JP2018027582A - 研磨方法、研磨装置、およびコンピュータプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

研磨方法、研磨装置、およびコンピュータプログラムを記録した記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】特別な知識や経験、ノウハウを必要とせず、さらに、短時間で、かつ効率的にPIDパラメータを算定する研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨方法は、基板Wを研磨パッド3の表面に押し付けて基板Wを研磨し、基板Wの研磨中に、パッド温度調整部材11に流れる流体の流量を制御するための流量制御バルブ42,56を操作することで、研磨パッド3の表面温度を変化させ、研磨パッド3の表面温度を測定し、研磨パッド3の表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定し、PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値と研磨パッドの表面温度の測定値との偏差を最小にするための流量制御バルブ42,56の操作量を計算し、基板Wの研磨中に、操作量に従って流量制御バルブ42,56を操作する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ウェーハなどの基板を研磨する研磨方法、研磨装置、および該研磨装置の研磨パッドの表面温度を制御するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体に関するものである。
CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置は、半導体デバイスの製造において、基板の表面を研磨する工程に使用される。CMP装置は、基板を研磨ヘッドで保持して基板を回転させ、さらに回転する研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押し付けて基板の表面を研磨する。研磨中、研磨パッドには研磨液(スラリー)が供給され、基板の表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
基板の研磨レートは、基板の研磨パッドに対する研磨荷重のみならず、研磨パッドの表面温度にも依存する。これは、基板に対する研磨液の化学的作用および研磨パッドの硬さが温度に依存するからである。したがって、半導体デバイスの製造においては、基板の研磨レートを上げて更に一定に保つために、基板研磨中の研磨パッドの表面温度を最適な値に保つことが重要とされる。
そこで、研磨パッドの表面温度を測定し、測定された研磨パッドの温度情報に基づいてPID制御により研磨パッドの研磨面の温度を調整する研磨装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2011−136406号公報
しかしながら、PIDパラメータを決定するための方法については、明確な指針は存在せず、ユーザーは試行錯誤を重ねながらPIDパラメータを決定しなければならない。また、PIDパラメータの決定方法については、特別な知識や経験、ノウハウを有する熟練者に依存している場合も多い。したがって、PIDパラメータを決定するために、多くの時間が必要となり、コストもかかってしまう。
そこで、本発明は、特別な知識や経験、ノウハウを必要とせず、さらに、短時間で、かつ効率的にPIDパラメータを算定する研磨方法、および研磨装置を提供することを目的とする。また、本発明は、研磨パッドの表面温度を制御するためのプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板を研磨パッドの表面に押し付けて該基板を研磨し、前記基板の研磨中に、パッド温度調整部材に流れる流体の流量を制御するための流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させ、前記研磨パッドの表面温度を測定し、前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定し、前記PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値と前記研磨パッドの表面温度の測定値との偏差を最小にするための前記流量制御バルブの操作量を計算し、前記基板の研磨中に、前記操作量に従って前記流量制御バルブを操作することを特徴とする研磨方法である。
本発明の好ましい態様は、前記研磨パッドの表面温度を測定する工程は、前記研磨パッドの中心と外周部とを含む領域における温度分布を測定する工程を含むことを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程は、前記基板の研磨中に、パッド温度調整部材を前記研磨パッドの表面に接触させ、または近接させて該パッド温度調整部材に流れる流体の流量を制御するための流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程は、前記基板の研磨中に、パッド温度調整部材から前記研磨パッドの表面上に供給される流体の流量を制御するための流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記流体は、加熱流体および冷却流体であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記PIDパラメータを算定する工程は、リミットサイクル法、ステップ応答法、ジーグラ・ニコルスの限界感度法のうちのいずれかを用いて、前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定する工程であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記PID演算式を用いて計算した操作量で前記流量制御バルブを操作した結果として予想される前記研磨パッドの表面温度のシミュレーションを実行することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記温度目標値を変更した場合に予想される前記研磨パッドの表面温度の時間推移を示すシミュレーションをさらに実行することを特徴とする。
本発明の他の態様は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、前記研磨パッドの表面温度を調整するパッド温度調整システムとを備え、前記パッド温度調整システムは、流体が流れる流路が内部に形成されたパッド温度調整部材と、前記流路に接続された流体供給管と、前記流体供給管に取り付けられた流量制御バルブと、前記研磨パッドの表面温度を測定するパッド温度測定器と、前記流量制御バルブを操作するPID制御部とを備え、前記PID制御部は、前記基板の研磨中において、前記流量制御バルブを操作して、前記研磨パッドの表面温度を変化させ、前記研磨パッドの表面温度の測定値を前記パッド温度測定器から取得し、前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定し、前記PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値と前記研磨パッドの表面温度の測定値との偏差を最小にするための前記流量制御バルブの操作量を計算し、前記操作量に従って前記流量制御バルブを操作することを特徴とする研磨装置である。
本発明の好ましい態様は、前記パッド温度測定器は、赤外線放射温度計、熱電対温度計、サーモグラフィ、およびサーモパイルのうち、少なくとも1つの温度測定器であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記パッド温度測定器は、前記研磨パッドの中心と外周部とを含む領域における温度分布を測定するように構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記パッド温度調整システムは、前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨パッドの表面温度を表示する温度表示器をさらに備えていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記パッド温度調整部材は、前記研磨パッドの表面に冷却流体を吹きかける冷却ノズルであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記パッド温度調整部材は、前記研磨パッドの表面に接触可能なパッド接触面を有することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記PID制御部は、リミットサイクル法、ステップ応答法、ジーグラ・ニコルスの限界感度法のうちのいずれかを用いてPIDパラメータを算定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記PID制御部は、前記PID演算式を用いて計算した操作量で前記流量制御バルブを操作した結果として予想される前記研磨パッドの表面温度のシミュレーションを実行するように構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記PID制御部は、前記温度目標値を変更した場合に予想される前記研磨パッドの表面温度の時間推移を示すシミュレーションをさらに実行するように構成されていることを特徴とする。
本発明のさらに他の態様は、研磨ヘッドに指令を与えて、基板を研磨パッドの表面に押し付けて該基板を研磨する動作を前記研磨ヘッドに実行させるステップと、パッド温度調整部材に流れる流体の流量を制御するために設けられた流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させるステップと、前記研磨パッドの表面温度の測定値を取得するステップと、前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定するステップと、前記PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値と前記研磨パッドの表面温度の測定値との偏差を最小にするための前記流量制御バルブの操作量を計算するステップと、前記操作量に従って前記流量制御バルブを操作するステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
本発明によれば、基板の研磨中において、研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいてPIDパラメータを自動で算定することができるため、PIDパラメータを決定するための試行錯誤による実験、特別な知識や経験、ノウハウは不要であり、熟練者に頼る必要はない。したがって、PIDパラメータを短時間で、かつ効率的に決定することができる。
研磨装置の一実施形態を示す模式図である。 研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。 パッド温度測定器の温度測定領域を上から見た図である。 パッド温度測定器の温度測定領域を横から見た図である。 パッド温度調整部材を示す水平断面図である。 研磨パッド上のパッド温度調整部材と研磨ヘッドとの位置関係を示す平面図である。 温度表示器を示す模式図である。 パッド温度調整部材の他の実施形態を示す図である。 リミットサイクル法を説明するための図である。 流量制御バルブの2位置動作を示す図である。 PIDパラメータの算定に用いられる係数の一例を示す図である。 PIDパラメータを算定するときのフィードバック制御系を示す図である。 PID制御部の構成を示す模式図である。 プログラムに従って動作するPID制御部のステップを示すフローチャートである。 ステップ応答法を説明するための図である。 ジーグラ・ニコルスの限界感度法を説明するための図である。 研磨パッドの表面温度の時間推移を示すシミュレーション結果を示す図である。 PIDパラメータがウェーハの研磨プロセスごとに算定される様子を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、基板の一例であるウェーハWを保持して回転させる研磨ヘッド1と、研磨パッド3を支持する研磨テーブル2と、研磨パッド3の表面に研磨液(例えばスラリー)を供給する研磨液供給ノズル4と、研磨パッド3の表面温度を調整するパッド温度調整システム5とを備えている。研磨パッド3の表面(上面)は、ウェーハWを研磨する研磨面を構成する。
研磨ヘッド1は鉛直方向に移動可能であり、かつその軸心を中心として矢印で示す方向に回転可能となっている。ウェーハWは、研磨ヘッド1の下面に真空吸着などによって保持される。研磨テーブル2にはモータ(図示せず)が連結されており、矢印で示す方向に回転可能となっている。図1に示すように、研磨ヘッド1および研磨テーブル2は、同じ方向に回転する。研磨パッド3は、研磨テーブル2の上面に貼り付けられている。
研磨装置は、研磨テーブル2上の研磨パッド3をドレッシングするドレッサ20をさらに備えている。ドレッサ20は研磨パッド3の表面上を研磨パッド3の半径方向に揺動するように構成されている。ドレッサ20の下面は、ダイヤモンド粒子などの多数の砥粒からなるドレッシング面を構成する。ドレッサ20は、研磨パッド3の研磨面上を揺動しながら回転し、研磨パッド3を僅かに削り取ることにより研磨パッド3の表面をドレッシングする。
ウェーハWの研磨は次のようにして行われる。研磨されるウェーハWは、研磨ヘッド1によって保持され、さらに研磨ヘッド1によって回転される。一方、研磨パッド3は、研磨テーブル2とともに回転される。この状態で、研磨パッド3の表面には研磨液供給ノズル4から研磨液が供給され、さらにウェーハWの表面は、研磨ヘッド1によって研磨パッド3の表面(すなわち研磨面)に対して押し付けられる。ウェーハWの表面は、研磨液の存在下での研磨パッド3との摺接により研磨される。ウェーハWの表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
パッド温度調整システム5は、研磨パッド3の表面温度を調整するための流体が流れる流路が内部に形成されたパッド温度調整部材11と、温度調整された加熱流体および冷却流体をパッド温度調整部材11に供給する流体供給システム30とを備えている。パッド温度調整部材11は、研磨パッド3の表面に直接接触し、または研磨パッド3の表面に近接することができる。
パッド温度調整システム5は、パッド温度調整部材11を研磨パッド3の表面に対して垂直に移動させる上下動機構(垂直移動機構)71をさらに備えている。パッド温度調整部材11は、上下動機構71に保持されている。この上下動機構71は、パッド温度調整部材11を研磨パッド3の表面に対して上下方向に移動させることが可能に構成されている。このような構成により、パッド温度調整部材11は、研磨パッド3の表面に直接接触し、または研磨パッド3の表面に近接することができる。上下動機構71としては、サーボモータとボールねじ機構との組み合わせ、またはエアシリンダなどから構成される。
パッド温度調整部材11は、研磨パッド3の表面に対して垂直に移動して、研磨パッド3の表面上の領域(研磨パッド3の半径方向の位置)の温度を一定に維持するように構成されている。例えば、パッド温度調整部材11は、研磨パッド3の中心CLからの距離が100mmである研磨パッド3の半径方向の位置の温度を60度に維持するように、研磨パッド3の表面に対して垂直方向に移動する。ユーザーは、パッド温度調整部材11によって制御される研磨パッド3の表面温度および研磨パッド3の半径方向の位置を任意に決定(変更)することができる。例えば、ユーザーは、研磨パッド3の半径方向の位置として、研磨パッド3の中心CLからの距離を100mmから200mmに変更してもよく、研磨パッド3の表面温度として、60度から70度に変更してもよい。結果として、パッド温度調整部材11は、研磨パッド3の中心CLからの距離が200mmである研磨パッド3の半径方向の位置の温度を70度に維持するように、研磨パッド3の表面に対して上下方向に移動する。
流体供給システム30は、温度調整された流体を貯留する流体供給源としての流体供給タンク31と、流体供給タンク31とパッド温度調整部材11とを連結する加熱流体供給管32および加熱流体戻り管33とを備えている。加熱流体供給管32および加熱流体戻り管33の一方の端部は流体供給タンク31に接続され、他方の端部はパッド温度調整部材11に接続されている。
温度調整された加熱流体は、流体供給タンク31から加熱流体供給管32を通じてパッド温度調整部材11に供給され、パッド温度調整部材11内を流れ、そしてパッド温度調整部材11から加熱流体戻り管33を通じて流体供給タンク31に戻される。このように、加熱流体は、流体供給タンク31とパッド温度調整部材11との間を循環する。流体供給タンク31は、ヒータ(図示せず)を有しており、加熱流体はヒータにより所定の温度に加熱される。
加熱流体供給管32には、第1開閉バルブ41および第1流量制御バルブ42が取り付けられている。第1流量制御バルブ42は、パッド温度調整部材11と第1開閉バルブ41との間に配置されている。第1開閉バルブ41は、流量調整機能を有しないバルブであるのに対し、第1流量制御バルブ42は、流量調整機能を有するバルブである。
流体供給システム30は、パッド温度調整部材11に接続された冷却流体供給管51および冷却流体排出管52をさらに備えている。冷却流体供給管51は、研磨装置が設置される工場に設けられている冷却流体供給源(例えば、冷水供給源)に接続されている。冷却流体は、冷却流体供給管51を通じてパッド温度調整部材11に供給され、パッド温度調整部材11内を流れ、そしてパッド温度調整部材11から冷却流体排出管52を通じて排出される。
冷却流体供給管51には、第2開閉バルブ55および第2流量制御バルブ56が取り付けられている。第2流量制御バルブ56は、パッド温度調整部材11と第2開閉バルブ55との間に配置されている。第2開閉バルブ55は、流量調整機能を有しないバルブであるのに対し、第2流量制御バルブ56は、流量調整機能を有するバルブである。
図2は研磨装置の他の実施形態を示す模式図である。図2に示すように、冷却流体供給管51および冷却流体排出管52の一方の端部は流体供給タンク31に接続され、他方の端部はパッド温度調整部材11に接続されてもよい。本実施形態では、流体供給タンク31とパッド温度調整部材11との間を循環する冷却流体は流体供給タンク31内で冷却される。同様に、流体供給タンク31とパッド温度調整部材11との間を循環する加熱流体は流体供給タンク31内で加熱される。図2では、冷却流体排出管52は冷却流体戻り管である。
図1に戻り、パッド温度調整システム5は、研磨パッド3の表面温度(以下、パッド表面温度ということがある)を測定するパッド温度測定器39と、パッド温度測定器39により測定されたパッド表面温度に基づいて第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56を操作するPID制御部40とをさらに備えている。第1開閉バルブ41および第2開閉バルブ55は、通常は開かれている。
パッド温度測定器39は、研磨パッド3の表面の上方に配置されており、非接触で研磨パッド3の表面温度を測定するように構成されている。パッド温度測定器39は、PID制御部40に接続されており、さらにPID制御部40を介して温度表示器45に接続されている。パッド温度測定器39は、研磨パッド3の表面温度を測定する赤外線放射温度計または熱電対温度計であってもよく、研磨パッド3の表面温度を測定し、研磨パッド3の温度分布を取得するサーモグラフィまたはサーモパイルであってもよい。パッド温度測定器39は、赤外線放射温度計、熱電対温度計、サーモグラフィ、およびサーモパイルのうち、少なくとも1つの温度測定器である。パッド温度測定器39に、ウェーハWの研磨によって飛び散った液体(スラリーなど)が付着すると、パッド温度測定器39は、研磨パッド3の表面温度を正確に測定することができないことがある。したがって、パッド温度測定器39は研磨パッド3の表面から十分に高い位置に配置されている。
図3はパッド温度測定器39の温度測定領域を上から見た図であり、図4はパッド温度測定器39の温度測定領域を横から見た図である。図3および図4に示すように、パッド温度測定器39は、研磨パッド3の中心CLと研磨パッド3の外周部3aとを含む領域における研磨パッド3の表面温度を測定するように構成されている(図3および図4の点線参照)。
パッド温度測定器39は、非接触で研磨パッド3の表面温度を測定し、表面温度の測定値をPID制御部40に送る。パッド温度測定器39は、所定時間毎に研磨パッド3の表面温度を測定してもよい。PID制御部40は、パッド表面温度が、予め設定された目標温度に維持されるように、測定されたパッド表面温度に基づいて、第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56を操作する。第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56は、PID制御部40からの制御信号に従って動作し、パッド温度調整部材11に供給される加熱流体の流量および冷却流体の流量を調整する。パッド温度調整部材11を流れる加熱流体および冷却流体と研磨パッド3との間で熱交換が行われ、これによりパッド表面温度が変化する。
パッド温度調整部材11に供給される加熱流体としては、温水が使用される。温水は、流体供給タンク31のヒータにより、例えば約80℃に加熱される。より速やかに研磨パッド3の表面温度を上昇させる場合には、シリコーンオイルを加熱流体として使用してもよい。シリコーンオイルを加熱流体として使用する場合には、シリコーンオイルは流体供給タンク31のヒータにより100℃以上(例えば、約120℃)に加熱される。パッド温度調整部材11に供給される冷却流体としては、冷水またはシリコーンオイルが使用される。シリコーンオイルを冷却流体として使用する場合には、冷却流体供給源としてチラーを冷却流体供給管51に接続し、シリコーンオイルを0℃以下に冷却することで、研磨パッド3を速やかに冷却することができる。
加熱流体供給管32および冷却流体供給管51は、完全に独立した配管である。したがって、加熱流体および冷却流体は、混合されることなく、同時にパッド温度調整部材11に供給される。加熱流体戻り管33および冷却流体排出管52も、完全に独立した配管である。したがって、加熱流体は、冷却流体と混合されることなく流体供給タンク31に戻され、冷却流体は、加熱流体と混合されることなく排出される。
次に、パッド温度調整部材11の一例について、図5を参照して説明する。図5は、パッド温度調整部材11を示す水平断面図である。図5に示すように、パッド温度調整部材11は、その内部に形成された加熱流路61および冷却流路62を有する熱交換部材である。加熱流路61および冷却流路62は、互いに隣接して延びており、かつ螺旋状に延びている。本実施形態では、加熱流路61は、冷却流路62よりも短い。
加熱流体供給管32は、加熱流路61の入口61aに接続されており、加熱流体戻り管33は、加熱流路61の出口61bに接続されている。冷却流体供給管51は、冷却流路62の入口62aに接続されており、冷却流体排出管52は、冷却流路62の出口62bに接続されている。加熱流路61および冷却流路62の入口61a,62aは、パッド温度調整部材11の周縁部に位置しており、加熱流路61および冷却流路62の出口61b,62bは、パッド温度調整部材11の中心部に位置している。したがって、加熱流体および冷却流体は、パッド温度調整部材11の周縁部から中心部に向かって螺旋状に流れる。加熱流路61および冷却流路62は、完全に分離しており、パッド温度調整部材11内で加熱流体および冷却流体が混合されることはない。なお、加熱流路61および冷却流路62の形状は、図5に示す実施形態に限定されず、パッド温度調整部材11は、ジグザグ状の加熱流路および冷却流路を有してもよい。
図6は、研磨パッド3上のパッド温度調整部材11と研磨ヘッド1との位置関係を示す平面図である。パッド温度調整部材11は、上から見たときに円形であり、パッド温度調整部材11の直径は研磨ヘッド1の直径よりも小さい。研磨パッド3の中心CLからパッド温度調整部材11の中心までの距離は、研磨パッド3の中心CLから研磨ヘッド1の中心までの距離と同じである。加熱流路61および冷却流路62は、互いに隣接しているので、加熱流路61および冷却流路62は、研磨パッド3の径方向のみならず、研磨パッド3の周方向に沿って並んでいる。したがって、研磨テーブル2および研磨パッド3が回転している間、研磨パッド3に接触または近接するパッド温度調整部材11は、加熱流体および冷却流体の両方と熱交換を行う。
図7は温度表示器45を示す模式図である。図7に示すように、パッド温度調整システム5は、パッド温度測定器39によって測定された研磨パッド3の表面温度を表示する温度表示器45をさらに備えている。PID制御部40はパッド温度測定器39および温度表示器45に接続されている。パッド温度測定器39は、その温度測定領域において、研磨パッド3の表面温度を測定し、測定された研磨パッド3の表面温度は温度表示器45に表示される。温度表示器45には、研磨パッド3の各表面位置(つまり、直交座標系で表される研磨パッド3の表面位置)の温度が色で表現されるなど、視覚的にわかりやすく表示される。例えば、温度が高い研磨パッド3の表面位置は赤色で表され、温度が低い研磨パッド3の表面位置は青色で表される。温度表示器45は、研磨パッド3の表面温度の分布を、色分布として表示する。
ユーザーは、研磨パッド3の測定位置を温度表示器45上で指定してもよく、または研磨パッド3の測定位置を座標入力によって指定してもよい。温度表示器45には、指定された研磨パッド3の測定位置の現時刻における温度、任意時刻の温度、温度の時間推移、研磨パッド3の温度分布、最大温度、最小温度、平均温度、測定された温度の時間積分値などが表示される。
PID制御部40は、予め設定された目標温度と、測定された研磨パッド3の表面温度との差を無くすために必要な第1流量制御バルブ42の操作量および第2流量制御バルブ56の操作量を計算するように構成されている。第1流量制御バルブ42の操作量および第2流量制御バルブ56の操作量は、言い換えれば、バルブ開度である。第1流量制御バルブ42の操作量は、加熱流体の流量に比例し、第2流量制御バルブ56の操作量は、冷却流体の流量に比例する。
第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56のそれぞれの操作量を0%から100%までの数値で表したときに、PID制御部40は、第1流量制御バルブ42の操作量を100%から引き算することで、第2流量制御バルブ56の操作量を決定するように構成されている。一実施形態では、PID制御部40は、第2流量制御バルブ56の操作量を100%から引き算することで、第1流量制御バルブ42の操作量を決定してもよい。
第1流量制御バルブ42の操作量が100%であることは、第1流量制御バルブ42が全開であることを示し、第1流量制御バルブ42の操作量が0%であることは、第1流量制御バルブ42が完全に閉じられていることを示している。同様に、第2流量制御バルブ56の操作量が100%であることは、第2流量制御バルブ56が全開であることを示し、第2流量制御バルブ56の操作量が0%であることは、第2流量制御バルブ56が完全に閉じられていることを示している。
第1流量制御バルブ42の操作量が100%であるときの加熱流体の流量は、第2流量制御バルブ56の操作量が100%であるときの冷却流体の流量と同じである。したがって、第1流量制御バルブ42を通過する加熱流体の流量と、第2流量制御バルブ56を通過する冷却流体の流量との合計は、常に一定である。
PID制御部40は、第1流量制御バルブ42の操作量と、第2流量制御バルブ56の操作量との総和が100%となるように、第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56を操作する。
本実施形態によれば、パッド温度調整部材11の加熱流路61には加熱流体のみが流れ、冷却流路62には冷却流体のみが流れる。加熱流体および冷却流体のそれぞれの流量は、研磨パッド3の表面温度に基づいて制御される。つまり、第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56は、研磨パッド3の表面温度と目標温度との差に基づいてPID制御部40によって操作される。したがって、研磨パッド3の表面温度を目標温度に安定して維持することができる。
図8はパッド温度調整部材11の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図8に示すように、パッド温度調整部材11は、研磨パッド3の表面に冷却流体を吹きかける冷却ノズルである。本実施形態では、冷却流体として、空気または不活性ガス(例えば窒素ガス)などの冷却気体が使用される。冷却ノズルであるパッド温度調整部材11の内部には、冷却流体が流れる冷却流路12が形成されている。冷却流路12は、冷却流体供給管51およびパッド温度調整部材11の噴射口に接続されている。冷却流体供給管51を通じてパッド温度調整部材11に冷却流体を供給すると、冷却流体はパッド温度調整部材11の噴射口から研磨パッド3の表面上に供給される。冷却流体供給管51には、パッド温度調整部材11から研磨パッド3の表面上に供給される冷却流体の流量を制御するための流量制御バルブ56が取り付けられている。本実施形態では、加熱流体は使用されない。
パッド温度調整部材11が熱交換部材(図5参照)である場合、PID制御部40は、ウェーハWの研磨中に、流量制御バルブ42,56を操作することで、研磨パッド3の表面温度を変化させることができる。パッド温度調整部材11が冷却ノズル(図8参照)である場合、PID制御部40は、ウェーハWの研磨中において、流量制御バルブ56を操作することで、研磨パッド3の表面温度を変化させることができる。
パッド温度測定器39は、ウェーハWを研磨しているときの研磨パッド3の表面温度を測定し、表面温度の測定値をPID制御部40に送る。PID制御部40は、研磨パッド3の表面温度の測定値をパッド温度測定器39から取得し、研磨パッド3の表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定するように構成されている。
PIDパラメータは、リミットサイクル法、ステップ応答法、およびジーグラ・ニコルスの限界感度法のうちのいずれかを用いて、研磨パッド3の表面温度の時間変化に基づいて算定される。これらの方法によって算定されたPIDパラメータをファジィ推論に基づいて調整してもよく、目標値追従性と外乱抑制性とをともに最適化することができる2自由度PID方式を用いてPIDパラメータを算定してもよい。
PID制御部40は、上述の方法により算定されたPIDパラメータを備えたPID演算式(後述する)を用いて、研磨パッド3の温度目標値と表面温度の測定値との偏差を最小にするための流量制御バルブ42,56の操作量を算定する。そして、PID制御部40は、ウェーハWの研磨中において、算定された操作量に従って流量制御バルブ42,56を操作する。
PID制御部40は、ウェーハWの研磨中において、自動的にPIDパラメータを算定するように構成されている。以下、PIDパラメータを算定する方法の一例であるリミットサイクル法について、図面を参照して説明する。
図9はリミットサイクル法を説明するための図である。図9において、符号PVは研磨パッド3の表面温度の測定値を示しており、符号MVは流量制御バルブ42,56の操作量を示しており、符号SVは研磨パッド3の表面温度の温度目標値を示している。なお、図9における測定値PVと時間との関係を示すグラフ(図9の上側のグラフ)において、縦軸は測定値PVを示しており、横軸は時間を示している。図9における流量制御バルブ42,56の操作量MVと時間との関係を示すグラフ(図9の下側のグラフ)において、縦軸は流量制御バルブ42,56の操作量MVを示しており、横軸は時間を示している。
流量制御バルブ42,56が全開と全閉とを繰り返すように流量制御バルブ42,56の操作量が決定される。より具体的には、第1流量制御バルブ42が全開(操作量100%)であるとき、第2流量制御バルブ56は全閉(操作量0%)である。さらに、第2流量制御バルブ56が全開(操作量100%)であるとき、第1流量制御バルブ42は全閉(操作量0%)である。このように、流量制御バルブ42,56が全開と全閉とを繰り返す動作は流量制御バルブ42,56の2位置動作と呼ばれる。
流量制御バルブ42,56の2位置動作の制御について、図10を参照しつつ説明する。図10は流量制御バルブ42,56の2位置動作を示す図である。図10において、縦軸は流量制御バルブ42,56の操作量MVを示しており、横軸は偏差eを示している。第1流量制御バルブ42の操作量が0%であり、かつ第2流量制御バルブ56の操作量が100%であるとき、流量制御バルブ42,56の操作量は−Mである。第1流量制御バルブ42の操作量が100%であり、かつ第2流量制御バルブ56の操作量が0%であるとき、流量制御バルブ42,56の操作量は+Mである。
図9に示すように、測定値PVが温度目標値SVよりも高いときには、PID制御部40は、第1流量制御バルブ42を操作量0%で全閉にし、かつ第2流量制御バルブ56を操作量100%で全開にして、研磨パッド3の表面温度を低下させる。測定値PVが温度目標値SVよりも低いときは、PID制御部40は、第1流量制御バルブ42を操作量100%で全開にし、かつ第2流量制御バルブ56を操作量0%で全閉にして、研磨パッド3の表面温度を上昇させる。言い換えれば、PID制御部40は、測定値PVが温度目標値SVよりも高いときには、冷却側の操作量−Mを出力し、測定値PVが温度目標値SVよりも低いときには、加熱側の操作量+Mを出力する。このように、PID制御部40は、流量制御バルブ42,56を繰り返し開閉させて、研磨パッド3の表面温度を周期的に変化させる。このような周期的な温度変化はリミットサイクル波形と呼ばれる。発生させるリミットサイクル波形の周期は、2〜3周期でもよい。
ウェーハWの研磨が進行するにつれて研磨パッド3の表面温度は徐々に上昇するため、PID制御部40は、第1開閉バルブ41を閉じた状態において、流量制御バルブ56の開閉を繰り返すことによっても、リミットサイクル波形を発生させることができる。つまり、PID制御部40は、測定値PVが温度目標値SVよりも高いときには、流量制御バルブ56を操作量100%で全開とし、測定値PVが温度目標値SVよりも低いときには流量制御バルブ56を操作量0%で全閉としてもよい。
パッド温度調整部材11が冷却ノズルである場合において、PID制御部40は、研磨パッド3の表面上に供給される冷却流体の流量を制御することにより、リミットサイクル波形を発生させることができる。つまり、測定値PVが温度目標値SVよりも高いときには、PID制御部40は、流量制御バルブ56を全開にして、研磨パッド3の表面上に冷却流体を供給する。測定値PVが温度目標値SVよりも低いときには、PID制御部40は、流量制御バルブ56を全閉にして、研磨パッド3の表面への冷却流体の供給を停止する。
PID制御部40は、発生したリミットサイクル波形に基づいて研磨パッド3の表面温度の振幅Xおよびむだ時間Ltを決定する。むだ時間Ltは、第1流量制御バルブ42を全閉し、かつ第2流量制御バルブ56を全開した時刻から、パッド表面温度が下降し始める時刻までの時間差L1を求め、第1流量制御バルブ42を全開し、かつ第2流量制御バルブ56を全閉した時刻から、パッド表面温度が上昇し始める時刻までの時間差L2を求め、時間差L1と時間差L2との和を2で割り算することで得られる。つまり、むだ時間Ltは下記式(1)から決定することができる。
Lt=(L1+L2)/2 (1)
振幅Xは、研磨パッド3の温度目標値SVとパッド表面温度の極大値との差(絶対値)A1を算出し、研磨パッド3の温度目標値SVとパッド表面温度の極小値との差(絶対値)A2を算出し、差A1と差A2との和を2で割り算することで求められる。つまり、振幅Xは、下記式(2)から決定することができる。
X=(A1+A2)/2 (2)
PID制御部40は、流量制御バルブ42,56の操作量の振幅M、研磨パッド3の表面温度の振幅X、およびむだ時間Ltを用いて、限界感度Kcおよび限界周期Tcをそれぞれ算出する。限界感度Kcは下記式(3)を用いることによって求められ、限界周期Tcは下記式(4)を用いることによって求められる。
Kc=4×M/(π×X) (3)
Tc=4×Lt (4)
PID制御部40は、算定された限界感度Kcおよび限界周期Tcから、PIDパラメータを算定する。PIDパラメータは、流量制御バルブ42,56をPID制御するために必要なパラメータであり、比例ゲインKpと、積分時間Tiと、微分時間Tdとを含んでいる。以下、PIDパラメータを算定する方法について説明する。
図11はPIDパラメータの算定に用いられる係数の一例を示す図である。図11には、定値制御向き(Ziegler and Nichols)および追値制御向き(Chien, Hrones, and Reswick)の制御ルールにおけるPIDパラメータ(およびPIパラメータ)の算定に用いられる係数が表されている。なお、PIDパラメータを算定するための係数は図11に表された数値に限定されるものではない。これら係数はウェーハWの研磨条件に応じて予め決定されている。所定の係数と限界感度Kcおよび限界周期Tcとを、それぞれ、かけ算することによって、PIDパラメータ(つまり、比例ゲインKp、積分時間Ti、および微分時間Td)を算定することができる。
上述したように、PID制御部40は、この算定されたPIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値SVと研磨パッド3の表面温度の測定値PVとの偏差を最小にするための流量制御バルブ42,56の操作量を算定する。PID演算式は、
Figure 2018027582
と表すことができる。
図12はPIDパラメータを算定するときのフィードバック制御系を示す図である。図12に示すように、測定値PVと温度目標値SVとの偏差eに対して、非線形要素N(X)としての偏差eを基準とした流量制御バルブ42,56の2位置動作を行い、偏差eを最小にするための制御対象P(jω)への入力、すなわち、流量制御バルブ42,56の操作量MVを算定する。このようにして、PID制御部40は、流量制御バルブ42,56を操作して、研磨パッド3の表面温度を所望の目標温度に維持する。
本実施形態では、PID制御部40は、専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータから構成される。図13は、PID制御部40の構成を示す模式図である。PID制御部40は、プログラムやデータなどが格納される記憶装置110と、記憶装置110に格納されているプログラムに従って演算を行うCPU(中央処理装置)などの処理装置120と、データ、プログラム、および各種情報を記憶装置110に入力するための入力装置130と、処理結果や処理されたデータを出力するための出力装置140と、インターネットなどのネットワークに接続するための通信装置150を備えている。
記憶装置110は、処理装置120がアクセス可能な主記憶装置111と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置112を備えている。主記憶装置111は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)であり、補助記憶装置112は、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)などのストレージ装置である。
入力装置130は、キーボード、マウスを備えており、さらに、記録媒体からデータを読み込むための記録媒体読み込み装置132と、記録媒体が接続される記録媒体ポート134を備えている。記録媒体は、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、光ディスク(例えば、CD−ROM、DVD−ROM)や、半導体メモリー(例えば、USBフラッシュドライブ、メモリーカード)である。記録媒体読み込み装置132の例としては、CDドライブ、DVDドライブなどの光学ドライブや、カードリーダーが挙げられる。記録媒体ポート134の例としては、USB端子が挙げられる。記録媒体に記録されているプログラムおよび/またはデータは、入力装置130を介してPID制御部40に導入され、記憶装置110の補助記憶装置112に格納される。出力装置140は、ディスプレイ装置141、印刷装置142を備えている。印刷装置142は省略してもよい。上述した温度表示器45は、PID制御部40のためのディスプレイ装置として用いてもよい。この場合は、ディスプレイ装置141は省略してもよい。
PID制御部40は、記憶装置110に電気的に格納されたプログラムに従って動作する。図14はプログラムに従って動作するPID制御部40の動作ステップを示すフローチャートである。PID制御部40は、研磨ヘッド1に指令を与えて、ウェーハWを研磨パッド3の表面に押し付けてウェーハWを研磨する動作を研磨ヘッド1に実行させるステップ(図14のステップ1参照)と、ウェーハWの研磨中において、流量制御バルブ42,56を操作することで、研磨パッド3の表面温度を変化させるステップと(図14のステップ2参照)、研磨パッド3の表面温度を測定する動作をパッド温度測定器39に実行させ、研磨パッド3の表面温度の測定値を取得するステップと(図14のステップ3,4参照)、研磨パッド3の表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定するステップと(図14のステップ5参照)、PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値SVと研磨パッド3の表面温度の測定値PVとの偏差を最小にするための流量制御バルブ42,56の操作量を計算するステップと(図14のステップ6参照)、この操作量に基づいて流量制御バルブ42,56を操作するステップ(図14のステップ7参照)とを実行する。
これらステップをPID制御部40に実行させるためのプログラムは、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記録媒体を介してPID制御部40に提供される。または、プログラムは、インターネットなどの通信ネットワークを介してPID制御部40に提供されてもよい。
次に、PIDパラメータを算定する方法の他の例であるステップ応答法について、図面を参照して説明する。図15はステップ応答法を説明するための図である。図15において、符号PVは研磨パッド3の表面温度の測定値を示しており、符号MVは流量制御バルブ42,56の操作量を示している。図15の縦軸は測定値PVおよび操作量MVを示しており、図15の横軸は時間を示している。
図15に示すように、PID制御部40は、第1流量制御バルブ42を全閉から全開に切り替え、かつ第2流量制御バルブ56を全開から全閉に切り替えて、研磨パッド3の表面温度を変化させる。パッド温度測定器39は、このときの研磨パッド3の表面温度を測定し、PID制御部40に送る。PID制御部40は、この測定値をパッド温度測定器39から取得し、研磨パッド3の表面温度の時間変化を示す曲線の接線TLの傾きRを算定し、接線TLの傾きR、むだ時間Lt、および時定数τを決定する。なお、図15に示す測定値PVの曲線はプロセス反応曲線と呼ばれる。
PID制御部40は、第1開閉バルブ41を閉じた状態において、第2流量制御バルブ56を全開から全閉に切り替えることによっても、プロセス反応曲線を発生させることができる。パッド温度調整部材11が冷却ノズルである場合も、PID制御部40は、研磨パッド3の表面上に供給される冷却流体の流量を制御することにより、プロセス反応曲線を発生させることができる。つまり、PID制御部40は、流量制御バルブ56を全開から全閉に切り替えることにより、プロセス反応曲線を発生させることができる。
図15に示すように、接線TLは、測定値PVを0%から100%までの数値で表したとき、測定値PVが所定の数値(本実施形態では63%)まで上昇したときのプロセス反応曲線上の点P1を通る接線である。傾きRは接線TLに基づいて求められる。むだ時間Ltは、第1流量制御バルブ42を全開とした時刻から、接線TLと横軸との交点P2における時刻までの時間差を算定することで求められる。時定数τは、交点P2における時刻から点P1に対応する時刻までの時間差を算定することで求められる。
PID制御部40は、接線TLの傾きR、むだ時間Lt、および時定数τを用いてPIDパラメータを算定する。より具体的には、比例ゲインKpは下記式(6)を用いることによって求めることができる。
Kp=a/(R×Lt) (6)
積分時間Tiは下記式(7)または下記式(8)を用いることによって求めることができる。
Ti=b×Lt (7)
Ti=b×τ (8)
微分時間Tdは下記式(9)を用いることによって求めることができる。
Td=c×Lt (9)
ここで、上記式(6)〜(9)における係数a,b,cは所定の数値であり、例えば、係数aは1.2であり、係数bは2.0であり、係数cは0.5である。
PID制御部40は、この算定されたPIDパラメータを備えたPID演算式(上記式(5)参照)を用いて温度目標値SVと研磨パッド3の表面温度の測定値PVとの偏差を最小にするための流量制御バルブ42,56の操作量を算定する。
次に、PIDパラメータを算定する方法のさらに他の例であるジーグラ・ニコルスの限界感度法について、図面を参照して説明する。図16はジーグラ・ニコルスの限界感度法を説明するための図である。図16において、符号PVは研磨パッド3の表面温度の測定値を示しており、符号SVは研磨パッド3の表面温度の温度目標値を示しており、符号Puは限界ゲインの周期を示している。曲線Kp1は第1のゲインによる測定値PVの制御曲線であり、曲線Kp2は第1のゲインKp1よりも大きな第2のゲインによる測定値PVの制御曲線であり、曲線Kp3は第2のゲインKp2よりも大きな第3のゲインによる測定値PVの制御曲線である(Kp1<Kp2<Kp3)。図16の縦軸は測定値PVを示しており、図16の横軸は時間を示している。
PID制御部40は、積分時間Tiおよび微分時間Tdを無効にした状態で、第1のゲインKp1、第2のゲインKp2、および第3のゲインKp3をこの順に増加させて、温度目標値SVと測定値PVとの間にハンチング(測定値PVの波形)を発生させる。一実施形態では、ゲインの数値は10ずつ増加される。図16では、第3のゲインKp3を出力したときに、ハンチングが生じている。この第3のゲインKp3は限界ゲインKuに決定される。
PID制御部40は、この限界ゲインKuの周期Puを算定する。PID制御部40は、限界ゲインKuおよび周期Puを用いて、PIDパラメータ(比例ゲインKp、積分時間Ti、微分時間Td)を算定する。より具体的には、比例ゲインKpは下記式(10)を用いることによって求めることができ、積分時間Tiは下記式(11)を用いることによって求めることができ、微分時間Tdは下記式(12)を用いることによって求めることができる。
Kp=a×Ku (10)
Ti=b×Pu (11)
Td=c×Pu (12)
ここで、上記式(10)〜(12)における係数a,b,cは所定の数値であり、例えば、係数aは0.6であり、係数bは0.5であり、係数cは0.125である。
PID制御部40は、この算定されたPIDパラメータを備えたPID演算式(上記式(5)参照)を用いて温度目標値SVと研磨パッド3の表面温度の測定値PVとの偏差を最小にするための流量制御バルブ42,56の操作量を算定する。
本実施形態によれば、PID制御部40は、ウェーハWの研磨中において、研磨パッド3の表面温度の時間変化に基づいてPIDパラメータを自動的に算定することができるため、PIDパラメータを決定するための試行錯誤による実験、特別な知識や経験、ノウハウは不要であり、熟練者に頼る必要はない。したがって、短時間で、かつ効率的にPIDパラメータを決定することができる。さらに、本実施形態によれば、時間や人員を大幅に削減することができるため、コストを削減することができる。
PID制御部40は、上述したPID演算式を用いて計算した操作量で流量制御バルブ42,56を操作した結果として予想される研磨パッド3の表面温度のシミュレーションを実行するように構成されている。シミュレーション結果が表示される研磨パッド3の表面位置はユーザーによって任意に決定され、PID制御部40は、PIDパラメータおよび温度目標値SVに基づいてシミュレーションを実行する。
さらに、PID制御部40は、温度目標値SVを変更した場合に予想される研磨パッド3の表面温度の時間推移を示すシミュレーションをさらに実行するように構成されている。図17は研磨パッド3の表面温度の時間推移を示すシミュレーション結果を示す図である。図17に示すように、研磨パッド3の表面温度の時間推移のシミュレーション結果は温度表示器45に表示される。シミュレーション結果が表示される研磨パッド3の表面位置はユーザーによって任意に決定される。
ウェーハWの研磨プロセスごとに適切なPIDパラメータは異なるため、PID制御部40は、ウェーハWの研磨プロセスごとにPIDパラメータを自動的に決定するように構成されている。ウェーハWの研磨プロセスは、例えば、ウェーハWの膜厚、研磨パッド、スラリーの種類によって変更される。
図18は、PIDパラメータがウェーハWの研磨プロセスごとに算定される様子を示すフローチャートである。まず、適切なPIDパラメータを算定するために、リミットサイクル法、ステップ応答法、およびジーグラ・ニコルスの限界感度法のうちのいずれかを用いて1枚のウェーハWを研磨する(図18のステップ1参照)。このとき、ウェーハWは、PIDパラメータを算定するための研磨レシピに従って研磨される。なお、リミットサイクル法を用いる場合、1枚のウェーハWを研磨するときの温度目標値SVは、実際の研磨プロセスにおいてウェーハWを研磨するときの温度目標値と同じである。
リミットサイクル法、ステップ応答法、およびジーグラ・ニコルスの限界感度法から最も適切なPIDパラメータを算定し(図18のステップ2参照)、算定されたPIDパラメータを反映したウェーハWの研磨を実行する(図18のステップ3参照)。このウェーハWの研磨時における研磨プロセスとは異なる研磨プロセスによりウェーハWを研磨する場合は、再度、1枚のウェーハWを研磨して、最も適切なPIDパラメータを算定する(図18のステップ4参照)。なお、研磨パッド3の温度目標値SVのみを変更する場合、PID制御部40は、予想される研磨パッド3の表面温度のシミュレーションを実行してもよい(図18のステップ5参照)。この場合、温度表示器45には、流量制御バルブ42,56を操作してから研磨パッド3の表面温度が変化するまでの時間、研磨パッド3の表面温度の変化に生じたオーバーシュートの大きさ、温度目標値SVと測定値PVとの偏差、研磨パッド3の表面温度の測定値PVの波形に生じたハンチングの大きさが表示されてもよい。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
1 研磨ヘッド
2 研磨テーブル
3 研磨パッド
4 研磨液供給ノズル
5 パッド温度調整システム
11 パッド温度調整部材
20 ドレッサ
30 流体供給システム
31 流体供給タンク
32 加熱流体供給管
33 加熱流体戻り管
39 パッド温度測定器
40 PID制御部
41 第1開閉バルブ
42 第1流量制御バルブ
45 温度表示器
51 冷却流体供給管
52 冷却流体排出管
55 第2開閉バルブ
56 第2流量制御バルブ
61 加熱流路
62 冷却流路
71 上下動機構(垂直移動機構)
110 記憶装置
120 処理装置
130 入力装置
140 出力装置
150 通信装置

Claims (18)

  1. 基板を研磨パッドの表面に押し付けて該基板を研磨し、
    前記基板の研磨中に、パッド温度調整部材に流れる流体の流量を制御するための流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させ、
    前記研磨パッドの表面温度を測定し、
    前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定し、
    前記PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値と前記研磨パッドの表面温度の測定値との偏差を最小にするための前記流量制御バルブの操作量を計算し、
    前記基板の研磨中に、前記操作量に従って前記流量制御バルブを操作することを特徴とする研磨方法。
  2. 前記研磨パッドの表面温度を測定する工程は、前記研磨パッドの中心と外周部とを含む領域における温度分布を測定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
  3. 前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程は、前記基板の研磨中に、パッド温度調整部材を前記研磨パッドの表面に接触させ、または近接させて該パッド温度調整部材に流れる流体の流量を制御するための流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
  4. 前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程は、前記基板の研磨中に、パッド温度調整部材から前記研磨パッドの表面上に供給される流体の流量を制御するための流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
  5. 前記流体は、加熱流体および冷却流体であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
  6. 前記PIDパラメータを算定する工程は、リミットサイクル法、ステップ応答法、ジーグラ・ニコルスの限界感度法のうちのいずれかを用いて、前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定する工程であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
  7. 前記PID演算式を用いて計算した操作量で前記流量制御バルブを操作した結果として予想される前記研磨パッドの表面温度のシミュレーションを実行することを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
  8. 前記温度目標値を変更した場合に予想される前記研磨パッドの表面温度の時間推移を示すシミュレーションをさらに実行することを特徴とする請求項7に記載の研磨方法。
  9. 研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
    基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、
    前記研磨パッドの表面温度を調整するパッド温度調整システムとを備え、
    前記パッド温度調整システムは、
    流体が流れる流路が内部に形成されたパッド温度調整部材と、
    前記流路に接続された流体供給管と、
    前記流体供給管に取り付けられた流量制御バルブと、
    前記研磨パッドの表面温度を測定するパッド温度測定器と、
    前記流量制御バルブを操作するPID制御部とを備え、
    前記PID制御部は、
    前記基板の研磨中において、前記流量制御バルブを操作して、前記研磨パッドの表面温度を変化させ、
    前記研磨パッドの表面温度の測定値を前記パッド温度測定器から取得し、
    前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定し、
    前記PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値と前記研磨パッドの表面温度の測定値との偏差を最小にするための前記流量制御バルブの操作量を計算し、
    前記操作量に従って前記流量制御バルブを操作することを特徴とする研磨装置。
  10. 前記パッド温度測定器は、赤外線放射温度計、熱電対温度計、サーモグラフィ、およびサーモパイルのうち、少なくとも1つの温度測定器であることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
  11. 前記パッド温度測定器は、前記研磨パッドの中心と外周部とを含む領域における温度分布を測定するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
  12. 前記パッド温度調整システムは、前記パッド温度測定器によって測定された前記研磨パッドの表面温度を表示する温度表示器をさらに備えていることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
  13. 前記パッド温度調整部材は、前記研磨パッドの表面に冷却流体を吹きかける冷却ノズルであることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
  14. 前記パッド温度調整部材は、前記研磨パッドの表面に接触可能なパッド接触面を有することを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
  15. 前記PID制御部は、リミットサイクル法、ステップ応答法、ジーグラ・ニコルスの限界感度法のうちのいずれかを用いてPIDパラメータを算定することを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
  16. 前記PID制御部は、前記PID演算式を用いて計算した操作量で前記流量制御バルブを操作した結果として予想される前記研磨パッドの表面温度のシミュレーションを実行するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
  17. 前記PID制御部は、前記温度目標値を変更した場合に予想される前記研磨パッドの表面温度の時間推移を示すシミュレーションをさらに実行するように構成されていることを特徴とする請求項16に記載の研磨装置。
  18. 研磨ヘッドに指令を与えて、基板を研磨パッドの表面に押し付けて該基板を研磨する動作を前記研磨ヘッドに実行させるステップと、
    パッド温度調整部材に流れる流体の流量を制御するために設けられた流量制御バルブを操作することで、前記研磨パッドの表面温度を変化させるステップと、
    前記研磨パッドの表面温度の測定値を取得するステップと、
    前記研磨パッドの表面温度の時間変化に基づいて、PIDパラメータを算定するステップと、
    前記PIDパラメータを備えたPID演算式を用いて、温度目標値と前記研磨パッドの表面温度の測定値との偏差を最小にするための前記流量制御バルブの操作量を計算するステップと、
    前記操作量に従って前記流量制御バルブを操作するステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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