特許文献1が開示する運動器具は、О脚の改善又は進行予防を主眼として、膝関節を内向きに移動させるように、足のつま先と踵とを逆向きに旋回させるため、足のつま先と踵との間に旋回軸を設けている。この場合、踵を中心とした足の旋回量はそれほど大きくならない。特許文献1同様の運動器具において、股関節外旋筋群を鍛えることを主眼とした場合、踵を中心とした足の旋回量を大きくするように、足載せ板の踵直下に旋回軸を設定することが望ましい。旋回軸の位置を変更しても、特許文献1同様に付勢力を与えることができるため、脚の外旋運動に適した運動器具を構成できるはずである。
ここで、特許文献1が開示する運動器具は、足を足載せ板に固定しない。これは、特許文献1が開示する運動器具を立ち姿勢でのみ利用することにすれば、摩擦により足と足載せ板とがずれないと考えているように思われる。しかし、立ち姿勢で足を足載せ板に載せただけでは、足と足載せ板とがずれてしまう虞がある。特に、旋回軸を踵直下に設定した場合、足載せ板に付勢力を与えていることから、大きく旋回したつま先が足載せ板からずれる虞が大きい。これから、足をずらすことなく、踵を中心とした足の旋回量を大きくできる足載せ板の構造又は構成が検討される。
また、脚の外旋運動だけを利用者に負担させたい場合、利用者を仰臥姿勢にして上半身の負担をなくした状態で、足を旋回させることができると望ましい。この場合、もはや摩擦による足と足載せ板との位置ずれ防止が望めないため、足載せ板に足を固定する構造又は構成が検討される。ここで、足載せ板に足を固定する構造又は構成は、足をずらすことなく、踵を中心とした足の旋回量を大きくできる足載せ板の構造又は構成を妨げず、むしろ前記構造又は構成と併用できることが好ましい。
そして、脚の外旋運動により股関節外旋筋群を鍛える場合、足に掛かる付勢力は、過度であると股関節外旋筋群を傷めるだけになりかねないので、利用者に合わせて付勢力の有無又は大小を調整できることが望ましい。これから、特許文献1が開示する運動器具のように、予め組み込まれた捩りコイルバネやコイルバネを利用して付勢力を発生させると、付勢力を取り除くことはおろか、付勢力を調整することが難しくなる。そこで、利用者による付勢力の調整が容易な構造又は構成が検討される。
以上から、脚の外旋運動により股関節外旋筋群を鍛えるため、特許文献1が開示する運動器具の利用が考えられるところ、(1)踵を中心とした足の旋回量が大きくなっても足と足載せ板とが位置ずれしない構造又は構成、(2)利用者が仰臥姿勢で利用できるように、足を足載せ板に固定する構造又は構成、(3)利用者が付勢力を調整できる構造又は構成が、それぞれ検討される必要がある。そこで、前記(1)〜(3)の構造又は構成を備えた運動器具を開発するため、検討した。
検討の結果開発したものが、ベースに旋回自在な足載せ板を設けて構成され、足載せ板は、旋回方向に足の踵を掛合させる踵受けと、前記踵受けに踵を掛合させた足の指で挟む保持ピンとを有し、前記踵受けに掛合させた足の踵直下に旋回軸が設定され、少なくとも脚を外旋運動させた際に内向きの付勢力を与える付勢手段が設けられる運動器具である。本発明の運動器具は、ベースに対して1つの足載せ板を有する左右対称な2基の構成単位で利用したり、後述するように、ベースに対して左右一対の足載せ板を有する1基の構成単位で利用したりする。
本発明の運動器具は、例えば足載せ板の旋回面を床面と平行にしてベースを前記床面に寝かせ、利用者の立ち姿勢で利用する。利用者は、踵を踵受けに掛合させ、指で保持ピンを挟んで、足の前後を足載せ板に位置固定して、足載せ板の旋回方向に足と足載せ板との位置ずれを防止する。利用者は、位置ずれしない足及び足載せ板を一体に、踵を中心としてつま先を外向きに旋回させることにより、脚を外旋運動させる。脚の外旋運動は、付勢手段により脚の内旋方向の付勢力が足載せ板に与えられるから、前記付勢力に抗したものになる。足載せ板は、外向きに旋回できれば、内向きに旋回できても構わない。しかし、不要な足の内旋運動を避けるため、足載せ板に掛合するストッパをベースに設け、内向きの旋回を抑制するとよい。
足載せ板は、保持ピンを踵受けに向けて接近離反自在にすると、利用者の足の大きさに合わせて、踵受けと保持ピンとの距離を調整できる。この場合、足載せ板に対して保持ピンのみを踵受けに接近離反させる構成のほか、例えば足載せ板を前後に分割し、踵受けを設けた後半の足載せ板に対して保持ピンを設けた前半の足載せ板を接近離反させる構成も含む。踵受けとの距離を調整し終えた保持ピンは、足載せ板の旋回方向に掛合すれば、位置固定しなくてもよい。しかし、がたつきなく、安定して足の指で挟めるように、踵受けとの距離を調整し終えた保持ピンは、適宜位置固定できるとよい。
また、足載せ板は、足に掛け回す固定ベルトを設けると、足載せ板の姿勢と無関係に、足と足載せ板との一体性が確保される。これは、足載せ板の旋回面をベッドに対して垂直にし、ベースを前記ベッドに立てて利用できること、すなわち利用者は仰臥姿勢で脚の外旋運動だけができることを意味する。固定ベルトは、足を足載せ板と一体化できれば、数及び取付位置を限定しない。例えば足載せ板を左右に横断して足の甲に掛け回す足の甲用固定ベルトや、踵受けを左右に横断して足首に掛け回す足首用固定ベルトがある。固定ベルトは、左右一対のベルトを面ファスナーで着脱自在にする構成が例示できる。
付勢手段は、特許文献1が開示する運動器具同様、旋回軸を兼ねた又は旋回軸に外嵌した捩りコイルバネを利用したり、足載せ板を脚の内旋方向に押すコイルバネを利用したりすることが考えられる。しかし、付勢力の有無や調整の観点から、足載せ板は、左右一対あり、左右それぞれに設けた掛止突起に伸縮ベルトを架け渡し、前記伸縮ベルトを付勢手段にするとよい。左右の足載せ板に設けた掛止突起に架け渡す伸縮ベルトは、付勢力があると脚の外旋運動が難しい利用者であれば取り外したり、脚の筋力が十分ある利用者であれば伸縮力の程度が異なるものに交換できたりする。
更に、足載せ板は、左右の一方又は双方に複数の掛止突起があり、選択された左右の掛止突起に伸縮ベルトを架け渡すとよい。伸縮ベルトは、選択された掛止突起の間隔に応じて伸縮量が変化するため、前記足載せ板に与えられる付勢力を調整できる。伸縮ベルトによる付勢力は、伸縮量に応じて加減され、旋回していない状態にある足載せ板から選択される掛止突起が左右対称位置でなくても、伸縮ベルトを架け渡す間隔が同じであれば、同じになる。選択される掛止突起が左右非対称位置である場合、左右の足載せ板を単独で旋回させる場合、左右の足載せ板それぞれに発生する付勢力に差を設ける働きを有する。
本発明により、脚の外旋運動により股関節外旋筋群を鍛えるのに適した運動器具が提供できる。(1)踵を中心とした足の旋回によっても足と足載せ板とがずれない効果は、旋回方向に足の踵を掛合させる踵受けと、前記踵受けに踵を掛合させた足の指で挟む保持ピンとを有する足載せ板により得られる。保持ピンを踵受けに向けて接近離反自在にすれば、旋回軸に対する踵受けの位置関係を固定しながら、利用者の足に合わせて保持ピンと踵受けとの距離を調整でき、足と足載せ板との位置ずれ防止をより確実にすることができる。
(2)利用者が仰臥姿勢で利用できるように、足を足載せ板に固定する効果は、足載せ板に掛け回す固定ベルトにより得られる。固定ベルトは、足載せ板に設けた踵受けと保持ピンとを邪魔することなく、併用できる。そして、踵受けと保持ピンとが、旋回方向に足と足載せ板との一体性を確保する働きを、固定ベルトが、足を足載せ板に固定する働きをそれぞれ発揮することにより、利用者が仰臥姿勢で運動器具を利用できるようになる。固定ベルトは、利用者の立ち姿勢で運動器具を利用する際も、足と足載せ板との一体性を高める働きを発揮する。
(3)利用者が付勢力を調整できる効果は、左右一対の足載せ板に設けた掛止突起に伸縮ベルトを架け渡す構成、更に複数から選択された掛止突起に伸縮ベルトを架け渡す構成により得られる。伸縮ベルトは、掛止突起から外して足載せ板に与える付勢力をなくしたり、交換や掛け回す掛止突起を選択して付勢力を調整したりできる。こうした伸縮ベルトの取り外しや交換又は掛止突起の選択は、利用者自身が容易にできる。こうして、本発明の運動器具は、利用者自身が足載せ板に当たられる付勢力を調整して、利用者自身が適度な負荷のある足の外旋運動ができる利点がある。
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の運動器具1は、例えば図1〜図3に見られるように、平面視略U字状の木板であるベース11に、平面視形状が人の足跡をかたどった木板である左右対称な足載せ板12を、前記足載せ板12の踵相当部分に設定した旋回軸15により、旋回自在に取り付けて構成される。足載せ板12は、左右いずれにも旋回自在であるが、ベース11の左右対称位置に設けたストッパ用ピン111により内向きの旋回が規制される。本例の運動器具1は、主要な構成要素(ベース11、足載せ板12、踵受け13及び保持ピン14)が木製であるが、樹脂製又は金属製であっても構わず、これらの素材を組み合わせて構成してもよい。
ベース1は、前方(図1中左下方、図2中上方又は図3中左方)に凸な平面視略U字状の木板で、左右方向に延びる細幅の架橋部分を挟み、円弧状外周面を左前又は右前に向けた略扇状の平面部分を設けている。足載せ板12は、前記平面部分の上面右後又は左後近傍に軸着されている。平面部分の円弧状外周面は、足載せ板12の旋回軸15に同心である。本例のベース1は、架橋部分及び平面部分に連続する上面及び外周面の間を面取りしている。また、本例のベース1は、平面部分の底面に3個の接地ブロック112を設けている。接地ブロック112は、三点支持により各平面部分を安定に支持するほか、ベース11の底面に露出する旋回軸15の下端が床面3(後掲図6参照)と干渉しないように、前記底面下方に隙間を形成する。
本例のベース1は、前記架橋部分及び平面部との境界付近に、木製の短尺な丸棒であるストッパ用ピン111が、左右対称位置に設けられている。ストッパ用ピン111は、足載せ板12の内側面(図2中、左右の足載せ板12の対向する周面)に当接し、前記足載せ板12の内向き(図2中、左右の足載せ板12が互いに接近する向き)の旋回を規制する。ストッパ用ピン111は、形状及び大きさに制限がなく、足載せ板12の内側面に当接し、前記足載せ板12の旋回を規制できればよい。
内向きの旋回する足載せ板12に負荷が掛からなければ、有効な脚21(後掲図5参照。以下同じ)の内旋運動にならないので、足載せ板12の内向きの旋回は規制されなくてもよい。しかし、足載せ板12が内外いずれにも自由に旋回できると、足22(後掲図8参照。以下同じ)を載せる際に足載せ板12が不安定であることを意味する。これから、本例の運動器具1は、足載せ板12の内向きの旋回を規制し、左右の掛止突起122に架け渡した伸縮ベルト16により左右の足載せ板12をそれぞれ内向きに付勢しながらストッパ用ピン111に内側を当接させ、足21を載せる際に左右の足載せ板12が位置固定されるようにしている。
足載せ板12は、足跡をかたどった木板で、前端に形成される足の指を横並びの掛止突起122とする。掛止突起122は、足載せ板12の前端に設けることにより、前記掛止突起122に架け渡す伸縮ベルト16を旋回軸15から遠ざけることができ、伸縮力の弱い伸縮ベルト16でも、外旋運動に際して必要十分な負荷を脚21に与えることができる。踵受け13は、後端に形成される踵相当の円弧状輪郭に倣って設けられる平面視円弧状の木壁である。本例の踵受け13は、足22の踵221に接触する内周面に緩衝パッド131を取り付けている。緩衝パッド131は、弾性変形又は塑性変形する従来公知の各種シートを利用できる。緩衝パッド131は、適宜着脱してもよい。踵受け13は、緩衝パッド131に密着させた踵221に、足載せ板12の旋回方向から左右縁部を掛合させる。これにより、旋回する足載せ板12と足22との位置ずれを防止する。
保持ピン14は、足載せ板12の親指及び人差し指相当の掛止突起122の中間位置から後方に延びる保持ピン用長孔121の範囲で、前後位置を調整自在に設けている。本例の保持ピン14は、平面視俵状(両端の反円弧を平行な直線で結んだ形状)である木製の本体の周面に、緩衝ベルト141を上下3段に巻き付け、足載せ板12の下面から保持ピン用長孔121を通して前記本体を貫通させたボルトに固定用蝶ネジ142を締める構成である。本体は、木製に代えて、樹脂製又は金属製でも構わない。緩衝ベルト141は、弾性変形又は塑性変形する従来公知の各種ベルトを利用できる。緩衝ベルト141は、本体の周面全体を一様に覆う大きさでもよいし、螺旋状又は更に多段に巻き付けてもよい。
保持ピン14は、固定用蝶ネジ142を緩めると、足載せ板12の下面に掛合するボルトの頭と本体の下面とによる前記足載せ板12の締付が緩められて、保持ピン用長孔121に沿って前後位置が調整自在となるほか、平面視俵状である本体の向きが変更自在となる。これにより、利用者2は、足載せ板12に足22を載せた際、踵221を踵受け13の緩衝パッド141に密着させた状態で、親指223及び人差し指224で挟めるように、保持ピン13の前後位置及び本体の向きを調整できる。こうして前後位置及び本体の向きの調整を終えた保持ピン14は、固定用蝶ネジ142を締めることにより、足載せ板12の下面に掛合するボルトの頭と本体の下面とが再び足載せ板12を締め付けて、前記前後位置と本体の向きとを固定する。
足載せ板12は、踵受け13に掛合させた足22の踵221直下に旋回軸15が設定される。本例の踵受け13は、前記旋回軸15を中心とする円弧状の周面を有する。本例の旋回軸15は、足載せ板12の上面に頭を掛合させ、足載せ板12及びベース11を貫通して前記ベース11の底面から突出する皿ネジで、前記ベース11の底面から突出する先端部分にナットを締め付ける。本例の足載せ板12は、供回りするスペーサ124を下面に有し、ベース11の表面に形成した凹みに前記スペーサ124を嵌合させてベース11に摺接する範囲をスペーサ124に限定する。また、本例の足載せ板12は、凹みに従ってスペーサ124を旋回させることにより、自身の旋回を安定させる。本例のスペーサ124は、木製の扁平な円盤である。旋回軸15は、スペーサ124の中心を貫通する。
このほか、本例の足載せ板12は、保持ピン用長孔121の後端付近に左右に横断する足の甲用固定ベルト123と、踵受け13の両端縁との境界付近から斜めに突き出して左右に横断する足首用固定ベルト132とを設けている。甲用固定ベルト123及び足首用固定ベルト132は、可撓性を備えた布製又は樹脂製の左右の分割ベルトから構成される。甲用固定ベルト123を構成する分割ベルトの基端は、足載せ板12の周面にピン留めされる。また、足首用固定ベルト132を構成する分割ベルトの基端は、足載せ板12の周面と踵受けの周面とにわたってピン留めされる。
甲用固定ベルト123及び足首用固定ベルト132は、内側の分割ベルトの外面に面ファスナーの雌面が、外側の分割ベルトの内面に面ファスナーの雄面が設けられている。甲用固定ベルト123及び足首用固定ベルト132は、足載せ板12に載せた足22に対して、まず内側の分割ベルトを宛てがい、次いで外側の分割ベルトを前記内側の分割ベルトに重ねてから、面ファスナーの雄面及び雌面を掛合させる。これにより、甲用固定ベルト123及び足首用固定ベルト132は、足の甲及び足首に密着させて足22を拘束し、足22を足載せ板12にから浮き上がらないように位置固定できる。
本例の運動器具1における付勢手段は、左右の足載せ板12に設けられた掛止突起122に架け渡す伸縮ベルト16である。本例の伸縮ベルト16は、1本の扁平なゴムベルトである。伸縮ベルト16は、伸張により復元力を発生させることができればよく、複数のゴムベルトを束ねたり、複数のゴムベルトを連結したり、ゴム紐の両端に掛止環を設けたりした構成にしてもよい。伸縮ベルト16は、最も距離の近い親指様の掛止突起122に架け渡した場合でも伸張し、前記掛止突起122を互いに近づけようとする付勢力を足載せ板12に与える(後掲図5参照)。
本例(図1〜図3)の運動器具1は、ベース11に対して左右一対の足載せ板12を有する1基の構成単位で、左右の足載せ板12の間隔は調整不能である。これに対し、例えば図4に見られるように、左右独立したベース17に対してそれぞれ1つの足載せ板12を有する概略左右対称な2基を構成単位とする別例1の運動器具1とすることもできる。別例1の運動器具1は、本例の運動器具1におけるベース11の平面部分を左右に分割し、対向する内側に対となる噛み合い突起173を設けた左右独立のベース17を構成する。噛み合い突起173は、それぞれを噛み合わせるように側面を摺接させることにより、左右のベース17をがたつきなく接近離反させる。また、噛み合い突起173の噛み合いは、伸縮ベルト16に引っ張られて傾こうとするベース17の姿勢を維持させる働きも有する。
噛み合い突起173は、それぞれに左右方向へ延びるベース間調整用長孔174を設けてある。噛み合い突起173は、下方から平面視略長方形の木板である下受け板175が宛てがわれる。噛み合い突起173と下受け板175とは、前記ベース間調整用長孔174を貫通するボルトに締付用蝶ネジ176を締め付けて、拘束する。左右のベース17は、締付用蝶ネジ176を緩めて噛み合い突起173と下受け板175との拘束を解き、互いの噛み合い突起173の側面を摺接させながらベース間調整用長孔174を貫通するボルトの位置をずらすことにより、左右方向の位置関係を調整する。各足載せ板12は、左右のベース17それぞれに設けられているので、ベース17の左右方向の位置関係の調整は、左右の足載せ板12の間隔調整となる。左右のベース17は、締付用蝶ネジ176を締めて噛み合い突起173と下受け板175とを拘束することにより、調整した間隔を保持する。
左右の足載せ板12の左右方向の位置関係を調整する場合、例えば図5に見られるように、各足載せ板12の旋回軸15を左右方向に延びる旋回軸用長孔151に沿って位置調整自在にする別例2の運動器具1とすることもできる。別例2の運動器具1は、旋回軸15が左右方向にずれることに合わせてストッパ用ピン111の位置も調整できるように、左右方向に並ぶ複数のピン固定孔113を設け、ストッパ用ピン111を、選択した前記ピン固定孔113に差し込む。旋回軸15は、調整後の位置固定のため、足載せ板12及びベース11を一体に締め付ける必要がある。これから、足載せ板12を旋回自由とするため、例えば旋回軸15に外嵌したカラーに足載せ板12を取り付け、旋回軸15の締め付けによる影響が足載せ板12に及ばないようにするとよい。
本例の運動器具1は、例えば図6に見られるように、足載せ板12の旋回面を床面3と平行にしてベース11を前記床面3に寝かせて設置した状態で、利用者2が立ち姿勢で左右の足22を各足載せ板12に載せて利用する。ベース11は、左右の3基ずつ配置された設置ブロック112を床面3に接地させて、安定して水平姿勢を保つ。旋回軸15から直上に延びる旋回軸線Sは、足22の踵221を踵受け13の緩衝パッド131に密着させると股関節にほぼ一致する。これにより、足載せ板12の水平旋回に合わせて足22を外向きに旋回させる(図6中、図示された左の足22を紙面手前に向ける)と、脚21の外旋運動が実現する。
また、本例の運動器具1は、足の甲用固定ベルト123及び足首用固定ベルト132により、足22を足載せ板12と一体にすることができるため、例えば図7に見られるように、足載せ板12の旋回面をベッド4に対して垂直にし、ベース11を前記ベッド4に立てて利用できる。このとき、ベース11は、左右の平面部分の後縁部をベッド4に沈み込ませながら、前記後縁部直近の接地ブロック112をベッド4に当接させることにより、垂直姿勢を安定させる。旋回軸15から水平に延びる旋回軸線Sは、足22の踵221を踵受け13の緩衝パッド131に密着させると、股関節がほぼ一致する。これにより、足載せ板12の垂直旋回に合わせて足22を外向きに旋回させる(図7中、図示された左の足22を紙面手前に向ける)と、脚21の外旋運動が実現する。この場合、利用者2は仰臥姿勢で脚21の外旋運動だけができ、上半身に負担が掛からない。
本例の運動器具1による具体的な脚21の外旋運動について説明する。運動器具1は、利用者2が起立姿勢(図6参照)又は仰臥姿勢(図7参照)いずれで利用するとしても、足載せ板12に足22を載せ、足の甲用固定ベルト123及び足首用固定ベルト132で足22を足載せ板12に一体化する準備作業は、床面3においた状態で実施する方が容易である。保持ピン14は、固定用蝶ネジ142は緩め、移動自在にしておく。利用者2は、左右の足22それぞれを対応する足載せ板12に載せ、足載せ板12の前端に向けてつま先222を揃えて踵221を緩衝パッド131に密着させることで、足載せ板12の旋回方向で踵受け13に掛合させる。そして、親指223及び人差し指224で無理なく挟める位置に保持ピン14を移動させ、固定用蝶ネジ142を締め付けて位置固定する。保持ピン14を親指223及び人差し指224で挟むことから、運動器具1の利用は裸足が好ましいが、指股を有する靴下又は足袋を履いていても構わない。
こうして、足22の前後の踵受け13と保持ピン14とにより、足載せ板12に対する旋回方向の位置ずれを防止した状態で、足の甲用固定ベルト123を足の甲に密着させ、また足首用固定ベルト132を足首に密着させて、足載せ板12及び足22を一体化する。足載せ板12に対する旋回方向の位置ずれは、踵受け13と保持ピン14とにより防止されている。このため、足の甲用固定ベルト123及び足首用固定ベルト132は、足22を足載せ板12にきつく締め付ける必要はなく、足載せ板12の面直交方向に足22が浮き上がらせない程度で構わない。こうして、左右の足載せ板12及び足22の一体化を済ませれば、最後に伸縮ベルト16を選択した左右の掛止突起122に架け渡して、図8及び図9に見られるように、準備を完了する。例示では、最も間隔の狭い親指様の掛止突起122に伸縮ベルト16を架け渡している。
このとき、伸縮ベルト16が既に伸張していれば、左右の足載せ板12を内向きに旋回(左の足載せ板12を右旋回、右の足載せ板12を左旋回)させようとする付勢力(図8中、伸縮ベルト16両端近傍の白抜矢印参照)を各足載せ板12に与える。しかし、左右の足載せ板12は、対応するストッパ用ピン111に当接し、内側の旋回が規制される(図8中、ストッパ用ピン111近傍の白抜破線矢印参照)。選択した掛止突起122に架け渡した伸縮ベルト16が伸張していなければ、ストッパ用ピン111がなくても足載せ板12が内向きに旋回することはない。
利用者2は、図10に見られるように、足載せ板12に一体化された左右の足22のつま先222を互いに遠ざけるように、踵221を中心として外向きに旋回させて(図10中、左右の足載せ板12先端近傍の黒矢印参照)、脚21を外旋運動させる。左右の足22は、等量かつ同時に外向きに旋回させることを基本とする。これにより、伸張した伸縮ベルト16は、大きな復元力を発生させ、左右の足載せ板12を内向きに旋回させようとする付勢力(図10中、伸縮ベルト16両端近傍の白抜矢印参照)を各足載せ板12に与える。利用者2は、前記付勢力に抗して足載せ板12を外向きに旋回させようとすることにより、負荷の掛かった脚21の外旋運動ができる。
伸張した伸縮ベルト16により与えられる付勢力は、架け渡す掛止突起122の間隔に応じて増減する。本発明の運動器具1は、足22の踵221を中心に足載せ板12を大きく旋回させることができる。そして、本例の場合、足載せ板12の前端に設けられた掛止突起122に伸縮ベルト16を架け渡している。このため、伸縮ベルト16により与えられる付勢力は、足載せ板12の旋回量に応じて大きく増減させることができる。これは、前記付勢力の調整幅が大きいことを意味する。伸張した伸縮ベルト16により与えられる付勢力は、足載せ板12に加わり、前記足載せ板12と一体になった足22を介して脚21に加えられることにより、外旋運動に際して脚21(特に股関節外旋筋群)に加わる負荷となる。これから、利用者2は、伸縮ベルト16により与えられる付勢力に抗して足22を外向きに旋回できる範囲で脚21の外旋運動をすれば、現状で適当な負荷を自分で決定し、無理なく股関節外旋筋群を鍛えることができる。
左右の足22は、必ずしも等量かつ同時に外向きに旋回させる必要がない。例えば図11に見られるように、左の足22のみを外向きに旋回させ、左の脚21のみ外旋運動させてもよい。この場合、左右の足22を等量かつ同時に旋回させた場合の旋回量と左の足22のみを旋回させた場合(図10参照)の旋回量が同じであっても、伸縮ベルト16の伸張が短くなるため、外旋運動に際して左の脚21に掛かる負荷(図11中、足載せ板12先端近傍の黒矢印参照)が低減される。また、右の足22を旋回させないのであれば、足載せ板12の内側面に当接したままなので、伸縮ベルト16に与えられる付勢力にストッパ用ピン111が対抗する(図11中、右のストッパ用ピン111近傍の白抜破線矢印参照)ため、右の脚21に負荷が掛かることはない。
伸縮ベルト16を架け渡す左右の掛止突起122は、選択できるため、例えば図12に見られるように、間隔の離れた中指様の掛止突起122に伸縮ベルト16を架け渡すと、足22の旋回量が同じでも、より大きな付勢力(図12中、伸縮ベルト16両端近傍の白抜矢印参照)を与えることができ、より大きな負荷(図12中、足載せ板12先端近傍の黒矢印参照)を脚21(特に股関節外旋筋群)に加えることができる。このように、本発明の運動器具1は、足22の旋回量を左右で加減するだけでなく、付勢手段である伸縮ベルト16を架け渡す掛止突起122を選択することでも、脚21に掛かる負荷を調整できるため、非常に柔軟に利用者2に応じた脚21の外旋運動が実現でき、無理なく、確実に股関節外旋筋群を鍛えることができる。
検討の結果開発したものが、ベースに旋回自在な足載せ板を設けて構成され、足載せ板は、旋回方向に足の踵を掛合させる踵受けと、前記踵受けに踵を掛合させた足の指で挟む保持ピンとを有し、前記踵受けに掛合させた足の踵直下に旋回軸が設定され、少なくとも脚を外旋運動させた際に内向きの付勢力を与える付勢手段が設けられ、足の踵を中心に足載せ板を付勢力に抗して旋回させることにより、外旋運動する脚に加わる負荷により股関節外旋筋群を鍛えることを特徴とする運動器具である。本発明の運動器具は、ベースに対して1つの足載せ板を有する左右対称な2基の構成単位で利用したり、後述するように、ベースに対して左右一対の足載せ板を有する1基の構成単位で利用したりする。