JP2018044608A - 等速自在継手 - Google Patents
等速自在継手 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2018044608A JP2018044608A JP2016179575A JP2016179575A JP2018044608A JP 2018044608 A JP2018044608 A JP 2018044608A JP 2016179575 A JP2016179575 A JP 2016179575A JP 2016179575 A JP2016179575 A JP 2016179575A JP 2018044608 A JP2018044608 A JP 2018044608A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ball
- joint member
- velocity universal
- constant velocity
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Abstract
【課題】高常用使用域の高効率化と高角使用域の打音抑制機能を併せ持つ構造の等速自在継手を提供する。
【解決手段】外側継手部材のトラック溝の曲率中心と前記内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して軸方向反対側に等距離オフセットされており、継手内部にグリースが封入された等速自在継手である。ポケットの常用角使用域における、ポケットとボールとの初期ポケットすきまを0〜+20μmとする。常用角よりも大きい作動角でのポケットの使用域においてコーティングが施されて、ポケットとボールとがしまりばめ嵌合となる。
【選択図】図1
【解決手段】外側継手部材のトラック溝の曲率中心と前記内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して軸方向反対側に等距離オフセットされており、継手内部にグリースが封入された等速自在継手である。ポケットの常用角使用域における、ポケットとボールとの初期ポケットすきまを0〜+20μmとする。常用角よりも大きい作動角でのポケットの使用域においてコーティングが施されて、ポケットとボールとがしまりばめ嵌合となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達装置に用いられる等速自在継手に関する。
等速自在継手には、角度変位だけを許容する固定式等速自在継手と、角度変位だけでなく軸方向変位(プランジング)も可能である摺動式等速自在継手とがある。固定式等速自在継手には、トラック溝の溝底が円弧部のみからなるバーフィールド型等速自在継手(BJ)と、トラック溝の溝底が円弧部と直線部とからなるアンダーカットフリー型等速自在継手(UJ)等がある。また、摺動式等速自在継手には、トリポード型等速自在継手、ダブルオフセット型等速自在継手、クロスグルーブ型等速自在継手などがある。
固定式等速自在継手は、例えば、図8に示すように、内径面51に複数のトラック溝52を形成した外側継手部材53と、外径面54に複数のトラック溝55を形成した内側継手部材56と、外側継手部材53のトラック溝52と内側継手部材56のトラック溝55とで協働して形成されるボールトラックに配された複数のボール57と、ボール57を収容するためのポケット58を有するケージ59とで主要部が構成されている。
また、外側継手部材53は、内径面51にトラック溝52が形成されたマウス部60と、マウス部60の底壁60aから突設されるステム部61とからなる。内側継手部材56の軸心孔には、雌スプライン62が形成され、内側継手部材56の軸心孔にシャフト63の端部が嵌入される。シャフト63の端部には雄スプライン64が形成され、シャフト63の端部が内側継手部材56の軸心孔に嵌入された際に、雌スプライン62と雄スプライン64とが嵌合する。
シャフト63の雄スプライン64の端部には周方向凹溝65が形成され、この周方向凹溝65に止め輪66が装着されている。このように、止め輪66が装着されることにより、シャフト63の抜け止めが構成される。
外側継手部材53の開口部がブーツ70にて塞がれている。ブーツ70は、大径部70aと、小径部70bと、大径部70aと小径部70bとを連結する蛇腹部70cとを備える。そして、ブーツ70の大径部70aが、外側継手部材53の開口部に外嵌された状態でブーツバンド75が締め付けられて、外側継手部材53に固定される。また、ブーツ70の小径部70bは、シャフト63のブーツ装着部76に外嵌された状態でブーツバンド75が締め付けられて、シャフト63に固定される。
ところで、自動車用等速自在継手においては、一般的に、ホイール側に固定式を適用し、エンジン側に摺動式が適用される。そして、自動車用等速自在継手に要求される機能として、固定式側に対しては常用使用域の高効率化と打音抑制があり、摺動式側には低スライド抵抗化がある。ここで、打音とは、ポケットとボールとの間でのガタツキにより生じる音である。なお、車両として要求される機能として、低燃費化、静粛化、及び乗り心地等がある。そして、従来から、打音や振動を抑えるようにした等速自在継手が種々提案されている(特許文献1〜特許文献3)。
特許文献1では、ケージ(保持器)の窓(ポケット)のボール接触面について、径方向に幅寸法を異なる設定とすることによって、打音と振動を抑えるようにしている。すなわち、ポケットの内径側の幅寸法をボール径以下とし、ポケットの中央部から外径側の幅寸法をボール径以上としている。
特許文献2では、ケージ(保持器)の窓(ポケット)の幅寸法をボール以上とし、かつ、ケージの周方向に対してポケットの長手方向中心線を傾斜させたり、ポケットを平面的に見て扁平くの字状に屈曲させたりしている。
特許文献3では、ポケットとボールとの初期ポケットすきまを0〜+20μmとしている。これによって、低角度域ではトルク損失を低減し、高角度域では打音や振動を抑えるようにしている。
特許文献1では、保持器のポケット形状が、内径部と、中央部から外径部とで幅寸法を相違させる必要があり、複雑化している。このため、加工や窓幅(ポケット幅)管理が困難である。また、特許文献2においても、保持器のポケットを傾斜させたり、扁平くの字状としたりする必要がある。このため、この特許文献2における等速自在継手であっても、保持器の窓幅(ポケット幅)の管理が困難である。
ところで、特許文献3に記載のように、保持器のポケット幅をボールの径以上とすることによって、低常用角域でのトルク損失低減効果やアイドリング振動低減効果が得られると思われるが、背反して高作動角領域での打音問題が潜在的にあり、車両との相性(高常用角化等)により対策が必要となる場合がある。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、常用使用域の高効率化と高角使用域の打音抑制機能を併せ持つ構造の等速自在継手を提供する。
本発明の等速自在継手は、内径面に軸方向に延びる複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外径面に軸方向に延びる複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝とこれに対応する前記内側継手部材のトラック溝との間に配された複数のトルク伝達ボールと、このトルク伝達ボールを収容するポケットを有するとともに外側継手部材と内側継手部材との間に介在される保持器を備え、外側継手部材のトラック溝の曲率中心と前記内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して軸方向反対側に等距離オフセットされており、継手内部にグリースが封入された等速自在継手であって、ポケットの常用角使用域における、ポケットとボールとの初期ポケットすきまを0〜+20μmとするとともに、常用角よりも大きい作動角でのポケットの使用域においてコーティングが施されて、ポケットとボールとがしまりばめ嵌合となるものである。
本発明の等速自在継手によれば、常用角使用域における、ポケットとボールとの初期ポケットすきまを0〜+20μmとしているので、常用角使用域において、トルク損失を低減することができる。また、常用角よりも大きい作動角でのポケットの使用域においてコーティングが施されて、ポケットとボールとがしまりばめ嵌合となるので、高角使用域での打音や振動を防止できる。
常用角とは、自動車のドライブシャフトの場合は、水平で平坦な路面上で2名乗車時の自動車において、ステアリングを直進状態にした時にフロントドライブシャフトの固定式等速自在継手に生じる作動角をいう。常用角は、通常、2°〜15°程度の間で車種ごとの設計条件に応じて決定される。自動車はセダン系乗用車とSUV(スポーツ用多目的車)に大別される。セダン系乗用車は、通常、常用角は3°〜6°程度である。SUVは、バンやピックアップトラックを含む車高が高い車で、通常、常用角は6°〜12°程度である。8°以上の常用角を高常用角といい、3°〜6°程度を低常用角という。
前記グリースは、初期ちょう度がちょう度番号1号〜2号であると共に、混和安定度が390〜440であるものが好ましい。ここで、初期ちょう度がちょう度番号1号〜2号(混和ちょう度265〜340)であるとは、JIS K 2220に規定されたちょう度番号1号〜2号であることを意味し、混和安定度が390〜440であるとは、JIS K 2220に規定された混和安定度(105W)が390〜440であることを意味する。補足すると、JIS K 2220に規定された混和安定度(105W)は、グリースを規定の混和器で10万回混和して、25℃に保持した後、さらに60回混和した後のちょう度であるので、継手の運転時のちょう度の指標とすることができる。初期ちょう度がちょう度番号1号〜2号(混和ちょう度265〜340)であると、継手の組立時の作業性が損なわれない。また、混和安定度が390〜440であると、運転時にちょう度が大きくなり(流動性が大きくなり)、すきま部へグリースが供給され、トルク損失を低減させることができる。混和安定度が440より大きいと、グリースがブーツから漏れやすくなり、好ましくない。
前記トルク伝達ボールのピッチ円直径(PCDBALL)とボール直径(DBALL)との比r1(=PCDBALL/DBALL)が3.3≦r1≦5.0の範囲にあり、前記外側継手部材の外径(DOUTER)と前記内側継手部材の嵌合部の歯型のピッチ円直径(PCDSERR)との比r2(=DOUTER/PCDSERR)が2.5≦r2<3.5の範囲内にあるのが好ましい。これにより、6個ボールタイプの固定式等速自在継手と同等以上の強度、負荷容量および耐久性を有し、かつ、外径寸法がコンパクトとなる。
作動角を取った際に、前記ポケットは、ボールにて荷重であるポケット荷重を受け相対向する一対の荷重受け面を有し、ポケットの一方の前記荷重受け面での常用角使用域において、ポケット荷重が作用する範囲を省く部位に20μmの厚さのコーティングを設けるように設定できる。すなわち、ポケット荷重の比較的小さな−側の面(荷重受け面)に20μmの厚さのコーティングを設けることになる。
作動角を取った際に、前記ポケットは、ボールにて荷重であるポケット荷重を受け相対向する一対の荷重受け面を有し、ポケットの一方の前記荷重受け面での常用角使用域において、ポケット荷重が作用する範囲を省く部位に10μmの厚さのコーティングを設けるように設定できる。
作動角を取った際に、前記ポケットは、ボールにて荷重であるポケット荷重を受け相対向する一対の荷重受け面を有し、ポケットの前記両荷重受け面での常用角使用域において、両方の面のポケット荷重が作用する範囲を省く部位、及び保持器の内外径面全面にコーティングを設けるように設定してもよい。
本発明の等速自在継手では、ポケットの常用角使用域では、トルク損失を低減することができて、高効率化を図ることができる。また、常用角よりも大きい高角使用域ではポケットとボールとがしまりばめ嵌合となって、高角使用域での打音や振動を防止できる。このため、高効率化と打音を抑制することが可能な等速自在継手(固定式等速自在継手)を提供できる。
以下本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1〜図3に本発明にかかる等速自在継手を示す。この等速自在継手は、ツェッパ型等速自在継手であり、外側継手部材2、内側継手部材3、ボール4および保持器5を主な構成とする。外側継手部材2の内径面8には8本の曲線状のトラック溝6が円周方向等間隔に、かつ軸方向に沿って形成されている。内側継手部材3の外径面9には、外側継手部材2のトラック溝6と対向する8本の曲線状のトラック溝7が円周方向等間隔に、かつ軸方向に沿って形成されている。外側継手部材2のトラック溝6と内側継手部材3のトラック溝7との間にトルクを伝達する8個のボール4が1個ずつ組み込まれている。外側継手部材2の内径面8と内側継手部材3の外径面9の間に、ボール4を保持する保持器5が配置されている。保持器5の外径面10は外側継手部材2の内径面8と、保持器5の内径面11は内側継手部材3の外径面9とそれぞれ嵌合している。
外側継手部材2の内径面8と内側継手部材3の外径面9の曲率中心は、それぞれ継手の中心Oに形成されている。これに対して、外側継手部材2の曲線状のトラック溝6の曲率中心Aと、内側継手部材3の曲線状のトラック溝7の曲率中心Bは、継手の中心Oに対して軸方向反対側に等距離f1オフセットされている。これにより、継手が作動角をとった場合、外側継手部材2と内側継手部材3の両軸線がなす角度を二等分する平面上にボール4が常に案内され、二軸間で等速に回転が伝達されることになる。
内側継手部材3の内径孔17には、雌スプライン(スプラインはセレーションを含む。以下同じ。)16が形成され、中間シャフト12の端部に形成された雄スプライン19を雌スプライン16に嵌合し、トルク伝達可能に連結されている。内側継手部材3と中間シャフト12は、止め輪18により軸方向に位置決めされている。
外側継手部材2の外周と、内側継手部材3に連結されたシャフト12の外周にブーツ13を装着し、ブーツ13の両端はブーツバンド14、15により締付固定されている。ブーツ13で覆われた継手内部には、潤滑剤としてのグリースGが封入されている。
外側継手部材2のマウス部2aの底部にステム部20が一体に形成され、ステム部20には、駆動車輪が取り付けられるハブ輪(図示省略)と嵌合する雄スプライン21とねじ部22が形成されている。
図3は、図2のボールとトラック溝を拡大した横断面図である。図3に示すように、ボール4は、外側継手部材2のトラック溝6と2点C12、C13でアンギュラコンタクトし、内側継手部材3のトラック溝7と2点C15、C16でアンギュラコンタクトしている。ボール中心O5と各接触点C12、C13、C15、C16を通る直線と、ボール中心O5と継手中心Oを通る直線がなす角度(接触角α)は30°以上に設定することが好ましい。
本実施形態の8個ボールタイプの固定式等速自在継手は、図1および図2を参照して、ボール4のピッチ円直径(PCDBALL)とボール直径(DBALL)との比r1(=PCDBALL/DBALL)は3.3≦r1≦5.0、好ましくは3.5≦r1≦5.0の範囲内に設定されている。ここで、ボール4のピッチ円直径(PCDBALL)は、PCRの2倍の寸法である(PCDBALL=2×PCR)。外側継手部材2のトラック溝6の曲率中心Aとボール4の中心O5を結ぶ線分の長さ、内側継手部材3のトラック溝7の曲率中心Bとボール4の中心O5を結ぶ線分の長さが、それぞれPCRであり、両者は等しい。また、外側継手部材2の外径(DOUTER)と内側継手部材3の内径孔17の雌スプライン16のピッチ円直径(PCDSERR)との比r2(=DOUTER/PCDSERR)は2.5≦r2≦3.5の範囲内の値に設定されている。したがって、従来継手(6個ボールタイプの固定式等速自在継手)と同等以上の強度、負荷容量および耐久性を有し、かつ、外径寸法がコンパクトとなる。
次に、保持器5のポケット5aとボール4間のポケットすきまを図4に基づいて説明する。図4は、保持器5の縦断面図である。保持器5には、周方向に8個のポケット5aが設けられている。ポケット5aの軸方向に対向する面がボール4を保持する面であり、これら両面間の軸方向寸法をHとする。そして、二点鎖線で示したボール4の直径(DBALL)との初期ポケットすきまδは、初期ポケットすきまδ=保持器のポケットの軸方向寸法H−ボールの直径(DBALL)で表される。
この場合、ポケット5aの常用角使用域のみ前記初期すきまを0〜+20μmとなるように設定している。ここで、常用角とは、自動車のドライブシャフトの場合は、水平で平坦な路面上で2名乗車時の自動車において、ステアリングを直進状態にした時にフロントドライブシャフトの固定式等速自在継手に生じる作動角をいう。常用角は、通常、2°〜15°程度の間で車種ごとの設計条件に応じて決定される。自動車はセダン系乗用車とSUV(スポーツ用多目的車)に大別される。セダン系乗用車は、通常、常用角は3°〜6°程度である。SUVは、バンやピックアップトラックを含む車高が高い車で、通常、常用角は6°〜12°程度である。8°以上の常用角を高常用角といい、3°〜6°程度を低常用角という。
ところで、保持器5のポケット5aは、図4に示すように、保持器5の周方向に長い長円形状であり、周方向に沿って延びる一対の長辺25,25と、長辺25、25の長手方向の両端部に連設される一対の円弧辺26,26とからなる。そして、常用角使用域は、図5(b)に示す範囲H1となる。この場合、対向する長辺25,25にそれぞれ常用角使用域H1を有することになる。すなわち、長辺25,25を荷重受け面と呼ぶことができる。
また、図5(b)において、この常用角使用域H1よりも広い範囲H2が高角作動角時のポケット5aの使用領域となる。すなわち、この高角度作動角時のポケット5aの使用領域とは、常用角よりも大きい作動角でのポケット5aの使用域である。例えば、常用角以上で45degくらい程度である。この場合も対向する長辺25,25にそれぞれ高角作動角時の使用領域(高角使用域)H2を有することになる。この高角使用域H2には、10〜16μm程度の厚さのコーティング30(被膜)を施すのが好ましい。
図6はこの等速自在継手が作動角θをとった場合を示し、負荷されるポケット荷重としては、矢印Gのように、継手奥側に向く−方向の場合と、矢印Hのように、継手開口側(継手入口側)に向く+方向の場合とがある。
図7に位相角とポケット荷重比率との関係を示す。このように、−側のポケット荷重が比較的小さく、+側のポケット荷重が比較的大きい。このため、このポケット荷重が比較的小さい−側の荷重受け面(一方の長辺25)の常用角使用域H1を省く部位に、例えば、20μmの厚さのコーティング(被膜30)を施すのが好ましい。
コーティング(被膜30)は、例えば、樹脂、軟質金属、又は固体潤滑材、さらには、これらのいずれかを含む混合物を主成分としたもの等であって、自己潤滑性を有するもので構成できる。樹脂としては、被膜強度が強く、耐摩耗性に優れたもの、例えば、ポリイミド樹脂やフッ素樹脂等を用いることができ、軟質金属として、銅、銀、金、又はインジウム等を用いることができ、固体潤滑材を用いる場合、その固体潤滑材の主成分を、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、又はグラファイト等を用いることができる。
このように、コーティング(被膜30)を両荷重受け面(両長辺25,25)に施す場合、その厚さをそれぞれ10μm程度とするのが好ましい。また、被膜30としては、ポケット5aの長辺25,25に限るものではなく、保持器5の内径面11及び外径面10の全体に施してもよい。このように、内径面11及び外径面10にコーティング(被膜30)を施すことによって、保持器5と外側継手部材2との相対的な摺動、及び保持器5と内側継手部材3との相対的な摺動がなめらかに行うことができる。
ところで、継手が作動角をとった場合、ボール4は、保持器5のポケット5a内で、保持器5の半径方向と周方向に摺動する。図4に示すように、周方向の摺動(図4の矢印E)は、ポケット5aの周方向の中心からボール4が柱部5bに接近するように摺動することである。この周方向の摺動は、作動角をとると、外側継手部材2と内側継手部材3とが斜交することにより、周方向に隣り合うトラック溝6、7とボール4との接点C12、C13およびC15、C16の周方向の間隔が変化し、これによりトラック溝6、7に拘束されたボール4がポケット5aに対して周方向に移動させられることによって生じる。
一方、ボール4のポケット5a内での半径方向の摺動(図4の矢印F)は、トラックオフセット量f1(図1参照)により生じる。その理由は、図6に示すように、作動角θをとると、上死点のボール41は外側継手部材2の奥側に移動し、下死点のボール42は外側継手部材2の開口側に移動する。トラックオフセット量f1(図1参照)が設けられているので、外側継手部材2と内側継手部材3のトラック溝6、7は、それぞれ、溝深さが開口側で深く、奥側に行く程浅く形成されている。そのため、外側継手部材2の奥側に移動したボール41は、半径方向の内側に移動し、外側継手部材2の開口側に移動したボール42は、半径方向の外側に移動する。このように、ボール4と当接するトラック溝6、7の軸方向の位置によりボール4が半径方向に移動する。図6に示すL1は外側継手部材2のトラック溝6とボール4の接触点C12、C13(図3参照)の軌跡であり、L2は内側継手部材3のトラック溝7とボール4の接触点C15、C16(図3参照)の軌跡である。
前述したボール4のポケット5a(図4参照)内での半径方向と周方向の摺動は、いずれも転がり成分を含まないものである。この転がり成分を含まない摺動部は、トラック溝とボール間の転がり成分をもつ接触部位と比較して、グリースが介入しにくく流動性が大きく影響する。
グリースの流動性は、ちょう度が指標とされるが、このちょう度は、実際面では単純に選定できるものではなく、継手組立時のハンドリング性、ブーツから漏れ防止、継手内での流動性(摺動部位へのグリース供給性)等を多面的に勘案する必要があるという問題である。
グリースの性状面では、初期ちょう度は通常用いるレベルであるが、運転時には、ちょう度が大きくなる「組立時のハンドリング性」と「摺動部へのグリース供給性」を両立させるグリースを用いる必要がある。
そこで、この等速自在継手の内部に封入されるグリースGは、初期ちょう度がちょう度番号1号〜2号(混和ちょう度265〜340)であると共に、混和安定度が390〜440である。初期ちょう度がちょう度番号1号〜2号(混和ちょう度265〜340)であるので、継手の組立時の作業性が損なわれない。また、混和安定度が390〜440であるので、運転時にちょう度が大きくなり、すきま部へグリースが供給され、トルク損失を低減させることができる。このように、上記性状のグリースGを採用することにより、「組立時のハンドリング性」と「摺動部へのグリース供給性」を両立させることができる。これにより、低常用角で使用される固定式等速自在継手に対して要求されるトルク損失の低減および耐久性の向上を達成することができる。
グリースGの組成物としては、基油と増ちょう剤と添加剤である。基油としては、パラフィン系鉱物油を含有したもので、前記基油として含まれる潤滑油成分の全質量に対し、70質量%以上とすることが好ましい。コスト面よりパラフィン系鉱物油を主体に配合している。パラフィン系鉱物油は、継手内部の動きによりせん断を受けると急激に流動性がよくなり、トルク損失を低減できる。
増ちょう剤はウレア化合物とすることが好ましい。このウレア化合物としては、例えば、ジウレア化合物、ポリウレア化合物が挙げられる。ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。本願での使用に望ましいジウレア化合物は、次の化学式で表されるものである。
R1NH-CO-HH-C6H4-P-CH2-C6H4-P-NH-CO-NHR2
(式中、R1,R2:炭素数8〜20の脂肪族の炭化水素基。R1とR2は同一でも異なっても良い)
R1NH-CO-HH-C6H4-P-CH2-C6H4-P-NH-CO-NHR2
(式中、R1,R2:炭素数8〜20の脂肪族の炭化水素基。R1とR2は同一でも異なっても良い)
ポリウレア化合物は、例えば、ジイソアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
上記のウレア化合物の中では、耐熱性、介入性に優れるジウレア化合物が増ちょう剤として望ましい。
本発明の等速自在継手によれば、ポケットの常用角使用域では、トルク損失を低減することができて、高効率化を図ることができる。また、常用角よりも大きい高角使用域ではポケットとボールとがしまりばめ嵌合となって、高角使用域での打音や振動を防止できる。このため、高効率化と打音を抑制することが可能な等速自在継手(固定式等速自在継手)を提供できる。
すなわち、本発明の等速自在継手では、ポケット5aの常用角使用域では、トルク損失を低減することができて、高効率化を図ることができる。また、作動角が常用角よりも大きい高角使用域ではしまりばめ(例えば、−40μmまでの締め代)となって、高角使用域での打音や振動を防止できる。このため、高効率化と打音を抑制することが可能な等速自在継手(固定式等速自在継手)を提供できる。
初期ちょう度がちょう度番号1号〜2号(混和ちょう度265〜340)であると、継手の組立時の作業性が損なわれない。また、混和安定度が390〜440であると、運転時にちょう度が大きくなり(流動性が大きくなり)、すきま部へグリースが供給され、トルク損失を低減させることができる。混和安定度が440より大きいと、グリースがブーツから漏れやすくなり、好ましくない。
また、この実施形態では、トルク伝達ボールのピッチ円直径(PCDBALL)とボール直径(DBALL)との比r1(=PCDBALL/DBALL)が3.3≦r1≦5.0の範囲にあり、前記外側継手部材の外径(DOUTER)と前記内側継手部材の嵌合部の歯型のピッチ円直径(PCDSERR)との比r2(=DOUTER/PCDSERR)が2.5≦r2<3.5の範囲内にある。これにより、6個ボールタイプの固定式等速自在継手と同等以上の強度、負荷容量および耐久性を有し、かつ、外径寸法がコンパクトとなる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、コーティング(被膜30)を成形する場合、コーティングの材料によって、その材料に応じた種々のコーティング法を用いることができる。また、コーティングする場合、保持器5のポケット5aの両面(長辺25,25)を周方向に沿って平行にフラット面に仕上げた後、この長辺25,25にコーティングするのが好ましい。これによって、高効率化に必要な非コーティング部の窓幅(ポケット幅)管理が容易にできるメリットがある。なお、等速自在継手として、8個ボールタイプの固定式等速自在継手に限るものではなく、トルク伝達部材としてのボール数の増減は任意である。
H1 常用角使用域
H2 高角使用域
2 外側継手部材
3 内側継手部材
4 ボール
5 保持器
5a ポケット
6、7 トラック溝
8 内径面
9 外径面
30 被膜
H2 高角使用域
2 外側継手部材
3 内側継手部材
4 ボール
5 保持器
5a ポケット
6、7 トラック溝
8 内径面
9 外径面
30 被膜
Claims (7)
- 内径面に軸方向に延びる複数のトラック溝が形成された外側継手部材と、外径面に軸方向に延びる複数のトラック溝が形成された内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝とこれに対応する前記内側継手部材のトラック溝との間に配された複数のトルク伝達ボールと、このトルク伝達ボールを収容するポケットを有するとともに外側継手部材と内側継手部材との間に介在される保持器を備え、外側継手部材のトラック溝の曲率中心と前記内側継手部材のトラック溝の曲率中心が継手中心に対して軸方向反対側に等距離オフセットされており、継手内部にグリースが封入された等速自在継手であって、
ポケットの常用角使用域における、ポケットとボールとの初期ポケットすきまを0〜+20μmとするとともに、常用角よりも大きい作動角でのポケットの使用域においてコーティングが施されて、ポケットとボールとがしまりばめ嵌合となることを特徴とする等速自在継手。 - 前記グリースは、初期ちょう度がちょう度番号1号〜2号であると共に、混和安定度が390〜440であることを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
- 前記常用角使用域は、作動角が2〜15degを取る範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の等速自在継手。
- 前記トルク伝達ボールのピッチ円直径(PCDBALL)とボール直径(DBALL)との比r1(=PCDBALL/DBALL)が3.3≦r1≦5.0の範囲にあり、前記外側継手部材の外径(DOUTER)と前記内側継手部材の嵌合部の歯型のピッチ円直径(PCDSERR)との比r2(=DOUTER/PCDSERR)が2.5≦r2<3.5の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の等速自在継手。
- 作動角を取った際に、前記ポケットは、ボールにて荷重であるポケット荷重を受け相対向する一対の荷重受け面を有し、ポケットの一方の前記荷重受け面での常用角使用域において、ポケット荷重が作用する範囲を省く部位に20μmの厚さのコーティングを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手。
- 作動角を取った際に、前記ポケットは、ボールにて荷重であるポケット荷重を受け相対向する一対の荷重受け面を有し、ポケットの前記両荷重受け面での常用角使用域において、ポケット荷重が作用する範囲を省く部位に10μmの厚さのコーティングを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手。
- 作動角を取った際に、前記ポケットは、ボールにて荷重であるポケット荷重を受け相対向する一対の荷重受け面を有し、ポケットの前記両荷重受け面での常用角使用域において、両方の面のポケット荷重が作用する範囲を省く部位、及び保持器の内外径面全面にコーティングを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016179575A JP2018044608A (ja) | 2016-09-14 | 2016-09-14 | 等速自在継手 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016179575A JP2018044608A (ja) | 2016-09-14 | 2016-09-14 | 等速自在継手 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018044608A true JP2018044608A (ja) | 2018-03-22 |
Family
ID=61693004
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016179575A Pending JP2018044608A (ja) | 2016-09-14 | 2016-09-14 | 等速自在継手 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018044608A (ja) |
-
2016
- 2016-09-14 JP JP2016179575A patent/JP2018044608A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US8057314B2 (en) | Joint assembly, a wheel bearing apparatus, and the assemblies included in an axle module | |
WO2009116295A1 (ja) | 玉軸受用保持器およびこれを備えた玉軸受とその製造方法 | |
EP1840399B1 (en) | Collapsible column | |
WO2011142411A1 (ja) | ボール型等速ジョイント用グリース組成物 | |
WO2006132349A1 (ja) | 一方向クラッチ内蔵型回転伝達装置 | |
WO2005078053A1 (ja) | ステアリング用等速ジョイント用グリース組成物及びステアリング用等速ジョイント | |
US8771086B2 (en) | Fixed-type constant velocity universal joint | |
JP4829523B2 (ja) | 等速ジョイント用グリースおよび等速ジョイント | |
JP2008025641A (ja) | 等速自在継手 | |
CN106104039B (zh) | 固定式等速万向联轴器 | |
JP2008008474A (ja) | 固定式等速自在継手 | |
WO2018150836A1 (ja) | 摺動式等速自在継手 | |
JP2018044608A (ja) | 等速自在継手 | |
JP2006283830A (ja) | 等速自在継手 | |
EP2492531B1 (en) | Stationary constant-velocity universal joint containing a lubricating grease | |
WO2023189122A1 (ja) | 固定式等速自在継手 | |
JP2005180641A (ja) | 等速自在継手および等速自在継手の外輪の製造方法 | |
JP2014025486A (ja) | 動力伝達機構 | |
WO2016152386A1 (ja) | 摺動式等速自在継手 | |
JP2017166579A (ja) | 摺動式等速自在継手 | |
WO2017145844A1 (ja) | 摺動式等速自在継手 | |
JP2017166578A (ja) | 摺動式等速自在継手 | |
JP2006299036A (ja) | 等速ジョイント用グリースおよび等速ジョイント |