JP2018038275A - ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物、該微生物を利用した脂質生産方法 - Google Patents

ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物、該微生物を利用した脂質生産方法 Download PDF

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Abstract

【課題】食品工場から排出された余剰汚泥を培地の構成成分として、加水分解後のpH調整や塩分濃度調整を不要とすることが可能な、高い収量を得ることができる脂質生産能を有する微生物及びその微生物を利用した脂質生産方法を提供することを課題とする。【解決手段】余剰汚泥に酸やアルカリを添加して加水分解し余剰汚泥を液状にする加水分解工程、前記液状の余剰汚泥を希釈媒体に分散させる余剰汚泥分散工程、前記分散させた余剰汚泥の培地にラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属(Aurantiochytriumsp.)L3W株の微生物を培養させて脂質を生産する脂質生産工程を備えることを特徴とするラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法により課題を解決できた。【選択図】 図1

Description

本発明は、余剰汚泥の酸やアルカリを用いた加水分解物からの脂質の生産能を有する微生物、該微生物を利用し余剰汚泥から脂質を生産する脂質生産方法に関する。
余剰汚泥から微生物を利用して脂質を生産する方法は、一般的に余剰汚泥を酸やアルカリを用いて加水分解物し、その加水分解物のpHを微生物の培養に適する中性になるように調整し、そのpH調整した加水分解物を用いて微生物を培養し脂質を生産する方法が実施されている。
特許文献1には、塩化ナトリウム濃度を少なくとも0.6w/w%とした有機質食品廃棄物を栄養培地として用い、これにラビリンチュラ属微生物を植菌し、培養することにより高度不飽和脂肪酸が富化した有用有機物材料を生成させることを特徴とする食品廃棄物処理方法が開示されている。また特許文献1の段落[0013]にラビリンチュラ属微生物はラビリンチュラ類ラビリンチュラ属であると記載され、段落[0017]に培地のpHを5〜9、好ましくは6〜8の範囲に調整するとの記載がある。
特許文献2には、有機性廃棄物を活性汚泥処理して生じる第1汚泥又はその処理物を栄養源として、油脂を生成蓄積する能力を有する微生物であって、(1)オーランチオキトリウム属に属する第1の微生物と、(2)澱粉及び/又はタンパク質を分解する酵素を分泌する特性を有する第2の微生物とを混合培養し、その培養物を固液分離して、前記微生物の菌体を含有する第2汚泥を採取し、該第2汚泥中の微生物の菌体から油脂を抽出することを特徴とする油脂製造方法が開示されている。また、特許文献2の段落[0007]に分解や可溶化処理を行わない汚泥を栄養源とすることが記載されている。
特許文献3には、油脂あるいは脂肪酸を炭素源として培養可能であり、かつ長鎖高度不飽和脂肪酸生産能を有するラビリンチュラ属に属する微生物が開示され、ラビリンチュラ属に属する微生物がラビリンチュラ・エスピーS3−2であることが記載されているが、特許文献3の段落[0008]や[0014]に記載されているように培地は、寒天培地であり余剰汚泥ではないので余剰汚泥には適用できないという問題があった。また、特許文献3の段落[0014]には培地は一般的にpH7〜8である天然海水又は人工海水で調整することとし、通常の海水の50%〜90%の海水濃度がラビリンチュラ属菌の培養には望ましいと記載されている。このことは培地としてはpHを中性とし塩分濃度を海水レベルにしなければならないことを示唆している。
特許文献4には、微生物を分解する分解装置と、前記分解された微生物を栄養源として、従属栄養性藻類を培養する培養装置と、前記従属栄養性藻類から油脂を抽出する抽出装置と、を備える、油脂製造システムが開示されている。そして、特許文献4の段落[0018]に、余剰汚泥を好ましくは70℃以上の温度で加熱し可溶化させるとの記載がある。
特開2004−298798号公報 特開2014−30383号公報 特開2001−275656号公報 特開2010−246407号公報
一般的な余剰汚泥から微生物を利用して脂質を生産する方法は、加水分解物のpHを微生物の培養に適する中性になるようにpH調整しなければならないという手間と生産コストがかかるという問題があった。
特許文献1に記載の発明は、有機性食品廃棄物の栄養培地であって20%海水塩分濃度に調整した培地であり、ラビリンチュラ属微生物を培養するには海水を加えて調整しなければならないという問題があった。
また、特許文献1の段落[0012]には、「海洋性菌の1種であるラビリンチュラ属微生物を用いるため、塩分すなわち塩化ナトリウムが存在しない環境下では、増殖が行われないので、栄養培地中に少なくとも20%海水濃度に相当する0.6w/w%の塩化ナトリウムを含有させる必要がある」との記載があり、培地を塩分が含有した環境下にする塩分調整しなければならないという問題があった。そして水溶液として人工海水や天然海水を使用するため沿岸の近辺でなければ処理が困難であったり、又は人工海水の購入をしなければならないという問題があった。
特許文献2に記載の発明は、特許文献2の段落[0028]に記載されているように活性汚泥には多種多様な微生物が存在しているので、オーランチオキトリウム属に属する微生物やスロストキトリウム属に属する微生物は好塩性を利用して多種多様な微生物を減じるために、培養条件の塩濃度を高めなければならず、段落[0014]に記載されているように培地の塩濃度を0.3〜7.0w/v%に調整しなければならず、この塩分濃度以外では増殖ができないという問題があった。特許文献2の段落[0040]に人工海水を使用する試験例1が記載されており人工海水を購入しなければならないという問題があった。
また、特許文献2に記載の発明は、オーランチオキトリウム属に属する第1の微生物以外に、追加して澱粉及び/又はタンパク質を分解する酵素を分泌する特性を有する第2の微生物を混合培養しなければならないという煩わしさがあった。さらに、特許文献2には、増殖の評価は特許文献2の表1のハロー径/コロニー径が1以上か、同じか、否かという評価しか記載されていないので、オーランチオキトリウム属に属する微生物が培養され脂肪が蓄積されたとの記載はあるが具体的に培養効果を表す数値の記載が認められないため、オーランチオキトリウム属に属する微生物の培養の効果がわからないという問題もあった。
特許文献3に記載の発明は、培地を通常の海水濃度の50%〜90%の濃度にしなければならず培地のpHを中性にすることから、手間がかかりコストがかかること、さらに、培地は油脂や脂肪酸を炭素源としており、多種多様な微生物が存在する場合にラビリンチュラ属に属する微生物が高収量で培養されず多種多様な微生物も一緒に培養されるという問題があった。
特許文献4に記載の発明は、余剰汚泥の可溶化を加熱のみで実施すると記載されているが加熱だけでは加水分解があまり進まず可溶化が充分には促進されないという問題があった。また、従属栄養性藻類がシゾキトリウム・エスピーなる海洋性の場合には、滅菌した余剰汚泥を海水又は人工海水に溶した培地にしており、シゾキトリウム・エスピーの培養で塩分濃度を3〜4w/v%程度に制限しなければならないという問題があった。
また、特許文献4の段落[0020]には従属栄養性藻類が海洋性でない場合は海水でない水を使用することが記載されており、従属栄養性藻類の種類によって加える水の塩分濃度を変えなければ「ならないという煩わしさがあった。そして、特許文献4の段落[0018]に余剰汚泥に磁場を与えるというエネルギーを加えなければならないために投資コストがかかるという問題があった。
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、多種多様な微生物が存在する食品工場等からの余剰汚泥から高度不飽和脂肪酸を含む脂質を生産できる微生物であって、pH調整や塩分濃度調整を不要とし、余剰汚泥の加水分解物に天然海水や人工海水を加えずに汚泥が発生した排水を加えて前記加水分解物を分散させて、高い収量を得ることができ前記排水も処理することができる、高度不飽和脂肪酸を含む脂質生産能を有する微生物及びその微生物を利用した脂質生産方法を提供することを課題とする。
請求項1に記載の微生物は、余剰汚泥の加水分解物を炭素源や窒素源として培養可能であり、脂質生産能を有するラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物であることを特徴とする。
請求項2に記載の微生物は、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物が、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター 受託番号FERM P−22307で示されるラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium sp.)L3W株である請求項1に記載の微生物であることを特徴とする。
請求項3に記載のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法は、余剰汚泥に酸やアルカリを添加して加水分解し余剰汚泥を液状にする加水分解工程、前記液状の余剰汚泥を希釈媒体に分散させる余剰汚泥分散工程、前記分散させた余剰汚泥の培地に請求項1又は2の微生物を植種、培養し脂質を生産する脂質生産工程を備えることを特徴とする。
請求項4に記載のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法は、請求項3において、前記加水分解工程後の余剰汚泥の加水分解物に、糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む、余剰汚泥を産出する排水や余剰汚泥を取り出した後の処理水を加えた培地を炭素源や窒素源とし、請求項1又は2の微生物を培養させて脂質を生成蓄積する脂質生産工程を備えることを特徴とする。
請求項1又は2に記載の微生物は、沖縄県のマングローブの落葉から採取した微生物であり、余剰汚泥の加水分解物を炭素源や窒素源とし、幅広いpHや幅広い塩分濃度で培養可能であるので、加水分解後にpH調整や塩分濃度調整を必要としないし、微生物が分解した液状に可溶化した余剰汚泥を分散させるために海水でなく排水を使用した培地で培養でき脂質生産ができるという効果を奏する。
食品工場からの余剰汚泥を加水分解しその加水分解物を食品工場からの排水を貯めた容器に分散させて培地としこの培地で微生物を培養させる場合について本発明の有利な効果を詳しく説明する。まず加水分解の段階では余剰汚泥を加水分解させるために、余剰汚泥に強酸又は強アルカリを加えて液状化する。例えば、pH1.5の強酸を加えた場合は、加水分解物は約pH3になり、pH12に強アルカリを加えた場合は、加水分解物は約pH10になる。余剰汚泥の加水分解に弱酸や弱アルカリを使用した場合には余剰汚泥の加水分解が進まないため弱酸や弱アルカリは使用されない。
次に、食品工場からの排水を貯めた容器に加水分解物を分散させて培地とする段階である。食品工場からの排水は、例えば、梅干し工場の排水はpH3、飲料製品製造工場の排水はpH5〜6、酒造工場の排水はpH4であるように食品工場の排水のpHは酸性が多い。このことは、余剰汚泥の加水分解に強酸を使用した場合に酸性の排水を貯めた容器に酸性の加水分解物を分散させた培地はpH3〜5であり酸性の培地となることが明らかである。一方、余剰汚泥の加水分解に強アルカリを使用した場合に酸性の排水を貯めた容器にアルカリ性の加水分解物を分散させた培地は排水の酸との中和効果により約pH8レベルの培地になる。
一般的には微生物の培養には培地のpHはpH6〜8が適しており、pH5以下やpH9以上の培地では微生物が増殖しにくい。このため、従来から酸を加水分解に使用し加水分解物の分散に酸性の排水を使用した場合には微生物が増殖しにくいため、一般的には酸性の加水分解物を中性に変えるpH調整が実施されている。これに対して本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株は、pH3レベルの酸性でも培養可能であるので、酸性の加水分解物をpH調整せずに培養できるという効果を奏する。pH3レベルの酸性での培養は、他の微生物の混入による影響を抑制する効果を奏する。
したがって、本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株は、食品工場からの余剰汚泥を加水分解しその加水分解物を食品工場からの排水を貯めた容器に分散させて培地としこの培地で微生物を培養させる場合に、pH調整を全く必要としないという効果を奏する。
請求項3に記載のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法は、余剰汚泥の加水分解物を炭素源や窒素源としかつpH調整しない培地で、脂質生産能を有するラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物を増殖させて脂質生産ができるという効果を奏する。
請求項4に記載のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法は、加水分解工程後の余剰汚泥の加水分解物に、糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む、余剰汚泥を産出する排水や余剰汚泥を取り出した後の排水を加えたものを培地とするので、海水や人工海水を投入させる必要がなく排水処理を有効に行うことができるという効果を奏する。
本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の顕微鏡写真である。 本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法のフロー図である。 L2R、L2Y、L3W、L4Y株の最大増殖量及び脂質含有量を示す図である。 pH7における低塩分濃度によるL3W株の増殖への影響を示す図である。 pH7における高塩分濃度によるL3W株の増殖への影響を示す図である。 酸性培地におけるL3W株の増殖への影響を示す図である。 アルカリ性培地におけるL3W株の増殖への影響を示す図である。 酸処理後の余剰汚泥を用いたL3W株の培養結果を示す図である。
本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属は、余剰汚泥の加水分解物を炭素源や窒素源として培養可能であり、表1に示すようにドコサヘキサエン酸(C22:6n−3)などの高度不飽和脂肪酸を含む脂質生産能を有する微生物である。前記微生物は、沖縄県国頭郡のマングローブ林に落ちていた落葉から採取した微生物である。表1の中で「−」は検出されなかったことを示す。
Figure 2018038275
本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株は、2016年5月2日付けで、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに、受託番号FERM P−22307で受託されている。図1にラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の顕微鏡写真を示す。図1において1マスの大きさは50μm×50μmである。
ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の分類学上の位置、培養条件、長期保存のための条件、科学的性質、相同性解析について説明する。
分類学上の位置はAurantiochytrium sp.である。
(培養条件)
培地名:790By+培地
培地の組成:
海水(Seawater)1L
酵母エキス(Yeast extract)1.0g/L
ペプトン(Peptone)1.0g/L
D+グルコース(D+Glucose)5.0g/L
培地のpH(減菌前):7.2
減菌温度・時間:121℃、15分間
培養温度:25℃
培養期間:5日
培養方法:振とう培養
光要求性:不要
(長期保存のための条件)
継代培養を実施する。
継代培養条件:寒天15g/Lを加えた790By+培地にて15℃で培養
植え継ぎ方法:白金耳によりコロニーのエッジから株を採取し、新たな培地に塗布する
植え継ぎ期間:1か月
増殖過程の状況:
植継直後:白色を呈するコロニーが出現
培養中期:コロニーが広がりを見せ、ややクリーム色となる
植継直前:コロニーが広がりを見せ、ややクリーム色となる
(科学的性質)
光合成能力がない従属栄養生物であり、白からクリーム色のコロニーを形成し、細胞の形状は球形であり、大きさは5〜15μm程度であり、pH3でも増殖可能であり、25℃の790By+培地において比増殖速度0.32h−1にて増殖できる。
(相同性解析)
ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium sp.)L3W株の18S rDNA 塩基配列を決定し、SIID18404−03−18Sの国際塩基配列データベースに対して相同性検索を実施した。検索結果の上位3位までの塩基配列との相同率を表2に示す。
Figure 2018038275
表2から、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium sp.)L3W株と相同率99%を上回る塩基配列の微生物がないため、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium sp.)L3W株は新株であることが示された。
ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株を培養させる培地として使用する余剰汚泥について説明する。この余剰汚泥は食品工場からの排水から得る。まず、食品工場等からの排水は沈殿池で処理され、該沈殿池の底面には生汚泥が堆積し該沈殿池内の液中にはコロイドや懸濁物質が浮遊している。前記コロイドや懸濁物質が浮遊している液を次の微生物反応槽に移送し該微生物反応槽では微生物がコロイドや懸濁物質を分解して増殖し、前記微生物反応槽の懸濁液が次の最終沈殿槽に送られる。該最終沈殿槽では前記微生物と処理水とが分離される。該最終沈殿槽で微生物が堆積し余剰汚泥となる。前記余剰汚泥は固形物の状態で得られる。このときに余剰汚泥と分離された処理水や、食品工場からの排水はラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物の培養に用いる培地に使用することもできる。
本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法2は、図2に示すように、余剰汚泥に酸やアルカリを添加して加水分解し余剰汚泥を液状にする加水分解工程3、前記液状の余剰汚泥を希釈媒体に分散させる余剰汚泥分散工程4、前記分散させた余剰汚泥の培地にラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物又はラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株を植種、培養し脂質を生産する脂質生産工程5を備える。
まず、加水分解工程3について説明する。余剰汚泥は固定物であるので、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属による汚泥の資化のために固形物の余剰汚泥を可溶化させる。そのために、固形物の余剰汚泥に、硫酸等の酸又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加して、常温又は加熱下で前記余剰汚泥を加水分解し可溶化して液状にする。この可溶化を進めるためには余剰汚泥中に含まれる微生物の細胞壁を分解する必要があり、この細胞壁の分解には酸やアルカリによる加水分解が有効である。また前記加水分解時に加熱させた方が常温状態よりも加水分解が促進される。この加水分解によって余剰汚泥を構成する微生物の大部分は死滅し不活化させられる。
次に、余剰汚泥分散工程4について説明する。余剰汚泥分散工程4は、液状の余剰汚泥を希釈媒体に投入して余剰汚泥を希釈媒体中に分散させる工程である。前記希釈媒体としては、余剰汚泥を産出する糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む排水、余剰汚泥を取り出した後の糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む処理水、又は、海水が適している。余剰汚泥を希釈媒体中に分散させることにより、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株を培養する培地となる。
加水分解後の液状の余剰汚泥は添加した酸又はアルカリによって酸性又はアルカリ性になっている。ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属の微生物は海洋性であるので、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属の微生物を培養する培地としては、一般的にpHは中性が適し塩分濃度は海水の約35PSU(実用塩分単位)が適している。そのため、一般的には余剰汚泥を海水又は人工海水中に分散させpHを中和させるようにしている。
これに対して、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株は、pH3〜8の範囲で培養できるので培地のpHが酸性であってもよく、塩分濃度は0.1〜90PSUの範囲で培養できるので培地は海水(実用塩分単位で約35PSU)の1/300の低塩分濃度であっても海水の約3倍の高塩分濃度であってもよい。このことは希釈媒体として、余剰汚泥を産出する糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む排水、余剰汚泥を取り出した後の糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む処理水、又は、海水でよいことを示している。食品工場等からの排水や最終沈殿池の処理水を投入させることにより、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の増殖によって前記排水中や前記処理水中の有機物を分解し排水や処理水を浄化することができる。
次に、脂質生産工程5について説明する。脂質生産工程5は、請求項1又は2の微生物を植種、培養する工程である。前記微生物は脂質を生産するため前記微生物が増殖するほど脂質生産量が増加する。前記液状の余剰汚泥を分散化させた培地にラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株を投入し4〜6日間かけてラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の増殖を行う。前記ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の増殖により脂質が生産される。
次に、余剰汚泥の可溶化状況を試験した。余剰汚泥0.4g(乾燥重量)に、硫酸を加えてpH1.5にして50℃で1時間加熱した結果、余剰汚泥の約14%が可溶化してpH3となった。また、余剰汚泥0.4g(乾燥重量)に、水酸化ナトリウムを加えてpH12にして50℃で1時間加熱した結果、余剰汚泥の約50%が可溶化してpH10となった。この結果、余剰汚泥の可溶化が可能であることが示された。次に、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の増殖について試験した。
沖縄県国頭郡のマングローブ林に落ちていた落葉から採取した微生物から、余剰汚泥を基質として利用できる可能性のある菌として、ビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L2R株、L2Y株、L3W株、L4Y株を単離したので、単離した微生物の比増殖速度を比較した。
食品工場の排水処理施設の余剰汚泥を唯一の炭素源とした寒天培地を用いて分離操作を行い、人工海水1Lにグルコース5g/L、酵母エキス1g/L、ポリペプトン1g/Lを加えた培地(790By+培地)に単離した株を植種して25℃にて培養した。
単離した株である、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L2R株、L2Y株、L3W株、L4Y株を試験し、その比増殖速度を比較した。比増殖速度μは、増殖中の細胞数をX個/ml、初期細胞数をX個/ml、経過時間をt時間として、μ=(InX/X)/tにより算出した。その結果を表3に示す。
Figure 2018038275
表3から、L3W株の比増殖速度は0.32h−1であり、従来から生汚泥を用いた培養に使われてきたAurantiochytrium sp.18W−13株の比増殖速度0.22h−1よりも高い比増殖速度を示した。これにより、実用面で有用に使用できることが示唆された。
次に、単離した株として、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L2R株、L2Y株、L3W株、L4Y株の最大増殖量と脂質生産量を試験した。その結果を図3に示す。図3から、L3W株は最大1000mg/L前後、脂質生産量は400〜500mg/Lとなり、最も高かった。L2R株、L2Y株、L3W株、L4Y株の脂質含有率はそれぞれ50%、65%、42%、27%となり、18W−13株の脂質含有率20%より高い脂質含有率を示した。
したがって、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株が、比増殖速度が最も高く、かつ最大増殖量と脂質生産量が最も多いことが示された。
なお、増殖が濁度測定(ハンナインスルメンツ社製)又は血球計算盤(THOMA製)を用いた細胞数カウントにより評価し、最大増殖量は乾燥重量法で測定し、脂質はクロロホルム/メタノール抽出によるFоlch法により分析した。
次に、本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の塩分濃度耐性評価を実施した。まず、790By+培地に所定の濃度に希釈した海水を用いて培地を調製した。そして前記L3W株を植種し塩分濃度に対する増殖状況を試験した。塩分濃度は実用塩分単位(PSU)で表示し、図4にpH7における0.1PSUの場合c、0.3PSUの場合d、30PSUの場合eを示し、図5にpH7における30PSUの場合f、60PSUの場合g、90PSUの場合hを示している。
海洋性微生物を培養する培地には海水を使用するため、海水は約35PSUであることから、一般的な海水を使用した場合の培地の塩分の濃度は約35PSUであるのに対して、本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株は海洋性微生物でありながら、0.1〜90PSUの塩分濃度の範囲で増殖できるという特徴を有する。本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株は海水の約1/300の塩分濃度となる0.1PSUの淡水レベルの低塩分濃度から90PSUの高塩分濃度までの培地でも増殖できるので、食品工場の排水の塩分濃度を調整しなくても本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の培地としてそのまま使用することができる。
次に、本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株のpH耐性評価を実施した。有機酸を含む食品工場の排水のpHは4〜5が一般的ではあるが、酸やアルカリを用いて加水分解した余剰汚泥の利用においては、幅広いpHへの耐性が必要と考えられたことから、本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株のpH耐性を評価した。そのために、まず、790By+培地の塩分濃度を30PSUに調整し、希塩酸や水酸化ナトリウムを加えてpHを3〜10に調整し前記L3W株を植種しpHによる増殖への影響を評価した。その結果を図6にpH3の場合i、pH4の場合j、pH5の場合kを、図7にpH7の場合l、pH8の場合mを示す。
図6から、pH3の比較的強い酸性の培地であっても6日経過後には約500倍に増殖でき、pH4の弱酸性の培地では6日経過後に約1000倍に増殖できることが示されている。また、図7からpH8の弱アルカリ性の培地であっても3日経過後には約100倍に増殖でき、pH7の中性の培地では3日経過後に約500倍に増殖できることが示されている。これにより、本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株がpH3の強い酸性やpH8の弱アルカリ性であっても増殖できるので、食品工場の余剰汚泥の加水分解物を排水に分散させたものを使用する場合、塩分やpHを調整しなくても本発明のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の培地としてそのまま使用することができる。
ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株の余剰汚泥を用いた場合の培養を実施した。余剰汚泥9.5g(乾燥重量)に硫酸pH1.5にして50℃で1時間加熱させて可溶化させ、これに、有機酸を含む食品工場の排水を投入して、ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium sp.)L3W株を培養させた。その結果を図8に示す。
図8から、酸処理余剰汚泥の場合pには、培養日数6日目で細胞数が約50倍に増殖し、さらにグルコースを2.5g添加した場合qには培養日数6日目で細胞数が約300倍に増殖した。これにより、pH1.5にて加水分解した余剰汚泥を構成成分とした培地であってもラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株は増殖できることが示唆された。これにより、加水分解した液状の汚泥のpH調整を行わずに液状の余剰汚泥のpHのままで培地の構成成分として直接に使用でき、液状の余剰汚泥のpHのままで前記余剰汚泥を前記排水又は前記処理水という希釈媒体に分散させた培地でラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株を培養できるという効果を有することが明らかになった。また、前記希釈媒体には分散効果やpH緩衝効果を有することも認められた。
1 ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属L3W株
2 脂質生産方法
3 加水分解工程
4 余剰汚泥分散工程
5 脂質生産工程

Claims (4)

  1. 余剰汚泥の加水分解物を炭素源や窒素源として培養可能であり、脂質生産能を有するラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物。
  2. ラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属に属する微生物が、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター 受託番号FERM P−22307で示されるラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium sp.)L3W株である請求項1に記載の微生物。
  3. 余剰汚泥に酸やアルカリを添加して加水分解し余剰汚泥を液状にする加水分解工程、前記液状の余剰汚泥を希釈媒体に分散させる余剰汚泥分散工程、前記分散させた余剰汚泥の培地に請求項1又は2の微生物を植種、培養し脂質を生産する脂質生産工程を備えることを特徴とするラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法。
  4. 前記希釈媒体が、余剰汚泥を産出する糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む排水、余剰汚泥を取り出した後の糖類、有機酸及びアルコールのうち少なくとも1つ以上を含む処理水、又は、海水であることを特徴とする請求項3に記載のラビリンチュラ類オーランチオキトリウム属を利用した脂質生産方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2020036216A1 (ja) * 2018-08-16 2021-02-15 株式会社MoBiol藻類研究所 パームオイル工場排出液(pome)をつかった従属栄養性微細藻類の培養方法及びdha製造方法

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