この発明に係る眼科レンズ測定装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
<眼科装置>
実施形態に係る眼科レンズ測定装置は、眼科レンズの光学特性を高精度に測定する。以下、実施形態に係る眼科レンズ測定装置の機能を有する眼科装置を例に説明する。眼科レンズには、IOL、コンタクトレンズ、角膜に載せる(onlay)レンズ、角膜に嵌め込む(inlay)レンズ、眼鏡レンズなどがある。以下では、眼科レンズがIOLである場合について説明する。
実施形態に係る眼科装置は、上記の眼科レンズの光学特性の測定機能に加えて、他覚測定と自覚検査とを実行可能な装置である。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主として物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得するものである。他覚測定には、被検眼に関する値を測定するための他覚測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。このような他覚測定には、例えば、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼圧測定、眼底撮影、OCTの手法を用いたOCT撮影や干渉計測などがある。OCT撮影には、被検眼の断層像や正面画像や任意方向の断層像の取得などがある。干渉計測には、被検眼の任意の部位における層厚の計測や、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚などの計測があり、これら被検眼の構造を表す眼球情報が取得される。この実施形態において、眼球情報は、眼軸長や水晶体厚などの眼内の所定の2つの部分間の距離を示す眼内距離を含むものとする。しかしながら、実施形態に係る眼科装置の構成は、これに限定されるものではない。
自覚検査は、被検者からの応答に基づいて結果を取得するものである。自覚検査には、例えば、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査などの自覚屈折検査や、視野検査などがある。自覚検査では、被検者に情報(視標など)が提示され、その情報に対する被検者の応答に基づいて結果が取得される。
実施形態に係る眼科装置は、任意の自覚検査及び任意の他覚測定の少なくとも一方を実行可能である。OCTは、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚など、被検眼の構造を表す眼球情報を取得するために用いられる。また、被検眼の画像や解析データを取得するためにOCTを利用することもできる。
実施形態では、干渉計測やOCT撮影においてフーリエドメインタイプのOCTの手法を用いる場合について説明する。特に、実施形態に係る眼科装置は、スペクトラルドメインOCTの手法を用いて干渉計測を行うことが可能である。なお、干渉計測は、スペクトラルドメイン以外のタイプ、例えばスウェプトソースOCTの手法を用いてもよい。また、この実施形態における干渉計測は、タイムドメインタイプのOCTの手法を用いることも可能である。
実施形態に係る眼科装置は、通常測定モードとIOL測定モードのいずれかの測定モードで動作可能である。通常測定モードは、被検眼に対する他覚測定や自覚検査を行う動作モードである。IOL測定モードは、被検眼に挿入されるIOLの光学特性の測定を行う動作モードである。通常測定モードにおける他覚測定により得られた測定結果に基づいて、最適なIOLの選定が可能である。IOL測定モードでは、選定されたIOLの光学特性を測定することが可能である。それにより、1台の眼科装置により、被検眼に挿入すべきIOLの決定と、選定されたIOLの光学特性が当該被検眼に適合するか否かの確認とが可能になる。なお、実施形態に係る眼科装置は、通常測定モード及びIOL測定モードに加えて、1以上の他の測定モードでの動作が可能であってよい。以下、実施形態に係る眼科装置について、主として通常測定モードに設定された状態を例に図1A〜図6を用いて説明する。
<構成>
図1A及び図1Bに、実施形態に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。図1Aは、実施形態に係る通常測定モードにおける眼科装置1000の光学系の構成例を表す。図1Bは、実施形態におけるIOL測定モードにおける眼科装置1000の光学系の構成例を表す。図1Bにおいて図1Aと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。眼科装置1000は、被検レンズ(眼科レンズ)としてのIOLを保持するIOL測定ユニット92を、対物レンズ51を通過する光の光路に配置可能である。通常測定モードではIOL測定ユニット92が対物レンズ51を通過する光の光路から退避され(図1A)、IOL測定モードではIOL測定ユニット92が対物レンズ51を通過する光の光路に配置される(図1B)。
眼科装置1000は、ベース(不図示)と、架台(不図示)と、図1Aや図1Bに示す光学系が収容された測定ヘッド(不図示)とを含む。架台は、ベースに対して前後左右方向に移動可能である。測定ヘッドは、架台と一体的に構成されている。測定ヘッドは、ベースに対して上下方向に移動可能である。
眼科装置1000は、観察系5と、固視・自覚検査系4と、グレア光投射系8、レフ測定投射系6と、レフ測定受光系7と、Zアライメント系1と、XYアライメント系2と、ケラト測定系3と、干渉光学系14とを含む。眼科装置1000は、各種の処理を実行する処理部9を含む。
観察系5は、被検眼Eの前眼部を観察するための光学系である。固視・自覚検査系4は、被検眼Eに固視標及び自覚検査用の視標を提示するための光学系である。グレア光投射系8は、前述の視標とともに被検眼にグレア光を投射するための光学系である。レフ測定投射系6は、眼屈折力を他覚的に測定するための光束を被検眼Eに投射するための光学系である。レフ測定受光系7は、レフ測定投射系6により被検眼Eに投射された光の眼底反射光を受光するための光学系である。レフ測定受光系7は、干渉光学系14における光源(共通)から出力された測定光に対する眼底Efにおける戻り光(反射光、反射光束)から複数の点状の光束を形成し、この複数の点状の光束により形成された像を検出する機能を有する。固視・自覚検査系4は、自覚検査を行うための光学系である。本例の固視・自覚検査系4は、被検眼Eに視標を提示する機能を有する。Zアライメント系1及びXYアライメント系2は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(XYZアライメント)を行うために必要な光を投射するための光学系である。Zアライメント系1は、観察系5の光軸(光軸O)に沿う方向(前後方向)のアライメントを行うための機能を有する。XYアライメント系2は、観察系5の光軸に直交する方向(上下方向、左右方向)のアライメントを行うための光束を投射する機能を有する。干渉光学系14は、他覚測定のために測定光を眼底Efに投射したり干渉計測を行ったりするための光学系である。干渉光学系14は、後述の光源141から出力された光に基づく測定光を眼底Efに投射する機能と、この測定光の戻り光を検出する機能とを有する。
(観察系5)
観察系5は、対物レンズ51と、ダイクロイックミラー52と、絞り53と、ハーフミラー54と、リレーレンズ55、56と、結像レンズ57と、撮像素子(CCD)58とを含む。撮像素子58の出力は、処理部9に入力される。処理部9は、撮像素子58から入力された信号に基づいて、表示部10に前眼部像E’を表示させる。
対物レンズ51と被検眼Eとの間には、ケラト板31が設けられている。ケラト板31は、角膜形状を測定するためのリング状光束を被検眼Eの角膜Cに投射するために用いられる。
(Zアライメント系1及びXYアライメント系2)
ケラト板31の周辺にはZアライメント系1が設けられている。前述したように、Zアライメント系1は、観察系5の光軸前後方向のアライメントに用いられる。Zアライメント系1は、Zアライメント光源11を有する。Zアライメント光源11からの光は、角膜Cに投射される。角膜Cに投射された光は、角膜Cで反射し、結像レンズ12を経由してラインセンサー13上に投射される。角膜頂点の位置が観察系5の光軸上に対し前後方向に移動するとラインセンサー13上に投射された光束の位置が変化する。この位置の変化を解析することにより、対物レンズ51に対する被検眼Eの角膜頂点の位置を計測し、その計測値に基づいてアライメントすることができる。
XYアライメント系2の光路は、ハーフミラー54により観察系5の光路に合成される。前述したように、XYアライメント系2は、上下方向及び左右方向のアライメントに用いられる。XYアライメント系2は、XYアライメント光源21を有する。XYアライメント光源21から出力された光は、その一部がハーフミラー54にて反射されて絞り53を通過し、ダイクロイックミラー52を透過し、対物レンズ51を通過して被検眼Eに投射される。被検眼Eに投射された光は、角膜Cで反射され、対物レンズ51を通過して、観察系5と同じ光路を経由して撮像素子58に投影される。
表示画面10aには、前眼部像E’とともに、アライメントマークALと角膜Cで反射した輝点像Brとが表示される。手動でアライメントを行う場合、ユーザは、例えば、表示画面10aに表示されている情報を参照しつつ後述の操作部を操作して測定ヘッドの位置調整を行う。このとき、処理部9は、例えば、アライメントマークALと角膜Cで反射した輝点像Brのずれ量で上下左右方向のずれ量を算出し、また、Zアライメント系1からの処理情報を基に光軸方向のずれ量を表示画面10aに表示させてよい。処理部9は、アライメントが完了したことに対応して測定を開始するように制御を行うことができる。
自動でアライメントを行う場合、上述のずれ量がキャンセルされるように電動の機構を制御して測定ヘッドを移動させる。この機構は、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を測定ヘッドに伝達する部材とを含む。処理部9は、アライメントが完了したことに対応して測定を開始するように制御を行うことができる。
(固視・自覚検査系4)
固視・自覚検査系4は、自発光式の液晶パネル41と、リレーレンズ42と、反射ミラー43と、ハーフミラー44と、合焦レンズ45と、リレーレンズ46と、バリアブルクロスシリンダ(以下、VCC)レンズ47と、反射ミラー48と、ダイクロイックミラー49及び52と、対物レンズ51とを含む。
グレア光投射系8は、被検眼Eにグレア光を照射するグレア光源81と、リレーレンズ82とを有する。グレア光源81、リレーレンズ82、ハーフミラー44、合焦レンズ45、リレーレンズ46、VCCレンズ47、反射ミラー48、ダイクロイックミラー49及び52、対物レンズ51は、グレア光投射系を構成する。グレア光投射系8は、固視・自覚検査系4による視標の投影とともにグレア光を被検眼Eに投射する。
固視・自覚検査系4は、被検眼Eの眼底Efに視力測定用の視標を投影することが可能である。また、固視・自覚検査系4は、視標のコントラストを変更可能である。
他覚測定(他覚屈折測定など)においては、風景チャートが眼底Efに投影される。この風景チャートを被検者に固視させつつアライメントが行われ、雲霧視状態で眼屈折力が測定される。
なお、固視・自覚検査系4は、光学式チャートによって視力測定用の視標や他覚測定用のチャートを眼底Efに投影することも可能である。
(レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7)
レフ測定投射系6とレフ測定受光系7とによりレフ測定系が構成される。レフ測定投射系6は、干渉光学系14の光源141から出射した光に基づく測定光を被検眼Eの眼底Efに投射する機能を有する。図3に示すように光源141から出射した光は、ファイバカプラ142を経由し、コリメータレンズ61により平行光束となる。図1A(図1B)に示すように、平行光束とされた光は、合焦レンズ62、リレーレンズ63、反射ミラー64、瞳レンズ65、穴開きプリズム66の中心部を通り、当該光路に対して挿脱可能な回転機構付光束偏心プリズム67(偏心部材)により偏心され、ダイクロイックミラー49及び52で反射し、対物レンズ51を通過して被検眼Eの眼底Efに投射される。被検眼Eの瞳孔と共役な位置近傍に配置された瞳レンズ65の表面には、中心部のみ光が通るようにエッチングが施されている。偏心プリズム67の効果は、スペックルの低減や眼底Efに投射された光束に血管や疾患が掛かった場合に、反射光の光量や光量分布が変化することによる測定精度への影響を低減することにある。偏心プリズム67を回転させると、スペックルノイズが低減し、血管や疾患の測定光束への掛かり具合を平均化することができ、測定精度への影響を低減させることが可能となる。また、近傍な位置とすることで、偏心プリズム67を回転させると、被検眼Eの瞳中心に対して、光束中心は偏心するため、瞳孔内に部分的な混濁などがある場合においても平均化した結果を得ることができる。但し、瞳孔と共役位置に配置しても、上記測定精度の向上効果は得ることができるので装置の仕様に合わせて選択することができる。穴開きプリズム66と偏心プリズム67を通過した光束は偏心され、被検眼Eの眼底上の偏心した位置に投射されることになるが、後述するように眼底Efから反射した光束は、同光路の偏心プリズム67を再度透過することにより、あたかも偏心プリズム67が無い状態となり、レフ測定受光系7により撮像素子77に投射される。
レフ測定受光系7において、眼底Efから反射した光は対物レンズ51、ダイクロイックミラー52及び49で反射し、偏心プリズム67にて偏心され、穴開きプリズム66の周辺部にて反射される。穴開きプリズム66の周辺部にて反射された光は、瞳レンズ71、リレーレンズ72、合焦レンズ73にて平行光束とされ、6穴開口板74の開口部に入射し、それぞれ6本の光束に分離される。6角錐プリズム75は、図2Aに示すようにレフ測定受光系7の光軸OPを頂点とする6角錐状のプリズムから構成されている。6穴開口板74により分離された6本の光束は、6角錐プリズム75にて所定角度だけ偏向される。結像レンズ76は、それぞれ6本の光束を撮像素子77に投影することにより、図2Bに示すように光軸OP中心の6つの点像が形成される。
合焦レンズ73、6穴開口板74及び6角錐プリズム75は、光軸方向に移動可能に構成された測定ユニット73Aに搭載される。屈折力測定の際、合焦レンズ62と測定ユニット73Aとは、連係して光軸方向に移動される。
なお、レフ測定受光系7は、6穴開口板74及び6角錐プリズム75に代えて、リング状開口及び円錐プリズムを含んで構成されていてもよい。リング状開口及び円錐プリズムは、眼底Efに投影された光源像を、被検眼Eの瞳中心又は角膜頂点から所定の距離だけ離れた周辺部を通過したリングパターンとして検出するために用いられる。
(干渉光学系14)
干渉光学系14は、レフ測定投射系6として機能する。光源141から出射した光に基づく測定光は、同光路を通り、被検眼Eの眼底Efに投射される。眼球情報を計測する場合には、偏心プリズム67は光路から退避され、測定光束は被検眼Eの瞳中心(又は角膜頂点)を通り眼底Efに投射される。
また、干渉光学系14は、干渉計測において眼底Efに投射された測定光の戻り光を検出する受光系として機能する。この受光系は、対物レンズ51、ダイクロイックミラー52及び49、偏心プリズム67、穴開きプリズム66、瞳レンズ65、反射ミラー64、リレーレンズ63、合焦レンズ62、コリメータレンズ61、ファイバカプラ142、分光器143を含む(図3)。
眼科装置1000の各部は処理部9によって制御される。例えば、処理部9は、液晶パネル41、光源141、グレア光源81、Zアライメント光源11及びXYアライメント光源21、ケラト板31のケラトリング光源32、合焦レンズ45、62及び73(合焦レンズ73が搭載された測定ユニット73A)、VCCレンズ47、網膜・前房深度用シャッター154、角膜用シャッター157、参照ミラー156及び159、表示部10、偏心プリズム67、IOL測定ユニット92などを制御する。
(角膜形状測定機能)
ケラト測定を行う場合、処理部9は、ケラトリング光源32を点灯させる。角膜Cに投射された角膜形状測定用リング状光束(ケラト板31)の角膜による反射光束は、観察系5により撮像素子58に前眼部像とともに投影される。処理部9は、撮像素子58によって取得された像に対して所定の演算処理を施すことにより、角膜収差情報を算出する。角膜収差情報には、角膜形状、角膜曲率半径、角膜屈折力などがある。
(他覚測定機能)
レフ測定を行う場合、処理部9は、光源141を点灯させる。光源141からの光は、前述のようにファイバカプラ142を通りコリメータレンズ61にて平行光となり、レフ測定投射系6により眼底に投射される。被検眼Eが正視(=0D)の場合には、ファイバー端面(コリメータレンズ61の焦点位置)と被検眼Eの眼底Efが共役となる位置とが合焦レンズ62の基準位置となっている。この状態で眼底Efに投射された光束は、眼底Efで反射され、レフ測定受光系7を通り、途中に配置された6穴開口板74の開口部及び6角錐プリズム75にて6本の分離された光束に偏角され、撮像素子77に投影される。被検眼Eが正視であるため、撮像素子77に投影された各光束は、基準の位置(中心から全て等間隔)に投影される。
被検眼が近視の場合、撮像素子77に投影された各光束は各点の中心方向に移動する。被検眼が遠視の場合、撮像素子77に投影された各光束は各点の中心から外側に向かって移動する。処理部9は、基準位置からの移動量を検出し、被検眼Eの屈折力を演算し(仮測定)、処理部9は、合焦レンズ62と測定ユニット73A(合焦レンズ73、6穴開口板74、6角錐プリズム75)を仮測定結果に基づき移動させる。ここでファイバ端面、眼底Ef、撮像素子77が共役に配置されると撮像素子77上の光束は基準の位置に移動する。その移動量から被検眼Eの屈折力を求める。
(干渉計測機能)
ここでは、干渉計測の例として被検眼Eの眼軸長(角膜頂点から網膜までの距離)を求める場合について図3〜図6を用いて説明する。干渉計測を行う場合、処理部9は光源141を点灯させる。光源141の点灯に同期して、角膜用シャッター157が、ビームスプリッター153と角膜用参照ミラーユニット161との間の光路に挿入され、網膜・前房深度用シャッター154が、ビームスプリッター153と網膜・前房深度用参照ミラーユニット160との間の光路から退避される。光源141からの光L0は、ファイバカプラ142により測定光LSと参照光LRとに分割される。測定光LSは、レフ測定投射系6と同光路を通り被検眼Eの眼底Efに投射される。このとき、偏心プリズム67は、光路外に退避されている。また、前述の被検眼Eの屈折力測定結果より、ファイバー端面は被検眼Eの眼底Efと共役となるように合焦レンズ62が移動されている。眼底Efで反射された光は同光路を戻りファイバー端面に投射され、ファイバカプラ142に到達する。
一方、参照光LRは、コリメータレンズ151により平行光となり、50:50のビームスプリッター153により2つの光束(角膜用、網膜用)に分割され、それぞれ結像レンズ155、158により参照ミラー(反射ミラー)156、159に集光される。ここで、前述のように、角膜用シャッター157が光路に挿入され、且つ、網膜・前房深度用シャッター154が光路から退避されているので、参照ミラー(網膜用参照ミラー)156から反射した光のみが、同光路を戻りファイバカプラ142に到達する。眼底Ef及び参照ミラー156で反射した光は、ファイバカプラ142で合波され干渉信号(干渉光LC)として、分光器143に導かれる。分光器143では、空間的に波長分離された光がラインセンサーに投射される。処理部9は、このラインセンサーから出力された信号に対し公知のFFT(Fast Fourier Transform:以下、FFT)を施すことにより深さ方向の情報を取り出すことができる。
網膜・前房深度用参照ミラーユニット160と角膜用参照ミラーユニット161とは、被検眼Eの眼軸長に合わせて、干渉信号の位置が深さ方向で所定位置となるように移動される。例えば、深さ方向に対するFFT後の干渉信号の強度変化を図4Bのように表すと、図4Aに示すように網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を光軸方向に移動させることにより、図4Bに示すように網膜による干渉信号SC0の位置が所定範囲内の所定位置となるように移動することができる。ここで、角膜用参照ミラー159の位置については、固定されていてもよい。
さらに、前述のZアライメント系1により角膜頂点座標が検出されるため、角膜頂点と対物レンズ51の距離(作動距離)を常に一定距離内に合わせることが可能となる。ここで、角膜用シャッター157が光路から退避されると、被検眼Eに投射された光のうち、角膜Cで反射した光との干渉信号が分光器143に同時に投射される。作動距離が所定範囲内である場合、角膜用参照ミラー159は、網膜による干渉信号SC1と重ならないように角膜位置とは距離dだけ離れた位置になるように配置されている(図5)。従って、図4Bと同様に深さ方向に対するFFT後の干渉信号の強度変化を表す図6に示すように、干渉信号計測範囲R内で、同時に2つの干渉信号(網膜による干渉信号SC1及び角膜による干渉信号SC2)を取得することが可能となる。特に、図6に示すように信号感度SCが変化する場合、信号成分の弱い網膜による干渉信号SC1を信号感度の高い計測範囲R1で検出し、信号成分の強い角膜による干渉信号SC2を信号感度の弱い計測範囲R2で検出することにより、2つの干渉信号を高精度に同時に取得することができる。
被検眼Eの眼内距離を測定するとき、処理部9は、角膜用参照ミラーユニット161を固定した状態で網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させる。それにより、基準部位としての角膜頂点を基準に被検眼Eの各種の眼内距離を測定することが可能になる。図5に示すように、眼軸長を測定する場合、網膜に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させて角膜頂点と眼底(網膜)との距離D1を求める。前房深度を測定する場合、水晶体前面に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させて角膜頂点と水晶体前面との距離D2を求める。水晶体厚を測定する場合、水晶体後面に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させて角膜頂点と水晶体後面との距離(D2+D3)を求め、距離(D2+D3)から前述の距離D2を差し引いて距離D3を求める。角膜厚を測定する場合、角膜後面に相当する干渉信号を検出して角膜頂点と角膜後面との距離を求める。
なお、干渉光学系14がスウェプトソースタイプのOCT装置と同様の構成を有する場合、低コヒーレンス光を出力する光源141の代わりに波長掃引光源が設けられるとともに、干渉光をスペクトル分解する光学部材が設けられない。干渉光学系14の構成については、光コヒーレンストモグラフィのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
光源141は、例えばSLD(Super Luminescent Diode)のような広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。光源141は、例えば、中心波長が820nm〜880nmの範囲に含まれる低コヒーレンス光源である。これにより、測定光が視認されることによる被検者の負担を軽減しつつ、同一光源でレフ測定及び干渉計測の双方が可能になる。
なお、コリメータレンズ151と参照ミラー156、159との間の参照光LRの光路に、ガラスブロックや濃度フィルタが配置されていてもよい。ガラスブロックや濃度フィルタは、参照光LRと測定光LSの光路長(光学距離)を合わせるための遅延手段として、また参照光LRと測定光LSの分散特性や角膜用参照ミラーユニット161と網膜・前房深度用参照ミラーユニット160の分散特性を合わせるための手段として作用する。
分光器143は、例えば、コリメータレンズ、回折格子、結像レンズ、CCDを含んで構成される。分光器143に入射した干渉光LCは、コリメータレンズにより平行光束とされた後、回折格子によって分光(スペクトル分解)される。分光された干渉光LCは、結像レンズによってCCDの撮像面上に結像される。CCDは、この干渉光LCを受光して電気的な検出信号に変換し、この検出信号を処理部9に出力する。処理部9は、CCDからの検出信号に基づいて、被検眼Eの断層のOCT情報(例えば、画像データなど)を生成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFTなどの処理が含まれている。
また、干渉光学系14がスウェプトソースタイプのOCT装置と同様の構成を有する場合、分光器143は、例えば、光分岐器と、バランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode:BPD)とを含んで構成される。分光器143に入射した干渉光LCは、光分岐器により分割され、一対の干渉光に変換される。BPDは、一対の干渉光をそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出信号(検出結果)の差分を処理部9に出力する。
なお、この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用したが、例えばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜採用することが可能である。
(自覚検査機能)
自覚検査を行う場合、処理部9は自発光式の液晶パネル41を駆動し、所望の視標を表示させる。また、処理部9は、他覚測定の結果に応じた位置に合焦レンズ45を移動させる。同様に、処理部9は、他覚測定で得られた被検眼Eの乱視状態(乱視度数、乱視軸角度)に基づいて、この乱視状態が矯正されるようにVCCレンズ47を制御することが可能である。乱視度数は、VCCレンズ47を構成する2つのシリンダレンズを独立に互いに逆方向に回転させることにより変更可能である。乱視軸角度は、VCCレンズ47を構成する2つのシリンダレンズを同方向に同じ角度だけ回転させることにより変更可能である。
検者又は処理部9により視標が選択されると、処理部9は、液晶パネル41を駆動し、所望の視標を表示させる。この視標からの光は、リレーレンズ42、反射ミラー43、ハーフミラー44、合焦レンズ45、リレーレンズ46、VCCレンズ47、反射ミラー48、ダイクロイックミラー49及び52、対物レンズ51を経由して眼底Efに投射される。
被検者は、眼底Efに投射された視標に対する応答を行う。例えば、視力表の場合には、被検者の応答により被検眼の視力値が決定される。例えば、乱視検査の場合には、ドットチャートが駆動、表示され、被検者の応答により被検眼の乱視度数が決定される。視標の選択とそれに対する被検者の応答に基づき合焦レンズ45、VCCレンズ47を微調整し矯正値又は処方値(S、C、A)を決定する。
また、グレア検査が行われる場合、処理部9はグレア光源81を点灯させる。そして、この状態で自覚検査が行われる。また、コントラスト検査が行われる場合、処理部9は、液晶パネル41を駆動することにより、表示する視標のコントラストを変更させる。
この実施形態では、固視・自覚検査系4の構成、Zアライメント系1及びXYアライメント系2の構成、ケラト系の構成、眼屈折力(レフ)の測定原理、自覚検査の測定原理、角膜形状の測定原理などは公知であるので、詳細な説明は省略する。
(IOL測定機能)
IOL測定モードでは、IOL測定ユニット92が、対物レンズ51を通過する光の光路に配置される(図1B)。
図7に、実施形態に係るIOL測定ユニット92の概略構成図を示す。図7は、ケースに収容されたIOLが装着された状態のIOL測定ユニット92の側面図を模式的に表したものである。IOL測定ユニット92は、IOL90又はIOL90が収容されたケース90Aを保持する保持部93を含む。保持部93は、IOL90又はIOL90が収容されたケース90Aが装着される装着部93Aと、装着部93Aに対して移動可能な可動ステージ93Bと、可動ステージ93Bに固設され拡散反射部材91を保持する保持部材93Cとを含む。拡散反射部材91は、例えば、人眼眼底の反射率に近い塗装を施した光学部材である。保持部93は、IOL90が対物レンズ51の光軸Oにおける所定の位置に配置されるように、光軸O又はその近傍に配置可能である。後述の移動機構91Aにより装着部93Aに対して可動ステージ93Bを光軸Oの方向に移動させることにより、IOL90と拡散反射部材91との間の距離を変更可能である。
図8A及び図8Bに、図7の装着部93Aに装着される、IOL90が収容されたケース90Aの一例を示す。図8Aは、空気90BとともにIOL90が収容されたケース90Aの側面図を模式的に表したものである。図8Bは、水などの液体90B´とともにIOL90が収容されたケース90Aの側面図を模式的に表したものである。このようなケース90Aに収容することにより、手術直前まで滅菌された状態でIOL90を保管することができる。
ケース90Aには、第1透過部90Cと、第2透過部90Dとが形成されている。第1透過部90Cは、ケース90Aの外部から投射された光を透過する。第2透過部90Dは、第1透過部90C及びIOL90を透過した光を透過する。すなわち、ケース90Aの外部から投射された光は、第1透過部90Cを透過し、ケース90Aに収容されたIOL90を透過し、第2透過部90Dを透過する。第2透過部90Dを透過し拡散反射部材91で反射した光は、第2透過部90Dを透過し、IOL90を透過し、第1透過部90Cを透過する。第1透過部90Cは、ケース90Aにおける光の入射側の全面に形成されていてもよい。第2透過部90Dは、ケース90Aにおける光の出射側の全面に形成されていてもよい。第1透過部90C及び第2透過部90Dの周縁部でケラレが発生しないように、第1透過部90C及び第2透過部90Dは、IOL90のレンズ径より大きいことが望ましい。
IOL測定モードにおいて、拡散反射部材91がIOL90の焦点位置に配置されている場合、IOL測定ユニット92に対して屈折力測定を行うと、屈折力値は0ディオプタとなる。IOL90と拡散反射部材91との間の距離Lが変化すると、屈折力測定により得られた屈折力値が変化する。すなわち、距離Lと屈折力測定により得られた屈折力値がわかると、IOL90の焦点距離を求めることができる。距離Lは、干渉光学系14を用いて高精度に求めることができる。例えば、通常測定モードにおいて被検眼Eの眼軸長を測定する場合と同様に、角膜用参照ミラーユニット161を固定した状態で網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させる。それにより、例えば基準部位としてのIOL90の表面又は裏面を基準に拡散反射部材91までの距離を測定することが可能になる。具体的には、拡散反射部材91に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させてIOL90の表面と裏面との中間位置と拡散反射部材91との距離Lを求める。このように、距離Lを高精度に求めることができるため、ケース90Aへの収容の有無など様々な形態を有している場合であってもIOL90の屈折力を高精度に測定することが可能である。
(情報処理系の構成)
眼科装置1000の情報処理系について説明する。眼科装置1000の情報処理系の機能的構成の例を図9及び図10に示す。情報処理系は、制御部110と、演算処理部120と、表示部170と、操作部180と、通信部190とを含む。制御部110は、演算処理部120、Zアライメント系1(Zアライメント光源11)、XYアライメント系2(XYアライメント光源21)、ケラト測定系3(ケラトリング光源32)、固視・自覚検査系4、観察系5、レフ測定投射系6(偏心プリズム67)、レフ測定受光系7、グレア光投射系8(グレア光源81)、干渉光学系14、移動機構91A、表示部170及び通信部190を制御する。処理部9は、例えば、制御部110と、演算処理部120とを含んで構成される。
(制御部110)
制御部110は、主制御部111と、記憶部112とを有する。制御部110は、例えば、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。
(主制御部111)
主制御部111は、眼科装置1000の各種制御を行う。特に、主制御部111は、Zアライメント光源11、XYアライメント光源21、ケラトリング光源32、液晶パネル41、合焦レンズ45、VCCレンズ47を制御する。また、主制御部111は、合焦レンズ62、偏心プリズム67、測定ユニット73A、グレア光源81、光源141、網膜・前房深度用シャッター154、角膜用シャッター157、網膜・前房深度用参照ミラーユニット160、角膜用参照ミラーユニット161などを制御する。特に、主制御部111は、偏心プリズム67の回転、挿脱を制御する。また、主制御部111は、測定ユニット73A及び合焦レンズ62を連係して光軸方向に移動させる。それにより、レフ測定受光系7の合焦位置が変更される。また、主制御部111は、撮像素子58、77や分光器143を制御することにより、これらにより取得された信号を取り込み、演算処理部120により画像の形成等を行わせる。
また、主制御部111は、眼科装置1000の測定モードに対応した各部の制御を実行することが可能である。例えば、操作部180を用いたユーザの操作を受け、主制御部111は、眼科装置1000の測定モードを通常測定モードやIOL測定モードに切り替える制御を行う。例えば、通常測定モードでは、主制御部111は、前述の他覚測定を実行するための各部の制御を行う。例えば、IOL測定モードでは、主制御部111は、拡散反射部材91を光軸Oの方向に移動する移動機構91Aに対する制御や、前述のIOL90の屈折力測定を行うための各部の制御を行う。移動機構91Aは、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を可動ステージ93B(拡散反射部材91)に伝達する部材とを含む。主制御部111は、このアクチュエータに対して制御信号を出力することにより拡散反射部材91を光軸Oの方向に移動することが可能である。主制御部111は、IOL90と拡散反射部材91との間の距離が所望の距離となるように移動機構91Aを制御することができる。
また、主制御部111は、記憶部112にデータを書き込む処理や、記憶部112からデータを読み出す処理を行う。
(記憶部112)
記憶部112は、各種のデータを記憶する。記憶部112に記憶されるデータとしては、例えば、各種の測定結果、OCT情報の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部112には、眼科装置1000を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
(表示部170、操作部180)
表示部170は、制御部110による制御を受けて情報を表示する。表示部170は、図1Aや図1Bなどに示す表示部10を含む。
操作部180は、眼科装置1000を操作するために使用される。操作部180は、眼科装置1000に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部180は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含む。
表示部170及び操作部180の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10aがある。
(通信部190)
通信部190は、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部190は、例えば処理部9に設けられていてもよい。通信部190は、外部装置との通信の形態に応じた構成を有する。外部装置は、他の任意の眼科装置であってよい。また、外部装置は、記録媒体から情報を読み取る機能を有する装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む機能を有する装置(ライタ)であってよい。外部装置の他の例として、当該医療機関内にて使用されるコンピュータがある。このような院内コンピュータは、例えば、病院情報システム(Hospital Information System:HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)サーバ、医師端末などを含む。外部装置は、当該医療機関の外部にて使用されるコンピュータを含んでよい。このような院外コンピュータは、例えば、モバイル端末、個人端末、眼科装置1000のメーカ側のサーバや端末、クラウドサーバなどがある。
(演算処理部120)
演算処理部120は、図10に示すように、眼屈折力算出部121と、眼内距離算出部122と、IOL算出部123と、距離特定部124と、レンズ屈折力算出部125とを含む。
眼屈折力算出部121は、通常測定モードにおいて、光源141からの光を被検眼Eの眼底Efに照射してその戻り光を検出することにより被検眼Eの眼球光学系の眼屈折力を算出する。例えば、眼屈折力算出部121は、レフ測定受光系7における撮像素子77によって取得された6本の光束の像及び合焦レンズ73の移動量に対して所定の演算処理を施すことにより眼屈折力を算出する。その具体例として、眼屈折力算出部121は、前述のように、合焦レンズ73の移動量と撮像素子77に投射された6本の光束の像の位置の基準位置からの移動量を求め、求められた移動量から眼屈折力を求めることが可能である。また、リング状開口及び円錐プリズムが適用された場合には、眼屈折力算出部121は、撮像素子77によって取得されたリングパターンの像の基準パターンからの変形や変位を求め、求められた変形や変位から眼屈折力を求めることが可能である。
また、眼屈折力算出部121は、例えば、観察系5における撮像素子58によって取得されたケラトリング像に対して演算処理を施すことにより角膜前面の強主経線や弱主経線の角膜曲率半径を算出し、算出された角膜曲率半径から角膜屈折力や角膜乱視度や角膜乱視軸角度を算出することが可能である。
眼屈折力算出部121は、IOL測定モードにおいて、通常測定モードと同様にIOL測定ユニット92の屈折力を算出することが可能である。すなわち、眼屈折力算出部121は、光源141からの光をIOL測定ユニット92の拡散反射部材91に照射してその戻り光を検出することによりIOL測定ユニット92の屈折力を算出する。
眼内距離算出部122は、干渉光学系14を用いて取得された2つの干渉光の検出データに基づいて被検眼Eの1以上の眼内距離を算出する。眼内距離算出部122は、検出データに含まれる当該2つの干渉光に基づく2つの干渉信号(例えば図6参照)の位置の間隔に基づいて被検眼Eの眼内距離を算出する。
眼内距離算出部122は、通常測定モードにおいて、被検眼Eの基準部位を基準に複数の眼内距離を算出することが可能である。基準部位として、被検眼Eからの測定光LSの戻り光の強度が強い部位が挙げられる。基準部位には、被検眼Eの角膜頂点(角膜前面)や網膜や内境界膜等がある。それにより、被検眼Eが動いてしまい、干渉信号の位置が変わってしまった場合でも、基準部位の干渉信号を基準にすることによって、常に高い精度で複数の眼内距離を算出することができる。
眼内距離算出部122は、角膜頂点に相当する干渉信号の位置と網膜に相当する干渉信号の位置との間隔及び網膜・前房深度用参照ミラーユニット160の移動量に基づいて眼軸長(眼内距離D1)を求める。眼内距離算出部122は、角膜頂点に相当する干渉信号の位置と水晶体前面に相当する干渉信号の位置との間隔及び網膜・前房深度用参照ミラーユニット160の移動量に基づいて前房深度(眼内距離D2)を求める。眼内距離算出部122は、角膜頂点に相当する干渉信号の位置と水晶体後面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて距離(D2+D3)を求め、求められた距離(D2+D3)から距離D2を差し引くことにより水晶体厚(距離D3)を求める。眼内距離算出部122は、角膜頂点(角膜前面)に相当する干渉信号の位置と角膜後面に相当する干渉信号の位置との間隔に基づいて角膜厚を求める。
IOL算出部123は、被検眼Eの眼球光学系の眼屈折力と眼内距離算出部122において求められた眼軸長、前房深度、水晶体厚及び角膜厚の少なくとも1つを公知の計算式に代入することにより最適なIOLを選定する。なお、IOL算出部123は、眼屈折力の算出結果と眼軸長の算出結果とを公知の計算式に代入することにより最適なIOLを選定してもよい。
距離特定部124は、IOL測定モードにおいて、光軸Oの方向におけるIOL90の前後面位置と、IOL90と拡散反射部材91との間の距離とを特定する。距離特定部124は、干渉光学系14を用いてIOL測定ユニット92に対して測定光LSを照射し、その戻り光と参照光LRとの干渉光LCを検出することによりIOL90の前後面位置及びIOL90と拡散反射部材91との間の距離を求めることが可能である。すなわち、距離特定部124は、拡散反射部材91に相当する干渉信号の位置とIOL90に相当する干渉信号の位置とを特定し、これらの位置の間隔に基づいて、光軸Oの方向におけるIOL90の前後面位置及びIOL90と拡散反射部材91との間の距離を求める。IOL90に相当する干渉信号の位置は、例えば、IOL90の表面に相当する干渉信号の位置とIOL90の裏面に相当する干渉信号の位置との中間位置として求められる。
距離特定部124は、IOL測定モードにおいて、ケース90Aの第1透過部90Cに相当する干渉信号及び第2透過部90Dに相当する干渉信号を検出することにより、IOL90がケース90Aに収容されているか否かを判定することが可能である。この場合、後述のレンズ屈折力算出部125は、距離特定部124により得られた判定結果に基づいて、IOL90の屈折力値を求めることができる。
レンズ屈折力算出部125は、眼屈折力算出部121により求められたIOL測定ユニット92の屈折力値(光学特性値)と距離特定部124により特定されたIOL90と拡散反射部材91との間の距離とに基づいてIOL90の屈折力値を求める。例えば、IOL90が空気中に配置されている場合、IOL測定ユニット92の屈折力値がR(ディオプタ)であり、IOL90と拡散反射部材91との間の距離がL(mm)のとき、レンズ屈折力算出部125は、式(1)よりIOL90の焦点距離f(mm)を求める。
レンズ屈折力算出部125は、求められた焦点距離fをメートルで表し、その逆数を求めることでIOL90の屈折力値(ディオプタ値)を求めることが可能である。レンズ屈折力算出部125は、IOL90と拡散反射部材91との間の距離を調整することによりIOL測定ユニット92の屈折力値が0ディオプタを含む所定の範囲に含まれるとき、式(1)よりIOL90の焦点距離を求めることが望ましい。所定の範囲には、例えば、+0.25ディオプタ〜−0.25ディオプタの範囲などがある。
IOL90がケース90Aに収容されている場合、ケース90Aによる屈折の影響で見かけの屈折力は変化する。この場合、第1透過部90C及び第2透過部90Dの厚さ、屈折率が既知であれば計算によりケースの影響を補正することが可能である。第1透過部90Cや第2透過部90Dの厚さ(光路長)は、IOL90の前後面の位置と同様に干渉計測により得ることができるが、屈折率が不明である。この屈折率は、一般的なケースの素材がポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)であると仮定して、第1透過部90Cや第2透過部90Dの素材としてPMMAの屈折率値を用いることで第1透過部90C及び第2透過部90Dの厚さによる誤差の補正が可能となる。ここで第1透過部90C及び第2透過部90Dの素材又は屈折率値が既知であれば、これを入力することでより精度の高い補正が可能である。
また、IOL90の素材がハイドロゲル共重合体など含水率の高い物質の場合は、乾燥を防ぐためケース90A内に水などの液体を封入しこの中に保持されるものがある。この場合、IOL90の材質と水の屈折率差が空気とする場合に比べて小さくなるため、見かけの屈折力が弱く測定されてしまう。この場合も周囲の液体の屈折率、IOL90の素材の屈折率が既知であれば補正が可能となる。ここで、一般的な液体を水としで水の屈折率値を用いる。IOLの素材に関しては複数の材質の候補から材質を選定する。或いは、材質の屈折率が既知である場合はその値を入力することで更に精度の良い補正が可能となる。
IOL90は、実施形態に係る「被検レンズ」の一例である。レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7は、実施形態に係る「第1測定光学系」の一例である。屈折力測定は、実施形態に係る「光学特性測定」の一例である。屈折力値は、実施形態に係る「光学特性値」の一例である。レンズ屈折力算出部125は、実施形態に係る「光学特性値算出部」の一例である。ケラト測定系3及び干渉光学系14は、実施形態に係る「第2測定光学系」の一例である。IOL測定モードにおいて、干渉光学系14と別途に設けられた干渉光学系により拡散反射部材91に相当する干渉信号の位置とIOL90に相当する干渉信号の位置とを特定してもよい。この場合、当該別途に設けられた干渉光学系は、実施形態に係る「第3測定光学系」の一例に相当する。
<動作例>
実施形態に係る眼科装置1000の動作例について説明する。
図11に、実施形態に係る眼科装置1000の動作例のフロー図を示す。図11は、通常測定モードにおける眼科装置1000の動作例のフロー図を表す。通常測定モードでは、対物レンズ51を通過する光の光路からIOL測定ユニット92が退避されている。
(S1)
まず、被検者の顔を眼科装置1000に設けられた顔受け部で固定した後、測定ヘッドが被検眼Eの検査位置に移動される。検査位置とは、アライメントズレが測定精度に影響せず被検眼Eの検査を行うことが可能な位置である。前述のアライメント(Zアライメント系1及びXYアライメント系2と観察系5とにより)を介して被検眼Eが検査位置に配置される。測定ヘッドの移動は、ユーザによる操作若しくは指示又は制御部110による指示にしたがって、制御部110によって実行される。
(S2)
S1のアライメント状態が適正になったとき、眼科装置1000は、レフ測定モードに移行する。レフ測定モードへの移行は、制御部110からの指示、又は操作部180に対するユーザの操作若しくは指示により行われる。S2では、前述のようにレフ測定が行われ、眼屈折力算出部121は、屈折力値を算出する。制御部110では、算出された屈折力値などが記憶部112に記憶される。
(S3)
次に、眼科装置1000は、ケラト測定モードに移行する。ケラト測定モードへの移行は、制御部110からの指示、又は操作部180に対するユーザの操作若しくは指示により行われる。ケラト測定モードに移行すると、制御部110は、ケラトリング光源32を点灯させる。ケラトリング光源32から光が出力されると、角膜Cに角膜形状測定用リング状光束光が投射される。眼屈折力算出部121は、撮像素子58によって取得された像に対して演算処理を施すことにより、角膜曲率半径を算出し、算出された角膜曲率半径から角膜屈折力、角膜乱視度及び角膜乱視軸角度を算出する。制御部110では、算出された角膜屈折力などが記憶部112に記憶される。
(S4)
次に、眼科装置1000は、干渉計測モードに移行する。干渉計測モードへの移行は、制御部110からの指示、又は操作部180に対するユーザの操作若しくは指示により行われる。S4では、前述のように水晶体前面に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させ、眼内距離算出部122は、角膜頂点と水晶体前面との距離を算出することにより前房深度を求める。制御部110では、算出された前房深度が記憶部112に記憶される。
(S5)
次に、網膜に相当する干渉信号を検出できるように網膜・前房深度用参照ミラーユニット160を移動させ、眼内距離算出部122は、角膜頂点と網膜との距離を算出することにより眼軸長を求める。制御部110では、算出された眼軸長が記憶部112に記憶される。
(S6)
IOL算出部123は、S3で求められた角膜曲率、S4で求められた前房深度、S5で求められた眼軸長などを用いた公知の計算式により屈折力を含む最適なIOLを求める。制御部110では、算出されたIOL度数が記憶部112に記憶される。以上で、眼科装置1000の動作は終了である(エンド)。
以上のようにIOLが選定されると、眼科装置1000は、IOL測定モードにおいて、選定されたIOLの屈折力を高精度に測定することができる。通常測定モードからIOL測定モードへの移行は、制御部110からの指示、又は操作部180に対するユーザの操作若しくは指示により行われる。IOL測定モードでは、対物レンズ51を通過する光の光路にIOL測定ユニット92が配置される。制御部110は、IOL測定ユニット92が光軸Oにおける所定の位置に配置されたことを検知することにより、眼科装置1000の測定モードを通常測定モードからIOL測定モードに切り替えてもよい。
図12に、実施形態に係る眼科装置1000の他の動作例のフロー図を示す。図12は、IOL測定モードにおける眼科装置1000の動作例のフロー図を表す。
(S11)
制御部110は、IOL測定ユニット92の屈折力の測定条件を受け付ける。測定条件は、操作部180に対するユーザの操作若しくは指示により設定される。例えば、制御部110は、図13に示すような設定画面を表示部10の表示画面10aに表示させ、操作部180に対するユーザの操作若しくは指示により設定された内容を測定条件として受け付ける。測定条件には、IOL測定ユニット92におけるIOL90の設置状態、IOL90の素材などがある。設置状態には、IOL90単体(すなわち、空気中)、ケース90Aに収容された状態、ケース90Aに水などの所定の液体中に浸漬保存された状態などがある。素材には、PMMA、シリコン、ユーザにより指定可能な屈折率などがある。後述のS19では、S11において指定された測定条件に対応した屈折率を用いてIOL90の屈折力値が算出される。測定条件は検者が直接指定してもよいし、検者がIOL90の製品名を選択したりケース90Aに付されたバーコードなどを読み取らせたりすることでデータベースから読み出せるようになっていてもよい。
(S12)
測定条件の設定が完了すると、測定ヘッドがIOL測定ユニット92の検査位置に移動される。例えば、観察系5の撮像素子58の出力に基づいて、制御部110は、表示部10にIOL90の画像を表示させる。手動でアライメントを行う場合、ユーザは、表示画面10aに表示されたIOL90の画像とアライメントマークとの上下左右方向のずれ量が小さくなるように操作部180を操作して測定ヘッドの上下左右方向の位置調整を行う。また、ユーザは、表示画面10aに表示されたIOL90の画像のうち周縁部などのピントが合うように操作部180を操作して測定ヘッドの前後方向の位置調整を行う。自動でアライメントを行う場合、制御部110は、IOL90の画像(例えば、IOL90のレンズ部の周縁部より特定された中心位置)が撮像素子58の規定位置に合致するよう測定ヘッドを上下左右方向に移動させる。同様に、制御部110は、IOL90の画像のうち周縁部などのピントが合うように測定ヘッドを前後方向に移動させる。
(S13)
S12のアライメント状態が適正になったとき、眼科装置1000は、レフ測定モードに移行する。レフ測定モードへの移行は、制御部110からの指示、又は操作部180に対するユーザの操作若しくは指示により行われる。S13では、前述のようにIOL測定ユニット92に対してレフ測定が行われる。
(S14)
眼屈折力算出部121は、S13におけるレフ測定により得られた測定結果を用いてIOL測定ユニット92の屈折力値を算出する。制御部110では、算出されたIOL測定ユニット92の屈折力値が記憶部112に記憶される。
(S15)
制御部110は、S13において算出された屈折力値(等価球面度)が0ディオプタを中心に±0.25ディオプタの範囲に含まれるか否かを判定する。算出された屈折力値が当該範囲に含まれると判定されたとき(S15:Y)、眼科装置1000の動作はS17に移行する。算出された屈折力値が当該範囲に含まれないと判定されたとき(S15:N)、眼科装置1000の動作はS16に移行する。
(S16)
S15において、算出された屈折力値が上記の所定の範囲に含まれないと判定されたとき(S15:N)、制御部110は、移動機構91Aを制御することにより拡散反射部材91を光軸Oの方向に所定の移動量だけ移動させる。制御部110は、S13において算出された屈折力値の正負符号に対応した方向に拡散反射部材91を移動する。眼科装置1000の動作はS13に移行する。
なお、S14において、制御部110が算出された屈折力値を表示部10に表示させ、ユーザが、表示部10を参照しつつ手動で拡散反射部材91を移動させてもよい。
(S17)
S15において、算出された屈折力値が上記の所定の範囲に含まれると判定されたとき(S15:Y)、制御部110は、干渉光学系14によりIOL測定ユニット92に対して測定光LSを照射させ、その戻り光と参照光LRとの干渉光LCを検出させる。距離特定部124は、拡散反射部材91に相当する干渉信号の位置とIOL90に相当する干渉信号の位置とを特定し、IOLの位置(対物レンズからの距離)を特定する。
(S18)
距離特定部124は、S17において特定された拡散反射部材91に相当する干渉信号の位置とIOL90の前後面に相当する干渉信号の位置との間隔を求めることにより、IOL90の位置及びIOL90と拡散反射部材91との間の距離を求める。
(S19)
制御部110は、レンズ屈折力算出部125にIOL90の屈折力値を算出させる。レンズ屈折力算出部125は、S11において設定された測定条件であるケースの有無、液中への浸漬の有無、IOLの位置に応じて補正を行う。以上で、眼科装置1000の動作は終了である(エンド)。
以上のように、IOL測定ユニット92が0ディオプタの位置に調整されている場合、IOL測定ユニット92のZ方向の位置は屈折力の測定に影響しないため、拡散反射部材91までの距離だけから屈折力を求めることができる。これに対して、IOL測定ユニット92が0ディオプタの位置に調整されていない場合、IOL測定ユニット92の位置が測定結果に影響し、0ディオプタの位置からのずれが大きいほど測定結果への影響が顕著になる。例えば±0.25ディオプタ以内であれば、その影響を無視できるほど軽微であるため、拡散反射部材91までの距離だけから屈折力を求めることが可能である。また、IOL測定ユニット92のZ方向の位置ズレを公知の手法により演算に含めて屈折力を求めてもよいし、IOL測定ユニット92の位置が測定の基準位置(例えば、人眼測定時瞳孔の位置)となるようアライメントしてもよい。
〔変形例〕
実施形態では、レフ測定においてレフ測定受光系7により取得された測定光の戻り光の像に基づいて測定を行う場合について説明したが、実施形態に係る眼科装置の構成は、これに限定されるものではない。実施形態に係る変形例では、レフ測定においてハルトマン板及びエリアセンサーを用いて測定を行い、被検眼E又はIOL測定ユニット92の収差が測定される。以下では、実施形態の変形例に係る眼科装置について、実施形態との相違点を中心に説明する。
図14に、実施形態の変形例に係る眼科装置の光学系の構成例を示す。図14は、変形例に係るIOL測定モードにおける眼科装置の光学系の構成例を表す。図14において、図1Bと同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
変形例に係る眼科装置1000aの構成が図1Bに示す実施形態に係る眼科装置1000の構成と異なる点は、レフ測定受光系7に代えて波面測定光学系7aが設けられた点である。波面測定光学系7aは、エリアセンサー76a、ハルトマン板75a、結像レンズ74a、絞り73a、リレーレンズ72、瞳レンズ71、ビームスプリッター66a、偏心プリズム67、ダイクロイックミラー49及び52、対物レンズ51を含んで構成されている。絞り73a、結像レンズ74a、ハルトマン板75a、及びエリアセンサー76aは、光軸方向に移動可能に構成された測定ユニット73Bに搭載される。収差測定の際、合焦レンズ62と測定ユニット73Bとは、連係して光軸方向に移動される。
ハルトマン板75aは、IOL測定ユニット92(通常測定モードのとき、被検眼E)からの戻り光の光路に設けられ、結像レンズ74aからの光束を少なくとも17の光束に分割する光学素子である。ハルトマン板75aは、遮光性を有するプレートに複数のマイクロレンズが所定の配列で形成されたレンズアレイである。ハルトマン板75aに測定光の平行光束が入射すると、エリアセンサー76aには、レンズアレイの配列状態に応じた戻り光の像が形成されるようになっている。エリアセンサー76aはCCDなどの撮像素子からなり、戻り光の像の検出結果が処理部9に送られる。
IOL測定ユニット92からの戻り光は、対物レンズ51により屈折され、ダイクロイックミラー52、49、偏心プリズム67を経由し、ビームスプリッター66aによりその一部が反射される。ビームスプリッター66aで反射された戻り光は、瞳レンズ71、リレーレンズ72、絞り73a、結像レンズ74aを経由し、ハルトマン板75aによって複数の光束に分割され、エリアセンサー76aが戻り光の像を検出する。
図15及び図16に、変形例に係る眼科装置1000aの情報処理系の機能的構成例を示す。図15において、図9と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図16において、図10と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
この変形例では、図9の演算処理部120に代えて演算処理部120aが設けられる。演算処理部120a(処理部9)は、エリアセンサー76aよる戻り光の像の検出結果を取得する。また、主制御部111は、測定ユニット73B及び合焦レンズ62を連係して光軸方向に移動させる。それにより、波面測定光学系7aの合焦位置が変更される。また、主制御部111は、撮像素子58やエリアセンサー76aや分光器143を制御することにより、これらにより取得された信号を取り込み、演算処理部120aにより画像の形成等を行わせる。
演算処理部120aは、収差算出部121aと、眼内距離算出部122と、IOL算出部123と、距離特定部124と、レンズ屈折力算出部125とを含む。
収差算出部121aは、エリアセンサー76aにより取得された戻り光の像の形態に基づいて、IOL測定ユニット92(又は被検眼Eの眼球光学系)の2次以上の収差を含む収差情報を算出する。2次以上の収差には、球面度数、乱視度数、コマ収差、球面収差などがある。例えば、記憶部112は、ハルトマン板75aに対応する基準形態に対応したデータをあらかじめ記憶する。収差算出部121aは、エリアセンサー76aから当該エリアセンサー76aによって取得された戻り光の像のデータを取得する。収差算出部121aは、この戻り光の像のデータと記憶部112に記憶された基準形態に対応したデータとに基づいて戻り光の像の形態と基準形態とを比較することにより、IOL測定ユニット92(又は被検眼E)を正視と同じ状態にするための収差情報を算出する。これにより、波面測定光学系7a及び収差算出部121aは、IOL測定ユニット92(被検眼Eの眼球光学系)の収差情報を取得することが可能である。
レンズ屈折力算出部125は、収差算出部121aにより求められたIOL測定ユニット92の収差としての屈折力値(光学特性値)と距離特定部124により特定されたIOL90と拡散反射部材91との間の距離とに基づいて、実施形態と同様にIOL90の屈折力値を求める。
波面測定光学系7aは、変形例に係る「第1測定光学系」の一例である。
(作用・効果)
実施形態に係る眼科レンズ測定装置の作用及び効果について説明する。
実施形態に係る眼科レンズ測定装置(眼科装置1000、1000a)は、第1測定光学系(レフ測定投射系6及びレフ測定受光系7、波面測定光学系7a)と、距離特定部(124)と、光学特性値算出部(レンズ屈折力算出部125)とを含む。第1測定光学系は、被検レンズ(IOL90)に光を投射し、被検レンズを透過した光が投射された拡散反射部材(91)からの戻り光を受光することにより光学特性測定(屈折測定)を行う。距離特定部は、第1測定光学系の光軸(O)方向における被検レンズと拡散反射部材との間の距離を特定する。光学特性値算出部は、第1測定光学系により得られた光学特性値(屈折力値)と距離特定部により特定された距離とに基づいて被検レンズの光学特性値を求める。
このような構成によれば、被検レンズの光学特性測定を行う第1測定光学系の光軸方向における被検レンズと拡散反射部材との間の距離を特定し、被検レンズの光学特性値と特定された距離とに基づいて被検レンズの光学特性値を求めるようにしたので、被検レンズが様々な形態を有していてもその光学特性を高精度に測定することが可能になる。それにより、選定された被検レンズの高精度な光学特性を事前に確認することが可能になり、術前に予想された結果が得られないといった事態を回避できるようになる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置では、第1測定光学系は、被検眼(E)に光を投射し、被検眼の眼底(Ef)からの戻り光を受光することにより被検眼の2次以上の収差の少なくとも1つの測定を行う。
このような構成によれば、第1測定光学系により2次以上の収差の少なくとも1つを測定するようにしたので、被検レンズの光学特性を高精度に測定することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置は、被検眼の眼軸長、前房深度、及び角膜収差情報の少なくとも1つの測定を行う第2測定光学系(ケラト測定系3及び干渉光学系14)を含んでもよい。
このような構成によれば、被検レンズの度数の決定に必要な被検眼の眼軸長等の少なくとも1つの測定を行う第2測定光学系と一体化するようにしたので、例えば、1台の装置で、手術直前に被検レンズの度数を決定し、決定された度数に適合した被検レンズの光学特性を確認することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置では、第2測定光学系は、光源(光源141)からの光(L0)を測定光(LS)と参照光(LR)とに分割し、測定光を被検レンズに投射し、拡散反射部材からの戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出してもよい。実施形態に係る眼科レンズ測定装置は、干渉光の検出結果に基づいて眼軸長及び前房深度の少なくとも一方を求める眼内距離算出部(122)を含んでもよい。
このような構成によれば、光コヒーレンストモグラフィを用いて被検眼の眼軸長及び前房深度の少なくとも一方を求めるようにしたので、高精度に被検レンズの度数を決定し、且つ、決定された度数に適合した被検レンズの光学特性を高精度に測定し、確認することができる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置は、光源からの光を測定光と参照光とに分割し、測定光を被検レンズに投射し、拡散反射部材からの戻り光と参照光との干渉光を検出する第3測定光学系(干渉光学系14とは別途に設けられた干渉光学系)を含んでもよい。距離特定部は、第3測定光学系による干渉光の検出結果に基づいて被検レンズの位置と拡散反射部材の位置とを特定することにより前記距離を求めてもよい。
このような構成によれば、被検レンズの度数の決定に必要な被検眼の眼軸長等の少なくとも1つの測定を行う光学系とは別途に設けられた第3測定光学系により、決定された度数に適合した被検レンズの光学特性を確認することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置は、拡散反射部材を光軸方向に移動する移動機構(91A)を含んでもよい。
このような構成によれば、第1測定光学系の光軸方向における被検レンズと拡散反射部材との間の距離を変更することができるので、被検レンズの度数やケースへの収容の有無など被検レンズの形態に応じて当該距離を変更することにより、被検レンズの光学特性を高精度に求めることができるようになる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置は、第1測定光学系により得られた光学特性値が0ディオプタを含む所定の範囲に含まれるように移動機構を制御する制御部(110)を含んでもよい。光学特性値算出部は、光学特性値が所定の範囲に含まれるとき、被検レンズの光学特性値を求めてもよい。
このような構成によれば、被検レンズ及び拡散反射部材により構成される擬似眼の光学特性値が正視状態のときに被検レンズの光学特性値を求めることができるので、高精度な被検レンズの光学特性値を取得することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置では、光学特性値算出部は、被検レンズの素材の屈折率に基づいて被検レンズの光学特性値を求めてもよい。
このような構成によれば、被検レンズの素材に応じて、被検レンズの光学特性値を高精度に求めることが可能になる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置では、光学特性値算出部は、被検レンズの媒質の屈折率に基づいて被検レンズの光学特性値を求めてもよい。
このような構成によれば、被検レンズの媒質に応じて、被検レンズの光学特性値を高精度に求めることが可能になる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置では、被検レンズは、ケース(90A)に収容されてもよい。ケースは、第1測定光学系により投射された光を透過する第1透過部(90C)と、第1透過部及び被検レンズを透過した光を透過する第2透過部(90D)と、を含んでもよい。光学特性値算出部は、第1透過部の素材の屈折率及び第2透過部の素材の屈折率に基づいて被検レンズの光学特性値を求めてもよい。
このような構成によれば、被検レンズを収容するケースに応じて、被検レンズの光学特性値を高精度に求めることが可能になる。
また、実施形態に係る眼科レンズ測定装置では、被検レンズは、流体とともにケースに収容され、光学特性値算出部は、流体の屈折率に基づいて被検レンズの光学特性値を求めてもよい。流体は、液体、気体などであってよい。
このような構成によれば、ケースに収容された流体に応じて、被検レンズの光学特性値を高精度に求めることが可能になる。
実施形態に係る眼科レンズ測定装置は、被検レンズが装着される装着部(93A)を含み、拡散反射部材を保持する保持部(93)を含んでもよい。保持部は、被検レンズが第1測定光学系により投射される光の光路に配置されるように、前記光路又はその近傍に配置可能であってよい。
このような構成によれば、被検レンズと拡散反射部材とにより構成される擬似眼を保持する保持部材を、第1測定光学系により投射される光の光路に配置可能にしたので、被検眼の屈折力測定や眼軸長等の測定と擬似眼の屈折力測定とを1台で実現できる装置を提供することができる。
(その他の変形例)
以上に示された実施形態又はその変形例は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
上記の実施形態又は変形例では、眼内距離算出部が、主として眼軸長や前房深度を算出する例について説明したが、眼球算出部は、これに限定されるものではなく、角膜厚や水晶体厚についても同様に算出することが可能である。
上記の実施形態において説明した光学素子やその配置に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態におけるハーフミラーに代えてビームスプリッターが設けられてもよい。
上記の実施形態において、眼屈折測定の光源と干渉計測の光源とが共通である場合について説明したが、眼屈折測定の光源と干渉計測の光源とがそれぞれ独立に配置されていてもよい。この場合、それぞれの光源からの光束を光軸Oに合わせるためハーフミラーや切替(リターン)ミラーを配置することが可能である。
上記の実施形態において、光軸に沿った測定光により被検レンズの位置の特定を行っているが、測定光を被検レンズ面上で2次元にスキャンするスキャナーを光軸上に配置し、当該スキャンにより得られた3次元断層像から被検レンズの位置の特定を行う構成であってもよい。
眼圧測定機能、眼底撮影機能、前眼部撮影機能、超音波検査機能など、眼科分野において使用可能な任意の機能を有する装置に対して、上記の実施形態又は変形例に係る発明を適用することが可能である。なお、眼圧測定機能は眼圧計等により実現される。眼底撮影機能は眼底カメラや走査型検眼鏡(SLO)等により実現される。前眼部撮影機能はスリットランプ等により実現される。超音波検査機能は超音波診断装置等により実現される。また、このような機能のうち2つ以上を具備した装置(複合機)に対してこの発明を適用することも可能である。