JP2018009698A - グリース組成物を封入した玉軸受、該玉軸受を備えたピボットアッシー軸受および該ピボットアッシー軸受を備えたハードディスク駆動装置 - Google Patents

グリース組成物を封入した玉軸受、該玉軸受を備えたピボットアッシー軸受および該ピボットアッシー軸受を備えたハードディスク駆動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】長寿命であり、かつ低温においても駆動できる装置が得られるような玉軸受を提供すること。【解決手段】本発明に係る玉軸受は、グリース組成物を封入した玉軸受であって、前記グリース組成物は、合成炭化水素油以外の合成油と合成炭化水素油と鉱油とウレア化合物とを含み、前記合成炭化水素油以外の合成油と前記合成炭化水素油と前記鉱油との合計を100質量%としたときに、前記合成炭化水素油以外の合成油を10質量%以上60質量%以下の量で含むことを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、グリース組成物を封入した玉軸受、該玉軸受を備えたピボットアッシー軸受および該ピボットアッシー軸受を備えたハードディスク駆動装置に関する。
従来、ハードディスク駆動装置においては、磁気ヘッドを移動させるアクチュエータを搖動するためのピボットアッシー軸受が使用されている。このピボットアッシー軸受は、一般に玉軸受を有しており、ここにグリース組成物などの潤滑剤組成物が封入される。
ピボットアッシー軸受用のグリース組成物としては、基油としてパラフィン系鉱油およびポリαオレフィンと、増ちょう剤として脂環・脂肪族混合のジウレア化合物と、極圧剤とを含むグリース組成物が知られている(特許文献1)。
特開2003−239954号公報
ところで、ハードディスク駆動装置の寿命を長くするために、ピボットアッシー軸受に用いるグリース組成物(具体的には、ピボットアッシー軸受の玉軸受に封入するグリース組成物)は、アウトガス特性および離油性に優れることが求められる。また、ハードディスク駆動装置を、低温においても低消費電力で使用できるようにするために、ピボットアッシー軸受に封入するグリース組成物は、低温トルク特性に優れることも求められる。
しかしながら、特許文献1のグリース組成物を用いると、ハードディスク駆動装置を使用するにつれて、ピボットアッシー軸受に封入したグリース組成物に由来するアウトガスが発生する場合がある。このアウトガスが磁気ヘッドに付着すると、読み書きエラーを生じ、ハードディスク駆動装置の寿命が短くなる場合がある。
また、ピボットアッシー軸受以外の軸受に備えられる玉軸受に用いるグリース組成物においても、アウトガス特性、離油性および低温トルク特性に優れることが求められる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アウトガス特性、離油性および低温トルク特性に優れるグリース組成物を用いて、該グリース組成物が使用される装置が長寿命であり、かつ低温においても低消費電力で使用できるような玉軸受を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る玉軸受は、グリース組成物を封入した玉軸受であって、上記グリース組成物は、合成炭化水素油以外の合成油と合成炭化水素油と鉱油とウレア化合物とを含み、上記合成炭化水素油以外の合成油と上記合成炭化水素油と上記鉱油との合計を100質量%としたときに、上記合成炭化水素油以外の合成油を10質量%以上60質量%以下の量で含む。
本発明の一態様に係る玉軸受には、アウトガス特性、離油性および低温トルク特性に優れるグリース組成物が封入されるから、当該玉軸受をピボットアッシー軸受に適用することで、長寿命であり、かつ低温時でも低消費電力で使用できるハードディスク駆動装置が得られる。
図1は、玉軸受を備えたピボットアッシー軸受を有するハードディスク駆動装置の透視斜視図である。 図2は、玉軸受を備えたピボットアッシー軸受の断面図である。
<グリース組成物>
まず、本実施の形態に係る玉軸受に用いるグリース組成物について具体的に説明する。
玉軸受に用いるグリース組成物は、基油および増ちょう剤を含む。なお、上記グリース組成物は、通常、基油と増ちょう剤との混合物であり、半固体状または固体状の潤滑剤である。
〔基油〕
上記グリース組成物においては、基油として合成炭化水素油以外の合成油と合成炭化水素油と鉱油とが含まれる。以降の説明では、合成炭化水素油と鉱油とを合わせて「炭化水素系基油」ということがある。また、合成炭化水素油以外の合成油を「その他の合成油」ともいうことがある。
合成炭化水素油としては、ポリαオレフィン(PAO)またはこれらの水素化物、エチレン−α−オレフィン共重合体(オリゴマー)、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンが挙げられる。合成炭化水素油は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリαオレフィンとしては、具体的には1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン等のダイマー、トリマー、テトラマー等のオリゴマーが挙げられる。ポリαオレフィンを用いると、とくに1−デセンのオリゴマーを用いると、粘度指数が高く、低温での流動性が良いことから、グリース組成物の低温トルク特性が向上する。
鉱油は、原油を精製して得られる油であり、該鉱油としては、ナフテン系鉱油およびパラフィン系鉱油が挙げられる。鉱油は、単独で用いても組み合わせて用いてもよい。合成油に加えて鉱油を用いることで、酸化安定性が向上するとともに、潤滑性が向上するという利点がある。
合成炭化水素油および鉱油の合計を100質量%としたときに、合成炭化水素油を30質量%以上70質量%以下の量で、鉱油を30質量%以上70質量%以下の量で含むことが好ましい。
その他の合成油としては、エステル油、エーテル油が挙げられる。その他の合成油は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
エステル油としては、ポリオールエステル油、ジエステル油、モノエステル油、芳香族エステル油、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油が挙げられる。
ポリオールエステル油としては、具体的にはトリメチロールプロパンエステル油、ペンタエリスリトールエステル油が挙げられる。トリメチロールプロパンエステル油はたとえば下記式(1)で表され、ペンタエリスリトールエステル油はたとえば下記式(2)で表される。R1、R2、R3は、それぞれアルキル基を示し、該アルキル基の炭素数はエステル油が後述する動粘度を示すように選択することが好ましく、たとえばR1では2以上10以下であり、R2、R3ではそれぞれ5以上10以下である。
Figure 2018009698
Figure 2018009698
上記式(1)で表されるトリメチロールプロパンエステル油としては、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート等が挙げられ、上記式(2)で表されるペンタエリスリトールエステル油としては、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等が挙げられる。
ジエステル油としては、具体的にはジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレートが挙げられる。
芳香族エステル油としては、具体的にはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートが挙げられる。
エーテル油としては、ポリグリコール油、フェニルエーテル油が挙げられる。
ポリグリコール油としては、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテルが挙げられる。
フェニルエーテル油としては、具体的にはモノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテルが挙げられる。
本実施の形態では、合成炭化水素油、鉱油およびその他の合成油を用いることにより、アウトガス特性および離油性とともに、低温トルク特性にもバランスよく優れるグリース組成物が得られる。これらのうちで、その他の合成油として、エステル油、とくにペンタエリスリトールエステル油などのポリオールエステル油を用いると、アウトガス特性と低温トルク特性とのバランスが優れたグリース組成物が得られる。
以上に説明した通り、その他の合成油としてエステル油を含む態様が好ましい。好適には、基油として合成炭化水素油、鉱油およびエステル油のみを組み合わせて用いることが、玉軸受を備える装置(たとえばハードディスク駆動装置)の寿命、低温駆動性の観点から特に好ましい。
また、上記グリース組成物においては、合成炭化水素油と鉱油とその他の合成油との合計を100質量%としたときに、合成炭化水素油と鉱油との質量合計を40質量%以上90質量%以下の量で含み、その他の合成油を10質量%以上60質量%以下の量で含む。これにより、アウトガス特性、離油性および低温トルク特性に優れるグリース組成物が得られる。なお、エステル油などのその他の合成油が多く含まれすぎていると、グリース組成物の寿命や離油性に劣る場合がある。いいかえると玉軸受を備える装置(たとえばハードディスク駆動装置)の寿命に影響を与える場合がある。
また、グリース組成物の寿命、玉軸受を備える装置(たとえばハードディスク駆動装置)の寿命の観点から、合成炭化水素油と鉱油との質量合計を70質量%以上90質量%以下の量で、その他の合成油を10質量%以上30質量%以下の量で含むことが好ましい。
基油の40℃における動粘度は、玉軸受を備える装置(たとえばハードディスク駆動装置)の寿命と消費電力とを考慮すると、好ましくは40mm2/s以上80mm2/s以下、より好ましくは50mm2/s以上70mm2/s以下である。
また、基油の0℃における動粘度は、低温トルク特性の観点から、好ましくは800mm2/s以下、より好ましくは300mm2/s以上700mm2/s以下である。
なお、基油に含まれる合成炭化水素油と鉱油とその他の合成油とは、それぞれ単独での動粘度が上記範囲内に包含されなくてもよいが、合成炭化水素油と鉱油とその他の合成油とを混合した場合における動粘度は上記範囲内に包含される必要がある。
現在、ハードディスク駆動装置(HDD)のスライダーヘッドへのオイル付着が問題となっている。その問題に対して、基油粘度を上げたグリースによって対応することができる。しかし、単に基油粘度を上げたグリースでは、低温粘度も上昇し、低温時のトルク改善の要求がある。そこで、本発明者らは、アウトガスを抑制しつつ、低温トルクを改善したグリースの開発を行った。
また、HDD業界では、グリースのアウトガス特性が懸念され、年々スペックが厳しくなっている。ピボットアッシー軸受用としてラインナップされているグリースは、炭化水素系基油(たとえば、ポリαオレインや鉱油)が使用されている。炭化水素系基油(たとえば、ポリαオレフィンや鉱油)では、粘度を維持しつつ、アウトガス特性および低温トルクを改善する事は困難である。鉱油については、さらに蒸留することで、低分子量成分の低減を試みたが、寿命が低下する場合がある。一方で、合成油(エステル油)でグリースを作製すると、アウトガス特性は改善されるが、粘性の上昇により、トルクが上昇しやすい。また、ゲル化能が悪いことから増ちょう剤の増量が必要となる傾向があり、静止状態での離油量が非常に少なくなり、トルク荒れや寿命の低下が発生しうる。
これに対して、上述のように合成炭化水素油と鉱油とその他の合成油とを混合することにより、上記問題を解決できた。
〔増ちょう剤〕
上記グリース組成物においては、増ちょう剤としてウレア化合物が含まれている。
ウレア化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、他のポリウレア化合物が挙げられる。ウレア化合物は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジウレア化合物としては、具体的には下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
4NH−CO−NH−R5−NH−CO−NH−R6 (3)
上記式(3)中、R4およびR6は、それぞれ置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいアリール基、炭素数8以上22以下の直鎖または分岐のアルキル基であり、該シクロヘキシル基の炭素数は6以上12以下であることが好ましく、該アリール基の炭素数は6以上18以下であることが好ましい。R5は、置換基を有していてもよいアリーレン基を含む2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の炭素数は6以上15以下であることが好ましい。上記置換基としては、アルキル基が挙げられる。
ウレア化合物としては、ジウレア化合物、とくに脂環−脂肪族ジウレア化合物(分子の双方の末端が、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基であるジウレア化合物)が好適に用いられる。より具体的には上記式(3)において、R4およびR6が、上記直鎖または分岐のアルキル基、もしくは、上記シクロヘキシル基であるジウレア化合物がより好適に用いられる。上述した基油とジウレア化合物とを組み合わせて用いると、長寿命であり、かつ低温においても低消費電力で使用できる玉軸受を備える装置(たとえばハードディスク駆動装置)が得られる。
グリース組成物は、混和ちょう度を考慮すると、基油の質量合計100質量部に対して、増ちょう剤を9質量部以上18質量部以下の量で含むことが好ましい。また、混和ちょう度を考慮すると、グリース組成物中に、増ちょう剤は通常8質量%以上14質量%以下の量で含まれる。
〔極圧添加剤〕
上記グリース組成物には、添加剤として極圧添加剤がさらに含まれていてもよい。これにより、摩耗、焼付きを抑制できる。
極圧添加剤としては、有機モリブデン化合物、有機脂肪酸化合物、有機リン化合物、有機硫黄リン化合物、酸性リン酸エステルアミン塩などが挙げられる。極圧添加剤は、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機モリブデン化合物は、軸受金属面に吸着し、被膜を形成して機能し、高荷重、低速下でも、耐焼付き性、耐荷重性、耐摩耗性を向上できる。
有機モリブデン化合物としては、下記式(4)で表されるモリブデンジチオホスフェートまたは下記式(5)で表されるモリブデンジチオカーバーメートが好ましく用いられる。
Figure 2018009698
式(4)中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ炭素数が1以上24以下のアルキル基、または炭素数が6以上30以下のアリール基である。
Figure 2018009698
式(5)中、R41、R42、R43およびR44は、それぞれ炭素数1以上24以下のアルキル基であり、XはOまたはSである。
さらに、金属ジヒドロカルビルジチオフォスフェート類、金属ジヒドロカルビルジチオカーバメート類、ナフテン酸塩類等が挙げられ、金属として亜鉛の他、鉛、カドミウム、アンチモンなどが好ましい。上記金属ジヒドロカルビルジチオフォスフェート類としては、たとえばジンクジメチルジチオフォスフェート、ジンクブチルイソオクチルジチオフォスフェート、ジンクジ(4−メチル−2−ペンチル)ジチオフォスフェート、ジンクジ(テトラプロペニルフェニル)ジチオフォスフェート、ジンク(2−エチル−1−ヘキシル)ジチオフォスフェート、ジンク(イソオクチル)ジチオフォスフェート、ジンク(エチルフェニル)ジチオフォスフェート、ジンク(アミル)ジチオフォスフェート、ジンクジ(ヘキシル)ジオチフォスフェート等が挙げられる。
有機脂肪酸化合物としては、オレイン酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ラノリン脂肪酸、コハク酸、コハク酸誘導体、アミノ酸誘導体が挙げられる。コハク酸およびコハク酸誘導体は、軸受材料である転動面や摺動面に良好に吸着して薄膜を形成する。コハク酸誘導体としては、たとえばアルキルコハク酸、アルキルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、コハク酸イミドが挙げられる。コハク酸誘導体としては、アルケニルコハク酸またはその無水物が好ましい。
有機リン化合物としては、亜リン酸エステルが好ましい。この亜リン酸エステルとしては、炭化水素基を有する亜リン酸エステル類が知られており、トリオクチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、ビス−2−エチルヘキシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、ジブチルハイドロジェンフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジラウリルハイドロジェンフォスファイト、ジフェニルモノデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルハイドロジェンフォスファイトが挙げられる。
また、正リン酸エステル類も使用できる。この正リン酸エステルとしては、トリフェニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリデシルフォスフェート、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)フォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリステアリルフォスフェートが挙げられる。
さらに、酸性リン酸エステルも使用できる。この酸性リン酸エステルとしては、メチルアッシドフォスフェート、イソプロピルアッシドフォスフェート、ブチルアッシドフォスフェート、2−エチルヘキシルアッシドフォスフェート、イソデシルアッシドフォスフェート、トリデシルアッシドフォスフェート、ラウリルアッシドフォスフェートが挙げられる。
有機硫黄リン化合物としては、フォスフェートやフォスファイトのチオ置換体、例えば、トリアルキルフォスフォロチオネート、トリアリールフォスフォロチオネート、トリフェニルフォスフォロチオネートなどが挙げられる。
グリース組成物は、上述した極圧添加剤の目的を考慮すると、基油の質量合計100質量部に対して、極圧添加剤を0.1質量部以上6.4質量部以下の量で含むことが好ましい。また、グリース組成物中に、極圧添加剤は好ましくは0.1質量%以上5質量%以下の量で、より好ましくは1質量%以上3質量%以下の量で含まれる。0.1質量%未満では充分な目的が達成されない場合があり、5質量%を超えると腐食性のガスの発生量が多くなる場合がある。
〔その他の添加剤〕
上記グリース組成物には、添加剤として極圧添加剤以外のその他の添加剤がさらに含まれていてもよい。
その他の添加剤としては、一般的にグリースに配合される添加剤が挙げられ、具体的には酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤、油性剤、摩耗防止剤等が挙げられる。その他の添加剤は、それぞれ単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤としては、例えばオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、および4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、p,p'-ジオクチルジフェニルアミン、p,p'-ジ-α-メチルベンジル-ジフェニルアミン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤、トリフェニルアミン、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)等のヒンダードアミン系酸化防止剤、α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤、フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、フェノチアジンカルボン酸エステル、フェノセレナジン等のフェノチアジン系酸化防止剤が挙げられる。
グリース組成物中に、酸化防止剤は好ましくは0.2質量%以上5質量%以下の量で含まれる。酸化防止剤以外のその他の添加剤も必要に応じて用いられる。なお、添加剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよいが、二種以上を組み合わせた場合は、添加剤の量の合計がグリース組成物中に10質量%以下であることが好ましい。
本実施の形態に用いるグリース組成物において、混和ちょう度(JIS K 2220 7)は、180以上280以下であることが好ましい。混和ちょう度がこの範囲にあると、潤滑性能に優れ、安定したトルクのグリース組成物が得られる。上述した基油および増ちょう剤の種類、量を適宜変更することで、混和ちょう度を上記範囲に調整できる。
上記グリース組成物の製造方法は特に限定されないが、一般的には基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させ、増ちょう剤を生成させて得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
具体的には、増ちょう剤がジウレア化合物の場合は、通常、イソシアネート化合物としてジイソシアネートを、アミン化合物としてモノアミンを用いる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜が挙げられる。モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。このような原料化合物を用いれば、上述したジウレア化合物が生成できる。
次いで、得られた組成物に対して、必要に応じて極圧添加剤またはその他の添加剤を配合することができる。極圧添加剤またはその他の添加剤の添加後にはニーダーやロールミル等で十分攪拌し、均一分散させることが好ましい。この攪拌の際は加熱してもよい。
<玉軸受、ピボットアッシー軸受およびハードディスク駆動装置>
次に、本実施の形態に係る玉軸受、すなわち上記グリース組成物を封入した玉軸受、該玉軸受を備えるピボットアッシー軸受、および該ピボットアッシー軸受を備えるハードディスク駆動装置について具体的に説明する。
図1に、玉軸受を備えたピボットアッシー軸受を有するハードディスク駆動装置の一例を示す。ハードディスク駆動装置1は、コンピュータの記憶装置の一つであり、少なくとも磁気ディスク2、磁気ヘッド3、アクチュエータ4、および玉軸受を備えたピボットアッシー軸受10を有する。磁気ディスク2は、情報が記録される媒体である。磁気ヘッド3は、アクチュエータ4の先端に配置されており、磁気ディスク2の上を移動することにより、磁気ディスク2に情報を記録したり、磁気ディスク2から記録した情報を読み出したりする。この際、ピボットアッシー軸受10は、アクチュエータ4を揺動させ、磁気ヘッド3を所定の位置に移動させる。
図2には、本実施の形態に係る玉軸受13a、13bを備えるピボットアッシー軸受の一例を示す。ピボットアッシー軸受10は、シャフト11、ハウジング12、および一対の玉軸受13a、13bを有する。シャフト11は、上部と下部の一対の玉軸受13a、13bにより回転自在な状態で保持されている。すなわち、玉軸受13a(13b)は、内輪13aa(13ba)と外輪13ab(13bb)との間に転動体13ac(13bc)を保持している。そして内輪13aa(13ba)は、シャフト11の外周に固定され、外輪13ab(13bb)は、筒状構造体であるハウジング12の内側に固定されている。また、内輪13aa(13ba)と外輪13ab(13bb)との隙間、転動体13ac(13bc)の周囲には、上記グリース組成物が封入されている。
なお、シャフト11には、下端側(図2において右方)と上端側(図2において左方)がある。また、シャフト11には、ハードディスク駆動装置1のベースに設けられた下部支持部(図示省略)に固定するため、上記下端側にハウジング12の内径よりも小さい外径寸法を有するフランジ11aが形成されている。
また、ハウジング12の内周面には、上部と下部の一対の玉軸受13a、13bを軸方向に離間して位置決めするため、外輪13ab、13bbの端面が当接するスペーサ12aが設けられている。なお、ハウジング12およびスペーサ12aは、図2のように一体成型されたものに限定されず、ハウジング12およびスペーサ12aが別々の部品であってもよい。
このような本実施の形態のピボットアッシー軸受の玉軸受には、アウトガス特性、離油性および低温トルク特性に優れるグリース組成物が封入されるから、当該玉軸受をピボットアッシー軸受に適用することで、長寿命であり、かつ低温時でも低消費電力で使用できるハードディスク駆動装置が得られる。
さらに詳細には、アウトガスの低減により、経時的に発生するHDD内のオイルコンタミが軽減され、HDDの長寿命化が実現される。
なお、以上の説明では、本実施の形態に係る玉軸受を備える軸受および該軸受を備える装置として、ピボットアッシー軸受およびハードディスク駆動装置について説明した。しかしながら、ピボットアッシー軸受以外の軸受であっても、実施の形態に係る玉軸受を備えていれば、長寿命であり、かつ低温においても低消費電力で使用できる装置が得られる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
[実施例1]
ポリαオレフィン油(Exxon Mobil Corporation製、SPECTRASYN10、40℃における動粘度71mm2/s)50質量部とパラフィン系鉱油(出光興産株式会社製、P-90、40℃における動粘度90mm2/s)50質量部とを混合して炭化水素系基油を得た。この炭化水素系基油90質量部と、その他の合成油としてペンタエリスリトールエステル油(CHEMTURA Corporation製、HATCOL2352、40℃における動粘度29mm2/s)10質量部とを混合して基油を得た。
増ちょう剤、すなわちジウレア化合物の原料化合物として、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(COVESTRO AG.製、DESMODOR 44M FLAKES)5モル、シクロヘキシルアミン(和光純薬工業株式会社製、シクロヘキシルアミン)3モルおよびステアリルアミン(和光純薬工業株式会社製、ステアリルアミン)7モルを用いた。
次いで、基油100質量部に対して増ちょう剤が10〜15質量部の量で含まれるように組成物を作製した。なお、反応後の組成物には、脂環−脂肪族ジウレア化合物が含まれていると考えられる。
次いで、得られた組成物100質量部に対して極圧添加剤としてトリクレジルフォスフェート(和光純薬工業株式会社製、りん酸トリトリル)を2質量部添加し十分攪拌してグリース組成物を得た。
さらに、上記グリース組成物を用いて、後述する寿命試験のために、玉軸受、該玉軸受を備えたピボットアッシー軸受を作製した。
[実施例2]
ポリαオレフィン油30質量部とパラフィン系鉱油70質量部とを混合して炭化水素系基油を得た以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[実施例3]
ポリαオレフィン油70質量部とパラフィン系鉱油30質量部とを混合して炭化水素系基油を得た以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[実施例4]
炭化水素系基油70質量部とその他の合成油30質量部とを混合して基油を得た以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[実施例5]
炭化水素系基油50質量部とその他の合成油50質量部とを混合して基油を得た以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[実施例6]
炭化水素系基油40質量部とその他の合成油60質量部とを混合して基油を得た以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
実施例1〜実施例6で得られたグリース組成物の混和ちょう度(JIS K 2220 7)は220〜260であった。
[比較例1]
ポリαオレフィン油(Exxon Mobil Corporation製、SPECTRASYN6、40℃における動粘度31mm2/s)50質量部とパラフィン系鉱油50質量部とを混合して炭化水素系基油を得た。
基油として、上記炭化水素系基油のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[比較例2]
ポリαオレフィン油50質量部とパラフィン系鉱油50質量部とを混合して炭化水素系基油を得た。
基油として、上記炭化水素系基油のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[比較例3]
炭化水素系基油98質量部とその他の合成油2質量部とを混合して基油を得た以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[比較例4]
炭化水素系基油30質量部とその他の合成油70質量部とを混合して基油を得た以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[比較例5]
基油として、ペンタエリスリトールエステル油のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[比較例6]
基油として、アルキルジフェニルエーテル油(MORESCO社製、モレスコハイルーブLB-68、40℃における動粘度68mm2/s)のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
[比較例7]
基油として、40℃における動粘度が48mm2/sのポリαオレフィン油(Exxon Mobil Corporation製、SPECTRASYN8)のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受を得た。
<評価方法>
得られたグリース組成物、玉軸受およびピボットアッシー軸受について、下記の通り評価を行った。
[動粘度]
0℃における動粘度および40℃における動粘度はJIS K 2283に準拠して測定を行った。
[アウトガス試験]
グリース組成物を加熱して得られたガスの総量をガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)を用いて求めた。GCMSによる測定は、すべて同一の条件下(グリース組成物の量、加熱温度、加熱時間)で行った。
評価基準については、アウトガス量(ng/mg)が200以下の場合を◎、200を超え400以下の場合を○、400を超え500以下の場合を△、500を超える場合を×とした。
[低温トルク試験]
レオメータ回転粘度計(ANTON PAAR製、MCR301)のディスクとコーンとの間にグリース組成物を塗布し、以下の条件にて粘度(トルク)測定を行った。
設定温度 : −20℃
せん断速度 : 10/s
ディスクとコーンのギャップ: 0.5mm
測定時間 : 300sec
測定開始後、起動時の最大値を確認し、低温トルク値とした。
評価基準については、低温トルク値(mNm)が15未満の場合を◎、15以上20未満の場合を○、20以上25未満の場合を△、25以上の場合を×とした。
[寿命試験]
まず、グリース組成物について、寿命試験前のトルクを測定した。
次いで、搖動試験機に、グリース組成物を封入した玉軸受を備えたピボットアッシー軸受をセットし、70℃で2億シークの寿命試験を行った。
次いで、寿命試験後のトルクを測定し、平均トルクを基準として寿命を評価した。なお、寿命試験後での平均トルク値のほか、レース面の搖動痕、グリース組成物の焼付き、グリース組成物の変色、スラッジの発生状態も確認した。具体的には、試験後のトルクが、0.5gf・cm以下の場合を◎、0.5gf・cmを超えて0.8gf・cm以下の場合を○、0.8gf・cmを超えて1.5gf・cm以下の場合を△、1.5gf・cmを超えた場合を×とした。
[離油試験]
紙表面に所定量のグリース組成物を載置し、滲みがでた部分の面積を、グリース組成物の総量で割り、離油量を求めた。
評価基準については、離油量(mm2/mg)が250以上260未満の場合を◎、230以上250未満の場合を○、200以上230未満の場合を△、200未満の場合を×とした。
<評価結果>
評価結果を下記表1に示す。
Figure 2018009698
上記のように調製したグリース組成物を用いて図2に示すような玉軸受を備えたピボットアッシー軸受10を作製し、さらに該ピボットアッシー軸受10を用いて図1に示すようなハードディスク駆動装置1を作製することができる。得られたハードディスク駆動装置は長寿命であるとともに、低温においても駆動できると考えられる。
上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
1 ハードディスク駆動装置
2 磁気ディスク
3 磁気ヘッド
4 アクチュエータ
10 ピボットアッシー軸受
11 シャフト
11a フランジ
12 ハウジング
12a スペーサ
13a、13b 玉軸受
13aa、13ba 内輪
13ab、13bb 外輪
13ac、13bc 転動体

Claims (7)

  1. グリース組成物を封入した玉軸受であって、
    前記グリース組成物は、合成炭化水素油以外の合成油と合成炭化水素油と鉱油とウレア化合物とを含み、
    前記合成炭化水素油以外の合成油と前記合成炭化水素油と前記鉱油との合計を100質量%としたときに、前記合成炭化水素油以外の合成油を10質量%以上60質量%以下の量で含む
    ことを特徴とする玉軸受。
  2. 前記合成炭化水素油以外の合成油はエステル油を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
  3. 前記合成炭化水素油以外の合成油と前記合成炭化水素油と前記鉱油との合計を100質量%としたときに、前記合成炭化水素油以外の合成油を10質量%以上30質量%以下の量で含む
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の玉軸受。
  4. 前記合成炭化水素油および前記鉱油の合計を100質量%としたときに、前記合成炭化水素油を30質量%以上70質量%以下の量で含む
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の玉軸受。
  5. 前記グリース組成物が極圧添加剤をさらに含む
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の玉軸受。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の玉軸受を備える
    ことを特徴とするピボットアッシー軸受。
  7. 請求項6に記載のピボットアッシー軸受を備える
    ことを特徴とするハードディスク駆動装置。
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