[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本発明の一実施形態は、光提供部と対象部との間にレンズを配置することにより、光提供部から提供される光を対象部に光結合させる光結合方法であって、レンズは、レンズ部と支持部とを有し、支持部は、レンズが設置される第1基板の主面に対して設置可能な第1設置面及び第1設置面と対向あるいは直角の位置関係に配置された第2設置面を含み、第1設置面からレンズ部の光軸までの第1距離は、第2設置面からレンズ部の光軸までの第2距離と異なり、第1設置面を第1基板の主面に対面させてレンズを載置した後に、光提供部と対象部の間の第1光結合強度を得る工程と、第2設置面を第1基板の主面に対面させてレンズを載置した後に、光提供部と対象部の間の第2光結合強度を得る工程と、第1光結合強度と第2光結合強度とに基づいて、第1設置面と第2設置面の何れかを選択する工程と、選択された設置面に第1基板を固定する工程と、含む。
上記工程を有する光結合方法によれば、レンズを第1基板の主面に取り付ける際に、第1設置面を主面に対面させたときの第1光結合強度と、第2設置面を主面に対面させたときの第2光結合強度と、を得る。第1設置面からレンズ部の光軸までの第1距離は、第2設置面からレンズ部の光軸までの第2距離とは異なっているので、第1光結合強度及び第2光結合強度は互いに異なり得る。従って、位置関係の調整における選択肢が増すので、所望の光結合強度を得ることできる。
また、第1設置面と第2設置面の何れかを選択する工程は、第1光結合強度と第2光結合強度のうち、光結合強度の大きい方を選択する工程であってもよい。この方法によれば、光結合強度が最も大きくなるようにレンズが第1基板に固定される。従って、光結合強度を向上させることができる。
また、レンズを複数備え、複数のレンズについて、第1光結合強度を得る工程と第2光結合強度を得る工程とを実施し、複数のレンズにおいて、第1設置面と第2設置面の何れかを選択する工程は、レンズの光結合強度の差が最も小さい関係で設置面の選択がなされてもよい。この方法によれば、光結合強度のばらつきを抑制することができる。
対象部は、局発光と信号光とを干渉させて信号を得る多モード干渉部であり、レンズは、多モード干渉部に入射する局発光の光路上、または、多モード干渉部に入射する信号光の光路上に設置されてもよい。この方法によれば、所望の光結合強度をもって多モード干渉部に対して局発光と信号光とを光結合させることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光結合方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は実施形態に係る光結合方法によって製造されるコヒーレントレシーバを概略的に示した平面図である。図2は、図1に示すコヒーレントレシーバ1の内部を示す斜視図である。図1及び図2に示されるように、コヒーレントレシーバ1は、局発光(Local Beam:Lo光)と信号光(Signal Beam:Sig光)とを干渉させ、位相変調されたSig光に含まれる情報を復調する装置である。復調された情報は電気信号に変換されてコヒーレントレシーバ外に出力される。コヒーレントレシーバ1は、Lo光、Sig光それぞれに対する光学系と、二つの多モード干渉器(対象部、多モード干渉部:Multi-Mode Interference:MMI40,50)を含む。そして、これら光学系とMMI40,50を搭載する筐体2を有する。光学系とMMI40,50はキャリア3(第2基板)及びベース4(第1基板)を介して筐体2の底面2E(図6参照)上に搭載されている。また、キャリア3上には復調された情報を処理する回路を搭載する配線基板46,56が搭載されている。キャリア3は、例えば銅タングステン(CuW)等の金属製であり、一方、ベース4はアルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁材料で構成される。二つのMMI40,50は半導体MMIであり、例えばInP製である。MMI40,50はそれぞれ、光入力部41,51、及び光入力部42,52を有する。光入力部41,52に入力したLo光と光入力部42,52に入力したSig光を干渉させて位相情報を復調する。なお、二つのMMI40,50は独立して設けられてもよく、あるいは一体に集積化されていてもよい。二つのMMI40,50が独立して設けられた場合には、MMI40,50の一個あたりの外形寸法を小さくすることができる。従って、MMI40,50が傾いてキャリア3に設置されたとき、一辺あたりの長さが短くなっているので、高さ方向のずれを低減することができる。また、二つのMMI40,50が一体に集積化された場合には、1つの工程でMMIを設置することができる。
筐体2は、前壁2Aを有する。以下の説明において、前壁2A側を前方、反対側を後方と呼ぶ。但し、これら前方/後方はあくまでも説明のためだけであり、本発明の範囲を制限するものではない。前壁2Aには、Lo光のポート5(光提供部)及びSig光のポート6(光提供部)が、例えばレーザ溶接により固定されている。ポート5には偏波保持ファイバ35を介してLo光L0が提供され、ポート6には単一モードファイバ36を介してSig光N0が提供される。ポート5,6は、それぞれコリメートレンズを有しており、偏波保持ファイバ35、単一モードファイバ36から出射されたLo光L0,Sig光N0(それぞれのファイバから出射された状態では発散光)をそれぞれコリメート光に変更して筐体2内に導く。
Lo光用光学系は、Lo光のポート5から提供されたLo光をMMI40,50のLo光の光入力部41,51に導く。具体的には、Lo光用光学系は、偏光子(polarizer)11、光分波素子(Beam Splitter:BS12)、反射器13、二つのレンズ群14,15、スキュー調整素子16、及び光減衰器(光ATT71)を含む。なお、スキュー調整素子16及び光ATT71は、必要でなければ省かれてもよい。
レンズ群14は、BS12とMMI40との間の光路上に配置され、BS12によって分岐された一方のLo光L1を、MMI40のLo光の光入力部41に集光する。レンズ群15は、反射器13とMMI50との間の光路上に配置され、BS12によって分岐され反射器13において反射した他方のLo光L2を、MMI50のLo光の光入力部51に集光する。レンズ群14,15は、それぞれMMI40,50に相対的に近接配置された第1レンズ14b,15b、及び相対的にMMI40,50から離間して配置された第2レンズ14a,15aを有する。このように、第1レンズ14b,15bと第2レンズ14a,15aとを組み合わせてレンズとすることによって、MMI40,50の小さなLo光の光入力部41,51に対するLo光L1,L2の光結合強度を高めることができる。
Sig光用光学系は、偏波依存光分岐素子である偏光ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter:PBS21)、反射器22、二つのレンズ群23,24、半波長板25、スキュー調整素子26、及び光減衰器(光ATT81)を含む。なお、スキュー調整素子26及び光ATT81は、必要でなければ省かれてもよい。
次にコヒーレントレシーバ1の製造方法について説明する。
図3に示されるように、まず、筐体2の外部において、ベース4をキャリア3上に搭載し、互いに固着させる。キャリア3は、例えば銅タングステン(CuW)からなる矩形の板状部材である。ベース4は、例えばアルミナ(Al2O3)からなる矩形の板状部材である。ベース4とキャリア3の固着は、例えばAuSn共晶半田を用いることができる。キャリア3上にはベース4の搭載領域とMMI40,50の搭載領域とを区画する溝が予め形成されている。この前縁にベース4の後端を目視で合わせることにより、筐体2の前後方向におけるキャリア3とベース4との相対位置を決定する。なお、これに代えて、キャリア3の前縁とベース4の前縁を合致させるアライメントを行ってもよい。
なお、後の工程においてキャリア3を筐体2内に配置する際には、キャリア3の幅が筐体2の内壁の間隔に略合致しているため、キャリア3の側面に形成された一対の括れを把持するとよい。そして、ベース4の筐体2の左右方向についてのアライメントは、キャリア3に形成された一対の括れを用いてもよい。すなわち、括れによりキャリア3の中央部分の間隔が狭くなっているので、その狭い部分の両端位置とベース4の両端位置とを一致させるとよい。
次に、MMI40をMMIキャリア(不図示)上に搭載し、互いに固着(ダイボンド)する。同様に、MMI50を別のMMIキャリア(不図示)上に搭載し、互いに固着する。MMIキャリアは、直方体状の部材であり、例えば窒化アルミニウム(AlN)、あるいはアルミナ(Al2O3)等のセラミックからなる。MMI40,50とMMIキャリアとの固着には、例えば金錫(AuSn)系のAuSn共晶半田が用いられる。この固着には、通常の半導体デバイスを絶縁基板上にマウントする公知の方法と同様の技術を用いることができる。その後、MMI40,50をそれぞれ搭載した二つのMMIキャリアを、キャリア3上であってベース4の後端側に位置する領域に固定する。キャリア3上には予めMMIキャリアの固定領域を囲むように溝が形成されており、MMIキャリアは当該溝を基準として目視アライメントにより配置される。
なお、MMIキャリア上には、MMIキャリアの前方側と後方側とを分離する溝が形成されている。MMIキャリアの前方側は、MMI40,50に内蔵される光導波路部分44,54(図1参照)に相当する。MMIキャリアの後方側は、MMI40,50に内蔵されるフォトダイオード部分(内蔵フォトダイオード45,55:図1参照)に相当する。MMI40,50の裏面電極もまた前方側と後方側とに分離されており、その結果、内蔵フォトダイオード45,55のリーク電流の減少が実現される。
上述したMMIキャリアとMMI40,50との固着と並行して、二つの配線基板46,56上に複数のダイキャパシタ(平行平板コンデンサ)を実装する。配線基板46,56は、例えば窒化アルミニウム(AlN)からなる。複数のダイキャパシタの実装には、例えばAuSnペレットを使用でき、また、公知のソルダリング工程を採用してもよい。その後、複数のダイキャパシタがそれぞれ実装された二つの配線基板46,56のうち一方を、MMI40を囲んでキャリア3に固定し、他方の配線基板56を、MMI50を囲んで配置してキャリア3に固定する。配線基板46,56のキャリア3上への搭載は、例えばAuSn等の共晶はんだにて、その後、キャリア3を筐体2内に搭載する。
続いて、キャリア3を筐体2の底面2E上に搭載する(工程S1:図19参照)。このとき、例えば、筐体2の前壁2Aを構成する前壁の内面にキャリア3の前端を突き当て、キャリア3と筐体2とのアライメントを行った後、所定寸法だけキャリア3を当該側壁から離し、その状態でキャリア3を筐体2の底面2Eに配置するとよい。ここで、筐体2の各側壁の内面は二段に構成されており、上段は金属製であり、下段は複数の端子を互いに絶縁するためにセラミック製のフィードスルー61である。下段の内寸(壁間距離)はキャリア3の幅とほぼ一致しているが、上段の内寸はキャリア3の幅よりも広い。従って、上段の側壁の内面にキャリア3を突き当てることができ、これにより、筐体2とキャリア3(及びすでにキャリア3上に搭載されている各部品)とのアライメントを±0.5°以内で実現することが可能である。底面2Eへのキャリア3の固定は、例えば半田を用いて行われる。
また、この工程では、キャリア3とともにVOAキャリア30を筐体2の底面2E上に搭載する。このとき、例えば、筐体2の前壁2Aを構成する側壁の内面にVOAキャリア30の前端を突き当て、VOAキャリア30と筐体2とのアライメントを行った後、所定寸法だけVOAキャリア30を当該側壁から離し、その状態でVOAキャリア30を筐体2の底面2Eに配置するとよい。これにより、前述のキャリア3の前端と、VOAキャリア30の後端とが互いに平行になる。底面2EへのVOAキャリア30の固定は、例えば半田を用いて行われる。
キャリア3を底面2Eに固定したのち、集積回路43,53を配線基板46,56上に実装する。集積回路43,53の実装は、例えば銀ペースト等の導電性樹脂を使用して公知の実装方法により行う。集積回路43,53の搭載後、筐体2全体を昇温(〜180℃)することにより、導電性樹脂に含まれる溶剤を気化する。その後、集積回路43,53の上面の電極パッドと、筐体2の後方側の端子65をワイヤリングにより電気的に接続する。なお、このワイヤリングにより、次工程以降における各光部品のアクティブ調芯、すなわちMMI40,50に試験光を入力し、MMI40,50に内蔵されているフォトダイオード(45,55:不図示)の出力信号強度が最大となる位置に各光部品を配置することが可能となる。
続いて、各光部品を筐体2内に搭載する。まず、光学調芯のためのLo光を生成する。図4(a)に示されるように、互いに垂直な光反射面104a及び底面104bを有する標準反射器104を用意する。光反射面104aは筐体2の前壁2Aを模擬し、底面104bは筐体2の底面を模擬する。標準反射器104は、例えば直方体状のガラスブロックにより構成される。そして、この標準反射器104を、調芯装置の支持台105上に固定されたステージ103上に設置する。このとき、底面104bとステージ103を密に接触させる。
標準反射器104の光軸方向にオートコリメータ125の光軸方向を合わせる。具体的には、オートコリメータ125から可視レーザ光Lを出力し、可視レーザ光Lを光反射面104aに当てる。そして、光反射面104aが反射した可視レーザ光Lの光強度を、オートコリメータ125側で検出する。反射前の可視レーザ光Lと反射後の可視レーザ光Lとが互いに重なるとき、検出される光強度は最大となる。このことを利用して、光反射面104aの法線方向、すなわち標準反射器104の光軸方向にオートコリメータ125の光軸方向を合わせる。その後、標準反射器104をステージ103から取り外し、MMI40,50、配線基板46,56及びVOAキャリア30を搭載した筐体2に置き換える(図4(b))。このとき、筐体2の底面をステージ103に密に接触させる。オートコリメータ125の光軸は筐体2の上方空間を通過するので、可視レーザ光Lは筐体2の上方を通過し、筐体2内には導入されない。
続いて、図5に示されるように、モニタフォトダイオード33をVOAキャリア30上に搭載する。また、PBS21、スキュー調整素子16,26、半波長板25、偏光子11、及びBS12を筐体2内の所定の搭載位置にそれぞれ搭載する。これらの光部品は、調芯作業を実施しない光部品であって、その光入射面の方向のみが調整されたのち固定される。具体的には、この工程では、すでにその調整が終了しているオートコリメータ125の光軸を利用して光部品の角度(光入射面の角度)を調整する。これらの光部品の一側面をオートコリメータ125の可視レーザ光Lに対する反射面とし、反射前の可視レーザ光Lと反射後の可視レーザ光Lとを互いに重ね合わせ、これらの光部品の角度(光軸方向)を調整する。なお、この作業はオートコリメータ125の光軸上すなわち筐体2の上方空間において行われる。そして、その向きを保持したまま(あるいは必要に応じて所定角度だけ回転させ)、各搭載位置に設けられた接着樹脂上にこれらの光部品を移動させ、該接着樹脂を硬化させてこれらを固定する。
PBS21、スキュー調整素子16,26、及び偏光子11については、筐体2に搭載された状態において光入射面が前壁2A側を向くので、該光入射面の法線方向とオートコリメータ125の光軸とを一致させて光軸方向を調整し、その向きを維持しつつ搭載するとよい。また、半波長板25及びモニタフォトダイオード33については、筐体2に搭載された状態において光入射面が側方を向くので、該光入射面の法線方向とオートコリメータ125の光軸とを一致させそれらの光軸方向を調整したのち、底面2Eの法線周りに90°回転してから搭載する。なお、モニタフォトダイオード33については、更に所定の端子との間のワイヤボンディングにより、該所定の端子に対して電気的接続を行う。BS12については、筐体2に搭載された状態において光入射面が側方を向くが、光出射面が後方を向くので、光出射面若しくはこの光出射面とは反対側の面の法線方向とオートコリメータ125の光軸とを一致させ光軸方向を調整したのち、その向きを維持しながら筐体2内に搭載するとよい。
続いて、上述の各光部品とは別の光部品、すなわちMMI40,50に対する光結合トレランスが上記の各光部品よりも小さい故に調芯を必要とするSig光のレンズ27;反射器13,22;及び各レンズ群14,15,23,24;を筐体2内に搭載する。その準備として、模擬コネクタ123a,123bを筐体2の前壁2Aに配置する。模擬コネクタ123a,123bは、Sig光のポート6及びLo光のポート5をそれぞれ模擬し、模擬コネクタ123a,123bからは、当該別の光部品の調芯に用いられる試験光が出射される。以下、試験光を準備する工程の詳細について説明する。
図6は、模擬コネクタ123a(図8参照)を保持するためのマニピュレータ100の一部を示す斜視図である。マニピュレータ100は、位置及び角度(具体的には、互いに直交する3軸(X、Y、Z軸の方向の位置、及び模擬コネクタ123aの光軸方向に垂直な2軸周りの角度)を自在に変更可能なアーム101と、アーム101の先端に設けられたヘッド102を有する。模擬コネクタ123aは、ヘッド102上に保持されており、Sig光のポート6の取り付け予定位置に配置される。なお、模擬コネクタ123bもまた、別のマニピュレータ100によって模擬コネクタ123aと同様に保持され、Lo光のポート5の取り付け予定位置に配置される。
図7(a)は、試験光を生成する構成を示すブロック図である。図7(a)に示されるように、この構成では、バイアス電源111が出力するバイアス電圧を光源112(光提供部、例えば半導体レーザ)に与えて、試験光(CW光)を発生させる。この試験光は偏光制御素子113に導入され、その偏光面が制御される。これにより、試験光は、Sig光が有する二つの偏光成分を模擬する偏光成分を有する。その後、試験光は光カプラ114を介してコネクタ116に達する。コネクタ116は、コネクタ117,118の何れか一方と選択的に接続される。コネクタ117には模擬コネクタ123aが光結合しており、他方のコネクタ118にはパワーメータ119が光結合されている。また、光カプラ114にはパワーメータ115が接続されている。図7(a)は二つのパワーメータ115,119を備える系を示しているが、一つのパワーメータを、それぞれのパワーメータ115,119で併用してもよい。また、模擬コネクタ123bに対しても、上記と同様の構成が用意される。
まず、コネクタ116とコネクタ118とを接続する。そして、光源112から出力される試験光の強度をパワーメータ119により検出し、バイアス電圧を調整することにより試験光の強度、すなわち、筐体2に対する入射光強度を所定の値に設定する。次に、筐体2をステージ103から再び取り外し、標準反射器104に置き換える。そして、コネクタ116とコネクタ117を接続し、模擬コネクタ123a,123bを、標準反射器104の光反射面104aと対向させる。この状態で光源112から試験光が出力されると、この試験光は模擬コネクタ123a,123bから出射されたのちに光反射面104aにて反射し、再び模擬コネクタ123a,123bに入射する。この試験光の強度は、光カプラ114を経由してパワーメータ115において検出される。模擬コネクタ123a,123bの光軸方向を調整してその光検出強度を最大とすることで、標準反射器104の光軸方向に模擬コネクタ123a(もしくは模擬コネクタ123b)の光軸方向を合わせる。その後、図7(b)に示されるように、標準反射器104をステージ103から取り外し、筐体2に置き換える。
続いて、模擬コネクタ123aから筐体2内に入射する試験光の偏光面を調整する。そのために、PBS及び二つのモニタフォトダイオードを有する試験治具を、筐体2内部で模擬コネクタ123aの後段(例えばVOA31の搭載位置)に配置する。この試験治具は、例えばPBSの二つの光出射端それぞれにモニタフォトダイオードを貼り付けられた構成が想定される。あるいは、この試験治具は、PBSの二つの光出射端それぞれとモニタフォトダイオードとを互いに光結合させ、両者を共通の基板上に搭載したものであってもよい。そして、模擬コネクタ123aを介して試験光を筐体2内に提供し、偏光ビームスプリッタによって分岐した二つの偏光成分の強度を各モニタフォトダイオードにおいて検知し、二つの偏光成分の強度が互いに略等しくなるべく、偏光制御素子113により試験光の偏光面を調整する。なお、この工程では、筐体2に代えて、偏光ビームスプリッタ及び二つのモニタフォトダイオードを搭載する模擬モジュールを用意し、これをステージ103上に搭載して偏光面の調整を行ってもよい。
なお、上述の偏光調整において、試験治具が有する二つのモニタフォトダイオードの出力信号を、筐体2の何れかの端子65を介して取り出してもよい。また、試験治具が、二つのモニタフォトダイオードの出力信号を取り出すための端子を備えている場合には、筐体2をステージ103上に配置する前に、上記の試験光の偏光調整を行ってもよい。
この工程では、更に、模擬コネクタ123a,123bの調芯を行う。まず、模擬コネクタ123aから筐体2内に入射した試験光の強度を、MMI40に内蔵されたフォトダイオードにより検出する。そして、検出される試験光の強度が大きくなる方向に模擬コネクタ123aを筐体2の前壁2A上で移動させ、模擬コネクタ123aの光軸に垂直な面内での調芯を行う。同様に、模擬コネクタ123bから筐体2内に入射した試験光の強度を、他方のMMI50に内蔵されたフォトダイオードで検出し、その検出光の強度が大きくなる方向に模擬コネクタ123bを移動する。これにより、模擬コネクタ123bの光軸に垂直な面内での調芯を行う。なお、試験光のフィールド径は300μm程度もあり、一方、MMI40,50の光入力端は小さく、例えば幅数μm、厚さ1μm以下といった程度である。従って、MMI40,50に入力される試験光の強度は微弱となるが、試験光の光軸を決定する程度の検出信号を得ることは可能である。
模擬コネクタ123a,123bの光軸方向の位置に関しては、模擬コネクタ123a,123bの端面を筐体2の前壁2Aに当接させることにより決定することができる。
続いて、調芯を要する各光部品を模擬コネクタ123a若しくは模擬コネクタ123bとMMI40,50との間の光路上に配置し、MMI40,50に内蔵されるフォトダイオード(もしくはモニタフォトダイオード33)で検出される試験光の強度を参照し、これらの光部品の調芯を行う。更に、これらの光部品を筐体2内に固定する。なお、これらの光部品の調芯及び固定の順序は以下の説明に限られるものではなく、任意の順序で行うことができる。
この工程では、図7(b)に示されるように、VOAバイアス電源120、電圧モニタ121,122を筐体2と接続する。VOAバイアス電源120は、後述するVOA31をVOAキャリア30上に設置する際に、VOA31にバイアス電圧を与える。電圧モニタ121,122は、配線基板46,56からの電圧信号をそれぞれモニタする。
まず、BS32(図1、図2を参照)の調芯及び固定を行う。すなわち、BS32の前面を反射面とし、筐体2の上方空間を通過しているオートコリメータ125の可視レーザ光Lを用いて、BS32の角度(光軸方向)を調整する。そして、BS32の向きを維持したまま、VOAキャリア30上にBS32を移動する。そして、VOAキャリア30上で、BS12をSig光の光軸に沿って移動させ、モニタフォトダイオード33の光結合強度が最大となるBS12の搭載位置を決定するその後、接着樹脂を用いてBS12をVOAキャリア30に固定する。
次に、図8に示されるように、反射器13,22の調芯及び固定を行う。まず、これらの反射器13,22の前面を反射面とし、筐体2の上方空間を通過しているオートコリメータ125の可視レーザ光を用いて、反射器13,22の角度(光軸方向)を調整する。そして、反射器13,22の角度を維持しつつ、反射器13,22が反射した試験光をMMI40,50の内蔵フォトダイオードにより検出する。そして、反射器13,22を二つの模擬コネクタ123a,123bの光軸に垂直な方向に僅かに移動し、内蔵フォトダイオードの検出強度が最大となる位置を決定する。留意すべきは、反射器13,22の調芯に際しては、オートコリメータ125が出射する可視レーザ光により決定された角度は、以後の調芯作業で維持される点にある。MMI40,50の筐体2に対する搭載角度、及び、ポート5,6の光軸がすでに決定されているため、光軸を90°変換する反射器13,22についてその搭載角度を変更することは、これらすでに実施された調芯状態を狂わせてしまうからである。
続いて、4つのレンズ群14,15,23,24の調芯、及び固定を行う。図9に示されるように、第1レンズ14b,15b,23b,24b(すなわちMMI40,50寄りのレンズ)の調芯及び固定を行う(工程S2:図19参照)。続いて、図10に示されるように、第2レンズ14a,15a,23a,24aの調芯及び固定を行う(工程S3:図19参照)。なお、第1レンズ14b,15b,23b,24bの調芯の方法については、後に詳細に説明する。また、第2レンズ14a,15a,23a,24aの調芯及び固定は、第1レンズ14b,15b,23b,24bの調芯及び固定の方法と同様であるので詳細な説明は省略する。
続いて、図11に示されるように、Sig光のレンズ27の調芯及び固定を行う。Sig光のポート6にはレンズが内蔵されており、この内蔵レンズの焦点とレンズ27の焦点とを一致させ、レンズ27の光軸方向を決定する。そして、内蔵レンズとレンズ27の間に形成されるビームウェストの位置にVOA31を配置することにより、VOA31の限られた面積のシャッタにSig光を通過させることができ、VOA31の消光比を大きくすることができる。以上の理由により、レンズ27の調芯には、模擬コネクタ123bに代えて、Sig光のポート6に内蔵されているレンズと同じ焦点距離を有するレンズを内蔵する別の模擬コネクタ123Bを用いるとよい。従って、本工程では、模擬コネクタ123bを模擬コネクタ123Bに置き換える。
具体的には、筐体2に代えて標準反射器104をステージ103上に再び設置し、コネクタ116(図7(a)参照)を模擬コネクタ123bから模擬コネクタ123Bに付け替える。そして、模擬コネクタ123Bを、マニピュレータ100(図6参照)を用いてSig光のポート6の取り付け予定位置に配置し、標準反射器104の光反射面104aと対向させる。この状態で模擬コネクタ123Bから試験光を出力し、模擬コネクタ123Bの光軸位置を調整してパワーメータ115により検出される光強度を最大とし、標準反射器104の光軸方向に模擬コネクタ123Bの光軸方向を合わせる。次に、模擬コネクタ123Bから筐体2内に入射する試験光の偏光面を、前述した試験治具を用いて調整する。すなわち、模擬コネクタ123Bを介して試験光を筐体2内に提供し、試験治具のPBSによって分岐した二つの偏光成分の強度を各モニタフォトダイオードにおいて検知し、これらの強度が互いに略等しくなるよう、偏光制御素子113から提供される試験光の偏光面を調整する。更に、模擬コネクタ123Bから筐体2内に入射した試験光の強度をMMI50に内蔵されたフォトダイオード55により検出し、その光結合強度が大きくなる方向に模擬コネクタ123Bを移動させることにより、模擬コネクタ123Bの光軸に垂直な面内での調芯を行う。なお、模擬コネクタ123Bの光軸方向の位置に関しては、模擬コネクタ123Bの端面を筐体2の前壁2Aに当接させることにより決定することができる。
次に、レンズ27を搭載位置に移動し、模擬コネクタ123Bが提供する試験光をレンズ27に入射し、通過した試験光の強度をMMI50に内蔵したフォトダイオード55により検出する。そして、レンズ27の位置を僅かに変化させ、内蔵フォトダイオード55の光結合強度が最大となる位置(前後方向、左右方向、及び上下方向)を決定する。決定後、接着樹脂を用いてレンズ27を固定する。
続いて、図12に示されるように、VOA31をVOAキャリア30上に搭載する。この工程では、VOA31をマニピュレータ100Aにより把持し、VOA31を試験光の光路上に配置する。マニピュレータ100Aは、位置及び角度(具体的には、互いに直交する3軸方向の位置、及びVOA31の光軸方向に垂直な2軸まわりの角度)を自在に変更可能な2本のアーム101Aと、これらのアーム101Aの先端に設けられたヘッド102Aとを有する。VOA31は、ヘッド102Aにより挟まれ、保持される。このとき、一方のヘッド102AはVOA31の一方の電極に電気的に接触している。また、他方のヘッド102AはVOA31の他方の電極に電気的に接触している。そして、VOAバイアス電源120(図7(a)参照)からアーム101A及び102Aを介して、VOA31にバイアス電圧を印加する。VOAキャリア30上に予め紫外線硬化樹脂を所定厚さ(例えば100μm以上)塗布しておき、VOA31をVOAキャリア30の表面から所定距離(例えば100μm)だけ離れた状態でVOA31を保持する。そして、VOAバイアス電源120から提供されるバイアスを、0V〜5Vの間で繰り返し(例えば1秒程度の周期)VOA31に印加する。同時に、筐体2の底面2Eに平行で且つ光軸に垂直な方向にVOA31を移動させ、VOA31による減衰後の試験光の二つの偏光成分の強度を、MMI40,50の内蔵フォトダイオードにより検出する。
その後、減衰後の偏光成分の減衰度の差が許容範囲内に収まる位置にてVOA31を固定する。このとき、MMI40,50の内蔵フォトダイオードの出力差を、試験光の偏光成分の減衰度の差と見なしてもよい。なお、VOA31は、模擬コネクタ123B内のレンズとレンズ27とを結ぶ光軸に対して所定角度(例えば7°)傾けて搭載される。反射光をSig光のポート6に回帰させないためである。
図13は、VOA31の印加バイアス電圧に対する減衰特性の一例を示すグラフである。グラフG11,G22は、各偏光成分(グラフG11:X偏波、グラフG12:Y偏波)の減衰度を示す。また、グラフG13は、偏波成分の減衰度の差を示す。印加バイアス電圧が0Vのとき、VOA31は全開状態となる。図13に示されるように、バイアス電圧が大きくなるほど減衰度が大きくなるが、同じバイアス電圧であっても各偏波成分の減衰度が僅かに異なる。そして、それらの減衰度の差はバイアス電圧が大きくなるほど拡大する傾向にある。本実施形態では、VOA31の光軸方向、光軸と直交し、底面2Eと平行な方向、及び光軸と直交し、底面2Eと垂直な方向の3方向について調芯することにより、二つの偏波成分の減衰度の差を許容範囲内に収める。一例では、バイアス電圧が4.5Vのときに各偏波成分の減衰度が12dB以上となり、且つ、VOA31を調芯し、二つの偏波成分の減衰度の差をバイアス電圧が0V〜5Vの範囲で±0.5dB以内に収めることができる。
続いて図14に示されるように、二つの光ATT71,81をそれぞれの搭載領域70,80に搭載する。具体的には、これまでの工程により、コヒーレントレシーバ1では、Lo光についてBS21で分岐した後、それぞれの分岐されたLo光L1,L2をMMI40,50に内蔵されているフォトダイオード45,55によってMMI40,50に対する光結合強度を知ることができる状態にある。Lo光L0について、BS12で分岐された二つのLo光L1,L2はそれぞれ異なる光路R1,R2を介してMMI40,50に光結合する。例えば、光路R1,R2上に搭載された光部品の光透過率はMMIに対する調芯状態により、BS12の分岐比が1:1に設定されていると仮定する。この場合であっても、MMI40,50に対する光結合強度は異なる。この差が大きい場合には、MMI40,50によるSig光に含まれる位相情報の抽出精度が低下する。
同様にSig光についても、PBS21で分岐後に異なる光路R3,R4を経てMMI40,50に至る。PBS21の偏波依存分岐比を正確に1:1に設定することは難しく、また、それぞれの光路R3,R4に介在する光部品も等価ではなく、MMI40,50に対する光結合強度も光路R3,R4について一様にはなり得ない。コヒーレントレシーバ1ではLo光、Sig光についてMMI40,50に対する光結合強度の差を補償すべく、Lo光L1について光路R1上のスキュー調整素子16とBS12との間、Sig光N1について光路R3上のスキュー調整素子26とPBS21との間に、それぞれ光ATT71、81(光減衰器)を介在させることに特徴を有する。具体的な搭載手順としては、BS12、PBS21と同様に、筐体2の上方においてオートコリメータ125からの可視レーザ光LDにより、光ATT71,81の角度を決定する。その後、当該角度を維持したまま、それぞれ所定の搭載領域70,80上に載置し、固定用の樹脂を硬化させて光ATT71,81を固定する。
続いて、図15に示されるように、筐体2を塞ぐリッド2Cをシームシールにより取り付け、筐体2の内部を気密封止する。そして、図16に示されるように、模擬コネクタ123a,123bを本来のSig光のポート6及びLo光のポート5に置き換え、Sig光のポート6及びLo光のポート5の調芯及び固定を行う。具体的には、Sig光のポート6から模擬Sig光を導入し、該Sig光の強度をMMI40の内蔵フォトダイオードにより検出する。そして、検出されるSig光の強度を参照し、Sig光のポート6の位置を変化させ、内蔵フォトダイオードでの光結合強度が最大となる位置を決定する。Lo光のポート5についても同様に、実際にLo光を導入し、該Lo光の強度をMMI40,50の内蔵フォトダイオード45,55により検出する。検出されるLo光の強度を参照しつつLo光のポート5の位置を変化させ、内蔵フォトダイオード45,55での光結合強度が最大となる位置を決定する。決定後、Sig光のポート6及びLo光のポート5を筐体2に固定する。固定はYAG溶接を採用することができる。
次に、第1レンズ14b,15b,23b,24bの構成と、調芯及び固定の方法と、について詳細に説明する。第1レンズ14b,15b,23b,24bは、互いに同様の構成を有すると共に、調芯及び固定の方法も同様の手順に従って行われる。そこで、第1レンズ14bの構成とその調芯の方法について詳細に説明し、第1レンズ15b、23b、24bについては詳細な説明を省略する。
図17(a)は、第1レンズ14bを側面視した図である。図17(b)は、第1レンズ14bを正面視した図である。図17(a)及び図17(b)に示されるように、第1レンズ14bは、支持部91とレンズ部92とを有し、これら支持部91とレンズ部92とは一体に成形される。第1レンズ14bは、sig光及びLo光に対して透明な樹脂材料あるいはガラス材料からなる。
支持部91は、ベース4に対するレンズ部92の位置を保持する矩形平板状の部材である。支持部91は、レンズ部92が設けられる一対の光通過面93a,93bと、光通過面93a,93bを連結する第1設置面94a、第2設置面94b、第3設置面94c及び第4設置面94dを有する。すなわち、第1〜第4設置面94a〜94dは、支持部91の側面である。第1〜第4設置面94a〜94dは、第1レンズ14bがベース4に設置されたときに、ベース4に対して対面する面である。
第1レンズ14bのレンズ部92は、MMI40の光入力部41に集光スポットPを形成する。レンズ部92は、第1レンズ部92aと第2レンズ部92bとを有する。第1レンズ部92aは、支持部91の一方の光通過面93aに設けられ、第2レンズ部92bは、支持部91の他方の光通過面93bに設けられる。本実施形態のレンズ部92では、第1レンズ部92aの第1光軸A1aと第2レンズ部92bの第2光軸A1bとは、互いに平行であり、且つ、同一の仮想線上に配置される。従って、第1レンズ14bは、第1光軸A1aと第2光軸A1bとを含む一つの光軸A1を有する。なお、第1光軸A1aと第2光軸A1bとは、一方の光軸に対して他方の光軸が傾いていてもよい。また、第1光軸A1aと第2光軸A1bとは、互いに平行であるが、光軸A1の方向と直交する方向にずれていてもよい。
レンズ部92は、支持部91の物理的な中央(重心)からずれた位置に設けられる。従って、第1〜第4設置面94a〜94dから光軸A1までの距離D1〜D4は、互いに相違する。具体的には、第1設置面94aに対して光軸A1は、距離D1だけ離間する。第2設置面94bに対して光軸A1は、距離D2だけ離間する。第3設置面94cに対して光軸A1は、距離D3だけ離間する。第4設置面94dに対して光軸A1は、距離D4だけ離間する。距離D1〜D4は、互いに相違する。なお、距離D1〜D4のうち、2つの距離(例えば距離D3,D4)が同じ大きさであってもよい。また、距離D1〜D4のうち、3つの距離(例えば距離D2,D3,D4)が同じ大きさであってもよい。なお、距離D1〜D4の互いのずれ量は、第1レンズ14bの設計における許容寸法よりも大きい。すなわち、ずれ量とは、第1レンズ14bの製造時に生じ得る製造誤差によるずれよりも大きいものを意味する。
図18(a)は、第1設置面94aがベース4のレンズ配置面4a(主面)に対面するように、第1レンズ14bをベース4に設置した場合を示す。図18(a)に示されるように、第1設置面94aを標準の設置面としたとき、第1レンズ14bの光軸A1は、ベース4を基準として標準高さH1に位置する。この標準高さH1は、距離D1(図17(b)参照)に起因する。具体的には、標準高さH1は、距離D1と同一であるか、あるいは、距離D1にベース4と第1設置面94aとの間に設けられる接着部96の厚みを合計した長さである。図18(b)は、第2設置面94bがベース4のレンズ配置面4aに対面するように、第1レンズ14bをベース4に設置した場合を示す。図18(b)に示されるように、第2設置面94bがベース4と対面するように、第1レンズ部92aがベース4に設置されたとき、第1レンズ14bの光軸A1は、ベース4を基準として高さH2に位置する。従って、光軸A1は、標準高さH1よりも高さΔH2だけ上方に位置する。図18(c)は、第3設置面94cがベース4のレンズ配置面4aに対面するように、第1レンズ14bをベース4を設置した場合を示す。図18(c)に示されるように、第3設置面94cがベース4と対面するように、第1レンズ部92aがベース4に設置されたとき、第1レンズ14bの光軸A1は、ベース4を基準として高さH3に位置する。従って、光軸A1は、標準高さH1よりも高さΔH3だけ下方に位置する。図18(d)は、第4設置面94dがベース4のレンズ配置面4aに対面するように、第1レンズ14bをベース4の設置した場合を示す。図18(d)に示されるように、第4設置面94dがベース4と対面するように、第1レンズ部92aがベース4に設置されたとき、第1レンズ14bの光軸A1は、ベース4を基準として高さH4に位置する。従って、光軸A1は、標準高さH1よりも高さΔH4だけ下方に位置する。
次に、第1レンズ14bの調芯及び固定の方法(工程S2:図19参照)について詳細に説明する。
まず、第1光結合強度を得る(工程S2a:図19参照)。より詳細には、図18(a)に示されるように、第1設置面94aがレンズ配置面4aに対面するように、第1レンズ14bをベース4上に載置する。模擬コネクタ123a,123b(図8参照)からの試験光を入射し、第1レンズ14bを通過し、MMI40に入力した試験光をMMI40の内蔵フォトダイオード45により検出する。そして、第1レンズ14bの位置及び角度を僅かに変化させ、内蔵フォトダイオード45の光結合強度が最大となる位置及び角度を決定する。そして最大となった第1光結合強度を得る。
続いて、第2光結合強度を得る(工程S2b:図19参照)。より詳細には、図18(b)に示されるように、第2設置面94bがレンズ配置面4aに対面するように、第1レンズ14bをベース4上に載置する。そして、上述した手順により、第2光結合強度を得る(工程S2b:図19参照)。続いて、第3光結合強度を得る(工程S2c:図19参照)。図18(c)に示されるように、第1レンズ14bを配置して第3光結合強度を得る(工程S2c:図19参照)。そして、第4光結合強度を得る(工程S2d:図19参照)。図18(d)に示されるように、第1レンズ14bを配置して第4光結合強度を得る。続いて、第1〜第4光結合強度を互いに比較することにより、実設置面を選択する(工程S2e)。光結合強度が最も高くなる設置面を第1〜第4設置面94a〜94dから一つ選択する。この設置面は、第1レンズ14bをベース4に実際に固定する際に、ベース4と対面される実設置面である。
続いて、第1レンズ14bをベース4に固定する(工程S2f:図19参照)。より詳細には、ベース4における第1レンズ14bの設置領域(レンズ配置面4a)に紫外線硬化樹脂を塗布する。続いて、第1レンズ14bは工程S2eで選択された実設置面がベース4と対面される。また、光結合強度を得るときと同様に、水平方向位置及び角度を微調整して光結合強度が最大になるように、第1レンズ14bの取付位置及び取付角度を調整する。そして、紫外線を照射することにより、紫外線硬化樹脂が硬化して、第1レンズ14bはベース4に固定される。
第1レンズ15b,23b,24bについても同様の工程を実施し、ベース4に固定する。なお、上記の例では第1レンズ14b,15b,23b,24bそれぞれについて、光結合強度が最も高くなる設置面を選択したが、別の基準をもって設置面を選択してもよい。第1レンズ14b,15b,23b,24bそれぞれの相関に基づいて設置面を選択してもよい。例えば、各第1レンズ14b,15b,23b,24bそれぞれにおいて、各設置面における光強度を検知した後、各第1レンズ14b,15b,23b,24bのそれぞれにおける光結合強度の差が最も小さくなる設置面を各第1レンズ14b,15b,23b,24bの設置面として選択する手法も有用である。
ここで、比較例に係るコヒーレントレシーバを示しつつ、その問題点について説明する。図22(a)及び図22(a)は、比較例に係るコヒーレントレシーバ200を構成するMMI210,220とレンズ230とを正面視した図である。MMI210,220は、MMI40,50と同様の構成を有する。4個のレンズ230は、全て同じ構成を有する。レンズ230は、4つの側面から光軸までの距離が全て同じである。従って、何れの側面を設置面とした場合であっても、ベース201から光軸までの高さは一定である。レンズ230の外形、あるいは、レンズ230を支持する支持部の外形から、レンズ230の光軸中心までの高さは、MMI210,220といった光デバイスの光軸の高さと一致するように設計される。
図22(a)は、MMI210,220及びレンズ230のそれぞれが設計された寸法値どおりに製造され、且つ、設計された寸法値どおりにベース4に取り付けられた場合の構成を示す。設計値どおりに製造及び組み立てられた場合には、レンズ230は、MMI210の2箇所の光入力部211と、MMI220の2箇所の光入力部222と、のそれぞれに対して集光スポットQを形成する。従って、光結合強度が最大となるようにそれぞれのレンズ230とMMI210,220とが光結合される。
しかし、実際には、MMI210,220及びレンズ230のそれぞれは、外形形状における製造上のばらつきを有する。また、MMI210,220及びレンズ230をベース201に設置するときに、組立上のばらつきを生じる。図22(b)に示されるように、MMI210,220をベース201に設置した際に、MMI210,220がベース201に対して傾くことがあり得る。この場合、ベース201から光入力部211,221までの距離が光導波路ごとに異なってしまう。具体的には、レンズ230は、MMI210の2箇所の光入力部211と、MMI220の2箇所の光入力部222と、のそれぞれに対して集光スポットQを形成する。しかし、一部の集光スポットQは、光入力部211,221からずれてしまう。従って、光結合強度が低下してしまう。
比較例の構成において、レンズ230はベース201上においてX軸方向における位置は所望の位置に設定できる。従って、X軸方向に沿ったずれは解消することが可能である。一方、レンズ230は、Y軸方向については、調整の余地は制限される。例えば、集光スポットQが光入力部221よりも下方にずれるような場合(図22(b)の符号K1参照)には、紫外線硬化樹脂によってある程度であれば調整可能である。しかし、その調整可能な範囲は僅かである。そのうえ、集光スポットQが光入力部211よりも上方にずれるような場合(図22(b)の符号K2参照)には、集光スポットQの位置を下方にずらすことは不可能であるので、事実上調整ができなくなってしまう。
図20は、実施形態に係る第1レンズ14b,15b,23b,24bとMMI40,50とがベース4上に取り付けられた構成を正面視した図である。図20に示されるように、MMI40,50がベース4に対して傾いて固定された場合であっても、第1レンズ14b,15b,23b,24bをベース4に取り付ける際に、実設置面を第1〜第4設置面94a〜94dから選択し得る。そして、第1〜第4設置面94a〜94dからレンズ部92までの距離D1〜D4がそれぞれ異なっているので、第1〜第4設置面94a〜94dから実配置面を選択することにより、ベース4から光軸A1までの高さ、すなわち、集光スポットPの位置を選択することができる。従って、より光結合強度が高い第1レンズ14b,15b,23b,24bの設置構成を選択することが可能になる。
例えば、第1レンズ14bは第3設置面94cをレンズ配置面4aに対面させるようにベース4に設置することにより、最も低い位置に配置された光入力部41に対して集光スポットPを重複させ得る。例えば、第1レンズ24bは第4設置面94dをレンズ配置面4aに対面させるようにベース4に設置することにより、光入力部42に対して集光スポットPを重複させ得る。以下同様に、第1レンズ15bは第1設置面94aをレンズ配置面4aに対面させるようにベース4に設置することにより、光入力部51に対して集光スポットPを重複させ得る。第1レンズ23bは第2設置面94bをレンズ配置面4aに対面させるようにベース4に設置することにより、光入力部52に対して集光スポットPを重複させ得る。
また、上記の光結合方法は、ベース4において、PBS21と第1レンズ23b,24bとの間、及び、BS12と第1レンズ14b,15bとの間のそれぞれに第2レンズ14a,15a,23a,24aを設置する工程S4を更に有する。レンズ群14,15,23,24が第1レンズ14b,15b,23b,24bに加えて第2レンズ14a,15a,23a,24aを有する理由について以下に説明する。
図21は、2個のレンズが光軸方向に並んで配置された場合に、レンズ位置の設計位置からのずれと、微小な結合対象(本実施形態ではMMI40,50の光入力部41,42,51,52)に対する結合効率の変化との関係の一例を示すグラフである。図21(a)及び図21(c)は、結合対象側のレンズ(結合対象に相対的に近接して配置されたレンズ)の位置ずれ((a)は光軸に直交する方向のずれ、(c)は光軸方向のずれ)による結合効率の変化を示す。また、図21(b)及び図21(d)は、結合対象とは反対側のレンズ(結合対象から相対的に離間して配置されたレンズ)の位置ずれ((b)は光軸に直交する方向のずれ、(d)は光軸方向のずれ)による結合効率の変化を示す。なお、図21(b)及び図21(d)においては、結合対象側のレンズが予めその設計位置に配置されているものと仮定している。
まず、光軸に直交する方向(X,Y)のずれについて検討する。図21(a)に示されるように、結合対象側のレンズでは、僅か数μmの位置ずれであっても結合効率が劣化し、1μm程度の位置ずれによって結合効率が30%も劣化する。これに対し、図21(c)に示されるように、結合対象とは反対側のレンズにおいては、数μmの位置ずれであれば結合効率はほとんど劣化せず、結合効率の劣化には数十μmの位置ずれを要する。また、光軸方向のずれについて検討すると、図21(b)に示されるように、結合対象側のレンズでは数十μmの位置ずれであっても結合効率が劣化するが、図21(d)に示されるように、結合対象とは反対側のレンズでは数十μmの位置ずれであれば結合効率はほとんど劣化しない。
レンズ群14,15,23,24の各レンズは、例えば紫外線硬化樹脂などの樹脂によってベース4に固定される。樹脂は固化時に数μmの収縮を生じるので、レンズの位置は、樹脂の固化に伴って数μmのずれを生じることがある。そして、上述したように、結合対象側のレンズでは数μmの位置ずれであっても結合効率が劣化してしまう。
これに対し、結合対象とは反対側のレンズでは、数μmの位置ずれであれば結合効率はほとんど劣化しないので、結合対象側のレンズと比較して格段に大きな尤度を確保できる。特に、光軸方向においては数十μmの位置ずれであっても許容されるので、実質的に光軸方向の調芯精度は無視できる。従って、結合対象側のレンズ(本実施形態では第1レンズ14b,15b,23b,24b)の調芯及び固定を行った後に、結合対象とは反対側のレンズ(本実施形態では第2レンズ14a,15a,23a,24a)の調芯及び固定を行うことにより、結合対象側のレンズにおいて生じる結合効率の劣化を十分に補償することができる。
なお、上記の方法では、MMI40,50寄りの4つの第1レンズ14b,15b,23b,24bの調芯及び固定を行ったのち、別の4つの第2レンズ14a,15a,23a,24aの調芯及び固定を行っている。これに対し、例えば二つの模擬コネクタ123a,123bに対して一組の光源112、コネクタ116(図7(b)参照)を共通して使用する場合には、一方の模擬コネクタからの試験光を利用して各レンズの調芯及び固定を行ったのち、他方の模擬コネクタからの試験光を利用して各レンズの調芯及び固定を行ってもよい。例えば、まず第1レンズ14b,15bの調芯及び固定を行い、第1レンズ23b,24bの調芯及び固定を行ったのちに、第2レンズ14a、15aの調芯及び固定を行い、第2レンズ23a,24aの調芯及び固定を行ってもよい。これにより、光源112等の接続替えの回数を低減することができる。
また、上記の方法では、MMI40,50に近接配置されるレンズを、その結合効率が最大となる位置で固定しているが、当該位置から所定距離だけ結合対象から遠ざかる(オフセットした)位置に対象のレンズを固定し、MMI40,50から相対的に離間して配置されるレンズを、結合効率が最大となる位置で固定してもよい。近接配置されるレンズのみで結合効率が最大となる位置と、二つのレンズの組み合わせにより結合効率が最大となるときの近接配置されるレンズの位置とは異なり、後者の場合は前者と比較して結合対象から遠くなるからである。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。