以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料噴射弁、および、その一部を図1〜3に示す。燃料噴射弁1は、例えば図示しない内燃機関としての直噴式ガソリンエンジンに用いられ、燃料としてのガソリンをエンジンに噴射供給する。
燃料噴射弁1は、ノズル10、ハウジング20、ニードル30、可動コア40、固定コア50、第1付勢部材としてのスプリング61、第2付勢部材としてのスプリング62、コイル65、弾性部材70等を備えている。
ノズル10は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の硬度が比較的高い材料により形成されている。ノズル10は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。ノズル10は、ノズル筒部11、および、ノズル筒部11の一端を塞ぐノズル底部12を有している。ノズル底部12には、ノズル筒部11側の面とノズル筒部11とは反対側の面とを接続する噴孔13が複数形成されている。また、ノズル底部12のノズル筒部11側の面には、噴孔13の周囲に環状の弁座14が形成されている。
ハウジング20は、第1筒部21、第2筒部22、第3筒部23等を有している。
第1筒部21、第2筒部22および第3筒部23は、いずれも略円筒状に形成されている。第1筒部21、第2筒部22および第3筒部23は、第1筒部21、第2筒部22、第3筒部23の順に同軸(軸Ax1)となるよう配置され、互いに接続している。第2筒部22と第1筒部21および第3筒部23とは、例えば溶接により接続されている。
第1筒部21および第3筒部23は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により形成され、磁気安定化処理が施されている。第2筒部22は、例えばオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料により形成されている。第2筒部22は、磁気絞り部を形成している。
第1筒部21の第2筒部22とは反対側の端部の内側には、ノズル筒部11のノズル底部12とは反対側の端部が接続されている。第1筒部21とノズル10とは、例えば溶接により接続されている。
第3筒部23の第2筒部22とは反対側には、インレット部24が設けられている。インレット部24は、第3筒部23と同様、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により筒状に形成されている。インレット部24は、一端が第3筒部23の第2筒部22とは反対側の端部の内側に接続するよう設けられている。本実施形態では、インレット部24は、第3筒部23と一体に形成されている。図1では、インレット部24と第3筒部23との境界を二点鎖線で示している。
ハウジング20およびノズル筒部11の内側には、燃料通路100が形成されている。燃料通路100は、噴孔13に連通している。インレット部24の第3筒部23とは反対側には、図示しない配管が接続される。これにより、燃料通路100には、燃料供給源からの燃料が配管を経由して流入する。燃料通路100は、燃料を噴孔13に導く。ここで、ノズル10およびハウジング20は、特許請求の範囲における「ハウジング」に対応している。
インレット部24の内側には、フィルタ241が設けられている。フィルタ241は、燃料通路100に流入する燃料中の異物を捕集する。
ニードル30は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の硬度が比較的高い材料により形成されている。ニードル30は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。ニードル30の硬度は、ノズル10の硬度とほぼ同等に設定されている。
ニードル30は、燃料通路100内をハウジング20の軸Ax1方向へ往復移動可能なようハウジング20内に収容されている。ニードル30は、ニードル本体31、シール部32、鍔部33等を有している。
ニードル本体31は、棒状、より具体的には長い円柱状に形成されている。シール部32は、ニードル本体31の一端、すなわち、弁座14側の端部に形成され、弁座14に当接可能である。
鍔部33は、略円筒状に形成され、ニードル本体31の他端、すなわち、弁座14とは反対側の端部の径方向外側に設けられている。本実施形態では、鍔部33は、ニードル本体31と一体に形成されている。
図1に示すように、ニードル本体31の一端の近傍には、大径部311が形成されている。ニードル本体31の一端側の外径は、他端側の外径より小さい。大径部311は、外径がニードル本体31の一端側の外径より大きく、ニードル本体31の他端側の外径と同等である。大径部311は、外壁がノズル10のノズル筒部11の内壁と摺動するよう形成されている。これにより、ニードル30は、弁座14側の端部の軸方向の往復移動が案内される。大径部311には、外壁の周方向の複数箇所が面取りされるようにして面取り部312が形成されている。これにより、燃料は、面取り部312とノズル筒部11の内壁との間を流通可能である。
ニードル本体31の他端には、ニードル本体31の軸Ax2に沿って延びる軸方向穴部313が形成されている。すなわち、ニードル本体31の他端は、中空筒状に形成されている。また、ニードル本体31には、軸方向穴部313の弁座14側の端部とニードル本体31の外側とを接続するようニードル本体31の径方向に延びる径方向穴部314が形成されている。これにより、燃料通路100内の燃料は、軸方向穴部313および径方向穴部314を流通可能である。このように、ニードル本体31は、弁座14とは反対側の端面から軸Ax2方向に延び径方向穴部314を経由してニードル本体31の外側の空間に連通する軸方向穴部313を有している。
ニードル30は、シール部32が弁座14から離間または弁座14に当接することで噴孔13を開閉する。以下、適宜、ニードル30が弁座14から離間する方向を開弁方向といい、ニードル30が弁座14に当接する方向を閉弁方向という。
可動コア40は、可動コア本体41等を有している。可動コア本体41は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円筒状に形成されている。可動コア本体41は、磁気安定化処理が施されている。可動コア本体41の硬度は、ハウジング20の第1筒部21および第3筒部23の硬度と概ね同等である。
可動コア40は、軸穴部42、通孔43等を有している。軸穴部42は、可動コア本体41の軸Ax3に沿って延びるよう形成されている。本実施形態では、軸穴部42の内壁に、例えばNi−Pめっき等の硬質加工処理および摺動抵抗低減処理が施されている。通孔43は、可動コア本体41の弁座14側の面と、弁座14とは反対側の端面411とを接続するよう形成されている。通孔43は、円筒状の内壁を有している。本実施形態では、通孔43は、例えば可動コア本体41の周方向に等間隔で複数形成されている。
可動コア40は、軸穴部42にニードル30のニードル本体31が挿通された状態でハウジング20内に収容されている。可動コア40の軸穴部42の内径は、ニードル30のニードル本体31の外径よりやや大きく設定されている。そのため、可動コア40は、軸穴部42の内壁がニードル30のニードル本体31の外壁に摺動しつつ、ニードル30に対し相対移動可能である。また、可動コア40は、ニードル30と同様、燃料通路100内をハウジング20の軸Ax1方向へ往復移動可能なようハウジング20内に収容されている。つまり、可動コア40は、燃料通路100内の鍔部33の弁座14側においてニードル本体31に対し相対移動可能に設けられている。通孔43には、燃料通路100内の燃料が流通可能である。そのため、燃料通路100内における可動コア40の軸方向の往復移動を円滑にすることができる。
可動コア40は、端面411が鍔部33に当接、または、鍔部33から離間可能なようニードル30に対し相対移動可能に設けられている。
本実施形態では、可動コア本体41の端面411に、例えば硬質クロムめっき等の硬質加工処理および耐摩耗処理が施されている。
なお、可動コア本体41の外径は、鍔部33の外径より大きく、ハウジング20の第1筒部21および第2筒部22の内径より小さく設定されている。そのため、可動コア40が燃料通路100内を往復移動するとき、可動コア40の外壁と第1筒部21および第2筒部22の内壁とは摺動しない。
図1に示すように、固定コア50は、ハウジング20の内側において可動コア40に対し弁座14とは反対側に設けられている。固定コア50は、固定コア本体51およびブッシュ52を有している。固定コア本体51は、第3筒部23と同様、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円筒状に形成されている。固定コア本体51は、磁気安定化処理が施されている。固定コア本体51の硬度は、可動コア本体41の硬度と概ね同等である。
本実施形態では、固定コア本体51は、第3筒部23およびインレット部24と一体に形成されている。図1では、固定コア本体51と第3筒部23とインレット部24との境界を二点鎖線で示している。
ブッシュ52は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の硬度が比較的高い材料により略円筒状に形成されている。図2に示すように、固定コア本体51の弁座14側の端部の内径は、弁座14とは反対側の内径より大きい。そのため、固定コア本体51の内壁には、可動コア40の端面411に対向する環状の段差面511が形成されている。
ブッシュ52は、外壁が固定コア本体51の内壁に嵌合し、弁座14とは反対側の端面521が段差面511に当接するよう固定コア本体51の内側に設けられている。本実施形態では、ブッシュ52は、固定コア本体51の内側に圧入され、締り嵌めの状態で設けられている。ブッシュ52は、固定コア本体51に対し相対移動不能に設けられている。なお、ブッシュ52の内径は、固定コア本体51の段差面511に対し弁座14とは反対側の内径と同等である。
ブッシュ52の可動コア40側の端部の外径は、可動コア40とは反対側の端部の外径より小さい。そのため、ブッシュ52の外壁には、可動コア40の端面411に対向する環状の外側段差面523が形成されている。
鍔部33は、外周壁がブッシュ52の内周壁と摺動するよう形成されている。これにより、ニードル30は、弁座14とは反対側の端部の軸方向の往復移動が案内される。このように、本実施形態では、ニードル30は、鍔部33側の端部の軸方向の往復移動がブッシュ52により案内される。
ブッシュ52の可動コア40側の端面522は、固定コア本体51の可動コア40側の端面512よりも弁座14側に位置し、可動コア40の端面411に当接可能である。端面522には、規制面520が形成されている。可動コア40の端面411には、上面410が形成されている。すなわち、規制面520と上面410とは当接可能である。規制面520は、可動コア40の固定コア50側の面である上面410に当接することで、可動コア40の開弁方向の移動を規制可能である。
固定コア本体51の内側には、円筒状のアジャスティングパイプ60が圧入されている。
スプリング61は、例えばコイルスプリングであり、ニードル30に対し弁座14とは反対側に設けられている。スプリング61の一端は、ニードル30の弁座14とは反対側の面に当接している。スプリング61の他端は、アジャスティングパイプ60の弁座14側の面に当接し、アジャスティングパイプ60に係止されている。スプリング61は、ニードル30を弁座14側に付勢する。また、スプリング61は、鍔部33が可動コア40の端面411に当接しているとき、鍔部33を介して可動コア40を弁座14側に付勢可能である。すなわち、スプリング61は、ニードル30および可動コア40を弁座14側に付勢可能である。スプリング61の付勢力は、固定コア50に対するアジャスティングパイプ60の位置により調整可能である。
図1に示すように、コイル65は、略円筒状に形成され、ハウジング20のうち特に第2筒部22および第3筒部23の径方向外側に設けられている。
コイル65の径方向外側には、ヨーク25が設けられている。ヨーク25は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により筒状に形成され、磁気安定化処理が施されている。ヨーク25は、コイル65の径方向外側を覆うようにして設けられている。本実施形態では、ヨーク25の弁座14側の端部は、例えば溶接により第1筒部21に接続されている。
コイル65の弁座14とは反対側には、環状部材231が設けられている。環状部材231は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により環状に形成され、磁気安定化処理が施されている。環状部材231は、コイル65の弁座14とは反対側において、ヨーク25の弁座14とは反対側の端部の内壁と第3筒部23の外壁とに接するようにして設けられている。コイル65とヨーク25と環状部材231との間には、樹脂が充填されることによりモールド部26が形成されている。
コイル65は、電力が供給されると、すなわち、通電されると磁力を生じる。コイル65に磁力が生じると、第2筒部22を避けるようにして、固定コア本体51、可動コア本体41、第1筒部21、ヨーク25、環状部材231および第3筒部23に磁気回路が形成される。これにより、固定コア本体51と可動コア本体41との間に磁気吸引力が発生し、可動コア40は、固定コア50側に吸引される。このとき、可動コア40は、端面411がニードル30の鍔部33に当接した状態で開弁方向に移動する。これにより、ニードル30が可動コア40とともに開弁方向に移動し、シール部32が弁座14から離間し、開弁する。その結果、噴孔13が開放される。このように、コイル65は、通電されると、可動コア40を固定コア50側に吸引し、ニードル30を弁座14とは反対側に移動させることが可能である。
可動コア40は、磁気吸引力により固定コア50側、すなわち、開弁方向に吸引されると、固定コア50側の面である上面410がブッシュ52の弁座14側の端面の規制面520に衝突する。これにより、可動コア40は、開弁方向への移動が規制される。
図1に示すように、インレット部24および第3筒部23の径方向外側は、樹脂によりモールドされている。当該モールド部分にコネクタ27が形成されている。ここで、コネクタ27は、モールド部26と一体に形成されている。コネクタ27には、コイル65へ電力を供給するための端子271がインサート成形されている。
スプリング62は、例えばコイルスプリングであり、一端が可動コア本体41の弁座14側の面に当接し、他端がハウジング20の第1筒部21の内壁に当接した状態で設けられている。スプリング62は、可動コア40を固定コア50側に付勢可能である。そのため、可動コア40は、端面411が鍔部33に押し付けられる。スプリング62の付勢力は、スプリング61の付勢力よりも小さい。
弾性部材70は、例えばステンレス等の金属により形成されている。図3に示すように、弾性部材70は、略円筒状に形成されている。弾性部材70は、弾性変形部71および筒部72を有している。
弾性変形部71は、略円筒状に形成されている。弾性変形部71は、複数の隙間710を有している。隙間710は、長穴形状に形成されている。隙間710は、弾性変形部71の周方向および軸方向に複数並ぶよう形成されている。なお、軸方向に隣り合う隙間710は、周方向の位置がずれるようにして形成されている(図3参照)。この構成により、弾性変形部71は、各隙間710の周囲が弾性変形することにより、全体として軸方向に弾性変形可能である。すなわち、弾性変形部71は、所謂スリットスプリングである。
筒部72は、弾性変形部71と同径の円筒状に形成されている。筒部72は、一端が弾性変形部71の一端に接続するよう、弾性変形部71と同軸かつ一体に形成されている。図3では、弾性変形部71と筒部72との境界を二点鎖線で示している。
弾性部材70の一方の端面、すなわち、弾性変形部71の筒部72とは反対側の端面に部材上端面701が形成されている。また、弾性部材70の他方の端面、すなわち、筒部72の弾性変形部71とは反対側の端面に部材下端面702が形成されている。弾性部材70は、部材上端面701と部材下端面702との距離が変化するよう軸方向に弾性変形可能である。
本実施形態では、弾性部材70は、例えばプレス加工等により複数の隙間710を形成した矩形板状のステンレス材料を、両端部が接合するよう筒状に変形させることにより形成することができる。そのため、弾性部材70は、材料の両端部の接合箇所である接合部703を有している。接合部703は、弾性部材70の軸方向に延びるよう形成されている。
図2に示すように、弾性部材70は、部材上端面701がブッシュ52の外側段差面523に当接および係合するよう固定コア本体51とブッシュ52との間に設けられている。すなわち、弾性部材70は、固定コア50の弁座14側に設けられている。本実施形態では、ブッシュ52の外側段差面523と弾性部材70の部材上端面701とは、例えば溶接により接合されている。本実施形態では、ブッシュ52と弾性部材70とは、互いに接合するよう一体に設けられ、サブアッシー化されている。
弾性部材70の内径は、ブッシュ52の外側段差面523に対し弁座14側の外径よりやや大きく設定されている。また、弾性部材70の外径は、固定コア本体51の段差面511に対し弁座14側の内径よりやや小さく設定されている。そのため、弾性部材70の弾性変形部71は、筒部72および部材下端面702が外側段差面523に近付いたり外側段差面523から離れたりするよう弾性変形可能である。
図2(B)に示すように、シール部32が弁座14に当接した状態、すなわち、閉弁状態のとき、部材下端面702は、ブッシュ52の規制面520を含む仮想平面Vpよりも噴孔13(弁座14)側に位置している。また、部材下端面702と可動コア40の上面410との間には、距離d1の隙間S1が形成されている。また、規制面520と上面410との間には、距離d1より大きい距離d2の隙間S2が形成されている。なお、規制面520と固定コア本体51の弁座14側の端面512との距離は、d3である。また、規制面520と部材下端面702との距離は、d2とd1との差に対応している。
弾性部材70は、内周壁と上面410と固定コア50のブッシュ52との間に環状の空間であるダンパ室101を形成している。
本実施形態では、ダンパ室101は、弾性部材70の筒部72の内周壁と上面410と規制面520と鍔部33の外周壁とに囲まれるようにして形成されている。
本実施形態では、閉弁状態のとき、筒部72の弾性変形部71側の端部は、仮想平面Vpに対し噴孔13(弁座14)とは反対側に位置している(図2(B)参照)。すなわち、筒部72の弾性変形部71側の端部は、ダンパ室101に対し弁座14とは反対側に位置している。なお、弾性変形部71の筒部72側の端部は、固定コア本体51の弁座14側の端面512に対し弁座14側に位置している。すなわち、隙間710の少なくとも一部は、端面512に対し弁座14側に位置している。
閉弁状態から、可動コア40が固定コア50側に吸引されて開弁方向に移動すると、上面410が部材下端面702に当接する。これにより、ダンパ室101は密閉空間となる。可動コア40が開弁方向にさらに移動すると、弾性部材70の弾性変形部71が軸方向に圧縮され、上面410が規制面520に当接する。これにより、可動コア40は、開弁方向の移動が規制される。
本実施形態では、弾性部材70は、部材下端面702が、仮想平面Vpと同じ位置、または、仮想平面Vpに対し噴孔13とは反対側の位置に位置するまで変形可能である。
なお、本実施形態におけるニードル30の最大のリフト量、すなわち、フルリフト量は、距離d2に対応している。また、可動コア40の上面410が規制面520に当接したとき、上面410と固定コア本体51の弁座14側の端面512との間に、距離d3のギャップが形成される。
インレット部24から流入した燃料は、固定コア50、アジャスティングパイプ60、ニードル30の軸方向穴部313、径方向穴部314、第1筒部21とニードル30との間、ノズル10とニードル30との間、すなわち、燃料通路100を流通し、噴孔13に導かれる。
本実施形態では、可動コア40が固定コア50側に吸引されている状態でコイル65への通電を停止すると、ニードル30および可動コア40は、スプリング61の付勢力により、弁座14側へ付勢される。これにより、ニードル30が閉弁方向に移動し、シール部32が弁座14に当接し、閉弁する。その結果、噴孔13が閉塞される。シール部32が弁座14に当接した後、可動コア40は、慣性により、鍔部33から離れるようにして弁座14側に移動する。弁座14側に移動した可動コア40は、スプリング62の付勢力により固定コア50側へ付勢され、鍔部33に当接する。
次に、本実施形態の燃料噴射弁1の作動について、説明する。
図1、2に示すように、コイル65に通電されていないときは、ニードル30のシール部32は弁座14に当接している。このとき、ニードル30の鍔部33と可動コア40の上面410とは当接している。すなわち、このとき、閉弁状態である。
図1、2に示す閉弁状態のときにコイル65に通電すると、可動コア40は、固定コア50側に吸引され、開弁方向に移動する。これにより、ニードル30が開弁方向に移動し、シール部32が弁座14から離間し、開弁する。
可動コア40が開弁方向にさらに移動すると、上面410が部材下端面702に当接する。これにより、ダンパ室101は密閉空間となる。可動コア40が開弁方向にさらに移動すると、弾性部材70の弾性変形部71が軸方向に圧縮され、上面410が規制面520に当接する。これにより、可動コア40は、開弁方向の移動が規制される。
可動コア40は、部材下端面702に当接した後、弾性部材70の付勢力により、開弁方向への移動速度が徐々に小さくなる。また、可動コア40は、ダンパ室101内の燃料の流体抵抗、つまり、ダンパ効果により、開弁方向の移動速度がさらに小さくなる。また、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果によって、上面410が規制面520から離れるのが妨げられる。そのため、上面410が規制面520に衝突した後の可動コア40のバウンスを抑制することができる。
可動コア40の上面410が規制面520に当接しているときにコイル65への通電を停止すると、ニードル30および可動コア40は、鍔部33と可動コア40の上面410とが当接した状態で、スプリング61の付勢力により閉弁方向に移動する。これにより、ニードル30のシール部32が弁座14に当接し、閉弁する(図1、2参照)。その後、可動コア40は、慣性で閉弁方向にさらに移動する。これにより、シール部32が弁座14に衝突したときの衝突エネルギーを小さくし、弁座14におけるニードル30のバウンスを抑制することができる。
そして、可動コア40は、スプリング62の付勢力により、開弁方向に移動する。これにより、可動コア40の上面410が鍔部33に当接し、可動コア40が通常位置に戻る(図1、2参照)。
以上説明したように、(1)本実施形態の燃料噴射弁1は、ノズル10とハウジング20とニードル30と可動コア40と固定コア50とスプリング62とコイル65と弾性部材70とを備えている。
ノズル10は、燃料が噴射される噴孔13を有している。ハウジング20は、噴孔13に燃料を導く燃料通路100を有している。
ニードル30は、燃料通路100内を往復移動可能に設けられ、噴孔13を開閉する。
可動コア40は、ニードル30の径方向外側に設けられている。
固定コア50は、可動コア40の固定コア50側の面である上面410に当接することで可動コア40の開弁方向の移動を規制可能な規制面520を有している。
スプリング61は、ニードル30を噴孔13側に付勢可能である。
コイル65は、通電されると、可動コア40を固定コア50側に吸引しニードル30を開弁方向に移動させることが可能である。
弾性部材70は、筒状に形成され、固定コア50の噴孔13側に設けられている。弾性部材70は、ニードル30が噴孔13を閉じた状態のとき、噴孔13側の端面が、規制面520を含む仮想平面Vpよりも噴孔13側に位置し、可動コア40の上面410に当接可能な部材下端面702を噴孔13側の端面に有している。弾性部材70は、軸方向に弾性変形可能である。
弾性部材70は、内周壁と上面410と固定コア50との間に環状の空間であるダンパ室101を形成する。
より詳細には、ノズル10は、燃料が噴射される噴孔13、および、噴孔13の周囲に形成された弁座14を有している。ハウジング20は、筒状に形成され、一端がノズル10に接続され、噴孔13に連通するよう内側に形成され噴孔13に燃料を導く燃料通路100を有している。
ニードル30は、棒状のニードル本体31、弁座14に当接可能なようニードル本体31の一端に形成されたシール部32、および、ニードル本体31の径方向外側に設けられた筒状の鍔部33を有している。ニードル30は、燃料通路100内を往復移動可能に設けられ、シール部32が弁座14から離間または弁座14に当接すると噴孔13を開閉する。
可動コア40は、筒状に形成され、外径が鍔部33の外径より大きく、燃料通路100内の鍔部33の弁座14側においてハウジング20に対し相対移動可能なよう、ニードル本体31の径方向外側に設けられている。
固定コア50は、ハウジング20の内側において可動コア40に対し弁座14とは反対側に設けられ、可動コア40の固定コア50側の面である上面410に当接することで可動コア40の開弁方向の移動を規制可能な規制面520を有している。スプリング61は、ニードル30を弁座14側に付勢可能である。コイル65は、通電されると、可動コア40を固定コア50側に吸引しニードル30を開弁方向に移動させることが可能である。
弾性部材70は、筒状に形成され、固定コア50の弁座14側に設けられている。弾性部材70は、ニードル30が噴孔13を閉じた状態のとき、弁座14側の端面が、規制面520を含む仮想平面Vpよりも弁座14側に位置し、弁座14とは反対側の端面に形成され固定コア50に係合可能な部材上端面701、および、上面410に当接可能な部材下端面702を弁座14側の端面に有している。弾性部材70は、部材上端面701と部材下端面702との距離が変化するよう軸方向に弾性変形可能である。弾性部材70は、内周壁と上面410と固定コア50との間に環状の空間であるダンパ室101を形成する。
本実施形態では、開弁時、可動コア40およびニードル30は、固定コア50側に吸引される。このとき、可動コア40の上面410は、弾性部材70の部材下端面702に衝突する。弾性部材70は、軸方向に弾性変形可能なため、可動コア40およびニードル30の固定コア50側への移動速度を徐々に低下させることができる。また、本実施形態では、弾性部材70と上面410と固定コア50との間にダンパ室101を形成するため、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果によって、可動コア40およびニードル30の固定コア50側への移動速度をさらに低下させることができる。そのため、可動コア40の上面410が規制面520に当接するときの振動および打音を抑制することができる。
また、本実施形態では、開弁時、可動コア40の上面410が規制面520に当接するときの移動速度を低くすることができ、かつ、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果によって、上面410が規制面520から離れるのを妨げることができる。そのため、可動コア40の上面410が規制面520に衝突した後のバウンスを抑制することができる。したがって、燃料の噴射量のばらつきを抑制することができる。
また、(2)本実施形態では、ダンパ室101は、弾性部材70の内周壁と上面410と規制面520とニードル30の鍔部33の外周壁とに囲まれるようにして形成される。そのため、弾性部材70の部材下端面702と上面410とが当接した後は、ダンパ室101を密閉状態にすることができる。これにより、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果を大きくすることができる。
また、(5)本実施形態では、固定コア50は、筒状の固定コア本体51、および、固定コア本体51の内側に設けられる筒状のブッシュ52を有している。規制面520は、ブッシュ52の噴孔13(弁座14)側の端面522に形成されている。そのため、可動コア40との衝突による固定コア本体51の摩耗を防ぐことができる。
また、(6)本実施形態では、弾性部材70は、部材下端面702とは反対側の端面である部材上端面701がブッシュ52に接合している。そのため、弾性部材70とブッシュ52とをサブアッシー化することができる。これにより、部材下端面702と規制面520との距離を容易に調整することができる。
また、(8)本実施形態では、上面410は、可動コア40の固定コア50側の端面411に形成されている。そのため、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果を可動コア40に対し効果的に作用させることができる。
また、(10)本実施形態では、弾性部材70は、部材下端面702が、規制面520を含む仮想平面Vpと同じ位置、または、仮想平面Vpに対し噴孔13とは反対側の位置に位置するまで変形可能である。そのため、ダンパ室101は、可動コア40が弾性部材70の部材下端面702に当接し、部材下端面702が規制面520に位置するまで変形することで、可動コア40が弾性部材70に当接したときよりも小さくなっていく。これにより、ダンパ室101の容積が減少することで、ダンパ室101の圧力が上昇し、可動コア40の開弁方向の移動速度をより小さくすることができる。
また、(11)弾性部材70は、軸方向に複数の隙間710を形成し軸方向に弾性変形可能な筒状の弾性変形部71、および、弾性変形部71の可動コア40側に設けられ噴孔13(弁座14)側の端面に部材下端面702が形成された筒状の筒部72を有している。そのため、筒部72で囲まれたダンパ室101でダンパ効果を作用させながら、弾性変形部71が変形することで、可動コア40の開弁方向の移動速度を効果的に低下させることができる。
また、(12)本実施形態では、筒部72の弾性変形部71側の端部は、規制面520を含む仮想平面Vpに対し噴孔13(弁座14)とは反対側に位置している。そのため、ダンパ室101を密閉空間にすることができ、ダンパ効果を大きくすることができる。
また、(17)本実施形態では、可動コア40は、ニードル30と別体に形成されている。本実施形態は、可動コア40を固定コア50側に付勢可能なスプリング62をさらに備えている。そのため、閉弁時、シール部32が弁座14に衝突したとき、可動コア40は、慣性で閉弁方向にさらに移動する。これにより、シール部32が弁座14に衝突したときの弁座14におけるニードル30のバウンスを抑制することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による燃料噴射弁の一部を図4に示す。第2実施形態は、固定コア50の構成等が第1実施形態と異なる。
第2実施形態では、固定コア50は、第1実施形態で示したブッシュ52を有していない。
弾性部材70は、部材上端面701が固定コア本体51の段差面511に当接および係合するよう固定コア本体51に設けられている。すなわち、弾性部材70は、固定コア50の弁座14側に設けられている。本実施形態では、固定コア本体51の段差面511と弾性部材70の部材上端面701とは、例えば溶接により接合されている。
本実施形態では、弾性部材70の内径は、鍔部33の外径よりやや大きく設定されている。また、弾性部材70の外径は、固定コア本体51の段差面511に対し弁座14側の内径よりやや小さく設定されている。そのため、弾性部材70の弾性変形部71は、筒部72および部材下端面702が段差面511に近付いたり段差面511から離れたりするよう弾性変形可能である。
また、弾性部材70は、内壁が鍔部33の外壁と摺動可能に形成されている。
本実施形態では、固定コア50は、突出部53をさらに有している。突出部53は、固定コア本体51の弁座14側の端面512から弁座14側へ略円筒状に突出するよう形成されている。
本実施形態では、突出部53の弁座14側の端面531に規制面530が形成されている。規制面530は、可動コア40の上面410に当接することで可動コア40の開弁方向の移動を規制可能である。
図4に示すように、閉弁状態のとき、弾性部材70の部材下端面702は、規制面530よりも弁座14側に位置している。
弾性部材70は、上面410および固定コア50の固定コア本体51および突出部53との間に環状の空間であるダンパ室101を形成している。
本実施形態では、ダンパ室101は、弾性部材70の筒部72の外壁と上面410と固定コア50の固定コア本体51および突出部53とに囲まれるようにして形成されている。
本実施形態では、筒部72の弾性変形部71側の端部は、固定コア本体51の弁座14側の端面512に対し弁座14とは反対側に位置している(図4参照)。すなわち、筒部72の弾性変形部71側の端部は、ダンパ室101に対し弁座14とは反対側に位置している。
本実施形態では、閉弁状態から、可動コア40が固定コア50側に吸引されて開弁方向に移動すると、上面410が部材下端面702に当接する。可動コア40が開弁方向にさらに移動すると、弾性部材70の弾性変形部71が軸方向に圧縮され、上面410が規制面530に当接する。これにより、可動コア40は、開弁方向の移動が規制される。本実施形態では、上面410が規制面530に当接したとき、ダンパ室101が密閉空間となる。
本実施形態では、弾性部材70は、部材下端面702が規制面530と同一平面上に位置するまで変形可能である。
なお、本実施形態では、ニードル本体31のシール部32とは反対側の端面は、鍔部33に対し弁座14とは反対側に位置している(図4参照)。そのため、スプリング61の弁座14側の端部の位置が安定する。
以上説明したように、(3)本実施形態では、ダンパ室101は、弾性部材70の外周壁と上面410と固定コア50とに囲まれるようにして形成される。
また、(4)本実施形態では、弾性部材70は、内周壁がニードル30の鍔部33の外周壁と摺動可能に形成されている。そのため、弾性部材70によりニードル30の軸方向の往復移動を案内可能である。また、弾性部材70の隙間710、弾性部材70の内周壁と鍔部33の外周壁との間、および、弾性部材70の外周壁と固定コア本体51の内壁との間においてもダンパ効果を奏することができる。
また、(7)本実施形態では、固定コア50は、筒状の固定コア本体51、および、固定コア本体51の噴孔13(弁座14)側の端面512から弁座14側へ筒状に突出する突出部53を有している。規制面530は、突出部53の噴孔13(弁座14)側の端面531に形成されている。本実施形態では、上面410が規制面530に当接したとき、ダンパ室101が密閉空間となる。このとき、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果は最大になる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による燃料噴射弁の一部を図5に示す。第3実施形態は、ニードル30の構成等が第2実施形態と異なる。
第3実施形態では、ニードル30は、環状部34をさらに有している。環状部34は、鍔部33の径方向外側に設けられている。環状部34は、鍔部33の弁座14側の端部の外壁から径方向外側へ環状の板状に延びるよう形成されている。
環状部34の固定コア50側の端面341は、部材下端面702および規制面530に対向し、部材下端面702および規制面530に当接可能である。本実施形態では、端面341に上面340が形成されている。
環状部34の弁座14側の端面342は、可動コア40の弁座14とは反対側の端面411に当接可能である。
本実施形態では、閉弁状態から、可動コア40が固定コア50側に吸引されて、可動コア40およびニードル30が開弁方向に移動すると、環状部34の上面340が部材下端面702に当接する。可動コア40およびニードル30が開弁方向にさらに移動すると、弾性部材70の弾性変形部71が軸方向に圧縮され、上面340が規制面530に当接する。これにより、ニードル30および可動コア40は、開弁方向の移動が規制される。本実施形態では、上面340が規制面530に当接したとき、ダンパ室101が密閉空間となる。
第3実施形態は、上述した点以外の構成は、第2実施形態と同様である。
以上説明したように、(1)本実施形態では、ニードル30の固定コア50側の面である上面340に当接することで可動コア40の開弁方向の移動を規制可能な規制面530を有する固定コア50を備えている。また、弾性部材70の部材下端面702は、ニードル30の上面340に当接可能である。そのため、第2実施形態と比べ、固定コア50または弾性部材70に当接することによる可動コア40の摩耗を防ぐことができる。
また、(9)本実施形態では、ニードル30は、鍔部33の外周壁の径方向外側に設けられた環状の環状部34をさらに有している。上面340は、環状部34の固定コア50側の端面341に形成されている。これは、発明の具体的な構成を例示するものである。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による燃料噴射弁の一部を図6に示す。第4実施形態は、固定コア50および弾性部材70の構成等が第1実施形態と異なる。
図6(A)に示すように、第4実施形態では、ブッシュ52の弁座14側の端部の内径は、ブッシュ52の弁座14とは反対側の端部の内径より大きく設定されている。また、ブッシュ52の軸方向の中間部の内径は、ブッシュ52の弁座14側の端部の内径より小さく、ブッシュ52の弁座14とは反対側の端部の内径より大きく設定されている。これにより、ブッシュ52の内壁には、可動コア40の上面410に対向する略円環状の第1段差面524および第2段差面525が形成されている。第2段差面525は、第1段差面524の径方向外側に形成されている。
図6(B)に示すように、第4実施形態では、弾性部材70は、第1実施形態で示した筒部72を有していない。弾性部材70は、弾性変形部71のみからなる。
弾性部材70は、部材上端面701がブッシュ52の第1段差面524に当接および係合するようブッシュ52に設けられている。すなわち、弾性部材70は、固定コア50の弁座14側に設けられている。本実施形態では、ブッシュ52の第1段差面524と弾性部材70の部材上端面701とは、例えば溶接により接合されている。本実施形態では、ブッシュ52と弾性部材70とは、互いに接合するよう一体に設けられ、サブアッシー化されている。
本実施形態では、弾性部材70の内径は、鍔部33の外径よりやや大きく設定されている。また、弾性部材70の外径は、ブッシュ52の第1段差面524に対し弁座14側の内径よりやや小さく設定されている。そのため、弾性部材70の弾性変形部71は、部材下端面702が第1段差面524に近付いたり第1段差面524から離れたりするよう弾性変形可能である。
また、弾性部材70は、内壁が鍔部33の外壁と摺動可能に形成されている。
ブッシュ52の弁座14側の端面522に形成された規制面520は、可動コア40の上面410に当接することで、可動コア40の開弁方向の移動を規制可能である。
図6(A)に示すように、閉弁状態のとき、弾性部材70の部材下端面702は、規制面520よりも弁座14側に位置している。
弾性部材70は、上面410および固定コア50のブッシュ52との間に環状の空間であるダンパ室101を形成している。
本実施形態では、ダンパ室101は、弾性部材70の弾性変形部71の外壁と上面410と固定コア50のブッシュ52の第2段差面525とに囲まれるようにして形成されている。
本実施形態では、閉弁状態から、可動コア40が固定コア50側に吸引されて開弁方向に移動すると、上面410が部材下端面702に当接する。可動コア40が開弁方向にさらに移動すると、弾性部材70の弾性変形部71が軸方向に圧縮され、上面410が規制面520に当接する。これにより、可動コア40は、開弁方向の移動が規制される。本実施形態では、上面410が規制面520に当接したとき、ダンパ室101が密閉空間となる。
本実施形態では、弾性部材70は、部材下端面702が規制面520と同一平面上に位置するまで変形可能である。
なお、本実施形態では、ニードル本体31のシール部32とは反対側の端面は、鍔部33に対し弁座14とは反対側に位置している(図6(A)参照)。そのため、スプリング61の弁座14側の端部の位置が安定する。
以上説明したように、(4)本実施形態では、弾性部材70は、内周壁がニードル30の鍔部33の外周壁と摺動可能に形成されている。そのため、弾性部材70によりニードル30の軸方向の往復移動を案内可能である。また、弾性部材70の隙間710、弾性部材70の内周壁と鍔部33の外周壁との間、および、弾性部材70の外周壁とブッシュ52の内周壁との間においてもダンパ効果を奏することができる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による燃料噴射弁の一部を図7に示す。第5実施形態は、弾性部材70の構成等が第1実施形態と異なる。
第5実施形態では、弾性変形部71と筒部72とは、別体に形成されている。筒部72は、例えば略円筒状の部材を所定の長さに切断することにより形成することができる。そのため、筒部72には、弾性変形部71の有する接合部703のような部位は形成されていない。
筒部72は、一端が弾性変形部71の一端に接合するよう、弾性変形部71と同軸に設けられている。筒部72と弾性変形部71とは、例えば溶接により接合されている。筒部72と弾性変形部71との間には、周方向に延びる接合部704が形成されている。
弾性部材70は、通路721をさらに有している。通路721は、筒部72の弁座14側の端部に形成されている。通路721は、弾性部材70の部材下端面702から弾性変形部71側へ半円状に切り欠かれるようにして形成されている。通路721は、ダンパ室101と外部とを連通可能である。本実施形態では、通路721は、例えば筒部72の周方向に等間隔で複数形成されている。具体的には、通路721は、4つ形成されている。
図7に示すように、本実施形態では、弾性部材70の部材下端面702は、シール部32が弁座14に当接した状態のとき、すなわち、閉弁状態のとき、上面410に当接している。つまり、ダンパ室101は、閉弁状態のとき、密閉状態である。ただし、通路721により、ダンパ室101と外部とは連通している。なお、筒部72には接合部703が形成されていないため、燃料が通路721以外の部位を経由してダンパ室101から流出するのを抑制することができる。
本実施形態では、閉弁状態から、可動コア40が固定コア50側に吸引されて開弁方向に移動すると、上面410が部材下端面702に当接した状態で、弾性部材70の弾性変形部71が軸方向に圧縮される。可動コア40が開弁方向にさらに移動すると、上面410が規制面520に当接する。これにより、可動コア40は、開弁方向の移動が規制される。
本実施形態では、可動コア40の上面410が規制面520に近付くとき、ダンパ室101の容積が減少し、ダンパ室101内の燃料は、通路721を通ってダンパ室101の外部へ流出する。そのため、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果を奏しつつ、可動コア40を開弁方向へ円滑に移動させることができる。
本実施形態では、可動コア40が開弁方向に移動するとき、通路721が規制面520に達するまでは、ダンパ室101と外部とを接続する流路(通路721)の流路面積は、変化しない。そのため、このときのダンパ室101によるダンパ効果は、一定である。通路721が規制面520に達してから上面410が規制面520に当接するまでは、流路面積が減少する。そのため、このときのダンパ室101によるダンパ効果は、徐々に大きくなる。これにより、可動コア40の上面410が規制面520に衝突する直前にダンパ効果を大きくすることができ、可動コア40が規制面520に衝突するときの移動速度を効果的に低下させることができる。このように、本実施形態では、ダンパ室101によるダンパ効果を、規制面520に対する可動コア40の位置に応じて変化させることができる。
以上説明したように、(13)本実施形態では、筒部72は、ダンパ室101と外部とを連通可能な通路721を有している。そのため、可動コア40を固定コア50側へ吸引するとき、可動コア40の上面410が部材下端面702に当接しダンパ室101が密閉状態になっても、ダンパ室101内の燃料が通路721を経由して外部へ流出するため、可動コア40を開弁方向へ円滑に移動させることができる。
また、(14)本実施形態では、通路721は、筒部72の噴孔13(弁座14)側の端部に形成されている。そのため、上述のように、可動コア40が固定コア50側に吸引されて開弁方向に移動するとき、通路721が規制面520に達するまでと、達した後とで、ダンパ室101によるダンパ効果を変化させることができる。これにより、可動コア40の上面410が規制面520の近傍に位置するまでは可動コア40の開弁方向への移動速度を徐々に低下させつつ、可動コア40の上面410が規制面520に衝突するときの可動コア40の移動速度を特に効果的に低下させることができる。
また、(16)本実施形態では、部材下端面702は、ニードル30が噴孔13を閉じた状態、すなわち、シール部32が弁座14に当接した状態のとき、上面410に当接している。そのため、可動コア40を固定コア50側へ吸引するとき、可動コア40の開弁方向への移動開始初期から、ダンパ室101によるダンパ効果を効果的に奏することができる。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態による燃料噴射弁の一部を図8に示す。第6実施形態は、弾性部材70の構成等が第5実施形態と異なる。
第6実施形態では、閉弁状態のとき、通路721は、筒部72の弁座14側の端部(部材下端面702)から少なくとも規制面520まで延びるようにして形成されている(図8(A)、(B)参照)。通路721の弁座14とは反対側の端部は、規制面520に対し弁座14とは反対側に位置している。
第6実施形態は、上述した点以外の構成は、第5実施形態と同様である。
本実施形態では、閉弁状態から、可動コア40が固定コア50側に吸引されて開弁方向に移動すると、第5実施形態と同様、上面410が部材下端面702に当接した状態で、弾性部材70の弾性変形部71が軸方向に圧縮される。可動コア40が開弁方向にさらに移動すると、上面410が規制面520に当接する。これにより、可動コア40は、開弁方向の移動が規制される。
本実施形態では、可動コア40の上面410が規制面520に近付くとき、ダンパ室101の容積が減少し、ダンパ室101内の燃料は、通路721を通ってダンパ室101の外部へ流出する。そのため、ダンパ室101内の燃料によるダンパ効果を奏しつつ、可動コア40を開弁方向へ円滑に移動させることができる。
本実施形態では、可動コア40が開弁方向に移動するとき、ダンパ室101と外部とを接続する流路(通路721)の流路面積は減少する。そのため、このときのダンパ室101によるダンパ効果は、徐々に大きくなる。これにより、可動コア40の上面410が規制面520に衝突する直前にダンパ効果を大きくすることができ、可動コア40が規制面520に衝突するときの移動速度を効果的に低下させることができる。このように、本実施形態では、可動コア40の上面410が規制面520に近付くに従い、ダンパ室101によるダンパ効果を大きくすることができる。
以上説明したように、(15)本実施形態では、通路721は、筒部72の噴孔13(弁座14)側の端部から少なくとも規制面520を含む仮想平面Vpまで延びるようにして形成されている。そのため、上述のように、可動コア40が固定コア50側に吸引されて開弁方向に移動するとき、可動コア40の上面410が規制面520に近付くに従い、ダンパ室101によるダンパ効果を大きくすることができる。これにより、可動コア40の上面410が規制面520に衝突する直前まで可動コア40の開弁方向への移動速度を徐々に低下させ、可動コア40の上面410が規制面520に衝突するときの可動コア40の移動速度を効果的に低下させることができる。
(他の実施形態)
上述の複数の実施形態は、構成上の阻害要因がない限り、どのように組み合わせてもよい。例えば第1実施形態において、第2実施形態で示した突出部53を固定コア本体51に設けることとしてもよい。また、例えば第4実施形態において、第5、6実施形態で示したように、閉弁状態のとき、弾性部材70の部材下端面702が可動コア40の上面410に当接していることとしてもよい。
また、上述の実施形態では、弾性部材70が、軸方向に延びる接合部703を有する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、弾性部材70は、軸方向に延びる接合部703を有しない構成でもよい。このような構成の弾性部材70は、例えば筒状の部材に複数の穴を空けて隙間710を形成すればよい。
また、本発明の他の実施形態では、弾性部材70の弾性変形部71は、軸方向に弾性変形可能な部材であれば、スリットスプリングに限らず、コイルドウェーブスプリング、コイルスプリング等どのような部材であってもよい。なお、弾性変形部71がコイルドウェーブスプリングまたはコイルスプリングである場合、軸方向に複数の隙間が形成されている。
また、上述の第5、6実施形態では、弾性部材70の筒部72に4つの通路721を形成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、通路721は、いくつ形成されていてもよい。また、通路721は、ダンパ室101と外部とを連通可能であれば、筒部72の弁座14側の端部以外の場所に形成されていてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ニードル30と可動コア40とは、一体に形成されていてもよい。この場合、第2付勢部材としてのスプリング62を省略できる。
また、上述の実施形態では、第2筒部22が、第1筒部21および第3筒部23とは別部材により形成され、互いに溶接により接続される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、第2筒部22は、例えば第1筒部21または第3筒部23と同一の材料により、第1筒部21または第3筒部23と一体に形成されることとしてもよい。この場合、例えば、第2筒部22の軸方向の少なくとも一部の肉厚を小さくすることにより磁気絞り部を形成してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ハウジング20は、例えば鉄、アルミ等、ステンレス以外の金属により形成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、ノズル10とハウジング20の第1筒部21とが別部材により形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、ノズル10とハウジング20の第1筒部21とは、同一の材料により一体に形成されることとしてもよい。
また、上述の実施形態では、可動コア40に通孔43を形成する例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、可動コア40に通孔43を形成しなくてもよい。この場合、通電初期の可動コア40の移動速度は低減するものの、可動コア40の過剰な移動速度を抑制することができ、フルリフト時のニードルのオーバーシュート抑制やフルリフト時の可動コア40のバウンス抑制、ニードル閉弁時のバウンス抑制に有利な構成となる。
本発明は、直噴式のガソリンエンジンに限らず、例えばポート噴射式のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等に適用してもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。