JP2018018576A - マンガン乾電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】マンガン乾電池の部品点数を削減し、製造工程の工数を削減し、製造コストを削減する。
【解決手段】亜鉛を含む有底円筒形の負極缶と、負極缶を収容する有底円筒形の外装缶と、負極缶に収容された二酸化マンガンを含む正極合剤と、正極合剤と負極缶との間に配されるセパレータと、電解液と、を備え、負極缶の底部の外面と、外装缶の底部の内面とが接触しており、負極缶の側部の外面と、外装缶の側部の内面との間に、空間または絶縁材が介在している、マンガン乾電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、マンガン乾電池に関し、特に、マンガン乾電池の製造コストの削減に有用な技術に関する。
マンガン乾電池は、グローバル市場でのニーズが高く、経済的に発展途上にある地域でも安定的に供給される必要性がある。そのため、製造コストの削減は最も重要な課題である。
図4に示されるように、マンガン乾電池400の基本的な構造は、亜鉛を含む負極缶6と、これに収容された正極合剤2と、負極缶6の側部6Aの外面を覆う熱収縮性チューブ10と、熱収縮性チューブ10を介して負極缶6の側部6Aの外面を覆う外装材13とを具備する。熱収縮性チューブ10は、過放電時に負極缶6の側部6Aから漏れ出る電解液と外装材13との接触を防止する役割を果たす。正極合剤2と負極缶6との間にはセパレータ3が配され、正極合剤2と負極缶6の底部6Bとの間には底紙3aが設けられる。正極合剤2の上端面には鍔紙3bが被せられる。
負極缶6の開口は、ガスケット5により塞がれ、ガスケット5の中央の貫通孔には、正極合剤2と導通する炭素棒12が挿入されている。ガスケット5および炭素棒12の頂部は、正極端子として機能するキャップ4で覆われている。負極缶6の底部6Bは、負極端子として機能する円盤状の端子板8と接触しており、端子板8の周縁部には環状のシールリング9が配置される。熱収縮性チューブ10は、負極缶6の側部だけでなく、負極缶6の開口を塞ぐガスケット5の周縁部からシールリング9に至るまでの領域を覆っている。
外装材13は、両端が開口した筒状であり、一方の開口端部は、熱収縮性チューブ10の端部を介してシールリング9に加締められている。また、外装材13の他方の開口端部は、絶縁リング7を介して、キャップ4の周縁部(鍔部)4aに加締められる。これにより、熱収縮性チューブ10によって外装缶13と電解液との接触が抑制される(特許文献1参照)。
外装材13の材質には金属が用いられているが、絶縁性の材料(例えば紙)を外装材13として用いることもある。
特開2000−348714号公報
本発明は、マンガン乾電池の基本的な構造を改良することにより、部品点数を削減し、製造工程の工数を削減することであり、これにより製造コストを削減することである。
本発明の一局面は、亜鉛を含む有底円筒形の負極缶と、負極缶を収容する有底円筒形の外装缶と、負極缶に収容された二酸化マンガンを含む正極合剤と、正極合剤と負極缶との間に配されるセパレータと、電解液と、を備え、負極缶の底部の外面と、外装缶の底部の内面とが接触しており、負極缶の側部の外面と、外装缶の側部の内面との間に、空間または絶縁材が介在している、マンガン乾電池に関する。
本発明によれば、マンガン乾電池の部品点数を削減できるとともに、製造工程の工数を削減できるため、製造コストを大幅に削減することができる。
本発明の第一実施形態に係るマンガン乾電池の縦断面図である。 本発明の第二実施形態に係るマンガン乾電池の縦断面図である。 本発明の第三実施形態に係るマンガン乾電池の縦断面図である。 従来のマンガン乾電池の縦断面図である。
本実施形態に係るマンガン乾電池は、亜鉛を含む有底円筒形の負極缶と、負極缶を収容する有底円筒形の外装缶と、負極缶に収容された二酸化マンガンを含む正極合剤と、正極合剤と負極缶との間に配されるセパレータと、電解液とを備える。また、負極缶の底部の外面と、外装缶の底部の内面とが接触しており、負極缶の側部の外面と、外装缶の側部の内面との間に、空間または絶縁材が介在している。
上記構成によれば、外装缶が有底円筒形であり、負極缶の底部の外面と外装缶の底部の内面とが接触しているため、外装缶の底部に、負極端子板の役割を兼ねさせることができる。よって、負極端子板が不要になる(図4参照)。また、負極端子板を亜鉛缶の底部に固定するための構造が不要であり、シールリングや絶縁性の熱収縮性チューブも不要になる(図4参照)。
更に、負極缶の側部と外装缶の側部との間の空間または絶縁材により、負極缶の側部と外装缶の側部との接触が避けられる。これにより、少なくとも、外装缶の側部の腐食が抑制される。一方、負極缶の底部は、側部に比べて消費されにくいため、電解液の漏れが生じにくい。つまり、漏液による腐食は外装缶の側部で発生しやすいため、これを抑制することが重要である。なお、外装缶の底部には漏れ出た電解液が接触する可能性があるが、底部は凹凸形状に加工されており、強度が高く、多少の腐食が発生しても負極端子としての機能や強度が大きく損なわれることはない。
外装缶の底部の内面には、負極缶の底部の外面と勘合する凹凸が設けられていることが望ましい。これにより、負極缶の位置決めが容易となり、負極缶の底部が外装缶の底部にしっかりと固定される。よって、負極缶の側部と外装缶の側部との接触を避けることが更に容易となる。
負極缶の側部の外面と、外装缶の側部の内面との間の距離は、例えば0.1mm〜1.3mmであることが好ましい。
外装缶の調質度(テンパー)は、T1〜T3であることが好ましい。なお、調質度は、一般的に、ロックウェルTの硬さで表示される。
負極缶の側部のうち、正極合剤と対向する部分に含まれる亜鉛の電気容量Cnと、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの電気容量Cpとの比:Cn/Cpは、1.1以上であることが好ましい。
以下、本発明の実施形態について更に詳細に説明するが、以下の実施形態は例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。また、単三形マンガン乾電池(R6)を例にとって説明するが、電池の種類は単三形に限定されない。本発明は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
第一実施形態
図1は、本実施形態に係るマンガン乾電池100の構造の概略を示す縦断面図である。なお、図1と同じか、対応する要素には、基本的に同じ符号を用いている。
マンガン乾電池100は、負極缶6と、負極缶6を収容する外装缶14と、負極缶6に収容された正極合剤2と、正極合剤2と負極缶6との間に配されるセパレータ3と、電解液とを備える。セパレータ3は、正極合剤2と負極缶6の側部6Aとの絶縁を確保する。一方、正極合剤2と負極缶6の底部6Bとの間には底紙3aが設けられる。
負極缶6は、例えば微量の鉛(例えば3000ppm程度)を含む亜鉛合金であり、単三形電池の場合、負極缶6の外径は12.6mm〜14.0mmである。負極缶6は、例えば円盤状の金属ペレットをインパクト成形することにより製造される。負極缶6の側部6Aの平均厚みは、例えば0.18mm〜0.25mmである。平均厚みは、負極缶6の高さの方向における中央部における厚みと考えることができる。
外装缶14は、側部14Aと底部14Bとを有する。単三形電池の場合、外装缶14の側部14Aの外径は、例えば13.2mm〜14.4mmである。底部14Bは、リング状の周縁部14aと、周縁部14aに囲まれるとともに周縁部14aから外側に突出する端子部14bとを有する。外装缶14の底部14Bの周縁部14aは、負極缶6の底部6Bの周縁部6bと接触している。これにより、両者に電気的接続が確保され、外装缶14は負極缶6と同じ極性となる。よって、周縁部14aから外側に突出する端子部14bは、負極端子として機能する。外装缶14の底部14Bの周縁部の内面と、負極缶6の底部6Bの周縁部6bの外面とは、確実な面接触が可能なように、互いに対応する形状を有することが好ましく、例えばいずれも平坦面である。
負極缶6の側部6Aと外装缶14の側部14Aとの間には、空間11が設けられている。これにより、過放電により負極缶6にピンホールなどが形成され、電解液が漏れ出たとしても、電解液が直ちに外装缶14に接触することはなくなる。よって、外装缶14の側部14Aの腐食が抑制される。
負極缶6の側部6Aの外面と、外装缶14の側部14Aの内面との間の距離Dは、両者の接触を避ける観点からは大きいことが望ましく、例えば0.1mm以上、更には0.2mm以上であることが望ましい。これにより、負極缶6の側部6Aと外装缶14の側部14Aとの接触を避けることが容易となる。よって、外装缶14の腐食を抑制する効果が大きくなる。一方、外装缶14内の容積を有効利用する観点からは、距離Dは小さいことが望ましく、例えば1.3mm以下、更には1.0mm以下であることが望ましい。
距離Dは、負極缶6および外装缶14の側部全体において一定である必要はない。例えば、距離Dの最大値が上記条件を満たすことが望ましい。また、両者が部分的に接触してもよい(距離Dが0mm)。ただし、負極缶6の側部6Aの外面のうち、外装缶14と接触する部分の面積の割合は、10%以下であることが望ましい。
外装缶14は、金属の板材に絞り加工(特に深絞り加工)または絞りしごき加工を施して形成される。絞りしごき加工によれば、外装缶14の側部14Aの最小厚みTsと、外装缶14の底部14Bの最小厚みTbとの比:Ts/Tbを1未満にすることができる。これにより、外装缶14に使用される材料の量を削減することができ、更なるコスト削減が可能になる。一方、外装缶14の底部14Bは十分な厚みを有するため、底部14Bに腐食が発生したときの影響は更に小さくなる。更に、外装缶14の負極端子となる部位の変形を抑制することができる。Ts/Tbは0.9以下であることが好ましく、0.7以下であることが更に好ましい。
外装缶14の側部14Aの十分な高強度を維持する観点から、Tsは0.1mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることが更に好ましい。一方、材料コストを削減する観点からは、Tsは0.2mm以下であることが好ましく、0.18mm以下であることが更に好ましい。
外装缶の底部14Bの十分な高強度および耐腐食性を維持する観点から、Tbは0.1mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることが更に好ましい。一方、材料コストを削減するとともに加工性を向上させる観点からは、Tbは0.2mm以下であることが好ましく、0.18mm以下であることが更に好ましい。
外装缶14の材質は、特に限定されないが、金属製であり、例えばブリキ(錫めっき鋼鈑)が用いられる。金属の調質度(テンパー)は、T1〜T3であることが好ましい。これにより、外装缶14の強度を維持しやすくなる。また、外装缶14の開口端部による加締めの圧力を得やすいため、外装缶14の底部14Bと負極缶6の底部6Bとの電気的接触の確保が容易となる。また、十分な加締め圧力が得られると、負極缶6とガスケット5との密着性が向上し、マンガン乾電池100の保存性能も向上する。
なお、外装缶14の側部および開口端部の外面は、製品の意匠(図示せず)が印刷されていてもよく、製品の意匠を施したラベルやチューブ(図示せず)で被覆されていてもよい。
正極合剤2は、円筒形に成形されており、正極合剤2の中空には、カーボン粉末の焼結体である炭素棒(正極集電体)12が挿入されている。正極合剤2と負極缶6との間には、セパレータ3が配置されている。正極合剤2の上端面は、円盤状の鍔紙3bで覆われる。
負極缶6の開口は、ガスケット5により塞がれる。ガスケット5は、例えばポリオレフィン製であり、その中央には炭素棒12を挿入するための貫通孔が設けられている。鍔紙3bの中央にも炭素棒12を通すための穴が形成されている。炭素棒12とガスケット5との接触部には、電解液の這い上がりを防止するための封止材(図示せず)が塗布される。ガスケット5と負極缶6の開口端部との接触部にも、同様に封止材が塗布される。封止材には、例えばポリブテンを主成分とした液状ポリマーが用いられる。
ガスケット5および炭素棒12の頂部は、正極端子として機能するキャップ4で覆われる。キャップ4は、金属製であり、例えばブリキ(錫めっき鋼鈑)で形成されている。炭素棒12の頂部をキャップ4の中央に設けられた凸部に嵌合させることにより、キャップ4と炭素棒12との電気的接続が確保される。キャップ4の周縁部には、平坦かつリング状の鍔部4aが設けられている。鍔部4aには絶縁リング7が載置される。外装缶14の開口端部は、金型により内方にカール加工され、絶縁リング7を介して鍔部4aに加締められる。これにより、負極缶6は、外装缶14の底部14B側に向かって押圧されることとなり、負極缶6の底部6Bが外装缶14の底部14Bに押し付けられる。
正極合剤2には、例えば、粉末状の二酸化マンガンと、粉末状の導電剤と、電解液との混合物が用いられる。導電剤には、炭素材料が用いられ、アセチレンブラックが好ましい。正極合剤に含まれる二酸化マンガンの含有量は、40〜60質量%が好ましい。二酸化マンガン粒子の体積基準の粒度分布におけるメディアン径は、例えば20〜50μmである。
電解液には、塩化アンモニウムを含む塩化亜鉛水溶液が用いられる。塩化亜鉛水溶液における塩化亜鉛の含有量は、例えば27〜33質量%である。
セパレータ3には、クラフト紙を用いることができる。クラフト紙には糊剤が塗布される。糊剤は、例えば架橋デンプンおよびポリ酢酸ビニルを含む。セパレータ3は、糊剤が塗布された面が負極缶と対向するように配置される。底紙3aおよび鍔紙3bにも、クラフト紙を用いることができる。底紙3aは、クラフト紙を円形に打ち抜いた後、カップ状に絞り加工されて正極合剤2の中空に圧入される。
負極缶の側部6Aのうち正極合剤と対向する部分に含まれる亜鉛の電気容量Cnと、正極合剤2に含まれる二酸化マンガンの電気容量Cpとの比:Cn/Cpは、1.1以上であることが好ましく、1.5以上であることが更に好ましい。また、負極缶の側部6Aのうち正極合剤と対向する部分に含まれる亜鉛の100質量部あたり、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの量は240質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることが更に好ましい。これにより、マンガン乾電池100の容量は、正極合剤2の電気容量で規制されるため、過放電により負極缶6の消耗が進行しても、負極缶6のピンホールなどが防止される。
なお、Cn/Cpは、次の方法で算出することができる。
Cpは、正極合剤2に含まれる活物質の二酸化マンガン重量に、その単位重量あたりの理論電気容量(0.308Ah/g)を乗じることによって算出される。例えば、8.6gの正極合剤2に二酸化マンガン純度91質量%の電解二酸化マンガンが51質量%含まれる場合、Cpは下記式で計算される。
8.6×0.51×0.91×0.308=1.229(Ah)
Cnは、負極缶の側部6Aの正極合剤2と対向する部分(円筒部分)の電気容量に相当する。まず、負極缶6の外径、側部6Aの厚さ、および正極合剤2の高さ(鍔紙3bの内面と底紙3aの内面との距離)から、円筒部分の体積Vを算出する。次に、算出された体積Vに亜鉛の密度(7.14g/cm3)を乗じて重量Wに換算し、重量Wに負極缶6の亜鉛純度と亜鉛の単位重量あたりの理論電気容量(0.820Ah/g)とを乗じることによってCnが算出される。例えば、外径13.1mm、側部の厚さ0.24mm、亜鉛純度99.7%の負極缶6に、高さ38.4mmの正極合剤2が充填されている場合、Cnは下記式で計算される。
(13.1/2×13.1/2−12.62/2×12.62/2)×3.14× 38.4/1000×7.14×0.997×0.820=2.172(Ah)
上記例における電気容量比:Cn/Cpは、次式で求められる。
2.172/1.229=1.77
第二実施形態
図2に、本実施形態に係るマンガン乾電池200の縦断面図を示す。本実施形態に係るマンガン乾電池200には、負極缶6の側部6Aと外装缶14の側部14Aとの間に、絶縁材10が設けられている。例えば、負極缶6の側部6Aの外面は、絶縁性の熱収縮性チューブ10で覆われている。これにより、過放電により負極缶6にピンホールが形成され、電解液が漏れ出たとしても、電解液が直ちに外装缶14に接触することがなくなる。よって、外装缶14の側部14Aの腐食が抑制される。上記以外、本実施形態のマンガン乾電池200は、第一実施形態に係るマンガン乾電池100と同様の構成を有する。
本実施形態においても、負極缶6の側部6Aの外面と、外装缶14の側部14Aの内面との間の距離Dは、例えば0.1mm〜1.3mmであることが好ましい。絶縁材10の厚みは、距離D以下であればよく、0.05mm〜1.25mmであることが好ましい。外装缶14の側部14Aと絶縁材10との間に、更に僅かな幅の空間を設けてもよい。
絶縁材10としては、例えば熱収縮性チューブが用いられる。熱収縮性チューブとは、加熱により径方向に収縮する樹脂チューブである。熱収縮性チューブを構成する材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデンなど)、エチレン−プロピレンゴム、シリコーン、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中では、特にPVCが好ましい。その他、熱収縮しない絶縁材10を用いてもよく、例えば、セルロース、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などを使用することができる。
従来のマンガン乾電池(図4参照)の場合、熱収縮性チューブ10は、負極缶6の開口を塞ぐガスケット5の周縁部から、負極缶6の側部6Aを経て、負極缶6の底部6Bの周縁部6bまでを覆うことが一般的である。ただし、本実施形態においては、負極缶6の底部6Bの周縁部6bは熱収縮チューブ10で覆わないことが望ましい。これにより、負極缶6の底部6Bの周縁部6bと外装缶14の底部14Bの周縁部14aとの接触を確保することが容易となる。
第三実施形態
図3に、本実施形態に係るマンガン乾電池300の縦断面図を示す。本実施形態に係るマンガン乾電池300の外装缶14の底部14Bの内面には、負極缶6の底部6Bの外面と勘合する凹凸が設けられている。これにより、負極缶6の位置決めが容易となり、負極缶6の位置ずれが抑制され、負極缶6の側部6Aと外装缶14の側部14Aとの接触を避けることが容易となる。上記以外、本実施形態のマンガン乾電池300は、第一実施形態または第二実施形態に係るマンガン乾電池100(200)と同様の構成を有する。
外装缶14の底部14Bの内面に設けられる凹凸の形状は、特に限定されず、負極缶6の底部6Bの外面と勘合する形状であればよい。例えば、負極缶6の底部6Bの外面に溝(例えば環状溝)および/または凹部を設け、外装缶14の底部14Bの内面にその溝や凹部と勘合するリブ(例えば環状リブ)および/または凸部を設けてもよい。
図示例では、外装缶14の底部14Bの内面の径方向の最も外側に、リング状の位置決め凸部15が設けられている。すなわち、底部14Bは、位置決め凸部15と、これに続く周縁部14aと、周縁部14aに囲まれるとともに周縁部14aから外側に突出する端子部14bとを有する。この場合、負極缶6の底部6Bの外径を、位置決め凸部15の内径と同じ寸法にするか、僅かに位置決め凸部15の内径よりも小さくすればよい。
外装缶14の側部14Aからの位置決め凸部15の突出幅wは、距離Dに一致してもよく、距離Dより僅かに(例えば10%以下の割合で)小さくてもよく、距離Dより大きくしてもよい。突出幅wが距離Dより大きい場合には、負極缶6の底部6Bの外面の径方向の最も外側に、凸部15に対応する凹部を設ければよい。
位置決め凸部15の高さhは、負極缶6の底部6Bの厚み以下であることが望ましく、例えば0.2mm〜0.7mmであることが好ましい。これにより、負極缶6の側部6Aと外装缶14との接触を極力避けることができ、外装缶14の耐腐食性をより向上させることができる。
なお、図3では、負極缶6の側部6Aと外装缶14の側部14Aとの間に絶縁材10が設けられていないが、絶縁材10を設けてもよい。負極缶6の側部6Aの外面を熱収縮性チューブで覆う場合、距離Dの増大を避ける観点から、位置決め凸部15の内面と負極缶6との間には、熱収縮性チューブを介在させないことが望ましい。換言すれば、負極缶6の側部6Aの底部6B近傍から底部6Bの周縁部6bまでの領域は、熱収縮チューブで覆わないことが望ましい。
《実施例1》
以下の手順により図1に示すような本発明の単三形マンガン乾電池(R6)を作製した。
鉛を3000ppm含む亜鉛合金からなる有底円筒形の負極缶(外径13.1mm、側部の厚み0.24mm)に円筒形の正極合剤8.6gを収納した。このとき、正極合剤と負極缶との間にセパレータを配置した。セパレータには、糊剤を塗布したクラフト紙を用いた。糊剤には、架橋デンプンとポリ酢酸ビニルとを用い、水に溶かしてクラフト紙に塗布し、乾燥させた。セパレータの糊剤が塗布された面は、負極缶に対向させた。正極合剤の底部と負極缶の間には、厚み0.5mmのクラフト紙を底紙として配置した。正極合剤の上端面には、厚み0.5mmの環状クラフト紙を鍔紙として配置した。
正極合剤には、二酸化マンガン50.4質量部、アセチレンブラック8.4質量部、電解液40.4質量部および酸化亜鉛0.8質量部の混合物を用いた。電解液には、塩化亜鉛30質量部、塩化アンモニウム1質量部および水69質量部の混合物を用いた。
負極缶の側部のうち正極合剤と対向する部分に含まれる亜鉛の電気容量Cnと、正極合剤に含まれる二酸化マンガンの電気容量Cpとの比:Cn/Cpは、1.77である。
ポリエチレン製で中央に直径4mmの貫通孔を有するガスケットを準備した。貫通孔にはカーボン粉末を焼結して得られた直径4mmの炭素棒を貫通させた。炭素棒をガスケットの貫通孔に嵌合させる際に、ガスケットと炭素棒との接触部分に封止剤を塗布した。その後、正極合剤の中空に炭素棒を挿入するとともに、負極缶の開口をガスケットで塞いだ。
一方、中央に凸部およびその周囲に平板状の鍔部を有するブリキ製のキャップを準備した。キャップは、厚み0.22mmのブリキ板をプレス加工して作製した。キャップの凸部の内側に炭素棒の頂部を嵌合させ、鍔部に厚み0.5mmの樹脂製の絶縁リングを配した。その後、負極缶を外装缶に収容し、外装缶の開口端部を内方にカールさせ、絶縁リングに加締めた。
外装缶は、ブリキ板を深絞り加工して作製した。Ts=0.18mm、Tb=0.2mm、側部の外径は13.9mm、調質度はT2であった。距離Dは、0.22mmとした。
《比較例1》
以下の手順により、図4に示す従来の単三形マンガン乾電池(R6)を作製した。
負極缶に底紙、セパレータ、正極合剤および鍔紙を配置し、その後、炭素棒が挿入されたガスケットで負極缶の開口を塞ぐまでの作業は、実施例1と同様に行った。
次に、負極缶の側部の露出部が全体的に覆われるように、負極缶をPVC製の熱収縮性チューブに挿入し、負極缶の底部の外面に負極端子板とシールリングを配置した。その後、熱収縮性チューブを熱収縮させ、熱収縮性チューブの一方の端部でガスケットの周縁部の上面を覆い、他方の端部でシールリングの周縁部の下面を覆った。収縮後のチューブの厚みは0.09mmであった。
次に、一方の開口端部が内側に折り曲げられた筒状の外装缶に、外装缶の他方の開口から熱収縮性チューブで覆われた負極缶を挿入し、折り曲げられた端部で負極缶の底部の周縁部を支持した。その後、炭素棒の頂部とガスケットの露出部をキャップで覆い、キャップの鍔部に厚み0.5mmの樹脂製の絶縁リングを配置し、外装缶の開口端部を内方にカールさせて絶縁リングに加締めた。
本比較例の外装缶は、両端が開口した筒状であるが、その材質は実施例1と同じであり、Ts=0.18mm、側部の外径は13.9mm、調質度はT2とした。距離Dは、実施例1と同じく0.22mmとした。
[評価]
(1)耐漏液性
完成直後の実施例および比較例の電池について、温度30℃、湿度65%の環境下で、3.9Ωおよび43Ωの定抵抗で30日間の連続放電を行い、過放電状態とした。その後、外装缶の側部における腐食の発生の有無を確認した。腐食が目視で確認されない電池は良品であると判断した。30個の乾電池について評価したところ、実施例および比較例のいずれの電池にも腐食が確認されず、良品であると確認された。
(2)製造タクト時間
1000個の電池の組み立て作業を完了するのに要する時間を測定した。実施例1の乾電池を組み立てる時間は、比較例1の同時間に比べて約10%減少した。
(3)製造コスト
実施例1では、原料コストが比較例1に比べて約8%減少した。これは、比較例1では熱収縮性チューブ、シールリングおよび負極端子板が必要であるのに対し、実施例1ではこれらを用いる必要がないためである。なお、外装缶に係る原料コストは約3%増加したが、原料コスト全体に対する影響は小さかった。
本発明のマンガン乾電池は、部品点数が少なく、製造工程の工数が少ないため、低コストで製造することができる。
100,200,300,400:マンガン乾電池、2:正極合剤、3:セパレータ、3a:底紙、3b:鍔紙、4:キャップ、4a:鍔部、5:ガスケット、6:負極缶、6A:負極缶の側部、6B:負極缶の底部、6b:周縁部、7:絶縁リング、10:絶縁材(熱収縮性チューブ)、11:空間、12:炭素棒、14:外装缶、14A:外装缶の側部、14B:外装缶の底部、14a:周縁部、14b:端子部、15:位置決め凸部

Claims (5)

  1. 亜鉛を含む有底円筒形の負極缶と、
    前記負極缶を収容する有底円筒形の外装缶と、
    前記負極缶に収容された二酸化マンガンを含む正極合剤と、
    前記正極合剤と前記負極缶との間に配されるセパレータと、
    電解液と、を備え、
    前記負極缶の底部の外面と、前記外装缶の底部の内面とが接触しており、
    前記負極缶の側部の外面と、前記外装缶の側部の内面との間に、空間または絶縁材が介在している、マンガン乾電池。
  2. 前記外装缶の前記底部の内面に、前記負極缶の前記底部の外面と勘合する凹凸が設けられている、請求項1に記載のマンガン乾電池。
  3. 前記負極缶の前記側部の外面と、前記外装缶の前記側部の内面との間の距離が、0.1mm〜1.3mmである、請求項1または2に記載のマンガン乾電池。
  4. 前記外装缶の調質度が、T1〜T3である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマンガン乾電池。
  5. 前記負極缶の前記側部のうち、前記正極合剤と対向する部分に含まれる亜鉛の電気容量Cnと、前記正極合剤に含まれる前記二酸化マンガンの電気容量Cpとの比:Cn/Cpが、1.1以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマンガン乾電池。
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