以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、ハイブリッド車両のエンジン室10内の機器の配置を示す図である。以下の説明において、前、後、左、右、上および下など向きを表す語句は、特段の断りがない限り、車両を基準とした向きを表す。図中の左側が車両の前方である。
この実施形態の車両は、乗員室の前方にエンジン室10が位置するいわゆるフロントエンジン車である。エンジン室10には、車両駆動用の原動機を含む動力装置が収められている。ハイブリッド車両の場合、動力装置は、原動機として内燃機関と電動機を含む。また、動力装置は、内燃機関と変速機を結合した構成であってよい。車両駆動用の電動機(以下、単に電動機と記す。)は、変速機内に設けることができる。電動機には、車載された駆動用バッテリから電力が供給され、また電動機を発電機として機能させた場合には、発電された電力が駆動用バッテリに充電される。
エンジン室10内の前側に電力制御装置12、後側にリザーブタンク14、これらの間に電力ケーブル16が配置されている。電力ケーブル16を介して、電力制御装置12と電動機の間、または電力制御装置12と駆動用バッテリの間で電力が送受される。電力制御装置12は、電動機と駆動用バッテリの間の電力の送受を制御する。電動機が三相交流電動機の場合、電力制御装置12はインバータを含み、インバータは、駆動用バッテリからの直流電力を三相交流電力に変換し、電動機に供給する。また、インバータは、電動機が発電した三相交流電力を直流電力に変換し、駆動用バッテリに充電する。電力制御装置12は、駆動用バッテリから供給される電圧を昇圧してインバータに供給する昇圧器を含んでよい。さらに、電力制御装置12は、駆動用バッテリの電圧を降圧して電力を電装機器に供給するための降圧器、例えばDC−DCコンバータを含んでよい。前照灯などの灯火類、音響機器、経路誘導装置および電子制御装置(ECU)など、車載された電装機器は、駆動用原動機として内燃機関のみを備えた従前の車両と同様の電圧(例えば12V)で動作する。この電圧は車両駆動用の電動機に供給される電力よりも低く、この電圧を上記電装機器に適合させるために降圧器が備えられている。さらに、電力制御装置12は、インバータ、昇圧器および降圧器の制御を行うための制御回路も含んでよい。
また、インバータ、昇圧器等を冷却するための冷却器を電力制御装置12に設けることができる。冷却器は、液冷とすることができ、別に設けられた放熱器との間で冷却液を循環させてインバータ等の冷却を行う。
電力制御装置12は、上述のインバータ、昇圧器、降圧器、制御回路および冷却器を金属、例えばアルミニウムのケースに収めて一体化されている。ケースの形状は概略的に直方体であってよい。
リザーブタンク14は、内燃機関および電力制御装置12の冷却水の余剰分を蓄え、また冷却水が不足した際にはここから不足分が供給される。内燃機関の冷却系と、電力制御装置12の冷却系が分離されている場合、リザーブタンク14は、いずれか一方の冷却系の冷却水を蓄える。
リザーブタンク14は、樹脂製の2個のタンク半体18,20を接合させて形成される。2個のタンク半体18,20を区別する必要があるときには、上側に位置するタンク半体を上側タンク半体18、下側に位置するタンク半体を下側タンク半体20と記す。タンク半体18,20は、それぞれ1面が開口した容器形状を有し、開口の縁にはそれぞれフランジ22,24が形成されている。2個のタンク半体18,20の開口を閉じ合わせ、フランジ22,24同士を接着、溶着などによって接合して一体にしてリザーブタンク14が形成される。フランジ22,24は全周にわたって接合されて封止される。接合されたフランジ22,24を全体として接合フランジ26と記す。上側タンク半体18の頂部には、キャップ28で閉止可能な補充口が設けられている。キャップ28を閉じることでリザーブタンク14は密閉される。
接合フランジ26は、2枚の板部材(フランジ22,24)が接合されることによって板厚が厚くなっており、単体の板部材に比べ強度が高くなっている。また、接合フランジ26の板厚方向は上下方向であり、前後方向は板部材の面内方向である。このため、接合フランジ26の前後方向の強度は高い。これに対し、タンク半体18,20の前方に向いた平面部分30,32は、板厚方向が前後方向であり、強度が接合フランジ26よりも低い。
電力ケーブル16は、その一部が、接合フランジ26の端縁に対向するように位置している。さらに、電力ケーブル16とリザーブタンク14の間、特に接合フランジ26との間には、保護部材34が配置されている。保護部材34は、接合フランジ26の、電力ケーブル16に対向している部分を覆うように設けられた保護板36と、保護板36からリザーブタンク14に向けて延びる衝突突起38,40とを有する。衝突突起38,40の先端は、接合フランジ26近傍のタンク半体18,20の平面部分30,32に対向している。通常時、つまり衝突前は、保護板36と接合フランジ26の隙間寸法は、衝突突起38,40の先端とリザーブタンクの平面部分30,32の距離よりも大きい。通常時、衝突突起38,40は、その先端をリザーブタンクの平面部分30,32から離した状態として配置することができる。
前方衝突時、電力制御装置12は後方に移動し、電力ケーブル16および保護部材34を後方に動かす。保護板36が接合フランジ26の端縁に当接する前に衝突突起38,40がリザーブタンクの平面部分30,32に衝突し、ここを壊す。接合フランジ26の近傍の平面部分30,32が壊れるため、接合フランジ26は、これを支えている部分を失い、接合フランジ26とその周囲全体の強度が低下する。その後、保護板36が接合フランジ26に当接するが、このときには、接合フランジ26およびその周囲の強度が低下しているため、電力ケーブル16に損傷を与える可能性が低くなる。また、接合フランジ26の端縁を保護板36が覆っているため、エッジ状の接合フランジ26が電力ケーブル16に直接接触する場合よりも力が分散し、電力ケーブル16に損傷を与える可能性が低くなる。
図2は、エンジン室10内の機器の配置の他の例を示す図である。すでに説明した構成については同一の符号を付し、説明を省略する。この例においては、衝突突起42,44が電力制御装置12に直接設けられている。衝突突起42,44の先端は、接合フランジ26近傍のリザーブタンクの平面部分30,32に対向している。衝突前の状態において、電力制御装置12と電力ケーブル16の隙間寸法、および電力ケーブル16と接合フランジ26端縁の隙間寸法の合計は、衝突突起42,44の先端と平面部分30,32の距離よりも大きい。通常時、衝突突起42,44は、その先端をリザーブタンクの平面部分30,32から離した状態として配置することができる。
前方衝突時、電力制御装置12は後方に移動し、電力ケーブル16が電力制御装置12と接合フランジ26に挟まれるより前に、衝突突起42,44がリザーブタンクの平面部分30,32に衝突し、ここを壊す。接合フランジ26の近傍の平面部分30,32が壊れるため、接合フランジ26は、これを支えている部分を失い、接合フランジ26とその周囲全体の強度が低下する。電力制御装置12が更に後方に移動すると、電力ケーブル16が電力制御装置12とリザーブタンク14に挟まれる状態になるが、このときには、接合フランジ26およびその周囲の強度が低下しているため、電力ケーブル16に損傷を与える可能性が低くなる。
電力制御装置12以外の車載機器とリザーブタンク14の間に電力ケーブル16が位置する場合においても、上述の例と同様に衝突突起によりリザーブタンク14を壊すことにより、電力ケーブル16を保護することができる。