JP2018024955A - 合成繊維およびその製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明は過酷な延伸条件で製造される産業資材用に使用されるような合成繊維に対しても、ローラー上のタール生成を軽減し、ローラーなどの加熱体の洗浄周期が延長できることで生産性が向上でき、かつ糸切れ・毛羽を抑制した合成繊維を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で示される1種以上のアルデヒド化合物をCHO基として0.0005〜5ppm含有してなる合成繊維。【化1】(式中、Rは一価の基を示す。)【選択図】なし

Description

本発明は、合成繊維およびその製造方法に関するものである。
ポリアミド繊維は、機械的特性や化学的特性に優れ、衣料用途や産業用途に幅広く用いられている。産業用途においては、エアバッグ、タイヤコード、ロープ、ネット等に好適に用いられており、特にエアバッグ用途において有用に用いられている。
製糸技術の向上により、合成繊維の高強度化が図られ、かかる繊維を効率的かつ高収率で製造できるようになっている。最近の新技術によって、さらなる極限的な高強度ポリアミド繊維、例えば、9.5cN/dtex以上の強度を有するジャンボジェット機に用いられるラジアル用高強度ポリアミド繊維などが製造できるようになっている。
一方、従来、延伸ローラー上の汚れを軽減し、生産性を向上させるため、臭素化合物の存在下で液相重合して得られたポリアミドにヨウ素化合物および銅化合物を添加重合したチップ(特許文献1)などが提案されている。
また、紡糸油剤として多価エステル化合物、アニオン界面活性剤及び2種類のヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する処理剤(特許文献2)、多価エステル化合物及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する処理剤(特許文献3)、チオジプロピオン酸ジアルキル等の含硫黄ジエステル化合物、ホスフェート化合物及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する処理剤(特許文献4)、多価エステル化合物、チオエーテル基を有するエステル化合物、二級スルホネート化合物、有機ホスフェート化合物及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する処理剤(特許文献5)、チオジプロピオン酸ジアルキル等の含硫黄ジエステル化合物、2種類のヒンダードフェノール系酸化防止剤及びホスフェート金属塩を含有する処理剤(特許文献6)、芳香族エステル化合物、有機カルボン酸及び各種酸化防止剤を含有する処理剤(特許文献7)、不飽和脂肪酸を用いない(ヨウ素価が10未満)、処理剤(特許文献8)などが提案されている。
特開2002―241606号公報 特開昭59―211680号公報 特開平5―140870号公報 特開平7―216735号公報 特開平8―120563号公報 特開平10―325074号公報 特開2004―292961号公報 特開2012―92481号公報
高強度ポリアミド繊維のうち例えばエアバッグ用として好適とされる極細繊維、扁平断面繊維などは、製織時にトラブルの原因となる毛羽の少ない高品位繊維などが求められる。このように要求を満足させるためには、製糸技術をより向上させる必要がある。
従来、合成繊維の製造工程において、糸切れ・毛羽を抑制するため、種々の紡糸油剤を目的に応じて使用されている。近年では生産性および品質向上をはかるべく、紡糸、延伸速度が速くなり、それに伴い、延伸ローラーなどの加熱体の温度も高くなっている。なかでも、産業資材用合成繊維の場合には、高速化と同時に高倍率延伸が行われるため、より高温での熱処理が行われるため、ポリマーと紡糸油剤の加熱劣化が促進され、延伸ローラー上に生成したタールにより延伸工程において糸切れ・毛羽が発生し易く、そのためローラーなどの加熱体の洗浄周期が短くなり生産性が低下するという問題がある。このことから紡糸油剤にはそれぞれ加熱劣化を抑制し、ローラー上のタールの生成を軽減できるもの、かつ生成するタールの硬度が低く、糸へのダメージが少ないものが望まれる。
しかしながら、特許文献1または特許文献2〜8に記載の処理剤を紡糸油剤として使用するだけでは、近年の過酷な延伸条件で製造される産業資材用合成繊維において、ローラー上のタール生成が軽減できず加熱体の洗浄周期が短くなり生産性が低下するという問題あった。また、特許文献2〜6に記載の処理剤では、多くのヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する処理剤を紡糸油剤として使用すると、ローラー上で生成するタールの硬度が高いため、糸切れ・毛羽を発生させる問題があった。
本発明は、かかる要求に応える合成繊維およびその製造方法に関する。
本発明は、上述した従来技術におけるそれぞれの問題点を同時に解決したものであり、過酷な延伸条件で製造される産業資材用に使用されるような合成繊維に対しても、ローラー上のタール生成を軽減し、ローラーなどの加熱体の洗浄周期が延長できることで生産性が向上でき、かつ糸切れ・毛羽を抑制した合成繊維を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討したものであり、以下の構成からなる。
(1)下記一般式(1)で示される1種以上のアルデヒド化合物をCHO基として0.0005〜5ppm含有してなる合成繊維。
Figure 2018024955
(式中、Rは一価の基を示す。)
(2)合成繊維に対し、アルデヒド化合物を含む紡糸油剤が0.1〜2.0重量%付着したものである上記1項に記載の合成繊維。
(3)上記1〜2項いずれかに記載の合成繊維であって、かつ合成繊維のポリマー成分がポリカプラミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、およびポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、それらのポリマーを主成分とする共重合ポリマー、およびこれらのブレンドポリマーから選択されたポリマーである。
(4)上記1〜3項のいずれかに記載の合成繊維であって、かつ繊度が1 0 0 〜 3 0 0 0 d t e x 、強度が6 〜 1 0 c N / d t e x の高強度マルチフィラメントであることを特徴とする合成繊維。
(5)アルデヒド化合物をCHO基として10〜2000ppm含有する紡糸油剤を付与して、延伸することを特徴とする合成繊維の製造方法。
(6)上記1〜4項のいずれかに記載の合成繊維を用いて織成されている織物。
(7)上記6項記載の織物で構成されるエアバッグ用基布。
本発明の合成繊維は、過酷な延伸条件でもローラー上のタール生成が少なく洗浄を周期が延長できることで生産性が向上でき、かつ生成するタールの硬度が低いことから糸切れ・毛羽を抑制した合成繊維を提供することが可能である。
図1は試料からアルデヒド化合物を捕集するための装置の概念図である。
本発明の合成繊維は、機械的特性や化学的特性に優れ、衣料用途や産業用途に幅広く用いられている。産業用途においては、エアバッグ、タイヤコード、ロープ、ネット等に好適に用いられているが、特にエアバッグ用基布に用いるのが好ましい。
本発明における合成繊維は、アルデヒド化合物をCHO量として合成繊維中に0.0005〜5ppm含有するものである。より好ましくは0.03〜2ppmである。0.0005ppm未満では、ローラー上のタール生成が軽減するには不十分であり、5ppmを超えると含有させることが困難である。
本発明において上記アルデヒド化合物は合成繊維を構成するポリマー中に存在していてもよいし、合成繊維の表面に付着していてもよいが、その合計量は上記範囲内となるよう制御される。なお、ローラー汚れをより功率的に抑制できる点から表面に存在することがより好ましい。
本発明で用いるアルデヒド化合物は、一般式(1)に示される化合物(A)からなる群から選ばれる1種以上のものである。次に一例を列挙するがこの限りではない。
Figure 2018024955
一般式(1)において、Rは一価の基であり、好ましくは有機基である。なかでも例えば飽和脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基等が好ましく挙げられる。
化合物(A)の具体例としては、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプタナール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ペリルアルデヒド、トリデカンアルデヒド、アクリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、バニルアルデヒドなどが挙げられる。
紡糸油剤に使用するエステル成分、ポリエーテル成分が酸化分解することで生成するアルデヒド化合物であってもよい。
なかでも沸点が100℃以上のアルデヒド化合物であるものが好ましく、沸点が200℃以上のアルデヒド化合物がより好ましい。具体的にはデシルアルデヒド、ペリルアルデヒド、トリデカンアルデヒド、シンナムアルデヒド、バニルアルデヒドが特に好ましい。
本発明の合成繊維としては、ポリアミド繊維またはポリエステル繊維が好ましい。
ポリアミド繊維を構成するポリアミドとしては、例えばポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリキシリレンフタラミドやこれらの共重合体、ブレンドポリマーが挙げられる。なかでもポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、およびポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、それらのポリマーを主成分とする共重合ポリマー、およびこれらのブレンドポリマーから選択されたポリマーが好ましい。
共重合ポリアミドを用いる場合の共重合成分としては、ε―カプロアミド、ヘキサメチレンアジパミド、テトラメチレンアジパミド、ヘキサメチレンセバカミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド、テトラメチレンテレフタルアミド、およびキシリレンフタラミドなどから選択される2種以上を挙げることができる。具体的にはナイロン6とナイロン66の共重合ポリアミド、ナイロン6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸、アミン等を共重合させた共重合ポリアミド、およびそのブレンドポリマーからなることが好ましい。
ポリエステル繊維を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ乳酸ポリマー等、およびそれらのポリマーを主成分とする共重合ポリマー、およびブレンドポリマーからなることが好ましい。
このうち、耐衝撃性と耐熱性に優れたナイロン66が本発明の実施には最も好ましい。本発明の合成繊維がポリアミド繊維である場合、ポリマー中、ポリアミド成分が95重量%以上であることが好ましく、97重量%以上であることがより好ましい。ポリアミド成分が95重量%以上であることによりポリアミドの良好な耐熱性が十分に発揮される。
また、強度の高いポリアミド繊維とする場合、原料としてのポリアミドは固相重合等により高粘度化して用いることが好ましい。
このようなポリアミドチップには、必要に応じて耐候剤、耐熱剤、酸化防止剤などの添加剤を添加し、溶融紡糸することができる。添加剤は一部または全部を重合時に添加してもよく、その他の方法で混合してもよい。
本発明の合成繊維に用いられるポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、高強度かつ高品位を容易に得るため、3.2以上であることが好ましく、3.6〜4.0であることがより好ましい。上限のより好ましい範囲としては3.8である。
紡糸工程では、繊維の平滑性、帯電防止、糸条の集束性のため油剤成分を付与することができる。
本発明において紡糸油剤としては、通常の平滑剤、界面活性剤を主成分とし、任意成分としてその他添加剤等を含有する紡糸油剤を用いることができる。
上記紡糸油剤としては水系エマルション、非水系処理剤どちらでもよいが、高強度かつ高品位を容易に得るため、非水系処理剤が好ましい。非水系処理剤の場合には、希釈剤として鉱物油を使用し、適宜目的の濃度になるよう調整がすることもできる。
また、本発明において合成繊維の表面にアルデヒド化合物を付着させる場合には、上記紡糸油剤として上述のアルデヒド化合物を含む紡糸油剤を用いる方法が好ましい。
上記紡糸油剤に用いる成分としては、通常の紡糸油剤成分を用いることができ、平滑剤、界面活性剤およびその他成分として用いるエステル成分、ポリエーテル成分、添加剤など適宜、選択、組み合わせを行い調合できる。
また紡糸油剤中にアルデヒド化合物を含有させる場合、紡糸油剤中にアルデヒド化合物を添加して含ませていてもよいし、エステル成分、ポリエーテル成分を加熱または調合後の紡糸油剤を加熱する等の方法で成分を酸化させ、アルデヒド化合物を生成させてもよい。なお、アルデヒド化合物の含有量は、製糸後の合成繊維に対する含有量がCHO基の含有量として本発明で規定する範囲内となるよう調製される。
アルデヒド化合物を含む紡糸油剤を用いる場合、紡糸油剤中のアルデヒド化合物量は、油剤安定性の点からCHO基として10〜2000ppmであることが好ましく、特に30〜500ppmであることが好ましい。
上記平滑剤としては、二価脂肪酸エステル化合物、エチレンオキサイドを含有する二価脂肪酸エステル化合物等が好ましく挙げられる。なかでも分子量が600〜1000のものが好ましい。さらにはアルキレンオキサイドを含有しない二価脂肪酸エステル化合物、エチレンオキサイドを20〜50重量%含有する二価脂肪酸エステル化合物が好ましい。
上記界面活性剤としてはアルコールアルキレンオキサイド付加エステル化合物(なかでも分子量が1500〜2500のものが好ましい)、アルキレンオキサイドを含有する高級アルコールアルキレンオキサイド付加物(なかでも分子量が1000〜2000のものが好ましい)などが挙げられる。前記高級アルキレンオキサイドを含有する高級アルコールアルキレンオキサイド付加物において、アルキレンオキサイドの含有量は5〜20重量%であることが好ましい。 紡糸油剤中平滑剤は50〜80重量%、界面活性剤は10〜40重量%程度含有することが好ましく、さらに好ましくは、紡糸油剤中平滑剤は60〜80重量%、界面活性剤は15〜30重量%程度含有することである。
糸条とローラーとの摩擦低減の点からさらに好ましくは、分子量が600〜1000でアルキレンオキサイドを含有しない二価脂肪酸エステル化合物を35〜45重量%、分子量が600〜1000でエチレンオキサイドを20〜50重量%含有する二価脂肪酸エステル化合物を25〜35重量%、分子量が1500〜2500でアルコールアルキレンオキサイド付加エステル化合物を5〜20重量%および分子量が1000〜2000でアルキレンオキサイドを5〜20重量%含有する高級アルコールアルキレンオキサイド付加物を5〜20重量%の割合で混合した混合物を90重量%以上の主成分として含有するものである。
その他の添加剤としては、帯電防止剤、極圧剤、シリコーン等を添加することができる。
これらを適宜調製し、紡糸油剤として付与し、本発明で規定する範囲の合成繊維とすることが好ましい。
糸条に紡糸油剤を付与する方法としてはオイリングローラーやガイド給油装置を用いて紡糸工程で付与すればよい。
本発明における合成繊維は、油剤成分の付着量が0.1〜2.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2重量%である。かかる範囲であれば、製糸時に油剤切れによる糸切れ・毛羽の発生が抑制でき、紡糸油剤の飛散による汚れも抑制できる。本発明においてはアルデヒド化合物を含む紡糸油剤を使用する場合もその付着量は0.1〜2.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2重量%である。これによりローラー上のタール生成を軽減し、ローラーなどの加熱体の洗浄周期が延長をすることができるとともに繊維の品質を良好なものとすることができる。
本発明における合成繊維は、合成繊維中のアルデヒド含有量をCHO基として本発明で規定する特定量含有せしめるよう制御する。アルデヒド化合物のCHO量が合成繊維に対し、0.0005から5ppmであることが好ましい。
かかる範囲であれば、合成繊維中に存在するアルデヒド化合物がローラー上のタール生成を軽減し、ローラーなどの加熱体の洗浄周期が延長できることで生産性が向上でき、かつ糸切れ・毛羽を抑制した高強度合成繊維を提供することができる。かかる理由はさだかではないが、本発明者らはこの原理を以下のように推測する。延伸ローラーなどの加熱体上において、合成繊維中にアルデヒド化合部物を含有することで、合成繊維の酸化劣化を誘発する酸素と反応し、すなわち酸化防止剤として機能し、熱劣化を抑制する。また、その後の高次工程における熱履歴に対しても酸化防止剤として機能し得ると考えられる。
特にアルデヒド化合物を含む紡糸油剤を付着させた合成繊維はアルデヒド化合物が合成繊維の表面付近に比較的多く存在することになるので、ローラー上のタール生成がよりいっそう軽減でき、紡糸油剤にアルデヒド化合物を加えたときでも油剤が分離することなく安定性が良いのでよりいっそう好ましい。このような作用により、結果として糸切れ、毛羽が抑制された合成繊維を得ることができる。
高強度、高伸度の合成繊維を得ようとする場合、過酷な延伸条件・熱処理条件を採用する必要があり、糸切れ、毛羽が極めて発生しやすいが、本発明により、かかる過酷な延伸条件・熱処理条件を施しても糸切れ、毛羽の発生が高度に抑制された合成繊維が得られるのである。
本発明の合成繊維の製造方法について、産業用ナイロン66繊維の公知の溶融製糸方法の一態様を例に説明するが、本発明で規定する合成繊維が得られる限りこれに限定されるものではない。
硫酸相対粘度3.2以上のナイロン66チップを用いてエクストルーダー型紡糸機で溶融紡糸する、紡糸280〜310℃とし、口金より吐出して紡糸する。紡出糸条は、常温の10〜25℃の冷風装置によって冷却固化される。ついで、該糸条は糸道規制ガイドによって集束された後、紡糸油剤(平滑剤、界面活性剤を主成分とする非水系処理剤が好ましい)をオイリング装置にて付与され、ゴデットローラー群に捲回させ、所定の速度で引き取り、引き揃えられる。引き取り速度は300〜3000m/分である。引取糸条は一旦巻き取ることなく、順次高速で回転する複数の対ゴデットローラーに捲回させ、該ローラーの速度差によって延伸する。通常2段以上の多段延伸をしたのち、弛緩処理して巻き取る。延伸はガラス転移温度以上で熱延伸を行い、最後の延伸および熱セット温度は通常230〜250℃の高温で行う。延伸倍率は通常2〜6倍の範囲で行う。なお。巻取速度は通常2000〜6000m/分であり、巻取張力は20〜250gfの条件下で巻取装置にてチーズ状に巻き上げる。
この際前述のとおり、合成繊維に対しアルデヒド化合物を0.0005〜5ppm含有するように制御することが好ましい。特に0.03〜2ppmが好ましい。
本発明の合成繊維の繊度は10〜3000dtexで好ましく用いることができる。産業用に用いる場合には、100〜3000dtexであることが好ましく、150〜2000dtexであることが好ましい。また、通常マルチフィラメントであり、フィラメント数5〜500本であることが好ましく、より好ましくは10〜300本である。
また、本発明は強度の高い合成繊維において特に有用である。具体的には強度が6〜10cN/dtex、好ましくは7〜9.5cN/dtexである。また伸度としては、製糸工程での毛羽・糸切れの増加、製織工程での毛羽発生の点から20〜35%であることが好ましく、20〜30%であることがより好ましい。
主に高強度で高品位のエアバッグ用合成繊維に適用すると、その効果を最大に発現させることができる。特に8.0cN/dtex以上の高強度の合成繊維用として用いると、糸切れや毛羽が少ない製品を高収率で製造することができる。また、伸度としては、20〜30%であることがエアバッグ用基布のタフネス性、破断仕事量を増大させる点から好ましく、さらには20〜25%であることが好ましい。また、エアバッグ用繊維など、特に単繊維繊度が3dtex以下の極細繊度繊維や扁平断面繊維のような従来安定な製糸が難しいとされていた品種についても、糸切れなく、毛羽の少ない製品を高収率で製造することができる。
以下、実施例により、本発明の態様をより具体的に説明する。本発明における各特性の定義および測定方法は以下の通りである。
(1)硫酸相対粘度:試料0.25gを98%濃硫酸25ccに溶解し、25℃恒温槽の一定温度下において、オスワルド粘度計を用いて測定した。相対粘度は、ポリマー溶液と硫酸の落下秒数の比から求めた。測定は5回行い、平均をとった。
(2)総繊度:JIS L1013(2010) 8.3.1 B法に示される方法により、正量繊度を測定して総繊度とした。
(3)強度・伸度:JIS L1013(2010) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長形の条件で測定した。試料をオリエンテック社製 “テンシロン”(TENSILON)UCT―100を用いて、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS―S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
(4)アルデヒド化合物量(紡糸油剤):島津製作所製 液体クロマトグラフィー(型式UFLC prominence)を使用し、アセトアルデヒドを用い検量線を作成し、内部標準法にて重量比で算出し、アルデヒド化合物量をCHO基として算出した。試料としては、紡糸油剤を50g使用し、上記測定に供した。
(5)アルデヒド化合物量(合成繊維):試料からアルデヒド化合物を捕集するための方法を図1を用いて説明する。図1は試料からアルデヒド化合物を捕集するための装置の概念図である。試料1として合成繊維を100gを精秤して使用する。この合成繊維を1つ口コック付きテドラーバッグ2(容量10リットル)内に入れ密閉する。バッグ内に3リットルの窒素ガスを投入し、脱気する。この作業を2回繰り返したのち、20℃の窒素ガスを4リットル入れ密閉する。試料の入ったテドラーバッグをヤマト科学製恒温層3(Constant Temperature Oven DKM600)に入れ80℃、3時間加熱する。バッグにガス捕集するため、チューブ4(ポリテトラフルオロエチレン製)、DNPHカートリッジ5、GLサイエンス社製積算流量計6(Sampling pump SP208Dual II)を図1に示すとおりに接続する。テドラーバッグのコックを開きバッグ内のガス捕集を開始する。ガスの補集は流速500ml/分で2リットル行った。試料から揮発した化学物量Wは下記の式で算出した。また、補修された化学物については、島津製作所製 液体クロマトグラフィー(型式UFLC prominence)を使用し、アルデヒド化合物量をCHO基として算出した。
W=W1×Q0/Q1
W:試料からの揮発量(g)
W1:DNPHカートリッジで捕集された化学物量(g)
Q0:最初に密閉した窒素ガス量(4リットル)
Q1:80℃で捕集した窒素ガス(2リットル)を20℃換算した量
液体クロマトグラフィーの測定は下記の条件で行った。
カラム:Inertsil ODS―SP 50mm×4.6mm 粒径 3μm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル/水=80/20
移動相流量:0.8ml/分
検出波長:360nm
注入量:8μl
(6)油剤安定性:25℃下において油剤成分の分離および沈殿物の有無を目視で確認した。
判断基準は下記のとおりとした。
良好:油剤成分が分離および沈殿が確認されない。
不良:油剤成分が分離および沈殿が確認できる。
(7)タール化率:各紡糸油剤0.5gをステンレスシャーレに精秤し、230℃の循風乾燥機に10時間放置後、25℃まで冷却し、アセトン10mlを入れ10分間放置した後にアセトン可溶分を除去する作業を2回実施した後の残渣物の重量をタール化率(%)とした。
(8)鉛筆硬度:各紡糸油剤0.5gをステンレスシャーレに精秤し、230℃の循風乾燥機に10時間放置後、ステンレスシャーレを230℃のホットプレート上に置き、残渣物の硬さを鉛筆により測定した。硬度はJISK560―5―4(1999)「塗料一般試験方法―第5部:塗膜の機械的性質―第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠し手かき法によって測定した。
(9)汚れ拭き取り性:1gのガーゼにグリセリンと炭酸カリウム50%水溶液を重量比1:1で調合したものを1g染みこませ、汚れたローラー(タテ×ヨコ=100mm×30mm)の範囲を往復させることで汚れが拭き取り除去できたその回数を測定した。
(実施例1〜6・比較例1〜5)
液相重合で得られたナイロン66チップを酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマー重量に対し、銅として、68ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマーチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、バッチ式固相重合装置を用いて固相重合させて硫酸相対粘度が3.8のナイロン66ペレットを得た。
得られたナイロン66ペレットを直径110mmのエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が470dtexの糸条が得られるように吐出量を調整し、紡糸温度は295℃で行い、紡糸パック内で40μmの粗さを有する金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数72の口金を通して紡糸した。口金直下には、250℃の温度に加熱した長さ20cmの加熱筒を設け、紡出糸は該加熱筒の高温雰囲気中を通過させた後、20℃の温度の冷風を吹き付け冷却固化した。冷却固化した糸条には、表の組成からなる非水系処理剤を付与し、紡糸引き取りローラーに捲回し、紡糸糸条を引き取った。次いで該引き取り糸条は一旦巻き取ることなく、連続して多段熱延伸して、470dtex―72フィラメントの高強度ナイロン66繊維を得た。延伸配分は、5%のプレストレッチ/1段延伸:2.9倍/2段延伸:1.5倍とし、総合延伸倍率:4.5倍で延伸した。延伸糸条は、引き続き9%の弛緩を行った後、インターレーサーにて交絡を与えて巻き取った。各ローラーの表面温度は、引き取りローラーが常温、給糸ローラーが40℃、第1延伸ローラーが140℃、第2延伸ローラーは230℃、弛緩ローラーが150℃となるよう設定した。また、原糸付着油分量が1.0重量%となるように非水系処理剤の付与量を調整した。交絡処理は、糸条の交絡数が17個/mとなるようインターレーサーの噴射する空気の圧力を調整した。表に示すそれぞれの成分を調合し、紡糸油剤中のCHO量を調整するためにトリデカンアルデヒドを添加した紡糸油剤を使用した。ポリマー重量で15トン分のナイロン66繊維をローラー洗浄せずに製糸し、糸切れ回数、毛羽個数、汚れ拭き取り性を評価し、結果を表1に示す。
Figure 2018024955
Figure 2018024955
1.試料
2.1つ口コック付きテドラーバッグ
3.恒温槽
4.チューブ
5.DNPHカートリッジ
6.積算流量計

Claims (7)

  1. 合成繊維中に下記一般式(1)で示される1種以上のアルデヒド化合物をCHO基として0.0005〜5ppm含有してなる合成繊維。
    Figure 2018024955
    (式中、Rは一価の基を示す。)
  2. 合成繊維に対し、アルデヒド化合物を含む紡糸油剤が0.1〜2.0重量%付着したものである請求項1に記載の合成繊維。
  3. 請求項1〜2いずれかに記載の合成繊維であって、かつ合成繊維のポリマー成分がポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、およびポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、それらのポリマーを主成分とする共重合ポリマー、およびこれらのブレンドポリマーから選択されたポリマーからなる合成繊維。
  4. 請求項1〜2いずれかに記載の合成繊維であって、かつ繊度が100〜3000dte x 、強度が6〜10cN/dtexのマルチフィラメントである合成繊維。
  5. アルデヒド化合物をCHO基として10〜2000ppm含有する紡糸油剤を付与して、製糸することを特徴とする合成繊維の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の合成繊維を用いて織成されている織物。
  7. 請求項6記載の織物で構成されるエアバッグ用基布。
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