JP2018020986A - 歯周病治療組成物およびそれを含む歯周病治療組成物キット - Google Patents

歯周病治療組成物およびそれを含む歯周病治療組成物キット Download PDF

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裕史 宮治
Yuji Miyaji
裕史 宮治
さほり 宮田
Sahori Miyata
さほり 宮田
佳代子 眞弓
Kayoko Mayumi
佳代子 眞弓
中塚 稔之
Toshiyuki Nakatsuka
稔之 中塚
啓至 高橋
Keiji Takahashi
啓至 高橋
秀人 笠場
Hideto Kasaba
秀人 笠場
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Abstract

【課題】歯肉縁下又は歯肉縁上の様々な歯面、特に歯周ポケット内の歯面やSPR処置後のスメア層が存在する歯面等に対して簡便且つ容易に適用することができ、細菌の耐性化を発現させることなく、長期間に渡り細菌の付着や活性を持続的に抑制することができる歯周病治療組成物およびそれを用いた歯周病治療組成物キットを提供。【解決手段】平均粒子径が0.2〜3.0μmであるイオン徐放性ガラスと水を含んだ歯周病治療組成物を歯肉縁上のエナメル質や象牙質又は歯肉縁下における歯周ポケット内のセメント質などに適用する。【選択図】なし

Description

本発明はエナメル質、セメント質、象牙質(象牙細管内を含む)等の様々な歯面に付着固定することによって、細菌の付着、プラークの形成及び細菌の活性などを抑制することができる歯周病治療組成物およびそれを含む歯周病治療組成物キットに関するものである。
歯周病は日本の国民病とも呼ばれ成人の約8割が罹患していると言われている、虫歯(う蝕)と並ぶ歯を喪失する原因の2大疾病である。歯周病に罹患すると歯の歯根部分を包んでいる粘膜組織の歯肉(歯茎)や、歯肉の内部にあって歯根を支えている歯槽骨等の歯周組織が破壊されるために歯が支えられなくなり、最終的に歯を喪失することになる。
この歯周病は歯面に形成されたプラーク(歯垢)中に生息する歯周病原菌によって引き起こされる歯周組織の病気であり、歯周病原菌から放出される内毒素による炎症性疾患であることが明らかにされている。通常、歯面には糖タンパク質やアミノ酸等を含む唾液に接触することで、有機酸被膜(ペリクル)が形成される。このペリクルを基点に口腔内細菌が吸着し、細菌と細菌叢の凝集塊であるプラークが形成されるのである。歯周病は発症初期にみられる歯肉の炎症による腫れや歯肉と歯の隙間(歯周ポケット)からの出血を伴なう歯肉炎と、歯を支える歯槽骨が破壊される歯周炎とに大別される。歯周病が進行し歯槽骨が破壊され、水平的に退縮してしまった歯周組織は、健全な状態に回復させることが理想的であるものの、残念ながらその回復方法は確立されているとは言えない。従って、少しでも歯周病に罹患しないようリスクを低減させることが啓蒙されている。すなわち、原因となる歯周病原菌の巣窟となるプラークをハブラシによるブラッシングによって機械的に除去することが啓蒙されている。
しかし、歯周病は「サイレントディジーズ(静かに進行する病気)」とも呼ばれ、痛みを伴わず自覚症状がない病気でもある。そのためブラッシングが行い難い部位、例えば臼歯隣接面や歯周ポケット内部においては適切にプラーク除去が施せないため、いつの間にか歯周病に罹患してしまう事例が多いことが現状である。また除去されずに取り残されたプラークが、時間が経つとブラッシングでは除去できない歯石となってしまい、病状の進行を助長する。従って、一旦歯周病に罹患し、歯周炎に至ると歯周ポケットが徐々に深くなっていき、この中に多種の細菌が生息することとなり歯周ポケット内にもプラーク並びに歯石がさらに形成されてしまうこととなる。
不憫にも重度な歯周炎となってしまった場合は炎症した歯肉を切開して歯周ポケット深部にまで入り込んだプラークを徹底的に除去及び炎症による不良肉芽組織の切除を行う必要がある。また、必要であれば歯槽骨を整形し歯肉を縫合することで深淵であった歯周ポケット深さを減少させるといった外科的な方法も施されている。この場合、健全な状態であった歯周組織と比べると、歯根面が露出してしまい、歯肉が下がったように見えるため、歯周病が重症化すると完全に健全な元の状態に回復させるにはまだ多くの課題が残っている。
歯周病の治療は、自身の適切な口腔内清掃と歯科医院での歯科医師や歯科衛生士による機械的なプラーク除去を施すことである。歯科医院ではスケーラーと呼ばれる専用器具を用いたプラーク及び歯石の除去(スケーリング)と、キュレットと呼ばれる器具を用い、歯周病原菌由来の内毒素によって汚染された歯根面のセメント質や象牙質を除去し、歯肉が再付着し易いように歯根面を研磨し滑らかにする施術(ルートプレーニング)が行われる。
歯周病治療の際に行われるスケーリング・ルートプレーニング(SRP)が施された歯面には、少なからずセメント質や象牙質の切削屑(スメア層)が生成される。スメア層内には歯周病原菌が残留しており、施術後スメア層が残存すると予後への影響が危惧されるため、その症例や部位によって、スメア層を除去する歯面処理材を適用される場合があった。
上述のように歯周病は歯周病原菌に感染し発症する感染症であることから、感染症に対する化学療法的なアプローチとして、歯周病原菌に対して抗菌性、殺菌性のある成分や抗炎症剤を含んだ歯周病治療剤が提案されている。歯周病治療剤に含まれる抗菌性成分としては、漢方に処方される生薬(特許文献1)や、合成抗菌剤(特許文献2)、天然成分(特許文献3)等が用いられているが、これらの歯周病治療剤は通常歯磨剤あるいは洗口剤といった剤形で提供されるため、有効成分が歯周ポケット内のプラーク内部にまでは浸透し難く、プラーク中に生息する歯周病原菌の死滅や活性抑制するまでには至らないことがあった。また、SRPを施した歯面にスメア層が残存する場合における歯周病治療剤の投与は、スメア層に残留する歯周病原菌へ抗菌効果も限定的になり、予後の影響も危惧されるものであった。
また歯周病原菌にクロルヘキシジンやバンコマイシン、スピラマイシンといった抗生物質を用いて抑制する方法では、歯周病原菌自体が耐性を持ってしまい持続的効果が得られなくなったり、また下痢や嘔吐などの副作用を誘発する短所があるだけでなく、歯周病原菌以外の口腔内の常在菌を死滅させたりする問題がある。
歯周病治療剤に代表される抗生物質をジェル剤に担持した「ペリオクリン」(サンスター社)が市販され臨床でも多用されている。しかし、ジェル剤である「ペリオクリン」を患部に局所投与した場合では、唾液や歯肉溝滲出液によって患部から流出し投与した部位に滞留し続けることができず、一過性の効果をもたらすだけに留まり、長期に渡る鎮静効果が得られていなかった。
これらの課題を解決するために、抗生物質の担持体に生分解性高分子を用いたマイクロカプセル状の個体粒子剤(特許文献4)やファイバー状の固形剤(特許文献5)を用いた技術が開示されている。しかし、マイクロカプセル状固形剤を用いた場合は、マイクロカプセル内に包含された抗生物質が長期間徐放することができるものの、患部の滞留性が粘着剤に依存しているため、日常のハブラシ等の機械的な摩耗を受ける部位においては長期的な効能発揮に制限があった。さらに滞留性を向上させるべくファイバー状の固形剤を局所投与する場合は、投与するのに時間がかかるとともに、治療を行うための技術習得する必要があること、また一定期間後にファイバーを除去する必要があること等を踏まえると術者及び患者に対する負担が大きいものであった。
一方、金属や金属イオン等の抗菌作用や除菌作用を利用し口腔内細菌の繁殖や活性を抑えることを目的とした技術が一般的に開示されている。
非特許文献1には、複数のイオンを同時に徐放することができるイオン徐放性ガラスが口腔内細菌の静菌効果並びにプラーク沈着抑制効果をもつことが開示されている。この効果を応用した特許文献6では、イオン徐放性ガラスから徐放される複数のイオンによるう蝕予防や歯質強化、知覚過敏の抑制、口腔内細菌の抗菌、静菌効果、口臭予防等口腔の健全化に寄与することのできる口腔ケア組成物に関する技術が開示されている。しかし、この口腔内ケア組成物は一般的に歯磨剤あるいは洗口剤として使用されているペースト状あるいは液状の形態で提供されるものであり、歯周ポケットの深淵部等、様々な歯面への長期的な付着性に満足するものではなかった。
特許4873805号公報 特開2006-131542号公報 特開2005-120013号公報 特許第4268227号公報 米国特許第4764377号公報 特許5653551号公報
International Journal of Dentistry Volume 2012 (2012), Article ID 814913
従来の歯周病治療剤においては上述の通り漢方に処方される生薬、合成抗菌剤、天然成分を含む歯磨剤や洗口剤等を口腔内の歯面に適用するものの、それぞれの成分が歯肉縁下に位置する歯周ポケット内の歯面にまで到達できないため、それらの効果が得られない等の課題があった。また、歯肉縁上に位置する歯面への適用においては短期的にはそれら成分の効果は期待できるものの、ブラッシングによる清掃や唾液によって歯面上から消失するために、効果の持続性において課題があった。
そこで本発明は歯肉縁下又は歯肉縁上の様々な歯面、特に歯周ポケット内の歯面やSPR処置後のスメア層が存在する歯面等に対して簡便且つ容易に適用することができ、そしてそれらの歯面に付着固定されたイオン徐放性ガラスから徐放するマルチイオンの効果によって、細菌の耐性化を発現させることなく、長期間に渡り細菌の付着や活性を持続的に抑制することができる歯周病治療組成物およびそれを用いた歯周病治療組成物キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究をした結果、平均粒子径(D50)が特定の範囲内にあるイオン徐放性ガラスと水を含んだ歯周病治療組成物を歯肉縁上のエナメル質や象牙質又は歯肉縁下における歯周ポケット内のセメント質などの様々な歯面に適用した場合において、そのイオン徐放性ガラスがそれらの歯面に付着固定され、持続的にマルチイオンを徐放することを見出し、本発明を完成するに至った。また、この付着固定されたイオン徐放性ガラスはブラッシングによる清掃や唾液によって歯面上から消失することなく、歯面滞留性にも優れることも明らかになり、そのイオン徐放性ガラスから徐放するマルチイオンの効果によって細菌の耐性化を発現させることなく細菌の付着や細菌の活性を長期間に渡り持続的に抑制することができる等、歯肉炎や歯周炎の予防もしくは治療に応用できることが期待できる。
本発明者らは本願において以下の発明を提供する。
本発明は、平均粒子径(D50)が0.2〜3.0μmの範囲にあるイオン徐放性ガラス及び水を含む歯周病治療組成物を提供する。
また、本発明は前記歯周病治療組成物に含まれるイオン徐放性ガラスの含有量が0.01〜3.0重量部の範囲にある歯周病治療組成物を提供する。
さらに、本発明は前記歯周病治療組成物に可溶化剤が含まれており、その可溶化剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選択された少なくとも1種以上である歯周病治療組成物を提供する。
さらに本発明は前記歯周病治療組成物と歯面処理材を組み合わせてなる歯周病治療組成物キットを提供する。
本発明の歯周病治療組成物は、イオン徐放性ガラス及び水を含んだものであるが、歯周病治療組成物中で共存する水中には予めイオン徐放性ガラスから徐放したマルチイオンが存在し、歯周病治療組成物のpHが7.2〜8.2の範囲に調整されていることも特徴であり、それらも含めて本発明の以下の効果がもたらされるのである。
本発明の歯周病治療組成物を歯肉縁上のエナメル質や象牙質(象牙細管も含む)又は歯肉縁下における歯周ポケット内のセメント質などの様々な歯面に適用することによって、そのイオン徐放性ガラスがそれらの歯面に付着固定され、持続的にマルチイオンを徐放することができる。また、歯周ポケット内のSRP処置後において除去できなかったプラークが存在している又はスメア層が存在している歯面等に対してもイオン徐放性ガラスが付着固定され、同様にマルチイオンを徐放することができる。さらに歯肉縁上のエナメル質や象牙質(象牙細管も含む)に付着固定されたイオン徐放性ガラスはブラッシングによる清掃や唾液によって歯面上から消失することなく、歯面滞留性にも優れている。このようにイオン徐放性ガラスが様々な歯面において強固に付着固定されるメカニズムは明らかではないが、特定の範囲にあるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)と歯周病治療組成物中で共存している水中にイオン徐放性ガラスから予め徐放しているマルチイオンの存在が複雑に関与しているものと考えられる。
この歯面上に付着固定されたイオン徐放性ガラスからのマルチイオンの徐放はイオン徐放性ガラスが歯面上で付着固定されている限りにおいて持続的に起こり、細菌の増殖や活性の抑制やプラーク形成の抑制を発現することができる。
さらに、本発明の歯周病治療組成物を適用する前に特定の歯面処理材を用いて処理することによって、イオン徐放性ガラスが均一に付着固定することで細菌の増殖や活性の抑制やプラーク形成の抑制等の効果を高めることができる。
本発明の歯周病治療組成物は平均粒子径(D50)が0.2〜3.0μmの範囲にあるイオン徐放性ガラス及び水を含むことを特徴とする。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスはガラス骨格を形成する1種以上のガラス骨格形成元素とガラス骨格を修飾する1種以上のガラス修飾元素を含むものであれば何等制限なくいずれのイオン徐放性ガラスも用いることができる。これらのイオン徐放性ガラスは単独だけではなく複数のイオン徐放性ガラスを組み合わせて用いることもできる。また、本発明においてはガラス組成に応じてガラス骨格形成元素又はガラス修飾元素として作用することができるガラス両性元素は、ガラス骨格形成元素の範疇として含めるものである。イオン徐放性ガラスに含まれるガラス骨格形成元素を具体的に例示するとシリカ、アルミニウム、ボロン、リン等が挙げられるが、これらは単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。また、ガラス修飾元素を具体的に例示するとフッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲン類元素、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属類元素、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属類元素等が挙げられるが、これらは単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。これらの中でもガラス骨格形成元素としてシリカ、アルミニウム、ボロンを含み、且つガラス修飾元素としてフッ素、ナトリウム、ストロンチウムを含むことが好ましく、具体的にはストロンチウム、ナトリウムを含んだシリカガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、フルオロボロシリケートガラス、フルオロアルミノボロシリケートガラス等が挙げられる。さらに、フッ化物イオン、ストロンチウムイオン、アルミニウムイオン、ホウ酸イオンを徐放する観点から、より好ましくはナトリウム、ストロンチウムを含んだフルオロアルミノボロシリケートガラスであり、そのガラス組成範囲を具体的に例示するとSiO2 15〜35質量%、Al2O3 15〜30質量%、B2O3 5〜20質量%、SrO 20〜45質量%、F 5〜15質量%、Na2O 0〜10質量%である。このガラス組成は元素分析、ラマンスペクトルおよび蛍光X線分析等の機器分析を用いることにより確認することができるが、いずれかの分析方法においても実測値がこれらの組成範囲に合致していれば何等問題はない。
これらのイオン徐放性ガラスの製造方法においては特に制限はなく、溶融法あるいはゾルーゲル法等の製造方法で製造することができる。その中でも溶融炉を用いた溶融法で製造する方法が原料の選択も含めたガラス組成の設計のし易さの点から好ましい。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスは非晶質構造であるが、一部結晶質構造を含んでいても何等問題はなく、さらにそれらの非晶質構造を有するガラスと結晶構造を有するガラスの混合物であっても何等問題はない。ガラス構造が非晶質であるか否かの判断はX線回折分析や透過型電子顕微鏡等の分析機器を用いて行うことができる。その中でも本発明に用いるイオン徐放性ガラスは外部環境におけるイオン濃度との平衡関係により各種イオンが徐放することから、均質な構造である非晶質構造であることが好ましい。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)はイオン徐放性ガラスからの各種イオンの徐放量や歯面への付着性において影響を及ぼすものである。そのため、イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)は湿式又は/及び乾式の粉砕、分級、篩い分け等の方法により制御する必要がある。
本発明に用いられるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)は0.2〜3.0μmの範囲であれば特に制限はないが、好ましくは0.2〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.5μmの範囲である。イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が0.2μm未満の場合は歯周病治療組成物中においてエマルジョンの安定性が不良となり分散性が悪く、歯面上への付着固定が安定しない可能性がある。また、イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が3.0μmを超える場合は付着固定力が不足することとなり、歯面に付着する粒子頻度が著しく低下し、十分で均一な歯面付着が得られない。また、イオン徐放性ガラスの形状は球状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状でよく、特に何等制限はないが、好ましくは球状あるいは破砕状である。
さらにイオン徐放性ガラスからのイオン徐放性を高めるために、ガラス表面を表面処理することにより機能化してイオン徐放性を向上させることが好ましい態様である。表面処理に用いる表面処理材を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、モノマー、ポリマー、各種カップリング材、シラン化合物、金属アルコキシド化合物及びその部分縮合物等が挙げられる。これらの表面処理材の中でも、酸性ポリマー及びシラン化合物を用いて複合表面処理を行うことが好ましい。
この複合表面処理はシラン化合物によりイオン徐放性ガラス表面に被覆した後に、酸性ポリマーを用いて表面処理する方法であり、以下において具体的に説明する。
粉砕等により所望の平均粒子径(D50)に微粉砕されたイオン徐放性ガラスを含有する水性分散体中に、一般式(I)
(式中、ZはRO-、Xはハロゲン、YはOH-、Rは炭素数が8以下の有機基、n、m、Lは0から4の整数で、n+m+L=4である)で表されるシラン化合物を混合し、これを系中で加水分解または部分加水分解してシラノール化合物を経て、次いでこれを縮合させ、ポリシロキサンとした後にイオン徐放性ガラス表面を被覆する。
上記のシラン化合物処理方法は、シラン化合物の加水分解及び縮合とイオン徐放性ガラス表面へのポリシロキサン処理を同一系内で同時に行っているが、シラン化合物の加水分解及び縮合を別の系で行って低縮合シラン化合物(オリゴマー)を生成させ、それをイオン徐放性ガラスを含有する水性分散体に混合する表面処理方法でも効率よくイオン徐放性ガラス表面にポリシロキサン被膜を形成することが可能である。より好ましくは市販の低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用い、低縮合生成過程を経ず混合するシラン化合物処理方法である。この方法が好ましい理由としては、シラン化合物単量体を用いる場合は、縮合段階において多量の水が存在することから、縮合が3次元的に起こり、自己縮合が優位に進行し、均一なポリシロキサン被膜をイオン徐放性ガラス表面に形成することができないと考えられる。
一方低縮合シラン化合物(オリゴマー)を用いる場合は、ある長さのポリシロキサン主鎖を有するユニット単位でガラス表面にポリシロキサン被膜を均一に形成することが可能と考えられる。またこの低縮合シラン化合物(オリゴマー)の形状は特に制限はないが3次元体のものよりも直鎖状の方が良く、またその重合度においても長いものほど縮合反応性が劣り、イオン徐放性ガラス表面上のポリシロキサン被膜の形成が悪くなることから、好ましい重合度は2〜20の範囲であり、より好ましくは2〜6である。その時の分子量は500〜600の範囲である。
上記水性分散体中でのシラン化合物処理は比較的低速の撹拌状態下で行われ、温度は室温から100℃の範囲、より好ましくは室温から50℃の範囲であり、撹拌時間は通常数分から数十時間、より好ましくは30分〜4時間の範囲で行われる。撹拌は特別な方法を必要とするものではなく、一般工業界で通常に使用されている設備を採用して行うことができる。例えば万能混合撹拌機やプラネタリーミキサー等のスラリー状のものを撹拌できる撹拌機を用いて撹拌すればよい。撹拌温度は水性媒体が揮発しない温度、つまり水性媒体の沸点以下の温度であれば何等問題はない。撹拌時間はシラン化合物または低縮合シラン化合物の種類または添加量、ガラスの種類、粒子径及びその水性分散体中に占める割合、水性媒体の種類及び水性分散体中に占める割合により、縮合して形成するゲル化速度が影響を受けることから、調節しなければならなく、またゲルが形成されるまで行わなければならない。撹拌速度は速すぎるとゲル構造が崩れ、均一な被膜が形成されないため、低速で行う必要がある。
また上記の水性媒体とは水及びアルコールから構成される。アルコールを加えることにより乾燥工程においてイオン徐放性ガラスの凝集性を軽減させ、より解砕性を向上させる多大な効果がある。好ましいアルコールとしては炭素数2〜10のアルコール類であるが、炭素数が10以上のアルコールの添加は沸点が高く溶媒を乾燥除去するために長時間を要する。具体的なアルコールを例示するとエチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、iso−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコールn−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコールが挙げられ、より好ましくは炭素数2〜4のアルコール、例えばエチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが挙げられる。
上記アルコールの添加量は水に対して5〜100重量部、好ましくは5〜20重量部である。添加量が100重量部以上になると乾燥工程が複雑になる等の問題が生じる。
またイオン徐放性ガラスの含有量は水性媒体に対して25〜100重量部の範囲であり、好ましくは30〜75重量部の範囲である。イオン徐放性ガラスの含有量が100重量部を超える場合は縮合によるゲル化速度が速く、均一なポリシロキサン被膜層を形成しにくい。また、25重量部より少ない場合、撹拌状態下でイオン徐放性ガラスが沈降したり水性媒体中で相分離が発生したりする。また、シラン化合物の添加量はイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)に依存するが、イオン徐放性ガラスに対してSiO2 換算で0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜4重量部である。添加量が0.1重量部以下の場合は、ポリシロキサン被膜層形成の効果がなく、一次粒子まで解砕できず凝集したものになる。一方10重量部以上では乾燥後の固化物が硬すぎて解砕することができず、一次粒子まで戻すことができない。
「ゲル」状態にある系を、乾燥し水性媒体を除去して固化させる。乾燥は、熟成と焼成の2段階からなり、前者はゲル構造の生長と水性媒体の除去を、後者はゲル構造の強化を目的としている。前者はゲル構造にひずみを与えず、かつ水性媒体を除去することから静置で行う必要があり、箱型の熱風乾燥器等の設備が好ましい。熟成温度は室温から100℃の範囲で、より好ましくは40〜80℃の範囲である。温度がこの範囲以下の場合は、水性媒体除去が不十分であり、一方この範囲以上の場合は水性媒体分が急激に揮発するため、ゲル構造に欠陥が生じたり、またはガラス表面から剥離したりする恐れがある。熟成時間は乾燥器等の能力にもよるため、水性媒体が充分除去できる時間ならば何等問題はない。
一方焼成工程は昇温と係留に分かれ、前者は目標温度まで徐々に長時間かけて昇温する方がよく、急激な温度はゲル分散体の熱伝導が悪いため、ゲル構造内にクラックが生じる可能性がある。後者は一定温度での焼成である。焼成温度は100〜350℃の範囲であり、より好ましくは100〜200℃である。
以上のように乾燥によりゲルから水性媒体を除去し、収縮した固化物が得られる。固化物はイオン徐放性ガラスの凝集状態ではあるが、単なるイオン徐放性ガラスの凝集物ではなく、個々の微粒子の境界面には縮合により形成されたポリシロキサンが介在している。したがって次の工程としてこの固化物をポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラス相当に解砕すると、その表面がポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスが得られる。ここで「ポリシロキサン処理前のイオン徐放性ガラス相当に解砕する」とは、ポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスの一次粒子に解砕することであり、元のイオン徐放性ガラスと異なる点は個々の微粒子がポリシロキサンで被覆されていることである。ただし、問題ない程度であれば2次凝集物を含んでいてもよい。固化物の解砕は、せん断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては、例えばヘンシェルミキサー、クロスロータリミキサー、スーパーミキサー等を用いて行いことができる。
一般式(I)で表されるシラン化合物を具体的に例示すると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2-エチルヘキシロキシ)シラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリイソプロポキシクロロシラン、トリメトキシヒドロキシシラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン、水酸化ケイ素(酸化ケイ素水和物)等が挙げられ、より好ましくはテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランである。
また一般式(I)で表されるシラン化合物の低縮合体であることがより好ましい。例えばテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランを部分加水分解して縮合させた低縮合シラン化合物である。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。
またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部としてオルガノシラン化合物も添加することができる。オルガノシロキサン化合物を具体的に例示すると、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等が挙げられ、特に好ましくはメチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシランが挙げられる。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。しかしこれらはポリシロキサン層内において有機基が存在するため、ポリシロキサン層形成時にひずみを受ける可能性があり、ポリシロキサン層の機械的強度に問題が生じることがある。このため少量の添加にとどめておく必要がある。またポリシロキサン処理時に一般式(I)で表されるシラン化合物の一部として、他の金属のアルコキシド化合物、ハロゲン化物、水和酸化物、硝酸塩、炭酸塩も添加することができる。
前記工程で得られたポリシロキサンで被覆されたイオン徐放性ガラスは酸性ポリマーと反応させる酸性ポリマー処理を施すことによって本発明の最も好ましい表面処理イオン徐放性ガラスを得ることができる。酸性ポリマー処理は乾式流動型の撹拌機であれば業界で一般に使用されている設備を用いることができ、ヘンシルミキサー、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー等が挙げられる。ポリシロキサン被膜が形成されたイオン徐放性ガラスへの酸性ポリマーの反応は、酸性ポリマー溶液を含浸や噴霧等により接触させることにより行うことができる。例えばポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを乾式流動させ、その流動させた状態で上部から酸性ポリマー溶液を分散させ、十分撹拌するだけでよい。このとき酸性ポリマー溶液の分散法は特に制限はないが、均一に分散できる滴下またはスプレー方式がより好ましい。また反応は室温付近で行うことが好ましく、温度が高くなるとポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスと酸性ポリマーの反応が速くなり、酸性ポリマー反応相の形成が不均一になる。
熱処理後、熱処理物の解砕は剪断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては上記反応に用いた設備などで行うことができる。
反応に用いる酸性ポリマー溶液の調製に用いる溶媒は、酸性ポリマーが溶解する溶媒であれば何等制限はなく、水、エタノール、アセトン等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは水であり、これは酸性ポリマーの酸性基が解離し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスと均一に反応することができる。
酸性ポリマー溶液中に溶解したポリマーの重量分子量は2000〜50000の範囲であり、好ましくは5000〜40000の範囲である。2000未満の重量平均分子量を有する酸性ポリマーで処理した場合はポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラス中に酸性ポリマー反応相が形成されず、その結果イオン徐放性が低くなる傾向にある。一方、50000を超える重量平均分子量を有する酸性ポリマーで処理した場合は酸性ポリマー溶液の粘性が高くなるため、均質にポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを処理することが困難となる。また酸性ポリマー溶液中に占める酸性ポリマー濃度は3〜25重量部の範囲が好ましく、より好ましくは8〜20重量部の範囲である。酸性ポリマー濃度が3重量部未満になると上記で述べた酸性ポリマー反応相が脆弱になり、イオン徐放が向上する効果が得られない。また酸性ポリマー濃度が25重量部を超えるとポリシロキサン層(多孔質)を均一な状態で拡散しにくく、均質な酸性ポリマー反応相が得られず、またポリシロキサン被覆されているイオン徐放性ガラスに接触すると直ぐに反応が起こるため、強固に反応した凝集物が生成する等の問題が発生する。またポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー溶液の添加量は6〜40重量部の範囲が好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。この添加量で換算するとポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー量は1〜7重量部、また水量は10〜25重量部の範囲が最適値となる。
上記の方法によりポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスの表面に酸性ポリマー反応相を形成させるために用いることのできる酸性ポリマーは、酸性基として、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基、スルホン酸基等の酸性基を有する重合性単量体の共重合体または単独重合体であれば何等問題なく用いることができる。これらの重合性単量体を具体的に例示するとアクリル酸、メタクリル酸、2-クロロアクリル酸、3-クロロアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、グルタコン酸、シトラコン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5-(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシ-1,1-ウンデカンジカルボン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2-ジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルリン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル2'-ブロモエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、ピロリン酸ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等が挙げられる。これらの重合性単量体を用いて(共)重合された重合体の中でもポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラス中に含まれる酸反応性元素との酸-塩基反応が比較的遅い、α-β不飽和カルボン酸の単独重合体または共重合体を用いることが好ましく、具体的にはアクリル酸重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、アクリル酸-イタコン酸共重合体等が挙げられる。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスはそのガラス組成に基因したイオン種を持続的に徐放することが特徴であり、金属フッ化物等の水への溶解によって一時的に多量を放出するものとは異なるものである。
以下の手法によって本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスがイオン徐放性を有しているか否かを判断することができる。
蒸留水100gに対してイオン徐放性ガラスを0.1g加え、1時間撹拌させた時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F1)又はイオン種に基因した元素濃度(F1)と、2時間撹拌した時の蒸留水中に徐放したイオン濃度(F2)又はイオン種に基因した元素濃度(F2)が下式(1)の関係を満足する場合においてイオン徐放性を有していると見做すことができる。
F2 > F1 ・・・・式(1)
また、イオン徐放性ガラスから徐放するイオンが複数ある場合は、すべてのイオン濃度又はイオン種に基因した元素濃度が式(1)を満足する必要はなく、少なくとも一つのイオン濃度又はイオン種に基因した元素濃度が式(1)を満足した場合でもイオン徐放性を有していると見做すことができる。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスはイオン徐放の効果に基因した酸中和能を有していることが好ましい。酸中和能はpHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対してイオン徐放性ガラスを0.1g加え、5分間撹拌させた時のpH変化を測定することにより確認することできる。その時のpHが5.5以上、より好ましくは6.0以上、最も好ましくは6.5以上を示したとき酸中和能が発現すると見做すことができる。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスの含有量は0.01〜3.0重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0重量部であり、最も好ましい範囲は0.5〜1.5重量部である。イオン徐放性ガラスの含有量が0.01重量部未満の場合、歯面に付着固定されるイオン徐放性ガラスの付着量が不足するためにイオン徐放による効果が得られない。一方、イオン徐放性ガラスの含有量が3.0重量部を超える場合は、幾層にも粒子が堆積し表面性状が極端に粗くなり、細菌の物理的吸着を促進する可能性がある。
本発明の歯周病治療組成物に用いられる水は医療用成分として臨床上受容されたものであり、また本発明の歯周病治療組成物の成分と反応しない、又は本発明の歯周病治療組成物の効果を阻害しない有害な不純物を含まないものであれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは注射用水、蒸留水、精製水、イオン交換水、脱イオン水、純水等が挙げられる。本発明の歯周病治療組成物に用いられる水の含有量は60.0〜99.99重量部の範囲で使用することができる。水の含有量が60重量部未満になるとイオン徐放性ガラスの含有量が多くなり、歯面に対して均一且つ薄く適用することができなくなる。
本発明の歯周病治療組成物はイオン徐放性ガラスと水が均一に混合分散している状態でも、またイオン徐放性ガラスと水が沈降分離している状態でも何等制限なく用いることができる。しかし、後者の場合、使用前に組成物全体を振る等の簡単な操作を行うことによって組成物中において均一に混合分散する状態のものが好ましい。
これらの歯周病治療組成物の製造方法はイオン徐放性ガラスと水が均一に混合分散する方法であれば何等制限なく用いることができるが、イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)を制御するために混合分散と粉砕又は解砕を同時に行うこともこの好ましい態様である。さらに歯周病治療組成物中におけるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)と含有量を制御するために、均一混合分散したイオン徐放性ガラスと水からなる混合物を一定時間静置後、その上澄み液を抽出したものを本発明の歯周病治療組成物として用いることも好ましい態様である。この製造方法を用いると様々な溶媒、例えば水やエタノール等で希釈することも可能となり、歯周病治療組成物中に含まれているイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)とその含有量を容易に調整することができる。
さらに本発明の歯周病治療組成物はイオン徐放性ガラスと水を含んでいるのであるが、その組成物中の水中にはイオン徐放性ガラスからそのガラス組成に基因する数種類のイオンが予め徐放しており、その結果本発明の歯周病治療組成物のpHが7.2〜8.2の範囲にあることも本発明の特徴である。この特徴が本発明の効果であるイオン徐放性ガラスの様々な歯面への付着固定に影響を及ぼしていると考えられる。
本発明の歯周病治療組成物にはイオン徐放性ガラス及び水以外に可溶化剤を含むことによって様々な歯面に対するイオン徐放性ガラスの付着固定をより安定にすることができる。具体的に例示される可溶化剤はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等が挙げられ、好ましくはN−メチルピロリドンが挙げられる。これらの可溶化剤は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることもできる。
上記の可溶化剤の含有量は歯周病治療組成物に対して0.01〜50重量部、好ましくは0.01〜20重量部である。可溶化剤の含有量が0.01重量部以下の場合はブラッシングによる清掃等によって歯面上に付着固定したイオン徐放性ガラスの付着耐久性が低下する傾向にあり、50重量部以上の場合、イオン徐放性ガラスから放出されるイオン徐放量に影響を及ぼし、細菌の増殖や活性の抑制に影響を与える。
また、本発明の歯周病治療組成物には、本発明の効果に悪影響の及ぼさない範囲において上記以外の成分として増粘剤、湿潤剤、甘味料、香料、着色料等、他の添加剤を配合することができる。
本発明の歯周病治療組成物には操作性を向上させるために適度な粘性を与える添加剤として増粘剤を配合することができる。具体的に例示される増粘剤はカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ペクチン、ゼラチン等が挙げられる。これらの増粘剤は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明の歯周病治療組成物には凝固や分離を防止し、しっとりとした性状とするための添加剤として湿潤剤を配合することができる。配合される湿潤剤は、水溶性であれば何等問題なく、具体的に例示される湿潤剤はソルビトール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの湿潤剤は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明の歯周病治療組成物には口腔内での使用感を良くするための添加剤として甘味料を配合することができる。配合される甘味料は非う蝕性甘味料で人工甘味料が好ましい。具体的に例示される甘味料はキシリトール、マルチトース、アスパルテーム、ソルビトール、サッカリンナトリウム、スクラロース、還元パラチノース、パラチノース、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、シクロデキストリン、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。これらの甘味料は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明の歯周病治療組成物には爽快感や香りを付けるための香料を配合することができる。具体的に例示される香料はメントール、アネトール、イソアミルアセテート、サリチル酸メチル、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、桂皮油、丁字油、ユーカリカルボン、リモネン、メチルサリシレート、サッカリンナトリウム等が挙げられる。これらの香料は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明の歯周病治療組成物はSRPを施した後にも適用できるものであるが、生成されるスメア層が残存することもあるため、歯周病治療組成物の適用前に特定の歯面処理材を施すことによりイオン徐放性ガラスの付着固定を均一にすることができる。歯面処理材は、その部位の殺菌、消毒、スメア層の除去およびタンパク質の除去等を行うことができる歯面処理成分を含むものであるが、これらに制限されるものではない。歯面処理材は歯面処理成分のみからなるものであってもよいし、歯面処理成分を含有する組成物、例えば水溶液であってもよい。具体的に例示される歯面処理材は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、次亜塩素酸ナトリウム、リン酸、クエン酸、マレイン酸、シュウ酸、硝酸、ポリカルボン酸等が挙げられ、また、分子内にカルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基等をもつ酸性基含有化合物や重合性モノマー等が挙げられる。歯面処理材は単独で用いてもよく、組み合わせて使用したりすることができ、例えばリン酸による歯面処理後にEDTAによる歯面処理を行うといった組み合わせで複数回歯面処理を行ってもよい。
以下に本発明の実施例及び比較例について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものでない。
実施例及び比較例において採用した試験方法は以下の通りである。
[イオン徐放性ガラス及び各種フィラーから徐放される各イオンに基因した元素濃度の測定]
蒸留水100mlに対してイオン徐放性ガラス又は各種フィラーを0.1g加えて1時間撹拌後、分析用シリンジフィルター(クロマトディスク25A,ポアサイズ0.2μm:ジーエルサイエンス社製)でろ過し、そのろ液中に徐放している各イオンに基因した元素濃度をF1とした。また、同様に蒸留水100mlに対してイオン徐放性ガラス又は各種フィラーを0.1g加えて2時間撹拌後、同様にろ過し、そのろ液中に徐放している各イオンに基因した元素濃度をF2とした。このF1及びF2の値(それぞれの元素濃度)から(1)式への適合性を確認し、イオン徐放性の有無を判断した。
F2 > F1 ・・・・式(1)
なお、フッ素はフッ素イオン複合電極(Model 9609:オリオンリサーチ社製)及びイオンメータ(Model 720A:オリオンリサーチ社製)を用いてフッ化物イオンを測定し、その値を用いてフッ素元素濃度に換算した。測定時にイオン強度調整剤としてTISABIII(オリオンリサーチ社製)を0.5ml添加した。検量線の作成は0.1、1、10、50ppmの標準液を用いて行った。一方、他の元素(Na,B,Al,Sr)に関しては誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICPS-8000:島津製作所社製)を用いた測定により算出した。検量線の作成は0、10、25、50ppmの標準液を用いて行った。なお、測定元素が検量線範囲外となった場合は適宜希釈して測定値が検量線範囲内に位置するように測定を実施した。

[イオン徐放性ガラス及び各種フィラーの酸中和能試験]
乳酸水溶液(pH=4.0)10gに対して、イオン徐放性ガラス又はその他の各種フィラー0.1gを加えて5分間撹拌し、径時的なpHの変化を測定し、酸中和能を確認した。
[歯面付着性および付着耐久性の評価]
1.試験片の作製
ヒト抜去歯牙からブロック体(5×5×1mm)を切出し、歯質として象牙質、セメント質、エナメル質をそれぞれ用い、その表面を研磨(SIC#240番:三共理化学社)後、超音波水洗(5分間)・乾燥したものを試験片とした。
2.試験片の歯面処理
上記1.項にて作製した試験片に各歯面処理材を用いて処理を行った。用いた表面処理材は3%EDTA処理材(スメアクリーン:日本歯科薬品社製、表面処理時間:5分)、または有機酸処理材(松風エナメルコンディショナー:松風社製、表面処理時間:5秒)である。
3.試験片への擬似ペリクル被覆
口腔内で唾液と接触することにより形成されるペリクル被覆を模倣するために、擬似ペリクルを用いた試験片の被覆を行った。上記1.項にて作製した試験片を3%EDTA処理材(スメアクリーン:日本歯科薬品社製、表面処理時間:5分)で処理した後、超音波水洗(1分間)・乾燥を行った。その試験片を1%アルブミン(和光純薬社製)水溶液に1分間浸漬し、水洗して乾燥した。
4.歯面付着性の評価
歯面未処理の試験片(象牙質、セメント質、エナメル質)、3%EDTA処理材や有機酸処理材で歯面処理した試験片(象牙質)及び擬似ペリクルで被覆された試験片(象牙質)等を用いて本発明の各歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラス又は各種フィラーの歯面付着性を検討した。上記1〜3.項にて調製したそれぞれの試験片を本発明の各歯周病治療組成物に3分間浸漬後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄・乾燥した。その試験片の表面状態を電子顕微鏡(SEM)(S-4000:日立社製)を用いて観察し、イオン徐放性ガラス又は各種フィラーの試験片表面への付着状態から、以下の評価基準に準じて歯面付着性を評価した。
<評価基準>
×:表面に付着固定していない
△:不均一に付着固定している
○:均一に付着しているが表面に凹凸感が認められる
◎:均一に付着固定している
5.付着耐久性の評価
歯面未処理の試験片(象牙質、セメント質、エナメル質)、3%EDTA処理材や有機酸処理材で歯面処理した試験片(象牙質)及び擬似ペリクルで被覆された試験片(象牙質)等を用いて本発明の各歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラス又は各種フィラーの付着耐久性を検討した。上記1〜3.項にて調製したそれぞれの試験片を本発明の各歯周病治療組成物に3分間浸漬後、ブラッシング(100g荷重をかけた歯ブラシで10回)を行った。その試験片の表面状態を電子顕微鏡(SEM)(S-4000:日立社製)を用いて観察し、イオン徐放性ガラス又は各種フィラーの試験片表面への付着状態から、以下の評価基準に準じて付着耐久性を評価した。
<評価基準>
×:表面に付着なし
△:軽度な付着(0〜30%)
○:中程度の付着(30〜70%)
◎:中程度以上の均質な付着(70〜100%)
[静菌性の評価]
48wellマイクロプレートに本発明の各歯周病治療組成物を1滴(20µl/well)滴下後、デシケーターで24時間乾燥してマイクロプレートの底面に被膜を形成した。また、比較例としてコントロールには歯周病治療組成物の滴下していないwellを用いた。次にS. mutans(ATCC 35668)、A. actinomycetemcomitans(ATCC 29522)、P. gingivalis(ATCC 33277)のBHI培地懸濁液を各wellに500µl加え,37℃で24時間嫌気培養後,可視光度計(CO7500 colorimeter;フナコシ社製)で濁度(590nm、N=6)を測定した。統計処理にはシェッフェ法を用いた。
[歯面付着した歯周病治療組成物のイオン徐放性の評価]
3%EDTA処理材で歯面処理した試験片(象牙質)(N=4)を歯周病治療組成物Hまたは歯周病治療組成物Yに3分間浸漬後、乾燥した。その試験片を5mlの蒸留水に24時間浸漬後、その溶液中に徐放した各イオンに基因する元素濃度を測定した。フッ素はフッ素イオン複合電極(Model 9609:オリオンリサーチ社製)及びイオンメータ(Model 720A:オリオンリサーチ社製)を用いてフッ化物イオンを測定し、その値を用いてフッ素元素濃度に換算した。測定時にイオン強度調整剤としてTISABIII(オリオンリサーチ社製)を0.5ml添加した。検量線の作成は0.02、0.1、1.0、20ppmの標準液を用いて行った。他の元素(B,Al,Si,Sr)に関しては誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICPS-8000:島津製作所社製)を用いた測定により算出した。検量線の作成はB,Srについては0、0.01、0.1、0.2、0.5、2.0、5.0、10.0ppmの標準液を、Al,Siについては0、0.001、0.01、0.02、0.05、0.2、0.5、1.0ppmの標準液をそれぞれ用いて行った。

以下に示すように本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスを調製した。
[イオン徐放性ガラス1の調製]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料を混合後、その混合物を1400℃で溶融してガラスA(ガラス組成:SiO 23.8質量%、Al 16.2質量%、B 10.5質量%、SrO 35.6質量%、NaO 2.3質量%、F11.6質量%)を得た。次に得られたガラスAを振動ミルを用いて40時間粉砕した。得られた粉砕物をイオン徐放性ガラス1とした。このイオン徐放性ガラス1の平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.2μmであった。このイオン徐放性ガラス1から徐放した各種イオンに基因した元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)を測定し、式(1)への適合性からイオン徐放性能の有無を確認した。また、pH=4の乳酸水溶液を用いた酸中和能試験も実施した。それらの結果を表1に示した。
[イオン徐放性ガラス2の調製]
上記のイオン徐放性ガラス1を500g、低縮合シラン化合物1105gを万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラス1を得た。このポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラス1を500g採取し、ヘンシェルミキサーに投入後撹拌しながらその上部から、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量部、重量平均分子量20000;ナカライテスク社製)を噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、イオン徐放性ガラス2を得た。このイオン徐放性ガラス2の平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.3μmであった。この複合表面処理したイオン徐放性ガラス2から徐放した各種イオンに基因する元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)を測定し、(1)式への適合性からイオン徐放性能の有無を確認した。また、pH=4の乳酸水溶液を用いた酸中和能試験も実施した。それらの結果を表1に示した。
[イオン徐放性ガラス3の調製]
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料を混合後、その混合物を1400℃で溶融してガラスB(ガラス組成:SiO 19.8質量%、Al 19.8質量%、B 11.7質量%、SrO 35.0質量%、NaO 2.3質量%、F11.4質量%)を得た。次に得られたガラスBを振動ミルを用いて10時間粉砕した。得られた粉砕物をイオン徐放性ガラスBとした。このイオン徐放性ガラスBを500g、低縮合シラン化合物1660gを万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスBを得た。このポリシロキサン被覆ガラスBを500g採取し、ヘンシェルミキサーに投入後撹拌しながらその上部から、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量部、重量平均分子量20000;ナカライテスク社製)を噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、イオン徐放性ガラス3を得た。このイオン徐放性ガラス3の平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、5.1μmであった。この複合表面処理したイオン徐放性ガラス3から放出した各種イオンに基因する元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)を測定し、(1)式への適合性からイオン徐放性能の有無を確認した。また、pH=4の乳酸水溶液を用いた酸中和能試験も実施した。それらの結果を表1に示した。
その他の各種フィラーを用いて上記と同じ試験を実施した。イオン徐放性ガラス及び各種フィラーから徐放する各種イオンに基因した元素濃度測定結果と(1)式への適合性(イオン徐放性)及び酸中和能試験結果を表1に示した。
NaF:フッ化ナトリウム粉末(ナカライテスク社)
SOC5:シリカフィラーであるアドマファイン SO−C5(アドマテックス社)
表1に示す様に、イオン徐放性ガラス1〜3から徐放した各種イオンに基因した元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)はいずれも式(I)に適合しており、イオン徐放性能を有していることが認められた。一方、その他の各種フィラーから徐放した各種イオンに基因した元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)は式(I)に適合しておらず、イオン徐放性を有していないことが明らかになった。また、pHを4.0に調製した乳酸水溶液10gに対して、イオン徐放性ガラス1〜3およびその他の各種フィラー0.1gを加えて5分間撹拌し、径時的なpHの変化を測定した。その結果、イオン徐放性ガラス1〜3はpHが6.5程度まで上昇する酸中和能の発現が認められた。一方、その他の各種フィラーはpH4.0前後で一定に推移しており、ほぼpHの変化が認められず、酸中和能を有していないことが明らかになった。
[歯周病治療組成物の調製]
上記にて調製したイオン徐放性ガラス3:250gと蒸留水:250mlを24時間均一に混合撹拌し、懸濁液1を調製した。その後、懸濁液1を各所定時間静置した後、デカンテーションにより上澄み液を採取して懸濁液2(0.5時間)、懸濁液3(3.5時間)、懸濁液4(16時間)、懸濁液5(48時間)とした。それらの各懸濁液中に含まれるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)はレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定し、さらに、各懸濁液を蒸発乾固して各懸濁液に含まれるイオン徐放性ガラス含有量を求めた。表2に各懸濁液に含まれているイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)と含有量を示す。
各懸濁液を用いて表3に示した本発明の各歯周病治療組成物を調製した。なお、歯周病治療組成物Xは蒸留水にシリカフィラー(SO−C5:アドマテックス社製)を分散させ、また歯周病治療組成物Yは蒸留水にシリカフィラーを分散後にN―メチルピロリドンを添加して、それぞれ調製した。また、表4に歯面付着性と付着耐久性の評価(イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)による影響)を示す。
同一のイオン徐放性ガラス含有量(1.0重量部)である本発明の各歯周病治療組成物(A〜E)を用いて、それらに含まれるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が歯面(象牙質:未処理)への歯面付着性と付着耐久性に及ぼす影響について検討した。その結果、イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が3.0μm以下の場合(実施例1〜4)において歯面付着性が認められ、特に0.5μm以下の場合(実施例1及び実施例3)において均一な歯面付着性が認められた。一方、イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が5.0μm(比較例1)の場合はイオン徐放性ガラスの付着が認められなかった。
また付着耐久性においても歯面付着性と同じ傾向が認められ、特にイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が0.25μmの場合において中程度の付着状態が認められた。
表5に歯面付着性と付着耐久性の評価(イオン徐放性ガラスの含有量による影響)を示す。
同一のイオン徐放性ガラス平均粒子径(D50:0.50μm)である本発明の各歯周病治療組成物(A・F・G)を用いて、それらに含まれるイオン徐放性ガラス含有量が歯面(象牙質:未処理)への歯面付着性と付着耐久性に及ぼす影響について検討した。その結果、歯周病治療組成物中のイオン徐放性ガラス含有量が0.01〜5.00重量部の範囲であれば歯面付着性が認められ、その中でもイオン徐放性ガラス含有量が1.0重量部の場合において均一な歯面付着性が認められた。一方、付着耐久性においてはいずれの歯周病治療組成物(A・F・G)を用いても差異は認められず、いずれも軽度の付着状態を維持していることが認められた。
表6に歯面付着性と付着耐久性の評価(可溶化剤の影響)を示す。
本発明の各歯周病治療組成物(A・H・I)における可溶化剤の添加が歯面(象牙質:未処理)への歯面付着性と付着耐久性に及ぼす影響について検討した。その結果、歯周病治療組成物への可溶化剤添加の有無に関係なく歯面付着性においては差異が認められず、いずれも均一な歯面付着性であった。一方、付着耐久性においては歯周病治療組成物への可溶化剤添加により、イオン徐放性ガラスの付着が均一化する傾向があり、中程度の付着状態が認められた。
表7に歯面付着性と付着耐久性の評価(歯質の種類による影響)を示す。
本発明の歯周病治療組成物Hを用いた時における歯面(未処理)の種類が歯面付着性と付着耐久性に及ぼす影響について検討した。その結果、歯面付着性においては歯面の種類に関係なく、均一な歯面付着性が認められた。またそれらの付着耐久性においては、エナメル質で軽度な付着が認められたものの、象牙質及びセメント質で中程度の付着を示し、優れた付着耐久性が認められた。
表8に歯面付着性と付着耐久性の評価(歯面処理による影響)を示す。
本発明の歯周病治療組成物Hを用いた時において、歯面処理の有無又は歯面処理の種類が歯面付着性と付着耐久性に及ぼす影響について検討した。その結果、本発明の歯周病治療組成物Hは、歯面処理が施されていない歯面(象牙質)、3%EDTA処理材や有機酸処理材で歯面処理された歯面(象牙質)、及び擬似ペリクルで被覆された歯面(象牙質)のいずれにおいても差異が認められず、均一な付着性を示した。その一方で付着耐久性においては歯面処理が施された歯面(実施例11〜13)に対してはいずれもイオン徐放性ガラスが軽度な付着状態であったが、歯面処理によって開口した象牙細管内へのイオン徐放性ガラスの侵入が認められた。また、歯面処理を行ってない歯面(象牙質)は歯面処理を施した歯面(象牙質)よりも、イオン徐放性ガラスが中程度に付着している状態であった。
表9に歯面付着性と付着耐久性の評価(各添加剤による影響)を示す。
本発明の各歯周病治療組成物(H・J・K)における各添加剤の添加が歯面(象牙質:3%-EDTA処理)への歯面付着性と付着耐久性に及ぼす影響について検討した。歯周病治療組成物Hには可溶化剤であるN-メチルピロリドン、歯周病治療組成物Jには増粘剤であるカルボキシメチルセルロース、歯周病治療組成物Kには湿潤剤であるグリセリンをそれぞれ添加した。その結果、いずれの添加剤を添加した歯周病治療組成物を用いた場合においても、歯面への付着性には差異は認められず、均一なイオン徐放性ガラスの付着状態が認められた。一方、付着耐久性においても歯面付着性と同じ傾向が認められ、イオン徐放性ガラスが軽度〜中程度に付着している状態が認められた。
表10に各歯周病治療組成物の静菌性評価を示す。
同一のイオン徐放性ガラス含有量(1.0重量部)である本発明の各歯周病治療組成物(A〜D)を用いて、マイクロプレート底面にイオン徐放性ガラス被膜を形成後、そのウェル中で細菌培養を行った時の細菌増殖に基因する濁度を測定した。なお、本発明の歯周病治療組成物を用いてイオン徐放性ガラス被膜形成を行っていないウェル中で同様に細菌培養した時の細菌増殖に基因する濁度をコントロールとした。
表10に示すように、本発明の各歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラスの被膜を形成したウェル中においての細菌培養(虫歯菌であるS.mutansならびに歯周病原菌であるA. actinomycetemcomitans、P. gingivalis)した時の濁度はコントロール(比較例3〜5)と比較して低く、統計学的に有意差を認めた。また、本発明の歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が小さいほど濁度が低くなる傾向が認められた。これらの結果から、本発明の歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラスの存在によって濁度の低下、つまり口腔内細菌であるS. mutans,およびA. actinomycetemcomitansならびにP. gingivalisの増殖が抑制されることが明らかになった。
表11に歯面付着性と付着耐久性の評価(各種フィラーの影響)を示す。
同一含有量で平均粒子径(D50)の近似している本発明の歯周病治療組成物D(D50:3.00μm)とシリカフィラーを含む歯周病治療組成物X(D50:2,80μm)を用いて歯面(象牙質:未処理)への歯面付着性と付着耐久性について検討した。その結果、配合されるフィラーが異なる場合でも歯面付着性は不均一な付着が認められ、歯面付着性の差異は認められなかった。また、付着耐久性についても同様にそれぞれの歯周病治療組成物において軽度な付着が認められ、配合されるイオン徐放性ガラスとシリカフィラーの差異は認められないものであった。
表12に歯面付着した歯周病治療組成物のイオン徐放性評価を示す。
イオン徐放性ガラスを含む本発明の歯周病治療組成物(H:実施例28)又はシリカフィラーを含む歯周病治療組成物(Y:比較例7)を用いてそれぞれのフィラーを付着させた歯面(試験片:3%EDTA処理象牙質)からのイオン徐放性を評価した。その結果、表11に示すように、歯周病治療組成物Hに含まれるイオン徐放性ガラスが付着した歯面(試験片)からは4種類の元素(F・B・Si・Sr)が検出された。この検出されたそれぞれの元素は本発明の歯周病治療組成物に含まれるイオン徐放性ガラスから徐放されるイオンであった。歯面(試験片)にイオン徐放性ガラスを安定、且つ長期的に付着固定させることで持続的なマルチイオンの徐放が期待できる。
一方、歯周病治療組成物Yに含まれるシリカフィラーが付着した歯面(試験片)からはシリカフィラーに基因したSiのみが検出され、マルチイオンの徐放は認められなかった。
本発明は、細菌の耐性化を発現させることなく、長期間に渡り細菌の付着や活性を持続的に抑制することができる歯周病治療組成物およびそれを用いた歯周病治療組成物キットであり、歯肉炎や歯周炎の予防もしくは治療に応用できることが期待できる。

Claims (4)

  1. イオン徐放性ガラス及び水を含有してなる歯周病治療組成物であって、前記イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が0.2〜3.0μmであることを特徴とする歯周病治療組成物。
  2. 前記歯周病治療組成物100重量部中、前記イオン徐放性ガラスの含有量が0.01〜3.0重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の歯周病治療組成物。
  3. 前記歯周病治療組成物が可溶化剤を含み、該可溶化剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯周病治療組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯周病治療組成物と、歯面処理材を組み合わせてなることを特徴とする歯周病治療組成物キット。

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JP2015227311A (ja) * 2014-05-30 2015-12-17 株式会社松風 イオン徐放性口腔ケア組成物

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