JP2018026343A - ガス拡散電極基材およびその製造方法、ならびに固体高分子形燃料電池 - Google Patents

ガス拡散電極基材およびその製造方法、ならびに固体高分子形燃料電池 Download PDF

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健太郎 梶原
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悟 下山
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Abstract

【課題】
反応生成物である水の排出を良好に行うことができ、かつ、電解質膜を損傷させ難いガス拡散電極基材を提供する。
【解決手段】
少なくとも一方の面に、凹部と凸部が配置されてなる凹凸パターンを有する炭素繊維不織布から本質的になるガス拡散電極基材であって、炭素繊維不織布の面内の炭素繊維配向指数が1.5以上、10以下であるガス拡散電極基材。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池用のガス拡散電極基材およびその製造方法に関する。
固体高分子形燃料電池は環境負荷が小さく、かつ、発電効率が高い特徴を有するため、小型で高出力が要求される自動車用などでの適用拡大が期待されている。
燃料電池では、供給する水素や空気に加える水分と反応で生じる水で、電解質膜や触媒層のアイオノマーの湿潤状態を維持するとともに、過剰な水は水素や空気の輸送を妨げないように速やかにチャネルへ排出する必要がある。そこで、ガス拡散電極にフッ素樹脂等で撥水処理する方法や、ガス拡散電極にフッ素樹脂と導電粒子からなるマイクロポーラス層を形成する方法によって水の排出改善が試みられているが、その効果は十分でなく、更なる性能向上が求められている。
例えば特許文献1には、ポリアクリロニトリル系酸化繊維シートをプレスして非貫通孔を形成する技術が開示されている。
特開2015−143404号公報
特許文献1に記載されている非貫通孔を形成したガス拡散電極基材は、排水性が向上したことにより高い発電性能を得られる。
しかし、本発明者らの検討によると、特許文献1のように表面に非貫通孔を形成させると、燃料電池内に設置され、両側から締め付けられた際に、非孔部に応力が集中する。このため、長期間の使用や、乾湿の繰り返しが多いと電解質膜を損傷しやすい傾向があることがわかった。
本発明は、反応生成物である水の排出を良好に行うことができ、かつ、電解質膜を損傷させ難いガス拡散電極基材を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、少なくとも一方の面に凹凸を複数有する炭素繊維不織布であって、面内の炭素繊維配向指数が1.5以上、10以下であるガス拡散電極基材である。
本発明のガス拡散電極基材は、少なくとも一方の面に凹凸を複数有する炭素繊維不織布において、炭素繊維の配向方向を制御することによって、電解質膜を損傷させることなく、高い排水性が得られる。
<ガス拡散電極基材>
〔炭素繊維不織布〕
本発明のガス拡散電極基材は、少なくとも一方の面に凹凸を複数有する炭素繊維不織布から本質的になり、面内の炭素繊維配向指数が1.5以上、10以下であるガス拡散電極基材である。炭素繊維不織布から本質的になる、とは炭素繊維不織布のみからなるものでもよいが、後述する撥水剤が付与されているものやマイクロポーラス層が形成されたもの等、ガス拡散電極としての機能を阻害しない付加的な修飾が施されたものであってもよいことを意味する。
炭素繊維不織布とは、炭素繊維前駆体繊維不織布を不活性ガス雰囲気下で加熱して炭化させたものである。炭素繊維とは、炭素繊維前駆体繊維を不活性ガス雰囲気で加熱して炭化したものであり、不織布とは、ウエブの構成繊維を機械的な交絡、加熱による融着、バインダーによる接着といった方法で固定させたものである。また、ウエブとは炭素繊維前駆体繊維を積層してシート状にしたものである。
本発明に用いられる炭素繊維不織布は、繊維長3mmを超える炭素繊維からなるものが好ましい。繊維長が3mmを超えるものであると、後述する凹凸構造の壁面を構成する炭素繊維が厚さ方向へ配向しやすく、電極の厚さ方向の導電性を高めることができる。炭素繊維の繊維長は15mmを超えることがより好ましい。また繊維長の上限は特に限定されないが、一般に100mm以下であることが好ましい。なお、本発明において、繊維長は数平均繊維長を意味するものとする。
炭素繊維の繊維径は、小さいほど表面積を得られるため、導電性や熱伝導が優れる炭素繊維不織布が得られる一方、取り扱いが難しくなる。そのため、炭素繊維の繊維径は、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
炭素繊維不織布の平均孔径は、20μm以上であることが好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、上限は特に限定されないが、80μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましい。平均孔径が20μm以上であれば、ガスの拡散と排水で高い性能が得られる。また、平均孔径が80μm以下であれば、ドライアウトを防止しやすい。なお、本発明において、炭素繊維不織布の平均孔径は、水銀圧入法により測定される値をいう。これは、例えば、PoreMaster(Quantachrome社製)などを用いて測定でき、本発明においては、水銀の表面張力σを480dyn/cm、水銀と炭素繊維不織布との接触角を140°として計算した値を用いる。
ガス拡散電極基材が厚くなると燃料電池が大型化してしまうため、ガス拡散電極基材はその機能を発揮する限りにおいて薄い方が好ましく、一般的には30μm〜500μm程度である。本発明において、ガス拡散電極基材の厚さは300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。また、ガス拡散電極基材の厚さは50μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。ガス拡散電極基材の厚さが50μm以上であると、面内方向のガス拡散がより向上し、セパレーターのリブ下にある触媒へもガスの供給がより容易にできるため、低温、高温のいずれにおいても発電性能がより向上する。一方、ガス拡散電極基材の厚さが300μm以下であると、ガスの拡散パスと排水パスが短くなるとともに、導電性と熱伝導性を高くでき、高温、低温のいずれにおいても発電性能がより向上する。なお、本発明において、ガス拡散電極基材の厚さは、φ5mm以上の面積を、面圧0.15MPaで加圧した状態で測定した厚さとする。また、後述するマイクロポーラス層を形成したガス拡散電極基材の厚さは、マイクロポーラス層を含めた厚さを意味する。
また、炭素繊維不織布の見かけ密度は0.10〜1.00g/cmであることが好ましい。0.10g/cm以上とすることで、導電性や熱伝導性を向上させることが可能となるとともに、燃料電池として使用する際に付与される圧力によっても構造が破壊され難い。また、1.00g/cm以下とすることで、気体や液体の透過性を向上させることができる。見かけ密度は0.20〜0.80g/cmがより好ましく、0.25〜0.60g/cmがさらに好ましい。ここで、見かけ密度は、目付を厚さで除したものである。
本発明において、炭素繊維不織布は、面内の炭素繊維配向指数が1.5〜10である。面内の炭素繊維配向指数とは、面内において、同一方向に並んでいる炭素繊維の最大量と最小量の比(最大/最小)を言う。炭素繊維配向指数が大きいほど炭素繊維の配向の異方性が大きいことを意味し、本発明は、この炭素繊維配向指数が大きくすることで、後述の凹凸形成によって生じやすくなる電解質膜の損傷を防げることを見出したものである。電解質膜の損傷を防止するメカニズムは明らかでないが、炭素繊維同士の交差する箇所が減ることで、燃料電池としてスタックされたときに応力が集中し難くなるためだと考えられる。このため、炭素繊維配向指数は1.8以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。
一方、炭素繊維配向指数が小さいほど、引張りや曲げといった物性の等方性が向上するため、工程での取扱いが容易になる。このため、炭素繊維配向指数は、8.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。
炭素繊維配向指数は、X線回折法において、黒鉛層間(002)面回折に検出器を設定し、試料を面内回転させて回折強度を測定する。このとき、(002)面は炭素繊維の軸方向へ配向しているため、回折強度がその向きに配向している炭素繊維の本数に対応していると考えられる。そこで、最大の回折強度と最小の回折強度の比(最大/最小)を炭素繊維配向指数とする。
本発明では、X線回折法において検出した(002)面の半値幅が2.7°以下であることが好ましい。この半値幅が小さいほど結晶子サイズが大きいことを示唆しており、高い導電性が期待できるためである。一方、半値幅が高いことは炭素繊維が脆くなりやすいことから、燃料電池スタック内で圧力を受ける際、炭素繊維が破損し、その破損部が電解質膜を損傷させやすいが、本発明の炭素繊維配向指数の範囲とすることでこれを避けることができる。下限は特に限定しないが、一般に、1.0°以上である。
炭素繊維不織布の目付は、特に限定されないが、15g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましい。15g/m以上とすることで、機械強度が向上し製造工程での搬送性を良好にすることができる。一方、目付は150g/m以下であることが好ましく、120g/m以下であることがより好ましい。150g/m以下とすることにより、炭素繊維不織布の面直方向のガス透拡散性がより向上する。
また、炭素繊維同士の接点にバインダーとして炭化物が付着していると、炭素繊維同士の接点で接触面積が大きくなり、導電性と熱伝導性が向上するため、発電効率が高くなる。このようなバインダーを付与する方法としては、炭化処理後の炭素繊維不織布にバインダー溶液を含浸またはスプレーし、不活性雰囲気下で再度加熱処理してバインダーを炭化する方法が挙げられる。この場合、バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂といった熱硬化性樹脂を用いることができ、中でも、炭化収率が高い点でフェノール樹脂が特に好ましい。また、後述するように、熱可塑性樹脂を炭素繊維前駆体不織布に混綿しておく方法も好ましい。一方、バインダーとして炭化物が付着していないと、炭素繊維同士が移動しやすいため、柔軟で、製造工程での取り扱いが容易となる利点がある。
本発明において、ガス拡散電極基材を構成する炭素繊維不織布は、少なくとも一方の面に、凹部と凸部が配置されてなる凹凸パターンを有する。
炭素繊維不織布が凹凸パターンを有することは、以下のように確認できる。
1.着目面(凹凸パターンの有無を判断しようとしている面)を上にしてレーザー顕微鏡等で圧力を付与しない炭素繊維不織布を観察し、形状解析アプリケーションを用いて凹凸を可視化した立体画像を作成する。
2.1の炭素繊維不織布の画像において、形状解析アプリケーションで算出した高さの平均値である平面(基準面)を想定し、基準面より上になる部分を凸部、基準面より下になる部分を凹部として、凹部と凸部が区別可能になるよう画像処理を行う。基準面より上になる部分と下になる部分の両方が現れない場合には、凹凸は形成されていないと判断する。
3.当該画像処理において、ストライプ状、市松模様状またはドット状等のパターンが現れる場合、凹凸パターンが存在すると判断する。
なお、凹凸パターンは、さらに以下の手法によっても確認できるものであることがより好ましい。
1.着目面(凹凸パターンの有無を判断しようとしている面)を上にしてレーザー顕微鏡で炭素繊維不織布を観察し、形状解析アプリケーションを用いて凹凸を可視化した立体画像を作成する。
2.炭素繊維不織布を厚さ方向に1MPaで加圧した際の炭素繊維不織布の厚さ(以下、単に「加圧時厚さ」という)を求める。
3.1の炭素繊維不織布の立体画像において、着目面と反対側の面(下面)から加圧時厚さに相当する高さだけ着目面側に存在する平面(基準面)を想定し、基準面より上になる部分を凸部、基準面より下になる部分を凹部として、凹部と凸部が区別可能になるよう画像処理を行う。基準面より上になる部分と下になる部分の両方が現れない場合には、凹凸は形成されていないと判断する。
4.当該画像処理において、ストライプ状、市松模様状またはドット条等のパターンが現れる場合、凹凸パターンが存在すると判断する。
凹凸パターンの形状は特に限定されないが、凹部と凸部が規則的に配置されてなる形状であることが好ましく、ストライプ状(直線状の凹部と直線状の凸部とが交互に配置されたパターン)、ドット状(凹部を海として凸部が島状に存在する形状、もしくは凸部を海として凹部が島状に存在する形状)、または市松模様状(略方形の凹部と凸部を交互に配した形状)であることが特に好ましい。ドット状の凹凸パターンの場合、凹部または凸部からなるドットが面内に略均一に分布するように形成されていることが好ましい。
本発明の炭素繊維不織布をガス拡散電極基材とした燃料電池においては、反応で生成した水は、凹部を移動するのではなく、凸部表面を移動して排出されることが意図されている。このような排水効果を発揮するため、凹凸パターンがストライプ形状である場合には、凸部の形成ピッチは5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。また、凹凸パターンがドット状の場合には、ドットの形成ピッチは縦横ともに2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。
さらに、ドットの形成密度は30個/cm〜5000個/cmが好ましく、100個/cm〜1500個/cmがより好ましい。非連続突起の個数が30個/cm以上では、比較的小さな水滴も非連続突起の頂面を底面とするガス流路で移動しやすく、5000個/cm以下では、突起と水滴の相互作用を減らしやすいためである。この個数は、連続する領域で100の凹凸が占める面積を測定して算出する。
凹凸パターンの凹凸の高さは5μm以上250μm以下であることが好ましい。凹凸の高さが当該範囲であることで、炭素繊維不織布の強度を保ちつつ、ガス供給の均一性と水の排出性を両立することができる。また、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。また、排水性を確保する観点からは、凹凸の高さは炭素繊維不織布の加圧時厚さに対して5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
炭素繊維不織布の凹部の見かけ密度は0.5g/cm以上であることが好ましい。凹部の見かけ密度が高いことによって高い導電性が得られるためである。一方、見かけ密度が高いと燃料電池スタック内で圧力を受ける際、繊維が移動する自由度が低いため電解質膜を損傷しやすいが、本発明の炭素繊維配向指数の範囲とすることでこれを避けることができる。上限は特に限定しないが、一般に、1.0g/cm以下である。
本明細書では、上述のレーザー顕微鏡観察で確認した凹部の厚みで全体の目付を除したものを凹部の見かけ密度とする。また、後述するマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材の場合は、マイクロポーラス層を含む厚みで、マイクロポーラス層を含む全体の目付を除したものを凹部の密度とする。
また、平面視において凹凸の壁面に破断繊維が観察されないことが好ましい。破断繊維がないことによって、高い導電性が得られる。凹凸の壁面に破断繊維が観察されないことは、光学顕微鏡、電子顕微鏡等で炭素繊維不織布の表面観察を行い、各凹凸の壁面で途切れている炭素繊維が観察されないことにより確認することができる。本発明においては、ドット状パターンの場合は、隣接する20箇所以上の凹部または凸部を観察し、その過半数の凹部または凸部において壁面に破断繊維が観察されない場合には、凹凸の壁面に破断繊維が観察されないと判断するものとする。また、ストライプ状パターンの場合は、直線状の凸部を5mmの長さを観察し、凸部の壁面に破断繊維が10本以下である場合、凹凸の壁面に破断繊維が観察されないと判断するものとする。このような破断繊維は5本以下が好ましく、3本以下がより好ましい。
また、凹凸の壁面を構成している炭素繊維のうち少なくとも一部の炭素繊維が凹凸の高さ方向に配向していることが好ましい。凹凸の壁面を構成している炭素繊維とは、繊維の少なくとも一部が凹凸の壁面に露出している炭素繊維である。そして、当該炭素繊維が凹凸の高さ方向に配向している、とは、凹凸を高さ方向に3等分したときに、炭素繊維が2つの等分面(炭素繊維不織布底面と平行な平面)の両方を貫通していることを意味する。一般に、凹凸を形成すると、凹凸を形成しない場合よりもガス供給側の部材(例えばセパレーター)との接触面積が小さくなり、導電性や熱伝導性が低下してしまう。ところが、炭素繊維は、繊維断面方向よりも繊維軸方向の導電性、熱伝導性が優れているため、凹凸の壁面を構成している炭素繊維が凹凸の高さ方向に配向している場合、炭素繊維不織布の厚さ方向の導電性、熱伝導性が向上し、孔形成による導電性や熱伝導性の低下を補うことができる。
凹凸の高さ方向に配向している炭素繊維が存在することは、レーザー顕微鏡等で炭素繊維不織布表面を観察し、形状解析アプリケーションを用いて、凹凸の1/3高さの等分面と凹凸壁面との交線、および凹凸の2/3高さの各等分面と凹凸壁面との交線の両方を共に横切る炭素繊維が観察されることにより確認することができる。また、炭素繊維不織布の凹凸を含む任意の断面を走査型電子顕微鏡等で観察し、凹凸の高さの1/3と2/3の位置で当該凹凸を横切る炭素繊維不織布表面と平行な2直線を描画した上で、当該2直線の両方と交わる炭素繊維が観察されることによっても確認することができる。このような炭素繊維は、ドット状パターンの場合は、一つの凹部または凸部中に2本以上存在することが好ましく、5本以上存在することがさらに好ましい。ストライプ状パターンの場合は、直線状の凸部を1mmの長さ観察し、2本以上存在することが好ましく、5本以上存在することがさらに好ましい。
〔撥水剤〕
ガスの供給を妨げないという観点で、ガス流路に親水処理を実施することが多いが、本発明のガス拡散電極基材は、非連続突起の頂面における水の移動抵抗を小さくする観点から、上記のような炭素繊維不織布に撥水剤を付与することが好ましい。撥水剤としては、耐腐食性が優れることから、フッ素系のポリマーを用いることが好ましい。フッ素系のポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
一般的に、炭素繊維不織布の表面に10μLの水滴を載置した際の接触角が120°を超えている場合、撥水剤が付与されていると判断される。また、特に撥水剤としてフッ素系ポリマーを用いる場合には、X線分光法で炭素繊維不織布を構成する繊維の表面にフッ素原子が存在することを確認するか、あるいは熱重量測定と質量測定を組み合わせたTG−MSによってフルオロカーボンを検出することによって、撥水剤が付与されていることが確認できる。
ガス拡散電極基材中の撥水剤の含有量は特に限定されないが、例えば、炭素繊維不織布に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、3質量%〜10質量%がより好ましい。
また、撥水材にはその他の添加物が含まれていても良い。例えば、導電性のカーボン粒子を含むことは、撥水性と導電性を両立できるため好ましい態様である。
〔マイクロポーラス層〕
本発明のガス拡散電極基材は、さらにマイクロポーラス層を有するものであってもよい。マイクロポーラス層は、ガス拡散電極において触媒層と接する面に形成される炭素材料を含む層であり、非連続突起を形成していない面、すなわち炭素繊維不織布の底面に設けられる。マイクロポーラス層は、触媒層と炭素繊維不織布との間からの水の排除を促進することでフラッディングを抑制するとともに、電解質膜への水分の逆拡散を促進してドライアップを抑制する。
マイクロポーラス層を構成する炭素材料としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックや、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、薄片グラファイトが挙げられる。また、気相成長炭素繊維、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カップ積層型カーボンナノチューブ、竹状カーボンナノチューブおよびグラファイトナノファイバー等の線状カーボン好ましく用いられる。
また、液水の排水を促進するため、マイクロポーラス層は撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、耐腐食性が高いフッ素系のポリマーを用いることが好ましい。フッ素系のポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
マイクロポーラス層の空隙率は60〜85%の範囲内であることが好ましく、65〜80%の範囲内であることがより好ましく、70〜75%の範囲内であることがさらに好ましい。空隙率が60%以上であると、排水性がより向上し、フラッディングをより抑制することができる。また、空隙率が85%以下であると、水蒸気拡散性がより小さく、ドライアップをより抑制することができる。ここで、マイクロポーラス層の空隙率は、イオンビーム断面加工装置を用いた断面観察用サンプルを用い、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、断面を1000倍以上に拡大して写真撮影を行い、空隙部分の面積を計測し、観察面積に対する空隙部分の面積の比を求めたものである。
かかる空隙率を有するマイクロポーラス層は、マイクロポーラス層の目付、撥水剤、その他材料に対する炭素材料の配合量、炭素材料の種類、および、マイクロポーラス層の厚さを制御することにより得られる。中でも、撥水剤、その他材料に対する炭素材料の配合量、炭素材料の種類を制御することが有効である。撥水剤、その他材料に対する炭素材料の配合量を多くすることにより高空隙率のマイクロポーラス層が得られ、少なくすることにより低空隙率のマイクロポーラス層が得られる。
マイクロポーラス層の目付は10〜35g/mの範囲内であることが好ましい。マイクロポーラス層の目付が10g/m以上であると、炭素繊維不織布表面を確実に覆うことができ、生成水の逆拡散が促進される。また、マイクロポーラス層の目付が35g/m以下とすることで、凹部や空隙の閉塞を抑制し、排水性がより向上する。マイクロポーラス層の目付は30g/m以下であることがより好ましく、25g/m以下であることがさらに好ましい。また、14g/m以上であることがより好ましく、16g/m以上であることがさらに好ましい。また、マイクロポーラス層を形成した本発明のガス拡散電極基材の目付は25〜185g/mであることが好ましい。
また、セパレーターとガス拡散電極間の電気抵抗を低減することができるとの観点から、マイクロポーラス層の一部または全部が炭素繊維不織布に浸透していることが好ましい。
<固体高分子形燃料電池>
本発明のガス拡散電極基材に触媒層を形成することで、ガス拡散電極とすることができる。触媒層は、触媒金属として、遷移金属、特に白金またはその合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子からなることが好ましい。触媒層は、炭素繊維不織布の底面側に形成され、マイクロポーラス層を有する場合にはマイクロポーラス層の表面に形成される。
また、高分子電解質膜の両側に触媒層を形成し、さらにその外側に本発明のガス拡散電極基材を用いたガス拡散電極を配置して接合するか、高分子電解質膜の両側に、ガス拡散電極基材に触媒層を形成した本発明のガス拡散電極を配置して積層することで、膜電極接合体を得ることができる。また、さらに膜電極接合体の両側にセパレーターを配置することで、固体高分子形燃料電池の1セルを得ることができる。
このような電解質膜としては、厚みが30μm以下であることが好ましい。電解質膜が薄いことによって高い導電性が得られるためである。一方、電解質膜が薄いと、燃料電池スタック内で圧力を受ける際、損傷しやすくなるが、本発明の炭素繊維配向指数の範囲とすることでこれを避けることができる。下限は特に限定しないが、一般に、10μm以上である。
<ガス拡散電極基材の製造方法>
本発明のガス拡散電極基材は、一例として、工程A:炭素繊維前駆体繊維不織布を製造する工程と、工程B:炭素繊維前駆体繊維不織布の表面を、凹凸を有する部材で押圧して非連続突起を形成する工程と、工程C:工程Bで得られた炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化処理する工程とを有するガス拡散電極基材の製造方法により製造することができる。
〔工程A〕
工程Aは、炭素繊維不織布前駆体繊維不織布を製造する工程である。
炭素繊維前駆体繊維とは、炭化処理により炭素繊維化する繊維であり、炭化率が15%以上の繊維であることが好ましく、30%以上の繊維であることがより好ましい。本発明に用いられる炭素繊維前駆体繊維は特に限定されないが、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維、ピッチ系繊維、リグニン系繊維、ポリアセチレン系繊維、ポリエチレン系繊維、および、これらを不融化した繊維、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維、ポリベンゾオキサゾール系繊維などを挙げることがでる。中でも強伸度が高く、加工性の良いPANを不融化したPAN系耐炎繊維を用いることが特に好ましい。繊維を不融化するタイミングは、不織布を作製する前後いずれでもよいが、不融化処理を均一に制御しやすいことから、シート化する前の繊維を不融化処理することが好ましい。また、不融化していない炭素繊維前駆体繊維不織布を用いる場合、後述する工程Aの後で不融化処理を行うこともできるが、工程Aにおける不均一な変形を最小限にする観点からは、不融化した炭素繊維前駆体繊維不織布を工程Aに供することが好ましい。
なお、炭化率は、以下の式から求めることができる。
炭化率(%)=炭化後重量/炭化前重量×100
炭素繊維前駆体繊維不織布は、炭素繊維前駆体繊維により形成されたウエブを、交絡、加熱融着、バインダー接着等により結合して布帛状としたものである。ウエブとしては、乾式のパラレルレイドウエブまたはクロスレイドウエブ、エアレイドウエブ、湿式の抄造ウエブ、押出法のスパンボンドウエブ、メルトブローウエブ、エレクトロスピニングウエブを用いることができる。溶液紡糸法で得たPAN系繊維を不融化してウエブ化する場合は、均一なシートを得やすいことから、乾式ウエブまたは湿式ウエブを用いることが好ましい。また、工程での形態安定性を得やすいことから、乾式ウエブを機械的に交絡させた不織布が特に好ましい。
本発明では、炭素繊維配向指数を1.5〜10の範囲にするため、ウエブ形成工程で炭素繊維前駆体繊維の配向を制御する必要がある。乾式ウエブを用いる場合であれば、クロスレヤーでの重なり角度や、パラレルウエブとの積層比率、ドラフターの速度比率によって制御することができる。クロスレヤーでの重なり角度は、トラバース速度とデリベリーコンベアー速度で制御でき、重なり角度が45度に近づくと、炭素繊維配向指数が小さくなる。パラレルウエブは、搬送方向に繊維が配向するため、上記クロスレヤーで得たウエブを積層することで、炭素繊維配向指数が制御できる。また、ドラフターでウエブを伸ばすことで、搬送方向への繊維配向を増やすことができ、これによって炭素繊維配向指数を制御できる。また、湿式ウエブであれば、水流によって制御することができる。これは、例えば原料流入速度とワイヤ速度の比率や、ワイヤと水面の角度によって調整することができる。また、これらの方法を組み合わせて制御することができる。
また、前述のように、炭素繊維不織布の炭素繊維同士の交点に炭化物が付着していると導電性と熱伝導性に優れるため、炭素繊維前駆体繊維不織布はバインダーを含むものであってもよい。炭素繊維前駆体繊維不織布にバインダーを含ませる方法は特に限定されないが、炭素繊維前駆体繊維不織布にバインダー溶液を含浸またはスプレーする方法や、予め炭素繊維前駆体繊維不織布にバインダーとなる熱可塑性樹脂製繊維を混綿しておく方法が挙げられる。
炭素繊維前駆体繊維不織布にバインダー溶液を含浸またはスプレーする場合には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂といった熱硬化性樹脂をバインダーとして用いることができ、炭化収率が高いことからフェノール樹脂が好ましい。ただし、バインダー樹脂溶液を含浸した場合は、炭化工程で炭素繊維前駆体繊維とバインダー樹脂の収縮の挙動の差異が生じることによって、炭素繊維不織布の平滑性が低下しやすく、また、バインダーの乾燥時に炭素繊維不織布表面に溶液が移動するマイグレーション現象も生じ易いため、均一な処理が難しくなる傾向がある。
これに対し、予め炭素繊維前駆体繊維不織布にバインダーとなる熱可塑性樹脂製繊維を混綿しておく方法は、炭素繊維前駆体繊維とバインダー樹脂の割合を不織布内で均一にすることができ、炭素繊維前駆体繊維とバインダー樹脂の収縮挙動の差異も生じにくいことから、最も好ましい方法である。このような熱可塑性樹脂製繊維としては、比較的安価なポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維が好ましい。
バインダーの配合量は、炭素繊維不織布の強度、導電性、熱伝導性の向上のため、炭素繊維前駆体繊維100質量部に対し、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、排水性向上のため、80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
なお、バインダーの付与は、後述する工程Aにおいて炭素繊維前駆体繊維不織布に非連続突起を賦形した後に、バインダー溶液を含浸またはスプレーすることにより行うこともできる。また、後述する工程Bにおいて炭化処理を行った後の炭素繊維不織布にバインダー溶液を含浸またはスプレーし、再度炭化処理する工程を経ることによっても行うことができる。しかしながら、非連続突起形成後にバインダーを付与すると、突起以外の部分にバインダー溶液が溜まって付着量が不均一になる傾向があるため、非連続突起の形成前に行うことが好ましい。
バインダーとなる熱可塑性樹脂製繊維や、含浸またはスプレーする溶液に導電助剤を添加しておくと、導電性向上の観点からさらに好ましい。このような導電助剤としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維のミルドファイバー、黒鉛等を用いることができる。
一方、バインダーとして炭化物が付着していないと、炭素繊維同士が移動しやすいため、柔軟で、製造工程での取り扱いが容易になる利点があるため、バインダーを含ませないか、あるいはバインダーを炭化させないことも好ましい態様である。
〔工程B〕
工程Bは、凹凸を有する面に押圧して、炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に複数の凹凸を形成する工程である。このような凹凸は、炭化後の炭素繊維不織布にレーザー加工や機械加工を行うことで形成することが可能だが、この方法は、凹凸形成時に凹凸の壁面で炭素繊維が切断されることが避けられないため、導電性と熱伝導性の低下を招き、好ましくない。
工程Bにおいては、炭素繊維前駆体繊維不織布の表面を押圧して凹凸を形成する。押圧の方法は、炭素繊維の切断を伴わない方法であれば特に限定されず、凸部に対応する凹部を有する賦形部材を押し付ける方法や、針状部材により押圧する方法、あるいは水により押圧する方法等を用いることができる。
中でも好ましいのは、形成する凸部に対応する凹部を有する賦形部材を前記炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に押し付ける方法である。この方法においては、炭素繊維前駆体繊維不織布の表面の一部を賦形部材により物理的に押し込むことで、炭素繊維前駆体繊維の切断を防止しつつ凹凸を形成することができる。これにより、前記凹凸の周縁部に破断繊維が観察されない炭素繊維前駆体繊維不織布を得ることができる。
このような凹部の形状は凸部の横断面形状(賦形部材表面と平行な面で切ったときの断面形状)に対応するものであり、円形、楕円形、ドーナツ型、四角形、三角形、多角形、星型等任意に選択できる。
凹部の縦断面形状(賦形部材表面と垂直な面で切ったときの断面形状)も特に限定されず、深さ方向で大きさが変化しない略長方形であっても、深さ方向で大きさが変化する略台形、略三角形、略円弧形であってもよいが、深くなるにつれて幅が広くなる台形または弓形等に構成すると、排水効率を向上できる点で好ましい。
賦形部材表面の凹部の深さは特に限定されないが、後述の工程Cにおいて炭素繊維前駆体繊維不織布が収縮しやすいことから、ガス拡散電極とした状態における非連続突起の高さと同等か、より深いことが好ましい。
より具体的な手段は特に限定されないが、エンボス加工が好ましく、凸部に対応する凹形状を形成したエンボスロールとフラットロールで連続プレスする方法や、同様の凹形状を形成したプレートとフラットプレートでバッチプレスする方法を挙げることができる。プレスの際には、後述する工程Cにおける炭化処理において形態が復元する(凹凸がなくなる)ことのないように、ロールやプレートは加熱したものを用いることが好ましい。このときの加熱温度は、炭素繊維前駆体繊維の不織布構造体に形成した凹凸の形態安定性の点から200℃〜300℃が好ましく、220℃〜280℃がより好ましい。
また、最終的に得られるガス拡散電極基材の密度や厚さを制御するため、凹部の無いロールやプレートでのプレスを工程Aの前または後に実施することも好ましい態様である。
なお、繊維破断を生じることなく非連続突起を賦形するためには、比較的低密度の炭素繊維前駆体繊維不織布を変形させることが好ましいため、工程Bに供される前の炭素繊維前駆体繊維不織布は、見かけ密度が0.02〜0.20g/cmであることが好ましく、0.05〜0.15g/cmであることがより好ましい。
また、ガス拡散電極基材に用いる炭素繊維不織布は、優れた導電性と熱伝導度が得られるため、見かけ密度を0.20g/cm以上にすることが好ましく、優れたガス拡散性を得るため、見かけ密度を0.80g/cm以下にすることが好ましい。そのためには、炭素繊維前駆体繊維不織布の見かけ密度を0.20〜0.80g/cmにしておくことが好ましい。導電性の観点から、凹部の見かけ密度を0.5g/cm以上にすることが好ましい。炭素繊維前駆体繊維不織布の見かけ密度を制御するために、工程Bを行った後、フラットロールやフラットプレートでプレスして調整することもできるが、非連続突起の形状を制御するという観点から、工程Bにおいて、非連続突起部分だけではなく炭素繊維前駆体不織布全体を同時に押圧することによって、炭素繊維前駆体繊維不織布の見かけ密度を調整することが好ましい。
〔工程C〕
工程Cは、工程Bで得られた炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化処理する工程である。炭化処理の方法は特に限定されず、炭素繊維材料分野における公知の方法を用いることができるが、不活性ガス雰囲気下での焼成が好ましく用いられる。不活性ガス雰囲気下での焼成は、窒素やアルゴンといった不活性ガスを供給しながら、800℃以上で炭化処理を行うことが好ましい。焼成の温度は、優れた導電性と熱伝導性を得やすいために1500℃以上が好ましく、1900℃以上がより好ましい。一方、加熱炉の運転コストの観点を考慮すると、3000℃以下であることが好ましい。
本発明では、X線回折法において検出した(002)面の回折強度−回転角スペクトルの半値幅が2.7°以下であることが好ましい。このような半値幅にするためには焼成温度を2000℃以上にすることが好ましく、2300℃以上にすることがより好ましい。
なお、炭素繊維前駆体不織布が不融化前の炭素繊維前駆体繊維で形成されている場合には、工程Bの前に不融化工程を行うことが好ましい。このような不融化工程は、通常、空気中で、処理時間を10〜100分、温度を150〜350℃の範囲にする。PAN系不融化繊維の場合、密度が1.30〜1.50g/cmの範囲となるように設定することが好ましい。
〔撥水処理工程〕
撥水処理工程は工程Cで得られた炭素繊維不織布に撥水剤を付与する工程である。撥水剤の付与は、炭素繊維不織布に撥水剤を塗布した後、熱処理することにより行うことが好ましい
撥水剤としては、耐腐食性が優れることから、フッ素系のポリマーを用いることが好ましい。フッ素系のポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。
撥水剤の塗布量は、炭素繊維不織布100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、3〜40質量部であることがより好ましい。撥水剤の塗布量が1質量部以上であると、炭素繊維不織布が排水性に優れたものとなり好ましい。一方、50質量部以下であると、炭素繊維不織布が導電性の優れたものとなり好ましい。
〔マイクロポーラス層形成工程〕
上記方法で得られた炭素繊維不織布には、さらにマイクロポーラス層を形成してもよい。
マイクロポーラス層の形成に用いられる、炭素材料を含むカーボン塗液は、水や有機溶媒などの分散媒を含んでも良いし、界面活性剤などの分散助剤を含んでもよい。分散媒としては水が好ましく、分散助剤にはノニオン性の界面活性剤を用いるのがより好ましい。また、カーボン以外の各種炭素材料や撥水剤を含有しても良い。
カーボン塗液の塗工方式としては、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スプレー噴霧、凹版印刷、グラビア印刷、ダイコーター塗工、バー塗工、ブレード塗工などが用いられる。
また、カーボン塗液の炭素繊維不織布への塗工後、80〜120℃の温度で塗液を乾かすことが好ましい。すなわち、塗工物を、80〜120℃の温度に設定した乾燥器に投入し、5〜30分の範囲で乾燥する。乾燥風量は適宜決めればよいが、急激な乾燥は、表面の微小クラックを誘発する場合があるので望ましくない。
〔触媒層形成工程〕
上記方法で得られたガス拡散電極基材にさらに触媒層を形成することでガス拡散電極とすることができる。触媒層は、白金やその合金からなる触媒金属粒子を担持した担体粒子と、ナフィオン等の電解質からなる触媒スラリーを、印刷法,スプレー法,インクジェット法,ダイコーター法、転写法などでガス拡散電極基材に塗布することで形成することができる。
実施例および比較例中のデータは以下の方法で測定した。
1.凹凸形成の判定
ガス拡散電極基材の、マイクロポーラス層が形成されているのと反対側の面を、レーザー顕微鏡(VK−9710、株式会社キーエンス社製)で観察し、形状解析アプリケーション(VK−Analyzer Plus、株式会社キーエンス社製)を用いて一方の面に凹凸が形成されているか判定した。
2.炭素繊維配向指数の測定
炭素繊維不織布を幅1cm、長さ3cmにカットして試料とした。X線回折装置(4036A2型、理学電気社製)を用いて、0.05°のステップで、5〜60°の範囲を測定し、回折強度が最大になる角度を求めた。
回折強度が最大になる角度に検出器をセットして、試料を面内方向で180°回転させ、このときの回折強度の最大値と最小値の比(最大値/最小値)を炭素繊維配向指数とした。
3.凹部の見かけ密度測定
ガス拡散電極基材の、マイクロポーラス層が形成されているのと反対側の面を、レーザー顕微鏡(VK−9710、株式会社キーエンス社製)で観察し、形状解析アプリケーション(VK−Analyzer Plus、株式会社キーエンス社製)を用いて凹部の深さを測定した。続いて測定したガス拡散電極基材の厚みから凹部の深さを引いた凹部の厚みで、ガス拡散電極の目付を除して凹部の見かけ密度とした。
4.(002)面の半値幅評価
炭素繊維不織布を幅1cm、長さ3cmにカットして試料とした。X線回折装置(4036A2型、理学電気社製)を用いて、0.05°のステップで、5〜60°の範囲を測定し、回折強度が最大になるピークを得た。このピークの半値幅を(002)面の半値幅とした。
5.電解質膜の損傷評価
フッ素系電解質膜NafionXL(デュポン社製)の両面に、1cm×1cmにカットしたガス拡散電極基材を配置し、5MPaの圧力で挟んだ。次に、この2枚のガス拡散電極基材の間に0.2Vの電圧をかけ、電流を測定した。電流は、多く流れているほど、電解質膜が損傷していると評価した。
6.発電性能
フッ素系電解質膜Nafion212(デュポン社製)の両面に、白金担持炭素とNafionからなる触媒層(白金量0.2mg/cm)をホットプレスによって接合し、触媒層被覆電解質膜(CCM)を作成した。このCCMの両面にガス拡散電極基材を配して再びホットプレスを行い、膜電極接合体(MEA)とした。ガス拡散電極基材の周囲にガスケット(厚さ70μm)を配したMEAをシングルセル(25cm、平行流路)にセットした。
セル温度を80℃、水素と空気の露点を80℃とし、流量はそれぞれ250cc/分と1000cc/分、ガス出口は開放(無加圧)とし、1.0A/cmの電流密度で発電させ、そのときの電圧を測定した。
[実施例1]
PAN系耐炎糸のけん縮糸を数平均繊維長51mmに切断した後、カード、パラレルウエブとした後、500本/cmの針密度でニードルパンチ処理した。
この炭素繊維前駆体繊維不織布の一方の面に、一辺が300μmの正方形で、高さ78μmの凸部が分散形成され、該凸部のピッチがMD、CDとも0.5mmの金属製エンボスロールと、金属製のフラットロールを用い、エンボス加工を行った。エンボスロールおよびフラットロールの加熱温度は290℃、線圧は50kN/m、加工速度は50cm/分とした。エンボス加工後の見かけ密度は0.40g/cmだった。
次に、不活性雰囲気下、2400℃で1時間焼成することで、炭素繊維不織布を得た。
このように作製した炭素繊維不織布に、固形分濃度3wt%に調整したPTFEの水分散液をPTFE固形分付着量が5wt%になるよう含浸付与し、熱風乾燥機を用いて130℃で乾燥させ、380℃で10分間加熱することで撥水処理を施した。
次いで、この撥水処理を施した炭素繊維不織布の、エンボス加工時に賦形部材をマウントしていない面に、マイクロポーラス層(MPL)の付与を行った。まず、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製“デンカブラック”(登録商標))、PTFE樹脂(ダイキン工業(株)製“ポリフロン”(登録商標)D−1E)、界面活性剤(ナカライテスク(株)製“TRITON”(登録商標)X−100)、精製水を用い、アセチレンブラック/PTFE樹脂/界面活性剤/精製水=7.7質量部/2.5質量部/14質量部/75.6質量部の比で混合した塗液を調製した。その後、当該塗液を炭素繊維不織布の下面にダイコーターにより塗工し、120℃で10分加熱乾燥させた後、380℃で10分間焼結し、ガス拡散電極基材とした。
[実施例2]
凸部の幅と凹部の幅がいずれも250μmであるストライプ上のエンボスロールを用いてエンボス処理した以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材を得た。
[実施例3]
クロスレヤーを用いて積層角を45°にしたクロスウエブを、ドラフターで2.5倍に伸ばした以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材を得た。
[実施例4]
高さ33μmの凸部が分散形成されたエンボスロールを用いた以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材を得た。
[実施例5]
1500℃で焼成した以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材を得た。
[比較例1]
クロスレヤーを用いて積層角を45°にしたクロスウエブを使用した以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材を得た。
[比較例2]
エンボスロールの代わりに表面がフラットなカレンダーロールを用いた以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材を得た。
各実施例、比較例で作製したガス拡散電極基材の構成と、それらを用いたMEAの発電性能の損傷評価、評価結果評価の結果を表1に示す。
Figure 2018026343

Claims (10)

  1. 少なくとも一方の面に、凹部と凸部が配置されてなる凹凸パターンを有する炭素繊維不織布から本質的になるガス拡散電極基材であって、前記炭素繊維不織布の面内の炭素繊維配向指数が1.5以上、10以下であるガス拡散電極基材。
  2. 前記凹部の見かけ密度が0.5g/cm以上である、請求項1に記載のガス拡散電極基材。
  3. X線回折法において検出した前記炭素繊維不織布の(002)面の回折強度−回転角スペクトルの半値幅が2.7°以下である、請求項1または2に記載のガス拡散電極基材。
  4. 前記炭素繊維不織布を構成する炭素繊維の繊維長が5mm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  5. 前記炭素繊維不織布の目付が15g/m以上150g/m以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  6. 前記炭素繊維不織布の見かけ密度が0.10〜1.00g/cmである、請求項1〜5のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  7. さらにマイクロポーラス層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のガス拡散電極基材と、電解質膜とを含む膜電極接合体。
  9. 前記電解質膜の厚みが30μm以下である、請求項8に記載の膜電極接合体。
  10. 請求項8または9に記載の膜電極接合体を用いてなる固体高分子形燃料電池。
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