JP2018035686A - 真空ポンプ - Google Patents
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Description
真空ポンプは、ターボ排気部やネジ排気部を所定温度に加熱した後に起動させる必要がある。これは、常温状態の回転部と静止部のクリアランスが大きいので、外乱などでポンプ回転状態が不安定になることを防止するためである。
このようなターボ分子ポンプでは、たとえばベースと排気口を加熱対象箇所とすることがある。ベースの熱容量は排気口の熱容量に比べて大きいので、所定温度まで加熱する所要時間が長くなる傾向にある。
そのため、ベースと排気口の加熱開始時期を同時期とすると、排気口が先に所定温度に達し、ベースが所定温度に達するまで、不必要な加熱制御を行う必要がある。
(2)本発明の好ましい実施の形態の真空ポンプにおいて、加熱制御部は、予め設定した加熱状態になるまでの時間である第1安定温度到達時間が最大の第1箇所の温度上昇特性に基づいて、第1安定温度到達時間よりも短い時間で予め設定した加熱状態となる第2箇所の加熱部の起動時期を算出する算出部と、起動時期になると第2箇所の加熱を開始する加熱開始部とを備える。
(3)本発明の好ましい実施の形態の真空ポンプにおいて、上記算出部は、第1安定温度到達時間と、第1安定温度到達時間よりも短い時間で第2箇所が予め設定した加熱状態となるまでの時間である第2安定温度到達時間との差分の時間に基づいて第2箇所の加熱部の起動時期を算出する。
(4)本発明の好ましい実施の形態の真空ポンプにおいて、上記差分の時間に基づき起動時期を算出する上記算出部は、第1箇所の加熱開始から差分の時間が経過した時点における第1箇所の温度上昇特性から推定される第1箇所の推定温度を算出し、加熱開始部は、第1箇所の温度を測定する検出部により推定温度が検出された時点で第2箇所の加熱を開始する。
(5)本発明の好ましい実施の形態の真空ポンプはさらに、第1箇所の温度上昇特性と、第1および第2安定温度到達時間とが保存される記憶部を備える。そして、算出部は、温度上昇特性と、第1および第2安定温度到達時間とをポンプ起動時に記憶部から読み込み、これらに基づいて第2箇所の加熱部の起動時期を算出する。
(6)本発明の好ましい実施の形態の真空ポンプにおいて、複数の箇所のうち熱容量が最大である箇所における温度上昇特性を使用するのが好ましい。
図1は、本実施の形態の真空ポンプの一例であるターボ分子ポンプを示す図である。ターボ分子ポンプ100は、真空排気を行うポンプユニット1と、ポンプユニット1を駆動制御するコントロールユニット2とを備えている。
ポンプコントローラ21は、モータMの回転や磁気軸受34,35,36に接続されており、モータMや磁気軸受34,35,36を制御する。
温調コントローラ22は、ベース3、固定翼31および排気管38の温度を制御する。温調コントローラ22には、ヒータ51、52、53と、温度センサ56、57、58と、電磁弁61、62、63とが接続されている。電磁弁61は、ベース3を冷却する不図示の冷却水配管に設けられた電磁弁であり、冷却水の流れを制御する。電磁弁62は、固定翼31を冷却する不図示の冷却水配管に設けられた電磁弁であり、冷却水の流れを制御する。電磁弁63は、排気管38を冷却する不図示の冷却水配管に設けられた電磁弁であり、冷却水の流れを制御する。
ポンプコントローラ21は、入力部23からのスタート信号を受信すると、ポンプユニット1の各部に電力を供給する不図示の電源部を起動するとともに、温調コントローラ22に温調開始信号を出力する。また、ポンプコントローラ21は、入力部23からのスタート信号を受信した後、後述するインターロック解除信号を温調コントローラ22から受信するまで待機する。そして、温調コントローラ22からのインターロック解除信号を受信すると、ポンプコントローラ21は、回転ユニットRYを磁気浮上させつつモータMを起動する。
なお、温調コントローラ22は、後で詳述するように、ベース3、固定翼31および排気管38の加熱開始時期をずらしている。
一般にターボ分子ポンプでは、反応生成物の堆積を抑制するため、たとえばベースや排気管等をそれぞれヒータで加熱している。また、ターボ分子ポンプでは、各部の温度が十分に上昇した状態で回転体ユニットを安定して運転できるようにするために、熱膨張等を考慮して各部のクリアランスが設定されている。したがって、ターボ分子ポンプでは、各部の昇温が不十分であると、内部に反応生成物が堆積したり、回転体ユニットの回転が不安定になるおそれがある。
たとえば、ネジ溝ポンプ部のステータとロータとの間のクリアランスは、常温では広めに設定し、真空処理装置の使用状態では、膨張して常温時のクリアランスよりも狭いクリアランスとなるように設計されている。したがって、真空ポンプを起動する際、常温のまま回転体ユニットを駆動すると、上記クリアランスが適切な値になっていない状態、すなわち、クリアランスが広すぎる状態で回転するため好ましくない。
本実施の形態では、温調コントローラ22は、ポンプコントローラ21から温調開始信号を受信すると、ヒータ51に通電を開始してベース3の昇温を開始する。そして、ベース3の温度T1があらかじめ設定した昇温開始温度Φ2に到達すると、温調コントローラ22は、ヒータ52に通電を開始して固定翼31の昇温を開始する。そして、ベース3の温度T1があらかじめ設定した昇温開始温度Φ3に到達すると、温調コントローラ22は、ヒータ53に通電を開始して排気管38の昇温を開始する。なお、昇温開始温度Φ2、Φ3は、後述するように、ベース3、固定翼31および排気管38の温度T1、T2、T3が略同時期に安定温度Tstb1〜〜Tstb3に達するように設定された温度である。
昇温開始温度Φ2、Φ3は、たとえば次のように設定される。
ベース3、固定翼31,排気管38の温度がそれぞれの安定温度Tstb1〜Tstb3に到達するまでの所要時間tBA、tST、tEXを算出するための昇温特性のデータをあらかじめ実験等により取得する。これらの所要時間tBA、tST、およびtEXは温調コントローラ22の記憶部22cに保存される。また記憶部22cには、ベース3の温度T1が常温から安定温度Tstb1に達するまでの昇温曲線がT1(tem)として保存されている。
なお、正確に昇温開始温度を決定して安定温度到達時間(上記例では、温調制御対象の3箇所の温度が安定温度Tstb1〜3に到達するまでの時間100分、70分、20分)を正確に算出するのであれば、外部環境との熱対流・熱放射などを考慮した温度計算式を使用する。
図4は、ポンプコントローラ21における処理についてのフローチャートである。入力部23からスタート信号を受信すると、ポンプコントローラ21は、図4に示した処理を開始する。ステップS1において、ポンプユニット1の各部に電力を供給する不図示の電源部を起動してステップS3へ進む。ステップS3において、磁気軸受34〜36による磁気浮上制御を開始してステップS5へ進む。ステップS5において、温調コントローラ22に温調開始信号を出力してステップS7へ進む。
ステップS11において、入力部23からの運転停止信号を受信するまで待機し、運転停止信号を受信すると、ステップS13へ進み、モータMを停止させ、磁気軸受34〜36による磁気浮上制御を終了して、ステップS15へ進む。ステップS15において、温調コントローラ22に温調終了信号を出力して本プログラムを終了する。
ステップS33が否定判断されるとステップS23へ戻り、ステップS33が肯定判断されるとステップS35へ進む。
ステップS35において、ポンプコントローラ21にインターロック解除信号を出力してステップS37へ進む。ステップS37において、ポンプコントローラ21から温調終了信号を受信するまで待機し、温調終了信号を受信すると、ヒータ51、52、53および電磁弁61、62、63の制御を終了して本プログラムを終了する。
(1)真空ポンプは、複数の箇所に設けた複数のヒータ(加熱部)51〜53と、複数の箇所の加熱状態を検出する複数のセンサ(検出部)56〜58と、複数のセンサ56〜58で検出した複数の箇所の加熱状態が予め設定した状態となるまでロータ駆動モータMの起動を制限するポンプコントローラ(ポンプ制御部)21と、複数の箇所のすべてが予め設定した状態(たとえば、安定温度Tstb1〜Tstb3)に同じ時期に到達するように複数のヒータ51〜53を制御する温調コントローラ(加熱制御部)22とを備える。
したがって、複数の温調制御対象がそれぞれ安定温度に同時期に到達し、昇温開始から安定温度に到達するまでの所要時間が短い温調制御対象について、無駄な保温制御が回避され、消費電力が抑制される。
したがって、短時間で安定温度に到達する固定翼31や排気管38の保温制御が不要となり、無駄な電力消費を抑制できる。
温度上昇特性(T1(t))と、安定温度到達時間tBA、tEXを予め記憶しておくだけで、簡単に短時間で安定温度に到達する固定翼31や排気管38の加熱開始時点を設定することができる。
なお、実施の形態の真空ポンプでは、図2に示すように温調コントローラ22に記憶部22cを実装したが、記憶部22cはどこに実装してもよい。
(変形例1)
以上説明した実施の形態の真空ポンプの加熱箇所は、ベース3、固定翼31、および排気管38の3箇所であったが、4箇所以上でもよい。また、ベース3と排気管38など加熱箇所は2箇所でもよい。いずれの変形例の真空ポンプにおいても上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
以上説明した実施の形態の真空ポンプでは、温調コントローラ22の算出部22aは、複数の箇所のうち熱容量が最大の箇所であるベース3の温度上昇特性(T1(t))に基づき熱容量の小さい箇所である固定翼31や排気管38を加熱するヒータ57,58の起動時期を算出するようにした。しかし、起動時期の算出手法はこれに限定されない。たとえは次の算出手法を採用することもできる。
変形例2の温調コントローラ22の算出部22aは、予め設定した加熱状態になるまでの時間である第1安定温度到達時間が最大の第1箇所(たとえばベース3)の温度上昇特性と、第1安定温度到達時間(tBA)と、第1安定温度到達時間よりも短い時間で予め設定した加熱状態となる第2箇所(たとえば固定翼31や排気管38)の上記時間である第2安定温度到達時間(tST、tEX)とに基づいて第2箇所の加熱部の起動時期を算出するようにしてもよい。
変形例2は、予め設定した加熱状態になるまでの時間が熱容量とヒータ容量とに依存するので、第1安定温度到達時間が最大の箇所が必ずしも熱容量が最大であるとは限らないことを想定した変形例である。
具体的には、第1箇所の加熱開始後、第1安定温度到達時間と第2安定温度到達時間の差分に相当する時間が経過した時点における第1箇所の推定温度を第1温度特性から算出しておく。第1箇所の加熱開始後、第1箇所の温度が上記推定温度になった時点で第2箇所の加熱を開始する。
変形例2の真空ポンプにおいては、予め設定した加熱状態になるまでの時間である第1安定温度到達時間が最大の第1箇所(たとえばベース3)の温度上昇特性と、第1安定温度到達時間(tBA)と、第1安定温度到達時間よりも短い時間で予め設定した加熱状態となる第2箇所(たとえば固定翼31や排気管38)の上記時間である第2安定温度到達時間(tST、tEX)とに基づいて第2箇所の加熱部の起動時期を算出するようにした。しかし、変形例3の温調コントローラ22の算出部22aは、複数の箇所のうち予め設定した状態に到達するまでの所要時間が最も長い箇所である箇所(たとえばベース3)の第1安定温度到達時間と、第1安定温度到達時間よりも短い時間で予め設定した加熱状態となる第2箇所(たとえば固定翼31や排気管38)の上記時間である第2安定温度到達時間とに基づいて、第2安定温度到達時間で予め設定した状態となる箇所(たとえば固定翼31や排気管38)のヒータ57,58の起動時期t(Φ2)あるいはt(Φ3)を算出するようにしてもよい。
具体的には、第1箇所の加熱開始後、第1安定温度到達時間と第2安定温度到達時間の差分に相当する時間が経過した時点で第2箇所の加熱を開始する。
この変形例3の真空ポンプによれば、第1箇所の温度上昇特性を記憶する必要がなく、第1および第2安定温度到達時間だけを記憶するだけでよい。
従って本発明は、真空ポンプの複数の箇所に設けた複数の加熱部と、複数の箇所の加熱状態を検出する複数の検出部と、複数の検出部で検出した複数の箇所の加熱状態が予め設定した状態となるまでロータ駆動モータの起動を制限するポンプ制御部と、複数の箇所のすべてが予め設定した状態に同じ時期に到達するように複数の加熱部を制御する加熱制御部とを備える種々の形態の真空ポンプに適用することができる。
2 コントロールユニット
3 ベース
21 ポンプコントローラ
22 温調コントローラ
22a 算出部
22b 加熱開始部
22c 記憶部
30 ポンプケーシング
31 固定翼
38 排気管
51〜53 ヒータ
56〜58 温度センサ
100 ターボ分子ポンプ
Claims (6)
- 真空ポンプの複数の箇所に設けた複数の加熱部と、
前記複数の箇所の加熱状態を検出する複数の検出部と、
前記複数の検出部で検出した前記複数の箇所の加熱状態が予め設定した状態となるまでロータ駆動モータの起動を制限するポンプ制御部と、
前記複数の箇所のすべてが前記予め設定した状態に同じ時期に到達するように前記複数の加熱部を制御する加熱制御部とを備える真空ポンプ。 - 請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記加熱制御部は、予め設定した加熱状態になるまでの時間である第1安定温度到達時間が最大の第1箇所の温度上昇特性に基づいて、前記第1安定温度到達時間よりも短い時間で予め設定した加熱状態となる第2箇所の加熱部の起動時期を算出する算出部と、
前記起動時期になると前記第2箇所の加熱を開始する加熱開始部とを備える真空ポンプ。 - 請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記算出部は、前記第1安定温度到達時間と、前記第1安定温度到達時間よりも短い時間で前記第2箇所が予め設定した加熱状態となるまでの時間である第2安定温度到達時間との差分の時間に基づいて前記第2箇所の加熱部の起動時期を算出する真空ポンプ。 - 請求項3に記載の真空ポンプにおいて、
前記算出部は、前記第1箇所の加熱開始から前記差分の時間が経過した時点における前記第1箇所の温度上昇特性から推定される前記第1箇所の推定温度を算出し、
前記加熱開始部は、前記第1箇所の温度を測定する前記検出部により前記推定温度が検出された時点で前記第2箇所の加熱を開始する真空ポンプ。 - 請求項3または4に記載の真空ポンプにおいて、
前記第1箇所の前記温度上昇特性と、前記第1および第2安定温度到達時間とが保存される記憶部を備え、
前記算出部は、前記温度上昇特性と、前記第1および第2安定温度到達時間とをポンプ起動時に前記記憶部から読み込み、これらに基づいて前記第2箇所の加熱部の起動時期を算出する真空ポンプ。 - 請求項2から5までのいずれか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記第1箇所は、前記複数の箇所のうち熱容量が最大である真空ポンプ。
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