JP2018047412A - 多孔質複合体 - Google Patents

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寛一 片山
Kanichi Katayama
寛一 片山
文弘 林
Fumihiro Hayashi
文弘 林
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Abstract

【課題】本発明は、強度に優れ、かつ層間剥離が生じ難い多孔質複合体の提供を目的とする。【解決手段】本発明の一態様に係る多孔質複合体は、フッ素樹脂を主成分とする多孔質の捕集層と、この捕集層の一方の面に積層され、フッ素樹脂を主成分とする接着剤層と、この接着剤層における捕集層と反対側の面に積層される多孔質の保護層とを備える多孔質複合体であって、この多孔質複合体1.4質量部を超純水100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりの全有機炭素濃度が1ppm/m2以上85ppm/m2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質複合体に関する。
近年、例えば半導体洗浄等の用途において微細異物の除去が可能でかつ処理流量の大きいフィルターのニーズが高まっている。このようなフィルターには耐薬品性や耐熱性が必要とされるため、分離膜にフッ素樹脂を用いた多孔質体が好適に用いられる。
このようなフィルターの分離膜は分離性能を向上させるために小孔径かつ薄膜とする必要があるが、これに伴い機械的強度が低下する。分離膜において機械的強度が不十分であると、プリーツ折りによるモジュール化等の際に膜が損傷するおそれがある。
そこで、機械的強度を高めるため、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜の両面に支持層及び補強層をそれぞれ積層した多孔質複合体(積層体)が考案されている(特開2015−9219号公報参照)。この多孔質複合体は、融点又はガラス転移点が一定以下のフッ素樹脂を用いた接着剤層で上記補強層及びPTFE多孔質膜を接着している。
特開2015−9219号公報
しかしながら、上記従来の多孔質複合体の接着剤層の形成に用いられる接着性塗料は、一般的に欠陥抑制性、レベリング性等に代表される塗布性が比較的低い傾向にあり、形成される接着剤層の表面に塗工スジ等の欠陥が発生するおそれや、厚さが不均一になるおそれがある。そのため、上記従来の多孔質複合体は、PTFE多孔質膜と補強層等の他の層との接着性が不十分となり、層間剥離が生じるおそれがある。ここで、上記層間剥離を抑制する方法として、例えば固形分濃度の低減等によって上記接着性塗料を低粘度化する方法が考えられるが、この方法では十分な厚さの接着剤層を形成できないおそれや、液ダレが発生するおそれがある。
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、強度に優れ、かつ層間剥離が生じ難い多孔質複合体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る多孔質複合体は、フッ素樹脂を主成分とする多孔質の捕集層と、この捕集層の一方の面に積層され、フッ素樹脂を主成分とする接着剤層と、この接着剤層における捕集層と反対側の面に積層される多孔質の保護層とを備える多孔質複合体であって、この多孔質複合体1.4質量部を超純水100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりの全有機炭素濃度が1ppm/m以上85ppm/m以下である。
本発明の多孔質複合体は、強度に優れ、かつ層間剥離が生じ難い。
本発明の一態様に係る多孔質複合体を示す模式的断面図である。 図1の多孔質複合体の製造方法の一工程で得られる第1積層体を示す模式的断面図である。 図2の次の工程で得られる第2積層体を示す模式的断面図である。 図3の次の工程で得られる第3積層体を示す模式的断面図である。 図4の次の工程で得られる第4積層体を示す模式的断面図である。 図5の次の工程で得られる第5積層体を示す模式的断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明の実施形態に係る多孔質複合体は、フッ素樹脂を主成分とする多孔質の捕集層と、この捕集層の一方の面に積層され、フッ素樹脂を主成分とする接着剤層と、この接着剤層における捕集層と反対側の面に積層される多孔質の保護層とを備える多孔質複合体であって、この多孔質複合体1.4質量部を超純水100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりの全有機炭素濃度が1ppm/m以上85ppm/m以下である。
本発明者らは、上記課題解決に向けて鋭意検討し、多孔質複合体では上記抽出試験で検出される全有機炭素濃度と層間剥離の生じ難さとの間に相関性が見られ、上記全有機炭素濃度が一定範囲である多孔質複合体は層間剥離が生じ難いという点に着目した。そして、この知見に基づきさらに検討を進めた結果、本発明を完成させた。すなわち、当該多孔質複合体は、保護層を備えるため強度に優れ、かつ上記抽出試験で抽出される全有機炭素濃度が上記範囲と比較的大きいため層間剥離が生じ難い。ここで、上記全有機炭素濃度が上記範囲であることで当該多孔質複合体の層間剥離が生じ難くなる理由については明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、当該多孔質複合体は、接着剤層の形成に用いた接着性塗料が増粘剤を最適量含有することで粘度特性等が適度な範囲に調節されているため、接着剤層に塗布欠陥が生じ難く、その結果、層間剥離が抑制されると共に、上記増粘剤が製造時に熱分解されるため上記全有機炭素濃度が上記範囲になると考えられる。
上記接着剤層の主成分であるフッ素樹脂がテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)及びテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のうちの少なくとも1種であるとよい。このように、上記接着剤層の主成分であるフッ素樹脂が溶融時に流動し易いFEP及びPFAのうちの少なくとも1種であることで、製造時において上記接着剤層に接着性を発揮させ易くなり、その結果、層間剥離をより確実に抑制できる。
上記接着剤層の平均厚さとしては、0.05μm以上5.0μm以下が好ましい。上記接着剤層の平均厚さを上記範囲とすることで、分離機能低下を抑制しつつ、上記接着剤層の接着性を向上し、層間剥離をより確実に抑制できる。
上記保護層の主成分がフッ素樹脂であるとよい。このように、上記保護層の主成分がフッ素樹脂であることで、上記保護層の耐薬品性及び耐熱性を向上でき、その結果、多様な用途に適用し易くなる。
当該多孔質複合体は、上記捕集層における接着剤層と反対側に積層される多孔質の支持層をさらに備えるとよい。このように、当該多孔質複合体が上記捕集層における接着剤層と反対側に積層される多孔質の支持層をさらに備えることで、強度を向上できる。
ここで「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。また、「単位面積当たりの全有機炭素濃度」とは、抽出試験により回収した浸漬液について全有機炭素分析計(TOC計)で測定した全有機炭素濃度[ppm]と、試料として用いた多孔質複合体の平面視での面積[m]との比(浸漬液の全有機炭素濃度[ppm]/多孔質複合体の平面視での面積[m])を意味する。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係る多孔質複合体について適宜図面を参照しつつ詳説する。
<多孔質複合体>
図1に示す当該多孔質複合体は、フッ素樹脂を主成分とする多孔質の捕集層1と、この捕集層1の一方の面に直接積層され、フッ素樹脂を主成分とする多孔質の第1接着剤層2と、この第1接着剤層2における捕集層1と反対の面に直接積層される多孔質の保護層3と、捕集層1における第1接着剤層2と反対側に、第2接着剤層4を介して積層される多孔質の支持層5とを備える。
当該多孔質複合体の平均厚さとしては、特に限定されないが、例えば10μm以上500μm以下とすることができる。
(抽出試験)
当該多孔質複合体1.4質量部を超純水100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりの全有機炭素(Total Organic Carbon)濃度の下限としては、1ppm/mであり、20ppm/mが好ましく、50ppm/mがより好ましい。一方、上記全有機炭素濃度の上限としては、85ppm/mであり、80ppm/mが好ましい。上記全有機炭素濃度が上記下限未満である場合、第1接着剤層2において、使用した接着性塗料の粘度が低すぎることに起因して塗布欠陥が発生し、捕集層1及び保護層3の層間剥離を十分に抑制できないおそれがある。逆に、上記全有機炭素濃度が上記上限を超える場合、当該多孔質複合体で分離処理した処理液に有機炭素が混入するおそれがある。また、第1接着剤層2において、使用した接着性塗料の粘度が高すぎることに起因して塗布欠陥が発生し、捕集層1及び保護層3の層間剥離を十分に抑制できないおそれがある。
当該多孔質複合体1.4質量部を超純水100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりのナトリウムイオン濃度の上限としては、0.5ppm/mが好ましく、0.2ppm/mがより好ましい。当該多孔質複合体1.4質量部をIPA(イソプロピルアルコール)100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりのナトリウムイオン濃度の上限としては、0.5ppm/mが好ましく、0.2ppm/mがより好ましい。当該多孔質複合体1.4質量部をIPA100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりのカリウムイオン濃度の上限としては、0.5ppm/mが好ましく、0.2ppm/mがより好ましい。当該多孔質複合体1.4質量部をIPA100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりの乾燥残渣濃度の上限としては、30ppm/mが好ましく、15ppm/mがより好ましい。当該多孔質複合体1.4質量部を塩酸(10体積%)100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりのナトリウムイオン濃度の上限としては、0.2ppm/mが好ましく、0.05ppm/mがより好ましい。このように、各種抽出試験で抽出されるナトリウムイオン濃度及び乾燥残渣濃度を上記上限以下とすることで、当該多孔質複合体で分離処理した処理液に不純物が混入することを抑制できる。ここで「単位面積当たりのナトリウムイオン濃度」及び「単位面積当たりのカリウムイオン濃度」とは、上記条件での抽出試験により回収した浸漬液を用いてICP質量分析法で測定したナトリウムイオン又はカリウムイオン濃度[ppm]と、試料として用いた多孔質複合体の平面視での面積[m]との比(浸漬液のナトリウムイオン又はカリウムイオン濃度[ppm]/多孔質複合体の平面視での面積[m])を意味する。「乾燥残渣」とは、上記条件での抽出試験により回収した浸漬液を120℃で60分間乾燥させた残渣を意味し、「単位面積当たりの乾燥残渣濃度」とは、上記浸漬液における乾燥残渣濃度[ppm]と、試料として用いた多孔質複合体の平面視での面積[m]との比(浸漬液の乾燥残渣濃度[ppm]/多孔質複合体の平面視での面積[m])を意味する。
(捕集層)
捕集層1は、フッ素樹脂を主成分とする多孔質膜であり、液体、ガス等の流体に含まれる微細な異物を分離する機能を奏する。
ここで「フッ素樹脂」とは、高分子鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基(以下「フッ素原子含有基」ともいう)で置換されたものをいう。フッ素原子含有基は、直鎖状又は分岐状の有機基中の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換されたものであり、例えばフルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロポリエーテル基等を挙げることができる。
捕集層1の主成分のフッ素樹脂としては、例えばPTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF、EPA等が挙げられる。これらの中で、耐熱性、耐薬品性等に優れるPTFEが好ましい。なお、これらのフッ素樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
捕集層1の主成分として用いるPTFEとしては、テトラフルオロエチレンの単独重合体でも、テトラフルオロエチレンと少量の他のモノマーとの共重合体(以下、「変性PTFE」ともいう)でもよいが、変性PTFEが好ましい。上記他のモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル及びこれらの組み合わせが好ましい。変性PTFEにおけるテトラフルオロエチレンに由来する構造単位の含有割合と、他のモノマーに由来する構造単位の含有割合とのモル比としては、50:1以上400:1以下が好ましい。なお、この変性PTFEは、テトラフルオロエチレンを主な原料モノマーとして用いるため、融点及び溶融粘度が比較的高く、溶融押出が困難である。そのため、変性PTFEは、PFA、FEP及びEPAとは区別される。
上記変性PTFEの融解熱量の下限としては、17J/gが好ましく、23J/gがより好ましい。一方、上記融解熱量の上限としては、60J/gが好ましく、35J/gがより好ましい。上記融解熱量を上記範囲とすることで、捕集層1の平均流量孔径を維持しつつ気孔率を低減することができる。ここで「融解熱量」とは、示差走査熱量計(DSC)により測定される値をいう。
上記フッ素樹脂の融点又はガラス転移点の下限としては、250℃が好ましく、280℃がより好ましい。一方、上記フッ素樹脂の融点又はガラス転移点の上限としては、350℃が好ましく、330℃がより好ましい。上記フッ素樹脂の融点又はガラス転移点が上記下限未満であると、当該多孔質複合体の耐熱性が不十分となるおそれや、製造時に保護層3及び捕集層1を接着する際に捕集層1が溶融するおそれがある。逆に、上記フッ素樹脂の融点又はガラス転移点が上記上限を超えると、保護層3との圧着時の加熱温度が上昇し、各層が熱劣化するおそれや、製造コストが上昇するおそれがある。
捕集層1は、上述の主成分となるフッ素樹脂以外の他の樹脂や添加剤を含有してもよい。主成分となるフッ素樹脂の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましい。
捕集層1の平均流量孔径の下限としては、0.1nmが好ましく、1nmがより好ましく、10nmがさらに好ましい。一方、捕集層1の平均流量孔径の上限としては、50nmが好ましく、35nmがより好ましい。捕集層1の平均流量孔径が上記下限未満であると、液体、ガス等の流体が透過し難くなり分離効率が低下するおそれがある。逆に、捕集層1の平均流量孔径が上記上限を超えると、異物が透過し易くなって分離能が低下するおそれや、強度が不十分となるおそれがある。
ここで「平均流量孔径」とは、孔径の平均値に対応した指標であり、細孔径分布測定器等を用いるバブルポイント法(ASTM F316−86、JIS−K3832:1990)による測定結果から求められる。具体的には、バブルポイント法により、膜が乾燥している場合及び膜が液体で濡れている場合について膜に加えられる差圧と膜を透過する空気流量との関係を測定する。次に、この測定により得られたグラフをそれぞれ乾き曲線及び濡れ曲線とし、乾き曲線の流量を1/2とした曲線と濡れ曲線との交点における差圧をP[N/m]としたとき、式d=cγ/Pで表されるd[μm]の値が「平均流量孔径」である(cは定数で2,860であり、γは液体の表面張力[mN/m]である)。
捕集層1のIPA流量の下限としては、0.1ml/min/cmが好ましく、0.5ml/min/cmがより好ましい。一方、捕集層1のIPA流量の上限としては、5ml/min/cmが好ましく、3ml/min/cmがより好ましい。捕集層1のIPA流量が上記下限未満であると、液体、ガス等の流体が透過し難くなり分離効率が低下するおそれがある。逆に、捕集層1のIPA流量が上記上限を超えると、異物が透過し易くなって分離能が低下するおそれや、強度が不十分となるおそれがある。ここで「IPA流量」とは、イソプロピルアルコールを使用し、ASTM−F−317の方法により測定した流量を意味する。
捕集層1の平均厚さとしては、特に限定されないが、その下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、捕集層1の平均厚さの上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。捕集層1の平均厚さが上記下限未満であると、異物が透過し易くなって分離能が低下するおそれや、強度が不十分となるおそれがある。逆に、捕集層1の平均厚さが上記上限を超えると、液体、ガス等の流体が透過し難くなり分離効率が低下するおそれがある。
(第1接着剤層)
第1接着剤層2は、接着性塗料に由来する層であり、捕集層1及び保護層3を接着する。第1接着剤層2の主成分であるフッ素樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)等が挙げられる。これらの中で、溶融時に流動し易いFEP及びPFAが好ましい。なお、これらのフッ素樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フッ素樹脂の融点の下限としては、180℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、上記フッ素樹脂の融点の上限としては、330℃が好ましく、280℃がより好ましい。上記フッ素樹脂の融点が上記下限未満であると、当該多孔質複合体の耐熱性が低下するおそれがある。逆に、上記フッ素樹脂の融点が上記上限を超えると、製造時に第1接着剤層2に接着性を発揮させるために高温で加熱する必要が生じる。その結果、当該多孔質複合体を製造する際の製造コストが増大するおそれや、他の層が熱分解するおそれがある。但し、上記フッ素樹脂が融点を持たない場合、フッ素樹脂の融点とはガラス転移点を意味するものとする。ここで「融点」とは、JIS−K−7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して示差走査熱量計(DSC)により測定される融点ピークを意味し、「ガラス転移点」とは上記DSCにより測定される中間点ガラス転移温度を意味する。
第1接着剤層2の平均厚さの下限としては、0.05μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。一方、上記平均厚さの上限としては、5.0μmが好ましく、1.0μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限未満であると、接着強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限を超えると、当該多孔質複合体の圧力損失が増大するおそれがある。
第1接着剤層2の平均流量孔径は、捕集層1の平均流量孔径よりも大きいことが好ましい。第1接着剤層2の平均流量孔径の下限としては、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましく、0.3μmがさらに好ましい。一方、第1接着剤層2のIPA流量の上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。第1接着剤層2の平均流量孔径が上記下限未満であると、当該多孔質複合体の圧力損失が増大するおそれがある。逆に、第1接着剤層2の平均流量孔径が上記上限を超えると、第1接着剤層2の強度が不十分となるおそれがある。
第1接着剤層2のIPA流量の下限としては、0.1ml/min/cmが好ましく、0.5ml/min/cmがより好ましい。一方、第1接着剤層2のIPA流量の上限としては、5ml/min/cmが好ましく、3ml/min/cmがより好ましい。第1接着剤層2のIPA流量が上記下限未満であると、液体、ガス等の流体が透過し難くなり分離効率が低下するおそれがある。逆に、第1接着剤層2のIPA流量が上記上限を超えると、異物が透過し易くなって分離能が低下するおそれや、強度が不十分となるおそれがある。
(保護層)
保護層3は、捕集層1の一方側の面を保護する多孔質膜である。保護層3の主成分としては、フッ素樹脂が好ましい。このフッ素樹脂としては、捕集層1で例示したものと同様のフッ素樹脂等を用いることができ、中でもPTFEが好ましい。このフッ素樹脂の融点又はガラス転移点は、捕集層1と同様とすることができる。
保護層3の平均流量孔径は、捕集層1の平均流量孔径よりも大きいことが好ましい。保護層3の平均流量孔径の下限としては、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましく、0.2μmがさらに好ましい。一方、保護層3の平均流量孔径の上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。保護層3の平均流量孔径が上記下限未満であると、当該多孔質複合体の圧力損失が増大するおそれがある。逆に、保護層3の平均流量孔径が上記上限を超えると、保護層3の強度が不十分となるおそれがある。
保護層3のIPA流量の下限としては、1ml/min/cmが好ましく、10ml/min/cmがより好ましい。一方、保護層3のIPA流量の上限としては、100ml/min/cmが好ましく、50ml/min/cmがより好ましい。保護層3のIPA流量が上記下限未満であると、当該多孔質複合体の圧力損失が大きくなるおそれがある。逆に、保護層3のIPA流量が上記上限を超えると、保護層3の強度が不十分となるおそれがある。
保護層3の平均厚さとしては、特に限定されないが、その下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、保護層3の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。保護層3の平均厚さが上記下限未満であると、保護層3の強度が不十分となるおそれがある。逆に、保護層3の平均厚さが上記上限を超えると、当該多孔質複合体が不要に厚くなるおそれがある。
保護層3の捕集層1に対する剥離強度の下限としては、2N/mが好ましく、5N/mがより好ましい。保護層3の剥離強度が上記下限以上であることで、当該多孔質複合体の機械的強度を向上することができる。ここで「剥離強度」とは、JIS−K6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準拠して測定される値を意味する。
(第2接着剤層)
第2接着剤層4は、捕集層1及び支持層5を接着する。第2接着剤層4の主成分としては、フッ素樹脂が好ましく、PFAがより好ましい。第2接着剤層4における平均厚さ、平均流量孔径及びIPA流量としては、例えば第1接着剤層2における平均厚さ、平均流量孔径及びIPA流量と同様とすることができる。
(支持層)
支持層5は、フッ素樹脂を主成分とする多孔質膜であり、捕集層1を支持する。支持層5の主成分のフッ素樹脂としては、捕集層1と同様のもの等が使用できる。また、このフッ素樹脂の融点又はガラス転移点も、捕集層1と同様とすることができる。
支持層5の平均流量孔径は、捕集層1の平均流量孔径よりも大きいことが好ましい。支持層5の平均流量孔径の下限としては、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましく、0.3μmがさらに好ましい。一方、支持層5の平均流量孔径の上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。支持層5の平均流量孔径が上記下限未満であると、当該多孔質複合体の圧力損失が増大するおそれがある。逆に、支持層5の平均流量孔径が上記上限を超えると、支持層5の強度が不十分となるおそれがある。
支持層5のIPA流量の下限としては、1ml/min/cmが好ましく、10ml/min/cmがより好ましい。一方、支持層5のIPA流量の上限としては、100ml/min/cmが好ましく、50ml/min/cmがより好ましい。支持層5のIPA流量が上記下限未満であると、当該多孔質複合体の圧損が大きくなるおそれがある。逆に、支持層5のIPA流量が上記上限を超えると、支持層5の強度が不十分となるおそれがある。
支持層5の平均厚さとしては、特に限定されないが、その下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、支持層5の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。支持層5の平均厚さが上記下限未満であると、支持層5の強度が不十分となるおそれがある。逆に、支持層5の平均厚さが上記上限を超えると、当該多孔質複合体が不要に厚くなるおそれがある。
なお、当該多孔質複合体において第2接着剤層4及び支持層5は任意構成であり、必要に応じて省略してもよい。
<用途>
当該多孔質複合体は、機械的強度に優れ、かつ層間剥離が生じ難い。そのため、当該多孔質複合体は、プリーツ折りをした上でケーシング内に配設しても捕集層1の損傷や、捕集層1及び保護層3の層間剥離を抑制できる。これにより、当該多孔質複合体は微細異物を除去可能なフィルターとして好適に使用できる。また、当該多孔質複合体は、捕集層1の平均流量孔径が比較的小さいため、ガス分離膜や逆浸透膜(RO膜)等の分離膜としての使用も可能である。なお、当該多孔質複合体はプリーツ折りせずに用いてもよく、また分離以外の用途に使用してもよい。
<多孔質複合体の製造方法>
以下、当該多孔質複合体の製造方法の好適な一例について説明する。この製造方法は、表面が離型性を有する基材の表面に、フッ素樹脂を主成分とする樹脂粒子と増粘剤とを含有する接着性塗料により接着剤層(以下、「第1接着剤層」ともいう)を形成する接着剤層形成工程と、この接着剤層形成工程で得られた積層体の接着剤層側の面に、フッ素樹脂を主成分とする樹脂粒子を含有する塗料(以下、「捕集層形成用塗料」ともいう)を塗工する塗工工程と、この塗工工程で得られた積層体から上記基材を除去する除去工程と、この除去工程後の積層体の接着剤層側の面に多孔質膜(以下、「第1多孔質膜」ともいう)を重畳する重畳工程と、この重畳工程で得られた積層体を延伸する延伸工程とを備える。
当該多孔質複合体の製造方法は、塗工工程で得られた塗工層をアニール(加熱)するアニール工程をさらに備えることが好ましい。また、当該多孔質複合体の製造方法は、塗工工程後から重畳工程前までの間に、塗工工程で得られた塗工層における第1接着剤層と反対の面に第2多孔質膜を貼着する貼着工程をさらに備えることが好ましい。当該多孔質複合体の製造方法がアニール工程及び貼着工程を備える場合、当該多孔質複合体の製造方法は、接着剤層形成工程、塗工工程、貼着工程、アニール工程、除去工程、重畳工程及び延伸工程の順番で行うことが好ましい。以下、各工程について上記順番で詳説する。
(接着剤層形成工程)
接着剤層形成工程では、表面が離型性を有する基材の表面に、フッ素樹脂を主成分とする樹脂粒子と増粘剤とを含有する接着性塗料により第1接着剤層を形成する。
(接着性塗料)
上記接着性塗料は、増粘剤を含有することにより、適度に高いチクソトロピー性を有する。具体的には、上記接着性塗料の温度20℃、剪断速度60rpmで測定したB型粘度μ60rpm[mPa・s]に対する温度20℃、剪断速度6rpmで測定したB型粘度μ6rpm[mPa・s]の比(μ6rpm/μ60rpm)で求められるチクソトロピー指数の下限としては、0.8が好ましく、0.9が好ましく、1.0がより好ましい。一方、上記チクソトロピー指数の上限としては、4.0が好ましく、3.5がより好ましく、2.5がさらに好ましく、2.2が特に好ましい。上記チクソトロピー指数が上記下限未満であると、上記接着性塗料の塗工時の粘度が増大し、塗布性が低下するおそれがある。逆に、上記チクソトロピー指数が上記上限を超えると、塗工時の粘度が下がりすぎ、その結果、塗工した上記接着性塗料が流れるおそれがある。ここで「B型粘度」とは、JIS−K7117−1:1999「プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に準拠し、B型粘度計を使用して液体中で円筒又は円盤を回転させた時に上記円筒又は円盤に働く粘性抵抗トルクから測定される値を意味する。
上記接着性塗料の温度20℃、剪断速度60rpmで測定したB型粘度μ60rpmの下限としては、10mPa・sが好ましく、60mPa・sがより好ましい。一方、上記B型粘度μ60rpmの上限としては、600mPa・sが好ましく、200mPa・sがより好ましい。上記B型粘度μ60rpmが上記下限未満であると、上記接着性塗料が塗工後に流れるおそれがある。逆に、上記B型粘度μ60rpmが上記上限を超えると、上記接着性塗料の塗布性が不十分となるおそれがある。
上記接着性塗料の温度20℃、剪断速度6rpmで測定したB型粘度μ6rpmの下限としては、10mPa・sが好ましく、60mPa・sがより好ましい。一方、上記B型粘度μ6rpmの上限としては、600mPa・sが好ましく、200mPa・sがより好ましい。上記B型粘度μ6rpmが上記下限未満であると、上記接着性塗料の取り扱い性が低下するおそれがある。逆に、上記B型粘度μ6rpmが上記上限を超えると、上記接着性塗料の塗工が困難となるおそれがある。
上記接着性塗料の表面張力の下限としては、15mN/mが好ましく、20mN/mがより好ましい。一方、上記表面張力の上限としては、40mN/mが好ましく、30mN/mがより好ましい。上記表面張力が上記下限未満であるか、又は上記上限を超えると、塗布性が低下するおそれがある。ここで「表面張力」とは、輪環法により25℃で測定した値を意味する。
上記接着性塗料は、作業性の観点から、25℃で12時間での静置を行ってもゲル化しないことが好ましい。
(樹脂粒子)
上記接着性塗料が含有する樹脂粒子は、フッ素樹脂を主成分とする。この樹脂粒子は、上記接着性塗料により形成される接着剤層の主成分となる。
上記樹脂粒子の平均粒子径の下限としては、0.05μmが好ましく、0.10μmがより好ましい。一方、上記平均粒子径の上限としては、2.00μmが好ましく、0.50μmがより好ましく、0.35μmがさらに好ましい。上記平均粒子径が上記下限未満であると、上記接着性塗料のチクソトロピー指数が高くなりすぎるおそれがある。逆に、上記平均粒子径が上記上限を超えると、上記接着性塗料のチクソトロピー指数が低くなりすぎるおそれがある。また、形成される接着剤層の緻密さが不十分となり、その結果、接着性が低下するおそれがある。「平均粒子径」とは、動的光散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定される粒子の個数を基準として演算した50%平均粒子径(D50:メディアン径)を意味する。
上記樹脂粒子は、上記フッ素樹脂以外に、フッ素樹脂以外の合成樹脂等の他の成分を含有してもよい。上記樹脂粒子における上記フッ素樹脂の含有量の下限としては、例えば90質量%である。また、上記樹脂粒子における他の成分の含有量の上限としては、例えば10質量%である。
上記接着性塗料における上記樹脂粒子の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。一方、上記樹脂粒子の含有量の上限としては、60質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記樹脂粒子の含有量が上記下限未満であると、十分に厚い接着剤層を形成できないおそれがある。逆に、上記樹脂粒子の含有量が上記上限を超えると、塗布性が低下するおそれがある。
(増粘剤)
上記接着性塗料に用いる増粘剤は、上記接着性塗料の粘度を調節すると共に、チクソトロピー指数を向上する。
上記増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の水溶性合成樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体などが挙げられる。ここで「カルボキシメチルセルロース」とは、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム等に代表されるカルボキシメチルセルロース塩を含む概念である。上記増粘剤は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
上記増粘剤としては、これらの中で、上記チクソトロピー指数を好適な範囲に調節する観点から、ポリエチレンオキシド及びカルボキシメチルセルロースが好ましい。すなわち、上記増粘剤は、ポリエチレンオキシド及びカルボキシメチルセルロースのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記ポリエチレンオキシドは、HO−(CH−CH−O)n−Hで表される化合物である。上記nは、ポリエチレンオキシドの重合度を表す2以上の整数である。上記ポリエチレンオキシドの数平均重合度の下限としては、5,000が好ましく、10,000がより好ましい。一方、上記ポリエチレンオキシドの数平均重合度の上限としては、40,000が好ましく、20,000がより好ましい。数平均重合度が上記範囲であるポリエチレンオキシドを用いることで、上記チクソトロピー指数をより好適な範囲に調節することができる。ここで上記ポリエチレンオキシドの数平均重合度は、JIS−K1557−1:2007「プラスチック―ポリウレタン原料ポリオール試験方法−第1部:水酸基価の求め方」のA法で求めたポリエチレンオキシドの水酸基価O[mgKOH/g]を下記式に代入して得られる値を意味する。
数平均重合度={(56,100×2)/O−18.0}/62.1
上記増粘剤の分解温度は、上記樹脂粒子の主成分であるフッ素樹脂の分解温度未満であるとよい。上記増粘剤の分解温度と上記フッ素樹脂の分解温度との差の絶対値の上限としては、100℃が好ましく、20℃がより好ましい。このように、上記増粘剤の分解温度を上記フッ素樹脂の分解温度未満とすることで、上記接着性塗料により形成される接着剤層で接着する際に、上記増粘剤を熱分解により除去できる。これにより、例えば上記接着性塗料を用いた多孔質複合体をフィルターとして用いる場合等に、ろ過処理後の処理液に上記増粘剤が不純物として混入することを抑制できる。ここで「分解温度」とは、熱質量分析において、窒素雰囲気下で50℃から500℃まで10℃/分で昇温した際に質量が昇温開始時の50%となる温度を意味する。
上記樹脂粒子の主成分がFEP(融点:260℃、分解温度360℃)である場合、上記増粘剤の具体的な分解温度の下限としては、180℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、上記増粘剤の分解温度の上限としては、330℃が好ましく、280℃がより好ましい。また、上記樹脂粒子の主成分がPFA(融点:310℃、分解温度380℃)である場合、上記増粘剤の具体的な分解温度の下限としては、180℃が好ましく、200℃がより好ましい。一方、上記増粘剤の分解温度の上限としては、330℃が好ましく、280℃がより好ましい。上記増粘剤の分解温度が上記下限未満であると、接着剤層を形成する前に上記増粘剤が分解されるおそれがある。逆に、上記分解温度が上記上限を超えると、製造時に上記増粘剤が十分に熱分解されず、その結果、当該多孔質複合体における残留量を十分に低減できないおそれがある。
上記増粘剤の500℃での加熱後の残渣分率の下限としては、特に限定されないが、例えば1質量%である。一方、上記増粘剤の残渣分率の上限としては、50質量%好ましく、20質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。上記増粘剤の残渣分率が上記上限を超えると、上記接着性塗料を用いた多孔質複合体をフィルターとして用いる場合等に、分離処理後の処理液に上記増粘剤の分解残渣が不純物として混入するおそれがある。ここで「残渣分率」とは、上記条件で熱質量分析を行い、昇温開始時の質量に対する昇温終了時の質量の比を百分率で表したものである。
(溶媒)
上記接着性塗料は、通常溶媒を含有する。上記溶媒は、上記接着性塗料の塗布性を向上する。上記溶媒としては、上記樹脂粒子及び増粘剤を分散又は溶解可能であれば特に限定されず、水等の水性溶媒でも、アルコール類等の有機溶媒でもよいが、水が好ましく、純水がより好ましい。
上記接着性塗料の固形分濃度の下限としては、5質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。一方、固形分濃度の上限としては、60質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。上記固形分濃度が上記下限未満であると、十分に厚い接着剤層を形成することが困難となるおそれがある。逆に、固形分濃度が上記上限を超えると、塗布性が低下するおそれがある。ここで「固形分濃度」とは、1mLの試料をアミルニウム製カップに投入して恒温槽で300℃、30分間加熱することで乾燥させ、上記試料の乾燥前の質量に対する乾燥後の質量を百分率で表した値を意味する。
(界面活性剤)
上記接着性塗料は、塗布性と上記樹脂粒子の分散性とをより向上する観点から、界面活性剤をさらに含有することが好ましい。上記界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。上記フッ素系界面活性剤としては、アニオン性フッ素系界面活性剤、カチオン性フッ素系界面活性剤、ノニオン性フッ素系界面活性剤等が挙げられ、これらの中でノニオン性フッ素系界面活性剤が好ましい。このようなノニオン性フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物が好ましい。
上記接着性塗料における上記界面活性剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、1.0質量%がより好ましい。一方、上記界面活性剤の含有量の上限としては、5.0質量%が好ましく、2.0質量%がより好ましい。上記界面活性剤の含有量が上記下限未満であると、上記接着性塗料の塗布性を十分に向上できないおそれがある。逆に、上記界面活性剤の含有量が上記上限を超えると、形成される接着剤層の接着性が低下するおそれがある。
(他の添加剤)
上記接着性塗料は、消泡剤、防腐剤、乾燥剤等の他の添加剤をさらに含有してもよい。上記接着性塗料における上記他の添加剤の含有量の上限としては、例えば5質量%とすることができる。
上記接着性塗料の製造方法としては、特に限定されず、樹脂粒子及び増粘剤と、必要に応じて溶媒、界面活性剤、他の添加剤等の任意成分とを混合する方法等が挙げられる。また、上記接着性塗料は、樹脂粒子及び溶媒を含有する市販の樹脂ディスパージョンに、増粘剤と、必要に任意成分とを添加することでも製造できる。
このような接着性塗料を用いた接着剤層形成工程により、図2に示すように、基材Aと、この基材Aの表面に積層される第1接着剤層12とを有する第1積層体が得られる。この第1接着剤層12は、当該多孔質複合体における第1接着剤層を形成する。基材Aとしては、例えばアルミニウム箔等の金属箔などを用いることができる。
上記基材Aの表面に上記接着性塗料により第1接着剤層12を形成する方法としては、例えばキャピラリー方式、ロール方式、ダイ(リップ)方式、塗工バー方式等で上記接着性塗料を基材Aの表面に塗工した後に乾燥させる方法などが挙げられる。上記塗工の方式としては、塗工バー方式が好ましい。
塗工バー方式で上記接着性塗料を塗工する場合、塗工速度の下限としては、0.3m/minが好ましく、0.5m/minがより好ましい。一方、上記塗工速度の上限としては、5.0m/minが好ましく、2.0m/minがより好ましい。上記塗工速度が上記下限未満であると、製造効率が低下するおそれや、上記接着性塗料に十分な剪断応力を付与できず、その結果、粘度を十分に低減できず塗布性が低下するおそれがある。逆に、上記塗工速度が上記上限を超えると、塗りムラが発生するおそれがある。
上記接着性塗料を基材Aの表面に塗工する場合、1回のみ塗工してもよく、複数回重ねて塗工してもよいが、製造効率向上の観点から、1回のみ塗工することが好ましい。当該多孔質複合体の製造方法は、塗布性に優れる上記接着性塗料を用いるため、1回のみの塗工でも厚みのバラつきや塗工スジ等の欠陥の少ない第1接着剤層12を容易かつ確実に形成できる。
接着剤層形成工程では、塗工した当該接着性塗料を加熱して乾燥させるとよい。この乾燥条件としては、例えば温度を60℃以上100℃以下、時間を20分以上120分以下とすることができる。また、上記乾燥後に上記塗膜を焼結するとよい。この焼結条件としては、例えば温度を240℃以上320℃以下、時間を20分以上120分以下とすることができる。このような焼結により、形成される第1接着剤層12を無孔質化できる。
(塗工工程)
塗工工程では、接着剤層形成工程で得られた第1積層体の第1接着剤層12側の面に、フッ素樹脂を主成分とする樹脂粒子を含有する捕集層形成用塗料を塗工する。これにより、図3に示すように、基材Aと、この基材Aの表面に積層される第1接着剤層12と、この第1接着剤層12における基材Aとは反対側の表面に積層され、フッ素樹脂を主成分とする塗工層11とを有する第2積層体が得られる。この塗工層11は、当該多孔質複合体における捕集層を形成する。
第1積層体の第1接着剤層12側の面に捕集層形成用塗料を塗工する方法としては、例えばキャピラリー方式、ロール方式、ダイ(リップ)方式、塗工バー方式などが挙げられる。
第1接着剤層12は、上述の塗布性に優れる上記接着性塗料により形成されるため、厚みのバラつきや塗工スジ等の欠陥が少なく、その表面の平坦性に優れる。そのため、この第1接着剤層12上に塗工により形成される塗工層11においても、厚さのバラつきが抑制される。これにより、当該多孔質複合体の製造方法では、厚みのバラつきが少なく、分離性能を一定に保ち易い捕集層を備える多孔質複合体を製造できる。
捕集層形成用塗料としては、例えば乳化重合等により得たフッ素樹脂粒子を水等の溶媒に分散させたものを用いることができる。上記フッ素樹脂としては、当該多孔質複合体における捕集層の主成分として説明したフッ素樹脂と同様のものを用いることができる。これらのフッ素樹脂粒子は単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
捕集層形成用塗料が熱可塑性を有さないフッ素樹脂(例えばPTFE等)を主成分とする樹脂粒子を含有する場合、この捕集層形成用塗料は熱可塑性フッ素樹脂を主成分とする樹脂粒子をさらに含有するよい。この熱可塑性フッ素樹脂としては、例えばPFA、FEP、EPA、ETFE等が挙げられ、これらの中でもPFAが好ましい。PFAは熱分解が進みにくい傾向があるため、捕集層形成用塗料がPFAを主成分とする樹脂粒子を含有することで、捕集層に発生する欠陥を減少させることができる。この場合、捕集層形成用塗料における熱可塑性を有さないフッ素樹脂と熱可塑性フッ素樹脂との合計に対する熱可塑性フッ素樹脂の配合量の上限としては、10体積%が好ましく、5体積%がより好ましい。
また、上述した欠陥は、高濃度条件でゲル化する水溶性ポリマーを捕集層形成用塗料に添加することによっても低減することができる。この水溶性ポリマーとしては、フッ素樹脂の分散性への影響の観点から、ノニオン性のものが好ましい。このような水溶性ポリマーとして、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、デンプン、アガロース等が挙げられる。これらの中で、ポリエチレンオキサイドが好ましい。これらの水溶性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。また、ノニオン性の水溶性ポリマーの重量平均分子量の下限としては、10万が好ましく、100万がより好ましい。上記重量平均分子量を上記下限以上とすることで、捕集層形成用塗料を塗工後に乾燥させる際、水が完全に除去される前にゲル化して膜を形成するため、水の表面張力に起因するクラックの発生を抑制することができる。ここで、「重量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィを用い、標準ポリスチレン換算値にて求めた重量平均分子量を意味する。
捕集層形成用塗料が上記水溶性ポリマーを含有する場合、捕集層形成用塗料における上記水溶性ポリマーの含有量の下限としては、0.5mg/mlが好ましく、1.0mg/mlがより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、10mg/mlが好ましく、5mg/mlがより好ましい。上記含有量が上記下限未満であると、水溶性ポリマーによる上述の作用が十分発揮されないおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限を超えると、捕集層形成用塗料の粘度が高くなりすぎ、取り扱い性が低下するおそれがある。
捕集層形成用塗料を第1接着剤層12上に塗工した後、捕集層形成用塗料に含まれる溶媒を乾燥させることで、フッ素樹脂を主成分とする塗工層11が得られる。乾燥は、溶媒の沸点に近い温度又は沸点以上の温度に加熱することにより行うことができる。この乾燥では徐々に温度を上げながら複数段階の加熱を行うとよい。具体的には、例えば第一段階を50℃以上100℃以下、第二段階を200℃以上300℃未満、第三段階を300℃以上400℃以下とし、各段階の時間を0.5時間以上2時間以下とする。
(貼着工程)
貼着工程では、塗工工程後から重畳工程前までの間に、塗工工程で得られた塗工層11における第1接着剤層12と反対の面に、接着液層14を介して第2多孔質膜15を貼着する。これにより、図4に示すように、基材A、第1接着剤層12、塗工層11、接着液層14及び第2多孔質膜15がこの順番で積層された第3積層体が得られる。第2多孔質膜15は当該多孔質複合体における支持層を形成する。
貼着工程では、第2多孔質膜15における塗工層11と対向させる側の面と、塗工層11における第2多孔質膜15と対向させる側の面とのうち少なくとも一方に予め接着液を塗布しておくことで、接着液層14を形成できる。この接着液としては、当該多孔質複合体における捕集層、保護層及び支持層の主成分よりも融点の低い熱可塑性のフッ素樹脂(捕集層、保護層及び支持層の主成分をPTFEとする場合、例えばPFA等)粒子を溶媒中に分散させたものを用いることができる。この接着液の溶媒としては、例えば上述の捕集層形成用塗料の溶媒と同様とすることができる。また、上記接着液には、捕集層形成用塗料で上述した水溶性ポリマーを添加するとよい。なお、上記接着液として、上記接着性塗料を用いてもよい。上記接着液により形成された接着液層14は、後述するアニール工程や重畳工程で溶媒が除去され、当該多孔質複合体における第2接着剤層を形成する。
(アニール工程)
アニール工程では、塗工工程で得られた塗工層11をアニールすることで、塗工層11に含まれるフッ素樹脂の結晶化度を飽和させる。これにより、塗工層11から形成される捕集層の孔径や気効率等を安定化させる。上記アニールの方法としては、例えば第2積層体又は第3積層体を上記フッ素樹脂の融点以上に昇温した後、融点以下に徐冷する第1のアニール方法や、第2積層体又は第3積層体を上記フッ素樹脂の融点、又は融点よりもやや低い温度で一定時間加熱する第2のアニール方法等が挙げられる。フッ素樹脂としてPTFE(融点:330℃)が含まれる塗工層11に対して第2のアニール方法を行う場合、例えばアニール温度を300℃以上330℃以下、アニール時間を0.1時間以上48時間以下とすることができる。
(除去工程)
除去工程では、塗工工程で得られた第3積層体から基材Aを除去する。これにより、図5に示すように、第1接着剤層12、塗工層11、接着液層14及び第2多孔質膜15がこの順番で積層される第4積層体が得られる。基材Aを除去する方法としては、例えば基材Aを剥離する方法や、基材Aを溶解可能な溶解液(基材Aがアミル箔である場合、例えば塩酸)で溶解する方法等が挙げられ、コストの観点から基材Aを剥離する方法が好ましい。
(重畳工程)
重畳工程では、除去工程後の第4積層体の第1接着剤層12側の面に第1多孔質膜13を重畳する。これにより、図6に示すように、第1接着剤層12が塗工層11及び第1多孔質膜13を接着し、第1多孔質膜13、第1接着剤層12、塗工層11、接着液層14及び第2多孔質膜15がこの順番で積層される第5積層体が得られる。第1多孔質膜13は、当該多孔質複合体における保護層を形成する。
重畳工程では、重畳と同時又は重畳後、形成される第5積層体を加熱又は熱圧着するとよい。熱圧着に用いる装置としては、特に限定されず、例えばプレス型のラミネート装置や、1対のロールによる熱圧着装置等を用いることができる。このロールとしては、例えば金属ロール(加熱ロール)とゴムロールとを組み合わせたものが好適に使用できる。また、上記接着性塗料は、重畳と同時又は重畳後にほとんど圧力を付与しなくても十分な接着性を発揮でき、かつ付与する圧力を増大させても接着性はあまり向上しない。そのため、重畳工程では、第4積層体の第1接着剤層12側の面に第1多孔質膜13を重畳し、得られた重畳体をロール状に巻回した後に恒温槽等で加熱するだけでも十分な接着性が得られる。このように、重畳工程で、ほとんど圧力を付与せずに接着することで、第1多孔質膜13等の孔が潰れることを抑制できる。
重畳工程における加熱温度としては、第1接着剤層12に含まれるフッ素樹脂の融点以上の温度が好ましく、具体的な加熱温度の下限としては、180℃が好ましく、230℃がより好ましく、270℃がさらに好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、320℃が好ましく、290℃がより好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、第1多孔質膜13及び塗工層11の接着強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、塗工層11や第1多孔質膜13等のフッ素樹脂が分解するおそれがある。
重畳工程でロールを用いる場合、上記ロールにおけるニップ圧力の下限としては、0.10kg/cmが好ましく、0.25kg/cmがより好ましい。一方、上記ニップ圧力の上限としては、5.0kg/cmが好ましく、2.5kg/cmがより好ましい。上記ニップ圧力が上記下限未満であると、第1多孔質膜13及び塗工層11の接着強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記ニップ圧力が上記上限を超えると、第1多孔質膜13等の孔が潰れるおそれがある。また、重畳工程でロールを用いる場合、送り速度としては、例えば0.5m/分以上10m/分以下である。
重畳工程でプレスを用いる場合、プレス圧力の下限としては、例えば0.01MPである。一方、上記プレス圧力の上限としては、2.0MPaが好ましく、1.0MPaがより好ましい。プレス圧力が上記下限未満であると、第1多孔質膜13及び塗工層11の接着強度が不十分となるおそれがある。逆に、上記プレス圧力が上記上限を超えると、第1多孔質膜13等の孔が潰れるおそれがある。また、重畳工程でプレスを用いる場合、プレス時間としては、例えば1分以上60分以下である。
貼着工程及び重畳工程で用いる第1多孔質膜13及び第2多孔質膜15、すなわち当該多孔質複合体における保護層及び支持層を形成する多孔質膜としては、特に限定されないが、押出や流延により形成した非多孔質の樹脂フィルムを延伸することで多孔質化した膜が好ましい。上記延伸方法としては、多軸延伸及び一軸延伸が挙げられる。このように、延伸により多孔質化した多孔質膜を用いることで、フッ素樹脂を主成分とし、かつ適度な強度と平均流量孔径とを備える保護層及び支持層を比較的容易に形成できる。
(延伸工程)
延伸工程では、重畳工程で得られた第5積層体を延伸し、この第5積層体における第1接着剤層12、塗工層11等の無孔質層を多孔質化する。これにより、当該多孔質複合体が得られる。この延伸としては二軸延伸が好ましく、例えばシートの幅方向に100%以上300%以下の延伸率で延伸した後、幅方向に100%以上300%以下の延伸率で再度延伸するとよい。
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
当該多孔質複合体は、本発明の作用を阻害しない範囲で、支持層、第1接着剤層、捕集層、第2接着剤層及び保護層以外の層を備えてもよい。
また、上記接着性塗料を用いて多孔質複合体を製造する場合、上述した製造方法以外の方法を採用してもよい。例えば、捕集層、上記接着性塗料により形成した第1接着剤層、多孔質膜をそれぞれ別々に用意し、捕集層、第1接着剤層及び多孔質膜の順番に重畳した重畳体を用いて上記重畳工程と同様の熱圧着処理を行うことでも当該多孔質複合体を製造できる。
当該多孔質複合体の製造方法において、任意工程である貼着工程を行わない場合、除去工程では第2積層体から基材を除去し、第1接着剤層とこの第1接着剤層の一方の面に積層される塗工層とを備える第4積層体を得る。また、重畳工程では、この第4積層体の第1接着剤層側の面に第1多孔質膜を重畳し、第1多孔質膜、第1接着剤層及び塗工層がこの順番で積層される第5積層体を得る。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<接着性塗料の原料>
[フッ素樹脂粒子]
FEP粒子1のディスパージョン(FEP1):ダイキン社の「ND−4R」、固形分濃度約40質量%、平均粒子径0.2〜0.3μm
FEP粒子1のディスパージョン2(FEP2):ダイキン社の「ND−110」、固形分濃度52.5質量%〜54.5質量%、平均粒子径0.2〜0.3μm
なお、上記フッ素樹脂粒子の平均粒子径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社の「Nanotrac Wave」)を用い、粒子の個数を基準として演算される50%平均粒子径(D50:メディアン径)を5回測定し、その最小値と最大値とを示したものである。
[増粘剤]
PEO−3P:住友精化社の「PEO(登録商標)−3P」、ポリエチレンオキシド(INCI名「PEG−14M」)、分解温度約266℃、残渣分率2.1質量%
Na−CMC:日本製紙社の「MAC200HC」、カルボキシメチルセルロースナトリウム、分解温度約290℃、残渣分率47質量%
NH−CMC:ダイセル社の「DN−440H」、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、分解温度約321℃、残渣分率13質量%
[界面活性剤]
フッ素系界面活性剤:DIC社の「メガファック(登録商標)F−444」、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物
<接着性塗料の調製>
[接着性塗料No.1]
フッ素樹脂粒子としてのFEP1と、増粘剤としてのPEO−3Pと、フッ素系界面活性剤と、超純水とを混合し、接着性塗料No.1を得た。各原料の配合量は、接着性塗料において、FEP粒子1の含有量が20質量%、ポリエチレンオキシドの含有量が2質量%、フッ素系界面活性剤の含有量が1質量%となるようにした。
[接着性塗料No.2〜5]
原料の種類及び使用量を変更することで各成分の種類及び濃度を表1に示すように変更し、接着性塗料No.2〜5を製造した。なお、表1における樹脂粒子及び増粘剤の含有量は、有効成分量を示す。
[物性の測定]
(固形分濃度)
上記製造した接着性塗料1mLを試料として用い、この試料をアミルニウム製カップに投入して恒温槽で300℃で30分間加熱し、上記試料の加熱前の質量に対する加熱後の質量を百分率で表した値を各接着性塗料の固形分濃度[質量%]とした。
(粘度及びチクソトロピー指数)
上記製造した接着性塗料の温度20℃、剪断速度60rpmでのB型粘度μ60rpm[mPa・s]と、温度20℃、剪断速度6rpmでのB型粘度μ6rpm[mPa・s]とを測定し、B型粘度μ60rpmに対するB型粘度μ6rpmの比(μ6rpm/μ60rpm)をチクソトロピー指数(TI値)とした。B型粘度は、JIS−K7117−1:1999「プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」に準拠し、B型粘度計(栄弘精機(株)社の「アナログ粘度計T」)を用いて測定した。
Figure 2018047412
<評価>
[静置でのゲル化]
上記製造した接着性塗料を25℃で3時間静置してゲル化するかを観察し、ゲル化が生じた場合を「B」、ゲル化が生じなかった場合を「A」とした。
[塗布性]
平均厚さ50μmのアルミニウム箔をガラス平板の上に皺が生じないように広げて固定し、このアルミニウム箔上に上記製造した接着性塗料を滴下した。その後、スライドシャフト(日本ベアリング社の「ステンレスファインシャフトSNSF型」、外径20mm、ステンレス鋼製)を上記アルミニウム箔上で滑らせるように動かし、上記接着性塗料を上記アルミニウム箔上の一面に均一に伸ばした。この接着性塗料を塗工したアルミニウム箔を80℃で60分乾燥させ、乾燥後に280℃で1時間加熱した後に自然冷却させることで、アルミニウム箔とこのアルミニウム箔の一方側の面に積層される第1接着剤層とを備える積層体を形成した。この積層体を用い、以下の方法で塗布性を評価した。
(欠陥の有無)
上記接着剤層における塗工スジの有無を測定した。具体的には、上記接着剤層における塗工スジの有無を目視で確認し、「無し(A)」、「ほぼ無し(B)」、「有り(C)」及び「多発(D)」の4段階で判定した。
(レベリング性)
上記接着剤層における厚さのバラつきを測定した。具体的には、上記接着剤層の6箇所で厚さを測定し、その平均厚さと、変動係数(CV)[%]とを算出した。上記測定箇所は、接着剤層の幅方向(塗工方向と直交する方向)に60mm間隔とした。変動係数は、その値が小さいほど厚さのバラつきが少なくレベリング性が良好であることを示す。図7に、接着性塗料のTI値と、得られる接着剤層における厚さのCVとの関係を示す。
接着性塗料の塗布性は、塗工スジが「無し(A)」又は「ほぼ無し(B)」であり、かつ上記変動係数が10%未満である場合を「良好(A)」、それ以外の場合を「良好でない(B)」と評価した。
Figure 2018047412
<多孔質複合体の製造>
表3に示す接着性塗料を用い、以下の方法で製造例1〜5の多孔質複合体を製造した。多孔質複合体における捕集層を形成する捕集層形成用塗料として、赤外分光法(InfraRed spectroscopy、IR)でヘキサフルオロプロピレンに由来する赤外線の吸収が検出され、かつ融解熱量が31.0J/gである変性PTFEを含むディスパージョンを用意した。また、多孔質複合体における第2接着剤層を形成する接着液としてPFAディスパージョン(三井・デュポンフロロケミカル社の「920HP」)を用意した。さらに、多孔質複合体における支持層及び保護層を形成する多孔質膜としてPTFE多孔質膜(住友電工ファインポリマー社の「ポアフロン(登録商標)FP−045−80」)を用意した。
次に、平均厚さ50μmのアルミニウム箔をガラス平板の上に皺が生じないように広げて固定し、このアルミニウム箔上に上記接着性塗料を滴下した。その後、スライドシャフト(日本ベアリング社の「ステンレスファインシャフトSNSF型」、外径20mm、ステンレス鋼製)を上記アルミニウム箔上で滑らせるように動かし、上記接着性塗料をアルミニウム箔上の一面に均一に伸ばした。この接着性塗料を塗工したアルミニウム箔を80℃で60分の乾燥と、280℃で1時間の加熱とを行った後に自然冷却させることで、平均厚さ0.5μmの第1接着剤層を形成した。
次に、得られた上記第1接着剤層及びアルミニウム箔を備える第1積層体の第1接着剤層上に捕集層形成用塗料を滴下し、スライドシャフト(日本ベアリング社の「ステンレスファインシャフトSNSF型」、外径20mm、ステンレス鋼製)を転がすように動かして上記捕集層形成用塗料を均一に広げた。
この捕集層形成用塗料を塗工したアルミニウム箔を80℃で1時間乾燥させ、次いで250℃で1時間加熱し、さらに340℃で1時間加熱し、その後自然冷却することで、上記第1接着剤層上に平均厚さ1.6μmの塗工層を形成した。
さらに、上記塗工層、第1接着剤層及びアルミニウム箔がこの順番で積層される第2積層体を上記塗工層が上になるようにガラス平板の上に皺がないように広げて固定し、上記接着液を滴下し、上記スライドシャフトを用いて塗工層上に均一に広げた。この接着液が乾燥する前に、上記多孔質膜を貼着した。得られた多孔質膜、接着液層、塗工層、第1接着剤層及びアルミニウム箔がこの順番で積層される第3積層体を320℃で1時間加熱することでアニール処理を行った。乾燥及び加熱後、アルミニウム箔を剥離することで、多孔質膜、接着液層、塗工層及び第1接着剤層がこの順番で積層される第4積層体を得た。
次に、上記第4積層体の第1接着剤層側の表面に別の上記多孔質膜を温度270℃、圧力0.5MPaで熱プレスし、多孔質膜、接着液層、塗工層、第1接着剤層及び多孔質膜がこの順番で積層される第5積層体を得た。
次に、この第5積層体を一定方向に延伸率200%で延伸した後、上記一定方向に延伸率200%で再度延伸し、支持層、第2接着剤層、捕集層、第1接着剤層及び保護層がこの順番で積層された多孔質複合体を得た。
[抽出試験]
上記製造した多孔質複合体を600mm(1.4g)に裁断したものを試料とし、この試料を室温(25℃)の抽出液100ml中で一晩(10時間)浸漬して浸漬液を回収した。抽出液としては、超純水、イソプロピルアルコール又は塩酸(10体積%)を用いた。抽出液として超純水を用いた浸漬液については、全有機炭素濃度を全有機炭素計(Sievers社の「900ラボ型 TOC分析計」)で測定し、ナトリウムイオン濃度をICP質量分析法(アジレントテクノロジー社の「ICP−MS7700」)で測定した。抽出液としてイソプロピルアルコールを用いた浸漬液については、ナトリウムイオン濃度を上記ICP質量分析法で測定した。また、上記浸漬液を120℃、60分間乾燥させて得られた乾燥残渣量に基づいて乾燥残渣濃度を求めた。抽出液として塩酸を用いた浸漬液については、ナトリウムイオン濃度を上記ICP質量分析法で測定した。
Figure 2018047412
表1〜3に示すように、TOC濃度が1ppm/m以上85ppm/m以下である製造例2〜5の多孔質複合体は層間剥離が生じ難かった。このように、多孔質複合体のTOC濃度と、使用した接着性塗料の塗布性との間には相関性があり、上記TOC濃度が上記範囲である多孔質複合体は層間剥離が生じ難いと判断される。この理由としては、例えば製造例2〜5の多孔質複合体に用いた接着性塗料No.2〜5は、最適量の増粘剤を含有することで粘度、チクソトロピー指数等の粘度特性が適度な範囲に調節されることで、表2に示すように塗布欠陥が抑制されたためであると考えられる。なお、製造例2〜5の多孔質複合体は、抽出試験によって検出されるTOC、ナトリウムイオン及び乾燥残渣が比較的微量であり、フィルターとして好適に使用できると判断される。
本発明の多孔質複合体は、強度に優れ、かつ層間剥離が生じ難い。
1 捕集層
2 第1接着剤層
3 保護層
4 第2接着剤層
5 支持層
11 塗工層
12 第1接着剤層
13 第1多孔質層
14 接着液層
15 第2多孔質層
A 基材

Claims (5)

  1. フッ素樹脂を主成分とする多孔質の捕集層と、
    この捕集層の一方の面に積層され、フッ素樹脂を主成分とする接着剤層と、
    この接着剤層における捕集層と反対側の面に積層される多孔質の保護層と
    を備える多孔質複合体であって、
    この多孔質複合体1.4質量部を超純水100質量部中で25℃、10時間の抽出試験を行った際に抽出される単位面積当たりの全有機炭素濃度が1ppm/m以上85ppm/m以下である多孔質複合体。
  2. 上記接着剤層の主成分であるフッ素樹脂がテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体及びテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のうちの少なくとも1種である請求項1に記載の多孔質複合体。
  3. 上記接着剤層の平均厚さが0.05μm以上5.0μm以下である請求項1又は請求項2に記載の多孔質複合体。
  4. 上記保護層の主成分がフッ素樹脂である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の多孔質複合体。
  5. 上記捕集層における接着剤層と反対側に積層される多孔質の支持層をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多孔質複合体。
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