JP2018033347A - ビタミンk依存性タンパク質の製造方法 - Google Patents

ビタミンk依存性タンパク質の製造方法 Download PDF

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Takayuki Iwaki
孝行 岩城
和夫 梅村
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和夫 梅村
ことみ 伊熊
Kotomi Ikuma
ことみ 伊熊
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Abstract

【課題】本発明は、血液凝固又は抗凝固に関連するビタミンK依存性タンパク質を、昆虫細胞の発現系を使用して製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ビタミンK、ビタミンKエポキシドレダクターゼ、プロテインジスルフィドイソメラーゼ、及び哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼが存在する昆虫細胞内で、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を製造することを特徴とする、ビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、より安全性が高く、血液凝固薬や抗凝固薬として有用な血液凝固又は抗凝固に関連するビタミンK依存性タンパク質を製造する方法に関する。
血液凝固薬とは、出血を止めるために血液を凝固させる薬剤である。一方、抗凝固薬は、血液凝固を阻害する薬物であり、血栓塞栓症の治療及び予防やカテーテルの閉塞防止に用いられたり、人工透析装置や人工心肺装置の体外回路の凝固防止、輸血用血液の保存や血液検査の際に用いられている。
血液凝固薬や抗凝固薬としては、動物が本来有している血液凝固因子や抗凝固因子が用いられている。ヒトをはじめとする動物において、血液凝固第II、VII、IX、X因子や抗凝固因子のプロテインC、Sは、肝細胞によって合成分泌される。これらのタンパク質は、N末端にGla領域と呼ばれるグルタミン酸(Glu)が豊富な部位があり、このGluがビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼ(GGCX)(γ−glutamyl carboxylaseともいう。)の触媒作用でγカルボキシグルタミン酸(Gla)に変換されることによって初めて活性のあるタンパク質になることが知られている。
従来、血液凝固因子や抗血液凝固因子は、専ら血液を原料に精製されていたが、昨今は組み換えタンパクの利用も進んできている。組み換えタンパク質技術により合成されたこれらの因子は、血液由来の原材料を用いて精製された因子よりも安全性の点から好ましい。通常これらの組み換えタンパク質を作成する場合、ヒト胎児腎臓細胞由来の培養細胞株HEK293細胞を使用する。これは、HEK293細胞がGGCX活性を保持しているからである。ただし、その他の細胞に単純にGGCXをコードする遺伝子を導入しても活性のある組み換えタンパク質は得られない。その理由は未だ明確でない部分もあるが、数多の細胞腫ではビタミンKの還元システムが備わっていないことが大きな原因の一つと考えられている。そこで、哺乳細胞を用いて血液凝固因子や抗血液凝固因子の組み換えタンパク質を合成する方法としては、GGCX遺伝子とビタミンKの還元システムの中核をなすビタミンKエポキシドレダクターゼ(VKOR)遺伝子の両方を導入した哺乳培養細胞に、血液凝固又は抗凝固に関連するビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子を導入して発現させる方法が開示されている(例えば、特許文献1又は2参照。)。
組み換えタンパク質の合成に用いる発現系としては、昆虫細胞も使用されている。例えば、市販されているpMT−HisAベクターに全長遺伝子を組込んだ発現ベクターをショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)由来の培養細胞株S2細胞に導入した形質転換細胞を、ビタミンK無添加培地で培養するという至極簡便な方法でヒトの血液凝固第IX因子(F9)の発現に成功したことが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
特表2008−523837号公報 特表2008−535517号公報
Vatandoost,et al.,Biotechnology Progress,2012,vol.28(1),p.45-51.
本発明は、血液凝固又は抗凝固に関連するビタミンK依存性タンパク質を、昆虫細胞の発現系を使用して製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ビタミンKの還元システムを備える昆虫細胞内において、哺乳細胞由来のGGCXと共発現させることにより、ビタミンK存在下で血液凝固又は抗凝固に関連するビタミンK依存性タンパク質を製造できること、さらにPDIA2(プロテインジスルフィドイソメラーゼファミリーA、メンバー2)を共発現させることにより、より比活性の高いビタミンK依存性タンパク質を製造し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のビタミンK依存性タンパク質の製造方法、形質転換体、及び発現ベクターを提供するものである。
[1] ビタミンK、ビタミンKエポキシドレダクターゼ、プロテインジスルフィドイソメラーゼ、及び哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼが存在する昆虫細胞内で、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を製造することを特徴とする、ビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[2] プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とを昆虫細胞に導入した形質転換体を、ビタミンK含有培地中で培養することにより、前記哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を製造する、前記[1]のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[3] 前記形質転換体が、さらに、ビタミンKエポキシドレダクターゼをコードする遺伝子が導入されている、前記[2]のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[4] 前記哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子が、
(a) いずれかの哺乳動物が本来有しているビタミンK依存性タンパク質のN末端の分泌シグナルペプチドが切断された成熟型タンパク質のN末端側に、前記昆虫細胞内において分泌シグナルペプチドとして機能するペプチドが直接又は間接的に連結されたタンパク質、
(b) 前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ前記(a)のビタミンK依存性タンパク質が有する血液凝固活性又は抗凝固活性を有するタンパク質、又は
(c) 前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記(a)のビタミンK依存性タンパク質が有する血液凝固活性又は抗凝固活性を有するタンパク質、
である、前記[2]又は[3]のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[5] 前記形質転換体外に分泌された前記ビタミンK依存性タンパク質を、培養上清から回収する、前記[1]〜[4]のいずれかのビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[6] 前記プロテインジスルフィドイソメラーゼが、PDIA2(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼファミリーA、メンバー2)である、前記[1]〜[5]のいずれかのビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[7] 前記ビタミンKエポキシドレダクターゼが、ビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体サブユニット1(VKORC1)である、前記[1]〜[6]のいずれかのビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[8] 前記昆虫細胞が、ショウジョウバエ由来の培養細胞株S2細胞である、前記[1]〜[7]のいずれかのビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[9] 前記ビタミンK依存性タンパク質が、血液凝固第II因子、血液凝固第VII因子、血液凝固第IX因子、血液凝固第X因子、プロテインC、又はプロテインSである、前記[1]〜[8]のいずれかのビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
[10] ビタミンKエポキシドレダクターゼ遺伝子を備える昆虫細胞を宿主細胞とし、プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とが組み込まれている、形質転換体。
[11] 昆虫細胞を宿主細胞とし、ビタミンKエポキシドレダクターゼ遺伝子と、プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とが組み込まれている、形質転換体。
[12] プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とが組み込まれており、昆虫細胞において、プロテインジスルフィドイソメラーゼと哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼと血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質とを発現し得る、発現ベクター。
[13] さらに、ビタミンKエポキシドレダクターゼ遺伝子が組み込まれており、昆虫細胞において、ビタミンKエポキシドレダクターゼを発現し得る、前記[12]の発現ベクター。
本発明に係るビタミンK依存性タンパク質の製造方法により、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を、昆虫細胞内でより安全かつ容易に製造することができる。また、本発明に係る形質転換体及び発現ベクターを用いることにより、当該ビタミンK依存性タンパク質の製造方法を容易に実施することができる。
共発現ベクターpCoPUROの構造と使用したプライマーの位置を示した図である。 ベクターpMT−PURO2Gの構造を示した図である。 共発現ベクターpCoPURO2Gの構造と使用したプライマーの位置を示した図である。 共発現ベクターpCoGGCXの構造と使用したプライマーの位置を示した図である。 共発現ベクターpCoVKORC1構造と使用したプライマーの位置を示した図である。 共発現ベクターpCoPDIA2の構造と使用したプライマーの位置を示した図である。 共発現ベクターpCoPGEの構造を示した図である。 共発現ベクターpCoVKEの構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK80の構造と使用したプライマーの位置を示した図である。 共発現ベクターpMAK85の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK86の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK219の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK132の構造を示した図である。 実施例1において、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清のSDS−PAGE解析結果を示した図である。 実施例1において、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清の血液凝固第VII因子(hF7)活性(IU/mL)(図15(A))、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清中のhF7量(ng/mL)(図15(B))、及びS2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清のタンパク質1ng当たりのhF7活性(IU/ng)(図15(C))を示した図である。 共発現ベクターpMAK79の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK87の構造を示した図である。 実施例2において、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清SDS−PAGE解析結果を示した図である。 実施例2において、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清の血液凝固第II因子(hF2)活性(IU/mL)を示した図である。 共発現ベクターpMAK81の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK88の構造を示した図である。 実施例3において、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清のSDS−PAGE解析結果を示した図である。 共発現ベクターpMAK82の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK89の構造を示した図である。 実施例4において、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清のSDS−PAGE解析結果を示した図である。 共発現ベクターpMAK83の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK90の構造を示した図である。 実施例5において、S2細胞と各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清のSDS−PAGE解析結果を示した図である。 共発現ベクターpMAK84の構造を示した図である。 共発現ベクターpMAK254の構造を示した図である。 実施例6において、各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清中のヒトプロテインS量(ng/mL)(左図)、各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清のプロテインS活性(ng/mL)(中図)、及び各共発現ベクターを導入した形質転換体の培養上清のタンパク質1ng当たりのプロテインS活性(右図)を示した図である。
本発明に係るビタミンK依存性タンパク質の製造方法(以下、「本発明に係る製造方法」ということがある。)は、ビタミンK、VKOR、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、及び哺乳動物由来のGGCXが存在する昆虫細胞内で、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を製造することを特徴とする。
哺乳細胞は、培養にCOインキュベーターを必要とし、かつ細胞増殖速度も遅く、培養には血清を要する。このため、哺乳細胞を用いた組み換えタンパク質の合成はコストが大きい。また、ウイルス感染等の懸念を完全に払しょくするには至っていないという問題もある。これに対して、昆虫細胞は、培養にCOインキュベーターを必要とせず、増殖速度も速く、無血清培地でも問題なく培養可能である。さらに、一般的に哺乳類の細胞培養で問題となるウイルス感染や混入タンパク質の諸問題も昆虫細胞系では哺乳類と相互作用するものが極めて少ないため安全性の面でも利点が高い。本発明に係る製造方法は、目的のビタミンK依存性タンパク質の合成を昆虫細胞内で行うため、目的のビタミンK依存性タンパク質を、哺乳細胞内で製造する場合に比べてより安価かつ容易に製造できる。加えて、より安全性の高いビタミンK依存性タンパク質も製造可能である。
本発明に係る製造方法において、目的のビタミンK依存性タンパク質の製造を行う昆虫細胞(以下、「宿主細胞」ということがある。)としては、特に限定されるものではなく、組み換えタンパク質の発現系として使用可能な昆虫細胞であればよく、野生型であってもよく、遺伝子の欠損又は変異や外来遺伝子の導入等を生じさせた変異体であってもよい。当該昆虫細胞としては、培養や取扱いが容易であることから、S2細胞、Sf9細胞、Sf21細胞、BmN細胞、Tni PRO細胞、High Five細胞等の培養細胞株及びこれらの変異体が好ましい。中でも、ショウジョウバエ由来の培養細胞株S2細胞は、細胞増殖も早く分泌タンパク質生成能力も高いことから数多くの組み換えタンパク質発現実験に用いられていること、ショウジョウバエ由来のVKOR(D)の存在が確認されており、ビタミンKの還元システムの存在が確認されていることから、本発明において用いられる宿主細胞として特に好ましい。
本発明に係る製造方法において製造する目的のビタミンK依存性タンパク質は、血液凝固又は抗凝固に関連しており、かつビタミンK依存的に活性を示すタンパク質である。当該ビタミンK依存性タンパク質としては、例えば、血液凝固第II因子(プロトロンビン)、血液凝固第VII因子、血液凝固第IX因子、血液凝固第X因子、プロテインC、又はプロテインS等が挙げられる。
本発明に係る製造方法において製造する目的のビタミンK依存性タンパク質は、哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質である。当該ビタミンK依存性タンパク質としては、ヒトや、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、サル、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、ロバ、イヌ、ネコ等の家畜や実験動物に由来するビタミンK依存性タンパク質が好ましく、ヒト由来のビタミンK依存性タンパク質が特に好ましい。
なお、一般的に何らかの生理活性を有するタンパク質は、その生理活性を損なうことなく、1個又は2個以上のアミノ酸を欠失、置換又は付加させることができる。そこで、「ヒト由来のタンパク質」は、ヒトが本来有している、すなわち、ゲノム上に当該タンパク質をコードする遺伝子が存在するタンパク質と、当該タンパク質に機能や活性を損なうことなく各種改変を施したタンパク質の両方を意味する。その他の動物由来のタンパク質も同様である。
血液凝固因子や抗凝固因子は、N末端に分泌シグナルペプチドを有しており、細胞内で合成された後、分泌シグナルペプチドが切断された成熟型で細胞外へ分泌される。この成熟型タンパク質が血液凝固や抗凝固に機能する。そこで、本発明に係る製造方法においても、目的のビタミンK依存性タンパク質は、分泌シグナルペプチドが切断された成熟型のタンパク質として昆虫細胞外へ分泌されることが好ましい。
哺乳動物が本来有する血液凝固因子等の分泌シグナルペプチドは、昆虫細胞内では適切に機能しない場合がある。この場合には、哺乳動物が本来有する血液凝固因子の分泌シグナルペプチドを、宿主細胞として用いる昆虫細胞内において分泌シグナルペプチドとして機能するペプチドに置換したタンパク質を、本発明に係る製造方法において製造する目的のビタミンK依存性タンパク質とすることが好ましい。哺乳動物が本来有する血液凝固因子の分泌シグナルペプチドが宿主細胞内でも分泌シグナルペプチドとして機能する場合には、哺乳動物が本来有する血液凝固因子をそのまま宿主細胞内で発現させればよい。昆虫細胞内において分泌シグナルペプチドとして機能するペプチドとしては、当該昆虫細胞が本来有している分泌タンパク質の分泌シグナルペプチドが挙げられる。宿主細胞としてS2細胞を用いる場合には、例えば、ショウジョウバエのBiPタンパク質の分泌シグナルペプチドが挙げられる。
本発明に係る製造方法において製造する目的のビタミンK依存性タンパク質としては、下記(a)〜(c)のいずれかが好ましい。
(a) いずれかの哺乳動物が本来有しているビタミンK依存性タンパク質のN末端の分泌シグナルペプチドが切断された成熟型タンパク質のN末端側に、昆虫細胞内において分泌シグナルペプチドとして機能するペプチドが直接又は間接的に連結されたタンパク質。
(b) 前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ前記(a)のビタミンK依存性タンパク質が有する血液凝固活性又は抗凝固活性を有するタンパク質。
(c) 前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記(a)のビタミンK依存性タンパク質が有する血液凝固活性又は抗凝固活性を有するタンパク質。
前記(a)において、成熟型タンパク質のN末端側と昆虫細胞内において分泌シグナルペプチドとして機能するペプチドのC末端側は、直接連結していてもよく、1個又は2個以上のアミノ酸からなるポリペプチドを介して連結されていてもよい。リンカーとなるポリペプチドのアミノ酸鎖長やアミノ酸配列の種類は、当該成熟型タンパク質の活性を損なわないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、1〜20個のポリペプチドを用いることができる。
本発明及び本願明細書において、「タンパク質においてアミノ酸が欠失する」とは、タンパク質を構成しているアミノ酸の一部が失われる(除去される)ことを意味する。
本発明及び本願明細書において、「タンパク質においてアミノ酸が置換する」とは、タンパク質を構成しているアミノ酸が別のアミノ酸に変わることを意味する。
本発明及び本願明細書において、「タンパク質においてアミノ酸が付加される」とは、タンパク質中に新たなアミノ酸が挿入されることを意味する。
前記(b)のタンパク質において、前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列に対して欠失、置換若しくは付加されるアミノ酸の数は、1〜20個が好ましく、1〜10個がより好ましく、1〜5個がさらに好ましい。
前記(c)のタンパク質において、前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列との配列同一性は、85%以上100%未満であることが好ましく、90%以上100%未満であることがより好ましく、95%以上100%未満であることがさらに好ましい。
本発明に係る製造方法においては、哺乳動物由来のGGCXの存在する昆虫細胞内で目的のビタミンK依存性タンパク質を発現させて製造する。例えば、S2細胞では、ショウジョウバエ由来のGGCX(D)の存在が確認されているが、後記実施例に示すように、GGCX(D)のみでは、活性を有する目的のビタミンK依存性タンパク質が製造できない。哺乳動物由来のGGCXとしては、ヒト(Homo sapiens)GGCX(NM_000821.1)、マントヒヒ(Papio hamadryas)GGCX(AC116665.1)、ウシ(Bos taurus)GGCX(NM_174066.2)、ヒツジ(Ovis aries)GGCX(AF312035)、ラット(Rattus norvegicus)GGCX(NM_031756.1)、マウス(mus musculus)GGCX(NM_019802.1)等が挙げられる。なお、番号は、データベースNCBIのアクセッション番号である。
本発明において用いられる哺乳動物由来のGGCXとしては、哺乳動物が本来有しているGGCXに、GGCX活性、すなわち、ビタミンK依存的に、グルタミンのγ位にもう一つカルボキシル基を付加させる反応を触媒する活性を保持したまま、各種改変を施したタンパク質であってもよい。当該改変としては、1個又は2個以上のアミノ酸を欠失、置換又は付加させる態様が挙げられる。
本発明に係る製造方法においては、VKORの存在する昆虫細胞内で目的のビタミンK依存性タンパク質を発現させて製造する。S2細胞のように、宿主細胞とする昆虫細胞に元々VKORが発現している場合には、内在性のVKORをそのまま使用することができる。また、宿主細胞がVKORを発現していない場合には、VKORをコードする遺伝子を外来遺伝子として宿主細胞に導入して発現させる。内在性のVKORが存在する宿主細胞であっても、VKORをコードする遺伝子を導入して外来のVKORを発現させてもよい。宿主細胞に導入する外来のVKORとしては、VKORの複合体サブユニット1(VKORC1)であることが好ましい。
本発明において用いられるVKORとしては、VKOR活性、すなわち、ビタミンKエポキシド及びビタミンKの還元し、還元型ビタミンKを合成する還元酵素活性(EC1.1.4.2)を有するものであればよく、いずれの生物種由来のVKORであってもよく、人工的に合成されたVKOR又はVKORC1であってもよい。宿主細胞に導入する外来のVKORとしては、ヒトVKOR(NP_775788)、ウシVKOR(NP_001003903)、ラットVKOR(NP_976080)、マウスVKOR(NP_848715)、ニワトリ(Gallus gallus)VKOR(NP_001001328)、ツメガエル(Xenopus laevis)VKOR(AAH43742)、ショウジョウバエVKOR(DAA02561)、及びこれらの複合体サブユニット1(VKORC1)等が挙げられ、哺乳動物由来のVKOR又はVKORC1が好ましい。番号は、データベースNCBIのアクセッション番号である。
本発明において用いられるVKORとしては、いずれかの生物種由来のVKOR又はVKORC1に、VKOR活性を保持したまま、各種改変を施したタンパク質であってもよい。当該改変としては、1個又は2個以上のアミノ酸を欠失、置換又は付加させる態様が挙げられる。
本発明に係る製造方法においては、PDI(EC 5.3.4.1)の存在する昆虫細胞内で目的のビタミンK依存性タンパク質を発現させて製造する。宿主細胞とする昆虫細胞に元々PDIが発現している場合には、内在性のPDIをそのまま使用することができる。また、宿主細胞がPDIを発現していない場合には、PDIをコードする遺伝子を外来遺伝子として宿主細胞に導入して発現させる。内在性のPDIが存在する宿主細胞であっても、PDIをコードする遺伝子を導入して外来のPDIを発現させてもよい。宿主細胞に導入する外来のPDIとしては、PDIA2(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼファミリーA、メンバー2)であることが好ましい。
本発明において用いられるPDIとしては、PDI活性、すなわち、ジスルフィド結合形成反応に対する触媒活性を(EC5.3.4.1)を有するものであればよく、いずれの生物種由来のPDIであってもよく、人工的に合成されたPDI又はPDIA2であってもよい。宿主細胞に導入する外来のPDIとしては、哺乳動物由来のPDIが好ましく、哺乳動物由来のPDIA2がより好ましく、ヒトPDIA2(NP_006840)又はマウスPDIA2(NP_001074539)がさらに好ましい。番号は、データベースNCBIのアクセッション番号である。
本発明において用いられるPDIとしては、いずれかの生物種由来のPDIに、PDI活性を保持したまま、各種改変を施したタンパク質であってもよい。当該改変としては、1個又は2個以上のアミノ酸を欠失、置換又は付加させる態様が挙げられる。
本発明に係る製造方法は、具体的には、PDIをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のGGCXをコードする遺伝子と、VKORをコードする遺伝子と、目的のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とを、昆虫細胞に導入した形質転換体を、ビタミンK含有培地中で培養することにより行う。宿主細胞とする昆虫細胞がVKORを発現している細胞であれば、VKORをコードする遺伝子の導入は省略してもよい。
各遺伝子を発現可能な状態で導入した形質転換体は、各遺伝子がコードするタンパク質を発現させるために必要なDNAの組み合わせからなる発現カセットを組み込んだ発現ベクターを、宿主となる昆虫細胞に導入することによって得られる。発現カセットは、発現させるタンパク質をコードする遺伝子と、当該遺伝子の発現を制御するプロモーターとを備える。発現カセットは、さらに、ターミネーター、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域のいずれか1つ以上が含まれていてもよい。好ましい発現カセットは、タンパク質をコードする遺伝子配列、プロモーター、ターミネーター、5’−非翻訳領域、3’−非翻訳領域を全て含む発現カセットである。
プロモーターとターミネーターは、宿主である昆虫細胞内で機能するものであればよい。昆虫細内で機能するプロモーター及びターミネーターとしては、昆虫細胞が本来有するものであってもよく、昆虫細胞が本来有していないものであってもよい。昆虫細内で機能するプロモーターとしては、例えば、ポリヘドリン(多角体)プロモーター、P10プロモーター、ウイルス感染初期発現タンパク質(IE−1)プロモーター、MTプロモーター、COPIAプロモーター、CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター、熱ショックタンパク質プロモーター、OPIE2プロモーター、及びアクチン5Cプロモーター等が挙げられる。
各遺伝子の発現カセットを組み込んで発現ベクターを作製するためのベクターは、昆虫細胞への導入に通常用いられる任意のベクターを用いることができる。当該ベクターは、環状のプラスミドベクターであってもよく、直鎖状のベクターであってもよく、バキュロウイルス等のウイルスベクターであってもよい。市販されている昆虫細胞発現用ベクターのクローニングサイトに目的のタンパク質をコードする遺伝子を組込むことによっても、発現ベクターを作製することができる。
各遺伝子の発現カセットは、1のベクターに纏めて組込んでもよく、2以上のベクターに分けて組込んでもよく、1のベクターに1の発現カセットのみを組込んでもよい。1の昆虫細胞に必要な全ての発現カセットをより確実に導入可能であることから、全ての発現カセットを1のベクターに組込んだ発現ベクターを用いて形質転換を行うことが好ましい。具体的には、1のベクターに、PDI遺伝子の発現カセットと、哺乳動物由来のGGCX遺伝子の発現カセットと、VKOR遺伝子の発現カセットと、目的のビタミンK依存性タンパク質遺伝子の発現カセットと、が全て組込まれた発現ベクターや、1のベクターに、PDI遺伝子の発現カセットと、哺乳動物由来のGGCX遺伝子の発現カセットと、目的のビタミンK依存性タンパク質遺伝子の発現カセットと、が全て組込まれた発現ベクターを宿主細胞である昆虫細胞に導入して形質転換体を製造することが好ましい。
本発明において使用される形質転換体を製造するための発現ベクターは、目的の遺伝子の発現カセットのほかに、発現カセットが導入されたベクターを選択したり、形質転換体を選択するためのマーカーを有することが好ましい。該マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子(ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)、ゼオシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明に係る製造方法に使用される形質転換体は、各外来遺伝子の発現カセットが、宿主細胞の細胞内で染色体外遺伝子として保持される形質転換体であってもよく、宿主細胞の染色体中に組み込まれた形質転換体であってもよい。また、発現ベクターを昆虫細胞へ導入する形質転換方法は、公知の形質転換方法の中から適宜選択して行うことができる。例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム沈殿法、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、組換えバキュロウイルスを感染させる方法等が挙げられる。また、市販の昆虫細胞形質転換用キットを用いてもよい。
当該形質転換体をビタミンK含有培地中で培養することにより、目的のビタミンK依存性タンパク質が成熟型として、形質転換体外へ分泌された状態で製造される。ビタミンKの存在下で発現させることにより、活性を有するビタミンK依存性タンパク質が製造できる。ビタミンK含有培地のビタミンK濃度は、形質転換体内のビタミンK濃度が充分に高くなる濃度であれば特に限定されるものではない。例えば、培地中のビタミンK濃度を5〜10μg/mLとすることにより、活性を有する状態のビタミンK依存性タンパク質が培地に分泌される。
目的のビタミンK依存性タンパク質の製造のために用いられる培地は、ビタミンKを含有する以外は、通常、昆虫細胞の培養に用いられる培地を用いることができる。また、培養温度等の培養条件も、宿主とした昆虫細胞の培養と同様にして行うことができる。
培地に分泌された目的のビタミンK依存性タンパク質は、公知の方法により培地から精製することができる。例えば、培養終了後の液体培地から遠心分離により菌体を分離し、回収された培養上清をアフィニティカラムに通し、目的のビタミンK依存性タンパク質が溶出された分画のみを回収することにより、目的のビタミンK依存性タンパク質を精製できる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以降の実験において、PCRは、PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用い、製品に添付の指示に従って行った。
また、 S2細胞の継代培養は、継代用培地(「ExpressFive SFM」(サーモフィッシャー社)に10% FCS(サーモフィッシャー社)と抗生物質「antibiotic antimycotic solution」(シグマ社)を添加した培地)中で、27℃で培養した。
[実施例1]
<pCoPGEとpCoVKEの作製>
共発現ベクターpCoPURO(イワキ社製、製品番号:2003 #1191)(図1、配列番号1)を鋳型とし、pMT−PURO2.tagF(5’−GAGGCCCACCGACTCTAGATCAAGC、配列番号2)をフォワードプライマーとして、pMT−PURO2.KozakR(5’−GGTGGCGGCGCAAGCTATCGAATTCCTGCAGCCCG、1〜9番目の領域はKozak配列を示す。配列番号3)をリバースプライマーとして用いてインバースPCRを行い、得られた増幅産物を、pCoPURO2G、pCoGGCX、pCoVKORC1、及びpCoPDAI2を作製するための土台とした。
MTプロモーターの下流にショウジョウバエのBiPタンパク質の分泌シグナルペプチド(図中、「BiP」)及び外来遺伝子を導入するマルチクローニングサイトを備えるpMT−PURO2G(イワキ社製、製品番号:2008 #1447)(図2、配列番号4)を鋳型とし、PURO.F(5’−ATGACCGAGTACAAGCCCACGGTG、配列番号5)をフォワードプライマーとして、EGFP.R(5’−TTACTTGTACAGCTCGTCCATGC、配列番号6)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ピューロマイシン耐性マーカー(pac)とEGFP(enhanced green fluorescent protein)の融合タンパク質をコードする塩基配列からなる断片を得た。得られた増幅産物を、T4ヌクレオチドキナーゼ(NEB Japan社製)でリン酸化した後、Quick Ligation Kit(NEB Japan社製)を用いて前記土台と連結させ、共発現ベクターpCoPURO2G(図3、配列番号7)を作製した。
FANTOMクローン(ID#6820418L05、ダナフォーム社製)を鋳型とし、Ggcx.F(5’−ATGGCTGTGCACCGCGGCTCCGC、配列番号8)をフォワードプライマーとして、Ggcx.R(5’−TCAGAACTCAGAGTGAACATGCTCAGAATCTGG、配列番号9)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、マウスのGGCXをコードする遺伝子の塩基配列からなる断片を得た。得られた増幅産物を、リン酸化した後、前記土台と連結させ、共発現ベクターpCoGGCX(図4、配列番号10)を作製した。
FANTOMクローン(ID#1110001K05、ダナフォーム社製)を鋳型とし、Vkorc1.F(5’−ATGGGCACCACCTGGAGGAGCCC、配列番号11)をフォワードプライマーとして、Vkorc1.R(5’−TCAGTGCTTTTTGGTCTTGTGTTCTGGTACCTTCTG、配列番号12)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、マウスのVKORC1をコードする遺伝子の塩基配列からなる断片を得た。得られた増幅産物を、リン酸化した後、前記土台と連結させ、共発現ベクターpCoVKORC1(図5、配列番号13)を作製した。
FANTOMクローン(ID#1810041F13、ダナフォーム社製)を鋳型とし、Pdia2.F(5’−ATGGACAAGCAGCTTCTGCCAGTGTTGCTGC、配列番号14)をフォワードプライマーとして、Pdia2.R(5’−CTACAGCTCCTCCTTGGGACCCAAGG、配列番号15)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、マウスのPDIA2をコードする遺伝子の塩基配列からなる断片を得た。得られた増幅産物を、リン酸化した後、前記土台と連結させ、共発現ベクターpCoPDIA2(図6、配列番号16)を作製した。
共発現ベクターpCoPURO2Gを鋳型とし、VKBinvF(5’−AGCTGCGGCCGCAAGGCGCGCCCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAAC、5〜12番目の領域は制限酵素NotIサイト、15〜22番目の領域はAscIサイトを示す。配列番号17)をフォワードプライマーとして、VKB/MinvR(5’−CCTTGCGGCCGCAGCTTGTACATTCCTAGGCCGTATTACCGCCTTTGAGTGAGCTGATACC、5〜12番目の領域は制限酵素NotIサイト、25〜30番目の領域はAvrIIサイトを示す。配列番号18)をリバースプライマーとして用いてインバースPCRを行い、得られた増幅産物を、制限酵素NotIとAvrII(いずれもNEB Japan社製)で消化した後、得られた断片をpCoPGEを作製するための土台とした。
pCoGGCXを鋳型とし、VKMinvF(5’−GCGCACTAGTTTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTC、5〜9番目の領域は制限酵素SpeIサイトを示す。配列番号19)をフォワードプライマーとして、VKB/MinvRをリバースプライマーとして用いてPCRを行うことにより、COPIAプロモーターとポリAシグナルを含むGGCX発現カセットを得た。得られた増幅産物を、SpeIとNotI(いずれもNEB Japan社製)で消化した後、得られた消化断片を前記土台と連結させ、共発現ベクターpCoPGE(図7、配列番号20)を作製した。
同様に、pCoVKORC1を鋳型としてPCRにより得られたCOPIAプロモーターとポリAシグナルを含むVKORC1発現カセットの増幅産物を、pCoPGEに連結させた後、得られたベクターに、pCoPDIA2を鋳型としてPCRにより得られたCOPIAプロモーターとポリAシグナルを含むPDIA2発現カセットの増幅産物を連結させることにより、共発現ベクターpCoVKE(図8、配列番号21)を作製した。
<pMAK80、pMAK85、pMAK86、pMKA132、及びpMAK219の作製>
cDNAクローン(MGC:163340、IMAGE:40146499)を鋳型とし、MAK80F(5’−CTCGCTCGGGAGATCTGCAGTCTTCGTAACCCAGGAGGAAGCC、11〜16番目の領域は制限酵素BglIIサイトを示す。配列番号22)をフォワードプライマーとして、MAK80R(5’−CGAAGGGCCCTCTAGACTAGGGAAATGGGGCTCGCAGG、11〜16番目の領域は制限酵素XbaIサイトを示す。配列番号23)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ヒト血液凝固第VII因子(hF7)の分泌シグナルペプチド欠損体のcDNA断片(hF7δSig)を得た。得られた断片を、制限酵素BglIIとXbaIで消化したpMT−PURO2Gにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK80(図9、配列番号24)を作製した。サブクローニングは、In−Fusion(登録商標)HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用い、製品に添付の指示に従って行った。
pMAK80を鋳型とし、MAK80F−LIC(5’−GGTAATACGGCCTAGGCTGCAAGGCGATTAAGTTGGGTAACGCCAG、11〜16番目の領域は制限酵素AvrIIサイトを示す。配列番号25)をフォワードプライマーとして、MAK80R−LIC(5’−GCGCGCCTTGCGGCCGCCGCAGCGAGTCAGTGAGCGAGGAAG、10〜17番目の領域は制限酵素NotIサイトを示す。配列番号26)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、MTプロモーターとBiP分泌シグナルペプチドとポリAシグナルを含むBiP−hF7δSig発現カセットを得た。得られた増幅産物を、制限酵素AvrIIとNotIで消化したpCoPGE及びpCoVKEにそれぞれサブクローニングし、共発現ベクターpMAK85(図10、配列番号27)及び共発現ベクターpMAK86(図11、配列番号28)を作製した。
pCoVKORC1を鋳型とし、VKMinvFをフォワードプライマーとして、VKB/MinvRをリバースプライマーとして用いてPCRを行うことにより、COPIAプロモーターとポリAシグナルを含むVKORC1発現カセットを得た。得られた増幅産物を、SpeIとAvrIIで消化した後、得られた消化断片を、AvrIIで消化したpMAK85と連結させ、共発現ベクターpMAK219(図12、配列番号29)を作製した。
cDNAクローン(MGC:163340、IMAGE:40146499)を鋳型とし、MAK132F(5’−ATGGTCTCCCAGGCCCTCAGGC、1〜3番目の領域は開始コドンを示す。配列番号30)をフォワードプライマーとして、MAK132R(5’−GGCACCGACAGGAGCGCTTGG、13〜18番目の領域は制限酵素AfeIサイトを示す。配列番号31)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ヒト血液凝固第VII因子が本来有する分泌シグナルペプチドを得た。得られた断片とpMAK80を鋳型とし、MAK80F−LICをフォワードプライマーとして、MAK132OLR(5’−GGCCTGGGAGACCATATTGAGATCGGATCCCCCCTTTAG、配列番号32)をリバースプライマーとして用いてオーバーラップ・エクステンションPCRを行うことによって、MTプロモーターの下流にヒト血液凝固第VII因子が本来有する分泌シグナルペプチドがある増幅断片を得た。得られた増幅断片を、制限酵素AvrIIとAfeIで消化したpMAK86にサブクローニングし、共発現ベクターpMAK132(図13、配列番号33)を作製した。pMAK132は、ヒト血液凝固第VII因子(hF7)のcDNAの全長が組み込まれている。
<S2細胞の形質転換体の作製>
S2細胞(サーモフィッシャー社製)に、pMAK80、pMAK85、pMAK86、pMKA132、及びpMAK219をそれぞれトランスフェクションし、形質転換体を得た。具体的には、24ウェルプレートに細胞密度が2×10個/1ウェルとなるように播き、1mL/1ウェルの継代用培地中で16時間後のS2細胞に、1μgの各共発現ベクターを、「HillyMax transfection reagent」(同仁化学研究所社製)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクションの4時間後に培地を交換し、さらに48時間培養後、培地を、継代用培地にピューロマイシンを最終濃度が2μg/mLとなるように添加したPURO含有培地に交換し、共発現ベクターが導入された形質転換体の選抜を行った。ピューロマイシン存在下での培養により選抜された形質転換体は、いずれも緑色蛍光が観察された。
<hF7発現>
選抜された各形質転換体を、6ウェルプレートに細胞密度が1×10個/1ウェルとなるように播いて3mL/1ウェルの継代用培地中で培養した後、PURO含有培地に硫酸銅を最終濃度が500μMとなるように添加した誘導培地、又は誘導培地にさらにビタミンKを最終濃度が10μg/mLとなるように添加したビタミンK含有培地中で48時間培養した後、培養上清を回収した。回収された培養上清は、遠心分離処理を行うことによって菌体を除去した。なお、対照として、ベクターを導入していないS2細胞についても同様の処理を行った。
得られた培養上清のうち5μLを2−メルカプトエタノール含有ローディングバッファー5μLと混合した後、99℃で3分間処理することにより、泳動用サンプルを調製した。この泳動用サンプルを、12%のポリアクリルアミドゲルにアプライしてSDS電気泳動を行った。泳動終了後、ゲル内のタンパク質をPDVF膜(ミリポア社)に転写した。タンパク質を転写したPVDF膜を、ウサギを免疫して得られたヒト第VII因子に対する特異抗体(アバカム社製)と反応させ、さらにHRP標識された抗ウサギIgG抗体(Cell Signaling Technology社製)と反応させて、「SuperSignal West Pico」(サーモフィッシャー社製)を用いて発光させることによって、当該PVDF膜に転写されたタンパク質を可視化した。結果を図14に示す。図中、「−VitK」は誘導培地で培養した培養上清の結果を、「+VitK」はビタミンK含有培地で培養した培養上清の結果を、それぞれ示す。また、「80」、「85」、「86」、「132」、及び「219」は、それぞれ、pMAK80、pMAK85、pMAK86、pMKA132、及びpMAK219を導入した形質転換体の結果を示す。この結果、pMAK80、pMAK85、pMAK86、及びpMAK219を導入した形質転換体では、誘導培地とビタミンK含有培地のいずれの培地で培養した場合にも、成熟型のhF7から予想される質量47kDa近傍にバンドが認められた。一方で、pMAK132を導入した形質転換体では、誘導培地とビタミンK含有培地のいずれの培地でも、hF7のバンドは確認されなかった。
また、得られた培養上清のうち1μL中のhF7の量を、市販のキット(製品名:F7(Human) ELISA kit、Abnova社製)により測定した。測定結果を図15(B)に示す。SDS−PAGEの結果と同様に、ビタミンKの有無にかかわらず、pMAK80、pMAK85、pMAK86、及びpMAK219を導入した形質転換体では培養上清中にhF7が確認されたが、pMKA132を導入した形質転換体では確認されなかった。pMKA132を導入した形質転換体の培養上清にhF7が確認されなかったことから、hF7が本来有している分泌シグナルペプチドは、S2細胞内では適切に機能しないことが推察された。
また、得られた培養上清のうち100μLを用いて、hF7の活性を測定した。hF7活性の測定は、市販のキット(製品名:F7(Human) Chromogenic Activity kit、Abnova社製)を用い、製品に添付の指示に従って行った。測定結果を図15(A)に示す。また、hF7のタンパク質1ng当たりのhF7活性(hF7比活性)を図15(C)に示す。この結果、pMAK85、pMAK86、及びpMAK219を導入した形質転換体では、hF7活性は、ビタミンKを添加していない誘導培地の培養上清では確認されなかったが、ビタミンK含有培地の培養上清では確認された。中でも、pMAK86を導入した形質転換体、すなわち、GGCXとVKORC1とPDIA2の全てを外来遺伝子として導入して発現させた形質転換体が、hF7比活性が顕著に高かった。また、pMAK80を導入した形質転換体では、成熟型のhF7の存在が確認されているにもかかわらず、ビタミンK含有培地でもhF7活性は確認されなかった。これらの結果から、昆虫細胞内でhF7等のビタミンK依存性タンパク質を活性を備えた状態で発現させるためには、ビタミンKの存在下でタンパク質発現を行う必要があること、S2細胞の内在性のGGCXは、hF7等の哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を発現させる場合には機能せず、哺乳動物由来のGGCXの導入が必要であること、特に、GGCXとVKORとPDIの全てを過剰発現させることにより、比活性の高いビタミンK依存性タンパク質が合成できること、が判明した。
[実施例2]
<pMAK79及びpMAK87の作製>
cDNAクローン(MGC:59803、IMAGE:6283420)を鋳型とし、MAK79F(5’−CTCGCTCGGGAGATCTCAGCATGTGTTCCTGGCTCC、11〜16番目の領域は制限酵素BglIIサイトを示す。配列番号34)をフォワードプライマーとして、MAK79R(5’−CGAAGGGCCCTCTAGACTACTCTCCAAACTGATCAATGACCTTC、11〜16番目の領域は制限酵素XbaIサイトを示す。配列番号35)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ヒト血液凝固第II因子(hF2)の分泌シグナルペプチド欠損体のcDNA断片(hF2δSig)を得た。得られた断片を、制限酵素BglIIとXbaIで消化したpMT−PURO2Gにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK79(図16、配列番号36)を作製した。
pMAK79を鋳型とし、MAK80F−LICをフォワードプライマーとして、MAK80R−LICをリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、MTプロモーターとBiP分泌シグナルペプチドとポリAシグナルを含むBiP−hF2δSig発現カセットを得た。得られた増幅産物を、制限酵素AvrIIとNotIで消化したpCoVKEにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK87(図17)を作製した。
<S2細胞の形質転換体の作製>
実施例1と同様にして、S2細胞に、pMAK79及びpMAK87をそれぞれトランスフェクションし、形質転換体を得た。ピューロマイシン存在下での培養により選抜された形質転換体は、いずれも緑色蛍光が観察された。
<hF2発現>
実施例1と同様にして、選抜された各形質転換体を誘導培地又はビタミンK含有培地中で48時間培養した後、培養上清を回収した。回収された培養上清は、遠心分離処理を行うことによって菌体を除去した。なお、対照として、ベクターを導入していないS2細胞についても同様の処理を行った。
得られた培養上清の一部を用い、実施例1と同様にしてSDS電気泳動を行った後、CBB染色し、タンパク質のバンドを可視化した。結果を図18に示す。図中、「−VitK」は誘導培地で培養した培養上清の結果を、「+VitK」はビタミンK含有培地で培養した培養上清の結果を、それぞれ示す。また、「79」及び「84」は、それぞれ、pMAK79及びpMAK84を導入した形質転換体の結果を示す。この結果、pMAK79及びpMAK84を導入した形質転換体では、誘導培地とビタミンK含有培地のいずれの培地で培養した場合にも、成熟型のhF2から予想される質量67kDa近傍にバンドが認められた。
得られた培養上清のうち1μLを用いて、hF2の活性を測定した。hF2活性の測定は、市販のキット(製品名:SensoLyte AFC Thrombin Activity assay kit、AnaSpec社製)を用い、製品に添付の指示に従って行った。測定結果を図19に示す。この結果、hF7と同様に、hF2も、pMAK87を導入した形質転換体、すなわち、hF2をGGCXとVKORとPDIと共発現させた形質転換体をビタミンK含有培地で培養した培養上清ではhF2活性が確認されたが、ビタミンKを含まない培地で培養した形質転換体やGGCXを共発現させていないpMAK79を導入した形質転換体では、hF2活性は確認できなかった。
[実施例3]
<pMAK81及びpMAK88の作製>
cDNAクローン(MGC:129642、IMAGE:40007637)を鋳型とし、MAK81F(5’−CTCGCTCGGGAGATCTACAGTTTTTCTTGATCATGAAAACGCCAAC、11〜16番目の領域は制限酵素BglIIサイトを示す。配列番号37)をフォワードプライマーとして、MAK81R(5’−CGAAGGGCCCTCTAGATTAAGTGAGCTTTGTTTTTTCCTTAATCCAGTTG、11〜16番目の領域は制限酵素XbaIサイトを示す。配列番号38)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ヒト血液凝固第IX因子(hF9)の分泌シグナルペプチド欠損体のcDNA断片(hF9δSig)を得た。得られた断片を、制限酵素BglIIとXbaIで消化したpMT−PURO2Gにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK81(図20、配列番号39)を作製した。
pMAK81を鋳型とし、MAK80F−LICをフォワードプライマーとして、MAK80R−LICをリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、MTプロモーターとBiP分泌シグナルペプチドとポリAシグナルを含むBiP−hF9δSig発現カセットを得た。得られた増幅産物を、制限酵素AvrIIとNotIで消化したpCoVKEにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK88(図21)を作製した。
<S2細胞の形質転換体の作製>
実施例1と同様にして、S2細胞に、pMAK81及びpMAK88をそれぞれトランスフェクションし、形質転換体を得た。ピューロマイシン存在下での培養により選抜された形質転換体は、いずれも緑色蛍光が観察された。
<hF9発現>
実施例1と同様にして、選抜された各形質転換体を誘導培地又はビタミンK含有培地中で48時間培養した後、培養上清を回収した。回収された培養上清は、遠心分離処理を行うことによって菌体を除去した。なお、対照として、ベクターを導入していないS2細胞についても同様の処理を行った。
得られた培養上清の一部を用い、実施例1と同様にしてSDS電気泳動を行った後、CBB染色し、タンパク質のバンドを可視化した。結果を図22に示す。図中、「−VitK」は誘導培地で培養した培養上清の結果を、「+VitK」はビタミンK含有培地で培養した培養上清の結果を、それぞれ示す。また、「81」及び「88」は、それぞれ、pMAK81及びpMAK88を導入した形質転換体の結果を示す。この結果、pMAK81及びpMAK88を導入した形質転換体では、誘導培地とビタミンK含有培地のいずれの培地で培養した場合にも、成熟型のhF9から予想される質量49kDa近傍にバンドが認められた。
[実施例4]
<pMAK82及びpMAK89の作製>
cDNAクローン(MGC:57588、IMAGE:5723510)を鋳型とし、MAK82F(5’−CTCGCTCGGGAGATCTCTGTTCATCCGCAGGGAGCAG、11〜16番目の領域は制限酵素BglIIサイトを示す。配列番号40)をフォワードプライマーとして、MAK82R(5’−CGAAGGGCCCTCTAGATCACTTTAATGGAGAGGACGTTATGAC、11〜16番目の領域は制限酵素XbaIサイトを示す。配列番号41)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ヒト血液凝固第X因子(hF10)の分泌シグナルペプチド欠損体のcDNA断片(hF10δSig)を得た。得られた断片を、制限酵素BglIIとXbaIで消化したpMT−PURO2Gにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK82(図23、配列番号42)を作製した。
pMAK82を鋳型とし、MAK80F−LICをフォワードプライマーとして、MAK80R−LICをリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、MTプロモーターとBiP分泌シグナルペプチドとポリAシグナルを含むBiP−hF10δSig発現カセットを得た。得られた増幅産物を、制限酵素AvrIIとNotIで消化したpCoVKEにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK89(図24)を作製した。
<S2細胞の形質転換体の作製>
実施例1と同様にして、S2細胞に、pMAK82及びpMAK89をそれぞれトランスフェクションし、形質転換体を得た。ピューロマイシン存在下での培養により選抜された形質転換体は、いずれも緑色蛍光が観察された。
<hF10発現>
実施例1と同様にして、選抜された各形質転換体を誘導培地又はビタミンK含有培地中で48時間培養した後、培養上清を回収した。回収された培養上清は、遠心分離処理を行うことによって菌体を除去した。なお、対照として、ベクターを導入していないS2細胞についても同様の処理を行った。
得られた培養上清の一部を用い、実施例1と同様にしてSDS電気泳動を行った後、CBB染色し、タンパク質のバンドを可視化した。結果を図25に示す。図中、「−VitK」は誘導培地で培養した培養上清の結果を、「+VitK」はビタミンK含有培地で培養した培養上清の結果を、それぞれ示す。また、「82」及び「89」は、それぞれ、pMAK82及びpMAK89を導入した形質転換体の結果を示す。この結果、pMAK82及びpMAK89を導入した形質転換体では、誘導培地とビタミンK含有培地のいずれの培地で培養した場合にも、成熟型のhF10から予想される質量52kDa近傍にバンドが認められた。
[実施例5]
<pMAK83及びpMAK90の作製>
cDNAクローン(MGC:34565、IMAGE:5188604)を鋳型とし、MAK83F(5’−CTCGCTCGGGAGATCTACACCAGCTCCTCTTGACTC、11〜16番目の領域は制限酵素BglIIサイトを示す。配列番号43)をフォワードプライマーとして、MAK83R(5’−CGAAGGGCCCTCTAGACTAAGGTGCCCAGCTCTTCTG、11〜16番目の領域は制限酵素XbaIサイトを示す。配列番号44)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ヒトプロテインCの分泌シグナルペプチド欠損体のcDNA断片(hProcδSig)を得た。得られた断片を、制限酵素BglIIとXbaIで消化したpMT−PURO2Gにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK83(図26、配列番号45)を作製した。
pMAK83を鋳型とし、MAK80F−LICをフォワードプライマーとして、MAK80R−LICをリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、MTプロモーターとBiP分泌シグナルペプチドとポリAシグナルを含むBiP−hProcδSig発現カセットを得た。得られた増幅産物を、制限酵素AvrIIとNotIで消化したpCoVKEにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK90(図27)を作製した。
<S2細胞の形質転換体の作製>
実施例1と同様にして、S2細胞に、pMAK83及びpMAK90をそれぞれトランスフェクションし、形質転換体を得た。ピューロマイシン存在下での培養により選抜された形質転換体は、いずれも緑色蛍光が観察された。
<ヒトプロテインC発現>
実施例1と同様にして、選抜された各形質転換体を誘導培地又はビタミンK含有培地中で48時間培養した後、培養上清を回収した。回収された培養上清は、遠心分離処理を行うことによって菌体を除去した。なお、対照として、ベクターを導入していないS2細胞についても同様の処理を行った。
得られた培養上清の一部を用い、実施例1と同様にしてSDS電気泳動を行った後、CBB染色し、タンパク質のバンドを可視化した。結果を図28に示す。図中、「−VitK」は誘導培地で培養した培養上清の結果を、「+VitK」はビタミンK含有培地で培養した培養上清の結果を、それぞれ示す。また、「83」及び「90」は、それぞれ、pMAK83及びpMAK90を導入した形質転換体の結果を示す。この結果、pMAK83及びpMAK90を導入した形質転換体では、誘導培地とビタミンK含有培地のいずれの培地で培養した場合にも、成熟型のヒトプロテインCから予想される質量50kDa近傍にバンドが認められた。
[実施例6]
<pMAK84、pMAK91、及びpMAK254の作製>
cDNAクローン(MGC:9207、IMAGE:3909023)を鋳型とし、MAK84F(5’−CTCGCTCGGGAGATCTAACTTTTTGTCAAAGCAACAGGCTTCAC、11〜16番目の領域は制限酵素BglIIサイトを示す。配列番号46)をフォワードプライマーとして、MAK84R(5’−CGAAGGGCCCTCTAGATTAAGAATTCTTTGTCTTTTTCCAAACTGATGGAC、11〜16番目の領域は制限酵素XbaIサイトを示す。配列番号47)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、ヒトプロテインSの分泌シグナルペプチド欠損体のcDNA断片(hPros1δSig)を得た。得られた断片を、制限酵素BglIIとXbaIで消化したpMT−PURO2Gにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK84(図29、配列番号48)を作製した。
pVAC1−mcs(InvivoGen社製)を鋳型とし、EM−F(5’−CGGGCTGCAGGAATTCGTTGACAATTAATCATCGGCATAGTATATCG、11〜16番目の領域は制限酵素EcoRIサイトを示す。配列番号49)をフォワードプライマーとして、ZEO−T2A−R(5’−GTCCTGCTCCTCGGCCACGAAGTGGGCCAGGATTCTCCTCGACGTCACCGCATGTTAGCAGACTTCCTCTGCCCTCTCCACTGCC、23〜85番目の領域はT2Aペプチドをコードする。配列番号50)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、EM7プロモーター(図中、「PEM7」)の下流に、ゼオシン耐性遺伝子(図中、「ZEO」)及びT2Aペプチドを含むタンパク質のcDNA断片(EM7−ZEO−T2A)を取得した。次に、赤色蛍光タンパク質であるDsREDで標識したタンパク質を発現するためのベクターpDsRED2(タカラバイオ社製、製品番号:632404)を鋳型として、DsRED2−F(5’−GTCGAGGAGAATCCTGGCCCAATGGCCTCCTCCGAGAACGTC、配列番号51)をフォワードプライマーとして、DsRED2−R(5’−GCTAGCTGGCCTCGAGCTACAGGAACAGGTGGTGGC、11〜16番目の領域は制限酵素XhoIサイトを示す。配列番号52)をリバースプライマーとして用いてPCRを行うことによって、DsREDのcDNA断片(DsRED)を得た。cDNA断片(EM7−ZEO−T2A)とcDNA断片(DsRED)を、制限酵素EcoRIとXhoIで消化したpMT−PURO2にサブクローニングし、EM7−ZEO−T2A−DsRED2が連結されたゼオシン耐性DsRED2発現カセットを含むpMT−ZEORを取得した。サブクローニングは、In−Fusion(登録商標)HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用い、製品に添付の指示に従って行った。pMAK84から制限酵素BglIIとXbaIで切り出したBiP−hPros1δSig発現カセットの断片を、制限酵素BglIIとXbaIで消化したpMT−ZEORにサブクローニングし、共発現ベクターpMAK254(図30)を作製した。
<S2細胞の形質転換体の作製>
実施例1と同様にして、S2細胞に、pMAK84をトランスフェクションし、ピューロマイシン存在下で培養し、ピューロマイシン耐性を獲得した形質転換体を得た。選抜された形質転換体では、緑色蛍光が観察された。
これとは別に、実施例1と同様にして、S2細胞に、pCoVKEをトランスフェクションし、ピューロマイシン耐性を獲得した形質転換体を得た。このピューロマイシン耐性形質転換体に、同様にしてpMAK254をトランスフェクションし、ピューロマイシン及びゼオシン存在下で培養し、ピューロマイシン耐性とゼオシン耐性の両方を獲得した形質転換体を得た。この両耐性を獲得した形質転換体では、緑色蛍光と同時に赤色蛍光も観察された。
<ヒトプロテインS発現>
実施例1と同様にして、選抜された各形質転換体をビタミンK含有培地中で48時間培養した後、培養上清を回収した。回収された培養上清は、遠心分離処理を行うことによって菌体を除去した。なお、対照として、ベクターを導入していないS2細胞についても同様の処理を行った。
得られた培養上清を用いて、ヒトプロテインSのタンパク質量と活性を測定した。プロテインSのタンパク質量はラテックス凝集法により測定し、ヒトプロテインSの活性は比色法により測定した。これらの測定値から、培養上清中のヒトプロテインS1のタンパク質1ng当たりのプロテインS活性(プロテインS比活性)を算出した。
ラテックス凝集法は以下の通りに行った。まず、第一反応として、検体(培養上清)中の遊離プロテインSにC4bBP(C4b binding protein)を結合させ、全てのプロテインSを複合体型プロテインSにした後、第二反応として、複合体型プロテインSを抗ヒトプロテインSマウスモノクローナル抗体感作ラテックスと反応させて凝集させた。凝集反応前後の検体の吸光度を測定し、生成された凝集物による吸光度変化(濁度変化量)からプロテインS量とした。吸光度の測定値からのプロテインS量の算出は、濃度既知の遊離プロテインSを用いて予め作成した検量線を利用して行った。
比色法は以下の通りに行った。まず、第一反応として、検体(培養上清)、活性化プロテインC及び活性化第V因子(FVa)を反応させてFVaを分解した。次いで、第二反応として、前記第一反応における残存FVa、活性化F10、プロトロンビン及びトロンビンの発色合成基質PPA−pNA(D−フェニルアラニル−L−ピペコリル−L−アルギニル−p−ニトロアニリド・塩酸塩)を反応させ、生成するトロンビンによりトロンビン基質を発色させた。前記第一反応における残存FVa量は、総プロテインS活性に依存するため、PPA−pNAの発色は総プロテインS活性を反映する。これを利用し、PPA−pNAの発色による吸光度変化を指標として、検体中の総プロテインS活性を測定できる。
図31の左図にヒトプロテインS量の測定結果を、図31の中図にプロテインS活性の測定結果を、図31の右図に培養上清中のヒトプロテインS1のタンパク質1ng当たりのプロテインS活性(プロテインS比活性)の算出結果を、それぞれ示す。図中、「84」及び「254」は、それぞれ、pMAK84のみを導入した形質転換体及びpMAK254とpCoVKEを導入した形質転換体の結果を示す。この結果、pMAK254とpCoVKEを導入した形質転換体では、プロテインS活性が確認されたが、pMAK84のみが導入された形質転換体では、成熟型のプロテインS1の存在が確認されているにもかかわらず、プロテインS活性は確認されなかった。

Claims (13)

  1. ビタミンK、ビタミンKエポキシドレダクターゼ、プロテインジスルフィドイソメラーゼ、及び哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼが存在する昆虫細胞内で、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を製造することを特徴とする、ビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  2. プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とを昆虫細胞に導入した形質転換体を、ビタミンK含有培地中で培養することにより、前記哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質を製造する、請求項1に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  3. 前記形質転換体が、さらに、ビタミンKエポキシドレダクターゼをコードする遺伝子が導入されている、請求項2に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  4. 前記哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子が、
    (a) いずれかの哺乳動物が本来有しているビタミンK依存性タンパク質のN末端の分泌シグナルペプチドが切断された成熟型タンパク質のN末端側に、前記昆虫細胞内において分泌シグナルペプチドとして機能するペプチドが直接又は間接的に連結されたタンパク質、
    (b) 前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ前記(a)のビタミンK依存性タンパク質が有する血液凝固活性又は抗凝固活性を有するタンパク質、又は
    (c) 前記(a)のビタミンK依存性タンパク質のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ前記(a)のビタミンK依存性タンパク質が有する血液凝固活性又は抗凝固活性を有するタンパク質、
    である、請求項2又は3に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  5. 前記形質転換体外に分泌された前記ビタミンK依存性タンパク質を、培養上清から回収する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  6. 前記プロテインジスルフィドイソメラーゼが、PDIA2(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼファミリーA、メンバー2)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  7. 前記ビタミンKエポキシドレダクターゼが、ビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体サブユニット1(VKORC1)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  8. 前記昆虫細胞が、ショウジョウバエ由来の培養細胞株S2細胞である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  9. 前記ビタミンK依存性タンパク質が、血液凝固第II因子、血液凝固第VII因子、血液凝固第IX因子、血液凝固第X因子、プロテインC、又はプロテインSである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のビタミンK依存性タンパク質の製造方法。
  10. ビタミンKエポキシドレダクターゼ遺伝子を備える昆虫細胞を宿主細胞とし、プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とが組み込まれている、形質転換体。
  11. 昆虫細胞を宿主細胞とし、ビタミンKエポキシドレダクターゼ遺伝子と、プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とが組み込まれている、形質転換体。
  12. プロテインジスルフィドイソメラーゼをコードする遺伝子と、哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼをコードする遺伝子と、血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質をコードする遺伝子とが組み込まれており、昆虫細胞において、プロテインジスルフィドイソメラーゼと哺乳動物由来のビタミンK依存性γカルボヒシグルタミナーゼと血液凝固又は抗凝固に関連する哺乳動物由来のビタミンK依存性タンパク質とを発現し得る、発現ベクター。
  13. さらに、ビタミンKエポキシドレダクターゼ遺伝子が組み込まれており、昆虫細胞において、ビタミンKエポキシドレダクターゼを発現し得る、請求項12に記載の発現ベクター。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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