JP2018093612A - モータ制御装置およびこのモータ制御装置を備えた車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】左右の駆動輪を二つのモータで独立して駆動可能な車両におけるモータ制御装置において、前記二つのモータに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができるモータ制御装置およびこのモータ制御装置を備えた車両を提供する。【解決手段】このモータ制御装置67は、二つのモータと、左右の駆動輪と、動力伝達装置とを備えた車両における、モータを、指令手段66aから与えられた二つのモータにそれぞれ対応するトルク指令値に基づいて制御する。モータ制御装置67は、モータ回転速度検出手段Saと、トルク補正手段69とを備えている。トルク補正手段69は、指令手段66aから与えられた二つのモータのそれぞれのトルク指令値につき、モータ回転速度検出手段Saで検出される回転速度の速いモータのトルク指令値を、二つのモータの回転速度から定まる値に基づいて補正し低下させる。【選択図】図7
Description
この発明は、独立した二つのモータから発生した駆動トルクを、左右の駆動輪にトルク差を増幅して伝達するモータ制御装置およびこのモータ制御装置を備えた車両に関する。
車両のスムーズな旋回走行の実現または、極端なアンダーステア、極端なオーバーステア等の車両の挙動変化を抑制するために、左右の駆動輪の間に大きな駆動トルクの差を発生させることが有効な場合がある。そこで、二つの駆動源と左右の駆動輪との間に、遊星歯車機構を二つ組み合わせた歯車装置を備え、トルクの差を増幅した車両駆動装置が開示されている(特許文献1,2)。
これらの車両駆動装置では、上位ECUから指令された左右の駆動輪のトルク指令値から二つの駆動源の出力トルクを決定し制御する。駆動源として電気モータの適用が示されている。
前記の車両駆動装置では、二つの駆動源のトルクの差を増幅するが、回転速度の差は縮小されて左右の駆動輪に伝わる。トルクの増幅率をα(α>1)、減速比をβ(β≧1)、二つの駆動源のトルクをそれぞれTM1,TM2、左右の駆動輪のトルクをTWL,TWRとすると、トルクの関係は以下の式で示すことができる。
前記の車両駆動装置では、二つの駆動源のトルクの差を増幅するが、回転速度の差は縮小されて左右の駆動輪に伝わる。トルクの増幅率をα(α>1)、減速比をβ(β≧1)、二つの駆動源のトルクをそれぞれTM1,TM2、左右の駆動輪のトルクをTWL,TWRとすると、トルクの関係は以下の式で示すことができる。
TWL+TWR=β(TM1+TM2) …(1)
TWL−TWR=αβ(TM1−TM2) …(2)
同様に、二つの駆動源の回転速度をそれぞれωM1,ωM2、左右の駆動輪の回転速度をそれぞれωWL,ωWRとすると、回転速度の関係は以下の式で示すことができる。
ωM1+ωM2=β(ωWL+ωWR) …(3)
ωM1−ωM2=αβ(ωWL−ωWR) …(4)
TWL−TWR=αβ(TM1−TM2) …(2)
同様に、二つの駆動源の回転速度をそれぞれωM1,ωM2、左右の駆動輪の回転速度をそれぞれωWL,ωWRとすると、回転速度の関係は以下の式で示すことができる。
ωM1+ωM2=β(ωWL+ωWR) …(3)
ωM1−ωM2=αβ(ωWL−ωWR) …(4)
前記の車両駆動装置では、左右の駆動輪の回転速度差が大きい場合、式(4)から駆動源の回転速度差はさらにαβ倍に増幅される。駆動源に電気モータを使用した場合を考えると、一般的に、電気モータが出力可能なトルク上限値は回転速度の増加に伴い減少する。左右の駆動輪の回転速度差が大きくなると、その回転速度差がαβ倍されて二つの電気モータの回転速度差はさらに大きくなり、各電気モータで出力可能なトルク上限値の大きさに大きな差が生じることになる。駆動源制御装置において、上位ECUから受け取った左右の駆動輪のトルク指令値を、二つの駆動源のトルク指令値に変換して駆動源のトルクを制御するが、上記の場合には、一方の駆動源のみがトルク上限値の制限を受け易くなるため、上位ECUの左右の駆動輪のトルク指令値を実現し難くなり、意図しないトルク差が生じる可能性がある。
この発明の目的は、左右の駆動輪を二つのモータで独立して駆動可能な車両におけるモータ制御装置において、前記二つのモータに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができるモータ制御装置およびこのモータ制御装置を備えた車両を提供することである。
この発明のモータ制御装置は、二つのモータ2L,2Rと、左右の駆動輪61L,61Rと、前記二つのモータ2L,2Rと前記左右の駆動輪61L,61Rとの間に設けられ、前記二つのモータ2L,2Rからの動力を前記左右の駆動輪61L,61Rに分配し、且つ前記二つのモータ2L,2Rのトルク差を増幅して前記左右の駆動輪61L,61Rを駆動する動力伝達装置3とを備えた車両における、前記モータ2L,2Rを、指令手段66aから与えられた前記二つのモータ2L,2Rにそれぞれ対応するトルク指令値に基づいて制御するモータ制御装置67であって、
前記二つのモータ2L,2Rの回転速度をそれぞれ検出するモータ回転速度検出手段Saと、
前記指令手段66aから与えられた前記二つのモータ2L,2Rのそれぞれのトルク指令値につき、前記モータ回転速度検出手段Saで検出される回転速度の速いモータ2L(2R)のトルク指令値を、前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値に基づいて補正し低下させるトルク補正手段69と、を備えている。
前記前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値は、設計等によって定まる値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な値を求めて定められる。
前記二つのモータ2L,2Rの回転速度をそれぞれ検出するモータ回転速度検出手段Saと、
前記指令手段66aから与えられた前記二つのモータ2L,2Rのそれぞれのトルク指令値につき、前記モータ回転速度検出手段Saで検出される回転速度の速いモータ2L(2R)のトルク指令値を、前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値に基づいて補正し低下させるトルク補正手段69と、を備えている。
前記前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値は、設計等によって定まる値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な値を求めて定められる。
この構成によると、モータ制御装置67は、基本的に、指令手段66aから与えられた二つのモータ2L,2Rにそれぞれ対応するトルク指令値に基づいて二つのモータ2L,2Rを制御する。
左右の駆動輪61L,61Rのうちいずれか一方の駆動輪の路面摩擦係数61L(61R)が低く、他方の駆動輪61R(61L)の路面摩擦係数が高いスプリットμ路等に車両が進入した状態で、指令手段66aから二つのモータ2L,2Rに対して等しいトルクを与えた場合、モータ回転速度検出手段Saは、二つのモータ2L,2Rの回転速度をそれぞれ検出する。トルク補正手段69は、回転速度の速いモータ2L(2R)のトルク指令値を、二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値に基づいて、定められた関係に従い補正し低下させる。前記定められた関係は、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適宜に定められる。
このように回転速度が速いモータ2L(2R)のトルク指令値を抑制するように補正することで、車両における左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることができ、二つのモータ2L,2Rの回転速度差も小さくなる。このため、二つのモータ2L,2Rに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができる。また左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることで、車両挙動を安定化させる効果も期待できる。
左右の駆動輪61L,61Rのうちいずれか一方の駆動輪の路面摩擦係数61L(61R)が低く、他方の駆動輪61R(61L)の路面摩擦係数が高いスプリットμ路等に車両が進入した状態で、指令手段66aから二つのモータ2L,2Rに対して等しいトルクを与えた場合、モータ回転速度検出手段Saは、二つのモータ2L,2Rの回転速度をそれぞれ検出する。トルク補正手段69は、回転速度の速いモータ2L(2R)のトルク指令値を、二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値に基づいて、定められた関係に従い補正し低下させる。前記定められた関係は、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適宜に定められる。
このように回転速度が速いモータ2L(2R)のトルク指令値を抑制するように補正することで、車両における左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることができ、二つのモータ2L,2Rの回転速度差も小さくなる。このため、二つのモータ2L,2Rに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができる。また左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることで、車両挙動を安定化させる効果も期待できる。
前記モータ回転速度検出手段Saで検出される回転速度に基づいて、前記二つのモータ2L,2Rが出力可能なトルク上限値をそれぞれ計算するトルク上限値計算手段71を備え、前記トルク補正手段69は、前記トルク上限値計算手段71で計算されるトルク上限値の差を、前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値としても良い。
この構成によると、トルク上限値計算手段71は、モータ回転速度検出手段Saで検出される回転速度に基づいて、前記二つのモータ2L,2Rが出力可能なトルク上限値をそれぞれ計算する。トルク補正手段69は、計算されるトルク上限値の差に基づいて、回転速度の速いモータ2L(2R)のトルク指令値を低下する補正を行うことができる。この場合、二つのモータ2L,2Rが出力可能なトルク上限値の差を低減することが可能となる。これにより、一方のモータのみがトルク上限値の制限を受け易くなるのを抑制し、二つのモータ2L,2Rに意図しないトルク差が生じることを未然に防ぐことができる。
前記トルク補正手段69は、前記モータ回転速度検出手段Saで検出される前記二つのモータ2L,2Rの回転速度の差を、前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値としても良い。この場合、トルク上限値の差を、前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定まる値とするよりも、制御系を簡素化でき、よって演算処理負荷の低減を図ることができる。
前記トルク補正手段69は、前記二つのモータ2L,2Rの回転速度から定める値が閾値を超えたとき、前記閾値を超えた大きさに基づいて、トルク指令値の補正量を定めても良い。
前記閾値は、設計等によって任意に定める閾値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な閾値を求めて定められる。
前記閾値は、設計等によって任意に定める閾値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方により適切な閾値を求めて定められる。
前記トルク補正手段69は、回転速度の速いモータ2L(2R)のトルク指令値を補正するのに加えて、回転速度の遅いモータ2R(2L)のトルク指令値を増加させる補正を行っても良い。この場合、左右の駆動輪61L,61Rの制駆動トルクの和を補正前後で維持することができる。また二つのモータ2L,2Rの回転速度差をより小さくすることができる。
前記動力伝達装置3は、二つの遊星歯車機構30L,30Rを有し、前記二つのモータ2L,2Rが発生するトルクの差を増幅するトルク差増幅装置30を備えても良い。この場合、二つのモータ2L,2Rが発生するトルクの差をトルク差増幅装置30で増幅することで、車両のスムーズな旋回走行を実現することができる。
この発明の車両は、いずれかのモータ制御装置67を備えている。この場合、車両が低μ路面を走行したときの片輪のホイールスピン、または旋回加速時の旋回内輪側のホイールスピン等、車両挙動が不安定になりやすい場合において、モータ制御装置67により左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることで、車両挙動を安定化させることができる。
この発明のモータ制御装置は、二つのモータと、左右の駆動輪と、前記二つのモータと前記左右の駆動輪との間に設けられ、前記二つのモータからの動力を前記左右の駆動輪に分配し、且つ前記二つのモータのトルク差を増幅して前記左右の駆動輪を駆動する動力伝達装置とを備えた車両における、前記モータを、指令手段から与えられた前記二つのモータにそれぞれ対応するトルク指令値に基づいて制御するモータ制御装置であって、前記二つのモータの回転速度をそれぞれ検出するモータ回転速度検出手段と、前記指令手段から与えられた前記二つのモータのそれぞれのトルク指令値につき、前記モータ回転速度検出手段で検出される回転速度の速いモータのトルク指令値を、前記二つのモータの回転速度から定まる値に基づいて補正し低下させるトルク補正手段と、を備えている。このため、前記二つのモータに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができる。
この発明の車両は、いずれかのモータ制御装置を備えているため、前記二つのモータに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができ、また車両挙動を安定化させることができる。
この発明の実施形態に係るモータ制御装置およびこのモータ制御装置を備えた車両を図1ないし図9と共に説明する。図1は、このモータ制御装置および車両駆動装置を備えた車両(電気自動車)の概念構成を示すブロック図である。この車両は、後輪駆動方式であり、シャーシ60、後輪である駆動輪61L,61R、前輪である従動輪62L,62R、車両駆動装置1、上位ECU66、モータ制御装置67、バッテリ63およびインバータ装置64等を備える。
車両駆動装置1は、第1,第2モータ2L,2Rと、動力伝達装置3を備えている。第1,第2モータ2L,2Rは、車両に搭載され独立して制御可能な二つの駆動源である。動力伝達装置3は、これら第1,第2モータ2L,2Rと駆動輪61L,61Rとの間に設けられる。
<制御系の基本構成について>
上位ECU66は、モータ制御装置67の上位の制御手段であり、例えば、車両全般の統括制御および協調制御を行う機能と、左右の駆動輪61L,61Rの制駆動トルク指令値を生成する機能とを有する。上位ECU66は、図示外のアクセル操作部の出力する加速指令と、図示外のブレーキ操作部の出力する減速指令と、図示外の操舵角センサ等の出力する旋回指令とから、左右の制駆動トルク指令値を生成する。
上位ECU66は、モータ制御装置67の上位の制御手段であり、例えば、車両全般の統括制御および協調制御を行う機能と、左右の駆動輪61L,61Rの制駆動トルク指令値を生成する機能とを有する。上位ECU66は、図示外のアクセル操作部の出力する加速指令と、図示外のブレーキ操作部の出力する減速指令と、図示外の操舵角センサ等の出力する旋回指令とから、左右の制駆動トルク指令値を生成する。
モータ制御装置67は、例えば、専用のECUと、モータ回転速度検出手段Sa(図7)とを備えた構成、または、コンピュータとこれに実行されるプログラムおよび電子回路等と、モータ回転速度検出手段Sa(図7)とを備えた構成になっている。その他、モータ制御装置67におけるモータ回転速度検出手段Sa(図7)以外の部分が、上位ECU66内に設けられていても良い。
モータ制御装置67は、上位ECU66の指令手段66aから与えられた左右の制駆動トルク指令値に基づいて、インバータ装置64にモータトルク指令値を与える。これにより第1,第2モータ2L,2Rは個別に制御される。インバータ装置64は、バッテリ63の直流電力を第1,第2モータ2L,2Rの駆動のための交流電力に変換する。インバータ装置64は、第1,第2モータ2L,2Rが出力するトルクがモータトルク指令値と等しくなるように、モータ回転速度に合わせてバッテリ63から供給される電流を制御し第1,第2モータ2L,2Rを駆動する。各モータ回転速度は、例えば、第1,第2モータ2L,2Rに取り付けられたレゾルバ等のモータ回転速度検出手段Sa(図7)で検出する。車両駆動装置1からの出力は図示外の等速ジョイントを介して左右の駆動輪61L,61Rに伝達される。
モータ制御装置67は、上位ECU66の指令手段66aから与えられた左右の制駆動トルク指令値に基づいて、インバータ装置64にモータトルク指令値を与える。これにより第1,第2モータ2L,2Rは個別に制御される。インバータ装置64は、バッテリ63の直流電力を第1,第2モータ2L,2Rの駆動のための交流電力に変換する。インバータ装置64は、第1,第2モータ2L,2Rが出力するトルクがモータトルク指令値と等しくなるように、モータ回転速度に合わせてバッテリ63から供給される電流を制御し第1,第2モータ2L,2Rを駆動する。各モータ回転速度は、例えば、第1,第2モータ2L,2Rに取り付けられたレゾルバ等のモータ回転速度検出手段Sa(図7)で検出する。車両駆動装置1からの出力は図示外の等速ジョイントを介して左右の駆動輪61L,61Rに伝達される。
<車両駆動装置1>
<<第1,第2モータ2L,2Rについて>>
この実施形態では、車両駆動装置1における第1,第2モータ2L,2Rは、同一の最大出力を有する同一規格の電動モータを用いている。第1,第2モータ2L,2Rを、それぞれ左右のモータ2L,2Rという場合がある。
図2に示すように、第1,第2モータ2L,2Rは、モータハウジング4L,4Rと、ステータ6,6と、ロータ5,5とを有する。第1,第2モータ2L,2Rは、モータハウジング4L,4Rの内周面にステータ6,6が設けられ、各ステータ6の内周に間隔を隔ててロータ5を設けたラジアルギャップタイプである。
<<第1,第2モータ2L,2Rについて>>
この実施形態では、車両駆動装置1における第1,第2モータ2L,2Rは、同一の最大出力を有する同一規格の電動モータを用いている。第1,第2モータ2L,2Rを、それぞれ左右のモータ2L,2Rという場合がある。
図2に示すように、第1,第2モータ2L,2Rは、モータハウジング4L,4Rと、ステータ6,6と、ロータ5,5とを有する。第1,第2モータ2L,2Rは、モータハウジング4L,4Rの内周面にステータ6,6が設けられ、各ステータ6の内周に間隔を隔ててロータ5を設けたラジアルギャップタイプである。
モータハウジング4L,4Rは、円筒形のモータハウジング本体4aL,4aRと、外側壁4bL,4bRと、内側壁4cL,4cRとを有する。外側壁4bL,4bRは、モータハウジング本体4aL,4aRにおけるアウトボード側の外側面を閉塞する。内側壁4cL,4cRは、モータハウジング本体4aL,4aRにおけるインボード側の内側面に設けられ、動力伝達装置3と隔てる隔壁を成す。内側壁4cL,4cRには、各モータ軸5aをインボード側に引き出す開口部が設けられている。なおこの明細書において、車両駆動装置1が車両に搭載された状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
モータハウジング本体4aL,4aRの内周面に、ステータ6,6が嵌合固定されている。ロータ5は、モータ軸5aを中心部に有する。内側壁4cL,4cRと外側壁4bL,4bRには、転がり軸受8a,8bが設けられている。各モータ軸5aは、モータハウジング4L,4Rに転がり軸受8a,8bを介して回転自在に支持されている。左右のモータ軸5a,5aは同一軸心上(同軸)に設けられている。
<<動力伝達装置3について>>
動力伝達装置3は、ハウジング9と、入力歯車軸12L,12Rと、中間歯車軸13L,13Rと、出力歯車軸14L,14Rと、トルク差増幅装置30とを有する。動力伝達装置3は、第1,第2モータ2L,2Rのモータ軸5aから入力されたトルク(駆動トルク)の差をトルク差増幅装置30で増幅し、駆動輪61L,61Rへと伝達する装置である。
動力伝達装置3は、ハウジング9と、入力歯車軸12L,12Rと、中間歯車軸13L,13Rと、出力歯車軸14L,14Rと、トルク差増幅装置30とを有する。動力伝達装置3は、第1,第2モータ2L,2Rのモータ軸5aから入力されたトルク(駆動トルク)の差をトルク差増幅装置30で増幅し、駆動輪61L,61Rへと伝達する装置である。
ハウジング9は、これらの歯車軸およびトルク差増幅装置30を収容する。ハウジング9は、三ピースに分割された構造であり、具体的には、中央ハウジング9aと、この中央ハウジング9aの両側面に固定される左右の側面ハウジング9bL,9bRとを有する。
側面ハウジング9bL,9bRのアウトボード側の側面と、内側壁4cL,4cRとが、複数のボルトで固定される。これにより、ハウジング9の左右両端に二基のモータ2L,2Rが固定される。
中央ハウジング9aには、中央に仕切り壁11が設けられている。ハウジング9は、仕切り壁11によって左右に二分割され、動力伝達装置3の本体部を収容する。この動力伝達装置3の本体部は、左右対称形であり、入力歯車軸12L,12Rと、中間歯車軸13L,13Rと、出力歯車軸14L,14Rと、トルク差増幅装置30とを備えている。
側面ハウジング9bL,9bRのアウトボード側の側面と、内側壁4cL,4cRとが、複数のボルトで固定される。これにより、ハウジング9の左右両端に二基のモータ2L,2Rが固定される。
中央ハウジング9aには、中央に仕切り壁11が設けられている。ハウジング9は、仕切り壁11によって左右に二分割され、動力伝達装置3の本体部を収容する。この動力伝達装置3の本体部は、左右対称形であり、入力歯車軸12L,12Rと、中間歯車軸13L,13Rと、出力歯車軸14L,14Rと、トルク差増幅装置30とを備えている。
入力歯車軸12L,12Rは、モータ軸5aから動力が伝達される入力歯車12aを有する。仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴と、左右の側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴に、転がり軸受17a,17bが設けられている。入力歯車軸12L,12Rの両端は、ハウジング9に転がり軸受17a,17bを介して回転自在に支持されている。入力歯車軸12L,12Rは中空構造である。この入力歯車軸12L,12Rの中空内部に、各モータ軸5aのインボード側の端部が挿入されている。入力歯車軸12L,12Rと各モータ軸5aとは、スプライン(「セレーション」も含む。以下のスプラインについても同様に「セレーション」を含む。)結合されている。
図3に示すように、左右の中間歯車軸13L,13Rは、同軸に配置されている。中間歯車軸13L,13Rは、入力歯車12a,12aに噛み合う大径の入力側外歯車13a,13aと、後述する出力歯車14a,14aに噛み合う出力側小径歯車13b,13bとを有する。仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴19aと、左右の側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴19bに、転がり軸受20a,20bが設けられている。中間歯車軸13L,13Rの両端は、ハウジング9に転がり軸受20a,20bを介して回転自在に支持されている。軸受嵌合穴19a,19bは、転がり軸受20a,20bの外輪端面が当接する段付き形状であり、後述する第1,第2の結合部材31,32が通るように貫通している。
中間歯車軸13L,13Rには、この中間歯車軸13L,13Rと同軸にトルク差増幅装置30が組み込まれている。トルク差増幅装置30は、二つのモータ2L,2R(図2)から与えられるトルク(駆動トルク)の差を増幅する。このトルク差増幅装置30は、3要素2自由度の二つの遊星歯車機構30L,30Rを備える。遊星歯車機構30L,30Rには、この例では、シングルピニオン遊星歯車機構が採用されている。二つの遊星歯車機構30L,30Rは同軸に設けられている。
遊星歯車機構30L,30Rは、リングギヤRL,RRと、サンギヤSL,SRと、プラネタリギヤPL,PRと、遊星キャリアCL,CRと、第1,第2の結合部材31,32とを有する。リングギヤRL,RRは、中間歯車軸13L,13Rの入力側外歯車13a,13aにそれぞれ組み込まれた内歯車である。サンギヤSL,SRは、リングギヤRL,RRと同軸に設けられた太陽歯車である。プラネタリギヤPL,PRは、リングギヤRL,RRとサンギヤSL,SRに噛み合う公転歯車である。遊星キャリアCL,CRは、プラネタリギヤPL,PRに連結され、リングギヤRL,RRと同軸に設けられている。遊星キャリアCL,CRには、中間歯車軸13L,13Rの出力側小径歯車13b,13bが連結されている。
第1の結合部材31は、図3左側の遊星歯車機構30Lの構成部材である一方の遊星キャリアCLと、図3右側の遊星歯車機構30Rの構成部材である他方のサンギヤSRとを結合する。第2の結合部材32は、図3左側の遊星歯車機構30Lの構成部材である一方のサンギヤSLと、図3右側の遊星歯車機構30Rの構成部材である他方の遊星キャリアCRとを結合する。
遊星キャリアCL,CRは、プラネタリギヤPL,PRを支持するキャリアピン33と、アウトボード側のキャリアフランジ34aと、インボード側のキャリアフランジ34bとを有する。プラネタリギヤPL,PRは、針状ころ軸受37を介してキャリアピン33に支持されている。アウトボード側のキャリアフランジ34aは、キャリアピン33のアウトボード側端部に連結されている。インボード側のキャリアフランジ34bは、キャリアピン33のインボード側端部に連結されている。
アウトボード側のキャリアフランジ34aは、アウトボード側に延びる中空軸部35を備える。この中空軸部35のアウトボード側の端部が、側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴に転がり軸受20bを介して支持されている。インボード側のキャリアフランジ34bは、インボード側に延びる中空軸部36を備える。この中空軸部36のインボード側の端部が、仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴に転がり軸受20aを介して支持されている。各キャリアフランジ34a,34bの外周面とリングギヤRL,RRとの間には、転がり軸受39a,39bが設けられている。
二つの遊星歯車機構30L,30Rを互いに連結している第1,第2の結合部材31,32は、中央ハウジング9aを左右に仕切る仕切り壁11を貫通して組み込まれている。第1,第2の結合部材31,32は、互いに同軸に位置して、それぞれスラスト軸受47によりアキシアル方向に回転自在に支持され、かつ深溝玉軸受49によりラジアル方向に回転自在に支持される。さらに第1,第2の結合部材31,32間には、軸受47,49とは別の軸受45,46,スラスト軸受48が設けられている。別の軸受45,46として、それぞれ針状ころ軸受が適用されている。第2の結合部材32が中空軸を有し、第1の結合部材31が前記中空軸に挿通される軸を有する。
第2の結合部材32における図3右側のアウトボード側の外周面と、遊星キャリアCRにおけるインボード側のキャリアフランジ34bの中空軸部36とに互いに噛み合うスプラインが設けられている。よって、第2の結合部材32は、遊星キャリアCRに対しスプライン嵌合により連結されている。したがって、第2の回転部材である遊星キャリアCRは、第2の結合部材32と一体となって回転する。
第1の結合部材31における図3左側のアウトボード側の外周面と、遊星キャリアCLにおけるアウトボード側のキャリアフランジ34aの中空軸部35とに互いに噛み合うスプラインが設けられている。よって、第1の結合部材31は、遊星キャリアCLに対しスプライン嵌合により連結されている。したがって、第1の回転部材である遊星キャリアCLは、第1の結合部材31と一体となって回転する。
前述のように、第1,第2の結合部材31,32が、遊星キャリアCL,CRに対しスプライン嵌合により連結されているため、二つの遊星歯車機構30L,30Rは左右に分割可能となり、三ピース構造のハウジング9に他の減速歯車軸と共に左右から組み込み可能である。第2の結合部材32における遊星キャリアCL側の端部は、その外周面に、図3左側の遊星歯車機構30LのサンギヤSLを構成する外歯車が形成されている。このサンギヤSLを構成する外歯車がプラネタリギヤPLと噛み合う。
第1の結合部材31は、図3右側の遊星歯車機構30Rの端部に大径部43を有する。この大径部43の外周面に、図3右側の遊星歯車機構30RのサンギヤSRを構成する外歯車が形成されている。このサンギヤSRを構成する外歯車がプラネタリギヤPRと噛み合う。第2の結合部材32の軸方向両端には、スラスト軸受47,48が設けられている。これらスラスト軸受47,48により、第1,第2の結合部材31,32と遊星キャリアCL,CRとのスプライン嵌合部の摺動による軸方向移動が規制される。
第1の結合部材31は、図3右側の端部が、遊星キャリアCRに対して深溝玉軸受49によって支持されている。第1の結合部材31の軸心には、給油穴が設けられている。
第1の結合部材31は、図3右側の端部が、遊星キャリアCRに対して深溝玉軸受49によって支持されている。第1の結合部材31の軸心には、給油穴が設けられている。
図2に示すように、出力歯車軸14L,14Rは、大径の出力歯車14aを有する。仕切り壁11に形成された軸受嵌合穴と、左右の側面ハウジング9bL,9bRに形成された軸受嵌合穴に、転がり軸受54a,54bが設けられている。出力歯車軸14L,14Rは、ハウジング9に転がり軸受54a,54bを介して回転自在に支持されている。
出力歯車軸14L,14Rのアウトボード側の端部は、側面ハウジング9bL,9bRに形成された開口部からハウジング9の外側に引き出されている。引き出された出力歯車軸14L,14Rのアウトボード側の端部の外周面に、等速ジョイント65aの外側継手部がスプライン結合されている。各等速ジョイント65aは、図示外の中間シャフト等を介して駆動輪61L,61R(図1)に接続されている。
図4は、この車両駆動装置を示すスケルトン図である。図5は、この車両駆動装置を搭載した電気自動車の説明図である。図4および図5に示すように、左右のモータ2L,2Rは、モータ制御装置67(図1)により個別に制御され、異なるトルクを発生させて出力し得る。
モータ2L,2Rのトルクは、動力伝達装置3における入力歯車軸12L,12Rの入力歯車12aと、中間歯車軸13L,13Rの大径の入力側外歯車13aとの歯数比で増大されて、トルク差増幅装置30のリングギヤRL,RRに伝達される。そして、トルク差増幅装置30により左右のトルク差が増幅され、出力側小径歯車13bへとトルクが伝達される。さらに出力側小径歯車13bと出力歯車14aとの歯数比でトルクがさらに増幅されて、駆動輪61L,61Rに出力される。
トルク差増幅装置30における遊星歯車機構30L,30Rは、同軸に設けられたサンギヤSL,SRおよびリングギヤRL,RRと、これらサンギヤSL,SRとリングギヤRL,RRとの間に位置するプラネタリギヤPL,PRと、プラネタリギヤPL,PRを回動可能に支持しサンギヤSL,SRおよびリングギヤRL,RRと同軸に設けられた遊星キャリアCL,CRとを有する。ここで、サンギヤSL,SRとプラネタリギヤPL,PRは外周にギヤ歯を有する外歯歯車であり、リングギヤRL,RRは内周にギヤ歯を有する内歯歯車である。プラネタリギヤPL,PRはサンギヤSL,SRとリングギヤRL,RRとに噛み合っている。
遊星歯車機構30L,30Rでは、遊星キャリアCL,CRを固定した場合にサンギヤSL,SRとリングギヤRL,RRとが逆方向に回転する。このため、図6に示す速度線図に表すと、リングギヤRL,RRおよびサンギヤSL,SRが遊星キャリアCL,CRに対して反対側に配置される。
図4および図5に示すように、このトルク差増幅装置30は、前述のように、サンギヤSL、遊星キャリアCL、プラネタリギヤPLおよびリングギヤRLを有する一方の遊星歯車機構30Lと、サンギヤSR、遊星キャリアCR、プラネタリギヤPRおよびリングギヤRRを有する他方の遊星歯車機構30Rとが互いに同軸に組み合わされて構成されている。
遊星歯車機構30Lの構成部材である遊星キャリアCLと、遊星歯車機構30Rの構成部材であるサンギヤSRとが結合されて第1の結合部材31を形成している。また遊星歯車機構30Lの構成部材であるサンギヤSLと、遊星歯車機構30Rの構成部材である遊星キャリアCRとが結合されて第2の結合部材32を形成している。
モータ2Lで発生したトルクTM1は、入力歯車軸12Lから中間歯車軸13Lに伝達される。この中間歯車軸13Lに伝達されたトルクは、トルク差増幅装置30により左右のトルク差が増幅され、遊星歯車機構30Lを介して順次、中間歯車軸13Lの出力側小径歯車13b、出力歯車14a、出力歯車軸14Lに伝達される。出力歯車軸14Lから駆動輪61Lに駆動トルクTL(図6)が出力される。
モータ2Rで発生したトルクTM2は、入力歯車軸12Rから中間歯車軸13Rに伝達される。この中間歯車軸13Rに伝達されたトルクは、トルク差増幅装置30により左右のトルク差が増幅され、遊星歯車機構30Rを介して順次、中間歯車軸13Rの出力側小径歯車13b、出力歯車14a、出力歯車軸14Rに伝達される。出力歯車軸14Rから駆動輪61Rに駆動トルクTR(図6)が出力される。
<駆動トルク等について>
ここで、トルク差増幅装置30によって伝達される駆動トルクについて、図6に示す速度線図を用いて説明する。トルク差増幅装置30は、二つの同一のシングルピニオン遊星歯車機構30L,30Rを組み合わせて構成されるため、同図6に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分りやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、図6上側に一方の遊星歯車機構30Lの速度線図を示し、図6下側に他方の遊星歯車機構30Rの速度線図を示す。
ここで、トルク差増幅装置30によって伝達される駆動トルクについて、図6に示す速度線図を用いて説明する。トルク差増幅装置30は、二つの同一のシングルピニオン遊星歯車機構30L,30Rを組み合わせて構成されるため、同図6に示すように二本の速度線図によって表すことができる。ここでは、分りやすいように、二本の速度線図を上下にずらし、図6上側に一方の遊星歯車機構30Lの速度線図を示し、図6下側に他方の遊星歯車機構30Rの速度線図を示す。
本来は、図5に示すように、各モータ2L,2Rから出力されたトルクTM1およびTM2は、各入力歯車軸12L,12Rの入力歯車12aと噛み合う入力側外歯車13aを介して、各リングギヤRL,RRに入力されるため、減速比が掛かる。また、トルク差増幅装置30から出力された駆動トルクTL,TRは、出力歯車14aと噛み合う出力側小径歯車13bを介して、左右の駆動輪61L,61Rへ伝達されるため、減速比が掛かる。
この車両駆動装置にはこれらの減速比が掛かるが、以降、理解を容易にするため、図6に示すように、速度線図および各計算式の説明においては減速比を省略し、各リングギヤRL,RRに入力されるトルクをTM1,TM2のままとし、駆動トルクはTL,TRのままとする。
この車両駆動装置にはこれらの減速比が掛かるが、以降、理解を容易にするため、図6に示すように、速度線図および各計算式の説明においては減速比を省略し、各リングギヤRL,RRに入力されるトルクをTM1,TM2のままとし、駆動トルクはTL,TRのままとする。
同図6に示すように、二つのシングルピニオン遊星歯車機構30L,30Rは、同一の歯数の歯車要素を使用しているため、速度線図においては、リングギヤRLと遊星キャリアCLとの距離およびリングギヤRRと遊星キャリアCRとの距離は等しく、この距離を「a」とする。また、サンギヤSLと遊星キャリアCLとの距離およびサンギヤSRと遊星キャリアCRとの距離も等しく、この距離を「b」とする。
遊星キャリアCL,CRからリングギヤRL,RRまでの長さと遊星キャリアCL,CRからサンギヤSL,SRまでの長さの比は、リングギヤRL,RRの歯数Zrの逆数(1/Zr)とサンギヤSL,SRの歯数Zsの逆数(1/Zs)との比と等しい。よって、a=(1/Zr)、b=(1/Zs)である。
RRの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記式(5)が算出される。なお図6において、図中矢印方向Mがモーメントの正方向である。
a・TR+(a+b)・TL−(b+2a)・TM1=0 …(5)
RLの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記式(6)が算出される。
−a・TL−(a+b)・TR+(b+2a)・TM2=0 …(6)
a・TR+(a+b)・TL−(b+2a)・TM1=0 …(5)
RLの点を基準にしたモーメントMの釣り合いから下記式(6)が算出される。
−a・TL−(a+b)・TR+(b+2a)・TM2=0 …(6)
式(5)+式(6)より、下記式(7)が得られる。
−b・(TR−TL)+(2a+b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((2a+b)/b)・(TM2−TM1) …(7)
式(7)の(2a+b)/bがトルク差増幅率αとなる。a=1/Zr、b=1/Zsを代入すると、α=(Zr+2Zs)/Zrとなり、下記のトルク差増幅率αが得られる。
α=(Zr+2Zs)/Zr
−b・(TR−TL)+(2a+b)・(TM2−TM1)=0
(TR−TL)=((2a+b)/b)・(TM2−TM1) …(7)
式(7)の(2a+b)/bがトルク差増幅率αとなる。a=1/Zr、b=1/Zsを代入すると、α=(Zr+2Zs)/Zrとなり、下記のトルク差増幅率αが得られる。
α=(Zr+2Zs)/Zr
この例では、モータ2L,2R(図5)からの入力は、RL,RRとなり、駆動輪61L,61R(図5)への出力はSR+CL,SL+CRとなる。
図5および図6に示すように、第1の結合部材31と第2の結合部材32の回転速度の差が小さい場合、二つのモータ2L,2Rで異なるトルクTM1,TM2を発生させて入力トルク差ΔTIN(=(TM1−TM2))を与えると、トルク差増幅装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差α・ΔTINを得ることができる。
図5および図6に示すように、第1の結合部材31と第2の結合部材32の回転速度の差が小さい場合、二つのモータ2L,2Rで異なるトルクTM1,TM2を発生させて入力トルク差ΔTIN(=(TM1−TM2))を与えると、トルク差増幅装置30において入力トルク差ΔTINが増幅され、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差α・ΔTINを得ることができる。
すなわち、入力トルク差ΔTINが小さくても、トルク差増幅装置30において前記トルク差増幅率α(=(Zr+2Zs)/Zr)で入力トルク差ΔTINを増幅することができる。よって、左駆動輪61Lと右駆動輪61Rとに伝達される駆動トルクTL,TRに、入力トルク差ΔTINよりも大きな駆動トルク差ΔTOUT(=α・(TM2−TM1))を与えることができる。
図1に示すように、左右のモータ2L,2Rの回転角速度も、左右の駆動輪61L,61Rの回転角速度および動力伝達装置3が備える歯車の歯数から決まる。なお、動力伝達装置3が備える歯車の歯数とは、図2に示すように、入力歯車軸12L,12R、中間歯車軸13L,13R、出力歯車軸14L,14R、およびトルク差増幅装置30が有する歯車の歯数である。以下では、「動力伝達装置3が備える歯車の歯数」を単に、「歯車の歯数」と称する。
ここで、図1に示すように、モータ2L,2Rの回転速度をωM1,ωM2とし、左右の駆動輪61L,61Rの回転速度をωWL,ωWRとすると、以下の関係式が成り立つ。
ωM1=A1×ωWL−A2×ωWR …(12)
ωM2=−B1×ωWL+B2×ωWR …(13)
但し、A1,A2,B1,B2は、歯車の歯数から決まる定数であり、全て正の値である。左右の駆動輪61L,61Rの一方が回転すると、二つのモータ2L,2Rの両方が回転する。言い換えれば、一方の駆動輪61L(61R)を回転させるためには二つのモータ2L,2Rの両方を回転させることになる。
ωM1=A1×ωWL−A2×ωWR …(12)
ωM2=−B1×ωWL+B2×ωWR …(13)
但し、A1,A2,B1,B2は、歯車の歯数から決まる定数であり、全て正の値である。左右の駆動輪61L,61Rの一方が回転すると、二つのモータ2L,2Rの両方が回転する。言い換えれば、一方の駆動輪61L(61R)を回転させるためには二つのモータ2L,2Rの両方を回転させることになる。
<制御系の詳細構成について>
図7は、このモータ制御装置67の制御系のブロック図である。
図1および図7に示すように、モータ制御装置67は、トルク変換手段68、トルク補正手段69、基本制御手段70、モータ回転速度検出手段Sa、およびトルク上限値計算手段71を備える。このモータ制御装置67は、上位ECU66から左右の制駆動トルク指令値と、インバータ装置64から第1,第2モータ2L,2R(図1)の各モータ回転速度をそれぞれ受け取り、インバータ装置64にモータトルク指令値を出力する。
図7は、このモータ制御装置67の制御系のブロック図である。
図1および図7に示すように、モータ制御装置67は、トルク変換手段68、トルク補正手段69、基本制御手段70、モータ回転速度検出手段Sa、およびトルク上限値計算手段71を備える。このモータ制御装置67は、上位ECU66から左右の制駆動トルク指令値と、インバータ装置64から第1,第2モータ2L,2R(図1)の各モータ回転速度をそれぞれ受け取り、インバータ装置64にモータトルク指令値を出力する。
トルク変換手段68は、上位ECU66から与えられた左右の制駆動トルク指令値を、モータ2L,2R(図1)にそれぞれ対応するモータトルク指令値に変換し、トルク補正手段69に出力する。トルク上限値計算手段71では、モータ回転速度検出手段Saで検出される二つのモータ2L,2R(図1)のモータ回転速度に基づいて、各モータ2L,2R(図1)が出力可能なトルク上限値TM1max,TM2maxをそれぞれ計算し出力する。
図8に、この車両のモータの回転速度とトルク上限値の関係を示したグラフの一例を示す。図8では、ある回転速度まで一定のトルク上限値となっているが、前記ある回転速度以上の回転速度では、モータの最大出力に制限されてトルク上限値が低下する特性となっている。図7および図8に示すように、トルク補正手段69では、モータ2L,2R(図1)のトルク上限値TM1max,TM2maxに基づいてモータトルク指令値を補正する。
トルク補正手段69におけるトルク補正方法の例を図8および図9等を用いて説明する。
図1の車両駆動装置1を備えた車両において、例えば、左の駆動輪61Lの路面摩擦係数が低く、右の駆動輪61Rの路面摩擦係数が高いスプリットμ路では、左右の駆動輪61L,61Rに等トルクを与えた場合、路面摩擦係数の低い左の駆動輪61Lの回転速度が大きく上昇する。このとき、モータ2L,2Rの回転速度はωM1>ωM2となり(モータ2L,2Rの回転速度差のαβ倍となる)、モータ2L,2Rのトルク上限値は、図8に示すように、TM1max<TM2maxとなる。前記α(α>1)はトルクの増幅率であり、前記β(β≧1)は減速比である。
図1の車両駆動装置1を備えた車両において、例えば、左の駆動輪61Lの路面摩擦係数が低く、右の駆動輪61Rの路面摩擦係数が高いスプリットμ路では、左右の駆動輪61L,61Rに等トルクを与えた場合、路面摩擦係数の低い左の駆動輪61Lの回転速度が大きく上昇する。このとき、モータ2L,2Rの回転速度はωM1>ωM2となり(モータ2L,2Rの回転速度差のαβ倍となる)、モータ2L,2Rのトルク上限値は、図8に示すように、TM1max<TM2maxとなる。前記α(α>1)はトルクの増幅率であり、前記β(β≧1)は減速比である。
図7に示すように、トルク補正手段69では、モータ2L,2R(図1)のトルク上限値の差ΔTmaxを次式(14)で計算する。
ΔTmax=|TM1max−TM2max| …(14)
次に、トルク補正手段69は、このトルク上限値の差ΔTmaxが予め定めた閾値Sを超えた場合、回転速度の速いモータであるモータ2L(図1)のモータトルク指令値TM1を、トルク補正量Tcを用いて次式(15)で補正する。
ΔTmax=|TM1max−TM2max| …(14)
次に、トルク補正手段69は、このトルク上限値の差ΔTmaxが予め定めた閾値Sを超えた場合、回転速度の速いモータであるモータ2L(図1)のモータトルク指令値TM1を、トルク補正量Tcを用いて次式(15)で補正する。
TM1´=TM1−Tc …(15)
式(15)におけるTM1´は、トルク補正手段69による補正後のモータトルク指令値である。式(15)におけるTcは、トルク補正量であり、例えば、図9に示すように与えられる。トルク補正量Tcは、前記トルク上限値の差が閾値S以下では「0」である。換言すれば、図7に示すように、モータ制御装置67は、前記トルク上限値の差が閾値S以下ではトルク補正手段69による補正を実行せず、トルク補正手段69がトルク変換手段68から与えられたモータトルク指令値をそのまま基本制御手段70に出力する通常時の制御を実行する。モータ制御装置67は、トルク上限値の差が閾値Sを超えた場合には、トルク上限値の差ΔTmaxの増加に応じて、トルク補正手段69により同図9の実線で示す直線または同図9の破線で示すような非線形の関係でトルク補正量Tcを増加させる補正時の制御を実行する。
式(15)におけるTM1´は、トルク補正手段69による補正後のモータトルク指令値である。式(15)におけるTcは、トルク補正量であり、例えば、図9に示すように与えられる。トルク補正量Tcは、前記トルク上限値の差が閾値S以下では「0」である。換言すれば、図7に示すように、モータ制御装置67は、前記トルク上限値の差が閾値S以下ではトルク補正手段69による補正を実行せず、トルク補正手段69がトルク変換手段68から与えられたモータトルク指令値をそのまま基本制御手段70に出力する通常時の制御を実行する。モータ制御装置67は、トルク上限値の差が閾値Sを超えた場合には、トルク上限値の差ΔTmaxの増加に応じて、トルク補正手段69により同図9の実線で示す直線または同図9の破線で示すような非線形の関係でトルク補正量Tcを増加させる補正時の制御を実行する。
トルク上限値の差が閾値S以下でトルク補正量Tcを「0」とすることで、過剰な補正を抑制することができる。また前記と同様に過剰な補正を抑制するため、トルク補正量Tcに上限値を設けても良い。
また、トルク補正量Tcを次式(16)で示すPID制御により算出しても良い。
Tc=KP・ΔTmax+{KI・∫(ΔTmax)dt+KD・d/dt(ΔTmax)}
…(16)
式(16)におけるKP,KI,KDはゲインである。
また、トルク補正量Tcを次式(16)で示すPID制御により算出しても良い。
Tc=KP・ΔTmax+{KI・∫(ΔTmax)dt+KD・d/dt(ΔTmax)}
…(16)
式(16)におけるKP,KI,KDはゲインである。
図7に示すように、トルク補正手段69は、回転速度の速いモータ2L(図1)のモータトルク指令値を前記のように補正するのに加えて、回転速度が遅いモータ2R(図1)のモータトルク指令値を増加させる補正を行っても良い。具体的には、トルク補正手段69は、次式(17)を用いて、回転速度が遅い方のモータ2R(図1)のモータトルク指令値TM2にトルク補正量Tcを加える補正を行う。
TM2´=TM2+Tc …(17)
式(17)におけるTM2´はトルク補正手段69による補正後のモータトルク指令値である。このようにモータ2R(図1)のモータトルク指令値TM2にトルク補正量Tcを加えることで、車両駆動装置1(図1)が出力する左右の駆動輪61L,61R(図1)の制駆動トルクの和が補正前後で維持される。またモータ2R(図1)の回転速度を上昇させるトルク補正量を加えることで、回転速度の速いモータ2L(図1)のモータトルク指令値のみ補正するよりも、モータ2L,2R(図1)の回転速度差をより小さくし得る。
式(17)におけるTM2´はトルク補正手段69による補正後のモータトルク指令値である。このようにモータ2R(図1)のモータトルク指令値TM2にトルク補正量Tcを加えることで、車両駆動装置1(図1)が出力する左右の駆動輪61L,61R(図1)の制駆動トルクの和が補正前後で維持される。またモータ2R(図1)の回転速度を上昇させるトルク補正量を加えることで、回転速度の速いモータ2L(図1)のモータトルク指令値のみ補正するよりも、モータ2L,2R(図1)の回転速度差をより小さくし得る。
基本制御手段70は、トルク補正手段69から与えられるモータトルク指令値に従い、インバータ装置64におけるパワー回路部のPWMドライバ(図示せず)に、電流指令から成るモータトルク指令値を与える。この基本制御手段70は、インバータ装置64からモータ2L,2R(図1)に流すモータ電流を例えば図示外の電流検出手段から得て、電流フィードバック制御を行う。また、基本制御手段70は、モータ2L,2R(図1)のロータの回転角を例えば図示外の角度センサから得て、ベクトル制御を行っても良い。
図1および図7に示すように、上位ECU66の制駆動トルク指令値が左右輪ともに100N・mで発進し加速する場合を考える。トルクの増幅率αを「3」、減速比βを「10」とし、モータ2L,2Rの最大トルク上限値は10N・mで、モータ2L,2Rの回転速度の上昇によって図8のようにある回転速度からトルク上限値が低下する場合を考える。
図11(A)に示すように、上位ECU66(図1)の制駆動トルク指令値が左右輪ともに100N・mのとき、モータ2L,2Rのモータトルク指令値は、トルク上限値である10N・mとなる。しかし、車両の発進後に左の駆動輪61Lがスリップし回転速度が大きく上昇すれば、各モータ2L,2Rの回転速度は図8のようにωM1>ωM2となり、モータ2L,2Rはそれぞれのトルク上限値で制限を受けることになる。
図11(B)に示すように、モータ2Lのトルク上限値TM1maxを3N・m、モータ2Rのトルク上限値TM2maxを9N・mとすれば、トルク制限後のモータトルクで出力可能な左右の駆動輪61L,61RのトルクTWL,TWRは、それぞれTWL=−30N・m、TWR=150N・mとなる。よって、左右の駆動輪61L,61Rのトルク差が180N・mと非常に大きくなるため、車両姿勢が不安定になる可能性がある。また、例えば、このときに左の駆動輪61Lのトルクが0N・mになるようにモータ2L,2Rのトルクを制御した場合、右の駆動輪61Rのトルクは90N・mまで低下させる必要があり(このときの各モータ2L,2Rのトルクは、TM1=3N・m、TM2=6N・m)、加速性能の低下が大きい。
このような状況になることを抑制するため、本実施形態に係るモータ制御装置67は、二つのモータ2L,2Rの回転速度差が大きくなり始めたときに、前記回転速度差の増加を抑制するためのトルク補正を行う。このトルク補正により、モータ2Lのトルク上限値TM1maxの減少が6N・mに抑えることができれば、トルク制限後のモータトルクで出力可能な左右の駆動輪61L,61RのトルクTWL,TWRは、それぞれTWL=30N・m、TWR=120N・mとなり、左右の駆動輪61L,61Rのトルク差は90N・mと半減する。また、左右輪ともに正のトルクであり、加速性能の低下は小さい。
<作用効果について>
以上説明したモータ制御装置67によれば、トルク補正手段69により、回転速度が速いモータのモータトルク指令値を抑制するように補正することで、車両における左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることができ、二つのモータ2L,2Rの回転速度差も小さくなる。このため、二つのモータ2L,2Rのトルク上限値の差ΔTmaxを小さくすることができる。したがって、二つのモータ2L,2Rに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができる。
以上説明したモータ制御装置67によれば、トルク補正手段69により、回転速度が速いモータのモータトルク指令値を抑制するように補正することで、車両における左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることができ、二つのモータ2L,2Rの回転速度差も小さくなる。このため、二つのモータ2L,2Rのトルク上限値の差ΔTmaxを小さくすることができる。したがって、二つのモータ2L,2Rに意図しないトルク差が生じることを防ぐことができる。
また、上記のように左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差が大きくなるような状況は、車両が低μ路面を走行したときの片輪のホイールスピン、または旋回加速時の旋回内輪側のホイールスピン等、車両挙動が不安定になりやすい場合で生じると考えられる。このため、車両挙動が不安定になりやすい場合において、モータ制御装置67により左右の駆動輪61L,61Rの回転速度差を減少させることで、車両挙動を安定化させることができる。
<他の実施形態について>
以下の説明において、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
以下の説明において、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
前述の実施形態では、トルク補正手段69において、トルク補正量Tcを計算する際にモータ2L,2Rのトルク上限値の差ΔTmaxを用いたが、このトルク上限値の差ΔTmaxの代わりに、モータ回転速度差Δω(=|ωM1−ωM2|)を用いても良い。
このモータ回転速度差Δωを用いる場合のモータ制御装置67のブロック図の例を図10に示す。同図10では、トルク上限値計算手段71(図7)が無くなり、トルク補正手段69がモータ回転速度検出手段Saから出力されたモータ回転速度を受け取る。トルク補正手段69では、モータ回転速度差Δωを計算し、前記と同様に、トルク補正量Tcを算出する。トルク補正手段69は、モータ回転速度差の絶対値が予め定めた閾値を超えた場合、回転速度の速いモータのモータトルク指令値を補正する。モータ制御装置67は、モータ回転速度差の絶対値が前記閾値以下ではトルク補正手段69による補正を実行せず、トルク変換手段68から与えられたモータトルク指令値をそのまま基本制御手段70に出力する通常時の制御を実行する。なお、この図10の実施形態においても、トルク補正手段69は、回転速度の速いモータのモータトルク指令値を補正するのに加えて、回転速度が遅いモータのモータトルク指令値を増加させる補正を行っても良い。
図2および図3に示す実施形態では、左側の遊星歯車機構30Lの遊星キャリアCLと、右側の遊星歯車機構30RのサンギヤSRとが結合されて第1の結合部材31を形成し、左側の遊星歯車機構30LのサンギヤSLと、右側の遊星歯車機構30Rの遊星キャリアCRとが結合されて第2の結合部材32を形成しているが、この例に限定されるものではない。
例えば、左側の遊星歯車機構30LのサンギヤSLと、右側の遊星歯車機構30RのリングギヤRRとが結合されて第1の結合部材31を形成し、左側の遊星歯車機構30LのリングギヤRLと、右側の遊星歯車機構30RのサンギヤSRとが結合されて第2の結合部材32を形成している構成としても良い。
その他、左側の遊星歯車機構30Lの遊星キャリアCLと、右側の遊星歯車機構30RのリングギヤRRとが結合されて第2の結合部材32を形成している構成としても良い。
第1,第2の結合部材31,32の間の軸受45,46として、針状ころ軸受が適用されているが、例えば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の転がり軸受を適用することも可能である。
その他、左側の遊星歯車機構30Lの遊星キャリアCLと、右側の遊星歯車機構30RのリングギヤRRとが結合されて第2の結合部材32を形成している構成としても良い。
第1,第2の結合部材31,32の間の軸受45,46として、針状ころ軸受が適用されているが、例えば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の転がり軸受を適用することも可能である。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2L,2R…第1,第2モータ
3…動力伝達装置
30…トルク差増幅装置
30L,30R…遊星歯車機構
61L,61R…駆動輪
66a…指令手段
67…モータ制御装置
69…トルク補正手段
71…トルク上限値計算手段
Sa…モータ回転速度検出手段
3…動力伝達装置
30…トルク差増幅装置
30L,30R…遊星歯車機構
61L,61R…駆動輪
66a…指令手段
67…モータ制御装置
69…トルク補正手段
71…トルク上限値計算手段
Sa…モータ回転速度検出手段
Claims (7)
- 二つのモータと、左右の駆動輪と、前記二つのモータと前記左右の駆動輪との間に設けられ、前記二つのモータからの動力を前記左右の駆動輪に分配し、且つ前記二つのモータのトルク差を増幅して前記左右の駆動輪を駆動する動力伝達装置とを備えた車両における、前記モータを、指令手段から与えられた前記二つのモータにそれぞれ対応するトルク指令値に基づいて制御するモータ制御装置であって、
前記二つのモータの回転速度をそれぞれ検出するモータ回転速度検出手段と、
前記指令手段から与えられた前記二つのモータのそれぞれのトルク指令値につき、前記モータ回転速度検出手段で検出される回転速度の速いモータのトルク指令値を、前記二つのモータの回転速度から定まる値に基づいて補正し低下させるトルク補正手段と、を備えたモータ制御装置。 - 請求項1に記載のモータ制御装置において、前記モータ回転速度検出手段で検出される回転速度に基づいて、前記二つのモータが出力可能なトルク上限値をそれぞれ計算するトルク上限値計算手段を備え、前記トルク補正手段は、前記トルク上限値計算手段で計算されるトルク上限値の差を、前記二つのモータの回転速度から定まる値とするモータ制御装置。
- 請求項1に記載のモータ制御装置において、前記トルク補正手段は、前記モータ回転速度検出手段で検出される前記二つのモータの回転速度の差を、前記二つのモータの回転速度から定まる値とするモータ制御装置。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のモータ制御装置において、前記トルク補正手段は、前記二つのモータの回転速度から定める値が閾値を超えたとき、前記閾値を超えた大きさに基づいて、トルク指令値の補正量を定めるモータ制御装置。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のモータ制御装置において、前記トルク補正手段は、回転速度の速いモータのトルク指令値を補正するのに加えて、回転速度の遅いモータのトルク指令値を増加させる補正を行うモータ制御装置。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のモータ制御装置において、前記動力伝達装置は、二つの遊星歯車機構を有し、前記二つのモータが発生するトルクの差を増幅するトルク差増幅装置を備えるモータ制御装置
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のモータ制御装置を備えた車両。
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2016
- 2016-12-02 JP JP2016234646A patent/JP2018093612A/ja active Pending
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