JP2018012771A - 粉体塗料、塗装品、及び、塗装品の製造方法 - Google Patents

粉体塗料、塗装品、及び、塗装品の製造方法 Download PDF

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浩 三枝
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聡 吉田
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Abstract

【課題】塗装膜形成時における色の変化が少なく、平滑性に優れる塗装膜が得られる粉体塗料の提供。【解決手段】芯部と前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する粉体粒子を含み、前記芯部が、熱硬化性樹脂、及び、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤を含み、前記樹脂被覆部が、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を含む粉体塗料である。【選択図】なし

Description

本発明は、粉体塗料、塗装品、及び、塗装品の製造方法に関する。
近年、粉体塗料を利用した粉体塗装の技術は、塗装工程における揮発性有機化合物(VOC)排出量が少なく、しかも塗装後、被塗装物に付着しなかった粉体塗料を回収し、再利用できることから、地球環境の面で注目されている。このため、粉体塗料については、種々のものが研究されている。
例えば、特許文献1には、「ワーデルの実用球形化度が0.8〜1の形状を有し、かつ懸濁重合法で得られた粉体塗料」が開示されている。
特許文献2には、「内層の少なくとも一層がガラス転移温度(Tg)20℃以下のポリマー層であり、最外層がガラス転移温度(Tg)50℃以上のポリマー層であって、懸濁重合により合成された多層構造粒子を分散させてなる粉体塗料組成物」が開示されている。
特許文献3には、「含フッ素共重合体(A’)をコア粒子とし、この表面を当該コア粒子よりガラス転移温度が高い樹脂を被覆してシェルとしたコア/シェル構造の複合化含フッ素共重合体(A)を含み、平均径が1μm〜500μmのフッ素樹脂粉体塗料組成物」が開示されている。
特許文献4には、「熱硬化性樹脂粒子と、該熱硬化性樹脂粒子100質量部に対して10〜50質量部の熱可塑性樹脂粒子とを含有してなり、該熱可塑性樹脂粒子が0.950〜0.995の平均円形度を有するものである粉体塗料」が開示されている。
特開平9−151337号公報 特開2001−152082号公報 特開2003−128994号公報 特開2008−106132号公報
本発明が解決しようとする課題は、熱硬化剤として、ブロック剤により保護したブロック化イソシアネート化合物のみを含む場合に比べ、塗装膜形成時における色の変化が少なく、平滑性に優れる塗装膜が得られる粉体塗料を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
芯部と前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する粉体粒子を含み、前記芯部が、熱硬化性樹脂、及び、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤を含み、前記樹脂被覆部が、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を含む粉体塗料。
請求項2に係る発明は、
前記芯部が、金属アセチルアセトナート、及び、第四級アンモニウム塩よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を更に含む請求項1に記載の粉体塗料。
請求項3に係る発明は、
前記金属アセチルアセトナート及び前記第四級アンモニウム塩の総含有量が、前記粉体粒子の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下である請求項2に記載の粉体塗料。
請求項4に係る発明は、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粉体塗料を塗装してなる塗装品。
請求項5に係る発明は、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粉体塗料により塗装する塗装品の製造方法。
請求項1に係る発明によれば、熱硬化剤として、ブロック剤により保護したブロック化イソシアネート化合物のみを含む場合に比べ、塗装膜形成時における色の変化が少なく、平滑性に優れる塗装膜が得られる粉体塗料が提供される。
請求項2に係る発明によれば、硬化触媒を含まない場合に比べ、塗装膜形成時における色の変化が少なく、平滑性に優れる塗装膜が得られる粉体塗料が提供される。
請求項3に係る発明によれば、前記金属アセチルアセトナート及び前記第四級アンモニウム塩の総含有量が、前記粉体粒子の全質量に対して、0.1質量%未満であるか、又は、5質量%を超える場合に比べ、塗装膜形成時における色の変化がより少ない粉体塗料が提供される。
請求項4、又は、請求項5に係る発明によれば、粉体粒子が、熱硬化剤として、ブロック剤により保護したブロック化イソシアネート化合物のみを含む場合に比べ、塗装膜形成時における色の変化が少なく、平滑性に優れる塗装膜が形成された塗装品、又は、塗装品の製造方法が提供される。
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
<粉体塗料>
本実施形態に係る粉体塗料は、芯部と前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する粉体粒子を含み、前記芯部が、熱硬化性樹脂、及び、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤を含み、前記樹脂被覆部が、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を含む。
なお、本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子に着色剤を含まない透明粉体塗料(クリア塗料)、及び、粉体粒子に着色剤を含む着色粉体塗料のいずれであってもよいが、塗装膜形成時における色の変化量、及び、得られる塗装膜の塗装膜の平滑性の観点から、粉体粒子に着色剤を含む着色粉体塗料であることが好ましい。
また、本実施形態に係る粉体塗料は、熱硬化性粉体塗料である。
本実施形態に係る粉体塗料は、上記構成により、塗装膜形成時における色の変化が少なく、平滑性に優れる塗装膜が得られる。この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
まず、従来の熱硬化性樹脂、及び、熱硬化剤を含む粉体塗料は、塗装膜(「塗膜」とも称する)を形成する際の熱により、熱硬化性樹脂の変性物や分解物、熱硬化剤の分解物等に起因し、形成された塗装膜の色が変化する。
また、従来の粉体塗料では、粉体粒子の表面に、熱硬化剤やその他の成分が一部露出することにより、粉体粒子同士の凝集が生じやすくなり、凝集体により塗装膜の表面に凹凸が形成され、平滑性の低い塗装膜となりやすい。
ウレトジオン構造は、以下に示す構造であり、イソシアナト基(−N=C=O、イソシアネート基とも称する)が2量化した構造でもある。
式中、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤は、熱によりウレトジオン構造が2つのイソシアナト基に分解し、生じたイソシアナト基が熱硬化性樹脂と反応し、塗装膜が硬化する。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤は、熱により分解し、イソシアナト基を生成する、いわゆる、ブロックイソシアネート化合物の一種である。
従来のブロック剤を用いたブロックイソシアネート化合物では、熱硬化時に、ブロック剤及びその分解物が放出され、これら化合物が塗装膜の色に影響を与え、また、塗装膜の平滑性にも影響を与える。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤は、イソシアナト基が2量化してウレトジオン構造を形成しているため、熱分解しても2つのイソシアナト基以外は生じず、塗装膜形成時の熱による色の変化が少なく、また、得られる塗装膜の平滑性にも優れる。
また、粉体粒子として、熱硬化性樹脂及び熱硬化剤を含む粒子(つまり粉体塗料として機能する粒子)を芯部とし、この芯部の表面にガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を含む樹脂被覆部を有する粒子を適用する。この層構成の粉体粒子とすると、樹脂被覆部が隔壁となり、芯部に含まれる熱硬化剤等の内包物が粉体粒子の表面へ露出することを抑制し、更に粉体粒子同士の凝集が抑制されることにより、平滑性に優れた塗装膜が得られる。
以上から、本実施形態に係る粉体塗料は、塗膜形成時における色の変化が少なく、得られる塗膜の平滑性に優れると推測される。
以下、本実施形態に係る粉体塗料の詳細について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を有する。粉体塗料は、必要に応じて、流動性を高める点から、粉体粒子の表面に付着する外部添加剤を有していてもよい。
[粉体粒子]
粉体粒子は、芯部と、芯部の表面に付着して樹脂被覆部と、を有する。つまり、粉体粒子は、コア/シェル構造を有する粒子である。
(芯部)
芯部は、熱硬化性樹脂と、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤とを含む。芯部は、必要に応じて、着色剤等のその他添加剤を含んでいてもよい。
−熱硬化性樹脂−
熱硬化性樹脂は、熱硬化反応性基を有する樹脂である。熱硬化性樹脂としては、従来、粉体塗料の粉体粒子で使用する様々な種類の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂として非水溶性(疎水性)の樹脂を適用すると、粉体塗料(粉体粒子)の帯電特性の環境依存性が低減される。また、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、水性媒体中で乳化分散を実現する点からも、熱硬化性樹脂は、非水溶性(疎水性)の樹脂であることがよい。なお、非水溶性(疎水性)とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が5質量部未満であることを意味する。
熱硬化性樹脂の中でも、熱硬化性ポリエステル樹脂、及び、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、熱硬化性ポリエステル樹脂がより好ましい。
また、熱硬化性樹脂が有する熱硬化反応性基としては、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤より生じるイソシアナト基と反応する基であれば、特に制限はないが、硬化性の観点から、水酸基、及び、アミノ基よりなる群から選ばれた少なくとも一種の基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。
・熱硬化性ポリエステル樹脂
熱硬化性ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを少なくとも重縮合した重縮合体である。熱硬化性ポリエステル樹脂の硬化反応性基の導入は、多塩基酸と多価アルコールとの使用量を調整することにより行う。この調整により、硬化反応性基として、カルボキシル基及び水酸基の少なくとも一方を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が得られる。
中でも、硬化性の観点から、水酸基を有する熱硬化性ポリエステル樹脂が好ましい。
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これら酸の無水物;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、これら酸の無水物;マレイン酸、イタコン酸、これら酸の無水物;フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、これら酸の無水物;シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、シクロヘキサンジメタノール、オクタンジオール、ジエチルプロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート等が挙げられる。
熱硬化性ポリエステル樹脂は、多塩基酸及び多価アルコール以外の他の単量体が重縮合されていてもよい。
他の単量体としては、例えば、一分子中にカルボキシル基と水酸基とを併せ有する化合物(例えばジメタノールプロピオン酸、ヒドロキシピバレート等)、モノエポキシ化合物(例えば「カージュラE10(シェル社製)」等の分岐脂肪族カルボン酸のグリシジルエステル)など)、種々の1価アルコール(例えばメタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等)、種々の1価の塩基酸(例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等)、種々の脂肪酸(例えばひまし油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸等)等が挙げられる。
熱硬化性ポリエステル樹脂の構造は、分岐構造のものでも、線状構造のものでもよい。
熱硬化性ポリエステル樹脂は、酸価と水酸基価との合計が10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、かつ数平均分子量が1000以上100,000以下のポリエステル樹脂が好ましい。
酸価と水酸基価との合計を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上すると共に、粉体塗料の貯蔵安定性も向上しやすくなる。
なお、熱硬化性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の測定は、JIS K−0070−1992に準ずる。また、熱硬化性ポリエステル樹脂の数平均分子量の測定は、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量の測定と同様である。
・熱硬化性(メタ)アクリル樹脂
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化反応性基を有する(メタ)アクリル樹脂である。熱硬化性(メタ)アクリル樹脂への熱硬化反応性基の導入は、熱硬化反応性基を有するビニル単量体を用いることがよい。熱硬化反応性基を有するビニル単量体は、(メタ)アクリル単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)であってもよいし、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体であってもよい。
ここで、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂が有する熱硬化反応性基としては、例えば、水酸基、及び、アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル樹脂が有する熱硬化反応性基は、硬化性及び(メタ)アクリル樹脂の製造容易な点から、水酸基であることが好ましい。
硬化性反応性基として水酸基を有するビニル単量体としては、例えば、各種の水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等)、上記各種の水酸基含有(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有ビニルエーテル(例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、及び、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等)、上記各種の水酸基含有ビニルエーテルとε−カプロラクトンとの付加反応生成物、各種の水酸基含有アリルエーテル(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテル、及び、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル等)、並びに、上記各種の水酸基含有アリルエーテルとε−カプロラクトンとの付加反応生成物などが挙げられる。
硬化性反応性基としてアミノ基を有するビニル単量体としては、例えば、アミノアルキル(メタ)アクリレート、及び、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、硬化反応性基を有さない(メタ)アクリル単量体が共重合されていてもよい。
なお、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂において、熱硬化反応性基を有するビニル単量体として、(メタ)アクリル単量体以外のビニル単量体を使用する場合、硬化性反応性基を有さないアクリル単量体を使用する。
硬化性反応性基を有さないアクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等)、各種の(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等)、各種のアルキルカルビトール(メタ)アクリレート(例えばエチルカルビトール(メタ)アクリレート等)、他の各種の(メタ)アクリル酸エステル(例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、各種のジアルキルアミノ基含有アミド系不飽和単量体(例えばN−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)、各種のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、各種のアミノ基含有単量体(例えばtert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピペリジニルエチル(メタ)アクリレート等)などが挙げられる。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル単量体以外にも、硬化反応性基を有さない他のビニル単量体が共重合されていてもよい。
他のビニル単量体としては、各種のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1等)、フルオロオレフィンを除く各種のハロゲン化オレフィン(例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、各種の芳香族ビニル単量体(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等)、各種のカルボキシル基含有単量体(例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等)、各種のα,β−不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのモノエステル類(例えばフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸モノtert−ブチル、フマル酸モノヘキシル、フマル酸モノオクチル、フマル酸モノ2−エチルヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノイソブチル、マレイン酸モノtert−ブチル、マレイン酸モノヘキシル、マレイン酸モノオクチル、及び、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル等)、並びに、イタコン酸モノアルキルエステル(例えばイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノイソブチル、イタコン酸モノヘキシル、イタコン酸モノオクチル、及び、イタコン酸モノ2−エチルヘキシル等)、各種の不飽和ジカルボン酸と炭素数1以上18以下の1価アルコールとのジエステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジオクチル等)、各種の酸無水基含有単量体(例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水(メタ)アクリル酸、無水テトラヒドロフタル酸等)、各種の燐酸ステル基含有単量体(例えばジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフォスフェート、ジオクチル−2−(メアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等)、各種の加水分解性シリル基含有単量体(例えばγ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、各種の脂肪族カルボン酸ビニル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、炭素数9以上11以下の分岐状脂肪族カルボン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、環状構造を有するカルボン酸の各種のビニルエステル(例えばシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−tert−ブチル安息香酸ビニル等)などが挙げられる。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂は、数平均分子量が1,000以上20,000以下(好ましくは1,500以上15,000以下)のアクリル樹脂が好ましい。
数平均分子量を上記範囲内にすると、塗装膜の平滑性及び機械的物性が向上しやすくなる。
熱硬化性(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー(株)製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
熱硬化性樹脂は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱硬化性樹脂の含有量は、粉体粒子全体に対して、20質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上95質量%以下がより好ましい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、熱硬化性樹脂を適用する場合、熱硬化性樹脂の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂の含有量を意味する。
−ウレトジオン構造を有する熱硬化剤−
本実施形態に係る粉体塗料は、前記粉体粒子における芯部に、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤を含む。
また、本実施形態に係る粉体塗料は、前記粉体粒子における芯部だけでなく、前記粉体粒子における樹脂被覆部にウレトジオン構造を有する熱硬化剤を更に有していてもよい。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤は、ウレトジオン構造を1つのみ有していてもよいし、2つ以上有していてもよいが、2つ以上有していることが好ましい。また、ウレトジオン構造の数の上限値は、特に制限はないが、500以下であることが好ましい。
また、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤は、硬化温度、及び、塗膜形成時における色の変化の観点から、ポリイソシアネート化合物がウレトジオン構造を形成して多量体化したものであることが好ましい。
なお、ポリイソシアネート化合物を多量体化する際に、末端に残留するイソシアナト基については、アルコール化合物やアミン化合物等を反応させ、イソシアナト基を変換してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、特に制限はないが、脂肪族ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
ポリイソシアネート化合物として、具体的には、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2−メチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び、m−キシリレンジイソシアネートが好ましく挙げられる。中でも、イソホロンジイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。
また、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤は、分子量1,000未満の低分子化合物であっても、分子量(重量平均分子量)が1,000以上の高分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。また、重量平均分子量の上限値は、特に制限はないが、100,000以下であることが好ましい。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー(株)製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー(株)製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
前記高分子化合物である場合、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤のガラス転移温度(Tg)は、平滑性の観点から、30℃以上100℃以下であることが好ましく、40℃以上90℃以下であることがより好ましい。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤におけるウレトジオン構造が分解しイソシアナト基が生成する分解温度は、後述する硬化触媒を含有していない場合、構造にもよるが、約150℃以上約190℃以下が一例として挙げられる。また、後述する硬化触媒を含有させた場合、使用した硬化触媒の種類にも依存するが、5℃以上30℃以下程度の前記分解温度の低下が見られる。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ウレトジオン構造を有する熱硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましい。
なお、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全熱硬化性樹脂に対する含有量を意味する。
−硬化触媒−
本実施形態に係る粉体塗料は、硬化温度、及び、塗膜形成時における色の変化の観点から、前記粉体粒子に硬化触媒を含有することが好ましく、前記粉体粒子における前記芯部に硬化触媒を含有することがより好ましい。
硬化触媒としては、特に制限はないが、金属アセチルアセトナート、及び、第四級アンモニウム塩よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。前記少なくとも一種の化合物を含有させると、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤の前記分解温度を特に低下させる。
金属アセチルアセトナートとして、具体的には、アルミニウムアセチルアセトナート、クロミウムアセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート、及び、ニッケル(II)アセチルアセトナートが挙げられる。
第四級アンモニウム塩としては、テトラアルキルアンモニウム塩が好ましく、テトラエチルアンモニウム塩、及び、テトラブチルアンモニウム塩よりなる群から選ばれた化合物がより好ましく、テトラエチルアンモニウムカルボキシレート、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムフルオライド、テトラブチルアンモニウムカルボキシレート、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、及び、テトラブチルアンモニウムフルオライドよりなる群から選ばれた化合物が更に好ましい。
これらの中でも、硬化触媒としては、テトラエチルアンモニウムカルボキシレート、及び、テトラブチルアンモニウムカルボキシレートよりなる群から選ばれた化合物が特に好ましい。
硬化触媒は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化触媒の含有量、好ましくは前記金属アセチルアセトナート及び前記第四級アンモニウム塩の総含有量は、粉体粒子の全質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。上記範囲であると、塗膜形成時における色の変化がより少ない。
−着色剤−
着色剤としては、例えば、顔料が挙げられる。着色剤は、顔料と共に染料を併用してもよい。
顔料としては、例えば、酸化鉄(例えばベンガラ等)、酸化チタン、チタン黄、亜鉛華、鉛白、硫化亜鉛、リトポン、酸化アンチモン、コバルトブルー、カーボンブラック等の無機顔料;キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントレッド、ハンザイエロー、インダンスレンブルー、ブリリアントファーストスカーレット、ベンツイミダゾロンイエロー等の有機顔料などが挙げられる。
顔料としては、その他、光輝性顔料も挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、パール顔料、アルミニウム粉、ステンレス鋼粉等の金属粉;金属フレーク;ガラスビーズ;ガラスフレーク;雲母;リン片状酸化鉄(MIO)等が挙げられる。
着色剤は、単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
着色剤の含有量は、顔料の種類及び塗装膜に求められる色彩、明度、及び、深度等に応じて選択する。例えば、着色剤の含有量は、芯部及び樹脂被覆部の全樹脂に対して、1質量%以上70質量%以下が好ましく、2質量%以上60質量%以下がより好ましい。
−その他添加剤−
その他添加剤としては、粉体塗料に使用される各種の添加剤が挙げられる。具体的には、その他添加剤としては、例えば、表面調整剤(シリコーンオイル、アクリルオリゴマー等)、発泡(ワキ)防止剤(例えば、ベンゾイン、ベンゾイン誘導体等)、硬化促進剤(アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等)、可塑剤、帯電制御剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、及び、流動付与剤等が挙げられる。
(樹脂被覆部)
樹脂被覆部は、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を少なくとも含む。樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていてもよいし、他の添加剤(芯部で説明した熱硬化剤、その他添加剤等)を含んでいてもよい。但し、粉体粒子のブリードをより低減する点から、樹脂被覆部は、樹脂のみで構成されていることが好ましい。なお、樹脂被覆部が他の添加剤を含む場合でも、樹脂は樹脂被覆部全体の好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上を占めることがよい。
樹脂被覆部の樹脂は、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂以外に、非硬化性樹脂を含有していても、前記以外の熱硬化性樹脂を含有していてもよい。但し、樹脂被覆部の樹脂は、塗装膜の硬化密度(架橋密度)向上の点から、熱硬化性樹脂であることが好ましく、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂であることがより好ましい。
ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂としては、芯部の熱硬化性樹脂と同様なものが挙げられる。特に、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂としては、熱硬化性(メタ)アクリル樹脂、及び、熱硬化性ポリエステル樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。但し、樹脂被覆部における熱硬化性樹脂は、芯部の熱硬化性樹脂と同じ種類の樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。例えば、樹脂被覆部における熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂であり、芯部における熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が50℃未満である熱硬化性樹脂であってもよい。
なお、樹脂被覆部の樹脂として、非硬化性樹脂を適用する場合、非硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、及び、ポリエステル樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種が好適に挙げられる。
なお、本実施形態における樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ASTMD3418−8に準拠した示差走査熱量測定により求める。測定は、具体的には下記のとおり行うものとする。
自動接線処理システムを備えた示差走査熱量計(DSC−50型、(株)島津製作所製)に試料をセットし、冷却媒体として液体窒素をセットし、昇温速度10℃/分で0℃から100℃まで加熱して(1回目の昇温過程)、DSC曲線を得、次に、降温速度−10℃/分で0℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で0℃から150℃まで加熱して(2回目の昇温過程)、DSC曲線を得る。なお、0℃及び100℃にてそれぞれ10分間ずつホールドする。
測定装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融解温度を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットする。
非晶性樹脂のガラス転移温度は、2回目の昇温過程のDSC曲線の吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの交点の温度をもってガラス転移温度とする。
樹脂被覆部の被覆率は、ブリード抑制の点から、30%以上100%以下が好ましく、50%以上100%以下がより好ましい。
樹脂被覆部の被覆率は、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率はXPS(X線光電子分光)測定により求められた値である。
具体的には、XPS測定は、測定装置として日本電子(株)製、JPS−9000MXを使用し、X線源としてMgKα線を用い、加速電圧を10kV、エミッション電流を30mAに設定して実施する。
上記条件で得られたスペクトルから、粉体粒子表面の芯部の材料に起因する成分と被覆樹脂部の材料に起因する成分をピーク分離することによって、粉体粒子表面の樹脂被覆部の被覆率を定量する。ピーク分離は、測定されたスペクトルを、最小二乗法によるカーブフィッティングを用いて各成分に分離する。
分離のベースとなる成分スペクトルは、粉体粒子の作製に用いた熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料、添加剤、被覆用樹脂を単独に測定して得られたスペクトルを用いる。そして、粉体粒子で得られた全スペクトル強度の総和に対しての被覆用樹脂に起因するスペクトル強度の比率から、被覆率を求める。
樹脂被覆部の厚さは、ブリード抑制の点から、0.2μm以上4μm以下が好ましく、0.3μm以上3μm以下がより好ましい。
樹脂被覆部の厚さは、次の方法により測定された値である。粉体粒子をエポキシ樹脂などに包埋し、ダイヤモンドナイフなどで切削することで薄切片を作製する。この薄切片を透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察、複数の粉体粒子の断面画像を撮影する。粉体粒子の断面画像から樹脂被覆部の厚みを20か所測定して、その平均値を採用する。クリア粉体塗料などで断面画像において樹脂被覆部の観察が難しい場合は、染色を行って観察することで、測定が容易になる。
(粉体粒子の他の成分)
粉体粒子は、二価以上の金属イオン(以下、単に「金属イオン」とも称する)を含有してもよい。この金属イオンは、粉体粒子の芯部及び樹脂被覆部のいずれにも含まれる成分である。粉体粒子に二価以上の金属イオンを含むと、粉体粒子で金属イオンによるイオン架橋を形成する。例えば、芯部の熱硬化性樹脂及び樹脂被覆部の樹脂として、ポリエステル樹脂を適用した場合、ポリエステル樹脂のカルボキシル基又は水酸基と金属イオンとが相互作用し、イオン架橋を形成する。このイオン架橋により、粉体粒子のブリードが抑制され、保管性が高まりやすくなる。また、このイオン架橋は、粉体塗料の塗装後、熱硬化をするときの加熱により、イオン架橋の結合が切れることで、粉体粒子の溶融粘度が低下し、平滑性の高い塗装膜を形成しやすくなる。
金属イオンとしては、例えば、二価以上四価以下の金属イオンが挙げられる。具体的には、金属イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、亜鉛イオン、及びカルシウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンが挙げられる。
金属イオンの供給源(粉体粒子に添加剤として含ませる化合物)としては、例えば、金属塩、無機金属塩重合体、金属錯体等が挙げられる。この金属塩、及び無機金属塩重合体は、例えば、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集剤として粉体粒子に添加する。
金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、塩化カルシウム、及び、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機金属塩重合体としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリ硫酸鉄(II)、及び、多硫化カルシウム等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、アミノカルボン酸の金属塩等が挙げられる。金属錯体として、具体的には、例えば、エチレンジアミン四酢酸、プロパンジアミン四酢酸、ニトリル三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、及び、ジエチレントリアミン五酢酸等の公知のキレートをベースにした金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、及び、アルミニウム塩等)などが挙げられる。
なお、これら金属イオンの供給源は、凝集剤用途ではなく、単なる添加剤として添加してもよい。
金属イオンの価数は、高い程、網目状のイオン架橋を形成しやすくなり、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で好適である。このため、金属イオンとしては、Alイオンが好ましい。つまり、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。更に、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、金属イオンの供給源のうち、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、無機金属塩重合体が好ましい。このため、金属イオンの供給源としては、特に、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましい。
金属イオンの含有量は、塗装膜の平滑性、及び粉体塗料の保管性の点で、前記粉体粒子全体に対して0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
金属イオンの含有量を0.002質量%以上とすると、金属イオンによる適度なイオン架橋が形成され、粉体粒子のブリードを抑え、塗装塗料の保管性が高まり易くなる。一方、金属イオンの含有量を0.2質量%以下とすると、金属イオンによる過剰なイオン架橋の形成を抑え、塗装膜の平滑性が高まりやすくなる。
ここで、粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集剤として添加される金属イオンの供給源(金属塩、金属塩重合体)は、粉体粒子の粒度分布及び形状の制御に寄与する。
具体的には、金属イオンの価数は高い程、狭い粒度分布を得る点で好適である。また、狭い粒度分布を得る点で、金属イオンの価数が同じであっても、金属塩に比べ、金属塩重合体が好適である。このため、これら点からも、金属イオンの供給源としては、アルミニウム塩(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が好ましく、アルミニウム塩重合体(例えばポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等)が特に好ましい。
また、金属イオンの含有量が0.002質量%以上になるように、凝集剤を添加すると、水性媒体中における樹脂粒子の凝集が進行し、狭い粒度分布の実現に寄与する。また、芯部となる凝集粒子に対して、樹脂被覆部となる樹脂粒子の凝集が進行し、芯部表面全体に対する樹脂被覆部の形成の実現に寄与する。一方、金属イオンの含有量が0.2質量%以下になるように、凝集剤を添加すると、凝集粒子中のイオン架橋の過剰な生成を抑え、融合合一するときに、生成される粉体粒子の形状が球状に近づきやすくなる。このため、これら点からも、金属イオンの含有量は、0.002質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましい。
金属イオンの含有量は、粉体粒子の蛍光X線強度を定量分析することにより測定される。具体的には、例えば、まず、樹脂と金属イオンの供給源との混合し、金属イオンの濃度が既知の樹脂混合物を得る。この樹脂混合物200mgを、直径13mmの錠剤成形器を用いて、ペレットサンプルを得る。このペレットサンプルの質量を精秤し、ペレットサンプルの蛍光X線強度測定を行って、ピーク強度を求める。同様に、金属イオンの供給源の添加量を変更したペレットサンプルについても測定を行い、これらの結果から検量線を作成する。そして、この検量線を用いて、測定対象となる粉体粒子中の金属イオンの含有量を定量分析する。
金属イオンの含有量の調整方法としては、例えば、1)金属イオンの供給源の添加量を調整する方法、2)粉体粒子を凝集合一法で作製する場合、凝集工程において、金属イオンの供給源として凝集剤(例えば金属塩、又は金属塩重合体)を添加した後、凝集工程の最後にキレート剤(例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)等)を添加し、キレート剤により金属イオンと錯体を形成させ、その後の洗浄工程等で形成された錯塩を除去して、金属イオンの含有量を調整する方法等が挙げられる。
(外部添加剤)
外部添加剤は粉体粒子間の凝集の発生を抑制することで、少量で平滑性の高い塗装膜を形成することができる。外部添加剤の具体例としては、例えば、無機粒子が挙げられる。無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、及び、MgSO等の粒子が挙げられる。
外部添加剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
外部添加剤の外添量としては、粉体粒子の全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
(粉体粒子及び粉体塗料の特性)
粉体粒子の体積粒度分布指標GSDvは、塗装膜の平滑性及び粉体塗料の保管性の点から、1.50以下であることが好ましく、1.40以下であることがより好ましく、1.30以下であることが特に好ましい。
粉体粒子の体積平均粒径D50vは、少量で平滑性の高い塗装膜を形成する点から、1μm以上25μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下が特に好ましい。
粉体粒子の平均円形度は、塗装膜の平滑性及び粉体塗料の保管性の点から、0.95以上であることが好ましく、0.96以上であることがより好ましく、0.97以上であることが特に好ましい。
ここで、粉体粒子の体積平均粒径D50v、及び、体積粒度分布指標GSDvは、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5質量%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50,000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vと定義する。
そして、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v1/2として算出される。
粉体粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000(シスメックス(株)製)」を用いることにより測定される。具体的には、予め不純固形物を除去した水100ml以上150ml以下の中に、分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1ml以上0.5ml以下加え、更に測定試料を0.1g以上0.5g以下加える。測定試料を分散した懸濁液は超音波分散器で1分以上3分以下分散処理を行ない、分散液濃度を3,000個/μl以上1万個/μl以下とする。この分散液に対して、フロー式粒子像分析装置を用いて、粉体粒子の平均円形度を測定する。
ここで、粉体粒子の平均円形度は、粉体粒子について測定されたn個の各粒子の円形度(Ci)を求め、次いで、下記式により算出される値である。但し、下記式中、Ciは、円形度(=粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子投影像の周囲長)を示し、fiは、粉体粒子の頻度を示す。
本実施形態に係る粉体塗料の1/2法における溶融温度は、塗装膜の平滑性、及び、焼き付け温度の低下の観点から、90℃以上125℃以下であることが好ましく、100℃以上115℃以下であることがより好ましい。
なお、粉体塗料の軟化点は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」((株)島津製作所製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本実施形態においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度Tmである。
測定試料は、約1.0gのサンプルを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
本実施形態に係る粉体塗料の示差走査熱量測定(DSC測定)における発熱ピークのピーク温度が、塗装膜の平滑性、及び、焼き付け温度の低下の観点から、40℃以上100℃以下の範囲であることが好ましく、50℃以上80℃以下の範囲であることがより好ましい。
示差走査熱量測定(DSC測定)における発熱ピークの測定は、以下のように行う。
自動接線処理システムを備えた示差走査熱量計(DSC−50型、(株)島津製作所製)に試料をセットし、冷却媒体として液体窒素をセットし、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで加熱して、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線における発熱ピークのピーク温度を測定値として得る。
測定装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との混合物の融解温度を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。試料はアルミニウム製パンに入れ、サンプルの入ったアルミニウム製パンと対照用の空のアルミニウム製パンとをセットする。
[粉体塗料の製造方法]
次に、本実施形態に係る粉体塗料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る粉体塗料は、粉体粒子を製造後、必要に応じて、粉体粒子に対して、外部添加剤を外添することで得られる。
粉体粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。粉体粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、体積粒度分布指標GSDv及び平均円形度を上記範囲への制御が容易である観点から、凝集合一法により、粉体粒子を得ることが好ましい。
具体的には、
熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子、及び、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤が分散された分散液中で、前記第1樹脂粒子と前記熱硬化剤とを凝集して、又は、熱硬化性樹脂及び前記熱硬化剤を含む複合粒子が分散された分散液中で、前記複合粒子を凝集して、第1凝集粒子を形成する工程と、
前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、ガラス転移温度が50℃以上の熱硬化性樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液とを混合し、前記第1凝集粒子の表面に前記第2樹脂粒子を凝集し、前記第2樹脂粒子が前記第1凝集粒子の表面に付着した第2凝集粒子を形成する工程と、
前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱し、前記第2凝集粒子を融合及び合一する工程と、
を経て、粉体粒子を製造することが好ましい。
なお、この凝集合一法により製造された粉体粒子は、第1凝集粒子が融合合一した部分が芯部となり、第1凝集粒子の表面に付着した第2樹脂粒子が融合合一した部分が樹脂被覆部となる。
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤を含む粉体粒子の製造方法について説明するが、着色剤は必要に応じて含有するものである。
−各分散液準備工程−
まず、凝集合一法で使用する各分散液を準備する。具体的には、芯部の熱硬化性樹脂を含む第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液、着色剤が分散された着色剤分散液、樹脂被覆部のガラス転移温度が50℃以上の熱硬化性樹脂を含む第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を準備する。
また、第1樹脂粒子分散液及び前記熱硬化剤が分散された熱硬化剤分散液に代えて、芯部の熱硬化性樹脂及び前記熱硬化剤を含む複合粒子が分散された複合粒子分散液を準備する。
なお、各分散液準備工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、複合粒子を「樹脂粒子」と称し説明する。
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水性媒体が挙げられる。
水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、第四級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水性媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を水性媒体中に粒子状に分散する方法である。
樹脂粒子分散液の製造方法として、具体的には、例えば、アクリル樹脂粒子分散液の場合、原料単量体を水性媒体に水中に乳化し、水溶性開始剤、必要に応じて、分子量制御のために連鎖移動剤を加え加熱し、乳化重合することによって、アクリル樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散を得る。
また、ポリエステル樹脂粒子分散液の場合、原料単量体を加熱溶融及び減圧下重縮合を行った後、得られた重縮合体を溶剤(例えば酢酸エチル等)に加え溶解し、更に、得られた溶解物に弱アルカリ性水溶液を加えながら撹拌、及び転相乳化することによって、ポリエステル樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散を得る。
なお、複合粒子分散液を得る場合、樹脂と前記熱硬化剤とを混合して、分散媒に分散(例えば転相乳化等の乳化)することで、当該複合粒子分散液を得る
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、1μm以下が好ましく、0.01μm以上1μm以下がより好ましく、0.08μm以上0.8μm以下が更に好ましく、0.1μm以上0.6μmが特に好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、(株)堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、熱硬化剤分散液、着色剤分散液、複合粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における樹脂粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤分散液中に分散する着色剤の粒子、硬化剤分散液中に分散する硬化剤の粒子、複合粒子分散液中に分散する複合粒子についても同様である。
−第1凝集粒子形成工程−
次に、第1樹脂粒子分散液と、熱硬化剤分散液と、着色剤分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、第1樹脂粒子とウレトジオン構造を有する熱硬化剤と着色剤とをヘテロ凝集させ目的とする粉体粒子の径に近い径を持つ、第1樹脂粒子と前記熱硬化剤と着色剤とを含む第1凝集粒子を形成する。
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、第1樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、第1樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
なお、第1凝集粒子形成工程においては、熱硬化性樹脂及び前記熱硬化剤を含む複合粒子分散液と、着色剤分散液と、を混合し、混合分散液中で、複合粒子と着色剤とをヘテロ凝集させて、第1凝集粒子を形成してもよい。
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、金属塩、金属塩重合体、金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
なお、凝集終了後、凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。このキレート剤の添加により、凝集剤を過剰に添加した場合、粉体粒子の金属イオンの含有量の調整が実現される。
ここで、凝集剤としての金属塩、金属塩重合体、金属錯体は、金属イオンの供給源として用いる。これらの例示について、既述の通りである。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤が挙げられる。キレート剤として、具体的には、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などが挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下がよく、0.1質量部以上3.0質量部未満が好ましい。
−第2凝集粒子形成工程−
次に、得られた第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、第2樹脂粒子分散液とを混合する。
なお、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を含む第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
そして、第1凝集粒子、及び第2樹脂粒子が分散された混合分散液中で、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子を付着するように凝集して、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着した第2凝集粒子を形成する。
具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、第2樹脂粒子分散液を混合し、この混合分散液に対して、第2樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
そして、混合分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
これにより、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
−融合合一工程−
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して、例えば、第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1及び第2樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合合一し、粉体粒子を形成する。
以上の工程を経て、粉体粒子が得られる。
ここで、融合合一工程終了後は、分散液中に形成された粉体粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態の粉体粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流式乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
そして、本実施形態に係る粉体塗料は、必要に応じて、例えば、得られた乾燥状態の粉体粒子に、外部添加剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
<塗装品/塗装品の製造方法>
本実施形態に係る塗装品は、本実施形態に係る粉体塗料により塗装された塗装品である。そして、本実施形態に係る塗装品の製造方法は、本実施形態に係る粉体塗料により塗装する塗装品の製造方法である。
具体的には、塗装品は、被塗装面に粉体塗料を塗装した後、加熱(焼き付け)して粉体塗料を硬化させた塗装膜を形成することにより得られる。粉体塗料の塗装、及び加熱(焼き付け)は、一括して行ってもよい。
粉体塗料の塗装は、静電粉体塗装、摩擦帯電粉体塗装、流動浸漬等の周知の塗装方法を利用する。粉体塗料の塗装膜の厚みは、例えば、30μm以上50μm以下が好ましい。
加熱温度(焼付温度)は、例えば、90℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上220℃以下がより好ましく、120℃以上200℃以下が更に好ましい。なお、加熱時間(焼付時間)は、加熱温度(焼付温度)により調節する。
粉体塗料を塗装する対象物品は、特に、制限はなく、各種の金属部品、セラミック部品、樹脂部品等が挙げられる。これら対象物品は、板状品、線状品等の各物品への成形前の未成形品であってもよいし、電子部品用、道路車両用、建築内外装資材用等に成形された成形品であってもよい。また、対象物品は、被塗装面に、予め、プライマー処理、めっき処理、電着塗装等の表面処理が施された物品であってもよい。
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
<着色剤分散液の調製>
(着色剤分散液(C1)の調製)
・シアン顔料(大日精化工業(株)製、C.I.Pigment Blue 15:3、(銅フタロシアニン)):100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK):15質量部
・イオン交換水:450質量部
上記成分を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて1時間分散してシアン顔料を分散させてなる着色剤分散液を調製した。着色剤分散液におけるシアン顔料の体積平均粒径は、0.13μm、着色剤分散液の固形分比率は25%であった。
(着色剤分散液(M1)の調製)
シアン顔料をマゼンタ顔料(キナクリドン系顔料:大日精化工業(株)製:クロモファインマゼンタ6887)に変更した以外は、着色剤分散液(C1)と同様の方法で着色剤分散液(M1)を調製した。着色剤分散液におけるマゼンタ顔料の体積平均粒径は、0.14μm、着色剤分散液の固形分比率は25%であった。
(着色剤分散液(M2)の調製)
シアン顔料をマゼンタ顔料(DIC(株)製:Fastogen Super Red 7100Y−E)に変更した以外は、着色剤分散液(C1)と同様の方法で着色剤分散液(M2)を調製した。着色剤分散液におけるマゼンタ顔料の体積平均粒径は、0.14μm、着色剤分散液の固形分比率は25%であった。
(着色剤分散液(Y1)の調製)
シアン顔料をイエロー顔料(BASF社製:Paliotol Yellow d1155)に変更した以外は、着色剤分散液(C1)と同様の方法で着色剤分散液(Y1)を調製した。着色剤分散液におけるイエロー顔料の体積平均粒径は、0.13μm、着色剤分散液の固形分比率は25%であった。
(着色剤分散液(K1)の調製)
シアン顔料をブラック顔料(キャボット社製:Reagal330 )に変更した以外は着色剤分散液(C1)と同様の方法で着色剤分散液(K1)を調製した。着色剤分散液におけるブラック顔料の体積平均粒径は、0.11μm、着色剤分散液の固形分比率は25%であった。
(着色剤分散液(W1)の調製)
・酸化チタン(石原産業(株)製:A−220):100質量部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンRK):15質量部
・イオン交換水:400質量部
上記成分を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて3時間分散して酸化チタンを分散させてなる着色剤分散液を調製した。レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ着色剤分散液における酸化チタンの体積平均粒径は0.25μm、着色剤分散液の固形分比率は25%であった。
<実施例1:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE1)>
(熱硬化性ポリエステル樹脂(PES1)の調製)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入口、精留塔を備えた反応容器に下記組成の原料を仕込み窒素雰囲気下で撹拌を行いながら240℃に昇温し、重縮合反応を行った。
・テレフタル酸:742質量部(100モル%)
・ネオペンチルグリコール:312質量部(62モル%)
・エチレングリコール:59.4質量部(20モル%)
・グリセリン:90質量部(18モル%)
・ジ−n−ブチル錫オキサイド:0.5質量部
得られた熱硬化性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度55℃、酸価(Av)8mgKOH/g、水酸基価(OHv)70mgKOH/g、重量平均分子量26,000、数平均分子量8,000となった。
(複合粒子分散液(E1)の調製)
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き3リットル反応槽(東京理化器械(株)製:BJ−30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル180質量部とイソプロピルアルコール80質量部との混合溶剤を投入し、これに下記組成物を投入した。
・熱硬化性ポリエステル樹脂(PES1):225質量部
・ウレトジオン構造を有する熱硬化剤(エボニック社製、Vestagon BF1321):75質量部
・テトラエチルアンモニウムカルボキシレート:3質量部
・ベンゾイン:3質量部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F、BASF社):3質量部
次に、投入後、スリーワンモーターを用い150rpmで撹拌を施し、溶解させて油相を得た。この撹拌されている油相に、10質量%アンモニア水溶液の1質量部と5質量%水酸化ナトリウム水溶液の47質量部との混合液を5分間で滴下し、10分間混合した後、更にイオン交換水900質量部を毎分5質量部の速度で滴下して転相させ、乳化液を得た。
得られた乳化液800質量部とイオン交換水700質量部とをナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械(株)製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1,100質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における熱硬化性ポリエステル樹脂及びウレトジオン構造を有する熱硬化剤を含有した複合粒子の体積平均粒径は150nmであった。
その後、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1、有効成分量45質量%)を、分散液中の樹脂分に対して有効成分として2質量%添加混合し、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整した。これをポリエステル樹脂及び硬化剤を含有した複合粒子分散液(E1)とした。
(熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液(E2)の調製)
熱硬化性ポリエステル樹脂(PES1)を300質量部とし、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤(エボニック社製、Vestagon BF1321)、テトラエチルアンモニウムカルボキシレート、ベンゾイン、及び、アクリルオリゴマーを加えなかった以外は、複合粒子分散液(E1)を調製する条件と同様に、熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液(E2)を得た。
(粉体塗料(PCE1)の調製)
−凝集工程−
・複合粒子分散液(E1):325質量部(固形分65質量部)
・着色剤分散液(C1):3質量部(固形分0.75質量部)
・着色剤分散液(W1):150質量部(固形分37.5質量部)
上記成分を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。次いで、1.0%硝酸水溶液を用い、pHを2.5に調整した。これに10%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.50質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌機の回転数を適宜調整しながら、50℃まで昇温し、50℃で15分保持した後、体積平均粒径が5.5mとなったところで、熱硬化性ポリエステル樹脂分散液(E2)100質量部をゆっくりと投入した。
−融合合一工程−
投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0とした。その後、85℃まで昇温し、2時間保持した。光学顕微鏡でほぼ球形化が観察された。
−濾過・洗浄・乾燥工程−
反応終了後、フラスコ内の溶液を冷却し、濾過することにより固形分を得た。次に、この固形分を、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、再度固形分を得た。
次に、この固形分を40℃のイオン交換水3,000質量部中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離して得られた固形分を12時間真空乾燥させた後、固形分100質量部に対して0.5質量部の疎水性シリカ粒子(一次粒径16nm)を外部添加剤として混合して、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE1)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが6.5μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.24、平均円形度が0.98であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
また、粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.1質量%であった。
<実施例2:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE3)>
(熱硬化性ポリエステル樹脂(PES2)の調製)
撹拌機、温度計、窒素ガス導入口、精留塔を備えた反応容器に下記組成の原料を仕込み窒素雰囲気下で撹拌を行いながら240℃に昇温し、重縮合反応を行った。
・テレフタル酸:494質量部(70モル%)
・イソフタル酸:212質量部(30モル%)
・ネオペンチルグリコール:421質量部(88モル%)
・エチレングリコール:28質量部(10モル%)
・トリメチロールエタン:11質量部(2モル%)
・ジ−n−ブチル錫オキサイド:0.5質量部
得られた熱硬化性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度60℃、酸価(Av)7mgKOH/g、水酸基価(OHv)35mgKOH/g、重量平均分子量22,000、数平均分子量7,000となった。
(複合粒子分散液(E3)の調製)
コンデンサー、温度計、水滴下装置、アンカー翼を備えたジャケット付き反応槽(東京理化器械(株)製:BJ−30N)を水循環式恒温槽にて40℃に維持しながら、該反応槽に酢酸エチル180質量部とイソプロピルアルコール80質量部との混合溶剤を投入し、これに下記組成物を投入した。
・熱硬化性ポリエステル樹脂(PES2):250質量部
・ウレトジオン構造を有する熱硬化剤(エボニック社製、Vestagon BF1321:50質量部
・テトラエチルアンモニウムカルボキシレート:3質量部
・ベンゾイン:3質量部
・アクリルオリゴマー(アクロナール4F、BASF社):3質量部
次に、投入後、スリーワンモーターを用い150rpmで撹拌を施し、溶解させて油相を得た。この撹拌されている油相に、10質量%アンモニア水溶液の1質量部と5質量%水酸化ナトリウム水溶液の47質量部との混合液を5分間で滴下し、10分間混合した後、更にイオン交換水900質量部を毎分5質量部の速度で滴下して転相させ、乳化液を得た。
得られた乳化液800質量部とイオン交換水700質量部とをナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレーター(東京理化器械(株)製)にセットした。ナスフラスコを回転させながら、60℃の湯バスで加温し、突沸に注意しつつ7kPaまで減圧し溶剤を除去した。溶剤回収量が1,100質量部になった時点で常圧に戻し、ナスフラスコを水冷して分散液を得た。得られた分散液に溶剤臭は無かった。この分散液における熱硬化性ポリエステル樹脂及び熱硬化剤を含有した複合粒子の体積平均粒径は160nmであった。
その後、アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1、有効成分量45質量%)を、分散液中の樹脂分に対して有効成分として2質量%添加混合し、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%になるように調整した。これをポリエステル樹脂及び硬化剤を含有した複合粒子分散液(E3)とした。
(熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液(E4)の調製)
熱硬化性ポリエステル樹脂(PES2)を300質量部とし、ブロックイソシアネート硬化剤、ベンゾイン、アクリルオリゴマーを加えなかった以外は、複合粒子分散液(E1)を調製する条件と同様に、熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液(E2)を得た。
(粉体塗料(PCE3)の調製)
−凝集工程−
・複合粒子分散液(E3):325質量部(固形分65質量部)
・着色剤分散液(C1):3質量部(固形分0.75質量部)
・着色剤分散液(W1):150質量部(固形分37.5質量部)
上記成分を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した。次いで、1.0%硝酸水溶液を用い、pHを2.5に調整した。これに10%ポリ塩化アルミニウム水溶液0.50質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌機の回転数を適宜調整しながら、40℃まで昇温し、40℃で15分保持した後、体積平均粒径が3.5mとなったところで、熱硬化性ポリエステル樹脂分散液(E4)100質量部をゆっくりと投入した。
−融合合一工程−
投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0とした。その後、85℃まで昇温し、2時間保持した。光学顕微鏡でほぼ球形化が観察された。
−濾過・洗浄・乾燥工程−
反応終了後、フラスコ内の溶液を冷却し、濾過することにより固形分を得た。次に、この固形分を、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、再度固形分を得た。
次に、この固形分を40℃のイオン交換水3,000質量部中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離して得られた固形分を12時間真空乾燥させた後、固形分100質量部に対して0.5質量部の疎水性シリカ(一次粒径16nm)を混合して、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE3)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが4.5μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.23、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
また、粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.02質量%であった。
<実施例3:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PME1)>
実施例1において複合粒子分散液(E1)を306.5質量部とし、着色剤分散液(C1)に代えて着色剤分散液(M1)4.8質量部を使用した以外は、粉体塗料(PCE1)と同様の方法で粉体塗料(PME1)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが6.4μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.23、平均円形度が0.98であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
また、粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.1質量%であった。
<実施例4:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PME2)>
実施例1において複合粒子分散液(E1)を305質量部とし、着色剤分散液(C1)に代えて着色剤分散液(M2)6質量部を使用した以外は、粉体塗料(PCE1)と同様の方法で粉体塗料(PME2)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが6.6μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.22、平均円形度が0.98であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
また、粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.1質量%であった。
<実施例5:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PYE1)>
実施例1において複合粒子分散液(E1)を302.5質量部とし、着色剤分散液(C1)に代えて着色剤分散液(Y1)8質量部を使用した以外は、粉体塗料(PCE1)と同様の方法で粉体塗料(PYE1)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが6.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.24、平均円形度が0.96であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
また、粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.12質量%であった。
<実施例6:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PKE1)>
実施例1において複合粒子分散液(E1)を309質量部、着色剤分散液(C1)に代えて着色剤分散液(K1)2.8質量部を使用した以外は粉体塗料(PCE1)と同様の方法で粉体塗料(PKE1)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが7.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.35、平均円形度が0.98であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
また、粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.09質量%であった。
<実施例7>
実施例2において、熱硬化剤をエボニック社製VESTAGON BF1540(ウレトジオン構造を有する熱硬化剤)に変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE7)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが6.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.30、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.0017質量%であった。
<実施例8>
実施例2において、熱硬化剤をエボニック社製VESTAGON BF1320(ウレトジオン構造を有する熱硬化剤)に変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE8)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが6.3μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.29、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.0016質量%であった。
<実施例9>
実施例2において、熱硬化性ポリエステル樹脂(PES2)を225質量部、熱硬化剤硬化剤を75質量部に変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE9)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが7.1μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.33、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.0016質量%であった。
<実施例10>
実施例2において、熱硬化性ポリエステル樹脂(PES2)を275質量部、熱硬化剤硬化剤を25質量部に変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE10)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが5.8μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.23、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.0016質量%であった。
<実施例11>
実施例2において、触媒をアルミニウムアセチルアセトナートに変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE11)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが7.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.32、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
<実施例12>
実施例2において、熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液(E4)を複合粒子分散液E3に変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCE12)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが6.5μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.25、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.0017質量%であった。
<比較例1:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCEX1)>
実施例1において、複合粒子分散液(E1)を400質量部として、かつ熱硬化性ポリエステル樹脂粒子分散液(E2)100質量部の追加を行わなかった以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCEX1)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが8.6μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.48、平均円形度が0.98であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されておらず、粉体粒子表面に硬化剤と考えられる添加剤の露出が確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.07質量%であった。
<比較例2:ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCEX2)>
実施例2において、熱硬化剤をエボニック社製VESTAGON B1530(ε−カプロラクタムでブロックされたブロックポリイソシアネート化合物、ウレトジオン構造を有しない熱硬化剤)に変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCEX2)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが7.0μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.40、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.0016質量%であった。
<比較例3>
実施例2において、熱硬化剤をエボニック社製VESTANAT B1358(2−ブタノンオキシムでブロックされたブロックポリイソシアネート化合物、ウレトジオン構造を有しない熱硬化剤)に変更した以外は、同様の条件で、ポリエステル樹脂製の粉体塗料(PCEX3)を得た。
この粉体塗料の粉体粒子は、体積平均粒径D50vが8.2μm、体積平均粒度分布指標GSDvが1.48、平均円形度が0.99であった。
粉体塗料(その粉体粒子)をエポキシ樹脂に包埋し後、切削し、粉体粒子の断面像を透過型電子顕微鏡で観察したところ、粉体粒子表面が樹脂被覆部で被覆されていることが確認された。
粉体塗料(その粉体粒子)のアルミニウムイオンの含有量は、0.0017質量%であった。
<評価>
(粉体塗料の塗装膜試料の作製)
静電塗装法により、各例で得られた粉体塗料を1.0mm厚アルミニウム板のテストパネルに塗装後、加熱温度180℃、加熱時間1時間で加熱(焼付け)を行って、厚みが40μmの塗装膜試料を得た。
(塗装時における色の変化の評価)
粉体塗料による静電塗装を実施したときの180℃で加熱した塗装膜と、140℃で加熱した塗装膜との色味を、各々、次のように評価した。X−Rite(X−Rite社製の濃度測定器)を用いて、それぞれの塗膜のL、a、b値の差ΔL、Δa、Δbから、色差ΔE(={(ΔL+(Δa+(Δb1/2を算出した。
ΔEの値が小さいほど、塗装膜形成時の色の変化が少ないことを表す。ΔE0.5以下を良いレベルとした。
(塗装膜の平滑性の評価)
塗装膜試料の表面に対して、表面粗さ測定器(SURFCOM 1400A、(株)東京精密製)を用いて、JIS B0601に基づき、中心線平均粗さ(以下、「Ra」と記す。単位:μm)、及び、ろ波中心線うねり(以下、「RCA」と記す。単位:μm)を測定した。Ra、及び、RCAの数字が小さいほど表面平滑性に優れることを示し、Raが0.05μm以下、RCAが0.1μm以下を良いレベルとした。
各例の詳細、及び、評価結果を表1、表2及び表3にまとめて示す。
表1乃至表3に記載の熱硬化剤は、以下の通りである。
VESTAGON BF1321:ウレトジオン構造を有する熱硬化剤
VESTAGON BF1320:ウレトジオン構造を有する熱硬化剤
VESTAGON BF1540:ウレトジオン構造を有する熱硬化剤
VESTAGON BF1530:ε−カプロラクタムでブロックされたブロックポリイソシアネート化合物
VESTAGON BF1358:2−ブタノンオキシムでブロックされたブロックポリイソシアネート化合物
上記結果から、本実施例の粉体塗料は、比較例の粉体塗料に比べ、塗装膜形成時における色の変化が少なく、平滑性に優れる塗装膜が得られることがわかる。

Claims (5)

  1. 芯部と前記芯部の表面を被覆する樹脂被覆部とを有する粉体粒子を含み、
    前記芯部が、熱硬化性樹脂、及び、ウレトジオン構造を有する熱硬化剤を含み、
    前記樹脂被覆部が、ガラス転移温度が50℃以上である熱硬化性樹脂を含む
    粉体塗料。
  2. 前記芯部が、金属アセチルアセトナート、及び、第四級アンモニウム塩よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物を更に含む請求項1に記載の粉体塗料。
  3. 前記金属アセチルアセトナート及び前記第四級アンモニウム塩の総含有量が、前記粉体粒子の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下である請求項2に記載の粉体塗料。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粉体塗料を塗装してなる塗装品。
  5. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粉体塗料により塗装する塗装品の製造方法。
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