好適には、前記トルクコンバータは、前記エンジンに動力伝達可能に連結されたポンプ翼車と、前記自動変速機に動力伝達可能に連結されたタービン翼車と、前記ポンプ翼車および前記タービン翼車の間を直結可能な多板式のロックアップクラッチとを、備えることにある。このため、前記ロックアップクラッチの多板化による引摺トルクの増加によって前記自動変速機内部の負荷が前記エンジンに伝達され易くなり、前記エンジンの負荷トルクの総和が、前記ロックアップクラッチが単板である時よりも増大する場合であっても、前記自動変速機の前記摩擦係合要素が係合動作を開始してから前記所定の変速段が成立させられるまでの期間は、前記オルタネータの負荷が低減させられるので、好適に前記エンジンの負荷トルクの総和が抑制させられる。
また、好適には、前記オルタネータ制御手段は、前記車両が停止中において前記シフトレバーが前記非走行ポジションから前記走行ポジションへ切換えられて前記所定の変速段が成立して前記タービン翼車の回転変化がなくなると、前記オルタネータの負荷を、前記所定の変速段が成立させられた時点の前記オルタネータの負荷よりも上昇することにある。このため、前記タービン翼車の回転変化がなくなることによって前記自動変速機の負荷が前記所定の変速段が成立させられた時に比べて低減させられるので、前記オルタネータ制御手段によって前記オルタネータの負荷が上昇させられても、エンジンストールの発生が好適に抑制される。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、エンジン12と、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた車両用動力伝達装置16(以下、動力伝達装置16という)とを備えている。動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース18(図2参照)内に配設されたトルクコンバータ20および自動変速機22と、自動変速機22の出力回転部材である変速機出力ギヤ24がリングギヤ26aに連結された差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)26と、差動歯車装置26に連結された一対の車軸28等とを備えている。動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、トルクコンバータ20、自動変速機22、差動歯車装置26、及び車軸28等を順次介して駆動輪14へ伝達される。また、車両10には、運転者によって、例えばパーキング位置(P位置)、リバース位置(R位置)、ニュートラル位置(N位置)、およびドライブ位置(D位置)などの複数のシフト位置へ切り換え操作されるシフトレバー27が備えられている。なお、上記パーキング位置および上記ニュートラル位置は車両10が走行しない非走行ポジションに対応しており、上記リバース位置および上記ドライブ位置は車両10が走行する走行ポジションに対応している。
エンジン12は、車両10の動力源であり、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、車両10には、ベルト29aを介してエンジン12に連結されたオルタネータ29が備えられており、オルタネータ29は、エンジン12によって回転駆動させられることによって発電する。なお、オルタネータ29が発電している間、エンジン12にはオルタネータ29の作動に伴う負荷トルクすなわちオルタネータ負荷トルクTo(Nm)が発生する。
図2は、トルクコンバータ20や自動変速機22の一例を説明する骨子図である。なお、トルクコンバータ20や自動変速機22等は、自動変速機22の入力回転部材である変速機入力軸30の軸心RCに対して略対称的に構成されており、図2ではその軸心RCの下半分が省略されている。
図2および図3に示すように、トルクコンバータ20は、相互に溶接されたフロントカバー34およびリヤカバー35と、リヤカバー35の内側に固定された複数のポンプ羽根20fとを有し、エンジン12のクランク軸12aに動力伝達可能に連結され、軸心RC回りに回転するように配設されたポンプ翼車20pと、リヤカバー35に対向し、自動変速機22の変速機入力軸30に動力伝達可能に連結されたタービン翼車20tとを備えている。トルクコンバータ20は、制御油室20d(図3参照)内に係合圧が供給されることによってポンプ翼車20pとタービン翼車20tとの間を直結可能な多板式のロックアップクラッチ32を備えている。このように、トルクコンバータ20は、エンジン12と自動変速機22との間の動力伝達経路に設けられた、ロックアップクラッチ32付車両用流体式伝動装置として機能している。また、動力伝達装置16には、ポンプ翼車20pに動力伝達可能に連結された機械式のオイルポンプ33が備えられている。オイルポンプ33は、エンジン12によって回転駆動されることにより、自動変速機22を変速制御したり、ロックアップクラッチ32を係合したり、動力伝達装置16の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の油圧を発生する(吐出する)。
ロックアップクラッチ32は、油圧式多板摩擦クラッチ(湿式多板クラッチ)であり、そのロックアップクラッチ32には、図3に示すように、ポンプ翼車20pと一体的に連結されたフロントカバー34に溶接によって固定された第1環状部材36と、第1環状部材36の外周に形成された外周スプライン歯36aに軸心RC回りに相対回転不能且つ軸心RC方向の移動可能に係合された複数枚(本実施例では3枚)の環状の第1摩擦板38と、トルクコンバータ20内に設けられたダンパ装置40を介して変速機入力軸30およびタービン翼車20tに動力伝達可能に連結された第2環状部材42と、第2環状部材42の内周に形成された内周スプライン歯42aに軸心RC回りに相対回転不能且つ軸心RC方向の移動可能に係合され且つ複数の第1摩擦板38との間に配設された複数枚(本実施例では2枚)の環状の第2摩擦板44と、フロントカバー34の内周部34aに固定され変速機入力軸30のフロントカバー34側の端部を軸心RC回りに回転可能に支持するハブ部材46に、軸心RC方向の移動可能に支持され、フロントカバー34に対向する環状の押圧部材(ピストン)48と、ハブ部材46に位置固定で支持され、押圧部材48のフロントカバー34側とは反対側に押圧部材48に対向するように配設された環状の固定部材50と、押圧部材48を軸心RC方向において固定部材50側に付勢するすなわち押圧部材48を軸心RC方向において第1摩擦板38および第2摩擦板44から離間させる方向に付勢するリターンスプリング52と、が備えられている。
このように構成されたトルクコンバータ20では、図3に示すように、例えば、制御油室20dに供給される油圧すなわちロックアップオン圧PLupON(kPa)が比較的大きく(フロント側油室20eの油圧すなわちトルクコンバータイン圧PTCin(kPa)が比較的小さく)なることにより押圧部材48が付勢されて一点鎖線に示すようにフロントカバー34側に移動させられると、押圧部材48によって第1摩擦板38および第2摩擦板44を押圧して第1環状部材36に連結されたポンプ翼車20pと第2環状部材42に連結されたタービン翼車20tとが一体回転する。また、制御油室20dのロックアップオン圧PLupON(kPa)が比較的小さく(フロント側油室20eのトルクコンバータイン圧PTCin(kPa)が比較的大きく)なることにより押圧部材48が実線に示すように第1摩擦板38から離間した位置に移動させられると、第1環状部材36に連結されたポンプ翼車20pと第2環状部材42に連結されたタービン翼車20tとが相対回転する。なお、上記制御油室20dは押圧部材48と固定部材50との間に形成された油密な空間であり、上記フロント側油室20eは押圧部材48とフロントカバー34との間に形成された空間である。
自動変速機22は、エンジン12から駆動輪14までの動力伝達経路の一部を構成し、複数の油圧式摩擦係合要素(第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2)およびワンウェイクラッチFが選択的に係合又は解放されることによりギヤ比(変速比)が異なる複数のギヤ段(変速段)が形成される有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式多段変速機である。例えば、車両によく用いられる所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。自動変速機22は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置58と、ラビニヨ型に構成されているシングルピニオン型の第2遊星歯車装置60およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置62とを同軸線上(軸心RC上)に有し、変速機入力軸30の回転を変速して変速機出力ギヤ24から出力する。
第1遊星歯車装置58は、外歯歯車である第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1と同心円上に配置される内歯歯車である第1リングギヤR1と、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1と噛み合う、一対の歯車対からなる第1ピニオンギヤP1と、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1とを有している。
第2遊星歯車装置60は、外歯歯車である第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2と同心円上に配置される内歯歯車である第2リングギヤR2と、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2と噛み合う第2ピニオンギヤP2と、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2とを有している。
第3遊星歯車装置62は、外歯歯車である第3サンギヤS3と、第3サンギヤS3と同心円上に配置される内歯歯車である第3リングギヤR3と、その第3サンギヤS3および第3リングギヤR3と噛み合う、一対の歯車対からなる第3ピニオンギヤP3と、その第3ピニオンギヤP3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3とを有している。なお、自動変速機22では、第2遊星歯車装置60の第2キャリヤCA2と第3遊星歯車装置62の第3キャリヤCA3とが共通の部材で構成され、第2遊星歯車装置60の第2リングギヤR2と第3遊星歯車装置62の第3リングギヤR3とが共通の部材で構成されている。
これら複数の油圧式摩擦係合要素(摩擦係合要素)である第1クラッチC1〜第4クラッチC4、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2の係合と解放とが制御されることで、図4の係合作動表に示すように、運転者のアクセル操作や車速V等に応じて前進8段、後進1段の各ギヤ段が形成される。図4の「1st」-「8th」は前進ギヤ段としての第1変速段−第8速変速段を意味し、「Rev」は後進ギヤ段としての後進変速段を意味しており、各変速段に対応する自動変速機22のギヤ比γ(=変速機入力軸回転速度Nin/変速機出力ギヤ回転速度Nout)は、第1遊星歯車装置58、第2遊星歯車装置60、及び第3遊星歯車装置62の各歯車比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)によって適宜定められる。
図1に戻り、車両10は、例えば自動変速機22の変速時の油圧式摩擦係合要素の係合圧を制御する変速制御と、エンジン12の出力を制御するエンジン出力制御と、オルタネータ29から発電する発電量を制御するオルタネータ発電制御等とを実行する電子制御装置(制御装置)56を備えている。図1は、電子制御装置56の入出力系統を示す図であり、電子制御装置56による制御機能の要部を説明する機能ブロックである。電子制御装置56は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各制御を実行する。
電子制御装置56には、車両10が備える各種センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、シフトポジションセンサ70により検出されるシフトレバー27の操作位置に対応するシフト位置Pshを表す信号、イグニッションスイッチ72により検出されるイグニッションキーのオンオフを表す信号、アクセル操作量センサ74により検出されるアクセルペダルの操作量であるアクセル開度θacc(%)を表す信号、車速センサ76により検出される車速V(km/h)を表す信号、エンジン回転センサ78により検出されるエンジン12のエンジン回転数Ne(rpm)を表す信号、タービン回転センサ80により検出されるトルクコンバータ20のタービン翼車20tのタービン回転数Nt(rpm)を表す信号、スロットル弁開度センサ82により検出されるスロットル弁開度θth(%)を表す信号等、が電子制御装置56に入力される。また、電子制御装置56からは、自動変速機22の変速に関する油圧制御の為の変速指示圧Satと、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Seと、オルタネータ29から発生する発電量すなわちオルタネータ29のオルタネータ負荷トルクToを制御する為の発電電圧指令信号So等とが、それぞれ出力される。なお、上記変速指示圧Satは、油圧式摩擦係合要素の図示しない各油圧アクチュエータへ供給される各油圧を調圧するリニアソレノイドバルブSL1〜SL6を駆動する為の指示信号であり、油圧制御回路54のリニアソレノイドバルブSL1〜SL6へ出力される。
図1に示す電子制御装置56は、制御機能の要部として、エンジン出力制御部84と、変速制御部86と、エンジン始動判定部88と、ガレージシフト操作判定部90と、オルタネータ発電制御部(オルタネータ制御手段)92等とを備えている。
エンジン出力制御部84は、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された(すなわち予め定められた)関係(例えば駆動力マップ)に実際のアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで要求駆動力Fdemを算出する。エンジン出力制御部84は、伝達損失、補機負荷、自動変速機22のギヤ比γ等を考慮して、その要求駆動力Fdemが得られるように、エンジン12の出力制御を行うエンジン出力制御指令信号Seを図示しないスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置などへ出力する。
変速制御部86は、車速Vおよびスロットル弁開度θthを変数として予め定められた関係(変速マップ、変速線図)に実際の車速Vおよびスロットル弁開度θthを適用することで変速判断を行い、例えば図4に示す係合作動表に従ってその判断した所定の前進ギヤ段を達成させるために自動変速機22の変速に関与する油圧式摩擦係合要素を、変速制御中たとえばイナーシャ相中のエンジン回転数Neの変化率が予め設定された目標エンジン回転数変化率となるように係合および/または解放する。
エンジン始動判定部88は、エンジン12が始動されたか否かを判定する。例えば、エンジン始動判定部88では、運転者によってイグニッションキーがオンに切り換えられると、エンジン12が始動したと判定する。
ガレージシフト操作判定部90は、車速Vが車両10の略停止を判定するための車速判定値以下且つアクセル開度θaccが零%であってエンジン12がアイドル回転中であるときに、シフトレバー27のシフト位置Pshが非走行ポジションから走行ポジションに切り換えられる操作、所謂ガレージシフト操作が、行われたか否かを判定する。例えば、ガレージシフト操作判定部90では、シフトレバー27のシフト位置Pshが例えばニュートラル位置(N位置)からドライブ位置(D位置)へ切り換えられると、ガレージシフト操作が行われたと判定する。
オルタネータ発電制御部92は、エンジン始動判定部88でエンジン12が始動したと判定すると、例えばエンジン回転数Neが不安定なエンジン始動中にエンジン12に負荷をかけないために上記エンジン12の始動の判定から所定時間taが経過するまで間オルタネータ29のオルタネータ負荷トルクTo(発電量)を略零に維持し、所定時間taが経過するとオルタネータ負荷トルクToが所定値To1となるようにオルタネータ負荷トルクToを上昇させるオルタネータ発電制御を実行(図6参照)する。なお、上記所定値To1は、エンジン12がアイドル回転数Neidl(rpm)で駆動中において、トランスミッション負荷トルクTt(Nm)が零である場合に、オルタネータ29のオルタネータ負荷トルクTo(Nm)によってエンジン回転数Neを低下させない程度の大きさである。
エンジン出力制御部84は、エンジン12の始動後には、エンジン回転数Ne(rpm)が予め定められたアイドル回転数Neidl(rpm)を維持するようにエンジン12の出力を制御する。
変速制御部86は、自動変速機22のニュートラル状態でエンジン始動判定部88でエンジン12が始動したと判定し、且つ、ガレージシフト操作判定部90でガレージシフト操作が行われたと判定すると、所定の前進ギヤ段例えば第1変速段(1st)を成立するために自動変速機22の変速に関与する油圧式摩擦係合要素すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2を、変速制御中たとえばイナーシャ相中のエンジン回転数Ne(rpm)がアイドル回転数Neidl(rpm)となるように完全係合する。
変速制御部86には、クラッチ係合判定部86aと、係合過渡(あいまい)領域判定部86bとが設けられている。クラッチ係合判定部86aは、エンジン始動判定部88でエンジン12が始動したと判定し、且つ、ガレージシフト操作判定部90でガレージシフト操作が行われたと判定すると、所定の前進ギヤ段例えば第1変速段(1st)が成立したか否か、すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2が完全係合したか否かを判定する。例えば、クラッチ係合判定部86aでは、エンジン始動判定部88でエンジン12が始動したと判定され、且つ、ガレージシフト操作判定部90でガレージシフト操作が行われたと判定されて、タービン回転数Ntが略零(rpm)になると、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が完全係合したと判定する。
係合過渡領域判定部86bは、エンジン始動判定部88でエンジン12が始動したと判定し、且つ、ガレージシフト操作判定部90でガレージシフト操作が行われたと判定すると、ガレージシフト操作によって所定の前進ギヤ段例えば第1変速段(1st)が成立するために関与する油圧式摩擦係合要素、すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態を判定する。そして、係合過渡領域判定部86bでは、例えば第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が判定されると、その係合過渡状態を3つの領域判定フラグF0、F1、F2のいずれか1つで示すようになっている。なお、上記領域判定フラグF0は、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合動作を開始していない、すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2が解放されている状態を示す。また、上記領域判定フラグF1は、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合動作を開始してから前記第1変速段(1st)が成立するまでの状態を示す。また、上記領域判定フラグF2は、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が完全係合して前記第1変速段(1st)が成立した状態を示す。
例えば、図6に示すように、係合過渡領域判定部86bでは、エンジン始動判定部88でエンジン12が始動したと判定されてから、ガレージシフト操作判定部90でガレージシフト操作が行われたと判定されてから所定時間tbが経過するまで、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF0とされる。なお、上記所定時間tbは、ガレージシフト操作が行われて例えば第1クラッチC1および第2ブレーキB2が実際に係合動作を開始するまでの応答遅れ時間を示す。また、係合過渡領域判定部86bでは、ガレージシフト操作判定部90でガレージシフト操作が行われたと判定されてから所定時間tbが経過してから、クラッチ係合判定部86aで第1クラッチC1および第2ブレーキB2が完全係合したと判定されるまで、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF1とされる。また、係合過渡領域判定部86bでは、クラッチ係合判定部86aで第1クラッチC1および第2ブレーキB2が完全係合したと判定されると、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF2とされる。
オルタネータ発電制御部92は、エンジン出力制御部84に受け渡された係合過渡領域判定部86bでの領域判定フラグF0、F1、F2に基づいて、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)を制御する。例えば、図6に示すように、オルタネータ発電制御部92では、係合過渡領域判定部86bで第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF0であると示されると、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)が所定値To1となるようにオルタネータ負荷トルクToを制御する。また、オルタネータ発電制御部92では、係合過渡領域判定部86bで第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF1であると示されると、すなわち係合過渡領域判定部86bで第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF0から上記領域判定フラグF1へ切り換わると、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)が所定値To1から零に低減するようにオルタネータ負荷トルクToを制御する。また、オルタネータ発電制御部92では、係合過渡領域判定部86bで第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF2であると示されて所定時間tcが経過すると、すなわち係合過渡領域判定部86bで第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が上記領域判定フラグF1から上記領域判定フラグF2へ切り換わって所定時間tcが経過すると、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)が零から所定値To1に上昇するようにオルタネータ負荷トルクToを制御する。なお、上記所定時間tcは、ガレージシフト操作によって所定の前進ギヤ段例えば第1変速段(1st)が成立してからタービン回転数Nt(rpm)の変化がなくなる(すなわち所定時間当たりのタービン回転数Nt(rpm)の変化が所定値以下となる)までの時間、すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2が完全係合させられて自動変速機22内部の負荷すなわちトランスミッション負荷トルクTt(Nm)が最大値Ttmaxの状態からタービン回転数Nt(rpm)の変化がなくなりトランスミッション負荷トルクTt(Nm)が定常状態すなわち所定値Tt1に低減させられるまでの時間である。
図5は、電子制御装置56において、車両停車中にシフトレバー27を例えば非走行ポジションであるニュートラル位置(N位置)から走行ポジションであるドライブ位置(D位置)へ切り換えるガレージシフト操作が行われたときにおけるオルタネータ発電制御の制御作動の一例を説明するフローチャートである。また、図6は、図5のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートである。
先ず、エンジン始動判定部88の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、エンジン12が始動したか否かが判定される。S1の判定が否定される場合には、再度S1が実行されるが、S1の判定が肯定される場合(図6のt1時点)には、オルタネータ発電制御部92の機能に対応するS2が実行される。S2では、所定時間taが経過するまで間オルタネータ29のオルタネータ負荷トルクTo(発電量)を略零に維持し、所定時間taが経過するとオルタネータ負荷トルクToが所定値To1となるようにオルタネータ負荷トルクToを上昇させるオルタネータ発電制御が実行される。
次に、係合過渡領域判定部86bの機能に対応するS3が実行される。S3では、領域判定フラグがF1であるか否かが、すなわち例えば第1変速段(1st)を成立するための油圧式摩擦係合要素である第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が領域判定フラグF1と示されているか否かが判定される。S3の判定が否定される場合すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が領域判定フラグF0であると示されている場合には、再度S2が実行されるが、S3の判定が肯定される場合すなわちガレージシフト操作から所定時間tbが経過した場合(図6のt2時点)には、オルタネータ発電制御部92の機能に対応するS4が実行される。S4では、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)が所定値To1から零に低減させられる。
次に、係合過渡領域判定部86bの機能に対応するS5が実行される。S5では、領域判定フラグがF2であるか否かが、すなわち第1変速段を成立するための油圧式摩擦係合要素である第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が領域判定フラグF2であると示されているか否かが判定される。S3の判定が否定される場合すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合過渡状態が領域判定フラグF1であると示されている場合には、再度S4が実行されるが、S5の判定が肯定される場合すなわち第1クラッチC1および第2ブレーキB2が完全係合して第1変速段(1st)が成立した場合(図6のt3時点)には、オルタネータ発電制御部92の機能に対応するS6が実行される。S6では、所定時間tcが経過すると、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)が零から所定値To1に上昇させられる。
図6のタイムチャートに示すように、本実施例では、図5のS3で領域判定フラグがF1である期間、すなわちシフトレバー27がニュートラル位置(N位置)からドライブ位置(D位置)へ切り換えられて第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合動作を開始してから第1変速段(1st)が成立させられるまで期間、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)が、ニュートラル位置(N位置)からドライブ位置(D位置)へ切り換えられた時点のオルタネータ負荷トルクToつまり所定値To1(Nm)よりも低減させられる。また、例えば従来では、一点鎖線L1で示すように、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)が、図5のS3で領域判定フラグがF1である期間でも所定値To1に維持される。このため、本実施例では、破線L2で示すようにエンジン12に対する負荷トルクTtotal(Nm)がエンジントルクTe(Nm)より大きくなることがないので、実線L3で示すようにエンジン回転数Neがアイドル回転数Neidlより低くならない。しかしながら、従来では、一点鎖線L4で示すようにエンジン12に対する負荷トルクTtotal(Nm)がエンジントルクTeより大きくなるので、一点鎖線L5に示すようにエンジン回転数Neがアイドル回転数Neidlよりも低くなる。また、本実施例では、トランスミッション負荷トルクTt(Nm)においてタービン回転数Nt(rpm)の変化がなくなりトランスミッション負荷トルクTo(Nm)が最大値Ttmaxから所定値Tt1に低減させられた後に、オルタネータ負荷トルクToが零から所定値To1に上昇させられるので、エンジントルクTeがエンジンに対する負荷トルクTtotalより大きくなることがない。なお、エンジンに対する負荷トルクTtotal(Nm)とは、エンジンフリクショントルクTf(Nm)と、トランスミッション負荷トルクTt(Nm)と、オルタネータ負荷トルクTo(Nm)とを足し合わせたトルクである。
上述のように、本実施例の車両10の電子制御装置56によれば、シフトレバー27がニュートラル位置からドライブ位置への切換操作によって自動変速機22内部の負荷であるトランスミッション負荷トルクTtが急増してエンジン12の負荷トルクの総和が増大する期間、すなわち自動変速機22の第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合動作を開始してから第1変速段が成立させられるまでの期間は、オルタネータ発電制御部92によって、オルタネータ29のオルタネータ負荷トルクToが、シフトレバー27がニュートラル位置からドライブ位置へ切換えられた時点のオルタネータ29のオルタネータ負荷トルクToよりも低減させられるので、エンジン12に対する負荷トルクの総和が増大することが好適に抑制され、エンジンストールの発生が好適に抑制される。
また、本実施例の車両10の電子制御装置56によれば、トルクコンバータ20は、エンジン12に動力伝達可能に連結されたポンプ翼車20pと、自動変速機22に動力伝達可能に連結されたタービン翼車20tと、ポンプ翼車20pおよびタービン翼車20tの間を直結可能な多板式のロックアップクラッチ32とを、備えることにある。このため、ロックアップクラッチ32の多板化による引摺トルクの増加によって自動変速機22内部のトランスミッション負荷トルクTtがエンジン12に伝達され易くなり、エンジン12の負荷トルクの総和が、ロックアップクラッチ32が単板である時よりも増大する場合であっても、自動変速機22の第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合動作を開始してから第1変速段が成立させられるまでの期間は、オルタネータ29のオルタネータ負荷トルクToが低減させられるので、好適にエンジン12の負荷トルクの総和が抑制させられる。
また、本実施例の車両10の電子制御装置56によれば、オルタネータ発電制御部92は、車両10が停止中においてシフトレバー27がニュートラル位置からドライブ位置へ切換えられて第1変速段が成立してタービン回転数Nt(rpm)の変化がなくなると、オルタネータ29のオルタネータ負荷トルクToを、第1変速段が成立させられた時点のオルタネータ29のオルタネータ負荷トルクToよりも上昇することにある。このため、タービン回転数Nt(rpm)の変化がなくなることによって自動変速機22のトランスミッション負荷トルクTtが第1変速段が成立させられた時に比べて低減させられるので、オルタネータ発電制御部92によってオルタネータ29のオルタネータ負荷トルクToが上昇させられても、エンジンストールの発生が好適に抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、オルタネータ発電制御部92では、シフトレバー27がニュートラル位置(N位置)からドライブ位置(D位置)へ切り換えられて所定時間tbが経過すると、オルタネータ負荷トルクToを低減していたが、例えばシフトレバー27がニュートラル位置からリバース位置(R位置)へ切り換えられて所定時間tbが経過した場合、或いはシフトレバー27がパーキング位置(P位置)からドライブ位置(D位置)へ切り換えらえて所定時間tbが経過して場合でも、オルタネータ負荷トルクToを低減しても良い。
また、前述の実施例において、オルタネータ発電制御部92では、ガレージシフト操作によって第1変速段(1st)が成立してタービン回転数Nt(rpm)の変化がなくなると、オルタネータ負荷トルクToを上昇していたが、例えばガレージシフト操作によって第1変速段が成立すると同時に、オルタネータ負荷トルクToを上昇させる指令を出力しても良い。
また、前述の実施例において、オルタネータ発電制御部92では、シフトレバー27がニュートラル位置(N位置)からドライブ位置(D位置)へ切り換えられて所定時間tbが経過すると、オルタネータ負荷トルクToを零に低減していたが、必ずしもオルタネータ負荷トルクToを零に低減する必要はない。すなわち、シフトレバー27がニュートラル位置(N位置)からドライブ位置(D位置)へ切り換えられた時点のオルタネータ負荷トルクToの値すなわち所定値To1より低くエンジンストールが発生しない程度の大きさであれば良い。
また、前述の実施例において、ロックアップクラッチ32は、多板式のロックアップクラッチが使用されていたが、例えば単板式のロックアップクラッチが使用されても良い。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。