JP2018020986A - 歯周病治療組成物およびそれを含む歯周病治療組成物キット - Google Patents
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Abstract
Description
非特許文献1には、複数のイオンを同時に徐放することができるイオン徐放性ガラスが口腔内細菌の静菌効果並びにプラーク沈着抑制効果をもつことが開示されている。この効果を応用した特許文献6では、イオン徐放性ガラスから徐放される複数のイオンによるう蝕予防や歯質強化、知覚過敏の抑制、口腔内細菌の抗菌、静菌効果、口臭予防等口腔の健全化に寄与することのできる口腔ケア組成物に関する技術が開示されている。しかし、この口腔内ケア組成物は一般的に歯磨剤あるいは洗口剤として使用されているペースト状あるいは液状の形態で提供されるものであり、歯周ポケットの深淵部等、様々な歯面への長期的な付着性に満足するものではなかった。
そこで本発明は歯肉縁下又は歯肉縁上の様々な歯面、特に歯周ポケット内の歯面やSPR処置後のスメア層が存在する歯面等に対して簡便且つ容易に適用することができ、そしてそれらの歯面に付着固定されたイオン徐放性ガラスから徐放するマルチイオンの効果によって、細菌の耐性化を発現させることなく、長期間に渡り細菌の付着や活性を持続的に抑制することができる歯周病治療組成物およびそれを用いた歯周病治療組成物キットを提供することを目的とする。
本発明は、平均粒子径(D50)が0.2〜3.0μmの範囲にあるイオン徐放性ガラス及び水を含む歯周病治療組成物を提供する。
本発明の歯周病治療組成物を歯肉縁上のエナメル質や象牙質(象牙細管も含む)又は歯肉縁下における歯周ポケット内のセメント質などの様々な歯面に適用することによって、そのイオン徐放性ガラスがそれらの歯面に付着固定され、持続的にマルチイオンを徐放することができる。また、歯周ポケット内のSRP処置後において除去できなかったプラークが存在している又はスメア層が存在している歯面等に対してもイオン徐放性ガラスが付着固定され、同様にマルチイオンを徐放することができる。さらに歯肉縁上のエナメル質や象牙質(象牙細管も含む)に付着固定されたイオン徐放性ガラスはブラッシングによる清掃や唾液によって歯面上から消失することなく、歯面滞留性にも優れている。このようにイオン徐放性ガラスが様々な歯面において強固に付着固定されるメカニズムは明らかではないが、特定の範囲にあるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)と歯周病治療組成物中で共存している水中にイオン徐放性ガラスから予め徐放しているマルチイオンの存在が複雑に関与しているものと考えられる。
この歯面上に付着固定されたイオン徐放性ガラスからのマルチイオンの徐放はイオン徐放性ガラスが歯面上で付着固定されている限りにおいて持続的に起こり、細菌の増殖や活性の抑制やプラーク形成の抑制を発現することができる。
さらに、本発明の歯周病治療組成物を適用する前に特定の歯面処理材を用いて処理することによって、イオン徐放性ガラスが均一に付着固定することで細菌の増殖や活性の抑制やプラーク形成の抑制等の効果を高めることができる。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスは非晶質構造であるが、一部結晶質構造を含んでいても何等問題はなく、さらにそれらの非晶質構造を有するガラスと結晶構造を有するガラスの混合物であっても何等問題はない。ガラス構造が非晶質であるか否かの判断はX線回折分析や透過型電子顕微鏡等の分析機器を用いて行うことができる。その中でも本発明に用いるイオン徐放性ガラスは外部環境におけるイオン濃度との平衡関係により各種イオンが徐放することから、均質な構造である非晶質構造であることが好ましい。
本発明に用いられるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)は0.2〜3.0μmの範囲であれば特に制限はないが、好ましくは0.2〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.5μmの範囲である。イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が0.2μm未満の場合は歯周病治療組成物中においてエマルジョンの安定性が不良となり分散性が悪く、歯面上への付着固定が安定しない可能性がある。また、イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が3.0μmを超える場合は付着固定力が不足することとなり、歯面に付着する粒子頻度が著しく低下し、十分で均一な歯面付着が得られない。また、イオン徐放性ガラスの形状は球状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状でよく、特に何等制限はないが、好ましくは球状あるいは破砕状である。
粉砕等により所望の平均粒子径(D50)に微粉砕されたイオン徐放性ガラスを含有する水性分散体中に、一般式(I)
またイオン徐放性ガラスの含有量は水性媒体に対して25〜100重量部の範囲であり、好ましくは30〜75重量部の範囲である。イオン徐放性ガラスの含有量が100重量部を超える場合は縮合によるゲル化速度が速く、均一なポリシロキサン被膜層を形成しにくい。また、25重量部より少ない場合、撹拌状態下でイオン徐放性ガラスが沈降したり水性媒体中で相分離が発生したりする。また、シラン化合物の添加量はイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)に依存するが、イオン徐放性ガラスに対してSiO2 換算で0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.1〜4重量部である。添加量が0.1重量部以下の場合は、ポリシロキサン被膜層形成の効果がなく、一次粒子まで解砕できず凝集したものになる。一方10重量部以上では乾燥後の固化物が硬すぎて解砕することができず、一次粒子まで戻すことができない。
また一般式(I)で表されるシラン化合物の低縮合体であることがより好ましい。例えばテトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランを部分加水分解して縮合させた低縮合シラン化合物である。これらの化合物は単独または組み合わせて使用することができる。
熱処理後、熱処理物の解砕は剪断力または衝撃力を加えることにより容易に可能であり、解砕方法としては上記反応に用いた設備などで行うことができる。
酸性ポリマー溶液中に溶解したポリマーの重量分子量は2000〜50000の範囲であり、好ましくは5000〜40000の範囲である。2000未満の重量平均分子量を有する酸性ポリマーで処理した場合はポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラス中に酸性ポリマー反応相が形成されず、その結果イオン徐放性が低くなる傾向にある。一方、50000を超える重量平均分子量を有する酸性ポリマーで処理した場合は酸性ポリマー溶液の粘性が高くなるため、均質にポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスを処理することが困難となる。また酸性ポリマー溶液中に占める酸性ポリマー濃度は3〜25重量部の範囲が好ましく、より好ましくは8〜20重量部の範囲である。酸性ポリマー濃度が3重量部未満になると上記で述べた酸性ポリマー反応相が脆弱になり、イオン徐放が向上する効果が得られない。また酸性ポリマー濃度が25重量部を超えるとポリシロキサン層(多孔質)を均一な状態で拡散しにくく、均質な酸性ポリマー反応相が得られず、またポリシロキサン被覆されているイオン徐放性ガラスに接触すると直ぐに反応が起こるため、強固に反応した凝集物が生成する等の問題が発生する。またポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー溶液の添加量は6〜40重量部の範囲が好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。この添加量で換算するとポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスに対する酸性ポリマー量は1〜7重量部、また水量は10〜25重量部の範囲が最適値となる。
以下の手法によって本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスがイオン徐放性を有しているか否かを判断することができる。
F2 > F1 ・・・・式(1)
また、イオン徐放性ガラスから徐放するイオンが複数ある場合は、すべてのイオン濃度又はイオン種に基因した元素濃度が式(1)を満足する必要はなく、少なくとも一つのイオン濃度又はイオン種に基因した元素濃度が式(1)を満足した場合でもイオン徐放性を有していると見做すことができる。
本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスはイオン徐放の効果に基因した酸中和能を有していることが好ましい。酸中和能はpHを4.0に調整した乳酸水溶液10gに対してイオン徐放性ガラスを0.1g加え、5分間撹拌させた時のpH変化を測定することにより確認することできる。その時のpHが5.5以上、より好ましくは6.0以上、最も好ましくは6.5以上を示したとき酸中和能が発現すると見做すことができる。
これらの歯周病治療組成物の製造方法はイオン徐放性ガラスと水が均一に混合分散する方法であれば何等制限なく用いることができるが、イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)を制御するために混合分散と粉砕又は解砕を同時に行うこともこの好ましい態様である。さらに歯周病治療組成物中におけるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)と含有量を制御するために、均一混合分散したイオン徐放性ガラスと水からなる混合物を一定時間静置後、その上澄み液を抽出したものを本発明の歯周病治療組成物として用いることも好ましい態様である。この製造方法を用いると様々な溶媒、例えば水やエタノール等で希釈することも可能となり、歯周病治療組成物中に含まれているイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)とその含有量を容易に調整することができる。
蒸留水100mlに対してイオン徐放性ガラス又は各種フィラーを0.1g加えて1時間撹拌後、分析用シリンジフィルター(クロマトディスク25A,ポアサイズ0.2μm:ジーエルサイエンス社製)でろ過し、そのろ液中に徐放している各イオンに基因した元素濃度をF1とした。また、同様に蒸留水100mlに対してイオン徐放性ガラス又は各種フィラーを0.1g加えて2時間撹拌後、同様にろ過し、そのろ液中に徐放している各イオンに基因した元素濃度をF2とした。このF1及びF2の値(それぞれの元素濃度)から(1)式への適合性を確認し、イオン徐放性の有無を判断した。
F2 > F1 ・・・・式(1)
なお、フッ素はフッ素イオン複合電極(Model 9609:オリオンリサーチ社製)及びイオンメータ(Model 720A:オリオンリサーチ社製)を用いてフッ化物イオンを測定し、その値を用いてフッ素元素濃度に換算した。測定時にイオン強度調整剤としてTISABIII(オリオンリサーチ社製)を0.5ml添加した。検量線の作成は0.1、1、10、50ppmの標準液を用いて行った。一方、他の元素(Na,B,Al,Sr)に関しては誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICPS-8000:島津製作所社製)を用いた測定により算出した。検量線の作成は0、10、25、50ppmの標準液を用いて行った。なお、測定元素が検量線範囲外となった場合は適宜希釈して測定値が検量線範囲内に位置するように測定を実施した。
[イオン徐放性ガラス及び各種フィラーの酸中和能試験]
乳酸水溶液(pH=4.0)10gに対して、イオン徐放性ガラス又はその他の各種フィラー0.1gを加えて5分間撹拌し、径時的なpHの変化を測定し、酸中和能を確認した。
1.試験片の作製
ヒト抜去歯牙からブロック体(5×5×1mm)を切出し、歯質として象牙質、セメント質、エナメル質をそれぞれ用い、その表面を研磨(SIC#240番:三共理化学社)後、超音波水洗(5分間)・乾燥したものを試験片とした。
上記1.項にて作製した試験片に各歯面処理材を用いて処理を行った。用いた表面処理材は3%EDTA処理材(スメアクリーン:日本歯科薬品社製、表面処理時間:5分)、または有機酸処理材(松風エナメルコンディショナー:松風社製、表面処理時間:5秒)である。
口腔内で唾液と接触することにより形成されるペリクル被覆を模倣するために、擬似ペリクルを用いた試験片の被覆を行った。上記1.項にて作製した試験片を3%EDTA処理材(スメアクリーン:日本歯科薬品社製、表面処理時間:5分)で処理した後、超音波水洗(1分間)・乾燥を行った。その試験片を1%アルブミン(和光純薬社製)水溶液に1分間浸漬し、水洗して乾燥した。
歯面未処理の試験片(象牙質、セメント質、エナメル質)、3%EDTA処理材や有機酸処理材で歯面処理した試験片(象牙質)及び擬似ペリクルで被覆された試験片(象牙質)等を用いて本発明の各歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラス又は各種フィラーの歯面付着性を検討した。上記1〜3.項にて調製したそれぞれの試験片を本発明の各歯周病治療組成物に3分間浸漬後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄・乾燥した。その試験片の表面状態を電子顕微鏡(SEM)(S-4000:日立社製)を用いて観察し、イオン徐放性ガラス又は各種フィラーの試験片表面への付着状態から、以下の評価基準に準じて歯面付着性を評価した。
<評価基準>
×:表面に付着固定していない
△:不均一に付着固定している
○:均一に付着しているが表面に凹凸感が認められる
◎:均一に付着固定している
歯面未処理の試験片(象牙質、セメント質、エナメル質)、3%EDTA処理材や有機酸処理材で歯面処理した試験片(象牙質)及び擬似ペリクルで被覆された試験片(象牙質)等を用いて本発明の各歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラス又は各種フィラーの付着耐久性を検討した。上記1〜3.項にて調製したそれぞれの試験片を本発明の各歯周病治療組成物に3分間浸漬後、ブラッシング(100g荷重をかけた歯ブラシで10回)を行った。その試験片の表面状態を電子顕微鏡(SEM)(S-4000:日立社製)を用いて観察し、イオン徐放性ガラス又は各種フィラーの試験片表面への付着状態から、以下の評価基準に準じて付着耐久性を評価した。
<評価基準>
×:表面に付着なし
△:軽度な付着(0〜30%)
○:中程度の付着(30〜70%)
◎:中程度以上の均質な付着(70〜100%)
48wellマイクロプレートに本発明の各歯周病治療組成物を1滴(20µl/well)滴下後、デシケーターで24時間乾燥してマイクロプレートの底面に被膜を形成した。また、比較例としてコントロールには歯周病治療組成物の滴下していないwellを用いた。次にS. mutans(ATCC 35668)、A. actinomycetemcomitans(ATCC 29522)、P. gingivalis(ATCC 33277)のBHI培地懸濁液を各wellに500µl加え,37℃で24時間嫌気培養後,可視光度計(CO7500 colorimeter;フナコシ社製)で濁度(590nm、N=6)を測定した。統計処理にはシェッフェ法を用いた。
3%EDTA処理材で歯面処理した試験片(象牙質)(N=4)を歯周病治療組成物Hまたは歯周病治療組成物Yに3分間浸漬後、乾燥した。その試験片を5mlの蒸留水に24時間浸漬後、その溶液中に徐放した各イオンに基因する元素濃度を測定した。フッ素はフッ素イオン複合電極(Model 9609:オリオンリサーチ社製)及びイオンメータ(Model 720A:オリオンリサーチ社製)を用いてフッ化物イオンを測定し、その値を用いてフッ素元素濃度に換算した。測定時にイオン強度調整剤としてTISABIII(オリオンリサーチ社製)を0.5ml添加した。検量線の作成は0.02、0.1、1.0、20ppmの標準液を用いて行った。他の元素(B,Al,Si,Sr)に関しては誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICPS-8000:島津製作所社製)を用いた測定により算出した。検量線の作成はB,Srについては0、0.01、0.1、0.2、0.5、2.0、5.0、10.0ppmの標準液を、Al,Siについては0、0.001、0.01、0.02、0.05、0.2、0.5、1.0ppmの標準液をそれぞれ用いて行った。
以下に示すように本発明の歯周病治療組成物に用いられるイオン徐放性ガラスを調製した。
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料を混合後、その混合物を1400℃で溶融してガラスA(ガラス組成:SiO2 23.8質量%、Al2O3 16.2質量%、B2O3 10.5質量%、SrO 35.6質量%、Na2O 2.3質量%、F11.6質量%)を得た。次に得られたガラスAを振動ミルを用いて40時間粉砕した。得られた粉砕物をイオン徐放性ガラス1とした。このイオン徐放性ガラス1の平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.2μmであった。このイオン徐放性ガラス1から徐放した各種イオンに基因した元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)を測定し、式(1)への適合性からイオン徐放性能の有無を確認した。また、pH=4の乳酸水溶液を用いた酸中和能試験も実施した。それらの結果を表1に示した。
上記のイオン徐放性ガラス1を500g、低縮合シラン化合物1105gを万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラス1を得た。このポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラス1を500g採取し、ヘンシェルミキサーに投入後撹拌しながらその上部から、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量部、重量平均分子量20000;ナカライテスク社製)を噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、イオン徐放性ガラス2を得た。このイオン徐放性ガラス2の平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、1.3μmであった。この複合表面処理したイオン徐放性ガラス2から徐放した各種イオンに基因する元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)を測定し、(1)式への適合性からイオン徐放性能の有無を確認した。また、pH=4の乳酸水溶液を用いた酸中和能試験も実施した。それらの結果を表1に示した。
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、フッ化ナトリウム、炭酸ストロンチウムの各種原料を混合後、その混合物を1400℃で溶融してガラスB(ガラス組成:SiO2 19.8質量%、Al2O3 19.8質量%、B2O3 11.7質量%、SrO 35.0質量%、Na2O 2.3質量%、F11.4質量%)を得た。次に得られたガラスBを振動ミルを用いて10時間粉砕した。得られた粉砕物をイオン徐放性ガラスBとした。このイオン徐放性ガラスBを500g、低縮合シラン化合物1660gを万能混合攪拌機に投入し、90分間撹拌混合した。その後、140℃にて熱処理を30時間施し、熱処理物を得た。この熱処理物をヘンシェルミキサーを用いて解砕し、ポリシロキサン被覆イオン徐放性ガラスBを得た。このポリシロキサン被覆ガラスBを500g採取し、ヘンシェルミキサーに投入後撹拌しながらその上部から、酸性ポリマー水溶液(ポリアクリル酸水溶液:ポリマー濃度13重量部、重量平均分子量20000;ナカライテスク社製)を噴霧した。その後、熱処理(100℃3時間)を施し、イオン徐放性ガラス3を得た。このイオン徐放性ガラス3の平均粒子径(D50)をレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定した結果、5.1μmであった。この複合表面処理したイオン徐放性ガラス3から放出した各種イオンに基因する元素濃度(フッ化物イオンはフッ素元素濃度に換算)を測定し、(1)式への適合性からイオン徐放性能の有無を確認した。また、pH=4の乳酸水溶液を用いた酸中和能試験も実施した。それらの結果を表1に示した。
NaF:フッ化ナトリウム粉末(ナカライテスク社)
SOC5:シリカフィラーであるアドマファイン SO−C5(アドマテックス社)
上記にて調製したイオン徐放性ガラス3:250gと蒸留水:250mlを24時間均一に混合撹拌し、懸濁液1を調製した。その後、懸濁液1を各所定時間静置した後、デカンテーションにより上澄み液を採取して懸濁液2(0.5時間)、懸濁液3(3.5時間)、懸濁液4(16時間)、懸濁液5(48時間)とした。それらの各懸濁液中に含まれるイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)はレーザー回折式粒度測定機(マイクロトラックSPA:日機装社製)により測定し、さらに、各懸濁液を蒸発乾固して各懸濁液に含まれるイオン徐放性ガラス含有量を求めた。表2に各懸濁液に含まれているイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)と含有量を示す。
また付着耐久性においても歯面付着性と同じ傾向が認められ、特にイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が0.25μmの場合において中程度の付着状態が認められた。
表10に示すように、本発明の各歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラスの被膜を形成したウェル中においての細菌培養(虫歯菌であるS.mutansならびに歯周病原菌であるA. actinomycetemcomitans、P. gingivalis)した時の濁度はコントロール(比較例3〜5)と比較して低く、統計学的に有意差を認めた。また、本発明の歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が小さいほど濁度が低くなる傾向が認められた。これらの結果から、本発明の歯周病治療組成物に含まれているイオン徐放性ガラスの存在によって濁度の低下、つまり口腔内細菌であるS. mutans,およびA. actinomycetemcomitansならびにP. gingivalisの増殖が抑制されることが明らかになった。
一方、歯周病治療組成物Yに含まれるシリカフィラーが付着した歯面(試験片)からはシリカフィラーに基因したSiのみが検出され、マルチイオンの徐放は認められなかった。
Claims (4)
- イオン徐放性ガラス及び水を含有してなる歯周病治療組成物であって、前記イオン徐放性ガラスの平均粒子径(D50)が0.2〜3.0μmであることを特徴とする歯周病治療組成物。
- 前記歯周病治療組成物100重量部中、前記イオン徐放性ガラスの含有量が0.01〜3.0重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の歯周病治療組成物。
- 前記歯周病治療組成物が可溶化剤を含み、該可溶化剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯周病治療組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯周病治療組成物と、歯面処理材を組み合わせてなることを特徴とする歯周病治療組成物キット。
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