JP2018041921A - 非水系リチウム蓄電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明が解決しようとする課題は、電解液の含侵性に優れ、出力特性の高い非水系リチウム蓄電素子を提供することである。【解決手段】負極の活物質層を含む塗工領域と、活物質層を含まない未塗工領域の境界が概直線を成し、且つ、負極の活物質層は少なくとも概直線状の溝を有し、概直線と概直線状の溝がなす角度d、及び概直線状の溝の幅wは、下記式(1)及び(2)の関係を満足する。|d|≦30° (1)0.1mm≦w≦1.0mm (2)【選択図】図1

Description

本発明は、非水系リチウム蓄電素子に関する。
近年、地球環境の保全及び省資源を目指したエネルギーの有効利用の観点から、風力発電の電力平滑化システム又は深夜電力貯蔵システム、太陽光発電技術に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車用の蓄電システム等が注目を集めている。
これらの蓄電システムに用いられる電池の第一の要求事項は、エネルギー密度が高いことである。このような要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)又は燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
現在、高出力蓄電デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池等が開発されている。
電気二重層キャパシタのうち、電極に活性炭を用いたものは、0.5〜1kW/L程度の出力特性を有する。この電気二重層キャパシタは、耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)も高く、上記高出力が要求される分野で最適のデバイスと考えられてきた。しかし、そのエネルギー密度は1〜5Wh/L程度に過ぎない。そのため、更なるエネルギー密度の向上が必要である。
一方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を有し、かつ160Wh/L程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度及び出力をより一層高めるとともに、耐久性(特に、高温における安定性)を高めるための研究が精力的に進められている。
また、リチウムイオン電池においても、高出力化に向けての研究が進められている。例えば、放電深度(蓄電素子の放電容量の何%を放電した状態かを示す値)50%において3kW/Lを超える高出力が得られるリチウムイオン電池が開発されている。しかし、そのエネルギー密度は100Wh/L以下であり、リチウムイオン電池の最大の特徴である高エネルギー密度を敢えて抑制した設計となっている。また、その耐久性(サイクル特性及び高温保存特性)については、電気二重層キャパシタに比べ劣る。そのため、実用的な耐久性をリチウムイオン電池に持たせるためには、放電深度が0〜100%の範囲よりも狭い範囲での使用となる。実際に使用できる容量は更に小さくなるから、リチウムイオン電池の耐久性をより一層向上させるための研究が精力的に進められている。
上記のように高エネルギー密度、高出力特性及び耐久性を兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められているが、上述した既存の蓄電素子には一長一短がある。そのため、これらの技術的要求を充足する新たな蓄電素子が求められている。その有力な候補として、リチウムイオンキャパシタと呼ばれる蓄電素子が注目され、開発が盛んに行われている。
リチウムイオンキャパシタのエネルギーは1/2・C・V2{ここで、Cは静電容量であり、かつVは電圧である。}で表される。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム蓄電素子)の一種であって、正極においては約3V以上で電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって、充放電を行う蓄電素子である。
上述のように、正極・負極の双方において非ファラデー反応による充放電を行う電気二重層キャパシタにおいては、入出力特性に優れる(短時間に大電流を充放電できる)一方で、エネルギー密度が小さい難点がある。これに対して、正極・負極の双方においてファラデー反応による充放電を行う二次電池においては、エネルギー密度に優れる一方で、入出力特性に劣る難点がある。リチウムイオンキャパシタは、正極では非ファラデー反応、負極ではファラデー反応による充放電を行うことによって、優れた入出力特性と高いエネルギー密度との両立を狙う蓄電素子である。
更なる高エネルギー密度を実現するために、例えば、正極・負極の電池ケース内での占有体積を増やして、電池ケース内における電極のスペース以外の空間を減らすことによって、一層の高エネルギー密度化を図ることができる。
また、正極及び負極の構成材料を塗料化した合剤ペーストを集電箔上に塗布し、乾燥して活物質層を形成した後、この活物質層をプレスで加圧して所定の厚みまで圧縮して、活物質の充填密度を高くすることによって、一層の高エネルギー密度化が可能となる。
ところが、活物質の充填密度が高くなると、電池ケース内に注液した比較的粘度の高い非水電解液を、正極と負極の間にセパレータを介して高密度に積層または捲回されて成る電極群の小さな隙間に浸透させることが難しくなるため、所定量の非水電解液を含侵させるまでに長い時間を要するという問題がある。
この問題を解消するために、例えば以下のようなものが提案されている。
特許文献1には、負極活物質層の表面に、非水電解液の浸透方向に、ローラー押圧により電解液案内溝部を形成することによって、負極全体に非水電解液を浸透させ、さらに溝部の幅又は深さを大きくすれば、含浸時間が短縮される方法が提案されている。
特許文献2には、正極活物質層の表面に、ローラー押圧により長手方向に傾斜した複数の溝部を形成することによって、正極全体に非水電解液を浸透させる方法が提案されている。
特開平9−298057号公報 特開2010−186737号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に示される従来技術では、ローラー押圧により溝部を形成しており、その場合、押圧部位における活物質の重量密度が、その他の部位に比べて高くなる。このような重量密度の不均一状態では、押圧部位での電解液が浸透し難くなり、電極表面での電解液の分布が不均一になるという問題がある。
また、特許文献1で示される負極では、その捲回方向に対して垂直に電極溝が形成されており、負極を捲回した場合に負極活物質に破断が生じる問題がある。
本発明は、以上の現状に鑑みて為されたものである。
従って、本発明が解決しようとする課題は、電解液の含侵性に優れ、かつ出力特性の高い非水系リチウム蓄電素子を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた。その結果、負極の活物質層を含む塗工領域と、活物質層を含まない未塗工領域との境界が概直線を成し、負極の活物質層は少なくとも概直線状の溝を有し、且つ概直線と概直線状の溝が成す角度d及び幅wが、特定の関係を満足することにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて為されたものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである:
[1]
正極集電体、及び前記正極集電体の片面又は両面に形成された、正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
負極集電体、及び前記負極集電体の片面又は両面に形成された、負極活物質を含む負極活物質層を有する負極とが、
セパレータを介して交互に積層または捲回された構造を有する非水系リチウム蓄電素子であって、
前記負極において、前記負極活物質層を含む塗工領域と、前記負極活物質層を含まない未塗工領域との境界が概直線を成し、
前記負極活物質層は、少なくとも概直線状の溝を有し、且つ、
前記負極の前記負極活物質層が形成された面と直交する方向から前記負極を観察したときに、前記概直線と前記概直線状の溝が成す角度d、及び前記概直線状の溝の幅wは、下記式(1)及び(2):
|d|≦30° (1)
0.1mm≦w≦1.0mm (2)
で表される関係を満足する、
前記非水系リチウム蓄電素子。
[2]
前記概直線状の溝は、下記式(3):
0.1≦D/T≦0.8 (3)
{式中、Dは、前記概直線状の溝の平均深さ(mm)であり、且つTは、前記負極活物質層の平均厚み(mm)である。}
で表される関係を満足する、[1]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[3]
前記概直線状の溝は、下記式(4):
0.70≦L/l (4)
{式中、lは、前記境界と平行方向の前記負極活物質層の幅(mm)であり、且つLは、前記直線状の溝の平均長さ(mm)である。}
で表される関係を満足する、[1]又は[2]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[4]
前記正極、前記負極及び前記セパレータと、非水系電解液とが前記非水系リチウム蓄電素子の外装体内に収納されており、かつ炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素が、前記非水系電解液中に1〜1000ppmの比率で存在する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
[5]
前記負極は、下記式(5):
/C≧1.1 (5)
{式中、Cは、前記負極活物質層の前記概直線状の溝周囲に含まれる炭酸エステル及び前記炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を足し合わせた平均濃度であり、且つCは、前記負極活物質層の前記概直線状の溝周囲の領域を除く領域に含まれる前記炭酸エステル及び前記炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を足し合わせた平均濃度である。}
で表される関係を満足する、[4]に記載の非水系リチウム蓄電素子。
本発明によれば、生産性に優れ、高容量かつ出力特性の高い非水系リチウム蓄電素子が提供される。
図1は、本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子の平面方向の模式図である。 図2は、本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子の厚み方向の模式図である。 図3は、実施例1で作製された負極の平面模式図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
リチウム蓄電素子は、一般に、正極、負極、セパレータ、電解液及び外装体を主な構成要素として含み、特に、電解液としてはリチウム塩を溶解させた有機溶媒(以下、非水系電解液という)を用いる。
<負極>
本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子用負極は、負極集電体と、該負極集電体の片面上又は両面上に設けられた負極活物質を含む負極活物質層とを有する。
(負極活物質)
本実施形態における負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。中でも、負極活物質としてグラファイト、難黒鉛化性炭素材料(ハードカーボン)または活性炭の表面に炭素質材料を被着させた複合多孔質炭素材料が好適に使用できる。複合多孔質炭素材料のBET比表面積は、100m/g以上350m/g以下であることが好ましい。このBET比表面積は、好ましくは150m/g以上300m/g以下である。BET比表面積が100m/g以上であれば、リチウムイオンのプレドープ量を十分大きくできるため負極活物質層を薄膜化することができる。また、BET比表面積が350m/g以下であれば、負極活物質層の塗工性に優れる。
リチウム金属を対極に用いて、複合多孔質炭素材料を含む負極とともに電気化学セルを形成して、測定温度25℃において、電流値0.5mA/cmで電圧値が0.01Vになるまで定電流充電を行った後、電流値が0.01mA/cmになるまで定電圧充電を行った時の初回の充電容量が、該複合炭素材料の単位質量当たり700mAh/g以上1,600mAh/g以下であることが好ましく、より好ましくは、700mAh/g以上1,500mAh/g以下であり、更に好ましくは、740mAh/g以上1,450mAh/g以下である。初回の充電容量が700mAh/g以上であれば、リチウムイオンのプレドープ量を十分大きくできるため、負極活物質層を薄膜化した場合であっても、高い出力特性を有することができる。また、初回の充電容量が1,600mAh/g以下であれば、複合多孔質炭素材料にリチウムイオンをドープ・脱ドープさせる際の複合多孔質炭素材料の膨潤・収縮が小さくなり、負極の強度が保たれる。
なお、上述した負極活物質は、良好な内部抵抗値を得る観点から下記の条件(1)及び(2)を満たす複合多孔質材料であることが好ましい:
(1)BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)Vm(cc/g)が、0.01≦Vm<0.10である。
(2)MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)Vm(cc/g)が、0.01≦Vm<0.30である。
MP法とは、「t−プロット法」(B.C.Lippens,J.H.de Boer,J.Catalysis,4319(1965))を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail,Brunauer,Bodorらにより考案された方法である(R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid InterfaceSci.,26,45 (1968))。
また、BJH法は、一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法であり、Barrett,Joyner,Halendaらにより提唱されたものである(E.P.Barrett, L.G.Joyner and P.Halenda, J.Am.Chem.Soc., 73, 373(1951))。
(負極活物質層のその他の成分)
負極活物質層には、必要に応じて、負極活物質の他に、導電性フィラー、バインダー等を添加することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、ラテックス、アクリル重合体等を使用することができる。負極活物質層におけるバインダーの使用量は、負極活物質100質量部に対して、3〜25質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。バインダーの使用量が3質量部未満の場合、負極の集電体と負極活物質層に十分な密着性を確保することができず、集電体と活物質層間の界面抵抗が上昇してしまう。一方、バインダーの使用量が25質量部より大きい場合には、負極の活物質表面をバインダーが過剰に覆ってしまい、活物質細孔内のイオンの拡散抵抗が上昇してしまう。
負極活物質層には、負極活物質及びバインダー以外に、必要に応じて、負極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料から成る導電性フィラーを混合することができる。このような導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等が好ましい。負極活物質層における導電性フィラーの混合量は、負極活物質100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。導電性フィラーは、高入力特性の観点から負極活物質と混合することが好ましいが、混合量が20質量部よりも多くなると、負極活物質層における負極活物質の含有量が少なくなるために、体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
(負極の成型)
非水系リチウム蓄電素子用負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電極成型手法を利用して製造することが可能である。例えば、負極活物質及びバインダー、並びに必要に応じて使用される導電性フィラーを溶媒に分散させたスラリーを調製し、該スラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布して乾燥し、必要に応じてプレスする方法;溶媒を使用せずに、上記負極活物質及びバインダー、並びに必要に応じて使用される導電性フィラーを乾式で混合し、負極活物質層をプレス成型した後、導電性接着剤等を用いて負極集電体の片面又は両面に貼り付ける方法等により、非水系リチウム蓄電素子用負極を製造することができる。前者の方法における塗布方法としては、例えば、バーコート法、転写ロール法、Tダイ法、スクリーン印刷法等を挙げることができ、スラリーの物性及び所望の塗布厚に応じた塗布方法を適宜選択できる。後者の方法におけるプレス加工方法としては、特定の温度に設定されたロールによって負極活物質層を加熱しながら加圧する方法、加熱せずに加圧する方法等を挙げることができる。
(金属リチウム箔)
負極にリチウムイオンをプレドープするために、負極上に金属リチウムを貼り付けることができる。この金属リチウム付き負極に、リチウム塩を含む非水系電解液を含浸させると、負極活物質へのリチウムイオンのプレドープが開始し、負極中にリチウムイオンが広く拡散する。金属リチウムの形状としては特に限定されず、箔状、棒状、粉体状のリチウムを使用することができる。
金属リチウムの厚みは15μm以上150μm以下であることが好ましい。厚みが15μm以上の場合、金属リチウム箔のハンドリング性に優れる。厚みが150μm以下の場合、リチウムイオンの拡散に優れ、プレドープが促進される。
金属リチウムについては、厚さ15μm以上150μm以下のリール状の箔を切断し、負極に貼り付けることもできるし、厚さ100μm以上500μm以下のリール状の箔を切断し、圧延した後に負極に貼り付けることもできる。金属リチウムを圧延する方法も特に限定されず、金属リチウムを、樹脂製のロール又は表面をコーティングした金属ロールで圧延することもできるし、切断した金属リチウムを樹脂フィルムに挟み、金属製のロール又は樹脂製のロールで圧延することもできる。表面をコーティングした金属ロールとしては、特に限定されず、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、セラミック、樹脂等を金属ロールにコーティングすることができる。圧延に使用する樹脂フィルムおよび樹脂ロールの材質としては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリアミド、ウレタン等を使用することができる。
金属リチウム箔の表面には、圧延を円滑に進めるために、飽和炭化水素があることが好ましい。具体的には、金属リチウムを圧延する際、金属リチウムの表面に飽和炭化水素を塗布することが好ましい。飽和炭化水素としては、特に限定されないが、金属リチウムと反応せず、かつ非水系リチウム蓄電素子中で他の構成要素と反応しないという観点から、鎖状飽和炭化水素を用いることが好ましく、炭素数が10〜24の鎖状飽和炭化水素を用いることがより好ましい。炭素数が10以上であれば揮発性が低く、圧延後の金属リチウム箔の表面に鎖状飽和炭化水素の油膜が形成されるために安定性が高い。炭素数が24以下であれば、粘度が高いために金属リチウム表面の鎖状飽和炭化水素の油膜が保持されるために、金属リチウムと基材との圧着を抑制することができる。
リチウムイオンは負極活物質層中のリチウムイオン濃度勾配に従い拡散されるため、負極活物質層中に十分な量の電解液が含浸された場合に、リチウムイオンのプレドープが効率良く進行する。負極活物質中にリチウムオンをプレドープさせるために負極上に金属リチウムを貼り付けるが、電解液は金属リチウムを透過することができないため、負極面積に対して金属リチウムの面積が小さい方が電解液を効率良く含浸させることができる。
金属リチウムを負極に供給する手段としては特に限定されないが、例えば金属リチウムを負極に貼り付けた状態で負極と金属リチウムを同時に所定の寸法に切断することで、リチウムを貼り付けた負極を作製することができる。金属リチウムを貼り付けた負極を切断する方法としては、打抜き金型、シャー切断刃、トムソン刃等を挙げることができる。
金属リチウム箔を切断する刃の表面には、炭酸エステル及び/又は炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を塗布することが好ましい。炭酸エステルとしては特に限定されないが、炭酸エチレン、炭酸プロピレンが、電解液との反応性の低さから好適に使用される。炭素数10〜24の飽和炭化水素としては特に限定されないが、炭素数が10以上であれば揮発性が低く、切断後の金属リチウム箔の表面に鎖状飽和炭化水素の油膜が形成されるために安定性が高い。炭素数が24以下であれば、粘度が高いために金属リチウム表面の鎖状飽和炭化水素の油膜が保持されるために、金属リチウムと切断刃との接着を抑制することができる。
<正極>
正極は、正極集電体上に、正極活物質を含む正極活物質層を形成することによって作製される。正極集電体としては、金属箔が主に利用され、特にアルミニウム箔が好適に利用される。正極活物質層は、正極活物質を含有し、必要に応じてバインダー又は導電性フィラーをさらに含有する。正極活物質としては、活性炭などの多孔性の炭素質材料、又はLiCoOなどのリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができる。
活性炭を正極活物質として用いる際には、活性炭の種類及びその原料には特に制限はない。しかし、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径2nm以上50nm以下の細孔に由来するメソ孔量をV(cc/g)、MP法により算出した直径2nm未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV(cc/g)とするとき:
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V≦0.8、及び0.5≦V≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m/g以上3,000m/g以下である活性炭(以下、「活性炭1」ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V≦2.5、及び0.8<V≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が3,000m/g以上4,000m/g以下である活性炭(以下、「活性炭2」ともいう。)が好ましい。
以下、上記(1)の活性炭1及び上記(2)の活性炭2を個別に順次説明していく。
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量Vは、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくするという観点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましく、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
他方、活性炭1のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましく、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
活性炭1については、マイクロ孔量Vに対するメソ孔量Vの比(V/V)が、0.3≦V/V≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという観点から、V/Vが0.3以上であることが好ましく、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという観点から、V/Vは0.9以下であることが好ましい。より好ましいV/Vの範囲は0.4≦V/V≦0.7、更に好ましいV/Vの範囲は0.55≦V/V≦0.7である。
活性炭1の平均細孔径は、出力を最大にするという観点から、17Å以上(1.7nm以上)であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にするという観点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m/g以上3,000m/g以下であることが好ましく、1,500m/g以上2,500m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m/g以上である場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭1の原料として用いられる炭素源としては、特に限定されるものではないが、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料から上記活性炭1を得るための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした(すなわち、これらの不活性ガスを概ね計50質量以上含んだ)他のガスとの混合ガスを使用して、400℃〜700℃(好ましくは450℃〜600℃)程度で30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。これらのうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3時間〜12時間(好ましくは5時間〜11時間、更に好ましくは6時間〜10時間)掛けて800℃〜1,000℃まで昇温して賦活することが好ましい。
更に、上記炭化物の賦活処理に先立ち、予め上記炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、炭素材料を900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
上記炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用でき、かつ上記の特徴を有する活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒径は、1〜20μmであることが好ましい。
活性炭1の平均粒径が1μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。ここで、平均粒径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒径が1μm以上であれば、そのような欠点が生じ難い。一方で、活性炭1の平均粒径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。活性炭1の平均粒径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量Vは、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きいことが好ましく、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、さらに好ましくは1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
他方、活性炭2のマイクロ孔量Vは、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きいことが好ましく、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。上記Vは、より好ましくは、1.0cc/gを超え、かつ2.5cc/g以下であり、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものとなる。活性炭2の具体的なBET比表面積の値としては、3,000m/g以上4,000m/g以下であることが好ましく、3,200m/g以上3,800m/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が3,000m/g以上である場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が4,000m/g以下の場合には、電極の強度を保つためにバインダーを多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
上記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素質材料としては、通常、活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており、特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、又は賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として(すなわち、これらの不活性ガスを概ね計50質量以上含んで)他のガスと混合したガスが用いられる。炭化温度は400℃〜700℃程度で0.5時間〜10時間程度焼成する方法が一般的である。
炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活方があるが、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
このアルカリ金属賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(すなわち、アルカリ金属化合物の質量が、炭化物の質量と同じか、又は多い。)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600℃〜900℃の範囲で、0.5時間〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合することにより、マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないことができる。賦活する際にKOHの量を多めにして炭化物と混合することにより、マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくすることができる。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒径は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上20μm以下であることがより好ましい。
(活性炭の使用態様)
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって上記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料、例えば、前記特定のV及び/若しくはVを有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物等)を含んでもよい。上記で例示された態様において、活性炭1の含有量、活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量が、それぞれ、全正極活物質の50質量%より多いことが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
(正極活物質層のその他の成分)
正極活物質層には、必要に応じて、正極活物質の他に、導電性フィラー、バインダー等を添加することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、ラテックス、アクリル重合体等を使用することができる。正極活物質層におけるバインダーの含有量は、正極活物質100質量部に対して、3〜20質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。バインダーの含有量が3質量部未満である場合、正極の集電体と正極活物質層に十分な密着性を確保することができず、集電体と活物質層間の界面抵抗が上昇してしまう。一方、バインダーの含有量が20質量部より大きい場合には、正極の活物質表面をバインダーが過剰に覆ってしまい、活物質細孔内のイオンの拡散抵抗が上昇してしまう。
本実施形態で使用される正極活物質層には、活性炭及びバインダー以外に、必要に応じて、正極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料から成る導電性フィラーを混合することができる。このような導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等が好ましい。正極活物質層における導電性フィラーの混合量は、正極活物質100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。高入力特性の観点からは導電性フィラーを混合することが好ましいのに対して、その混合量が20質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有量が少なくなるために、体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
(正極の成型)
非水系リチウム蓄電素子用正極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の電極成型手法を利用して製造することが可能である。例えば、正極活物質及びバインダー、並びに必要に応じて使用される導電性フィラーを溶媒に分散させたスラリーを調製し、該スラリーを、正極集電体の片面又は両面に塗布して乾燥し、必要に応じてプレスする方法;溶媒を使用せずに、上記正極活物質及びバインダー、並びに必要に応じて使用される導電性フィラーを乾式で混合し、正極活物質層をプレス成型した後、導電性接着剤等を用いて正極集電体の片面又は両面に貼り付ける方法等により、非水系リチウム蓄電素子用正極を製造することができる。前者の方法における塗布方法としては、例えば、バーコート法、転写ロール法、Tダイ法、スクリーン印刷法等を挙げることができ、スラリーの物性及び所望の塗布厚に応じた塗布方法を適宜選択できる。後者の方法におけるプレス加工方法としては、特定の温度に設定されたロールによって正極活物質層を加熱しながら加圧する方法、加熱せずに加圧する方法等を挙げることができる。
正極活物質層の厚さは、集電体の片面当たり20μm〜200μm程度であることが好ましい。正極活物質層の厚さは、より好ましくは、片面当たり25μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。この厚さが20μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を下げることができるから、十分な出力特性が得られ、かつセル体積を縮小することによってエネルギー密度を高めることができる。
なお、集電体に孔がある場合、正極活物質層の厚さとは、集電体の孔を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。この場合、孔としては、例えば、パンチングメタルの貫通孔部分、エキスパンドメタル、エッチング箔等の開孔部分等が挙げられる。
正極集電体の材料としては、非水系リチウム蓄電素子にした時に、溶出、反応等の劣化が起こらない材料であれば特に制限はない。正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム等が挙げられる。正極集電体の形状は、金属箔又は金属の隙間に電極を形成可能である構造体を用いることができる。上記金属箔としては、貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。正極集電体の厚みは、正極の形状又は強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
正極活物質層の嵩密度は、0.40g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.45g/cm以上1.0g/cm以下である。正極活物質層の嵩密度が0.40g/cm以上であれば、高いエネルギー密度を発現でき、蓄電素子の小型化を達成できる。また、この嵩密度が1.0g/cm以下であれば、正極活物質層内の空隙における電解液の拡散が十分となり、高い出力特性が得られる。
<非水系リチウム蓄電素子>
本実施態様に係る非水系リチウム蓄電素子は、上記のように成型された正極及び負極、並びにセパレータから成る電極積層体と、リチウムイオン含有電解質を含む非水電解液とを外装体に収納して成る。
図1は、本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子の平面方向の模式図であり、図2は、その厚み方向の模式図である。図1で示される蓄電素子は、正極端子(1)と負極端子(2)とが、電極積層体(4)の端部より導出される態様である。図1及び2に示されるように、電極積層体(4)は、正極及び負極を、セパレータ(7)を介して積層又は捲回積層して成る積層体である。本実施態様に係る非水系リチウム蓄電素子は、この電極積層体(4)を、外装体(3)に収納し、更に外装体(3)内に非水系電解液(図示せず)を注入し、注入口を封口することにより、製造されることができる。
本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子は、好ましくはリチウムイオン電池又はリチウムイオンキャパシタとして、より好ましくはリチウムイオンキャパシタとして使用される。
<セパレータ>
本実施形態では、セパレータとして、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。
セパレータの厚みは10μm以上50μm以下が好ましい。10μm以上の厚みにおいて、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、50μm以下の厚みにおいて、非水系リチウム蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
<非水系電解液>
本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子に用いられる非水系電解液は、リチウムイオン含有電解質塩を含有する非水系液体である。非水系液体は、溶媒として有機溶媒を含んでいることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)等に代表される環状炭酸エステル;炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(MEC)等に代表される鎖状炭酸エステル;γ−ブチロラクトン(γBL)等のラクトン類等、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。
非水系液体に溶解するリチウムイオン含有電解質塩としては、例えば、LiFSI、LiBF、LiPF等を用いることができる。電解液における電解質塩濃度は、0.5〜2.0mol/Lの範囲内であることが好ましい。0.5mol/L以上の電解質塩濃度では、アニオンが十分に存在し、非水系リチウム蓄電素子の容量が維持される。一方で、2.0mol/L以下の電解質塩濃度では、塩が電解液中で十分に溶解し、電解液の適切な粘度及び伝導度が保たれる。
<外装体>
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、[外層としての樹脂フィルム/金属箔/内層としての樹脂フィルム]から成る3層構成のものが例示される。外層としての樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内層としての樹脂フィルムは、ラミネートフィルムの内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
<非水系リチウム蓄電素子の製造方法>
以下の工程を含む非水系リチウム蓄電素子の製造方法も本発明の一態様である:
(a)リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料を含む負極に金属リチウムを適用して、金属リチウム付き負極を得る負極準備工程;
(b)単数又は複数の金属リチウム付き負極と単数又は複数の正極とを、単数又は複数のセパレータを介して積層又は捲回して、電極積層体を得る電極積層工程;
(c)電極積層体に正極端子、及び負極端子を溶接して、端子付き電極積層体を得る溶接工程;
(d)端子付き電極積層体を外装体に収納し、外装体内に非水系電解液を注入し、外装体の注入口を封口して、非水系リチウム蓄電素子の前駆体を得る組立工程;及び
(e)前駆体を保管して、リチウムイオンのプレドープを行うプレドープ工程。
工程(a)〜(e)で使用される各材料は、上記で説明された通りである。
工程(a)〜(e)を含む非水系リチウム蓄電素子の製造方法は、電解液の含侵性に優れ、高容量かつ出力特性の高い非水系リチウム蓄電素子を提供するうえで有効である。
(負極活物質の溝)
ここで負極活物質への溝の形成方法について詳説する。
蓄電素子に対して充放電を繰り返した場合、負極活物質の表面ではリチウムによる電解液の還元反応により固体電解質膜(SEI)が形成、破壊、修復を繰り返し、その副反応としてH、O、CO、CO、などの無機ガス成分、CH、C、Cなどの低分子有機ガスを発生させた結果、電極間に介在したガスが蓄電素子の抵抗を上昇させてしまうという問題がある。この問題を解消するために、負極表面上に溝を形成することにより、電極間で発生したガスが溝を伝って電極間外に積極的に放出されることが可能である。以上の観点から、負極活物質に溝を形成することが好ましい。
負極表面に溝を形成する方法としては、特に限定されないが、負極活物質の重量密度が不均一にならず電解液を均一に浸透させるという観点から、活物質の除去により溝を形成することが好ましい。具体的には、例えばサークルカッター等の鋭利な刃の金属表面に炭酸エステル又は炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を塗布して負極に押し当て、活物質を除去して溝を形成し、溝形成時に発生した活物質片については、フェルト、スポンジ等で刃を挟持することにより清掃する方法等が挙げられる。
本実施形態では、溝の形状としては、概直線状であればよく、概直線状に連続に形成してもよいし、ミシン目状に形成してもよい。ミシン目状に形成した場合のその長さは概直線状に形成した溝の長さの和とする。
上記で説明された観点から、負極活物質層上の前記直線状の溝周囲の負極活物質層に含まれる炭酸エステル及び炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を足し合わせた平均濃度をC、負極活物質層上の直線状の溝周囲の領域を除く負極活物質層に含まれる炭酸エステル及び炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を足し合わせた平均濃度をCとしたときに、負極は、下記式(5):
/C≧1.1 (5)
で表される関係を満足することが好ましい。
炭酸エステル及び炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を足し合わせた平均濃度の測定はガスクロマトグラフィー測定などの分析手段を用いて算出することができる。
本明細書では「溝周囲」とは、溝の幅方向の溝両端部から3mmに引かれる二直線を二辺とする矩形状の領域として定義され、隣接する溝周囲と重複する場合は、その領域全てを指す。
負極活物質層における溝の形成は、非水系リチウム蓄電素子の製造方法における工程(a)〜(e)のいずれで行われてもよいが、作業性の観点からは工程(a)中、工程(a)後、又は工程(a)前に行なわれることが好ましい。溝を形成する際の負極の状態としては、負極単体として溝を形成してもよいし、リチウムを負極に貼り付けた状態でリチウムの上から負極を加工することで溝を形成してもよい。負極の形態としてはロール状の負極に対して連続的に溝を形成しても良いし、定寸に切り出した負極に対してバッチ式に溝を形成してもよい。
本実施形態では、負極は負極活物質層を含む塗工領域と、負極活物質層を含まない未塗工領域の境界が概直線を成しており、その概直線と、負極活物質層上に形成した概直線状の溝とが成す角度d、及び概直線状の溝の幅wは、下記式(1)及び(2):
|d|≦30° (1)
0.1mm≦w≦1.0mm (2)
で表される関係を満足する。
概直線と概直線状の溝とが為す角度dが|d|≦30°であれば、捲回方式の場合に負極活物質を破断させず捲回体を作製することが可能となる。好ましくは|d|≦20°であり、より好ましくは|d|≦10°である。
概直線状の溝の幅wが0.1mm以上であれば、形成した溝から電解液を活物質に十分に浸透させることが可能である。幅wは、好ましくは0.3mm以上である。一方で、概直線状の溝の幅wが1.0mm以下であれば、蓄電素子の表面に凹凸が発生しないため外観の影響が小さい。幅wは、好ましくは0.8mm以下である。
概直線状の溝の平均深さDは、負極活物質層の平均厚みTに対して下記式(3):
0.1≦D/T≦0.8 (3)
で表される関係を満足することが好ましい。DとTは、同じ単位であればよく、例えば、DとTのいずれも単位としてmmを使用することができる。
D/Tが0.1以上であれば、形成した溝から電解液を活物質に十分に浸透させることが可能である。D/Tは好ましくは0.3以上である。一方で、D/Tが0.8以下であれば、負極の強度は十分に担保され、製造工程で負極が湾曲した場合も破断が発生せず短絡する可能性が低くなる。D/Tは好ましくは0.6以下である。
負極活物質層を含む塗工領域と負極活物質層を含まない未塗工領域の境界の概直線と、負極活物質層に形成された概直線状の溝とが成す角度(d)、並びに概直線状の溝の幅(w)及び深さ(D)を測定する方法としては、特に限定されないが、完成した蓄電素子を解体して負極を取り出し、プロピレンカーボネート等の溶媒で洗浄したものを十分に風乾した後に、レーザ顕微鏡等を用いて測定することができる。概直線状の溝の幅(w)は、負極活物質最表面における幅、深さ(D)は負極活物質最表面から、溝最深部までの距離とする。
負極活物質層の塗工領域と未塗工領域の境界線に対する概直線状の溝の角度d、概直線状の溝の幅w、概直線状の溝の平均長さL、上記境界線と平行方向の負極活物質層の幅l、及び上記で定義された「溝周囲」部を決定するときには、負極の負極活物質層が形成された面と直交する方向から負極を観察するものとする(以下、「負極を上面視した」という。)
負極活物質層の塗工領域と未塗工領域の境界線に対する概直線状の溝の角度dは、二線のなす角度の鋭角及び直角を指す。
負極を上面視したときに、負極活物質層の塗工領域と未塗工領域の境界線として複数の概直線がある場合には、負極活物質層の塗工領域と未塗工領域の境界線に対する概直線状の溝の角度dが絶対値として最小になるように、1つの概直線状の境界線を選択するものとする。
概直線状の溝の平均長さLは、塗工境界と平行方向の負極活物質層の幅lに対して下記式(4):
0.70≦L/l (4)
で表される関係を満足することが好ましい。Lとlは、同じ単位であればよく、例えば、Lとlのいずれも単位としてmmを使用することができる。
L/lが0.70以上であれば、形成した溝から電解液を活物質に十分に浸透させることが可能である。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところを更に明確にするが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
[正極の作製]
フェノール樹脂について、窒素雰囲気下、焼成炉中600℃において2時間の炭化処理を行った後、ボールミルで粉砕し、分級して平均粒径7μmの炭化物を得た。得られた炭化物とKOHとを、質量比1:4.3で混合し、窒素雰囲下、焼成炉中800℃において1時間加熱して賦活化を行った。その後、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で、賦活化された炭化物を1時間撹拌洗浄し、さらに蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥を行うことにより、正極材料となる活性炭2を作製した。
上記で得た活性炭2について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定し、脱着側の等温線を用いて、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ求めた。比表面積はBET1点法により求めた。その結果、BET比表面積は3,120m/g、メソ孔量(V)は1.33cc/g、マイクロ孔量(V)は1.88cc/gであり、そしてV/V=0.71であった。
上記で得た活性炭2を正極活物質として用い、83.4質量部の活性炭2、ケッチェンブラック8.3質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)8.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、固形分濃度14質量%のスラリーを得た。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の片面又は両面に塗布し、乾燥し、プレスすることにより、正極C−1を得た。得られた正極活物質層の厚さは56μmであった。正極活物質層の厚さは、小野計器社製膜厚計(Linear Gauge Sensor GS−551)を用いて、正極の任意の10か所で測定した厚さの平均値から、アルミニウム箔の厚さを引いて求めた値である。得られた正極C−1を4.9cm×9.8cmの大きさに切り出し、非水系リチウム蓄電素子用の片面正極又は両面正極とした。
[負極の作製]
市販のヤシ殻活性炭について、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて窒素を吸着質として細孔分布を測定した。比表面積はBET1点法により求めた。また、上述したように、脱着側の等温線を用いて、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法によりそれぞれ求めた。その結果、BET比表面積が1,780m/g、メソ孔量が0.198cc/g、マイクロ孔量が0.695cc/g、メソ孔量/マイクロ孔量=0.29、平均細孔径が21.2Åであった。
このヤシ殻活性炭150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ(軟化点:50℃)270gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱反応を行った。熱処理は、窒素雰囲気下で、炉内温度を600℃まで8時間で昇温し、同温度で4時間保持することによって行い、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、生成物を炉から取り出し、負極材料となる複合多孔性材料1を得た。得られた複合多孔性材料1を上記ヤシ殻活性炭と同様に測定したところ、BET比表面積が262m/g、メソ孔量Vmが0.180cc/g、マイクロ孔量Vmが0.0843cc/g、Vm/Vm=2.13であった。
得られた複合多孔性材料1を83.4質量部、アセチレンブラックを8.3質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.3質量部、並びにNMP(N−メチルピロリドン)を混合してスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ10μmの電解銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスして負極を得た。
負極目付は、5.0cm×10cmの大きさに負極を切断し、銅箔の重量を差し引いた重量から得られた値を用いて、負極片面当たりの目付として算出したところ、目付28g/m、空隙率24.6cc/mであった。
負極活物質層の厚みは、ミツトヨ社製マイクロメーター(ソフトタッチマイクロCLM15QM)を用い、負極の10か所で測定した負極の厚さの平均値から、銅箔の厚さを引いて求めた値を用いて算出したところ、0.081mmであった。
<負極単位重量当たり容量aの算出>
上記で得られた負極を、面積3cmに切り出した。切り出された負極を作用極として用い、対極及び参照極として金属リチウムを用い、電解液としてプロピレンカーボネート(PC)にLiPFを1.0mol/Lの濃度で溶解させた非水系溶媒を用い、アルゴンボックス中で電気化学セルを作製した。東洋システム社製の充放電装置(TOSCAT−3100U)を用いて、以下の手順で初期充電容量を測定した。
上記で得た電気化学セルに対して、温度25℃において、更に電流値0.5mA/cmで電圧値が0.01Vになるまで定電流充電を行った後、電流値が0.01mA/cmになるまで定電圧充電を行った。この定電流充電及び定電圧充電の時の充電容量を初回充電容量として評価したところ、負極単位重量当たり容量aは1.3Ah/gであった。
[非水系リチウム蓄電素子の作製]
得られた負極を、60cm(5.0cm×12.0cm)に切り出して4枚作製した。30cm(4.0cm×7.5cm)に切り出した厚み20μmの金属リチウムを、切り出された負極を上面視した時の中央部の両面に圧着した。サークルカッターの表面にプロピレンカーボネートを0.1mL塗布したものを使用して、金属リチウム付き負極の負極活物質領域に、平均長さL12cm、平均幅w0.52mm、平均深さD0.027mm、負極活物質層の塗工領域と未塗工領域の境界線に対する角度d0.5°の溝4本を概等間隔に形成した。溝の幅、深さ、角度はキーエンス社製カラー3Dレーザ顕微鏡(VK8710)を用いて測定した。図3に、溝(11)を形成した後の金属リチウム(10)付き負極の平面模式図を示す。得られた金属リチウム(10)付き負極を大気圧露点温度−40℃の乾燥空気中で5時間静置することにより、非水系リチウム蓄電素子用の負極を作製した。
上記作製した金属リチウム付き負極、片面正極2枚、両面正極3枚及びポリエチレン製のセパレータ(旭化成株式会社製 厚さ24μm)8枚を最外層が片面正極となるようにして正極と負極とをセパレータを介在させて交互に積層し、電極積層体を合計2個作製した。
この積層体をポリプロピレンとアルミ箔から成るラミネートフィルムで形成された容器に入れ、プロピレンカーボネート(PC)にLiPFを1.2mol/Lの濃度で溶解させた電解液を注入し、−90kPaの減圧環境下で電解液を含侵させた後に密閉し、非水系リチウム蓄電素子を作製した。60℃の恒温槽内に作製した非水系リチウム蓄電素子を72時間保管し、リチウムイオンのプレドープを行い、非水系リチウム蓄電素子を合計3個作製した。
<負極への電解液の含侵性>
減圧環境下で電解液を含侵させ、密閉した非水系リチウム蓄電素子のうち1個を解体して負極への電解液の含侵性を目視にて確認したところ、負極全面に電解液が浸透していることを確認した(下記表1では「良好」として示した。)。
[非水系リチウム蓄電素子の初期特性評価]
作製した非水系リチウム蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で最大電流50mA、最大電圧3.8Vで1時間定電流定電圧充電を行い、放電電流を50mAとして設定電圧が2.2Vに到達するまで定電流放電を行った。この時の放電容量は44.1mAhであった。日置電気製バッテリーハイテスタ(3561)を用いて周波数1kHzにおける透過直列抵抗(ESR)を測定したところ、7.0mΩであった。
[ガスクロマトグラフィー測定]
作製した非水系リチウム蓄電素子の1個について、溝の幅方向の溝両端部から3mmに引かれる二直線を二辺とする矩形状の領域(溝周囲部)7.2cm(0.6cm×12.0cm)のサンプルと、溝周囲部を除く領域から7.2cm(0.3cm×12.0cm 2枚)を切り出したサンプルとを、エタノールで抽出し、ガスクロマトグラフィーで測定を行った。得られた結果よりC/Cが1.21であった。
<実施例2>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.50mm、平均深さ0.031mm、角度28.6°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.51mm、平均深さ0.062mm、角度0.4°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<実施例4>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.53mm、平均深さ0.010mm、角度0.7°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<実施例5>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.87mm、平均深さ0.022mm、角度1.0°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<実施例6>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.15mm、平均深さ0.033mm、角度0.8°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<実施例7>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ9cm、平均幅0.52mm、平均深さ0.031mm、角度0.5°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<実施例8>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.54mm、平均深さ0.035mm、角度0.3°の溝2本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<実施例9>
実施例1で得られた負極を250cm(5.0cm×50.0cm)に切り出した。126cm(4.0cm×31.5cm)に切り出した厚み20μmの金属リチウムを、切り出された負極を上面視した時の中央部の両面に圧着した。サークルカッターの表面にプロピレンカーボネートを0.1mL塗布したものを使用して、金属リチウム付き負極の活物質領域に平均長さ50cm、平均幅0.50mm、平均深さ0.027mm、角度1.2°の溝4本を概等間隔に形成した。得られた金属リチウム付き負極を大気圧露点温度−40℃の乾燥空気中で5時間静置することにより、非水系リチウム蓄電素子用の負極を作製した。
上記作製した金属リチウム付き負極、両面正極及びポリエチレン製のセパレータ2枚を、幅10cm及び厚み3.0mmの巻き芯に捲回して電極捲回体を合計3個作製した。上記以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に溝を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.05mm、平均深さ0.027mm、角度0.5°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<比較例3>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.41mm、平均深さ0.005mm、角度40.3°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<比較例4>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ4cm、平均幅0.04mm、平均深さ0.023mm、角度0.7°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<比較例5>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ12cm、平均幅0.86mm、平均深さ0.081mm、角度43.5°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<比較例6>
実施例1で得られたリチウム付き負極の活物質領域には溝を形成せず、正極の活物質領域に平均長さ11cm、平均幅0.53mm、平均深さ0.027mm、角度0.8°の溝4本を概等間隔に形成した以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
<比較例7>
実施例9で得られたリチウム付き負極の活物質領域に平均長さ5cm、平均幅0.47mm、平均深さ0.033mm、角度90.6°の溝40本を概等間隔に形成した以外は実施例9と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
実施例1と同様の方法で、負極への電解液の含侵性、初期特性評価、ガスクロマトグラフィー測定を行った結果を表1に示す。
Figure 2018041921
実施例1と比較例1の対比から、負極活物質層に溝が無い場合、活物質に十分に電解液を含侵させることができず(上記表1では「一部未含浸」として表す)、抵抗が上昇してしまう。
実施例1と比較例2の対比から、負極活物質層に形成した溝の幅が十分に広くない場合、活物質に十分に電解液を含侵させることができず、抵抗が上昇してしまう。
実施例9と比較例7の対比から、負極活物質層に形成した溝の角度が捲回方向に対して垂直方向に形成された場合、捲回時に溝部分で活物質の割れが生じてしまい、抵抗が上昇してしまう。
発明の非水系リチウム蓄電素子は、例えば、自動車のハイブリット駆動システムの分野用途、瞬間電力ピークのアシスト用途等における蓄電素子として、好適に利用できる。
本発明の非水系リチウム蓄電素子は、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオンキャパシタとして好適に適用することができ、特に、リチウムイオンキャパシタとして適用した時に、本発明の効果が最大限に発揮されるため、好ましい。
1 正極端子
2 負極端子
3 外装体
4 電極積層体
5 正極集電体
6 正極活物質層
7 セパレータ
8 負極集電体
9 負極活物質層
10 リチウム
11 溝

Claims (5)

  1. 正極集電体、及び前記正極集電体の片面又は両面に形成された、正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
    負極集電体、及び前記負極集電体の片面又は両面に形成された、負極活物質を含む負極活物質層を有する負極とが、
    セパレータを介して交互に積層または捲回された構造を有する非水系リチウム蓄電素子であって、
    前記負極において、前記負極活物質層を含む塗工領域と、前記負極活物質層を含まない未塗工領域との境界が概直線を成し、
    前記負極活物質層は、少なくとも概直線状の溝を有し、且つ、
    前記負極の前記負極活物質層が形成された面と直交する方向から前記負極を観察したときに、前記概直線と前記概直線状の溝が成す角度d、及び前記概直線状の溝の幅wは、下記式(1)及び(2):
    |d|≦30° (1)
    0.1mm≦w≦1.0mm (2)
    で表される関係を満足する、
    前記非水系リチウム蓄電素子。
  2. 前記概直線状の溝は、下記式(3):
    0.1≦D/T≦0.8 (3)
    {式中、Dは、前記概直線状の溝の平均深さ(mm)であり、且つTは、前記負極活物質層の平均厚み(mm)である。}
    で表される関係を満足する、請求項1に記載の非水系リチウム蓄電素子。
  3. 前記概直線状の溝は、下記式(4):
    0.70≦L/l (4)
    {式中、lは、前記境界と平行方向の前記負極活物質層の幅(mm)であり、且つLは、前記直線状の溝の平均長さ(mm)である。}
    で表される関係を満足する、請求項1又は2に記載の非水系リチウム蓄電素子。
  4. 前記正極、前記負極及び前記セパレータと、非水系電解液とが前記非水系リチウム蓄電素子の外装体内に収納されており、かつ炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素が、前記非水系電解液中に1〜1000ppmの比率で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系リチウム蓄電素子。
  5. 前記負極は、下記式(5):
    /C≧1.1 (5)
    {式中、Cは、前記負極活物質層の前記概直線状の溝周囲に含まれる炭酸エステル及び前記炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を足し合わせた平均濃度であり、且つCは、前記負極活物質層の前記概直線状の溝周囲の領域を除く領域に含まれる前記炭酸エステル及び前記炭素数10〜24の鎖状飽和炭化水素を足し合わせた平均濃度である。}
    で表される関係を満足する、請求項4に記載の非水系リチウム蓄電素子。
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