で説明されている回路要素の変化に対する生体外実験の結果を示している。図59A、図60A、および図61Aは、同一である。図59Aに示されているように、実験は、一般的に、2本の冗長作用電極5050、5060を用いて、(7日から)9日間の期間に実施された。100mg/dLのベースライングルコース量が使用されたけれども、100mg/dLは実験全体を通してさまざまな時点において0から400mg/dLの間で変えられた(5070)。それに加えて、(溶液)温度の効果は、32℃と42℃との間で変化し(5080)、0.1mg/dLのアセトアミノフェンの反応(5085)が調査された。最後に、これらの実験は、酸素ストレス検査を含み、溶液中に溶解された酸素の供給は、0.1%と5%の間で変えられた(すなわち、制限された)(5075)。これらの実験の目的に関して、完全なEISスイープ(すなわち、0.1Hz〜8kHz)が実行され、出力データが、30分毎に約1回記録された(およびプロットされた)。しかしながら、より短い、または長い間隔も使用され得る。
図59Cでは、RsolおよびRmemの総和--ここでもまた、ナイキストプロットの変曲点における実インピーダンスの大きさによって推定され得る--で、一般的な減少傾向が時間の関数として表示される。これは、主に膜が水和するのに時間がかかるという事実によるものであり、したがって、時間が経過すると、膜の、電荷に対する抵抗は小さくなる。Isigに対するプロット(図59A)とRsol+Rmemに対するプロット(図59C)との間にわずかな相関も見られる。
図60Bは、Cdlに対するEIS出力を示している。ここで、最初に、センサー起動/センサーチャージアッププロセスにより、数時間の期間にわたって、比較的急な減少がある(5087)。しかしながら、これ以降、Cdlは、かなり一定し、Isigとの強い相関を示す(図60A)。後者の相関が与えられた場合、Cdlデータは、EISパラメータとして、グルコース独立が望まれる用途ではあまり有用でないことがある。図60Cに示されているように、Rpに対する傾向は、一般的に、Cdlに対するプロットの鏡像として説明され得る。膜がより水和されると、流入が増加し、これは図61BのWarburgアドミッタンスのプロットに反映される。図61Cに示されているように、λは、一般的に全体を通して一定のままである。
図62〜図65は、上で説明されている実験のさまざまな部分に対する実際のEIS応答を示している。特に、最初の3日間に生じた変化--すなわち、図59A、図60A、および図61Aに示されているような、グルコース変化、酸素ストレス、および温度変化--は、図62において箱で囲まれており(5091)、Vcntr応答5093はこの図の下の部分と図59Bとに示されている。図63は、グルコースの増加を介したIsig較正が、ナイキストプロットの勾配および長さの減少を引き起こしたことを示している。図64では、酸素(またはVcntr)応答は、第2日に示されており、Vcntrは、酸素含有量が減少するとますます負になる。ここで、ナイキストプロットは、長さがより短くなり、その勾配は減少し(5094)、虚インピーダンスの大きな減少を示す。プロット長は、主に、CdlとRpとに依存し、Vcntrと強く相関しており、さらにこれはグルコースおよび酸素の変化に応答する。図65では、Isigの変化は、第2日から第3日まで無視できるくらい小さい。それでもなお、ナイキストプロットは32℃(5095)および42℃(5097)において取り出されたデータに対して水平方向(37℃のプロットから)にシフトする。しかしながら、ナイキストプロットの長さ、勾配、またはIsigに著しい影響はない。
上で説明されているEIS出力およびシグネチャ情報を一緒にすることで、センサーの始動時に、Rmem+Rsolの大きさは、ナイキストプロットにおいて右から左へのシフトに対応して、時間の経過とともに減少することが発見された。この期間に、Cdlは減少し、Rpは増加し、それに対応してナイキスト勾配が増加する。最後に、Warburgアドミッタンスも増加する。すでに指摘されているように、前述の内容は、水和過程と一貫しており、EISプロットおよびパラメータ値は安定するのに1〜2日(例えば、24〜36時間)程度を要する。
本発明の実施形態は、リアルタイム自己較正、およびより具体的には、EISデータに基づくグルコースセンサーの生体内自己較正を対象とする。自己較正アルゴリズムを含む、較正アルゴリズムはどれも感度喪失に対処しなければならない。すでに説明されているように、(1)センサーが動作している最初の数日間に典型的には生じる、感度の一時的喪失である、Isigの低下、および(2)一般的にセンサー寿命の末期に生じ、ときにはVcntrレールの存在と相関する、永久的感度喪失の2種類の感度喪失が生じ得る。
感度喪失は、ナイキストプロットにおいて右への平行シフトとして観察され得る、RsolもしくはRmem(もしくはその両方)の増加、またはRmemが変化する場合に、より高い周波数で半円へのより目に見える開始(その結果、高周波虚インピーダンスの増加となる)として現れ得ることが発見されている。RsolおよびRmemに加えて、またはその代わりに、Cmemのみの増加もあり得る。これは、高周波半円の変化として観察され得る。感度喪失は、Cdlの変化に付随して起きる(ナイキストプロットのより低い周波数のセグメント内のより長いテールによる)。前述のシグネチャは、感度の変化を補正するためにEIS出力の異なる変化がどのように使用され得るかを決定するための手段を提供する。
正常に動作しているグルコースセンサーでは、血糖(BG)とセンサーの電流出力(Isig)との間に直線関係がある。したがって、
BG=CF×(Isig+c)
である。ただし、「CF」は、較正係数であり、「c」は、オフセットである。これは、図66に示されており、較正曲線は、直線6005によって示されているとおりであり、「c」は、ベースラインオフセット6007(単位nA)である。しかしながら、Rmemの増加および/またはCmemの減少があるときに、cは影響を受ける。したがって、直線6009は、Rmemが増加し、Cmemが減少し--膜特性の変化を示す--それによってオフセット「c」が6011に移動させられる、すなわち、較正曲線の下方シフトが生じる状況を示している。同様に、Cdlの(非グルコース関係の)変化およびRpの増加があるときに--(より低い周波数の)ナイキストプロットの長さが結果として増加する--勾配は影響を受け、その場合、勾配=1/CFである。したがって、図66では、直線6013は、直線6005と異なる(より小さい)勾配を有する。組み合わせた変化も生じ、これは直線6015によって示され、感度喪失を示し得る。
ナイキストプロットのより低い周波数のセグメントの長さ(Lnyquist)--簡単のため、128Hzと0.105Hz(実)インピーダンスの間の長さとして例示的に推定され得る--は、グルコースの変化と高度に相関している。モデル当てはめを通じて、グルコースの変化時に変化するパラメータのみが二重層容量Cdl、および特に二重層アドミッタンスであることが発見されている。したがって、図48の等価回路モデル内のIsig依存--および拡大解釈すれば、グルコース依存--パラメータは、Cdlであり、他のすべてのパラメータは実質的にIsig独立である。
上記に照らして、本発明の一実施形態では、RmemおよびCmemの変化は、較正係数(BG/Isig)の再調整に至るまで追跡され、それによって、継続的な指先採血検査を必要とすることなくセンサーのリアルタイム自己較正を可能にし得る。これが可能であるのは、一部は、RmemおよびCmemの変化の結果、較正曲線の、勾配ではなくオフセット(c)の変化をもたらすからである。言い換えれば、モデルの膜関係パラメータのそのような変化は、一般的に、センサーが依然として正常に機能することができることを示す。
図67Aは、作用電極からのIsig出力6060と重ね合わされた、記録されている実際の血糖(BG)データ6055をグラフで示している。おおよそ第1〜第4日(6051)を含む第1の期間(または時間窓)からのデータをおおよそ第6〜第9日(6053)を含む第2の期間からのデータと比較すると、図67Aは、センサーが、第2の期間に一般的に下方にドリフトしていることを示しており、おそらくセンサー内に中程度の感度喪失があることを示している。図67Bに示されているように、第2の期間中にVcntrの増加もある。
図68および図69を参照すると、感度喪失は、第6日から第9日までの第2の期間において、膜抵抗6061の幾分著しい増加、さらにはWarburgアドミッタンス6063の対応する減少によって明確に示されていることがわかる。したがって、図70は、第2の期間6053に対する較正曲線6073は、第1の期間6051に対する較正曲線6071に平行であるが、下にシフトされていることを示している。また、図57に関連して上で説明されているように、膜抵抗(Rmem)が増加すると、ナイキストプロット全体が左から右にシフトし、高周波領域半円がさらに見えるようになってくる。図67A〜図70のデータについては、この現象は、図71に示されており、ナイキストプロットの拡大された高周波領域は、第1の期間6051からのデータと比較すると、第2の期間6053からのデータがプロットを左から右に移動すること、およびナイキストプロットのシフトが左から右に進むと、半円がますます見えるようになる(6080)ことを示している。それに加えて、プロットの拡大されたより低い周波数の領域は、Lnyquistの著しい変化がないことを示している。
その一方で、CdlおよびRpの変化は、一般的に、電極がすでに損なわれていることがあり得ることを示し、したがって、回復はもはや可能ではあり得ない。それでも、CdlおよびRpの変化も、例えば、診断ツールとして、追跡され、これらのパラメータの変化の方向/傾向に基づき、ドリフトまたは感度喪失が実際に、適切なセンサー動作がもはや回復可能でも達成可能でもない点に到達しているかどうかを決定することができる。この点で、本発明の実施形態では、それぞれの閾値下限および/または上限、もしくは閾値の範囲は、CdlおよびRpの各々について、または勾配の変化について計算されるものとしてよく、したがってそれぞれの閾値(範囲)内に入らないこれらのパラメータに対するEIS出力値は、例えば、回復不可能な感度喪失によりセンサーの終了および/または交換をトリガーし得る。特定の実施形態では、センサー設計および/または患者特有の範囲もしくは閾値が、計算されるものとしてよく、範囲/閾値は、例えば、Cdl、Rp、および/または勾配の変化に相対的であり得る。
図72Aは、2つの作用電極、WE1 6160およびWE2 6162からのIsig出力と重ね合わされた、記録されている実際の血糖(BG)データ6155をグラフで示している。このグラフは、第1日(6170)に対する第1の時間窓、第3〜第5日(6172)に対する第2の時間窓、第3日(6174)に対する第3の時間窓、第5 1/2〜第9 1/2日(6176)に対する第4の時間窓からのデータを示している。第3日から始まる、図72Bは、Vcntrのレールは1.2ボルトであることを示している。しかしながら、感度の減少は、約第5日からそこら(6180)から生じる。Vcntrがレールに達すると、Cdlは著しく増加し、それに対応してRpが減少し、電気化学反応全体に対するより高い抵抗を示す。予想通り、較正曲線の勾配も変化し(減少し)、Lnyquistは、より短くなる(図73〜図75参照)。本発明の実施形態では、回復不可能なものとしてセンサーの終了をトリガーするためにVcntrレールの発生が使用され得ることに留意されたい。
膜抵抗の増加、Cdlの減少、およびVcntrレールの組合せ効果が図76A〜図76Bおよび図77〜図80に示されている。図76Aでは、実際の血糖(BG)データ6210は、2つの作用電極、WE1 6203およびWE2 6205からのIsig出力と重ね合わされている。図からわかるように、WE1は、全体として、実際のBGデータ6210を追跡している--すなわち、WE1は正常に機能している。その一方で、WE2からのIsigは、より低い点から始まっているように見え、始まりから第10日までずっと減少傾向を続け、それにより、感度の段階的喪失を示している。これは、両方の作用電極に対するCdlが一般的に減少傾向を示したとしても、図77に示されているように、WE2(6215)に対するCdlがWE1(6213)に対するCdlよりも低いことと一貫している。
図79は、較正曲線に対する組合せ効果を示しており、感度喪失の期間(6235)に対する直線当てはめのオフセットおよび勾配は両方とも、正常に機能している時間窓に対する較正曲線6231に相対的に変化する。それに加えて、図80のナイキストプロットは、より低い周波数領域において、ナイキストプロットの長さが、センサーが正常に機能している(6241)場合と比べて、感度喪失(6245)がある場合により長いことを示している。さらに、変曲点の近くでは、半円(6255)は、感度の喪失がある場合に次第に見えるようになってくる。重要なことは、感度喪失がある場合に、図80のナイキストプロットは、時間の関数として左から右に水平にシフトする。本発明の実施形態では、後者のシフトは、センサー内の補償または自己補正に対する尺度として使用され得る。
したがって、EISシグネチャとして、一時的低下が、増加した膜抵抗(Rmem)および/または局所的なRsolの増加によって引き起こされ得ることが発見されている。Rmemの増加は、次いで、増加したより高い周波数の虚インピーダンスによって反映される。この増加は、高周波における勾配(Snyquist)によって特徴付けられ得る--簡単のために、8kHzと128Hzとの間の勾配として例示的に推定され得る。それに加えて、Vcntrのレーリングは、Cdlを増加させ、Rpを減少させ、それにより、長さおよび勾配が減少し、この後に、感度喪失に関連する段階的Cdl減少およびRp増加が続き得る。一般に、Rpの増加(長さの増加)およびRmemの増加と組み合わされる、Cdlの減少は、感度喪失を引き起こすのに十分なものであり得る。
本発明の実施形態によれば、感度変化および/または喪失の検出に基づくセンサー自己較正のためのアルゴリズムが図81に示されている。ブロック6305および6315において、ベースラインのナイキストプロット長(Lnyquist)およびベースラインのより高い周波数の勾配は、それぞれ、センサー寿命の始まりのEIS状態を反映するように設定される。述べたように、ナイキストプロット長は、Cdlと相関しており、より高い周波数のナイキスト勾配は、膜抵抗と相関している。次いで、プロセスは、ナイキストプロット長(6335)およびより高い周波数勾配(6345)、さらにはVcntr値(6325)を監視することによって続く。Vcntrのレーリングが生じたときに、VcntrのレーリングがCdlを著しく変化させるにつれ、ベースラインのLnyquistが調整されるか、またはリセットされる(6355)。したがって、監視されているEISパラメータのリアルタイム変化に対応できるようにフィードバックループ6358がある。
ブロック6375に示されているように、ナイキストプロットの長さが監視されているときに、その長さの著しい増加があるとそれは感度の低下を示す。特定の実施形態では、センサー設計および/または患者特有の範囲もしくは閾値が、計算されるものとしてよく、範囲/閾値は、例えば、ナイキストプロットの長さの変化に相対的であり得る。同様に、より負側にあるより高い周波数の勾配Snyquistは、高周波半円の増大した外観に対応し、可能な低下6365を示す。LnyquistおよびSnyquistのそのような変化は、例えば、連続的にまたは定期的に監視され、感度の低下の持続時間および傾向に基づき、全(すなわち、重大な)感度喪失が生じたかどうかの判定がなされ、それにより、特定のセンサーグルコース(SG)値が破棄されるべきである(6385)。ブロック6395では、較正係数は、監視されているパラメータに基づき調整され、「キャリブレーションフリー」CGMセンサーを実現し得る。本発明の文脈において、「キャリブレーションフリー」という用語は、特定のセンサーがまったく較正を必要としないことを意味しないことに留意されたい。むしろそれは、センサーは、EIS出力データに基づきリアルタイムで自己較正することができ、追加の指先採血またはメーターデータを必要としないことを意味する。この意味で、自己較正は、「インテリジェント」較正とも称することができ、較正は所定の時間的スケジュールに基づいて実行されるのではなく、必要に応じて、リアルタイムで実行される。
本発明の実施形態では、較正係数(CF)および/またはオフセットの調整のためのアルゴリズムは、その後RmemとRsolとの総和によって推定され得る膜抵抗に基づくものとしてよい。膜抵抗は、センサーの物理的特性を表すので、一般的に、単一周波数に対して実行されるEISデータからは推定することができない。言い換えれば、センサーの状態に応じて周波数がシフトするので、膜抵抗を一貫して表す単一の周波数はないことが観察されている。したがって、図82は、例えば、何らかの感度喪失があるときに、ナイキストプロットに水平方向のシフトがあり、したがって、Rmem+Rsolの値を推定する変曲点におけるシフトがあることを示している。この場合、インピーダンスの実成分のシフトは実際にはきわめて大きい。しかしながら、高周波(例えば、8kHz)の実インピーダンスのみが監視されている場合、図82の丸で囲まれている領域によって示されているように、シフトはほとんど、またはまったくない。
したがって、物理的に意味のある仕方で膜抵抗を追跡する必要がある。理想的には、これは、モデル当てはめを通じて実行されるものとしてよく、RmemおよびRsolは、モデル当てはめから導出され、Rmは、Rm=Rmem+Rsolとして計算される。しかしながら、実際には、このアプローチは、時間が予測できないくらい長くかかることもあり得るので、計算コストが高くつくだけでなく、状況によってはまったく収束しなかった場合に影響を受ける。したがって、Rm=Rmem+Rsolの値を近似するか、または推定するために発見的計量が開発されるとよい。そのような一計量において、Rmem+Rsolは、かなり安定した虚インピーダンス値における実インピーダンス切片の値によって近似される。したがって、図83に示されているように、例えば、虚インピーダンス(Y軸上)に対する一般的安定性の領域は、約2000Ωで識別され得る。これを基準値にとり、X軸に平行に横断すると、Rmに比例する値は、基準線がナイキストプロットを横切る場所の実インピーダンス値として近似され得る。周波数間の補間が実行され、ΔRm∝Δ(Rmem+Rsol)を推定することができる。
上で説明されているようにRmの値を推定してあることで、Rmと較正係数(CF)および/またはIsigとの間の関係が調査され得る。特に、図84は、推定されたRmとCFとの間の関係を示しており、前者は後者に正比例する。図84の目的に対するデータ点は、定常状態のセンサー動作に関して導出された。図85は、正規化されたIsig対1/Rmのプロットを示しており、Isigは、BG範囲(Isigの)によって正規化されている。図からわかるように、Isigは、Rmの変化に基づき調整することができる。特に、1/Rmの増加(すなわち、膜抵抗の減少)は、Isigの比例する増加をもたらすが、それは、Isigと1/Rmとの間に直線関係があるからである。
したがって、一実施形態では、較正係数の調整のためのアルゴリズムは、基準較正係数に基づき膜抵抗の変化を監視するステップと、次いで、RmとCFとの間の相関関係に基づき較正係数を比例的に修正するステップとを伴うであろう。言い換えると、
である。
別の実施形態では、較正係数調整アルゴリズムは、1/Rmの比例する変化に基づき、またCF計算結果に独立して、Isigの修正を伴い得る。したがって、そのようなアルゴリズムの目的に関して、調整されたIsigは
として導出される。
実験から、最も劇的なCF変化がセンサー寿命の最初の8時間以内に発生することが示された。特に、生体外実験の一セットにおいて、Isigは、センサー寿命にわたってさまざまなグルコースレベルを一定に保ちながら時間の関数としてプロットされた。EISは、すべてのモデルパラメータが推定され、時間の経過とともに追跡されている間に、最初の2時間の間3分毎に実行された。すでに述べたように、制限されたスペクトルEISが与えられた場合、RmemおよびRsolは、(独立して)ロバスト推定できない。しかしながら、Rm=Rmem+Rsolは、推定できる。
図86は、400mg/dL(6410)、200mg/dL(6420)、100mg/dL(6430)、60mg/dL(6440)、および0mg/dL(6450)を含む、さまざまなグルコースレベルに対する時間の経過によるIsigのプロットを示している。始動時に、一般的に劇的な変化がすべてのパラメータにおいて見られる。一例が、図87に示されており、そこでは、Cdlは、時間の関数としてプロットされ、プロット6415は400mg/dLのグルコースに対応し、プロット6425は200mg/dLのグルコースに対応し、プロット6435は100mg/dLのグルコースに対応し、プロット6445は60mg/dLのグルコースに対応し、プロット6455は0mg/dLのグルコースに対応する。図87の例示的な例の場合のように、大半のパラメータは、最初の0.5時間における変化と十分に相関するが、一般的には、>0.5時間の時間枠内の変化の原因となり得ない。
しかしながら、Rm=Rmem+Rsolは、類似の始動時間枠にわたってIsigの変化の原因となり得る唯一のパラメータであることが発見された。特に、図88は、特に低グルコースレベルで、例えば、100mg/dL以下で約T=1時間に生じる頂点、または第2の変曲点があるという指示を除き、図86と同じグラフを示している。しかしながら、研究されたEISパラメータのすべてのうち、膜抵抗が、Isigのこの変化に対する関係を示した唯一のパラメータであり、他のパラメータは、一般的に、定常状態までかなり滑らかに進む傾向がある。したがって、図89に示されているように、Rmも、同時にIsigにおけるピークに対応する約T=1時間のところに第2の変曲点を示す。
図90は、センサー動作の最初の8時間における生体内データに対する較正係数とRmとの間の関係を示している。ここで、EISは、始動時に30分毎に約1回実行され、間の期間について補間された。図からわかるように、Rm=Rmem+Rsolは、センサー動作の最初の8時間に、較正係数(CF)と相関する。図90の図の目的に関して、ベースラインのオフセットは、3nAであると仮定された。
図83〜図85に関して上で述べたように、本発明の一実施形態では、始動時の較正係数の調整のためのアルゴリズムは、較正係数(CFreference)に対する基準値を選択するステップと、CF=CFreferenceに対する膜抵抗(Rreference)の値を推定するステップと、膜抵抗の変化(Rm=Rmem+Rsol)を監視するステップと、その変化の大きさに基づき、図90に示されている関係に従って較正係数を調整するステップとを含み得る。したがって
CF(t)=CFreference-m(Rreference-Rm(t))
となり、ここで、mは、図90の相関関係の傾きである。上記のアルゴリズムの目的に関して、CFreferenceの値は、センサー特有であり、センサー間の相違の原因であることに留意されたい。
別の実施形態では、較正係数調整アルゴリズムは、調整がなされるRmの制限された範囲を使用することによって修正され得る。これは、ノイズのせいで起こり得るようにRmが〜7000Ωよりも小さくなった後のわずかな相違について役立ち得る。制限されたRm範囲は、センサー水和反応/安定化が非常に遅いせいで起こり得るように、Rmが非常に大きいときにも役立ち得る。さらに別の実施形態では、許容可能なCFの範囲は、例えば、CFに対して下限値を4.5に設定することなどによって、制限され得る。
図91Aは、センサー寿命のおおよそ最初の8時間以内のすべての有効なBGにわたるMARDに対する生体内結果を示すチャートである。単一の(最初の)較正は、始動から1時間、1.5時間、または2時間後のいずれかで、第1のBGで実行される。図からわかるように、較正係数調整なしでは、1時間の較正に対するMARDは、2時間で実行される較正よりもかなり高い(22.23対19.34)。しかしながら、調整あり、または修正された調整ありでは、上で説明されているように、それぞれのMARD数の間の差は小さくなる。したがって、例えば、調整ありでは、1時間の較正に対するMARDは、2時間で実行される較正に対して15.42であるのに比較して16.98である。それに加えて、1時間の較正に対する調整ありのMARDは、2時間で実行される較正に対する調整なしのMARDよりもかなり小さい(16.98対19.34)。したがって、本発明の実施形態によれば、較正係数調整(および修正された調整)は、MARDを維持するか、または改善しながら--例えば、この例では、センサーを1時間早く始動することによって--センサーの使用可能寿命を長くするために使用され得る。図91Bのチャートは、おおよそ最初の8時間以内にすべての有効なBGにわたって中央値ARD数を与える。
図92A〜図92C、図93A〜図93C、および図94A〜図94Cは、上述の較正係数調整アルゴリズムがいくつかの現在の、非EISベースの方法よりも良く働くときの例を示している。「First Day Compensation」(またはFDC)と一般的に称されるそのような一方法では、第1の較正係数が測定される。測定された較正係数が、所定の範囲の外にある場合、定一次減衰関数(constant linear decay function)が適用され、減衰率によって決定される予測時間で較正係数を通常範囲内に戻す。図92A〜図94Cからわかるように、本発明の較正係数調整アルゴリズム(図中「補償」と称されている)6701、6711、6721は、FDC法6703、6713、6723によって得られる結果よりも実際の血糖(BG)測定結果6707、6717、6727に近い結果を生み出す。
EIS関係パラメータの値を推定するのが複雑である場合、FDCを含む、現在の方法のうちのいくつかは、本明細書で説明されているEIS較正係数調整アルゴリズムよりも計算があまり複雑でないことがある。しかしながら、これら2つのアプローチも、補完的に実装され得る。特に、FDCが本発明の較正係数調整アルゴリズムによって増強され得る状況があり得る。例えば、後者は、FDCの変化率を定義するか、またはFDCが適用されるべき範囲を識別するか(すなわち、CFだけを使用すること以外)、または特別な場合にFDCの方向を反転するために使用され得る。
さらに他の実施形態では、較正係数ではなくむしろオフセットが調整され得る。それに加えて、またはその代わりに、RmおよびCFの適用可能な範囲に制限が課され得る。特定の実施形態では、相対値ではなくむしろ絶対値が使用され得る。さらに、較正係数と膜との関係は、加法的でなく乗法的として表され得る。そこで、
となる。
EISベースの動的オフセットを使用する一実施形態では、測定される全電流は、ファラデー電流と非ファラデー電流との総和として定義されるものとしてよく、前者はグルコース依存であり、後者はグルコース独立である。そこで、数学的には
itotal=iFaradaic+inon-Faradaic
となる。
理想的には、非ファラデー電流はゼロで、作用電位は固定されているべきであり、したがって
となり、ただし、Aは表面積であり、
は過酸化物の傾きである。
しかしながら、二重層容量が変化しているときには、非ファラデー電流は、無視され得ない。特に、非ファラデー電流は
として計算されるものとしてよく、ただし、qは電荷であり、Vは電圧であり、Cは(二重層)容量である。上の説明からわかるように、電圧(V)および容量(C)の両方が一定であるときに、式の右側の両方の時間微分値はゼロに等しく、したがってinon-Faradaic=0である。次いで、そのような理想的な状況において、焦点を拡散および反応に向けることができる。
VおよびCが両方とも、時間の関数であるときに(例えば、センサー初期化時に)、
である。
その一方で、Vが定数であり、Cが時間の関数であるときは、
である。そのような状態は、例えば、センサー動作の第1日に存在する。図95は、第1日における、この場合、センサー挿入から最初の6時間後の、二重層容量の典型的な(初期)減衰の一例を示している。グラフに示されているように、プロット6805は、半時間間隔で得られるEISデータに基づく生のCdlデータを示し、プロット6810は、5分の時間間隔に対する生のCdlデータへのスプライン当てはめを示し、プロット6815は、5分の時間間隔に対する平滑化曲線を示し、プロット6820は、5分の時間間隔に対する平滑化されたCdlデータへの多項式当てはめを示している。
Cdl減衰は指数関数的でないことに留意されたい。したがって、減衰は、指数関数ではシミュレートされ得ない。むしろ、6次多項式当てはめ(6820)で妥当なシミュレーションを行えることがわかった。したがって、上述のシナリオの目的に関して、Vが定数であり、Cが時間の関数である場合、inon-Faradaicは、多項式係数が知られていれば計算され得る。特に
C=P(1)t6+P(2)t5+P(3)t4+P(4)t3+P(5)t2+P(6)t1+P(7)
であり、ただし、Pは多項式係数配列であり、tは時間である。非ファラデー電流は
として計算することができる。最後に、itotal=iFaradaic+inon-Faradaicなので、電流の非ファラデー成分は、再配列することによって取り除くことができ、したがって
iFaradaic=itotal-inon-Faradaic
となる。
図96は、時間の関数としての全電流に基づくIsig(6840)、さらには容量減衰に基づく非ファラデー電流の除去後のIsig(6850)を示している。電流の非ファラデー成分は、10〜15nAと高い場合がある。図からわかるように、非ファラデー電流を除去することで、センサー寿命の始まりにおいて低始動Isigデータの大半を取り除きやすくなる。
上のアプローチは、MARDを低減し、さらにはセンサー寿命の始まってすぐにおいて較正係数を調整するために使用され得ることがわかった。後者に関して、図97Aは、第1の作用電極(WE1)および第2の作用電極(WE2)に対する非ファラデー電流の除去前の較正係数6860、6870を示している。その一方で、図97Bは、非ファラデー電流の除去後のWE1(6862)およびWE2(6872)に対する較正係数を示している。図97AにおけるWE1に対する較正係数(6860)を図97BにおけるWE1に対する較正係数(6862)と比較することで、非ファラデー成分を除去した場合に、較正係数(6862)は予想される範囲にかなり近いことがわかる。
それに加えて、MARDの減少は、図98Aおよび図98Bに示されている例に見ることができ、そこでは、センサーグルコース値は、時間に関してプロットされている。図98Aに示されているように、非ファラデー電流の除去前に、低始動時の較正は、WE1における著しいセンサー過剰読取り(6880)を引き起こし、MARDは11.23%である。非ファラデー電流の除去の後、10.53%のMARDが、WE1に対して達成される。図97A〜図98Bの例示的な目的に関して、非ファラデー電流が、関係式
を使用して前処理において計算され、除去されており、ここで、Pは二重層容量曲線を当てはめるために使用される多項式係数(配列)である、ことに留意されたい。
リアルタイムでの、ファラデー電流と非ファラデー電流との分離は、第1の較正を実施する時間を自動的に決定するために使用され得る。図99は、時間の経過による二重層容量の減衰を示している。特に、一定の時間間隔ΔTで、二重層容量は、第1の値
(7005)から第2の値CT(7010)への変化を受ける。次いで、例えば、一次時間差法が、非ファラデー電流を
として計算するために使用することができる。他の方法、例えば、二次高精度有限値法(second-order accurate finite value method)(FVM)、Savitzky-Golayなども、微分
を計算するために使用され得る。
次に、非ファラデー電流から成る全電流、すなわちIsigのパーセンテージは、比inon-Faradaic/Isigとして単純に計算され得る。この比が閾値下限に達した後、センサーの較正を行う準備ができているかどうかに関して、リアルタイムの判定が行われ得る。したがって、本発明の一実施形態では、閾値は、5%と10%との間にあるものとしてよい。
別の実施形態では、上述のアルゴリズムは、オフセット値をリアルタイムで計算するために使用され得る、すなわち、EISベースの動的オフセットアルゴリズムである。ここで
であること、およびセンサー電流Isigがファラデー成分と非ファラデー成分を含む、全電流
itotal=iFaradaic+inon-Faradaic
であることを思い出すと、ファラデー成分は
iFaradaic=itotal-inon-Faradaic
として計算される。
したがって、本発明の一実施形態では、非ファラデー電流inon-Faradaicは、Isigへの追加のオフセットとして扱うことができる。実際、二重層容量が減少するとき、例えば、センサー寿命の第1日において、inon-Faradaicは負であり、時間の関数として減少する。したがって、本発明のこの実施形態によれば、より大きいオフセット--すなわち、現在の方法で計算されるような通常のオフセットにinon-Faradaicをプラスする--は、センサー寿命の始まりにおいてIsigに加えられ、5次多項式曲線に従って減衰することが許される。すなわち、追加のオフセットinon-Faradaicは、5次多項式に従い、それに対する係数が決定されなければならない。二重層容量の変化がどれだけ劇的かに応じて、本発明のこの実施形態によるアルゴリズムは、センサー寿命の最初の数時間、例えば、最初の6〜12時間に適用され得る。
多項式当てはめは、さまざまな方法で計算され得る。例えば、本発明の一実施形態では、係数Pは、既存のデータに基づき事前決定され得る。次いで、上で説明されている動的オフセットが適用されるが、第1の較正係数が通常の範囲より上にある、例えば、〜7であるときのみである。実験から、一般的に、この方法は、リアルタイムの二重層容量測定が望んでいるよりも信頼度が低いときに最もよく機能する。
代替的実施形態では、インライン当てはめアルゴリズムが使用される。特に、インライン二重層容量バッファは、時刻Tに作成される。次いで、Pは、時刻Tに多項式当てはめを使用して、バッファに基づき計算される。最後に、時刻T+ΔTにおける非ファラデー電流(動的オフセット)は、時刻TにおけるPを使用して計算される。このアルゴリズムは、二重層容量測定がこの現在のレベルよりも頻繁である(30分毎)こと、および測定が信頼できる(すなわち、アーチファクトがない)ことを必要とすることに留意されたい。例えば、EIS測定は、センサー寿命の最初の2〜3時間に、5分毎に1回、または10分毎に1回実行されることが可能である。
リアルタイム自己較正センサーを開発する際に、最終的目標は、BGメーター依存を最小限度に抑えるか、またはなくすことである。しかしながら、これは、他にもあるがとりわけ、EIS関係パラメータとIsig、較正係数(CF)、およびオフセットの間の関係の理解を必要とする。例えば、生体内実験から、IsigとCdlおよびWarburgアドミッタンスの各々との間に相関関係があり、したがって後者の各々は(少なくともある程度は)Isig依存であることが示されている。それに加えて、センサーの工場較正に関して、IsigおよびRm(=Rmem+Rsol)は、較正係数に対して最も重要なパラメータ(すなわち、寄与する係数)であるが、Warburgアドミッタンス、Cdl、およびVcntrは、オフセットに対する最も重要なパラメータであることがわかった。
生体外研究では、EISから抽出される測定基準(例えば、Rmem)は、較正係数との強い相関関係を示す傾向がある。しかしながら、生体内では、同じ相関関係は、弱い場合がある。これは、一部は、患者特有の、または(センサー)挿入部位特有の、特性が自己較正または工場較正に対するEISの使用を可能にするセンサーの態様を隠すという事実による。この点で、本発明の一実施形態では、患者特有の応答を推定するために利用され得る基準点を提供するために冗長センサーが使用され得る。これは、ひいては、よりロバストな工場較正を可能にし、さらにはセンサー故障モードの発生源をセンサーの内部または外部のいずれかとして識別するのに役立つ。
一般に、EISは、センサー電極間に形成する電界の関数である。電界は、センサー膜を超えて延在することができ、センサー挿入部位のところの(患者の)身体の特性を探ることができる。したがって、センサーが挿入/配設される環境が、すべての検査にまたがって均一である場合、すなわち、組織組成が生体内において常に同じである場合(または、バッファが生体外において常に同じである場合)、EISはセンサーのみの特性に相関し得る。言い換えれば、センサーの変化は、例えば較正係数と相関し得る、EISの変化に直接つながると仮定され得る。
しかしながら、患者特有の組織特性が挿入部位の組成に依存するので、生体内環境は変化が非常に大きいことがよく知られている。例えば、センサーの周りの組織の伝導率は、その周りの脂肪の量に依存する。脂肪の伝導率は、純粋な間質液(ISF)の伝導率よりもかなり低く、局所的な脂肪対ISFの比は著しく変化し得ることが知られている。挿入部位の組成は、挿入の部位、挿入の深さ、患者特有の身体組成などに依存する。したがって、センサーが同じであっても、基準環境は、同じ場合があるとしても滅多に同じでないので、EIS研究から観察されるRmemはかなり著しく変化する。すなわち、挿入部位の伝導率は、センサー/システムのRmemに影響を及ぼす。したがって、Rmemを均一に、一貫して、信頼できる較正ツールとして使用することが可能でない場合がある。
すでに説明されているように、EISも、診断ツールとして使用できる。したがって、本発明の実施形態では、EISは、グロス故障解析に使用され得る。例えば、EISは、重大な感度喪失を検出するために使用することができ、これはセンサーデータをブロックするかどうか、およびいつするかを決定するステップ、最適な較正時間を決定するステップ、ならびにセンサーを終了するかどうか、およびいつするかを決定するステップに有用である。この点で、連続的グルコース監視および分析において、重大な感度喪失の次の2つの主要な種類が典型的には考えられるということは繰り返す価値がある。すなわち、(1)センサー寿命において典型的には早期に発生し、一般的に外部センサーの閉塞の結果と信じられている、一時的感度喪失(すなわち、Isigの低下)、および(2)典型的にはセンサー寿命の終わりに発生し、決して回復せず、したがってセンサーの終了を必要とする、永久的感度喪失、の2種類である。
生体内と生体外の両方のデータは、感度喪失およびIsigの低下において、変化するEISパラメータが、Rmem、Rsol、およびCmemのうちの1つまたは複数であってよいことを示す。それに続いて、後者の変化は、ナイキストプロットのより高い周波数の領域における平行シフト、および/または高周波半円の増大した外観として現れる。一般に、感度喪失が重大であればあるほど、これらの兆候はより顕著である。図100は、2.6日(7050)、3.5日(7055)、6日(7060)、および6.5日(7065)のデータに対するナイキストプロットのより高い周波数の領域を示している。図からわかるように、感度喪失(7070)時の、左から右への水平方向シフト、すなわち、Rmem+Rsolシフトがあり得、これは膜抵抗の増加を示す。それに加えて、6日に対するプロット、および特に6.5日(7065)に対するプロットは、感度喪失(7075)時のより高い周波数の半円の外観を明確に示しており、これは膜容量の変化を示す。状況、および感度喪失の重大度に応じて、上述の兆候のいずれかまたは両方が、ナイキストプロット上に出現し得る。
特にIsigの低下の検出に関して、永久的な感度喪失とは反対に、いくつかの現在の方法では、例えば、Isigが低下しつつあるであろう速度、または時間の経過によるIsigの漸進的変化の程度/欠如を監視することによって、Isigのみを使用してIsigの低下を検出し、それによって、たぶんセンサーがグルコースに応答しないことを指示する。しかしながら、これは、あまり信頼性が高くないことがあり、実際の低下があってもIsigが通常のBG範囲内に留まる場合がある。そのような状況では、感度喪失(すなわち、Isigの低下)は、低血糖から区別できない。そのため、本発明の実施形態では、EISは、Isigから導出される情報を補完するために使用されるものとしてよく、それによって、検出方法の特定性および感度を高める。
永久的感度損失は、一般的に、Vcntrレールに関連付けられ得る。ここで、いくつかの現在のセンサー終了方法は、Vcntrレールデータだけに依存し、したがって、例えば、Vcntrが1日レールするときに、センサーは終了され得る。しかしながら、本発明の実施形態によれば、感度喪失によりセンサーを終了させる時期を決定する一方法は、EISデータを使用してVcntrがレールした後に感度損失が起きるかどうか、およびいつそうなるかを確認するステップを伴う。特に、ナイキストプロットのより高い周波数の領域における平行シフトは、Vcntrレールが観察された後に永久的感度損失が実際に発生したかどうかを決定するために使用され得る。この点で、Vcntrが例えばセンサーの寿命が来る5日でレールし得る状況があるが、EISデータはナイキストプロットにおいてそもそもほとんどシフトを示さない。この場合、通常であれば、センサーは、5〜6日で終了しているであろう。しかしながら、EISデータが、実際には、永久的感度損失がなかったことを示している場合、センサーは終了せず、それによって、センサーの耐用期間の残りを節約(すなわち、使用)する。
すでに述べたように、感度損失の検出は、1つまたは複数のEISパラメータの変化に基づき得る。したがって、例えば、膜抵抗の変化(Rm=Rmem+Rsol)は、中間周波数(〜1kHz)の実インピーダンス領域内に現れ得る。膜容量(Cmem)については、半円が増大するのでより高い周波数(〜8kHz)の虚インピーダンスにおいて変化が現れ得る。二重層容量(Cdl)は、平均Isigに比例する。したがってこれは、より低い周波数のナイキストの勾配の長さLnyquistとして近似され得る。Vcntrは、酸素レベルに相関しているので、通常のセンサー挙動は、典型的には、Vcntrの減少を伴い、Isigは減少する。したがって、Vcntrの増加(すなわち、より負になる)は、Isigの減少と組み合わせて、さらに、感度損失を示し得る。それに加えて、平均Isigレベル、変化率、または低い、もしくは生理学的にありそうもない信号の変動が監視され得る。
それでもなお、EISパラメータは最初に決定されなければならない。較正係数調整および関係する開示に関連してすでに説明されているように、EISパラメータを推定する最もロバストな方法は、モデル当てはめを実行することであり、モデル方程式中のパラメータは、測定されたEISとモデル出力との間の誤差が最小化されるまで変えられる。この推定を実行する方法は多数存在する。しかしながら、リアルタイムのアプリケーションについては、計算の負荷、推定時間の変動性、および収束が悪いという状況があるためモデル当てはめは最適ではないことがある。通常、実現可能性はハードウェアに依存する。
上で述べた完全なモデル当てはめが可能でないときには、本発明の一実施形態において、リアルタイムアプリケーションのための一方法は、発見的方法を使用するものである。これが目指すのは、測定されたEISに適用される単純な発見的方法で真のパラメータ値(または各パラメータによって示される傾向に比例する対応する測定基準)を近似することである。この点に関して、各パラメータの変化を推定するための実装を以下に示す。
二重層容量(Cdl)
概して言えば、Cdlのおおよその推定は、より低い周波数ナイキスト勾配(例えば、〜128Hzより低い周波数)の長さを測定する統計から得ることができる。これは、例えば、Lnyquistを測定することによって行われ得る(128HzにおけるEISとナイキストプロットにおける0.1Hzとの間の直交座標距離)。他の周波数範囲も使用され得る。別の実施形態では、Cdlは、より低い周波数のインピーダンス(例えば、0.1Hzにおける)の振幅を使用することによって推定され得る。
膜抵抗(Rmem)および溶液抵抗(Rsol)
すでに上で説明されているように、ナイキストプロット上で、Rmem+Rsolは、より低い周波数の半円とより高い周波数の半円との間の変曲点に対応する。したがって、一実施形態では、Rmem+Rsolは、ナイキスト勾配の方向性の変化を検出することによって変曲点を突き止めることによって推定され得る(例えば、微分および/または差分を使用することによって)。代替的に、ナイキスト勾配のシフトを測定することによってRmem+Rsolの相対的変化を推定することができる。これを行うために、虚軸上の基準点が選択され得(図83)、実軸上の対応する点を決定するために補間が使用され得る。この補間値は、時間の経過とともに生じるRmem+Rsolの変化を追跡するために使用することができる。選択された基準は、与えられたセンサー構成に関して、(例えば、Vcntrのレールのせいで)ナイキスト勾配のより低い周波数部分の大きい変化の影響を過度に受けない値の範囲内に収まるべきである。標準値は、1kΩと3kΩとの間にあり得る。別の実施形態では、単一の高周波EIS(例えば、1kHz、8kHZ)の実成分を使用することが可能であり得る。いくつかのセンサー構成では、その時間の大部分においてRmemをシミュレートすることができるけれども、単一の周波数ですべての状況においてRmemを正確に表すことができない場合があることに留意されたい。
膜容量(Cmem)
Cmemの増加は、より高い周波数の半円ほどより顕著なもの(またはそのより明白な外観)として現れる。したがって、Cmemの変化は、この半円の存在を推定することによって検出することができる。したがって、一実施形態では、Cmemは、インピーダンスのより高い周波数の虚数成分を追跡することによって推定され得る。この点で、より負側にある値は、半円の増大する存在に対応する。
代替的に、Cmemは、周波数範囲(例えば、1kHz〜8kHz)内で半円内の最高点を追跡することによって推定され得る。この周波数範囲は、変曲点が生じる周波数を識別するステップと識別された周波数よりも高いすべての周波数について最大の虚インピーダンスを取得するステップとによっても決定され得る。この点で、より負側にある値は、半円の増大する存在に対応する。
第3の実施形態では、Cmemは、例えば、8kHzおよび1kHzなどの、ナイキストプロット内の2つのより高い周波数の点の間の直交座標距離を測定することによって推定され得る。これは、本出願においてすでに定義されている高周波勾配(Snyquist)である。ここで、より大きい絶対値は、増大した半円に対応し、負の勾配(y軸上に負の虚インピーダンス、およびx軸上に正の実インピーダンスがある)は、半円が存在していないことに対応する。上述の方法では、半円の検出された変化のうちのいくつかがRmemの変化にも起因し得る場合があり得ることに留意されたい。しかしながら、いずれの変化も感度喪失を示しているので、重なりは、許容可能であると考えられる。
非EIS関係測定基準
文脈上、EIS測定基準が利用可能になる前に、感度喪失は、全般的に、いくつかの非EIS基準に従って検出されたことに留意されたい。これらの測定基準は、それ自体、典型的には、検出における完全な感度および特定性を十分に達成できるほど信頼性を有しない。しかしながら、これらをEIS関係測定基準と組み合わせることで、感度喪失の存在を裏付ける証拠をもたらすことができる。これらの測定基準のうちのいくつかは、(1)Isigが特定の閾値(単位はnA)未満である時間の長さ、すなわち、「低Isig」の期間、(2)Isigの変化が生理学的に可能であるか、感度喪失によって誘発されるかを示すものとして使用される、「低Isig」の状態をもたらすIsigの1階または2階微分、および(3)センサーがグルコースに応答するか、または死んでいるかを示すことができる、「低Isig」期間にわたるIsigの変動性/分散を含む。
感度喪失検出アルゴリズム
本発明の実施形態は、感度喪失の検出のためのアルゴリズムを対象とする。これらのアルゴリズムは、一般的に、EIS測定(例えば、上で説明されているような)から、また非EIS関係測定基準から測定されたパラメータのベクトルにアクセスする。したがって、例えば、ベクトルは、(ナイキストプロットの)水平軸内のRmemおよび/またはシフト、Cmemの変化、ならびにCdlの変化を含み得る。同様に、ベクトルは、Isigが「低」状態にある期間、Isigの変動性、Isigの変化率に関するデータを含み得る。パラメータのこのベクトルは、時間の経過に従って追跡することができ、このアルゴリズムが目指すのは、感度喪失のロバストな証拠を集めることである。この文脈では、「ロバストな証拠」は、例えば、投票システム、複合加重測定基準、クラスタリング、および/または機械学習によって定義され得る。
特に、投票システムは、EISパラメータのうちの1つまたは複数のパラメータの監視を伴い得る。例えば、一実施形態では、これがいつパラメータベクトルの要素の所定の、または計算された数以上が絶対閾値と交差するかどうかを決定するステップを伴う。代替的実施形態では、閾値は、相対(%)閾値であってよい。同様に、ベクトル要素は、ベクトル内のパラメータの特定の組合せがいつ絶対または相対閾値と交差するかを決定するために監視され得る。別の実施形態では、ベクトル内の要素のサブセットのいずれかが絶対または相対閾値と交差するときに、パラメータの残りに対するチェックがトリガーされ、これにより、感度喪失の十分な証拠が取得され得るかどうかを決定することができる。これは、パラメータのサブセットのうちの少なくとも1つが、感度喪失が信頼可能に検出されるために必要な(ただし、たぶん不十分な)条件であるときに有用である。
組み合わされた加重測定基準は、ベクトル内の要素を、例えば、それらが所定の閾値とどれだけ交差したかに従って加重するステップを伴う。次いで、感度喪失は、総加重測定基準が絶対または相対閾値と交差するときに検出され得る(すなわち、発生していると決定され得る)。
機械学習は、より高度な「ブラックボックス」クラシファイア(classifier)として使用され得る。例えば、現実的な生体内実験から抽出されたパラメータベクトルは、感度喪失を検出するように人工ニューラルネットワーク(ANN)、サポートベクターマシン(SVM)、または遺伝的アルゴリズムを学習させるために使用され得る。次いで、学習したネットワークは、非常に時間効率の高い方式によりリアルタイムで適用され得る。
図101Aおよび図101Bは、組合せ論理を使用して感度喪失検出の流れ図の2つの例示的な例を示している。図示されているように、両方の方法において、1つまたは複数の測定基準1-Nが監視され得る。図101Aの方法では、測定基準の各々は、それが閾値と交差するかどうか、またはいつ交差するかを決定するために追跡され、上で説明されている。次いで、閾値決定ステップの出力が、組合せ論理を介して集約され、感度喪失に関する決定は、組合せ論理の出力に基づき行われる。図101Bでは、監視されている測定基準1-Nの値は、最初に、組合せ論理を通じて処理され、次いで、後者の集約された出力は、閾値と比較され、感度喪失が発生したかどうかを判定する。
本発明の追加の実施形態は、インテリジェント診断アルゴリズムにおいてEISを使用するステップも対象とする。したがって、一実施形態では、EISデータは、センサーが新品であるかどうか、または(患者によるセンサーの再利用に関連してすでに提示されている方法に加えて)再利用品であるかどうかを決定するために使用され得る。後者に関して、センサーが新品であるか、再利用品であるかどうかを知ることは、この情報がどのような種類の初期化シーケンスがもしあるとすれば使用されるべきかの決定に役立つので、重要である。それに加えて、この情報は、センサーのラベルを外した状態での使用の防止、さらには複数回の再初期化によるセンサー損傷の防止を可能にする(すなわち、センサーが切断され、次いで再接続される毎に、それが新品のセンサーであると「考え」、したがって、再接続後に再初期化を試みる)。この情報は、収集されたセンサーデータの後処理にも役立つ。
センサーの再利用および/または再接続に関連して、初期化前の新しいセンサーに対するより低い周波数のナイキスト勾配は、切断され、次いで、再び再接続されたセンサーに対するより低い周波数のナイキスト勾配と異なる(すなわち、低い)ことが発見されている。特に、生体外実験から、ナイキスト勾配は、新たに挿入されたセンサーとは反対に再利用センサーについてはより高いことがわかった。したがって、ナイキスト勾配は、新品センサーと使用済み(または再利用)センサーとを区別するためのマーカーとして使用され得る。一実施形態では、閾値は、ナイキスト勾配に基づき、特定のセンサーが再利用されているかどうかを決定するために使用され得る。本発明の実施形態では、閾値は、ナイキスト勾配=3であってよい。図102は、基準勾配=3(8030)を有する低周波数ナイキストプロット、さらには新しいセンサー(初期化前)8010、新しいセンサー(初期化後)8015、再接続されたセンサー(初期化前)8020、および再接続されたセンサー(初期化後)8025に対するプロットを示している。すでに述べているように、新しいセンサー(初期化前)8010に対する勾配は、基準、または閾値(8030)よりも低く、再接続されたセンサー(初期化前)8020に対する勾配は、閾値(8030)よりも高い。
別の実施形態では、EISデータは、使用されているセンサーの種類を決定するために使用され得る。ここで、センサー設計が著しく異なる場合に、それぞれのEIS出力も、平均して、著しく異なっているべきであることが発見された。異なるセンサー構成は、異なるモデルパラメータを有する。したがって、現在挿入されているセンサータイプを決定するためにセンサー寿命の間の任意の時点にこれらのパラメータの識別を使用することが可能である。パラメータは、例えば、グロス故障/感度喪失解析に関連して上で説明されている方法に基づき推定することができる。識別は、別々の値に共通の方法、例えば、特定の(単一のまたは複数の)パラメータについて閾値を設定するステップ、機械学習(ANN、SVM)、または両方の方法の組合せに基づくことができる。
この情報は、例えば、アルゴリズムパラメータおよび初期化シーケンスを変更するために、使用され得る。したがって、センサー寿命の始めに、これは、単一の処理ユニット(GST、GSR)に較正アルゴリズムに対する最適なパラメータを設定してもらうために使用することができる。オフライン(非リアルタイム)では、センサータイプの識別は、現場のセンサーの性能の分析/評価を助けるために使用され得る。
また、より低い周波数のナイキスト勾配の長さは、異なるセンサータイプを区別するために使用され得ることも発見された。図103A〜図103Cは、Enlite(8050)、Enlite 2(すなわち、「Enlite Enhanced」)(8060)、およびEnlite 3(8070)として識別されている、3つの異なるセンサー(すなわち、異なるセンサー構成)に対するナイキストプロットを示しており、これらはすべて、Medtronic Minimed(カリフォルニア州ノースリッジ所在)によって製造されている。図からわかるように、初期化前、初期化後、および第2の初期化後(それぞれ図103A〜図103C)を含む、さまざまな段階について、Enliteセンサーは、最短のより低い周波数のナイキスト勾配長を有し(8050)、それに続いて、Enlite 2(8060)、そしてEnlite 3(8070)であり、これは最も短い長さを有する。後者は、図104にも示されており、0.105Hzおよび1HzにおけるEISの間の直交座標距離として計算される、ナイキスト(勾配)長は、時間に対してプロットされる。
本発明の実施形態は、診断EIS測定を実行されるべき初期化の種類を決定する際のガイドとして使用するステップも対象とする。すでに述べているように、初期化シーケンスは、検出されたセンサータイプ(EISベース、または他)、および/または新しい、もしくは古いセンサーが挿入されたかどうか(EISベース)の検出結果に基づき変わり得る。しかしながら、それに加えて、EISベースの診断は、初期化の前に最低の水和状態を決定する際に(例えば、Warburgインピーダンスを追跡することによって)、またはいつ初期化を終了するかを決定する際に(例えば、Rp、Cdl、Alpha、などの反応依存のパラメータを追跡することによって)も使用され、これによりセンサーの初期化時間を適切に最短にすることもできる。
より具体的には、初期化応答時間を最小にするために、追加の診断を行って初期化時に行われるプロセスを制御する必要がある。この点で、EISは、必要な追加の診断を提供することができる。したがって、例えば、EISは、さらなるパルス発生が必要かどうかを判定するために各初期化パルスの間で測定され得る。代替的に、またはそれに加えて、EISは、高いパルスにおいて測定され、最適な初期化状態のEISと比較されて、センサーがいつ十分に初期化されているかを判定することができる。最後に、上で述べたように、EISは、特定のモデルパラメータ--たいがい、Rp、Cdl、Alphaなどの1つまたは複数の反応依存パラメータ--を推定する際に使用され得る。
上の説明では、本発明の特定の実施形態を参照しているが、本発明の精神から逸脱することなく多くの修正を加えられることは理解されるであろう。アルゴリズムの追加のステップおよび順序の変更は、本発明の重要な教示をそのまま遂行しながら行うことができる。したがって、付属の請求項は、本発明の真の範囲および精神に含まれるような修正形態を対象とすることが意図されている。したがって、本発明で開示されている実施形態は、すべての点において例示的および非制限的であると考えるべきであり、本発明の範囲は前述の説明ではなく付属の請求項により指示される。請求項の同等性の意味および範囲内にある変更はすべて、本発明に含まれることが意図されている。
本開示の一部をなすさらなる実施形態、態様、および/または配置構成は、以下の番号が振られている段落に提示される。
段落1。センサー電子機器、マイクロコントローラ、および少なくとも1つの作用電極を備える、センサーのリアルタイム自己較正のための方法であって、前記マイクロコントローラによって、前記少なくとも1つの作用電極に対して電気化学的インピーダンス分光法(EIS)手順を実行して、少なくとも1つの作用電極に対する少なくとも1つのインピーダンスベースのパラメータの値を取得するステップと、前記マイクロコントローラによって、前記作用電極に対する前記EIS手順を定期的に繰り返して、前記少なくとも1つのインピーダンスベースのパラメータの追加の値を取得するステップと、前記マイクロコントローラによって、少なくとも1つのインピーダンスベースのパラメータの前記取得された値および追加の値に基づき少なくとも1つのEISベースのパラメータの値を計算するステップと、前記計算された値の変動について前記少なくとも1つのEISベースのパラメータの計算された値を監視するステップと、前記マイクロコントローラによって、計算された値の前記変動に基づき前記センサーに対する較正係数を調整するステップとを含む方法。
段落2。前記少なくとも1つのインピーダンスベースのパラメータは、実インピーダンスである段落1に記載の方法。
段落3。前記少なくとも1つのEISベースのパラメータは、膜抵抗である段落1に記載の方法。
段落4。前記少なくとも1つのEISベースのパラメータは、膜容量である段落1に記載の方法。
段落5。センサー電子機器は、メモリを備え、方法は、前記取得された値、前記取得された追加の値、および前記計算された値を前記メモリに記憶するステップをさらに含む段落1に記載の方法。
段落6。前記較正係数は、BG/Isigとして定義され、BGは、血糖であり、Isigは、前記作用電極を通じて測定される電流である段落1に記載の方法。
段落7。前記作用電極に対する実インピーダンス対虚インピーダンスのナイキストプロットに基づき計算された値の前記変動を検出するステップをさらに含む段落1に記載の方法。
段落8。前記ナイキストプロットは、変曲点を有し、前記少なくとも1つのEISベースのパラメータは、膜抵抗を含み、各前記EIS手順に対する膜抵抗の計算された値は、前記変曲点における実インピーダンスの大きさによって推定される段落7に記載の方法。
段落9。各前記EIS手順は、一定範囲の周波数にわたって実行される段落8に記載の方法。
段落10。時間の経過に従って生じるナイキストプロット内の左から右へのシフトは、膜抵抗の計算された値の増加を示す段落9に記載の方法。
段落11。EISベースのパラメータは、膜抵抗であり、前記変動は、ナイキスト勾配におけるシフトを測定することによって推定される段落7に記載の方法。
段落12。前記少なくとも1つのEISベースのパラメータは、膜容量を含み、前記ナイキストプロットのより高い周波数の領域内の半円の外観は、膜容量の計算された値の増加を示す段落7に記載の方法。
段落13。膜容量の値は、周波数範囲内の前記半円の頂点を追跡することによって推定される段落12に記載の方法。
段落14。前記周波数範囲は、1kHzと8kHzとの間である段落13に記載の方法。
段落15。センサー電子機器、マイクロコントローラ、ならびに少なくとも1つの作用電極および1つの対向電極を備える、センサーのリアルタイム自己較正のための方法であって、前記マイクロコントローラによって、前記少なくとも1つの作用電極に対して複数の電気化学的インピーダンス分光法(EIS)手順を実行するステップと、前記マイクロコントローラによって、前記複数のEIS手順のそれぞれの出力に基づき複数のナイキストプロットを生成するステップと、ベースラインのナイキストプロット長を設定するステップと、ベースラインのより高い周波数のナイキスト勾配を設定するステップと、前記マイクロコントローラによって、前記複数のナイキストプロットにわたってナイキストプロット長およびより高い周波数のナイキスト勾配を監視して、前記プロット長および前記勾配の変化を検出するステップと、ナイキストプロット長およびナイキスト勾配の前記変化に基づき前記センサーに対する較正係数を調整するステップとを含む方法。
段落16。対向電極のところの電圧(Vcntr)の値を監視するステップをさらに含む段落15に記載の方法。
段落17。Vcntrがレールするときにベースラインのナイキストプロット長を調整またはリセットするステップをさらに含む段落16に記載の方法。
段落18。前記センサーは、グルコース値を感知するためのグルコースセンサーであり、この方法は前記監視されている勾配が負になったときに1つまたは複数の感知されたグルコース値を破棄するステップをさらに含む段落15に記載の方法。
段落19。前記センサーは、グルコース値を感知するためのグルコースセンサーであり、この方法は前記監視されているナイキストプロット長が計算された閾値を超えて増加したときに1つまたは複数の感知されたグルコース値を破棄するステップをさらに含む段落15に記載の方法。
段落20。前記ベースラインのナイキストプロット長およびベースラインのより高い周波数のナイキスト勾配は、前記センサーの寿命の始まりにEIS状態を反映するそれぞれの値に設定される段落15に記載の方法。
段落21。少なくとも1つの作用電極を有する皮下または埋め込み型センサー上で診断を実行する方法であって、1つまたは複数の電気化学的インピーダンス分光法(EIS)ベースのパラメータに関連付けられている値および1つまたは複数の非EISベースのパラメータに関連付けられている値を含むベクトルを定義するステップと、前記EISベースのパラメータの各々、および前記非EISベースのパラメータの各々に対するそれぞれの閾値を定義するステップと、第1のEIS手順を実行して、1つまたは複数のEISベースのパラメータに関連付けられている前記値に対する第1のデータセットを生成するステップと、計算された時間間隔の後に、第2のEIS手順を実行して、1つまたは複数のEISベースのパラメータに関連付けられている前記値に対する第2のデータセットを生成するステップと、前記第1および第2のデータセットでベクトルを更新するステップと、前記ベクトル値を監視して、センサーが感度を喪失したかどうかを判定するステップとを含む方法。
段落22。前記1つまたは複数のEISベースのパラメータは、膜抵抗(Rmem)、膜容量(Cmem)、および二重層容量(Cdl)のうちの少なくとも1つを含む段落21に記載の方法。
段落23。前記1つまたは複数の非EISベースのパラメータは、センサー電流(Isig)の変動性、Isigの変化率、およびIsigが低い期間のうちの少なくとも1つを含む段落21に記載の方法。
段落24。前記非EISベースのパラメータの各々に対するベクトル値を定期的に更新するステップをさらに含む段落21に記載の方法。
段落25。感度喪失の前記決定は、ベクトル値のうちの1つと対応する閾値との比較結果に基づき行われる段落24に記載の方法。
段落26。センサーは、複数のベクトル値が対応するそれらの閾値と交差したときに感度を喪失したと判定される段落24に記載の方法。
段落27。前記複数のベクトル値は、少なくとも1つのEISベースのパラメータおよび少なくとも1つの非EISベースのパラメータに対する値を含む段落26に記載の方法。
段落28。前記閾値の各々は、絶対閾値である段落21に記載の方法。
段落29。前記閾値の各々は、相対閾値である段落21に記載の方法。
段落30。前記EISベースのパラメータの組合せに対する第2の閾値をさらに含み、センサーは、EISベースのパラメータの前記組合せの組み合わされたベクトル値が前記第2の閾値と交差した場合に感度を喪失したと判定される段落21に記載の方法。
段落31。前記EISベースおよび非EISベースのパラメータの組合せに対する第2の閾値をさらに含み、センサーは、EISベースおよび非EISベースのパラメータの前記組合せの組み合わされたベクトル値が前記第2の閾値と交差した場合に感度を喪失したと判定される段落21に記載の方法。
段落32。加重係数をベクトル値の各々に適用して加重ベクトル値を生成するステップと、前記加重ベクトル値に基づき感度喪失を決定するステップとをさらに含む段落21に記載の方法。
段落33。前記加重係数は、EISベースのパラメータの各々について、および非EISベースのパラメータの各々について異なる段落32に記載の方法。
段落34。各前記EISベースのパラメータおよび各前記非EISベースのパラメータについて、それぞれの加重係数が、各パラメータの前記それぞれの閾値に基づき計算される段落33に記載の方法。
段落35。前記EISベースのパラメータの組合せに対する第2の閾値をさらに含み、センサーは、EISベースのパラメータの前記組合せの組み合わされた加重ベクトル値が前記第2の閾値と交差した場合に感度を喪失したと判定される段落34に記載の方法。
段落36。前記第2の閾値は、絶対閾値である段落35に記載の方法。
段落37。前記第2の閾値は、相対閾値である段落35に記載の方法。
段落38。前記EISベースおよび非EISベースのパラメータの組合せに対する第2の閾値をさらに含み、センサーは、EISベースおよび非EISベースのパラメータの前記組合せの組み合わされた加重ベクトル値が前記第2の閾値と交差した場合に感度を喪失したと判定される段落34に記載の方法。
段落39。前記第2の閾値は、絶対閾値である段落38に記載の方法。
段落40。前記第2の閾値は、相対閾値である段落38に記載の方法。
段落41。センサーの経過時間を判定するための方法であって、前記センサーの初期化前に電気化学的インピーダンス分光法(EIS)手順を実行するステップと、前記EIS手順の出力に基づきナイキストプロットを生成するステップと、より低い周波数のナイキスト勾配に基づき、センサーが新品かどうかを判定するステップとを含む方法。
段落42。前記判定は、より低い周波数のナイキスト勾配と閾値勾配との比較結果に基づく段落41に記載の方法。
段落43。閾値勾配は3である段落42に記載の方法。
段落44。異なるグルコースセンサーを区別する方法であって、前記センサーに対して電気化学的インピーダンス分光法(EIS)手順を実行するステップと、前記EIS手順の出力に基づきナイキストプロットを生成するステップと、前記ナイキストプロットに基づき、前記異なるセンサーのうちの1つまたは複数を識別するステップとを含む方法。
段落45。前記識別は、より低い周波数のナイキスト勾配長に基づき行われる段落44に記載の方法。
段落46。前記長さは、0.105Hzおよび1HzにおけるEISの間の直交座標距離として計算される段落45に記載の方法。