以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。下記、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<全体図>
図1は、本発明の印刷システムによって形成される色調整判断方法を実現可能なシステムの全体説明図である。
図1において、DFE(Digital Front End)2から信号が送られる印刷システム1で、記録媒体P上に色調整用画像(評価用の画像、検査用の画像)を形成する。この際、印刷機構(画像形成部)120,160(図2参照)の複数のヘッド(図3参照)から、所定の色のインク滴(液滴)が吐出されることで、色調整用画像が記録媒体上に形成され、色調整用画像が形成された記録媒体Pが出力される。インクは液体の例であり、例えば液体は水性であっても、油性であっても良い。また、UV等で硬化する光硬化性の液体であっても良い。さらに染料を含んでいても顔料を含んでいても良い。
作業者(オペレータ、カスタマーエンジニア等)6は、記録媒体P上の色調整用の画像の色を、測色計5を用いて色を測定し(評価し)、色情報を取得する。
測色計5では、記録媒体P上の各色の色調整用画像の部分の、各波長の分光反射率を求め、色情報として、測色値L*a*b*、及びKCMY濃度情報(ベタ濃度)を測定する。
なお、色情報は分光反射率を経ずに直接測色値を求めても良い。さらに測色値はL*a*b*値でなく均等色空間の値又は均等色空間に変換できる値であればどのような値でも良い。例えばCIE LuvにおけるL*u*v*値やCIE XYZ値等であっても良い。以下では便宜的に測色値をCIE LabにおけるL*a*b*値として記載し、一部L*u*v*値での説明を追記する。
さらに、KCMY濃度情報も、分光反射率を経ずに直接求めても良い。さらに、例えば各色のL*a*b*値やL*u*v*値におけるL*値を濃度としても良い。また、インクの色に関連付けられた濃度であればK(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の四色の情報に限られない。例えばバイオレットやオレンジのインクを備える装置であればバイオレットやオレンジのベタ濃度も測定しても良い。
測色計5で測定された色情報が、情報処理装置3へ転送される。あるいは、測色計5で測定した色情報を、作業者6が手動で情報処理装置3へ入力する。
情報処理装置3は、転送された又は手入力により入力された色情報から、色ムラ手動調整用の各ヘッドH1Y〜H7Y等(図3参照)やヘッド列HC1〜HC7の調整値を算出して表示する。情報処理装置3は、作業者6が確認可能で、演算可能な端末であって、パーソナルコンピューター、タブレット、スマートフォン、他の専用の無線端末等である。
この際、情報処理装置3には、本発明の色調整判断方法が実行可能な色調整判断プログラムを、予めインストールしておく。例えば、この色調整判断プログラムは、CD−ROM4等によって、適用可能としてもよいし、インターネット等による電気通信回線により配信されてもよい。
そして、情報処理装置3は、算出した調整値を、DFE2の入力部201又は印刷システム1の入力部101へ転送する。あるいは、情報処理装置3に表示されている調整値を作業者6が、入力部201又は入力部101へ手動で入力してもよい。
<印刷システム>
図2は、印刷システム1の全体概略図を示す。本発明の一実施形態に係る印刷システム1の一例として、インクジェット連帳機について示す。
印刷システム1は、給紙機構110、表面側印刷機構120、後乾燥機構130、画像検査機構140、反転機構150、裏面側印刷機構160、後乾燥機構170、画像検査機構180、及び巻き取り装置190を備える。
紙やフィルム等からなる記録媒体Pは、給紙機構110であるアンワインダーにより巻き出され、表面(第1面)の印刷を行う印刷機構120に到達する。
印刷機構120の前段には、記録媒体Pの記録面に対して、例えばインクの浸透性を制御するような処理液(前処理液)を塗布する機構が挿入されてもよい。
印刷機構120を通過した記録媒体Pは、表面側の乾燥装置である乾燥機構130を抜け、画像検査機構140を通過する。
本実施形態では、乾燥機構130が、記録媒体Pの裏面から接触加熱を行うヒートドラム131である例を説明する。ヒートドラム131での加熱温度は、印刷速度やインクの乾燥性にもよるが、50℃〜100℃程度に設定される。乾燥機構130はこの他にも、温風、赤外線、加圧、紫外線、高周波といった手段に変えたり、これらの機構を組み合わせたりすることも可能である。また、インクが硬化性インクの場合には、乾燥機構の代わりに硬化機構を有しても良い。
乾燥機構130の後段に配置された画像検査機構(自動検査機構)140は、色ムラ調整のための自動検査を行う。画像検査機構140は、スキャナーなどの画像の色情報を読み込む機構と、読み取った色情報の演算を行う制御機構を備えている。画像検査機構(色検査機構)140のスキャナーは、色ムラの自動調整のために色調整用画像の色情報を読み込む。読み込んだ画像の色情報は画像検査機構140内の制御機構、印刷システム1内の制御部、又は接続されているコンピュータであるDFE2のいずれかで演算処理される。画像検査機構140はインラインで使用することも可能だが、オフラインで使用しても構わない。
次に、記録媒体Pは表裏を反転させる反転機構150を通過し、裏面(第2面)を印刷する印刷機構160、裏面を乾燥させる乾燥機構170、及び画像検査機構180を通過する。
裏面の色ムラの調整は、上述の画像検査機構140と同様の機能を有する画像検査機構180で行われる。
最後に、記録媒体Pは、印刷後の記録媒体Pを加工する後加工装置の一例である巻き取り装置(リワインダー)190によって、巻き取られる。印刷後の後加工処理の内容によっては、リワインダーの代わりに、カッターを用いて紙を裁断する切断動作を含む搬出工程が実施されてもよい。
<ヘッド構成>
図3は、本発明の実施形態に係る記録ヘッドをラインヘッド構成で配置した一例を示す底面図である。詳しくは、図2に示す印刷機構120,160において、記録ヘッドを千鳥状に複数個並べた状態を下から見た平面図である。
記録媒体Pは、図2に示す矢印の方向に、複数のローラによって印刷機構120,160に搬送される。印刷機構120と160はほぼ同じ構成であるため、下記、印刷機構120を用いて説明する。印刷機構120には、図3に示すように、シングルパス方式のインクジェットラインヘッドで構成されたヘッドユニット121が設置されている。
このヘッドユニット121は、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の基本色のインク滴を吐出し、記録媒体P上に画像を形成する。また、ヘッドユニット121として、特定の色(特色)であるオレンジやバイオレット、光沢性の付与やその他の処理を行うオーバーコート用の液滴を吐出するヘッドを、さらに設けてもよい。
ヘッドユニット121は画像形成可能な記録媒体の幅以上のサイズが必要であるため、インク滴が吐出される多数のノズル孔(ノズル)122を列状に形成したインクジェット記録ヘッドを複数つなぎ合わせて構成されている。図3では、イエローヘッドユニット121Yは複数のヘッド(記録ヘッド)H1Y〜H7Yから構成されている。マゼンタヘッドユニット121M、シアンヘッドユニット121C、ブラックヘッドユニット121Kもそれぞれ複数のヘッドから構成されている。
ヘッドユニット121は、記録媒体Pが搬送される経路上から退避する(離間させる)ことが可能であり、退避した状態で、ノズル面のクリーニングや増粘したインクの吐出を行うメンテナンス動作が行われる。
各ヘッドユニット121では、複数のインクジェット記録ヘッドが、平板状のベースフレーム123に、記録媒体Pの搬送方向と直交する方向に2列、合計で7個千鳥状に配列され、各インクジェット記録ヘッド17の両端部がネジ124a,124bでベースフレーム123に固定されている。
また、各インクジェット記録ヘッドは、3箇所の位置決め面125a,125b,125c(本図では黒丸として表示)で主走査方向(記録媒体搬送方向に対して垂直方向)及び副走査方向(記録媒体搬送方向)の位置が決められている。
本実施形態では図3に示すように、異なる色、例えばK,C,M,Yの4色分のインクジェット記録ヘッドユニット121K,121C,121M,121Yが記録媒体Pの搬送方向に沿って配置され、本体フレーム(不図示)にネジで固定されている。
これらの複数のヘッドやノズルには吐出特性をはじめとしたバラツキがあるため、印刷した結果は吐出したヘッド間、ヘッド内で色差が発生する。よって色ムラを調整する色ムラ調整が必要である。
また、搬送方向に並んで配置された複数のヘッド(例えばヘッドH1Y、H1M、H1C、H1K)は異なるインクを吐出することで記録媒体上に二次色や三次色を形成することが出来る。これらの搬送方向の列を、便宜的にヘッド列HC1、ヘッド列HC2、ヘッド列HC3、ヘッド列HC4、ヘッド列HC5、ヘッド列HC6、ヘッド列HC7として記載する。
<情報処理装置>
図4は、情報処理装置3のハードウエアブロック図である。図4に示すように、情報処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)31、HDD(Hard Disk Drive)32、RAM(Random Access Memory)33、ROM(Read Only Memory)34、表示装置35、入力装置36、CD−ROMドライバ37、外部インタフェース38、及び通信インタフェース39などを備え、それぞれがバス30で相互に接続されている。
ドライブ装置の一例であるCD−ROMドライバ37は、着脱可能な記録媒体であるCD−ROM4とのインタフェースである。これにより、情報処理装置3は、CD−ROMドライバ37を介して、CD−ROM4等の記憶媒体から、読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
本発明の実施形態に係る色調整判断プログラムは、CD−ROM4やUSB保存装置などの記憶媒体により記憶され、CD−ROMドライバ37やUSBドライバを介して、情報処理装置3により読み取り可能にすることができる。あるいは、色調整判断プログラムをHDD32へインストールしてもよい。
HDD32は、各種プログラム及びデータを格納している不揮発性の記憶装置である。格納されるプログラム及びデータには、例えば情報処理装置3全体を制御する情報処理システム(例えば「Windows(登録商標)」や「UNIX(登録商標)」などの基本ソフトウェアであるOS(Operating System)、及び情報処理システム上において各種機能(例えば「文書作成・表作成・編集機能」)を提供するアプリケーションなどがある。
例えば、本発明の実施形態に係る色調整判断プログラムも表作成機能や演算機能のアプリケーションの一部を利用する。またHDD32は、格納している上記プログラム及びデータを、所定のファイルシステム及び/又はDB(Data Base)により管理している。
入力装置36は、キーボード及びマウスなどを含み、情報処理装置3に各操作信号を入力するのに用いられる。
外部インタフェース38は、有線接続により外部装置と接続するインタフェースであって、例えばUSBドライバである。本実施形態では、外部インタフェース38は、測色計5と、配線(例えばUSBケーブル)51を介して接続可能である。この場合、情報処理装置3に、配線51を介して、測色計5で測定した色情報が転送される。なお、記憶媒体が、USBの場合は、USBドライバである外部インタフェース38を介して色調整判断プログラムを実行してもよい。
表示装置35は、ディスプレイなどを含み、情報処理装置3による処理結果(例えば「印刷結果」)や、GUI(Graphical User Interface)(例えば「色変換に係る設定画面」)、後述する図10、図11、図15、図16などの、測色値などの色情報、演算中の値(KCMY濃度、色相角)、調整値などを表示する。
通信インタフェース39は、無線接続により、印刷システム1又はDFE2と、接続可能なインタフェースである。通信インタフェース39を介して、情報処理装置3は、取得した、色情報に基づいて演算した演算結果(調整対象ヘッドや調整値)を、印刷システム1又はDFE2へ転送する。
ROM34は、電源を切っても内部データを保持することができる不揮発性の半導体メモリである。ROM34には、情報処理装置3が起動されるときに実行されるBIOS(Basic Input/Output System)や、情報処理装置3のシステム設定及びネットワーク関連設定などのデータが格納されている。
RAM33は、上記各種記憶装置から読み出されたプログラム及びデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。
CPU31は、上記RAM33上に読み出したプログラムを実行することにより、情報処理装置3の全体制御及び各種搭載機能の動作を実現する。
情報処理装置3では、上記ハードウエア構成により、例えばHDD32からRAM33上に読み出したプリンタドライバやアプリケーションに係るプログラムをCPU31により実行することで、色調整用の調整値の演算・送信処理を行うことができる。
図5は、情報処理装置3の機能ブロック図である。図5は、図4のハードウエア構成で実行可能な機能を示す。
情報処理装置3は、機能部として、測色値取得部301、色差算出部302、一次色ターゲット色差記憶部303、色差・一次色ターゲット色差比較部304、二次色ターゲット色差記憶部305、及び色差・二次色ターゲット色差比較部306を備える。色差・一次色ターゲット色差比較部304及び色差・二次色ターゲット色差比較部306は、比較結果に基づいて色調整が必要か否かを判断する調整有無判断部として機能する。
また、情報処理装置3は、濃度値取得部311、濃度平均値算出部312、濃度差算出部313、調整対象ヘッド特定部314、及び調整値設定部315を備える。
さらに、情報処理装置3は、色相角算出部321、色相角平均値算出部322、色相角差算出部323、調整対象ヘッド列特定部324、及びヘッド調整値設定部325を備える。
また、情報処理装置3には、データを出力する出力部331も設けられている。出力の例として少なくとも表示を含み、さらに送信を含んでもよい。この出力部331は、色調整判断方法を実行する際は、図2に示す、表示装置35と、データ通信を行う通信インタフェース39によって実現される。
また、情報処理装置3には、調整値を保存する調整値記憶部332が設けられていてもよい。
このような情報処理装置3において、測色値取得部301及び濃度値取得部311が、測色計5から色情報を取得する色情報取得部である。
図5において、K,C,M,Yの濃度(ベタ濃度)に関する機能部311〜315は一次色の調整に用い、色相角に関する機能部321〜325は二次色、三次色又は一次色に適用可能である。
ここで、一次色は、一種類のインクによって記録媒体上に生成される単色であって、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)である。一方、二次色は2種類以上のヘッドから2種類以上のインクを吐出して記録媒体上に生成される色であって、例えば、R(レッド)、G(グリーン),B(ブルー)である。もちろん、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等の色のインクが搭載された装置であれば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等も一次色となる。二次色とは、特定の色に限られる概念ではなく、インクを2種類用いて記録媒体上に生成される色のことを指す。
以後、内部の各構成要素の機能について、図6〜図11とともに詳述する。
<概略フロー>
図6に、本発明の測色工程を含む色調整判断方法が適用される概略フローを示す。色調整工程では、図6に示すように、ステップS1で自動調整をまず実施し、続いて、ステップS2で手動調整を実施して、色調整工程を終了する(ステップS3)。
ここで、同一ヘッド内でのノズルごとの色差は比較的小さいので、自動調整による調整が可能なことが多い。しかし、階調に対するスキャナーの読み取り感度が十分でないため、S1で示す自動調整を繰り返しても、色差が大きくなる傾向にあるヘッド間の色差が十分に読み取れず、正確に調整値の予測ができず、調整が難しい。下記、複数のヘッドが形成した画像間の色差を、ヘッド間色差として記載する。
そこで、S1の自動調整の後に残った、ヘッド間の色ムラを調整するため、S2で、手動調整によりヘッド間の色差を調整する。なお、手動調整にすると、作業者の負担が大きくなるため、自動調整によってヘッド内のムラを調整した後に、手動で色差の調整を行うのが好ましい。
このように、自動調整は主に同一ヘッド内の色調整を実行し、手動調整は異なるヘッド間の色調整を実行する。
従来の手動調整は、ヘッドの色調整を実施すべきかを作業者が目視で判断していた。そのため、調整の精度は作業者の技量に依存し、ターゲットとなるヘッド間色差を達成することができない場合もあった。また、ターゲットとなるヘッド間色差を達成できるまでの間に非常に時間がかかってしまう場合もあった。
そこで、本発明の一実施形態に係る色調整判断方法では、このS2に示す手動調整の工程内で、情報処理装置3によって、ヘッドに対して色調整を実施するかを判断する処理を実行させる。
<色調整用画像例>
ここで、図6におけるS1の自動調整やS2の手動調整における後述する図8、図9、図13、図14の詳細フローにおいて、色情報の取得工程(測色工程、色濃度測定工程)で用いられる色調整用画像について説明する。
図7に、色情報取得のために複数の階調が設定された色調整用画像の説明図を示す。図7において、(a)は印刷システム1における印刷の元画像データである色調整用の階調データである。(b)は階調データに基づいて印刷した記録媒体上の色調整用の階調画像(色調整用階調チャート)である。(c)は、調整後の記録媒体上の色確認用の階調画像(色確認用階調チャート)である。色調整用の階調画像(色調整用階調チャート)が色調整用画像の一例である。また、色確認用の階調画像(色確認用階調チャート)は色確認用画像の一例である。
なお、図3では各ヘッドユニット121Y、121M、121C、及び121Kにおいて、それぞれ7つのヘッドH1〜H7が配置された例を示したが、本例では、各色用のヘッドがそれぞれH1〜H5の5つである例について説明する。
図7(a)〜(c)では、例えば、ブラック(K)を用いた階調を示す。図7(a)に示す階調データでは、下の段から、20%、40%、60%、80%、100%の5段階(ステップ)の濃度で塗りつぶした例を示す。
ここで単色(単一色)である一次色におけるKCMY濃度とは、CMYK濃度、Tone、ベタ濃度、膜厚、インク厚さ、成分濃度値ともいい、詳しくは、網点によって塗りつぶす範囲の点の密集度によって色の濃淡を表現したものである。上述したように、一次色の階調データはKCMYの四色には限定されない。R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等のインクが搭載されている場合、それらの色の階調データも用いる。
そして、設定された5段階の階調データに基づいて、例えばブラックの記録ヘッドH1K〜H5Kが色調整用の階調画像(色調整用階調チャート)を出力する。この際、図7(b)で示すように、ヘッド毎に出力された画像の色(濃度)が異なることがある。
上述の図6のS2に示すように、手動調整によりヘッド間のばらつきを少なくするように色調整する。詳しくは、図7(b)のように色調整用階調チャートで濃度が低かった部分(例えばヘッドH4K)は、より高い階調にシフトさせ、濃度が低かった部分(例えばヘッドH2K)はより低い階調にシフトさせるように、印刷システム1において設定を変更する。
上記設定の変更により、調整後の出力チャート(色確認用階調チャート)は、図7(c)に示すように、図7(a)とほぼ同様の色になるようにする。
ここで、図7(a)ではブラックの記録ヘッドH1K〜H5Kでの出力の例を示したが、同様のレイアウトで、一次色を調べるための単色のインク色である、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色調整用階調チャートも出力する。
また、2種類のインクを混ぜ合わせた二次色について調べる場合は、図7(a)に示すような階調データを基にして、例えばR(レッド)、G(グリーン),B(ブルー)の色調整用階調チャートを出力する。RGBのチャートの例としては、それぞれを構成する一次色が同じ割合で含まれているパターンであると好ましい。
なお、図7では階調が5段階の例を示すが、色調整用階調チャートの別の例については、階調0%〜100%の区間を10%ごととした階調データに基づき出力したチャートを用いてもよい。10%、20%,・・・,100%の10段分の階調について色調整用階調チャートを出力し、10段階分すべて測色すると高精度に色ムラの調整をすることが可能である。
また逆に、色調整用階調チャートの例としては、出力する階調数をさらに減らしたものが挙げられる。例えば、多くの場合、ある一定の階調区間では、階調に対する色の変化(階調−濃度特性など)が線形であるため、代表的な階調を数点選び、残りは代表点と同じ調整値を反映することが可能である。たとえば10%〜50%、60%〜80%、90%〜100%といった3つのグループに区切り、50%,80%,100%で求めた調整値を同一グループの調整値として使用することで、測色点数を減らすことが可能である。
あるいは、印刷する画像として任意の階調の段階数のチャートを出力し、色情報を得てもよい。例えば、調整する任意の階調をDFE2等が有する制御の調整点に合わせることができ、ハードウエアに対して最適な段階数で調整することができる。
さらに、印刷する画像の階調の段階設定を、階調−色特性が線形になる階調領域を単位としてもよい。
このように領域を設定した階調データ(図7(a)参照)を基にして、記録媒体P上に印刷した色調整用階調チャート(図7(b)参照)を、測色計5を使用して測色し、色情報を取得する。この際、例えばK(ブラック)のとき、複数のヘッドH1K,H2K,H3K,H4K,H5Kのそれぞれで形成された箇所(ヘッド単位)の測色値をそれぞれ取得する。図7(b)の横列のそれぞれは、階調が同じである元画像データの階調情報が同じである複数のヘッドH1K,H2K,H3K,H4K,H5Kによって形成される領域となる。
調整値を算出するための色情報として、測色計5で測色するときに取得する色情報は、一次色の場合は、少なくとも測色値(L*a*b*)を含み、さらに精度を向上するために、濃度、及びXYZ表色系など種々の色情報も取得すると好ましい。
一方、二次色の場合は、色情報として、測色値(L*a*b*)があれば足り、測色値から、色相角を求めて、調整値の算出に利用する。こちらも測色値はL*u*v*値やCIE XYZ値であっても良い。また、色相角は測色値から求めるのでなく、直接色情報として色相角hab(CIE Lab hue angle)やhuv(CIE Luv hue angle)を求めても良い。
上記のように記録媒体上に出力された色調整用画像の色情報を用いて、情報処理装置において、手動調整の際に用いる調整値を算出する。
なお、図7では、色情報を取得する際の測定の単位は、ヘッド単位で調整する例を挙げたが、調整する単位は任意のものにすることが可能である。また、印刷位置による測定結果ばらつきの影響を減らすため、同一ヘッド内で、複数点を測色するとより好ましい。
例えば、ノズル単位でもよいし、ノズルをブロックに分割するブロック単位(区間単位)であってもよい。区間単位の例として、ヘッド両端と中央部で特性が異なるため、後述する図10で示すように両端と中央の3点(3区間)について測色し、その平均値を用いて1ヘッドとして取り扱って、調整することができる。
<一次色の手動調整>
図8に、本発明の第1の実施例(制御例)に係る一次色の手動調整の概略フローを示す。
ステップS21で、作業者6により調整開始の指示が出されると、印刷システム1は、個々のヘッドやノズルについて、階調毎、及びヘッド毎に色情報を把握するため、図7(a)に示すような階調データを基に、色調整用画像(色調整用階調チャート)を印刷する(形成ステップ)。
ステップS22で、S21で印刷した、図7(b)に示すような色調整用画像(色調整用階調チャート)を測色計5で測色し、色情報を取得する。
ステップS23で、情報処理装置3が色情報を取得し、色情報を基に、調整が必要なヘッドに対する調整値を設定する。調整値の設定方法の詳細については図9とともに後述する。
ステップS24で、情報処理装置3が、設定した調整値を印刷システム1(又はDFE2)へ転送する。あるいは、作業者6が、情報処理装置3に表示された調整値を手動で印刷システム1(又はDFE2)の入力部101又は201へ入力する。
ステップS25で、印刷システム1(又はDFE2)内で、調整対象となったヘッドに対して、1つのヘッドのノズル群に対してヘッドの調整値を反映させるよう設定変更を行う。設定変更の例として、調整対象のヘッドでのヘッド駆動電圧(ヘッドでのインク吐出動作を駆動させる駆動部材である圧電素子等へ印加する駆動波形の形状)を他のヘッド駆動電圧から変更して、インク滴のドット径を制御する方法などがある。またはドット径を制御するため、ヘッドを上下させてインク滴の吐出における飛翔距離を変化させてもよい。あるいは、画像処理により、ヘッド毎に階調を設定してもよい。またさらに他の調整方法でヘッドの階調や濃度を調整してもよい。
そして、ステップS26で、印刷システム1は、調整値が反映された設定状態で、階調ごとに色情報を把握するための、色確認用画像(色確認用階調チャート)を印刷する。
ステップS27で、S26で出力した、ヘッド毎の調整が反映された色確認用階調チャートを、測色計5で測色し、色情報を取得する。
ステップS28で、情報処理装置3が、S27で測定した色確認用画像(色確認用階調チャート)における、ヘッド間の色差が、ターゲット色差(色差の許容可能なターゲット範囲)よりも小さくなっていたら(S28でYes)、手動調整を終了とする。このようにして、求めた調整値を反映し、調整後の画像から再調整が必要かどうかを判断する。
ヘッド間色差がターゲット色差よりも大きいものが存在し、再調整が必要な場合は(S28でNo)、調整値を設定する工程(S23)へ戻り、さらにS28でYesになるまで調整をさらに繰り返す。
なお、調整を繰り返すかどうかの判断は、上記ではS28において、特定のターゲット色差を基準に判断したが、作業者6が、例えば、印刷した調整後の色確認用画像(色確認用階調チャート)と調整前の色調整用画像(色調整用階調チャート)とを比較すること等により、目視で判断してもよい。
また、ここでは再度色確認用階調チャートを出力する例を説明したが、後述する図9のS33で全てのヘッド間色差がターゲット色差よりも小さい場合、図8のS23の手動調整値設定工程において新たな調整値を設定せず、点線で示すように色確認用階調チャートを出力せずにフローを終了しても良い。
<情報処理装置による一次色の調整値算出>
上述の図8のステップS23で実行する、情報処理装置3での一次色の手動調整値設定の詳細フローを図9に示す。図9は、本発明の第1の実施例に係る情報処理装置3での一次色の手動調整値設定の詳細フローである。
また、図10に、色調整対象が一次色の場合に、情報処理装置3で表示されるヘッドの複数の区間(位置)における測色値取得用テーブルを示す。図11に、情報処理装置3で表示される一次色の調整値算出テーブルであって、(a)はヘッド間色差、(b)は全ヘッドのKCMY濃度平均値と各ヘッドのKCMY濃度との差、(c)は特定された調整対象ヘッドと設定されたKCMY濃度の調整値を示す。
ここで、測色値(L*a*b*値)は、見た目の濃さをL値(濃度)に、色相の違いをa*、b*値に反映している。一種類のインクを用いて生成される一次色である、K、C、M、Yは、同一インクを用いれば、色相(a*値、b*値)は同じであるので、濃度を調整すればよい。
よって、図9及び図11に示すように、一次色のKCMYそれぞれの色調整のためにどのヘッドを調整するかを判断する色調整判断方法では、測色値(L*a*b*値)を用いて調整の有無を判定し、KCMY濃度を用いて調整値を算出すると、効率的である。
図10に示すように、測色値を取得するステップでは、各ヘッド列に含まれる各色のヘッドについて、各ヘッドが形成する画像の複数の区間毎に、各階調ごとの色情報を取得している。
図11では、特定の階調について、各区間を平均したヘッド毎の値を所望の目標色として用いて、調整値を設定する例を示している。
図9に示す、調整値の算出フローでは、調整の際に近づけていく目標値となるターゲット色(目標色)を全ヘッドの平均の色情報(KCMY濃度)とする場合を例として、説明する。
ステップS31で、情報処理装置3の測色値取得部301(図5参照)は、測色計5で検出された色情報を階調毎に取得する(測色値取得ステップ、濃度取得ステップ)。情報処理装置3が色情報を取得する際、出力した色調整用階調チャートを測色計5によって検出した値が転送されて、情報処理装置3へ自動的に取り込むと好ましい。あるいは、作業者6が測色計5での測定結果を、手動で入力してもよい。ここで、S31では、色情報として、複数のヘッドの各ヘッドKCMYの、測色値(L*a*b*)、及び濃度(KCMY濃度)を、取得する。なお、上述したように濃度(KCMY濃度)を取得せず測色値から算出しても良い。
例えば、情報処理装置3において、転送された又は手動で打ち込まれた、各色(K、C、M、Y)の取得値は、図10で示すようにテーブルで表示される。
ステップS32で、情報処理装置3の色差算出部302は、測色値から、隣接するヘッド間(ペア、2箇所間)の色差を算出する(色差算出ステップ)。ここで隣接するヘッドとは、例えば図3におけるH1YとH2Yのような、記録媒体の搬送方向と直交する方向に並んだヘッドである。例えば、情報処理装置3において、算出されたヘッド間の色差は、図11(a)で示すようにテーブルで表示される。ここでは、例えば図10に示す階調が60%の場合の色差を表示している。
ここで色の違いを表す色差ΔEは、L*a*b* 色空間上の2点間の距離で表している。
色差はΔE(ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2)で表される。
本実施形態ではΔEをL*a*b*に基づくΔE*abで説明しているが、ΔEはL*u*v*値からなるΔE*uv(ΔE*uv=[(ΔL*)2+(Δu*)2+(Δv*)2]1/2)であっても良い。
ステップS33で、情報処理装置3の色差・一次色ターゲット色差比較部304は、ヘッド間の色差と、ターゲット色差(ターゲット範囲)とを比較する。例えば、情報処理装置3の一次色ターゲット色差記憶部303に記憶されているターゲット色差を1.5とする。このとき、図11(a)のテーブルに示すヘッド間色差において、下線部で示すYellow(Y)におけるヘッドH1Y,H2Yとの間の色差と、Cyan(C)におけるヘッドH4C,H5Cの間の色差が、ターゲット色差を超えている。そのため、これらのヘッドのペア(YにおけるH1YとH2Y、CにおけるH4CとH5C)が手動調整の調整候補ヘッドペア(2つの、調整が必要と判断された2つのヘッド)となり、以降の手動調整工程が実施されることになる。
このS33が、色差を用いてヘッドの調整が必要か否かを判断する判断ステップとなる。算出されたヘッド間色差のうち、少なくとも1つのヘッド間色差がターゲットとなる色差よりも大きい場合は(S33でYes)、ステップS34へ進む。
一方、求めたヘッド間色差が、すべてターゲット色差よりも小さい場合は(S33でNo)、以降の手動調整を実施せず、図6のS3に進み、色調整工程全体を終了する。これにより、調整時間を短縮することができる。また、過調整を防ぐことができる。
ステップS34で、情報処理装置3は、全ヘッドの平均測色値を算出する。詳しくは、測色計5によって測定された、複数のヘッドで作成された色調整用画像(色調整用階調チャート)におけるKCMY濃度を、濃度値取得部311が夫々取得し、濃度平均値算出部312が全てのヘッドのKCMY濃度の平均KCMY濃度を算出する。
ステップS35で、情報処理装置3の濃度差算出部313は、全ヘッドの平均濃度から各ヘッドの濃度の差分である濃度差を算出する(濃度差算出ステップ)。例えば、図11(b)に全ヘッドの全印刷領域の平均KCMY濃度(目標色に対応するもの)と、各ヘッドのKCMY濃度との差分を算出したものは、情報処理装置3において図11(b)のように、テーブルで表示される。
なお、図11(b)では全てのヘッドについてKCMY濃度と、平均のKCMY濃度の差分を示しているが、S34のヘッド間の色差で特定した調整対象となったペアのみ、平均のKCMY濃度と比較してもよい。また、上記では平均濃度から各ヘッドの濃度の差分を計算しているが、濃度ではなく測色値同士の差分を用いて算出しても良い。
ステップS36で、情報処理装置3の調整対象ヘッド特定部314は、差分も大きい方のヘッドを調整対象ヘッドとして特定する(ヘッド判断ステップ)。詳しくは、平均濃度(この例ではKCMYの平均濃度)と調整対象となったペアのヘッドの濃度(KCMY濃度)の差を求め、どちらのヘッドのほうが平均濃度との差が大きいかを比較し、平均濃度との差が大きい方のヘッドを調整する調整対象ヘッドとして選定する。また、上述したように、調整対象ヘッドを、測色値を用いて選定しても良い。
例えば、図11(b)において、Yellow(Y)においてヘッドH1YとヘッドH2Yの値を比較してH2Yの方が0(平均KCMY濃度)から離れており、Cyan(C)においてヘッドH4CとH5Cの値を比較して、H5Cの方が離れている。よって、下線部で示す、Yellow(Y)のヘッドH1Yと、Cyan(C)のヘッドH5Cとが、調整対象として特定される。
差分の大きい方のヘッドを目標色により近づけるように調整することにより、少ない繰り返し回数で目標色を達成することができる。
ステップS37で、情報処理装置3の調整値設定部315は、特定された(選定された)ヘッドが、平均濃度に近づくように調整値を設定する。
そして、ステップS38で、情報処理装置3の表示装置35において、図11(c)で示すように、テーブルにおいて調整対象のヘッド及び調整対象の色、調整の方向が分かるように、調整値が表示される。ここで、設定された調整値が、出力部331により印刷システム1やDFE2へ直接出力されてもよい。
ステップS39で、ヘッド調整値(KCMY濃度)を記憶して、終了となる。
このように、ヘッド間色差とターゲットにしているヘッド間の色差を比較し、ターゲットよりも小さければ調整終了、大きければ調整値の再演算、再調整の工程を繰り返す。
また、図9のフローでは、調整する際にヘッド単位で調整する例を挙げたが、調整する単位は任意のものにすることが可能である。
例えば、複数の区間の平均測色値を調整の判断に用いられる前記測色値として使用される場合、調整する区間を選定する際に、任意の目標色差(ターゲット色差)よりも色差が大きい場合、その区間のみ調整する。
ここで、図9、図11の例では、調整時の目標色(所望の目標色)として、平均色に対応するKCMY濃度を使用する場合の例を説明した。この制御では、極端に目標色から離れた色があったとしても、平均値に向かって調整することで、調整不能の区間が発生することを防ぐことができる。
しかし、色ムラを調整する際の調整の目標色として、全印刷領域の最大または最小の測色値(最も明るい点や、最も暗い点)を算出して、KCMY濃度を目標値として使用してもよい。これにより、明度や濃度を使用する際に、画像が薄くなり過ぎたり、濃くなり過ぎたりすることを防ぐことができる。
さらに、色ムラを調整する際の調整の目標色として、特定の色を指定することも可能である。例えば、国旗や、社名、キャッチフレーズなどで特定の色が連続して印刷されることが前提とされる場合、その特定の色に近づけてKCMY濃度を調整すると、より効率的に、実際の画像を印刷する際に色調整がしやすくなる。この場合は、予め色を記憶しておき、例えばS34で、その目標色であるその特定の色のKCMY濃度を呼び出し、S35で、その特定の色のKCMY濃度と、各ヘッドのKCMY濃度の差分を算出すればよい。
なお、一次色において、平均色に対応する濃度、最も明るい最高濃度、最も暗い最低濃度に近づける場合は相対濃度を利用し、特定の色に近づける場合は、絶対濃度を利用すると好ましい。
また、図11では所定の階調について調整を実施したが、複数の階調についてそれぞれヘッドの調整が必要かについて判断することが好ましい。しかしながら、複数の階調の画像を含む階調チャートでなく、所定の階調のみの画像を出力し、それを色調整用画像として調整有無の判断を行っても良い。
上記では、一次色の場合を説明したが、二次色の場合は、濃度や明度での調整が不可能なため、スキャナーを用いた自動検査による調整だけでは対応がさらに難しく、色味を正しく調整するには手動の調整に頼る必要性が高かった。
加えて、構成する色のどちらを調整すべきか、どの程度調整するか、といった判断も必要になるため、手動調整の難易度は、一次色の場合よりもさらに上がってしまうという問題があった。そこで、下記の二次色の色調整を実行する。
<二次色の調整(第2の実施例)>
図12は、二次色における色相角を用いた調整の概念図を示す。
L*a*b*色空間において、L*軸は明るさを表す明度軸で、0に近いと黒、100に近いと白を示す。a*軸は緑〜赤を表し、マイナスは緑、プラスは赤を示す。b*軸は青〜黄を表し、マイナスは青、プラスは黄を示す。a*軸、b*軸共に数値が大きいほど強い色(彩度が高い)を意味している。
上述したように色の違いを表す色差ΔEは、L*a*b* 色空間等の均等色空間上の2点間の距離で表している。
本実施例の色調整では、黒を使用しない二次色を前提とするため、明度Lは等しいとして、色相角差ΔHを用いて調整を行う。
色相角は例えば、CIE Labの場合にはhab=tan-1(b*/a*)[degree]で求められる。habはCIE Labの+a*軸からの角度である。図12はCIE Labにおける色相角を表す図である。
CIE Luvの場合には、huv=tan-1(v*/u*)[degree]で求められる。HuvはCIE Luvの+u*軸からの角度である。
この色相角の差を用いて、例えばCIE Labにおいてはa*、b*の値に作用する、記録媒体P上に吐出される2色のインクのバランスを調整する。以下、CIE Labにおける色相角に基づいて説明する。
<二次色の手動調整フロー>
図13に本発明の第2の実施例(制御例)に係る二次色の手動調整の概略フローを示す。
本実施例では、調整判断の対象となる色調整用画像(色調整用階調チャート)が一次色(KCMY)ではなく二次色(RGB)である点が異なる。そのため、図13のフローは、図8の一次色のフローと比較して、ステップS240、S250において、調整値を設定する際に、2種類の調整値候補を反映した画像を印刷し、ステップS271において、目標色との差が小さくなる方の調整値を選択する点が異なる。相違点については図14とともに詳述する。
本実施例で用いる色調整用画像(色調整用階調チャート)は図7(a)に示したものと同様のレイアウトで、二次色の例としてR(レッド)、G(グリーン),B(ブルー)の3色のチャートを出力する。このRGBはそれぞれを構成する一次色が同じ割合で含まれているパターンであるとする。二次色の場合にも、図7(b)の横行は、元画像データの階調情報が同じである。また、図7(b)の縦列はそれぞれのヘッド列HCによって形成され、ヘッド列HC1,HC2,HC3,HC4,HC5によって形成される領域が横方向に並ぶ。
ここで、出力する2種類の調整値の算出の概要を図12に戻って説明する。二次色を構成する1色目の調整値と2色目の調整値のうちどちらを+にするかは、調整前の色相角と、目標の色相角との関係から求めることができる。
図12では、一次色Yellowと一次色Magentaのインクによって記録媒体上に生成される二次色であるRedを例として説明する。例えば、Redの調整前の色相が、目標の色相よりもYellow側に近かったとする。つまり、色相角が、目標の色相角よりも大きかったとする。
この場合は調整後の色相をよりMagenta側にしたいため、調整値調整の際、Magentaを+(プラス)にした(増加させる)色確認用階調チャートと、Yellowを−(マイナス)にした(減少させる)色確認用階調チャートとを出力する。
二次色を用いる場合、角度を変更する方向は算出できたとしても、二色のどちらの色に対して調整したら良いか判断が難しい場合が多い。そのため、所定の一色に近づけたい場合、その一色を+(プラス)に調整した値と、他の色を−(マイナス)に調整した値との両方の調整値を試すことで、より正確に調整値を求めることができる。
また、ここでは図13のS240以降で、再度、色確認用階調チャートを出力する例を説明したが、後述する図14のS43で全てのヘッド間色差がターゲット色差よりも小さい場合、図13のS23の手動調整値設定工程において新たな調整値を設定せず、点線で示すように色確認用階調チャートを出力せずにフローを終了しても良い。
また、二次色を構成する1色目の調整値と2色目の調整値のうちどちらを+にするかは、単色のインクの色相角を情報として持っておき、目標の色相角が調整前の色相角よりも近い方のインクの割合が多くなるように設定してもよい。しかし、例えばRedの場合には目標値よりも色相角が大きければMagentaに近づけるべきであることは予め分かっているため、単色のインクの色相角の情報を用いずにインクの割合の変更を決定しても良い。
また、図12に示すGreenの調整の説明は図16とともに後述する。
<情報処理装置による二次色の調整値の演算>
図14に本発明の第2の実施例に係る情報処理装置3での二次色の手動調整値算出の詳細フローを示す。
図15に、色調整対象が二次色の場合に、情報処理装置3で表示されるヘッドの複数の区間における測色値取得用テーブルを示す。図16に、情報処理装置3で表示される二次色の調整値算出テーブルであって、(a)はヘッド列間色相角の差、(b)は全ヘッド列の色相角の平均値との差、(c)は特定された調整対象ヘッド列と設定された調整値を示す。
図15に示すように、測色値を取得するステップでは、各ヘッド列が形成する画像の複数の区間毎に、各階調毎の色情報を取得している。例として、図16に示すように、特定の階調について、各区間を平均した、ヘッド列毎の値を用いて調整値を設定する例を示す。
図14のステップS41で、情報処理装置3の測色値取得部301(図5参照)は、測色計5で検出された色情報として、測色値(L*a*b*)を、取得する(取得ステップ)。例えば、情報処理装置3において、転送された又は手動で打ち込まれた、各二次色(R、G、B)の取得値である測色値(L*a*b*)及びKCMY濃度は、図15で示すようにテーブルで表示される。なお、本実施例では、KCMY濃度情報は取得しなくてもよいが、後述するステップS48の調整時の色調整の際に利用してもよい。
ステップS42で、情報処理装置3の色差算出部302は、隣接するヘッド列間(2箇所間)の色差を算出する(色差算出ステップ)。ここで隣接するヘッド列とは、例えば図3におけるHC1とHC2のような、記録媒体の搬送方向と直交する方向に並んだヘッド列である。例えば、情報処理装置3において、5つのヘッド列HC1〜HC5を備える印刷システム1での、二次色におけるヘッド列間の色差ΔEは、図16(a)で示すようにテーブルで表示される。
二次色は搬送方向に列を成す複数のヘッドからの吐出で形成される。このため、二次色に基づく調整の判断を行う場合に、判断に用いる色差は、ヘッド列が形成した画像間の色差となる。複数のヘッド列が形成した画像間の色差をヘッド列間色差として記載する。
ステップS43で、情報処理装置3の色差・二次色ターゲット色差比較部306は、ヘッド列間の色差と、ターゲット色差とを比較する。
図16(a)において、例えば、二次色ターゲット色差記憶部305で記憶されている、二次色におけるヘッド列間色差のターゲットをΔE<2.5とする。この場合、下線部であるヘッド列HC3,HC4間の色差、ヘッド列HC4,HC5間の色差が、ターゲットのΔEよりも大きいヘッド列の組み合わせ(2通りの「2つのヘッド列」)である。これらのヘッド列のペア(HC3とHC4、HC4とHC5)が手動調整の調整候補ヘッド列ペアとなる。
このS43は、色差を用いて、ヘッド列の調整が必要か否かを判断する判断ステップである。算出されたヘッド列間色差のうち、少なくとも1つのヘッド列間色差がターゲットよりも大きい場合は(S43でYES)、即ち、手動調整の対象となるヘッド列のペアが存在した場合、ステップS44へ進む。
一方、ヘッド列間色差がターゲット色差よりも小さい場合は(S43でNo)、以降の手動による色調整は実施せず、図6のS3に進み、色調整工程全体を終了する。
S43でYesの場合、ステップS44で、情報処理装置3の色相角算出部321が、ヘッド列HC1〜HC5毎に複数の色のインクを用いて形成された二次色の色相角を算出する(色相角取得ステップ)。
そして、ステップS45で、色相角平均値算出部322が、全ヘッド列で形成された所定の二次色の平均色相角を算出する。
続いて、ステップS46で、色相角差算出部323が、この平均色相角と、各ヘッドの色相角の差をそれぞれ求める(色相角差算出ステップ)。例えば、全ヘッド列で形成された二次色平均色相角(目標色に対応するもの)と、各ヘッド列で形成された二次色の色相角との差分を算出した結果である色相角差ΔHは、情報処理装置3において図16(b)のように、テーブルで表示される。
ステップS47で、調整対象ヘッド列特定部324が、色差が算出されたヘッド列のペアにおいて、色相角の平均値との色相角の差分が大きい方のヘッド列を、調整するヘッド列として選定する(特定する)(ヘッド列判断ステップ)。
例えば、図16(b)に示すテーブルにおいて、Green(G)についての色相角を比較すると、ヘッド列HC3とヘッド列HC4ではHC4の方が平均色相角との差が大きく、ヘッド列HC4とHC5でも、HC4のほうが平均色相角との差が大きい。そのため、下線で示すヘッド列HC4での、Greenを形成する複数のヘッドが調整対象となる。
ここで、ヘッド列HC4で形成した画像の色相角の値は、平均色相角よりも小さい。つまり、イエローに近い。そこで、ヘッド列HC4の所定の複数のヘッドでのGreenの形成結果が平均色相角に近づく方向(色相角を大きくする方向)になるよう、図16(c)において、調整値(調整の方向)としてGreenに対して『+』を入力する。『+』とは、+a*軸からの角度が大きくなるようにするということなので、Greenを形成しているインクのうち、シアンインクの割合を増やすことになる。
ステップS47で、調整対象となるヘッド列内の複数のヘッドと、調整の方向が決定された。
ステップS48での調整値設定部325の設定に基づき、図13のステップS240からステップS260では、二次色を構成する1色目のインクを吐出するヘッドの調整値を+(プラス)にした色確認用階調チャートと、2色目のインクを吐出するヘッドの調整値を−(マイナス)にした色確認用階調チャートをそれぞれ出力する。
例えば図16(c)に示すように、ヘッド列HC4で形成された二次色Greenの色相角を大きくする(+にする)には、図12に示すように、Cyanのインクの調整値を+(プラス)にするか、Yellowのインクの調整値を−(マイナス)にする。例えば、目標色に対応する色相角(Green(目標))と調整前の色相角(Green(調整前))では、目標色に対応する色相角に近い方のインクを吐出するヘッド(第1のヘッド)を1色目(Cyan)のヘッドH4Cとし、調整前の色に対応する色相角に近い方のインクを吐出するヘッド(第2のヘッド)を2色目(Yellow)のヘッドH4Yとする。
この際、色確認用画像として、1色目(Cyan)のヘッドH4Cの吐出量を増やす画像(第1の色確認用画像)と、2色目(Yellow)のヘッドH4Yの吐出量を減らす画像(第2の色確認用画像)の両方を出力する。このために、1色目のヘッドの調整値を+(プラス)にした設定と、2色目のヘッドの調整値を−(マイナス)にした設定をそれぞれ出力する。それぞれの色のインクを吐出するヘッドに対して、どの程度変更を行うかは任意であるが、差の大きさに基づいて変更すると良い。また、最も小さい変更量で変更することにしても良い。
そして、図13のS240に戻り、上記2種類の色確認用階調チャートの調整値を、印刷システムに転送又は入力し、S250で2種類の候補に合わせて調整するように設定を変更して、S260で2種類の色確認用階調チャートを夫々印刷する(色確認画像形成ステップ)。
そして、S270で2種類の色確認用階調チャートを測色し、ヘッド列間色差を求める。
ここで、作業者6又は情報処理装置3は、ヘッド列間色差の小さい方(バランスがよい方)の候補を選択する。
そして、ステップS28で、ヘッド列間色差とターゲットにしているヘッド列間の色差を比較し、ターゲットよりも小さければ調整終了となる。図13のS270、S271、S280が、所定のヘッド列において、第1のヘッド(図16ではCyanのヘッドH4C)と、第2のヘッド(図16ではYellowのヘッドH4Y)の何れを調整するヘッドとするかを判断する、二次色調整ヘッド判断ステップとなる。
このように、ヘッド列間色差とターゲットにしているヘッド列間の色差を比較し、ターゲットよりも小さければ調整終了、大きければ調整値の再演算、再調整の工程を繰り返す。
このように、どちらの色を吐出するヘッドに対して調整したら良いか判断が難しい場合、両方の調整値を印刷して試すことで、より正確に調整値を求めることができる。また、二次色の場合は色相角を判断基準にして調整値を決定することで、より視覚的に均一な画像が得られるようになる。
なお、バランスが良い方の1回目に印刷した色確認用階調チャートの設定であった場合は、S29において、印刷システム1における調整値の設定を1回目の設定に戻して終了とする。
このように、二次色の場合は濃度では差を正しく把握することが難しいため、色相角を使用するのが好ましい。目標色に調整するための調整量は、階調ごとの色特性を線形補間した検量線から求めても良いし、任意の階調ステップで調整しても構わない。
図14では、目標色を平均の色相角として、平均値に近づくように調整する例を示したが、全域の測色値の最大値や、最小値にしても構わない。
あるいは、目標色を特定の色に対応する色相角に設定してもよい。この場合は、予め特定の色とその色相角を記憶しておき、例えばS45で、その目標色である特定の色の色相角を呼び出し、S46で、特定の色の色相角と、各ヘッドの色相角との差分を算出すればよい。
また、グレーバランスを階調によらず一定に保つために、目標とする色相角はa*=b*=0に最も近くなる組み合わせから選定するか、狙いの色味のグレーに合わせていくことが好ましい。
また、図16では所定の階調について調整を実施したが、複数の階調についてそれぞれヘッド列の調整が必要か否かについて判断することが好ましい。しかしながら、複数の階調画像を含む階調チャートではなく、所定の階調のみの画像を出力し、それを色調整用画像として調整の有無の判断を行っても良い。
このように二次色の調整を行う際には、色情報として色相角を用いることで、濃度や明度では調整できない色味を調整することが可能になる。
また、色相角差に代えて、a*b*平面上又はu*v*平面上の二点間の距離を用いて調整を行っても良い。
なお、ここでは二次色について調整する場合を例に挙げるが、色相角を用いる方法で一次色や三次色でも調整が可能である。
<三次色での調整>
さらに、3色のインクが混ぜ合わされた三次色を調整する際の調整の色目標として、任意の色相角を使用することも可能である。三次色(例えば、コンポジットブラック)の調整の際にも第2の実施例で示す調整判断方法を応用することが可能である。コンポジットブラックはL*や濃度で調整することも可能だが、二次色と同様に色相角で調整値を算出し、設定することもできる。
これにより、グレーバランスの調整をしながら、三次色以上の色を調整することができる。
<測色計の印刷システムへの組み込み>
上述では、手動調整の調整値の求め方として説明したが、印刷システム内に、測色値(L*a*b*)や単色の濃度が測定可能な測色計を設けることができれば、自動調整の際に、印刷システム内部で、調整値を求めて、色調整を高精度に反映することも可能である。
<印刷システムにおける多段階スキャナーの活用>
上述の図6のフローで示したように、ステップS1の自動調整のための色情報取得工程では、色ムラ調整時では、ノズル単位、またはブロック単位でスキャンし、ヘッド内の濃度ムラやノズル抜けを検知しなければならず、高解像度でスキャンしなければならない。
そのため、ヘッド間の調整は色差が大きいため、手動調整が必要となっていた。しかし、上記手動調整に代えて、画像検査機構140,180(図2参照)に含まれるスキャナー自体で色相角を取得することで、印刷システム1の制御部又はDFE2でヘッド間の色調整を実施してもよい。
この場合、図6のS1に示す自動調整と、S2に示す手動調整を同時に実行しようとすると、2つのスキャン画像に対する要求を同時に満たし、さらに印刷領域全幅について処理をするには、非常に多くのメモリが必要になる。
そこで、測色可能な1つのスキャナーで、2段階で設定を変更して、ノズル抜けのような高解像度・低ビットの調整を実施し、その後に色味のような低解像度・多ビットの調整を実施することで、スキャナーでも二次色の色味を含めた調整が可能になる。
図17に、スキャナーに測色性能を持たせた場合の印刷システムにおける色調整方法の概略フローを示す。
ステップS81で、先にヘッド内のノズル抜けのような高解像度・低ビットの調整を実施する。即ち、小さな区間内における色ムラを調整する(スジ調整を行う)際には高解像度で色情報を読み取る。S81の高解像度での調整は、従来の自動での色ムラ調整と同様の方法で、ヘッド内でのノズル抜けを中心に調整する。
ステップS82で、色味(例えば二次色)の調整のために、低解像度・多ビットの調整を実施することで、ヘッド間又はヘッド列間の色調整を行うための調整値を算出する。この多ビットでの調整は、測色計を使用した上述の二次色の場合の図14〜図16と同様の調整方法で、色味を中心に調整する。
このように、設定を変更したスキャナーにより、色味を調整することで、測色計よりも安価なスキャナーでも色味を考慮した調整が可能になる。
<その他の変形例>
本実施の形態では、記録媒体が搬送され、ヘッドが搬送方向と直交する方向に複数配置されるラインヘッドインクジェット装置について記載しているが、記録媒体に対してヘッドが移動するシリアルインクジェット装置であっても、ヘッドの移動方向と直交する方向に複数のヘッドが配置されていれば本発明は適用可能である。つまり、記録媒体とヘッドの相対移動方向に対して直交する方向にヘッドが複数配置されている形態であれば本発明は適用可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。