JP2018044354A - アーチ状構造物形成方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような構造物は、例えば、屋外で使用する場合には、風雨や日差しを遮断し、内部に格納されている人や物をこれらの刺激から保護する。
このような構造物は、大型のものから小型のものまで、様々に存在するが、例えば、ドーム状やアーチ状の屋根を有した大・中型構造物や、テントのような小型構造物まで様々である。
一方、このようなドーム状やアーチ状の構造物を立設する際には、作業性及び作業の安全性を考慮して、地上においてその骨組みを平面状に組み立てておき、その後、例えば、ジャッキ等を利用してその骨組みを立ち上げて、所定の形状に組み上げる方法が採られている。そして、この立上ったドーム状またはアーチ状の骨組に屋根材を施工することで、完成させる(例えば、特許文献1等参照)。
このアーチドーム型屋根の骨組みは、複数本のつか材と、回転材と、ワイヤーとを具備して構成されている。
つか材は筒状であり、長手方向に並設されて、完成形では、アーチドーム型屋根の屋根面に沿うアーチ状に配されるものである。
また、回転材は、各つか材の間にこれらと直交する方向に軸線を向けた状態に配され、屋根中央側に隣接するつか材の端面下縁部と、屋根外側に隣接するつか材の端面上縁部とにそれぞれヒンジ結合されている。
更に、ワイヤーは、つか材の長手方向及び回転材の径方向に貫通状態に挿通され、張力付与可能となっている。
そして、アーチドーム型屋根の骨組み構造は、ワイヤーを弛緩させた状態で所定位置に配置され、この後、ワイヤーに張力を付与して張架させることによって、つか材及び回転材が屋根面に沿うアーチ状に立ち上げられる。そして、このワイヤーの張力付与状態を固定することで完成する。
なお、アーチドーム型屋根の骨組み構造を立ち上げる際には、クレーンでつか材を吊り上げながら、ワイヤーを引っ張る作業が実行される。
このように、従来の技術では、特許文献1の技術を含め、大規模なアーチを形成する際には、揚重機や外部足場等の建築用重機及び仮設の設置が必要となる。
このため、このような重機を用いることができない場所や、足場を組むことが困難な場所では、大規模なアーチを形成することができないという問題があった。
更に、大規模な足場を構成してアーチ状の構造物を組み立てる際には、作業員による高所作業が必要となるが、作業性の問題から、当該高所作業を少なくしたいという要請があった。
また、高所作業が必要な場合であっても、当該高所作業の作業性が良好となるような構造が望まれる。
以上のように、建築用重機や大規模な足場仮設の必要がなく、大規模なアーチ型の構造物を立設するための技術の提供、高所作業が低減されると共に、高所作業を行う必要がある場合でもその作業性が良好となる技術の提供が求められていた。
また、本発明の他の目的は、建築中の高所作業を減少させると共に、高所作業を実施する場合には、良好な作業性が実現されたアーチ状構造物を形成する方法を提供することにある。
また、このとき、前記膨張工程と同時若しくは前記膨張工程より後の工程として実施される工程であって、前記アーチ基本体と前記膨張構造体の表面との間に作業空間を形成する足掛り形成工程と、前記膨張工程と同時に前記足掛り形成工程が実施される場合には、その次工程として実施され、前記膨張工程の後の工程として前記足掛り形成工程が実施される場合には、両者の間に実施される工程であって、前記アーチ形成部材の少なくとも一端部を前記基準面に固定する固定工程と、前記回動節の回動を禁止するよう固定する回動節固定工程と、を備えるよう構成されていると好適である。
なお、当該発明では、アーチ基本体は、両端共に固定されておらず、アーチ形成部材の両端共に中央部へと引き寄せられる構成でもよいし、一端が固定されており、他端が中央部へと引き寄せられる構成でもよい。
そして、アーチ形成部材が回動節を中心として成す角度(基準面の側に成す角度)は、膨張工程において立ち上がることで、小さくなり(例えば、初期状態で直線状に形成されたアーチ形成部材であれば、180°からこれより小さい角度となる)、最終的に、回動節を頂点として有する多角形外周の一部を描くアーチ形状に変化することとなる。この「多角形外周の一部」の「多角形」とは、回動節の数や配置構成等を変えることで、様々な形状を想定することができるため、特に限定されるものではないが、安定性や強度の点からは、「正多角形」であることが望ましい。また、「外周の一部」とは、どの程度の範囲であってもよいが、安定性の理由から半周以下が望ましく、アーチ状構造物の内部の高さと体積の関係から半周分であることがより望ましい。
このように、本発明では、膨張工程において、膨張構造体を膨張させるだけで、アーチ基本体を立ち上がらせることができる。このため、重力に逆らって、複数の鋼材を持ち上げたり、吊り上げたりする必要がないため、クレーン等の建築用重機は不要である。また、膨張構造体を膨張させるのみで足りるため、アーチ基本体を立ち上げる際に、大規模な足場等を組む必要がない。
また、アーチ基本体を立ち上げる作業においては、高所作業を必要としない。
なお、足掛り形成工程により作業空間を確保できるため好適である。この作業空間は、どのような方法で形成されてもよいが、例えば、下位の請求項に記載したように、膨張体内の気体を抜いて膨張体を収縮させることによりアーチ基本体と膨張体との間に作業空間を形成してもよいし、膨張体の表面に何らかの突起部を形成しておき(膨張体と一体・別体を問わない)この突起部の高さ(突出長)分の高さを有する作業空間を形成するように構成してもよい。この突起部の形状等は問わない。
または、他の具体例としては、前記膨張工程では、前記アーチ形成部材の両端が、前記アーチ形成部材の長手方向中央部方向へと引き込まれ、前記固定工程では、前記アーチ形成部材の両端が前記基準面に固定されるよう構成されていても好適に実施される。
また、前記膨張工程では、外側面に凹凸形状が設けられた前記膨張構造体を膨張させるよう構成されていると、膨張構造体の表面の摩擦係数が向上し、形成された作業空間における作業員の作業性が向上するため好適である。
このように構成されていると、アーチ状構造物をより簡易かつ少ない工数で立設することが可能となる。
このように構成されているため、アーチ状構造物の強度が増すと共に、アーチ基本体を立ち上げる際の安定性が向上する。
また、より具体的には、前記アーチ中間部形成部材は、複数個備えられており、個々の前記アーチ中間部形成部材に備えられた個々の前記回動節は、前記補助部材により連結されており、前記膨張工程では、前記補助部材が、前記回動節と共に移動することにより、前記アーチ開口部形成部材と複数の前記アーチ中間部形成部材とが連動するよう構成されていると好適である。
このように構成されていると、回動節が連動し、アーチ基本体を立ち上げる際の安定性が向上する。
このように構成されていると、従来技術のように、アーチ状構造物の骨組を立ち上げた後に被覆材を配置する必要がなくなり、よって、被覆材を配置するための高所作業が無くなる。
これにより、建築用重機や大規模な足場仮設を必要とせず、簡易にアーチ状構造物を形成することができる。
そして、このように構成されているため、アーチ状構造物の形成場所が限定されず、作業用重機を用いることができないような場所や、足場と組むことが困難な狭小地においても、簡易のアーチ状構造物を形成することができる。
また、建築中の高所作業を減少させることで、作業性が良好となる。
更に、アーチ形状となったアーチ形成部材と、膨張構造体を構成する膨張材の表面との間に間隙を形成することで、この間隙を作業空間として利用することができるため、作業性が良好となる。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
また、本実施形態においては、アーチ状構造物を立設する基準面として、地表面を想定しており、説明のために、基準面を水平面とした。しかしながら、基準面としては、地表面のみならず、コンクリート床等の構造物の一面等、どのような面であってもよいし、斜面等の水平面以外の面であっても、勿論適用可能である。
つまり、良識的にアーチ状構造物が立設されるに足る面であれば、状態・構造等がどのような面であってもよい。
また、図3は、アーチ状構造物の初期状態であるアーチ基本体の骨組を示す説明図、つまり、アーチ状構造物の内部を被覆するパネルが設置されていない状態を示す説明図である。
更に、図4は、アーチ形成部材及び補助部材を示す説明図、つまり、図3に示す骨組を構成する個々のパーツの説明図である。
そして、図5は回動節(初期状態)を示す説明図、図6は係る回動節(回動後)を示す説明図である。
また、図7は膨張工程におけるアーチ形成部材の形態変化を示す模式図であり、回動節の回動に伴うアーチ形成部材の変形を模式的に点と線にて説明するものである。
更に、図8はアーチ形成部材の完成状態を示す説明図、図9はアーチ状構造物形成工程を示す工程図である。そして、図10は膨張構造体のバリエーションを示した説明図であり、図11及び図12は膨張構造体の好適な適用例を示したものである。図11には、当該膨張構造体の全体像を示すため、斜視図として全体を示し、図12には、要部の拡大図を各視点から示している。なお、図13には、図11の改変例を示した。
また、図14はアーチ形成部材の端部に配置された基礎部材を示す説明図である。
本実施形態に係るアーチ状構造物S1(アーチ基本体S2)の構成について、図1乃至図8により説明する。
なお、アーチ状構造物S1を構成するための重要な構成として、膨張構造体S3が使用されるが、まず、アーチ状構造物S1(アーチ基本体S2)の構造を説明し、次いで、膨張構造体S3について説明する。
なお、本実施形態において、アーチ状に形成される前の状態を特に「アーチ基本体S2」と記し、アーチ状に完成した状態を「アーチ状構造物S1」と記す。つまり、アーチ状構造物S1とアーチ基本体S2は、部材としては同一の部材であるが、その形状が異なっているものであり、説明のために必要である場合、彼是区別するためにこれらの文言を使用する。
また、本実施形態において、アーチ状構造物S1のアーチ形状とは、アーチ状構造物S1を開口部方向から見た形状(つまり、図8の形状)を指す。このため、本実施形態において例示するアーチ状構造物S1のアーチ形状とは、正12角形の半外周形状となる。
図3にその骨組1を示した。
本実施形態においては、8個のアーチ形成部材11が使用されており、これらは、等間隔且つ平行に配置されている。
なお、説明のため、外側に配置される2個のアーチ形成部材11を「アーチ開口部形成部材11A」と記し、これら2個のアーチ開口部形成部材11Aの間に配置される6個のアーチ形成部材11を「アーチ中間部形成部材11B」と記す。
なお、アーチ形成部材11のうち、この回動節111を挟んで両側に配置される部分を「アーチ形成部材片11a」と記す。
つまり、アーチ形成部材片11a,11aは、回動節111を介して連結されていると共に、この回動節111を中心として両者が成す角度が変化可能となるように構成されている。
この回動節111は、回動支点部111a、2個の固定片111bを有して構成されている。
固定片111bは、矩形状の鋼板であり、その上端が回動支点部111aに回動可能に取付けられると共に、その外側面(他方の固定片111bと対向する側の面と反対側の面)にはアーチ形成部材片11aの端部が固定されている。
つまり、アーチ形成部材片11a,11aは、この回動支点部111aを支点として回動可能となるように構成されており、この回動支点部111aを中心として、固定片111b,111bの成す角度θ1が可変となるように構成されている。
なお、本実施形態においては、初期状態における角度θ1は、角度θ1=30°となるように構成されている。
なお、この固定片111bには、ボルト孔H1(図示せず)が形成されており、このボルト孔H1は、2個の固定片111bが合わさった際に連通するように構成されている。
そして、このように角度θ1が規定されているため、当然、固定片111b,111bの下端部は離隔しており、よって、外観上、アーチ形成部材11の平面視は、上方辺が複数の回動節111を介して連続していると共に、下方辺は複数の回動節111の下方で途切れており、上方辺と下方辺との間はトラス状に補強されていることとなる(図4(a)参照)。
これは、図7(c)及び図8に示すように、本実施形態においては、アーチ形状を正12角形の半周形状としたためであり、これにより、角度θ2は、正12角形の1個の角度となるよう構成したものである。
もちろん、このアーチ形状は、どのような多角形の形状の一部であってもよいが、安定性から、正多角形が望ましい。また、同様に安定性から、アーチ形状は、半周形状以下の部分周形状が望ましいが、内部の高さや体積を考慮すると半周形状がより望ましい。
本実施形態に係る補助部材12は、図4(b)に示すように、トラス状に補強された鋼製部材であり、アーチ形成部材11に備えられている回動節111を連結する。
なお、図4(b)は、この補助部材12が、回動節111を連結するように、7個配置された状態を図示している。
本実施形態においては、上記のように、8個のアーチ形成部材11が等間隔平行に配置されているが、このとき、個々のアーチ形成部材11に備えられた回動節111(8個)は、アーチ形成部材11の長手方向と直交する方向である奥行方向に沿って一直線上に整列している。
補助部材12は、この一直線上に整列した8個の回動節111を各々連結していくための部材である。換言すれば、一直線上に隣り合った回動節111,111間を連結していくものであり、このため、本実施形態においては、7個の補助部材12が使用されることとなる。
このパネル2としては、本実施形態においては、樹脂製の矩形部材を例示している。
もちろん、パネル2の形状、材質等は、特に限定されず、本発明の趣旨を逸脱せず、空隙を埋めることができる構成であればどのような構成であってもよい。
また、本実施形態においては、被覆材の例として、所定の硬度を有する板状体であるパネル2を示したが、これに限られず、例えば、布材等の硬度の低いものであってもよい。この際には、防水処理等が施されていると好適である。
この骨組1は、長尺状のアーチ形成部材11が複数平行に配置されると共に、複数の補助部材12が、アーチ形成部材11の奥行方向に渡された格子状の部材である。
そして、このアーチ形成部材11は、回動節111が回動することにより変形する(回動節111を中心として所定角度に折ることができる)長尺部材であり、この回動節111は複数個備えらえている。
そして、複数の補助部材12が、奥行き方向に一直線上に整列する回動節111間を連結していくことで、上記のような格子状の骨組1が形成される。そして、この格子状の骨組1の空隙部分を埋めるようにパネル2が配置されることで、アーチ基本体S2が形成される。
このように構成されたアーチ基本体S2は、外力を付加されることにより、複数の回動節111が回動して、アーチ状構造物S1へと変形する。
この変形により、アーチ状構造物S1を形成する方法については、本実施形態の主要構成であるため、後に詳述する。
本実施形態に係る膨張構造体S3は、膨張材3と、表面構造物4と、を有して構成されている。
なお、表面構造物4は、必ずしも必要な構成ではなく、膨張材3のみで構成されていてもよい。
膨張材3は、所謂「風船」であり、シート状部材を袋状に形成し、内部に気体を充填することで膨張する部材である。この内部に充填する基体は、大気のみならず、自動車の排気ガス、ブロワからの送風気等どのような気体であってもよい。
図1には、気体が充填された状態において、アーチ形状の外郭を有する膨張材3(かまぼこ状の膨張材3)を示した。
しかしながら、形状はこれに限られず、アーチ形状を形成することが可能な形状であれば、どのようなものでもよく、また、膨張材3の使用個数も特には限定されず、複数使用されていてもよい。
この「粗面として形成された表面構造物4が設けられた膨張構造体S3」が、特許請求の範囲の「外側面に凹凸形状が設けられた膨張構造体」に相当する。つまり、特許請求の範囲における「凹凸形状が設けられた」とは、膨張構造体S3の外側面自体を加工して凹凸形状を形成することを含み、これは、外側面を粗面に加工する(つまり、微細な凹凸形状を形成する)ことを含む概念である。
そして、本例では、この凹凸形状が表面構造物4となる。
図10(a)は、気体が充填された状態において、かまぼこ状となる膨張材3の例を示した。なお、この例では、足掛りとして、膨張材3の表面に網状体である表面構造物4を配置している。このように構成されていると、膨張材3内の気体を一部放出して作業空間K1を形成した際に、この網状体である表面構造物4が足掛りとなる。
この「網状体である表面構造物4が設けられた膨張構造体S3」が、特許請求の範囲の「凹凸形状が設けられた膨張構造体S3」に相当する。
つまり、特許請求の範囲における「凹凸形状が設けられた」とは、膨張構造体S3の外側面自体を加工して凹凸形状を形成するのみならず、外側面に別部材(本例では、網状体)を配置することを含む概念である。
図10(b)では、円筒形状の膨張材3を組み上げることで、膨張した際に、これら膨張材3の外周がアーチ形状に近似するように構成されている。
また、図10(c)は、1個の円筒形若しくは球形の膨張材3によりアーチ形状を形成する例である。
なお、アーチ状構造物S1の形成方法の詳細は後述するが、図10の全例は、膨張工程と足掛り形成工程が同時に実施されない例(膨張工程→固定工程→足掛り形成工程の順に実施される例)を示す。
また、図10(b)及び図10(c)の表面構造物4に関しては、上記のような構成であれば、どのような構成であってもよい。
次いで、アーチ状構造物S1の形成方法について、図5乃至図10を適宜参照して説明する。
図9に、アーチ状構造物S1を形成するための工程を示した。
配置工程を行う(工程1)。
配置工程では、アーチ基本体S2が準備されており、このアーチ基本体S2は、パネル2が配置された面を上方にして、基準面(本実施形態においては水平面を例示する)の立設位置に平置きされている。
この際、基準面とアーチ基本体S2との間には、膨張構造体S3が介在している。
この工程では、膨張構造体S3を構成する膨張材3を膨張させて、アーチ基本体S2を開口幅方向中央部からせり上げる。
この様子を、図7(b)に示した。
この膨張工程においては、少なくともアーチ形成部材11の長手方向(開口幅方向)中央部と、膨張材3の少なくとも一部と、が接する状態を維持しながら、膨張材3を膨張させる。つまり、膨張工程においては、当該部分同士は少なくとも接する状態を維持する必要があるが、例えば、膨張材3が、図10(a)及び図10(b)に示すような状態の場合には、これ以上の箇所が接しながら、膨張材3を膨張させることも想定される。
この図7により、アーチ形成部材11の変形を模式的に説明する。
図7(a)に示す状態から、アーチ形成部材11の長手方向(開口幅方向)中央部に対し上方への力を加えると、アーチ形成部材11の両端は移動して、中央側へとその位置を変えるが、一直線状の形状を維持することはできず、アーチ形成部材11の長手方向(開口幅方向)中央部が盛り上がるように変形する。このとき、回動節111は回動可能となるように構成されているため、この回動節111を中心として変形することができる。
このため、アーチ形成部材11の長手方向(開口幅方向)中央部に近い側の回動節111から、両端側に近い回動節111へと順にロックされてゆき、アーチ形成部材11の長手方向(開口幅方向)中央部からアーチ形状が順に形作られる。
この工程での固定方法は、どのよう方法であってもよく、公知の方法が使用されていればよい。例えば、立設位置に、雌ネジが切られた締結孔が穿たれたアンカーを埋設しておき、アーチ形成部材11の両端には、当該締結孔と連通する貫通孔が形成されたプレートを溶接しておく。そして、貫通孔と締結孔とが連通するようにプレートを配置し、当該連通孔から締結孔に向かってボルトを締結することにより固定を行うとよい。
そして、上記のように、固定片111b,111bの成す角度θ1=0°となり、固定片111b,111bが当接した状態(ロックした状態)では、アーチ形成部材片11a,11aが成す角度θ2(基準面方向である下方向に成す角度)が150°になる。このように、本実施形態の第2固定工程では、1個の内角である角度θ2=150°の正12角形の半周形状を有するアーチ形状が形成されることとなる。このアーチ形状が完成した状態を、図8に示した。
この工程では、膨張材3から若干の空気を排出して、当該膨張材3を萎ませる。
図10に示すように、このように膨張材3を萎ませると、アーチ形成部材11と膨張材3の外側面との間に作業空間K1を形成することができる。
なお、この膨張工程(工程2)→固定工程(工程3)→足掛り形成工程(工程4)の流れが、特許請求の範囲の「前記膨張工程の後の工程として前記足掛り形成工程が実施される場合には、両者の間に実施される工程であって、前記アーチ形成部材の少なくとも一端部を前記基準面に固定する固定工程」を示す。
上記の通り、固定片111b,111bが当接した状態(ロックした状態)では、ボルト孔H1,H1は連通している。
よって、このボルト孔H1,H1の連通孔にボルト等の締結部材を挿入して締結することで、回動節111が回動することを完全に防止する。
本実施形態においては、回動節111は、40個形成されることとなるため(図3において、アーチ形成部材11と補助部材12とが交差する部分に配置される)、この40個の回動節111を全て固定することとなる。
しかしながら、強度を維持できるのであれば、全てを固定することはなく、選択された箇所の回動節111のみを固定してもよい。
なお、足掛り形成工程にて形成された作業空間K1を、当該回動節固定工程を行うための空間として使用することができる。
また、固定片111b,111bが合わさるだけで、十分に強度が確保できるのであれば、回動節固定工程は必ずしも実施される必要はなく、省略されてもよい。
更に、固定片111b,111bの合わせ面が滑るのを防止するために、当該合わせ面を粗面として摩擦係数を大きくし、固定力を増強させてもよい。
このような場合には、作業空間K1は、目視点検用の経路等の作業用に使用することができる。
つまり、配置工程において、アーチ形成部材11の一端を基準面に固定し、他端をアーチ形成部材11の長手方向(開口幅方向)中央部に引き込む構成としてもよい。
この場合も、アーチ形成部材11の長手方向(開口幅方向)中央部からせり上がるように変形することは同様であるが、一端が固定されているため、固定位置の位置合わせ等の作業が容易になる。この固定方法は、どのような方法であってもよく、上記の固定工程と同様の方法でよいが、以下のように構成されていると好適である。
この基礎部材13は、平板状の基準面固定部13Aと、平板状のアーチ形成部材固定部13Bと、ヒンジ部13Cと、を有して構成されている。
つまり、ヒンジ部13Cを中心として、アーチ形成部材固定部13Bの基準面固定部13Aに対する角度(図11のθ4)が変化できるように構成されている。換言すると、ヒンジ部13Cにより、アーチ部材固定部13Bが、基準面固定部13Aに対して回動できるように構成されている。なお、本実施形態においては、アーチ形状を正12角形の半周形状としたため、これにより、角度θ4は以下のように算出される。
θ4=180°−150°/2=105°
なお、アーチ形状を正12角形の半周形状としたため、図14(b)に示すように、アーチ形成部材11の立ち上がり角度(基準面に対する角度)は、150°/2=75°である。
このように、基準面固定部13Aは、初期状態では、図14(a)に示すように、基準面へと固定されており、アーチ形成部材固定部13Bは、ヒンジ部13Cを中心として、基準面固定部13Aに対して角度θ4=105°を成して立ち上がっている。
そして、アーチ形成部材11が立ち上がるに従い、ヒンジ部13Cを中心として、角度θ4が徐々に大きくなるように、アーチ形成部材固定部13Bが基準面固定部13Aに対して回動する。
そして、アーチ形成部材11が完全に立ち上がった際には、ヒンジ部13Cを中心として、アーチ形成部材固定部13Bが基準面固定部13Aに対して成す角度θ4は約180°(基準面と水平)となる。
なお、この基礎部材13は、アーチ形成部材11の他端にもまた備えられていてもよい。
また、本実施形態においては、基準面固定部13Aをアーチ形成部材11の下方(つまり、アーチ形成部材11によって覆われる位置)に配置したが、これに限られることはなく、例えば、アーチ形成部材11の一端より外側に配置されてもよい。この場合は、θ4は、初期状態では75°に設定されることとなり、アーチ形成部材11が立ち上がるに従い、θ4が徐々に小さくなるようアーチ形成部材固定部13Aが回動することとなる。そして、この際には、アーチ形成部材11が完全に立ち上がった際には、θ4は約0°(つまり、基準面固定部13Aとアーチ形成部材固定部13Bとが重なった状態)となる。
次いで、図11及び図12により、膨張構造体S3の好適な適用例について説明する。
本例に係る膨張構造体S3もまた、膨張材3と、表面構造物4とで構成されている。
本例における膨張材3は、膨張した際に、アーチ状構造物S1の内部形状を縮小した概略形状を有するように構成されている。
つまり、半円柱形状(かまぼこ状)に形成されると共に、湾曲面となる側面がアーチ状構造物S1の内部形状を縮小した概略形状となっており、アーチ基本体S2内に入子のように納まるよう構成されている。つまり、アーチ基本体S2の骨組1と、膨張材3との間には、間隙が形成されるように構成されており、この間隙が作業空間K1となる。
なお、以下、説明のため、この膨張材3の湾曲した側面を「膨張材側面31」と記し、半円形状の底面を「膨張材底面32」と記す。
なお、膨張材底面32,32をわたる方向が、奥行き方向である。
まず、図11及び図12により、膨張材突起部44について説明する。
本例において、膨張材突起部44は、膨張材3と一体的に形成されている。
この膨張材突起部44は、膨張材3の奥行方向に延びる半円柱形状(かまぼこ状)の突縁であり、本実施形態では12個形成されている。
しかしながら、この膨張材突起部44の形状及び形成個数はこれに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内であれば、どのような形状であってもよいし、何個形成されていてもよい。
また、本例においては、膨張材突起部44を膨張材3と一体形成とし、膨張材3が膨張する際に、同時に膨張形成されるよう構成されている。
しかしながら、これに限られることはなく、別部材として膨張材突起部44を形成し、膨張材側面31に固定してもよい。
また、図12に示すように、第1支持部材41は、隣り合う膨張材突起部44,44間に嵌合するように配置されており、第2支持部材42は、第1支持部材41の中央に一端部が固定されている。この第2支持部材42は、第1支持部材41に対して垂直となるように起立している。
そして、この第2支持部材42の他端部には、第3支持部材43が固定されている。詳細には、この第2支持部材42の他端部には、半円周状に湾曲形成された第3支持部材43の内周部が固定される。
本例において、第1支持部材41は、膨張材底面32の半円周と平行となる半円周上に整列するよう、膨張材突起部44,44間を一間隔飛びに、計6個配置されている。そして、これら6個の第1支持部材41から起立する6個の第2支持部材42に、第3支持部材43の内周が固定される。
このようにして、図11に示すような、半円周状の第3支持部材43が、膨張材側面31に取付けられることとなる。
また、形状等に関しても、例えば、第3支持部材43の形状を、部分円周状に形成し、所定の第2支持部材42,42間にのみ、この第3支持部材43を取付けるような構成であってもよい。
また、図11には、説明のため、表面構造物4が2組図示されているが、本例では、奥行方向に沿って等間隔に複数組配置されているものである。しかしながら、形成個数や形成間隔等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、どのように構成されていてもよい。
つまり、逆に言えば、上記のように、膨張工程(工程2)にて、膨張材3を膨張させて、アーチ基本体S2を押し上げる(立ち上げる)際に、第3支持部材43が、アーチ基本体S2の骨組1と圧接して、アーチ基本体S2を押し上げる(立ち上げる)。そして、膨張工程(工程2)が完了した際には、作業空間K1が形成されており、よって、ここでは、膨張工程(工程2)と、足掛り形成工程(工程4)が同時に実行される。
そして、この膨張工程(工程2)と、足掛り形成工程(工程4)と、同時進行した後に、固定工程(工程3)が実行されることとなる。
この本例の一連の流れが、特許請求の範囲の「前記膨張工程と同時に前記足掛り形成工程が実施される場合には、その次工程として実施され」る「固定工程」を示す。
そして、この作業空間K1において、複数の膨張材突起部44が足掛りとなると共に、第2支持部材42は、手摺となる。
また、第3支持部材43も同様に、手摺として機能する。つまり、この第3支持部材43は、膨張工程(工程2)において、アーチ基本体S2を押し上げる際の押圧部材として機能するとともに、作業空間K1においては、手摺としても機能することとなる。
更に、これら第2支持部材42及び第3支持部材43は、安全帯を支持する支持部材としても機能する。
よって、次工程である回動節固定工程(工程5)の作業を容易にすることができる。
図13に、上記の好適な適用例の改変例を示す。
図13の例は、上記の膨張材突起部44を大きく形成したものである。
つまり、作業空間K1に必要な高さ分の高さを有する膨張材突起部44を形成し、膨張工程(工程2)では、この膨張材突起部44の先端部にて、アーチ基本体S2の骨組1を押し上げる(立ち上げる)こととした。
なお、図13では、膨張材突起部44を四角柱状の突縁とした例を図示したが、この形状はこれに限られることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、どのような形状であってもよい。また、膨張材突起部44が膨張材3と一体形成されている例を示したが、上記同様、別部材であってもよい。
本例によれば、複雑な構造をとることなく、簡易な構造で、アーチ基本体S2の骨組1を押し上げる(立ち上げる)と共に、作業空間K1を形成することができる。
この名称は彼是分けたのは、最小単位の骨組1としては、アーチ状構造物S1の2個の開口部を構成するためのアーチ形成部材11が存在していればよく、つまり、必須構成として必要なアーチ形成部材11の名称として「アーチ開口部形成部材11A」を使用し、追加されると好適な構成のアーチ形成部材11の名称として「アーチ中間部形成部材11B」を使用する意図である。
つまり、膨張材3を膨張させるのみで、膨張材3で骨組1を押し上げて、アーチ基本体S2を立ち上がらせることができる。
このため、従来のように、クレーンのような吊り上げ用の重機は不要である。
つまり、図9には図示していないが、配置工程(工程1)の前段階おいて、骨組1にパネル2を配置してアーチ基本体S2を形成する「アーチ基本体形成工程」が行われるものである。
よって、本実施形態においては、パネル2が既に設置されたアーチ基本体S2を変形させてアーチ状構造物S1を形成することとなるため、従来のように、立ち上がった骨組に対してパネル等の被覆材を配置する高所作業が不要となる。
よって、本実施形態では、必要であれば、回動節固定工程(工程5)において、数か所の簡単な高所作業のみで、アーチ状構造物S1が完成することとなる。
しかしながら、上記各例では、足掛り形成工程(工程4)にて、作業空間K1を確保することができる。よって、この回動節固定工程(工程5)においても、作業性が向上し、簡易にアーチ状構造物S1を立設することができる。
S2 アーチ基本体
1 骨組
11 アーチ形成部材
11A アーチ開口部形成部材
11B アーチ中間部形成部材
11a アーチ形成部材片
111 可動節
111a 回動支点部
111b 固定片
H1 ボルト孔
12 補助部材
13 基礎部材
13A 基準面固定部
13B アーチ形成部材固定部
13C ヒンジ部
2 パネル
S3 膨張構造体
3 膨張材
31 膨張材側面
32 膨張材底面
4 表面構造物
41 第1支持部材
42 第2支持部材
43 第3支持部材
44 膨張材突起部
K1 作業空間
Claims (11)
- アーチ形状を形成する素材であると共に、回動可能に構成された回動節を少なくとも1個備えて形成される長尺状のアーチ形成部材を少なくとも2個有して構成された骨組を有するアーチ基本体を変形させることでアーチ状構造物を形成する方法であって、
前記アーチ状構造物を立設する面である基準面と、前記アーチ基本体と、の間に体積が小さい状態の膨張構造体を介在させる配置工程と、
少なくとも前記アーチ形成部材の長手方向中央部と、前記膨張構造体の少なくとも一部と、が接する状態を維持しながら、前記膨張構造体を膨張させる膨張工程と、を備え、
該膨張工程においては、前記回動節が、前記アーチ形成部材が前記回動節を中心として成す角度のうち前記基準面の側に成す角度が小さくなるように回動することで、前記アーチ形成部材が多角形外周の一部を描くアーチ形状に変形することを特徴とするアーチ状構造物形成方法。 - 前記膨張工程と同時若しくは前記膨張工程より後の工程として実施される工程であって、前記アーチ基本体と前記膨張構造体の表面との間に作業空間を形成する足掛り形成工程と、
前記膨張工程と同時に前記足掛り形成工程が実施される場合には、その次工程として実施され、前記膨張工程の後の工程として前記足掛り形成工程が実施される場合には、両者の間に実施される工程であって、前記アーチ形成部材の少なくとも一端部を前記基準面に固定する固定工程と、
前記回動節の回動を禁止するよう固定する回動節固定工程と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記配置工程では、前記アーチ形成部材の一端が前記基準面に固定され、
前記固定工程では、前記アーチ形成部材の他端が前記基準面に固定されることを特徴とする請求項2に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記膨張工程では、前記アーチ形成部材の両端が、前記アーチ形成部材の長手方向中央部方向へと引き込まれ、
前記固定工程では、前記アーチ形成部材の両端が前記基準面に固定されることを特徴とする請求項2に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記足掛り形成工程は、前記固定工程の次工程として実施される工程であり、
前記膨張構造体の内部の気体を減少させることにより、前記アーチ基本体と前記膨張構造体の表面との間に前記作業空間を形成することを特徴とする請求項2乃至請求項4いずれか一項に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記膨張工程では、外側面に凹凸形状が設けられた前記膨張構造体を膨張させることを特徴とする請求項2乃至請求項5いずれか一項に記載のアーチ状構造物形成方法。
- 前記膨張構造体は、内部に気体が充填されることにより膨張する膨張材と、該膨張材の外側面の少なくとも一部に配置される少なくとも1個の突起部と、を有して形成されており、
前記膨張工程においては、前記突起部が、前記膨張材の外側面と前記アーチ形成部材との間に介在しながら、前記アーチ形成部材を変形させると共に、前記突起部の介在によって、前記膨張材の外側面と前記アーチ形成部材との間に形成される空間を作業空間として形成する前記足掛り形成工程が同時に実行されることを特徴とする請求項2乃至請求項4いずれか一項に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記アーチ形成部材は、
前記アーチ状構造物のアーチ形状の開口部を構成する2個の前記アーチ形成部材であるアーチ開口部形成部材と、該アーチ開口部形成部材と同様に形成されると共に2個の前記アーチ形成部材の間に平行となるように配置された少なくとも1個のアーチ中間部形成部材と、を備えて構成されており、
前記膨張工程では、前記アーチ開口部形成部材と前記アーチ中間部形成部材とが連動するよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれか一項に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記アーチ開口部形成部材に備えられる前記回動節と、前記アーチ中間部形成部材に備えられる前記回動節と、は、前記アーチ形成部材の長手方向と垂直な方向に延びるように配置された補助部材により連結されており、
前記膨張工程では、前記補助部材が、前記回動節と共に移動することにより、前記アーチ開口部形成部材と前記アーチ中間部形成部材とが連動するよう構成されていることを特徴とする請求項8に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記アーチ中間部形成部材は、複数個備えられており、個々の前記アーチ中間部形成部材に備えられた個々の前記回動節は、前記補助部材により連結されており、
前記膨張工程では、前記補助部材が、前記回動節と共に移動することにより、前記アーチ開口部形成部材と複数の前記アーチ中間部形成部材とが連動するよう構成されていることを特徴とする請求項9に記載のアーチ状構造物形成方法。 - 前記骨組の空間部の少なくとも一部は、少なくとも1個の被覆材により被覆されており、
前記配置工程では、前記被覆材が配設された状態の前記アーチ基本体と、前記基準面との間に、体積が小さい状態の前記膨張構造体を介在させ、
前記膨張工程では、前記被覆材が配設された状態の前記アーチ基本体に対して、前記膨張構造体を膨張させることを特徴とする請求項1乃至請求項10いずれか一項に記載のアーチ状構造物形成方法。
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