以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
図2および図3は、本実施形態の電圧補償装置の一部である制御部を例示するブロック図である。
本実施形態の電圧補償装置1の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の電圧補償装置1は、電圧補償部10と、制御部80と、を備える。
電圧補償部10は、直列変圧器11,13,15と、第1電力変換器20と、第2電力変換器30と、並列変圧器41,42と、インダクタ51,52と、電流検出器61,62と、交流電圧検出器71〜74と、直流電圧検出器75と、を含む。電圧補償装置1は、電圧補償部10によって電力系統に直列に接続される。電力系統は、U相、V相およびW相からなる三相交流の配電系統である。
以下では、電力系統に直列に接続された電圧補償装置1から見て、一方の側を仮の電源端6と呼び、他方の側を仮の負荷端7と呼ぶこととする。便宜上、仮の電源端6の各相を、U相、V相およびW相と呼び、仮の負荷端7の各相をu相、v相およびw相と呼ぶこととする。電力系統において、U相およびu相は同じ相であり、V相およびv相は同じ相であり、W相およびw相は同じ相である。電圧補償装置1は、仮の電源端6において、U相に端子2aで接続され、V相に端子2bで接続され、W相に端子2cで接続される。電圧補償装置1は、仮の負荷端7において、u相に端子3aで接続され、v相に端子3bで接続され、w相に端子3cで接続される。
本実施形態では、仮の電源端6および仮の負荷端7のうちいずれか一方を、変電所方向に決定した後、電圧補償装置1は、各相の電圧を補償する。電圧補償装置1は、仮の電源端6が変電所方向である場合には、仮の電源端6の電圧が、目標値または目標の範囲に対してどれくらい高いかまたは低いかを検出し、仮の負荷端7の電圧が目標値または目標の範囲内となるように補償する。電圧補償装置1は、仮の負荷端7が変電所方向である場合には、仮の負荷端7の電圧が、目標値または目標の範囲に対してどれくらい高いか低いかを検出し、仮の電源端6の電圧が目標値または目標の範囲内となるように補償する。
直列変圧器11,13,15は、一次巻線11p,13p,15pと、二次巻線11s,13s,15sと、をそれぞれ含む。直列変圧器11の一次巻線11pは、端子2aと端子3aとの間に接続されており、電力系統に直列に接続されている。直列変圧器13の一次巻線13pは、端子2bと端子3bとの間に接続されており、電力系統に直列に接続されている。直列変圧器15の一次巻線15pは、端子2cと端子3cとの間に接続されており、電力系統に直列に接続されている。つまり、3つの直列変圧器11,13,15の一次巻線11p,13p,15pは、電力系統の各相に直列に接続されている。
直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、それぞれ一方の端子12a,14a,16aで互いに接続され、それぞれの他方の端子12b,14b,16bは、第1電力変換器20の各交流端子22a,22b,22cに接続されている。つまり、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、スター結線されて、第1電力変換器20の出力に接続されている。
第1電力変換器20は、高圧直流端子21aと低圧直流端子21bとの間に接続されている。高圧直流端子21aおよび低圧直流端子21bには、直流リンク用のコンデンサ24を介して直流電圧が供給される。第1電力変換器20は、三相交流電圧を出力する交流端子22a,22b,22cを含む。交流端子22a,22b,22cは、フィルタ26を介して直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sに接続されている。第1電力変換器20は、高圧直流端子21aと低圧直流端子21bとの間に印加された直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ装置である。
第1電力変換器20は、たとえば、6つのスイッチング素子23a〜23fを含んでいる。スイッチング素子23a〜23fは、自己消弧形のスイッチング素子であり、たとえばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。スイッチング素子は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチとして直列に接続される。直列に接続されたアームは、3つ並列に接続されてインバータ回路を構成する。第1電力変換器20のインバータ回路は、直流電圧を電力系統の周波数よりも高い周波数の交流電圧に変換することができれば、この回路構成に限定されない。インバータ回路は、たとえばマルチレベルインバータ回路やその変形等であってもよい。
第1電力変換器20と直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sとの間には、フィルタ26が接続されている。フィルタ26は、この例では、各相に直列に接続されたインダクタLu,Lv,Lwと、各線間に接続されたコンデンサCa,Cb,Ccとを含む。フィルタ26は、第1電力変換器20が出力する数kHz〜数100kHz程度の高周波スイッチング波形を電力系統の周波数に変換するローパスフィルタである。フィルタ26は、第1電力変換器20の出力の周波数や、変調方式等にしたがって適切な回路を用いることができる。
直流リンク用のコンデンサ24は、第1電力変換器20に直流電力を供給する。このコンデンサ24は、第2電力変換器30から供給される有効電力を第1電力変換器20に供給する。なお、後述する他の実施形態の場合のように、コンデンサ24は、第2電力変換器30を介して電力系統側と無効電力のやり取りをすることがある。
第2電力変換器30は、高圧直流端子31aと低圧直流端子31bとを含んでいる。高圧直流端子31aおよび低圧直流端子31bは、コンデンサ24の両端にそれぞれ接続されている。第2電力変換器30は、交流端子32a,32b,32cを含む。交流端子32a,32b,32cのいずれか1つ、この例では、交流端子32aには、インダクタ51の一端が接続されている。交流端子32b,32cの他の1つ、この例では、交流端子32cには、インダクタ52の一端が接続されている。
第2電力変換器30は、交流端子32a,32b,32cに入力される交流電力を直流に変換して、直流リンクのコンデンサ24に供給するコンバータ装置である。より具体的には、第2電力変換器30は、アクティブ平滑フィルタとして動作し、コンデンサ24を介して第1電力変換器20に有効電力を供給する。
第2電力変換器30は、第1電力変換器20と同じ回路構成のインバータ装置であってもよい。第2電力変換器30は、第1電力変換器20と同様に、6つの自己消弧形のスイッチング素子33a〜33fを含んでいる。スイッチング素子33a〜33fは、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチとして直列に接続される。直列接続されたアームは、3つ並列に接続されてインバータ回路を構成する。第2電力変換器30のインバータ回路は、直流電圧と、電力系統の周波数よりも高い周波数の交流電圧とを相互に変換することができれば、この構成に限定されない。なお、この例では、第2電力変換器30のインバータ回路の構成は、第1電力変換器20のインバータ回路の構成と同一であるが、異なる構成であってもよい。
なお、本実施形態の電圧補償装置1では、第2電力変換器30は、第1電力変換器20に直流電圧および有効電力を供給することができれば、他の構成であってもかまわない。
並列変圧器41の一次巻線41pは、仮の負荷端7において、U相およびV相の線間に接続されている。並列変圧器42の一次巻線42pは、仮の負荷端7において、V相およびW相の線間に接続されている。並列変圧器41の二次巻線41sの一方は、インダクタ51の他端に接続され、他方は、第2電力変換器30の交流端子32bに接続されている。並列変圧器42の二次巻線42sは、インダクタ52の他端に接続され、他方は、第2電力変換器30の交流端子32bに接続されている。並列変圧器41,42の二次巻線41s,42sは、インダクタ51,52を介して第2電力変換器30の交流端子32a〜32cとV結線されている。
電流検出器61は、第2電力変換器30の交流端子32aと並列変圧器41の二次巻線41sとの間に直列に接続されている。電流検出器62は、第2電力変換器30の交流端子32cと並列変圧器42の二次巻線42sとの間に直列に接続されている。つまり、電流検出器61,62は、インダクタ51,52に流れるそれぞれの交流電流を検出して、電流データIL1,IL2を出力する。
交流電圧検出器71,72は、仮の電源端6の側に接続されている。交流電圧検出器71は、U相とV相との線間に接続され、UV間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器72は、V相とW相との線間に接続され、VW間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器73,74は、仮の負荷端7の側に接続されている。交流電圧検出器73は、u相とv相との線間に接続され、uv間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器74は、v相とw相との線間に接続され、vw間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器71〜74は、たとえば計器用変圧器と計器用変圧器の出力を適切な電圧レベルに変換するトランスデューサとを含んでいる。交流電圧検出器71〜74は、仮の電源端6および仮の負荷端7のそれぞれの線間電圧を検出して、計器用変圧器で降圧し、トランスデューサによって制御部80に入力可能な信号である交流電圧データVAC1〜VAC4に変換して出力する。
直流電圧検出器75は、コンデンサ24の両端の直流電圧を検出して、直流電圧データVDCを出力する。
制御部80は、交流電圧データVAC1〜VAC4、電流データIL1,IL2および直流電圧データVDCを入力し、これらにもとづいてゲート駆動信号Vg1,Vg2を生成し、第1電力変換器20および第2電力変換器30のスイッチング素子を駆動する。
後に詳述するように、制御部80は、仮の電源端6または仮の負荷端7のいずれか一方が実際の変電所に接続されるように、変電所方向信号Dssを入力する。
図2に示すように、制御部80は、第1制御回路81と、第2制御回路82と、を含む。第1制御回路81は、第1電力変換器20の動作を制御するためのゲート駆動信号Vg1を第1電力変換器20に供給する。第2制御回路82は、第2電力変換器30の動作を制御するためのゲート駆動信号Vg2を第2電力変換器30に供給する。
第1制御回路81は、三相電圧検出回路91,92と、スイッチ93と、abc−dq変換回路94と、PLL95と、加減算器96,97と、dq−abc変換回路98と、ゲート信号生成回路99と、を含む。
第1制御回路81は、変電所方向信号Dssを入力することによって、仮の電源端6の交流電圧データVAC1,VAC2を入力するか、仮の負荷端7の交流電圧データVAC3,VAC4を入力するかを選択する。本実施形態では、仮の電源端6または仮の負荷端7側のうちいずれかが変電所方向であるか事前に判明しているものとする。
第1制御回路81は、選択された交流電圧データVAC1,VAC2または交流電圧データVAC3,VAC4にもとづいて、相ごとの補償電圧に対応する補償電圧指令を生成し、生成された補償電圧指令にもとづいてゲート駆動信号Vg1を生成する。生成されたゲート駆動信号Vg1は、第1電力変換器20の各スイッチング素子23a〜23fを駆動する。
三相電圧検出回路91は、仮の電源端6の交流電圧データVAC1,VAC2を入力して、電力系統の各相電圧を検出する。三相電圧検出回路91の出力は、abc−dq変換回路94に供給される。
三相電圧検出回路92は、仮の負荷端7の交流電圧データVAC3,VAC4を入力して、電力系統の各相電圧を検出する。三相電圧検出回路91の出力は、abc−dq変換回路94に供給される。
スイッチ93は、変電所方向信号Dssにもとづいて、三相電圧検出回路91,92のうちのいずれか一方を選択する。選択された一方の電圧が変電所から供給されている系統電圧である。この電圧を変電所接続端系統電圧Vsstともいうことする。変電所接続端系統電圧Vsstは、abc−dq変換回路94に入力される。たとえば、変電所方向信号Dssが論理値“1”の場合には、三相電圧検出回路91が変電所接続端の系統電圧Vsstをabc−dq変換回路94に接続する。変電所方向信号Dssが論理値“0”の場合には、三相電圧検出回路92が変電所接続端の系統電圧Vsstをabc−dq変換回路94に接続する。
abc−dq変換回路94は、三相交流の各相電圧を入力して回転座標変換する。abc−dq変換回路94は、クラーク(Clark)変換およびパーク(Park)変換を含むdq変換回路であり、式(1)によって各相電圧をdq変換する。式(1)のωは、変電所接続端系統電圧Vsstの角周波数であり、たとえば2π×50[rad/s]あるいは2π×60[rad/s]である。
abc−dq変換回路94は、系統電圧d軸成分d1および系統電圧q軸成分q1を出力する。これら各成分d1,q1は、互いに直交するベクトル量である。
出力された系統電圧d軸成分d1は、負荷電圧d軸目標値d1*とともに加減算器96に入力される。加減算器96は、偏差Δd1(=d1*−d1)を出力し、dq−abc変換回路98に入力する。
出力された系統電圧q軸成分q1は、負荷電圧q軸目標値q1*とともに加減算器97に入力される。加減算器97は、偏差Δq1(=q1*−q1)を出力し、dq−abc変換回路98に入力する。
本実施形態では、「系統電圧」d軸成分や「系統電圧」q軸成分は、変電所方向に接続された交流電圧データにもとづいて生成される。また、「負荷電圧」d軸目標値や「負荷電圧」q軸目標値は、実際の負荷端に出力される目標電圧の範囲にもとづいて設定される。
これらの偏差Δd1,Δq1は、各相電圧に対する補償電圧に対応しており、以下では、補償量Δd1,Δq1と呼ぶこととする。
dq−abc変換回路98は、逆パーク変換および逆クラーク変換を含む逆dq変換回路であり、式(2)によってd軸の補償量Δd1およびq軸の補償量Δq1をそれぞれ入力して、各相電圧の補償電圧指令を生成して出力する。
dq−abc変換回路98から出力された各相の補償電圧指令は、ゲート信号生成回路99に供給される。ゲート信号生成回路99は、PWM回路等を含み、各相の補償電圧指令にもとづいて、ゲート駆動信号Vg1を生成する。
図3に示すように、PLL95は、加減算器95aと、PI補償器95bと、加算器95cと、積分器95dと、を含む。加減算器95aは、基準電圧値0および系統電圧q軸成分q1の電圧値Vq1を入力して、これらの偏差を出力する。偏差は、PI補償器95bによって、偏差が0になるように比例積分演算されて出力される。PI補償器95bの出力は、加算器95cによって、電源角周波数ω0に加算された後に、積分器95dによって角度(位相)データθとして出力される。ここで、電源角周波数ω0は、変電所方向信号Dssによって選択された真の変電所方向の電圧の角周波数である。
PLL95は、系統電圧q軸成分q1の大きさがゼロになるように同期信号として位相θのデータを生成して出力する。PLL95の出力は、abc−dq変換回路94およびdq−abc変換回路98に供給される。abc−dq変換回路94およびdq−abc変換回路98は、PLL95によって、変電所接続端の系統電圧Vsstの位相θに同期して動作する。なお、PLL95は、同期信号である位相θにもとづく角速度ωのデータを出力することができる。
電圧補償方向決定回路105は、変電所方向信号Dssが入力される。電圧補償方向決定回路105は、実際の変電所方向に応じて、補償する電圧の極性を切り替える信号を出力する。たとえば、変電所方向信号Dssが論理値“1”の場合には、「1」を出力する。変電所方向信号Dssが論理値“0”の場合には、「−1」を出力する。
電圧補償方向決定回路105の出力は、乗算器106に接続されている。乗算器106は、各相に対応した補償電圧指令を入力する。たとえば、乗算器106は、各相の補償電圧指令に対して、「1」を乗じて出力する。実際の変電所方向に応じて、補償電圧指令の極性を反転する場合には、「−1」を乗じて出力する。乗算器106は、各相の極性を含めた電圧補償指令をゲート信号生成回路99に供給する。
第2制御回路82は、たとえば交流電流制御回路100を含む。交流電流制御回路100は、たとえば、直流電圧データVDCと、あらかじめ設定される直流電圧指令値VDC*との差分、および電流データIL1,IL2にもとづいて有効電流指令値を生成する。交流電流制御回路100は、生成した有効電流指令値にしたがって、第2電力変換器30の交流電流を制御して、コンデンサ24に流入する電力を操作する指令値を生成する。ゲート信号生成回路101は、生成された指令値にしたがって、ゲート駆動信号Vg2を生成する。
本実施形態の電圧補償装置1の動作について説明する。
本実施形態の電圧補償装置1では、仮の電源端6および仮の負荷端7のうちいずれか一方が変電所方向に設定されている。電力を供給する変電所は、インピーダンスの低い電圧源としてふるまうので、電圧補償装置1から見た場合、変電所側のインピーダンスは、負荷側のインピーダンスに比べて十分低い。電圧補償装置1は、変電所側の電圧を基準にして、負荷側の電圧を補償する。
本実施形態の場合には、変電所方向があらかじめ判明しているので、その方向に合わせて、変電所方向信号Dssを供給する。たとえば、仮の電源端6が変電所方向である場合には、変電所方向信号Dssを論理値“1”に設定して、スイッチ93によって三相電圧検出回路91の出力を選択する。電圧補償装置1は、交流電圧データVAC1,VAC2を用いて、仮の負荷端7の電圧を補償する。
仮の電源端6の電圧が、目標値または目標の電圧範囲(以下、目標値等という。)よりも低い場合には、電圧補償装置1は、仮の負荷端7の電圧が目標値等となるように、直列変圧器を介して仮の電源端6の電圧に補償電圧を加算する。本実施形態の電圧補償装置1では、第1電力変換器20は、直列変圧器11,13,15を介して、電力系統の各相電圧に補償電圧を加算する。
仮の電源端6の電圧が、目標値等よりも高い場合には、電圧補償装置1は、仮の負荷端7の電圧が、目標値等となるように、直列変圧器を介して仮の電源端6の電圧から補償電圧を減算する。補償電圧を減算することは、仮の電源端6の電圧とは180°位相が異なる位相を有する補償電圧を加算することを意味する。なお、上述の変電所方向信号Dssの設定値は一例である。異なる論理値を割り当ててもよいし、論理値でなくアナログ値を設定してももちろんよい。
仮の負荷端7が変電所方向である場合には、変電所方向信号Dssを論理値“0”に設定して、スイッチ93によって三相電圧検出回路92の出力を選択する。電圧補償装置1は、交流電圧検出器73,74によって検出された交流電圧データVAC3,VAC4を用いて、仮の電源端6の電圧を補償する。
仮の負荷端7の電圧が目標値等よりも低い場合には、電圧補償装置1は、仮の電源端6の電圧が目標値等となるように、直列変圧器を介して仮の負荷端7の電圧に補償電圧を加算する。
仮の負荷端7の電圧が、目標値等よりも高い場合には、電圧補償装置1は、仮の電源端6の電圧が目標値等となるように、直列変圧器を介して仮の負荷端7の電圧に、仮の負荷端7の電圧と180°位相の異なる補償電圧を加算する。
補償電圧の生成に関してより詳細に説明する。
三相電圧検出回路91,92のいずれか一方から出力された変電所方向の電圧は、abc−dq変換回路94に入力される。abc−dq変換回路94は、系統電圧d軸成分d1および系統電圧q軸成分q1を出力する。
系統電圧d軸成分d1は、負荷電圧d軸目標値d1*とともに加減算器96に入力される。加減算器96は、系統電圧d軸成分d1および負荷電圧d軸目標値d1*の偏差である補償量Δd1を出力する。
系統電圧q軸成分q1は、負荷電圧q軸目標値q1*とともに加減算器97に入力される。加減算器97は、系統電圧q軸成分q1および負荷電圧q軸目標値q1*の偏差である補償量Δq1を出力する。
三相電圧をdq変換した場合には、q軸成分は、d軸成分に直交する電圧成分として生成される。本実施形態では変電所方向はあらかじめ判明しているため、系統電圧q軸目標値q1*は0としてよい。abc−dq変換回路94およびdq−abc変換回路98は、PLL95によってq1=0となるように同期して動作するので、q1*=0とした場合には、加減算器97の出力も0である。
なお、系統電圧q軸目標値q1*を0でない値に設定することによって、後述する他の実施形態において、変電所方向の電圧が目標値等にある場合を含めて、変電所方向を判別することができる。
加減算器96が出力する補償量Δd1は、変電所方向の電圧の目標値に対する偏差を表しており、第1制御回路81は、補償量Δd1にもとづいて補償電圧指令を生成し、補償量Δd1に応じた補償電圧を出力するようにゲート駆動信号Vg1を生成する。
本実施形態の電圧補償装置1の効果について、比較例の電圧補償装置200と比較しつつ説明する。
図4は、比較例の電圧補償装置を例示するブロック図である。
図4に示すように、比較例の電圧補償装置200は、直列変圧器211,213,215と、タップ切替回路220a,220bと、並列変圧器241,242と、交流電圧検出器271〜274と、制御部280とを有する。
比較例の電圧補償装置200では、直列変圧器211,213,215の一次巻線は、電力系統の各相に直列に接続されている。直列変圧器211,213,215の各二次巻線の一端は、互いに接続されている。直列変圧器211の二次巻線の他端は、タップ切替回路220aの一方の端子に接続されている。直列変圧器213の二次巻線の他端は、タップ切替回路220aの他方の端子に接続されている。直列変圧器213の二次巻線の他端は、また、タップ切替回路220bの一方の端子にも接続されている。直列変圧器215の二次巻線の他端は、タップ切替回路220bの他方の端子に接続されている。
タップ切替回路220aは、並列変圧器241の二次側のタップの数に応じたスイッチ回路222a〜222fを含んでいる。スイッチ回路222a〜222fは、サイリスタが逆並列に接続された双方向スイッチ回路である。スイッチ回路222a,222dは直列に接続されている。スイッチ回路222c,222eは直列に接続されている。スイッチ回路222c,222fは直列に接続されている。直列に接続された双方向スイッチ回路の接続ノードに、並列変圧器241の二次側が接続されている。
タップ切替回路220bは、タップ切替回路220aと同じ回路構成を有している。スイッチ回路222g〜222mは、サイリスタが逆並列に接続された双方向スイッチ回路が直列に接続され、直列に接続された双方向スイッチ回路の数は、並列変圧器242の二次側に接続されている。
並列変圧器241の一次巻線は、U相の下流(u相)とV相の下流(v相)との間に接続されている。並列変圧器242の一次巻線は、V相の下流(v相)とW相の下流(w相)との間に接続されている。並列変圧器241,242のそれぞれの二次巻線の各タップは、双方向スイッチの直列接続ノードに接続されている。
交流電圧検出器271〜274は、本実施形態の電圧補償装置1の交流電圧検出器71〜74と同様に接続されている。
制御部280は、電力系統の電圧の目標電圧の上限値および下限値を有している。交流電圧検出器271〜274の検出結果と目標電圧の上限値および下限値とを比較して、サイリスタのゲートを点弧する信号を生成する。
接触器291,292は、タップ切替回路220a,220bの両端に接続されている。接触器291,292は、電力系統に地絡等の事故があった場合に、タップ切替回路220a,220bを保護するために動作する。
比較例の電圧補償装置200では、直列変圧器211,213,215の二次巻線と、並列変圧器241,242の二次巻線とが、サイリスタによる双方向スイッチ222a〜222mによって接続されている。制御部280は、交流電圧検出器271〜274の検出結果と、あらかじめ設定されている目標電圧の上限値および下限値とを比較する。そして、制御部280は、各相の電圧が目標値の下限値よりも低いときには、直列変圧器の一次巻線の電圧が高くなるように、より高い電圧を出力するタップに接続するように双方向スイッチを制御する。
たとえば、U相の下流の電圧が低いときには、制御部280は、双方向スイッチ222c,222dをオンさせるようにゲート駆動信号を生成する。双方向スイッチ222c,220dは、並列変圧器241のタップのうちもっとも高い電圧を発生するタップに接続されている。U相の下流の電圧が高いときには、制御部280は、双方向スイッチ222a,222fをオンさせるようにゲート駆動信号を生成する。双方向スイッチ222a,222fは、並列変圧器241のタップのうちもっとも高い電圧を生成するタップに接続し、接続されたタップの電圧は、U相の電圧とは逆位相で印加される。
このような比較例の電圧補償装置200では、変電所がU相、V相およびW相の側に接続されていることを前提に、下流のu相、v相およびw相の各相電圧を補償することとしている。そのため、送電網の切り替え等によって変電所の接続が変更された場合には、電圧補償装置200は、電圧補償動作を行うことができない。変電所の接続方向が変更された場合には、比較例の電圧補償装置では、上流と下流のそれぞれの接続を切り替える必要があり、長時間にわたって送電を遮断することとなる。
比較例の電圧補償装置200では、並列変圧器241,242に設けられたタップを切り替えることによって直列変圧器211,213,215の電圧を補償するので、補償電圧の設定値は、タップの数に依存した離散値となる。比較例の電圧補償装置200では、補償電圧が離散的であるために、電力系統の下流にさらに無効電力補償装置等の追加的設備が必要となり、システムが複雑になり、費用も増大する。
比較例の電圧補償装置200では、補償電圧を離散的にしか設定することができないので、相ごとに電圧設定して、不平衡電圧を補償することが困難である。したがって、電力系統の下流に不平衡負荷が接続された場合等には、電力系統の上流にも不平衡負荷の影響がおよぶおそれがある。
比較例の電圧補償装置200のサイリスタによる双方向スイッチでは、並列変圧器241,242のタップを切り替える際に、電力系統の各相の電圧の1/2周期分の時間を要する。そのため、電圧補償装置200の応答時間は、電力系統の周期によって制約される。
このような比較例の電圧補償装置200に対して、本実施形態の電圧補償装置1では、変電所方向信号Dssを入力することによって、変電所方向を、適時適切に設定することができる。そのため、電圧補償装置1は、電圧補償装置1の設置時に限らず、送電網の切り替えに応じて適切な補償電圧を出力することができる。
第1電力変換器20は、第1制御回路81内では、検出される電圧データや補償量は、ほぼ連続的なデータとして生成される。たとえば、交流電圧データVAC1〜VAC4の値は、アナログディジタル変換器(AD変換器)で読み取られるので、これらのデータは、AD変換器の分解能により決定される程度まで精度が高められる。したがって、ほぼ連続的な値を有する補償電圧を設定することができる。本実施形態の電圧補償装置1を用いた電力系統システムでは、補償電圧の精度を高める装置やシステムを必要としないので、系統のシステム全体を簡素にすることができ、費用を抑制することができる。
また、上述のとおり、本実施形態の電圧補償装置1では、相ごとに独立して補償電圧を設定することができるので、不平衡電圧の補償も行うことができる。したがって、上流の不平衡状態を下流に及ぼすことを効果的に防止することができる。
さらに、本実施形態の電圧補償装置1では、自己消弧形のスイッチング素子を用いた電力変換器によって電圧補償を行うので、電力系統の周期にかかわらず、高速に電圧補償動作を行うことができる。
従来より、変電所からの距離に応じて電力系統の電圧の低下等が予想される箇所には、電圧を補償する工夫がなされていた。たとえば柱上変圧器の電圧低下が予想される系統末端では、あらかじめタップ位置を高い電圧に設定する等である。また系統インピーダンスに対し、進み無効電力を注入することで電圧をサポートする進相コンデンサも用いられる。しかし、これらの対策は各需要家が電力を消費することを前提とした対策であり、夜間のように電力需要低下した際には、不必要に系統電圧を上昇させてしまう問題がある。
これらの問題に対処するため、比較例の電圧補償装置200のようなTVR(Thyristor Voltage Regulator)が、提案されている。上述したように、TVRは、系統電圧に応じて補償電圧を可変する機能を持つため、電力需要の大きい昼間の電力低下に対応することができ、夜間の電圧上昇にも対応できるとされている。
しかしながらTVRは、サイリスタで並列変圧器タップを切り替えて直列変圧器への印加電圧を操作し電圧補償動作するため、応答時間が遅く、また補償電圧が変圧器タップに依存するため不連続な電圧補償動作であり、家庭用太陽光発電の普及に伴い、逆潮流が増加した昨今の電力系統において電圧異常を補償しきれない状況が生じている。
本実施形態の電圧補償装置1では、連続的な電圧補償を可能とするのみならず、各相独立した電圧補償を可能とすることによって、近年の複雑化された電力系統の電圧補償を高速かつ効果的に行うことができる。
(第1の実施形態の変形例)
図5は、本変形例の電圧補償装置1aを例示するブロック図である。
直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、スター結線されている。二次巻線11s,13s,15sは、スター結線に限らず、デルタ結線とすることもできる。
本変形例の電圧補償装置1aでは、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sの結線以外は、第1の実施形態の電圧補償装置1と同一であり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すように、本変形例の電圧補償装置1aでは、電圧補償部10aの直列変圧器11の二次巻線11sは、端子12a,12bを含む。直列変圧器13の二次巻線13sは、端子14a,14bを含む。直列変圧器15の二次巻線15sは、端子16a,16bを含む。それぞれの二次巻線11s,13s,15sの一方の端子12a,14a,16aは、巻き始めであり、他方の端子12b,14b,16bは、巻き終わりである。一方の端子12aは、他方の端子14bと接続され、一方の端子14aは、他方の端子16bと接続され、一方の端子16aは、他方の端子12bと接続されている。端子12a,14bの接続ノードは、第1電力変換器20の交流端子22bに接続されている。端子14a,16bの接続ノードは、第1電力変換器20の交流端子22cに接続されている。端子16a,12bの接続ノードは、第1電力変換器20の交流端子22aに接続されている。つまり、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、デルタ結線されて、フィルタ26を介して、第1電力変換器20の各交流端子22a,22b,22cに接続されている。
本変形例の電圧補償装置1aは、第1の実施形態の電圧補償装置1と同様に動作する。
本実施形態の電圧補償装置1aの作用および効果について説明する。
第1電力変換器20の出力にスター結線の直列変圧器を接続した場合には、二次巻線の一方の端子を第1電力変換器20の出力に接続するので、結線作業が容易になるとの利点がある。その一方で、スター結線では、二次巻線の他方の端子を互いに接続して中性点とするが、中性点が他に接続されず、変圧器の非線形性等により電圧歪が発生したときに、電流を他に流すことができないため、電圧歪現象が解消されにくい場合がある。
第1電力変換器20の出力にデルタ結線の直列変圧器を接続した場合には、各相の二次巻線を互いに接続する等して結線作業が煩雑になる反面、二次巻線内に還流電流を流すことができる。そのため、電圧補償装置1aは、電圧歪みを発生しにくく、高品質の電力を電力系統に対して連系することができる。
本実施形態の電圧補償装置1aでは、第1電力変換器20の出力に接続された直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sがデルタ結線されているので、電圧歪の少ない高品質の電力の連系が可能になる。
直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、以下説明する他の実施形態においても、スター結線またはデルタ結線のいずれかを適用することができる。
(第2の実施形態)
図6は、本実施形態の電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。
図6には、本実施形態の場合の第1制御回路81bのブロック図の例が示されている。本実施形態の場合には、電圧補償装置は、変電所方向を自ら検出し、検出した変電所方向を示す変電所方向信号Dssを生成する。そして、電圧補償装置は、自ら生成した変電所方向信号Dssによって、変電所側の交流電圧データを入力して、負荷側の電圧を補償する。
第1制御回路81bは、変電所方向信号生成回路110を含む。変電所方向信号生成回路110は、補償量Δd1,Δq1を入力して、これらにもとづいて、変電所方向を検出し、検出された変電所方向を示す変電所方向信号Dssを生成する。生成された変電所方向信号Dssによって、仮の電源端6および仮の負荷端7のうちいずれか一方が選択され、電圧補償装置は、選択された側の交流電圧データにもとづいて、実際の負荷側の電圧を補償する。
変電所方向信号生成回路110は、判別回路111と、初期値設定部112と、を含む。判別回路111は、加減算器96,97の出力に接続されている。判別回路111は、加減算器96,97から補償量Δd1,Δq1を入力して、これらにもとづいて変電所方向を判別し変電所方向信号Dssを生成する。
初期値設定部112の出力は、判別回路111に接続されている。初期値設定部112は、変電所方向信号Dssの初期値が設定されている。変電所方向信号Dssの初期値は、電圧補償装置の起動時の変電所方向信号Dssを設定する。たとえば、初回の起動時には、初期値設定部112は、仮の電源端6の交流電圧データVAC1,VAC2を入力する変電所方向信号Dssを生成するように判別回路111を設定する。初期値設定部112の初期値は、任意に設定されることができる。電圧補償装置の最初の起動時に、仮の負荷端7の交流電圧データVAC3,VAC4を用いるようにしてももちろんよい。初期値設定部112は、任意の時点で書き換えられてもよい。たとえば、電圧補償装置が2度目以降に起動する場合には、前回判別された変電所方向を初期値とするようにしてもよい。
本実施形態の場合の変電所方向を検出して電圧補償する動作について説明する。
図7(a)〜図9(d)は、本実施形態の電圧補償装置の動作例を説明する概念図である。
ここで説明する例では、初期値設定部112によって仮の電源端6が変電所方向に設定されているものとする。つまり、判別回路111は、仮の電源端6の交流電圧データVAC1,VAC2によって検出された三相電圧をabc−dq変換回路94に入力するように、変電所方向信号Dssを出力する。そして、仮の電源端6が真の変電所方向である場合には、変電所方向信号Dssが維持される。仮の電源端6が真の変電所方向でない場合には、変電所方向信号Dssが切り替えられる。
図7(a)〜図7(d)では、変電所方向の電圧Vssが目標値等よりも低いか、高い場合の電圧補償の動作が示されている。図8および図9では、変電所方向の電圧Vssが目標値等にある場合の電圧補償の動作が示されている。
本実施形態の電圧補償装置の変電所方向の判別方法では、電圧補償装置1bから見た変電所SS側のインピーダンスが負荷DE側に比べて十分低いため、変電所SS側の電圧に対して補償動作を行っても、変電所SS側の電圧が変化しないことを利用する。仮の電源端6の側あるいは仮の負荷端7の側のいずれかの電圧に対して補償動作を行った場合に、電圧補償装置は、電圧補償できない側が変電所方向であり、電圧補償できた側が実際の負荷に接続されていると判定する。
この実施形態においてより具体的には、変電所方向信号生成回路110は、実際の負荷の側の電圧を電圧補償しようとした場合には、補償量Δd1が一定値に収束し、変電所側の電圧を電圧補償しようとした場合には、補償量Δd1’が一定値に収束せず発散して最大値で飽和することを検出する。
まず、図7(a)および図7(b)に示される場合について説明する。図7(a)に示すように、電圧補償装置1bは、仮の電源端6の端子2a〜2cを介して変電所SSに接続され、仮の負荷端7の端子3a〜3cを介して負荷DEに接続されている。つまり、仮の電源端6が真の変電所方向である。
第1制御回路81bのabc−dq変換回路94には、変電所SSから供給され、端子2a〜2cに印加されている電圧Vssのデータが入力される。abc−dq変換回路94は、電圧Vssのデータにdq変換を施して、系統電圧d軸成分d1および系統電圧q軸成分q1を出力する。ここで、系統電圧q軸成分q1は、PLL95によって0に制御される。つまり、abc−dq変換回路94は、電圧Vssの位相に同期してdq変換を行い、dq−abc変換回路98は、電圧Vssの位相に同期して逆dq変換を行う。
加減算器96は、系統電圧d軸成分d1および負荷電圧d軸目標値d1*の偏差を補償量Δd1として出力する。負荷電圧d軸目標値d1*は、目標となる系統電圧の範囲に対応し、これにもとづいて設定される。ここでは、負荷電圧d軸目標値d1*に対応する電圧を目標電圧Vrefとする。
なお、「系統電圧」d軸成分や「系統電圧」q軸成分という場合に、「系統電圧」は、仮の電源端6の電圧の意味であり、以下説明する例では、実際の系統電圧(真の変電所側の電圧)と必ずしも一致しない場合がある。また、「負荷電圧」d軸目標値や「負荷電圧」q軸目標値という場合にも、「負荷電圧」は、仮の負荷端7の電圧の意味であり、実際の負荷電圧と必ずしも一致しない場合がある。
図7(a)〜図7(d)の例では、変電所方向検出の原理を説明するために、負荷電圧q軸目標値q1*は、0であるものとする。したがって、q軸の補償量Δq1は常に0である。なお、一般には、後述するように、負荷電圧q軸目標値q1*は、負荷電圧d軸目標値d1*に比べて十分小さく、0ではない値に設定される。
図7(b)に示すように、電圧Vssが目標電圧Vrefを下回っている場合には、電圧Vssに対応する系統電圧d軸成分d1は、目標電圧Vrefに対応する負荷電圧d軸目標値d1*よりも小さい。したがって、補償量Δd1は正の値を有する。電圧補償装置1bは、補償量Δd1に応じて、電圧Vssに対して正の補償電圧Vcを出力する。負荷DE側の電圧VDEは、以下のように表される。
VDE=Vss+Vc,Vc>0 (3)
電圧Vssが目標電圧Vrefを上回る場合には、系統電圧d軸成分d1は、負荷電圧d軸目標値d1*よりも大きい。したがって、補償量Δd1は負の値を有する。電圧補償装置1bは、正の値を有する補償量Δd1に応じて、電圧Vssに対する補償電圧−Vcを出力する。補償電圧Vcは負の値を有する。負荷の電圧VDEは、以下のように表される。
VDE=Vss+Vc,Vc<0
変電所SSの側の電圧Vssと180°位相の異なる補償電圧Vcを生成し、電圧Vssに加算することによって、補償電圧Vcを負の値にすることができる。
次に、図7(c)および図7(d)に示される場合について説明する。図7(c)に示すように、電圧補償装置1bが、仮の電源端6の端子2a〜2cを介して、負荷DEに接続され、仮の負荷端7の端子3a〜3cを介して、変電所SSに接続されている。つまり、仮の負荷端7が真の変電所方向である。
変電所方向信号Dssは初期値に設定されているので、abc−dq変換回路94には、変電所SSから送電されて、電圧補償装置1bを介して負荷DEに表れている電圧VDEのデータが入力される。
abc−dq変換回路94は、負荷DEの電圧VDEのデータにdq変換を施して、系統電圧d軸成分d1’および系統電圧q軸成分q1’として出力する。実際にdq変換を施しているのは、負荷DEの電圧VDEである。系統電圧q軸成分q1’は、PLL95によって0に制御される。つまり、abc−dq変換回路94は、電圧VDEの位相に同期してdq変換を行い、dq−abc変換回路98は、電圧VDEの位相に同期して逆dq変換を行う。なお、以下では、上述のように、電圧補償装置が実際に変電所が接続されている接続端と反対の接続端を電源端として動作することを、電圧補償装置が変電所方向を誤認している、のようにいうことがある。
図7(d)に示すように、電圧VDEが目標電圧Vrefを下回っている場合には、電圧VDEに対応する系統電圧d軸成分d1’は、目標電圧Vrefに対応する負荷電圧d軸目標値d1*よりも小さい。したがって、補償量Δd1’は、正の値を有する。電圧補償装置1bは、補償量Δd1’に応じて、電圧VDEに対して正の補償電圧Vc’を出力する。
電圧補償装置1bは、仮の電源端6を変電所方向と誤認しているので、図の破線の矢印のように、補償電圧Vc’を当初の電圧VDEに加算するように生成する。仮の負荷端7の電圧Vssは、以下のように表される。
Vss=VDE+Vc’,Vc’>0
上式において、Vssは一定であるため、実際の負荷DE側の電圧VDEに補償電圧Vc’を加算しても、目標電圧Vref(>Vss)に等しくすることができない。
電圧補償装置1bは、補償電圧Vc’を加算しても電圧Vssが上昇しないので、より大きな補償量Δd1’を生成して、補償電圧Vc’を上昇させようとする。このように、電圧補償装置1bが正帰還動作となった場合には、補償量Δd1’は、一定値に収束しない。補償量Δd1’は、正帰還動作によって発散し、補償電圧Vc’の最大値に対応する値に達して飽和する。補償量Δd1,Δd1’および補償電圧Vc,Vc’の最大値は、第1電力変換器20が出力することができる最大電圧によって設定される。
判別回路111は、補償量Δd1’が最大値に達したことを検出し、現在の接続状態が変電所方向を誤認していることを判別することができる。つまり、判別回路111は、仮の負荷端7の端子3a〜3cに変電所SSが接続されていることを検出することができる。判別回路111は、仮の負荷端7の交流電圧データVAC3,VAC4を用いるように、スイッチ93を切り替える変電所方向信号Dssを生成する。
電圧Vssが目標電圧Vrefを下回る場合には、補償量Δd1は正の値を有する。電圧補償装置1bは、正の値を有する補償量Δd1を打ち消すように、電圧Vssに対する補償電圧Vc’を出力する。補償電圧Vc’は負の値を有する。負荷の電圧VDEは、以下のように表される。
VDE=Vss+Vc’,Vc’<0
Vc>0の場合と同様に、電圧補償装置1bは、補償することができない電圧Vssを補償するために、より絶対値の大きい補償量Δd1’を生成する。補償量Δd1’は、正帰還動作によって、最大値に達する。判別回路111は、変電所方向を誤認していると判断し、スイッチ93を切り替える変電所方向信号Dssを生成する。
上述では、電力系統の電圧が目標値等よりも低い場合や高い場合について説明した。しかし、電力系統の電圧が目標値等にある場合には、補償量Δd1は0になるので、電圧補償装置は電圧補償を行わず、変電所方向を判別することもできない。そのような場合であっても、本実施形態の電圧補償装置では、変電所方向を判別するために、負荷電圧q軸目標値q1*を用いる。
まず、図7(a)のように、仮の電源端6と実際の変電所方向が一致している場合について説明する。図8(a)に示すように、目標電圧Vrefと変電所SS側の電圧Vssの大きさが一致している場合には、補償量Δd1は0となる。
第1制御回路81bは、負荷電圧q軸目標値q1*から、abc−dq変換回路94から出力された系統電圧q軸成分q1を差し引いて、補償量Δq1を生成する。系統電圧q軸成分q1は、PLL95によって0に制御されるので、補償量Δq1は、q1*となる。
補償量Δd1に対応する補償電圧をVcとした場合に、補償量Δq1は、補償電圧Vcに直交する電圧Vcqに対応する。そこで、式(3)の電圧をそれぞれベクトルとすると、式(4)のようになる。なお、この例では、Vc=0だが、より一般的には、式(4)の右辺にベクトルとしてのVcを加算してよい。
図8(b)は、負荷電圧q軸目標値q1*が注入された後の各部の電圧ベクトルの関係を示している。図8(b)に示すように、変電所方向の電圧Vss(=Vref)に補償電圧Vcqをベクトル加算することによって、負荷DE側の電圧VDEを得ることができる。補償電圧Vcqが加算されることによって、電圧VDEは電圧Vssに対して位相差δを有し、電圧VDEの大きさは、変電所SS側の電圧Vssの大きさよりも大きくなる。
この場合には、補償量Δd1,Δq1ともに一定である。具体的には、補償量Δd1は、0であり、最大値よりも小さい。したがって、判別回路111は、正しい変電所方向を認識しており、この変電所方向信号Dssを維持する。
次に、図7(c)のように、仮の電源端6が実際の変電所方向と一致せず、仮の負荷端7が真の変電所方向である場合について説明する。図9(a)に示すように、当初、目標電圧Vrefと負荷DE側の電圧VDEがd軸上で大きさが一致している場合には、対応する補償量Δd1’は0である。
図9(b)〜図9(d)は、負荷電圧q軸目標値q1*が注入された後の各部の電圧ベクトルの関係を示している。また、図9(b)〜図9(d)では、実線の座標軸は、仮の負荷端7、つまり変電所方向の電圧Vssに関するものである。一点鎖線の座標軸は、仮の電源端6、つまり実際には負荷DE側の電圧VDEに関するものである。負荷電圧q軸目標値q1*を注入することによって負荷DE側の座標軸が負荷電圧q軸目標値q1*に応じて回転していることを示している。破線の一部円は、負荷DE側の電圧VDEのd軸の目標電圧(目標値)の軌跡である。
図9(b)に示すように、負荷電圧q軸目標値q1*が入力されると、電圧補償装置1bは、q1*に対応する補償電圧Vcq’を出力する。しかし、電圧補償装置1bは、負荷DE側の電圧VDEに補償電圧Vcq’を加算して変電所SS側の電圧Vssに一致させようとすると、電圧Vssが一定のため、破線の目標値に対してd軸の値が減少する。そのため、本来発生しないはずの補償量Δd1’が発生し、電圧補償装置1bは、補償量Δd1’に応じた補償電圧Vc’を出力する。電圧補償装置1bは、補償量Δd1’を解消するために、より大きな補償電圧Vc’を発生しようとする(図9(c))。補償量Δd1’は、正帰還によりさらに増大し、補償電圧Vc’の最大値に達して飽和するまで動作する(図9(d))。
したがって、補償量Δd1’の大きさが最大値に達した場合には、変電所方向信号生成回路110は、変電所方向が仮の電源端6でなく、仮の負荷端7であると判定する。判別回路111は、交流電圧データVAC3,VAC4をabc−dq変換回路94に入力するように、スイッチ93を切り替えるように変電所方向信号Dssを生成する。
上述では、説明の便宜上、変電所方向の電圧Vssまたは負荷DE側の電圧VDEが、目標電圧Vrefと等しい(または目標電圧の範囲内)か否かによって区別して説明した。本実施形態の電圧補償装置1bでは、いずれの場合であっても、目標値d1*,q1*を入力して、補償量Δd1の大きさを判別することによって変電所方向を検出し、検出された変電所方向の電圧を基準にして、負荷DE側の電圧を適切に補償することができる。
また、本実施形態の電圧補償装置1bでは、負荷電圧q軸目標値q1*を注入することによって、仮の電源端6の電圧と仮の負荷端7の電圧との間に位相差δを生じさせることができる。そのため、後述する効果において説明するように、仮の負荷端7に出力制限機能付きのパワーコンディショナが連系された場合であっても、変電所方向を正確に検出することができる。
本実施形態の電圧補償装置の作用および効果について説明する。
電圧補償装置1bは、変電所と負荷との間で、電圧が低下している箇所に挿入される。たとえば、電圧補償装置1bは、最初に設置される場合には、変電所方向が判明していることが多く、作業指示書等によって変電所方向に指示されている側を仮の電源端6とすることになんら問題はない。このような場合には、第1の実施形態の電圧補償装置1のように、オペレータが作業指示書にしたがって、変電所方向信号を設定することができる。
近年、電力系統の送電網は、複雑に構成されている場合があり、需要者側の電力需要に応じ、あるいは、上流の系統事故等に対応して、送電網の切り替えを適宜行うことがある。たとえば、電圧補償装置1bが設けられた送電線の一方の変電所から送電される場合もあり、上述の理由等で、他方の側の変電所に切り替えて送電される場合もあり、電圧補償装置は、いずれの場合にも対応する必要がある。
電圧補償装置の変電所方向信号Dssを、電力網制御システム等を用いて、有線あるいは無線で送電網の状態に応じて切り替えることも可能だが、切り替え制御の対象が多く、広範囲に実用とするには困難もある。本実施形態の電圧補償装置1bでは、変電所方向信号生成回路110を有しているので、電圧補償装置1b自身が変電所SSの方向を常時あるいは適時監視することができ、変電所の方向を自動的に判別して、適切に接続することができる。したがって、特別な電力網制御システム等を導入することなく、簡便に適切な接続を得ることができ、電力系統システムの簡素化、低コスト化等実現することができる。
近年、電力系統の需要者側に太陽光発電システム等の系統に逆潮流する装置が連系されることが顕著である。このような場合であっても、本実施形態の電圧補償装置1bは、負荷電圧q軸目標値q1*を注入することによって、変電所方向を自ら判別し、適切方向に接続することができる。
太陽光発電システムのパワーコンディショナ(Power Conditioning System、PCS)が連系された電力系統では、逆潮流が増加するほど系統電圧が上昇する。PCSの多くは、出力制限機能を有している。PCSの出力制限機能は、系統電圧が一定以上に上昇しないように、系統電圧があらかじめ設定された電圧に達した場合に、出力を制限して逆潮流量を低下させる。
変電所側の電圧および負荷側の電圧のうちのいずれか一方の電圧を操作して電圧が変化するか否かで真の変電所方向を検出する方法では、出力制限機能を有するPCSが負荷DE側に接続された場合には、変電所方向を検出することができない。具体的には、PCSの逆潮流量が増加し、出力制限機能が動作している場合に、電圧補償装置が電圧を低下させるように電圧補償動作すると、PCSは、系統電圧が低下したものと判断し、出力制限機能を解除する。そのため、PCSによる逆潮流量は増加し、負荷DE側の電圧が上昇する。つまり、PCSの出力制限機能の動作および解除により、電力系統の電圧が変化しないこととなる。
本実施形態の電圧補償装置1bでは、負荷電圧q軸目標値q1*を注入するので、負荷DE側の電圧に変電所側の電圧に対して位相差を生じさせることができる。つまり、電圧補償装置1bは、負荷DE側の位相を変化させることによって、電圧VDEの大きさを変化させることができる。出力制限機能を有するPCSは、位相差δを生じた電圧VDEを制御することはできないので、負荷DE側に出力制限機能を有するPCSが連系されていても、電圧補償装置1bは、変電所方向を正確に判別することができる。
(第3の実施形態)
図10は、本実施形態の電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。
本実施形態の電圧補償装置では、変電所方向信号生成回路310の構成が第2の実施形態の場合と相違する。第1制御回路81cは、変電所方向信号生成回路310を含む。変電所方向信号生成回路310は、スイッチ311と、abc−dq変換回路313と、負荷電圧位相演算回路314と、判別回路315と、初期値設定部316と、を含む。
スイッチ311は、三相電圧検出回路91,92のうちのいずれか一方を選択して、abc−dq変換回路313に接続する。スイッチ311は、スイッチ93と相補的に動作する。この例では、インバータ312を介して変電所方向信号Dssを入力する。すなわち、スイッチ93が三相電圧検出回路91を選択している場合には、スイッチ311は三相電圧検出回路92を選択する。スイッチ93が三相電圧検出回路92を選択している場合には、スイッチ311は、三相電圧検出回路91を選択する。
abc−dq変換回路313は、三相電圧検出回路91,92のいずれかの出力を入力して、dq変換する。abc−dq変換回路313は、PLL95により位相同期がかけられている。
負荷電圧位相演算回路314は、abc−dq変換回路313からd軸成分およびq軸成分をそれぞれ入力する。負荷電圧位相演算回路314は、入力されたd軸成分およびq軸成分に位相差が生じたか否かを計算する。計算された結果は、判別回路315に入力され、仮の電源端6が真の変電所方向であるか否かを判別する。初期値設定部316は、第2の実施形態の場合と同様に変電所方向の初期値を設定する。
本実施形態の電圧補償装置の動作について説明する。
本実施形態の電圧補償装置の変電所方向信号生成回路310のabc−dq変換回路313は、abc−dq変換回路94に真の変電所方向の電圧が入力されているときには、負荷側の電圧が入力される。このとき、abc−dq変換回路313は、負荷側の電圧の同相成分およびその電圧の直交成分を出力する。abc−dq変換回路313は、変電所方向の電圧の位相に同期して動作している。そのため、負荷側の同相電圧は、変電所方向の電圧から、補償量Δq1によって生成される位相差δを生ずる。
負荷電圧位相演算回路314では、負荷側の電圧の位相が、補償量Δq1によって生成された位相差δを含むか否かを計算する。負荷側の電圧の位相から位相差δを抽出できた場合には、正しい位相差を検出した旨の信号を出力する。
判別回路315は、正しい位相差である旨の信号を入力することによって、真の変電所方向に接続されているものと判別し、スイッチ93,311に対して接続を維持する信号を生成する。
一方、電圧補償装置が変電所方向を誤認している場合には、abc−dq変換回路94に、負荷側の電圧が入力され、変電所方向信号生成回路310のabc−dq変換回路313には、変電所方向の電圧が入力されている。第1の実施形態の場合と同様に、変電所方向の電圧は、負荷側の電圧によっては変動せず、負荷側の電圧による位相差を生ずることはない。そのため、abc−dq変換回路313が出力する電圧の位相は、補償量Δd1,Δq1によって生成される位相差δに等しくならない。そのため、負荷電圧位相演算回路314は、正しい位相差ではない旨の信号を出力する。
判別回路315は、正しい位相差でない旨の信号によって、スイッチ93,311に対して接続を切り替える信号を生成する。スイッチ93,311の接続が切り替えられたことによって、abc−dq変換回路94には、真の変電所方向の電圧が入力され、上述した動作にしたがって、動作する。
本実施形態の電圧補償装置の効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置では、上述の他の実施形態の場合と同様の効果を生ずる。また、出力制限機能付きのPCSが負荷側に連系された場合であっても、負荷電圧同相成分および負荷電圧直交成分の変電所側の電圧に対する位相差δを検出することによって、真の変電所方向を正確に検出することができる。本実施形態の電圧補償装置では、出力の飽和を検出する必要がないので、より迅速に変電所方向を判別することができる。
(第4の実施形態)
図11は、本実施形態の電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。
本実施形態の場合には、接続判別のために、電源の周波数変化を検出する。
図11に示すように、第1制御回路81dは、変電所方向信号生成回路410を含む。本実施形態の電圧補償装置では、変電所方向信号生成回路410の構成が、他の実施形態の場合と異なる。本実施形態の場合には、変電所方向信号生成回路410は、PLL414と、微分器415,416と、を含む点で第3の実施形態の場合と相違する。他の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
スイッチ311、インバータ312およびabc−dq変換回路313は、第3の実施形態の場合と同一である。ただし、abc−dq変換回路313は、出力に接続されたPLL414から出力される位相θ2に同期して動作する。abc−dq変換回路94は、出力に接続されたPLL95から出力される位相θ1に同期して動作する。つまり、変電所方向信号生成回路410のabc−dq変換回路313は、電圧補償装置が真の変電所方向に接続されている場合には、負荷側の電圧に同期して動作する。変電所方向信号生成回路410のabc−dq変換回路313は、電圧補償装置が負荷側に接続されている場合には、変電所方向の電圧の位相に同期して動作する。
PLL414は、abc−dq変換回路313の直交成分側の出力に接続されている。つまり、PLL414は、abc−dq変換回路313が直交成分側の出力を0にするように動作する。
PLL95,414は、上述した図3の構成を有する。PLL95,414は、角度(位相)データとともに、角速度データを出力することができる。PLL95の角速度データω1のデータ出力は、微分器415に接続されている。PLL414の角速度ω2のデータ出力は、微分器416に接続されている。つまり、PLL95,414が出力する角速度ω1,ω2のデータは、微分器415,416によってそれぞれ微分されて判別回路417に入力される。
本実施形態の電圧補償装置の動作について説明する。
図12(a)〜図13(b)は、本実施形態の電圧補償装置の動作を説明するための概念図である。
図12(a)および図12(b)には、電圧補償装置が変電所方向を正しく認識している場合の例を示している。図13(a)および図13(b)には、電圧補償装置が変電所方向を間違って認識している場合を示している。以下、いずれの場合についても、変電所方向の電圧Vssは、許容される範囲内にあるが、電圧Vssが許容範囲外の場合については、第2の実施形態の場合において説明したことと同様である。
まず、電圧補償装置が変電所方向を正しく認識している場合について説明する。
図12(a)に示すように、変電所方向の電圧Vssが許容範囲内の場合には、正相電圧成分では、電圧の補償を行わない。
図12(b)に示すように、負荷DE側にq軸成分の目標値q1*を注入することによって、負荷DE側の電圧VDEの位相が変化する。そのため、PLL414は、abc−dq変換回路313の直交成分出力を0にするように動作するので、当初変電所SS側の電圧Vssの角速度ω1(=1/角周波数)で動作していたものが、負荷DE側の電圧VDEの角速度ω2に一致するようにする。つまり、負荷DE側の電圧の周波数が変化する。
判別回路417は、変電所SS側の電圧Vssの周波数変化および負荷DE側の電圧VDEの周波数変化を入力し、電圧VDEの周波数変化が、電圧Vssの周波数変化よりも大きい場合には、変電所方向が正しく認識されていると判断する。
電圧補償装置が変電所方向を正しく認識していない場合について説明する。
図13(a)に示すように、変電所SSの方向と認識している負荷DE側の電圧が許容範囲内のときには、正相電圧成分では、電圧の補償が行われない。
図13(b)に示すように、q軸に目標値q1*が注入されると、目標値q1*が注入された側は、実際には変電所SS側のため、位相変化を生じることがない。それに対して、目標値q1*を注入している負荷DE側では、目標値q1*によって位相変化を生じる。
このため、abc−dq変換回路94に接続されたPLL95から出力される成分は、周波数変化を生じる。
したがって、abc−dq変換回路94側のPLL95から出力された信号の周波数変化が、abc−dq変換回路313側のPLL414から出力された信号の周波数変化よりも大きい場合には、変電所方向を誤認していると判定することができる。
本実施形態の電圧補償装置の効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置では、上述した各実施形態の場合と同様の効果に加え、さらに以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態の電圧補償装置では、変電所SS側および負荷DE側の双方の電圧Vss,VDEの周波数を検出し、その周波数変化に応じて、真の変電所方向を判別することができる。したがって、電力系統に位相、周波数乱れ等が生じても、正しく真の変電所方向を判別することができる。
また、本実施形態の場合には、q軸目標値の注入後の過渡的状態において、変電所方向を判別するので、迅速な判別結果を得ることができる。
(第5の実施形態)
図14は、本実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
図15は、本実施形態の電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。
本実施形態の電圧補償装置では、第2電力変換器30を無効電力補償装置として動作させて、無効電力が注入された方向を検出することによって、変電所方向を判別する。変電所は、定電圧電源として振る舞うので、インピーダンスが低い。そのため、電力系統に注入された無効電力にもとづく電流(以下、無効電流ともいう。)は変電所方向に流れる。本実施形態では、変電所の側の電圧が無効電力を注入し、電力系統に流れる電流の変化の有無を検出することによって変電所方向を検出する。
なお、この実施形態の場合には、仮の電源端6側および仮の負荷端7側のそれぞれの電圧は、目標値等にあるものとする。
図14に示すように、本実施形態の電圧補償装置1eは、電圧補償部10eを備える。電圧補償部10eは、電流検出器63,64を含む。電流検出器63は、直列変圧器11と仮の負荷端7の端子3aとの間に接続されている。電流検出器64は、直列変圧器15と仮の負荷端7の端子3cとの間に接続されている。電流検出器63,64は、この例では、電力系統のU相およびW相の線電流を検出するように接続されている。
本実施形態の電圧補償装置1eでは、第2電力変換器30を動作させて無効電力を電力系統に注入した場合に、電流検出器63,64によって検出された電流にもとづいて計算される無効電力が無効電力注入によって変化したか否かを検出することによって、真の変電所方向を判別する。
電圧補償装置1eは、制御部80eを備える。図15に示すように、制御部80eは、第1制御回路81eと第2制御回路82eとを含む。
図15は、制御部80eを例示するブロック図であり、第2制御回路82eの詳細な構成を例示するブロック図である。図15では、第1制御回路81eの一部が示されている。図15に示されているabc−dq変換回路94およびabc−dq変換回路94の出力以降は、上述の他の実施形態の場合と同様であり図示が省略されている。
第2制御回路82eは、変電所方向信号生成回路510と、交流電流制御回路550と、を含む。
変電所方向信号生成回路510は、三相電流検出回路511と、スイッチ516a,516b,519a,519bと、無効電力演算回路520,521と、判別回路522と、初期値設定部523と、を含む。
まず、交流電流制御回路550の構成から説明する。交流電流制御回路550は、三相電圧検出回路551と、係数器552と、abc−dq変換回路553と、PLL554と、加算器555,556と、dq−abc変換回路557と、ゲート信号生成回路558と、三相電流検出回路559と、abc−dq変換回路560と、加減算器561,562と、PI補償器563,564と、を含む。
交流電流制御回路550は、並列変圧器41,42の二次側の電圧、各相の線電流、有効電流指令値Ip*および無効電流指令値Iq*にもとづいて、電力系統に注入する有効電力および無効電流を制御するためのゲート駆動信号Vg2を生成する。
三相電圧検出回路551は、仮の負荷端7の側の交流電圧データVAC3,VAC4を入力し、各相電圧を検出する。検出された各相電圧は、係数器552を介してabc−dq変換回路553に入力される。係数器552の係数は、1/Nに設定されている。ここで、Nは、並列変圧器41,42の巻数比である。abc−dq変換回路553は、並列変圧器41,42の二次側各相の交流電圧をdq変換して出力する。abc−dq変換回路553から出力されるq軸成分は、PLL554に入力され、PLLは、q軸成分をゼロにするように動作する。つまり、abc−dq変換回路553は、PLL554によって、仮の負荷端7側の電圧の位相に同期して動作する。dq−abc変換回路557もPLL554によって仮の負荷端7側の電圧の位相に同期して動作する。
三相電流検出回路559は、電流検出器61,62によって検出されたインダクタ51,52に流れる電流の電流データIL1,IL2を入力して、並列変圧器41,42の二次側の線電流を検出する。検出された各相の線電流は、abc−dq変換回路560に入力される。
abc−dq変換回路560は、並列変圧器41,42の二次側の線電流をdq変換して出力する。dq変換後のd軸成分は、有効電流指令値Ip*とともに、加減算器561に入力される。dq変換後のq軸成分は、無効電流指令値Iq*とともに、加減算器562に入力される。加減算器561,562は、d軸成分およびq軸成分の偏差をそれぞれ出力する。
d軸成分およびq軸成分のそれぞれの偏差は、PI補償器563,564に入力され、PI補償器563,564は、それぞれの偏差を比例積分演算して、それぞれの偏差がゼロにちかづくように補償量を出力する。
PI補償器563,564から出力された補償量は、加算器555,556によって並列変圧器41,42の二次側の各相電圧のd軸成分およびq軸成分に加算されて、dq−abc変換回路557に入力される。dq−abc変換回路557は、有効電力および無効電力のための指令値を生成してゲート信号生成回路558に供給する。
上述の交流電流制御回路550は、無効電力補償のための周知の構成であり、上述に限らず他の周知の構成とすることができる。
次に、変電所方向信号生成回路510の詳細な構成について説明する。三相電流検出回路511には、電力系統のU相およびW相の線電流の電流データIL3,IL4が入力される。三相電流検出回路511は、U相およびW相の線電流のデータにもとづいて、電力系統の各相の交流電流の値を検出する。
三相電流検出回路511によって検出された各線電流のデータI0は、4つに分かれてスイッチ516a,516bの各入力に接続されている。
各線電流の1つめの電流のデータI0は、加減算器513に入力される。加減算器513の入力には、交流電流制御回路550の三相電流検出回路559の出力が係数器512を介して接続されている。係数器512は、係数として1/Nが設定されている。つまり、加減算器513には、並列変圧器41,42の一次側の電流のデータIq0が入力される。スイッチ516aの一方の入力端子には、加減算器515によって、電流のデータI1,Iq0の差分である電流のデータI1が入力される。電流のデータI1は、仮の電源端6側を、仮の電源端6から仮の負荷端7に向かって流れる電流を表している。
各線電流の2つめのデータI0は、係数器514を介してスイッチ516aの他方の入力端子に入力される。係数器514の係数は、−1に設定されている。つまり、係数器514から出力される電流のデータI2は、−1×I0である。電流のデータI2は、仮の負荷端7側を、仮の負荷端7から仮の電源端6に向かって流れる電流を表している。
各線電流の3つめのデータI0は、電流のデータI3として、スイッチ516bの一方の入力端子に入力される。電流のデータI3は、仮の負荷端7側を、仮の電源端6から仮の負荷端7に向かって流れる電流を表している。
各線電流の4つめのデータI0は、係数器526に入力される。係数器526の係数は、−1に設定されている。係数器526から出力された電流のデータ(−)I0は、加減算器515に入力される。加減算器515には、電流のデータIq0が入力される。スイッチ516bの他方の入力端子には、加減算器515によって、電流のデータI4として、電流のデータ(−)I0,Iq0の差分が入力される。電流のデータI4は、仮の電源端6側を、仮の負荷端7から仮の電源端6に向かって流れる電流を表している。
スイッチ516a,516bは、変電所方向信号Dssによってほぼ同時に入力を切り替える。変電所方向信号Dssによって、スイッチ516aが電流のデータI1を選択したときには、スイッチ516bは、電流のデータI3を選択する。変電所方向信号Dssによって、スイッチ516aが電流のデータI2を選択したときには、スイッチ516bは、電流のデータI4を出力するように選択する。電流のデータI1,I3が選択されたときには、電流のデータI1,I3は無効電力演算回路520,521にそれぞれ供給される。電流のデータI2,I4が選択されたときには、電流のデータI2,I4は無効電流演算回路520,521にそれぞれ供給される。
スイッチ519aの一方の入力端子には、三相電圧検出回路517の出力が接続されている。スイッチ519aの他方の入力端子には、三相電圧検出回路518の出力が接続されている。スイッチ519aの出力端子は、無効電力演算回路520に接続されている。スイッチ519bの一方の入力端子には、三相電圧検出回路517の出力が接続されている。スイッチ519bの他方の入力端子には、三相電圧検出回路518の出力が接続されている。スイッチ519bの出力端子は、無効電力演算回路521に接続されている。
スイッチ519a,519bは、スイッチ516a,516bに連動してほぼ同時に動作する。無効電力演算回路520には、スイッチ516aによって、電流のデータI1が入力されるときには、スイッチ519aによって、三相電圧検出回路517から出力される電圧のデータV1が入力される。無効電力演算回路520は、電流のデータI1および電圧のデータV1にもとづいて、無効電力Q1を計算して出力する。
無効電力演算回路521は、スイッチ516bによって、電流のデータI3が入力されるときには、スイッチ519bによって、三相電圧検出回路518から出力される電圧のデータV2が入力される。無効電力演算回路521は、電流のデータI3および電圧データV2にもとづいて、無効電力Q2を計算して出力する。
無効電力演算回路520は、スイッチ516aによって、電流のデータI2が入力されるときには、スイッチ519aによって、電圧のデータV2が入力される。無効電力演算回路520は、電流のデータI2および電圧のデータV2にもとづいて、無効電力Q1を計算して出力する。
無効電力演算回路521は、スイッチ516bによって、電流のデータI4が入力されるときには、スイッチ519bによって、電圧のデータV1が入力される。無効電力演算回路521は、電流のデータI4および電圧のデータV1にもとづいて、無効電力Q2を計算して出力する。
判別回路522は、無効電力演算回路520,521それぞれで計算された無効電力Q1,Q2を比較して、比較結果にもとづいて変電所方向信号Dssを生成する。この例では、Q1<Q2の場合に、変電所方向は正しく判別されており、Q1>Q2の場合には、変電所方向が誤認されていると判別される。
なお、Q1=Q2となった場合には、判別不能として、Q1<Q2またはQ1>Q2となるまで待機するようにしてもよいし、変電所方向誤認の状態であるとして、変電所方向信号Dssを切り替えて、繰り返し判別動作を行うようにしてもよい。変電所方向信号Dssによって選択されたスイッチ519aの出力は、第1制御回路81eのabc−dq変換回路94に入力される。
本実施形態の電圧補償装置の動作について説明する。
図16(a)および図16(b)は、本実施形態の電圧補償装置の動作を説明するための概念図である。
電力系統に流れる電流は、変電所SS側から負荷DE側に流れる。電力系統において、変電所SSが接続された側のインピーダンスは、負荷DEが接続された側のインピーダンスよりも低いので、第2電力変換器30によって注入された無効電流は、並列変圧器41,42を介して変電所SS側に流れる。したがって、電力系統に流れる電流は、並列変圧器41,42から見て、変電所SSの側において電流が変化し、その電流にもとづく無効電力が変化する。並列変圧器41,42から見て負荷DE側では、電流は変化しないので、無効電力も変化しない。
図16(a)の例では、仮の電源端6の端子2a〜2cに変電所SSが接続され、仮の負荷端7の端子3a〜3cに負荷DEが接続されている。電流のデータI1は、仮の電源端6側を流れる電流を表しており、データI3は、仮の負荷端7側を流れる電流を表している。
無効電力演算回路520は、電流のデータI1および仮の電源端6側の電圧のデータV1によって無効電力Q1を計算する。無効電力演算回路521は、電流のデータI3および仮の負荷端7側の電圧のデータV2によって無効電力Q2を計算する。
仮の電源端6側に変電所SSが接続され、仮の負荷端7側に負荷DEが接続されている場合には、I1<I3より、Q1<Q2となるので、判別回路522は、現在の接続によって真の変電所方向が選択されているもの判断することができる。
図16(b)の例では、仮の負荷端7の端子3a〜3cに変電所SSが接続され、仮の電源端6の端子2a〜2cに負荷DEが接続されている。電流のデータI2は、仮の電源端6側を流れる電流を表しており、電流のデータI4は、仮の負荷端側を流れる電流を表している。
無効電力演算回路520は、電流のデータI2および電圧のデータV1によって無効電力Q1を計算する。無効電力演算回路521は、電流のデータI4および電圧のデータV2によって無効電力Q2を計算する。
この場合には、|I2|>|I4|であるから、Q1>Q2となる。したがって、判別回路522は、仮の負荷端7側が真の変電所方向であると判別することができる。
本実施形態の電圧補償装置では、無効電流を電力系統に注入することによって、変電所方向を判別することができるので、電圧補償動作で電力系統の電圧を変動させることなく、変電所方向を判別することができる。
上述では、仮の電源端6側および仮の負荷端7側の無効電力をそれぞれ計算して、大小関係を比較することによって、変電所方向を判別した。仮の電源端6側および仮の負荷端7側のそれぞれの電流を取得後、電流の絶対値をとる処理を行った後、電流の大きさを比較することによっても変電所方向を判別することができる。
(第5の実施形態の変形例)
図17は、本変形例の電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。
上述の実施形態では、変電所側の無効電流、負荷側の無効電流および第2電力変換器30から注入する無効電流の関係から電源方向を判断している。一方で、負荷側に流れる無効電流は、負荷の接続状態等によって時々刻々変化するため、上述の無効電流を比較することによっては、変電所方向を判別することが困難な場合がある。そこで、本変形例では、変電所側および負荷側の無効電流の時間変化を求めることによって、変電所方向を判別する。
本変形例では、無効電力演算回路520,521の出力に微分器524,525がそれぞれ接続されている。微分器524,525の出力が判別回路522に供給される。
第2電力変換器30から無効電流注入行わない場合には、電圧補償装置の変電所側および負荷側の無効電力は等しくなるため、その変化量も等しい。ここで、第2電力変換器30から進み無効電力を電力系統に供給した場合には、電圧補償装置の変電所側の無効電力変化量は、負荷側の無効電力変化量より大きくなる。
変電所方向を誤認している場合には、電圧補償装置から見た負荷側の無効電力の変化量が大きくなるため、変電所の方向を誤認していると判断でき、真の変電所方向を判別できる。
負荷の無効電力が変化した場合においても、変化量の大きさを比較することによって、容易に変電所方向を判別することができる。
上述の各実施形態および変形例は、1つまたは2つ以上を組み合わせて実施することができる。たとえば、第2の実施形態の第1制御回路に、第3の実施形態の第1制御回路を組み合わせてもよく、さらに第5実施形態の第2制御回路を組み合わせてもよい。
上述した各実施形態の電圧補償装置の制御部は、たとえば演算部と記憶部とを含んでもよい。演算部は、たとえばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプログラムの各ステップに応じて動作する回路を含んでもよい。プログラムは、たとえば記憶部に格納されている。制御部の各回路および各部は、その一部または全部が記憶部等に格納されたプログラムに置き換えられてもよい。
以上説明した実施形態によれば、高速かつ連続的に電力系統の電圧を適正値に補償する電圧補償装置を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。