以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
以下の説明においては、3次元のグローバル座標系(Xg,Yg,Zg)、及び3次元の車体座標系(Xm,Ym,Zm)を規定して、各部の位置関係について説明する。
グローバル座標系とは、地球に固定された原点を基準とする座標系をいう。グローバル座標系は、GNSS(Global Navigation Satellite System)によって規定される座標系である。GNSSとは、全地球航法衛星システムをいう。全地球航法衛星システムの一例として、GPS(Global Positioning System)が挙げられる。GNSSは、複数の測位衛星を有する。GNSSは、緯度、経度、及び高度の座標データで規定される位置を検出する。
グローバル座標系は、水平面内のXg軸と、水平面内においてXg軸と直交するYg軸と、Xg軸及びYg軸と直交するZg軸とによって規定される。Xg軸と平行な方向をXg軸方向とし、Yg軸と平行な方向をYg軸方向とし、Zg軸と平行な方向をZg軸方向とする。また、Xg軸を中心とする回転又は傾斜方向をθXg方向とし、Yg軸を中心とする回転又は傾斜方向をθYg方向とし、Zg軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZg方向とする。Zg軸方向は鉛直方向である。
車体座標系とは、作業機械に固定された原点を基準とする座標系をいう。
車体座標系は、作業機械の車体に固定された原点を基準として一方向に延在するXm軸と、Xm軸と直交するYm軸と、Xm軸及びYm軸と直交するZm軸とによって規定される。Xm軸と平行な方向をXm軸方向とし、Ym軸と平行な方向をYm軸方向とし、Zm軸と平行な方向をZm軸方向とする。また、Xm軸を中心とする回転又は傾斜方向をθXm方向とし、Ym軸を中心とする回転又は傾斜方向をθYm方向とし、Zm軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZm方向とする。Xm軸方向は作業機械の前後方向であり、Ym軸方向は作業機械の車幅方向であり、Zm軸方向は作業機械の上下方向である。
第1実施形態.
[施工管理システム]
図1は、本実施形態に係る施工管理システム1000の一例を模式的に示す図である。施工管理システム1000は、サーバ2000を含み、施工現場3000の施工計画及び施工管理を実施する。施工現場3000において、作業機械100が稼働する。本実施形態において、施工現場3000は、建造物を建築する建築現場を含む。
サーバ2000は、コンピュータシステムを含む。サーバ2000は、施工現場3000の作業機械100及び施工会社4000に設置されている情報端末4100とデータ通信可能である。サーバ2000と、施工現場3000の作業機械100と、施工会社4000の情報端末4100とは、通信回線5000を介してデータ通信可能である。通信回線5000は、インターネット、携帯電話通信網、及びローカルエリアネットワークの少なくとも一つを含む。
施工会社4000の情報端末4100は、例えばパーソナルコンピュータを含む。施工会社4000において、施工現場3000の設計図面が作成される。施工会社4000の作業者は、情報端末4100を使って、設計図面を作成する。施工会社4000において作成された設計図面を示す設計図面データは、通信回線5000を介してサーバ2000に送信される。
[作業機械]
図2は、本実施形態に係る作業機械100の一例を示す斜視図である。本実施形態においては、作業機械100が油圧ショベルである例について説明する。以下の説明においては、作業機械100を適宜、油圧ショベル100、と称する。
図2に示すように、油圧ショベル100は、油圧により作動する作業機1と、作業機1を支持する車体2と、車体2を支持する走行装置3と、作業機1を操作するための操作装置40と、作業機1を制御する制御装置50とを備える。車体2は、走行装置3に支持された状態で旋回軸RXを中心に旋回可能である。車体2は、走行装置3の上に配置される。以下の説明においては、車体2を適宜、上部旋回体2、と称し、走行装置3を適宜、下部走行体3、と称する。
上部旋回体2は、運転者が搭乗する運転室4と、エンジン及び油圧ポンプが収容される機械室5と、手すり6とを有する。運転室4は、運転者が着座する運転席4Sを有する。機械室5は、運転室4の後方に配置される。手すり6は、機械室5の前方に配置される。
下部走行体3は、一対の履帯7を有する。履帯7の回転により、油圧ショベル100が走行する。なお、下部走行体3が車輪又はタイヤを有してもよい。
作業機1は、施工対象を掘削可能である。作業機1は、上部旋回体2に支持される。作業機1は、刃先10を有するバケット11と、バケット11に連結されるアーム12と、アーム12に連結されるブーム13とを有する。バケット11の刃先10は、バケット11に設けられた凸形状の刃の先端部でもよい。バケット11の刃先10は、バケット11に設けられたストレート形状の刃の先端部でもよい。
バケット11とアーム12とはバケットピンを介して連結される。バケット11は、回転軸AX1を中心に回転可能にアーム12に支持される。アーム12とブーム13とはアームピンを介して連結される。アーム12は、回転軸AX2を中心に回転可能にブーム13に支持される。ブーム13と上部旋回体2とはブームピンを介して連結される。ブーム13は、回転軸AX3を中心に回転可能に車体2に支持される。
回転軸AX1と、回転軸AX2と、回転軸AX3とは、平行である。回転軸AX1,AX2,AX3と、旋回軸RXと平行な軸とは、直交する。車体座標系のYm軸は、回転軸AX1,AX2,AX3と平行である。車体座標系のXm軸は、回転軸AX1,AX2,AX3及び旋回軸RXの両方と直交する。車体座標系のZm軸は、旋回軸RXと平行である。運転席4Sに着座した運転者を基準として作業機1が存在する方向が前方である。
なお、バケット11は、チルトバケットでもよい。チルトバケットとは、バケットチルトシリンダの作動により、車幅方向にチルト傾斜可能なバケットである。傾斜地において油圧ショベル100が稼働する場合、バケット11が車幅方向にチルト傾斜することにより、斜面又は平地を自由に成形又は整地することができる。
操作装置40は、運転室4に配置される。操作装置40は、油圧ショベル100の運転者に操作される操作部材を含む。操作部材は、操作レバー又はジョイスティックを含む。操作部材が操作されることにより、作業機1が操作される。
制御装置50は、コンピュータシステムを含む。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のような記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。
図3は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す側面図である。図4は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す背面図である。図5は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す平面図である。
図2及び図3に示すように、油圧ショベル100は、作業機1を駆動する油圧シリンダ20を有する。油圧シリンダ20は、作動油によって駆動される。油圧シリンダ20は、バケット11を駆動するバケットシリンダ21と、アーム12を駆動するアームシリンダ22と、ブーム13を駆動するブームシリンダ23とを含む。
図3に示すように、油圧ショベル100は、バケットシリンダ21に配置されたバケットシリンダストロークセンサ14と、アームシリンダ22に配置されたアームシリンダストロークセンサ15と、ブームシリンダ23に配置されたブームシリンダストロークセンサ16とを有する。バケットシリンダストロークセンサ14は、バケットシリンダ21のストローク長であるバケットシリンダ長を検出する。アームシリンダストロークセンサ15は、アームシリンダ22のストローク長であるアームシリンダ長を検出する。ブームシリンダストロークセンサ16は、ブームシリンダ23のストローク長であるブームシリンダ長を検出する。
本実施形態において、グローバル座標系で規定される上部旋回体2の位置が検出される。また、車体座標系で規定されるバケット11の位置及びグローバル座標系で規定されるバケット11の位置が検出される。
本実施形態において、車体座標系の原点は、上部旋回体2に規定される。車体座標系の原点は、例えば上部旋回体2のスイングサークルの中心である。スイングサークルの中心は、上部旋回体2の旋回軸RXに存在する。車体座標系のZm軸は、上部旋回体2の旋回軸RXと一致する。Xm軸方向は、上部旋回体2の前後方向である。Ym軸方向は、上部旋回体2の車幅方向である。Zm軸方向は、上部旋回体2の上下方向である。
図3、図4、及び図5に示すように、油圧ショベル100は、上部旋回体2の位置を検出する位置検出装置30を備える。位置検出装置30は、グローバル座標系で規定される上部旋回体2の位置を検出する車体位置検出器31と、上部旋回体2の姿勢を検出する姿勢検出器32と、上部旋回体2の方位を検出する方位検出器33とを含む。
車体位置検出器31は、GPS受信機を含む。車体位置検出器31は、グローバル座標系で規定される上部旋回体2の3次元位置を検出する。車体位置検出器31は、上部旋回体2のXg軸方向の座標データ、Yg軸方向の座標データ、及びZg軸方向の座標データを検出する。
上部旋回体2に複数のGPSアンテナ31Aが設けられる。GPSアンテナ31Aは、上部旋回体2の手すり6に設けられる。なお、GPSアンテナ31Aは、機械室5の後方に配置されたカウンタウェイトに配置されてもよい。GPSアンテナ31Aは、GPS衛星から電波を受信して、受信した電波に基づく信号を車体位置検出器31に出力する。車体位置検出器31は、GPSアンテナ31Aから供給された信号に基づいて、グローバル座標系で規定されるGPSアンテナ31Aの絶対位置を検出する。車体位置検出器31は、GPSアンテナ31Aの絶対位置に基づいて、上部旋回体2の絶対位置を検出する。
GPSアンテナ31Aは、車幅方向に2つ設けられる。車体位置検出器31は、一方のGPSアンテナ31Aの絶対位置及び他方のGPSアンテナ31Aの絶対位置のそれぞれを検出する。車体位置検出器31Aは、一方のGPSアンテナ31Aの絶対位置と他方のGPSアンテナ31Aの絶対位置とに基づいて演算処理を実施して、上部旋回体2の絶対位置及び方位を検出する。本実施形態において、上部旋回体2の絶対位置は、一方のGPSアンテナ31Aの絶対位置である。なお、上部旋回体2の絶対位置は、他方のGPSアンテナ31Aの絶対位置でもよいし、一方のGPSアンテナ31Aの絶対位置と他方のGPSアンテナ31Aの絶対位置との間の位置でもよい。
姿勢検出器32は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)を含む。姿勢検出器32は、上部旋回体2に設けられる。姿勢検出器32は、運転室4の下部に配置される。姿勢検出器32は、水平面(XgYg平面)に対する上部旋回体2の傾斜角度を検出する。水平面に対する上部旋回体2の傾斜角度は、Ym軸方向(車幅方向)における上部旋回体2の傾斜角度を示すロール角θaと、Xm軸方向(前後方向)における上部旋回体2の傾斜角度を示すピッチ角θbと、を含む。
方位検出器33は、一方のGPSアンテナ31Aの絶対位置と他方のGPSアンテナ31Aの絶対位置とに基づいて、グローバル座標系で規定される基準方位に対する上部旋回体2の方位を検出する。基準方位は、例えば北である。方位検出器33は、一方のGPSアンテナ31Aの絶対位置と他方のGPSアンテナ31Aの絶対位置とに基づいて演算処理を実施して、基準方位に対する上部旋回体2の方位を検出する。方位検出器33は、一方のGPSアンテナ31Aの絶対位置と他方のGPSアンテナ31Aの絶対位置とを結ぶ直線を算出し、算出した直線と基準方位とがなす角度に基づいて、基準方位に対する上部旋回体2の方位を検出する。基準方位に対する上部旋回体2の方位は、基準方位と上部旋回体2の方位とがなす角度を示すヨー角(方位角)θcを含む。
なお、方位検出器33は、位置検出装置30とは別の装置でもよい。方位検出器33は、磁気センサを用いて上部旋回体2の方位を検出してもよい。
油圧ショベル100は、車体座標系における作業機1の位置を検出する作業機位置検出器34を備える。作業機位置検出器34は、車体座標系における上部旋回体2の原点に対するバケット11の刃先10の相対位置を検出する。
本実施形態において、作業機位置検出器34は、バケットシリンダストロークセンサ14の検出結果と、アームシリンダストロークセンサ15の検出結果と、ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果と、バケット11の長さL1と、アーム12の長さL2と、ブーム13の長さL3とに基づいて、上部旋回体2の原点に対するバケット11の刃先10の相対位置を算出する。
作業機位置検出器34は、バケットシリンダストロークセンサ14で検出されたバケットシリンダ長に基づいて、アーム12に対するバケット11の刃先10の傾斜角αを算出する。作業機位置検出器34は、アームシリンダストロークセンサ15で検出されたアームシリンダ長に基づいて、ブーム13に対するアーム12の傾斜角βを算出する。作業機位置検出器34は、ブームシリンダストロークセンサ16で検出されたブームシリンダ長に基づいて、上部旋回体2のZ軸に対するブーム13の傾斜角γを算出する。
バケット11の長さL1は、バケット11の刃先10と回転軸AX1(バケットピン)との距離である。アーム12の長さL2は、回転軸AX1(バケットピン)と回転軸AX2(アームピン)との距離である。ブーム13の長さL3は、回転軸AX2(アームピン)と回転軸AX3(ブームピン)との距離である。
作業機位置検出器34は、傾斜角α、傾斜角β、傾斜角γ、長さL1、長さL2、及び長さL3に基づいて、上部旋回体2の原点に対するバケット11の刃先10の相対位置を算出する。
また、作業機位置検出器34は、グローバル座標系における作業機11の位置を検出する。作業機位置検出器34は、グローバル座標系におけるバケット11の刃先10の位置を検出する。刃先検出器34は、位置検出装置30で検出された上部旋回体2の絶対位置と、上部旋回体2の原点とバケット11の刃先10との相対位置とに基づいて、バケット11の刃先10の絶対位置を算出する。上部旋回体2の絶対位置と上部旋回体2の原点との相対位置は、油圧ショベル100の諸元データから導出される既知データである。したがって、作業機位置検出器34は、上部旋回体2の絶対位置と、上部旋回体2の原点とバケット11の刃先10との相対位置と、油圧ショベル100の諸元データとに基づいて、バケット11の刃先10の絶対位置を算出可能である。
なお、作業機位置検出器34は、ポテンショメータ傾斜計のような角度センサを含んでもよい。その角度センサが、バケット11の傾斜角α、アーム12の傾斜角β、及びブーム13の傾斜角γを検出してもよい。
[介入制御]
本実施形態において、制御装置50は、油圧ショベル100の運転者による操作装置40の操作よりも優先して作業機1を制御する介入制御を実施する。制御装置50は、例えばPI制御(proportional-integral control)によって作業機1を介入制御する。介入制御においてはバケット11の位置が制御される。
操作装置40が操作されることにより、バケット11のダンプ動作、バケット11の掘削動作、アーム12のダンプ動作、アーム12の掘削動作、ブーム13の上げ動作、及びブーム13の下げ動作が実行される。
本実施形態において、操作装置40は、運転席4Sに着座した運転者の右側に配置される右操作レバーと、左側に配置される左操作レバーとを含む。右操作レバーが前後方向に動かされると、ブーム13は下げ動作及び上げ動作を行う。右操作レバーが左右方向(車幅方向)に動かされると、バケット11は掘削動作及びダンプ動作を行う。左操作レバーが前後方向に動かされると、アーム12はダンプ動作及び掘削動作を行う。左操作レバーが左右方向に動かされると、上部旋回体2は左旋回及び右旋回する。なお、左操作レバーが前後方向に動かされた場合に上部旋回体2が右旋回及び左旋回し、左操作レバーが左右方向に動かされた場合にアーム12がダンプ動作及び掘削動作を行ってもよい。
介入制御においては、バケット11及びアーム12は、運転者による操作装置40の操作に基づいて駆動される。ブーム13は、運転者による操作装置40の操作及び制御装置50による制御の少なくとも一方に基づいて駆動される。
施工対象を掘削する場合、バケット11及びアーム12は掘削動作される。制御装置50は、操作装置40の操作によりバケット11及びアーム12が掘削動作されている状態で、バケット11の刃先10が目標位置に配置されるように、ブーム10の動きに介入する制御を行う。例えば、制御装置50は、バケット11及びアーム12が掘削動作されている状態で、ブーム13が上げ動作するように、ブームシリンダ23を制御する。
[油圧システム]
次に、本実施形態に係る油圧システム300の一例について説明する。バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームシリンダ23を含む油圧シリンダ20は、油圧システム300により作動する。油圧シリンダ20は、操作装置40により操作される。
本実施形態において、操作装置40は、パイロット圧方式の操作装置である。以下の説明においては、油圧シリンダ20(バケットシリンダ21、アームシリンダ22、及びブームムシリンダ23)を作動するためにその油圧シリンダ20に供給される油を適宜、作動油、と称する。方向制御弁41により、油圧シリンダ20に対する作動油の供給量が調整される。方向制御弁41は、供給される油によって作動する。以下の説明においては、方向制御弁41を作動するためにその方向制御弁41に供給される油を適宜、パイロット油、と称する。また、パイロット油の圧力を適宜、パイロット圧、と称する。
図6は、アームシリンダ22を作動する油圧システム300の一例を示す模式図である。操作装置40の操作により、アーム12は、掘削動作及びダンプ動作の2種類の動作を実行する。アームシリンダ22が伸びることにより、アーム12が掘削動作し、アームシリンダ22が縮むことにより、アーム12がダンプ動作する。
油圧システム300は、方向制御弁41を介してアームシリンダ22に作動油を供給する可変容量型のメイン油圧ポンプ42と、パイロット油を供給するパイロット圧ポンプ43と、方向制御弁41に対するパイロット圧を調整する操作装置40と、パイロット油が流れる油路44A,44Bと、油路44A,44Bに配置された圧力センサ46A,46Bと、制御装置50とを備える。メイン油圧ポンプ42は、図示しないエンジン等の原動機により駆動する。
方向制御弁41は、作動油が流れる方向を制御する。メイン油圧ポンプ42から供給された作動油は、方向制御弁41を介して、アームシリンダ22に供給される。方向制御弁41は、ロッド状のスプールを動かして作動油が流れる方向を切り替えるスプール方式である。スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ22のキャップ側油室20A(油路47A)に対する作動油の供給と、ロッド側油室20B(油路47B)に対する作動油の供給とが切り替わる。なお、キャップ側油室20Aとは、シリンダヘッドカバーとピストンとの間の空間である。ロッド側油室20Bとは、ピストンロッドが配置される空間である。また、スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ22に対する作動油の供給量(単位時間当たりの供給量)が調整される。アームシリンダ22に対する作動油の供給量が調整されることにより、シリンダ速度が調整される。
方向制御弁41は、操作装置40によって操作される。パイロット圧ポンプ43から送出されたパイロット油が操作装置40に供給される。なお、メイン油圧ポンプ42から送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が操作装置40に供給されてもよい。操作装置40は、パイロット圧調整弁を含む。操作装置40の操作量に基づいて、パイロット圧が調整される。そのパイロット圧によって、方向制御弁41が駆動される。操作装置40によりパイロット圧が調整されることによって、軸方向に関するスプールの移動量及び移動速度が調整される。
方向制御弁41は、第1受圧室及び第2受圧室を有する。油路44Aのパイロット圧によってスプールが駆動し、第1受圧室がメイン油圧ポンプ42と接続され、第1受圧室に作動油が供給される。油路44Bのパイロット圧によってスプールが駆動し、第2受圧室がメイン油圧ポンプ42と接続され、第2受圧室に作動油が供給される。
圧力センサ46Aは、油路44Aのパイロット圧を検出する。圧力センサ46Bは、油路44Bのパイロット圧を検出する。圧力センサ46A,46Bの検出信号は、制御装置50に出力される。
操作装置40の操作レバーが中立位置より一方側に動かされると、その操作レバーの操作量に応じたパイロット圧が方向制御弁41のスプールの第1受圧室に作用する。操作装置40の操作レバーが中立位置より他方側に動かされると、その操作レバーの操作量に応じたパイロット圧が方向制御弁41のスプールの第2受圧室に作用する。
方向制御弁41のスプールは、操作装置40によって調整されたパイロット圧に応じた距離だけ動く。例えば、第1受圧室にパイロット圧が作用することにより、アームシリンダ22のキャップ側油室20Aにメイン油圧ポンプ42からの作動油が供給され、アームシリンダ22が伸びる。アームシリンダ22が伸びると、アーム12は掘削動作する。第2受圧室にパイロット圧が作用することにより、アームシリンダ22のロッド側油室20Bに、メイン油圧ポンプ42からの作動油が供給され、アームシリンダ22が縮む。アームシリンダ22が縮むと、アーム12はダンプ動作する。方向制御弁41のスプールの移動量に基づいて、メイン油圧ポンプ42から方向制御弁41を介してアームシリンダ22に供給される単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。単位時間当たりの作動油の供給量が調整されることによって、シリンダ速度が調整される。
バケットシリンダ21を作動する油圧システム300は、アームシリンダ22を作動する油圧システム300と同様の構成である。操作装置40の操作により、バケット11は、掘削動作及びダンプ動作の2種類の動作を実行する。バケットシリンダ21が伸びることにより、バケット11が掘削動作し、バケットシリンダ21が縮むことにより、バケット11がダンプ動作する。バケットシリンダ21を作動する油圧システム300についての詳細な説明は省略する。
図7は、ブームシリンダ23を作動する油圧システム300の一例を示す模式図である。操作装置40の操作により、ブーム13は、上げ動作及び下げ動作の2種類の動作を実行する。方向制御弁41は、第1受圧室及び第2受圧室を有する。油路44Aのパイロット圧によってスプールが駆動し、第1受圧室がメイン油圧ポンプ42と接続され、第1受圧室に作動油が供給される。油路44Bのパイロット圧によってスプールが駆動し、第2受圧室がメイン油圧ポンプ42と接続され、第2受圧室に作動油が供給される。メイン油圧ポンプ42から供給された作動油は、方向制御弁41を介して、ブームシリンダ23に供給される。方向制御弁41のスプールが軸方向に移動することにより、ブームシリンダ23のキャップ側油室20A(油路47B)に対する作動油の供給と、ロッド側油室20B(油路47A)に対する作動油の供給とが切り替わる。第1受圧室に作動油が供給された場合、油路47Aを介してロッド側油室20Bに作動油が供給されてブームシリンダ13が縮むことにより、ブーム13が下げ動作する。第2受圧室に作動油が供給された場合、油路47Bを介してキャップ側油室20Aに作動油が供給されてブームシリンダ13が伸びることにより、ブーム13が上げ動作する。
図7に示すように、ブームシリンダ23を作動する油圧システム300は、メイン油圧ポンプ42と、パイロット圧ポンプ43と、方向制御弁41と、方向制御弁41に対するパイロット圧を調整する操作装置40と、パイロット油が流れる油路44A,44B,44Cと、油路44A,44B,44Cに配置された制御弁45A,45B,45Cと、油路44A,44B,44Cに配置された圧力センサ46A,46Bと、制御弁45A,45B,45Cを制御する制御装置50とを備える。
制御弁45A,45B,45Cは、電磁比例制御弁である。制御弁45A,45B,45Cは、制御装置50からの制御信号に基づいて、パイロット圧を調整する。制御弁45Aは、油路44Aのパイロット圧を調整する。制御弁45Bは、油路44Bのパイロット圧を調整する。制御弁45Cは、油路44Cのパイロット圧を調整する。
図6を参照して説明したように、操作装置40が操作されることにより、操作装置40の操作量に応じたパイロット圧が方向制御弁41に作用する。方向制御弁41のスプールは、パイロット圧に応じて移動する。スプールの移動量に基づいて、メイン油圧ポンプ42から方向制御弁41を介してブームシリンダ23に供給される単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。
制御装置50は、制御弁45Aを制御して、第1受圧室に作用するパイロット圧を減圧調整可能である。制御装置50は、制御弁45Bを制御して、第2受圧室に作用するパイロット圧を減圧調整可能である。図7に示す例では、操作装置40の操作によって調整されたパイロット圧が制御弁45Aによって減圧されることによって、方向制御弁41に供給されるパイロット油が制限される。方向制御弁41に作用するパイロット圧が制御弁45Aによって減圧されることによって、ブーム13の下げ動作が制限される。同様に、操作装置40の操作によって調整されたパイロット圧が制御弁45Bによって減圧されることによって、方向制御弁41に供給されるパイロット油が制限される。方向制御弁41に作用するパイロット圧が制御弁45Bによって減圧されることによって、ブーム13の上げ動作が制限される。制御装置50は、圧力センサ46Aの検出信号に基づいて、制御弁45Aを制御する。制御装置50は、圧力センサ46Bの検出信号に基づいて、制御弁45Bを制御する。
本実施形態においては、介入制御のために、制御装置50から出力された、介入制御するための制御信号に基づいて作動する制御弁45Cが油路44Cに設けられる。油路44Cに、パイロット圧ポンプ43から送出されたパイロット油が流れる。油路44C及び油路44Bは、シャトル弁48と接続される。シャトル弁48は、油路44B及び油路44Cのうち、パイロット圧が高い方の油路のパイロット油を、方向制御弁41に供給する。
制御弁45Cは、介入制御を実行するために制御装置50から出力された制御信号に基づいて制御される。
介入制御を実行しないとき、操作装置40の操作によって調整されたパイロット圧に基づいて方向制御弁41が駆動されるように、制御装置50は、制御弁45Cに制御信号を出力しない。例えば、制御装置50は、操作装置40の操作によって調整されたパイロット圧に基づいて方向制御弁41が駆動されるように、制御弁45Bを全開にするとともに、制御弁45Cで油路44Cを閉じる。
介入制御を実行するとき、制御装置50は、制御弁45Cによって調整されたパイロット圧に基づいて方向制御弁41が駆動されるように、制御弁45B,45Cに制御信号を出力する。例えば、ブーム13の移動を制限する介入制御を実行する場合、制御装置50は、ブーム目標速度に応じたパイロット圧となるように、制御弁45Cに制御信号を出力する。例えば、制御装置50は、制御弁45Cによって調整されたパイロット圧が、操作装置40によって調整されるパイロット圧よりも高くなるように、制御弁45Cに制御信号を出力する。油路44Cのパイロット圧が油路44Bのパイロット圧より大きくなると、制御弁45Cからのパイロット油がシャトル弁48を介して方向制御弁41に供給される。
油路44B及び油路44Cの少なくとも一方を介して方向制御弁41にパイロット油が供給されることにより、作動油が油路47Bを介してキャップ側油室20Aに供給される。これにより、ブームシリンダ23が伸び、ブーム13が上げ動作する。
バケット11の刃先10が目標掘削地形を掘り込まないように操作装置40によるブーム13の上げ操作量が大きい場合、介入制御は実行されない。ブーム13がブーム目標速度よりも速い速度で上げ動作されるように操作装置40が操作され、その操作量に基づいてパイロット圧が調整されることにより、操作装置40の操作によって調整されるパイロット圧は、制御弁45Cによって調整されるパイロット圧よりも高くなる。これにより、制御装置50の制御弁45Cの操作によって調整されたパイロット圧のパイロット油がシャトル弁48で選択され、方向制御弁41に供給される。また、制御装置50から制御弁45Cに出力される制御信号に基づくパイロット圧が、ブーム操作量に基づくパイロット圧より小さい場合、操作装置40の操作によって調整されたパイロット油がシャトル弁48で選択され、ブーム13が操作される。
[制御システム]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御システム200について説明する。図8は、本実施形態に係る制御システム200の一例を示す機能ブロック図である。
図8に示すように、制御システム200は、作業機1を制御する制御装置50と、位置検出装置30と、作業機位置検出器34と、制御弁45(45A,45B,45C)と、圧力センサ46(46A,46B)と、表示装置71と、入力装置72とを備える。
上述したように、車体位置検出器31、姿勢検出器32、及び方位検出器33を含む位置検出装置30は、上部旋回体2の絶対位置を検出する。以下の説明においては、上部旋回体2の絶対位置を適宜、車体位置、と称する。
制御弁45(45A,45B,45C)は、油圧シリンダ20に対する作動油の供給量を調整する。制御弁45は、制御装置50からの制御信号に基づいて作動する。圧力センサ46(46A,46B)は、油路44(44A,44B)のパイロット圧を検出する。圧力センサ46の検出信号は、制御装置50に出力される。
表示装置71は、運転室4に配置される。表示装置71は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)又は有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display:OELD)のようなフラットパネルディスプレイを含む。表示装置71は、制御装置50から出力される制御信号に基づいて、表示データを表示する。運転室4の運転者は、表示装置71の表示画面を視認することができる。
入力装置72は、運転室4に配置される。入力装置72は、例えばコンピュータ用のキーボード、マウス、及びタッチパネルの少なくとも一つを含む。運転室4の運転者は、入力装置72を操作することができる。入力装置72が操作されることにより生成された入力データは、制御装置50に供給される。
上述のように、油圧ショベル100とサーバ2000とは通信回線5000を介してデータ通信可能である。制御装置50は、通信回線5000を介してサーバ2000とデータ通信可能である。本実施形態においてサーバ2000と制御装置50とは、無線でデータ通信する。
なお、サーバ2000と制御装置50とが有線で接続され、サーバ2000から制御装置50に2次元設計データが送信されてもよい。なお、制御装置50がフラッシュメモリのような記録媒体に記録されているデータを読込可能な読込装置を有し、サーバ2000で生成されたデータが記録媒体を介して制御装置50に供給されてもよい。
制御装置50は、車体位置データ取得部51と、作業機位置データ取得部52と、2次元設計データ取得部53と、入力掘削深さデータ取得部54と、表示制御部55と、作業機制御部56と、記憶部57と、入出力部58とを有する。
制御装置50のプロセッサは、車体位置データ取得部51、作業機位置データ取得部52、2次元設計データ取得部53、入力掘削深さデータ取得部54、表示制御部55、及び作業機制御部56を含む。制御装置50の記憶装置は、記憶部57を含む。制御装置50の入出力インターフェース装置は、入出力部58を含む。
車体位置データ取得部51は、位置検出装置30から、入出力部58を介して、グローバル座標系における上部旋回体2の絶対位置を示す車体位置データを取得する。
作業機位置データ取得部52は、作業機位置検出器34から、入出力部58を介して、車体座標系における作業機1の位置を示す作業機位置データ、及びグローバル座標系における作業機1の位置を示す作業機位置データを取得する。
作業機位置データ取得部52は、作業機位置データとして、作業機位置検出器34から、入出力部58を介して、車体座標系における上部旋回体2の原点に対するバケット11の刃先10の相対位置データを取得する。また、作業機位置データ取得部52は、作業機位置データとして、作業機位置検出器34から、入出力部58を介して、グローバル座標系におけるバケット11の刃先10の相対位置データを取得する。
2次元設計データ取得部53は、サーバ2000から、入出力部58を介して、施工現場3000の施工対象の2次元設計データを取得する。本実施形態においては、サーバ2000において、2次元設計データが作成される。2次元設計データは、施工現場3000の施工対象に規定された基準面FLと平行な設計データである。
入力掘削深さデータ取得部54は、入力装置72から、入出力部58を介して、入力装置72が操作されることにより生成された入力掘削深さデータを取得する。
表示制御部55は、施工対象に規定された基準面FLと平行な2次元設計データと、施工対象を掘削可能な作業機1の少なくとも一部を示す作業機表示データとを表示装置71に表示させる。また、本実施形態において、表示制御部55は、基準面FLからの目標掘削深さデータを表示装置71に表示させる。
作業機制御部56は、入力掘削深さデータ取得部54に取得された入力掘削深さデータに基づいて、基準面FLと直交する施工対象の深さ方向についての作業機1の移動を介入制御する制御信号を制御弁45に出力する。作業機制御部56は、刃先10と入力掘削深さデータにより規定された施工対象の目標深さ面との距離に基づいて、ブーム目標速度を算出し、算出したブーム目標速度に基づいて、ブーム13を駆動するブームシリンダ23を制御する。
記憶部57は、油圧ショベル100の諸元データを記憶する。
[施工対象の施工]
図9は、本実施形態に係る油圧ショベル100が施工する施工現場3000の一例を模式的に示す図である。本実施形態1において、油圧ショベル100の施工対象OBPは、建造物が建築される建築現場の地面である。油圧ショベル100は、建築現場の基礎工事を実施する。
建造物の建築現場においては、水平面と平行な基準面FLが規定される。基準面FLは、例えばフロアレベルと呼ばれる、建築後の建造物の床仕上げの高さに規定される場合が多い。
本実施形態においては、基準面FL及び基準面FLからの掘削深さΔDPが規定される。油圧ショベル100は、掘削深さΔDPだけ施工対象OBPを掘削する。
本実施形態において、作業機制御部56は、施工対象の深さ方向における作業機1の移動を介入制御する。すなわち、作業機制御部56は、バケット11の刃先10が基準面FLから掘削深さΔDPよりも下方に移動しないように、作業機1を介入制御する。これにより、施工対象OBPが掘り込まれ過ぎることが抑制される。
一方、水平方向における作業機1の移動は介入制御されない。作業機1は、運転者による操作装置40の操作により基準面FLと平行な水平方向に移動する。運転者は、操作装置40を操作して、上部旋回体2を旋回させたり、作業機1を伸縮させたり、下部走行体3を走行させたりすることによって、作業機1のバケット11を基準面FLと平行な水平方向に移動することができる。
すなわち、本実施形態においては、基準面FLと直交する深さ方向についてのバケット11の移動は介入制御され、基準面FLと平行な水平方向についてのバケット11の移動は介入制御されない。換言すれば、基準面FLと直交する掘削深さについて作業機1の介入制御は実施されるものの、基準面FLと平行な掘削範囲について作業機1の介入制御は実施されない。
[施工管理方法]
次に、本実施形態に係る施工管理方法の一例について説明する。図10は、本実施形態に係る施工管理方法の一例を示すフローチャートである。
本実施形態において、施工管理方法は、施工対象に規定される基準面FLと平行な2次元設計データを作成する工程(ステップS100)と、2次元設計データを油圧ショベル1にアップロードする工程(ステップS200)と、施工現場3000において基準面FLを設定する工程(ステップS300)と、バケット11の刃先10を含む作業機1の位置を示す作業機位置データを取得する工程(ステップS400)と、施工対象に規定された基準面FLと平行な2次元設計データ、施工対象を掘削可能な作業機1の少なくとも一部を示す作業機表示データ、及び基準面FLからの目標掘削深さデータを表示装置71に表示させる工程(ステップS500)と、入力装置72が操作されることにより生成された入力掘削深さデータを取得する工程(ステップS600)と、入力掘削深さデータに基づいて、基準面FLと直交する施工対象の深さ方向についての作業機1の移動を介入制御する制御信号を出力して施工を実施する工程(ステップS700)と、を含む。
(ステップS100:2次元設計データの作成)
2次元設計データを作成する工程について説明する。施工会社4000において作成された設計図面を示す設計図面データがサーバ2000に供給される。また、施工現場3000において、現場座標系における施工対象の基準点の位置が計測される。基準点の位置は、設計図面に表記されており、作業者は、3次元の現場座標系における基準点の位置を計測する。
基準点は、施工対象を囲むように複数規定されている。本実施形において、基準点は、施工対象を囲むように4箇所に存在する。なお、基準点は少なくとも3箇所に存在すればよい。
基準点の計測により現場座標系が規定された後、現場座標系とグローバル座標系とを関連付ける処理が実施される。上述のように、位置検出装置30によってグローバル座標系における油圧ショベル100の位置が検出される。現場座標系とグローバル座標系とが関連付けられることにより、設計図面と油圧ショベル100との相対位置が規定される。
サーバ2000は、設計図面データを編集して2次元設計データを作成する。設計図面には、多数の線、記号、文字、及び数字が記載されている場合が多い。サーバ2000は、例えば油圧ショベル100の運転者が見やすいように設計図面データを簡素化し、簡素化された設計図面データである2次元設計データを作成する。また、サーバ2000は、油圧ショベル100の制御装置50が読込可能なファイル形式に設計図面データをファイル変換して2次元設計データを作成する。
サーバ2000は、掘削範囲を規定するガイドデータと、基準面FLからの目標掘削深さを示す目標掘削深さデータとを含む2次元設計データを作成する。本実施形態において、掘削範囲を規定するガイドデータは、ガイドラインGLである。基準面FLからの目標掘削深さを示す目標掘削深さデータは、目標掘削深さの数値データである。
(ステップS200:2次元設計データのアップロード)
2次元設計データが作成された後、サーバ2000から油圧ショベル100に2次元設計データが送信される。油圧ショベル100の制御装置50の2次元設計データ取得部53は、2次元設計データを取得する。
(ステップS300:基準面の設定)
施工の開始前に、基準面FLが規定される。施工現場3000には、基準面FLを示す基準部材が設けられているか、又は基準面FLを示す表示がなされている。油圧ショベル100の運転者は、操作装置40を操作して、基準部材等に、バケット11の刃先10を接触させる。作業機位置検出器34は、バケット11の刃先10の絶対位置を検出可能である。作業機位置データ取得部52は、基準部材等に接触させたバケット11の刃先10の位置データを取得する。作業機制御部56は、グローバル座標系における基準面FLのZg軸方向の位置データが取得される。グローバル座標系における基準面FLの高さ方向の位置データは、記憶部57に記憶される。
なお、基準面FLの位置データは、運転者による入力装置72の操作により記憶部57に記憶されてもよい。運転者は、例えば既存の施工データに登録されているポイントからデータを選択し、入力装置72を操作して基準面FLの位置データを入力してもよい。
(ステップS400:作業機位置データの取得)
作業機位置データ取得部52は、作業機位置検出器34から作業機位置データを取得する。作業機位置データに基づいて、後述するインジケータ10Dが作成される。
(ステップS500:表示)
表示制御部55は、施工対象に規定された基準面FLと平行な2次元設計データと、施工対象を掘削可能な作業機1の少なくとも一部を示す作業機表示データと、基準面FLからの目標掘削深さデータとを表示装置71に表示させる。
図11は、本実施形態に係る表示装置71の一例を模式的に示す図である。図11に示すように、表示制御部55は、2次元設計データとして、作業機1による掘削範囲を規定するガイドデータであるガイドラインGLを表示装置71に表示させる。また、表示制御部55は、作業機表示データとして、作業機1のバケット11の刃先10を示すインジケータ10Dを表示装置71に表示させる。また、表示制御部5は、目標掘削深さデータとして、目標掘削深さを示す数値データを表示させる。図11に示す例では、第1の掘削範囲における目標掘削深さを示す数値データとして「IFL−2100」が表示され、第2の掘削範囲における目標掘削深さを示す数値データとして「IFL−2700」が表示される。「IFL−2100」は、第1の掘削範囲において基準面FLから2100[mm]だけ深さ方向に掘削すべきことを示す。「IFL−2700」は、第2の掘削範囲において基準面FLから2700[mm]だけ深さ方向に掘削すべきことを示す。
図11に示すように、表示制御部55は、2次元設計データ及び作業機表示データを同一座標系において同一縮尺で同時に表示装置71に表示させる。
(ステップS600:入力掘削深さデータの取得)
運転者は、作業機1を使って第1の掘削範囲を掘削するとき、入力装置72を操作して、第1の掘削範囲における掘削深さを入力する。運転者は、作業機1を使って第1の掘削範囲を掘削するとき、表示装置71に表示されている「−2100」の数値を見て、入力装置72を操作して、「−2100」の数値を入力する。
入力装置72が操作されることにより生成された入力掘削深さデータは、入力掘削深さデータ取得部54に取得される。本実施形態において、作業機制御部56は、入力掘削深さデータ取得部54に取得された入力掘削深さデータに基づいて、基準面FLと直交する施工対象の深さ方向についての作業機1の移動を介入制御する制御信号を制御弁45に出力する。
なお、運転者は、表示装置71に表示されている目標掘削深さを示す数値と同一の数値を入力装置72に入力してもよいし、表示装置71に表示されている目標掘削深さを示す数値とは異なる数値を入力装置72に入力してもよい。表示装置71に表示されている目標掘削深さを示す数値と同一の数値が入力装置72に入力されることにより、元々の設計図面データに示されている掘削深さに基づいて介入制御が実施される。表示装置71に表示されている目標掘削深さを示す数値とは異なる数値が入力装置72に入力されることにより、元々の設計図面データで示されている掘削深さが運転者によって微調整され、微調整された掘削深さに基づいて介入制御が実施される。
(ステップS700:施工)
第1の掘削範囲に対する施工が開始される。運転者は、表示装置71に表示されているガイドラインGL及びインジケータ10Dを見ながら操作装置40を操作して、基準面FLに平行な水平方向におけるバケット11の位置を調整する。表示装置71には、2次元設計データ及び作業機表示データを示すインジケータ10Dが同一座標系において同一縮尺で同時に表示されている。したがって、運転者は、表示装置71に表示されているガイドラインGL及びインジケータ10Dを見ながら、掘削すべき第1の掘削範囲にバケット11が位置付けられるように、操作装置40を操作することができる。
水平方向において第1の掘削範囲にバケット11が位置付けられた後、運転者は、操作装置40を操作して、バケット11を深さ方向に移動し、第1の掘削範囲の掘削を開始する。本実施形態においては、入力装置72が操作されることにより生成された入力掘削深さデータに基づいて、基準面FLと直交する施工対象の深さ方向についてのバケット11の移動が介入制御される。作業機制御部56は、入力装置72を介して入力された掘削深さよりもバケット11の刃先10が下方に移動しないように、すなわち、入力装置72を介して入力された掘削深さよりもバケット11が施工対象を掘り込まないように、制御弁45に制御信号を出力する。
本実施形態においては、ステップS300において基準面FLが設定され、基準面FLが設定された後、入力装置72が操作され、掘削深さが指定される。したがって、作業機制御部56は、設定された基準面FLと入力掘削深さデータとに基づいて、入力掘削深さよりもバケット11が施工対象を掘り込まないように作業機1を制御することができる。
水平方向におけるバケット11の位置は、運転者による操作装置40の操作により調整される。運転者は、表示装置71に表示されているガイドラインGL及びインジケータ10Dを見ながら、水平方向においてガイドラインGLにインジケータ10Dが位置合わせされるように、操作装置40を操作することができる。
以上、第1の施工範囲が施工される例について説明した。第2の施工範囲の施工は、第1の施工範囲の施工と同様に実施される。
[作用及び効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、施工対象の2次元設計データが作成され、2次元設計データに基づいて施工対象の施工が実施される。2次元設計データの作成期間は、3次元設計データの作成期間よりも十分に短い。そのため、施工の開始時期の遅延が抑制される。また、施工現場3000において設計変更が生じ、2次元設計データの再作成が必要になっても、2次元設計データの作成期間は短いので、施工の遅延は抑制される。そのため、工期の長期化が抑制される。
また、本実施形態において、作業機制御部56は、入力掘削深さデータに基づいて、施工対象の深さ方向における作業機1の移動を介入制御する。そのため、油圧ショベル100は、深さ方向において高精度な施工を実施することができる。
また、本実施形態において、介入制御は、運転者の手入力による入力掘削深さデータに基づいて実施される。そのため、運転者は、元々の設計図面データで指定された掘削深さに基づいて介入制御を実施したい場合、表示装置71に表示された目標掘削深さを示す数値と同一の数値を入力装置72に入力すればよい。一方、運転者は、介入制御のための掘削深さを微調整したい場合、表示装置71に表示された目標掘削深さを示す数値とは異なる数値を入力装置72に入力することができる。
また、本実施形態においては、表示制御部55は、施工対象に規定された基準面FLと平行な2次元設計データと、作業機1の刃先10を示す作業機表示データであるインジケータ10Dと、目標掘削深さデータとを、油圧ショベル100の運転室4に設けられている表示装置71に表示させる。したがって、油圧ショベル100の運転者は、表示装置71に表示された2次元設計データとインジケータ10Dとに基づいて、施工対象において掘削すべき施工範囲を特定することができる。また、油圧ショベル100の運転者は、表示装置71に表示された2次元設計データとインジケータ10Dとに基づいて、操作装置40を操作して、掘削すべき施工範囲にバケット11の刃先10を位置付けることができる。
また、油圧ショベル100の運転者は、表示装置71に表示された目標掘削深さデータに基づいて、入力装置72を操作して、深さ方向の介入制御のための目標値を示す入力掘削深さデータを入力することができる。深さ方向の介入制御のための目標値が運転者により手入力されることにより、2次元設計データの複雑化が抑制され、制御装置50におけるデータ処理の負担が抑制される。例えば、深さ方向の介入制御の目標値を含む2次元設計データが作成される場合、2次元設計データは複雑化し、2次元設計データの作成期間の短期化の効果が低減する。また、複雑化した2次元設計データに基づいて介入制御が実施される場合、制御装置50におけるデータ処理の負担が増大する。本実施形態においては、深さ方向の介入制御のための目標値を示す入力掘削深さデータが入力装置72を介して運転者により手入力されるため、2次元設計データの複雑化及び制御装置50におけるデータ処理の負担を抑制しつつ、深さ方向における作業機1の介入制御を実施することができる。また、本実施形態においては、掘削深さについて僅かな設計変更が生じた場合、入力装置72を介して入力掘削深さデータが再入力されるだけで、設計変更に対応することができる。
また、本実施形態においては、作業機1は、油圧ショベル100の運転者による操作装置40の操作により基準面FLと平行な方向に移動する。すなわち、本実施形態においては、掘削深さについて作業機1の介入制御は実施されるものの、掘削範囲について作業機1の介入制御は実施されない。これにより、水平方向における施工の自由度が確保される。また、掘削深さについて介入制御が実施され、掘削範囲については介入制御が実施されないので、制御装置50における制御の負担が低減される。
建築現場においては、掘削深さには高い精度が要求されるものの、掘削範囲に要求される精度は比較的低い場合が多い。例えば、建造物の基礎のためのコンクリートの厚さには高い精度が要求されるものの、コンクリートの範囲は、元々の設計図面で指定された範囲よりも僅かに広くても許容される。また、建築現場においては、掘削範囲が運転者により微調整される場合が多い。本実施形態においては、掘削深さについて介入制御が実施され、掘削範囲については介入制御が実施されないので、制御装置50における制御の負担を低減しつつ、建築現場の要求に則した施工を実施することができる。
また、本実施形態においては、表示制御部55は、2次元設計データ及び作業機表示データを同一のグローバル座標系において同時に表示装置71に表示させる。そのため、油圧ショベル100の運転者は、掘削すべき掘削範囲と作業機1との相対位置を直感的に把握することができ、作業機1による掘削作業を円滑に実施することができる。
また、本実施形態においては、2次元設計データは、施工範囲を規定するガイドデータであるガイドラインGLを含み、表示制御部55は、ガイドラインGLを表示装置71に表示させる。したがって、油圧ショベル100の運転者は、表示装置71に表示されたガイドラインGLを見ながら操作装置40を操作して、掘削すべき施工範囲にバケット11の刃先10を位置付けることができる。
第2実施形態.
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、上述の2次元設計データの作成(ステップS100)の変形例について説明する。
上述の実施形態においては、ステップS100において、施工現場3000に設けられている4箇所の基準点を計測して、現場座標系とグローバル座標系とを関連付けることとした。
建築現場においては、4箇所の基準点が設けられない場合がある。特に、狭い建築現場においては、4箇所の基準点が設けられない場合が多い。
本実施形態においては、施工現場3000に基準点が無い場合、日本の平面直角座標系とジオイドファイルとに基づいて、現場座標系とグローバル座標系とを関連付ける処理について説明する。
平面直角座標系とは、日本国内を測量するために策定された平面直交座標系をいう。平面直角座標系は、予め定められている。平面直角座標系が示す平面直角座標系データは、緯度及び経度を示す。国土交通省から日本の平面直角座標系における原点を示す緯度及び経度が公開されている。日本国内において、原点は19箇所に存在する。
ジオイドとは、地球上のある地点の重力の方向に直角な面のうち海上での平均水準面と一致するものをいう。ジオイドファイルは、予め定められている。ジオイドファイルが示すジオイドデータは、高度を示す。地磁気、地球の自転、及び地球の形状などの影響により、Zg軸方向における平面直角座標系の原点の位置がずれたり、緯度及び経度に応じてZg軸方向における位置の誤差が発生したり、GPS受信機のZg軸方向の検出データが誤差を含んだりする可能性がある。本実施形態において、作業機位置データ取得部52は、平面直角座標系データとジオイドデータとに基づいて、作業機位置検出器34から取得した作業機位置データを補正する。
図12は、本実施形態に係る2次元設計データの作成方法の一例を示すフローチャートである。
国土交通省から公開されている19箇所の原点のうち施工現場3000に最も近い原点を示すデータが油圧ショベル100の制御装置50に入力される。作業機位置データ取得部53は、平面直角座標系データを取得する(ステップS110)。
ジオイドファイルが油圧ショベル100の制御装置50に入力される。作業機位置データ取得部53は、ジオイドファイルに含まれている複数の緯度及び経度のそれぞれについての複数のジオイドデータのうち、ステップS110で取得された平面直角座標系の原点の緯度及び経度についてのジオイドデータを取得する(ステップS120)。
作業機位置データ取得部52は、作業機位置検出器34から作業機位置データを習得する。作業機位置データ取得部52は、ステップS110で取得した平面直角座標系データとステップS120で取得したジオイドデータとに基づいて、作業機位置検出器34から取得した作業機位置データのZg軸方向のデータを補正する(ステップS130)。
次に、現場座標系とグローバル座標系との関連付けが実施される。施工対象の設計図面に規定されている少なくとも2箇所の基準点に対応する施工対象の2箇所の基準点の位置が作業機1を使って検出される。運転者は、操作装置40を操作して、施工対象の2箇所の基準点のそれぞれにバケット11の刃先10を接触させる。これにより、グローバル座標系における施工対象の少なくとも2箇所の基準点の位置が作業機1を使って検出される。バケット11の刃先10を使って検出された施工対象の少なくとも2箇所の基準点の位置データは、作業機位置データ取得部52に取得される。施工対象の少なくとも2箇所の基準点の位置データは、サーバ2000に送信される。
サーバ2000は、作業機1を使って検出された施工対象の少なくとも2箇所の基準点の位置と、施工対象の設計図面の少なくとも2箇所の基準点の位置とに基づいて、グローバル座標系と現場座標系とを関連付ける。サーバ2000は、作業機1を使って検出された施工対象の少なくとも2箇所の基準点の位置と、施工対象の設計図面の少なくとも2箇所の基準点の位置とが一致するように、2次元設計データの縮尺を調整する。これにより、グローバル座標系と関連付けられ縮尺が調整された、表示装置71に表示される2次元設計データが生成される(ステップS140)。
以上により、2次元設計データが作成される。作成された2次元設計データは、サーバ2000から油圧ショベル100にアップロードされる。以降の処理は、上述の実施形態で説明したステップS200からステップS700と同様である。
その他の実施形態.
なお、上述の実施形態において、サーバ2000が油圧ショベル100の制御装置50の一部又は全部の機能を有してもよい。すなわち、サーバ2000が、車体位置データ取得部51、作業機位置データ取得部52、2次元設計データ取得部53、入力掘削深さデータ取得部54、表示制御部55、作業機制御部56、記憶部57、及び入出力部58の少なくとも一つを有してもよい。例えば、位置検出装置30で検出された車体位置データ及び作業機位置検出器34で検出された作業機位置データが通信回線5000を介してサーバ2000に供給され、サーバ2000に設けられている車体位置データ取得部51及び作業機位置データ取得部52が車体位置データ及び作業機位置データを取得してもよい。また、サーバ2000に設けられている表示制御部55が、2次元設計データ、インジケータ10D、及び目標掘削深さデータを含む表示データを生成し、通信回線5000を介して、生成した表示データを油圧ショベル100の表示装置71に送信してもよい。また、油圧ショベル100の入力装置72が運転者に操作されることにより生成された入力掘削深さデータが通信回線5000を介してサーバ2000に供給され、サーバ2000に設けられている入力掘削深さデータ取得部54が入力掘削深さデータを取得してもよい。また、サーバ2000に設けられている作業機制御部56が、入力掘削深さデータに基づいて作業機1を介入制御するための制御信号を生成し、通信回線5000を介して、生成した制御信号を油圧ショベル100の制御弁45に送信してもよい。
なお、上述の実施形態においては、操作装置40がパイロット圧方式の操作装置であることとした。操作装置40は、電気方式でもよい。
なお、上述の実施形態においては、操作装置40が油圧ショベル100に設けられることとした。操作装置40が油圧ショベル100から離れた遠隔地に設けられ、油圧ショベル100が遠隔操作されてもよい。作業機1が遠隔操作される場合、遠隔地に設けられた操作装置40から作業機1を操作するための制御信号が油圧ショベル100に無線送信される。
なお、上述の実施形態においては、作業機械100が油圧ショベルであることとした。上述の実施形態で説明した施工管理システム1000は、ブルドーザ又はホイールローダのような、作業機を有する作業機械全般に適用可能である。