JP2018035903A - 摩擦プーリ - Google Patents

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【課題】高いトルクを伝達可能な摩擦プーリを提供する。【解決手段】摩擦プーリ1は、環状の複数の単体摩擦プーリ2と、複数のバネ装置3と、少なくとも1つの締結装置4とを備えている。単体摩擦プーリ2は、外周に外周溝20を有する環状の回転輪10と、回転輪10の外周溝20内に収容可能に形成されたゴム環30とを有しており、外周溝20はゴム環30を挟持可能に形成されている。回転輪10は、互いに対向する一対の分割体11,12を有しており、一対の分割体21,22は夫々一対の溝側面21,22を有しており、分割体11,12が互いに対向して外周溝20が形成される。バネ装置3は軸線x方向に弾性を有している。摩擦プーリ1において、単体摩擦プーリ2の各々はバネ装置3を介して軸線x方向に互いに隣接して配列され、締結装置4は軸線x方向に配列された複数の単体摩擦プーリ2及びバネ装置3を軸線x方向において挟持している。【選択図】図1

Description

本発明は、摩擦プーリに関し、特に、車両や産業機械において動力の伝達のために用いられる摩擦プーリに関する。
従来、例えば車両の内燃機関において、クランクシャフトの動力をウォータポンプ等の補機に伝達するための動力伝達機構には、プーリやベルトが用いられている。従来の動力伝達機構は、クランクシャフトと全ての補機がベルト及びプーリによって連結されており、クランクシャフトから全ての補機に動力が伝達される構成となっている。このため、このような動力伝達機構を備えた内燃機関においては、発生したエネルギーの損失が大きくなっていた。これに対して、近年、クランクシャフトと補機との間の連結及び切断を選択可能にする構成を有する動力伝達機構が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1においては、クランクシャフトに取り付けられたベルトが巻き掛けられたプーリと、ウォータポンプに取り付けられた支持ディスクとこの支持ディスクの外周に設置されたエラストマー材料からなる摩擦輪とを有する摩擦プーリと、これらプーリ及び摩擦プーリ間を連結及び分離可能にするアイドラプーリを有する動力伝達機構が開示されている。この従来の動力伝達機構においては、アイドラプーリが、クランクシャフト及びウォータポンプの各プーリに接触して、クランクシャフトとウォータポンプとが連結され、また、各プーリから離間して、クランクシャフトとウォータポンプとの間の連結が切断され、動力伝達路の選択が可能になっている。
国際公開第2006/051094号 国際公開第2014/038554号
しかしながら、上述の動力伝達路の選択が可能な従来の動力伝達機構における摩擦プーリにおいては、円柱状の支持ディスクの外周に摩擦輪が設置されており、摩擦輪と支持ディスクとの間の接合強度が高くなく、高いトルクが伝達される場合に、摩擦輪と支持ディスクとの間の接合が壊れて、摩擦輪と支持ディスクとが分離されてしまう場合があった。摩擦輪と支持ディスクとが分離されると、摩擦輪と支持ディスクとの間を結合する力がなくなり、摩擦輪がトルク伝達部分の後方において支持ディスクから分離してたわみ、摩擦輪が支持ディスクから脱落してしまうおそれがあった。このため、80〜100Nmの高いトルクの伝達が必要となる内燃機関の始動に用いられるモータ等には上記摩擦プーリを用いることができなかった。このため、従来から、高いトルクを伝達可能な摩擦プーリの構造が求められていた。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高いトルクを伝達可能な摩擦プーリを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る摩擦プーリは、回転可能な回転部材に外周において圧接されて動力を伝達する摩擦プーリであって、軸線周りに環状の複数の単体摩擦プーリと、複数のバネ装置と、少なくとも1つの締結装置とを備え、前記単体摩擦プーリは、外周に内周側に凹む環状の溝である外周溝を有する前記軸線周りに環状の部材である回転輪と、前記回転輪の前記外周溝内に収容可能に形成されたゴム製の環状のゴム環とを有しており、前記外周溝は、前記軸線方向において互いに対向する一対の前記軸線周りに環状の面である一対の溝側面を有しており、該一対の溝側面は前記外周溝内に収容された前記ゴム環を挟持可能に形成されており、前記回転輪は、前記軸線方向において互いに対向する一対の部材である一対の分割体を有しており、前記一対の分割体は夫々前記一対の溝側面を有しており、前記一対の分割体が前記軸線方向において互いに対向して前記外周溝が形成され、前記バネ装置は前記軸線方向に弾性を有しており、前記ゴム環が前記外周溝内に収容されて前記単体摩擦プーリの各々は、前記バネ装置を介して前記軸線方向に互いに隣接して配列されおり、前記締結装置は、軸線方向に配列された前記複数の単体摩擦プーリ及び前記バネ装置を前記軸線方向において挟持していることを特徴とする。
本発明の一態様に係る摩擦プーリは、前記軸線周りに円盤状の部材である円盤部を備え、前記円盤部は、前記軸線方向の一方の側の端に位置する前記単体摩擦プーリの前記回転輪の画成する内周側の空間を前記軸線方向の一方の端側から覆っている。
本発明の一態様に係る摩擦プーリおいて、前記円盤部は、前記回転輪に一体に形成されている。
本発明の一態様に係る摩擦プーリおいて、前記締結装置は、前記回転輪及び前記バネ装置を貫通している。
本発明の一態様に係る摩擦プーリおいて、前記バネ装置は、少なくとも1つの前記軸線方向に弾性を有する部材であるバネ部材を有する。
本発明に係る摩擦プーリによれば、高いトルクを伝達可能にすることができる。
本発明の実施の形態に係る摩擦プーリの概略構成を示すための図であり、図1(a)は摩擦プーリの側面図であり、図1(b)は摩擦プーリの斜視図である。 図1に示す摩擦プーリの軸線に沿う断面における断面図である。 図1に示す摩擦プーリにおける単体摩擦プーリの軸線に沿う断面における断面図である。 図3に示す単体摩擦プーリの各構成が分離された状態で示された軸線に沿う断面における摩擦プーリの分解断面図である。 図2における摩擦プーリのバネ装置の近傍の部分を拡大して示す部分拡大断面図である。 本発明の実施の形態に係る摩擦プーリの変形例を示すための、摩擦プーリの軸線に沿う断面における断面図である。 ゴム環の変形例を概略的に示すためのゴム環の自由状態での軸線に沿う断面における断面図である。 ゴム環の変形例を概略的に示すためのゴム環の自由状態での軸線に沿う断面における断面図であり、図8(a)は、ゴム環の一変形例を示すための断面図であり、図8(b)は、ゴム環の他の変形例を示すための断面図である。 図8(a)に示すゴム環を備える摩擦プーリの軸線に沿う断面における部分断面図であり、図9(a)は、摩擦プーリの各構成が分離された状態で示された分解部分断面図であり、図9(b)は、動力伝達状態における摩擦プーリの部分断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る摩擦プーリ1の概略構成を示すための図であり、図1(a)は摩擦プーリ1の側面図であり、図1(b)は摩擦プーリ1の斜視図である。また、図2は、図1に示す摩擦プーリ1の軸線xに沿う断面における断面図である。以下、説明の便宜上、軸線xから離れる方向(図2の矢印b参照)を外周側又は外周方向とし、軸線xに近づく方向(図2の矢印a参照)を内周側又は内周方向とする。また、図2において、軸線x方向における左側(図2の矢印c参照)を左側とし、軸線x方向における右側(図2の矢印d参照)を右側とする。
なお、本発明の第1の実施の形態に係る摩擦プーリ1は、例えば、図1に示すように、その外周において、回転部材Rに圧接されて動力を伝達するために用いられる。摩擦プーリ1は、例えば車両の内燃機関において、クランクシャフトに取り付けられた回転部材Rとしてのプーリに直接又はこのプーリに巻き掛けられた回転部材Rとしてのタイミングベルトに後述するように外周において圧接されてモータの動力をクランクシャフトに伝達し、内燃機関を始動するために用いられる。摩擦プーリ1は、クランクシャフトの動力をウォータポンプ等の補機に伝達するために、または、補機と補機との間の動力の伝達のために用いられてもよい。また、摩擦プーリ1は、回転部材Rに圧接されて動力を伝達可能な位置にある動力伝達状態と、回転部材に圧接されていない動力を伝達しない位置にある非動力伝達状態とに、駆動装置を用いて選択移動可能に取り付けられていてもよい。摩擦プーリ1は、車両の内燃機関ではない他の装置においても動力を伝達するために用いることができる。
摩擦プーリ1は、上述のように、回転する回転部材Rに外周において圧接されて動力を伝達するプーリであって、図1,2に示すように、軸線x周りに環状の複数の単体摩擦プーリ2と、複数のバネ装置3と、少なくとも1つの締結装置4とを備えている。
単体摩擦プーリ2は、外周に内周側に凹む環状の溝である外周溝20を有する軸線x周りに環状の部材である回転輪10と、回転輪10の外周溝20内に収容可能に形成されたゴム製の環状のゴム環30とを有しており、外周溝20は、軸線x方向において互いに対向する一対の軸線x周りに環状の面である一対の溝側面21,22を有しており、一対の溝側面21,22は外周溝20内に収容されたゴム環30を挟持可能に形成されている。
回転輪10は、軸線x方向において互いに対向する一対の部材である一対の分割体11,12を有しており、一対の分割体11,12は夫々、一対の溝側面21,22を有しており、一対の分割体11,12が軸線x方向において互いに対向して外周溝20が形成されている。バネ装置3は軸線x方向に弾性を有している。摩擦プーリ1において、ゴム環30が外周溝20内に収容されて単体摩擦プーリ2の各々は、バネ装置3を介して軸線x方向に互いに隣接して配列されており、締結装置4は、軸線x方向に配列された複数の単体摩擦プーリ2及びバネ装置3を軸線x方向において挟持している。
また、摩擦プーリ1は、軸線x周りに円盤状の部材である円盤部5を備えている。円盤部5は、軸線x方向の一方の側の端に位置する単体摩擦プーリ2の回転輪10の画成する内周側の空間を軸線x方向の一方の端側から覆っている。摩擦プーリ1においては、円盤部5は、軸線x方向右側の端に位置する単体摩擦プーリ2において回転輪10の内周側の空間を右側から覆うようになっている。円盤部5は、軸線x方向左側の端に位置する単体摩擦プーリ2において回転輪10の内周側の空間を左側から覆うようになっていてもよい。
以下、摩擦プーリ1の構成を具体的に説明する。図3は、摩擦プーリ1における各単体摩擦プーリ2の軸線xに沿う断面における断面図であり、図4は、図3に示す単体摩擦プーリ2の各構成が分離された状態で示された軸線xに沿う断面における単体摩擦プーリ2の分解断面図である。
本実施の形態においては、摩擦プーリ1は4つの単体摩擦プーリ2(2a,2b,2c,2d)を有している。単体摩擦プーリ2において、回転輪10は上述のように一対の分割体11,12を有しており、一対の分割体11,12は、例えば、回転輪10を軸線x方向における中央又は略中央の位置である中間部分において(径方向に広がる面において)分割している。以下、説明の便宜上、図3,4において右側に示されている分割体11を右分割体11と、左側に示されている分割体12を左分割体12ともいう。また、同様に、図3,4において右側に示されている溝側面21を右溝側面21と、左側に示されている溝側面22を左溝側面22ともいう。
図3,4に示すように、回転輪10は、軸線xを中心又は略中心とする中空の円盤状の形状を呈している。回転輪10の一部を構成する右分割体11は、軸線xについて環状に外周方向に広がっており、例えば軸線xを中心又は略中心とする中空の円盤状の形状の部材である。また、回転輪10の一部を構成する左分割体12は、軸線xについて環状に外周方向に広がっており、例えば軸線xを中心又は略中心とする中空の円盤状の形状の部材である。右分割体11と左分割体12とは、軸線xに直交する面に対して対称又は略対称の形状となっている。右分割体11と左分割体12とは、このように対称な形状でなくてもよい。
右分割体11は、環状の外周面(外周面11a)を有しており、右分割体11において軸線x方向左側(内側)の側面に、外周面11aに沿って延びる環状の段部である右内側段部13を有している。また、左分割体12は、同様に、環状の外周面(外周面12a)を有しており、左分割体12において軸線x方向右側(内側)の側面に、外周面12aに沿って延びる環状の段部である左内側段部14を有している。
回転輪10において、右分割体11と左分割体12とは、各々の内側の側面において対向しており、つまり、右分割体11の左側の側面と左分割体12の右側の側面とが互いに対向しており、回転輪10の外周側の部分において、右内側段部13と左内側段部14とは互いに軸線x方向において対向して外周溝20を形成している。外周溝20の軸線x方向における幅は、ゴム環30の形状に対応している。
摩擦プーリ1において、回転輪10の右分割体11と左分割体12とは、後述するように締結装置4によって軸線x方向において互いに相対運動可能に固定されている。また、右分割体11と左分割体12とは、軸線xについて互いに相対回動不能に固定されている。
右分割体11は、具体的には、図3,4に示すように、中空円盤状の形状を有しており、右内側段部13と、外周面11aと、内周面11bと、内側側面11cと、外側側面11dとによって画定されている。外周面11aは、軸線xを中心又は略中心とする円筒面又は略円筒面であり、内周面11bは、同様に軸線xを中心又は略中心とする円筒面又は略円筒面であり、外周面11aよりも内周側において延びている。内側側面11cは、軸線x方向に交差する方向に、例えば軸線xに直交する方向(以下、径方向ともいう。)又は略直交する方向に延びる円盤面又は円環状の平面であり、左側(内側)において、内周面11bと右内側段部13との間に広がっている。外側側面11dは、径方向又は略径方向に、例えば径方向に延びる円盤面又は円環状の平面であり、右側(外側)において、外周面11aと内周面11bとの間に広がっている。
右内側段部13は、内側側面11cの外周側の部分において、右側(外側)に凹んでおり、内側側面11cの外周側端と外周面11aの内側端(左側端)との間に広がっている。具体的には、図3,4に示すように、右分割体11の右内側段部13は、環状のテーパ状の面である右溝側面21を有している。右溝側面21は、外周側方向(矢印b方向側)に面している。つまり、右溝側面21は、径方向から外側(右側)に(矢印d方向に)傾斜している環状の面である。例えば、右溝側面21は軸線x方向において左側から右側(内側から外側)に向かうに連れて拡径する円錐面状に形成されている。右溝側面21は、軸線xに沿う断面(以下、単に断面ともいう。)において、曲線の輪郭を描く面であってもよく、例えば、外周溝20の内部側に向かって凸の曲線の輪郭を描く面であってもよく、または、外周溝20の内部側から凹んだ曲線の輪郭を描く面であってもよい。また、右内側段部13は、内側側面11cと右溝側面21との間に延びる環状の面である段差面11eを有している。段差面11eは、具体的には、軸線xを中心又は略中心とする円筒面又は略円筒面であり、後述するように外周溝20の溝底面23の一部を形成する。
左分割体12は、具体的には、図3,4に示すように、中空円盤状の形状を有しており、左内側段部14と、外周面12aと、内周面12bと、内側側面12cと、外側側面12dとによって画定されている。外周面12aは、軸線xを中心又は略中心とする円筒面又は略円筒面であり、内周面12bは、同様に軸線xを中心又は略中心とする円筒面又は略円筒面であり、外周面12aよりも内周側において延びている。内側側面12cは、軸線x方向に交差する方向に、例えば径方向に又は略径方向に延びる円盤面又は円環状の平面であり、右側(内側)において、内周面12bと左内側段部14との間に広がっている。外側側面12dは、径方向又は略径方向に、例えば径方向に延びる円盤面又は円環状の平面であり、左側(外側)において、外周面12aと内周面12bとの間に広がっている。
左内側段部14は、内側側面12cの外周側の部分において、左側(外側)に凹んでおり、内側側面12cの外周側端と外周面12aの内側端(右側端)との間に広がっている。具体的には、図3,4に示すように、左分割体12の左内側段部14は、環状のテーパ状の面である左溝側面22を有している。左溝側面22は、外周側方向(矢印b方向側)に面している。つまり、左溝側面22は、径方向から外側(左側)に(矢印c方向に)傾斜している環状の面である。例えば、左溝側面22は軸線x方向において右側から左側(内側から外側)に向かうに連れて拡径する円錐面状に形成されている。左溝側面22は、軸線xに沿う断面において、曲線の輪郭を描く面であってもよく、例えば、外周溝20の内部側に向かって凸の曲線の輪郭を描く面であってもよく、または、外周溝20の内部側から凹んだ曲線の輪郭を描く面であってもよい。また、左内側段部14は、内側側面12cと左溝側面22との間に延びる環状の面である段差面12eを有している。段差面12eは、具体的には、軸線xを中心又は略中心とする円筒面又は略円筒面であり、後述するように外周溝20の溝底面23の一部を形成する。
右分割体11及び左分割体12は、内側側面11c,12cが軸線x方向において互いに間隔(間隙g1)を空けて対向して、右内側段部13と左内側段部14とが軸線x方向において互いに対向し、外周溝20が形成されるようになっている。内側側面11c,12cは、径方向に広がる平面であってもよく、また、互いに重ね合わせ可能に対応した曲面状の形状や凹凸を有する形状等の他の形状であってもよい。より具体的には、貫通孔15,16に締結装置4が挿入されて右分割体11及び左分割体12が互いに対向した状態にある回転輪10において、右溝側面21と左溝側面22とは軸線x方向において互いに対向するようになっており、また、右内側段部13の段差面11eと左内側段部14の段差面12eとは、軸線x方向において互いに連続した面上に位置して外周溝20の溝底面23を形成するようになっている。また、右分割体11の内周面11bと左分割体12の内周面12bとは、軸線x方向において互いに連続した面上に位置して後述する空間19を形成するようになっている。
右分割体11には、内側側面11cと外側側面11dとの間を貫通する孔である貫通孔15が形成されている。貫通孔15は、締結装置4の数に対応した数だけ形成されており、複数形成されている場合は、例えば、軸線xを中心として等角度間隔に形成されている。また、左分割体12には、右分割体11の貫通孔15に対応して、内側側面12cと外側側面12dとの間を貫通する孔である貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、貫通孔15と同様に、締結装置4の数に対応した数だけ形成されており、複数形成されている場合は、例えば、軸線xを中心として等角度間隔に形成されている。回転輪10において、各貫通孔15と各貫通孔16とは夫々対応するように形成されており、互いに連通するような位置や大きさに形成されている。貫通孔15,16には、後述するように、締結装置4が挿通される。
また、右分割体11は、後述するようにバネ装置3が収容されるバネ収容穴17を備えている。バネ収容穴17は、外側側面11dに形成されており、外側側面11dから内側に凹んで空間を形成している。バネ収容穴17は、例えば、図3,4に示すように、断面円形であり、貫通孔15と同心又は略同心状に形成されている。バネ収容穴17の径方向の幅及び軸線x方向の深さは、バネ装置3の大きさに対応しており、バネ装置3を収容可能な大きさになっている。バネ収容穴17の径(断面における径)は、貫通孔15の径よりも大きい。
また、同様に、左分割体12は、後述するようにバネ装置3が収容されるバネ収容穴18を備えている。バネ収容穴18は、外側側面12dに形成されており、外側側面12dから内側に凹んで空間を形成している。バネ収容穴18は、例えば、図3,4に示すように、断面円形であり、貫通孔16と同心又は略同心状に形成されている。バネ収容穴18の径方向の幅及び軸線x方向の深さは、バネ装置3の大きさに対応しており、バネ装置3を収容可能な大きさになっている。バネ収容穴18の径(断面における径)は、貫通孔16の径よりも大きい。
また、図3,4に示すように、右分割体11において、外周面11aと右溝側面21とを接続する面である移行面24は曲面となっている。移行面24は、例えば、外周面11aと右溝側面21との接続部分を丸面取りすることにより形成される。同様に、左分割体12において、外周面12aと左溝側面22とを接続する面である移行面25は曲面となっている。移行面25は、例えば、外周面12aと左溝側面22との接続部分を丸面取りすることにより形成される。
単体摩擦プーリ2において、回転輪10の外周溝20の軸線x方向における幅は、ゴム環30が軸線x方向において所定の幅(圧縮しろ)が圧縮され、外周溝20とゴム環30との接触面との間に所定の圧力の接触面圧(押付力)が発生し、回転輪10とゴム環30との間に所望の摩擦力が発生するような値に設定されている。
後述するように単体摩擦プーリ2がバネ装置3及び締結装置4によって固定された固定状態においては、図3に示すように、右分割体11と左分割体12とは、右分割体11の内側側面11cと左分割体12の内側側面12cとが軸線x方向において間隙g1だけ離れて対向した状態に保持されている。
右分割体11の右溝側面21の表面粗さや表面硬さ等の表面性状や寸法、左分割体12の左溝側面22の表面粗さや表面硬さ等の表面性状や寸法、右溝側面21及び左溝側面22の傾斜角度や形状は、回転輪10とゴム環30との間に所望の摩擦力が発生するように設定されている。また、右分割体11の段差面11e及び左分割体12の段差面12eも、右溝側面21や左溝側面22と同様の表面性状や形状に設定されていてもよい。右分割体11の右内側段部13において、右溝側面21及び段差面11eは、互いに同一の表面性状を有していてもよく、また、夫々異なる表面性状を有していてもよい。同様に、左分割体12の左内側段部14において、左溝側面22及び段差面12eは、互いに同一の表面性状を有していてもよく、また、夫々異なる表面性状を有していてもよい。例えば、外周溝20の側面である右溝側面21及び左溝側面22が粗い表面粗さを有しており、外周溝20の底面である、段差面11e,12eが鏡面のような滑らかな表面粗さを有していてもよい。
固定状態の単体摩擦プーリ2における回転輪10において、図3に示すように、右分割体11の内周面11bと左分割体12の内周面12bとは、軸線xに沿って互いに同一の面上に位置しており、軸線xを中心とする円柱面を形成して円柱状の空間19を形成している。
右分割体11と左分割体12とは同一の又は相似する形状に形成されていてもよく、異なった形状に形成されていてもよい。
ゴム環30は、図3,4に示すように、内周側に、回転輪10の外周溝20に対応した形状を有しており、右側の側面に円錐面状の右傾斜面(傾斜面)31を有しており、左側の側面に円錐面状の左傾斜面(傾斜面)32を有している。また、ゴム環30は、環状の外周面(接触面)33と、外周面33の右端及び左端から内周側に向かって夫々延びる右側側面34及び左側側面35と、外周面33よりも内周側において延びている環状の内周面(底面)36とを有している。外周面33は、具体的には、軸線xを中心とする円柱面である。右側側面34は、外周面33の右端と右傾斜面31の外周側端との間に延びており、具体的には、径方向に延びる円盤面又は円環状の平面である。左側側面35は、外周面33の左端と左傾斜面32の外周側端との間に延びており、具体的には、径方向に延びる円盤面又は円環状の平面である。内周面36は、具体的には、軸線xを中心とする円柱面であり、右傾斜面31の内周側端と左傾斜面32の内周側端との間に延びている。このように、ゴム環30は、右傾斜面31、左傾斜面32、外周面33、右側側面34、左側側面35、及び内周面36によって画成されている。
上述のように、ゴム環30は、内周側に、回転輪10の外周溝20に対応した形状を有しており、右傾斜面31が、外周溝20の右側の側面である右分割体11の右溝側面21に対応しており、左傾斜面32が、外周溝20の左側の側面である左分割体12の左溝側面22に対応しており、内周面36が外周溝20の溝底面23(段差面11e,12e)に対応している。具体的には、図4に示すように、軸線xに基づいて、ゴム環30の右傾斜面31は、右分割体11の右溝側面21に平行に延びており、また、ゴム環30の左傾斜面32は、左分割体12の左溝側面22に平行に延びている。
ゴム環30は、右傾斜面31及び左傾斜面32の部分において、径方向における各点での軸線x方向における幅が、外周溝20に対して夫々一定の圧縮しろを有するように設定されている。
外周溝20の軸線x方向の幅は、上述のように、固定状態の単体摩擦プーリ2において、ゴム環30が右傾斜面31及び左傾斜面32に沿って一様に軸線x方向において所定の幅(圧縮しろ)を圧縮され、外周溝20とゴム環30との接触面との間に所定の圧力の接触面圧が発生し、回転輪10とゴム環30との間に所望の摩擦力が発生するような値に設定されている。
ゴム環30は、図3に示すように、固定状態の単体摩擦プーリ2において、内周側の部分が回転輪10の外周溝20に挟持されて圧縮されており、右傾斜面31が右分割体11の右溝側面21に押圧されて押し付けられて接触しており、左傾斜面32が左分割体12の左溝側面22に押圧されて押し付けられて接触している。ゴム環30の内周面36は、外周溝20の溝底面23とは当接しておらず、外周溝20において、外周溝20の溝底面23とゴム環30の内周面36との間には、環状の空間26が形成されている。ゴム環30及び外周溝20は、空間26が形成されないような形状を有していてもよく、この場合、ゴム環30の内周面36は外周溝20の溝底面23(右分割体11及び左分割体12の段差面11e,12e)に接触若しくは押圧されて押し付けられて接触している。
回転輪10は、金属又は樹脂から形成されており、また、ゴム環30のゴム材料としては種々のゴム材料を用いることができ、要求に応じた物性を有するゴム材料が選択される。ゴム環30のゴム材料は、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)やウレタンゴムである。
単体摩擦プーリ2の組み立ての際には、図4に示すように、右分割体11と左分割体12とを軸線x方向において互いに近づけていくと、右分割体11の右溝側面21がゴム環30の右傾斜面31に接触し、左分割体12の左溝側面22がゴム環30の左傾斜面32に接触し、ゴム環30が軸線x方向において圧縮されていく。そして、右分割体11と左分割体12とが、内側側面11cと内側側面12cとにおいて間隙g1を空けて軸線x方向において対向すると、ゴム環30が上述の所望の幅の圧縮しろを圧縮されて、ゴム環30と回転輪10との間に所望の摩擦力が発生するようになる。摩擦力は、主として、右分割体11の右溝側面21とゴム環30の右傾斜面31との間、左分割体12の左溝側面22とゴム環30の左傾斜面32との間に発生する。
固定状態における単体摩擦プーリ2においては、図3に示すように、ゴム環30の外周側の部分は回転輪10の外周面(外周面11a,12a)から外周側に突出しており、ゴム環30の外周面33は、回転輪10の外周面よりも外周側に位置している。これにより、後述するように摩擦プーリ1において、回転駆動されるベルトやプーリ等の回転部材R(図1参照)の側面に、単体摩擦プーリ2のゴム環30の外周面33が当接可能になっており、単体摩擦プーリ2はゴム環30の外周面33が回転部材Rの側面に押圧されて圧接され、外周面33と回転部材Rの側面との間の摩擦力により、単体摩擦プーリ2と回転部材Rとの間の動力伝達が可能になる。
摩擦プーリ1の備えるバネ装置3は、回転輪10の右分割体11のバネ収容穴17及び左分割体12のバネ収容穴18内に収容可能に形成されており、バネ収容穴17,18に収容された状態で隣接する単体摩擦プーリ2の間に挟まれて軸線x方向に右分割体11及び左分割体12を押圧する弾性力を発生する構成を有している。バネ装置3としては、従来公知のバネ装置を用いることができ、また、上述のような構成を有するあらゆるバネ装置を用いることができる。バネ装置3は、複数のバネ部材を備えるものであってもよい。バネ装置3の材料には、ばね鋼等の種々の適切な材料を用いることができ、バネ装置3の材料は、例えば、ばね鋼(SUP10)や炭素鋼(SK85)である。
バネ装置3は、例えば、皿バネやコイルバネである。本実施の形態においては、バネ装置3は、図5に示すように、一対のバネ部材としての皿バネから構成されており、皿バネ41,42を有している。皿バネ41,42は、貫通孔が形成された内径側部分41a,42aと、外周側の端部分である外径側部分41b,42bとを夫々有している。皿バネ41,42の内径側部分41a,42a(貫通孔)の径は、締結装置4が挿入可能な大きさになっている。また、皿バネ41,42の外径側部分41b,42bは、バネ収容穴17,18に収容可能な大きさとなっている。図5に示すように、摩擦プーリ1において、皿バネ41,42は、外径側部分41b,42bがバネ収容穴17,18に夫々接触しており、内径側部分41a,42aにおいて互いに接触している。皿バネ41,42は、同一の皿バネであってもよく、異なる形状の皿バネであってもよい。バネ装置3は、皿バネ41,42のいずれか1つのみを有していてもよく、3つ以上の皿バネ41,42を有していてもよい。
締結装置4は、図2に示すように、単体摩擦プーリ2を固定状態に保持し、単体摩擦プーリ2をバネ装置3を介して互いに隣接した状態に保持するための装置である。締結装置4としては、従来公知の締結装置を用いることができ、また、上述のような構成を有するあらゆる締結装置を用いることができる。締結装置4としては、例えば、ボルト及びナットがある。本実施の形態においては、締結装置4は、図2に示すようにボルト51と、1つの単体摩擦プーリ2に形成された、ボルト51の雄ネジ部分52が螺合可能な雌ネジ部分53とを有している。雄ネジ部分52は、ボルト51の先端部分において雄ネジが形成された部分であり、雌ネジ部分53は、雄ネジ部分52が螺合可能な雌ネジが形成された部分である。本実施の形態においては、雌ネジ部分53は、図2に示すように、摩擦プーリ1において軸線x方向で一方の端側(右側)に位置する単体摩擦プーリ2の一方の端側(右側)に位置する分割体(右分割体11)に形成されている。つまり、摩擦プーリ1において軸線x方向で右側に位置する単体摩擦プーリ2(2d)の右側に位置する右分割体11の貫通孔15には、雌ネジ部分53が形成されている。また、この単体摩擦プーリ2dの右分割体11には、バネ収容穴17が形成されていなくてもよい。雌ネジ部分53は、摩擦プーリ1において軸線x方向で他方の端側(左側)に位置する単体摩擦プーリ2の他方の端側(左側)に位置する分割体(左分割体12)に形成されてもよい。
ボルト51は、回転輪10の貫通孔15,16及びバネ装置3の貫通孔(内径側部分41a,41b)に隙間を持って挿入可能に形成されている。また、ボルト51は、雄ネジ部分52とは反対側の端部にボルトヘッドとしてのヘッド部54を有しており、ヘッド部54の座面54aはバネ装置3が当接可能になっている。具体的には、ヘッド部54の座面54aの大きさは、皿バネ41又は42の外径側部分41b,42bが接触可能な大きさになっている。
ボルト51の長さは、雄ネジ部分52が雌ネジ部分53に螺合された状態において、各単体摩擦プーリ2の右分割体11と左分割体12との間に間隙g1が形成され、また、隣接する単体摩擦プーリ2の間に後述する間隙g2が形成されるような長さに設定されている。
摩擦プーリ1の備える円盤部5は、径方向又は略径方向に延びる円盤状の部材であり、本実施の形態においては、図2に示すように、摩擦プーリ1において軸線x方向で右側に位置する単体摩擦プーリ2(2d)の右側に位置する右分割体11の内周面11bに接続しており、この右分割体11に同一材料から一体に形成されている。単体摩擦プーリ2(2d)の右分割体11の軸線x方向の幅は、円盤部5の軸線方向の幅に対応して、他の分割体11,12の軸線方向の幅と異なる寸法に設定されていてもよい。例えば、単体摩擦プーリ2(2d)の右分割体11の軸線x方向の幅は、他の分割体11,12の軸線x方向の幅よりも大きく設定されている。円盤部5は、摩擦プーリ1において軸線x方向で左側に位置する単体摩擦プーリ2(2a)の左側に位置する左分割体12の内周面12bに接続して、この左分割体12に同一材料から一体に形成されていてもよい。
また、円盤部5は、図2に示すように、軸線xを中心又は略中心とする軸線x方向に延びる貫通孔55を有している。この貫通孔55は、図示しない駆動装置の部分やモータの軸、この軸に取り付けられた部材等が圧入されて嵌合可能に若しくは固定可能に形成されている。摩擦プーリ1の使用方法に応じて、円盤部5の貫通孔55には、摩擦プーリ1が用いられる内燃機関の補機等の装置や構成等の取り付け用の部材等(軸等)や摩擦プーリ1の駆動装置の軸等が圧入されて嵌合され若しくは固定される。固定はボルトやナット等の図示しない公知の手段によって行われる。摩擦プーリ1がアイドラプーリとして用いられる場合は、円盤部5の貫通孔55に回転軸が挿通され、または、ベアリングが取り付けられる。また、貫通孔55が摩擦プーリ1の回転支持のために用いられるのではなく、固定用の孔として用いられる場合は、貫通孔55は、軸線xを中心として形成されていなくてもよく、また、複数設けられていてもよい。貫通孔55は、摩擦プーリ1が取り付けられる対象に応じた形状を有している。また、円盤部5は貫通孔55を有していない中実部材であってもよい。
次いで、固定状態における摩擦プーリ1について説明する。固定状態において、摩擦プーリ1は、図1,2,5に示すように、ボルト51が単体摩擦プーリ2(2a〜2c)の貫通孔15,16及び単体摩擦プーリ2(2d)の左分割体12の貫通孔16に挿入され、雄ネジ部分52及び雌ネジ部分53において螺合され、単体摩擦プーリ2が固定状態に保持され、単体摩擦プーリ2がバネ装置3を介して互いに隣接した状態に保持されている。
摩擦プーリ1においては、図2に示すように、軸線x方向において他方の側(左側)の単体摩擦プーリ2(2a)の左分割体12のバネ収容穴18にもバネ装置3が収容されており、他の単体摩擦プーリ2間で挟持されたバネ装置3と同様な状態に、ボルト51のヘッド部54と左分割体12との間で挟持されている。また、図2,5に示すように、隣接する単体摩擦プーリ2は互いに接触しておらず、隣接する単体摩擦プーリ2の間には、軸線x方向の隙間である間隙g2が形成されている。また、上述のように各単体摩擦プーリ2において、右分割体11と左分割体12とは、間隙g1を空けて軸線x方向において互いに対向している。このため、単体摩擦プーリ2は、より具体的には分割体11,12は軸線x方向において移動可能となっている。
また、摩擦プーリ1においては、単体摩擦プーリ2が並んで配置されることにより、各回転輪10の内側の空間19が軸線x方向に並べられ、軸線x方向に延びる円柱状の空間である収容空間6が形成される。収容空間6内には、上述したような摩擦プーリ1の支持部品や駆動装置等の装置を収容することができる。このため、摩擦プーリ1は、その取り付け構造のために要するスペースを削減することができる。
次いで、上述の構成を有する摩擦プーリ1の作用について説明する。
摩擦プーリ1は、図1に示すように、動力伝達状態において、回転部材Rに押し付けられている。具体的には、各ゴム環30の接触面としての外周面33が回転部材Rに押し付けられて圧接されて、回転部材Rに動力が伝達可能にされ、または、回転部材Rの動力が伝達可能にされる。このとき、ゴム環30は、外周面33の回転部材Rとの接触部分において、押圧力によって内周方向に押圧される。この押圧力により、ゴム環30は、外周溝20内において、内周方向に圧縮されて変形し、軸線x方向に広がる。この押圧力による軸線x方向の変形により、ゴム環30の傾斜面31,32は更に外周溝20の溝側面21,22に夫々押し付けられ、傾斜面31,32に非動力伝達状態において発生している溝側面21,22への押付力に加えて新たな押付力が発生する。このように、摩擦プーリ1の動力伝達状態においては、各ゴム環30の傾斜面31,32には、ゴム環30の外周面33が押圧されていない非動力伝達状態において傾斜面31,32に発生している傾斜面31,32を夫々外周溝20の溝側面21,22に対して押し付ける押付力よりも大きな押付力が発生している。このため、摩擦プーリ1の動力伝達状態においては、各ゴム環30の傾斜面31,32と夫々外周溝20の溝側面21,22との間に大きな摩擦力を発生させることができる。これにより、従来のような接着剤により得られる接着力よりも、ゴム環30と外周溝20との間に発生する摩擦力を大きくすることができる。このため、動力伝達状態において、ゴム環30が外周溝20を摺動することを抑制することができ、ゴム環30が外周溝20において外周方向にずれてゴム環30がたわむことを抑制することができる。たわみの抑制により、ゴム環30と回転輪10との間の摺動が抑制され、ゴム環30と回転輪10との間の発熱を抑制することができ、ゴム環30の耐久性を向上させることができる。
また、ゴム環30と回転輪10との間の発熱によりゴム環30が熱膨張した場合、ゴム環30の周長が増加し、ゴム環30が外周溝20において外周側に移動することになる。ゴム環30が外周溝20において外周側に移動すると、外周溝20のゴム環30が接触する部分の間の軸線x方向における間隔が大きくなり、ゴム環30を押圧する力が小さくなることが懸念される。しかしながら、摩擦プーリ1においては、隣接する単体摩擦プーリ2の間にバネ装置3が軸線x方向において圧縮されて配設されており、各単体摩擦プーリ2において、バネ装置3が右分割体11と左分割体12とを、右分割体11と左分割体12とが軸線x方向において互いに近づくように押している。このため、たとえ熱膨張によりゴム環30が外周溝20において外周側に移動したとしても、バネ装置3の作用により、外周溝20のゴム環30が接触する部分の間の軸線x方向における間隔(間隙g1)が狭まるようにすることができる。このため、たとえ熱膨張によりゴム環30が外周溝20において外周側に移動したとしても、各ゴム環30の傾斜面31,32と外周溝20の溝側面21,22との間に夫々発生する摩擦力の低下を抑制することができる。
また、摩擦プーリ1は、単体摩擦プーリ2を複数有しており、動力伝達状態において各単体摩擦プーリ2のゴム環30が回転部材Rに圧接されて、複数のゴム環30を介して回転部材Rとの間で動力の伝達を行う。このため、摩擦プーリ1は、より高いトルクの伝達をすることができる。
上述のように、本発明の実施の形態に係る摩擦プーリ1によれば、高いトルクを伝達可能にすることができる。
また、本発明の実施の形態に係る摩擦プーリ1によれば、回転輪10とゴム環30とは、傾斜する溝側面21,22と、傾斜する傾斜面31,32とが夫々接触して摩擦力を発生しているので、回転輪10とゴム環30との間の接触面を大きくすることができ、回転輪10とゴム環30との間の接触面に発生する摩擦力をより大きくすることができる。
また、ゴム環30を右分割体11と左分割体12との間に挟持させることにより、接着処理を行うことなく、また、二次加硫処理や引張工程を行うことなく、摩擦プーリ1を組み立てることができる。このため、ゴム環30のゴム材料がどのような硬度や伸び等の特性を有していたとしても、また、どのような形状を有していたとしても、ゴム環30に追加の処理をすることなく、右分割体11と左分割体12との間にゴム環30を挟持させるだけで容易に摩擦プーリ1を製造することができる。
また、ゴム環30の圧縮しろを容易に調整することができ、摩擦プーリ1においてゴム環30が回転輪10に対して滑り始める滑りトルクの大きさを容易に調整することができる。このため、摩擦プーリ1が取り付けられる装置に応じて、滑りトルクを設定することにより、この装置に過大なトルクが加わらないようにすることができ、摩擦プーリ1が取り付けられる装置の損傷の予防を図ることができる。
摩擦プーリ1においては、ゴム環30は回転輪10に接着されておらず、接着強度確保のためにゴム環30に使用できるゴム材料の種類が制限されることはなく、種々のゴム材料を用いてゴム環30を製造することができ、ゴム環30のゴム材料の選択肢を大きく広げることができる。また、摩擦プーリ1においては、ゴム環30は回転輪10に接着されておらず、接着工程が不要であり、製造工程を簡易にすることができ、生産性を向上させることができる。
また、摩擦プーリ1において、ゴム環30と回転輪10の外周溝20との間の摩擦力は、ゴム環30に使用されるゴム材料の物性や外周溝20の表面性状によって決まるため、予めゴム材料の物性や外周溝20の表面性状を検査しておくことにより、摩擦プーリ1の品質を摩擦プーリ1を破壊することなく検査することができる。ゴム環と回転輪とが接着剤によって接着されている摩擦プーリにおいては、接着不良がある場合に、この接着されていない部分からゴム環の亀裂が早い段階で発展していき、ゴム環の破損に至る。このため、ゴム環と回転輪との間に接着剤による接着が用いられている摩擦プーリにおいては、接着不良の検出が重要であるが、摩擦プーリを分解することなく検査をすることは困難であった。これに対し、本発明の実施の形態に係る摩擦プーリ1は、破壊することなしに検査でき、摩擦プーリ1の品質管理を容易にすることができる。
また、動力伝達状態において、ゴム環30の傾斜面31,32が押圧されると、ゴム環30の外周溝20から突出した傾斜面31,32の外周側の部分が側方に変形して突出する。このとき、ゴム環30の突出した部分の付け根は、回転輪10の外周溝20の溝側面21,22と外周面11a,12aとの間の移行面24,25に押し付けられる。ゴム環30の突出した部分の付け根が押し付けられる回転輪10の移行面24,25は、上述のように、曲面となっており(図3,4参照)、ゴム環30の突出した部分の付け根は、移行面24,25に沿って外側に逃げる(変形する)ことができる。このため、動力伝達状態におけるゴム環30の変形によって、ゴム環30が、移行面24,25に押し付けられるゴム環30の突出した部分の付け根において、大きな応力を有することが抑制されており、ゴム環30の亀裂や破損の防止を図ることができる。移行面24,25は、断面が曲面状の形状に限られず、角面取りされた形状であってもよい。
なお、回転輪10の外周溝20の形状は上述の略V字形の形状に限定されるものではない。例えば、右分割体11の右溝側面21及び左分割体12の左溝側面22は、円錐面状ではなく、軸線xに沿う断面において、曲線の輪郭を有する形状であってもよい。また、同様に、ゴム環30の形状は、回転輪10の外周溝20に対応して略V字形の形状に限定されるものではない。例えば、ゴム環30の右傾斜面31及び左傾斜面32は、円錐面状ではなく、軸線xに沿う断面において、曲線の輪郭を有する形状であってもよい。また、回転輪10の外周溝20の断面形状は、U字状や矩形、円形であってもよく、同様に、ゴム環30の断面形状は、U字状や矩形、円形であってもよい。
また、ゴム環30は、非動力伝達状態において、外周溝20内で軸線x方向に圧縮されていなくてもよい。つまり、自由状態におけるゴム環30の傾斜面31,32の間の間隔が固定状態における外周溝20の溝側面21,22の間の間隔と同じ又はこの間隔よりも小さく、非動力伝達状態において、外周溝20内でゴム環30の傾斜面31,32が外周溝20の溝側面21,22に対して押し付けられていなくてもよい。但し、この場合、動力伝達状態において、ゴム環30の外周面33への押圧力によるゴム環30の変形によって、ゴム環30の傾斜面31,32が外周溝20の溝側面21,22に押し付けられて、傾斜面31,32に所望する押付力が発生するように、溝側面21,22の間の間隔に対して傾斜面31,32の間の間隔が設定される。また、ゴム環30の外周面33の形状は平面に限らず曲面であってもよく、断面において、曲線の輪郭、例えば円弧の輪郭を有するものであってもよい。ゴム環30の内周面36や外周溝20の溝底面23の断面形状も同様に、直線に限らず曲線であってもよい。
次いで、上述の摩擦プーリ1の変形例について説明する。
図6は、本発明の実施の形態に係る摩擦プーリ1の変形例を示すための、摩擦プーリ1の軸線に沿う断面における断面図である。図6に示すように、円盤部5は、回転輪10(分割体11又は12)に一体に形成されておらず、回転輪10とは別体として設けられていてもよい。この場合、円盤部5は、図6に示すように、分割体11又は12の外側側面11d又は12dに接触するように円盤状に広がっており、分割体11又は12の貫通孔15又は16に対応する位置に雌ネジ部分53が形成されている。分割体11又は12には雌ネジ部分53は形成されていない。また、雌ネジ部分53は、円盤部5に形成されておらず、図6の下方に破線で示すように締結装置4が有するナット56に形成されていてもよい。この場合、円盤部5には貫通孔15,16に対応する位置に貫通孔57が形成される。貫通孔57は、貫通孔15,16と同様に、ボルト51が挿入可能になっている。
上述の摩擦プーリ1においても(図2)、同様に、雌ネジ部分53が右側端に配設された単体摩擦プーリ2の右分割体11に雌ネジ部分53が形成されておらず、図6の下方に破線で示すように締結装置4が有するナット56に形成されるようにしてもよい。
以下、ゴム環30の変形例を例示する。
上述の摩擦プーリにおいて、ゴム環30は、図7に示すように、その内周面36に内周側に向かって延びる環状のリブ37が形成されていてもよい。リブ37は、軸線x周りに環状の円環状の部分であり、例えば、軸線xを中心とした中空円盤状の部分である。リブ37は、摩擦プーリ1の回転輪10の外周溝20の形状に応じて、その形状やサイズが設定されている。若しくは、リブ37の形状やサイズに対応して、摩擦プーリ1の回転輪10の外周溝20の形状やサイズが設定されている。リブ37のサイズとしては、例えば、径方向の寸法があり、リブ37の内周側の端面(内周端面38)と外周溝20の溝底面23との間に空間ができるように、若しくは、リブ37の内周端面38と溝底面23とが接触するように、各寸法が設定されている。また、例えば、リブ37の軸線x方向の幅は均一若しくは略均一になっている。例えば、図7に示すように、リブ37は、断面形状が矩形又は略矩形であり、内周面36と軸線x方向の幅が同じ又は略同じである。ゴム環30において、リブ37の軸線x方向の幅は、内周面36の軸線x方向の幅よりも狭くてもよい。
リブ37が形成されたゴム環30は、断面二次モーメントを大きくすることができ、曲げモーメントによって発生するゴム環30の曲げひずみの低減を図ることができる。このため、動力伝達状態において、ゴム環30にたわみが発生することを抑制することができる。これにより、ゴム環30の伸縮を又は繰り返しの変形を抑制することができ、または、ゴム環30の伸縮の際の変形量を又は繰り返しの変形の際の変形量を低減させることができ、動力伝達時のゴム環30の発熱を抑制することができる。また、リブ37は、内周面36から延びており、ゴム環30の傾斜面31,32に影響を与えることなく、つまりゴム環30と回転輪10との間の力の伝達機能に影響を与えることなく、ゴム環30の補強を図ることができる。
また、上述の摩擦プーリにおいて、ゴム環30は、図8に示すように、その外周側の両隅部が切り欠かれて、回転輪10の外周溝20との間に隙間が形成されるように逃げ部が形成されていてもよい。逃げ部の形状は、隅部が角面取りされて形成された形状又は丸面取りされて形成された形状等がある。逃げ部を有するゴム環を供える摩擦プーリ1においては、動力伝達状態においてゴム環が内周側に押圧されて変形しても、ゴム環の外周側の両隅部が外周溝20を超えて軸線x方向に押し出されることはなく外周溝20内において変形し、ゴム環が外周溝20の上側の端部に押し付けられてゴム環のこの部分に応力集中が発生することを防止することができる。
例えば、図8(a)に示すように、ゴム環30の変形例としてのゴム環60は、ゴム環30の外周面33と右側側面34及び左側側面35とが夫々形成する外周側の隅部の両方が切り欠かれて逃げ部61が形成されている。逃げ部61は、内周側において、右傾斜面31及び左傾斜面32に夫々交差するように形成されていてもよく、右側側面34及び左側側面35に夫々交差するように形成されていてもよい。図8(a)においては、右傾斜面31及び左傾斜面32に夫々交差するように形成された逃げ部61が図示されている。逃げ部61は、ゴム環60が回転輪10の外周溝20内に収容された状態において、逃げ部61と右傾斜面31及び左傾斜面32とが夫々交差する部分である交差部62が径方向において外周溝20の右溝側面21及び左溝側面22が広がる位置に夫々位置するように形成されている。このため、図9(b)に示すように、動力伝達状態においてゴム環60が内周側に押圧されて変形しても、ゴム環60の外周側の隅部は外周溝20を超えて軸線x方向に押し出されることはなく外周溝20内において変形し、ゴム環60が、移行面24,25に夫々押し付けられてゴム環60のこの部分に応力集中が発生することを防止することができる。このため、ゴム環60の亀裂や破損の防止を図ることができる。動力伝達状態においてゴム環60が外周溝20内を超えて軸線x方向に押し出されることがなく外周溝20内において変形するのであれば、ゴム環60の交差部62は、径方向において移行面24,25が広がる範囲内に夫々位置するようにしてもよい。
図9(b)に示す変形後の動力伝達状態においては、上述したゴム環30の場合と同様に、ゴム環60は右分割体11及び左分割体12の固定により右傾斜面31及び左傾斜面32に沿って一様に軸線x方向において圧縮しろを圧縮され、加えて、ゴム環60は回転部材Rの圧接により外周溝20内において内周方向に圧縮される。このように、図9(b)に示す変形後の動力伝達状態においてゴム環60は、右分割体11及び左分割体12の固定による変形に加えて、回転部材Rの圧接により変形される。
逃げ部61は、例えば、図8(a)に示すように断面において直線状又は略直線状に延びる、軸線xを中心又は略中心とする円錐面状又は略円錐面状の形状を有している。逃げ部61の形状は、円錐面状又は略円錐面状の形状に限らず、断面において円弧状、弧状、又は他の曲線状に延びる、軸線xを中心又は略中心とする環状の面であってもよい。逃げ部61の断面における形状が曲線状である場合、逃げ部61の断面における形状は、丸面取りされた形状や、図8(b)に示すように円弧の曲率が徐々に滑らかに変化する徐変R形状等がある。
右分割体11及び左分割体12において、移行面24,25は、図9(a)に示すように、外周溝20の外側に向かって広がるテーパ面であってもよい。このテーパ面は、トランペット状の面等の曲面であっても円錐面又は略円錐面であってもよい。図9(b)に示すように、移行面24,25がテーパ面である方が、動力伝達状態の際にゴム環60の外周側の端部が外周溝20内において、軸線x方向に外周溝20の外側に向かって広がる空間を大きくすることができ好ましい。また、右溝側面21及び左溝側面22と移行面24,25との夫々の間は滑らかに接続されていることが好ましい。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に係る摩擦プーリに限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
また、本発明に係る摩擦プーリの適用対象は、内燃機関に限定されず、他の自動車や産業機械等の本発明に係る摩擦プーリが適用可能な全ての装置や構成を含む。
1 摩擦プーリ
2 単体摩擦プーリ
3 バネ装置
4 締結装置
5 円盤部
6 収容空間
10 回転輪
11 分割体(右分割体)
11a,12a 外周面
11b,12b 内周面
11c,12c 内側側面
11d,12d 外側側面
11e,12e 段差面
12 分割体(左分割体)
13 右内側段部
14 左内側段部
15,16 貫通孔
17,18 バネ収容穴
19 空間
20 外周溝
21 溝側面(右溝側面)
22 溝側面(左溝側面)
23 溝底面
24,25 移行面
26 空間
30,60,63 ゴム環
31 右傾斜面
32 左傾斜面
33 外周面
34 右側側面
35 左側側面
36 内周面
37 リブ
38 内周端面
41,42 皿バネ
41a,42a 内径側部分
41b,42b 外径側部分
51 ボルト
52 雄ネジ部分
53 雌ネジ部分
54 ヘッド部
54a 座面
55 貫通孔
56 ナット
57 貫通孔
61 逃げ部
62 交差部
g1,g2 間隙
x 軸線

Claims (5)

  1. 回転可能な回転部材に外周において圧接されて動力を伝達する摩擦プーリであって、
    軸線周りに環状の複数の単体摩擦プーリと、
    複数のバネ装置と、
    少なくとも1つの締結装置とを備え、
    前記単体摩擦プーリは、外周に内周側に凹む環状の溝である外周溝を有する前記軸線周りに環状の部材である回転輪と、前記回転輪の前記外周溝内に収容可能に形成されたゴム製の環状のゴム環とを有しており、
    前記外周溝は、前記軸線方向において互いに対向する一対の前記軸線周りに環状の面である一対の溝側面を有しており、該一対の溝側面は前記外周溝内に収容された前記ゴム環を挟持可能に形成されており、
    前記回転輪は、前記軸線方向において互いに対向する一対の部材である一対の分割体を有しており、前記一対の分割体は夫々前記一対の溝側面を有しており、前記一対の分割体が前記軸線方向において互いに対向して前記外周溝が形成され、
    前記バネ装置は前記軸線方向に弾性を有しており、
    前記ゴム環が前記外周溝内に収容されて前記単体摩擦プーリの各々は、前記バネ装置を介して前記軸線方向に互いに隣接して配列されており、
    前記締結装置は、軸線方向に配列された前記複数の単体摩擦プーリ及び前記バネ装置を前記軸線方向において挟持していることを特徴とする摩擦プーリ。
  2. 前記軸線周りに円盤状の部材である円盤部を備え、
    前記円盤部は、前記軸線方向の一方の側の端に位置する前記単体摩擦プーリの前記回転輪の画成する内周側の空間を前記軸線方向の一方の端側から覆っていることを特徴とする請求項1記載の摩擦プーリ。
  3. 前記円盤部は、前記回転輪に一体に形成されていることを特徴とする請求項2記載の摩擦プーリ。
  4. 前記締結装置は、前記回転輪及び前記バネ装置を貫通していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の摩擦プーリ。
  5. 前記バネ装置は、少なくとも1つの前記軸線方向に弾性を有する部材であるバネ部材を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の摩擦プーリ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102417219B1 (ko) * 2021-08-02 2022-07-06 김윤곤 풀리 구조 및 풀리의 제조 방법
WO2024005245A1 (ko) * 2022-07-01 2024-01-04 김윤곤 림분할형 조립식 풀리 및 이의 제조방법

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