JP2018048665A - 左右輪駆動装置の異常検出装置および異常検出方法 - Google Patents

左右輪駆動装置の異常検出装置および異常検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】異常が生じた軸受および歯車の群を容易かつ安価に判別することができる左右輪駆動装置の異常検出装置および異常検出方法を提供する。【解決手段】左右輪駆動装置は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源と、二つの駆動源と左右の駆動輪との間に設けられ、二つの駆動源から与えられるトルクの差を増幅し左右の駆動輪にそれぞれ伝達する減速装置とを備える。左右輪駆動装置の異常検出装置68は、車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する車両状態判定手段73と、車両が直進状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値、および車両が旋回状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値から、第1の機械要素群に異常が生じているか否か、第2の機械要素群に異常が生じているか否かを判別する異常部位判別手段74とを有する。【選択図】図7

Description

この発明は、独立した二つの駆動源から与えられるトルクの差を増幅して伝達する左右輪駆動装置の異常検出装置および異常検出方法に関する。
車両のスムーズな旋回走行の実現または、極端なアンダーステア、極端なオーバーステア等の車両の挙動変化を抑制するために、左右の駆動輪の間に大きな駆動トルクの差を発生させることが有効な場合がある。そこで、二つの駆動源と左右の駆動輪との間に、3要素2自由度の遊星歯車機構を二つ組み合わせた歯車装置を備え、トルクの差を増幅した左右輪駆動装置が開示されている(特許文献1,2)。これらの左右輪駆動装置は、左右の駆動輪の間に回転速度差が生じると、歯車装置内の歯車にも相対回転が生じる。左右の駆動輪の間に回転速度差が生じない場合には、歯車装置内の歯車の相対回転は発生しない。
また、複数の歯車を備えた歯車装置の異常検出方法(特許文献3,4)が開示されている。特許文献3では、無負荷運転時と負荷運転時に発生する振動データを比較することで、歯車の異常か軸受の異常かを判断している。特許文献4では、基準歯車の回転周期と異常な振動の周期の比から異常が生じている歯車の特定をしている。
特開2015−21594号公報 特許第4907390号公報 特開2009−109455号公報 特許第4031745号公報
二つの駆動源と左右の駆動輪との間に、遊星歯車機構を同軸上に二つ組み合わせた歯車装置を備えた左右輪駆動装置の軸受もしくは歯車に生じた異常を検出する場合、特許文献3の方法では、歯車の異常か軸受の異常かを判断することはできるが、特定部位の軸受または歯車に異常が生じたかどうかを判断することができない。また特許文献4の方法では、個別の歯車に異常が生じたかどうかを特定することはできるが、計算量が多くなり高価な装置を必要とするおそれがある。
この発明の目的は、異常が生じた軸受および歯車の群を容易かつ安価に判別することができる左右輪駆動装置の異常検出装置および異常検出方法を提供することである。
この発明の左右輪駆動装置1の異常検出装置68は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源2L,2Rと、これら二つの駆動源2L,2Rと左右の駆動輪61L,61Rとの間に設けられ、前記二つの駆動源2L,2Rから与えられるトルクの差を増幅し前記左右の駆動輪61L,61Rにそれぞれ伝達する減速装置3L,3Rと、を備えた左右輪駆動装置1の異常検出装置68において、
前記減速装置3L,3Rは二つの遊星歯車機構30L,30Rを有する歯車装置30を備え、
前記異常検出装置68は、前記二つの遊星歯車機構30L,30Rに組み込まれた軸受および歯車の群である第1の機械要素群71、およびこの左右輪駆動装置1における、前記減速装置3L,3R内の第1の機械要素群71以外の軸受および歯車の群である第2の機械要素群72の異常を検出する装置であり、
前記左右輪駆動装置1に振動センサ70を備え、
前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する車両状態判定手段73と、
この車両状態判定手段73で前記車両が直進状態であるときの前記振動センサ70から出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態であるときの前記振動センサ70から出力される振動測定値から、定められた条件に従って前記第1の機械要素群71に異常が生じているか否か、および前記第2の機械要素群72に異常が生じているか否かを判別する異常部位判別手段74と、を有する。
前記定められた条件は、設計等によって任意に定める条件あって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な条件を求めて定められる。
この構成によると、車両状態判定手段73は、車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する。異常部位判別手段74は、車両が直進状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値、および車両が旋回状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値から、定められた条件に従って第1の機械要素群71に異常が生じているか否か、第2の機械要素群72に異常が生じているか否かを判別する。前記歯車装置30は、車両が直進状態にあるときと旋回状態であるときで歯車および軸受の動作状況が変わり、これによって振動を発生する部位が異なる。このため、直進状態および旋回状態の各振動測定値を用い、直進状態か旋回状態であるかに応じて振動測定値を例えば閾値等と比較することで、第1,第2の機械要素群71,72の異常の有無を容易かつ安価に判別することができる。この場合、例えば振動測定値の周波数解析等をしなくても、異常部位を大まかに判別することができる。
前記異常部位判別手段74は、前記車両が直進状態で前記振動センサ70から出力される振動測定値が閾値未満で、且つ、前記車両が旋回状態で前記振動センサ70から出力される振動測定値が閾値以上のとき、前記第1の機械要素群71に異常が生じていると判別しても良い。
前記各閾値は、それぞれ設計等によって任意に定める閾値あって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な閾値を求めて定められる。
この場合、振動測定値の周波数解析等をしなくても、異常部位を大まかに判別することができる。
前記異常部位判別手段74は、少なくとも前記車両が直進状態で前記振動センサ70から出力される振動測定値が閾値以上のとき、前記第2の機械要素群72に異常が生じていると判別しても良い。
前記閾値は、設計等によって任意に定める閾値あって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な閾値を求めて定められる。
この場合、振動測定値の周波数解析等をしなくても、異常部位を大まかに判別することができる。
前記車両状態判定手段73は、前記左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差の大きさから、前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定しても良い。
前記車両状態判定手段73は、前記車両における操舵角の大きさから、前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定しても良い。
これらの場合、車両が直進状態であるか旋回状態であるか容易に判定できる。
前記車両状態判定手段73は、前記操舵角の大きさが閾値を超えるとき、前記車両が旋回状態であると判定し、且つ、前記閾値の大きさを車速が大きい程小さく設定しても良い。
前記閾値は、設計等によって任意に定める閾値あって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な閾値を求めて定められる。
このように車速に応じて、操舵角の判定基準となる閾値を設定することで、旋回状態の異常判定の機会を増やすことができる。
前記車両が直進状態で前記振動センサ70から出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態で前記振動センサ70から出力される振動測定値は、測定時の車速および前記駆動源の駆動トルクのそれぞれの大きさが定められた範囲内にあっても良い。
前記定められた範囲は、設計等によって任意に定める範囲あって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な範囲を求めて定められる。
このように振動測定時における車速および駆動源の駆動トルクのそれぞれの大きさを定められた範囲内にすることで、測定条件を合わせることができる。したがって異常検出の判定精度を向上することができる。
この発明の左右輪駆動装置の異常検出方法は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源と、これら二つの駆動源と左右の駆動輪との間に設けられ、前記二つの駆動源から与えられるトルクの差を増幅し前記左右の駆動輪にそれぞれ伝達する減速装置と、を備えた左右輪駆動装置の異常検出方法において、
前記減速装置は二つの遊星歯車機構を有する歯車装置を備え、
前記異常検出方法は、前記二つの遊星歯車機構に組み込まれた軸受および歯車の群である第1の機械要素群、およびこの左右輪駆動装置における、前記減速装置内の第1の機械要素群以外の軸受および歯車の群である第2の機械要素群の異常を検出する方法であり、
前記左右輪駆動装置に振動センサを備え、
前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する車両状態判定過程と、
この車両状態判定過程で前記車両が直進状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値から、定められた条件に従って前記第1の機械要素群に異常が生じているか否か、および前記第2の機械要素群に異常が生じているか否かを判別する異常部位判別過程と、を有する。
前記定められた軸受および歯車の群は、設計によって任意に定められる。
前記定められた条件は、設計等によって任意に定める条件あって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な条件を求めて定められる。
この構成によると、車両状態判定過程では、車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する。異常部位判別過程では、車両が直進状態であるとき振動センサから出力される振動測定値、および車両が旋回状態であるとき振動センサから出力される振動測定値から、定められた条件に従って第1の機械要素群に異常が生じているか否か、第2の機械要素群に異常が生じているか否かを判別する。このように直進状態および旋回状態の各振動測定値から、第1,第2の機械要素群の異常の有無を容易かつ安価に判別することができる。この場合、例えば振動測定値の周波数解析等をしなくても、異常部位を大まかに判別することができる。
この発明の左右輪駆動装置の異常検出装置は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源と、これら二つの駆動源と左右の駆動輪との間に設けられ、前記二つの駆動源から与えられるトルクの差を増幅し前記左右の駆動輪にそれぞれ伝達する減速装置と、を備えた左右輪駆動装置の異常検出装置において、前記減速装置は二つの遊星歯車機構を有する歯車装置を備え、前記異常検出装置は、前記二つの遊星歯車機構に組み込まれた軸受および歯車の群である第1の機械要素群、およびこの左右輪駆動装置における、前記減速装置内の第1の機械要素群以外の軸受および歯車の群である第2の機械要素群の異常を検出する装置であり、前記左右輪駆動装置に振動センサを備え、前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する車両状態判定手段と、この車両状態判定手段で前記車両が直進状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値から、定められた条件に従って前記第1の機械要素群に異常が生じているか否か、および前記第2の機械要素群に異常が生じているか否かを判別する異常部位判別手段と、を有する。このため、異常が生じた軸受および歯車の群を容易かつ安価に判別することができる。
この発明の左右輪駆動装置の異常検出方法は、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源と、これら二つの駆動源と左右の駆動輪との間に設けられ、前記二つの駆動源から与えられるトルクの差を増幅し前記左右の駆動輪にそれぞれ伝達する減速装置と、を備えた左右輪駆動装置の異常検出方法において、前記減速装置は二つの遊星歯車機構を有する歯車装置を備え、前記異常検出方法は、前記二つの遊星歯車機構に組み込まれた軸受および歯車の群である第1の機械要素群、およびこの左右輪駆動装置における、前記減速装置内の第1の機械要素群以外の軸受および歯車の群である第2の機械要素群の異常を検出する方法であり、前記左右輪駆動装置に振動センサを備え、前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する車両状態判定過程と、この車両状態判定過程で前記車両が直進状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値から、定められた条件に従って前記第1の機械要素群に異常が生じているか否か、および前記第2の機械要素群に異常が生じているか否かを判別する異常部位判別過程と、を有する。このため、異常が生じた軸受および歯車の群を容易かつ安価に判別することができる。
この発明の実施形態に係る左右輪駆動装置の異常検出装置が搭載された車両の概念構成を示すブロック図である。 同左右輪駆動装置の断面図である。 同左右輪駆動装置の歯車装置部分を拡大して示す断面図である。 同左右輪駆動装置を示すスケルトン図である。 同左右輪駆動装置を搭載した電気自動車の説明図である。 同左右輪駆動装置によるトルク差増幅率を説明するための速度線図である。 同異常検出装置等の制御系のブロック図である。 同左右輪駆動装置の異常検出方法を概略表すフローチャートである。 同異常検出装置で実行される異常検出のフローチャートである。 同車両の直進状態で異常が発生した例を示す図である。 同車両の旋回状態で異常が発生した例を示す図である。
この発明の実施形態に係る左右輪駆動装置の異常検出装置を図1ないし図11と共に説明する。以下の説明は、左右輪駆動装置の異常検出方法についての説明も含む。図1は、この左右輪駆動装置の異常検出装置が搭載された車両(電気自動車)の概念構成を示すブロック図である。この車両は、後輪駆動方式であり、シャーシ60、後輪である駆動輪61L,61R、前輪62L,62R、左右輪駆動装置1、上位ECU66、制御装置67、バッテリ63、インバータ装置64、異常検出装置68および操舵角センサ69等を備える。
左右輪駆動装置1は、第1,第2電動モータ2L,2Rと、歯車装置30と、振動センサ70とを備えている。第1,第2電動モータ2L,2Rは、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源である。歯車装置30は、これら第1,第2電動モータ2L,2Rと駆動輪61L,61Rとの間に設けられる。
<制御系の概略構成について>
上位ECU66は、制御装置67の上位の制御手段であり、例えば、車両全般の統括制御および協調制御を行う機能と、左右の駆動輪トルク指令値を生成する機能とを有する。上位ECU66は、図示外のアクセル操作部の出力する加速指令と、図示外のブレーキ操作部の出力する減速指令と、操舵角センサ69等の出力する旋回指令とから、左右の駆動輪トルク指令値を生成する。制御装置67は、上位ECU66から与えられた左右の駆動輪トルク指令値に基づいて、インバータ装置64に駆動源トルク指令値を与える。これにより第1,第2電動モータ2L,2Rは個別に制御される。インバータ装置64は、バッテリ63の直流電力を第1,第2電動モータ2L,2Rの駆動のための交流電力に変換する。左右輪駆動装置1からの出力は等速ジョイントを介して左右の駆動輪61L,61Rに伝達される。
<左右輪駆動装置1について>
図2に示すように、左右輪駆動装置1は、第1,第2電動モータ2L,2Rと、左右の減速装置3L,3Rとを備えている。左右の減速装置3L,3Rは、左右の駆動輪と、第1,第2電動モータ2L,2Rとの間に設けられる。この実施形態では、第1,第2電動モータ2L,2Rは、同一の最大出力を有する同一規格の電動モータを用いている。
<<第1,第2電動モータ2L,2Rについて>>
第1,第2電動モータ2L,2Rは、モータハウジング4L,4Rと、ステータ6,6と、ロータ5,5とを有する。第1,第2電動モータ2L,2Rは、モータハウジング4L,4Rの内周面にステータ6,6が設けられ、各ステータ6の内周に間隔を隔ててロータ5を設けたラジアルギャップタイプである。
モータハウジング4L,4Rは、円筒形のモータハウジング本体4aL,4aRと、外側壁4bL,4bRと、内側壁4cL,4cRとを有する。外側壁4bL,4bRは、モータハウジング本体4aL,4aRにおけるアウトボード側の外側面を閉塞する。内側壁4cL,4cRは、モータハウジング本体4aL,4aRにおけるインボード側の内側面に設けられ、減速装置3L,3Rと隔てる隔壁を成す。内側壁4cL,4cRには、各モータ軸5aをインボード側に引き出す開口部が設けられている。なおこの明細書において、左右輪駆動装置1が車両に搭載された状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
モータハウジング本体4aL,4aRに内周面に、ステータ6,6が嵌合固定されている。ロータ5は、モータ軸5aを中心部に有する。内側壁4cL,4cRと外側壁4bL,4bRには、転がり軸受8a,8bが設けられている。各モータ軸5aは、モータハウジング4L,4Rに転がり軸受8a,8bを介して回転自在に支持されている。左右のモータ軸5a,5aは同一軸心上(同軸)に設けられている。
<<減速装置3L,3Rについて>>
減速装置3L,3Rは、減速装置ハウジング9と、入力歯車軸12L,12Rと、中間歯車軸13L,13Rと、出力歯車軸14L,14Rとを有する。減速装置ハウジング9は、これらの歯車軸を収容する。減速装置ハウジング9は、前記歯車軸の軸方向に直交する方向に三ピースに分割された三ピース構造である。具体的に、減速装置ハウジング9は、中央ハウジング9aと、この中央ハウジング9aの両側面に固定される左右の側面ハウジング9bL,9bRとを有する。
側面ハウジング9bL,9bRのアウトボード側の側面と、内側壁4cL,4cRとが、複数のボルトで固定される。これにより、減速装置ハウジング9の左右両端に二基の電動モータ2L,2Rが固定される。
中央ハウジング9aには、中央に仕切り壁11が設けられている。減速装置ハウジング9は、仕切り壁11によって左右に二分割され、左右の減速装置本体を収容する。この左右の減速装置本体は、左右対称形であり、前記入力歯車軸12L,12Rと、中間歯車軸13L,13Rと、出力歯車軸14L,14Rとを備えている。
入力歯車軸12L,12Rは、モータ軸5aから動力が伝達される入力歯車12aを有する。仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴と、左右の側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴に、転がり軸受17a,17bが設けられている。入力歯車軸12L,12Rの両端は、減速装置ハウジング9に転がり軸受17a,17bを介して回転自在に支持されている。入力歯車軸12L,12Rは中空構造である。この入力歯車軸12L,12Rの中空内部に、各モータ軸5aのインボード側の端部が挿入されている。入力歯車軸12L,12Rと各モータ軸5aとは、スプライン(「セレーション」も含む。以下のスプラインについても同様に「セレーション」を含む。)結合されている。
図3に示すように、左右の中間歯車軸13L,13Rは、同軸に配置されている。中間歯車軸13L,13Rは、入力歯車12a,12aに噛み合う大径の入力側外歯車13a,13aと、後述する出力歯車14a,14aに噛み合う出力側小径歯車13b,13bとを有する。仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴19aと、左右の側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴19bに、転がり軸受20a,20bが設けられている。中間歯車軸13L,13Rの両端は、減速装置ハウジング9に転がり軸受20a,20bを介して回転自在に支持されている。軸受嵌合穴19a,19bは、転がり軸受20a,20bの外輪端面が当接する段付き形状であり、後述する第1,第2の結合部材31,32が通るように貫通している。
中間歯車軸13L,13Rには、この中間歯車軸13L,13Rと同軸に歯車装置30が組み込まれている。歯車装置30は、二つの電動モータ2L,2R(図2)から与えられるトルク(駆動トルク)の差を増幅する。この歯車装置30は、3要素2自由度の二つの遊星歯車機構30L,30Rを備える。遊星歯車機構30L,30Rには、この例では、シングルピニオン遊星歯車機構が採用されている。二つの遊星歯車機構30L,30Rは同軸に設けられている。
遊星歯車機構30L,30Rは、リングギヤR,Rと、サンギヤS,Sと、プラネタリギヤP,Pと、遊星キャリアC,Cと、第1,第2の結合部材31,32とを有する。リングギヤR,Rは、中間歯車軸13L,13Rの入力側外歯車13a,13aにそれぞれ組み込まれた内歯車である。サンギヤS,Sは、リングギヤR,Rと同軸に設けられた太陽歯車である。プラネタリギヤP,Pは、リングギヤR,RとサンギヤS,Sに噛み合う公転歯車である。遊星キャリアC,Cは、プラネタリギヤP,Pに連結され、リングギヤR,Rと同軸に設けられている。遊星キャリアC,Cには、中間歯車軸13L,13Rの出力側小径歯車13b,13bが連結されている。
第1の結合部材31は、図3左側の遊星歯車機構30Lの構成部材である一方の遊星キャリアCと、図3右側の遊星歯車機構30Rの構成部材である他方のサンギヤSとを結合する。第2の結合部材32は、図3左側の遊星歯車機構30Lの構成部材である一方のサンギヤSと、図3右側の遊星歯車機構30Rの構成部材である他方の遊星キャリアCとを結合する。
遊星キャリアC,Cは、プラネタリギヤP,Pを支持するキャリアピン33と、アウトボード側のキャリアフランジ34aと、インボード側のキャリアフランジ34bとを有する。プラネタリギヤP,Pは、針状ころ軸受37を介してキャリアピン33に支持されている。アウトボード側のキャリアフランジ34aは、キャリアピン33のアウトボード側端部に連結されている。インボード側のキャリアフランジ34bは、キャリアピン33のインボード側端部に連結されている。
アウトボード側のキャリアフランジ34aは、アウトボード側に延びる中空軸部35を備える。この中空軸部35のアウトボード側の端部が、側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴に転がり軸受20bを介して支持されている。インボード側のキャリアフランジ34bは、インボード側に延びる中空軸部36を備える。この中空軸部36のインボード側の端部が、仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴に転がり軸受20aを介して支持されている。各キャリアフランジ34a,34bの外周面とリングギヤR,Rとの間には、転がり軸受39a,39bが設けられている。
二つの遊星歯車機構30L,30Rを互いに連結している第1,第2の結合部材31,32は、中央ハウジング9aを左右に仕切る仕切り壁11を貫通して組み込まれている。第1,第2の結合部材31,32は、互いに同軸に位置して、それぞれスラスト軸受47によりアキシアル方向に回転自在に支持され、かつ深溝玉軸受49によりラジアル方向に回転自在に支持される。さらに第1,第2の結合部材31,32間には、軸受47,49とは別の軸受45,46,スラスト軸受48が設けられている。別の軸受45,46として、それぞれ針状ころ軸受が適用されている。第2の結合部材32が中空軸を有し、第1の結合部材31が前記中空軸に挿通される軸を有する。
第2の結合部材32における図3右側のアウトボード側の外周面と、遊星キャリアCにおけるインボード側のキャリアフランジ34bの中空軸部36とに互いに噛み合うスプラインが設けられている。よって、第2の結合部材32は、遊星キャリアCに対しスプライン嵌合により連結されている。したがって、第2の回転部材である遊星キャリアCは、第2の結合部材32と一体となって回転する。
第1の結合部材31における図3左側のアウトボード側の外周面と、遊星キャリアCにおけるアウトボード側のキャリアフランジ34aの中空軸部35とに互いに噛み合うスプラインが設けられている。よって、第1の結合部材31は、遊星キャリアCに対しスプライン嵌合により連結されている。したがって、第1の回転部材である遊星キャリアCは、第1の結合部材31と一体となって回転する。
前述のように、第1,第2の結合部材31,32が、遊星キャリアC,Cに対しスプライン嵌合により連結されているため、二つの遊星歯車機構30L,30Rは左右に分割可能となり、三ピース構造の減速装置ハウジング9に他の減速歯車軸と共に左右から組み込み可能である。第2の結合部材32における遊星キャリアC側の端部は、その外周面に、図3左側の遊星歯車機構30LのサンギヤSを構成する外歯車が形成されている。このサンギヤSを構成する外歯車がプラネタリギヤPと噛み合う。
第1の結合部材31は、図3右側の遊星歯車機構30R側の端部に大径部43を有する。この大径部43の外周面に、図3右側の遊星歯車機構30RのサンギヤSを構成する外歯車が形成されている。このサンギヤSを構成する外歯車がプラネタリギヤPと噛み合う。第2の結合部材32の軸方向両端には、スラスト軸受47,48が設けられている。これらスラスト軸受47,48により、第1,第2の結合部材31,32と遊星キャリアC,Cとのスプライン嵌合部の摺動による軸方向移動が規制される。
第1の結合部材31は、図3右側の端部が、遊星キャリアCに対して深溝玉軸受49によって支持されている。第1の結合部材31の軸心には、給油穴が設けられている。
図2に示すように、出力歯車軸14L,14Rは、大径の出力歯車14aを有する。仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴と、左右の側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴に、転がり軸受54a,54bが設けられている。出力歯車軸14L,14Rは、減速装置ハウジング9に転がり軸受54a,54bを介して回転自在に支持されている。
出力歯車軸14L,14Rのアウトボード側の端部は、側面ハウジング9bL,9bRに形成された開口部から減速装置ハウジング9の外側に引き出されている。引き出された出力歯車軸14L,14Rのアウトボード側の端部の外周面に、等速ジョイント65aの外側継手部がスプライン結合されている。各等速ジョイント65aは、図示外の中間シャフト等を介して駆動輪61L,61R(図1)に接続されている。
図4は、この左右輪駆動装置を示すスケルトン図である。図5は、この左右輪駆動装置を搭載した電気自動車の説明図である。図4および図5に示すように、左右の電動モータ2L,2Rは、制御装置により個別に制御され、異なるトルクを発生させて出力し得る。
電動モータ2L,2Rのトルクは、減速装置3L,3Rの入力歯車軸12L,12Rの入力歯車12aと、中間歯車軸13L,13Rの大径の入力側外歯車13aとの歯数比で増大されて、歯車装置30のリングギヤR,Rに伝達される。さらに出力側小径歯車13bと出力歯車14aとの歯数比でトルクがさらに増幅されて、駆動輪61L,61Rに出力される。
歯車装置30における遊星歯車機構30L,30Rは、同軸に設けられたサンギヤS,SおよびリングギヤR,Rと、これらサンギヤS,SとリングギヤR,Rとの間に位置するプラネタリギヤP,Pと、プラネタリギヤP,Pを回動可能に支持しサンギヤS,SおよびリングギヤR,Rと同軸に設けられた遊星キャリアC,Cとを有する。ここで、サンギヤS,SとプラネタリギヤP,Pは外周にギヤ歯を有する外歯歯車であり、リングギヤR,Rは内周にギヤ歯を有する内歯歯車である。プラネタリギヤP,PはサンギヤS,SとリングギヤR,Rとに噛み合っている。
遊星歯車機構30L,30Rでは、遊星キャリアC,Cを固定した場合にサンギヤS,SとリングギヤR,Rとが逆方向に回転する。このため、図6に示す速度線図に表すと、リングギヤR,RおよびサンギヤS,Sが遊星キャリアC,Cに対して反対側に配置される。
図4および図5に示すように、この歯車装置30は、前述のように、サンギヤS、遊星キャリアC、プラネタリギヤPおよびリングギヤRを有する一方の遊星歯車機構30Lと、サンギヤS、遊星キャリアC、プラネタリギヤPおよびリングギヤRを有する他方の遊星歯車機構30Rとが互いに同軸に組み合わされて構成されている。
遊星歯車機構30Lの構成部材である遊星キャリアCと、遊星歯車機構30Rの構成部材であるサンギヤSとが結合されて第1の結合部材31を形成している。また遊星歯車機構30Lの構成部材であるサンギヤSと、遊星歯車機構30Rの構成部材である遊星キャリアCとが結合されて第2の結合部材32を形成している。
電動モータ2Lで発生したトルクTM1は、入力歯車軸12Lから中間歯車軸13Lに伝達される。この中間歯車軸13Lに伝達されたトルクが、遊星歯車機構30Lを介して順次、中間歯車軸13Lの出力側小径歯車13b、出力歯車14a、出力歯車軸14Lに伝達される。出力歯車軸14Lから駆動輪61Lに駆動トルクTL(図6)が出力される。電動モータ2Rで発生したトルクTM2は、入力歯車軸12Rから中間歯車軸13Rに伝達される。この中間歯車軸13Rに伝達されたトルクが、遊星歯車機構30Rを介して順次、中間歯車軸13Rの出力側小径歯車13b、出力歯車14a、出力歯車軸14Rに伝達される。出力歯車軸14Rから駆動輪61Rに駆動トルクTR(図6)が出力される。
電動モータ2L,2Rからの出力は、二つの遊星歯車機構30L,30RのそれぞれのリングギヤR,Rに与えられ、第1,第2の結合部材31,32からの出力が駆動輪61L,61Rに与えられる。
第2の結合部材32は、歯車装置30の軸心に沿って延在する中空軸を含んで構成され、その中空軸の内部には、第1の結合部材31が挿通されている。第1の結合部材31は、歯車装置30の軸心に沿って延在する軸を含んで構成されている。第1,第2の結合部材31,32は、同軸上に配置されて、これらの軸は二重構造となっている。第1の結合部材31の外周面と第2の結合部材32の内周面の間には、軸受45,46が配置されている。第1,第2の結合部材31,32は、軸受45,46を介して相互に支持されている。第1,第2の結合部材31,32は、それぞれスラスト軸受47、深溝玉軸受49により回転自在に支持される。さらに第1,第2の結合部材31,32間には、軸受47,49とは別の軸受45,46,スラスト軸受48が設けられている。
<駆動トルク等について>
ここで、歯車装置30によって伝達される駆動トルクについて、図6に示す速度線図を用いて説明する。歯車装置30は、二つの同一のシングルピニオン遊星歯車機構30L,30Rを組み合わせて構成されるため、同図6に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分かりやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、図6上側に一方の遊星歯車機構30Lの速度線図を示し、図6下側に他方の遊星歯車機構30Rの速度線図を示す。
本来は、図5に示すように、各電動モータ2L,2Rから出力されたトルクTM1およびTM2は、各入力歯車軸12L,12Rの入力歯車12aと噛み合う入力側外歯車13aを介して、各リングギヤR,Rに入力されるため、減速比が掛かる。また、歯車装置30が出力された駆動トルクTL,TRは、出力歯車14aと噛み合う出力側小径歯車13bを介して、左右の駆動輪61L,61Rへ伝達されるため、減速比が掛かる。
この左右輪駆動装置にはこれらの減速比が掛かるが、以降、理解を容易にするため、図6に示すように、速度線図および各計算式の説明においては減速比を省略し、各リングギヤR,Rに入力されるトルクをTM1,TM2のままとし、駆動トルクはTL,TRのままとする。
二つのシングルピニオン遊星歯車機構30L,30Rは、同一の歯数の歯車要素を使用しているため、速度線図においては、リングギヤRと遊星キャリアCとの距離およびリングギヤRと遊星キャリアCとの距離は等しく、この距離を「a」とする。また、サンギヤSと遊星キャリアCとの距離およびサンギヤSと遊星キャリアCとの距離も等しく、この距離を「b」とする。
遊星キャリアC,CからリングギヤR,Rまでの長さと遊星キャリアC,CからサンギヤS,Sまでの長さの比は、リングギヤR,Rの歯数Zrの逆数(1/Zr)とサンギヤS,Sの歯数Zsの逆数(1/Zs)との比と等しい。よって、a=(1/Zr)、b=(1/Zs)である。
の点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記式(1)が算出される。なお図6において、図中矢印方向Mがモーメントの正方向である。
a・TR+(a+b)・TL−(b+2a)・TM1=0 …(1)
の点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記式(2)が算出される。
−a・TL−(a+b)・TR+(b+2a)・TM2=0 …(2)
(1)式+(2)式より、下記式(3)が得られる。
−b・(TR−TL)+(2a+b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((2a+b)/b)・(TM2−TM1) …(3)
式(3)の(2a+b)/bがトルク差増幅率αとなる。a=1/Zr、b=1/Zsを代入すると、α=(Zr+2Zs)/Zrとなり、下記のトルク差増幅率αが得られる。
α=(Zr+2Zs)/Zr
この例では、電動モータ2L,2R(図5)からの入力は、R,Rとなり、駆動輪61L,61R(図5)への出力はS+C,S+Cとなる。
図5および図6に示すように、第1の結合部材31と第2の結合部材32の回転速度の差が小さい場合、二つの電動モータ2L,2Rで異なるトルクTM1,TM2を発生させて入力トルク差ΔTIN(=(TM1−TM2))を与えると、歯車装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差α・ΔTINを得ることができる。
すなわち、入力トルク差ΔTINが小さくても、歯車装置30において前記トルク差増幅率α(=(Zr+2Zs)/Zr)で入力トルク差ΔTINを増幅することができる。よって、左駆動輪61Lと右駆動輪61Rとに伝達される駆動トルクTL,TRに、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差ΔTOUT(=α・(TM2−TM1))を与えることができる。
<異常検出装置等について>
図1に示すように、左右輪駆動装置1における歯車装置30に、振動センサ70が取り付けられている。歯車装置30の例えば中央ハウジング9a(図2)に、振動センサ70が固定されている。但し、振動センサ70の取り付け箇所は、この例に限定されるものではない。振動センサ70は、例えば、圧電素子を用いた加速度センサによって構成される。
異常検出装置68は、図4に示す歯車装置30内の第1,第2の機械要素群71,72の異常を検出する。第1の機械要素群71は、二つの遊星歯車機構30L,30R(図3)に組み込まれた軸受および歯車の群である。第1の機械要素群71は、例えば、リングギヤR,R、サンギヤS,S、プラネタリギヤP,P、針状ころ軸受37、転がり軸受20a,39a,39b、軸受45,46,47,49、およびスラスト軸受48を含む。
第2の機械要素群72は、この左右輪駆動装置1における、減速装置3L,3R内の前記第1の機械要素群71以外の軸受および歯車の群である。第2の機械要素群72は、例えば、出力側小径歯車13b、出力歯車14a、入力歯車12a、転がり軸受17a,17b,54a,54b(図2)等を含む。
図7に示すように、異常検出装置68は、車両状態判定手段73と、異常部位判別手段74と、異常報告手段75とを有する。振動センサ70の振動測定値は、異常検出装置68に入力される。この異常検出装置68には、上位ECU66から車速、駆動輪トルク指令値と共に、操舵角もしくは左右の駆動輪の回転速が入力される。前記車速は、例えば、前輪である従動輪または駆動輪の車輪回転速度から算出した値、または第1,第2電動モータ2L,2R(図1)の回転速度から算出した値等である。前記操舵角は、操舵角センサ69の出力である。
車両状態判定手段73は、例えば、操舵角の大きさから、この車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する。車両状態判定手段73は、操舵角の大きさが閾値を超えるとき、車両が旋回状態であると判定し、操舵角の大きさが閾値以下のとき、車両が直進状態であると判定する。但し、車速が大きい程小さな操舵角でも、左右の駆動輪の回転速度差が大きくなるため、車速が大きい程前記閾値を小さく設定する。
車両状態判定手段73は、車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定するとき、前記操舵角に代えて、左右の駆動輪の回転速度差を直接使用することもできる。この場合、車両状態判定手段73は、回転速度差がある閾値を超えるとき、車両が旋回状態であると判定し、回転速度差がある閾値以下のとき、車両が直進状態であると判定する。前述の操舵角もしくは回転速度差のいずれを用いる場合でも、閾値の大きさを、直進の判定時と旋回の判定時で異なる値としても良い。旋回の判定に用いる閾値を、直進の判定に用いる閾値よりも大きくすることで、旋回と直進の判定をより正確に行うことができる。
異常部位判別手段74は、車両が直進状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値、および車両が旋回状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値から、定められた条件に従って第1の機械要素群71(図4)に異常が生じているか否か、第2の機械要素群72に異常が生じているか否かを判別する。
具体的に、異常部位判別手段74は、車両が直進状態で振動センサ70から出力される振動測定値が閾値未満で、且つ、車両が旋回状態で振動センサ70から出力される振動測定値が閾値以上のとき、第1の機械要素群71(図4)に異常が生じていると判別する。
異常部位判別手段74は、少なくとも車両が直進状態で振動センサ70から出力される振動測定値が閾値以上のとき、第2の機械要素群72(図4)に異常が生じていると判別する。なお異常部位判別手段74において、振動測定値を閾値判定する際、加速度の実効値が用いられる。
異常報告手段75は、異常部位判別手段74から第1,第2の機械要素群71,72(図4)のいずれか一方または両方に異常が生じている旨の情報を受けて、上位ECU66に異常発生情報を出力する。上位ECU66は、前記異常発生情報が入力されると、車両の例えばコンソールパネル等に設置された表示装置76に機械要素群の異常を知らせる表示を行わせる。
図8は、この左右輪駆動装置の異常検出方法を概略表すフローチャートである。例えば、車両の主電源を投入し車両走行中である条件を充足したとき、本処理を開始し、車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する(車両状態判定過程:ステップS1)。次に、車両状態判定過程で車両が直進状態であるとき振動センサ70(図7)から出力される振動測定値、および車両が旋回状態であるとき振動センサ70(図7)から出力される振動測定値から、定められた条件に従って第1の機械要素群71(図4)に異常が生じているか否か、第2の機械要素群72(図4)に異常が生じているか否かを判別する(異常部位判別過程:ステップS2)。その後本処理を終了する。ステップS1の車両状態判定過程は、車両状態判定手段73(図7)にて処理される。ステップS2の異常部位判別過程は、異常部位判別手段74(図7)にて処理される。
図9は、この異常検出装置で実行される異常検出のフローチャートである。図7等も適宜参照しつつ説明する。本処理開始後、異常部位判別手段74は、車速および駆動輪トルク指令値が予め定めた規定範囲内にあるか判定する(ステップa1)。車速および駆動輪トルク指令値が規定範囲内で車両が走行している場合に限り、異常検出を行うことで、異常有無の検出精度を高めることができる。
車速および駆動輪トルク指令値が規定範囲内であれば(ステップa1:YES)、異常部位判別手段74は、振動センサ70の出力である振動測定値から加速度の実効値を算出する(ステップa2)。次に、車両状態判定手段73は、車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する。この図9の例では、車両状態判定手段73は、操舵角の大きさから車両状態を判定するため、車速に応じた操舵角閾値を設定する(ステップa3)。
車両状態判定手段73は、操舵角が閾値以下の場合は(ステップa4:YES)、車両が直進していると判定し(ステップa5)、操舵角が閾値を超える場合には(ステップa4:NO)、車両は旋回していると判定する(ステップa8)。次に、異常部位判別手段74は、加速度の実効値が閾値以上であるかどうかを判断する(ステップa6,a9)。前記閾値の大きさは、直進時と旋回時で異なる値を用いても良いし、同一値を用いても良い。
旋回時の加速度の実効値が閾値以上の場合(ステップa9:YES)、左右の駆動輪の回転速度差に応じた相対回転が生じることで連動する歯車装置内の結合要素に取り付けられた軸受および歯車の群である第1の機械要素群71(図4)に異常が生じていると判定する(ステップa10)。直進時の加速度の実効値が閾値以上の場合(ステップa6:YES)、左右の駆動輪の回転速度差によらず連動する歯車装置内の第2の機械要素群72(図4)に異常が生じていると判定する(ステップa7)。その後、本処理を終了する。
図10は、車両の直進状態で異常が発生した例を示す図である。
車両の直進時、加速度の実効値が閾値Aを超えている。これにより、第2の機械要素群72(図4)に異常が発生したと判定される。第2の機械要素群72(図4)は、直進時に限らず旋回時でも回転する部位の軸受群もしくは歯車群であるため、旋回時にも加速度の実効値が大きくなる傾向にある。そのため、図10の例では旋回時の加速度の実効値も閾値Bを超えているが、仮に閾値Bを超えていなくても、直進時に加速度の実効値が閾値A以上であれば、直進時に異常が発生していると判断する。
図11は、車両の旋回状態で異常が発生した例を示す図である。
車両の旋回時、加速度の実効値が閾値Bを超えている。これにより、第1の機械要素群71(図4)に異常が発生したと判定される。第1の機械要素群71(図4)は、左右の駆動輪の回転速度差が大きい場合に回転する部位の軸受群もしくは歯車群であるため、旋回時のみ加速度の実効値が大きくなる傾向にあり、閾値Bを超えている。また判定に用いたデータを保存し継時による振動変化をトレンドとして評価しても良い。したがって、異常判定精度の向上、および異常発生の予兆検出を行うことができる。
図10および図11の閾値Aおよび閾値Bは、実際の車両の走行上の振動データを基に決める値であり、同じ値でも良いし、判定精度を高めるために異なる値としても良い。
以上説明した左右輪駆動装置1の異常検出装置68によれば、車両状態判定手段73は、車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する。異常部位判別手段74は、車両が直進状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値、および車両が旋回状態であるとき振動センサ70から出力される振動測定値から、定められた条件に従って第1の機械要素群71に異常が生じているか否か、第2の機械要素群72に異常が生じているか否かを判別する。このように直進状態および旋回状態の各振動測定値から、第1,第2の機械要素群71,72の異常の有無を容易かつ安価に判別することができる。この場合、例えば振動測定値の周波数解析等をしなくても、異常部位を大まかに判別することができる。
車両状態判定手段73は、前記操舵角の大きさが閾値を超えるとき、車両が旋回状態であると判定し、且つ、前記閾値の大きさを車速が大きい程小さく設定している。このように車速に応じて、操舵角の判定基準となる閾値を設定することで、旋回状態の異常判定の機会を増やすことができる。
また振動測定時における車速および駆動源の駆動トルクのそれぞれの大きさを定められた範囲内にすることで、測定条件を合わせることができる。したがって異常検出の判定精度を向上することができる。
図2および図3に示す実施形態では、左側の遊星歯車機構30Lの遊星キャリアCと、右側の遊星歯車機構30RのサンギヤSとが結合されて第1の結合部材31を形成し、左側の遊星歯車機構30LのサンギヤSと、右側の遊星歯車機構30Rの遊星キャリアCとが結合されて第2の結合部材32を形成しているが、この例に限定されるものではない。
例えば、左側の遊星歯車機構30LのサンギヤSと、右側の遊星歯車機構30RのリングギヤRとが結合されて第1の結合部材31を形成し、左側の遊星歯車機構30LのリングギヤRと、右側の遊星歯車機構30RのサンギヤSとが結合されて第2の結合部材32を形成している構成としても良い。
その他、左側の遊星歯車機構30Lの遊星キャリアCと、右側の遊星歯車機構30RのリングギヤRとが結合されて第2の結合部材32を形成している構成としても良い。
左右輪駆動装置の駆動源は、電動モータに限らず、ガソリンエンジン等の内燃機関を用いても良い。
第1,第2の結合部材31,32の間の軸受45,46として、針状ころ軸受が適用されているが、例えば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の転がり軸受を適用することも可能である。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…左右輪駆動装置
2L,2R…第1,第2電動モータ(駆動源)
3L,3R…減速装置
30…歯車装置
30L,30R…遊星歯車機構
61L,61R…駆動輪
68…異常検出装置
70…振動センサ
71,72…第1,第2の機械要素群
73…車両状態判定手段
74…異常部位判別手段

Claims (8)

  1. 車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源と、これら二つの駆動源と左右の駆動輪との間に設けられ、前記二つの駆動源から与えられるトルクの差を増幅し前記左右の駆動輪にそれぞれ伝達する減速装置と、を備えた左右輪駆動装置の異常検出装置において、
    前記減速装置は二つの遊星歯車機構を有する歯車装置を備え、
    前記異常検出装置は、前記二つの遊星歯車機構に組み込まれた軸受および歯車の群である第1の機械要素群、およびこの左右輪駆動装置における、前記減速装置内の第1の機械要素群以外の軸受および歯車の群である第2の機械要素群の異常を検出する装置であり、
    前記左右輪駆動装置に振動センサを備え、
    前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する車両状態判定手段と、
    この車両状態判定手段で前記車両が直進状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値から、定められた条件に従って前記第1の機械要素群に異常が生じているか否か、および前記第2の機械要素群に異常が生じているか否かを判別する異常部位判別手段と、を有する左右輪駆動装置の異常検出装置。
  2. 請求項1に記載の左右輪駆動装置の異常検出装置において、前記異常部位判別手段は、前記車両が直進状態で前記振動センサから出力される振動測定値が閾値未満で、且つ、前記車両が旋回状態で前記振動センサから出力される振動測定値が閾値以上のとき、前記第1の機械要素群に異常が生じていると判別する左右輪駆動装置の異常検出装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の左右輪駆動装置の異常検出装置において、前記異常部位判別手段は、少なくとも前記車両が直進状態で前記振動センサから出力される振動測定値が閾値以上のとき、前記第2の機械要素群に異常が生じていると判別する左右輪駆動装置の異常検出装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の左右輪駆動装置の異常検出装置において、前記車両状態判定手段は、前記左右の駆動輪の回転速度差の大きさから、前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する左右輪駆動装置の異常検出装置。
  5. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の左右輪駆動装置の異常検出装置において、前記車両状態判定手段は、前記車両における操舵角の大きさから、前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する左右輪駆動装置の異常検出装置。
  6. 請求項5に記載の左右輪駆動装置の異常検出装置において、前記車両状態判定手段は、前記操舵角の大きさが閾値を超えるとき、前記車両が旋回状態であると判定し、且つ、前記閾値の大きさを車速が大きい程小さく設定する左右輪駆動装置の異常検出装置。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の左右輪駆動装置の異常検出装置において、前記車両が直進状態で前記振動センサから出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態で前記振動センサから出力される振動測定値は、測定時の車速および前記駆動源の駆動トルクのそれぞれの大きさが定められた範囲内にある左右輪駆動装置の異常検出装置。
  8. 車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源と、これら二つの駆動源と左右の駆動輪との間に設けられ、前記二つの駆動源から与えられるトルクの差を増幅し前記左右の駆動輪にそれぞれ伝達する減速装置と、を備えた左右輪駆動装置の異常検出方法において、
    前記減速装置は二つの遊星歯車機構を有する歯車装置を備え、
    前記異常検出方法は、前記二つの遊星歯車機構に組み込まれた軸受および歯車の群である第1の機械要素群、およびこの左右輪駆動装置における、前記減速装置内の第1の機械要素群以外の軸受および歯車の群である第2の機械要素群の異常を検出する方法であり、
    前記左右輪駆動装置に振動センサを備え、
    前記車両が直進状態であるか旋回状態であるかを判定する車両状態判定過程と、
    この車両状態判定過程で前記車両が直進状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値、および前記車両が旋回状態であるときの前記振動センサから出力される振動測定値から、定められた条件に従って前記第1の機械要素群に異常が生じているか否か、および前記第2の機械要素群に異常が生じているか否かを判別する異常部位判別過程と、を有する左右輪駆動装置の異常検出方法。
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JPH11201275A (ja) * 1997-12-16 1999-07-27 Daewoo Electron Co Ltd 自動変速機の故障を制御するための方法及び装置
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