以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成等の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
[ポリカーボネート樹脂]
前記繊維は、上述のように所定のポリカーボネート樹脂を含有する。本発明の繊維は、所定のポリカーボネート樹脂特有の光沢感、透明感、滑り性があり天然シルク繊維調の質感を保有している。また、天然シルク繊維の欠点となる太陽光による黄変が少なく、害虫による虫食いがないため耐久性の面で優れることが予想される。さらに、板状に巻いた場合、金属光沢感がある。例えば従来のメタル調繊維は、繊維表面をスパッタリングして、金属光沢を発現しているが、本発明の繊維は、スパッタリング等の処理を行わなくても金属光沢を発現できる。本発明の繊維の金属光沢感は、現在のトレンドにも合致しており、加工コストの面でも従来のメタル長繊維と比較して商品価値が高いことが予想される。
ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(a1)由来の構成単位(A1)と、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物(a2)由来の構成単位(A2)とを含む。ポリカーボネート樹脂は、例えば、構成単位(A1)と構成単位(A2)とを少なくとも含む共重合体である。ポリカーボネート樹脂が構成単位(A1)と構成単位(A2)とを含有するため、分子量を高めることができ、さらに繊維としての各種機械物性を向上させることができる。その結果、繊維は、上述のように、耐熱性が高く、光沢感およびすべり性に優れている。例えばアクリル繊維は、天然ウール繊維の代替として使用されており、その欠点として、毛玉が発生し易いことが挙げられる。一般に、繊維強度が高いと毛玉が取れ難い。しかし、本発明の繊維は、繊維強度が低く滑り性が良いため、毛玉が発生し難いことが予想される。
構成単位(A1)を少なくとも含むポリカーボネート樹脂は、細菌等の菌に対する優れた撥菌性を示し、表面に付着した菌を例えば水により簡単に洗い流すことができる。それ故、ポリカーボネート樹脂を含有する繊維自体が撥菌性を有し、このような繊維は、合成繊維製品の各種用途に好適である。具体的には、繊維は、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途などに利用することができる。更に、不織布、フィルターなどの資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などに利用できる。
さらに、構成単位(A2)が芳香環構造を有していないため、ポリカーカーボネート樹脂からなる繊維は耐光性等の耐候性に優れている。なお、ポリカーボネート樹脂は、構成単位(A1)及び構成単位(A2)以外にも、他のジヒドロキシ化合物に由来の構成単位を含むことができる。耐候性をより向上させるという観点からは、他のジヒドロキシ化合物に由来の構成単位も芳香環構造を有していないことが好ましい。
ポリカーボネート樹脂において、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位100モル%に対する構成単位(A1)の含有割合は、50モル%を超えることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂中の生物起源物質含有率を高めることができるという効果、耐熱性をより向上させることができるという効果、撥菌性をより向上させることができるという効果が得られる。かかる効果をさらに向上させるという観点からは、全ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位100モル%に対する構成単位(A1)の含有割合は、55モル%以上95モル%以下であることがより好ましく、60モル%以上90モル%以下であることがさらに好ましく、65モル%以上85モル%以下であることが特に好ましい。なお、少なくとも構成単位(A1)を含むポリカーボネート樹脂を2種以上用いる場合には、その混合比率から計算した構成単位(A1)の含有割合が前記の範囲であれば、同様の効果が得られると考えられる。
(ジヒドロキシ化合物(a1))
構成単位(A1)を構成するジヒドロキシ化合物(a1)は、下記の式(1)で表される化合物である。
ジヒドロキシ化合物(a1)としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド(すなわち、ISB)、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジヒドロキシ化合物(a1)の中でも、ISBが、入手及び製造のし易さ、耐候性、光学特性、繊維化性、耐熱性及びカーボンニュートラルの面から最も好ましい。ISBは、植物由来の資源として豊富に存在すると共に容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られる。
なお、ジヒドロキシ化合物(a1)は、酸素によって徐々に酸化されやすい。したがって、保管中又は製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。
(ジヒドロキシ化合物(a2))
構成単位(A2)を構成するジヒドロキシ化合物(a2)は、芳香環構造を有さないジヒドロキシ化合物である。また、ジヒドロキシ化合物(a2)は、ジヒドロキシ化合物(a1)を含まない。すなわち、ジヒドロキシ化合物(a2)は、芳香環構造を有さず、かつ、式(1)で表される化合物以外のジヒドロキシ化合物である。ジヒドロキシ化合物(a2)としては、ポリカーボネート樹脂に要求される特性に応じて種々の化合物を適宜選択することができる。また、ジヒドロキシ化合物(a2)としては、1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を併用してもよい。ジヒドロキシ化合物(a2)と、上述のジヒドロキシ化合物(a1)とを併用することにより、ポリカーボネート樹脂の柔軟性や機械物性の改善、繊維化性の改善などが可能である。
より好ましくは、ジヒドロキシ化合物(a2)としては、脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物、及びエーテル含有ジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物がよい。これらのジヒドロキシ化合物(a2)は、柔軟な分子構造を有するため、ジヒドロキシ化合物(a1)由来の構成単位(A1)と、ジヒドロキシ化合物(a2)由来の構成単位(A2)とを含むポリカーボネート樹脂の靭性をより向上させることができる。これらのジヒドロキシ化合物の中でも、靭性を向上させる効果の大きい脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物を用いることがさらに好ましく、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物を用いることが最も好ましい。脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物、脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物、エーテル含有ジヒドロキシ化合物の具体例としては、以下の通りである。
脂肪族炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物を採用することができる。エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物;1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール等の分岐鎖を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物。
脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、例えば、以下のジヒドロキシ化合物を採用することができる。2,2,4,4―テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、リモネン等の、テルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール又は3級アルコールであるジヒドロキシ化合物。
エーテル含有ジヒドロキシ化合物としては、オキシアルキレングリコール類やアセタール環を含有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。オキシアルキレングリコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等を採用することができる。
アセタール環を含有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、下記構造式(2)で表されるスピログリコールや、下記構造式(3)で表されるジオキサングリコール等を採用することができる。
(添加剤等)
ポリカーボネート樹脂の原料として用いられる上述のジヒドロキシ化合物は、抗菌剤、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤又は熱安定剤等の安定剤を含んでいても良い。特に、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物(a1)は、酸性状態において変質しやすい性質を有する。したがって、ポリカーボネート樹脂の合成過程において塩基性安定剤を使用することにより、ジヒドロキシ化合物(a1)の変質を抑制することができ、その結果、ポリカーボネート樹脂の品質をより向上させることができる。
塩基性安定剤としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations2005)における1族又は2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩及び脂肪酸塩;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド及びブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、3−アミノ−1−プロパノール、エチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール及びアミノキノリン等のアミン系化合物、並びにジ−(tert−ブチル)アミン及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系化合物。
ジヒドロキシ化合物(a1)中における前記塩基性安定剤の含有量に特に制限はないが、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は酸性状態では不安定であるため、塩基性安定剤を含むジヒドロキシ化合物の水溶液のpHが7付近となるように塩基性安定剤の含有量を設定することが好ましい。
ジヒドロキシ化合物(a1)中の塩基性安定剤の含有量は、0.0001〜1質量%であることが好ましい。この場合には、ジヒドロキシ化合物(a1)の変質、変性を防止する効果が得られる。この効果をさらに高めるという観点から、塩基性安定剤の含有量は0.001〜0.1質量%であることがより好ましい。
(炭酸ジエステル)
ポリカーボネート樹脂は、種々の方法により合成することができる。例えば、ジヒドロキシ化合物(a1)、ジヒドロキシ化合物(a2)と、炭酸ジエステルとをエステル交換反応により重縮合させることにより合成できる。より詳細には、重縮合と共に、エステル交換反応において副生するモノヒドロキシ化合物等を反応系外に除去することによって得ることができる。
炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(4)で表される化合物を採用することができる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記一般式(4)において、A1及びA2は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基又は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、A1とA2とは同一であっても異なっていてもよい。A1及びA2としては、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を採用することが好ましく、無置換の芳香族炭化水素基を採用することがより好ましい。
炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(すなわち、DPC)及びジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート並びにジ−tert−ブチルカーボネート等を採用することができる。これらの炭酸ジエステルの中でも、ジフェニルカーボネート又は置換ジフェニルカーボネートを用いることが好ましく、ジフェニルカーボネートを用いることが特に好ましい。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、不純物が重縮合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色調を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
前記エステル交換反応は、エステル交換反応触媒(以下、エステル交換反応触媒を「重合触媒」と言う。)の存在下で進行する。重合触媒の種類は、エステル交換反応の反応速度及び得られるポリカーボネート樹脂の品質に非常に大きな影響を与え得る。
重合触媒としては、得られるポリカーボネート樹脂の透明性、色調、耐熱性、耐候性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されない。重合触媒としては、例えば、長周期型周期表における第I族又は第II族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、並びに塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を使用することができ、中でも1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が好ましい。
前記の1族金属化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩及び2セシウム塩等。
1族金属化合物としては、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、リチウム化合物が好ましい。
前記の2族金属化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸ストロンチウム等。
2族金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物又はバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色調の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、カルシウム化合物が最も好ましい。
なお、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、塩基性化合物を用いることなく1族金属化合物及び/又は2族金属化合物を使用することが特に好ましい。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン及び四級ホスホニウム塩等。
前記の塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド及びブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等。
前記のアミン系化合物としては、例えば、以下の化合物を採用することができる。4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン及びグアニジン等。
重合触媒の使用量は、反応に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1〜300μmolであることが好ましく、0.5〜100μmolであることがより好ましく、1〜50μmolであることが特に好ましい。
重合触媒として、長周期型周期表における第1属金属および第2族金属及びリチウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合は、重合触媒の使用量は、該金属を含む化合物の金属原子量として、反応に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、0.1μmol以上が好ましく、0.3μmol以上がより好ましく、0.5μmol以上が特に好ましい。また、重合触媒の使用量は、金属原子量として、10μmol以下が好ましく、5μmol以下がより好ましく、3μmol以下が特に好ましい。
なお、重合触媒とした上記の金属は、洗浄などの特殊な操作をしない限りは、ポリカーボネート樹脂中に含有されるものである。
重合触媒の使用量を上述の範囲に調整することにより、重合速度を高めることができるため、重合温度を必ずしも高くすることなく所望の分子量のポリカーボネート樹脂を得ることが可能になる。さらに、副反応の併発を抑制することができる。その結果、ポリカーボネート樹脂の色調の悪化をより一層防止することができると共に、繊維化時の着色をより一層防止することができる。
1族金属の中でもナトリウム、カリウム、又はセシウムを含む化合物がポリカーボネート樹脂の色調へ与える影響や、鉄がポリカーボネート樹脂へ与える影響を考慮すると、ポリカーボネート樹脂中のナトリウム、カリウム、セシウム、及び鉄の合計含有量は、1質量ppm以下であることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂の色調の悪化をより一層防止することができ、ポリカーボネート樹脂の色調をより一層良好なものにすることができる。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂中のナトリウム、カリウム、セシウム、及び鉄の合計含有量は、0.5質量ppm以下であることがより好ましい。なお、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料又は反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、ポリカーボネート樹脂中のこれらの金属の化合物の合計量は、ナトリウム、カリウム、セシウム及び鉄の合計の含有量として、上述の範囲にすることが好ましい。
(ポリカーボネート樹脂の合成)
重合触媒の存在下でのエステル交換反応により、ジヒドロキシ化合物(a1)とジヒドロキシ化合物(a2)と炭酸ジエステルとを重縮合させることによってポリカーボネート樹脂を合成することができる。以下適宜、ジヒドロキシ化合物(a1)とジヒドロキシ化合物(a2)との両方を総称してジヒドロキシ化合物という。
ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上、かつ、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下の範囲とし、中でも100℃以上120℃以下が好適である。この場合には、溶解速度を高めたり、溶解度を十分に向上させたりすることができ、固化等の不具合を十分に回避することができる。さらに、この場合には、ジヒドロキシ化合物の熱劣化を十分に抑制することができ、結果的に得られるポリカーボネート樹脂の色調をより一層良好なものにすることができると共に、耐候性の向上も可能になる。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルと混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001〜10vol%、中でも0.0001〜5vol%、特には0.0001〜1vol%の雰囲気下で行うことが好ましい。この場合には、色調をより良好なものにすることができると共に、反応性を高めることができる。
ポリカーボネート樹脂を得るためには、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、炭酸ジエステルを0.90〜1.20のモル比率で用いることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂のヒドロキシ基末端量の増加を抑制することができるため、ポリマーの熱安定性の向上が可能になる。そのため、繊維化時の着色をより一層防止したり、エステル交換反応の速度を向上させたりすることができる。また、所望の高分子量体をより確実に得ることが可能になる。さらに炭酸ジエステルの使用量を前記範囲内に調整することにより、エステル交換反応の速度が低下を抑制することができ、所望の分子量のポリカーボネート樹脂のより確実な製造が可能になる。また、この場合には、反応時の熱履歴の増大を抑制することができるため、ポリカーボネート樹脂の色調や耐候性をより一層良好なものにすることができる。さらにこの場合には、ポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量を減少させることができ、繊維化時の汚れや臭気の発生を回避又は緩和することができる。以上と同様の観点から、全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステル使用量は、モル比率で、0.95〜1.10であることがより好ましい。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせの方法があるが、より少ない熱履歴でポリカーボネート樹脂が得られ、生産性にも優れている連続式を採用することが好ましい。
重合速度の制御や得られるポリカーボネート樹脂の品質の観点からは、反応段階に応じてジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが重要である。具体的には、重縮合反応の反応初期においては相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、反応後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましい。この場合には、未反応のモノマーの留出を抑制し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのモル比率を所望の比率に調整し易くなる。その結果、重合速度の低下を抑制することができる。また、所望の分子量や末端基を持つポリマーをより確実に得ることが可能になる。
また、重縮合反応における重合速度はヒドロキシ基末端とカーボネート基末端のバランスによって制御される。そのため、未反応モノマーの留出によって末端基のバランスが変動すると、重合速度を一定に制御することが難しくなり、得られる樹脂の分子量の変動が大きくなるおそれがある。樹脂の分子量は溶融粘度と相関するため、得られた樹脂を溶融加工する際に、溶融粘度が変動し、繊維化体の品質を一定に保つことが難しくなることがある。かかる問題は、特に連続式で重縮合反応を行う場合に起こりやすい。
留出する未反応モノマーの量を抑制するためには、重合反応器に還流冷却器を用いることが有効であり、特に未反応モノマーが多い反応初期において高い効果を示す。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。冷媒温度をこれらの範囲に調整することにより、還流量を十分に高め、その効果が十分得られると共に、留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率を十分に向上させることができる。その結果、反応率の低下を防止することができ、得られる樹脂の着色をより一層防止することができる。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、得られるポリカーボネート樹脂の色調をより良好なものにするためには、前述の重合触媒の種類と量の選定が重要である。
ポリカーボネート樹脂は、重合触媒を用いて、通常、2段階以上の工程を経て製造される。重縮合反応は、1つの重縮合反応器を用い、順次条件を変えて2段階以上の工程で行ってもよいが、生産効率の観点からは、複数の反応器を用い、それぞれの条件を変えて多段階で行うことが好ましい。
重縮合反応を効率よく行う観点から、反応液中に含まれるモノマーが多い反応初期においては、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制することが重要である。また、反応後期においては、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることにより、平衡を重縮合反応側にシフトさせることが重要になる。従って、反応初期に好適な反応条件と、反応後期に好適な反応条件とは通常異なっている。それ故、直列に配置された複数の反応器を用いることにより、それぞれの条件を容易に変更することができ、生産効率を向上させることができる。
ポリカーボネート樹脂の製造に使用される重合反応器は、上述の通り、少なくとも2つであればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは4つである。重合反応器が2つ以上であれば、各重合反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数行ったり、連続的に温度・圧力を変えたりしてもよい。
重合触媒は、原料調製槽や原料貯槽に添加することもできるし、重合反応器に直接添加することもできる。供給の安定性、重縮合反応の制御の観点からは、重合反応器に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、水溶液で重合触媒を供給することが好ましい。
重縮合反応の温度を調整することにより、生産性の向上や製品への熱履歴の増大の回避が可能になる。さらに、モノマーの揮散、及びポリカーボネート樹脂の分解や着色をより一層防止することが可能になる。具体的には、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することができる。即ち、重合反応器の内温の最高温度は、通常150〜250℃、好ましくは160〜240℃、更に好ましくは170〜230℃の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力(以下、圧力とは絶対圧力を表す)は、通常1〜110kPa、好ましくは5〜70kPa、さらに好ましくは7〜30kPaの範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間の範囲で設定する。第1段目の反応は、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施されることが好ましい。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を1kPa以下にすることが好ましい。また、重合反応器の内温の最高温度は、通常200〜260℃、好ましくは210〜250℃の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1〜10時間、好ましくは0.3〜6時間、特に好ましくは0.5〜3時間の範囲で設定する。
ポリカーボネート樹脂の着色や熱劣化をより一層抑制し、色調がより一層良好なポリカーボネート樹脂を得るという観点からは、全反応段階における重合反応器の内温の最高温度を210〜240℃とすることが好ましい。また、反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重縮合反応の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
連続重合において、最終的に得られるポリカーボネート樹脂の分子量を一定水準に制御するには、必要に応じて重合速度を調節することが好ましい。その場合は、最終段の重合反応器の圧力を調整することが操作性の良い方法である。
また、前述したようにヒドロキシ基末端とカーボネート基末端の比率によって重合速度が変化するため、あえて片方の末端基を減らして、重合速度を抑制し、その分、最終段の重合反応器の圧力を高真空に保つことで、モノヒドロキシ化合物をはじめとした樹脂中の残存低分子成分を低減することができる。しかし、この場合には、片方の末端が少なくなりすぎると、末端基バランスが少し変動しただけで、極端に反応性が低下し、得られるポリカーボネート樹脂の分子量が所望の分子量に満たなくなるおそれがある。かかる問題を回避するため、最終段の重合反応器で得られるポリカーボネート樹脂は、ヒドロキシ基末端とカーボネート基末端とも10mol/ton以上含有することが好ましい。一方、両方の末端基が多すぎると、重合速度が速くなり、分子量が高くなりすぎてしまうため、片方の末端基は60mol/ton以下であることが好ましい。
このようにして、末端基の量と最終段の重合反応器の圧力を好ましい範囲に調整することで、重合反応器の出口において、樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量を低減することができる。重合反応器の出口における樹脂中のモノヒドロキシ化合物の残存量は、2000質量ppm以下であることが好ましく、1500質量ppm以下であることがより好ましく、1000質量ppm以下であることが更に好ましい。このように、重合反応器の出口におけるモノヒドロキシ化合物の含有量を低減することにより、後の工程においてモノヒドロキシ化合物等の脱揮を容易に行うことができる。
モノヒドロキシ化合物の残存量は少ない方が好ましいが、100質量ppm未満まで減らそうとすると、片方の末端基の量を極端に少なくし、重合反応器の圧力を高真空に保つような運転条件を取る必要がある。この場合には、前述のとおり、得られるポリカーボネート樹脂の分子量を一定水準に保つことが難しくなるので、モノヒドロキシ化合物の残存量は通常100質量ppm以上、好ましくは150質量ppm以上である。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じて精製を行った後、他の化合物の原料として再利用することが好ましい。例えば、モノヒドロキシ化合物がフェノールである場合、ジフェニルカーボネートやビスフェノールA等の原料として用いることができる。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、90℃以上が好ましい。この場合には、前記ポリカーボネート樹脂の耐熱性と生物起源物質含有率とをバランス良く向上させることができる。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、120℃以上が特に好ましい。一方、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は170℃以下が好ましい。この場合には、前述の溶融重合によって溶融粘度を小さくすることができ、充分な分子量のポリマーを得ることができる。また、重合温度を高くして溶融粘度を下げることにより、分子量を高くしようとした場合には、構成単位(a1)の耐熱性が充分でないため、着色し易くなるおそれがある。分子量の向上と着色の防止をよりバランス良く向上できるという観点から、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、165℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましく、145℃未満が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度が高いほど分子量が大きいことを示す。還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.33dL/g以上が好ましい。この場合には、繊維の機械的強度をより向上させることができる。一方、還元粘度は、通常1.20dL/g以下であり、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。これらの場合には、繊維化時の流動性を向上させることができ、生産性や繊維化性をより向上させることができる。なお、ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、塩化メチレンを溶媒として樹脂の濃度を0.6g/dLに精密に調整した溶液を用いて、ウベローデ粘度管により温度20.0℃±0.1℃の条件下で測定した値を使用する。還元粘度の測定方法の詳細は実施例において説明する。
ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は、400Pa・s以上3000Pa・s以下が好ましい。この場合には、繊維が脆くなることを防止し、機械物性をより向上させることができる。さらにこの場合には、繊維化加工時における流動性を向上させ、繊維の外観が損なわれたり、寸法精度が悪化したりすることを防止することができる。さらにこの場合には、剪断発熱により樹脂温度が上昇することに起因する、着色や発泡をより一層防止することができる。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は、600Pa・s以上2500Pa・s以下であることがより好ましく、800Pa・s以上2000Pa・s以下であることがさらにより好ましい。なお、本明細書において溶融粘度とは、キャピラリーレオメータ[東洋精機(株)製]を用いて測定される、温度240℃、剪断速度91.2sec-1における溶融粘度をいう。
ポリカーボネート樹脂は、触媒失活剤を含むことが好ましい。触媒失活剤としては、酸性物質で、重合触媒の失活機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、亜リン酸、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、P−トルエンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩のごときホスホニウム塩;デシルスルホン酸テトラメチルアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩のごときアンモニウム塩;およびベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、ヘキサデシルスルホン酸エチルのごときアルキルエステル等を挙げることができる。
触媒失活剤は、下記構造式(5)または下記構造式(6)で表される部分構造のいずれかを含むリン系化合物(以下、「特定リン系化合物」という。)を含んでいることが好ましい。前記特定リン系化合物は、重縮合反応が完了した後、即ち、例えば混練工程やペレット化工程等の際に添加することにより後述する重合触媒を失活させ、それ以降に重縮合反応が不要に進行することを抑制できる。その結果、繊維化工程等においてポリカーボネート樹脂が加熱された際の重縮合の進行を抑制でき、ひいては前記モノヒドロキシ化合物の脱離を抑制することができる。また、重合触媒を失活させることにより、高温下でのポリカーボネート樹脂の着色をより一層抑制することができる。
構造式(5)又は構造式(6)で表される部分構造を含む特定リン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル等を採用することができる。特定リン系化合物のうち、触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルであり、特に亜リン酸が好ましい。
ホスホン酸としては、例えば以下の化合物を採用することができる。ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物等。
ホスホン酸エステルとしては、例えば以下の化合物を採用することができる。ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p−メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert−ブチル、(4−クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチル等。
酸性リン酸エステルとしては、例えば以下の化合物を採用することができる。リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、又はジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩等。
特定リン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂中の特定リン系化合物の含有量は、リン原子として0.1質量ppm以上5質量ppm以下であることが好ましい。この場合には、前記特定リン系化合物による触媒失活や着色抑制の効果を十分に得ることができる。また、この場合には、特に高温・高湿度での耐久試験において、ポリカーボネート樹脂の着色をより一層防止することができる。
また、特定リン系化合物の含有量を重合触媒の量に応じて調節することにより、触媒失活や着色抑制の効果をより確実に得ることができる。特定リン系化合物の含有量は、重合触媒の金属原子1molに対して、リン原子の量として0.5mol当量以上5mol当量以下とすることが好ましく、0.7mol当量以上4mol当量以下とすることがより好ましく、0.8mol当量以上3mol当量以下とすることが特に好ましい。
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂は、これを成形してなる厚さ2mmの成形体の厚さ方向の全光線透過率が80%以上であることが好ましい。また、透明用途への適用性と原着時の鮮映性が良好になるという観点から、全光線透過率は、85%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、厚さ2mmの成形体のヘイズは、3%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。なお、全光線透過率の測定方法は、後述の実施例において説明する。ヘイズも全光線透過率と同様の方法により測定することができる。
また、ポリカーボネート樹脂においては、DSC法で測定したガラス転移温度のピークが単一であることが好ましい。また、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、100℃〜150℃が好ましい。この場合には、耐熱性をより向上させることができるため、繊維の変形をより防止することができる。また、この場合には、樹脂の繊維化時におけるポリカーボネート樹脂の熱劣化をより一層抑制することができ、繊維としての光沢感をより向上させることができる。同様の観点から、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、90℃〜145℃がより好ましく、100℃〜140℃さらに好ましい。
[その他の添加剤]
上述のポリカーボネート樹脂を含む繊維は、さらに種々の添加剤を含有することができる。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤、加水分解抑制剤、発泡剤、核剤等があり、ポリカーボネート樹脂に通常用いられる添加剤を使用することができる。このような添加剤を含有する繊維は、例えばポリカーボネート樹脂と添加剤とを含有するポリカーボネート樹脂組成物を繊維化することにより得ることができる。
「酸化防止剤」
酸化防止剤としては、樹脂に使用される一般的な酸化防止剤が使用できるが、酸化安定性、熱安定性観点から、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、およびフェノール系酸化防止剤が好ましい。ここで、酸化防止剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、5質量部以下が好ましい。この場合には、繊維化時における金型の汚染をより確実に防止し、表面外観が優れ、光沢感やさらさら感(すべり性)に優れた繊維を得ることが可能になる。同様の観点から、酸化防止剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。また、酸化防止剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上が好ましい。この場合には、繊維化安定性に対する改良効果を十分に得ることができる。同様の観点から、酸化防止剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.002質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上が更に好ましい。
(ホスファイト系酸化防止剤)
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく使用される。これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することができる。
(イオウ系酸化防止剤)
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などをあげることができる。上記のうち、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することができる。
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール等の化合物が挙げられる。
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的には、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが更に好ましい。これらの化合物は、1種又は2種以上を併用することができる。
「光安定剤」
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。光安定剤の分子量は1000以下が好ましい。この場合には、繊維の耐候性をより向上させることができる。同様の観点から光安定剤の分子量は900以下がより好ましい。また、光安定剤の分子量は300以上が好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂の耐熱性を向上させることができ、繊維化時における金型の汚染をより確実に防止することができる。その結果、表面外観のより優れた繊維を得ることができる。同様の観点から、光安定剤の分子量は400以上がより好ましい。
光安定剤は、ピペリジン構造を有する化合物であることが好ましい。ここで規定するピペリジン構造とは、飽和6員環のアミン構造となっていればよく、ピペリジン構造の一部が置換基により置換されているものも含む。置換基としては、炭素数4以下のアルキル基があげられ、特にはメチル基が好ましい。光安定剤は、ピペリジン構造を複数有する化合物がより好ましく、それら複数のピペリジン構造がエステル構造により連結されている化合物がさらに好ましい。
光安定剤としては、4−ピペリジノール,2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐カルボン酸)1,2,3,4‐ブタンテトライル、2,2,6,6−テトラメチル−ピレリジノールとトリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸の縮合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル、及びトリデシルアルコールとトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,3,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、1−[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N‘−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサンジアミンポリマーと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
光安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。この場合には、ポリカーボネート樹脂を含有する繊維の耐候性をより向上させることができ、着色などをより防止することができる。光安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.005質量部以上3質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上1質量部以下であることがさらに好ましい。
「紫外線吸収剤」
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ヒンダードアミン系化合物、サリチル酸フェニルエステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ベンゾトリアゾール系化合物には、分子内にハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール化合物I、分子内にハロゲン原子を含まないベンゾトリアゾール化合物IIがある。
分子内にハロゲン原子を含まないベンゾトリアゾール系化合物IIの具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、BASF・ジャパン社製のTINUVIN・P、ADEKA社製のLA−32、住友化学社製のSumisorb200)、2‐(3’,5’‐ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、住友化学社製のSumisorb350)、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(例えば、BASF・ジャパン社製のTINUVIN234)、2‐(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4‐メチルフェノル(BASF・ジャパン社製のTINUVIN571)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール(例えば、BASF・ジャパン社製のTINUVIN320)、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、BASF・ジャパン社製のTINUVIN329、ADEKA社製のLA−29)、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、住友化学社製のSumisorb340)、2−[2−ヒドロキシ−3−[(1,3,4,5,6,7―ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール−2−イル)メチル)−5−メチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(例えば、住友化学社製のSumisorb250)、2−(3,5―ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、BASF・ジャパン社製のTINUVIN328)、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール](例えば、ADEKA社製のLA−31)等が挙げられる。
分子内にハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール系化合物Iの具体的な例としては、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(例えば、ADEKA社製のLA−36、住友化学社製のSumisorb300)、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(例えば、BASF・ジャパン社製のTINUVIN327)等が挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物Iは、例えば同程度の分子量のベンゾトリアゾール系化合物IIに比較して、一般的に融点が高い。
トリアジン系化合物としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−s−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF・ジャパン社製、Tinuvin1577FF)などが挙げられる。
ヒドロキシベンゾフェノン系化合物としては、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
マロン酸エステル系化合物としては、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類等が挙げられる。なかでも、マロン酸[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ジメチルエステル(Clariant社製、HostavinPR−25)、2−(パラメトキシベンジリデン)マロン酸ジメチルが好ましい。
シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エチル−2’−エトキシ−オキサルアニリド(Clariant社製、SanduvorVSU)等が挙げられる。
これらの中でも、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、少なくとも2種類以上のベンゾトリアゾール系化合物を併用することがより好ましい。分子内にハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール化合物と、ハロゲン原子を含まないベンゾトリアゾール化合物とを併用することが特に好ましい。この場合には、繊維の耐候性をより向上させることができる。
ベンゾトリアゾール系化合物からなる紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.05〜0.5質量部であることが好ましい。この場合には、耐候性をより十分に向上さえることができると共に、繊維化時に金型、口金、ロールなどが汚染されることにより繊維の外観が悪化することをより防止できる。ポリカーボネート樹脂を含有する繊維の耐候性をより一層向上させ、繊維の外観の悪化をより一層防止するという観点から、ベンゾトリアゾール系化合物からなる紫外線吸収剤の合計含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.07〜0.4質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。
分子内にハロゲン原子を含まないベンゾトリアゾール化合物IIは、耐候性効果として、クラック発生抑制効果が高い。一方、分子内にハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール化合物Iは、クラック発生抑制効果は低いが、耐候性効果として、色差ΔE*を低く抑える効果が高い。したがって、分子内にハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール化合物Iと分子内にハロゲン原子を含まないベンゾトリアゾール化合物IIとの比率を調整することが好ましい。具体的には、分子内にハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール化合物Iと分子内にハロゲン原子を含まないベンゾトリアゾール化合物IIとの質量比(I:II)は10:90〜90:10であることが好ましく、20:80〜80:20がより好ましく、30:70〜70:30が特に好ましい。
「着色剤」
繊維は、さらに着色剤を含有することができる。着色剤は、ポリカーボネート樹脂に対して添加し、樹脂自体を所望の色に着色することが好ましい。この場合には、繊維化の際に煩雑な染色工程を行わなくても、所望の色に着色した繊維を得ることができる。着色剤としては、下記に列挙する無機顔料;有機顔料及び有機染料等の有機染顔料を用いることができる。
無機顔料としては具体的には、例えば、カーボンブラック;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料が挙げられる。これらの無機顔料は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機顔料及び有機染料としては、具体的には、例えば、フタロシアニン系染顔料;アゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;アンスラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、メチン系、キノリン系、複素環系、メチル系等の染顔料が挙げられる。これら染顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、無機顔料と有機染顔料とを併用することも可能である。
繊維は、着色剤として少なくとも無機顔料を含有することが好ましい。無機顔料を着色剤として使用することにより、高い鮮映性が得られると共に、繊維を屋外等で使用してもその鮮映性等が長期間保持することが可能になる。
着色剤により着色されたポリカーボネート樹脂を含む繊維は、明度L*が0.5〜3であることが好ましい。この場合には、繊維の鮮映性を向上させることができ、意匠性に優れたより深みのある漆黒性の繊維が実現可能となる。明度L*は、上述の各種着色剤の種類、組み合わせ、配合量等を適宜調整することにより上記範囲に調整することができる。
着色剤の種類が多すぎたり、着色剤の量が多すぎたりすると着色剤による光の反射や散乱の影響が大きくなり、鮮映性が低下する場合がある。したがって、繊維の鮮映性を高めるためには使用する着色剤の種類と量が少ない方が好ましい。また、高い鮮映性を得るためには、着色剤の合計量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.001質量部以上3質量部以下であることが好ましい。着色剤の合計量の下限は、0.005質量部がより好ましく、0.01質量部が更に好ましくい。着色剤の合計量の上限は、2質量部がより好ましく、1質量部が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂組成物を漆黒に着色した場合は、上述のように明度L*値が0.5〜3であることが好ましい。明度L*を前記範囲内にするためには、ポリカーボネート樹脂と繊維中の他の各種含有物との屈折率の差を小さくすることが好ましい。明度L*0.5〜3の繊維は、上述の着色剤の種類、配合を調整する等の方法により達成することができる。なお、L*a*b*表色系における明度L*値は、JIS K7105(1981年)に規定されている。
「その他の樹脂」
繊維は、上述のポリカーボネート樹脂の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂などの1種又は2種以上をさらに含有することができる。すなわち、繊維は、樹脂成分として、実質的にポリカーボネート樹脂のみを含有するものであってもよいが、ポリカーボネート樹脂と上述の他の樹脂とを混練してなるポリマーアロイを含有するものであってもよい。
「無機充填剤、有機充填剤」
繊維は、その意匠性を維持できる範囲において、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、ワラストナイト等の珪酸カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素、窒化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維、これらのウィスカー等の無機充填剤や、木粉、竹粉、ヤシ澱粉、コルク粉、パルプ粉などの粉末状有機充填剤;架橋ポリエステル、ポリスチレン、スチレン・アクリル共重合体、尿素樹脂などのバルン状・球状有機充填剤;炭素繊維、合成繊維、天然繊維などの繊維状有機充填剤を含有することができる。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
ポリカーボネート樹脂組成物は、上述のポリカーボネート樹脂と、必要に応じて添加される他の樹脂、添加剤等を所定の割合で同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混練機により溶融混合(溶融混練とほぼ同義)して製造することができる。すなわち、少なくとも、ポリカーボネート樹脂と、その他の添加剤等を溶融混合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。溶融混合は、減圧の状態で行うことが好ましい。
混練機については、減圧状態での混合を達成できる構成であれば二軸押出機もしくは単軸押出機の種別の如何を限定するものではないが、その他の添加剤等の分散性を高めるという観点から、二軸押出機がより好ましい。ポリカーボネート樹脂組成物の混合温度は200℃〜300℃が好ましい。この場合には、樹脂の劣化に伴う色調の悪化をより確実に防止することができると共に、繊維の光沢感、さらさら感(すべり性)、耐湿熱性などの実用面での物理特性をより向上させることができる。同様の観点から、混合温度は210℃〜280℃であることがより好ましく、220〜260℃であることが特に好ましい。また混合時間については、上記と同様に樹脂劣化をより確実に回避するという観点から無用な長大化は回避されるべきであり、10秒以上150秒以下が好ましく、より好ましくは10秒以上90秒以下である。
[繊維]
繊維は、上述のポリカーボネート樹脂、又はポリカーボネート樹脂を少なくとも含む上述の樹脂組成物を繊維化することにより製造できる。
「繊維の物性」
(繊度)
繊維の繊度は、1〜500dtex/24fであることが好ましい。この場合には、繊維の光沢感およびすべり性がより良好になる。光沢感及びすべり性をさらに向上させるという観点から、繊維の繊度は、10〜400dtex/24fであることがより好ましく、25〜370dtex/24fがさらに好ましく、50〜350dtex/24fが特に好ましく、100〜300dtex/24fであることが最も好ましい。なお、本明細書における繊度(dtex/24f)は、24本のフィラメントの繊度を示し、dtex/24fは、decitex/24 filamentsを意味する。繊度は、後述のようにJIS L1013(2010年)の8.3に準拠して測定することができる。
(繊維直径)
繊維直径は、1〜100μmであることが好ましい。この場合には、繊維の光沢感およびすべり性がより良好になる。光沢感及びすべり性をさらに向上させるという観点から、5〜80μmであることがより好ましく、10〜50μmであることが最も好ましい。繊維直径は、繊維1本あたりの直径であり、デジタルマイクロスコープにて測定することができる。なお、繊維の断面形状が円以外の場合には、断面積と面積が等しい円の直径をもって繊維直径とする。
(24本の繊維からなるマルチフィラメントの破断伸度)
24本の繊維からなるマルチフィラメントの破断伸度は、1〜80%であることが好ましい。この場合には、繊維の光沢感およびすべり性がより良好になる。光沢感及びすべり性をさらに向上させるという観点から、破断伸度は、5〜60%であることがより好ましく、10〜50%であることが最も好ましい。破断伸度は、インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めることができる。
「破断強度」
24本の繊維からなるマルチフィラメントの破断強度は、10〜500MPaであることが好ましい。この場合には、繊維の光沢感およびすべり性がより良好になる。光沢感及びすべり性をさらに向上させるという観点から、破断強度は、80〜400MPaであることがさらに好ましく、100〜300MPaであることが最も好ましい。破断強度は、インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めることができる。
[繊維の製造方法]
繊維は、例えば一般的な溶融紡糸工程、延伸工程等を行うにより製造することができる。溶融紡糸工程においては、例えば通常の溶融紡糸装置を用いて、ポリカーボネート樹脂を少なくとも含むポリカーボネート樹脂組成物を口金より紡出する。口金の形状や大きさによって、繊維の断面形状や径を任意に設定することが可能である。
(溶融防止工程)
溶融紡糸工程において用いられるポリカーボネート樹脂組成物は、例えば単軸押出機や二軸押出機を用いて溶融混練することができる。溶融混練時の温度は、樹脂組成物をまんべんなく安定に溶融混練し且つ安定な製糸性や品位を得るという観点から、ポリカーボネート樹脂の融点から30〜60℃高い温度範囲であることが好ましく、20〜50℃高い温度範囲であることがより好ましい。更に、混練設備を通過してから紡糸頭に至るまでの間の溶融温度についても、上記と同様の観点から、ポリカーボネート樹脂の融点から30〜60℃高い温度範囲であることが好ましく、20〜50℃高い温度範囲であることがより好ましい。上記範囲であれば、ポリカーボネート樹脂の熱による分解も起きず、繊維表面も滑らかとなり、良好な光沢の繊維が得られる。上記の溶融紡糸工程により未延伸糸が得られる。
(延伸工程)
より効率的な生産性で且つ安定した品位の繊維(具体的には、延伸糸)を得るために、上述の溶融紡糸工程後にさらに延伸工程を行うことが好ましい。上記の溶融紡糸工程で得られた未延伸糸は紡糸されてから連続で延伸を行ってもよく、一旦巻取った後、独立して延伸を行ってもよい。延伸工程は1段或いは2段以上の多段であってもよく、接触或いは非接触型の熱源を用いても何ら問題ない。例えば、延撚機を用い、未延伸糸を次のように2段延伸することができる。まず、第1段延伸域での延伸倍率を、糸がたるまない程度の倍率、すなわち、1倍を超え、1.2倍未満の範囲とする。第1段延伸域の延伸倍率が、1倍以下であると、糸弛みが発生して、引取ローラーへの巻き付きが発生するおそれがある。また、1.2倍以上であると、延伸斑が発生して染色後の品位が低下するおそれがある。次に、第1段延伸糸を60〜90℃に加熱した第1段延伸域の引取ローラーで加熱したのち、第2段延伸域で最大延伸倍率(以下、MDRと標記する。)の0.6倍を超え、0.8倍未満の範囲の倍率で延伸しながら、第2段延伸域に配した100〜170℃に加熱した熱板で熱セットする。
第1段延伸域の引取ローラーの表面温度は、例えばポリカーボネート樹脂のガラス転移温度を基準にすると、ガラス転移温度+30℃以下にすることが好ましく、ガラス転移温度以下にすることがより好ましい。より具体的には、引取ローラーの表面温度は、通常、40℃以上、200℃以下、好ましくは、45℃以上、185℃以下、特に好ましくは、50℃以上、170℃以下程度とする。第1段延伸域の引取ローラーの表面温度が前記範囲を外れると、延伸斑が発生して染色後の品位が低下する。
第2段延伸域の延伸倍率がMDRの0.6倍以下であると、延伸が不十分となり、延伸斑が発生しやすくなる。逆に、MDRの0.8倍以上であると、延伸時に糸切れや毛羽が発生しやすくなる。第2段延伸域の熱板の表面温度は、90℃以上260℃以下が好ましく、95℃以上230℃以下がより好ましく、100℃以上200℃以下が最も好ましい。
特定の構成単位(A1)と、特定の構成単位(A2)とを有するポリカーボネート樹脂を含む繊維は、繊維単体としても、耐熱性が高く、光沢感およびすべり性に優れている。このような繊維は、直接紡糸延伸手法又はその他の一般的な溶融紡糸手法においても安定した品質及び生産性が得られる。
繊維化にあたって、着色した樹脂組成物を使用することや後述のように繊維自体を分散染料により染色することで、着色した繊維を得ることができる。このような着色した繊維は、具体的には、絹のような天然繊維や、従来の合成繊維などとも何ら遜色のない品質を有している。そのため、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途など、多岐に渡って有効に利用することができる。更に、不織布、フィルターなどの資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などにも有効に利用することができる。
さらに、本発明の繊維は、意匠性、撥菌・抗菌性を合わせもつロールスクリーン布地への展開が可能であると考えられる。例えば蛇腹タイプのロールスクリーンにした場合には、材料自体のじん性によりカーテン巻き上げ、巻下げ時の耐久性が維持され、スクリーン上下時の収納性(巻き上げデザイン性)が良いことが予想される。更に平織布地表面の滑り性が良好であるため、ロールスクリーンのスムースな巻き上げ、巻下げが可能となることが予想される。
また、本発明の繊維は、天然シルク繊維のような光沢感が発現されている。特に材料自体の発色鮮鋭性が良好であるので、例えば透明樹脂への本発明の繊維からなる織物テキスタイルのインサート成形により、透明感と発色性との組み合わせによる新たな意匠性が発現可能であることが予測される。具体的な用途例としては、LEDライトのルームランプシェード、遮光カーテン布地などのデザインインテリアや、スマートフォンカバーなどの情報通信機器端末のカバーが予想される。
また、繊維は、その他の材料と複合繊維とすることができる。複合繊維とするためのその他の材料としては、以下の材料があげられる。例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、又はポリエステル繊維等の熱可塑性繊維等を用いることができる。また、それぞれの繊維を構成する単繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、得られる繊維製品の風合いや光沢感を考慮して、菊型、円形、扁平、Y字型等の糸断面形状を適宜選択すればよい。より具体的には、織物、編み物、布(地)、生地等を織ったり、編んだりしたあらゆる布や不織布とした際の所望の光沢感を、繊維形状を三角形状等の異形形状にすることにより実現できる。例えば、三角部頂点に所謂R付けし、その角度を調整することにより、光沢感の変化の微調整が可能となる。R付けは、三角部頂点に微小な丸みをつけることである。また、前記他の繊維の単繊維繊度、染色特性等についても特に限定されない。さらに、本発明の繊維を撚糸してもよく、この場合の撚糸の撚り方向及び撚り数に関しても特に限定されるものではなく、構成糸条の本数、撚り数等は目的の繊維製品の風合いや外観が得られる範囲で適宜選択すればよい。
繊維は、上述のポリカーボネート樹脂を含むモノフィラメントであっても、ポリカーボネート樹脂をそれぞれ含む複数のフィラメントを撚り合わせたマルチフィラメントであってもよい。本発明において、繊維は、上述のごとくポリカーボネート樹脂を含むため、ポリカーボネート繊維と呼ぶこともできる。ポリカーボネート繊維は、本発明の作用効果を損ねない範囲内において上述のポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含むことができる。したがって、ポリカーボネート繊維は、上述のようにポリカーボネート樹脂と他の樹脂とのポリマーアロイを含有する複合繊維を含む概念である。ポリカーボネート繊維は、ポリカーボネート樹脂を主成分とすることが好ましく、具体的には、ポリカーボネート樹脂の含有量が50質量%を超えることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。また、ポリカーボネート繊維と、ポリカーボネート以外の樹脂を主成分とする繊維とを撚り合わせたマルチフィラメントとして使用することも可能である。
本発明の繊維は、染色加工により着色することも可能である。染色加工は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の染色に使用される分散染料と同様のものを用いて行うことができる。本発明の繊維は、PET繊維に比較してより低温度、短時間で染色が可能である。そのため、染色性に優れ、染色加工のコストダウンが可能である。より具体的には、PET繊維は、例えば、130℃、60分間での高圧染色により染色されるのに対し、本発明の繊維は、例えば、100℃以下(より具体的には例えば60〜85℃程度)の低温度、45分間以下(より具体的には、例えば5〜20分間程度)の短時間で染色可能である。この理由は、本発明の繊維に用いたポリカーボネート樹脂自体の光線透過率が高く、ヘイズ値も低く、透明性が特に高いため、染料が少量でも効率的に染色されるためであると推察される。
また、染色時の染料の吸尽率もポリエステルがおよそ80%程度であるのに対して、本発明の繊維は13%程度と大幅に少ない。したがって、染料が少ない場合でも、ポリエステルと同程度の染色後の発色性を発現することができるものと推察される。つまり、本発明の繊維を用いたファブリックは、染色加工時の加圧、温度、時間、染料量の観点から、従来のポリエステル布地に対して大幅な環境負荷低減、加工コストダウンが可能となる。
更に、本発明の繊維を染色した染色品は、JIS規格による洗濯耐久性も4〜5級と優れたものとなる。このように本発明の繊維は、分散染料による染色や原着糸における染色が可能であり、天然シルク繊維のような光沢感が発現されている。特に発色鮮鋭性が特徴であり、低温染色が可能であり、洗濯堅牢度も高い。例えば、インドの民族衣装であるサリーは、天然シルク繊維によりできており、風合い、発色性が良好であるが、染色に用いる天然シルク繊維が高価であり、通常の水による洗濯ができずドライクリーニングが用いられる。これに対して、本発明の繊維からなる織物は水洗による通常の洗濯が可能であり、染色も低温、短時間で可能である。そのため、本発明の繊維からなる織物は、例えばシルクサリーに対して使用することでコストメリットが大きくなることが予想される。
さらに、一般のポリエステル布地、木綿布地、シルク布地は、ソース、しょうゆ、ケチャップ等が付着した場合、付着跡がシミとなってしまう。しかし、本発明の繊維に用いられるポリカーボネート樹脂は、撥水性、撥油性を有している。そのため、本発明の繊維からなるファブリックは、ソース、しょうゆ、ケチャップ等の付着に対して水洗により容易に汚れを落とすことができ、シミとならないことが予想される。
[ファブリック]
本発明において、ファブリックとは、織物、編み物、布(地)、生地等のように、織ったり、編んだりしたあらゆる布や不織布を指す。本発明のファブリックは前述のとおり、外観が良く、引き裂き強度に優れる。
[本発明が効果を奏する理由]
本発明の繊維が効果を奏する理由は未だ明らかでないが、以下のとおり推察される。
本発明の繊維の耐熱性については、本発明の繊維に用いたポリカーボネート樹脂自体の耐熱性が高く、これを用いた繊維も良好な耐熱性を得ることができる。
また、本発明の繊維の光沢感や色相については、以下のとおり推察される。つまり、本発明の繊維に用いたポリカーボネート樹脂自体の全光線透過率が高く、Haze値が低いため、繊維とした場合に良好な光沢感があり、良好な鮮鋭性も得られる。
また、本発明の繊維のすべり性については、以下の通り推察される。つまり、本発明の繊維は表面が滑らかである。また、繊維自体に外部から力を受けた時、例えば、繊維同士で力を受けた際に、繊維の表面が塑性変形する割合が少なく、また、繊維表面がささくれるような状態にはなりづらい。そのため、塑性変形により生じた凹凸同士やささくれが引っかかるようなことがおき、すべり性を損なうようなことはおこりづらい。したがって、本発明の繊維はすべり性が良好であると考えられる。
さらに、本発明の繊維のタッチ感が良好である理由については、上述のとおり、すべり性が良好であること繊維自体の直径が細いため、タッチ感が良好であると考えられる。さらに、タッチ感が冷たいと感じられる理由は、繊維自体が保有する空気の量が少ないため、冷たいと感じられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[評価方法]
以下において、ポリカーボネート樹脂及び繊維の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを塩化メチレンに溶解させ、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート樹脂溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃の条件で溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tとを測定し、
次式(i)に基づいて相対粘度ηrelを算出した。次いで、相対粘度ηrelから、次式(ii)に基づいて比粘度ηspを求めた。
ηrel=t/t0 ・・・(i)
ηsp=ηrel−1 ・・・(ii)
得られた比粘度ηspを溶液の濃度c(g/dL)で割ることにより、還元粘度(ηsp/c)を求めた。この還元粘度の値が高いほど分子量が大きいことを意味する。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて測定した。ポリカーボネート樹脂試料約10mgを同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で室温から250℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、JIS‐K7121(1987年)の方法に準拠し、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度Tgとした。ポリカーボネート樹脂のTgが100℃以上のものを合格とした。
(3)繊維の繊度の測定
JIS L1013(2010年)の8.3繊度に準拠して繊度の測定を行った。具体的には、枠周1.125mの検尺器または同等の性能を持つ巻返し機を用いて、24本のマルチフィラメントを長さ100mサンプリングし、その質量A(g)を測定し、以下の式により繊度を算出した。
繊度(dtex)=A×100
(4)繊維直径の測定
図1、図2に例示されるように、デジタルマイクロスコープによって観察した繊維について、その直径を測定した。繊維直径が1〜100μmであるものを合格とした。
(5)繊維の破断強度[DS]及び破断伸度[DE]の測定
株式会社島津製作所製オートグラフSD−100−Cを用いて、試長200mm、引張速度200mm/分で応力伸長曲線を測定し、24本の繊維からなるマルチフィラメントの破断点の強度および伸度を求めた。なお、破断伸度については1〜80%である場合を合格とし、破断強度については10〜500MPaである場合を合格とした。
(6)明度及び光沢度の測定(明度L*値、光沢度Gs45°光沢度Gs60°)
JIS K7105(1981年)に準じ、分光色差計(日本電色工業社製のSE2000)を使用し、C/2光源反射法(2°視野)にて、繊維のL*値、a*値、b*値を測定した。明度L*値が小さいほど光沢度が高いと言える。また、JIS K7105(1981年)に準じ、光沢計(日本電色工業社製のVG−2000)を用いて、入射受光角45度における繊維の光沢度Gs45°を測定した。Gs45°が6以下、かつL*が72以下であるものを合格とし、これらが低ければ低いほど光沢度が良好であるとした。
(7)繊維のすべり角度試験
エコボールA4(キングコーポレーション社製、商品名:EBA4100)の白色の面を裏面とし、灰色の面を表面として平行な机上に置いた。さらに、エコボールA4の灰色面上に、エコボールA4の長辺と並行になるように繊維の綛を置いた。次に、ボール紙の一方の短辺を持ち上げていき、綛が滑り出す角度を測定した。つまり、すべり角度が小さいほど、すべり性が高いものである。
(8)繊維のすべり感の確認
24本の繊維からなるマルチフィラメントを綛(かせ)状にし、綛をつまんだ際に評価対象品である後述の比較例1と同等の手触り(さらさら感)を得られるものをすべり性が良好であると評価した。
(9)繊維のタッチ感の確認
24本の繊維からなるマルチフィラメントを綛状にし、綛にふれた際に、評価対象品である後述の比較例1と同等の柔らかさ(ソフト感)が得られるものをタッチ感が良好であると評価した。また、綛にふれた際に、上記の評価対象品よりも冷たいと感じたものを合格とした。なお、冷たさや温かさは、繊維自体が保有する空気の量によりその感触が決まるものである。
(10)引裂き強さ
JIS L 1096に則り、エルメンドルフ形引裂試験機を用い、ベンジュラム法にて測定した。測定は三回行い、その算術平均を測定結果とする。なお、JIS規格については2016年時に最新版であるものを使用した。
(11)耐光堅牢度
JIS L 0843に則り、4級照射(具体的にはフェードメータ20時間照射)により測定した。なお、JIS規格については、2016年時に最新版であるものを使用した。
(12)洗濯堅牢度
JIS L 0844に則り測定した。なお、JIS規格については、2016年時に最新版であるものを使用した。
(13)摩擦堅牢度
JIS L 0849に則り測定した。なお、JIS規格については、2016年時に最新版であるものを使用した。
[使用原料]
以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号、及び製造元は次の通りである。
<ジヒドロキシ化合物>
・ISB:イソソルビド[ロケットフルーレ社製]
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール[イーストマン社製]
<炭酸ジエステル>
・DPC:ジフェニルカーボネート[三菱化学(株)製]
[ポリカーボネート樹脂の製造例1]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISB、CHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPC、及び酢酸カルシウム1水和物を仕込んだ。仕込み比は、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10-6である。そして、反応装置内の窒素置換を十分に行い、酸素濃度を0.0005体積%〜0.001体積%に調整した。
続いて熱媒で反応装置内の加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、開始から40分で内温を210℃にした。内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持すると同時に、減圧を開始し、内温が210℃に到達してから90分経過後に内圧を13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。
重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度として100℃に制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導いた。これにより、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻した。一方、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および上記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。
その後、20分かけて内温230℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレット状にした。このようにしてペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。これを、以下適宜PC−1という。PC−1の還元粘度を測定したところ、0.48dL/gであった。また、PC−1のTgを測定したところ、125℃であった。
[実施例1]
本例においては、ポリカーボネート樹脂として上述のPC−1を用い、以下の製造方法によりポリカーボネート樹脂からなる繊維を得た。具体的な製造方法は以下の通りである。製造例1で得られたポリカーボネート樹脂(PC−1)のペレットを用いて、丸断面で、孔径0.6mmの細孔を24個有する紡糸口金を設置した紡糸装置を用い、紡糸温度240℃、紡糸速度600m/分にて紡糸を行うことにより、未延伸糸を得た。次いで、この未延伸糸を用いて、予熱温度55℃、延伸温度60℃、延伸倍率1.45倍、延伸速度300m/分の条件にて延伸を行い、232dtex/24fの延伸糸を得た。
上記の方法により実施例1の繊維を得た。この繊維について、上記の評価を行った結果を表1に示す。なお、綛を用いた場合は、綛の重量7.2g(長さ20cm、幅1.5cm)の綛を用いている。
[実施例2]
本例においては、ポリカーボネート樹脂組成物として上述のPC−1を用い、以下の製造方法によりポリカーボネート樹脂からなる繊維を得た。具体的な製造方法は以下の通りである。製造例1で得られたPC−1のペレットを用いて、丸断面で、孔径0.6mmの細孔を24個有する紡糸口金を設置した紡糸装置を用い、紡糸温度245℃、紡糸速度600m/分にて紡糸を行うことにより、未延伸糸を得た。次いで、この未延伸糸を用いて、予熱温度55℃、延伸温度60℃、延伸倍率1.53倍、延伸速度300m/分の条件にて延伸を行い、333dtex/24fの延伸糸を得た。
上記の方法により実施例2の繊維を得た。この繊維について、上記の評価を行った結果を表1に示す。なお、未測定の物性については表中「−」で示している。
[比較例1]
実施例との比較用として、(株)長谷川商店のHK1202(素材:シルク100%、番手2/120Nm、双糸、150デニール:綛の重量4.1g(長さ20cm、幅1.5cm))を準備した。この比較例1の繊維についても、実施例1と同様に光沢度などの評価を行った。その結果を表1に示す。
表1より分かるように、実施例の繊維は、ガラス転移温度の高い樹脂を用いているため耐熱性が高い。また、実施例1の繊維は、Gs45°が比較例のシルクよりも低いため、良好な光沢度を有していることがわかる。また、実施例1の繊維は、L*値が低いため色相もシルクよりも良好である。さらに、実施例の繊維は、すべり角度試験およびすべり感の確認の両方においてすべり性にも優れていた。また、タッチ感はシルクよりも冷たく、清涼感のある繊維となっていた。また、図示を省略するが、実施例1は、ボビンに巻き取られた繊維の外観からも優れた光沢感を示していた。
[実施例3]
実施例2にて得られた繊維を使用し製織し、本発明の繊維からなる平織(タフタ)のファブリックを得た。
織物を製織する工程は、大別すると以下の二つに分かれる。
(1)経糸の準備(「整経工程」、「経通し工程」)
(2)織機での織上げ(「台載せ工程」、「織付け工程」、「製織工程」)
実際に行った上記の工程をさらに詳述する。
(1)経糸の準備
「整経工程」
整経方法: 1本採り自動巻取り形式
機械の種類: ドラム式ワーパー機(スズキワーパー社製)
仕様: ドラム1周7m、最大整経長126m、糸種最大10種類同時整経可能
設定: 設定速度60回転/1分間(通常速度に対して50%減速)
さらに、糸の重なりや、ねじれを防止するために回転速度を限界まで落とした。また、糸の張力過多による開繊(糸を構成するフィラメントが張力によりフィラメントの絡みが解除されること)を防ぐために糸張力を通常より30%程度緩めた。
「経通し工程」
扱い易い糸で予め綜絖および筬を通して、指定の糸に繋ぎタネ糸を準備した。その後、タネ糸を織機上で繋いでタテ繋ぎを行った。
機械の種類: 自走式、自動タイイングマシン(ストーブリー社製)
仕様: ニードル2重結び方式
設定: 60本数/1分間(通常速度に対して50%減速)。
なお、糸テンションは、通常通りとした。また、フィラメント糸に滑り止めスプレーを使用した。
(2)織機での織上げ
「台載せ工程」
経糸ビームおよび綜絖、筬を織機に据え付けた。
「織付け工程」
経糸据え付け後、緯糸を挿入して柄確認をした。なお、経糸張力は一定に保った。
「製織工程」
機械の種類: レピア方式(平岩鉄工所製、HUS型)
仕様: ガイド付きレピア、綜絖枠8枚、両口開口方式
設定: 速度30回/1分間(通常速度に対して60%減速(インバーターにて制御))
なお、開繊によるフィラメント切れを防止するため、数センチ織って、状況を確認しながら製織をすすめた。
上記により得られた本発明の繊維からなる平織(タフタ)のファブリックは、光沢感があり、透明感があり、滑らか感があり、風合いがハードであった。また、引裂き強さは、タテ(緯糸)49N、ヨコ(経糸)50Nであり、耐光堅牢度(4級照射)は、4級であり、良好であった。
[実施例4]
実施例3にて得られた本発明の繊維からなる平織(タフタ)のファブリックを以下の染色工程により染色した。
「染色工程」
以下の染色レサイプの染色液を用意し、この染色液中にファブリック約20gを温度80で15分間浸した。その後、還元洗浄液に浸すことで、ファブリックの洗浄(色止め)を行った。これにより、ライトブルー調にファブリックを染色した。
〈染色レサイプ〉
染料:KP L.BLUE BGL−S
KP N.BLUE 2G−SF−200
助剤:酢酸
酢酸ナトリウム
ニッカサンソルト(日華化学社製)
上記により得られた本発明の繊維からなる平織(タフタ)のファブリック(染色済み)は、引裂き強さは、タテ(緯糸)26N、ヨコ(経糸)33Nであり、耐光堅牢度(4級照射)は、4級であり、良好であった。
[実施例5]
実施例3にて得られた本発明の繊維からなる平織(タフタ)のファブリックを以下の染色工程により染色した。
「染色工程」
実施例4の染色レサイプの染料比率を変更した染色液を用意し、この染色液中にファブリック約20gを80℃で15分間浸した。その後、実施例4と同様の還元洗浄液に浸すことで、ファブリックの洗浄(色止め)を行った。これにより、インディゴブルー調にファブリックを染色した。
上記により得られた本発明の繊維からなる平織(タフタ)のファブリック(染色済み)は、耐光堅牢度(4級照射)は、2〜3級であり、洗濯堅牢度は、4〜5級であり、摩擦堅牢度は、乾燥:3級、湿潤:3〜4級であり、良好であった。