JP2018044877A - 被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測する方法 - Google Patents

被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測する方法を提供する。【解決手段】(1)被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定する工程、及び、(2)(A)工程(1)で測定されたグリシルグリシンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のグリシルグリシンの濃度と比較して低下している場合、又は、(B)工程(1)で測定されたシスチンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のシスチンの濃度と比較して低下している場合、骨密度低下を発症する可能性又は骨密度低下が進行する可能性が高いと予測する工程を含むことを特徴とする方法。【選択図】なし

Description

本発明は、被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測する方法に関する。
骨粗鬆症は、破骨細胞の過剰な活性化等による骨量や骨密度(Bone Mineral Density)の低下によって起こる、骨強度が低下する疾患である。骨粗鬆症に罹患すると骨折のリスクが増加する。
骨粗鬆症薬として、現在、破骨細胞の抑制や骨芽細胞の活性化を促進する薬剤等が多数上市されているが、その使用が医療保険適用となるのは、骨密度低下が進行した者(例えば、骨密度が若年成人平均値の70%未満に低下した者)か、すでに骨折を起こした者(例えば、大腿骨近位部骨折や椎体骨折等の骨脆弱性骨折を起こした者)に限られている。
骨粗鬆症の診断指標の一つである骨密度について、現在、骨密度測定装置を用いた測定法がゴールデンスタンダードである。しかしながら、骨密度測定装置は、被験者の現在の骨密度を測定できるが、将来の骨密度低下を予測することはできない。
アンケートへの回答結果に基づいて今後10年間の骨折リスクを評価するツールとしてFRAX(登録商標)があるが、これは骨密度低下を予測するツールではない。
その他、骨代謝状態を反映する骨代謝マーカーとして様々なものが医療保険の適用対象となっている。例えば、血清マーカーとしてTRACP5b、NTX、CTX、ucOC、OCやハイドロキシプロリン等があり、尿マーカーとしてNTXやデオキシピリジノリン等がある。
また、骨粗鬆症罹患リスクを予測するマーカーとして骨粗鬆症感受性遺伝子における多型(特許文献1)が知られており、骨粗鬆症骨折リスクを予測するマーカーとしてγ−GTP(γ-グルタミルトランスペプチターゼ)(特許文献2)が知られている。
また、本発明がマーカーとして採用するグリシルグリシン及びシスチンについては、HPLC等による測定方法が知られている(非特許文献1及び2)。
特開2014−11997号公報 特開2002−85091号公報
J. Chromatography, 436, 334-337 (1988) Clin. Chim. Acta., 396(1-2), 43-48 (2008)
前述のとおり、現在、骨粗鬆症薬の使用対象は、既に骨密度低下が進行した者に限られているが、骨密度低下を発症する前又は骨密度低下が進行する前に対象者を同定し、予防的治療又は早期治療を開始することが望ましい。
しかしながら、骨密度低下の発症又は進行を正確に予測するマーカーは存在していなかったので、骨密度低下に対する予防的治療や早期治療を行うことはできなかった。
本発明者は、骨密度低下の発症や進行を正確に予測する手段について鋭意検討したところ、被験者の血液中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度が骨密度低下の発症や進行と関連していることを見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔10〕に関するものである。

〔1〕被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測する方法であって、
(1)被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定する工程、及び、
(2)工程(1)で測定されたグリシルグリシンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のグリシルグリシンの濃度と比較して低下している場合、又は、
工程(1)で測定されたシスチンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のシスチンの濃度と比較して低下している場合、
骨密度低下を発症する可能性又は骨密度低下が進行する可能性が高いと予測する工程
を含むことを特徴とする方法。

〔2〕工程(1)の実施前に予め取得した血液サンプルが、閉経前の被験者に由来する血液サンプルである、前記〔1〕に記載の方法。

〔3〕工程(1)の実施前に予め取得した血液サンプルが、閉経後の被験者に由来する血液サンプルである、前記〔1〕に記載の方法。

〔4〕被験者がヒトの女性である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の方法。

〔5〕被験者が閉経後の女性である、前記〔4〕に記載の方法。

〔6〕工程(1)の血液サンプルが、20pg/ml未満の血清中エストラジオール濃度を有する被験者に由来する血液サンプルである、前記〔4〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の方法。

〔7〕血液サンプルが血清サンプルである、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の方法。

〔8〕グリシルグリシン又はシスチンの濃度をHPLC法又はLC-FTMS法で測定する、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の方法。

〔9〕被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測するためのマーカーであって、
グリシルグリシン又はシスチンであることを特徴とする、マーカー。

〔10〕被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測するためのキットであって、
被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とするキット。
本発明は、後述する実施例で示されるように、被験者に対する侵襲性が低い手段により入手可能な血液を用いて骨密度低下の発症や進行を簡便、迅速かつ正確に予測することができる。したがって、本発明を用いることにより、骨密度低下を発症する前又は骨密度低下が進行する前に対象者を同定し、予防的治療又は早期治療を開始することが可能になる。
図1は、骨密度正常群(normal BMD)及び低骨密度群(low BMD)に由来する血清サンプル中のヒドロキシプロリン濃度(上図)、グリシルグリシン濃度(中図)及びシスチン濃度(下図)を示す図である。 図2は、正常E2(E2 normal)かつ骨密度正常(BMD normal)群、低E2(E2 low)かつ骨密度正常(BMD normal)群及び低E2(E2 low)かつ低骨密度群(BMD low)群に由来する血清サンプル中のヒドロキシプロリン濃度(上図)、グリシルグリシン濃度(中図)及びシスチン濃度(下図)を示す図である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の、被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測する方法は、下記の工程:
(1)被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定する工程、及び、
(2)工程(1)で測定されたグリシルグリシンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のグリシルグリシンの濃度と比較して低下している場合、又は、
工程(1)で測定されたシスチンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のシスチンの濃度と比較して低下している場合、
骨密度低下を発症する可能性又は骨密度低下が進行する可能性が高いと予測する工程
を含んでいる。
工程(1)
骨密度低下は、加齢や女性ホルモン(エストロゲン)の低下等によって引き起こされる症状であり、骨量低下と共に骨強度の低下(骨粗鬆症)を引き起こす。
骨密度低下は、Tスコアに基づいて判定することができる。Tスコアとは、若年齢の平均骨密度値(基準値)を0として、標準偏差を1SDとして指標を規定した値をいう。
一般的には、被験者のTスコアが−1.0SD未満である場合に、骨密度低下が発症又は進行していると判定することができる。
被験者は、骨密度を発症する可能性のあるあらゆる動物が含むが、好ましくは哺乳動物、特に好ましくはヒトである。
被験者は、骨密度低下の発症が疑われていない者(例えば、閉経後に通常の健康診断を受ける者)であってもよく、公知の検査手段(例えば、骨密度測定装置による測定等)により骨密度低下の進行が疑われている者であってもよい。
被験者の性別や年齢は問わないが、骨密度低下に繋がるエストロゲンの低下が起こりやすいヒトの女性、特に閉経後のヒトの女性に対して本発明を好適に適用することができる。
特に、エストロゲンの一種であるエストラジオール(Estradiol:E2)の血清濃度が20pg/ml未満であるヒトの女性に対して本発明を好適に適用することができる。換言すれば、工程(1)の血液サンプルは、好ましくは、20pg/ml未満の血清中エストラジオール濃度を有する被験者に由来する血液サンプルである。
被験者由来の血液サンプルの調製は、当該技術分野で一般的に用いられている手法を特に制限なく用いて行うことができる。
血液サンプルは、被験者から採取した血液をそのまま使用してもよいが、被験者から採取した血液を加工したもの(例えば、血清等)を使用することが好ましい。グリシルグリシン又はシスチンの濃度をより正確かつ迅速に測定できる点で、血清サンプルを用いることが好ましい。
血清サンプルの調製は、当該技術分野で一般的に用いられている手法を特に制限なく用いて行うことができる。例えば、被験者から血液(例えば抹消血)を採取し、これを遠心分離することで調製することができる。
グリシルグリシン(glycylglycine)は、2つのグリシンがペプチド結合してなるジペプチド(Gly-Gly)である。
シスチン(cystine)は、2つのシステインがジスルフィド結合を介して結合してなる物質である。
血液サンプル中のグリシルグリシン及びシスチンの濃度の測定は、当該技術分野で一般的に用いられている測定方法、検出方法や定量方法を特に制限なく用いて行うことができる。具体例としては、逆相HPLC法(非特許文献1)や、LC-FTMS(液体クロマトグラフィー(liquid chromatography: LC)とフーリエ変換質量分析(Fourier transform mass spectrometry: FTMS)とを組み合わせた方法)(非特許文献2)があり、これらは、それぞれグリシルグリシン及びシスチンに対して特異性が高く、定量性に優れた測定方法である。
したがって、工程(1)は、当該技術分野で公知の血中のグリシルグリシン及び/又はシスチンの濃度を測定する手段、例えば、非特許文献1〜2に記載の方法を用いて実施することができる。
また、後述の実施例に記載されるように、血液サンプル中のグリシルグリシン及びシスチンの濃度は、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動装置(capillary electrophoresis:CE)を飛行時間型質量分析装置(time-of-flight mass spectrometry:TOFMS)に接続した分析装置)を用いて測定することができる。
工程(1)では、被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンのいずれかの濃度を測定すれば十分であるが、グリシルグリシンとシスチンの両方を測定してもよい。
工程(2)
工程(2)では、工程(1)で測定された血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度に基づいて、被験者が骨密度低下を発症する可能性又は被験者の骨密度低下が進行する可能性を予測する。換言すれば、被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測するためのマーカーとして、グリシルグリシン又はシスチンを用いる。
具体的には、(A)工程(1)で測定されたグリシルグリシンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のグリシルグリシンの濃度と比較して低下している場合、又は、(B)工程(1)で測定されたシスチンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のシスチンの濃度と比較して低下している場合に、被験者が骨密度低下を発症する可能性又は被験者の骨密度低下が進行する可能性が高いと予測する。
工程(2)において、工程(1)で測定されたグリシルグリシン又はシスチンの濃度値と対比される濃度値(以下、「基準値」ともいう)は、工程(1)の血液サンプルが由来する被験者と同一の者に由来し、かつ、工程(1)の実施前に予め取得された血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度値である。
基準値を測定する血液サンプルの取得時期は、工程(1)の実施前であればよく、閉経前であってもよく、閉経後であってもよい。
基準値は、前述の工程(1)と同様の測定方法、検出方法や定量方法を用いて取得することができる。
工程(2)では、工程(1)で測定されたグリシルグリシン又はシスチンの濃度が、対応する基準値と比較して低下している場合に、骨密度低下を発症する可能性又は骨密度低下が進行する可能性が高いと予測する。
他のマーカーとの併用
本発明の予測方法では、必須のマーカーであるグリシルグリシン又はシスチンと、任意の他の骨代謝マーカーとを併用して予測精度をより高めてもよい。
骨代謝マーカーとしては、公知のマーカー(例えば、血中TRACP5bや、尿中NTXや、尿中デオキシピリジノリンや、ハイドロキシプロリン等)が挙げられる。
本発明にしたがい得られた予測結果は、例えば、下記の様に利用することができる。
本発明を、骨密度低下の発症が疑われていない者(例えば、閉経後に通常の健康診断を受ける者)に対して実施した場合、本発明にしたがって得られた予測結果を用いて、骨密度低下に対する予防的治療(例えば、予防薬の投与)を開始することができる。また、予防的治療に先立ち、得られた予測結果を用いて、骨密度低下の発症に関する経過観察を行ってもよい。したがって、被験者に対する侵襲性が低い血液サンプルを用い、かつ、簡便な手段で実施できる本発明を用いることで、従来は行われていなかった骨密度低下発症リスクの検査を通常の健康診断における検査項目とすることができる。
本発明を、公知の検査手段(骨密度測定装置による測定等)により骨密度低下の発症又は進行が疑われている被験者に対して実施した場合、本発明にしたがって得られた予測結果を用いて、骨密度低下の早期治療(例えば、治療薬の投与)を開始することができる。
更に本発明は、上述の骨密度低下の発症又は進行を予測する方法を実施するためのキットに関する。具体的には、本発明のキットは、被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とするキットである。
血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定する試薬としては、血液中のグリシルグリシン又はシスチンを検出し、定量するために当該技術分野で一般的に用いられているものを特に制限なく用いることができる。具体例としては、逆相HPLC法に用いられる試薬(例えば、リン酸二水素カリウム、メタノール、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、トリフルオロ酢酸)や、LC-FTMS法に用いられる試薬(例えば、ヨード酢酸、アセトリトリル、ギ酸)等が挙げられる。
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
500名を超えるヒト女性被験者の血液サンプル中の代謝物質を網羅的に解析(メタボローム解析)し、その中から骨密度との相関性が高いグリシルグリシン及びシスチンを見いだした。
(1)被験者
被験者は、文書による同意を得た525名又は526名の女性(39〜64歳)の健康診断受診者であった。被験者を下記の基準で分類した。
分類1:骨密度に基づく分類
エストラジオール(E2)レベルが低下した被験者に着目するため、525名から、血清中のE2濃度が20pg/ml以上の者(256名)を除外した。残りの269名から、非閉経の者(164名)、何らかの投薬を受けている者(50名)、BMI(body mass index)が18.5未満あるいは30を超える者(8名)を除いた47名を対象とした。
骨密度は、AOS-100システム(アロカ社製)を用いて測定した。
骨密度による分類はTスコアに基づいて行った。Tスコアが−1.0SD以上の者(42名)を骨密度正常群(normal BMD)に分類し、Tスコアが−1.0SD未満の者(5名)を低骨密度群(low BMD)に分類した。
分類2:骨密度と血清中のE2濃度とに基づく分類
526名から、何らかの投薬を受けている者を除いた109名を対象とした。
骨密度の測定方法及び分類基準は分類1と同じであった。
血清中のE2濃度は、CLIA法により行った。
血清E2濃度が20pg/ml以上であり、かつ、骨密度のTスコアが−1.0SD以上の者(31名)を、正常E2(E2 normal)かつ骨密度正常(BMD normal)群に分類した。
血清E2濃度が20pg/ml未満であり、かつ、骨密度のTスコアが−1.0SD以上の者(45名)を、低E2(E2 low)かつ骨密度正常(BMD normal)群に分類した。
血清E2濃度が20pg/ml未満であり、かつ、骨密度のTスコアが−1.0SD未満の者(33名)を、低E2(E2 low)かつ低骨密度群(BMD low)群に分類した。
尚、低E2(E2 low)群は、閉経後の被験者に対応する群である。
(2)血液サンプルの調製
被験者の凍結血清サンプルを解凍して調製した40μLのアリコートを、内部標準(各20μmol/Lのメチオニンスルホン及びD−カンファー−10−スルホン酸)を含む360μLのメタノール中に置いた。溶液を十分に混合し、400μLクロロホルム及び160μL Milli-Q水と共に振とうし、続いて4℃下、10,000×gで3分間遠心分離した。水層を5kDaカットオフフィルター(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ社製)を用いて濾過してタンパク質を除去した。濾液を、遠心濃縮機を用いて乾燥した後、基準化合物(各20μmol/Lの3−アミノピロリドン及びトリメシン酸)を含むMilli-Q水50μL中で再構成して、後の分析に付した。
(3)血液サンプルの分析
CE-TOFMSを用いて、血液サンプルに含まれる代謝物質を網羅的に解析(メタボローム解析)した。
使用したCE-TOFMSは、Agilent 1600 キャピラリー電気泳動システム(Agilent technologies, Waldbronn, Germany)、Agilent 6220 TOF LC/MS システム(Agilent technologies, Santa Clara, CA)、Agilent 1200シリーズ アイソクラチックHPLCポンプ、G1603A Agilent CE-MS アダプターキット及びG1607A Agilent CE-エレクトロスプレーイオン化(ESI)-MS 噴霧器(sprayer)キットであった。アニオン性代謝産物の分析のために、ESI噴霧器を、ステンレス鋼性ニードルではなく白金で置換したが、他の噴霧器コンポーネントは変更しなかった。CE-MSシステムの制御及びデータ取得はAgilent MassHunterソフトウエアを用いて行った。
カチオン分析について、電解質として1mol/Lのギ酸を充填した溶融石英キャピラリー(内径50μm×100cm)を用いた。新しいキャピラリーには電解質を20分間流し、次いで使用前には電解質を流して4分間平衡化した。サンプル溶液を5kPaで3秒間かけて注入し、30kVの正電圧を印加した。キャピラリー及びサンプルトレイの温度は、それぞれ20℃及び4℃に維持した。0.1μmol/Lヘキサキス(2,2−ジフルオロエトキシ)ホスファゼンを含むメタノール/水(50%v/v)をシース液として10μL/分で送達した。ESI−TOFMSを陽イオンモードで動作させ、キャピラリー電圧を4kVに設定した。加熱窒素ガス(ヒーター温度:300℃)の流量は10psigに維持した。TOFMSにおいて、フラグメンター電圧、スキマー電圧及びOct RF電圧はそれぞれ75V、50V及び125Vであった。各取得スペクトルの自動再較正を、標準試料質量([プロトン化メタノール二量体 (2CH3OH+H) の13C 同位体イオン]+、m/z 66.06306及び[ヘキサキス(2,2−ジフルオロエトキシ)ホスファゼン+ H]+、m/z 622.02896)を用いて行った。正確な質量データを、50〜1000m/z範囲にわたって1.5サイクル/秒のレートで取得した。
アニオン分析について、電解質として50mmol/Lの酢酸アンモニウム(pH8.5)を充填したCOSMO(+)キャピラリー(内径50μm×105cm、ナカライテスク株式会社)を使用した。初回使用前に、新しいキャピラリーに、電解質を連続的に流した(50mmol/L酢酸(pH3.4)による10分間の洗浄を2回)。各実行の前に、キャピラリーに50mmol/L酢酸(pH3.4)を2分間流し、次いで電解質を5分間流すことにより平衡化した。サンプルを5kPaで30秒間かけて注入し、30kVの負電圧を印加した。キャピラリー及びサンプルトレイの温度は、それぞれ20℃及び4℃に維持した。0.1μmol/Lヘキサキス(2,2−ジフルオロエトキシ)ホスファゼンを含むメタノール/水(50%v/v)に含まれる酢酸アンモニウム(5mmol/L)をシース液として10μL/分で送達した。ESI−TOFMSを陰イオンモードで動作させ、キャピラリー電圧を3.5kVに設定した。加熱窒素ガス(ヒーター温度:300℃)の流量は10psigに維持した。TOFMSにおいて、フラグメンター電圧、スキマー電圧及びOct RF電圧はそれぞれ100V、50V及び200Vであった。各取得スペクトルの自動再較正を、標準試料質量([脱プロトン化酢酸二量体 (2CH3COOH-H) の13C 同位体イオン] -、m/z 120.03841及び[ヘキサキス(2,2−ジフルオロエトキシ)ホスファゼン+ 脱プロトン化酢酸(CH3COOH-H)]-、m/z 680.03554)を用いて行った。正確な質量データを、50〜1000m/z範囲にわたって1.5サイクル/秒のレートで取得した。
(4)データ分析
生データを、慶応義塾大学先端生命研究所開発のメタボローム解析ソフトウエア(MasterHands (Metabolome Analysis and Screening Tool for Easy and Rapid HANDling of Sample data))により処理した。分析は、典型的な処理工程に従い、全ての可能性のあるピークを検出し、ベースラインを差し引き、冗長な特徴のピーク(例えば、同位体や付加物やフラグメントのピーク)、塩及び中性ピークや、ノイズピーク(例えば、スパイクピーク)を除外して、アラインされたデータマトリックスを生成した。m/z値及び対応の標準化合物の正規化移動時間をマッチングすることにより、ピークを同定した。
統計学的分析は、unpaired two-tailed Student's t-testを使用して行った(*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001、NS:有意差なし)。
(5)結果及び検討
網羅的に検出された代謝産物のうち、骨密度との高い相関性がみられたグリシルグリシン及びシスチンを詳細に検討した。ポジティブコントロールとして、骨密度の低下に伴って尿中濃度が上昇することが知られている骨代謝マーカーであるハイドロキシプロリン(Hydroxyproline)を用いた。
分類1について、各群の血清サンプルにおけるグリシルグリシン濃度及びシスチン濃度と、ハイドロキシプロリンの血中濃度を表1に示す。
表1
Figure 2018044877
表1の結果を図1に図示する。
表1(図1)は、E2レベルが低下した被験者群(閉経後の被験者に対応)において、低骨密度群の血清グリシルグリシン濃度が、骨密度正常群の血清グリシルグリシン濃度に対して有意差(p<0.05)があることを示している。
更に表1(図1)は、E2レベルが低下した被験者群(閉経後の被験者に対応)において、低骨密度群の血清シスチン濃度が、骨密度正常群の血清シスチン濃度に対して有意差(p<0.05)があることを示している。
これらの結果より、(1)グリシルグリシン又はシスチンの血中濃度に基づいて骨密度低下を発症した者(閉経後)と健常者(閉経後)とを識別することができること、及び、(2)閉経後の被験者のグリシルグリシン又はシスチンの血中濃度の経時的な低下を指標として、前記被験者が骨密度低下を発症する可能性(又は骨密度低下が進行する可能性)を予測できることが理解される。
分類2について、各群の血清サンプルにおけるグリシルグリシン濃度及びシスチン濃度と、ハイドロキシプロリンの尿中濃度を表2に示す。
表2
Figure 2018044877
表2の結果を図2に図示する。
表2(図2)は、下記(1)〜(6)を示している。

(1)血清グリシルグリシン濃度について、「正常E2(E2 normal)かつ骨密度正常(BMD normal)」群と「低E2(E2 low)かつ低骨密度(BMD low)」群との間に有意差(p<0.05)があること。

(2)血清グリシルグリシン濃度について、「低E2(E2 low)かつ骨密度正常(BMD normal)」群と「低E2(E2 low)かつ低骨密度(BMD low)」群との間に有意差(p<0.05)があること。

(3)血清グリシルグリシン濃度について、「正常E2(E2 normal)かつ骨密度正常(BMD normal)」群と「低E2(E2 low)かつ骨密度正常(BMD normal)」群との間には有意差がないこと。

(4)血清シスチン濃度について、「正常E2(E2 normal)かつ骨密度正常(BMD normal)」群と「低E2(E2 low)かつ低骨密度(BMD low)」群との間に有意差(p<0.001)があること。

(5)血清シスチン濃度について、「低E2(E2 low)かつ骨密度正常(BMD normal)」群と「低E2(E2 low)かつ低骨密度(BMD low)」群との間に有意差(p<0.001)があること。

(6)血清シスチン濃度について、「正常E2(E2 normal)かつ骨密度正常(BMD normal)」群と「低E2(E2 low)かつ骨密度正常(BMD normal)」群との間には有意差がないこと。

まとめると、表2(図2)は、骨密度正常群のE2濃度の高低(閉経の有無)に関係なく、低骨密度群ではグリシルグリシン及びシスチンの血清濃度の有意な低下が起きたことを示している。
これらの結果より、(1)グリシルグリシン又はシスチンの血中濃度に基づいて骨密度低下を発症した者と健常者(閉経の有無を問わず)とを識別することができること、及び、(2)被験者のグリシルグリシン又はシスチンの血中濃度の経時的な低下を指標として、前記被験者が骨密度低下を発症する可能性(又は骨密度低下が進行する可能性)を予測できることが理解される。
本発明は、被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測することができる。したがって、本発明は、骨密度低下、ひいては骨粗鬆症の診断及び治療に利用することができる。

Claims (10)

  1. 被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測する方法であって、
    (1)被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定する工程、及び、
    (2)工程(1)で測定されたグリシルグリシンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のグリシルグリシンの濃度と比較して低下している場合、又は、
    工程(1)で測定されたシスチンの濃度が、工程(1)の実施前に予め取得した前記被験者に由来する血液サンプル中のシスチンの濃度と比較して低下している場合、
    骨密度低下を発症する可能性又は骨密度低下が進行する可能性が高いと予測する工程
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 工程(1)の実施前に予め取得した血液サンプルが、閉経前の被験者に由来する血液サンプルである、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(1)の実施前に予め取得した血液サンプルが、閉経後の被験者に由来する血液サンプルである、請求項1に記載の方法。
  4. 被験者がヒトの女性である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 被験者が閉経後の女性である、請求項4に記載の方法。
  6. 工程(1)の血液サンプルが、20pg/ml未満の血清中エストラジオール濃度を有する被験者に由来する血液サンプルである、請求項4〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 血液サンプルが血清サンプルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. グリシルグリシン又はシスチンの濃度をHPLC法又はLC-FTMS法で測定する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測するためのマーカーであって、
    グリシルグリシン又はシスチンであることを特徴とする、マーカー。
  10. 被験者における骨密度低下の発症又は進行を予測するためのキットであって、
    被験者由来の血液サンプル中のグリシルグリシン又はシスチンの濃度を測定するための試薬を含むことを特徴とするキット。
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